<5月22日>(月)
〇昨日は富山市友会へはせ参じました。首都圏における富山市出身者の会で、コロナ下で長らくお休みが続いていたために、今年は4年ぶりの開催となりました。まさに脱コロナさまさまである。
〇都内の会場で12時に始まるのだが、写真撮影があったり、議事があったり、各方面のご挨拶があったりして、乾杯のご発声が12時50分となってしまう。しかも壇上に立つのは「おじさん」ばっかり。まことに昭和な感じのフォーマットなのであるが、こういうところも含めてわが富山の流儀であるから致し方ない。
〇駒澤大学の西修名誉教授とお久しぶりにお目にかかる。お年を召されてはいるが、あいかわらず楽しい方なのである。大学時代は落研であったそうで、唐突に西先生の落語が始まってしまう。会場はわきに沸く。やはりこの人こそ、「わが国最高の憲法学者」(@岩田温氏、最新号の『正論』から)なのではないだろうか。
〇富山市関係者の最大の関心事は、前頭14枚目、元大関の朝乃山なのである。「全勝街道まっしぐら。今日で勝ち越しが決まるでしょう!」とニコニコしている人たちがいたけれども、案の定、昨日は取りこぼしてしまった。幸いにも今日で8勝目となったようですね。パチパチパチ。なにしろ4年前、令和元年春場所において、朝乃山関は優勝してトランプ大統領からトロフィーを頂戴したのですから、今場所は是非勝ってもらいたいです。
〇ワシ的に富山市について強調しておきたいのは、5月13日に行われたG7教育相会合・地元主催歓迎晩さん会においては、ちゃんと「ベジタリアン用の鮨」が用意されていたことである。G7広島会合のメディアセンターでは、お好み焼きなどの地元食材が人気を呼んだが、「ベジタリアンが食べられるものがない」との声があった由。その点、白エビやズワイガニの鮨にちゃんと代用を用意していたわが郷里は偉いのではないか。
〇ということで、進んでいるのやら、遅れているのやら。
〇ちなみに富山市内の鮨屋は、基本的にその日の朝に浜に上がったネタを出すのが基本動作である。だからいつも安上がりで新鮮である。逆に都内の高級すし店は、「中トロばっかり注文する困った客」のために、心ならずもいろんなネタを仕込まねばならず、それらが売れ残ったら廃棄して、その分のコストも客に転嫁されてしまう。だから高くなってしまう理屈である。
〇ゆえに富山鮨はSDGsなのである。地元の人たちは「そんなみゃーらくな(贅沢な)ことしとられん」と言うけれども、単にケチなだけかもしれない。まあ、モノは言いようで、これぞ令和の先を行く流儀なのかもしれない。
<5月23日>(火)
〇内外情勢調査会の講師につき、午前8時のJAL便に乗らなければならないので早起きをするのである。
〇羽田第1ターミナルについてみると、手荷物検査の入り口が異様な行列となっている。アメリカでの「TSA
40分待ちの刑!」を思い出して暗澹たる気分になるのだが、どうやら新しいシステムを導入したらしい。PCを取り出さなくても良くなったのは改善点だが、乗客が慣れていないために誰かが説明しなければならない。そこでJALの方々が人海戦術でいちいち対応している。お疲れさまである。まるで人が機械に使われて、生産性が上がらない日本の現場を絵に描いたような光景であった。
〇さて、本日のフライトは北九州空港行きである。2018年2月に小倉大賞典を見に行った時に初めて降り立ったのだが、あれってもう5年前のことであったのか。あのときに小倉競馬場に招待してくれたNHKのOくんは、その後、すい臓がんで帰らぬ人となってしまった。大学の同級生だっただけにツラかったのだけど、コロナの最中だったからお葬式もなかった。歳月人を待たないぜ。さよならだけが人生だ。
〇北九州支部の会場は小倉ステーションホテルである。内外情勢調査会、とうとう丸テーブル方式が復活していた。今までは感染防止の観点から「学校方式」にしたうえで、「黙食推奨」の昼食会という変なことをやっていたのであった。今回はちゃんと講師も一緒に同席し、雑談しながら食事ができることになり、ご当地の最新情勢を窺うことができる。いやはや平常への回帰はありがたい。
〇本日のお題は、「G7広島サミット終了後の内外情勢」。何しろ一昨日までやっていたことだけに、しかも広島市が近いこともあって、皆さんの食いつきがいいのである。G7の回顧やら献花外交、債務上限問題やら早期解散論などを論じると、あっという間に1時間半たってしまう。
〇終了後は下関市に移動。途中、通過した門司地区のレトロな街並みが印象的であった。ここはもともと鈴木商店が拠点を作っているので、いずれあらためて再訪したい場所である。運転手さんが気を利かして彦島の方まで案内してくれたので、北九州市と下関市の位置関係があらためてよくわかった。要するに関門海峡を挟んでほとんど一体なのである。現在は彦島と小倉を結ぶ橋も計画中であるとのこと。
〇内外情勢調査会で、「北九州支部と下関支部」をコンビで訪れるのは2009年3月以来のことである。あのときは下関が先であったし、たしか宇部空港を使ったのではなかったか。半日かけて、市内の観光地を回ったものである。今回も軽く市内を歩いてみると、4月23日の補欠選挙で当選した吉田候補のポスターがあちこちに残っている。さて、これで早期解散・総選挙となると、山口県の場合は選挙区がいきなり一人減となってしまうのだが、さて、どうするのだろうか。
〇下関グランドホテルの隣にあるカモンワーフにて、関門海峡を見下ろす回転ずし屋に入る。西日本で迎える日没は遅く、7時半くらいになってもまだまだ明るい。じょじょに陰りゆく海を見ながら、ビールとひれ酒で心地よく酔っぱらったのであった。
<5月24日>(水)
〇G7が終わって3日もたつと、こんな記事が出始めている。以下はWSJ日本語版から。
●【オピニオン】 G7議長国日本、世界を指導 5月23日 ウォルター・ラッセル・ミード
〜毎年開催されるG7サミットのほとんどは、すぐに忘れられる空虚なイベントだ。外交官やアドバイザーらが延々と交渉した末に採択される会議のコミュニケ(声明)が、各国の政策や世界の出来事に大きな影響を与えることはめったにない。
〜以前なら日本がG7議長国を務めた場合、サミットは円滑に行われ、完全に忘れ去られていただろう。内向きでリスクを嫌い、安定を求める日本社会の性質を反映し、日本政府はこれまでドラマチックなイベントより穏やかで円満な会合を好んできた。
〜しかし、世界で緊張が高まる中、日本は新たな緊迫感に目覚めた。岸田文雄首相は、富裕な民主主義国家の集まりの議長国という立場を使い、重要な真実を強調することを決意していた。そして目標を達成した。
〇いやはや、おっしゃる通り。保守派政治学者のW・R・ミードが評価しているポイントは2点あって、@ゼレンスキー大統領を招いたこと→中ロの問題が浮かび上がった、Aインド太平洋の首脳を多く会議に招いたこと→世界の重心がこちらに移っていることを明らかにした。その上で、アメリカはこのままでいいのか、と訴えている。
〇ところが日本国内には、G7広島会合は失敗だった、裏切られた、と言って嘆いておられる方々がいる様子。日本の平和運動というものは、@日本に2度と戦争をさせない、Aアメリカの戦争に巻き込まれない、という2点だけを考えてきたので、現在のような事態には対応できないのです。
〇だから今回のウクライナ侵攻に対して、「日本は中立せよ」という人がいたりする。そんなのあり得ないでしょ。1990年夏にサダム・フセインがクウェートに侵攻した時だって、さすがに「中立せよ」という声はなかったはず。ましてロシアは核兵器を持っていて、プーチンはそれを使うかもしれないという脅しをしている。そんなことを肯定する「反核運動」など、それ自体が自己否定になるはずである。
〇仮に「核廃絶」という目標が1キロ先にあるのだとしたら、今回のウクライナ侵攻によってそれは300メートルくらい後退してしまった。今ではむしろ核による拡大抑止が優先事項であり、そうでなかったら日本の安全だって脅かされてしまう。今回のG7により、G7首脳が核の悲惨さを実感したことによって、そこから100メートルくらいは元に戻したかもしれない。が、それにしたって、2022年2月24日以前の状態に戻すまでには、相当な時間がかかるはずである。
〇ところが世の中には、頭の中に「核なき世界」しか入っていない人たちも存在する。いかにこの国における「平和主義」が浮世離れしたものであったかが、あらためて実感される。まあ、当溜池通信的としましては、あんまり関わり合いになりたくはない世界でありまするが。
〇ということで、無事に内外情勢調査会の下関支部での仕事を終えました。2009年に当地を訪れたときにも感じたのですが、ここは源平壇ノ浦合戦と巌流島の決闘と幕末!ついでに下関条約!という歴史的遺産の宝庫なんですが、その割には観光資源化ができていない。あまりにも雑然としているんだもん。水族館は立派だけれども、捕鯨の歴史だってちゃんとまとめておいたらいいのではないか。
〇幸いなことに山口県は、とっても空港に恵まれたお土地柄である。県内に岩国空港と宇部空港があり、すぐ近くに北九州空港と萩石見空港がある。14年前と同じく、下関グランドホテルから見下ろす関門海峡がとってもいい感じであっただけに、「もうちょっと何とかしろよな」と感じた次第である。
<5月26日>(金)
〇いやはや、怒涛の1週間でありました。出張もあれば、講演会があり、飲み会もあり、朝食会やラジオ出演もある。コロナ前の日常が一気に戻ってきて、身体は慣れないままに、消耗すること著しい。かくなる上は、明日はとことん休息日としなければなるまいて。
〇この週末は、3年ぶりくらいで会社のパソコンを持ち帰りませんでした。PCを持って移動するのは、重いし、無くしたら大変だし、いろいろ疲れるのです。ということで、ちょっとした開放感がありますな。
〇5月8日のコロナ明け宣言から2週間が過ぎ、ホントに普通の日常が戻ってきたという感あり。従って、当欄にも書くべきネタがいっぱいある。まあ、そのうちちょっとずつ書いていきたいと思います。
<5月28日>(日)
〇今年も町内清掃の日がやってきた。去年は簡単に開いた蓋が開かないとか、以前はカラカラだった側溝が今年は深いドブになっているとか、いろいろ不思議なことはあるのだが、とにかく作業をしなければならない。ということで、朝から消耗。
〇しかるにこういう作業をしていると、とってもお久しぶりのご近所さんに会ったり、新しく引っ越してきた人の顔を覚えたり、お隣さんの協力を得ながら庭木の枝を落としたりする。こういうのは、たいへん良いことである。タワマンに住んでると、こういうことってないでしょうなあ。
〇しみじみ思うのだが、5月下旬は気持ちの良い季節である。G7サミットで雨が降ったのは誤算であったが、広島での献花にはその方が良かったとの見方もあるだろう。来週には台風到来で、梅雨入りも近そうなのであるが、とりあえず今日まではいい天気である。
〇今日のダービーも良馬場であった。タスティエーラが世代の頂点に立ったが、2番人気でワシが買っていたスキルヴィングが、急性心不全でゴール後に急死したのはつくづく残念なことであった。ちなみに、スタート直後に躓いて鞍上の坂井騎手を振り落としたドゥラエーデは、人馬ともに異常なしだそうである。いかにもドゥラメンテ産駒である。
〇大相撲5月場所は、照ノ富士が優勝したのはどうでもいいのだが、再入幕の朝乃山が12勝3敗であったのはまずはめでたい。できれば敢闘賞をあげてほしかった。年内に大関復帰希望、と書いておこう。
〇さらに阪神タイガースは、巨人を3タテして8連勝、貯金が17だそうである。「あかん、優勝してまう!」などと言ってはいかんのである。6月からは交流戦ではないか。ふむふむ、タイガースは6月9‐11日に、エスコンフィールドで日ハムと対戦するようだ。新球場、ちょっと観に行ってみたくはある。が、日程表を見ると、とてもそれどころではないのである。
〇季節の変わり目ということで、明日からも大事に行きましょう。
<5月29日>(月)
〇米債務上限問題が合意に達したということで、今日は盛大に株が買われました。日経平均はバブル後最高値だそうで、そこはめでたいのですが。
〇どうもこの問題、「プロレス」だとか「歌舞伎」だとか言われがちなんだけど、本当の怖さがあまり理解されていない様子。バイデン大統領とマッカーシー下院議長が合意するのは当たり前なのである。どちらも責任のある立場なのだから。問題は責任のない人、もしくは基本的なことが分かっていない議員さんたちが、この問題においてキャスティングボートを握っていることなのです。
〇共和党には「フリーダム・コーカス」と呼ばれる勢力が30〜40人程度いて、この人たちの一部は「デフォルト上等!」と思っている。なかには「米国債がデフォルトすると世界経済が地獄に落ちる」ということ自体を疑っている。悪いのはそういう議員を選ぶ有権者たちなのだが、今のアメリカの選挙制度ではそういう人たちが選ばれてしまうし、彼らはそれで「民意」を得ていると心得ているのだから、民主主義としては仕方がないのである。
〇他方、民主党側でも左派の議員たちは、「歳出削減で妥協するくらいなら、バイデン大統領は『憲法修正第14条』を使って債務上限問題を無効化すべきだ!」と思っている。そんなことをしようものなら、今の保守的な最高裁ではバッチリ違憲判決が下るのは火を見るよりも明らかなのであるが、彼らもまた自分の選挙区のリベラルな有権者しか見ていないので、それもまた彼らにとっては「正義」なのである。
〇これで5月29日中に法案が提示されるとして、72時間の審査期間を経て5月31日には議会での投票に帰せられる。問題はバイデン大統領とマッカーシー下院議長が、この左右の「はねっかえり」議員たちを説得できるかに懸かっていて、それはとにかくやってみないとわからない。最悪の場合、「マッカーシー下院議長解任動議」は議員ひとりでも提出できるので、まずはその辺から「やり直し!」ということになりかねません。
〇イエレン財務長官によれば、幸いなことに「Xデイ」は6月1日から6月5日まで延長となりましたので、もうちょっと揉める時間は残されているようです。とにかく問題の本質は、下院の与野党の議席数の差がごくわずかであり、非常に極端なごく一部議員の反対によって、法案自体がボツになってしまいかねないし、彼らはそのことに対してほとんど罪悪感を感じない、ということに尽きます。
〇まことに残念なことですが、今のSNS全盛時代においては、安っぽいナショナリズムやポピュリズム、あるいは「れいわ新選組」式の極論でも、そういう支持を得て当選してしまう議員さんが出てしまうのです。単純小選挙区制のアメリカでそれが起きてしまうというのは、いかにゲリマンダーが進んでいるかということの証左でもありますが。
〇ともあれ、左右の極論をいかに封じ込めるか、というのがこの債務上限問題の本質なのでありです。彼らがどんなに極端な意見の持ち主であるか、マーケットの人たちはそこがわかっていない。ワシなんか、ちっとも安心できませんがな。
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編集者敬白
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by Kanbei (Tatsuhiko
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