●かんべえの不規則発言



2017年8月 






<8月18日>(金)

○とってもめずらしいことに、スティーブ・バノン首席戦略官がインタビューを受けている。記事はこちら。表題が"Steve Bannon, Unrepentant"(スティーブ・バノンは悔い改めず)とある。その後、ブライトバートニュースの方でも取り上げられている。たぶんそっちで短縮されている方が、ご本人が言いたかった部分と拝察する。たぶん一番強調したいポイントはここ。


“To me,” Bannon said, “the economic war with China is everything. And we have to be maniacally focused on that. If we continue to lose it, we’re five years away, I think, ten years at the most, of hitting an inflection point from which we’ll never be able to recover.”


○つまり中国との経済戦争に勝ち抜くことが一番大切である。そのためにはスーパー301条でも何でも使うと言っている。それから北朝鮮問題なんて、どうせできることは何もないのだと醒めている。


Bannon also told Kuttner that there was nothing the U.S. could do about North Korea, given the likelihood of mass death in South Korea as a result: “There’s no military solution [to North Korea’s nuclear threats], forget it. Until somebody solves the part of the equation that shows me that ten million people in Seoul don’t die in the first 30 minutes from conventional weapons, I don’t know what you’re talking about, there’s no military solution here, they got us.”


○実際、おっしゃるとおりである。それから、時節柄、この部分も注目度大である。シャーロッツビルで騒いでいる連中は、右も左も碌なもんじゃなくて、「民族派のナショナリストなんて負け組だ」と吐き捨てている。小気味いいね。


In the course of their discussion, Bannon also slammed the right-wing extremists who protested in Charlottesville: “Ethno-nationalism? it’s losers. It’s a fringe element. I think the media plays it up too much, and we gotta help crush it, you know, uh, help crush it more. … These guys are a collection of clowns.”


○左翼は「アイデンティティ政治」をやっていればいい。自分はあくまで「経済ナショナリズム」でいく、とのこと。時代の先を行く天才というものは、思い切り独特でシンプルな視点を持っていることが多いものですが、なるほどバノンは他人とは違う景色を見ている人物のようです。

○もっともこういう記事が出たことで、ホワイトハウスの同僚たちは迷惑したみたいだし、「アイツはやっぱり目立ちたがりだ」という批判も高まるだろう。新しい首席補佐官であるジョン・F・ケリーはどういう態度に出ますかね。とりあえず、「俺は財務省やゲーリー・コーンや、ゴールドマンサックスのロビイングと闘っているんだ」という発言が外に出たのは拙かったでしょうなあ。


<8月19日>(土)

○昨日、あんなことを書いたら、早速スティーブ・バノンが解任されちゃいました。あのインタビューが命取りだったようです。WSJ日本語版の記事は下記のように伝えている。


 サラ・サンダース大統領報道官はこの日(注、8月18日)の声明で「ホワイトハウスのジョン・ケリー首席補佐官とスティーブ・バノンは今日をスティーブの最終日にすることで互いに合意した」と述べた。

 大統領とバノン氏の関係には波があったものの、リベラル派政治誌「アメリカン・プロスペクト」とのインタビューが決定打になったようだ。バノン氏はこのインタビューで白人至上主義集団を「ピエロ」と呼び、大統領の企業寄りの顧問団をやゆした。また、トランプ氏の公的見解とは裏腹に、北朝鮮に対する軍事行動の可能性を否定した。

 関係者によると、バノン氏にはアメリカン・プロスペクト誌に話した内容を公表する意図はなかった。



○Axiosでは、「スティーブ・バノンのホワイトハウスにおけるタイムライン」という記事を載せている。これ、お役立ちです。


2016年8月17日 トランプ選対がバノンをCEOに採用

2016年11月15日 インタビューで「闇は良いものだ。ディック・チェイニー、ダース・ベイダー、サタン、それは力なり」と答える。

2017年1月27日 NYT紙に対して「この通り引用してほしい。メディアは野党だ。この国を理解していない。なぜトランプが大統領に選ばれたか、未だにわかっていない」と告げる。

2017年1月28日 トランプ大統領がイスラム圏からの渡航一時停止措置を発表。バノンの進言とされる。

2017年2月23日 バノンがCPACで「行政システムの破壊」を宣言する。

2017年4月5日 NSC常任メンバーから外される。

2017年4月6日 辞任説がささやかれるも「決闘は大好きだ」と答える。

2017年6月1日 トランプがパリ協定離脱を宣言。これもバノンの進言。

2017年7月21日 スカラムーチが広報部長に採用されてスパイサー報道官が辞任。プリーバス首席補佐官も解任。バノンの地位も微妙に。 

2017年7月26日 「トランスジェンダーの入隊を禁じる」とトランプがツイート。これもバノンの意見。

2017年8月7日 8月14日発効の辞表を提出。

2017年8月15日 シャーロッツビル事件に対するトランプの3回目のコメントを称賛。

2017年8月16日 アメリカン・プロスペクト誌のインタビューに答える。

2017年8月18日 「今日をスティーブの最終日に」


○それにしても、バノンがトランプ選対に採用されたのは、ちょうど1年前の8月17日です。その時点でトランプ選対はガタガタで、ヒラリーに勝てるとはだれも思っては居なかった。それから1年。世の中がこんな風になるなんて、いったい誰が予測したことか。

○今後のバノンは、古巣であるブライトバードニュースに戻るのだそうです。同誌はさっそくもろ手を挙げて歓迎しています。


‘Populist Hero’ Stephen K. Bannon Returns Home to Breitbart


○以上、取り急ぎ。


<8月20日>(日)

「週刊報道Biz Street」の播磨キャスターによれば、「経済番組としてはネタ枯れのこの時期に、たくさん話題を提供してくれるトランプさんは、とってもありがたい存在」なんだそうだ。確かに米朝対立といい、シャーロッツビルでの暴動事件への対応と言い、もっと無難に済ませる方法はいくらでもあったのに、わざわざ乱を求めるようなことをやらかしてくれている。単に我慢が足りないだけなのかもしれないが、番組としてはまことにありがたい。

○政治のやり方としては非常に拙い。今年1月に発足した当時の主要メンバーは、ペンス副大統領以外はことごとく政権を去っている。各省の長官は決まっているけれども、「局長クラス」のポストは埋まっていない。例えば米朝二国間交渉がいよいよ始まるとして、国務省の東アジア担当次官補が決まっていない。誰がやるんでしょうね。まさかティラーソン御大にやってもらうわけにもいかず・・・・。

○それに加えて、「バノンなきトランプ政権」はどういうことになるのか。クシュナーやゲーリー・コーンやMMT(マクマスター・マティス・ティラソン)が中心で政治が回るようになるなら、一見、大いに結構なことのように思える。でも、それで支持者がついてきてくれるか、あるいはトランプ大統領自身がそれで満足するのか。なにしろ、「やっと学習してくれたか」と思って安心していたら、いつの間にか初期設定に戻っているような人ですからね。

○バノンがこれから何をするつもりなのか、という問題もある。古巣のブライトバードニュースに戻って、「トランプのために戦う」と言っている。何しろ「トランプ支持者」は彼が発見したようなもの。トランプはバノン抜きで次の選挙を戦えるのだろうか。もっともバノン自身はビジネス出身の人なので、FOXニュースを相手に一戦交える、というのもアリかもしれない。あるいは「経済ナショナリズム」を軸に、新しい政党をつくる、なんてこともあったりして。

○とりあえずは週明けの世論調査を見たいところです。






























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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)