●かんべえの不規則発言



2016年8月 






<8月21日>(日)

○さすがのリオ五輪もいよいよ終幕が近い。これが明日の朝になると、いよいよテレビでは閉会式をライブでやっていることになります。それまでには男子マラソンもあるし、男子バレーボールの決勝戦(ブラジル対イタリア)もある。新体操の決勝もあります。ちなみにブラジルの国技はバレーボールなんだそうです。それではサッカーは何かと言えば、あれはスポーツじゃなくて宗教であるのだと。わが国における相撲みたいなものなんでしょうか。

○日本では熱狂の2週間でした。これだけ金銀銅がザクザク取れると、全国的に盛り上がったことは間違いないでしょう。これをナショナリズムなどと呼ぶなかれ。これは都会出身の人には分かりにくいでしょうが、富山県は郷土が生んだ2つの金メダルに沸いているのです。ところが不思議なものでありまして、こういうものは「もうこれでお腹いっぱい」ということがないのであります。翌日になったら、新鮮な気分で別な種目が待っているわけです。人間とはなんと欲張りなものでしょうか。

○昨日だって400mリレーで銀メダルという興奮があったのに、今日になったらサッカー決勝戦でブラジル対ドイツに熱中してしまいました。2年前のワールドカップでの独7対伯1という屈辱があるから、ここでブラジルが負けたら大変であります。ドイツ人、無事には帰れません。でも、敢えて空気を読まないのがドイツの美風。前半に入れたネイマールの1点に、後半追いついて延長戦へ。それも時間切れでとうとうPK戦へ。これを最後はネイマールが決めるんですから、まるで最初から仕組まれていたようなドラマでありました。

(追記→しかも男子バレーボールも金メダルですって!これでブラジルも、開催国として元は取れましたな。後は借金が残るかもしれませんが、栄光の記憶は永遠です)

○忘れがたい場面がいくつもありました。そのリオ五輪はもうじき終わる。リオが終わったら、その瞬間から「次は東京」です。責任は重いです。とりあえず日本外交としては、安倍首相は来週のTICADYとか、再来週のG20とか東アジアサミットなどで、「2020年は東京五輪をよろしく」と繰り返すのでありましょう。そう言われて悪い気がする人は居ないので、当面は使える外交カードとなるのでありましょう。

○他方、その東京五輪は野球とソフトボールなどの競技復活が決まり、空手やスポーツクライミング、サーフィン、スケボーなどを新たに加えることになったから、ますますコストは嵩むわけです。ところがマスメディアというものは、「野球が復活してめでたい」と喜びながら、「カネがかかるのはけしからん」なdpと言うのです。馬鹿なことを言うものではありません。「高福祉・低負担」などというものがこの世に存在しないように、「無駄遣いではない五輪大会」や「カネのかからない感動」などというものはあり得ないのであります。

○五輪開催はお大尽の遊びです。ブラジル経済は危うく麻痺しかかりましたが、サッカーが勝ったらとりあえず民意はオッケーでしょう。さて4年後の日本経済はどうなるか。ちゃんと日本がお大尽でいられるように、経済をがんばらねばなりませんね。


<8月22日>(月)

○暑さ寒さも彼岸まで。台風がどさっとやってきて、夏はどこかへ行ってしまった模様。リオ・オリンピックも終わってしまいました。やれやれどっこらしょ。

○経済産業省の「反原発テント」がなくなったと聞いて、会社の帰りに見に行ってきました。それっぽい人たちが何人か集まっていたけれども、確かに跡形はなくなっている。ここに来るまで市民団体と最高裁まで争って、勝訴が確定したうえで、わざわざ日曜日の午前3時に強制執行したんだとか。問題発生から実に5年近くかけている。こういうときの日本政府の辛抱強さには、つくづく頭が下がりますな。

○このところ世界には、クーデター未遂にブチ切れた独裁者とか、麻薬犯罪者を殺してしまう政権とか、あられもないことを口走る大統領候補者とかがいて、とっても不穏な感じです。でも、反体制勢力にとって何よりも手強いのは、こういうもの静かな官僚機構の方なのでしょう。普段は暖簾に腕押しでも、我慢比べには滅法強いですからね。

○市民団体の側が本気で運動を続けるつもりならば、とりあえず判決で命じられた3800万円の制裁金をキチンと払うべきでしょう。国家権力の側はさりげなく、うやむやにしようとすると思いますよ。でも、そうやって借りを作ってしまうと、ますます味方が減っていきますからなあ。まっ、ワシの知ったことではないんだけどね。


<8月23日>(火)

○今日は国際問題研究所のセミナーへ。テーマは「米大統領選挙と米国内政・外政の展望」。壇上も客席も、この世界のベテランと新鋭のオタク族ばかり。いやあ、心が洗われるような気分でありますよ。

○冒頭から「今年の大統領選挙はもう終わったんじゃないか」(トランプの敗北は決定的じゃないか」という刺激的な発言が飛び出して、「共和党はいよいよ終焉を迎えるのか」とか、「あえてヒラリーが負けるとしたらどんな筋書きがあるのか」とか、「トランプとサンダースの登場は、党派的対立時代の終わりを示唆しているかもしれない」などと、面白い意見が飛び交っていました。

○今度の戦い、共和党は敗色濃厚になっているのだが、それではこの先はどういうことになるのか。「トランプのことは嫌いになっても、共和党を嫌いにならないで」(せめて議会選挙だけは勝たせてね)と割り切るのか、「向こう4年間は我慢するけど、絶対にヒラリー政権は1期だけで終わらせる」と考えるのか、それとも「トランプに大統領になってもらって、すぐに引き摺り下ろしてペンス政権にしてしまおう」というシライ級の高難度技に挑むのか。

○あるいは――。明治時代の西南の役において、不平士族を率いた薩摩軍が滅んで時代にケジメをつけたように、トランプによって発見された「不満な白人貧困層」も、敢えて勝ち目の薄い選挙に挑んで、「多様化していくアメリカ」に道を譲るのか。つまり彼らは、変化に背を向けて自爆してしまうのか。その場合、敗残兵たちは2020年選挙ではどんな行動をとるのか。再び「投票しない層」に戻るのか、それともイヴァンカ・トランプあたりを候補者に担いで、「トランピズム」の新党を立ち上げるのか・・・・?

○考えてみれば、当溜池通信も長らく米大統領選挙に血道を上げてまいりました。その上で、本日のような並み居るアメリカ・ウォッチャーたちとともに、「誰の予想も全然当たらない2016年選挙」を迎えている。おそらく時代の変わり目なんだろうなあ、とは思うものの、まったく分からないことばかりです。ともあれ、こういう局面に立ち会えるということは、「ウォッチャーの本懐」という気がいたします。

○リオ五輪が終わったら、いよいよ大統領選挙も第4コーナーにさしかかったと考えていいでしょう。11月8日に向けて、しっかり見張っていきたいものであります。


<8月26日>(金)

○ちょっと珍しい時間の更新となります。ただ今羽田空港にて更新の作業中。実は午後の便で、これから北京に行くのであります。

○去年の12月と同じ中国社会科学院日本研究所の会議です。あのときは天気も空気も悪かったけれども、今回はさてどんな感じでしょ。そういえばマスクを持ってくるのを忘れてた。夏は大丈夫だと思うんですがねえ。

○溜池通信の本誌では、「G20はNon Eventになる」、と言い切ってしまいましたが、ホントのところがどうかは蓋を開けてみないと分かりません。いろいろ探ってまいりたいと思います。更新は少し遅れて、帰ってからになるかも。それでは皆様、行ってまいります。


<8月27日>(土)

○ということで、中国社会科学院日本研究所のシンポジウムに丸一日参加しました。日中関係に関する定点観測の機会であります。

○今回の会合は日本から招待された参加者が10人もいて、ものすごく力の入った会議だったようです。横井大使が開会式に出られたのも、考えてみればすごいことですな(確か昨日まで谷内正太郎安全保障局長が北京に来ていたはず・・・).。もうじきG20首脳会議ですが、その直前にこういう会合が行われるということは、いちおうトレンドとしては「日中関係改善」なんだとは思います。

○でまあ、ワシに与えられたテーマは「アベノミクスおよび日本経済情勢」でありました。それなりに受けてはいたようなのに、質疑ではほとんどスルーされてしまった。やっぱり経済ではなくて、日中間では政治と安全保障が焦点なんですよ。特に安保法制関連と南シナ海ですな。歴史認識はさすがに「70周年」を過ぎたので少し減りました。それでも来年は「日中国交回復45周年」なんどそうで、日中間は毎年のようにアニバーサリーがあるんですよね。

○中国側から「安倍首相は・・・」という問いが何度も発せられたのが印象的でした。これはまあ、「敵の姿は実際よりも大きく見える」の原則なんでしょう。まるで相手の陣内が見えない状態で将棋を指しているようなもので、「えっ」と驚くような誇張、もしくは誤解をされている。いちおう説明はするのでありますが、さて、これはいいことなのか、悪いことなのか。実態よりも大きく見えているということは、日本の抑止力にとって有利なことなのかもしれません。

○日本で対ロ関係を議論するときに、「プーチンは何を考えているのか?」という問いかけがしょっちゅう出てくるように、中国で対日関係を考えるときは、「安倍は何を考えているのか?」になっている様子。これはちょっと実態とは違っていて、例えば安保法制の作業がどんどん進んだのは、安保関係者が以前から「これはもうほっとけないよね」と思っていたからでしょう。でもそれが、日本の安保体制が強化されることに反対している人たちから見れば、「安倍が悪い」「立憲主義の危機」「最近の自民党はおかしい」と見えるのと似ているかもしれません。

○とはいうものの、「安倍内閣は盤石で、しばらくはひっくり返りそうにはない」「ただし憲法9条改正はさすがに難しいだろう」などといった声もあって、その辺はたぶん正しい認識と言えるでしょう。

○参加者の中では、外務省OBの田中均さんのご意見が、いちいち深くてシンプルな言葉に重みがありました。それから山口二郎教授、矢吹晋教授のお二人とご一緒できたのも面白かった。変な取り合わせだと思われるかもしれませんが、白酒をしこたま飲んで語り合いましたがな。晩餐会が終わってからは外へ出て、屋台で二次会。8人もいたのに、なぜかお支払いはトータル80元。1人当たり160円也。たぶん何かの間違いだと思うのだが、訂正することあたわず。

○ホテルに戻ってそのまま爆睡。朝まで。


<8月28日>(日)

○今回の北京は快晴で、夏の終わりでもあまり暑くはなく、空気も乾燥しているので快適でした。空も青くて、昨年12月に体験したスモッグで真っ白な空気がウソのようでした。こういう日もあるのですね。

○ホテルはいつもの「和敬府賓館」でした。乾隆帝の三女の屋敷だったとのことで、古い建物なんですが、リノベーションされて今では欧米人がよく泊まるホテルになっています。周囲の街並みも昔の北京を髣髴とさせるところがあります。朝食のヌードルが旨いです。特にワンタンがお勧めですね。

○直前になって、会議の会場が1階から地下1階に変更になりました。なんでも政治局の偉い人の予定が急に入り、ホテル側から変更を言い渡されたとのこと。予約は予定、予定は未定ということで、こういうのも中国、もしくは北京ならでは現象なんでしょうね。正直なところ、あんまり腹も立たないのであります。

○本日、チェックアウトでフロントに立ち寄ったら、結婚式の準備をしている。玄関から赤いカーペットを敷き詰めて、昨晩、会議の夕食会をやっていた場所がド派手な宴会ステージになっている。新郎と新婦の写真も貼ってある。北京では一時、西洋式の結婚式が流行っていたのだが、最近は中国式が人気になっていて、なるほど女性は皆さんチャイナドレスである。なんでも今日は旧暦でめでたい日なのだそうだ(手元の手帳をチェックしたら、日本では友引である)。

○間もなく結婚式、というところで当方はずらかってまいりました。ここから空港までが渋滞だったり、いろいろあるのですが、とりあえず帰ってまいりました。どっこいしょ。
















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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)