<11月13日>(水)
〇朝はニッポン放送へ。『モーサテ』の日に比べればお迎えは1時間遅いので、はるかに楽である。午前6時半から「飯田浩司のOK!
Cozy up!」に出演し、午後8時まで。
〇それから長い一日を過ごす。あっという間である。家に帰ってから、ふとこんなものを聞いてみる。
●ポッドキャスト:2024年11月13日(水)コメンテーター:
吉崎達彦
〇ふむふむ、俺はこんなことを話していたのかと、ほとんど忘れているのが自分でも呆れるくらいである。本当に今朝のことだったんだろうか。
<11月14日>(木)
〇本日は神戸商工会議所さんのお招きで神戸へ。テーマはもちろんトランプ新政権で、地元経済人の関心はまことに高い。こんな風にして、今日も4年に1度の繁忙期を楽しませていただいております。
〇某自動車部品会社さんいわく。イリノイ州に工場を作ったときに、メキシコに進出すべきかどうか正直迷った。何しろコストが全然違うから。今は行かなかったおかげでホッとしています、と。そりゃあそうだろう。
〇今から思えば、NAFTAは北米市場を鍛え上げる戦略だった。特にすそ野の広い自動車産業を育成する効果があり、日本企業を含む多くの外資が参入した。それが今では、「メキシコ製のクルマに100%の関税をかける」とトランプさんが言っている。今ではNAFTAが米国労働者のジョブを奪った、とみられていて、その後継バージョンであるUSMCAは2026年に改定される。これは大変です。
〇トランプ第2期政権にとって、一丁目一番地は不法移民問題でありましょう。ということは、年明け早々からこの問題はさく裂するはず。次期政権は「最初の100日」以内に、「不法移民の大量強制送還」みたいな形で成果を上げようとするでしょう。メキシコ政府とは年明け早々からバトルになるのではないか。
〇それから来年の日米関係ということでは、おそらくトランプさんは大阪・関西万博を見に来るだろう。これはひとつの材料となります。せいぜい神戸ビーフの旨いのを食べてもらって、ゴルフもやってもらったらいい。石破さんは「ええとこのボンボン」だったから、慶応大学ではゴルフ部に所属していたとか。実は安倍さんよりも上手だったんですって。
〇神戸で聞いた話。現在、兵庫県知事選挙が行われていて、この週末が投票日である。このままいくと、兵庫県庁にあの人が戻ってくるかもしれないんだそうだ。それって不味いんじゃないのか。東京じゃ石丸現象はとっくに過去のことになっているけど、まだまだ騙され足りない人たちがいるんでしょうかねえ。
<11月15日>(金)
〇QEが発表されました。7‐9月期の実質GDPは年率0.9%増。名目GDPは年率換算で610.9兆円。「個人消費が堅調」と言われるけれども、そんな気配は全然感じませんけどねえ。
〇今年の夏は自動車の品質不正問題が解消したことで、やっと納車がされたという分が増えたということと、「南海トラフ」で大騒ぎになったんで、防災グッズが売れたことが大きいらしい。景気良くカネを使っているのはインバウンドだけで、それもちょっとずつ見かけなくなりつつある。心なしか、タクシーもつかまりやすくなったような気がするな。
〇先日乗ったタクシー運転手さんは、「もう去年とは全然違います」と嘆いていた。去年はまだ「脱コロナ」があったから、無理してでも出かけようとしていたけれども、今年は忘年会もそんなに多くならないんじゃないか。盛り上がりに欠けますなあ、ご同輩。
〇消費の不振は内閣府でもいろいろ調べているらしいのだが、「年寄りがカネを使わない」(長生きリスクを恐れて貯金を減らさない)というのが大きいらしい。いやね、ワシも本来は「溜池通信800号記念」で、今宵はパーッとお祝いをしなきゃ、などと考えていたのだが、もう先月くらいから忙しくて全然そんな気になれなかったのである。
〇ということで、今宵はおうちでご飯と缶ビール2本で幸せになったのである。文句を言ってたら罰が当たります。
<11月16日>(土)
〇トランプ2期政権の人選が早い。財務長官や商務長官、USTRなど経済系はまだだけれども、選挙期間中からある程度構想を練っていた様子。以下は11月14日時点で、ソースはポール室山氏の"Washington
Political Report"から。
<WHITE HOUSE>
Vice President J.D. Vance Senator (OH), US
Marine Corp., age 40.
Chief of Staff Suzie Wiles Co-Chair of the
Trump campaign, 67
Dept. Chief of Staff Steve Miller Senior
Advisor & chief speech writer, 39.
National Security Advisor Mike Waltz House
Representative (FL-6), US Army, 50.
Border Czar Tom Homan Acting Director of
ICE, 62.
White House Counsel William McGinley Cabinet
Secretary, Holtzman Vogel.
Director of CIA John Ratcliffe DNI, former
House Representative (TX-4), 59.
Dr, National Intelligence Tulsi Gabbard former
House Representative (HI-2), 43.
<CABINET>
Secretary of State Marco Rubio Senator
(FL), Fl House Speaker, 53.
Secretary of Defense Pete Hegseth FNC
host, Army National Guard Officer, 44.
Attorney General Matt Gaetz House
Representative (FL-1), 42.
Deputy Attorney General Todd Blanche Defense
attorney, NY prosecutor, 50.
Secretary of HHS Robert Kennedy Jr Environmental
Lawyer, Presidential Candi., 70.
Secretary of the Interior Doug Burgum former
Governor of North Dakota, 68.
Secretary of DHS Christi Noem Governor of
South Dakota, House Rep., 52.
Government Efficiency Vivek Ramaswamy Presidential
candidate, entrepreneur, 39.
Co-chair Elon Musk CEO of Space-X, Tesla,
and X, 53.
Director of EPA Lee Zeldin former House
Representative (NY-1), 44.
Ambassador to the UN Elise Stefanik House
Representative (NY-21), 40.
<OTHER NOTABLE APPOINTMENT>
Ambassador to Israel Mike Huckabee former
Governor of Arkansas, 67.
Envoy to Middle East Steve Witkoffe Witkoffe
Group, real estate investor, 67.
〇いやもう、真面目なのだか不真面目なのだか、といういつものトランプ流である。国務長官や内務長官は「まあ、そう来ますよね」という感じなのですが、国防長官!司法長官!!厚生長官!!!とどんどん掛け金が積みあがっていく感じ。「政府効率化委員会」のヴィヴィック・ラマスワミとイーロン・マスクなんかはスルーされてしまいそうです。
〇この人事を見て、今ごろイヤ〜な気分になっているのは、今週、新たな共和党上院院内総務に選出されたジョン・スーン氏でしょう。年明け早々、このメンバーの承認をしなければならないけれども、上院は共和党53対民主党47ですから、身内から4人の造反者が出ればアウトである。ワシ的には遠慮なくアウトにすべし、と思いますが、果たしてその時に次期大統領がどういう反応を示すのか。
〇しかるにアメリカ政治のシステムはよくできていて、上院議員の任期は6年間、大統領は4年間である。しかもトランプ氏は2年後の中間選挙後は、確実にレイムダック化が進む。憲法上の規定により、再選はできませんからね。
〇とりあえず厚生長官はリジェクトされるでしょう。でないとアメリカの公衆衛生はエライことになりますぞ。こんな風にいつもバトルが生じるのがトランプ劇場。当溜池通信としても、お付き合いしなければなりませぬ。
<11月17日>(日)
〇昨日の続き。「トランプは憲法を改正して、4年を過ぎても大統領に居座るのではないか?」というご質問が良くあります。それでは合衆国憲法修正22条をご覧いただきましょう(第2節の批准手続きは1951年に終わっております)。
修正第22条
第1節 何人も、2回を超えて大統領の職に選出されてはならない。他の者が大統領として選出された場合、その任期内に2年以上にわたって大統領の職にあった者又は大統領の職務を行った者は、何人であれ1回を超えて大統領の職に選任されてはならない。ただし、本条の規定は、本条が連邦議会によって発議された時に大統領の職にある者に対しては適用されない。また、本条の規定は、それが効力を生ずる時に任期中の大統領の職にある者又はその大統領の職務を行う者が、その任期の残余期間中大統領の職にあり、又は大統領の職務を行うことを妨げるものではない。
第2節 本条は、連邦議会がこれを各州に提出した日から7年以内に、全州の4分の3の議会によって憲法の修正として承認されない場合は、その効力を生じない。
〇合衆国憲法を改正する手続きはとても煩雑で時間がかかるので、任期中にこの条項を変えるのはほぼ不可能でしょう。となったら、解釈でゴネる手が考えられますね。「2回を超えて選出されてはならない」とは書いてあるけれども、「これは連続任期のことを言っているのだ」と言い張って、最高裁に判断を求めてみるのはどうか。
〇うーん、いくら保守派判事が9人中6人もいるからと言って、ちょっと無理筋であるような気がします。最高裁判事も、自分の評判を考えますからね。大統領任期は4年だが、最高裁判事は終身である。理屈の立たない判断を残して後世の批判を浴びることは、彼らは嫌うと思います。
〇それではこれはどうか。2028年に「ヴァンス大統領、トランプ副大統領」というチケットで出馬してみる。その上で当選したら、すぐにヴァンスに辞任してもらう。これはプーチン大統領が、メドベージェフ首相を使って2008年から12年にかけて使ったトリックと似ています。でもねえ、こんな無茶をしたら、普通に民主党の候補者に負けるでしょう。
〇アメリカの大統領は、2度目の当選を果たした直後が権力の頂点なんです。つまり今がそうだということ。そして時間の経過とともに彼の権力と権威は減衰していく。もちろん加齢も深まっていく。既に78歳ですからね。そういうことだと考えるのがいいと思います。
〇ということで、明日朝は「モーサテ」に出演です。うむ、ちょっと久しぶり。10月9日以来ですな。良かったら見てやってくださいまし。
<11月18日>(月)
〇今朝はえらい目に遭いました。
〇午前4時、いつも通りテレ東差し回しのタクシーに乗って、常磐道柏インターに乗ったのです。そしたら流山インターの手前で、車列がピタッと止まってしまった。高速入り口に何もサインがなかったので、どうやらたった今起きた事故による渋滞に突入した模様。前後左右をクルマに挟まれて、動きが取れない状態で時間だけが過ぎていく。
〇だんだん不安になってきたのでテレ東さんに電話を入れて、「ひょっとしたらモーサテの番組開始時間(05:45AM)に間に合わないかもしれません」と告げる。これって結構な一大事でありまして、コメンテーターの到着が遅れると、番組の中身を差し替えなければいけなくなる。
〇クルマが停止したのは流山市内のトンネルの中。路肩を消防車が駆け抜けていくところを見ると、どうやら先方でトラックの炎上事故があるらしい。しかるに事態はさっぱりわからない。ネットの接続状況もよろしくない。見ていたら、クルマを降りてケータイを手に電波の入る場所を探して歩き出す人も居る。危ないなあ。そうでなくても排気ガスも溜まっているはずだが。
〇停止してからほぼ1時間たったところで、片渕茜キャスターから電話あり。とりあえず今日の番組の打ち合わせを、と言われるのだが、そもそもスタジオにたどり着けないのでは打ち合わせても意味がない。と思っている間に、タクシーがそろそろと動き出した。おお、やっと事故の片付けが終わったか。
〇事故現場を横目に見たら、案の定、トラックの横転事故であった。どういう状況だったか、乗っていた人が無事だったかなどは一切不明。なおかつ路上には積み荷が散乱していて、察するにその片付けに時間を要した模様。とはいえ、早朝の常磐道はトラックだらけであるから、いつこういう状況に出くわしても不思議はないのである。
〇幸いなことに、そこから先の高速は一瀉千里でありました。箱崎を渋滞なしで抜けたところでテレ東さんに電話を入れて、午前6時くらいには着けそうですと連絡を入れる。この間、運転手さんはまことにお疲れさまでした。
〇結局、テレビ東京に到着したのは05:55AM。タクシーに約2時間乗車していたことになる。既に番組は始まっていて、ワシの出番はうまいこと後ろに繰り下げられている。いやあ、長いことやっていると、めずらしいこともありますなあ。とりあえず番組は結果オーライということで。
〇「なんで今日の『プロの眼』コーナーは6時40分台だったの?」と思われた方、上記のような次第でありました。ちなみに本日のお題は「トランプリスクはカレンダーで読め」でした。
<11月19日>(火)
〇本日は講演会で郡山市へ。そういえば去年も来ましたな。この時期に「2025年の日本経済」をテーマに語るというのは、いささか時期尚早であるのだが、世の中的には「またトラ」リスクにも関心が高いところであるので、いちおうの需要はあるらしいのである。
〇とはいえ、本日はようやく「今年の紅白歌合戦のメンバー」が公表された程度で(案の定、新人歌手は知らんのばっかりじゃ)、流行語大賞も「今年の漢字」も定まっては居ない。そういうネタが揃わないと、年末の気分は高まってこないし、「さあ、来年の日本経済は・・・?」という
〇それでも7‐9月期GDP速報値は先週金曜日に出ているので、いちおうはパワポ資料も作るのである。ああ、思えば何度こういう作業を繰り返したことか。これから先はエコノミストの繁忙期でありまして、注文があるのはありがたきことである。そうでないと自分が勉強しなくなりますので。
〇「いつまでやってるんだ、この仕事」と自問自答しながら郡山駅で下車すると、ああ、やっぱり空気が冷たい。首都圏とかなり違う。いや、これが東北の空気というものでありまして。去年と同じ会場で勤めを終えて、郡山駅に戻って「もりっしゅ」で福島の地酒を一杯賞味する。すると美味いんだよなあ、これが。
〇郡山駅で小さな「くるみゆべし」を自分用に買う。好きなんですよねえ、これ。もともとは会津出身の渡部恒雄さんのご推奨なんです。
<11月20日>(水)
〇トランプ政権の経済スタッフ人事が難航している、というのは経済界から見て「いいニュース」と言っていい。つまりトランプさんの周囲には「まともな人たち」と「MAGAな人たち」がいるけれども、とりあえず経済・金融に関しては議論が行われていて、それなりに筋の通った意見が通っていることを意味するのだろう。
〇焦点となる財務長官については、「関税上げるべし派」のハワード・ラトニック氏が商務長官に指名され、「関税上げちゃいけない派」のスコット・ベッセント氏がNEC(国家経済会議担当補佐官)に回る模様。おそらくこの二人が衝突して、代わりに浮上しているのが元駐日大使のビル・ハガティ氏であるらしい。こういうのを「漁夫の利」というわけですよね。
〇まだロバート・ライトハイザー氏が残っている。「1期目と同じUSTRを打診された」との噂も聞こえてくるが、これはご本人的にはちと不満であろう。とまあ、こんな風に、どこの国でも人事というのは似たような理屈で動いている。面白いねえ。知らんけど。
<11月21日>(木)
〇本日は原稿を2本、納入する。なるべく来週の予定を楽にしておきたいのである。
〇それというのも来週は沖縄出張が控えておる。最後に行ったのは、もう10年以上前のこと。となれば来週の自分を楽にするために、今週はせっせと仕事をするのである。当たり前のことではないか。
〇原稿というものは、できれば締め切りギリギリに入稿する方がクオリティは高くなるものだが、贅沢は言っていられない。沖縄の方が大事である。そんな私を誰が責められよう。
<11月23日>(土)
〇ということで、今週の拙稿のご紹介。
●「またトラ」リスクは「トランプ四季報」で準備せよ
〇トランプリスクは、「冬」=気候変動問題、「春」=不法移民問題、「夏」=通商問題、「秋」=財政・税制問題、と四季の到来に沿って変化する、というもので、これは以前から当欄でもご紹介したし、モーサテなどでもお話しした通り。
〇ところがこれを東洋経済さんに寄稿すると、「トランプ四季報」になってしまうのだ。面白いねえ。と、自分で言ってどうする。
〇しかるに、この「市場深読み劇場」、マーケットアクセスランキングを見ると、あたしゃ全然オバゼキ先生にはかなわないのである。向こうの方がよっぽど読者を持っている。どうも悲観論の方が、世の中的には好まれるようである。
〇しかも競馬の予想の方も、このところワシはひどい外し方ばかりであり、明日のジャパンカップも全然自信がない。ちなみにオバゼキ先生は、「らしくない理由」で予想はドウデュースだそうである。でも、人気になると来ない馬なんで、ワシ的には買いたくないなあ。
〇読者諸兄におかれましては、明日は是非、上海馬券王先生を参考にしてくださいまし。それからジャパンカップの後はこんな番組もございます。テレ朝からBS朝日に移って新装開店、「朝まで」でなくなった朝生です。久しぶりに田原さんに会ってきます。
●BS朝日「激論!“トランプ復活”ド〜する?!日本」 2024年11月24日(日)よる7:00〜8:54
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編集者敬白
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by Kanbei (Tatsuhiko
Yoshizaki)