●かんべえの不規則発言



2021年1月 





<1月1日>(金)

〇明けましておめでとうございます。今年はいいニュースと悪いニュースがありますね。グッドニュースは、災厄の年である2020年がとうとう終わったということであります。バッドニュースは、2021年はそれよりも悪いかもしれないということであります。――これ、今年の講演会のつかみジョークにしたらどうだろう。笑いが取れればいいけれども、そこで一気に雰囲気が悪くなってしまうかもしれないなあ・・・・。

〇去年、還暦を機に「何か新しいことを始めてみよう」と思い立ち、かんべえさん(@tameikekanbei)という名前でツィッターの発信を始めた。今朝、ふと思いついて「The Economist誌が日本のCovid-19対策を褒めている」ことをツィートしたら、ずいぶんたくさんリツィートや「いいね」を頂戴した。なるほど、これがバズるということか。スマホがしょっちゅう震えるので、今日は電池の減りが早い気がする。

〇先日、「最近のThe Economist誌の論説が情緒的になった」と書いたばかりだけれども、他国の状況をレポートするような記事はきわめて冷静で客観的だと思う。10月12日時点の記事なのでちょっと古いけど、大よそ以下のようなことを言っています。


*2月にダイヤモンド・プリンセス号の事件があったとき、日本はいかにも危うい感じだったが、100万人当たりのCovid-19による死亡者は18人で、G7ではダントツに少ない(2位のドイツは239人)。驚くべきことに、日本は厳格な封鎖や大量の検査なしにこれを実現している。「最初から封じ込めは目指していません」とウイルス学者の押谷氏は言う。

*政府はその代わりに、3月から「三密」(3c=closed spaces, crowded places and close-contact settings)の防止を目指した。このフレーズは広がり、「2020年の流行語大賞」になった。当局は厳密な封鎖と自由な開放の両極端を行き来するのではなく、対象を絞った制限を実施した。

*世界最速のコンピュータ「富嶽」を使って計算したところ、混雑した地下鉄でも窓が開いていてマスクをしていればリスクはほとんどない。会食の際に互いに斜めに座ることで、感染リスクを75%減らすことができる。映画館内でモノを食べても安全である。逆に4人以上の飲食や、密集した場所でのマスクなしの会話、寮など狭い場所での共同生活、更衣室や休憩室の利用は危険である。

*こうした警告は法的拘束力を持たなかったが、「均質過ぎる社会」と言われる日本で人々は家に留まり、政府の言うことをよく聞いた。アメリカ人はマスクが人権侵害か否かを論じているけれども、日本ではユニクロの新作マスクがずらりと並んでいる。

*日本は高齢者が多いという脆弱性があるが、肥満は成人の4.2%に過ぎず、これはOECDの中で最も低い数値である。国民皆保険制を有する優れた医療システムがあり、1930年代に始まる公衆衛生ネットワークもある(訳注:保健所のこと)。

*ここ数週間でウイルスは急拡大し、政府は最悪の地域に自衛隊の医療部隊を派遣しなければならなかった。それと同時に、国内の観光や外食産業への補助策を廃止するのではなく、一時停止にとどめている。北半球はどこでも寒さが人々を「三密」空間に押し込んでいるが、それでも日本の感染者数は劇的に低いベースで増えている。


〇日本の「保健所」というところでは、食品衛生の摘発や医療機関への立ち入り調査、理髪店やクリーニング屋さんの監督、母子手帳の交付にペットの殺処分までやっているんですよ、などと余計なことを教えてあげたくなる。そのせいでPCR検査が増えない、というのはいかがなものかとは思うけど、他国から見れば信じられないほどうまく行っている。これも一種のファクトフルネスということで。


<1月2日>(土)

〇週明けのアメリカ政治について少しだけ書いておこう。1月5日(火)のジョージア州決選投票が勝負だと思っていたら、トランプ大統領が狙っているのは1月6日(水)の方であるらしい。

〇1月3日(日)になると、昨年の選挙で新たに選ばれた議員さんたちがワシントンDCに集結して、第117議会が発足する。そして1月6日には、昨年12月14日に行われた選挙人の投票結果を確認する。ここで1月20日に誕生する大統領が最終決定するわけだが、少なからぬ共和党議員が「ちょっと待ったああ!」と異議申し立てをするらしい。

〇真っ赤っかのレッドステーツの下院議員さんとしては、とりあえずそうしておいた方が無難である。そうでないと、2022年の共和党予備選挙において「我こそは真正共和党員(トランプ支持者)なりぃ!」という挑戦者が現れて、恐ろしい思いをするかもしれない。「俺もやっぱりトランプさんが勝ってたと思うんだよね」というポーズをとることは、彼らにとって安全策となる。

〇逆に上院はどうかというと、もちろん「異議あり!」という共和党議員は出るだろうが、ミッチ・マコーネル院内総務は何事もなかったかのように押し切る構えである。面白いね。とりあえず上院は、トランプ大統領が拒否した国防授権法案をサラッとオーバーライドしました。この戦い、まるで平清盛と後白河法皇みたいであります。

〇2021年のワシントンDCにおいて、最重要人物はジョー・バイデン次期大統領ということになりますが、ナンバーツーは間違いなくミッチ・マコーネルでありますな。そしてこの二人は、上院における長年の付き合いがある。麗しい友情とも言えるし、腐れ縁とも言える。当面の米国政治を動かすのは、この2人の後期高齢者ということになるのだろう。

〇1月5日のジョージア州決選投票については、とりあえず1勝1敗と予測しておくのが無難だろう。どちらかの2勝ゼロ敗となると面白いけれども、時代は保革伯仲、白でも黒でもないグレーの世の中になりそうだ。お互いに極端なことができない状態で、手探り状態でコロナ対策に邁進する。そんな2021年が始まるのではないだろうか。


<1月3日>(日)

〇静かなお正月、ついつい2日間にわたって、これほどしつこく見たことはかつてないほど「箱根駅伝」を見てしまう。いやあ、見所満載でしたな。駒澤大学、総合優勝おめでとうございます。最終10区での逆転劇は歴史に残るでしょう。創価大学もあっぱれでした。2位で悔しいと思えるのは幸福なことであります。青山学院大学、復路は見事に本領を発揮しましたね。原監督はやっぱりたいしたものです。

〇見ていて気になったのが、沿道には結構、人が出ていたこと。そりゃあそうですわな。ウチも沿道に近かったら、きっと見に行ったことでしょう。いくら「自粛」を求めても、人の動きは止められません。皆さんマスクをしていて、声を出さずに静かに拍手を送っていたのが印象的でした。あれを責めちゃあいけませんわな。

〇だったら昨日、1都3県の知事が政府に「緊急事態宣言」の発動を求めたのは何なのでしょう。緊急事態宣言を出したからといって、いきなり箱根駅伝を中止させられるものではありません(スポンサーから訴訟を起こされて、膨大な賠償金を取られるのが落ちでしょう)。彼らとしては、とりあえず下駄を政府に預けて、「私はもういっぱいいっぱいですぅ〜」というアピールをしたかったのだと思います。

〇ここで政府はどうすべきか。最善手は「聞こえなかった」ことにして、1月18日に始まる通常国会で、新型インフルエンザ特措法をスパっと改正することでしょう。現状、既に屋上屋を重ねるようなアクロバットな法解釈を重ねておりますので、その前に新たな緊急事態宣言を出してしまうと、ややこしいことになってしまいます。ここは仕切り直しをして、もう少し法律に強制力を持たせたいところです。

〇もっともそれは上策過ぎて、今の日本政治の能力に鑑みると現実的とは言えません。「上策・中策・下策」と3つあるときは、まずは中策を確かめよ、とは故・岡崎久彦大使がよく言っておられたこと。大事なことは下策を避けることでありまして、人は得てして窮地に陥ると「それだけはやっちゃダメ!」ということをやってしまうのです。

〇今回のシチュエーションにおける下策は、ホイホイと緊急事態宣言を出してしまうことでありましょう。そのカードを切ったからと言って、所詮は強制力はないのですから、現状と大差があるわけではない。そして一連の政府対応の失敗を認めることになってしまう。だったら「痛くないふり」をする方がはるかにマシです。

〇しかもそれは小池都知事の思うつぼ。昨日のパフォーマンスは、1月3日の朝刊の紙面を取りに行った、と読まなければなりません。もはや東京五輪を開けるかどうか、なんてことは彼女の脳裏にはないのでしょう。菅内閣の支持率は低下しているが、野党への期待感はもとより高まらない。となれば自分に出番があるかもしれない。こういう当今には希な政局魂は、夙に見習うべしであります。

〇もっとも「緑のタヌキ」が何度も人をだませるとは思われず、小池待望論が澎湃として巻き上がるような情勢でもございますまい。となれば政府が取るべき中策とは、「専門家の意見をよく聞いて決めます」と逃げを打つことになります。どうやら事態はその方向に向かっている様子。くれぐれも慌てふためいてはなりませぬ。


<1月4日>(月)

〇昨日、あんなことを書いたらあ〜あ、菅首相は1都3県に緊急事態宣言を検討するとのこと。その上で来たる通常国会において、特措法の早期改正するとのこと。二重三重の意味で「ドロナワ」でありますが、そんなことでいいのでしょうか? まあ、今さら取り繕っても仕方がないのでありませぬが。

〇さっそく今日のうちに講演会中止の連絡が来てしまった。このお正月に作った資料を、今朝送ったばかりだというのに! 鮨屋と同じで、このネタは来週になったらもう使えない。だって状況が変わってしまうから。ああ、この間の努力がもったいない。哀しすぎるぞ。 

〇余計なことだが、講演会を依頼してくるときに「資料は1か月前に送ってください」とか言い出すクライアントがたまに居る。あのなあ、戦国武将の業績を語るのならともかく、エコノミストが経済予測とか国際情勢を語るときに、1か月前はないだろう。などと文句を言うと、「いや、印刷の都合がどうこう・・・」などと変な言い訳をされることがある。これはもう、そんな仕事を引き受けたのが間違いである。

〇まあ、コロナに対して文句を言っても仕方がない。せめて原稿の書き溜めでもやっておこう。これも事態が変わっても使えるネタ、というとかなり難しくなるのだが、この仕事にはつきものの事態ではある。などと終日、在宅ワークである。この道はいつか来た道。

〇ところで昨年末に収録したナベさんとの対談が、今日のウェブフォーサイトに掲載されていた。ご紹介まで。


●「アフター・トランプ」か「ウィズ・トランプ」か


〇おっととと、ユーラシアグループの「Top Risks in 2021」が発表になっていた。油断もすきもない。取り急ぎ以下ご紹介まで。


1 46* (第46代バイデン大統領)
2 Long Covid (長引くCovid)
3 Climate: net zero meets G-Zero (排出ゼロも世界はGゼロ)
4 US-China tensions broaden (米中関係の緊張広がる)
5 Global data reckoning (グローバルデータが止まる)
6 Cyber tipping point  (サイバーの転換点)
7 (Out in the) cold Turkey (冷え込むトルコ)
8 Middle East: low oil takes a toll (中東:低い油価は犠牲を伴う)
9 Europe after Merkel(メルケルなき後の欧州)
10 Latin America disappoints (ラ米の失望)

リスクもどき:トランプのお友達は窮地に? 米テック企業への反発、米イラン関係


<1月5日>(火)

〇本日はジョージア州上院選挙の決選投票。@民主党の2勝ゼロ敗、A民主党1勝、共和党1勝の痛み分け、B共和党の2勝ゼロ敗、という3通りの可能性があります。ま、即日結果が出るという感じではないので、答えが出るまで2〜3日はかかるかもしれません。

〇世間的には、@の場合はどうなるんだ!?というのが気になるところでしょう。上院の議席数が50対50になると、議長役を務める副大統領の1票がモノを言うので、民主党が優位になる、というところまではご存じかと思います。とはいえ、その場合のMajority Leaderはどうやって決めるのか? 委員長ポストは分け合うのか? 各委員会のスタッフはどうやって決めるんだ? など無限に疑問がわいてきます。

〇ホントに50対50になったことって過去にあるのか?という疑問が生じるかと思うのですが、1881年にもあったし、近年では2001年のブッシュ・ジュニア政権がそうだったんですね。このときのことについて、何と20年前の溜池通信が取り上げております。題して「ジェフォーズ上院議員の議」。いやあ、懐かしい。あのときは共和党がトレント・ロット、民主党がトム・ダッシュルが院内総務でした。ますます懐かしい。

〇当時はこんなことになりました。


 上院内の委員会運営は従来通り共和党が独占する。つまり委員長ポストはすべて共和党が取る。ただしすべての委員会で配属議員数を共和、民主で半数ずつとする。スタッフ採用予算も折半し、採用人数も同数。そしてここが重要なところだが、「議員の辞任や死亡により、50 対50の均衡が崩れたら、自動的に既存の上院規則を適用する」というものである。

 一見、民主党が損をするように見えるが、共和党の現職上院議員には病状が悪化しているヘルムズ議員、98歳という高齢のサーモンド議員がいる。この2人が死亡ないし引退すると、どちらの選挙区も州知事は民主党なので、代役になる上院議員は民主党になる。その時点で与野党の均衡は逆転する。民主党としては「先憂後楽」を狙った妥協策だった。

 案の定、2月2日にサーモンド議員は「過労のため」入院する。このときは4日に退院して事無きを得たが、「100歳まで議員を続ける」という同議員の元気がいつまで続くかは神のみぞ知る。共和党にとっては、上院で時限爆弾を抱えているようなものである。

 ところが両人が無事であるにもかかわらず、4月24日、ジェフォーズ議員が共和党からの離脱を宣言した。これにより議会内勢力は民主50、共和49、独立1となった。民主党には思ったより早い「棚からぼた餅」となった。これで上院指導者(Majority Leader)の座は、共和党のロット上院議員から民主党のダッシュル上院議員に移る。そして委員長職は全部民主党が取る。与野党は逆転し、1994 年以来続いてきた共和党による上院支配が終了した。


〇つまりですなあ、50対50なんていう異常な状態は、長くは続けられないんですよ。2001年もわずか4カ月で終わってしまいました。議員の死亡、辞職、離党などいろんなケースがあるので、今回、仮に50対50になるにしても、その状態が中間選挙まで続く、とは考えにくいです。共和党サイドからすれば、ウェストヴァージニア州のジョー・マンチン上院議員あたりが狙い目になりますな。民主党側からは、ミット・ロムニーやスーザン・コリンズの離党を働きかけるでしょう。

〇マーケット的には「50対50になるとドル安」みたいな読み筋が出てくるところでしょう。しかしアメリカ政治オタク的な見地から行くと、まあ、こんな不自然なことは長くは続かんよ、てなことになるかと存じます。はい。

〇てなことで、明日夜は日経CNBC「夜エクスプレス」に出没いたします。うむ、久しぶりだなあ。


<1月6日>(水)

〇今日は1日に何度もこのページこのページを見て確認してましたが、ジョージア州の上院決選投票は2つともしびれるような接戦でした。見るたびに「2勝ゼロ敗」「1勝1敗」「ゼロ勝2敗」と移り変わり、最終的にはどちらも1%以内の差でありますから。

〇特別選挙の方は、どうやら民主党のラファエル・ウォーノックが勝ち。222万7296票対217万3866票と約5万票差。でも現職のケリー・ロフラーさんは負けを認めない。何しろトランプさんの負けも認めていないくらいですから、そりゃ当然ですな。

定例の上院選は決着していないが、98%開票時点で挑戦者のジョン・オソフが220万8717票、現職のデイビッド・パデューが219万2347票とわずかに1万6370票差。「どこかで1万7000票ほど見つけてこい!」とトランプさんが言い出しそうな状況です。

〇パデュー陣営では最終盤で選挙スタッフがコロナに罹患して、候補者自身が自主隔離となって姿を見せられなかった。それがなければどうなっていたことか。選挙戦はつくづくわからないものですな。トランプさんが現地に乗り込んだ効果も、どうやらマイナスだったという評価になるのではないか。

〇そんな中で本日、1月6日は第117議会が選挙結果を確認する日であります。上下両院の議長役を務めるマイク・ペンス副大統領としては、ここは粛々とバイデン氏の当選を認めなければなりません。トランプさんは「裏切り者め!」と怒るかもしれませんが、副大統領が従うべきは大統領ではなく、合衆国憲法に対してであるべきです。20年前のことを思い出せば、あのときはアル・ゴア副大統領が議長役で、ジョージ・W・ブッシュ知事の当選を認めたのでありますから。

〇てなことで、「疑似・トリプルブルー」になりそうな雲行きですが、だからといってバイデン政権の前途が明るいとは思われない。今日はアメリカの長期金利が久々に1%台に乗せました。財政赤字の拡大を予測しているのでしょうね。にもかかわらずドルは下落。つまり「悪いドル安」が進んでいる。

〇株式市場だけは理由を探しては上げ続ける感じですが、債券と為替市場は注する必要がありそうです。


<1月7日>(木)

〇今日は日本が緊急事態宣言、アメリカは首都が非常事態。なんというか、アメリカの「一番長い日」でありましたね。まさかキャピタル・ヒルに暴徒が突入するという「絵」を見ることがあろうとは。

〇しかもそれは現職大統領の扇動によるものであった。アメリカの民主主義の歴史における汚点と言っていいでしょう。今日の混乱が、一連の「トランプ劇場」のフィナーレになってくれるといいのでありますが。

〇明日はモーサテに出動いたします。今年最初の溜池通信も出さねばなりませぬ。さて、何と書いたものでしょうか。


<1月8日>(金)

〇緊急事態宣言が出た割には、緊張感の薄い一日であったような気がします。週明けはどんな感じになるのでしょうか。

〇今朝はモーサテへ。パックンと掛け合い。昨日のワシントンの出来事について、もうちょっと聞いてみたかったかな。

〇朝の仕事が終わってから、いつものご褒美は吉野家で牛すき鍋膳。今日は肉ダブルで。ああ、なんて幸せ。まるで井之頭五郎さんの気分。彼はチェーン店には入らないけれどもね。

〇帰りに東スポを買い込む。三連休は「おうちで競馬」。これもまあ、得意中の得意科目である。呑気なように見えて、自分なりの緊急事態対応をしているつもりである。


<1月9日>(土)

〇本日アップされた東洋経済オンラインの投稿はこちら→「アフター・コロナ」は意外と明るい時代になる

〇アクセスランキングの上位に来ているのは、たぶん編集F氏が選んだ『華麗なるギャッビー』の写真のせいじゃないのかと思います。このロバート・レッドフォード、カッコ良過ぎるんです。これではミア・ファーローは、彼の元に戻ってきてしまうのではないか。

〇昨日の「モーサテ」の最後の部分で、ちょこっとこの話のサワリ部分を話したのでありますが、隣にいたパックンがすぐに反応してくれて、「"Roaring twenties"は日本語で何ていうんですか?」と尋ねられた。「『狂乱の20年代』でいいんだよ」と教えてあげた後で、「今、彼は正しく『ローリング・トゥエンィーズ』と言ったよな」(つまり日本語発音で)と気づいて、パックンの日本語力の底知れなさを思い知ったのでありました。

〇もっともパックンの場合、世代的にはレッドフォードじゃなくてデカプリオの方だろうな。まあ、カッコいいことに変わりはないのだが。


<1月10日>(日)

〇今宵のNHK BS1「レジェンドの目撃者 サブマリン山田久志」は眼福でござったな。1970年代のプロ野球を見た者としては、山田投手の下手投げフォームの美しさ、速球やシンカーの魅力は忘れがたいものがある。いやもう、ホントにすごかったのだから。

〇今では白髪となった山田久志氏は、当時のブレーブスの山口高志や足立光宏投手との葛藤も語ってくれた。日本シリーズで、王貞治選手に打たれたサヨナラホームランの悔しさも。いやあ、あの頃のプロ野球はすごかったのである。阪神タイガースファンも、阪急には一目おくのが礼儀作法というものであった。

〇高校生時代のワシはなぜか山田久志投手のサインをもらっていて、それはどこかに行ってしまった。申し訳ないことをしてしまった。それでも今宵は、憎らしいくらいに強かった阪急ブレーブスをしみじみ思い出した。今のオリックス・バファローズには、その影も形も残っていないのでありますが。


<1月11日>(月)

〇日本海側がスゴイ豪雪になっている。今朝、ニッポン放送の「飯田浩二のOK! Cozy up!」に出演した際に、気象庁の方と電話がつながったので、「これっていつ以来ですか?」と尋ねたら、「35年ぶりです」という。それって1986年のことではないか。

〇ワシは覚えておるぞ。入社2年目の若手社員だったが、正月に田舎に帰ろうとして上越新幹線に乗ったら、長岡駅から先の電車が動いていない。やむなく長岡市で一泊して、その翌日にかろうじて富山まで行きついた。「ニュースで散々やってるのに!」と母にきつく怒られた覚えがある。あの年の降雪はすごかった。とにかく1日に5回くらい雪かきしないといけなかった。

〇でも、それって昭和61年のことなんだよね。若い人は知らんだろうなあ。って、当たり前か。何しろワシがもう還暦なのだから。今年はそれくらい珍しい豪雪の当たり年ということである。

〇今朝の番組で語った内容の一部が、こんな風に紹介されている。(隔離と旅行制限はあまり効果がない」と15年前のWHO)。せっかくだから、元ネタを紹介しておきましょう。こちらからダウンロードできます。

●Avian Influenza : assessing the pandemic threat

〇この報告書のP31-33に、「20世紀の3つのパンデミックからの教訓」という12か条がある。以下、ベタ貼りしておきましょう。


Lessons from the three pandemics of the last century

(1).Pandemics behave as unpredictably as the viruses that cause them.
During the previous century, great variations were seen in mortality, severity of illness, and patterns of spread.

(2).One consistent feature important for preparedness planning is the rapid surge in the number of cases and their exponential increase over a very brief time, often measured in weeks. The severity of illness caused by the virus, which cannot be known in advance, will influence the capacity of health services, including hospitals, to cope, but a sudden sharp increase in the need for medical care will always occur.

(3). Apart from the inherent lethality of the virus, its capacity to cause severe disease in non-traditional age groups, namely young adults, is a major determinant of a pandemic’s overall impact.
Milder pandemics are characterized by severe disease and excess deaths at the extremes of the lifespan (the very young and the elderly).

(4). The epidemiological potential of a virus tends to unfold in waves.
Age groups and geographical areas not affected initially are likely to prove vulnerable during the second wave. Subsequent waves have tended to be more severe, but for different reasons. In 1918, the virus mutated, within just a few months, into a far more virulent form. In 1957, schoolchildren were the primary vectors for spread into the general community during the first wave. The second wave reached the elderly, a group traditionally at risk of severe disease with fatal complications.

(5).Virological surveillance, as conducted by the WHO laboratory network, has performed a vital function in rapidly confirming the onset of pandemics, alerting health services, isolating and characterizing the virus, and making it available to vaccine manufacturers.

(6).Over the centuries, most pandemics have originated in parts of Asia where dense populations of humans live in close proximity to ducks and pigs. In this part of the world, surveillance for both animal influenza and clusters of unusual respiratory disease in humans performs an important early warning function.

(7).Some public health interventions may have delayed the international spread of past pandemics, but could not stop them.
Quarantine and travel restrictions have shown little effect. As spread within countries has been associated with close contact and crowding, the temporary banning of public gatherings and closure of schools are potentially effective measures. The speed with which pandemic influenza peaks and then disappears means that such measures would probably not need to be imposed for long.

(8).Delaying spread is desirable, as it can flatten the epidemiological peak, thus distributing cases over a longer period of time. Having fewer people ill at a given time increases the likelihood that medical and other essential services can be maintained and improves capacity to cope with a sharp increase in demand for care.

(9).The impact of vaccines on a pandemic, though potentially great, remains to be demonstrated. In 1957 and 1968, vaccine manufacturers responded rapidly, but limited production capacity resulted in the arrival of inadequate quantities too late to have an impact.

(10). Countries with domestic manufacturing capacity will be the first to receive vaccines.

(11).The tendency of pandemics to be most severe in later waves may extend the time before large supplies of vaccine are needed to prevent severe disease in high-risk populations. The interval between successive waves may, however, be as short as a month.

(12).In the best-case scenario, a pandemic will cause excess mortality at the extremes of the lifespan and in persons with underlying chronic disease. As these risk groups are the same as during seasonal epidemics, countries with good programmes for yearly vaccination will have experience in the logistics of vaccine administration to at least some groups requiring priority protection during a pandemic. While such a strategy can reduce excess mortality, sudden and large increases in morbidity, and a correspondingly high demand for medical care, should nonetheless be anticipated.


〇パンデミックは20世紀に大きなのが3回あった。それらをスカッと忘れているのは、われわれ自身の責任である。いや、個人的に豪雪のことは覚えていたのですが。


<1月13日>(水)

〇7府県に緊急事態宣言とのこと。既に行われている1都3県に合わせると、1都2府8県ということになります。

〇先日、こんな数字を教わりました。「1都3県はGDPでは日本の3分の1」、「不要不急消費は全消費の3分の1」。つまり1都3県に対して不要不急の行動を自粛させると、個人消費は9分の1減になることになります。「不要不急消費」というのは、当溜池通信的に言えば「遊民産業」のことですなあ。

〇さて、アメリカのクラフト国連大使が台湾を訪問する、と言っていたのを急きょ中止になったようです。これは「台湾の国連再加盟の話が進むのかな?」などと期待していたのですが、どうもそんなことはなさそうです。

〇同じタイミングでポンペオ国務長官の訪欧も取りやめになっているところを見ると、「残り1週間のトランプ政権に余計なことをしてほしくない」というのが世の外交官たちの反応のようです。そりゃあそうだよね。あと1週間でバイデン政権が始まるのだから、「わがなき後に洪水来たれ」の政権にかき回されたくはないですよね。

〇蔡英文総統としても、ここで何らかの実績を作りたくはあるけれども、大きな成果は期待しにくい。それに台湾は共和党とのコネは十分に作ってあるけれども、民主党とはつながりが薄いんですよね。民進党はリベラル政党なのに、なぜかアメリカでは共和党と相性が良い。今回も、トランプ再選を願っていたに違いありません。

〇他方、去り際にいろいろ実績を残したい、というトランプ政権の意図もよくわかります。要は野に下ってから、「バイデンは中国に甘い!」と言いたいのでしょう。単純だけど、確実な手法です。それではバイデン政権はどんな対中政策を採るかというと、あんまりそういう声は聞こえてきませんなあ。むしろ欧州との和解や対イラン核合意への復帰に注意が向かっているようです。ちょっと心配であります。


<1月14日>(木)

〇トランプ大統領の2度目の弾劾訴追が成立。任期は残り1週間だというのに、無茶をやりますなあ。それくらい1月6日の連邦議会議事堂占拠という事態が重かった、というのはわかりますが、これではバイデン新政権はどんどんやりにくくなるばかり。あと1週間で発足するのに、閣僚の承認手続きはまだ一人も済んでおりません。

〇上院における弾劾裁判は、さすがに新政権発足後にやるそうです。あれをやり始めると、ほかの件すべてがが先送りになってしまいますから。上院はその前に閣僚人事の承認を済ませなければならず、おひとり様2000ドルの給付金を含む再追加刺激策も通さねばならず、この際、弾劾裁判は夏くらいまで引っ張る方がよいかもしれません。水に落ちた犬は今すぐ叩くより、溺れて息も絶え絶えになった頃に叩く方がよい、という判断も成立するわけでして。

〇その前にトランプファミリーと会社が日干しになるかもしれません。とりあえずドイツ銀行の取引停止は効くだろうなあ。まともな取引先がこれから次々と抜けていきますので、「トランプ」ブランドにとっては辛い展開でしょう。カネを持たない純粋な支持者だけが残る、というのは最悪な展開なわけでありまして。

〇いかなる偶然か、1月12日にトランプ氏の最大のサポーター、シェルドン・アデルソン氏が87歳で亡くなっていた。カジノ王で、ラスベガスサンズのオーナーでありまして、トランプ政権の対イスラエル政策における最大のスポンサーでもありました。サンズ社は昨年、日本市場におけるIR建設に見切りを付けましたが、こういうことになるのであればあれは正解であったといえるでしょう。

〇なんだかすごい勢いで物事が動いておりますなあ。公私とも併せて、ちょっと心がささくれ立つようなことが多い日でありまする。


<1月15日>(金)

〇バイデン氏が追加コロナ対策1.9兆ドルを発表。注目の現金給付は1人当たり1400ドルだそうだ。先の9000億ドル追加策で一人当たり600ドルを配布するのだから、併せてちょうど2000ドルでいいだろ、ということのようだ。この辺が中道穏健派で現実主義者のバイデン流である。「えっ?2000ドルくれるんじゃなかったの?」と言って怒っている人もきっといるだろう。

〇バイデンさんとしては、もっとほかのことにおカネを使いたかったようで、@失業保険の特例措置の延長、Aワクチン配布などの医療支援、B財政難の州政府への支援、C中小企業対策なども盛り込んでいる。さらにインフラ投資などの経済再建策は、2月の一般教書演説(大統領就任の初年度は両院合同演説となる)で打ち出すとのこと。

〇問題はこれが議会を通過するかどうか。「最初の100日」の間くらいは、上院共和党が協力してくれるかもしれない。バイデンさんとミッチ・マコーネル院内総務の長年の情誼が通じるかどうか。そこには当然、トランプさんの弾劾裁判の問題がかかわってくる。さて、マコーネル氏はどういうディールを狙うのか。ひょっとすると「トランプ斬り」を図るかもしれませんな。
















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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)