<3月1〜2日>(金〜土)
〇今年6回目の東海道新幹線に乗って大阪へ。アメリカ大統領選挙をテーマにした講演会のダブルヘッダーである。
〇お昼は中央電気倶楽部さんの午餐会。前回来たのは2022年11月だったので、まだまだアクリル板付きの会合であったが、今回はごく普通の会合で、お客さんの数も多いのである。こういう社交クラブにとっては、しみじみ新型コロナは悪夢の時代であった。
〇「もしトラ」や「ほぼトラ」は、まことにもって天下の関心事のようである。お馴染みさんもいらっしゃるので、当方としては気持ちはほぼ「噺家」である。こういう場所なので、少々オフレコ気味のネタも注ぎこんで楽しんでいただく。
〇夕方は大阪経済大学の中小研セミナーである。テーマは米大統領選挙なのだが、リアル、リモート共に大勢入っていただいた。何度もやっているだけあって、会場の雰囲気がよろしくて、質問もどんどん出て途切れない。
〇いつもは大経大の福本智之教授もご一緒なのだが、今回はあいにくご都合合わず。実は先週、ワシは都内で福本さんと飲んでいるのだが、中国経済のヤバいネタがいっぱい飛び交って刺激的であった。来週はいよいよ全人代開幕ですけど、どうなるんでしょうねえ。
〇時節柄、主催者からは「本題とは違うのですが・・・」と前置きしたうえで、日経平均に関するネタを振られる。東洋経済オンラインにおけるオバゼキ先生との掛け合いが受けている模様。というか、この日も株価は上昇し、日経平均は4万円の手前まで上昇している。来週はいよいよ大台突入でしょう。ちょっと感慨深い。
〇ちなみに今週の拙稿はこちら。
●日経平均がどこまで上がるかを真剣に考えてみた
〇このところ定宿となりつつあるREMM新大阪に移動して、週明けのモーサテの準備など。晩飯はいつもの「ぼてじゅう」へ、と思ったけれども観光客で長蛇の列ができていた。そこでプランBは「美々卯」ということで。やはり大阪はうどんが旨い。
〇ところでテレビ東京の「モーサテ」と「WBS」は、4月からキャスター陣が大幅に変わります。うーむ、これはちょっとビックリしたな。
●テレ東リリース最速情報
〇これで少し暇になるはずのあっこさん、滝田さん、池谷さんあたりとしみじみ飲みたい気分なのである。
<3月3日>(日)
〇3月2日に行われたミシガン州予備選挙の結果はこちらをご参照。
〇共和党はトランプ68.1%対ヘイリー26.6%と大差がつきました。これでアイオワ州党員集会以来、すべての共和党予備選挙でトランプ氏がトップに立っている。こういうことはめずらしい。各州が多様な民意を示し、全米を回りつつ候補者が絞り込まれていくというのが予備選挙の「お約束」です。今年はずいぶん勝手が違います。
〇でもヘイリーは戦いを続けます。選挙資金もあるし、トランプ氏が勝手に転んでくれるという楽しみもある。最悪、トランプ氏が負けてくれれば、2028年選挙において彼女は共和党のフロントランナーになれる。だったら、ここで急いで撤退する必要はありません。
〇とりあえず3月5日のスーパーチューズデーはすぐそこまで来ている。この日は15の州で一気に開票が行われる。ヘイリー氏にとっては、オープンプライマリーを活かすなどして、とにかく1つでも「勝った」という実績を残すことが大事です。
〇民主党はバイデン氏が圧勝すべきところ、バイデン氏の62万3500票に対し、10万1149票という"Uncommitted"という一種の棄権票が出たことが警戒警報となっています。ミシガン州は全米でも、パレスチナ系やイスラム教徒が多いことで知られています。バイデン大統領の対パレスチナ政策が批判された結果とみるべきでしょう。
〇彼らは「バイデンにメッセージを送るため」と言ってはいますが、下手をすればトランプを喜ばせる行為となりかねない。しみじみ予備選挙のプロセスにおいては、「9月以降、本選挙になったらどうなるのか?」を念頭に置く必要がありますね。
〇明日はモーサテに登場します。大川智宏さんとご一緒できるのは今から楽しみです。
<3月4日>(月)
〇本日は日経平均が初の4万円台乗せ。こんな日にモーサテに登場するというのも、なかなかに得難い経験というものであります。もっとも本日ご一緒した大川さんは、「ちぇっ、4万円だよ、しょーがねーなー」という感じでありました。今年は悲観派だったんですよね。もっとも年初の時点で「今年は円高」というのは常識的な見方でしたから、つくづく予想は難しい。
〇株価のことは、いろんな人が話題にしますけど、楽観論はあまり聞こえてきません。だいたいが「いつまで続くんでしょう?」というもので、1989年のようなユーフォリアとは無縁ですね。「今から買ってももう遅いですよねえ」といった意見もよく聞きます。
〇投資家心理というのは難しいもので、本当は安いときに仕込んで高い時に売るのが理想的であります。ところが実際には、高い時に買いたくなって、安い時には売りたくなってしまう。だから山崎元さんが言っていたように、「インデックスファンドを買って、そのままずっと持っておけ」というのは、かなり合理的な手法といえるでしょう。
〇さて、本日のネタは「スーパーチューズデー目前、気分はもう『ほぼトラ』?」というものでした。だいたいがお察しの通りの内容です。結果が出るのは日本時間では水曜日以降となりますが、開票される15州のうち、共和党の11州は「ウィナー・テイク・オール」なので、たぶん大差となります。ヘイリーさんがどの程度、獲得できるのか。注目したいです。
〇本日も早起きしたもので、お昼を過ぎるとたびたび睡魔に襲われます。こういうときは、移動時間などをこまめに使って寝るに限ります。5分でもかなり違います。これでなぜ電車を乗り過ごさないかというと、うーむ、なぜなんでしょうねえ。
<3月5日>(火)
〇これは本日のWSJ日本版の記事。
●裁判で叩かれるトランプ氏、共和党内で支持高まる
〇今さら言っても仕方のない話なのだが、トランプ氏に対する訴訟が一切なかった場合、共和党内で彼の人気は今ほどには盛り上がらず、ロン・デサンティス当たりがフロントランナーだったのかもしれないのにな、と思う。
〇だって1年前の今頃は、共和党内の人気はデサンティス>トランプだったんだもん。3月末に「口止め料事件」みたいな筋ワル案件の訴訟があってから、急に追い風が吹き始める。叩かれれば叩かれるほど、彼は強くなってしまうのだ。
〇残念ながら、アメリカ人の裁判好きは度が過ぎているので、何かあるとすぐにこんな形でエスカレートしてしまう。トランプ氏にまつわる4つの刑事事件も、これからややこしいことになっていくのだと思う。その先には、最高裁の権威が落ちる、なんてこともあるかもしれない。
〇そうなのだ。最高裁は判決を下すことはできても、それを強制する手段を持たない。この点で行政や立法府に対して弱い立場にある。そして長い歴史の中では、ドレッド・スコット事件(1857年)のように、最高裁に対する米国民の信頼が地に落ちたこともあった。今回の一連のトランプ関連裁判も、取扱注意案件ばかりである。
〇とりあえず、コロラド州最高裁による「反乱者であるトランプ氏には大統領選挙への立候補資格がない」という判決は、スーパーチューズデーの前日になって連邦最高裁によって否定された。こんな判決を認めたら、ほかの州も真似をするから、選挙が大混乱になるに決まっているではないか。ちなみにコロラド州は、投票用紙にちゃんとトランプ氏の名前を入れて印刷している。これは当然の判決だと思う。9人の判事全員が賛成している。
〇もう一つの難問、「大統領免責特権」をめぐるトランプ陣営の上告は、却下せずに審理を行うことを決定した。そのための口頭弁論が4月22日から、ということで、「最高裁はトランプ陣営の遅延戦術の片棒を担いでいる」との批判が飛び出している。そりゃあ、そうなるわな。ただしどっちに向いても国内の半分を敵に回すという状況では、最高裁も辛いよ、ということになる。
〇日本から見ている者の一人としては、この七面倒な議論にどうやって付き合っていけばいいのか。今年の大統領選挙ウォッチングはことのほか難題です。
<3月6日>(水)
〇岸田首相、4月の国賓訪米で何をするのか、というのが水面下で話題になっている。今のところ訪米日程は4月9日から14日までと言われている。10日にはホワイトハウスで、日米首脳会談が行われるとのこと。
〇去年、韓国のユン大統領が国賓待遇で訪米した際は、ホワイトハウスの晩さん会で「アメリカン・パイ」をカラオケで歌ってやんやの喝采を博したという。だったら岸田さんも何か一曲どうですか、というと、酒豪ではあるけれどもカラオケはあんまりお得意ではないとのこと。
〇さあ、どうする。当日の宴会芸をどうするか。いざとなったら林官房長官と浜田国対委員長を同行させて、ホワイトハウスで「G!inz」ライブを代打指名するという手もあろうかと思料いたします。
〇4月11日には連邦議会合同演説の機会もあるらしい。これは2015年の安倍さん以来の名誉となる。さて、どんな内容にするのか。今ごろ、外務省ではああでもない、こうでもないという議論が始まっていることと拝察いたします。
〇国賓訪問の際には、首都以外にも1か所訪れるのがお作法である。現在はノースカロライナ州で建設中のトヨタ自動車の工場を訪問する計画だとのこと。EV搭載用の電池を作る工場ということで、IRA(インフレ抑制法案)のお陰で、海外企業の北米投資が増えている。それをアピールするのは良いことかと思われます。
〇ただし気をつけなきゃいけないのは、ノースカロライナは米大統領選における激戦州の1つだということ。2020年には僅差で共和党が勝った州ですから、バイデンさんはできればそれをひっくり返したい。だからこそ、大型投資を誘致するわけでありまして。逆に言えば、トランプさんの怒りを買うかもしれない。「岸田め、俺の縄張りに来るとはけしからん」などと。
〇そして本日のスーパーチューズデーの結果では、ノースカロライナ州でトランプさんは73.9%も取っている。まあね、米大統領選挙の際には、日本政府は現職に賭けるのがお約束でありまして、とはいえ、両方の保険もかけなければならない。難しいところです。
〇もうひとつ、岸田官邸が狙っているのは「大谷翔平を呼べないか」であろうかと拝察いたします。しかし4月のシーズン中に、わざわざ東海岸に呼び出すのは無粋の極みというもの。そんなことより、3月18−20日には韓国ソウルで「民主主義サミット」が開催されるので、岸田さんがそっちに出席すると、ちょうど「ドジャース対パドレス」の開幕戦を3月20−21日のソウルでやっている。そっちの方がいいのではないかなあ。
〇令和6年度予算の年度内成立が確定した今となっては、官邸はこの手のことを考えるようになる。暇なのかという気もするが、これはこれで大事。「記憶に残るシーン」を生み出せれば、それ自体が外交的成果というものですから。
<3月7日>(木)
〇今宵は「正論」大賞授賞式に行ってきました。
●「心から敬意を表したい」岸田首相がお祝い「正論大賞」贈呈式 正論大賞は江崎道朗氏、正論新風賞は阿古智子氏
〇そこで思い出したのだが、ワシが新風賞をいただいたのはもう10年も前のことであったか。はて、あのときはいったいワシの何が評価されたのか。今となってはサッパリわからぬ。まあ、10年も違うと時代も違うから、いいのではないかという気もする。
〇会場では「正論」と書かれたマスが配られて、「正論」というお酒を頂戴しました。こんなものを呑んでいると、悪酔いして変な議論が始まってしまいそうなのだが、今日は仕事も溜まっているので早々に引き上げてまいりました。はあ、やれやれ。
<3月8日>(金)
〇本日の一般教書演説、バイデンさんはアッパレなパフォーマンスであったと思います。いや、失礼いたしました。「モーサテ」などで、「当日、言い淀んだり、絶句したら大変なことになる」などとネガティブなことを申し上げましたが、終わってみると文句のつけようがありません。1時間を超える長丁場を、最後まで会場を圧倒しておられました。いや、途中何度か咳をしていたのが、ちょっとだけ心配だったのですけれども。
〇冒頭から思い切り攻めましたな。ウクライナ情勢、1月6日問題など、「私の前任の共和党大統領」が、いかに国益と民主主義を害しているかまくしたてました。「自分が勝った時だけ国を愛する」なんてのはダメだと。いちいちごもっとも。
〇壇上ではカーマラ・ハリスが何度も拍手をして立ち上がるのだけれども、マイケル・ジョンソン下院議長は終始渋い顔でした。黒人差別の問題と、イスラエルでのテロ問題のところは嫌々立ち上がって拍手してましたが。彼はやっぱり人間が小さいのですな。2020年2月の一般教書演説で、ナンシー・ペローシが、トランプ大統領の演説ドラフトをびりびりと引き裂いたことを思い出しました。
〇ちょっとだけ気になったのは、バイデン大統領が「キング牧師とボビー・ケネディが私のヒーローだった」と述べたこと。そして「その二人が暗殺されたことが、公職を求めることを決定づけたのだ」と。それって1968年のことでありまして、現職のリンドン・ジョンソン大統領が、予備選最中の3月に「再選を求めない」と言い出した年のことです。
〇その年の党大会は今年と同じシカゴであって、そこでは混乱のもとにヒューバート・ハンフリー副大統領を選出するわけですが、共和党のリチャード・ニクソンに返り討ちに遭います。民主党支持者にとっては思い出したくもない年でありました。
〇そんなことだけはしないよ、と言いたかったのでしょうか。最後は自分の年齢をネタにしながらも、俺はやるぞという決意を示していました。たくさん見てきた一般教書演説の中でも、これは記憶に残るパフォーマンスであったと思います。
<3月9日>(土)
〇本日は「モーサテサタデー」へ。半年に1回くらい呼ばれるのですが、ハッと気がついたら今日は相内キャスターが最後の日。そう、彼女は4月からWBSに行ってしまうのです。朝の世界から夜の世界へ。ちなみに「モーサテ」出演は今月いっぱい続きますので、念のため。
〇この番組、見ている人たちとコミュニケーションを取りながら進行する。「和牛さん」とか「ルパン四世さん」といったハンドルネームの方から、ときどき質問やツッコミをいただくので、アットホームな感じで番組が進行する。台本もあってないような感じだし、「何時何分までに終了しなければならない」という「尺」もない。とっても自由度が高い番組なのである。
〇この番組を見ているのは、「きっとユニークな個人投資家さんなんだろうな」などと思っていたのだが、「実はプロの方が多い」との説もある。大会社所属のシャレにならないような人たちが、ネタを仕込みに来ているのではないかとのこと。そうか、「モーサテプレミアム」で月に3000円払っているのだから、そんなに伊達や酔狂ではないのである。
〇おカネを払って見てくれている人たち、というのはありがたいもので、匿名でも「荒らし」の類がない。池谷さんはつくづく面白いマーケットを切り開いたな、と思います。それに土曜の朝のマーケット番組がないと、今日みたいに米雇用統計を取り上げることができないものね。
<3月10日>(日)
〇今日は羽田空港がえらい混雑である。でもって札幌行きのANA便は満席である。ううむ、なんだか機内が息苦しく感じるぞ。
〇ところが新千歳空港に降り立ってみると、ありがたいことに北の大地が広がっている。最後に来たのは、コロナ前の2019年であった。旭川には、21年2月に来たんだけどね。とにかく久しぶりのサッポロである。ひんやりした空気が心地よい。しかもありがたいことに、当地はスギ花粉が飛んでおらぬ。ラッキー。
〇いつもの札幌グランドホテルにチェックインする。このご時勢、シングルに朝食付きで1万4000円ならお値打ち価格、と思って予約を入れたのだが、来てみたらなんとツインの部屋になっていた。なんと3月の札幌は暇な時期なんだそうだ。そうか、雪まつりも終わっているしね。この時期は穴場ですぞ。
〇そうは言っても、すすきのでは外国人がいっぱい歩いている。インバウンド目当ての海鮮丼に、途方もない値段がついていたりもする。が、ワシが目指すのは狸小路の士別バーベキュー。ここに来るのは3回目。果たしてどう変わっているかと思ったら、オーダーがQRコード方式になっていることぐらいで、相変わらず繁盛しておった。
〇待てよ、ワシは今日のお昼は柏のマキュイジーヌで羊を食ったのではなかったか。昼夜続いてしまうけれども、国産のラム肉を食えるところなど、そうそうあるものではない。ここは初志貫徹あるのみ。
〇そういえばこの店は、故・山崎元氏が教えてくれたのであった。サッポロビールクラシックの中ジョッキを空けて、どれとスマホの中でドリンクのメニューを見ると、そこには「山崎12年」があるではないか。これは飲まねばなるまい。山崎氏をソーダ割で注文。
〇故人はウイスキー通であったから、ちゃんと山崎10年と12年の違いが分かったそうである。ワシはもちろん区別がつかない。ただし「山崎12年を注文するくらいなら、お値段的には普通のスコッチを注文する方がコスパが良い」と言っておった。そういうところが、しみじみ山崎節であった。そこでワシもお代わりは、安いニッカに変更するのであった。
〇ということで、明日の仕事はこちら。北大に出没いたします。札幌市周辺にお住まいの方々、お出かけいただければ幸甚であります。
●2023年度 北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部研修事業(3月11日)を開催します
<3月11日>(月)
〇こちらでホテルの朝食をいただく際に、ごく普通のポテトとかコーンとかが信じられないくらい旨いのである。ましてサーモンや乳製品などを食べていると、「ずるいよ北海道!」と言いたくなる。なんなんでしょうなあ、あれは。
〇本日は空き時間に北広島駅まで行って、エスコンフィールドに行ってまいりました。「ベーシックツアー」に参加して案内してもらったのだが、これがスゴイのである。この建物、「でかい」とか「キレイだ」とか「カッコいい」というのとは別に、いちいち「アイデアがいい!」ことに感動する。
〇実に理詰めにできていて、例えば球場の南側がガラス張りになっているのは、「朝日を取り入れて天然芝を育てるため」なんだそうです。当たり前のことですが、北の大地で天然芝を育てるのは簡単じゃない。今日だって球場の外は雪が積もっているのだから。
〇そして座席から野球場までの距離がとにかく近い。ここなら外野席からでも、スリリングなゲームがみられるだろう。ましてネット裏の年間シート席(年間74試合で167万円と言っていた)なんて、あの場所で野球を見たらすごい迫力だろう。
〇それから感心したのが、内野席から外野席までコンコースが一周できるようになっていて、ファンが後方の売店で何か買っている間でも、試合から目を離さないようにできていること。とにかく野球を楽しんでもらおう、という心づくしがきめ細かいのである。
〇歴代の選手たちの壁画があることもすばらしい。特に2人の背番号11(ダルビッシュ有と大谷翔平)が描かれた場所は、写真撮影スポットになっている。考えてみれば、この2人と栗山監督のお陰で昨年のWBCを勝ったようなものである。ファイターズは偉大なり。
〇強いてもう一人の代表選手を、というと現在の「ビッグボス」こと新庄剛志監督(背番号1)ということになる。それから壁画の中に、日ハムの初代「大社オーナー」が入っているのも感動ポイントである。とにかくこの球場は、自分たちの歴史に対するリスペクトがあるのです。
〇いやー、これは試合を見てみたい。ちなみに12日から広島カープとのオープン戦だそうです。チケットの販売状況を見ると、6月交流戦の対巨人3連戦なんかが「残りわずか」になっている。あいにく今年は阪神戦はないらしい。やっぱり試合が見てみたいものである。
〇「遊民経済学」的に言えば、これは「幾多のスポーツがファンという希少資源を取り合う時代」を先取りした、志の高い試みということになる。経済の現場とはつくづく残酷なもので、こんなイノベーションが起きてしまうと、「ほかの球場はいったいありゃ何だ」ということになってしまうし、もっと気の毒なのは浮いてしまった札幌ドーム球場である。アップルがiPodを作ってしまった後のソニーのウォークマン状態である。
〇これに比べると、国立競技場のお馬鹿ぶりがホントに情けなく思えてくるが、「箱モノ」作りはやはり民間がやらねばダメですな。お上はダメっす。
〇さて、昨日、あんなことを書いたら、今日はホントに北大まで来てくださった方がいらっしゃいました。いや、申し訳ない。地元のご愛読者Sさん、どうもありがとうございました。講演会は多数のご質問もいただき、活況であったのではないかと思います。北海道大学、また来たいです。
<3月12日>(火)
〇仕事が終わったらとっとと帰ればいいようなものではあるが、せっかく北海道に来たのであるから、新千歳空港の向こう側にある白老駅まで行って、ウポポイを覗いてくるのである。
〇国立アイヌ民族博物館に足を踏み入れた瞬間、あー、俺、ここは30分で飽きてしまうかもしれない、と危惧したのであるが、2時間いても飽きなかった。いや、だだっぴろくて空いてますけれども、いい空間ですよ。さすがは「民族共生象徴空間」であります。
〇ひとつ感心したのは、アイヌのおばあさんの語りが見られる映像があって、これを見ると『ゴールデンカムイ』アニメ版のアイヌ語が、限りなく本物に近いことが知らされたことである(映画版はそこが若干、手抜きモードであったと思う)。さすがは『ゴールデンカムイ』、北海道が全力で応援して作っているだけのことはある。
〇それから驚いたのは、アイヌの歴史の奥の深さである。実は文永の役・弘安の役(元寇)で鎌倉幕府が元の大軍を撃退する前に、北海道でも南下する元とアイヌが戦っていたらしい。やはり当時の樺太と北海道と千島は一帯であって、そもそも国境なんて概念はまだなかったのである。
〇それからウポポイの園内にはポロト湖という湖が広がっていて、これを見ているとあの名作ドラマ『北の国から』が思い出されてくる。確か五郎さんは、こんな遺言を残してくれた。「カネなんか望むな・・・・。自然はお前らを死なない程度には毎年、十分食わせてくれる。自然から頂戴しろ。そして謙虚に、つつましく生きろ」と。
〇それは実際に、アイヌの人たちが過ごしてきたライフスタイルであった。確かにこんな自然を目の前にしていると、何かを所有するという行為自体が馬鹿らしく思えてくる。どうせあの世へは持っていけないというのに。
〇この2日間の株安で、不肖かんべえの金融資産は若干の目減りをしたのであるが、それはまあ、小さなことである。まして「日銀がETF買いをしてくれない!」などと言って嘆くのはお馬鹿の極みである。4万円台の1000円安なんて、1万円当時であれば250円安に過ぎないというのに。
〇家に帰りついてみたら、今週号の「週刊東洋経済」が届いていて、特集は「株の道場 4万円時代に買える株」であった。ううむ、お前ら、恥ずかしいと思わんのか。しかるに明日からは現実に戻らねばならないのである。
<3月13日>(水)
〇北海道で過ごした3日間は13,042歩(日曜)→15,530歩(月曜)→14,366歩(火曜)と、ワシにしては連日よく歩いたのである。お陰で散々飲み食いした割には、さほど太らずに帰ってこれた。これは儲けものと言っていい(ちなみに今日は5,190歩である)。
〇しかもほとんどが雪道であったから、ただ歩くだけでも高度な技術を要するのである。われながらよく転ばずに済んだな、と思う。それというのも、現地在住の当社関係者お二方が、いずれもこの時期に雪道で転倒されて、それぞれ腕と足を怪我されていたのである。いや、お大事になさってください。特にKくん、還暦を過ぎると急速に治りが遅くなるからね。
〇幕末の頃に初めて北海道に渡った人たちも、とにかくよく歩いたはずである。松浦武四郎という人が居て、「北海道」という名称は、明治政府から「蝦夷地開拓御用掛」に任命されたこの人のアイデアによる。三重県松阪市の産である。開拓が始まったばかり頃の北海道には、全国から個性豊かなキャラが集まってきたものだが、この人もその筆頭格と言っていい。
〇ウィキ情報によれば、この人は北海道全土を走破して回り、アイヌの人々がつけていた地名を多く残し、膨大な記録を残している。その距離は実に1万キロに及び、なおかつ速さは常人に倍したという。とんでもない化け物である。彼は心底から蝦夷地にほれ込んだ(今風に言えば)「オタク」であった。
〇最初は趣味で、やがて幕府の御雇役人として蝦夷地を訪れるようになる。現地調査を続けるが、当時はただ原生林が広がる大地であるから、アイヌの人たちの助力を得るほかはなかった。行く先々で道を尋ね、膨大なインタビュー記録を残した。その道中は樺太や千島列島にも及んだそうだ。その結果、武四郎は当時における数少ないアイヌの庇護者となった。
〇褒められた話ではないけれども、日本人社会というものは集団になると少数者に対して限りなく残酷になれてしまうという欠陥がある。その一方で、ときどき武四郎のように身を張って弱者に肩入れする人も登場する。中国から来た魯迅が、仙台で藤野先生に出会ったように、そういう話は古来少なくない。
〇あの頃は本当に酷かったけれども、でも実はこういう人も居たんだよね、と聞くと少しだけ救われるような気がする。松浦武四郎はその典型じゃないかと思う。今でもこういう人が少数派ながら存在するという、いつまでもそういう国であってほしいと思うものである。
<3月14日>(木)
〇人はワシが北海道で遊び呆けている結構なご身分と思うであろうが、実はそうでもないのである。
〇今週1週間の間に、札幌と東京と名古屋で講演をやり、産経新聞と東洋経済オンラインの原稿を納め、ラジオの生放送も2つ(どちらも1時間半の長尺)こなさねばならない。でもまあ、何とかなるのである。たぶんね、きっと。
〇問題はちゃんと明日の朝起きて、ニッポン放送に向かうことである。まあ、たぶん起きられるでしょう。モーサテに比べれば可愛いもんです。朝5時に出ればいいのですから。
<3月15日>(金)
〇一昨日の春闘集中回答日の後、本日、連合が「第1回回答集計結果」を公表しました。今朝の「OK!Cozy
Up!」でも申し上げたんですが、エコノミスト予想平均値の3.7%なんてことはなくて、4%台は行くだろうと思っておったんですが、蓋を開けてみたらなんと5%台でした。
〇下記の連合さんのプレスリリースを読むと、「あんまり良過ぎるんでビックリしちゃった」という雰囲気が見て取れます。「経営側にも敬意を表する」という締めの言葉がいいですね。
33年ぶりの5%超え!有期・短時間・契約等労働者は一般組合員を上回る
〜2024 春季生活闘争 第 1
回回答集計結果について〜
【概要】
○ 平均賃金方式で回答を引き出した771組合の加重平均は16,469円・5.28%(昨年同
時期比4,625円増・1.48 ポイント増)となった。1991年(5.66%)以来
33年ぶりに5%
を超えた。賃上げ分が明確にわかる654組合の賃上げ分は11,507円・3.70%(同4,600
円増・1.37ポイント増)で、賃上げ分が明確にわかる組合の集計を開始した2015闘
争以降、最も高くなった。
771組合のうち、300人未満の中小組合358組合の加重平均は11,912円・4.42%(同
2,886 円増・0.97ポイント増)、うち賃上げ分が明確にわかる268
組合の賃上げ分は
8,388 円・2.98%(同2,664円増・0.86ポイント増)となった。
○有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、加重平均で、時給71.10
円(同9.37円
増)・月給15,422円(同4,824円増)と、昨年同時期を大幅に上回った。引上げ率(概
算)は時給6.47%・月給6.75%で、いずれも一般組合員(平均賃金方式)を上回っ
ている。
○
賃上げを含む「人への投資」を起点としたステージ転換の必要性に加え、物価高のく
らしへの影響、人手不足の現場への負荷など、足元の状況も踏まえ、月例賃金にこだ
わった組合の要求と粘り強い交渉の結果であると評価する。また、交渉に真摯に応じ
社会の期待に沿った回答を決断した経営側にも敬意を表する。
〇連合さんの集計はこの後も何度も繰り返されて、最後は7月に最終結果が出るのですが、昨年もそうでしたが初回の時とほとんど違わない結果となります。今年は特に「一発回答」、「満額回答」、さらには「要求上回る回答」まで出ると、夏まで揉めるところはあんまりなさそうです。
〇ということで、「賃上げが重要」といい続けてきた日本銀行にとっては、それこそ「満額回答」となりました。賃上げ率が5.3%ということは、定昇分を抜いてもざっくりベアは3.7%。これなら2%の物価上昇にも十分耐えられるはず。
〇ということで、週明け18−19日の日本銀行金融政策決定会合は、やっぱり決断するんじゃないでしょうか。これで「マイナス金利解除」をやらないようだと、それこそ円安に振れてしまいかねませんから。さて。
<3月16〜17日>(土〜日)
〇暖かい週末でした。いやもう春の気分ですな。絶えて花粉のなかりせば、という気はしますが、まあ、それは言っても仕方がない。
〇土曜日の柏市内は、レイソルのシャツを着た人が大勢出動していました。前期は降格の危機だったというのに、今期は強い(2勝0敗1分け)ですからなあ。もっともこの日はグランパスにやられました。好調もそうそう続くものではない。
〇柏シアターにて『ラストエンペラー』を見る。1987年の映画の4Kリマスター版である。なんと懐かしい。ジョン・ローンって、なんてカッコよかったんだろう。当時の中国はまだ貧しくて、ケ小平の時代だったから、カネのために紫禁城を撮影させる、なんてことができたのである。中国人同士が英語で話すのであるから、まあ、無茶苦茶である。
〇それにしても戦前の日本は、よくまああの広大な中国大陸に乗り込んでいったものである。音楽の坂本教授は劇中の甘粕大尉を演じているが、まあ、あんまり演技はお上手ではない。それでも黙っていると妙に迫力があるのは不思議である。なんというか、全体に「不適切」な感じがあるのが、ワシのような世代のものにとっては好ましい。
〇日曜日は町内会防犯部の打ち上げ。調子に乗って日本酒を飲んでいたら、えらく酔っぱらってしまった。まあ、なんというか、結構な週末であった。
<3月18日>(月)
〇ある人いわく。
「私も昔、人事部長をやりましたけれども、なぜ賃金を上げられなかったかといえば、お互いにがんじがらめだったからです。他社動向も全部わかっているし、自社だけが上げれば文句を言われる。組合も本音では賃上げをそれほど期待していない。何より賃上げすれば、取引先から『御社はずいぶん儲かっているみたいですね。ちょっと値下げしてくれませんか』などと嫌味を言われる。まあ、そんな状態が長く続いたということだと思いますよ」
〇今年はたまたま「みんなで渡れば怖くない」という状況が出現した。しかしこれ、来年も続くのかなあ。やせ我慢で「おつきあい」した会社は少なくなさそうだし。来年はまた違う風が吹くのかもしれませぬ。
〇要するに昔から、日本企業は「集団志向」だし「集団思考」だし「集団施行」だということ。あんまり変わっていないんじゃないかなあ。
〇ともあれ3月19日は歴史的な一日になりそうです。今日の日銀がどんな決定を下すかは、だいたい見えている。「サプライズの黒田、リークの植田」って言うらしいですな。
***先月に戻る
編集者敬白
●不規則発言のバックナンバー
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by Kanbei (Tatsuhiko
Yoshizaki)