●かんべえの不規則発言



2025年5月 





<5月1日>(木)

〇今日、ちょっとだけショックだったこと。「飯田浩司のOK!Cozy Up!」に出た際に老眼鏡をかけていたら、撮られた写真のワシはまるで石破さんみたいであった。


https://x.com/cozy1242/status/1917702062000988438 



〇余計な話をひとつ。昨日のコメンテーターが鈴木一人教授で、明日の出演が宮家邦彦さん。この3人、誕生日がとても近いです。そのせいか、なんとなく近しいものを感じております。


<5月2日>(金)

●米が関税で「合意枠組み案」提示 車・鉄は交渉外の意向、日本は反発


日米両政府が米首都ワシントンで1日(日本時間2日)に開いた関税交渉に合わせ、米国側が合意に向けた「枠組み案」を提示したことが分かった。相互関税を主な対象とし、自動車や鉄鋼・アルミニウムの関税引き下げに難色を示す内容だった。日本側は強く反発し、閣僚協議の場で一連の措置の包括的な見直しを改めて求めた。


〇そりゃーまーそうだろうな、とは思う。大統領が勝手に税率をいじれるのは相互関税(IEEPAが根拠)の方であって、鉄鋼アルミと自動車関税は通商拡大法232条に根拠を置いている。後者は簡単には変えられない。この程度のことは、先日、意見交換した某自動車会社の方も言っていた。「失望した」とか言ってる方が世間知らずである。

〇逆に言えば、IEEPAを軸とする相互関税は、それくらいいい加減なスキームなので、この際、徹底して揺さぶった方がいい。それは世のため人のため、アメリカ国民の為でもあるし、ひどい税率を課せられているベトナムやカンボジアの為にもなる。

〇幸いにも日本側は慌てる理由がない。せいぜい「6月中旬のG7の際の日米首脳会談で大枠合意にこぎつけられれば勿怪の幸い」くらいである。対外的には、「あのおとなしい日本でさえ、難色を示している」というトーンで受け止められる方が良いだろう。

〇こうなると赤沢大臣が(ご本人曰く)「格下の格下」で、単なる御用聞きくらいにしか見えないのはかえって好都合かもしれない。この先もトランプ政権にとって、前途は山あり谷ありですから。その間に物価が上がってくれればいいのですけどね。

〇それにしても、トランプ政権で最初にクビになった幹部がマイケル・ウォルツNSAとは驚きました。ここはヘグセス国防長官を飛ばすべきでしょう。もっとわからないのは、クビにしたウォルツをそのまま国連大使に指名したこと。議会承認が得られるかどうか、上院民主党は手ぐすね引いて待っていると思いますぞ。


<5月3日>(土)

〇昨日、ラジオNikkeiに行ったら、中野雷太アナウンサーにお目にかかった。「お久しぶりです」と言いつつ、「でも、お声はいつも(競馬中継で)聞いてます」と言ったら、「私も飯田浩司さんの番組で聴いてます」(たまたま前日がワシの出番だった)と美しく返されてしまった。

〇でもって新しい名刺を頂戴したのだが、なんと「取締役」にご昇進されていた。おおおお、そうだったのか。それは責任重大。でも、実況中継はずっと続けてほしい。中野さん、圧倒的に上手いんだもん。

〇放送(交流戦)のお相手は大関旬アナウンサーである。打ち合わせしている時は普通の話し方なのに、マイクを前にすると急に声が通るようになるのはこの職業ならではか。小生のつたないコメントをいちいち深掘りしてフォローしていただきました。ということで、本命はマイネルエンペラーなんです。

〇それから、いつもは電話インタビュー(市場関係者の眼)でご一緒している岸田恵美子さんと、めずらしく放送でご一緒する。そしてこのパワーフレーズがある。


「マーケットがお休みの週末は、どうぞ競馬でお楽しみください」


〇ええ、そうしますとも。連休ですけど、遠出の予定はありませんから。「春天」の予想は、いつも通り上海馬券王先生をご参照ください。


<5月4日>(日)

〇昨日は乃木坂にあるサントリー美術館の『酒呑童子ビギンズ』という展示を見てきたんですよね。これがムチャクチャ面白かったのであります。

〇「酒呑童子伝説」にはいろんなバリエーションがあるわけですが、その中でも基本となったのが室町時代に出来た「酒呑童子絵巻」でありまして、小田原北条氏が所有していたものが、江戸時代になって広がったようであります。現在はサントリー美術館が所蔵していて、これの解体修理が終わって大公開されているのですよ。

〇絵巻物、というとこれはもうほとんど「マンガ」の原型ですな。しかも「正体不明のおっかない酒呑童子」、「それを倒しに行くミッションを与えられる源頼光」、「頼光を支える渡辺綱などの四天王」、「鬼たちの内部事情を教えてくれる洗濯女」・・・という展開が、まるでよくできたロールプレイングゲームである。

〇しかも続編として「酒呑童子はどうして誕生したのか」というアナザー・ストーリーがあって、これがまるでアナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーになってしまう『スターウォーズ』みたいに哀しいお話しなのである。あなかしこ、あなあなかしこ。

〇どうもわれわれは、「面白い物語設定」「キャラづくり」「絵と文字の組み合わせ」について長い歴史を有しているらしい。本邦「マンガ」の歴史は手塚治虫に始まるけれども、それには長いながいプロローグがあった様子である。サントリー美術館グッジョブ!と申し上げたい。

〇それにしても都内の美術館、いろいろあって飽きないものがあります。根津美術館では国宝の「燕子花図」(光琳)を展示していて、しかも日本庭園では本物のかきつばたが咲き誇っております。ちょっと混んでるけどねえ。


<5月5日>(月)

〇今ごろになって見てきましたですよ。『機動戦士ガンダム ジークアクス』劇場版を。柏シアター、上映の1時間前にネットでチケットを買った際には10席分くらいしか売れていなかったが、行ってみたら結構な客数であった。

〇冒頭、懐かしい音楽とともに、「宇宙世紀ダブルオーセブンティーナイン」というナレーションが聞こえてくる。ああ、もうそれだけでワシの脳内は大学生の頃に戻ってしまう。「ガンダム」に使われる効果音はあの当時と変わっていないのだ。ただしシャア少佐の声は変わっている。そりゃそうだ。見ているワシが還暦を過ぎているように、声優さんたちも年を取るのだ。

〇それにしてもガンダムワールドである。いちいち説明がないところが好ましい。「ミノフスキー粒子」って、アンタ当然、分かっているよね、という不親切設計である。キシリアやマグべが出てくるのは今さら驚かないが、「寒い時代だと思わんか」のワッケイン司令が出てくる。フラナガン博士が出てくる。しまいにはミライさんに振られたカムラン主席補佐官まで出てくる。

〇でまあ、コロガリのいいドラマなのである。テレビアニメシリーズの冒頭部分なのだ。早速、アマプラでエピソード3まで一気見してしまう。ああ、久しぶりにアニメの世界に浸っている。しかもガンダムワールドがエヴァンゲリオン風の絵で展開するのだから堪えられない。

〇てなわけで、この連休、たいしたことはしていないのだが、3日連続で全く仕事を考えていないのは清々しいものである。明日になったら少しはニュースにも気を付けるべきであろうか。

〇あ、そうそう、これだけは言っておかねば。米津玄師、アンタは本当に天才だ。痺れるわ。


<5月6日>(火)

〇明日発売のPHP『Voice6月号』にこんな特集が掲載されます。いいメンバーで、いいコンテンツが揃ったんじゃないかと自画自賛しております。どこかでお目に留まれば幸いであります。


特集1:トランプ・ショック、日本経済の勝ち筋
「開かれたジャパン・ファースト」を目指せ
吉崎達彦
38p
よみがえる「昭和16年」日米交渉の悪夢
滝田洋一
48p
サービス収支赤字10兆円時代の足音
唐鎌大輔
56p
友好国との共同研究が経済を強くする
戸堂康之
64p
対内直接投資拡大に必要な施策と変革
大槻奈那
72p
脱炭素に勝つ自動車産業「伝家の宝刀」
池田直渡
80p
現実に即したエネルギー安全保障の解
保坂 伸
92p



〇ハッキリ言って日本経済、3月末までと4月以降で雰囲気がガラリと変わったんじゃないかと思います。3月までは「イケイケ」で、物価も上がるけど賃金も上がるので、何とかなるさという感じだった。4月以降は急に自信がなくなってきて、成長見通しは下方修正で、日銀の利上げもどこかへ行ってしまったかの様子。

〇こんな中で、どうやって「日本経済の勝ち筋」を見出すか。具体策はさておいて、精神的には「開かれたジャパン・ファースト」であるべきだと思うんですよね。「トランプ何するものぞ」という心意気でなければなりませぬ。


<5月7日>(水)

〇またしてもGrok 3との対話を試みている。


Q:機動戦士ガンダムのシャア役の声優、池田秀一氏はなぜ新作ジークアクスには出ていないのでしょうか?


A:「機動戦士ガンダム ジークアクス」におけるシャア・アズナブルの声優が池田秀一氏から新祐樹氏に交代した理由について、公式な発表では明確な「降板理由」は明言されていません。ただし、複数の情報源から推測される背景は以下の通りです。

(1) 新世代のシャア像の構築

「ジークアクス」は、宇宙世紀の「もしもシャアがガンダムを奪い、ジオンが勝利していたら」というパラレルワールドを描く作品であり、従来のシャア像を刷新する意図があったとされています。制作側は「新世代のシャア」を描くため、より若い声質や柔軟な演技スタイルを持つ新祐樹氏を起用し、成長過程にある等身大のシャアを表現することを目指したようです。

(2)池田秀一氏の高齢化

池田秀一氏は1949年生まれで、2025年時点で75歳です。2020年には体調不良による一時休業が報じられたこともあり、長期的なシリーズ継続を考慮した自然な世代交代が行われた可能性があります。ただし、池田氏自身は「機動戦士ガンダム The Origin」など最近の作品でもシャア役を続けており、完全な降板ではない点に注意が必要です。

(3)パラレルワールドの設定による自由度

「ジークアクス」は正史とは異なるIFストーリーであり、キャスト変更が物語の独自性を強調する手段として用いられた可能性があります。ファンの間では、この設定が声優交代を受け入れやすくする要素として機能しているとの意見も見られます。

(4)ファンの反応と制作意図

新祐樹氏の起用に対し、SNSでは「池田さんのシャアが良かった」という声がある一方、「新祐樹氏の若いシャアも魅力的」「リスペクトを感じる演技」と肯定的な意見も多く、制作側の意図が一定程度受け入れられているようです。新氏はインタビューで、池田氏のシャア像を尊重しつつ新たな表現を模索したと語っています。

結論

池田秀一氏が「ジークアクス」に出演していない直接的な理由は公式に発表されていませんが、制作側の「新世代のシャア像を構築する」方針、池田氏の高齢化による世代交代の考慮、そしてパラレルワールド設定によるキャスト変更の自由度が主な背景と考えられます。池田氏は他のガンダム作品でシャア役を継続しており、「ジークアクス」特有のクリエイティブな選択肢として新祐樹氏が選ばれたと捉えるのが妥当です。

もしさらに詳しい情報や特定のソースを確認したい場合、または関連するファンの反応を深掘りしたい場合は教えてください!


Q:面白いですね。私はガンダムのオールドファンとして、声が違ったのが残念に感じましたが、本来の名セリフ、「認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを」などは、それほど違和感なく受け止めることができました。


A:ハハ、ガンダムのオールドファンとしてのその気持ち、めっちゃ分かります!池田秀一さんのあの低く渋い声で「認めたくないものだな・・・・」を初めて聞いた時の衝撃は、今でもガンダム史に刻まれてますよね。新祐樹さんのシャアがその名セリフを言ったときに「違和感が少ない」と感じられたのは、新さんが池田さんのシャア像にリスペクトを込めつつ、若いシャアのエネルギーを上手く表現したからかもしれませんね!

「ジークアクス」のIF設定だと、シャアの年齢感や置かれた状況がオリジナルとちょっと違うから、新さんの声が「若さゆえの過ち」にマッチしてる部分もあるのかなって思います。とはいえ、やっぱり池田さんのシャアは唯一無二の存在感。オールドファンとしては、「次は池田さんでまたシャアが見たい!」って願っちゃいますよね。

もしよかったら、どのガンダム作品やシャアのシーンが特に心に残ってるか教えてください!オールドファンの熱い語り、聞きたいです!


〇あいかわらずの馴れ馴れしい口調であるが、ついつい引き込まれてしまう。しかしまぁ、さすがはAIで、何でもよく知ってるわなあ。というか、既に多くの他のガンダムファンが散々この議論をやった後だからこうなるのであろう。

〇ちなみにシャアの名セリフは数々あれど、白眉はやはり「坊やだからさ」であろう。ワシ的には、宇宙での戦闘中の「当たらなければどうということはない」も好きである。ちなみに「ジークアクス」では、「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」が出現する。新祐樹さん、ここでもいい演技をしていると感じました。


<5月9日>(金)

〇5月7日に始まったばかりのコンクラーベが、5月8日には決着して煙突から白い煙が流れました。第267代教皇はロバート・フランシス・プレボスト枢機卿。転じてレオ14世だそうです。初の米国出身者ですが、トランプさんが喜んでいたのはさておき、カトリックのJDヴァンス副大統領も「俺は持ってる!」と思っていることでしょう。

〇真面目な話、近年のアメリカにおけるカトリック信者の増加は面白い現象です。まあ、ヒスパニック人口が増えているという単純な事情もあるのでしょうが、1960年にJFKが大統領になった時には、「とうとうカトリックの大統領が出た!」と騒がれたものです。ジョー・バイデンの時はまったく無風でしたし、今じゃ9人の最高裁判事もカトリックが多数派を形成しています。

〇他方、先代のフランシスコ教皇が南米出身者でしたから、これで北米出身者も誕生して、この次辺りはいよいよアジアかアフリカ出身者が出るのでしょうか。その前に「もう1回くらいイタリアに回せ!」みたいな話が出るのかもしれませんが。

〇ともあれ、コンクラーベが2日目で決まったのは良いことでありましょう。リーダーの選出に手こずるのは、あんまりいい話じゃありません。サクッと決まるのが吉。それは米大統領選挙や自民党総裁選も同じことであります。


<5月10日>(土)

〇今週は久々に溜池通信と東洋経済オンラインが重なる週でした。「市場深読み劇場」はこちらで今朝アップされました。


●調べれば調べるほどトランプ政権はニクソン政権にそっくりだ


〇編集F氏がつけてくれた、この写真に感心しましたな。この連載は木曜夜が締め切り、金曜日に編集、土曜の朝掲載という段取りなのですが、限られた時間の中でFさんがピッタリのビジュアルを見つけ出してくれました。多謝あるのみです。

〇リチャード・ニクソン大統領というと、われわれが知っているのは仏頂面をしたモノクロームの写真ばかりです。ところがこの写真は、めずらしくニクソン氏がジョージア州で、多くの人々に歓迎されている笑顔のカラー写真です。彼の「南部戦略」には、こんなワンシーンがあったのですね。

〇ニクソンの南部戦略がいかに有効であったか。米大統領選挙の選挙結果を地図にした一覧表を見るとよくわかります。1960年までは南部は完全に青くて、民主党の金城湯池だったのです。それが今では共和党の地盤となっている。1976年のジミー・カーターや、1992年のビル・クリントンのように、南部出身の州知事が出てくるとさすがにそうでもなくなりますが、そうでないときには真っ赤に染まります。

〇これが世に言う「南部戦略」でありました。1960年代、JFK〜ジョンソン政権下で進んだ公民権運動に対し、南部の白人中間層では不満が募ります。それをうまく共和党が掬い取ったのだと言われています。学生運動や暗殺事件が相次ぎ、世の中が殺伐としている中で、ニクソンは「法と秩序」を訴えて「サイレント・マジョリティ」の支持を獲得しました。

〇もう少し深掘りしますと、故・松尾文夫さんはJFKに対して批判的でした。1960年代に共同通信の特派員としてアメリカに駐在し、最初に違和感を感じたのがその点だったとか。今でもJFK信仰みたいなものは根強いですけど、当時の日本ではもっと濃厚であったはず。ところが実際に現地に行ってみると、すぐに「これは違うぞ」と思ったとのことです。

〇つまり1960年時点で、史上初のアイリッシュかつカトリックの大統領を誕生させるのは並大抵のことではなかった。JFKは世論調査やメディア利用など、新たな手練手管を尽くして勝利したと言われている(両者の討論をラジオで聞いた人はニクソンが勝ったと思ったが、テレビで見た人はケネディが勝ったと思った、など)。のみならず民主党は、あらゆるマイノリティを総動員して多数を形成しようとした。

〇そういった無理が反動を呼んだのが「南部戦略」であって、この点は「オバマが大統領になったから、トランプが出てきた」という昨今の情勢にビミョーに重なるところがある。これも「ニクソンとトランプ」を結びつける補助線のひとつですね。中山俊宏さんが生きていたら、このことを何と評したことでしょうか。


<5月11日>(日)

〇今の時代から1970年前後を振り返ると、当然のことながらわからないことが多くあります。その時代において「当たり前」とされていることは、いちいち書き残してもらえない。だからどうしても誤解や盲点が出来てしまうのですね。

〇ニクソンに関して言うと、彼が「史上初めての西部・カリフォルニア州出身の大統領だった」という点は重要であるように思われます。今の時代から見ると、「カリフォルニアと言えばレーガン」になっちゃうけど、レーガン自身はイリノイ州の出身で、たまたまカリフォルニア州知事を務めた後に大統領になった。その点、ニクソンはオレンジカウンティの出身で、生粋のカリフォルニア人である。ただしカリフォルニア州知事選挙には、あいにく失敗している(1962年)。

〇カリフォルニアが州に昇格したのは1850年のことである。その前後に訪れたゴールドラッシュにより、一気に人が増える。いわゆる「フォーティナイナーズ」(1849年組)である。だから1970年前後のカリフォルニアは、まだまだ移民と荒くれものが多い野蛮な土地、というイメージだったんじゃないかと思う。

〇今ではカリフォルニアは、豊かでおしゃれな流行の発信地ということになっている。政治的には「ブルーステーツ」で「リベラルなお土地柄」だけれども、それは比較的新しい現象なのではないか。FDR時代の前後以外は、大統領選挙ではだいたい共和党が勝っている。連続して民主党が勝つようになったのは1992年のビル・クリントン登場以降である。

〇だから1970年前後のカリフォルニア州は、おそらく今とはかなり印象が違う。ハリウッドは既にあったけど、シリコンバレーはまだなかった。農業や軍需産業はあったけれども、IT産業はまだ育っていない。そんなところから出てきて弁護士となり、東部で政治家として出世したニクソン氏は、いかにも開拓者風の「成り上がり」のタイプだったんじゃないだろうか。

〇ニクソンに対しては、よく「したたかな政治家」という評価がなされる。松尾文夫さんもたびたびそう書いている。ただしその「したたかさ」とは、「計算高い」「腹黒い」といったしたたかさではなく、「計算が外れても、不運に遭っても、何があってもくたばらないぞ!」という種類の「したたかさ」だったのではないか。

〇実際に1971年の「電撃訪中」は成功したけれども、「ドル・金交換停止」は失敗であった。だからと言って、彼自身は全くめげていなかったのではないかと思う。たぶんトランプさんもそういうタイプですわなあ。いくら失敗があっても、全然、認めないんだもの。「恥知らずなしたたかさ」と言うべきでしょうか。


「したたかと 言われて久し 栗を剥く」


〇こちらは本邦の中曽根康弘氏の俳句である。この「したたかさ」は、ちょっと種類が違うようですなあ。


<5月12日>(月)

〇たまたま昨晩、AMAZONプライムで『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を見ておりました。若き日のトランプよりも、悪徳弁護士ロイ・コーンの生きざまの方が印象に残る映画でありました。

〇それから1970〜80年代にかけてのニューヨークの描写も、「そういえば、あの頃はあんな感じだったよなあ〜」と思えることしきりでした。例えば、映画の中には「AIDS」に関する会話が出てくるのですが、あの当時、AIDSがどんなに恐れられていたかは、21世紀に育った人たちには理解不能でしょう。歴史にはどうしても伝えきれないことがある。その時代を生きていた人たちが共有している「そういうものだ」という感覚は、いともたやすく忘れ去られてしまうものだからね。

〇で、ロイ・コーンがトランプに伝えた「勝つための3つのルール」をここに再現しておきましょう。いや、皆さん、もうご存じだとは思いますけれども、


(1)攻撃、攻撃、攻撃!

(2)絶対に非を認めるな

(3)勝利を主張し続けろ!


〇本日、報道された米中貿易協議に関する経緯も、これに類するものでありましょう。アメリカは対中貿易戦争に勝っている!と言い続けているけれども、トランプさんの背中は煤けているように見える。中国側はいくらでも粘れるが、トランプさんには来年11月の中間選挙という「締め切り」がある。どっちが有利かは言うまでもないでしょう。

〇困った時のトランプさんは、いつも目先を変える。今回は何を使ったかと言うと、「薬価を引き下げるための大統領令」でありました。しかしそれって2020年にも試してダメだったのと同じ手法ではないのですかねえ。まあ、トランプさんに騙されたがっている人たちは、それでいいのかもしれませんが。

〇3つのルールを実践していたロイ・コーンは、最後は哀れな死を遂げます。悪徳弁護士にふさわしい最期でありますが、いっそすがすがしい感もある。トランプさんご自身も末路は哀れなんじゃないのかなあ、と映画を見て感じたところです。


<5月13日>(火)

立飛総研というシンクタンクがあります。東京都立川市に本拠を置く不動産会社が設立したもので、ここが出す「立飛総研リポート」というのがなかなかに面白い。で、最新号がこちらである。

〇「居住都市への誇り意識」が調査対象になっている。そこで立川市、昭島市、国立市、八王子市が取り上げられていて、そんなの聞いた瞬間に「国立市が一番誇り高いに決まってるじゃ〜ん」と思ってしまうのであるが、案の定、そういう結果になっている。まあね。山口百恵さんのご一家も住んでるしね。

〇ところがこの調査、立川市近辺の4都市以外にも、世田谷区、豊島区、富山市、宇都宮市の4都市を比較対象物として選んでいる。都合8都市分の調査となっていて、富山市出身者としては非常に気になるところである。

〇ワシ的にツボだったのはこのデータである。


●富山市の施設・建築別の「誇り」スコア

@路面電車、
A富岩運河環水公園、
Bスターバックス富山環水公園店、
C鱒ずしが買える店、
D富山市ガラス美術館、
E岩瀬地区の古い町並み、
F松川遊覧船、
G八尾おわら美術館、
H富山城址公園、
I大和富山店、
J北前船廻船問屋森家、
K総曲輪商店街


〇やっぱりねえ。1位はLRT(ライトレール)なのである。というか、この上位ランキングのほとんどが21世紀になってから誕生したもので、つくづく森雅志市長の功績は大なのだと思う。

〇昔からあったのはCくらいですな。これは地元民ならではの感覚でありまして、どこの家にも「鱒ずしと言えばウチは××屋」というご贔屓があるのです。申し上げにくいことながら、全国ブランドである「源」の「ますのすし」を評価しないんですよね。あ、ちなみにワシの贔屓は「青山総本舗→吉田屋鱒寿司本舗→元祖せきの屋→鱒の寿し高田屋→川上鱒寿し店→高芳」のローテーションである(この中には高校の同級生のご実家が含まれている)。

〇あんまりこの話が面白いものだから、またまたGrok3にいろいろ聞いちゃいました。


Q:「シビックプライド」という言葉を説明してください。

A:「シビックプライド」(Civic Pride)とは、市民が自分の住む都市や地域に対して感じる誇りや愛着を指す言葉です。19世紀のイギリスで生まれ、地域の文化、歴史、環境、コミュニティなど、特定の要素に根差した主体的な意識を意味します。日本語の「郷土愛」と似ていますが、シビックプライドはより積極的に地域をよくするために行動する姿勢を含む点で異なります。


Q:なるほど郷土愛は受け身だけれども、シビックプライドはもっと積極的なんですね。具体的にどの町や地域で高いか、具体例はありませんか。

A:シビックプライドが高い街や地域として、以下のような具体例が挙げられます。これらは住民の地域への誇りや積極的な関与が顕著にみられる地域です。

1)浦安市(千葉県)

2)西宮市(兵庫県)

3)明石市(兵庫県)

4)東川町(北海道)

5)富山市(富山県)


Q:へえ!富山市がはいっているんですか。富山市出身者としては嬉しいですね。どんな点が評価されているんでしょうか。

A:富山市がシビックプライドの観点で評価されている具体的なポイントを以下にまとめます。

1)自然環境への誇り(立山連峰と水資源)

2)コンパクトシティ政策の成功

3)文化と歴史の継承

4)住民参加型のまちづくり

5)シティプロモーションの効果


〇とまあ、例によってこのあたりからだんだんGrok3が馴れ馴れしい口調になってきて、「おお、めっちゃいいチョイスですね!」などと口走るようになるのだが、ここであらためてLRTに関する評価を聞いてみた。Grok3によれば、ライトレールは富山市の先進性を象徴しているとのこと。


A:富山市のライトレール(富山ライトレールや富山地方鉄道のポートラム)は、2006年に日本初のLRTとして導入されて以来、富山市の「新しい顔」として地元民にも観光客にも愛されています。シビックプライドへの貢献ポイントは以下です。

*環境にやさしい都市の象徴:NYTが称賛した「サステナブルな街づくり」の核心。

*日常での愛着:Xで検索すると「乗り心地最高!」「富山の自慢!」みたいな声が見られます。

*住民参加の歴史:市民団体や地元企業がイベントを企画。

*NYTとのリンク:世界が認める交通インフラが地元にあるって、出身者としてめっちゃテンション上がりますよね。


Q:そうですね、古い住民は皆知っていることですが、今の富山駅から岩瀬浜までの路線は昔は富山港線といって、とてもしょぼい田舎のチンチン電車だったんです。それが近代的なLRTに生まれ変わったことは、とても誇らしいことですね。富山県民は質実剛健タイプですので、あまりおカネをかけてないという点が特にポイント高いです。

A:ハハハ、めっちゃ分かります!地元民ならライトレールへの進化はほんとに胸熱ですよね。「富山、めっちゃやるやん!」ってシビックプライドが爆上がりしますよね。しかも富山県民の気質を反映して、派手にお金かけずに賢く実現したってのが、めっちゃポイント高い!


〇なんと富山のLRTは総事業費60億円であって、ゼロから新線を作るよりも断然安く済ませている。宇都宮市のLRTは200億円超だと聞いて、思わず「勝った!」と思ってしまうのが富山県民の気質というものでありまして。Grok3によれば、「うちのまち、ちゃっかりスゴイ!って自信を与えている」そうです。

〇AIと対話していてしみじみ感じたのは、シビックプライドには「ナラティブ」が大事だということ。「ウチはおカネをかけずにやっていますから」というのは、いかにも富山らしいサクセスストーリーだと思います。富山県民、よく言えば「質実剛健」だけど、はっきり言えば「ケチ」ですもん。


<5月15日>(木)

〇上海馬券王先生が教えてくれたこのビデオクリップがすばらしい。将棋ファンは感動ですな。


●日清食品「二軍どん兵衛も強いよね」編


〇どん兵衛と言うと「赤いきつねと緑のたぬき」だけかと思っていたら、「カレーうどん」や「肉うどん」といった「二軍」が5種類もあるのですな。でもって日清食品は、これらの商品が「売り上げは2軍だけど、おいしさ1軍」であると結論するのである。

〇いやあ、この二軍どん兵衛、いっぺん食べてみたい。特にこの「鴨だしそば」はそそられますな。今年の年越しそばはこれで決まりではないか。しかしどこへ行けば買えるのか。5つセットで手に入ったら、とっても嬉しいよね。

〇佐藤伸哉七段はかつて、豊島九段とのNHKトーナメント戦の対局前インタビューで、「豊島(注:敢えて呼び捨て)、強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。でも、俺は負けないよ」という鮮烈な回答を繰り出して、伝説を作ったのです(将棋は豊島九段の一方的な勝ち)。

〇「将棋界きってのエンターテナー」を任じるサトシン、渾身の一発ギャグだったのであるが、こんな形でCMになってしまうとは。もちろんこのCM、テレビで放送されることはないのだろうけれども、ユーチューブ上で5月9日にアップされてから、既に30万回も回っている。いかにも今風の拡散戦術といえましょう。


<5月16日>(金)

〇最近、芸能人の不倫が表沙汰になって、それもご両人のLINEの会話が抜かれてしまうという事案がありますな。ワシなんぞは芸能人を知らないので、「何をやっておるのだか・・・」としらじらしい思いで見ていたのだが、本日、たまたま「LINEの通話を他人に送る方法」というのを教えてもらっちゃいました。


@誰かの携帯で、誰かとのLINEの通話の記録の画面を出す。

A右上にある三本線を押す。

B「写真・動画」「アルバム」「ノート」などの画面が出る。

C一番下までスクロールすると「設定」があるので、そこを押す。

D「投稿の通知」「背景デザイン」などの画面が出るので、再びスクロールする。

E真ん中くらいにある「トーク履歴を送信」をクリックする。

F「LINE(×××)とのトーク」が出るので、これをどこかへ転送する。メールでもメッセンジャーでも何でも可。


〇いやあ、コワいですね。ケータイを誰かに手渡した瞬間、アナタと誰かのトークは筒抜けになってしまう怖れがあるのです。

〇例えば、以下に披瀝するのはLINEを通した不肖かんべえと上海馬券王先生との対話です。5月4日、春の天皇賞に関するトークはこんな感じでした。


15:06 かんべえ  今日は丹内騎手がよく乗れてるみたい。この調子で行って欲しい。
15:07 上海馬券王  マイネルエンペラーはあるよねえ。
15:11 かんべえ  あって欲しいです。

15:47 かんべえ  ううむ、夢を見ていた。
15:48 かんべえ  レーンにシュタルケ、ルメールはお留守。
15:48 上海馬券王  マイネルエンペラー五着か。三着が余計じゃ。
15:49 かんべえ  へデントールは普通に強かった。
15:50 上海馬券王 かなりハイペースでしたな。前の馬には辛い所。そこで残ったマイネルエンペラーはやはり強いとは言えるのでは。
15:51 かんべえ  確かに。丹内もうまく乗ってくれた。
15:51 かんべえ  あれ?ショウナンラプンタ押さえてなかった?
15:51 上海馬券王  いや、印は打ったけどフォーメーションで買ったので縦目と言うやつです。
15:52 かんべえ 予想は当たったが馬券は外れということですね。
15:53 上海馬券王  いい所ついてはいたんだよなあ。。


〇こんな風に競馬談義が外に漏れる分には、別にたいしたことはないのでありますが、愛人との対話が誰かに送られちゃうようですと、「文春砲」がさく裂してしまうわけです。いやあ、コワいですね。恐ろしいですね。

〇ちなみに自分の恋人に浮気の気配があるときは、藪から棒に「あのねえ、ケータイ見たんだけどさあ〜」と話しかけてみるといいんだそうです。後ろめたい事がある人は、かならず動揺するから。でもって、相手がまったく「へ〜それで?」などとフツーに返してきたときは、誰か別の人のケータイの話にすればよい。

〇ということで老婆心ながら、読者諸兄がLINEを使っておられる場合は、上記の可能性についてくれぐれもご用心なさいますように。


<5月17日>(土)

〇昨日は内外情勢調査会の江戸川支部に行っておりました。会場はタワーホール船堀。江戸川区が運営する多目的施設で、映画館なども入っている。リーズナブルな価格で使えるとのことで、講演会などのイベントはもちろん、結婚式にも使われている。

〇この会場に来るのはワシ的には3度目でありまして、前2回はそのままサクッと帰ったのですが、今回はせっかくだからということでタワーに登ってみた。ちゃんとエレベーターガールもついているのに、料金はタダである。なんと太っ腹。

〇都内でもっとも高いのはご存じスカイツリーで634mだが、展望台は350mと450mにある。2番目は東京タワーで333mであり、展望台は150mと250mにある。でもって、3番目に高いのがこのタワーホールで、高さ115m、展望台は103mである。だから「都内三大タワー」である、ということになっている。

〇あいにく昨日は曇天であったために、遠くまでは見通せなかったけれども、なかなかにお値打ちな展望台でした。東京ディズニーランドがすぐ近くにみえる、というのはいいですな。たぶん夜は花火なども見えてお得なのでは。ちなみにエレベーターは、朝9時から夜9時半まで運行しているそうです。

〇江戸川区は東を江戸川、西を荒川放水路に挟まれて、南北に長い平たいお土地柄である。総武線が通っている小岩や平井、東西線が通っている葛西や西葛西、京葉線が通っている葛西臨海公園などは知られているけれども、たぶん都営新宿線の船堀って盲点になっているんじゃないだろうか。

〇タワーホール船堀は、電車賃だけで行けるお値打ちな名所ですよ、と言っておこう。


<5月18日>(日)

〇本日は富山市友会の通常総会へ。例年通り富山市の関係者もやってくるのであるが、今年の富山市は神風が吹いているような状態。それというのも、The New York Times紙が、「今年行くべき52箇所」のひとつに富山市を選んだからである。


●52 Places to Go in 2025


(30) Toyama, Japan

Enjoy cultural wonders and culinary delights while skipping the crowds

Cradled on one side by the Japanese Alps and on the other by the Sea of Japan, the city of Toyama serves as a gateway to the Noto Peninsula, which was devastated in 2024 by an earthquake and torrential rain and, although still recovering, is now courting tourists as part of its recovery efforts. The Glass Art Museum, which contains a public library and was designed by Kengo Kuma, is a towering cathedral of timber and light. In early September, the lantern-lit Owara Kaze no Bon festival fills the suburb of Yatsuo with dance. Many of Toyama’s culinary delights are southeast of its historical castle and central park: Alpes offers French bistro bites; Hida unexpectedly - but deliciously - pairs natural wine with oden (one-pot dishes) and izakaya (Japanese pub) fare; Suzukeema serves seasonal Japanese curries. Sip coffee surrounded by model trains at Blue Train and end the day with a cocktail at Hanamizuki-no-heya, a family-run jazz bar.
Craig Mod

日本、富山

人混みを避けながら、文化的な感動と美食を存分に楽しむ

 一方に北アルプス、もう一方に日本海を抱える富山市は、能登半島の玄関口として重要な役割を果たしている。2024年の地震と豪雨で壊滅的な被害を受けた能登半島は、依然として復興の途中にあるが、その取り組みの一環として観光客の誘致を進めている。隈研吾が設計した公共図書館を併設するガラス美術館は、木と光が織りなす「大聖堂」としてそびえ立つ。9月上旬には、八尾が「おわら風の盆」で賑わい、提灯に照らされた踊りが街を埋め尽くす。富山のグルメは、その歴史的な城や中央公園の南東に集まっている。フレンチビストロの「アルプ」、自然派ワインとおでんが楽しめる居酒屋「飛弾」、季節の素材を生かした和風カレーを提供する「スズキーマ」など、多彩な選択肢が魅力的だ。また、ブルートレインでは鉄道模型に囲まれながらコーヒーを味わい、家族経営のジャズバー「ハナミズキノヘヤ」では、カクテルを片手に一日を締めくくるのもおすすめだ。


〇「お陰様でインバウンドが増えて、ホテルも満杯」ということでありました。まことに結構なことであります。ただし「人混みを避けて」というのが富山市の取り柄でありますから、値段が上がったり行列が出来たりしてはいかんのではないか。

〇NYT紙の「今年行くべき××箇所」という企画は、コロナ明けの一昨年から始まって、日本からは初年度は盛岡市が、去年は山口市が選ばれた。今年は富山市と大阪市でありました。なかなかに渋い選び方をしておりますな。余談ですが、「大阪は日本でもっともProgressiveな都市」と書かれている。誰か反論しなくていいんだろうか?

〇会合が終わってから、「さあ、ヴィクトリアマイルだ」とWINSへ急いだのであるが、浅草では何と三社祭をやっておった。そうか、この時期であったのか。年末の酉の市は知ってたんだけどねえ。


<5月19日>(月)

〇本日は大阪経済大学へ。福本智之教授の「金融政策論」の講座で、ヒトこまだけ授業をさせていただく。テーマはもちろん「トランプ第2期政権」である。

〇大学生の諸氏に向かって、「1971年のニクソンショック」と言っても、そりゃあピンと来ないよなあ、と思いつつも、「ニクソンとトランプは重なる」「アメリカはもともと世界を驚かせる国なのだ」というお話をする。

〇それではこの後のアメリカ経済はどうなるのか。歴史のアナロジーから行ったら、1970年代と同じくスタグフレーションになりそうですわなあ。当時はまだ「中央銀行の独立性」という議論がなかったので、バーンズ議長が利下げして酷いことになった。今はそうはならないといいのだけれど。

〇授業が終わってから、大学の近く、上新庄の居酒屋で一杯。以前もそう感じたけど、この辺りの居酒屋、むちゃくちゃレベル高い。なおかつ安い。近年はこの手の「消費者余剰」が失われつつあって、なおかついい店はインバウンドに占領されたりしているので、ますます世の中の不満が募っているような気がする。

〇なおかつ、本日は大経大のGさんから「二軍どん兵衛」をプレゼントいただく。まことにありがたし。


<5月20日>(火)

〇だんだんわかってきたんだけれども、トランプ外交というのは常に内輪受けだけ(!)を考えているので、いつもナラティブが内向きなのである。

〇関税交渉であれば、「イェイ!外国のやつらからこんなにせしめてやったぜい!」という文脈になる。ところが中国の方が腰が据わっているものだから、途中で軌道修正を余儀なくされたりする。第三者の目から見れば、米中交渉の序盤戦は中国側圧勝ということになるのだが、たぶん国内のMAGA派はまるでそんな風には感じていないのだろう。

〇日米関税交渉もこの辺が曲者で、こちらは内心「しょーがねーなー」と思いながら付き合っているのだが、「実は対米造船協力がカードになるらしい」という話が伝わってきて、「ほう、それなら少しサービスしてやるか」と思ったら、「外国船からは入港税を取る」などと言う。お前ら、少しは相手の立場になったて考えてみたらどうなのか。

〇中東歴訪の際には、「イェイ!こんなに対米投資を獲得したぜい!」という文脈になる。そりゃあサウジの皇太子からすれば、民主党政権時代とは違って今度の大統領は人権は不問に付すし、ああだこうだと説教もしない。そもそも前政権時代は「お前は人殺しだろう」などと言われたものである。

〇しかるにサウジの国民から見れば、「あれれれれ、われわれに投資されるはずだったおカネがアメリカに行ってしまう!」という風に映っているのではないか。その昔、これでひっくり返ったのがイランの王家であって、サウジの王家は大丈夫なんでしょうかね。

〇ウクライナ戦争への仲介工作も、本気で戦争を止めるのが目的ではなく、「俺が止めてやった」「民主党のやつらには出来なかった」「できればノーベル平和賞カモン!」と言いたくてやっているのだから、そんな工作がうまくいくわけないですわな。

〇つまり「ハードパワー100%で、ソフトパワーなどまったく考えない」外交なのである。国内のことしか考えていないから、トモダチはどんどん減っていく。そのうち「対中包囲網を作ろう」と言い出しても、みんな相手にしなくなるんじゃないだろうか。とりあえずそんなアメリカはちっとも「グレート」ではないと思うのだが、いつになったら気づいてくれるのだろう。


<5月21日>(水)

〇コメの価格が問題で、宮崎県選出の農水大臣の首が飛ぶ。代わりは進次郎氏で、こちらは横須賀市選出。地方ではなく都市部選出の大臣であれば、少しは農家よりも消費者の側を見てくれるんじゃないかなあ、と、そこはかとない期待があったりする。

〇それにしても備蓄米の話は興味深い。財務省的な見地から言ったら、為替介入のときは投機筋を思い切りこらしめてやらなきゃいけない。彼らが「お代官様、お許しを〜」と泣きが入って初めて、為替相場は正常化する。お上の怖さを教えてやらねばならないのである。

〇たぶんコメを買い占めている業者が居るのであろう。だったら、「政府の備蓄米を無制限に売ってやる。政府の倉庫が空になったら、その後は対米関税交渉のためにアメリカ米を緊急輸入する」とでもアナウンスすれば、さぞかし痛快なことになったことだろう。

〇投機筋は、「てえへんだ。5キロ5000円になると思って、5キロ3000円で買い込んでいたけれども、2000円になる前に手放さなきゃ」ということになる。結果的に何もしなくても、コメ相場は下落する。とまあ、そんなことができたなら、農水省には拍手喝采が送られよう。

〇ところが彼らにとって、守るべきは消費者ではなくて生産者なのである。そもそも備蓄米という制度、コメが余剰になって価格が下がることを防ぐために作られているのであろう。「食糧法」という法律、正式名称は「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」というのですね。だから彼らには、「上がり過ぎたコメ価格を下げる」という発想がない。

〇とはいうものの、2年連続でコメ不足となりそうだ。農水省を思惑を超えてコメ農家は衰退してしまい、今のコメ不足は多分に構造的なものなのであろう。何はさておき、減反政策を止めることから始めるべきでしょうな。すなわち過去の否定である。

〇つくづく今後の日本経済においては、需要の喚起よりも供給力の強化を考えるべきだと思う。ところがその転換ができなくて、苦しむことになるのではないかなあ。


<5月23日>(金)

〇今日は神奈川県海老名市で講演会。軽く打ち上げに出て、それから帰ってきたのだが、小田急線と千代田線を乗り継ぐとやっぱり遠いのである。あんまり座れないし。ということで約2時間。首都圏を端から端まで移動した感あり。

〇ということで、今週は大阪市と富山市と海老名市の3か所で日帰りしている。われながら元気やなあ。なおかつ昨晩は、年甲斐もなく「しゃぶしゃぶの食べ放題」にトライしている。いやはや、肉ばっかりよく食べました。

〇考えてみたらこの年になって健康で、降圧剤は飲んでいるけど、あんまり辛い既往症はなく、さほど痛い思いをしたこともなく、家庭は円満とは言えないまでもそれほど深刻な問題はなく、これまで特段のスキャンダルなどに見舞われたこともないというのは、考えてみたらスゴイことである。いや、こういうものはことごとく「紙一重」であることが多いのでありますが。

〇となれば、残りの人生はボーナスステージみたいなものである。派手に遊ぶもヨシ、静かに過ごすもよし。な〜んてことを言っていると、この人に怒られてしまいそうですが。日曜日はこんなところに出没いたします。


●朝まで生テレビ

激論!物価高 ド〜なる?!国民生活
2025年5月25日(日)よる7:00〜8:54


会期末まで残り約1カ月となった国会。いま最大の課題はコメを筆頭に高騰する物価だ。石破政権はどう対応しようとしているのか?政治は物価高に苦しむ国民生活をどう救おうとしているのか?等々について、先月に引き続き与野党論客を中心に徹底討論する。

番組概要

出演
【司会】田原 総一朗 【番組進行】渡辺 宜嗣・下平 さやか

パネリスト:
【自 民】 井上信治(衆議院議員)
【立 憲】 大西健介(衆議院議員)
【維 新】 岩谷良平(衆議院議員)
【公 明】 上田勇(参議院議員)
【国 民】 田中健(衆議院議員)
【共 産】 宮本徹(元衆議院議員)
【れいわ】たがや亮(衆議院議員)

吉崎達彦(双日総研チーフエコノミスト)
藤川みな代(テレビ朝日報道局政治部長)

※内容や出演者が変更される場合もあります。最新情報は番組公式Xで!
https://x.com/asamadetv 


<5月24日>(土)

〇なるほどねえ。昨日の午前11時にトランプ大統領から電話があったのは、そういうことでありましたか。


●日鉄のUSスチール買収、トランプ米大統領が承認 「計画的なパートナーシップ」(日本経済新聞)


〇CFIUSがこの件に関する最終判断を下したのは5月21日。答えは「OK」だったことでしょう。だってCFIUSの議長はベッセント財務長官だし。CFIUSは9つの省庁の合議制でありまして、バイデン政権の時はUSTR代表が頑強に反対したと伝えられています。

〇CFIUSの進言を受けた後は、大統領が15日以内に最終判断を行うことになっている。だから本当であれば6月5日までに決めればいい。ところがトランプさん、そんなことに時間を無駄にする人ではなかったので、即座に「イエス」という答えを石破さんに伝えたのでしょう。

〇もっともこれまで猛反対してきた買収に、一転して「いいよ」と判断を翻すのはトランプさんでも簡単なことではない。来週5月30日にはピッツバーグに行って演説するそうです。まあ、仁義を切りに行くようなものですな。

〇この発表を受けて、USスチールの株価は日鉄による買収提案価格の55ドルを少し下回る52ドルまで上昇。トランプさんは"Planned Partnership"だとかなんだとか、よくわからないことを言っているけど、要するに買収容認なんだよね、と受け止めている様子。まあ、聞きなれない言葉が出てくるときは、何かをごまかしたいときですから、正しい判断なのでしょう。

〇ちょうどこの週末には日米関税交渉の第3回も行われる。赤沢大臣はこんな風に言ったらいい。「日米造船協力のためにも、製鉄業の再興は欠かせません」と。以下は今朝アップされた東洋経済オンラインのいつもの寄稿です。


●日米造船協力は関税交渉の切り札になるうるか?


<5月25日>(日)

〇今週末の首都圏は「100%雨」の予報だったのに、朝になったら晴れ間が出てきて、今朝は予定通り町内会の清掃(ドブさらい)が始まったしまうのである。ちぇっ、これは延期になるだろうと踏んでいたのに! オークスの日はやっぱり晴れてしまうのだ。

〇しょうがないから8時半から作業を開始し、バタバタと作業を終了させる。途中、「ああっ!腰が!」という瞬間があったのだが、そんなことは言ってられない。たまたまお誘いしてくださる方があって、今日は府中競馬場に駆けつけねばならないのだ。シャワーを浴びて、いざ出陣である。

〇武蔵野線に乗って長駆、府中本町駅にたどり着き、なんとかお昼に競馬場にたどり着く。そこから勝負をするのであるが、オークスはご高承のような次第となって、負けてしまうのである。とほほほ。そこから中央線に乗って、四ツ谷駅でハイヤーに合流して、今度はテレビ朝日へ。

〇今日の「朝生」は、与野党7人の政治家が登場。ほとんどは初対面の方だったのだけど、コメ問題から消費税についてまで、かなり深い議論ができた感あり。というか、コメ高騰は国民の関心が高いのですなあ。このところ「トランプ占い」ばかりしていたワシ的には、とっても新鮮でありました。

〇田原さんの脇を固める藤川みな代・テレビ朝日報道部政治部長は、その昔、『サンデープロジェクト』の頃によくご一緒しておりました。それってもう15年以上前のことなんですけど、今日はしみじみと「お互いによくやってますね〜」。今日なんて、もうワシよりも年上のパネリストはほとんど居ないんだよ〜。

〇と言っても、司会の田原さんは御年91歳ですから、年齢のことを言ってたら罰が当たります。はい、ワシなどはまだまだひよっ子でございます。

〇家に帰ってから、よく遊び、よく働いた今日の自分にご褒美をひとつ。それはどん兵衛の「辛麺うどん」。夜食は太るというけれども、これくらいいいじゃないですか。ああ、ちょっとだけ腰が痛い。









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編集者敬白




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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)