<10月18日>(金)
〇わが国の総選挙も気にはなるのですが、米大統領選挙もしっかりウォッチしなければならない。と言っても、どっちが勝つかさえ見通すことは難しい。本日分の溜池通信は、かなり苦しいなあ〜と思いながら書いております。
〇とはいうものの、「いったいどうなるんだ!?」という声は少なくありません。特にマーケット関係者のニーズは高いんじゃないかと思います。そこでこんなセミナーのご案内。
●【WEB】米国大統領選挙
投開票日直前スペシャル『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』
〇主催者はマネースクエアさん、11月2日(土)13時からとなります。
セミナータイトル | 【WEB】米国大統領選挙 投開票日直前スペシャル『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』 |
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レベル | 初級〜中級 |
日時 | 11/2(土) 13:00 〜 16:10 ( 受付開始 12:45 ) |
会場 | お手持ちのPC、スマートフォン、タブレット |
参加条件 | どなたでもご参加いただけます。 |
案内事項 | YouTube Live によるWEBセミナーです。 |
講師 | 双日総合研究所チーフエコノミスト
吉崎 達彦 氏 現役ファンドマネージャー 西山 孝四郎 氏 マネースクエア 西田 明弘、津田 隆光、八代 和也、尾 和秀、奥谷 龍生 |
参加費 | 無料 |
〇皆様のご参加をお待ち申し上げております。
<10月20日>(日)
「最近、知らない人に話しかけるってことがなくなりましたねえ」
〇先日、なぜかそんな話になった。知らない場所で誰かに道を尋ねる、なんてことはめっきり減った。道は他人に聞くよりも、スマホに聞く方が早い。ちょっと古い映画の中では、「煙草の火を貸してくださらんか」などというやり取りがあって、見知らぬ同士の会話が始まる、なんてシーンが普通にあった。今ではいろんな意味で、「あり得ない」ことになってしまいましたが。
〇電車の中で、たまたま隣になった人と話がはずむ、なんてこともなくなった。今では電車の中では皆がスマホを睨んでいて、そのうちかなりの部分がメールやLINEなどで「誰か自分が知っている人」と会話している。今ではおそらく、「知らない人に話しかけるのはリスクが高い行為」と思われている。若い人が電話を取るのを嫌がる、というのも、たぶんその辺に理由があるのではないかと思う。
〇ただし、ほんのちょっと前までは、そんなことはなかったのである。道に迷ったら、その辺の人を適当に捕まえて聞くしかなかった。「フーテンの寅さん」みたいに、やたらと人懐っこい(馴れ馴れしい)人も周囲にはたくさんいた。それから飛行機や電車の中で、隣り合わせた人とあれこれ話し込む、なんてこともごく普通のことであった。
〇そこで突然思い出したのだが、国際線の中で隣の席のアメリカ人と仲良くなったことがある。こちらは日本に帰る途中で、向こうは生まれて初めて東京に出張する、というところであった。あいにくなことに、話の中身はほとんど覚えていない.。
〇別れ際に、「じゃあ、記念にこれを」と言って、一枚のテレホンカードを手渡した。当時はまだそんなものが流行っていて、ワシは普段から何枚もテレカをため込んでいて、ときどき「これあげる」とやっていた。そのときもごく自然にそうしたのであった。
〇するとしばらくたって、会社に手紙が届いた(ということは、たぶん名刺交換をしていたのであろう)。手紙によると、当人は成田空港から新宿まで移動して、そこで約束の相手と会うことになっていた。ところが刻限になっても相手が現れない。初めての異国でパニックになりかけたが、あなたにもらったテレホンカードのお陰で、なんとか相手と連絡をとることができた。いや、助かった。どうもありがとう、てなことが書いてあった。
〇いわゆる「ちょっといい話」なのだが、ケータイがなかった頃はみんなそんな風にしていた。たかだか30年くらい前のことである。この経験、世代が違うとまったく通じないんだろうな。いや、どうかすると自分でも全く忘れていたくらいなので。
<10月21日>(月)
〇しょっちゅうRCPをご覧になっている方は、既にお気づきのことと存じます。
●Top
Battlegrounds RCP Average 〜7つの激戦州全てでトランプ氏がハリス氏をリードしている。(0.2〜1.8p差)
●Betting
Odds 2024 U.S. President 〜賭け事の対象としても、現在はトランプ氏59.0対ハリス氏39.8と差が開いている。
〇いずれも今月になって、急に差が開いているのですよね。これをもって「やっぱり『ほぼトラ』だ」という声がポツポツ聞こえてくるようになりました。「カマラはとうとうボロが出た」みたいな解説も耳にします。さて、この動きをどう見たらいいのか。
〇「カマラはアル・スミスのチャリティ晩さん会に出てこない。やっぱりジョークに自信がないんだろう」なんてニュースを耳にします。そうかと思うと、「トランプはもうボケている。集会の途中に音楽を流したそうだ」てな声も聞こえてくる。まあ、選挙戦というものは、終盤戦になるとあられもないうわさが飛び交うもんです。今はちょうどそんな時間帯だと思います。
〇ということで、全然理屈になっていないんですけど、ワシの本能は「こんなデータは信じちゃいかん!」と告げております。「7つのサイコロを投げて出た目で決まる勝負」=「予測できるはずがない」というのが正しい見方だと思うのです。
〇投票日まであと2週間ちょっと、という現在は「危ない時間帯」です。何か情報を得てホッとしたい、信じられるものに出会いたい、と思っている時に、得てして耳にやさしいノイズがやってくるものです。いやもう、嫌な予感しかしない。トランプ氏がリードした状態で投票日を迎える、ということ自体が「なんか変」。認知的不協和を感じるところです。
<10月22日>(火)
〇本日からロシアのカザンにおいてBRICS首脳会議が始まりました。「ブラジル・ロシア・インド・中国・南ア」の5カ国に加え、今年から「イラン・エジプト・UAE・エチオピア」の4カ国が新たに加盟します。併せてロシア近隣国も招待を受けているので、かなりの数の国が集まると見られています。
〇ただし新たに加わる予定であったサウジアラビアは、土壇場で参加を回避した模様。たぶん「アメリカは次はトランプ政権かもしれないしな」(そっちの方が美味しい思いができるかも)てなことで、様子見に転じたのでしょう。イスラエルも似たようなことを考えている節があり、「バイデンを相手に急いで妥協することはないよな」てな思惑が見え隠れします。ひょっとするとクシュナーが中東で暗躍していたりして。
〇ともあれ、BRICSは今年で9カ国に拡大し、ますます広がっていくかもしれません。とはいうものの、こういう枠組みは「広がっちゃうと、薄まってしまう」のもよくある話で、G7がG7としてまとまっているのは、「新しい加盟国を増やさないから」という見方もできる。「グローバルサウス」なんて言葉はその典型で、猫も杓子も「グローバルサウス」を自称するものだから、輪郭がぼやけたものとなりつつある。
〇議長国のロシアとしては、「先進国何するものぞ」という姿勢を打ち出したいのでしょう。とはいえ、これで米ドル離れができるか、SWIFTの代替システムができあがるか、というとそこは大いに怪しい。まして「BRICS共通通貨」なんて完全にお笑い種です。EUの統一通貨ユーロでさえ、あれだけの試練をかいくぐってきたわけでありますから。
〇そんなことより、ロシアにとって来年は鬼門となるんじゃないかと思う。対ウクライナ戦争でいよいよ動員が出来なくなって、囚人を駆り出すだけでは足りなくなり、とうとう北朝鮮の兵士を借りる、なんてことに手を出した。これで北朝鮮軍の兵士がウクライナで捕虜になったり、敵前逃亡して亡命したらどうするんだろう。ロシアでは今でも「特別軍事作戦」という建付けなんだから、いよいよ兵士が足りなくなるのではないかと。
〇ウクライナ戦争は来年でとうとう3年目。双方ともに継戦能力の限界に近づきあるんじゃないだろうか。2025年はどうやって戦争を終わらせるか、という難問が浮上する年になるのではないかなあ、という気がしております。
<10月23日>(水)
〇本日をもって宗旨替えをいたしました。昨日までは、「どちらが勝つかわかりません」と言っておりましたが、今日からは「データを素直に読めば、トランプさんの勝ちになります」に替えました。もちろん米大統領選挙の予想についてです。それくらい、ここ1週間の世論調査データの変化は急なものがあります。ハリスさんは失速気味です。
〇2016年や2020年の選挙においては、「隠れトランプ票」の存在が確認されました。結果が出てみたらトランプ票は、明らかに世論調査よりも数ポイント高かったのです。そのために2016年はサプライズの結果になりましたし、2020年もいくつかの激戦州で「あわや」と思わせるほどの粘り腰を見せたものです。
〇この「隠れトランプ票」は、2018年や2022年の中間選挙では確認できません。これらの選挙はだいたい世論調査通りの結果が出ました。それでは2024年の米大統領選挙において、「隠れトランプ票」は残っているのか、と尋ねられたら、誠実な答えは「わからない」であります。
〇共和党の予備選なんかを見ている感じだと、もはや人々は「トランプ支持」であることを隠そうとはしておらず、現状の世論調査は正しく民意を反映しているのではないか、と思われてなりません。とはいえ、「隠れトランプ票」が激戦7州でそれぞれの人口の1%でもあると仮定したら、これは結構なリードにつながります。なんとなれば、RCPのTop
Battleground Averageでは、7つの州全てでトランプさんがリードしてますので。
〇現状のRCPデータが正しいのであれば、この「隠れトランプ票」を味方につけたトランプ氏はかなりの差をつけてハリス氏に勝つことも可能でありましょう。それこそ民主党員が涙目になって、「2028年はどうやって戦えばいいのか?」と絶叫するような結果になることだってあり得ます。そりゃあね、3回連続で共和党の大統領候補になったトランプさんに対し、勝てたのはバイデンさんの1勝だけで、後はヒラリーさんとハリスさんの2敗となるわけですから。
〇そんなわけで、2週間後にどんな結果が出るかはまだ読めませんけれども、データを普通に読めばトランプさん再選だよね、ということになります。マーケットは既に先取りを始めているようでもあり、現在の円安の一部はそれが理由かもしれませんな。
<10月24日>(木)
〇朝からヒーコラ言いながら、今週分の東洋経済オンライン原稿を書く。テーマは今週末の総選挙と間近に迫った米大統領選挙について。ああ、悩ましい。
〇脱稿して、夕方からストリート・インサイツさん主催の錦秋の会へ。この時期、暑くなく寒くなく、屋外でビールを飲みながら、集まりし多士済々とともに語り明かすにはまことにいいタイミングである。そういえば来週のアレ、よろしくお願いしますとか、総選挙、ホンネの話、どうなりますかねえとか、ここだけの話、米大統領選に対する「答え合わせ」とか。
〇こんな風に面白い人たちと楽しいお酒が飲めることこそ、人生最大の歓びというものであります。でもって、こんなところで今日書いた原稿の補強材料をもらったな、とか、明日の会合はこんな風にやらなきゃいかんかな、などと軌道修正を図るのである。
〇われながらまことにいい加減に思えるけど、ワシの仕事の大半はこんな流儀で行われている。秋の夜長に乾杯。
<10月26日>(土)
〇本日、公開された東洋経済オンラインの原稿はこちら。
●日米の世論調査はいったいどこまで正しいのか
〇読者の方から教わりましたが、前回の2021年衆院選についてはこんな研究があるのですね。
●2021年衆院選の選挙予測のパフォーマンス比較
〇さらに世論調査について、こんなすごいサイトがあることを知りました。
●YORON Research
〇いやーすごいなー。知らなかったことがいっぱい書いてある。後でちょっとずつ勉強させていただこう。
〇本日は義理のある会合を欠席しておる。選挙の前日なんだから、応援に行きたい候補者もいるのであるが(ご近所の斎藤健さんなど)、締め切りが迫った原稿があり、来週の資料も作らねばならない。仕方がないから、せっせと家で作業するのである。ああ、ワシはいつまでこんなことをやっているんだろう。
〇そんな中で、ワールドシリーズ第1戦が行われて、今日はドジャースがヤンキースをサヨナラ勝ちで破る。いいですなあ。野球がとっても野球らしく思える瞬間である。さて、今宵は日本シリーズも始まるのでありますな。こっちはビールでも飲みながら見たいものである。
<10月27日>(日)
〇本日は「ワールドシリーズが始まる前に」ということで、朝9時台に投票所に行ってきました。「230番目」というのは、出足がいいのやら悪いのやら。とりあえず投票率はあんまり高くはならんのかな、という気がします。
〇「自民党が大敗するらしい」という噂が飛び交っているので、こんな表を作ってみました。こうやって過去と比較すると、明日の朝になって負け具合の「相場勘」が掴みやすいかと思って。やはり歴史は大切にしなければなりません。
回 | 総選挙期日 | 備考 | 内閣 | 命名 | 定数 | 投票率 | 投票結果 |
35 | 1979/10/7 | 第1次大平内閣 | 増税解散 | 511 | 68.01 | 自民248、社会107、公明57、共産39、民社35、その他25 | |
36 | 1980/6/22 | *不信任成立/ダブル選挙 | 第2次大平内閣 | ハプニング解散 | 511 | 74.57 | 自民284、社会107、公明33、民社32、共産29、新自ク12、その他14 |
37 | 1983/12/18 | 第1次中曽根内閣 | 田中判決解散 | 511 | 67.94 | 自民250、社会127、公明58、民社38、共産26、新自ク8、その他19 | |
38 | 1986/7/6 | *ダブル選挙 | 第2次中曽根内閣 | 死んだふり解散 | 512 | 71.40 | 自民300、社会85、公明56、民社26、共産26、新自ク6、その他13 |
39 | 1990/2/18 | 第1次海部内閣 | 消費税解散 | 512 | 73.31 | 自民275、社会136、公明45、共産16、民社14、その他26 | |
40 | 1993/7/18 | *内閣不信任 | 宮澤内閣 | 政治改革解散 | 511 | 67.26 | 自民223、社会70、新生55、公明51、日新35、民社15、さき13、共産15、その他34 |
41 | 1996/10/20 | *小選挙区制 | 橋本内閣 | 小選挙区解散 | 500 | 59.65 | 自民239、社民15、さき2、新進156、民主52、共産26、その他10 |
42 | 2000/6/25 | *比例20議席減 | 森内閣 | 神の国解散 | 480 | 62.49 | 自民233、公明31、保守7、民主127、自由22、共産20、社民19、その他21 |
43 | 2003/11/9 | 第1次小泉内閣 | マニフェスト解散 | 480 | 59.86 | 自民237、公明34、保守新4、民主177、共産9、社民6、その他13 | |
44 | 2005/9/11 | 第2次小泉内閣 | 郵政解散 | 480 | 62.49 | 自民296、公明31、民主113、共産9、社民7、国民新4、その他20 | |
45 | 2009/8/30 | 麻生内閣 | 政権選択解散 | 480 | 69.28 | 自民119、公明21、民主308、共産9、社民7、みんな5、その他11 | |
46 | 2012/12/16 | 野田内閣 | 近いうち解散 | 480 | 59.32 | 自民294、公明31、民主57、維新54、みんな18、未来9、共産8、その他8 | |
47 | 2014/12/14 | *0増5減 | 第2次安倍内閣 | アベノミクス解散 | 475 | 52.66 | 自民291、公明35、民主73、維新41、共産21、その他14 |
48 | 2017/10/22 | *0増6減 | 第3次安倍内閣 | 国難突破解散 | 465 | 53.68 | 自民284、公明29、立民55、希望50、共産12、維新11、その他24 |
49 | 2021/10/31 | 第1次岸田内閣 | 未来選択解散 | 465 | 55.93 | 自民261、公明32、立民96、維新41、国民11、共産10、その他14 | |
50 | 2024/10/27 | *10増10減 | 石破内閣 | 日本創生解散 | 465 | 53.84 | 自民191、公明25、立民148、維新38、国民28、共産8、その他27 |
〇最近、何かと話題の「40日抗争」があった1979年からにしました。
〇この年は自民党が大負けした。とはいえ、511議席中の248議席なので、単独過半数は割れているけれども、今の感覚ならそんなに大騒ぎする程のことはない。ただし「天の声にも変な声がある」で福田赳夫首相が退任した後だったから、大平首相に敗戦の責任を問う党内の声は強かった。大平派+田中派の主流派に対し、福田派+中曽根派+三木派+中川Gの反主流派の対立はどんどん先鋭化する。
〇憲法54条は「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない」と規定している。今年の場合だと年内の政治日程が窮屈なので、たぶん11月7日か8日には特別国会が召集されるだろう。ところが1979年は「首相候補が一本化できなくて」国会を開会できなかった。10月30日に一応召集はしたのだが、首班指名をしないで閉会するという異常な事態となる。
〇それからも延々と党内抗争が続く。いやもう、凄いエネルギーである。1979年という年は、ソニーがウォークマンを発売したり、「江夏の21球」があったり、「ファーストガンダム」が放送されたりと、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(1979年刊行)と呼ばれるにふさわしいくらい日本経済が元気いっぱいな年なのだが、「経済は一流、政治は三流」(こんなことを言っていられた当時が懐かしい)を地で行くような情けない抗争が繰り広げられる。
〇11月6日にはようやく首班指名選挙が行われるが、同じ自民党から大平正芳と福田赳夫が両方出馬してしまう。もちろんどちらも過半数を得ることはできず、最後は野党を退けた決選投票となり、結局17票差で大平が勝った。大平首相は新自由クラブとの連立を模索するが、結局は11月20日に断念して第2次大平内閣が発足する。これが「40日抗争」の顛末である。
〇いやもう、なんという恥ずかしいことをやっていたのか。なおかつ反主流派の怨念は止まず、翌年にはハプニング解散を招いてしまう。なんと与党議員が大量欠席している間に野党の内閣不信任案が成立してしまい、選挙戦の最中に大平首相は憤死を遂げてしまう。結果は自民党の大勝利(284議席)。いやはや、昭和のオヤジたちのパワーはすごいのだ。
〇いや、何が言いたいかというと、世間には「自民党は大負けして2つに割れるかもしれない」などと嬉しそうに言っている人を見かけるけど、角福戦争当時のようなすさまじいエネルギーが今の自民党にありますか?とお尋ねしたい。もうね、軽々しく「40日抗争の歴史もある」なんて言ってほしくない。ちなみに1979年は、日本が初めてG7議長国を務めた年である。その頃ならば、こんな内紛を続けている余裕もあったんですけどねえ。
〇ということで、静かな心持ちで今宵の選挙速報を見たいと思います。
<10月28日>(月)
〇昨日の表に、今朝、結果を赤字で書き込みをした瞬間に、「ははん、やっぱりね!」と感じました。投票率が3年前を下回っている。ということは、今年の総選挙は2009年のように、無党派層が大挙して投票所に押し寄せたわけではない。むしろ自民党の岩盤支持層が石破政権にそっぽを向いてしまったので、それで崩れてしまったという構図なのだろう。つまり足し算ではなくて、引き算の選挙であった。
〇その証拠に、溜池通信の毎度名物、比例得票数の推移をご覧あれ。過去5回分と比較するとよくわかりますぞ。
2024年 衆院選 |
% | 2021年 衆院選 |
% | 2017年 衆院選 |
% | 2014年 衆院選 |
% | 2012年 衆院選 |
% | 2009年 衆院選 |
% | ||
自民党 | 14,581,690 | 26.63 | 19,914,883 | 34.66 | 18,555,717 | 33.28 | 17,658,916 | 33.11 | 16,623,542 | 27.62 | 18,810,217 | 26.73 | 自民党 |
公明党 | 5,964,415 | 10.89 | 7,114,282 | 12.38 | 6,977,712 | 12.51 | 7,314,236 | 13.71 | 7,116,265 | 11.82 | 8,054,007 | 11.45 | 公明党 |
(希望の党) | 9,677,524 | 17.36 | 9,775,991 | 18.33 | 9,628,483 | 16.00 | 29,844,799 | 42.41 | 民主党 | ||||
立憲民主 | 11,564,217 | 21.12 | 11,492,115 | 20.00 | 11,084,890 | 19.88 | |||||||
共産党 | 3,362,966 | 6.14 | 4,166,076 | 7.25 | 4,404,081 | 7.90 | 6,062,962 | 11.37 | 3,689,988 | 6.13 | 4,943,886 | 7.03 | 共産党 |
社民党 | 934,598 | 1.71 | 1,018,588 | 1.77 | 940,823 | 1.69 | 1,314,441 | 2.46 | 1,420,928 | 2.36 | 3,006,160 | 4.27 | 社民党 |
国民民主 | 6,172,427 | 11.27 | 2,593,375 | 4.51 | ― | ― | 5,245,586 | 8.72 | 3,005,199 | 4.27 | みんなの党 | ||
維新の会 | 5,105,127 | 9.32 | 8,050,830 | 14.01 | 3,387,597 | 6.08 | 8,382,699 | 15.72 | 12,262,144 | 20.38 | ― | 維新 | |
れいわ | 3,805,060 | 6.95 | 2,215,648 | 3.86 | |||||||||
日本保守党 | 1,347,392 | 2.46 | |||||||||||
参政党 | 1,870,347 | 3.42 | |||||||||||
その他 | 42,239 | 0.08 | 900,181 | 1.57 | 729,207 | 1.31 | 2,825,182 | 5.30 | 4,192,952 | 6.97 | 2,705,987 | 3.85 | その他 |
合計 | 54,750,478 | 100.00 | 57,465,978 | 100.00 | 55,757,551 | 100.00 | 53,334,427 | 100.00 | 60,179,888 | 100.00 | 70,370,255 | 100.00 | 合計 |
投票率 | 53.84 | 55.93 | 53.68 | 52.66 | 59.22 | 69.28 |
(1)過去5回の選挙でコンスタントに1600〜2000万票を得ていた自民党が、いきなり1500万票割れしてしまった。察するに「旧安倍派=高市支持派」の岩盤支持層がごっそり抜けて、日本保守党や参政党に流れるか、もしくは家で寝ていたのであろう。結果として自民党の得票率は有意に低下した。これでは勝てないのも無理はない。
(2)大勝利と伝えられる立憲民主党は、比例における得票数は過去2回とほとんど変わらない。小選挙区の激戦区を多く勝ち残ったのが勝因であって、そもそも野党第一党が150議席くらいは取って当たり前と言えよう。しかるに比例が1100万票から伸びないのであれば、とても天下を取れる政党とは思われない。来年の参院選も、あまり期待しない方がいいと思いますぞ。
(3)公明党や維新の会を抜いて、比例得票の第3政党になったのは国民民主党。その昔の「みんなの党」的なポジションを得ているようです。先の東京都知事選挙(7/7)においても、SNSや動画CMの威力が示されたが、国民民主も望外の成果を得た。とはいえ、「石丸現象」の後生が良くないところを見ても、この現象は長くキープできるかどうかはわからない。ご用心を。
(4)公明党はついに600万票を割れた。シェア10%も次は危ういかもしれない。今年は池田大作先生が亡くなられて最初の選挙であり、何が何でも勝たねばならなかったのだが、哀しいかな党の代表が落選してしまうような状況である。創価学会パワーの凋落を感じさせる結果でありました。来年6月の東京都議会選挙が試金石となるでしょう。
(5)共産党も「れいわ新選組」以下の勢力となり、着実に衰退に向かっておられる様子。社民党も以下同文。「日本人の義理がたさ」が、かかる政党の延命につながっていることは、はたしていいことなのか、悪いことなのか。とはいえ、支持者は高齢者ばかりですので、おそらくは安楽死となるのでありましょう。
(6)自民党から離脱した「岩盤保守層」は、ざっくり400万票といったところだろう。日本保守党に流れたのはまだ一部だけで、「家で寝ていた」層が多かったのではないかと思う。とはいえ、その結果として旧安倍派の議員が多く落選したので、それが本当に彼らの望んだことであったのかどうか。なんとなく、このまま戻ってこない方がお互いのためかなあ、という気もする。
(7)ちなみに投票率の平均値は、昭和の時代は72.8%もあり、それが平成になると62.0%に低下した。令和になって行われたのはまだ2回だけで、平均値は54%くらいである。低いと言えば確かに低いが、これから上がるかというとまた別問題であろう。
〇いつものルーティーンの作業ではありますが、こんな風にして2024年のデータがまたも積みあがりました。ああ、ワシは一体、いつまでこんな面倒くさい作業を続けるつもりなのだろう。政党要件を厳しくするなどして、少しでいいから政党の数を減らしてほしいと切に思います。勘弁してくれえ!
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編集者敬白
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by Kanbei (Tatsuhiko
Yoshizaki)