●かんべえの不規則発言



2018年4月 






<4月14日>(土)

○米英仏がシリアの化学兵器拠点に向けて空爆を行ったそうです。と言って、「新冷戦到来!」などと恐れる必要はございますまい。シリアのアサドは以前のサダム・フセインと似たようなものです。自国民に対してはどれだけでも残酷になれますが、自分より強い者に逆らったりは致しません。ロシアのプーチンも口ばっかりの野郎です。自国内が納得してくれるのならば、余計なことは致しますまい。

○ということで、本日お知らせするのは、「やまもと英語屋」さんの英語教材販売でござりまする。とりあえず夫婦喧嘩篇は面白く拝読いたしました。活きた英語の教材として、大変面白うござりまする。

○それにしてもcoconaraというサービス、初めて知りました。ネット上にはいろんなサービスができているのですね。後でじっくり拝見することといたしましょう。


<4月15日>(日)

○週末によく休んだので、少し気を取り直して真面目な話をば。トランプさんが突然、TPPに回帰することを示唆したんだけど、あれはどうなるのかという点について。

○トランプさんに対して、「TPPに戻れ!」という農業州からの圧力があることは想定の範囲内です。だって米国産の農産物は、豪州やカナダに比べて不利になるわけですから。そしてアイオワ州などのように、「トランプを支持する農業州」は少なくない。秋の中間選挙のことを考えると、最低限のリップサービスは必要でありましょう。

○もともとトランプさんとしては、アメリカが抜けてしまえばTPPなど雲散霧消するだろう、と考えていたはずです。ところがTPP11が妥結したもので、当てが外れてしまった。そして11か国側としては、今はとにかく批准→発効を急がなければいけない。今ここでアメリカが「やっぱり僕も・・・」と言い出しても、「ちょっと待っててね」というしかない。来年くらいにTPP11が発効した後で、「さあ、アメリカさんをどうしましょ」という話になるでしょう。

○日本もこの国会でTPP11協定を批准しなければいけないのです。でも、それは昨年秋に通したTPP法案よりも「軽い」中身なので、内容的に揉めることは考えにくい。ところが今の国会では、6月20日の会期末までに審議時間を取ること自体が容易ならざる事態になっている。まあ、野党は雨が降ろうが槍が降ろうが「とにかくモリカケ」でありますので。

○それではアメリカは今後どうするのか。「TPPへの復帰」をチラつかせながら、日米FTA交渉を目指してくることが考えられます。でも、それは日本としては受け入れたくない。ここをどうやって跳ね除けるか。鉄鋼アルミ追加関税もありますから難しいところです。

○日本側としては、うまく時間稼ぎをしたい。なにしろ7月になれば、TPA(貿易促進権限)が切れますので。今の連邦議会の雰囲気では、トランプ政権にTPAの延長を認めはしないだろう。それさえなければ、いくら交渉を求められても怖くないんですよねえ。さて、アメリカ側はどんな手を使ってくるんでしょう。

○ということで、今週の日米首脳会談は難しいです。北朝鮮問題に対ロ外交など、ほかにもいろいろ懸案は山積み。17-18日にマー・ア・ラゴだそうですが、あの二人のことですから、きっと3度目のゴルフはやるんでしょうなあ。大事なことは、おそらくゴルフ場で決まるのだと思います。


<4月16日>(月)

○近ごろ気になるモノ言い2点。


●米英仏の(決意を)支持する。(安倍首相)


●(記憶にある限り)会っていない。(Y経済審議官)


○いずれも単純に( )内をすっ飛ばすと、いろいろ不都合が生じるという「大人の事情」があるからでしょう。前者は「米英仏のシリア攻撃を、無条件に支持しているわけじゃないですよ〜」という内外への遠慮を包摂しており、後者は「私だって辛いんですよ〜そこんとこ、察してくださいよね〜」という心の叫びがあるものと拝察いたします。

○前者の場合、西側諸国に対しては「よしよし、やっぱり日本は我々の味方だ」と安心させ、ロシアに対しては「日本は我々に対して少しは配慮があるらしい」とご納得いただこうという「未必の故意」みたいな腹積もりがあるのでありましょう。後者の場合は、「S前国税庁長官は刑事訴追の恐れがある証人喚問だったけれども、私の場合はただの参考人招致ですから。でも、それで国会で非協力的な態度を取って、みすみす内閣支持率を落とすのは、とっても心苦しいんです〜!」という忖度がありそうです。

○いずれにせよ、言葉は素直にうわべだけで受け止めちゃいかんというお話しでありました。


<4月17日>(火)

○東京財団が新しく生まれ変わって、「東京財団政策研究所」になりました。つきましては、設立記念式典をやりますから、というのでお出かけする。新しいオフィスは、テレビ東京と同じ六本木グランドタワーにある。

○行ってみたら、およそ都内におけるシンクタンク業界関係者のほとんどが顔を揃えていてまことに壮観である。記念シンポジウムでは、ワシントンからも論客をお呼びして、またまた竹中平蔵さんほかが集まって「日本の政策過程とシンクタンクの役割」を語っている。面白いけれども、さほど新味はないいつもの論点が出てくる。

○考えてみれば、自分はブルッキングス研究所に居たこともあるし、経済同友会に居たこともあるし、岡崎研究所にもずっと携わってきたし、昔の東京財団で予算をもらって提言をまとめたこともあるし、そして商社系シンクタンクで十数年も生きてきたわけであって、シンクタンクとずっと接してきた。アカデミズムとの縁が薄いだけ、ますますシンクタンク一筋の人生という気もする。

○そういう視点からすると、あんたたち、まだそんなこと言ってるの、と冷やかしたくなってしまった。日本で中立・非営利・独立のシンクタンクが育たない理由はいろいろあって、@寄付税制が弱いので財源が足りないとか、A人材の流動性が低いから専門家が育たないとか、B政権交代が滅多にないから政策の代替案が必要とされない、などの論点がよく指摘される。で、アメリカはいいよねえ、てなことを嘆くのが20年前からの定番なのである。

○ところがどうであろう。今のワシントンDCではシンクタンクは無用の長物、いや、ほとんど恥ずべきような存在になってしまっている。なんとなれば、@財源があり過ぎるために、へんな金持ちの資金が流れ込むようになって、その影響力をまともに受けてしまい、Aやたら優秀な人材が流入するために浮世離れしてしまって、今では庶民(トランプ支持者)の気持ちが分からないエリート集団になってしまい、B政権交代があるためにとっても党派色の強いシンクタンクばかりが生き残ってしまった。結果として、彼らの間の議論は非生産的なものにならざるを得ない。

○今となってみれば、日本のシンクタンクというのは、まだしもメディアを通じて政策に対して一定の影響力を与えることができたり、ポリティカルアポインティーが少ないから変な期待を持つ人が入ってこないし、最近では早めに官僚を辞めた人が入ってきたりもするので、まあ、そんなに嘆くほどの状態ではないのではないかと。ともあれ、今ほどアメリカがうらやましいと思わない時代はない。

○終わってから某勉強会に顔を出してひとしきり時勢を論じ、その流れでいつものナベさんと赤坂に流れ、とってもお久しぶりのワシントンのK弁護士などと合流し、そのままオタク話をしながら終電まで痛飲。帰りの電車の中で誰かが耳元でささやいたような気がした。「キミの人生にはこんな意味があったんだよね〜。ねっ、くだらないでしょ?」

○いえいえ、お蔭で楽しませていただいております。シンクタンク業は死ぬまで続ける所存であります。


<4月19日>(木)

○昨日は赤坂に宿泊して朝からTBSラジオ、「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」へ。

○毎日1人に現金をプレゼント、というのが売りで、金額は生島さんがサイコロを振って決める。丼に落とすので、チンチロリン!という音がします。ええ、ホントに私の目の前でやっています。今日も見事に「6」が出ました。先月も私が出た時は「6」だったんですねえ。

○それにしても朝5時台の番組に、メールで5000人もの人から応募があるのには唖然とするばかりです。ちなみに私が決めた今朝の合言葉は「ゴルフ」でした。

○夜は久しぶりにテレビ朝日「報道ステーション」に呼ばれて、日米首脳会談についてコメントする予定です。うーん、今日はそんなことよりも、福田次官の辞任問題の方が大きいんじゃないのかなあ。


<4月20日>(金)

○本当は今週は暇になるはずだったのです。ところが日米首脳会談はともかく、今週は財務次官のセクハラやら新潟県知事の辞任まで飛び出しました。そんなこと、あたしゃ知らんがな。

○ということで、ホントは今週はこれをじっくり読みたかった『陰謀の日本中世史』(呉座勇一/角川新書)について。まだ読み終えていないけど、とっても面白いんです。保元・平治の乱だなんて懐かしいのだけれども、かなりの部分を忘れてしまっている。鹿ケ谷の変は、実は平清盛の陰謀だったのかどうか。源頼朝と義経の関係はホントはどうだったのか。いやあ、楽しいなあ。

○さらに本書は、日本史最大の謎というべき「本能寺の変」に焦点を当てる。近年は「ホントはこうだった」説がいっぱい出ましたからなあ。朝廷やら足利義昭やらイエズス会やら、いろんな黒幕説が続出しました。ほとんどは在野の研究者による乱暴な仮説なのだが、その在野には谷口克広氏のような端倪すべからざる人物も居る。ともあれ快刀乱麻を断つがごとく、いろんな陰謀説がバサバサ斬られていくのは痛快この上なし。

○著者の呉座助教が警戒するとおり、今のようなネット時代は素人の陰謀論が流行るのである。でも、「世間の全部が間違っていて、自分だけが本当のことを知っている」なんてことが、滅多にあるわけがない。どの道にもちゃんと専門家というものが居て、彼らは相互チェック体制下にある。餅は餅屋であって、そうそう間違いはしないのである。画期的な新解釈なんてものは、素人がそうそう出せるものではない。「お気楽陰謀論」が飛び交う現状は、あんまり褒められたことではありませぬ。

○ともあれ、本書が指摘する陰謀論の陥穽は面白い。「被害者と加害者の立場を逆転させる」「事件によってもっとも得をした人物が疑われる」「最終的な勝者が全てをコントロールしていたという見方」「特定の個人や集団の意のままに歴史が動くというご都合主義」「陰謀は秘密を守らねばならないので、得てして準備不足に終わる」「陰謀は完全犯罪足りえない」などなど、思わず「あるある!」と突っ込みたくなる指摘がたくさん登場する。

○ネット社会は、ついつい頭でっかちな空理空論家を生んでしまう。ヴァーチャルな経験はいくら積んでも所詮はヴァーチャル。ほとんどの大人が立派な人生経験を積んでいた時代に比べれば、今の世の中はつくづく危うい。それこそ遊びベタな中年男性が、あっという間に栄光の座から転落してしまうように。求められるものは、つくづくイデオロギーよりもリアリズムなのである。












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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)