<2月1日>(月)
○2月1日はオバマ政権が予算教書を発表する日ですが、「QDR 2010」も発表されるらしいですね。一部ですでにリークされていて、読んだ人によれば「昨年出回った構想に比べて、対中批判のトーンが弱まっている」とのこと。政治家が対中批判を強めているときに、軍人が同調することは出来ませんわなあ。そろそろ閉幕の今年のダボス会議は、「中国の悪口大会」の様相を呈していたとか。面白い現象です。
○米アップル社の「iPad(アイパッド)」が全世界で話題沸騰ですが、電子書籍って日本ではあまり流行らないような気がします。なにしろ、再販制度があるから書籍は定価販売でなければならず、それを崩さないことには浸透しにくい。もっともすでにアマゾンを介した中古本市場ができつつあるので、再販制度の崩壊もそう遠くはないのかもしれません。
○自分は古い人間ですので、本は紙媒体に限ると思っております。昔読んだ本はとっておきたいし、自分が線を引いたり、折り目をつけたりした跡が懐かしいというタイプなので、おそらく電子書籍には縁がないでしょう。そういえば、iPodもiPhoneもワシは持ってないんだなあ。
○雨が雪に変わって、東京もめずらしや銀世界。明日の朝、ちゃんと電車は走ってくれるかな。
<2月2日>(火)
○最近知ってショックを受けたこと。夫婦のどちらかが50歳以上になると、一緒に映画を見に行ったとき、入場料を1000円に割り引いてもらえるのだそうだ(ただし年齢確認が必要)。60歳以上になるとシニア料金というのは知っていたが、そんな扱いを受けてしまうとは悔しい。きっと今年の誕生日を過ぎても、「ワシはちゃんと1800円払う」などと要らぬ見栄を張ってしまいそうである。
○配偶者によれば、「だって女性は今でも、水曜日は1000円とかいっぱい割引があるから気にならない」とのこと。調べてみると、なるほど映画館の割引っていっぱい種類があるのね。「高校生友情プライス」とか、「ハシゴ割引」とか。映画館という「箱」の使用率は2割程度であるらしいから、少しでも動員数が増えるのなら割引した方がいい、という計算があるのだろう。
○とはいえ、自分が年寄り割引を受けるのは釈然としない。もしもこれが「50歳以上は当たり馬券の控除率を引き下げます」といわれれば、大いに喜んで享受しますけど。
○一足先に50歳になった某先輩曰く。「地井武男がやっている、『50、80、喜んで』という保険会社のCMがあるでしょ。あれを聞くと頭に来るんですよねえ」。なるほど。そういや、皇太子殿下のお誕生日もそろそろではなかったか。
<2月3日>(水)
○"Why May?"(なんで5月なんだ?)というのは、アメリカ国内の知日派筋から昨今、頻繁に発せられる質問で、これに対する答えが難しい。そりゃそうだ。今、決断できない問題が5月になったら決められるというのは、どういう理屈なんだろう。ワシだって聞かれたら困る。その場合は、「アメリカ人に分からない問題は、日本人にも分からない。だって鳩山さんは宇宙人だから」とでも言ってごまかすしかあるまい。
○そうこう言ってるうちに、1月24日の名護市長選挙では案の定、基地移設反対派が勝ってしまった。こんな風に、時間がたつにつれて、日本政府の選択肢は狭まってくる。やっぱり普天間の代替地は、5月には決まらないだろう。そこで、「プランBが必要だ」(アーミテージ)といった声が多くなる。
○そこでこんな知恵はどうだろう。
(1)5月になったら、連立を組みかえる。社民党と国民新党を切り離し、公明党と組む。その上で辺野古案で押し切る。これで日米合意は守れるし、公明党はもともと辺野古案支持だし、どうだ文句あるか。7月の参院選では負けちゃいそうだが、公明党のバックアップがあれば怖くない。
――いかにも「昔の小沢さん」が考えそうなシナリオだが、いかにも小沢さんらしく「保険」がかかっていない。
(2)5月になったら、「佐賀空港」みたいにダメに決まっている案を出して、「日本政府はこれに決めました」と宣言する。アメリカ側は即座に「アホか」と言う。そこで、「残念ですね。約束どおり5月には決めましたが、合意が得られないのであればさらに時間をかけて検討しましょう」と言う。結論として、海兵隊は当分の間、普天間から動かない。
――ありそうなシナリオだが、岡田外相が手の内を見せてしまった。ダメですねえ。
(3)5月になったら、それまでにいろんなことが起きて、普天間問題どころではなくなっていることを祈る。
――これがいちばん実態に近いのかも。やっぱり「プランB」が必要なんでしょうねえ。
○江戸小話にこんなのがある。
借金取りに追われた男が、「明日まで待ってくれ」とせがむ。
借金取り曰く。「今ないものが、なぜ明日になったら返せるのか」。
男曰く。「サテ拾うかも知れず、もらうかも知れず」
借金取り、「もう我慢ならぬ」と怒り心頭。
そこへ男曰く。「待てまて、もうひとつ当てがある。明日までにあなたが死ぬかも知れぬ」
○お後がよろしいようで。
<2月4日>(木)
○朝青龍が引退とのこと。寂しいねえ。というか、これでは次に両国まで見に行こうという気が起きなくなりますな。相撲のチケットって高いですから、やはり迫力のある取り組みや、キャラの立った力士がいないと、興行的には影響が出るでしょうな。
○ともあれ、朝青龍は長きにわたり、日本の相撲界にモンゴルの草原の息吹を吹き込んでくれた。彼が日本に来なかったら、われわれはずいぶん詰まらない相撲を見ていたことだろう。せめて今後は、「日本に来てチヤホヤされ、最後は不幸になった外国人」の係累につながることのないよう祈りたい。
○ということで、ワシは朝青龍の相撲が好きであった。身体の小ささを、スピードで補って、とにかく勝ちにこだわる。一流の勝負師だ。なぜ日本人力士は、あのガッツを見習えないのだろうか。世の中全般が、「朝青龍には横綱の品格がない」なんてことを言っているから、覇気のない日本人力士が量産されてしまうというのは、思い過ごしだろうか。
○彼のようなヒールは、格闘技には欠かせない存在である。どうもその姿は一部、政界の小沢一郎とも重なるものがあるのだが、あたしゃそっちはキライである。ゆえに、「小沢は不起訴、朝青龍は引退」という今日の結果は、なんか面白くないのである。
<2月6日>(土)
○昨日は岡崎研究所でやっていた「日印安保対話」に顔を出しました。インドの大学教授が数人、訪日中ということで、金田海将から召集がありまして。
○あたしゃインドのことはよく知らないので、直前に付け焼刃でこれを読んでいきました。非常に良くできた資料だと思います。以前はインドと言えば、ニーズはあるのだけれど、とにかく研究者も少なければデータもない、という感じでしたが、急速に研究が進歩したものだと思います。
○とうことで、印象に残ったことをメモ。
○政治:2009年春の総選挙では、与党コングレスが予想外の勝利を得た。リーマン・ショック以後の選挙で、与党が勝っためずらしい例といえよう。それほどインド経済が好調なのかというと、かならずしもそうではなくて、選挙の広報戦術がうまくいったこと、農民の借金棒引き政策(!)が受けたこと、76歳のシン首相と38歳のガンジー幹事長のコンビが新鮮だったこと、などが原因であるらしい。
――「世界最大の民主主義国」だけあって、選挙について調べると非常に深い。
○外交:最も重要なのは対米関係であるが、この点で微妙なのはブッシュ政権が「原子力協定」などで堂々とインドびいきをやった後で、オバマ政権はやや距離を置いていること。なにしろアフガン戦争にコミットした手前、アフガンの第2戦線たるパキスタンへの気兼ねがある。ちなみに原子力協定の立役者は、上院議員時代のバイデンだったので、彼が米印関係のキーパーソンですな。
――大きな声では言いにくいことながら、「ブッシュ時代の方が良かった」と思っていそうである。
○経済:総人口11.5億人の約半分が25歳以下。ということは、労働人口の急増が大問題である。ということで、製造業を育成することが急務となっている(現在、GDPの6割はサービス関係)。他方、農村人口が7億人もいる。彼らの生活水準が急増することが見込まれるので、これから脚光を浴びそうなのがFMCG(Fast
Moving Consumer Goods)産業。つまり石鹸、シャンプー、煙草、お茶、といった「足の速い日用品」の需要が期待できる。
――放っておくと、この辺の需要は全部中国企業に持っていかれそうである。
○"Dialogue"というよりは、ほんの1時間半の"Chat"だったので、たいした話はできなかったのですが、インド側の意見の多様性が面白かった。「中国は脅威か?」という問いを放り込むだけで、「脅威だ」「いや、貿易相手国だ」「エンゲージメントが重要である」「昔から西側ってのは、西側以外の勢力が台頭してくると脅威だと言うんだよ。日本も昔、言われただろ?」「グーグルのようなことはインドではあり得ない。だから安心して投資してほしい」など、実に豊富なリアクションが返ってくる。これぞIndia、ですな。
<2月8日>(月)
○今さらだけど、という話を何点か。
○今頃になって気づいたんですが、今年の年末でブッシュ減税って失効するんですね。そうか、もうあれから10年たつのか。ブッシュ政権が発足したとき、いきなり決めたのが1.35兆ドルの大減税でした。思わず10年前に書いた文章を探し出して読み返しましたな。
○去年から、オバマ大統領が「年収25万ドル以上のみが増税になる」と繰り返しているのは、「それ以下の人はブッシュ減税を継続する」という意味だったのね(それ以下の人=98%のアメリカ人ですが)。こんな単純なことに、あたしゃ今になって気がついた。米国情勢に詳しいエコノミスト、などと呼ばれているのが恥ずかしい。・・・・自分がアメリカで税金を払っていたら、絶対に気づいていたはずなのに。
○次にNHK大河ドラマの『龍馬伝』について。
○世間全般の評判はいいみたいですが、オープニングのCG映像が安っぽく見えるのが気に入らない。しかもなぜか、途中で、"Fighter", "Idealist",
"Peace Maker"という言葉が浮かぶ。これらは龍馬に対する評価としては、あまり適当ではないと思うし、そもそもなんで英語なんだろう。制作者の底の浅さが垣間見えような気がするではないか。
○ワシなりの龍馬像を、敢えて英単語3つで表すならば、"Innovator", "Visionary",
"Networker"といったところですな。本当は"Optimist"という言葉もピッタリだと思うのですが、これは変な意味にとられそうなので取り下げます。・・・・要はこのオヤジも若い頃に、「自分も龍馬のように生きよう」と思っていた時期があった、ってえことです。
○最後に中国経済について。
○なぜ、過去20年にもわたって高度成長が続いているのか、と聞かれて答えに窮する。「それは世界中の経済学者が困っている話で・・・・」などとごまかそうかと思ったが、なぜこんな単純な問題に答えがないのか。もっとも、それが分からないからこそ、「中国経済はいついつに崩壊する」という説が止まないわけであるが。
○これだけ長期間にわたる成功は、外部環境に恵まれたというだけでは説明しきれない。やはり政治が優秀だったと認めざるを得ません。中国共産党指導部は、非常に賢明な判断をしてきたと思います。しかも、ひとつの戦略が成功を収めたというよりは、絶えざる判断の変更が適切であった。1978年の改革開放路線、1992年の南巡講話、2001年のWTO加盟、2008年の大型景気対策など、今にして思えばまことに良くできている。
○もっとも、「これがいつまで続くか分からない」と思うからこそ、中国は脅威か、そうではないか、という議論が続くのでありましょう。きっとこれと同じ話を、世界中でやっていることでしょうね。
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編集者敬白
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by Kanbei (Tatsuhiko
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