●かんべえの不規則発言



2019年5月 






<5月19日>(日)

○先日、ワイン会に呼んでもらいました。6人で6本あけたのですが、その日のメインは、イタリア産赤ワインの「アマローネ」、1997年と2013年でした。

○1997年といえばアジア通貨危機があった年であるし、2013年といえば黒田ノミクスが始まった年である。2本のワインをグラスに注ぐと、同じブランド、同じ製法の同じワインなのに色あいがまったく違う。黒田ノミクスはキレイな赤紫色であり、アジア通貨危機はやや濁った色になる。見るだけなら、2013年のアマローネが魅力的である。

○ところが2つを飲み比べすると、明らかに1997年の方が味わい深い。こちらを先に飲んでしまうと、2013年の方はどこか物足りなく感じる。なるほどワインというものは、こんな風に時間をかけて熟成していくものかと感心する。ワインの「師匠」の言によれば、アマローネは本来、20年後くらいに飲むのが最適なのだそうだ。

○ということで、飲んだ者の間ではこんな会話になりました。

「熟女の魅力の圧勝ですね」

「ええ。ただし保存状態にもよりますね」

○単に時間をかければいいというものではない、というのがアレですな。人もワインも。


<5月20日>(月)

○今朝、1-3月期GDP速報値が「年率2.1%」という数字を聞いて、「えっ、マイナスでしょ?」と尋ねてしまった。いくらワシがいい加減なエコノミストであるにせよ、ここまで予測がはずれていいものであろうか。てっきり大マイナスだと思ってましたがな。

○この結果をどう見るか、といえば正直な感想は以下の通りである。

@外需が大マイナスだろうと思ったら、輸出が減る以上に輸入が減っていた。だから純輸出はプラスとなる。これは日本の景気にとって良い話ではない。

A設備投資も相当に減っただろうと思ったら、それほどでもなかった。これは今後の法人企業統計季報と、6月10日に公表される2次速報値を見なければならない。

B民間在庫投資の伸びに助けられている。これもあんまり良いことではない。

C住宅投資も増えているが、これは消費増税前の駆け込み需要を受けたからだろう。消費増税の特例は3月末日までですから。今、住宅建設の契約をすると、税率は10%になりますので、念のため。

D個人消費の前期比マイナスは予想通り。暖冬や食品値上げの影響があったというのはその通りだろう。1-3月期は「令和ブーム」とも無縁でしたし。

○こんな風にQEの予想が大きく外れるのは、めずらしいことではありませぬ。いや、「もっと強いと思っていたのに〜!」ということの方が多いですけど。もちろん、内閣府の職員が官邸に忖度して数字を変える、などということはあり得ません。それはもう、言っちゃ悪いけど厚生労働省とはプライドが違いますので。QEが近づくと、担当者は他部門の誰とも口をきかなくなる、というくらいにそこは頑固だそうです。

○むしろ官邸にとっては、こんな感じじゃないでしょうかね。


「あー、困った。これじゃ消費増税の延期ができないじゃないか。日ロ交渉だってサッパリだし、拉致問題だって全然進まない。つまり国民の信を問いたくても、大義名分が見当たらない」

「野党がトチ狂って、内閣不信任案なんか出してくれないかな〜。そしたら遠慮なく解散して、衆参ダブル選挙で壊滅させてやるのに。アイツら、マジで政権獲ろうという気がないんだもん」

「サンデー毎日の三浦氏による参院選予測では自民党が54議席だけど、それって現有から▲12議席だからね。自民党の単独過半数も割れちゃうし、改憲勢力で3分の2も難しくなってしまう」

「ああ、解散したい、解散したい。でも解散できない。野党が不信任案を出してくれなかったら、『アンタって人は、口先だけのいくじなし!』と呼んでやろう。それくらい許されるよねえ」


○などとあらぬことを考えてしまう今朝のQEでした。


<5月21日>(火)

○昨日の続き。果たして解散→ダブル選挙はあるのか、ないのか。

○議員秘書曰く。「『2年間の法則』が独り歩きしている。2014年と17年の解散で味をしめたせいか、与党内はとにかく2年たったら解散だと思い込んでいる人がいる。4年の任期も後半になれば、解散の機会が失われるのではないかと怖れている。だから解散風が吹く。でも、それを言ったら、秋に解散するという『時間差ダブル』でもいいんだけどね」

○元議員曰く。「衆参同日選にすれば票が伸びる、なんてのは中選挙区制時代のこと。あの頃の自民党議員は、みんな一国一条の主だったから、衆議院議員が互いに競い合えば参議院も票が伸びた。今はそうじゃない。若い衆議院議員の中には風頼りで、地元に後援会も作っていないのがいる。週末も東京に居るんだから困ったものだ。ああいうのはこの際、少し淘汰された方がいいね」

○政治記者曰く。「ダブル選挙は報道が大変だから勘弁してほしい。メディアも昔みたいに人手とカネが足りている時代じゃないんだから。衆参の両方で選挙区と比例区があって、しかも衆議院の方はやるかやらないかがわからない。これでどうやって準備しろというのか。しかも最後のダブル選挙は1986年。過去のデータがほとんど通用しない」

○政権インサイダー曰く。「憲法改正のためには衆参3分の2以上の議席が必要だ。だからと言って、与党が衆参3分の2以上の議席を有していると、いつまでたっても国会では憲法改正の議論が始まらない。だったらむしろ選挙で少し議席を減らして、3分の2を割った方がいいんじゃないか。安倍さんはダブルにこだわっていないと思う」

○シンクタンク研究員曰く。「消費税の増税を延期して解散するのならわかるが、増税を予定通り行うけど解散はする、ということは考えにくい。仮に日ロ交渉や日朝交渉が進むにせよ、そんなこと普通の国民には関心ないんだから。でも増税延期って、さすがに無理でしょ」

○うーん、いろいろあるんだけど、今年は令和元年であって、皇室行事があって、外交日程もたくさんあって、そういう年に敢えて解散しますかね。例えば通常国会の会期末に解散するとしたら、大阪G20会議のときに衆議院議員は全員クビになっている。問題ない、と言い切ることもできるけど、実際問題としてやりますかねえ・・・。


<5月22日>(水)

○本日はNPO法人岡崎研究所の理事会へ。

○理事仲間の金田提督から、最近の海上自衛隊についていろいろ伺う。そういえば今週末には「空母いぶき」が封切りになり、同時にトランプ大統領が訪日して、週明け28日火曜日には横須賀へ行って、護衛艦「かが」「いずも」を視察する予定ではなかったか。こんなうまい日程、いったい誰が準備したのだろう。これを中国がどんな風に受け止めるのだろう。

○聞けば先月23日、中国チンタオでは10年ぶりに、「中国海軍創設70周年記念国際観艦式」が行われたのだそうだ。わが国も含め、実に61カ国から代表団が派遣されたそうだが、その実働時間はわずかに1時間であった。おいおいおい、3年に1度のわが国観艦式では、海自は朝早くからから午後まで目いっぱい時間を使って横須賀沖で展開しておるぞ。しかもそこには無数の自衛隊ファンが駆けつける。

○さらには総理大臣はヘリで登場し、旗艦くらまに降り立って指揮を執る、などのギミックがついている。その点、習近平主席はとっても地味である。空母「遼寧」は参加したけれども、国産空母は姿を見せなかった、というのも不思議な話ではないのだろうか。

○本日夕方にはNHK第一「Nらじ」に伺いまして「激化する米中貿易摩擦、世界への影響は」みたいな話をいたしました。明日は「クローズアップ現代プラス」に登場いたします。米中関係、まさしく佳境に入っております。


<5月23日>(木)

○昨日発行の「官報」にこんな通告が載っている。おいおいおい、こんな風に手の内明かしていいのかよ。


●外務省告示第十五号

アメリカ合衆国大統領の来日に際し、国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律(昭和六十三年法律第九十号)第四条第一項の規定に基づき、次の地域を「外国公館等周辺地域」として指定する。

令和元年五月二十二日

外務大臣臨時代理 国務大臣 菅 義偉


一 東京国際空港周辺地域

二 茂原カントリー倶楽部周辺地域

三 皇居周辺地域

四 赤坂プレス・センター周辺地域

五 パレスホテル東京周辺地域

六 迎賓館周辺地域

七 国技館周辺地域

八 米海軍横須賀基地周辺地域

九 海上自衛隊横須賀地方総監部逸見庁舎周辺地域

十 六本木アロービル


○明後日から来日するトランプ大統領の行動範囲が全部ばらしてある。茂原カントリーでゴルフすることくらいは既に報道されているが、パレスホテルに泊まると知られるのは拙いのではないか。こういうものを発表するときは、ついでに帝国ホテルとニューオータニくらいも入れておいて、大統領がどこに泊まるのか分からないようにする、てな配慮はなかったのだろうか。

○しかも「六本木アロービル」というのは、日曜夜にトランプ夫妻が安倍首相夫妻と一緒に行く「炉端焼き」の店だと見える。「炉端焼き」と「六本木アロービル」で検索すればすぐにわかりますな。日曜日の夜にこの店の近くに行けば、非常に高い確率で生トランプさんを見ることが出来そうです。

○まあねえ、この国は「以下の時間、以下の周辺地域でドローンを飛ばしちゃダメなんです」ということまで、官報に記載しなきゃいけない仕組みになっているわけで、ホントに大丈夫かと心配になってまいります。トランプさん、あなたがこれから訪れる国は、セキュリティ音痴のとんでもない国でありますぞ。










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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)