●かんべえの不規則発言



2020年9月 






<9月23日>(木)

〇RBG死す、のニュースで得をするのは誰か。当初はこれで民主党側が盛り上がる、との見方もあったのですが、どうやら共和党側の方が追い風になりそうですね。

〇何よりわかりやすいことに、アメリカにおけるコロナの死者数は昨日でとうとう20万人越えした。これはもう「コロナ敗戦」以外の何物でもない。トランプ大統領は、永遠にこの責任から逃れられないだろう。このことについて皆が語らなくなるというだけで、トランプさんにとっては大儲けとなる。最高裁判事の人選は、それくらいの大ごとなのである。

〇ちょっと驚いたのは、あの穏健派のミット・ロムニー上院議員が、「大統領選前の承認を支持」と宣言したことだ。上院司法委員会のリンゼー・グラハム委員長も、迅速な承認手続きを望むと言っている。となれば、反対しそうなのはスーザン・コリンズとリサ・マコウスキーという女性議員2人くらいである。この2人は、2年前のブレット・カヴァノー判事の承認の際も大いに苦しんだ。とくにコリンズ上院議員は今年が改選期で、民主党の女性候補サラ・ギデオンに押しまくられているから洒落にならない。

〇しかし仮に造反が2人だけということになると、51対49で新しい保守派の女性判事(トランプさんは9月26日までに公表すると言っている)は承認されてしまう。あと1人が造反して50対50になったとしても、議長であるペンス副大統領の最後の1票が効く。真面目な話、11月3日の投票日までに公聴会などすべての手続きが終わるとは考えにくいのだが、それはクリスマス休暇前のレイムダック議会にやっても良いのである。

〇それでは、なぜミット・ロムニー氏が賛成に回ったのか。それは「6対3の最高裁」が、共和党にとって長年の夢だったからである。ぶっちゃけで言ってしまえば、共和党は人口動態的に不利を運命づけられた政党だ。若い世代はリベラルだし、人口構成比からいっても白人比率は確実に低下していくので、未来が明るいわけではない。下手をすれば、来年はホワイトハウスと上院と下院の3つとも、民主党にとられてしまう(Trifecta=3連単)かもしれない。

〇たまたまトランプさんという変なトリックスターが登場して、そのお陰で共和党は4年間延命できたけれども、それがこの先も続く保証はどこにもない。なにより伝統ある共和党が、今ではトランプファミリーの私党みたいになってしまった。トランプ亡き後の共和党がどうなるか、というのも興味深いテーマなのだが、その話はここではさておくことにしよう。

〇共和党はこれから長期衰退期に入るかもしれない。彼らも馬鹿ではないので、さすがにその辺のことはわきまえている。ところがそのときに、最高裁判事が保守派6対リベラル派3であったとすれば、彼らの望まない政策はどんどん違憲にできてしまうのである。予算措置を伴う経済政策なんぞは無理ですが、銃規制、移民問題、選挙制度、ヘルスケア、人種、ジェンダー、人工妊娠中絶といった社会問題は、民主党がやろうとすること全部を水泡に帰することができてしまう。

〇たとえどんな非難を受けようとも、こんな千載一遇の機会を逃すことはできない。今回の場合、マコーネル院内総務が言っている理屈はこうだ。「昔から大統領と上院が同じ党のときは、たとえ大統領選挙の直前であっても、新しい候補者を挙げてきた経緯がある。1992年や2016年は、たまたまそうじゃなかったから先送りしただけだ。2020年は同じ共和党なのだから、大統領選挙の前でも承認する」。――もちろん我田引水な議論だが、「理屈は後から貨車で来る」という典型である。

〇「ああ、これで人工妊娠中絶を違憲にできる!」と喜んでいる人たちももちろんいる。が、この場合の共和党支持者はそんな極端な人たちばかりではない。ごく普通の中高年世代で、同性婚や移民の増加もいいけれども、世の中の変化の速さについていけないと思っていて、「せめて自分が生きている間は、もう少し変わらないでいてもらいたい」と願っている人たちがいる。おそらく民主党の天下が続くと、最高裁判事も徐々にリベラル派が増えるだろうが、それには長い時間がかかるので、それは構わない、と考えるのではないか。

〇リベラル派の側はもちろん怒っていて、「かくなる上はパック・ザ・コートも辞さず」との声がある。これは最高裁判事を現行の9人からもっと増やしてしまえ!という作戦で、議会が立法措置をすればできない話ではない。FDRことルーズベルト大統領の時代には、ホワイトハウスも議会も民主党だったのだが、最高裁判事が長らく保守派で占められていたためにこのアイデアが浮上した。が、さすがのFDRもこれはやれなかった。

〇そもそも最高裁が6対3になってしまうと、判事を2人増やして11人にしてもまだ「保守派6対リベラル派5」となって足りないことになる。一気に5人増やして13人にしてしまえ、というのはさすがに乱暴ではないか。まあ、日本の最高裁判事は15人ですけどね。

〇ところでもうひとつ心配なことがあります。この後、最高裁判事人事をめぐって議会の対立はますます深刻化するでしょう。たまたま9月22日、暫定予算案の合意ができたので、12月11日までの連邦政府予算は確保できた。これで大統領選挙前の政府閉鎖は回避されます。しかるに「追加景気支援策」の方はまったくめどが立たなくなった。アメリカ経済、今は決して盤石ではないし、本当は1兆ドル超の対策を打っておくべきだと思うのである。ああ、見ちゃいられない。10月のアメリカ株価は、くれぐれも慎重に見ておくべきだと思いますぞ。


<9月24日>(木)

〇キャピトル東急ホテルのオリガミでランチしたのだが、なんだかすごい賑わいである。もともとコロナがひどかった時期でも、ここだけは別格で客が入っていた。さすがは魑魅魍魎が跋扈する永田町界隈である。

〇もともと官房長官時代の菅さんが、毎朝ここで人と会いながら朝食をとっていたことは知る人ぞ知る話であったが、総理大臣になって「首相動静」が新聞に載るようになって、その「偏愛」ぶりがあきらかになった。ちなみに今週の動きは下記のとおりである。


●9月21日(月) 

 午前8時35分、東京・赤坂の衆院議員宿舎発。同40分、官邸着。官邸の敷地内を散歩。同9時19分、官邸発。同21分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内のレストラン「ORIGAMI」へ。
 午前9時22分から同53分まで、経済ジャーナリストの財部誠一氏。
 午前9時58分から同10時50分まで、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト。
 午前10時51分から同11時32分まで、金丸恭文フューチャー会長兼社長。同39分から午後0時23分まで、新浪剛史サントリーホールディングス社長と会食。同31分から同1時19分まで、自民党の「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」の和田政宗事務局長、杉山産婦人科の杉山力一理事長。
 午後1時25分、同ホテル発。

 午後2時29分、横浜市西区の久保山墓地着。秘書を務めた故小此木彦三郎元建設相の墓参り。同32分から同34分まで、報道各社のインタビュー。同35分、同所発。同36分、墓地を管理する「太田茶屋」着。知人らと写真撮影。同37分、同所発。
 午後3時30分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同57分から同5時まで、林幸宏内閣府政策統括官、竹森俊平慶応大教授。
 午後5時3分、同ホテル発。
同6分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後10時現在、同議員宿舎。

●9月22日(火)

 午前9時25分、東京・赤坂の衆院議員宿舎発。同34分、皇居着。秋季皇霊祭・神殿祭の儀。
 午前10時45分、皇居発。
 午前10時53分、衆院第2議員会館着。
 午前10時54分から同11時7分まで、梶山弘志経済産業相。
 午前11時8分から午後0時12分まで、加藤勝信官房長官。
 午後0時32分、同所発。同36分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後0時53分、同議員宿舎発。同55分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内の中国料理店「星ケ岡」で岡部信彦川崎市健康安全研究所長と会食。
 午後2時1分、同ホテル発。

 午後2時3分、衆院第2議員会館着。
 午後2時22分、同所発。
 午後2時26分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後3時26分、同議員宿舎発。
 午後3時31分、官邸着。官邸の敷地内を散歩。
 午後4時、官邸発。同1分、公邸着。
 午後4時56分から同5時13分まで、ドイツのメルケル首相と電話会談。同45分から同6時1分まで、欧州連合(EU)のミシェル大統領と電話会談。
 午後6時17分、公邸発。同19分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内の日本料理店「水簾」で、外務省の森健良、鈴木浩両外務審議官、宇山秀樹欧州局長と会食。
 午後8時1分、同ホテル発。
同6分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後10時現在、同議員宿舎。

●9月23日(水)

 午前6時37分、東京・赤坂の衆院議員宿舎発。同41分、官邸着。官邸の敷地内を散歩。
 午前7時23分、官邸発。同25分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内のレストラン「ORIGAMI」で自民党の森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と会食。
 午前8時32分、同ホテル発。
同34分、官邸着。
 午前10時3分から同23分まで、デジタル改革関係閣僚会議。
 午前10時36分から同39分まで、野上浩太郎農林水産相。
 午前10時52分から同11時1分まで、平沢勝栄復興相。
 午前11時14分から同28分まで、坂本哲志地方創生担当相。
 午後0時2分から同45分まで、黒田東彦日銀総裁と昼食。
 午後1時31分から同46分まで、小池百合子東京都知事と東京五輪・パラリンピックについて意見交換。林自民党幹事長代理同席。
 午後1時50分から同2時25分まで、石川正一郎拉致問題対策本部事務局長。
 午後2時26分から同36分まで、山本一太群馬県知事。
 午後3時30分から同45分まで、岸信夫防衛相。
 午後3時53分から同4時4分まで、超党派の「病院船・災害時多目的支援船建造推進議員連盟」の衛藤征士郎会長、井上義久会長代理による申し入れ。同10分から同20分まで、橋本聖子五輪相、和泉洋人首相補佐官、森健良外務審議官。
 午後4時21分から同36分まで、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話会談。橋本五輪相同席。
 午後5時16分から同34分まで、ジョンソン英首相と電話会談。同54分から同6時まで、滝沢裕昭内閣情報官。
 午後6時25分から同26分まで、報道各社のインタビュー。同27分、官邸発。同36分、東京・芝公園のホテル「ザ・プリンスパークタワー東京」着。同ホテル内の宴会場「スカイバンケット」で、自民党総裁選で陣営の選対本部長を務めた小此木八郎防災担当相、事務総長を務めた山口泰明同党選対委員長らと会食。
 午後7時21分、同ホテル発。同30分、衆院第2議員会館着。
 午後8時2分、同所発。
 午後8時5分、ザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内のレストラン「ORIGAMI」で秘書官と食事。
 午後8時46分、同ホテル発。
同50分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後10時現在、同議員宿舎。

●9月24日(木)

 午前6時40分、東京・赤坂の衆院議員宿舎発。同43分、官邸着。官邸の敷地内を散歩。
 午前7時49分から同8時11分まで、国連のグテレス事務総長と電話会談。
 午前9時38分から同43分まで、西村康稔経済再生担当相。同44分から同10時2分まで、西村康稔経済財政担当相、内閣府の山崎重孝事務次官、田和宏内閣府審議官、林幸宏、籠宮信雄両政策統括官。
 午前10時58分から同11時18分まで、韓国の文在寅大統領と電話会談。同32分から同33分まで、報道各社のインタビュー。
 午前11時43分から同53分まで、藤井健志官房副長官補、黒田武一郎総務事務次官。
 午後0時31分、官邸発。同33分、衆院第2議員会館着。
 午後0時59分、同所発。同1時2分、官邸着。
 午後2時27分から同52分まで、武田良太総務相。
 午後2時53分から同3時13分まで、棚橋泰文自民党衆院議員。
 午後3時14分から同32分まで、梶山弘志経済産業相、経産省の安藤久佳事務次官、荒井勝喜総括審議官。
 午後3時49分、前田匡史国際協力銀行総裁、和泉洋人首相補佐官、四方敬之外務省経済局長、岡西康博国土交通審議官が入った。同59分、四方、岡西両氏が出た。同4時1分、前田、和泉両氏が出た。
 午後4時2分から同14分まで、林肇官房副長官補、山田重夫外務省総合外交政策局長、防衛省の岡真臣防衛政策局長、山崎幸二統合幕僚長。
 午後4時15分から同31分まで、秋葉剛男外務事務次官。同32分から同37分まで、園田修光自民党参院議員、森博幸鹿児島市長。
 午後5時3分から同17分まで、月例経済報告関係閣僚会議。同18分、和泉首相補佐官、吉田学新型コロナウイルス感染症対策推進室長、厚生労働省の樽見英樹事務次官、福島靖正医務技監、鎌田光明医薬・生活衛生局長が入った。同29分、樽見、鎌田両氏が出て、水嶋光一外務省領事局長が加わった。同53分、全員出た。
 午後6時41分、官邸発。同43分、衆院第2議員会館着。
 午後6時58分、同所発。同7時1分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急着。同ホテル内のレストラン「ORIGAMI」で西岡力麗澤大客員教授と会食。
 午後8時4分、同ホテル発。
同8分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
 午後10時現在、同議員宿舎。


〇すごいですねえ。毎日欠かさず、どころか1日2食の日まである。ここまでくると職場の延長ですね。総理のご贔屓が手伝ってか、本日昼もたいへんな賑わいでありました。そうそう、安倍前首相もお見えでありましたよ。


<9月25日>(金)

〇本日は常磐線の「ときわ」と「ひたち」を乗り継いで北茨城市へ。

〇磯原駅で降りると、ホームには「か〜ら〜す〜なぜ鳴くの〜」という音楽が流れている。ここで「カラスの勝手でしょ〜」などと返してはいけない。北茨城市は野口雨情の出身地なのである。それにしても、「かーわいい七つの子があるからよ〜♪」という七つとは何の意味なんでしょう。童謡の歌詞には、ときどきドキッとするような文句が隠れているものです。

〇そこからタクシーに乗って五浦へ。「いづら」と呼ぶのが正しいらしいが、「いつうら」と呼ぶこともあるらしい。福島県との県境に近く、出入りの多い岩石海岸には見所が多い。かつて岡倉天心がこの地に日本美術院の本拠を建てたことで知られる。本日は台風到来で、太平洋は大荒れである。「3・11」のときには津波到来で、天心が建てた六角堂が流失した。現在は復旧している。

〇本日の会場は五浦観光ホテル大観荘。「大観」とあるのは、もちろん当地で画筆を執った横山大観から来ている。去年の夏に、熱海の「大観荘」に泊まったばかりであるが、北茨城市にも大観荘があったのである。見晴らしのいい露天風呂もあって、なかなかに良さそうなところである。

〇さて、本日のクライアントは茨城県経営者協会さんで、県北地区の支部総会である。考えてみれば、常陽銀行さんや茨城新聞さんのセミナーで、茨城県内は結構、回っている方だと思っていたが、日立市より北に来るのは今回が初めてである。本日のお題はアメリカ大統領選挙。

〇とはいえ、コロナ時代のこの手の会合は大変だ。本日も会場を広く取り、ドアを開け放して換気を心掛けたりしている。そして講演会後の懇親会もなし。これはホテルにとっては辛いところだろう。大観荘は家族連れが多く来ているようだったが、いかんせん本日のような法人需要は、たいへんお久しぶりのようでした。

〇それはそれとして、また行ってみたいですな。できれば天気のいい日に。










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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)