●かんべえの不規則発言



2025年10月 





<10月1日>(水)

〇昨日が朝早い番組で、今日は夜遅いWBSに出演である。昼間は適当に流して、午後10時台に集中力を持っていかなければいけない。われながら何をやっているのだか。

〇しかるに今日のWBS、アメリカの政府閉鎖はあるし、日銀短観はあるし、もちろん自民党総裁選挙もある。しかるに「三菱UFJ銀行20周年」というネタには驚きましたな。まったく、なんちゅうことをワシにコメントさせるのじゃ。あの銀行にどれだけ知り合いがいることか。これって罰ゲームなのか。あ、もちろん口座も持ってます。

〇てなことで、出るたびにとっても勉強になるWBSなのである。

〇今週はこんな仕事もやっておるのです。ああ、恥ずかし。糸島さんに厳しく責められてしまいました。


●【総裁選スペシャル対談】『強い政権』なるか/ 総裁選の行方/高市トレードとマーケットの反応/総裁候補の政権シナリオ<糸島孝俊×吉崎 達彦>|Pictet Market


〇自民党総裁選は残るところ2日。鬼が出るか蛇が出るか。動きを見せないステルス議員はどう動くのか、決選投票を巡って「オタクはどうするの?」という生臭い駆け引きも始まるはず。派閥が機能せず、昔と違って裏で動いてくれる人もめっきり少なくなった今風の総裁選。どういうことになるのか。うーむ。


<10月3日>(金)

〇本日は溜池通信を書き終えてから、「富山市ゆかりの経済界の方々との交流会」へ。先代の市長さんの頃から出続けているが、今年も盛会でありました。

〇今年の富山市は、NYT紙が「今年行くべき52の都市」のひとつに選んでくれたことで、観光客が前年比1.5倍になったとのこと。富山市が評価されたポイントは"Accessibility"である。要するに近くて便利(新幹線で東京から2時間)で、京都や金沢のように混んではおらず、観光地としてスレてもおらず、古いまんまの日本が残っているから、要はお買い得、ということである。いいところ、見てますねえ。

〇それからビックリしたのは、来年のオールスターゲーム(2026年7月29日開催)を、富山市民球場アルペンスタジアムに誘致したとのこと。「よくそんなもの持ってこれましたねえ」と聞いたら、市長さん曰く。「正力松太郎さん(富山県出身)の威光がまだ残っているみたいです」とのこと。そっちの方が、よっぽど驚くべきことかもしれぬ。

〇富山市は町村合併で拡大してから今年で20年になる。そして北陸新幹線が開通してから10年。そしてライトレールが富山駅の南北でつながってからは5年目となる。最近はコンパクトシティのみならず、スマートシティ政策も推進している。例えば公式LINEを活用した市民向け情報配信も行っているが、その中には「クマ出没情報通知サービス」がある。いや、確かに最近はシャレにならないみたいですが。

〇地方都市はどこも大変な時代を迎えている。それでも富山市はちょっとだけ早く手を打っていたお陰で、人口減少は緩やかだし、社会的流入もある。市街地がそこそこ賑わうから、固定資産税も増えていて、税収を過疎地に使うことができるとのこと。政治とか先見性とかって、やっぱり大事なんですよ。惰性に流されていてはいかんのです。

〇さて、明日は自民党総裁選。どういうことになるのでしょうか。


<10月4日>(土)

〇いやあ、驚きました。それでも終わってみれば、いかにも自民党総裁選らしい結果だったかなと思います。やっぱり党員票でこれだけ差がついてしまうと、麻生さんの発言はさておいて、議員心理としても無視できなくなるのでしょう。ちなみに党員・党友票のデータはNHKから。


●自民党総裁選第1回投票

  高市早苗氏 小泉進次郎氏 林 芳正氏 小林鷹之氏 茂木敏充氏 合計
党員・党友票 250,931 179,130 130,888 32,263 33,343 626,555
得票率 40.0% 28.6% 20.9% 5.1% 5.3% 100%
党員算定票 119 84 62 15 15 295
議員票 64 80 72 44 34 294
合計 183 164 134 58 49 589


〇昨年の総裁選における党員・党友票は、高市さんが203,802票(29.3%)、石破さんが202,558票(29.1%)でした。高市さんは、この1年で5万票増やしたことになるので、やっぱり他候補とは支持者の熱量が違ったということなんでしょう。あるいは「次点バネ」が働いたことも見逃せません。

〇逆に昨年、石破さんが集めた20万票は、小泉さんや林さんに流れるというよりも、今年は棄権に回ったのが多かったのではないかなあ。ちなみに昨年、党員選挙に参加したのは69.5万票だったので、今年は7万票くらい減ってます(有権者数も前回の102万人から91万人に減少)。要するに保守票の方が中道・穏健派票よりも熱かった、ということでありましょう。

〇かくして決選投票はこんなことになりました。


●決選投票

候補者 国会議員票  都道府県票  合計 
高市早苗 149 36 185
小泉進次郎  145 11 156


〇うーむ、しかしこれからどういうことになるのか。とりあえず、今後の政治日程を以下の通りまとめておきます。

10月4日(土) 自民党総裁選挙→高市新総裁選出
10月7日(火)頃 自民党役員人事→連立交渉へ
10月10日(金) 石破首相が戦後80年談話を公表?
10月13日(月) 大阪・関西万博が閉幕
10月15日(水)頃 臨時国会召集→首班指名→高市首相誕生→組閣?
10月17-19日 靖国神社例大祭
10月17-19日 IMF世銀総会(ワシントンDC)
10月20日(月) 所信表明演説?
10月22-24日 衆参代表質問?
10月26-28日 ASEAN関連会合(マレーシア)
10月27-29日 トランプ大統領が訪日
10月28日 日米首脳会談、トランプ大統領が横須賀で演説?
10月28-29日 FOMC
10月29-30日 日銀金融政策決定会合
10月31日〜11月1日 APEC首脳会議(韓国・慶州)



<10月5日>(日)

〇以前から不思議だったのだが、ワシの関西方面の友人の間で高市待望論が非常に強かった。はて、なぜだろう?と考えていたのだが、そもそも関西出身の首相はほとんどいないのだ。今回、高市首相が誕生するとしたら、関西出身の首相は宇野宗佑以来36年ぶりのこととなる。

〇なるほど、大阪で維新の会があんな風に強いのは、「永田町は俺たちを受け入れてくれない」という意識があるからかもしれない。ちなみに戦前まで戻っていいのであれば、大阪府出身の鈴木貫太郎、京都府出身の西園寺公望と近衛文麿などの首相がいます。が、この人たちも、どう考えても「関西人」の範疇じゃあないですよね。西園寺と近衛はお公家さんですし。

〇例によってチャットGPT5先生にお伺いを立ててみた。お願いするときに、「時間がかかってもいいからね」と言うのがコツです。その結果は驚くべきもので、関西人の首相は戦後4人だけ。しかも全部、見事に1年以内の短命政権である。

●戦後の「関西出身」首相一覧と在任期間

氏名 出身地 在任期間 期間(日数) 備考
幣原 喜重郎 大阪府羽曳野市 1945年10月9日〜1946年5月22日 約225日 外交官出身。戦後初の文民首相。
片山  哲 和歌山県伊都郡 1947年5月24日〜1948年3月10日 約291日 日本社会党出身。戦後初の社会党首相。
芦田  均 京都府京都市 1948年3月10日〜1948年10月15日 約219日 戦後復興期。昭電汚職で退陣。
宇野 宗佑 滋賀県甲賀郡 1989年6月3日〜1989年8月10日 約68日 「リクルート事件」直後の短命内閣。


〇幣原喜重郎が大阪出身というのはたまたま知ってましたが、ご本人は限りなく東京人でしょう。たぶん関西弁はまったく似合わない人です。片山哲が和歌山出身とは知りませんでした。芦田均はいかにも京都人のタイプですね。それ以外では兵庫県もゼロだし、奈良県出身は今回が初めてとなります。それから徳島県出身の三木武夫は、やっぱり関西ではないですよねえ。

〇ちなみに全国の内閣総理大臣の都道府県ランキングはこのページをご参照。お気の毒なことに、鳥取県の石破茂さんがまだ入っていません。これで奈良県初の高市首相が誕生するとしたら、まだ首相を輩出していないのは下記の17県のみとなります。宮城県や兵庫県は意外な感がありますなあ。


(→後記:当初は長野県が入ってましたけど、羽田孜さんがおられましたね。失礼しました。修正しておきます)


北海道、青森県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、埼玉県、富山県、山梨県、岐阜県、静岡県、三重県、兵庫県、愛媛県、長崎県、宮崎県、沖縄県


〇それにしても京都府出身者は前尾茂三郎といい、谷垣禎一といい、世が世なら首相になっていたはずの惜しい方がいらっしゃいます。野中広務さんもチャンスがありましたよね。政界のバイプレイヤーの宝庫と言ってもいいのではありますまいか。岩倉具視や三条實美の昔はさておいて、今でも伊吹文明、松井孝司、前原誠司さんなどがいらっしゃいます。いやもう、堪忍どすえ。


<10月6日>(月)

〇最近は夜寝るのが早いのであるが、昨晩は午後9時に寝て、午後11時ちょっと前にハッと寝床の中で目が覚めた。すぐに枕もとのiPadでグリーンチャンネルを見たのであるが、凱旋門賞、今年も日本勢はダメでしたなあ。


*ビザンチンドリーム5着(マーフィー騎手)

*クロワデュノール14着(北村友一騎手)

*アロヒアリイ16着(C.ルメール騎手)


〇たまたま先週は三浦皇成騎手が、「127回目の挑戦で初のG1勝利」になりました。また、昨日の京都大賞典では、7歳馬のディープモンスターが初の重賞勝利を収めました。いやあ、仕事が忙しくて馬券を買ってあげられなかったよ、御免ねえ。

〇いずれも、諦めずに続けていれば、いつかきっといいことがあるよ、というご褒美のようなレースでありました。もっとも羽生善治さんの言によれば、「努力が報われるとわかっているのなら、誰でも努力はする。報われないかもしれないなと思いつつ、努力を続けられることを才能という」のだそうです。

〇ワシら、馬でも騎手でもない競馬ファンとしては、応援することしかできません。いわば気楽なお立場であります。それはそれとして、「頑張れ〜」という声援を送る際には、いつも純情でありたいと思うものであります。

〇で、明日は久しぶりに「モーサテ」に登場します。今日も早く寝よっと。


<10月7日>(火)

〇今朝は「モーサテ」へ。7月の参院選直後以来なので、ちょっと久しぶりです。いや、WBSには、ほぼ毎月、出ておるのですが。

〇昨日、あんまり株価が上がったので、本日は急きょ和キャピタルの村松さんも緊急登板されました。新総裁誕生で1日に5%の株高というのは、ちょっと記憶にありません。なおかつ9月に株価が5%上げた直後であります。おそらくオバゼキ先生は眉をひそめておられるのではないかと思料いたします。

〇日経平均が4万8000円近辺まで上がってしまうと、上下1%でも480円の動きになってしまいます。ここまで来てしまうと、かつては途方もない数字に覚えた「5万円」も、指呼の間に捉えたと言っても過言ではないでしょう。やっぱり世界的な金融相場なんですかねえ。

〇今日は「宮澤洋一税調会長が退任するらしい」なんてことまで、買い材料になった模様です。自民党の税調会長は、形の上では政務調査会の下部組織となりますが、とてつもないプロフェッショナル集団でありますからね。党内でも格は高いし、「政調会長の言うことなんて聞かないよ」というところがあります。その昔の山中貞則さんなんて、総理大臣でも「中曽根クン」でしたからねえ。

〇高市さんの熱狂的支持者から見れば、そういう永田町や霞ヶ関の既存の権威が崩れること自体が大歓迎なのでありましょう。財務官僚が右往左往しているぞ、と考えるだけで「メシウマ!」になるんじゃないかと思います。

〇こう言うのを見ていると、「日本もTACOトレードになったかなあ」と思います。すなわち"Takaichi Always Challenges Officials."(高市はいつも官僚組織に喧嘩を売る)ということが、株を買う材料になっているのではないかと。

〇そうは言っても、自民党幹事長が鈴木俊一さんで、麻生太郎さんが副総裁と、自民党四役に財務大臣経験者が揃うところを見ると、そんなに簡単なこととは思えませんけどね。果てさて、明日はどういうことになるのでしょうか。


<10月8日>(水)

〇数多くのお誕生日メッセージ、ありがとうございます。本日で65歳となりました。なんと年金事務所からも通知が来ておりました。

〇ということなので、今月末をもって(株)双日総合研究所の仕事は卒業いたします。ありがたいことに、「もうちょっと居てもいいよ」というお話もあったのですが、自分みたいな人間はいつかかならずフリーランスになるのだし、だったら少しでも早い方がよろしかろう、ということで決めました。

〇考えてみたら、今の職場がもう長過ぎるくらいなのです。かれこれ四半世紀です。この溜池通信じたいが20世紀からやっておるくらいですし。よくまあこの間、大病もせずに、たいした試練も受けずに、元気にやってこれたものだと感心します。多謝あるのみであります。

〇(株)溜池通信という自分だけの会社を少し前に作りましたので、今後はそちらを足場にやってまいります。詳しい話はまたおいおいご紹介いたします。

〇さて、本日発見したネタ。衆議院の議席数って、今こういうことになっているのね。


*立民(148)と維新(35)と公明(24)と国民民主(27)を合わせると、234になって過半数(233)を超えてしまう。

*立民は「計画的に」、維新は「悪乗りして」、公明は「恨みをこめて」、国民民主は「致し方なく」、首班指名で「玉木」と書いてしまう。

*すると玉木氏は首相にされてしまい、今月28日にはトランプ氏との日米首脳会談に臨まなければならない。おいおい、これって何の罰ゲームだよ!

*それに気づいた玉木氏は、慌てて麻生さんのところへ泣きついて、「副総理兼財務相」をお引き受けする。すると公明もニコニコしながら戻ってきて、「自公国」連立政権がスタートする。


〇上記のシナリオであれば、企業団体献金の規制案くらい自民党はよろこんで飲むでしょう。うーむ、これが冗談でないかもしれないところが、いかにも恐ろしい。


<10月10日>(金)

〇今宵は新潮社の「小林秀雄賞 新潮ドキュメント賞」の贈呈式並びに祝賀パーティーへ。今年の受賞作は、それぞれ川本三郎氏の『荷風の昭和』、鈴木俊貴氏の『僕には鳥の言葉がわかる』でありました。

〇毎年この時期に行われるのだが、いつも「ノーベル文学賞、村上春樹が取れていたらねえ・・・」などと余計なことを考えてしまう。村上作品、新潮社からいっぱい出てますので。しかるに昨今の風潮から行くと、村上作品は多分にポリティカリィ・インコレクトな世界であったりして、ちょっと時代に合わなくなっているのかもしれない。

〇でまあ、久しぶりに新潮社さんの「文学部」的な雰囲気に浸って、ご無沙汰な方々とお話するのである。出版というオールドメディア、付き合いの古い者にとっては味わいが深いです。こういうときのホテルオークラさんの白ワインは美味しいね。

〇しかるに今夕の「公明党が連立を離脱」というニュースには困ったものである。日経平均も急落しましたな。なにしろ明日掲載の東洋経済オンラインには、ワシは高市トレードの話を寄稿しておるのである。「早い、早過ぎるよ!」である。はてさて、この週末はどういうことになるのであろうか。


<10月11日>(土)

〇幸いなことにワシには「熟年離婚」の経験はないし、今後もそんなことはしたくないと思っている。(いやもう、それだけは勘弁してほしい)。そういうことを棚に上げて言うのであるが、「熟年離婚」には謎が付きものである。「なぜ、いま?」という疑問であるが、それに答えることは容易ではない。

〇なにしろ双方は「大人」であり、「なんで、そこで我慢が出来ないの?」などと周囲から言われてしまう。「だってお互いに損をするんだよ?」などと。まして、それが26年連れ添った公党同士の関係で、しかもその大部分の時期において与党だった同志だった場合には。ああ、もったいない。あまりにも謎過ぎるので、いろんな憶測が語られている。

〇しかるに「熟年離婚」に至る経緯は、双方にいろんな理由があって当然なのである。だって「熟年」なんだから。古いものから新しいものまで、「別れるべき理由」はいっぱい見つかってしまうのだ。直接的に取り上げられるのは直近の出来事になるけれども、過去にあったあんなことこんなこと、悔しかったけれどもぐっと我慢したことなどが、今ごろ脳裏を駆け巡っているに違いない。

〇だからまあ、熟年離婚が起きたときには、周囲はなるべく黙って見て見ぬふりをしてあげるのがよろしいかと思います。ほっとけば「元さや」になるかもしれないし。いや、地方支部なんかでは自公連携が続くんじゃないか、なんて話もチラホラと。

〇ただしこれだけは間違いないのは、「熟年離婚」は双方にとって不本意なことであり、そこに至る経緯には必ず「愚かさ」があったということである。いやまあ、人間は本質的に愚かな生き物であるし、それが組織になればますますである。だからこそ「熟年離婚」なんてことが起きるわけでして。

〇強いて言えば、大事なことはおのれの愚かさにちゃんと気づくことでありましょう。それを認めないで、「ふんっ、俺はいつかはそうなると思っていたんだぜ」などと意地を張っていると、遠からず孤独死が待っているのではないかと存じます。いやもう、土下座でもなんでもした方がいいんじゃないのかなあ。「これで憲法改正が可能になる」などと言っているのは、どう考えてもまともな神経とは思えませぬ。


<10月13日>(月)

〇「公明党が連立を離脱したのは、中国共産党からの指示によるものだ」と言って怒っている人たちが居る。そんなわけないと思うし、仮に中国共産党が公明党にそういう指示を出せる存在であるとしたら、逆に「高市は危ないから、お前たちは死んでも連立を抜けるな。ちゃんと情報をとってこい」と命ずるはずである。

〇逆にそれが真実であるとしたら、それを見抜けなかった「チーム高市」は、恐るべき無能集団ということになる。いいんだろうか、そういうことで。

〇仮に彼らが最初から公明党を切りたかったのだとしても、先に国民民主党と党首会談をやったのは愚の骨頂である。公明党という連立相手を無視して、そういう動きに出る軽率な相手のことを、国民民主党が果たして信用するだろうか。あまりにも手前勝手な動きとしか言いようがない。

〇という話はさておいて、公明党が連立を抜けるいちばん大きな理由は、「与党でいることのメリットがなくなった」ことではないかと思う。少数与党の政権なんて、やりたいことは何もできず、個々の政策では野党の「言いなり」になるしかない。野党は少数与党と駆け引きすることで、「××が実現したのはわが党の功績」と支持者に訴えることができる。逆に自公両党は「あんたたち、いったい何がしたかったの?」と支持者に問われるような立場になってしまう。

〇何より与党に居ることによって、得することもあまりなくなった。今の時代、皆が現状に不満を持っているから、与党は選挙に負けてしまう。野党の方が、分断化された民意を取り込んでしまえば、責任のない立場で党勢を拡大できる。

〇嫌な役割である与党を皆が押し付け合って、結果的に高市氏が首班指名を受けて、首相に就任するとしましょうか。次の瞬間、最大野党の立憲民主党が「選択的夫婦別姓法案」を提出してきて、これが通らなかったら不信任案提出だ、と脅されたらどうするのか。いやあ、これは誰だって野党の方が楽しいわ。

〇特に今の時代、外交をやりたい人は極度に少なくなっているんじゃないだろうか。対米関係も対中関係も対ロ関係も、いやもう地雷原そのものではありませぬか。台湾に行きたがる人だけが妙に多い。

〇と言ってる間に、中東ガザ地区では人質返還が始まろうとしている。これはトランプ平和外交の最大の成果かもしれない。日本外交はしばし脳死状態が続く。トランプさん、米中首脳会談もやらないと言い出したし、だったら日米首脳会談を急ぐ理由も消える。今月末のトランプ訪日も中止になるんじゃないかなあ。(→後記:トランプさん、やっぱり米中会談やるんですって。TACOですなあ)


<10月14日>(火)

〇今日は文化放送「長野智子のアップデート」に出たので、こんな大胆提案(思考実験)をさせてもらいました。


●立憲・国民・維新・公明の4党が連立して政治資金規正法と減税、この2つだけやる!


〇4つの政党で連立を組んで、政策は政治改革と減税の2つだけ。2年間限定で、その間、首相の解散権は封印します。安全保障政策と原子力政策は、現政権のものを引き継ぎます。2027年10月になったら解散して民意を問い、その後は各党が正々堂々と選挙で勝負しましょう。つまり期間限定の連立内閣です。

〇まあね、あくまでも思考実験なので、リアリティがあるとは思いません。でも、このパッケージを立憲民主党から提案したら、面白いと思いますよ。かつて社会党の村山富市さんが、「自衛隊は合憲、日米安保は堅持」と言ったときのことを思えば、このくらいの妥協はしないとね。

〇これで乗らなかったら、国民民主の玉木氏は「口先だけのひと」になりますな。与党になるのはとってもコワいこと。首相になった瞬間に、「やりたいこと」などはどこかへ行ってしまい、「やらなければならないこと」が目の前に山積みされる。石破さんだって、ホントはもっとやりたいことがあったでしょうけど、そんなチャンスは滅多にめぐっては来ないものです。

〇細川内閣は、「政治改革政権」を標榜して8会派で発足しました。でも、ウルグアイラウンド合意をやったのだから立派なものでした。菅直人内閣は、まさか東日本大震災と原子力災害への対応を迫られるとは思っていなかったでしょう。政権は取った瞬間から、思ってもみなかった事態が押し寄せてくる。国を背負うというのは、そういう作業です。

〇つまり「政策」なんてものは、ベンチャー企業が言う「ビジネスモデル」みたいなものですよ。要するに「絵にかいた餅」です。ベンチャーキャピタルの出資を得て、会社が船出した瞬間にそんなものはどうでもよくなる。最初のお客さんが就いた瞬間から、企業としての本当の苦闘が始まる。でも、ベンチャー経営者は、それがやりたいから起業をするのです。

〇野党の立場で「政策が、政策が」などと言っているのは、いわばお気楽な立場なんですよ。そんな政治家で終わりたかったら、今まで通りSNSの支持者たちだけを向いてやっていればいい。本物の政治をやりたかったら、与党になるしかない。与党を目指さない政治家なんざ、いわばニセモノです。

〇「2年間限定の4党連立策」は、とりあえず口に出すだけで自民党に対するプレッシャーになりますから、ひとつの選択肢としてご一考いただければよろしいかと存じます。そのくらいしないと、自民党も鍛えられませんから。












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編集者敬白




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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)