●かんべえの不規則発言



2019年6月 






<6月12日>(水)

○先日来、世間を騒がせている金融庁の報告書(いわゆる老後資金2000万円問題)について。

○おそらく当溜池通信の愛読者、あるいはモーサテの関係者などからすれば、「いったいこの報告書のどこが問題なの?」という感覚ではないかと思います。たまたま今週の週刊東洋経済では、「50歳からのお金の教科書」という特集をやっていて、その中では塚崎公義さんが以下のように書いている。マネーの世界の住人からすれば、まったく常識的な内容ですし、報告書とほぼ同じロジックです。


標準的なサラリーマン夫婦は65歳から毎月22万円の公的年金を受け取れるから、老後資金の不足額は毎月3万円である。32年間にわたって毎月3万円ずつ老後資産を取り崩すとして、葬儀費用を含めて65歳時点で必要な資金は1500万円程度であろう。少子高齢化によって年金支給額は少しずつ減っていくと思われるから、少し余裕を見て2000万円としておこう。


○とはいえ、昨日、文化放送の「くにまるジャパン極」でこの話をしたときは、「ああ、今、俺ってリスナーの反感を買っているんだろうな〜」と感じたものである(気のせいか、くにまるさんの反応も暗かったような)。でもねえ、どうしてこう世の中には年金のことになるとヒステリックになって、異常な反応を示す人が多いんだろう。

○その結果として、政治家の反応も異常なものになってしまった。あの蓮舫さんが、久々に元気になっている。そして与党は防戦一方になってしまった。麻生大臣は報告書を受け取らないなどといい出した。そんなことを言ったって、6月3日から金融庁のホームページに掲載されているんだから、今さら言っても遅いだろうに。

○可哀そうなのは金融庁である。高齢化社会においては、高齢者の資産運用のニーズが高まる。だから金融商品のラインナップを充実させ、なおかつ「かぼちゃの馬車」みたいな不心得者を支援する金融機関はキチンと罰しますから、皆さん、しっかりやってくださいね、そうでないと日本経済におカネが回りません。デフレ脱却もできませんから〜、と言いたかったのであろう。

○上記の議論のどこに間違いがあるというのだろう。仮にこんなことで遠藤長官のクビが飛ぶようなことがあれば、金融庁の仕事自体が否定されてしまうんじゃあないでしょうか。間違っているのは年金ヒステリーの方です。

○年金なんてものは、所詮は保険なんです。平均寿命よりも早く死んだ人のおカネを、平均寿命よりも長生きした人に分配する。本来はそういうものです。少なくとも世界で初めてビスマルクが作った時点では。その平均寿命が60歳から90歳に延びたら、そりゃあ個々人の取り分は少なくなりますわ。「ないものねだり」をしてはいけません。

○「年金は100年安心と言ったじゃないか!」と言って怒っている人がいる。あれは2004年の年金大改革で、マクロスライド制を入れたから「年金制度が100年安心」になったということです。つまり「この船は沈みませんよ」と言ってくれているわけで、船に乗っている人が全員、期待した通りの待遇を受けられることを保証するものではない。そりゃあ嵐に遭えば、船は積み荷を捨てますよ。船長が責任感のある人であれば、当然そうするでしょう。

○ともあれ、年金ヒステリーに火がつくことで、野党(というより旧民主党)が喜んでいるようにみえる。あの人たちにとって、年金不安をかきたてることは甘美な成功体験があるのでしょう。2009年には、それで政権をとったのですから。でも、「私たち、年金とか環境問題とか男女共同参画とか、そういうことをやりたいんです〜」という人たちに政権を任せてみたら、彼らは外交とか安全保障とか有事の危機管理がからっきしだった。危うく国がつぶれるかと思った。だから6年たっても国民は許してくれない。当たり前でしょう。

○年金の問題はこれだけ長く騒いでいて、今さらすばらしい名案が見つかるとは思われない。だったら与野党で協議して、地道にやっていくしかないではありませんか。ヒステリーが良い結果を招いたためしはありませぬ。


<6月14日>(金)

○安倍首相がイランに行っている最中に、日本のタンカーがホルムズ海峡で攻撃を受けたとの報が入り、日本の中東仲介外交はちょっぴりホロ苦デビューとなったようです。ポンペオ国務長官は「ほら見たことか。悪いのはイランだ」と言いたげだし、トランプ大統領も心なしか「すぅーっと」後ろに下がっているように見える。そして中東各国は、「ざわざわ」しながら様子を見守っている。

○タンカーを攻撃したのが何者なのか、イラン革命防衛隊の仕業なのか、サウジやイスラエルなど反イラン勢力による工作なのか、あるいは中東での騒乱を期待する勢力の謀略なのか、いろいろ観測が飛び交うところである。ただし、そもそも攻撃を受けた国華産業のタンカーはパナマ船籍で、日の丸を掲げていたわけではないし、日本人の乗船者もゼロである。襲われた船がたまたま日本企業のモノだった、ということなのかもしれない。

○安倍首相のイラン訪問は、中東情勢の緊張緩和という点ではプラマイゼロみたいなものでしょう。とはいえ、それは当たり前の話であって、たった1度の訪問によって、劇的な状況改善がもたらされるような地合いではない。2015年のイラン核合意が成立するまでに、アメリカやEUやロシアや中国の外交官たちがどれだけ飛び交ったことか。ほぼ初陣の日本外交としては、日本国首相が41年ぶりにイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師とも会ったということが貴重な成果でしょう。

○砂漠のバザール商人との交渉は忍耐力が必要です。そういえば昔、ドラクエにこんなのがあったなあ。

「おお! わたしのともだち! おまちしておりました」

「おお お客さん とても かいもの上手」

「おお これ以上 まけると 私 おおぞんします」

「おお あなた ひどい人! 私に くびつれと いいますか?」

○拒否するたびに値段は半額になっていく。だったら最初から定価で売れよ!と言いたくなるところだが、相手は交渉を長引かせることによって、こっちの本気さを測っている。それはそれで、砂漠で生きていくための彼らの知恵なのであろう。だから一発で信用されるということはないし、一度で相手にされないということもない。時間をかけて試されている、と考えておくべきでしょう。


<6月15日>(土)

○富山市で聞いてきた噂。

○現在、「令和初の賜杯」を得た朝乃山関が富山市に帰省中である。「故郷に錦を飾る」の言葉通り、どこへ行っても大人気。明日(6/16)は市内でパレードの予定ながら、心配なのは雨。2016年のリオ五輪で金メダルをとった田知本遥(柔道女子70キロ級)と登坂絵莉(女子フリースタイル48キロ級)が、パレードを行ったときもあいにくの雨だったそうです。

――地元の北日本新聞社は、優勝が決まった翌日の5月26日(日)と賜杯授与の翌日の27日(月)の両日、「ラッピング」という手法を使って当日の朝刊を丸ごと「朝乃山優勝」の写真でくるんで届けた。ここまでやるか、とは思うけれども、ここまでやるというのが地方紙の役割かもしれません。同社がラッピングを実施するのは、2015年3月の北陸新幹線開通以来2度目のことである。

――ラッピングの見出しには「県人103年ぶりのあっぱれ」とある。これは富山県出身の横綱・太刀山峯右エ門(たちやま・みねえもん/1877-1941)以来の快挙ということ。おそらくは「立山」(たてやま)からとった名前なのでしょう。ちなみに富山県砺波市には「太刀山」という日本酒があります。

○来週21日にはアメリカでNBAのドラフト会議が行われる。ゴンザガ大学でエースを務める八村塁選手(21)に、日本人初のドラフト1位の可能性があるのだそうで、それは実現した瞬間に全国ニュースになるであろう、とのこと。八村選手は奥田小学校、奥田中学校というワシの後輩である。

――その八村選手には、2年上の馬場雄大という先輩がいて、そこにはさまざまなドラマがあるらしい。すいませんねえ、いちいち知らないことばかりで。富山県は以前はスポーツ不毛の土地だったのですが、なぜかここへ来て突然、狂い咲きのようにアスリートが輩出しています。

○富山のJ3チーム、「カターレ富山」は本日は藤枝MYFC相手に勝利。現在5位。J2への昇格はなるでしょうか?

――今月26日に同社社長に就任する山田彰弘君は、高校と予備校時代のワシの同級生なのである。もちろん赤字のチームなので、さぞかし心労は絶えないことと拝察申し上げる。さて、どうやって応援することができるのか。あれこれ考えている昨今である。


<6月16日>(日)

○このところ毎週のように日曜日は競馬。そして小刻みに負けを重ねてきたのだが、さすがに今日はお休みにした。いや、今日みたいな日も出動するようでは、ほとんど依存症なのではないか。JRAへの抗議の意味も込めて今日は「見」。それにしても、競馬がないと日曜の午後はつまらんのう。

○ご案内の通りかと思うが、競走馬の飼料に禁止薬物が入っていたという事案が発覚し、この週末は発走除外馬が大量に出てしまった。気の毒なことに、この週末から始まった函館開催では、メインレースの函館スプリントSは13頭立てのところが7頭になっている。これじゃあヤル気になりませんわ。ほら見ろ、江田照男騎乗のカイザーメランジェが逃げ切ってしまって穴をあけておる。頭数が減ったから当たりやすくなる、などと考えてはいかんのだ。

○正直なところ、この話はよく分かりません。JRAの中で起きている話なので、ちゃんと自己申告したのは立派だと思う。ほっといたら藪の中になっていただろう。とはいえ、なぜこのタイミングで発覚したのか。5月のG1シーズンの間はなんともなくて、安田記念が終わってから急に発覚した、というのは不自然ではないか。もっとも、ダービー当日にこの事件が出たら、ファンの失望はいかばかりであったか。

○なにしろJRAは独占事業であるし、競馬番組やスポーツ新聞などのメディアは皆、お世話になっちゃっているからチェック機能が働かない。監督官庁である農林水産省が介入するとも思われない。つまりガバナンスが効きにくい組織なのである。果たして、どんな形で事件を落着させることやら。

○何より競馬界にとって最大のステークホルダーである競馬ファンは、「そんなことより次のレース」が気になって仕方がないときている。だって来週は上半期の締めくくり、宝塚記念なのである。ワシも楽しみだし、今頃、タイでは馬券王先生も検討を始めているのではないかと思う。安易な幕引きは許さんぞ、といちおう言っておこう。


<6月17日>(月)

○某政治家のパーティーで、タクシー業界の方から話を聞く。面白かったのでメモ。


●タクシー業界は市場規模1.7兆円。歴史が長く、規制も厳しく、料金も決められている。経営の自由度は低い。その結果として、経常利益率が低いという問題が生じる。

――この市場規模はタクシー会社だけのものなのか、それとも「都内では4車に1車」という個人タクシーの分も含めてのことなのかは、あいにく聞き忘れました。

●最大のコストは人件費で73%を占める。「もっと給料を上げろ」とは言われるが、なかなかに難しい。

――人件費の中には、運転手さんたちの健康診断やアルコール検査といったコストも含まれている模様。

――ちなみにウーバーでは運転手の取り分が売り上げの8割で、「それが高過ぎるからあの会社は儲からない」という話を聞いたことがあります。

●ガソリン代などはコストの7%程度。それでも中東で何かあると、すぐに値上がりして経営を直撃する。ホルムズ海峡、おそるべし。

――それにしても誰の仕業なんでしょうね。安倍さんが最高指導者ハメネイ師と会っている最中に、イラン革命防衛隊がやりますかねえ。

●結局、経常利益として会社に残るのはわずかに売り上げの2%である。

――車両のコストも、思ったほどではないのですね。トヨタや日産が思いきりダンピングしてくれるのかもしれません。

●現在の悩みの種はキャッシュレス化。現在は売り上げの3割程度がキャッシュレスで、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなどあらゆる手段に対応している、ところが手数料が高い!キャッシュレス比率が高まるとともに、タクシー会社の経常利益が削られていく。東京五輪で7割を目指すだなんて、勘弁してくれ〜!

――そうなんですよねえ、中国でQRコードが急速に普及したのは手数料がほとんどゼロだったからだそうです。その点、日本のカード手数料は高いですから。もっとも金融機関の側からすれば、「ほかにどこで儲けろというんだ〜!」というでしょうけれども。


○終わってから会場の外で捕まえたタクシーが、たまたまそのD社でありました。大手4社の中では唯一の上場企業(東証2部)、他は全部オーナー企業なんだそうです。いやいや、勉強になりました。


<6月19日>(水)

○本日は党首討論が行われたそうです。でも一部にあったように、「安倍首相が枝野代表を挑発して不信任案を出させ、一気に解散に持ち込む」という大技は不発だったようです。

○いろんな理由があるでしょうし、「皇室日程と外交日程がこれだけ立て込んでいる中で、解散までできるかよっ!」ということもあるのだとは思いますが、この週末に出た世論調査も一役買っているのではないかと思います。

○今週月曜日に出た産経新聞=FNN合同調査を見てみましょう。内閣支持率は先月からちょっぴり下げた48.4%でした(5月は50.7%¥)。なーんだ、「老後資金2000万円問題が響いてないじゃん」と思いますよね。共同通信の方でも似たような結果が出ています。内閣支持率はあんまり変わっていない。せいぜい3p減が関の山です。

○ところがですな、「この次の参議院議員選挙の比例代表で、あなたはどの政党の候補者、あるいはどの政党に投票しようと思いますか。次の中からひとつだけ選んでお知らせください」という産経=FNNの設問に対して、わずか1か月間に恐ろしい変化が起きている。

  6月 5月 増減
自由民主党 31.4% 39.9% ▲8.5p
立憲民主党  9.2%  9.3% ▲0.1p
国民民主党  1.6%  2.4% ▲0.8%
公明党  6.1%  4.5% +1.6%
共産党  4.4%  3.9% +0.5%
日本維新の会  6.9%  6.4% +0.5%
社民党  0.9%  0.5% +0.5%
希望の党   −  0.3% ▲0.3%
その他の政党  8.7%  7.0% +1.7%
わからない・言えない 30.8% 25.7% +5.1%


○比例代表で支持が1%落ちるということは、100万票を失うことにほぼ等しい。自民党にとって、1か月で8.5P減は厳しい結果です。こりゃあ拙いぞ、年金問題はやっぱり効いてるわ、自民党感じ悪いよね〜と思われているぞ、と反省しきりであることでしょう。

○ところが興味深いことに、旧民主党の支持が伸びたわけではない。むしろ減っている。そりゃそうだよね。年金問題に対して、有権者はかなり大人になっている。おそらくは、「どの口が言っている!」「お前らにだけは言われたくない!」という気分なのでしょう。これでは党首討論も盛り上がりを欠く。仕方ないよね。

○自民党が減らした分は、公明党と日本維新の会、「わからない・言えない」などに分散したようです。特に欧米における「トランプ支持層」は、日本ではどこが吸収しているかというと、「低所得、低学歴、右翼気質、ヤンキータイプ」の有権者は日本維新の会に流れているのではないかという気がします。例の丸山議員の問題発言「北方領土は戦争で取り返すしかないっ!」は、同党の支持率にさほどの影響を与えていない。そもそもが丸山発言の気分を共有している層が育っているのでしょう。

○左側で言うと、共産党と社民党の支持が伸びています。ただし、ワシ的に注目したいのは「その他の政党」の+1.7%である。これってたぶん、山本太郎氏の「れいわ新選組」ですな。わが国における初の「左派ポピュリスト政党」と言っていいでしょう。これに比べれば、共産党なんてのは「意識高杉君」で、あんまり共感を呼んで居る様子がない。、

○つまり「西側先進国の中で、日本政治だけが安定している」とこれまで長らく言われてきたものの、ここへ来てようやく「右派ポピュリスト」と「左派ポピュリスト」の政党が出てきた。逆に自民党と旧民主党という2大政党に逆風が吹き始めた。だからと言って、左派ポピュリストと右派ポピュリストが連立政権を組んでしまう、なんていうイタリア政治はわが国のはるか前方を突っ走っているわけで、相対的に見ればまだまだ安定の日本政治といえましょう。今年の参院選は、左右のポピュリスト政党に注目ですな。


<6月21日>(金)

溜池通信東洋経済オンラインの締め切りが重なる今日、午後2時半から3時にかけて、ちょこっとだけ会社の近くにあるラジオ日経へ。

○今日の後場の株式市場を伝える「マーケットプレス」の最後の部分に出て、競馬ファンならだれでも知っている小林雅巳アナと一緒に今週末の宝塚記念を語るという夢のような企画である。え、小林アナって誰のこと?と思った方は、(「世界のロードカナロア」「これがディープインパクトだ」などを聞いてみてください。小林アナ、普通に話す分には普通の会話なのだが、何かのはずみに思いきり情感がこもった「×××だ、ゴー―――ルイン!」という声の響きを伴うので、ついドキドキしてしまう。

○いや、もちろんその場には中野雷太アナもいて、ついつい世間話をしてしまうのだ。こちらは沈着冷静で正確無比なレース紹介と、ボキャブラリー豊かで的確きわまりないゴール直後のコメントが感動を呼ぶ。いや、ラジオ日経にはつくづく人間国宝のような人たちがいるのである。

○・・・などと幸福感に浸っていると、「今日は円高が進みましたが・・・」などと「本業」でもコメントを求められてしまった。いや、今日みたいな日はそれが当たり前です。でも、ちょっと夢から覚めた感覚があったかな。さて、この週末は誰の声で宝塚記念を聴くことになるのでしょうか。


<6月23日>(日)

○八村塁選手、見事にドラフト1順目でワシントン・ウィザードに指名されました。契約金は4億円で、たちまちナイキが契約。チームはワシントンDCなんですね。こりゃあ、そのうち試合を見に行きたいものであります。

○とまあ、ワシがあんまり興奮することはないのですが、自分と同じ奥田小学校、奥田中学校からこんなアスリートが出てしまうのですから、ちょっと感動します。そうでなくても富山というのは本来、アスリート不毛の地であったのです。今頃、富山市内がどれだけ興奮しているか、容易に想像できますな。

○富山市内と言えば、朝乃山関の優勝も興奮冷めやらぬところがあるのですが、こちらは富山商業高校時代の恩師の指導がよかった、てなことが言われています。八村塁君にも、「お前はNBAに行くんだ!」と言ってくれた奥田中学校のコーチがいたそうで、それで本人がバスケットに熱中したのだとか。なるほど指導者というのは重要なものであります。特に若いうちは。

○ところでこの塁君、身長は206センチでシューズのサイズは34センチ。つくづく規格外ですありますなあ。名前は正確にはRui "Louis" Hachimuraで、ツィッタ―は"rui_8mura"なんですって。塁君はお父さんがベナン人だそうですが、それってフランス語圏なんですな。だからLouisだけど、発音はRuiとなる。

○それでも間違いなく富山のコメと水と魚で育った子なんだよなあ。ワシントンDCのチームで大きく開花されんことを祈るものです。


<6月24日>(月)

○最近驚いたことのひとつに、世界中の政治家がツイッターをやっているのは知っていたけれども、今やイランのハメネイ師までがやっているのですね。まあ、宗教家というものは、言葉を使って他人を導く仕事なのだから、それはまあ、当然のことなのかもしれません。

○ただし「言葉を発して他人を導く」ということは、そうそう誰にでもできることではなくて、凡夫がこれをやるとしばしば「炎上」してしまう。なにかカッコいいことを言おうとして、実は思ってもみないことを書いてしまい、それがついつい独り歩きして後悔することになる。SNSって、そういうことがとっても多いでしょ? 

○もっと悪質な例としては、トランプさんのように(今やフォロワー数は6000万人を超えている!)を催眠術にかけてしまう人もいる。なぜ俺はイラン攻撃を逡巡したか、なんてホラ吹きに耳を貸しちゃダメですよ。だから一言一句に振り回されちゃいけない(Don't take him literally.)というわけでありまして。あれはいつもの彼の手口なんです。

○こんな風に、「書き言葉」が膨大な量でネット空間を飛び交う時代は本来、恐るべきことといえましょう。なんとなれば、言葉というものはかならず行き過ぎるようにできている。せめて話し言葉であれば、どうとでも解釈できてしまうし、一晩寝たら忘れてしまうこともある。ところが、書き言葉は後に残る。

○その昔、宮沢賢治は「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」なんて言葉を残している。そんなことを書いちゃうもんだから、早死にしちゃった(37歳、急性肺炎)。まあ、彼は詩人だから、それで良かったのかもしれない。言葉に生きて、言葉に死ぬ職業の人だから。この「農民芸術概論綱要」は今読むとほとんど無価値ですが、「雨ニモマケズ」は今もなお輝きを保っている。

○そういう覚悟のない人たちの言葉が、ネット空間を膨大な量で飛び交う世の中である。しかも検索できちゃうもんだから、昔書いた事に対して、「あのときお前はこんなことを言ってたじゃないか!」と矛盾を指摘されたりする。当たり前じゃないですか。時間がたてば人間は変わるんだから。だから書き言葉をあんまりのさばらせちゃいけないんです。そんなことだから、現代政治は混乱するのであります。

○以前、養老孟司先生が『バカの壁』という大ベストセラーの中で、「人間は変わるけれども言葉は変わらない。だから言葉の方を信用しよう、などという馬鹿が出てくる」と喝破してくれた。それでも世にお馬鹿さんは尽きないもので、「マニフェスト政治」などというものが流行った一時期もありましたよね。木に拠りて魚を求むるの典型でありまして、政治家が信頼できないというのなら、よっぽどAIにでもやらせればいい。そうしたら、本気でAIに政治をさせようというお馬鹿が出てきかねないのが昨今の怖さである。

○くれぐれも、言葉なんぞに振り回されちゃいけないのです。え?お前が日々書き連ねているこの文章は何事なのか、ですって? もちろん日々のたわごとに過ぎません。モノ好きな方は、過去20年分を再読して矛盾点を探し出してみてください。いっぱいあることは保証しますから。


















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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)