●かんべえの不規則発言



2024年10月 






<10月16日>(水)

〇某社の政治部デスクさんから聞いて「なるほど!」と感じたこと。


*公示前の世論調査はまったく別物と考えた方がいい。今週末に出る世論調査からが本番。

――そりゃそうだ。家の近所に選挙ポスターを見かけると、一気に総選挙が現実味を帯びてきますね。


*有権者が気にしているのは経済や社会保障。外交や「政治とカネ」問題の優先順位はさほど高くはない。

――まことにごもっとも。"It's the Economy, Stupid!"(阿呆、経済だけでいいんだ!)は選挙の鉄則です。


*例年に比べて、「まだ決めていない」有権者が多いようである。

――投票日の直前に決めるのはリベラル派よりも保守派に多い。アメリカでもそうです。


*若手の人材は野党よりも与党で育っている。

――これは実感です。コバホークは今年の総裁選の収穫でしたね。むしろ野党の若手が育ってないことが気になります。


*自民党には「追加公認」という必殺技があることにご用心。

――和歌山のSさん、兵庫のNさん、八王子のHさんなど、勝ちさえすれば自民党に戻れるんですよね。わざと時間を空けるかもしれませんけれども。


〇ということで、「みんながビックリ仰天するようなことにはならない」という結論には説得力がありました。もっともメディアとしては、「大変だ、たいへんだ」と言ってないことには注目してもらえないので、しばらくはマッチポンプのような記事が続くのでしょうね。まあ、その辺は百も承知で見てまいりましょう。


<10月17日>(木)

〇本日は内外情勢調査会さんの仕事で横浜市へ。

〇現地の支部長さんは意気軒高たるものであった。それはまあ、昨晩の巨人×DeNA戦を観た者としては、気持ちはわかる。確かに下克上があっても不思議はない感じ。・・・と、言いながら見ていたら今日も勝っちゃったよ。ベイスターズ、強いじゃあないですか。

〇前回、ベイスターズが日本一になったのは1998年だそうである。それって大魔神が活躍していた頃ですよね。まあ、昨年が1985年以来のタイガース優勝、今年が1998年以来のベイスターズ優勝となれば、確かに日本経済の転換点となるかもしれぬ。いささか気が早いかもしれませぬけどね。

〇もうひとつ。神奈川県は20もの選挙区があるのだが、8月頃には「今選挙があれば、自民党で国会に戻ってこれるのは3人だけ」と言われていたそうである。さしずめ菅さんと進次郎と河野太郎のことであろう。それ以外は死屍累々と考えると、いささか荒涼たる風景が目に浮かぶ。

〇ところが9月の自民党総裁選では神奈川県勢が目立ちまくったので、「これなら結構、行けるんじゃないか」という評価になっているとのこと。今朝の読売新聞を見てみると、以下の通りの序盤情勢である。


@松本(自)と篠原(立)がしのぎを削る。

A抜群の知名度を誇る党副総裁の菅(自)が優位に立っている。

B中西(自)が中村(立)を一歩リード。

C3選を目指す早稲田(立)が先行し、前回比例復活の山本(自)が追いかける展開

D優位に立つ国家公安委員長の坂井(自)に山崎(立)が肉薄している。

E古川(自)と青柳(立)による接戦だ。

F鈴木(自)と中谷(立)が横一線の争い。

Gベテラン江田(立)がややリードし、前回比例復活だった三谷(自)が追い上げる。

H党国対委員長の笠(立)が先行し、中山(自)が追いかける展開。

I元復興相の田中(自)が、金村(維)を一歩リード。

J党選挙対策委員長の小泉(自)が安定感を増している。

K阿部(立)と星野(自)が激しく競り合う。

L前回自民の甘利明・元幹事長を破った太(立)と、丸田(自)が互角の戦い。

M赤間(自)と長友(立)が一歩も譲らない展開。

N抜群の知名度を誇る河野(自)が優勢。

O後藤(立)がややリードし、義家(自)が追い上げる。

P元デジタル相の牧島(自)と佐々木(立)が一歩も譲らぬ展開。

Q元経済再生相の山際(自)と宗野(立)がデッドヒートを展開。

R組織力のある草間(自)と佐藤(立)の接戦となっている。

S区割り変更に伴う新設区で、甘利(自)と大塚(立)が激しく競り合う。


〇自民党、半分くらいは行けちゃうんじゃないだろうか。それにしても神奈川県は多士済々。党副総裁や党選対委員長、国家公安委員長や前デジタル相もいれば、不記載問題組や統一教会疑惑、そして銀座三兄弟もいる。いやはや、奥が深いのであります。


<10月18日>(金)

〇わが国の総選挙も気にはなるのですが、米大統領選挙もしっかりウォッチしなければならない。と言っても、どっちが勝つかさえ見通すことは難しい。本日分の溜池通信は、かなり苦しいなあ〜と思いながら書いております。

〇とはいうものの、「いったいどうなるんだ!?」という声は少なくありません。特にマーケット関係者のニーズは高いんじゃないかと思います。そこでこんなセミナーのご案内。


●【WEB】米国大統領選挙 投開票日直前スペシャル『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』


〇主催者はマネースクエアさん、11月2日(土)13時からとなります。

セミナータイトル 【WEB】米国大統領選挙 投開票日直前スペシャル『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』
レベル 初級〜中級
日時 11/2(土) 13:00 〜 16:10 ( 受付開始 12:45 )
会場 お手持ちのPC、スマートフォン、タブレット
参加条件 どなたでもご参加いただけます。
案内事項 YouTube Live によるWEBセミナーです。
講師 双日総合研究所チーフエコノミスト 吉崎 達彦 氏
現役ファンドマネージャー 西山 孝四郎 氏
マネースクエア 西田 明弘、津田 隆光、八代 和也、尾 和秀、奥谷 龍生
参加費 無料


〇皆様のご参加をお待ち申し上げております。


<10月20日>(日)

「最近、知らない人に話しかけるってことがなくなりましたねえ」

〇先日、なぜかそんな話になった。知らない場所で誰かに道を尋ねる、なんてことはめっきり減った。道は他人に聞くよりも、スマホに聞く方が早い。ちょっと古い映画の中では、「煙草の火を貸してくださらんか」などというやり取りがあって、見知らぬ同士の会話が始まる、なんてシーンが普通にあった。今ではいろんな意味で、「あり得ない」ことになってしまいましたが。

〇電車の中で、たまたま隣になった人と話がはずむ、なんてこともなくなった。今では電車の中では皆がスマホを睨んでいて、そのうちかなりの部分がメールやLINEなどで「誰か自分が知っている人」と会話している。今ではおそらく、「知らない人に話しかけるのはリスクが高い行為」と思われている。若い人が電話を取るのを嫌がる、というのも、たぶんその辺に理由があるのではないかと思う。

〇ただし、ほんのちょっと前までは、そんなことはなかったのである。道に迷ったら、その辺の人を適当に捕まえて聞くしかなかった。「フーテンの寅さん」みたいに、やたらと人懐っこい(馴れ馴れしい)人も周囲にはたくさんいた。それから飛行機や電車の中で、隣り合わせた人とあれこれ話し込む、なんてこともごく普通のことであった。

〇そこで突然思い出したのだが、国際線の中で隣の席のアメリカ人と仲良くなったことがある。こちらは日本に帰る途中で、向こうは生まれて初めて東京に出張する、というところであった。あいにくなことに、話の中身はほとんど覚えていない.。

〇別れ際に、「じゃあ、記念にこれを」と言って、一枚のテレホンカードを手渡した。当時はまだそんなものが流行っていて、ワシは普段から何枚もテレカをため込んでいて、ときどき「これあげる」とやっていた。そのときもごく自然にそうしたのであった。

〇するとしばらくたって、会社に手紙が届いた(ということは、たぶん名刺交換をしていたのであろう)。手紙によると、当人は成田空港から新宿まで移動して、そこで約束の相手と会うことになっていた。ところが刻限になっても相手が現れない。初めての異国でパニックになりかけたが、あなたにもらったテレホンカードのお陰で、なんとか相手と連絡をとることができた。いや、助かった。どうもありがとう、てなことが書いてあった。

〇いわゆる「ちょっといい話」なのだが、ケータイがなかった頃はみんなそんな風にしていた。たかだか30年くらい前のことである。この経験、世代が違うとまったく通じないんだろうな。いや、どうかすると自分でも全く忘れていたくらいなので。


<10月21日>(月)

〇しょっちゅうRCPをご覧になっている方は、既にお気づきのことと存じます。


●Top Battlegrounds RCP Average 〜7つの激戦州全てでトランプ氏がハリス氏をリードしている。(0.2〜1.8p差)


●Betting Odds 2024 U.S. President 〜賭け事の対象としても、現在はトランプ氏59.0対ハリス氏39.8と差が開いている。


〇いずれも今月になって、急に差が開いているのですよね。これをもって「やっぱり『ほぼトラ』だ」という声がポツポツ聞こえてくるようになりました。「カマラはとうとうボロが出た」みたいな解説も耳にします。さて、この動きをどう見たらいいのか。

〇「カマラはアル・スミスのチャリティ晩さん会に出てこない。やっぱりジョークに自信がないんだろう」なんてニュースを耳にします。そうかと思うと、「トランプはもうボケている。集会の途中に音楽を流したそうだ」てな声も聞こえてくる。まあ、選挙戦というものは、終盤戦になるとあられもないうわさが飛び交うもんです。今はちょうどそんな時間帯だと思います。

〇ということで、全然理屈になっていないんですけど、ワシの本能は「こんなデータは信じちゃいかん!」と告げております。「7つのサイコロを投げて出た目で決まる勝負」=「予測できるはずがない」というのが正しい見方だと思うのです。

〇投票日まであと2週間ちょっと、という現在は「危ない時間帯」です。何か情報を得てホッとしたい、信じられるものに出会いたい、と思っている時に、得てして耳にやさしいノイズがやってくるものです。いやもう、嫌な予感しかしない。トランプ氏がリードした状態で投票日を迎える、ということ自体が「なんか変」。認知的不協和を感じるところです。


<10月22日>(火)

〇本日からロシアのカザンにおいてBRICS首脳会議が始まりました。「ブラジル・ロシア・インド・中国・南ア」の5カ国に加え、今年から「イラン・エジプト・UAE・エチオピア」の4カ国が新たに加盟します。併せてロシア近隣国も招待を受けているので、かなりの数の国が集まると見られています。

〇ただし新たに加わる予定であったサウジアラビアは、土壇場で参加を回避した模様。たぶん「アメリカは次はトランプ政権かもしれないしな」(そっちの方が美味しい思いができるかも)てなことで、様子見に転じたのでしょう。イスラエルも似たようなことを考えている節があり、「バイデンを相手に急いで妥協することはないよな」てな思惑が見え隠れします。ひょっとするとクシュナーが中東で暗躍していたりして。

〇ともあれ、BRICSは今年で9カ国に拡大し、ますます広がっていくかもしれません。とはいうものの、こういう枠組みは「広がっちゃうと、薄まってしまう」のもよくある話で、G7がG7としてまとまっているのは、「新しい加盟国を増やさないから」という見方もできる。「グローバルサウス」なんて言葉はその典型で、猫も杓子も「グローバルサウス」を自称するものだから、輪郭がぼやけたものとなりつつある。

〇議長国のロシアとしては、「先進国何するものぞ」という姿勢を打ち出したいのでしょう。とはいえ、これで米ドル離れができるか、SWIFTの代替システムができあがるか、というとそこは大いに怪しい。まして「BRICS共通通貨」なんて完全にお笑い種です。EUの統一通貨ユーロでさえ、あれだけの試練をかいくぐってきたわけでありますから。

〇そんなことより、ロシアにとって来年は鬼門となるんじゃないかと思う。対ウクライナ戦争でいよいよ動員が出来なくなって、囚人を駆り出すだけでは足りなくなり、とうとう北朝鮮の兵士を借りる、なんてことに手を出した。これで北朝鮮軍の兵士がウクライナで捕虜になったり、敵前逃亡して亡命したらどうするんだろう。ロシアでは今でも「特別軍事作戦」という建付けなんだから、いよいよ兵士が足りなくなるのではないかと。

〇ウクライナ戦争は来年でとうとう3年目。双方ともに経戦能力の限界に近づきあるんじゃないだろうか。2025年はどうやって戦争を終わらせるか、という難問が浮上する年になるのではないかなあ、という気がしております。







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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)