●かんべえの不規則発言



2025年11月 






<11月1日>(土)

〇今週、ワシントンの辰巳由紀さんとリモートでお話していたら、アメリカのメディアが高市新首相に対して興味津々で、いろんなところから彼女のところに取材が殺到しているのだとか。その理由が面白い。


「アメリカ人は『政界初の女性トップ』を日本に抜かれて、悔しくて仕方がないみたい」


〇いやー、だから2016年にヒラリーが勝っておけばよかったんですよ。やっぱりガラスの天井は、破れるときに破っておかないと。カマラ・ハリスじゃ、2028年も苦しいと思いますよ。・・・というのはさておいて、「日本初の女性首相」は彼らの好奇心をいたく刺激しているのだそうだ。


「しかも新首相はChina Hawkなんだって?選択的夫婦別姓に反対?なんなんだ、それは」


〇女性で初めて首相になる人がリベラル派ではない、という点が奇異に思われるらしい。いや、議会制民主主義国では、得てして保守政党の方が女性政治家の出世は早いのです。欧州なんて、サッチャー、メルケル、メローニと見事に全部右ですからね。

〇辰巳さんとお話していると、アメリカの日常における「あっ、そうか!」にたくさん気づかされる。たとえば政府閉鎖。今日でとうとう丸1か月になってしまい、いろんな影響が出ている中で、もっともシャレにならないのが航空管制官なのだそうだ。1か月も給料が支払われていないから、現場の人繰りが不自由になっていて、これで航空事故が起きたら一大事。「責任者出てこい!」ということになってしまう。

〇しかも今月は感謝祭があり、皆が国内を大移動する時期が近付いている。日本で言えば「年末年始が近い」状態なので、「政府閉鎖、早く何とかしろ!」という声が高まりつつあるらしい。だって、「今年はターキーが食べられない」かもしれないのですぞ?

〇てな感じの辰巳さんとトークは、毎月1回、双日のイントラネットで公開されている。申し訳ないのだが、一般向けにはなっていない。すいませんね。ワシもいちおう昨日で会社は卒業したのだが、そういう仕事は引き続き請け負っているのである。あはは。


<11月2日>(日)

〇今日は朝からケータイがしきりに反応して、競馬関連LINEが賑やかなのである。

〇「えっ?フォーエバーヤングが勝ったの?」って、そりゃあビックリである。オバゼキ先生、大興奮ではないか。なにしろ秋天よりもブリーダーズカップ(BC)、その最高峰たるクラシック(G1)を制してしまったのだから。

〇ここだけの話、最近のオバゼキ先生は、株価については完全に「逆神」状態ですが、競馬に関するウンチクは深いです。非常に勉強になります。

〇というのはさておいて、フォーエバーヤングの戦績はスゴイです。4歳馬でこれまでに13戦しておりますが、そのうち10勝しております。勝てなかった3戦は全部3着で、「去年のケンタッキーダービー」と「去年のBCクラシック」と「今年のドバイワールドカップ」である。世界最高峰のレースでは3着もあるけど、それ以外は全部1着なのである。

〇これは日本競馬界にとっても歴史的な大勝利。もちろん藤田オーナー、矢作調教師、坂井瑠星騎手にとっての勝利でもあります。1着賞金は5億4600万円だそうです。ちなみに本日の秋天は3億円です。

〇ところがですな、ワシは本日は孫の幼稚園の運動会を見るために、クルマで遠出しておったのです。競馬、見ちゃおられんがな。

〇しかも朝からワールドシリーズ最終戦も始まっておる。というわけで、綱引きや組体操やリレーを見ている間に、スマホでチラチラと戦況を窺うのである。「ああっ、大谷が打たれた!」「おおっ、ドジャーズも得点しているぞ」「ええっ?山本が登板だって?」「また延長戦だよ・・・」

〇いかんですねえ。後はご存じの通りです。とにかくドジャーズが勝ってよかった。山本由伸、これでワールドシリーズは先発で2勝、リリーフでも1勝。全部で4勝しかないわけだから、MVPは当然でありますな。お疲れさまでした。

〇こちらとしては孫の活躍が楽しみな好々爺の一日だったのですが、偉業が相次ぐものだから、目を白黒させておりましたがな。


<11月3日>(月)

〇柏シアターにて、『GHOST in the SHELL〜攻殻機動隊』のリバイバル上映をやっていたので見てきました。ありがたいことに4Kリマスター版である。1日に1回だけの上映でしたが、かなり席は埋まっておりましたな。

〇この映画、1999年のSF映画『マトリックス』に絶大な影響を与えたことで知られている。ウォシャウスキー兄弟(製作当時。現在は「姉妹」になっている)は、日本に来た際に押井守監督のところへやってきて、「パクリじゃないんです、ファンなんですぅ!」と訴えたとか。実物を見てみると、冒頭、緑色の文字が流れるクレジットシーンから、もう「ははーん」という感じ。

〇未来社会、人間は限りなくサイボーグになっている。「義体」をつけることで、寿命を延ばしたり、能力を強化することがいくらでもできてしまう。頭の中も電脳化されていて、うなじの部分に差し込み口があって、ネットに接続することができる、というのもまんま『マトリックス』に引き継がれている。

〇他方、この映画には1982年のSF映画『ブレードランナー』の影響が濃厚に見て取れる。香港みたいな旧市街にいつも雨が降っているとか、主人公が「自分は人かレプリカントか」と悩むところとか、「自分の記憶は誰かに植え付けられたものではないのか」という疑いとか、いやもう「まんま」ではありませんか。

〇1995年に日本で誕生した『GHOST in the SHELL』は、いわば『ブレードランナー』に対する「打ち返し」ですね。日本のクリエイター、よくぞやったな、という感があります。「ブレードランナー」→「攻殻機動隊」→「マトリックス」という系譜には、日米のSF文化の幸福な交流があったように思われます。

〇一方で1995年と言えば、ようやく「Windows95」が誕生した頃で、インターネットはまだまだ初期段階で、せいぜいパソコン通信の「ニフティ」の会員数がやっと100万人を越えた年です。よくまあ、30年も前に、ネットの未来をここまで見通せましたなあ、という点にはしみじみ感心いたします。

〇もうひとつ、1995年と言えばTVアニメでは『新世紀エヴァンゲリオン』が放映された年でもある。「攻殻」の草薙素子(少佐)と「エヴァ」の綾波レイは、たぶんハリウッドにはけっして生み出せないキャラでしょうな。アメリカのSF映画における女性ヒーローと言うと、シガニー・ウィーバー(エイリアン)とかリンダ・ハミルトン(ターミネーター)とか、もちろん魅力的ではあるけれども、「ごく普通」になっちゃうんですよね。

〇それにして30年前の映画を見るのは不思議な経験でした。声優さんに山寺宏一さんが出てくるのが、「加治リョウジ」に聞こえて仕方がなかった一方、「人形遣い」の声がとても懐かしい感じだったのだけど、誰だかわからず。最後にテロップが流れてきたら、なんと家弓家正氏であった。

〇そうか、フランク・シナトラであったか。2014年に物故されていました。よく悪役を演じておられましたなあ。いろんなことが懐かしく思い出される30年前でありました。


<11月4日>(火)

〇柏市ではちょっとめずらしいことが起きている。来週9日は柏市長選挙の予定であったが、現職市長に対する対抗馬が表れず、無投票となったのである。既に用意してあった選挙の掲示板には、現職市長のポスターの隣に「無投票」というシールが貼られている。

〇不肖かんべえは諸般の事情により、この選挙において投票立会人を務める予定であった。午前のみの予定であるが、午前6時半に投票所に参集し、午前7時から午後1時20分まで立会する。途中、昼食が出て、数千円の報酬もある。ちなみに税額を差し引いたうえで、支払いは12月中である。

〇柏市選挙管理委員会から届いた「選任通知書」によれば、投票立会人は以下のように記されている。


1.投票立会人とは

投票所において、投票及び投票事務が公正に行われているかどうか見届ける方です。選挙制度に関する詳しい知識は特に必要ありませんが、選挙時に投票所で公正に投票が行われるよう立ち会っていただきます。


〇投票立会人は、投票事務全般に立ち会う重要な職責を有する。投票事務が公正、的確かつ迅速に処理され、選挙人が自由な意思にしたがって投票することができるよう、投票管理者に意見を申し出るなど、投票管理者に協力することが大切です、とある。

〇「トイレその他真のやむを得ない理由がある場合を除いて、みだりに投票所外へ出ない」とか、「来場者等への私語は慎重を期すよう」などとも書かれている。要は投票所に知り合いが来た時に「おはよう」というくらいはいいけれども、「〇〇先生をよろしく」などと言うのはアウトである。

〇まあ、退屈するだろうけれども、単なる野次馬根性としてやってみたかった気がする。さて、11月9日は暇になった、と思ったら、町内会の自主防災組織から「11月9日に防災避難訓練をやります」との案内が来ていた。まったく油断も隙もありませんなあ。まあ、来週末は日本シリーズもワールドシリーズもG1レースもないから、まあいいか。












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編集者敬白




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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)