●かんべえの不規則発言



2017年9月 






<9月20日>(水)

○来週には衆院解散だということで、急に政局っぽくなってきた昨今ですが、やはりこうでなきゃいけません。当溜池通信としてはワクワクモードです。

○そうかと思うと、あっと驚くような話も出てくる。一番はこれだな。


●若狭氏、新党結成へ動き活発化=基本政策に「一院制」


○ワシが知る限り、これだけ愚かな新党立ち上げはないだろう。一院制にはいろんな議論があって、そもそもGHQが作った日本国憲法草案は一院制だった、てなエピソードもある。ただし、今の二院制を一院制に変えようと思ったら当然、憲法改正が必要なわけであって、それには参議院の協力も欠かせないわけである。参議院が協力して発議してくれますかね。そして参議院に味方をつくらないで、いったいどうやって政党を動かすつもりなのか。

○これを唱えている若狭勝衆議院議員は、元検事・弁護士さんなのだそうだ。その辺の理屈が分かっていないのだろうか。やっぱり司法出身者は碌な政治家にはなれないのだろうか。・・・などと言うと、谷垣禎一さんや高村正彦さんに申し訳ないのだが、最近、そういう変な政治家を続けて見かけた後だけに、ちょっと疑いたくなってくる。この人とか、この人とか。

○いや、世の中にはそれくらい一院制の待望論者が多いのだ、ということなのかもしれない。でも、ワシ的にはまったく理解不能な議論である。そもそも参議院で3分の2の賛成が取れるはずがない議論をすることに、どんな意味があるというのか。参議院なんてあなた、賢いのはごく数人で、あとはスポーツ選手上がりとか、どこかの団体代表とか、変な人ばっかりですよ。そういう部分も含めて今のニッポンの政治がある。現実を直視しないでどうするつもりなのか。

○あるいはこの若狭新党というのは、素朴な有権者が支持する素人政治家集団になるのだろうか。でも、そこに長島昭久さんや細野豪志さんが入ると聞くと、その姿がどうにも絵を結ばない。だって「一院制」ですよ? プロの政治家がそんなこと言ってて、恥ずかしくないんでしょうか。

○まあ、アメリカ共和党におえるティーパーティーとかフリーダム・コーカスみたいに、できるはずもないことを声高に訴えることが自分の仕事だ!政府閉鎖だってへっちゃらさ!と割り切っちゃうような素人議員さんがこれから増えるのかもしれない。あんまりそういう日本政治の姿は見たいとは思いませんけどね。

○さらに奇々怪々なのは、この若狭新党が「100人規模を擁立する」と言っていること。これも信じがたい。だって衆議院に出馬するときの供託金は小選挙区で300万円、比例区で600万円、重複立候補だと900万円ですよ。手元に何億円用意しているんですか。まだ政党を立ち上げていないということは、政党助成金だってもらってはいないはず。それとも「供託金を自前で払える人だけ候補者にしてあげます」というんでしょうか。

○そもそも若狭氏自身が当選2回の議員さんで、比例区選挙と補欠選挙の経験はあるけれども、小選挙区で勝ったことは一度もない人らしい。ということは、今度の総選挙でご本人がかならず通るかどうかはわからない。それじゃ選挙の応援だってできませんがな。つまりは小池都知事という虎の威を借りているだけの人なのではござりませぬか。

○ということで、今度の総選挙では夢と現実の区別がつかないような政党も出てくるのかもしれません。でも、ワシが個人的に知る小池さんはああ見えてシビアな人だから、いざとなったらハシゴ外すと思うよ。


<9月21日>(木)

○昨日のFOMCで資産縮小の開始が決まったら、いきなり長期金利が上がってドル高になっている。対円では112円台に突入した。さらに「年内にあと1回の利上げあり」との見方も強まっている。この先、地政学リスクで「有事の円買い」があるかもしれないけど、やっぱり「年末は120円」という予想でいいのではないかと、自信を深めつつあるところ。

○他方、「ずいぶんと素直な反応だな」という気もする。先週末に「モーサテサーベイ」の回答を送った時は、「FOMCで資産縮小が決まっても、『既に折り込み済み』という評価になるのかもしれないな〜」などと迷っておったのです。本日、某所でシティグループの高島さんと会ったら、「最近の市場は、素人っぽい反応が多くなっています」と伺いました。つまりAIやら何やらと、高度な物差しが飛び交うようになると、人間の頭の中は逆にシンプルになるらしい。

○いや、別にひねくれた思考をする人の方が賢い、というわけではないのですが、使っている道具がご立派になると自分の頭でモノを考えなくなる、てなことはいかにもありそうです。似たようなことはほかの分野でも起きているんじゃないでしょうか。


<9月22日>(金)

○本日はテレビ東京にて『未来世紀ジパング』の収録。テーマは「ありがとう!トランプ大統領」。ナビゲーターを不肖かんべえが務めております。

○放送は週明け25日月曜日の午後10時から。まあ、よろしかったらご覧になってくださいまし。なかなか見られない「アメリカ」をいっぱいご紹介しております。


<9月23日>(土)

○別段クルマや技術のことに詳しいわけではないのですが、最近の「EV礼賛論」はちょっと異常じゃないかと思う。ヨーロッパも中国もそっちを向いているようですが、最近のEVって、バブルなんじゃないでしょうか。

○以下、ワシが感じている疑問。

1.自動車という商品は、常に「買い替え需要」である。仮に内燃自動車が作られなくなっても、ガソリンエンジンがなくなるのはそれから10年以上先のことであろう。

2.夜中に充電して昼間に走ることを想定しているのであろうが、戸建ての住人はいいけれども、集合住宅の住人はどうするの?充電器って、そんなに普及しますかね。

3.世界中のクルマが全部EVに入れ替わるとして、電池の材料となるリチウムなどの金属って地球上にそんなに存在するのか?

4.ガソリンエンジンは用済みになったらつぶせば鉄塊だが、電池はどこへ捨てるつもり?ホントに再利用できる?厄介な仕事になりそうな気がするぞ。

5.EVが普及するとして、その発電を今の日本のように化石燃料ばかりに頼っていたら、CO2は全然減らないのでは?まあ、NOxが減る分だけいい、という見方はできるけど・・・。

○個人的には5年物のハイブリットカーに乗っていて、走行距離がやっと1万キロというドライバーなんですが、これをEVに替えるという理由がまったくわからない。「日本企業はEVで出遅れている!」などと騒ぐ人もいるけれども、慌てなさんな。世界で一番EVを作っているのは日産ですって。

○何より不安を覚えるのが、EVを礼賛して旗を振っているのが「地球温暖化を憂える善意の人々」であることだ。特にヨーロッパの人たちが中心だというところが危うい。あの人たちの「善意」が今までにどんな結果を生み出してきたことか。難民の受け入れから通貨ユーロやギリシャ問題まで、碌なことがないではありませんか。

○ということで、善意を語る人々に対する最良の方策は、benign neglectだと考えるものであります。


<9月25日>(月)

○ドイツではメルケル首相が四選を決め、日本では安倍首相が解散を宣言し、希望の党が立ち上げをする。でも、ワシの関心は9月23日に行われたニュージーランド総選挙なのである。なんとなれば、こんなに悩ましい結果が出てしまったのだ。


●ニュージーランド総選挙 一院制、定数120(過半数61議席)

*国民党 58議席

*労働党 45議席

*ニュージーランドファースト党(NZF) 9議席

*緑の党 7議席

*ACT 1議席


○国民党政権は過半数を割り込んだ。いつもは市場主義改革を目指すACTと連立を組むのだが、そちらは1議席だけである。従って、過半数にはわずかに足りない。しょうがないからNZFと連立交渉を始めるか、という話になっている。

○ところがですな、野党の労働党の側から見ると、緑の党と連立を組んで、さらにNZFを味方につけると、45+9+7=61議席となって、こちらが過半数になってしまう。NZFはモノの見事にキャスティングボートを握ったというわけだ。

○NZFは1993年にカリスマ的政治家、ウィンストン・ピータース議員が国民党を離党して旗揚げした政党である。ワシが知る限り、「××ファースト党」という名前を使ったのは、これをもって嚆矢とすると思う。その拠って立つ理念は保守主義、ポピュリズム、そしてナショナリズム。高齢者やマオリ族など弱者の味方を標榜し、アジア系移民の増加に警鐘を鳴らし、国有財産の売却も慎重に(特に外国人に売るのはもっての外!)といったラインである。

○2010年にニュージーランドのタウランガという町に行ったとき、「ここはピータース議員の地元選挙区だが、2008年の選挙で新人議員に負けて引退しちゃったよ」と聞いたものである。ところがどっこい、その後は2011年選挙で復活して、今でも党首を務めているらしい。NZFのHPをご覧いただくと、既に72歳になった彼の雄姿を見ることができます。さすがは元ラガーマン、いかにも迫力ありです。

○NZFは過去に、ジム・ボルジャー国民党政権と連立を組んだこともあるし、ヘレン・クラーク労働党政権に閣外協力したこともある。つまりは融通無碍。ピータース党首、とりあえずは国民党と連立交渉に入っているけれども、内心は「どっちに高く売れるか」をワクワクしながら考えているのではないかと拝察する。

○問題はですな、このNZF党の政策を見ると、貿易自由化は慎重に、というスタンスなのであります。TPP11に対しても否定的です。ニュージーランドの次期政権は、それが国民党、労働党のいずれになっても、自由貿易から一歩身を引くかもしれません。困ったことであります。

○どうでもいいことですが、NZF党の政策の中には「Racing」(競馬)の条項があって、「競馬はキウイの文化だ!16億ドル産業を育てよう!」と言っている。それは大いに賛同するのでありますけどね。ということで、南の島の「元祖ファースト党」にご注目いただきたい。トランプ大統領も小池都知事も、あんたら所詮は二番煎じだからねっ!


















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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)