●かんべえの不規則発言



2016年12月 







<12月1日>(木)

○今年の新語・流行語大賞が発表されました。年間大賞は「神ってる」でした。うーん、去年の「トリプルスリー」もそうだけど、流行語大賞はプロ野球を贔屓しておるようにみえますな。というか、12月1日の発表日当日に、確実に来てもらえそうな受賞者ということになると、この時期に暇なプロ野球選手になるのかもしれませんな。

○例えば小池都知事(「都民ファースト」や「盛り土」などが候補)を呼べるかと言うと、流石に本日はご多忙であったようであります。なにしろ彼女には、「日本で一番嫌われている森さんを敵に回している限り、自分の人気は安泰」という戦略がありますからな。しかしこんな風に対立の図式を作って、その分、工事が遅れるのでは関係各方面に迷惑が及ぶし、結果的にコストアップにつながるような気がしますぞ。

○それはさておいて、「神懸っている」という言葉が転じて「神ってる」になるのは、いかにも「言葉は生き物」という感じがします。「神懸り」というと、いかにもおどろおどろしい雰囲気になってしまうけど、明るいマツダスタジアムのカープ女子たちにそれはなじまない。鈴木誠也選手も今風の若者なので、やっぱり「神ってる」方が適しているのでしょう。

○ちなみに本日、不肖かんべえは仕事で茨城県鹿嶋市に行ったついでに、鹿島神宮に参拝してきました。今日のように雨の降る日にパワースポットを歩いていると、いかにも神様が上から見ているように思われて、少しだけ自分が「神ってる」ように思われたのでした。いや、別に霊験あらたかで、サヨナラホームランを打てるというわけではないのですが。


<12月2日>(金)

○IR法案ことカジノ法案が衆院の内閣委員会を通ったとか。いやあ、ホントにここまで来ましたか。まだまだ参院もあるので、先は分かりませんが、公明党が大人の対応をしてくれたということでありましょう。

○博打好き人間の端くれとして、少しでも同法案へのご理解を得たいと存じます。以前に連載していたウェブ・フォーサイト「遊民経済学への招待」で、IR法案についてこんなFAQを作りました。この問題、まことに初歩的な誤解が多いので、ギャンブル嫌いの皆様におかれましては、とりあえず以下の程度のことは知っておいた上で、ご批判をいただきたいと願うものであります。


Q:カジノを作れば、反社会組織の温床となるのではないか?

A:新たなカジノ組織は農水省傘下のJRAのように、どこかの官庁の外郭団体になるわけではなく、ラスベガスと同様な委員会方式で、民間のカジノ事業者を規制する方式が取られるだろう。ラスベガスがマフィアの影響力から脱するようになったのは、1959年にネバダ・ゲーミング・コントロール法が作られ、厳しい管理と監視が行われるようになってからである。犯罪者と犯罪組織関係者は、カジノ経営に携わるのはもちろんのこと、顧客として入場することや従業員として働くことも規制される。


Q:誰でも簡単にカジノに入れるようにするのは危険なことではないか。

A:カジノでは外国人客は無料だが、日本人客からは数千円の入場料を取る予定。ちなみにシンガポールのカジノでは、外国人はフリーパスだが国民に対しては1日8000円、年間パスだと16万円程度の入場料を課している。ひとつには、国内の既存巨大産業であるパチンコとの「棲み分け」を考えなければならないという理由がある。パチンコは日常的な庶民の娯楽(とはとても思えないのだが)、カジノは非日常感覚を楽しむ大人の道楽、という位置づけになるだろう。


Q:それでも依存症は出るのではないか。

A:2005年にシンガポール政府がカジノ導入を決定した時も、この点が最重要課題となった。そこでさまざまなセーフガード措置(未成年者の立ち入り禁止、第三者要請による顧客排除プログラム、広告の禁止、ATM設置の禁止など)がとられた。ただしギャンブル依存症はかならず出ると考えなければならない。これはカジノを認めることに伴う社会的コストの一部であるから、カジノは業界を挙げて取り組むべきである。依存症対策についてはアメリカでも多くの先行事例があり、リスクをコントロールするためのさまざまな努力が行われている。この点、日本国内で既に行われているギャンブルであるパチンコ、公営競技、宝くじなどとは対照的といえないだろうか。


Q:カジノを認めるだけで、それだけ大きな産業になるのだろうか。

A:今日のカジノ経営においては、ギャンブル以外の家族向けアトラクションも用意しなければならない。そしてお得意様に対しては、「コンプ」と呼ばれるきめ細かな割引を実施する。大きく賭けて遊んでくれるお客さんには、宿泊費や食事代はオマケしてくれる。さらには巨額な賭けをしてくれる「ハイローラー」と呼ばれる超お得意様に対しては、ジェット機での送迎に始まるVIP待遇でもてなす。今日のカジノ産業は複合的なサービステクニックの集大成であって、単なる「ギャンブルができる場所」ではなくなっている。日本でカジノを開く際には、日本ならではの付加価値を付けられるかどうかがカギとなるだろう。


○これ、誰かがかならず言い出すと思いますが、日本に投資したいと念願している最有力企業はラスベガス・サンズというカジノ運営の上場企業です。そして同社会長のシェルドン・アデルソン氏は、ドナルド・トランプ次期大統領にとって最大の支援者なんですよね。職務権限の問題がありますから、「ラスベガスサンズが大阪湾の夢洲に投資をし、そこにトランプ・カジノが誕生する」なんてことはできないでしょうけれども・・・。


<12月3日>(土)

日経CNBC全国行脚ツァーで二子玉川へ。ワシは一応「豪華ゲスト」ということになっておるのだが、そんなんでいいのだろうか。

○柏から二子玉川までは遠かった。しかもルートがほとんど無数にある。悩まないように、上野と表参道経由という、もっとも分かりやすいルートを選ぶ。1時間20分くらいかけて二子玉川駅に着いたが、周辺の施設があまりにも多く、しかも地図も不親切なものだから、なかなか会場にたどり着けない。さらに天気のいい土曜日のお昼なもんだから、イベントも多いし、人も多過ぎ。

○先日、東急グループの人と話した時に、「今沿線でいちばん活気があるのはどこですか?」と聞いたら、「そりゃあもう断然、二子玉川ですよ」と力強く言われた。内心、自由が丘とか田園調布とか中目黒といった名前を予想していたので、ふふーん、そんなに変わったのか、と驚いたものである。独身寮時代は宮前平に住んでおったので、いちおう田園都市線沿線の住民であったのだ。

○ということで、二子玉川のお客さんを相手に、トランプ次期政権とマーケットへの影響に関する見立てをあれこれ語る。とはいうものの、トランプさん自身がよくわかっていないものを、ワシらがどうやって予想すればいいのか。

○その一方で、台湾の蔡英文総統と電話会談した、なんて話が飛び込んできた。これは中南海に激震が走ったことでしょう。中台関係の現状を変えてしまいかねない行為ですからな。この報道を見ると、米台双方でいろんな下工作が行われていたようである。ちなみに共和党のプラットフォームで台湾に関する記述が長かった、という話は当欄の今年7月20日付で触れております。ご参考まで。


<12月4日>(日)

○本日は午後から群馬県太田市へ行ってまいりました。そこで聞いた「ニューイヤー駅伝」に関する噂を少々。


●群馬県庁からスタートして県南部を回り、再び県庁がゴールとなる。道路状況がよく、高低差は少なく、元日に雨や雪が降る確率もきわめて低く、駅伝にはうってつけと言える。風が強いことは、まあ、適度な試練ということで。

●県南部の主要都市を、前橋→高崎→伊勢崎→太田→桐生と反時計回りに回る。桐生市は後になってから、「やっぱりウチも入れてくれ」とねじ込んできて加わった。コースに入れない館林市や渋川市としてはあまり面白くない。

●沿道に面している広めの家に住んでいる人は、お正月になるとお友達が一杯やって来る。テレビを見ていて、「おっ、そろそろ来たぞ!」となると皆で外に出て応援する。テレビに映ると、「お前を見たぞ」というメールが入る。

●今ぐらいの時期から、練習のためにコースを走る実業団ランナーが増え始める。沿道の家は、ときどき地元の地理に明るくないランナーから、「トイレ貸してください!」と頼まれることがある。

●お正月に中継地点である市役所辺りに出かけると、街中の主要な人物が揃っているので、まとめて新年のあいさつを済ませることができる。地元の富士重工関係者などは一網打尽である。


○そうなんですよねえ。正月2日からは箱根駅伝なんだけど、お正月はニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走大会)に限ります。といっただけで、山崎パンのCMまで思い浮かんでしまう。TBSにとってはまことにありがたい番組じゃないかと思います。

○芸能人がいっぱい出てくるようなバラエティ番組が苦手な一家としては、正月三が日の昼間は駅伝に限りますよねえ。どこを応援しているわけでもないのに、つい見てしまいます。箱根と違って、変にナショナリスティックにならないところも好感が持てます。

○ナショナリスティックといえば、本日のイタリアの国民投票とオーストリアの大統領選挙はどうなるんでしょう。Brexitやトランプの時と違って、皆さん心の準備ができているから、サプライズということはないと思いますが。


<12月5日>(月)

○ふと思いついたのですが、カジノ法案が通るということは、解散はしばらく先になるのではないでしょうかね。

○とりあえず公明党さんは、来年6月の都議会選挙が最優先で、その前後3カ月間の選挙は止めてくれ、と言ってるらしい。そこで自民党側が、わかりましたよ、来年の秋以降にするから、その代わりにこっちの要望も聞いてくださいよ、とねじ込んだのがカジノ法案だったのではないか。そこで公明党としては、大人の対応をした。

○今の幹事長は観光族であるし、官房長官は地元横浜にIRを誘致したい。そして維新の会はもとよりカジノ賛成です。大阪の自治体におカネが落ちるし。実は民進党内にもカジノ賛成派議員は大勢いるのですが、今は声を潜めているようです。

○解散が先に延びるということは、対ロ関係であまり大きな前進が期待できそうにない、という現状とも整合性がある。そりゃあプーチンさんの身になって考えてみれば、ヒラリー・クリントン政権は究極の反ロ政権になるけど、ドナルド・トランプ政権ならば当面は高みの見物だからね。

○そうかと思ったら、安倍さんが真珠湾に行くと言い出した。明後日12月7日は真珠湾攻撃75周年なんですが、そういう特別の日ではなくて、ごく普通の日に行く。オバマさんは当然、付き合ってくれます。ご自分の地元だしね。これって、「悪いなあ、先日はトランプさんのところへ駈け込んじゃったけれど、けっしてアンタのことを忘れたわけじゃないからね。いろいろあって、俺も辛いのよ」というフォローかもしれませんな。

○まあ、考え過ぎかもしれませんけれども、こういう機微は面白いですな。










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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)