●かんべえの不規則発言



2020年7月 






<7月1日>(水)

〇王位戦の第1局。1日目が終わった時点で大差がついている。これは素人がみても、挑戦者の藤井聡太七段が優勢である。AbemaTVのコンピュータソフトは、「61対39」と採点している。木村王位は目の前のと金を払うか、それともエイやっと相手陣の飛車を取るかのどちらかしかなく、今日のところはそのどちらかを封じ手とした。

〇飛車を取るのなら予定の行動であり、数手前からの読み筋なのであるが、その場合はどうみても後手の王様は危うくなる。下手をすれば、明日の午前中に詰んでしまいそうである。と金を払えば少しは粘れるし、明日の夕方までは引っ張れるかもしれないが、数手前に指した角打ちが悪手であったことをみずから認めることになり、それはこの先の7番勝負を指していく上での負い目を作ってしまう。

〇逆に挑戦者藤井七段にとっては、同時進行の棋聖戦五番勝負(相手は渡辺明三冠)とは違って、これは二日制の対局である。地方紙共同制作のタイトル戦なので、全国各地を泊まり歩くことになる。第1局は地元・愛知県なので、主催者の一角、中日新聞は大喜びだろう。「封じ手」がある、午前10時と午後3時には「おやつ」が出る、というのもタイトル戦挑戦における初体験である。

〇こんな初体験を次々にこなしながら、17歳の少年は「将棋のことだけ考えていればいい」日々を楽しんでいるかのように見える。いや、高校の授業もあるし、気になる女の子がいるかもしれないのだが。6月だけで9局も対局して、2つのタイトル戦に同時に挑戦し、しかも8勝1敗。

〇今日の対局では、腰掛銀の戦後同形にした後手の4四歩に対し、先手が4五歩、同歩、同銀、としたところで後手は5二玉。これが木村王位が用意した「新手」であったようだが、そこから昼食休憩をはさんで90分間検討し、藤井七段が指した2四歩が良い手であったようだ。

〇以後、これが定跡となるのかもしれない。「ここで後手5二玉は先手2四歩にて先手良し」。そして、「後手は腰掛銀で4四歩の同形を避けるべし」と。

〇山崎元氏は、「藤井七段の将棋を楽しまないのは人生の無駄だ」と書いている。確かに、同時代にこんなすごい地殻変動が起きているのだから、見ない阿呆より見る阿呆でありたいものだ。さて、明日はどうなる?


<7月2日>(木)

〇昨日も今日も在宅勤務で、あくせく締め切りバスターを続けている。なぜか今週はたくさん重なっているのだが、これはこれで楽なのである。なにしろ書かなきゃいけないし、書けば仕事は終わるので。義理を果たす、というのは心理的に素晴らしいことである。

〇仕事中に王位戦が気になって、ついつい棋譜を覗いてしまうのだが、まあ、木村王位が夕方まで粘ったことはよかった。お昼前に「参りました」と頭を下げてしまうと、地元関係者は困ってしまうだろう。心づくしのお昼ご飯やおやつをいただくのも、対局者の大事な務めのひとつと言える。今日の盤面では、味がしなかったかもしれないけれども。

〇東京都の新たな感染者が100人超えだとか。うーむ、これでは夜の街はたいへんであろう。「金は天下の回り物」であるから、どんどん人が動いておカネを回してあげないといけないのだが、そうするとウイルスも一緒にうごめいてしまう。病院のベッドに空きがあるうちはよいのであるが、近日の増え方はだんだんシャレにならなくなりつつある。

〇ちなみにワシはよく知らんのであるが、その道の人に聞いたところでは、新宿のホストクラブでなぜ感染が増えるかというと、こんな理由があるのだそうだ。@ホストがメイクをする部屋が狭くて三密、Aシャンパンタワーという儀式で濃厚接触がある、B最初のうちは気を付けているが、明け方になると忘れている、C帰りのエレベーター内でも濃密な行為が行われる。いや、どういうところかまったく不案内なのですが。

〇それにしても感染者数が再び増加に転じるのでは、せっかく復活し始めたワシの講演予定も、これで再び吹っ飛んだり、ウェビナー方式に変わってしまうかもしれん。まあ、それはそれで素直に応じるしかないのであって、その辺はとっくの昔に悟りの境地なのである。さて、明日は出社してやるか。











***先月に戻る






編集者敬白





●不規則発言のバックナンバー

2020 2019 18 17 16 15 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99
  19年12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月 12月
  19年11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月
  19年10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月
  19年9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月 9月  
  19年8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月 8月  
  19年7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月 7月  
20年6月 19年6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月 6月  
20年5月 19年5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月 5月  
20年4月 19年4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月  
20年3月 19年3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月  
20年2月 19年2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月 2月  
20年1月 19年1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月 1月  

溜池通信トップページへ

by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)