●かんべえの不規則発言



2017年10月 






<10月10日>(火)

○本日、衆院選が公示になりました。とりあえず現時点の予想を書いておきましょう。

自民党 260
公明党 35
希望の党 75
立憲民主党 30
維新の会 15
共産党 20
社民党
新党大地
諸派・無所属 27
合計 465


○さて、どんな結果になりますか。投票率は6割前後を想定しております。


<10月11日>(水)

○突然ではございますが、本日から選挙モードの日本を離れ、モスクワに参ります。と言っても、昨日までは選挙予測や中国関連の書き物ばかりしていたので、ロシアの勉強と準備は機内が勝負です。こうやって一夜漬けの連続で日々が過ぎて行く。まあ、たまには映画でも見たいところなんだけど。

○天気予報は晴れだったけど、今日の成田空港は霧が立ち込めています。ちゃんと飛んでくれるといいけどねえ。ちなみにモスクワの気温は6度くらいですって。ぷるるるる。では行ってきます。(9:31am)

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○10時間かけて、やってまいりましたモスクワへ。日ロ専門家会議に出るのは今回が3回目。2013年、2015年と出ているのだが、秋の季節のモスクワは初めて。さすがにまだ雪は降っておりませぬ。紅葉の季節のモスクワです。

○午前10時台に日本を離れて、午後3時頃に到着する、というのは、海外出張としては破格に楽な形です。しかるにモスクワまでは名物の渋滞が待ち受けておりまして、やっぱり2時間はかかりましたなあ。平日の夕方は仕方ないのかなと思ったら、地元に詳しい人の解説によれば、「これはVIPのために通行規制をやっているせいじゃないか」と。

○街の景色は過去2回に比べると良くなっているような気がします。まあ、経済制裁には慣れっこになっているし、石油価格の底入れがありますからね。それから空港では入国カードが不要になっていました。IT化が進んでいるのでしょう。と言いつつ、しっかり入国審査では待たされたのですが。

○時差はこちらが6時間遅れなので、肉体的にはわりと楽です。とにかく酒飲んで寝ちまえばいいのですから。とりあえずホテルで食べたビーフストロガノフは美味でありました。さあ、明日のために今日は寝よう。


<10月12日>(木)

○今朝のモスクワは雨である。雪のモスクワは覚えがあるが、雨は初めてである。何のこれしき、とは思うけれども、ロシア人も皆傘をさして歩いている。ということで、ワシも折りたたみの傘を使って出動する。

○日ロ専門家会議、第1日目。カーネギーセンターに到着してみると、会議室は2年前と同じなのだが、同時通訳の設備が使えなかったりして、どうも話が違う。ロシア側、あんまりやる気がないように見える。それでも北朝鮮問題や中ロ関係をめぐって討議していると、双方からどぎつい発言が飛び交う。いいですねえ。この感じ。

○ロシアの会議では、パワポとかレジュメといったものが出てこない。ただただ口頭のプレゼンテーションが続く。しかも皆さん発言が長めである。資料の準備に時間のかかる会議が多い昨今、これもいっそすがすがしい気がする。本来、国際会議というものはこんな風であるべきではないのか。

○日本にはときどき、講演会の2週間前にパワポの資料を送れというクライアントがおる。理由を聞いたら印刷のためだなどとぬかす。いまどき、どういう印刷会社を使っておるのか。当方、政治経済というナマモノを扱う寿司職人のようなものなので、これを言われるとテキメンにモチベーションが低下する。ほんの2〜3日で世の中変わるんですよ。

○とまあ、遠慮のない応酬があって、夜はノミニュケーションがあって、一日が終わる。時差があるので、午後6時を過ぎると眠くなる。ああ、今は午後9時を過ぎたところだが、体内時計は午前3時である。これで休むと、また早朝に目が覚めてしまう。仕方がないのう。


<10月13日>(金)

○今日のモスクワは曇天。時折小雨。日ロ専門家会議の2日目。今日のテーマは日ロ協力で、発表者はワシ。日ロは共に貿易立国で、自由貿易に利益があるのだから、ご一緒に経済ナショナリズムに反撃しましょう、てなことを申し上げる。反応は鈍かったような気がするなあ。

○昨日、新聞各社が一斉に総選挙の予想を発表し、「与党300議席の勢い」という知らせが入ったら、当地の日ロ関係者の間には安堵感のようなものが流れている。だって安倍さんが下野してしまったら、プーチン大統領と積み上げてきた関係がいきなり吹っ飛んでしまう。ご両人の首脳会談は先月の東方経済フォーラムで19回目、来月はAPECか東アジアサミットで20回目が行われる見込みである。

○ただしこの関係、日本側は政治的な過剰期待があり(領土が返って来るんじゃないか)、ロシア側には経済的な過剰期待がある(日本が大型投資をしてくれるんじゃないか)。どちらも現実的ではない。去年の山口での会談以降、日ロ関係には一種の閉塞感が漂い始めている。両首脳にとっては、果たして日露関係はアセットなのか、ライアビリティなのか。

○日本側には「2018年3月にプーチンが再選されたら、すぐにでも領土問題で柔軟姿勢を見せてくれるんじゃないか」という期待感がある。が、そもそもプーチンは立候補宣言さえしていない。再選されたら好きなことができる、というのはアメリカ大統領の話で、ロシアに通じるかどうかはわからない。極端な話、レイムダック化するかもしれない。

○他方、ロシア側には「サハリンと北海道を橋で結ぼう」みたいな法螺話があるとのこと。そんなこと言ったって、サハリンは人口49万人と言うから、採算がとれるとはとても思われない。対ロ支援8項目が、医療とか都市づくりとか生活重視になっているのは、人口減少に直面する日ロ両国にとって、正しい方向であると言えよう。サハリンとの橋なんて、「一帯一路」でやってくれませんかね。

○私見ながら、安倍さんの対ロ外交はいわば「道楽」みたいなものだ。領土が戻る確率はもとより低い。そして対ロ支援と言っても、今のところたいしたコストをかけているわけでもない。だったら、「やってみなはれ」でいいではないか。安倍=プーチン関係は、日本外交としてもめずらしいケースである。もう少しくらい様子を見ても悪くはないだろう。

○日本にとっては対米、対中関係の方が重要であるし、今は北朝鮮問題もある。ロシアは必要欠くべからざるカードというわけではない。が、「選択肢があることはそれだけで望ましい」(ロバート・ルービン)。特に今のように先行きが不透明なときはね。


<10月14日>(土)

○モスクワ3日目。今日も雨である。

○今回宿泊しているマリオットホテルは、インド人のお客さんが大勢宿泊している。午前8時を過ぎると、朝食会場のカフェは見渡す限りインド人ばかりとなる。ということで、少数派の日本人としては早めにカフェに行って、そそくさと食事を終わらせる。街へ出かければ中国人観光客が多いので、当地の日本人は「中国からか?」と声をかけられることが多いのだそうだ。はからずもモスクワ市内で、BRICSパワーを見せつけられることになる。われわれがいかに先進国中心で世界を見ているか、を痛感する。

○会議終了後に市内の中心部を散歩する。ボリショイバレエ劇場はどえらい建物である。「ボリショイ」とは「大きい」の意味なんだそうだ。100ルーブル紙幣にも使われている建物だが、最近、改装工事が終わったとのことで、見た目も非常に新しい。はて、経済制裁中のロシアは、そんなことをする余裕があったのだろうか。というか、街の景色は明らかに2年前に訪れた時に比べて明るくなっている。景気は最悪期を脱している、というのは今週発表されたIMFのWEO(世界経済見通し)にも出ていた通りである。

○赤の広場に出る。レーニン廟、ワシリイ寺院など、いつもの光景。以前に来たときは雪景色であったが、今日は雨の中である。ここにクレムリン宮殿が接している、というのはつくづく不思議な光景で、プーチン大統領はこの観光地のすぐ隣で執務していることになる。考えてみれば、ソ連以来の歴代の指導者がそうだったわけで、1985年に西独青年のルフトくんがセスナ機でここに着陸したとき、ゴルバチョフ書記長はおったまげたことだろう。青年のいたずら心がペレストロイカを後押しした。しかるにその時、ソ連帝国は「陽だまりの樹」のような状態にあったのだ。

○帰りは地下鉄に乗ってみる。するとこの地下鉄がまことに深い。国会議事堂前駅よりも深くて錯綜している。車両は古めだが、構内は思ってよりも綺麗であり、庶民の足として使われているようだ。でも、やっぱり核シェルターを兼ねているんだろうねえ、などと言いつつ、2駅だけ乗ってホテルへ帰る。

○そうそう、昨晩はグルジア料理の店へ行って、グルジアワインを堪能した。確かロシアはグルジアを制裁していて、ワインも禁輸になっていたはずなのだが、大手を振って営業している。つくづく経済制裁というものはしり抜けになってしまうものらしい。ところでこの国名、本当はジョージアと呼ばなければらない。でもジョージアなんていうと、コカコーラ社のブランドみたいである。つい最近、ジョージアを取材した記者によると、メシもワインも現地の方がはるかに旨いのだそうだ。

○さて、本日はこれからモスクワの日本大使公邸にお伺いする。これが今回の出張で最後の日程である。そろそろ頭の中の整理をしなければならないのだが、帰りの飛行機の中ででも考えることにしよう。


<10月15日>(日)

○先ほど出張の全行程を終えて、またまた交通渋滞の中を2時間揺られて(ワシは爆睡していたが)、まるで新興国としか思えないようなドモジェドボ空港の喧騒をすり抜けて、現在JAL機上の人となっております。

○そこで先ほど機内Wi-Fiにつないで、上海馬券王先生の原稿を更新したところ。いやあ、不思議な時代ですなあ。本日の京都競馬場の予想を、バンコクに居る馬券王先生が書いて、メールで受け取ってロシア上空で更新してしまうとは。それぞれ時差もあるというのに。いまどき普通のことなのかもしれませんが、ちょっと感動しています。

○ということで、あと10時間弱で日本に戻ります。このところANAの旅が続いていたけれども、JALもなかなか良いですな。あ、ビールが来た。しばしネットは中断である。(0:16)

++++++++++++++++++++

○ということで、無事に帰ってまいりました。成田空港に着いてみたら、こちらも雨ですなあ。日曜日の朝だけあって、着陸からゲートをくぐるまではあっという間でした。どこへ行っても時間がかかるロシア式を味わった後では、これがなかなかにホッとするものがあります。ああ、やっと先進国に帰ってきた、との感あり。

○つくづくロシアは不思議な国であります。けっして快適ではないのだけれども、われわれとは違う価値観の下で運営されている。経済性よりも安全保障重視。調子は狂うけれども、どこか気づかされるところがある。さて、明日からは普通に仕事に戻ります。


<10月16日>(月)

○日本に帰ってきたら、モスクワの続きのような雨と寒さである。が、所詮寒さはモスクワ程ではない。こんな日に講演の予定がダブルヘッダーで入っていて、本日は内外情勢調査会の仕事で栃木県足利市と佐野市へ。2004年5月に行って以来である。

○前回行った際には、「あしかがフラワーパーク」に連れて行ってもらい、ちょうど藤の花が満開であったことを覚えている。今はイルミネーションが評判になっているのだとか。当地もご多分に漏れず、インバウンドが活況を呈していて、今度、JRりょうもう線に新しい駅ができるというから驚きである。フラワーパークの社長さんが来ていたので、いろいろ話を伺う。

○観光地にとって昨今のような雨は天敵である。今年は特に8月の長雨が痛かった。ところが「あしかがフラワーパーク」みたいに評判になると、それが目的で外国から来たお客さんなどは、雨が降っても「せっかくここまで来たからには」と予定通り来てくれる。そりゃそうですわな。ワシも石見銀山に行ったけど、「雨だから」といって帰りはしなかったもの。ブランド価値ができるということは、雨でも来てくれるお客さんを作るということ、なんだそうだ。ちょっといい話である。

○佐野市は「さのまる」というゆるキャラが評判をいただいている。佐野市教育長さんの名刺にも刷られているのがちょっとかわいい。うーん、都内でどこか佐野ラーメンが食べられるところはないかしらん。


<10月17日>(火)

○日本に帰ってきたら、自宅でビール、自宅でワインが最高のぜいたくというもの。ところがですな、家で見るテレビの野球中継が哀しいことになっている。

○日曜日に甲子園の「泥試合」を見た瞬間に、今日はこんな風になるだろうなあ〜と思っておりました。2005年の日本シリーズ、ロッテと対戦したタイガースは初戦を10対1で落とし(エース井川が滅多打ちだった)、そのまま第2試合は10対0、第3試合は10対1、第4試合は3対2で、なすすべもなくズルズルと土俵を割ったのである。案の定、阪神はクライマックスシリーズでDeNAに敗れ去りました。あ〜あ。

○どうしてこう、阪神タイガースはシーズン終了後に崩れるという悪しきDNAがあるんですかねえ。今回は雨天に対する金本監督の対応(雨天コールドを予測して早めに動いた)ことが裏目に出たわけです。指揮官のミスが流れを変える。まあ、あんまり責められませんけど。つくづく短期決戦は難しい。ちょっとしたボタンのかけ違いが命取りになったりするのです。

○なんかこう、「希望の党」のあまりにも早い失速を見ているような思いもいたします。小池さんを責めるのは簡単だけど、こうなるのは必然だったような気もする。重なって見えるのはなぜだろう。

○それにしても甲子園は偉大な球場だと思います。日曜日に田んぼみたいになったグラウンドが、ちゃんと普通に戻るのですから。ああ、永遠なれ阪神タイガースと甲子園球場。


<10月18日>(水)

●首相、トランプ氏とゴルフも 来月5日、翌日に首脳会談(朝日新聞デジタル)

2017年10月18日05時30分

 トランプ米大統領が11月5日に来日した際、安倍晋三首相と「霞ケ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)でゴルフをする方向で調整していることがわかった。プロゴルフ選手も同席する見通しだ。6日には首脳会談を行う予定。

 複数の日本政府関係者が明らかにした。プレー後の5日夜には非公式の夕食会を開き、首脳間の信頼を深める機会とする考えだ。同ゴルフ場は1929年開場で政財界に多くの会員を持ち、2020年東京五輪のゴルフ会場になっている。

 安倍首相は昨年11月、大統領就任前のトランプ氏と会談した際、ゴルフクラブを贈呈。今年2月の訪米時にはトランプ氏所有のコースで、計約5時間にわたり共にプレーした。この時に世界情勢についてトランプ氏と長時間語り合ったことが、現在の首脳間の親密な関係につながったとの思いがあり、今回も「ゴルフ外交」を重視している。

 日米首脳同士のゴルフは、安倍首相の祖父・岸信介元首相がアイゼンハワー大統領と1957年にプレーした例がある。

 これに関連し、野上浩太郎官房副長官は17日の会見で、トランプ氏が来月5〜7日に来日すると発表した。首脳会談や北朝鮮による拉致被害者の家族との面会などが予定されている。(小野甲太郎)



○あーら、やっぱりやるんだ、日米ゴルフ。それにしても霞ヶ関カンツリーって、女人禁制じゃなかったかしらん。オリンピックに合わせてルールを変更すると言ってたけど、それじゃあ小池百合子さんを呼べないじゃないですか。プロゴルファーと言うのは、松山英樹さんですかね。都内から川越までの導線とセキュリティはどうするのかな、などと疑問は絶えず。

○今週末の総選挙では、希望の党と立憲民主党のどちらが野党第一党になるかが注目点だと思います。@前者の場合、与党が財政規律を意識するようになる。なにしろ「ワイズスペンディング」ですから。他方、安倍首相は憲法改正に傾斜してしまうかもしれない。A後者の場合、与党が「とりあえず補正予算でもやっとくか」てなことになる一方、憲法改正へのハードルはちょっとだけ上がる。さて、マーケット的にはどちらがいいのか。

○もっとも希望の党は、選挙後に「学級崩壊」になっちゃうかもしれません。小池さんのリーダーシップも、元民進党議員たちのフォロワーシップも両方とも怪しいですからね。さらに無所属からの当選組が2つの党のどちらに向かうのか、てなことも不確定要素です。個人的には、野田佳彦さんや岡田克也さんは「栄光ある孤立」を選んでほしいと思いますけどね。

○世間は「思い切り持ち上げた後は落とす」もの。小池さんはまさにそうでした。そうなると次は枝野さんの番ですからね。選挙まではまだ三日もある。ご用心なさいませ。











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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)