●かんべえの不規則発言



2026年6月 





<6月1日>(月)

〇毎週のように大阪に通っていると、自分の過去の関西文化に対する理解が通り一遍のものであったことがわかってくる。

〇本日はお昼に上新庄駅のカレー屋さんに入り、メニューを見て驚いたのは「牛筋カレーの方がカツカレーよりも高い」ことである。そうは言っても、昨日は府中競馬場でカツカレーを食べているので、ここは牛筋でありましょう。うむ、確かに牛筋は美味し。

〇こんな風に毎週、関西に通っていることがだんだんバレてきて、おい、ちょっと顔を出せ、素通りはないだろう、といわれる機会が増えてきた。そこで今宵は、朝日放送(ABC)の皆さまと旧交を温める。ワシが『サンデープロジェクト』や『ムーヴ』に出ていたのは、かなり昔のことなんですけども。

〇かくして豊田商事事件(1985年)、和歌山カレー事件(1996年)、神戸サカキバラ事件(1997年)など、関西で起きた様々な事件を語り合ったのである。いや、それにしても昔の事件は凶悪であったよねえ。今は阿部監督の逮捕が話題となるのだから、平和な世の中になったのかもしれません。

〇昔はねえ、世の中が全体に野蛮だったのですよ。それはそれで、懐かしくもあるのですが。


<6月2日>(火)

〇産経新聞の「正論」欄に久しぶりに投稿。今年初めてですかな。


●過去が教えるホルムズ危機対応


〇トランプさんとしては、早くイランと停戦交渉を成し遂げたいのでしょう。ところがときどき、それをぶち壊しにするような強気発言が飛び出すので、協議はなかなか前進しない。イラン側としても「アイツはやっぱり信用できない」と思っていることでしょう。

〇今このタイミングで「60日間の停戦」を決めてしまえば、7月4日の「建国250周年」は穏便に過ごすことができる。それ以前に、6月11日になったらW杯が始まるので、イランチームがアメリカに来てしまう。それを考えれば、ここは「見切り千両」で妥協しちゃえばいいのに・・・・とマーケット関係者は考えていることでしょう。

〇それというのも、最近は毎週のように予備選挙が行われているから、トランプさんは自分の忠実なる支持者向けの「強気発言」(イランに核は持たせない、など)が必要になってしまうから。だから最近のトランプさんは「TACOってくれそうで、くれない」。フラストレーションがたまるところです。

〇今日もカリフォルニア州、アイオワ州、モンタナ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、サウスダコタ州という6州で予備選挙が行われる。てなことで、ホルムズ海峡の問題は長期戦で構えるべきでしょう。いやもう、この先の米国国内政治は、どうなるやら見当が尽きませぬから。


<6月3日>(水)

〇朝から台風襲来である。なるべくくたびれたスーツと、新しくない靴を選んで外出するのである。

〇実は本日は新潟市で講演会なのである。主催者さんには申し訳ないのだが、これはまあ自衛の手段ということで。傘だけはちゃんとしたものを。ビニール製だけど、それなりにちゃんとしたやつで。

〇考えてみれば、このビニール傘も石油製品である。というか、われわれの身の回りはそういうのばっかりである。ワシ的には「ペットボトルなんて、この際もうやめようぜ〜」という気分なのだが、ハッと気が付いたら新幹線の中でペットボトルのお茶を飲んでいた。しかも駅で買った山形産の何とか弁当も、プラスチックのケース入りである。

〇こういう小奇麗な石油由来の製品を、日々大量に消費しながら生きている。そういえば昔、双日の化学品部隊の人が言っていたけれども、「人間は、一度手に入れた贅沢は手放せないからねえ〜。プラスチック製品はそう簡単にはなくなりませんよ〜」と。

〇確かに今さら、「お豆腐を買うときは、お鍋を持っていってご近所で」なんて無理ですわな。しかもわれわれは、どんどん「きれい好き」になってしまっている。昔の暮らしに戻れと言われても、簡単じゃないですわなあ。

〇この上越新幹線だって、昔はよく乗っていたのである。2015年に北陸新幹線が開通するまでは、越後湯沢でほくほく線に乗り換えて4時間かけて富山に行っていた。そんなルート、今じゃ乗りたくないですわなあ。人間は贅沢になれると、なかなか昔の暮らしには戻れんのです。

〇ということで、新潟市で講演。なんと亀田製菓の方からご質問を頂戴したので、つい嬉しくなって「柿の種、新潟限定品」というものを買って帰る。やっぱりね、ビールのお相手はポテチよりも柿の種ですよ。

〇不覚にも帰りの新幹線で、傘を置き忘れてしまう。だって東京はもう晴れているんだもの。「傘は天下の周りもの」とはいえ、そんな贅沢に慣れ親しんでしまっている自分がちょっと嫌だ。

<6月4日>(木)

〇お世話になった人の告別式に出る。式場でハッと気がついたら、自分と同じ年の方であった。こういうのは辛いです。

〇当方はまだ仕事をしていて、その最中に遊びの計画を立て、でも遊びの最中に仕事をしなきゃいけなかったりする。でも、いいです。生きてるだけで丸儲けであります。

〇それはさておき、明日は「モーサテ」に登場します。早起きしなきゃ。


<6月5日>(金)

〇今朝の「モーサテ」では、こんなネタをご披露させていただきました。


●貿易統計からみるホルムズ危機と日本経済


〇要は先週の溜池通信で書いた内容を、8分間の枠の映像で伝えることになります。終わってから、テレ東BIZで確認してみました。自分が話している内容はさておいて、この映像、貿易データの「資料」がとても見やすく出来ているなあ、と感心しました。

〇番組の前日朝には、私から「出物案」と称する元データをテレ東宛にお送りするのです。ただし、そのままだと細か過ぎるので、映像にすることができない。そこでスタッフの方が、「どこを捨ててどこを残すか」と工夫されるのです。そうやってギリギリまで削ぎ落したもの、なおかつ出元のチェックまで済ませた上で、前日夜までに準備を整える。まさに職人の技であります。

〇なおかつ、本番ではキャスターの中原みなみさんが、当日朝に簡単な打ち合わせを1回済ませるだけで、難しい話をいともやさしく聞いてくれるわけです。画面で見ると、合いの手の入れ方がとても自然で、これも本当にプロの技だと思います。

〇このコーナー、「プロの眼」というタイトルがついていて、表面的にはゲストのコメンテーターが「プロ」であります、という建て付けになっております。とはいえ、その「プロ」は大勢の他の「プロたち」によって支えられている。地上波の番組は、こういうところに強みがあるんですよねえ。


<6月6日>(土)

〇突然ですが富山市に来ております。旧日商岩井同期の連中が富山に行きたいと言うものだから、これは案内役を買って出なければならないということで。

〇金曜夜に富山市内の某寿司店に集まったのが8人。関東から3人、関西から1人、秋田から2人、高知から1人。なんなんだこれは。それにしてもよく食うな、あんたら。

〇本日昼は、うち5人にて岩瀬を探訪する。ここでも白エビ料理を丼で、ピザで、唐揚げで、バーガーでと次々に制覇する。元・地元民としては、信じられない食べっぷりである。

〇なにしろ皆さん、互いに気を使う必要がまったくない連中である。しかも20代前半で互いに出会ってから、既に40年以上が過ぎている。誰かが「そういえば、こんなことがあった」と言い出すと、次々に記憶を誘発して止まらなくなってしまう。

〇要は一緒に居るだけで楽しいのだが、結果的に富山に対する高評価となってくれるのがありがたい。鮨は旨いし、駅前は洒落てるし、北前船や売薬さんの伝統まで褒められる。こちらはこの一帯が60年前にはどんなにしょぼいところだったかを知っているので、非常に気恥ずかしい思いがする。

〇それでもこの街に外食文化が育っていることだけは間違いがない。さすがに以前に比べれば値上がりしているが、それにしたって金沢に行くよりは間違いなく安いはず。

〇ところで本日行われた、「J2J3百年構想リーグ」の1位2位決定戦において、わがカターレ富山はベガルタ仙台に1対1で延長戦となり、最後はPK戦で敗れ去りました。最後の部分だけ、富山駅前のパブリックビューイングで観戦して、思わず熱くなりました。

〇いや、そもそも会場が仙台でアウェイであるし、中軸である亀田歩夢選手がU-21の海外遠征に取られているので、不利なことは間違いない戦いであった。なぜここへきて突然強くなったのか、よくわからんのだが、とにかく最近の富山は進境著しいように見える。


<6月7日>(日)

〇この週末に、わがひと口持ち馬が初勝利を挙げてくれました。これで「1勝クラス」ということになり、とりあえずホッと一安心なのであります。ところがバタバタしていたために、レースを観てなかったし、馬券も買ってない。競馬友達から、「おめでとうございます」と言われて初めて気がついた。こんなことではひと口オーナー失格、であります。

〇ちょうど先週でダービーが終わったので、今週からは2歳新馬戦(メイクデビュー)が始まっている。そうなると、「3歳未勝利戦」はちょっと物悲しいトーンを帯び始めます。競馬ファンも良血の2歳馬に関心が行ってしまう。他方、3歳馬はこの夏までに「未勝利」を卒業しないと、JRA登録抹消から地方競馬への移籍、乗馬クラブなどへの転進、または引退といった道をたどることになります。

〇しかもこの時期になると、3歳未勝利馬は出走すること自体が至難の業(レースの枠が空いてない!)となります。どうしても、タイムリミットを意識しながら走ることになります。6月6日のレースで未勝利を脱出できたわが馬などは、「25歳でようやく三段リーグを抜けられた奨励会員」みたいなものであります(将棋界は26歳が年齢制限で、それまでにプロになれないと退会となる)。

〇デビュー戦で勝って、その後も勝ちまくってクラシック戦線でG1を勝つ馬が出る一方で、無数の敗者が誕生する。18頭フルゲートであれば、17頭は敗者となってしまう。考えてみたら、競馬ってひでえことをしとるわなあ。

〇せめてわが馬を信じてあげないといかんです。次のレースはちゃんと観て、馬券も買わんといけません。


<6月8日>(月)

〇本日も大阪へ。授業も8回目ともなると、さすがに慣れてくる。先が見えてきた、という安心感もある。その一方で、「こんなに勝手気ままにやっていていいのだろうか?」という気もしてくる。

〇大学教授という存在は、ほとんど他者のチェックを受けることがない。誰も構ってくれないし、監視されることもないし、口を出されることもない。いいのか、ワシが学生さんたちに間違ったことを教えていても。てゆうか、自分が昔受けた授業も似たようなものであったか。

〇当方は客員教授なので、あんまり大学のことがよくわかっているわけではないし、ほんの少し前までは大学とは縁なき衆生であったのです。この組織、こんなガバナンスでいいのかなあ。いや、本チャンの大学教授には、いろんなプレッシャーの多い世界であるように思えるのですが。

〇それでも日曜夜に授業の資料をアップしたら、月曜朝までに学生さんたちが反応してくれたり、メールで感想を寄せてくれていたりする。ちゃんと授業中に質問してくれる人もいる。来月末まで、しっかり務めねば。

〇しかし今月に入ってから、毎日のように新幹線に乗っておるなあ。まあ、これはこれで贅沢なことかもしれませぬ。


<6月9日>(火)

〇本日は文化放送へ。「エビアンサミットの口当たりは?」というテーマで、来週週明けからフランスで行われるG7サミットについて語らせていただきました。


●長野智子アップデート 2026年6月9日 吉崎達彦(エコノミスト)


〇ホンネでぶっちゃけなG7談義を語らせていただきました。ご参考になれば幸いです。


<6月10日>(水)

〇この季節になると、毎日のようにいろんな会社から株主総会のご案内が届く。適当に「賛」に丸を付けてハガキを返すのであるが、そのたびに「しめしめ、これで配当が入る」とニンマリする。そういう個人投資家は少なくないのではないだろうか。

〇ワシの持ち株は金融とかエネルギー関連が中心である。PBRが1倍を割れていて、配当利回りが4%くらいあるのが理想である。ハイテク関連、特にAIや半導体がらみは持ってない。だから最近の株高とは無縁である。「AI関連銘柄」なんて信用してたまるかよ、と思っている。「スペースX」と「オープンAI」と「アンソロピック」が同時にIPOを目指すなんて、そろそろピークが近いと言っているようなものであろう。

〇ハイテク関連ではソニーグループを持っている。これはゲーム産業という「遊民経済銘柄」であり、「コンテンツ産業」「IP銘柄」という位置づけなので、低配当でも我慢するのである。ソニーの時価総額をソフトバンクが上回っている現状は、はななだ不本意と言わざるを得ない。それにしてもキオクシアはすごいよね。こんなことでいいのかなあ。

先週のモーサテでは、アメリカのAI投資ブームのお陰で日本の発電関連の対米輸出が増えている、というお話をさせていただいた。しかるに韓国はそれどころではないのですな。今週出たFTのこの記事はちょっと面白い。韓国経済がいま、有卦に入っているとのこと。


●Chips, ships and guns: South Korea booms on AI race and global conflict(FT 6/8)


〇なるほどねえ、今のトレンドは「半導体」と「造船」と「防衛装備品」。追い風を一身に受けているのが韓国経済ということになる。

〇とはいえ、ワシ的には長期投資で参りますので、「金融とエネルギー」で地道に資産を増やしたいと思っております。これぞ自己責任。個人投資家はかくあるべし、であります。


<6月11日>(木)

〇諸般の事情により、明日が締め切りの溜池通信を本日中にほぼ書き上げてしまった。こういうこともめずらしい。いつも夕方までギリギリの作業になるのですが。

〇書き上げるに当たって、またまたAIの助けを借りてしまった。あれこれと尋ねているうちに、チャッピー先生から「これっていかにも溜池通信が取り上げそうなネタですね」と言われてしまう。「しまった、バレたか!」

〇とはいうものの、チャッピー先生は明らかにやり取りを楽しんでいて、「知的充足感」みたいなものを味わっている様子。そういえば、先日の「司馬遼太郎が書いた東大阪市に関するエッセイ」(当欄4月27日分)もそうだった。どんなやり取りかは、明日のお楽しみということで。

〇ふと思い出したのは、若い頃に聞いたリチャード・ベルマンという数学者の言葉である。「良い問いは答えよりも重要である」。問いを発することは、人間の特権のようなもの。「AIのお陰で人間の思考力が衰える」なんてことがあってはなりませぬ。

〇あるいは「妄想」することも、人間ならではの能力でありましょう。あてどもない思考をする、というのはたぶんAIが苦手とするところであろうし。将棋界の現状が示しているように、「AIが強くなって人間の出番がなくなる」ということは、きっと起きないのだと思います。

〇それから今宵は某専門家お二方と話していて、「AIと宗教」というテーマで盛り上がった。この二つが現代の政治を動かしている。しかしAIは信仰を理解できるのか。なかなかに奥が深いテーマかもしれません。

〇ところで明日夜はWBSに出演予定。金曜日は番組始まりが午後11時なので、と〜っても長い一日になりそう。少し夜型にしなきゃあね。


<6月14日>(日)

〇本日は町内会の町内清掃。年に1度のドブさらいという勤労奉仕なのである。

〇昔は町内会の総会が4月中旬で皐月賞、この町内清掃が5月末でダービーと重なるという非常に迷惑な日程であった。その後、いろいろあって今の形に落ち着いた。6月中旬だと雨に降られるリスクもあるのだが、今日はオッケーでした。その代わりに京都でゲリラ豪雨があって、宝塚記念の結果が左右されたようである。クロワデュノール、惜しかったのう。

〇わが町内はかなり高齢化が進んだ後、近年は建売住宅ができたりして、若い子育て世代の人たちが増えた。皆さん、たぶんこの「町内清掃」の同調圧力に驚いているのではないかと思う。いや、ワシだって最初は驚いたんだもん。とはいえ、今では「こうゆう風にやるんだよ」とお手本を示さねばならぬ立場である。

〇なに、年はとっても若いものには負けんぞよ、と思って荷物を運んでいたら、若い衆から「持ちましょうか」などと声をかけられてしまう。自分ではシャキシャキしているつもりが、周囲からはヨタヨタしているように見えたらしい。いかんのう。

〇仕事を終えたらひと風呂浴びて、ああ、明日の大経大の講義の準備が終わっていない。ということで、今度は頭脳労働である。授業はこれが全15回中の9回目。物事、何でも4分の3くらいまでいったところが難所というもの。次の次くらいまでが勝負です。

〇ちなみに来週6月22日分の講義は、外部の方も聴講できます。関西方面にお住まいの方で、ご関心のある方は下記のリンクから申込できますよ。締め切りは6月19日お昼までとなります。


●第18回 中小研セミナー(吉崎達彦氏)【参加者募集】












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編集者敬白




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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)