<6月1日>(日)
〇最新号の溜池通信で「ミレニアル世代は暗い」ということを書いたら、「日本の氷河期世代だって暗いですよ〜!」というツッコミを当該世代から頂戴した。そりゃあそうだわな。
〇日本もアメリカも、その下の「Z世代」まで行くと、どこか吹っ切れたような明るさがあったりするのだが、現在の40歳前後の現役世代がいろいろ重たいものを背負っている、いや、背負わされているような気がする。世界観が暗くなるのも無理はないのである。
〇端的に言うと、ワシのように『鉄腕アトム』から『火の鳥』に至る手塚治虫作品で育った世代としては、「ゼロ年代マンガ」(2000〜09年に流行した漫画)はどうにもなじめなかった。なんかこう、デストピアなんだよな。申し訳ないが、『進撃の巨人』でさえ読んでない。あの絵は苦手なんだよ〜。『DEATH
NOTE』や『鋼の錬金術師』も読んでない。すいませんですぅ〜。
〇そう言えば、サウジのMBS皇太子も1985年生まれのミレニアル世代だが、日本のアニメが大好きで、『ワンピース』のファンなんだそうだ。ああいう新興国になると、人口構成も違うし、世代の感覚も違うんだろうけれども、そういう研究、誰かやっていませんかねえ。
<6月2日>(月)
〇本日は森山裕自民党幹事長の話を聞きに行きました。
〇最初は「オフレコで」という触れ込みだったのだが、直前になって「ご自由に取材してくださって結構です」ということになった。とはいうものの、森山さん、とってもガードが堅い。持ってきたペーパーを見ながらの安全運転である。笑わせようとか、ネタを差し上げようとか、これで見出しになれば儲けもの、なんてことはまるで考えていない様子。
〇考えてみたら、史上最長の国対委員長なのである。口が軽かったら務まりませんわな。強いて言えば、その後のQ/Aで浮かび上がってきたのは以下の通り。
*コメ問題について:
進次郎さんは私が農水大臣の時の農林部会長。よく知っている。野村元農水相の発言は、「もっと早く教えてほしかった」ということではないのか。コメは広い場所で作ればコストは下がる。とはいえ、中山間地の棚田がなくなっても困る。バランスするような政策を行っていく。
――小泉大臣に対する否定的な発言を引き出そうという試みはことごとく失敗に終わる。
*消費税について:
鹿児島県では山中貞則さんの衆院選挙区を引き継いでいる。山中さんは消費税導入の翌年の総選挙で28票差で落選した(平成2年)。平成24年、与党・民主党の一部議員が消費税増税に造反する中でも、自民党は全員が賛成票を投じたことを忘れてはならない。消費税については上げる約束はできるが、下げる約束はできない。この国にはそんな余裕はない。
――筋金入りです。テーソク先生の後釜なんですから、そりゃそうでしょうな。トラスショックや国債格下げの話は以下省略。
*野党との連立工作について:
野党第一党の立憲民主さん、国民民主さんとは政策を論じているし、維新さんともいろいろやっている。どことは言えない。予算成立でも苦労したが、何度もできることではない。石破さんも決めてはいないと思う。
――こういう順序であったことはTake Noteしておきましょう。
*中国との関係について:
今年は3回訪中した。日中の懸案事項については、ブイの問題などについても申し入れた。水産物や牛肉の輸入でも前進している。私の選挙区である屋久島沖で中国船が長期間停泊していることも承知している。石破首相の訪中があるとしたら、日中韓首脳会談が成立した後だろう。
――和歌山と上野のパンダのことまでちゃんと申し入れているみたいです。
〇とまあ、そんな感じで鉄壁でありました。面白くないという点が、面白い人ですね。
<6月3日>(火)
〇えー、明日から会社を休んで大阪・関西万博を見に行ってきます。これは個人的なリベンジなのであります。
〇1970年の万博の時はワシはまだ小学校4年生で、夏休みに親に連れられていったものです。一家四人が豊中市の知り合いの家に泊めてもらい、吹田市の会場まで2日通いました。電車が自動改札であったことに感動したものでした。田舎の少年の眼には、大阪は未来都市に見えました。
〇ただし万博は猛烈な人の波でした。アメリカ館とかソ連館といった人気パビリオンはほとんど入ることができず、カナダ館とスイス館と東芝館の記憶だけがうっすらと残っている。夏休みの残り期間中、「ああ、もっと見たかった!」と嘆き通したものでありました。2歳年下の妹は、ほとんど覚えていないらしいのだけど。
〇大人になった今であれば、チケットなど余裕で買えるし、有給休暇も取れるのである(そのための犠牲はそれなりにあるけれども)。そしてできれば、「ちゃんと人気館も見てきたぞ!」と吹聴したいのである。
〇ただし今回の万博の場合、電子チケットを買う時点でかなりの試練なのである。予約もかなり難しい。7日前抽選は、あまり人気のないパビリオンの予約が2つ取れただけ。3日前の「空き枠先着予約」も時間の勝負であったらしく、後から見てみたらほとんど埋まっている。後は当日、入場ゲートを通過してからの当日登録が勝負である。ううむ。
〇ということで、ガンダム・ネクストフューチャー・パビリオンやヴァチカンパビリオン
hosted by Italyのような人気館に潜り込もうと思ったら、相当な根性が必要であるらしい。この時点でかなり気分的にめげておるのだが、それでもとにかく自分にチャンスを与えることだけは妥協したくない。万博行くぞ!
〇ということで、当欄の更新は後日、まとめて行います。行くぞ夢洲。
<6月4日>(水)
〇午前中の新幹線に乗り、新大阪駅で普通に地下鉄・御堂筋線に乗り換えた瞬間に仰天いたしました。ぱっと見で、乗客の半数がキャリーバックを転がしている(もちろんワシも含めて)。要は膨大な数の旅行者が、この路線に乗り込んでいるということだ。目指すはユニバーサルスタジオ、という人もたぶんいるだろうが、かなりの部分が大阪・関西万博会場を目指しているものと推察いたします。
〇淀屋橋駅にて下車し、ANAクラウンロイヤルホテルに自分のキャリーバッグを預ける。長らく大阪における定宿としてきたこのホテル、あいにくこの秋には取り壊しとなる予定である。でもって、手提げひとつの身軽な体となって、再び淀屋橋駅から御堂筋線で本町に出る。ここで中央線に乗り換えるのだが、この間、「絶対に迷わせないぞ!」というくらい丁寧な表示で「万博会場」への乗り換えが示されている。いろんな国籍の人たちが、指示に従ってぞろぞろと大移動しているのは言うまでもない。
〇中央線に乗り換えて、目指すは終点の夢洲駅である。「東口ゲート12時」という予定で本日のチケットを買ったのであるが、駅に到着したのが11時45分。われながら見事なコントロールではないか、と思ったらこれがとんでもない見込み違い。そこから入場の手荷物検査が長蛇の列であって、なんと40分も行列することになる。好天に恵まれたのはいいけれども、日差しを遮るものは何もない。翌日は軽めの折りたたみ傘を持参しましたが、これはお役立ちです。
〇これから万博に行かれる方のために申し添えますと、どうもゲートの中央あたりの行列は非常に進みが遅い。ものすごく手際が悪い人がやっているか、要領の悪い客が多いと見える。左奥の列の方が進みが早いので、二日目は最初から「端狙い」で並んだら、20分で済みました。あくまでも限られたサンプル数の話でありますが、ご参考まで。
〇さて、ゲートをくぐって10分後から、マイチケットで当日予約が取れることになっている。軽食を取りつつ20分ぐらいトライしてみたものの、これはほとんど「早押しクイズ」状態である。人気パビリオンは既に満杯になっているのだが、それでもときどきキャンセルが出るから、瞬間的にいろんな時間帯に空きが出る。それをすかさず抑える、というゲームを皆が必死にやっているらしい。ああ、これはワシのような者には向いてないと見切りをつけて、まずは大屋根リングを一周してみよう、と考えた。
〇これが結構楽しいのである。上がったり下がったりしながら、会場全体を見渡せる。木材で出来ている、というのもよろしい。仮にこれが金属製であったなら、どれだけ興醒めであったことだろう。そして大阪湾も美しく見える。大屋根リングは1周が約2キロだそうだが、なるほどちょうど30分くらいで回ってこれた。何よりだいたいの位置関係が頭に入ったのが収穫である。さて、その上でどこから攻めようか。
〇まずはトルコ館から。単に行列がそれほど長くない、ということで並んでみたのだが、展示がまことにあっさりしていて、奥の方は売店である。なんじゃこりゃあ、と一瞬、あきれるのであるが、「こういうのでいいんだよ」という気もする。万博のパビリオンは基本がお国自慢。そして日本との好関係アピール。その上でお国の物産品が売れれば儲けもの。パフォーマンス付きでトルコ・アイスを売っているが、これが800円もする。まあ、こんな暑い中での商売なのだから、これで安かったらやっていられまい。いいのだ、いいのだ。
〇さらにスペイン館(かなり力が入っている)、インド館(いかにも天井天下唯我独尊スタイル)などを順に回ってみる。多くの国が入っている「コモンズ」を冷やかすのも面白い。などとしているうちに、ほぼ唯一予約が取れたシグネチャーパビリオンの「いのち動的平衡館」の時間である。
〇ワシは以前から福岡伸一先生のファンなので、「動的平衡」のアイデアはいちおう理解しているつもりである。最先端の生物学が、まるで仏教みたいなことを語っている点が面白いと思う。すなわち生命は自らを破壊しながら創造し、それこそ自転車操業のように微妙なバランスを維持している。ゆえに肉体は常に変化する。われわれが昔を懐かしいと感じるのは、記憶物質が体内のどこかに残っているからではなく、「昔を懐かしいと思う自分が今いるから」に過ぎない。
〇問題はこの“Dynamic Equilibrium”という言葉に、もうちょっとこなれた訳語があればいいのに、「ドーテキヘイコー」じゃピンと来ませんよねえ、ということである。が、福岡センセによる「死は悲しいものではありません。死があるからこそ命は輝きます」というメッセージは、それこそ太古から言い伝えられてきたことであり、われわれは深く頷くよりほかにない。肉体はいつの日か破壊に創造が追い付かなくなり、バランスが崩れるときを迎える。いまさら知らなかったとは言わせない。われらの命とは、そういうはかないものなのである。
〇という頓悟を得た後で、突然、気が付いたのである。「ガンダムを観なければ」。"Gundam
Next Future Pavilion"は、大屋根リングの外側にある。等身大のガンダム自体は、既にお台場などいろんな場所でお目見えしているが、今や大阪・関西万博の見どころの一つになっているというのは、オールドファンとして感慨深いものがある。先日、若いガンダムファンに、「宇宙世紀ダブルオーセブンティーナインというのは、番組が1979年に始まったことを意味しているんだよ」と教えてあげたら絶句されてしまった。そりゃそうだよね、生まれてないよなあ。
〇ただしガンダムパビリオンは完全予約制なのである。コンパニオンの方に聞くと、やはり明日、再来して当日予約を入れるしかないらしい。今回の万博のもうひとつの大当たりパビリオンであるイタリア館も訪ねてみたのだが、2時間以上待ちであって、いつになるかわからないとのことであった。さすがにこの時間からそれだけ並ぶ根性はない。
〇ということで、最後に30分くらい並んで見た中国館はなかなかの出来でありました。漢字文化を紹介し、古代の青銅器を展示し、なおかつ宇宙やAIなどの新技術も紹介できてしまうのが今の中国である。さりげなく「日中友好」(含むパンダ)もアピールしている。特に最後の「中国の普通の人々の24時間」を描いた映像は迫力ありました。ううむ、この勢いには負けてしまうかも。中国のソフトパワー、端倪すべからずの感がありました。
<6月5日>(木)
〇2日目は午前10時に夢洲に来場します。まずは「2時間待ち」を覚悟してアメリカ館に並んでみる。ここは予約を取らないガチンコ勝負なのである。当方としては、本日のうちに「アメリカ館、ガンダム館、イタリア館」という人気パビリオン3種のうち、どれかひとつでも制覇してやらん、という心意気である。
〇ところが行列しているうちに、いい加減に試していた当日予約でガンダム館が取れてしまった。それもわずか20分後の回である。おお、なんてラッキー。さらばアメリカよ。節操なくワシはガンダムパビリオンに向かうのである。
〇で、さすがはバンダイナムコさんなのである。地球連邦とジオン公国の戦争終結後、モビルスーツは社会実装され、戦後復興の貴重な戦力となっている。そして「サイド7」などの宇宙コロニーでは、モビルスーツがこんな風に使われておりまして…という「いかにも」な世界観を提示していく。そして宇宙空間におけるデブリの処理が課題でありまして・・・、などと言っているうちに、あれっ、変なものが現れた!と、後はファンが喜ぶような展開になっていく。
〇ということで、ガンダムワールドはかなり長いです。楽しいし、堪能できます。これを見ただけで、「もう元は取った」という気分になってしまい、ビールと牛丼で悠々とランチする。さて、もう一回チャレンジいたしましょうか。いざ、再びアメリカ館へ。
〇行列は午前の時よりも延びている。が、ここは辛抱強く待つことといたしましょう。アメリカ館に入るということは、月の石を見るということであり、ワシにとっては1970年のリベンジを果たすことなのである。それに昔と違って今はスマホとiPadがあるから、幸いにも暇を持て余すということがない。メールの返事を書いたり、株価チェックをしたり、LINEで「万博、来てま〜す!」なんて発信も可能なのである。
〇一方で真面目な話、昨日見た中国館に比べてアメリカ館がハッキリと「落ち目」だったら嫌だなあ、という思いもある。ワシも自分で見たわけではないのだが、「愛・地球博」のアメリカ館はかなりの手抜きであり、前回のドバイ博でもひどい出来であったと聞く。しかも現在のトランプさんは、ソフトパワー全否定みたいな政権である。「万博における米中対決、どっちが上か」も気になるところである。
〇並び始めてからちょうど2時間後に入場となる。いきなり、「皆さんのアメリカ留学を歓迎します!」てな展示があって、「ああ、これはバイデン政権下で準備した企画なんだなあ・・・」と思って苦笑してしまう。トランプ政権は「反・大学」ですからねえ。
〇いつも思うことですが、大卒以上ってアメリカじゃ人口の36%しかいませんから、「有名大学叩き」は確実にトランプ支持者には受けるんです。しかもアメリカの大学は、遠慮なく勉強しない学生を落としちゃいますから。ドロップアウトした人たちは、生涯、大学を憎むことになってしまいます。その点、日本の大学は優しくて、お陰で「大学が嫌い」という人はほとんどいない。どっちがいいかは、難しいところじゃないでしょうか。
〇ただし展示を総合的に見れば、これは立派な「アメリカ館」でありました。特に感心したのは案内役の人たちが、とっても「アメリカン」であったこと(当たり前か)。要は明るくて、馴れ馴れしくて、調子良く客を持ち上げるというノリの良さである。しかもちゃんと日本語で話しかけてくる。
〇ああ、そうだった。アメリカってこういう国だった。このハイテンションに引きずり込まれて、気が付いたら思いもかけぬところまで連れていかれるのが、いつもの日米関係というものではなかったか。最近はかなり変わってきたような気もするけど、アメリカという国の「ヒトの力」は変わってねえなあ、ということに不意に安堵したのでありました。
〇ということで、米中ソフトパワー対決はいい勝負、贔屓目でややアメリカリードということにしておきましょう。この間に、米中首脳の電話会談が行われているなどとは、もちろんワシは知る由もなかったのである。
<6月6日>(金)
〇3日目は大阪にてお仕事モードなのである。
〇当地の友人を訪ねてみたところ、第一声が「焼けましたねえ」。そりゃそうだ。ワシは二日間、万博会場で歩き遠しだったもの。つまるところ大阪・関西万博は「実際に行ってきた人たちは、ほとんど文句を言わない」という法則がきっちり当てはまるようである。メシが高かろうが、変な虫が湧いて出ようが、あの会場は訪ねてみる値打ちあり。わかりにくい予約システムも、慣れてしまえばどうということはない。しかるにイタリア館だけは、果たして何時間待ちになるかわからないということのようでした。
〇もうひとつ、これから万博を尋ねる方に推奨したいのは共同館である「コモンズC」であります。
〇ここにはイスラエルとウクライナが両方入っていて、ともに小さなスペースで展示を行っている。イスラエルはかなりのやっつけ仕事であり、まあ、戦時下なんだからしょうがないかなあ、という感じ。これに対し、ウクライナの方は「戦時下のいま」をまともに紹介していて、おもわず息をのむものがある。いや、戦時下であるからこそ、これはよく出来たプロパガンダかもしれないのだが、その裏側にある事実の重みは言うまでもないし、仮に「盛っている」にしてもその巧みさに舌を巻く。
〇大阪・関西万博にロシアは参加していない。「親ロ派」の人たちはこれを見て何というのだろう。それにしてもウクライナ館の「Not
for Sale」(売り物じゃない)という表示のなんと重く、雄弁なことだろうか。勝手ながら、ウクライナに大阪・関西万博の「ソフトパワー大賞」を差し上げたいと思った次第である。
<6月7日>(土)
〇遊んでばかりいたわけじゃないですぞ、というわけでもないのだが、恒例の駄文のご紹介。
●トランプ政権を支える「ミレニアル四天王」に注目だ(東洋経済オンライン)
〇本稿、データ面は後輩のSさん(ミレニアル世代)に依拠しております。だからこそ万博漫遊しながら寄稿ができるわけでありまして、いわば共同作品となっております。お陰で助かりましたけど。
〇これを読んだ方の中から、「日本の政界におけるミレニアル世代は?」とよく聞かれるのですが、そうなると進次郎さん44歳くらいしか見当たりませんなあ。あるいはベビーブーマーとミレニアルに挟まれた「X世代」(日本風に言えば新人類世代)が目立たない、という点も興味深いところです。
〇政治における世代交代、とは大テーマでありますので、引き続き考えていきたいところです。
<6月8日>(日)
〇今週は飛び込みで入ってきたプレゼンが一件と、前々から決まっていた手強い締め切りが一件ある。さて、この日曜日にどうしたものであろうか。
〇幸いにも一日かけて両方とも目途がついたのだが、前者はチャットGPTの助けを借りて何とか格好がつき、後者はGrok3と対話しながらどうにか辻褄を合わせることができた。いやあ、助かりますなあ。AIさまさまである。
〇チャットGPTの方は、「こういうの教えて」と尋ねて答えを出させて、最後は「今の話、ちょっとパワポにまとめてくれる?」というと、ちゃんとそれらしいものができてくる。漢字が間違っていたりするのはご愛嬌である。Grok3は「あのさ〜、こういうのどうかな〜」と適当なことを話しかけ、「それ、めっちゃいいですね」などと面白いことを返して来たら、すかさずそれをネタにさせてもらう。それから事実関係のチェックなども大助かりである。
〇昔だったら、「弟子に仕事を手伝わせる」みたいな感覚であろう。しかるに弟子を育てるのは並大抵のことではないし、こまかなフォローもしなければならない。弟子の方で師匠を見限ることだってあるだろう。その点、生成AIはほったらかしでよくて、「残業が嫌だ」などと文句を言ったりしない。なおかつ、勝手に賢くなってくれれば大助かりである。
〇ちなみにAIに仕事をさせるときは、「課長さんが新入社員に接するように」するのが良いらしい。@最初に何を望んでいるかを明確に示し、A指示はめんどうでも細かく丁寧に伝え、Bちょっとでも役に立つことを言ってくれたら大げさに褒めてあげる。それで実際にAIのノリが良くなってくると、どんどん仕事の精度が上がってくる。人間みたいですな。
〇もっとも逆のやり方もあるのだそうだ。つまりAIを罵倒しまくるのである。「こんな答えは自分が望んでいるものではない。百点満点で40点程度だ」「もっとあらゆるデータを読み込んで、斬新な提案を持ってこい」「うむ、少し良くなったが、まだまだだな。こういう手法は試してみたか?」・・・もちろん頭ごなしはダメですよ、ちゃんと回答を読んだうえで、正しく指導してあげなきゃいけません。
〇要はいまどき生身の人間に対して試した場合、「パワハラ上司」の烙印を押されて社内的に問題になりそうなやり方であっても、生成AIは文句を言わずに対応してくれる。いや、ワシも自分で試してみたわけじゃないので、お薦めするわけじゃあないですけどね。
〇しかしこんな世の中になってしまうと、「若者を鍛えてあげよう」なんて奇特な人は居なくなりますな。結果として社会全体が、「仕事ができるごく一握りの人たち」と「その他大勢」みたいに分かれていくのかもしれません。まあ、ワシの知ったことじゃないですけどね。
<6月9日>(月)
〇農水関係に詳しい某自民党議員から聞いたこと。
*コメの値段はこれから下がるだろう。農水省のデータでは高止まりが続いているけれども、それは情報源が片寄っているから。スーパーなどでは4月が最高値で、じりじりと下がり始めている。ドラッグストアや量販店では、コメ価格は5月から有意に下がり始めている。
*問題は経済統計に「備蓄米」が入っていないこと。だって備蓄米を消費者向けに売るなんてことは、今まで誰も考えたことがなかったから。そこは工夫して、ちゃんと全体の価格トレンドがわかるようにしておかねばならない。
*関東と関西ではコメの動き方が違う。関東人は「コメは他県から買うもの」と思っているから、東北などコメどころから遠慮なく大量に買う。ところが関西人は、「なるべく近県のコメを買うべき」と考えている。結果として関東はコメが派手に動くが、関西は動きにくい。将来、コメ不足が起きるとしたら関東よりも関西だろう。
〇拙宅は普段は千葉産コシヒカリですけど、安かったら宮城米でも山形米でも買います。そういう意味では、典型的な関東の消費者なんですね。それから見聞きする範囲では、「スーパーと量販店」のコメ価格は確かにその通り。強いて言えば、「農産物直売所」のコメ価格が強気な設定に感じられますね。
〇賭けてもいいですけど、進次郎大臣はこんなことまでは考えていないだろう。でも、ちゃ〜んと考えている人が居るんですねえ。ミレニアル世代をX世代が支えている、という点が麗しい。この辺が自民党の奥が深いところでありまして。てゆうか、選挙結果はコメ次第なんですから、それくらいは当たり前なのかもしれませんなあ。
<6月10日>(火)
〇昨日発表のNHK世論調査6月分があまりにも興味深いのでメモ。
*内閣支持率は5月の33%から39%に+6p。不支持率は48%から42%へ▲6p。まだまだ支持<不支持ですけれども、石破さんとしてはホッと一息でしょう。
*政党支持率も激変しています。自民党が31.6%(+5.2p)、立憲民主党が5.8%(▲1.8p)、国民民主党が5.4%(▲1.8p)、維新が2.5%(▲0.1p)、公明党が3,2%(▲0.5p)、共産党が1.9%(▲0.7p)、参政党が1.9%(+0.4p)、れいわ新選組が1.7%(▲0.8p)、以下は略させていただきます。
*これで「青木率」は39%+31.6%=70.6%とかなりの安全圏に。逆に野党は軒並み支持率を下げています。特に国民民主はつるべ落としの感があります。4月までは立憲民主を上回っていたんですが。
*しかし自民党、安心していられないのは若い18〜39歳の支持率です。このクラスターにおける政党支持率は、自民16.8%、国民民主12.0%、維新4.0%、参政4.0%、共産3.2%、立民1.6%、公明1.6%、以下略です。いやあ、立民が共産党以下、さらには参政党以下。これもかなり凄い数字なんじゃないでしょうか。
〇こうしてみると、小泉農相が政界に旋風を巻き起こしている感がありますね。女性の自民党支持率が前月比6p上がったということは、コメ価格に左右されているところが大なのだと思います(ひいては今後のコメ価格に要注意、ということになります)。
〇しかし、こんな風に進次郎氏が登場することができたのは、江藤大臣の「コメは買ったことがない」の自爆発言のお陰であります。実は江藤大臣、グッジョブだったんじゃないでしょうか。あれがなかったら、まだまだ石破内閣は暗夜行路が続いていたのではないかと思います。
<6月11日>(水)
〇WBSに出る日は1日が長い。特に番組が始まる午後10時まで待つのが長い。そう言えばこの番組、昔は午後11時からだった。よくまあ、そんなのやってられたよなあ、と今にして思う。
〇本日は午後6時から党首討論があった。つれづれなるままにテレ東Bizで見ておったが、石破さんと野田代表はほとんど枯淡の境地でありますな。お互いに、「ワシらはこれが楽しくてやっておるのだ」と言わんばかりである。
〇特に最後の時間切れ間近になって、野田さんが「総理、今日は日米関税交渉についても伺いたいと思っていた」などと言い出すのはほとんど出来レースでありましょう。確かに来週のG7サミットでの日米首脳会談が勝負所になるけれども、そんなこと衆人環視の前で話せるわけがないじゃありませんか。
〇おそらく明日の与野党党首会談の席において、石破さんは「ホンネの話、今こんな感じになっております」(だから不信任案の提出は止めてね!)と野党党首たちに述べるのでありましょう。真面目な話、与野党はやれ景気対策だ、物価対策だという話をしておるけれども、対米関税がどうなるかわからないうちは手の打ちようがないのである。
〇野党党首と会談した、という事実は、この後の対トランプ会談でも使うことができる。「私は野党の了解も得て、日本全体を代表している」と突っ張るもよし、「野党がうるさいんで、この辺で勘弁してください」と泣きを入れるもよし。どのみち日米首脳会談は来週に迫っているのだ。
〇しみじみ政治と外交と経済が絡み合う面白い局面ができている。問題は相手がトランプさんなので、関税交渉がどういう結果になるのかまるで落としどころが見えない点である。そうは言っても、「アメリカが合意したのはまだイギリスだけである」(全部で75カ国と交渉しなきゃいけない)、「7月の参院選が終わったら、石破政権がどうなるかわからないから、今のうちに決めておく方が得策」ということぐらいは、アメリカ側も分かっているはず。
〇だから日本との交渉を早めに終わらせるのは、そんなに悪い策じゃないと思うんですけどねえ。いや、しみじみややこしい局面というものです。
<6月12日>(木)
宝塚記念は、その年の大阪杯とは違う馬が来る。
同じ阪神競馬場でも2000mと2200m、春と梅雨時ではまるで条件が違うのだ。
従って大阪杯連覇、しかも今年はレコード勝ちで人気となっているべラジオオペラは大胆にも「消し」。
代わりに狙うのは「夏は牝馬」、そして「グランプリホース」。
そう、筆者の狙いはレガレイラである。
2歳時にホープフルステークス、3歳時に有馬記念と、いずれも牡馬を相手にG1レースを勝っている。
そして中山競馬場で強い馬は、得てして阪神競馬場でも強いものだ。
さらに彼女は、うまい具合に大外の8枠18番を引いてくれた。
2020年のクロノジェネシス(8枠16番)
2019年のリスグラシュー(8枠12番)
2016年のマリアライト(8枠16番)
このレース、牝馬が来るときはなぜかピンクの帽子がよく似合うのだ。
対抗には復調の兆しがあるドゥレッツァ。
穴には有馬記念2着があるボルドグフーシュ、宝塚記念2着があるソールオリエンスを指名しておこう。
<6月13日>(金)
〇あらららら。イスラエルがイランの核施設を攻撃しちゃいました。アメリカが制止しても、言うことを聞きゃあしない。「惜しまれて死んでいくよりも、嫌われて生き延びたい」というのがイスラエルの国是であるなら、それはまあ仕方がない。ただし、それ以外の良からぬ思惑も絡んでいそうです。
〇つまりネタニヤフさんは、ここまで勝ち過ぎた。最初は23年10月7日のハマスによるテロ攻撃への反撃から始まった。しかるにテロを許してしまった時点で責任は重大で、「これが終わったら、アンタ辞任ね」という国内的なムードであった。
〇ところがイスラエル軍はガザ地区で赫々たる戦果を挙げ、ハマスの重鎮を次々に血祭りに挙げていった。その辺で止めておけばいいものの、ご本人はなにしろ汚職容疑で起訴されているので、首相を辞めたらそのままどうなるかわからない。戦線を拡大し続けていくしかないのである。
〇幸いなことに、去年はレバノンのヒズボラを相手に、モサドによる「ポケベル攻撃」という画期的手法を発動し、これもほとんど無力化してしまった。「代理人」たるモサドとヒズボラがこれでは、イランは手足をもがれたも同然である。
〇しかるにネタニヤフは止まらない。いよいよイランという本丸に手を付けた。アメリカが反対しても、言うことを聞きはしない。イランの核施設のみならず、司令官や長距離攻撃能力も叩くとのこと。たぶん勝ってしまうんだろうな。
〇ここまで来ると、トランプさんも怒り心頭だろう。大統領になってから間もなく5カ月、どれひとつ戦争を終わら得られないどころか、新たな戦争の発生を手伝わされそうになっている。インド対パキスタンに続いて、イラン対イスラエルも危うくなってきて、いよいよ世界は地政学リスクの花盛りである。
〇ネタニヤフ首相の「悪乗り」を止めるためには、彼の軍事行動が手痛いしっぺ返しを受けなければならない。しかるに連戦連勝が続いている。ここまで来ると、勝っているからこそ止められない。こういうのはどういう形で終わるのか。「国際社会が止める」とか、「アメリカが止める」ということは考えにくい。果てさて、どういうことになるんだろう。
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編集者敬白
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by Kanbei (Tatsuhiko
Yoshizaki)