●かんべえの不規則発言



2008年7月 






<7月10日>(木)

○本日も引き続き他愛のない話を。

○骨董品が趣味という人から伺った話。若い頃、大枚を払って、かねて念願の陶器を買う。すぐに自分より目利きの人のところへ持って行き、「どう?」と聞く。即座に「フェイク」とのご託宣。え、なんで、どうして、どこがどうなの?と聞く。あのなあ、ここをご覧よ・・・・。と、目利きのノウハウを拝聴する。その足でトボトボと骨董屋に戻り、品物を買い戻してもらう。買った値段の6割程度になってしまうので、1日で大損をしたことになる。「高い授業料ですね」と言ったら、「そりゃあもちろん、絶対に忘れませんよ」。納得。

○中国でも骨董品ブームが起きていて、古い陶磁器に高い値段がつくのだそうだ。ただし日本との嗜好の差があるので、日本で高い宋代の作品が中国では安く、中国で高い清代の作品が日本で安く買える、なんてことがあるとのこと。総じて中国人は完全性による美しさを求め、日本人は偶然性による美しさを尊ぶ。この辺は相互の美意識の違いが感じられて面白いと思う。で、中国人にこんなことを言われてしまう。「なんでお前たちは、俺たちが作ったものを国宝にしてるんだ?」――ふむ、言われてみれば、これも日本特有の感覚でありますね。

ぐっちーさんは大人なんだから、モナさんの不倫もいいじゃないと言っているけど、二軍に落ちているものをつまみ食いするのはいかんのではないか。これが今岡誠だったら、ワシは許さんぞ。


<7月11日>(金)

○今日も細かいネタでつなぎます。

○会社を辞めてしまった元同期社員2人が訪ねてくる。Nからは最近の上海における不動産ビジネスについて聞き、Kからは最新のウェブビジュアルコミュニケーション技術について拝聴する。こんな風に自分が座っていて、現場のナマの話を聞けるのはありがたい。考えてみたら、20代で出会ってから月日は流れ、今では全員がいいおっさんになっている。お互いによく生き残っているものだと思う。3人でしばし談笑した上で、Kの会社が将来、中国に進出する際には、Nの会社を使いましょうということになる。

○サントリービールがサッポロビールのシェアを追い抜いたそうで。そういえばワシは、この数年でエビスビールからプレミアムモルツに転向している。1日1本くらいなので、大勢に影響はないはずであるが、少しだけ貢献したかもしれない。それにしても、最近はどこへ行っても置いてあるビールはアサヒかキリンで、サッポロの黒ラベルを滅多に見かけなくなりました。やっぱり不動産業があるから大丈夫、というのが悪いのではないか。実態が「サッポロビル」では困ります。

○7月9日に書いた「近畿の景況感が(相対的に)明るい」という話につき、読者の方から以下のご注進あり。

>最近の関西は工場三法という近畿・関東圏への工場進出を抑制する法律が廃止されたのをきっかけに非常に大型投資が盛んな地区だそうで、
>逆に中部地方は車は売れないし、最近地元の中日新聞からトヨタの下請けの苦悩をトヨタに対して批判的に書く連載まで設けられる始末で、
>もはや「元気のない関西・元気のある中部」というのは過去の物になりつつあるみたいです

○そういえば、名古屋が良くなったのは工場三法のお陰、という話を藻谷さんから聞いたような気がする。浮き沈みは世の習い。いいことも悪いことも、けっして永遠に続くものではありません。


<7月13日>(日)

○そろそろアレが決まる頃かもしれない。ということで、そろそろチェックしておきましょう。ワシントンポストの政治ブログが挙げている副大統領候補は以下の通りです。


●REPUBLICANS

5. Sen. John Thune:(R-SD)
4. Gov. Bobby Jindal(R-LA)
3. former Gov. Tom Ridge(R-PA)
2. Gov. Tim Pawlenty(R-MN)
1. former Gov. Mitt Romney(R-MA)

●DEMOCRATS

5. Sen. Hillary Rodham Clinton(D-NY)
4. Sen. Joe Biden(D-DE)
3. Gov. Kathleen Sebelius(D-KS)
2. Sen. Evan Bayh(D-IN)
1. Gov. Tim Kaine (D-VA)



○「オバマとマッケインの副大統領候補は誰でしょうね」と聞かれたら、なるべく誰も知らないような知事の名前を挙げるのがコツというものです。だってどうせ当たらないんですから。人事はサプライズが命です。「ふーん、そう来たか」と思われるようでは面白くないので、副大統領が上記5人の中から選ばれる確率は5割程度なんじゃないかと思います。実際、上記のリストには、共和党ではクライスト・フロリダ州知事、民主党ではエドワーズ元上院議員のように、「なんでここに名前がないの?」という人が漏れています。まあ、その辺は微妙なところなんでしょう。

○副大統領候補の選択は、地域バランスやら政治思想やら人柄の好き嫌い、果ては写真を撮ったときに「絵」になるかどうかまで、ありとあらゆる要素が絡み合うとても戦略性の高いゲームです。そこがついつい面白くなってしまうのですが、有権者が投票するのはあくまでも「大統領候補」です。だからあんまり深入りしないように、副大統領選びをウオッチしたいと思います。で、福田内閣の内閣改造については・・・・これは言わぬが花と言うものでありましょう。


<7月14日>(月)

○某所の会議で終日カンヅメ。滅多にない経験につき、得るもの多し。とはいえ、仕事も溜っているので夜の宴席はご遠慮して会社へ。来週の上海出張の準備やら、「SPA!」のゲラチェックやら、その他いろいろ。

○かなり遅れて、民主党の10周年記念パーティーを覗いてみる。ホテルニューオータニがとんでもない人出で、無慮数千人だという。景気は急降下しているはずなのに、これだけ多くの人が2万円を片手に集まっているとは、端倪すべからざる勢いなり。小沢党首の挨拶も意気軒昂であったとのこと。しかしこれだけ人が多いと、なかなかご挨拶も出来ません。とりあえず円より子さんと吉良州司さんと握手。ところで、長島昭久近藤洋介は来ておったんかいな。

○帰りに気まぐれを起こして、とっても久しぶりに烏森の「はづき」に立ち寄る。岸本ママの希望により、テレビをつけてお客一同揃ってフジテレビ月九ドラマ、『CHANGE』の最終回を見る。いやー、このドラマ、初めて見ましたがな。キムタク総理が閣僚連絡会議のお茶を廃止しようとして、内閣府事務次官の抵抗にあうなんて、とってもスモールポリティクスで今風である。でも、現実の政治に比べると、フィクションは罪が軽くていいのかなあ。

○そこへ内山敏夫氏と佐藤政俊氏が到来。うっちーさんとは何年ぶりかしら。最近の「はづき」は、マーケット関係者があんまり来ていないというのに、おそるべき偶然である。『ルック@マーケット』残党は健在でありました。ということで、深酒。

○ところで佐藤氏は、今朝も「モーサテ」に出ていましたけど、「となりのトトロ」のネクタイをしていたことに皆様はお気づきでしたでしょうか。つい最近、「裏トトロ」の話を聞いたんですが、これって都市伝説としてもかなりよく出来ていると思います。宮崎アニメはしみじみ深い。


<7月15日>(火)

○今朝の日経一面左上、さりげなく怖い話が書いてある。危うく読み飛ばすところであった。ジャーナリストT氏の取材力、恐るべし。

「GSE危機はドルの信認危機に直結する。米財務省によれば、外国人投資家が2007年6月末時点で保有するGSE債は1兆3050億ドルに上る。中国が3760億ドル、日本は2290億ドルを抱える。アジア諸国などの外貨準備の運用先であるフレディマック債は、保有する海外当局が66に及ぶ」

○おーっと、日本でも20数兆円のお金がアメリカの政府支援機関(BSE)債に流れているぞ。日本でファニーメイやフレディマックの債券を買っている投資家が誰かと言えば、おそらくは金融機関よりも政府の外貨準備なんでしょうな。アメリカ国債ばっかり買っていると怖いから、少しはエージェンシー債も入れておこうか、みたいなノリで。おそらく中国の場合はもっと極端で、アメリカ国債ばっかり買うのは癪に障るから、わざとGSE債を買ったりしているかもしれない。まあ、日本も中国も、それだったら時価会計の必要はないので、このまま放置しておいてもいいのでありますが。

○しかるに上記の記事をよくよく読んでみると、こんなことも書いてある。

「両社(ファニーメイとフレディマック)の長短債務と住宅ローン担保証券の合計は、日本の名目国内総生産(GDP)に匹敵する5兆ドル規模に達した」

○GSEが借り入れている5兆ドルのうち、1.3兆ドル分は海外投資家に持ってもらっているけど、後はほとんどがアメリカの国内投資家の自己責任ということになります。大丈夫か500兆円も。いざとなったら、中国と日本が買い出動して助けたりするんでしょうか。でも、「ジャイアンはすでに喧嘩が弱くなり、スネオは昔ほどお金を持ってない」現状を考えると、日本ができる対米協力策は限られております。それに、せっかくこのタイミングでドル資産を買ったとしても、後から値打ちが下がるんじゃあ手が出せない。いやー、どうするんでしょう。やはりドル安局面が近いんじゃないでしょうか。

○昨日のネタを引きずって、もうひとつ怖い話を。トトロの都市伝説はますます深い。念のために言っておきますが、下記のサイトはネタばれ注意です。

●狭山事件との奇妙な共通点 http://totoro.3xai.net/2007/09/post_3.html 


<7月16日>(水)

○最近、「中道化するオバマ」、あるいは「オバマのクリントン化」(これはもちろん、ヒラリーではなくてビルの方ね)と呼ばれる現象がある。そんなわけで、こんな政治マンガが流行ったりする。

●「Change」というスローガンの下で歓呼に答えるオバマ。後ろのスタッフが「確かに変化しているよな」。その手元には長いリストが。「NAFTA、銃規制、選挙資金の公的助成、盗聴法、イランとの無条件対話、イラクからの即時撤退・・・」

●ディスコで、「センター」という名のセクシーな女性と踊っているオバマ。そこへ「レフト」という名の女性が噛み付いている。「ダンスはね、連れてきてくれた人と踊るものなのよ!」

●「私の立ち位置」と書いたカンバンを持って立っているオバマ。しかし地面はカンバンの杭を抜いた跡で穴だらけである。有権者が「われわれは撤退の期限を知りたいんだが・・・」

●オバマのジェット機が緊急着陸。「真ん中に下りたいんですが、機体が左に傾いています」


○いやもう、いっぱいあるんです。民主党の候補者になったら、オバマはとたんに変わってしまった。銃規制に関する最高裁判決を支持するし、死刑にも賛成するし、盗聴法に賛成票を投じるし、公約したNAFTAの見直しもたいしたことしないみたいだし・・・・。選挙資金があまりに集まるものだから、やっぱり公的助成は受けないことにしました、というのも「恬として恥じず」である。逆にマッケインの方は、公的助成を受けて法律の限度額内で戦うことを明らかにしている。なにしろ選挙資金規正法は、「マッケイン・ファインゴールド法」という自分で作った法律ですからな。

○オバマの中道化路線は、米大統領選挙の戦い方を考えれば、少しも不思議なことではありません。つまり予備選の最中は目いっぱい党の基盤であるリベラル派(共和党の場合は保守派)にサービスして、公認候補の座を射止めたら、今度は大胆に中道に擦り寄るというのは、勝つための常道ともいうべき作戦です。これから先は、「ブッシュが大嫌いな共和党支持者」を取り込む番で、できれば「オバマ・リパブリカン」と呼ばれるような支持者を獲得したいところ。逆に今頃になって、宗教右派のご機嫌を取らなければならないマッケインの方がよっぽど苦しい。

○ところがオバマの支持者たちの間では、少しずつ失望感も深まっている。まあ、だからといってラルフ・ネーダーに投票する人は多くないと思うけれども、「これでは何のために応援していたのか」というわけだ。実際、毎月のオバマ陣営への献金額はどんどん減っている。それでも、これは政治家として現実的な選択であるし、大統領に当選するという大きな勝利を得るためには必要不可欠な道筋だと思う。ちなみに今週のThe Economist誌なんぞは、「オバマの中道化に問題があるとしたら、それはまだ十分でないことである」と、いかにもらしいことを書いている。

○さて、そんな中でオバマのイラク政策が発表された。7月14日のニューヨークタイムズ紙上で、"My plan for iraq--It's time to begin a troop pullout"という。なかなかに画期的な内容だと思います。従来は、「就任後16ヶ月=2010年夏」までに撤兵するといっていたけれども、それはあくまで戦闘部隊であって、残りの部隊は、アルカイーダの掃蕩やアメリカ政府関係者の保護、イラク治安部隊の訓練の任務を続ける。安全な撤退のために、現地の司令官たちやイラク政府とは話し合う。より緊急に必要なのはアフガニスタンとパキスタンであり、アフガンには2個旅団を増派したい・・・・。

○これは反戦左派からみれば、ほとんど裏切りのような内容でしょう。逆に中道派や保守派、そして特に米軍の関係者から見れば、「オバマって結構、まともじゃん」ということになる。かくして、オバマの中道化がまた一歩進んだのですが、この記事の最後の部分にアッと驚くようなことが書いてある。


In this campaign, there are honest differences over Iraq, and we should discuss them with the thoroughness they deserve. Unlike Senator McCain, I would make it absolutely clear that we seek no presence in Iraq similar to our permanent bases in South Korea, and would redeploy our troops out of Iraq and focus on the broader security challenges that we face. But for far too long, those responsible for the greatest strategic blunder in the recent history of American foreign policy have ignored useful debate in favor of making false charges about flip-flops and surrender.
It’s not going to work this time. It’s time to end this war.

「それにしても、近年の米外交史における最悪の戦略的な失敗は、あまりにも長い間、態度のブレや降伏について誤った攻撃ばかりして、有益な議論を怠ってきた人々の責任である」


○これってホントにその通りです。2004年の米大統領選挙では、ジョン・ケリーは言ってることがコロコロ変わる(フリップ・フロップ)と批判されて、それに比べるとブレないブッシュの方がいい、というのが決め手になった。ところがオバマは、「フリップ・フロップ」と呼ばれることを怖れないらしい。つまりこれは、過去の言動には縛られないぞ、という宣言なのである。あいかわらず、オバマは言葉の使い方がうまい。2008年選挙で「フリップ・フロップ」という非難をする人がいたら、それは「古いタイプの戦術だ」と言って、切り捨てるのであろう。

○いろんな意味で、2008年選挙はこれまでのものとは違ったものになりそうです。もっとも、こんな風に超党派の理解を求めるオバマというのは、黒人の父と白人の鼻の間に生まれた彼の複雑な生い立ちによるところが大きい、という解説も増え始めている。ナベさんご推薦の『オバマの孤独』(原題名"A bound man"、シェルビー・スティール著、青志社)を今日、読み終えましたが、これはアメリカ社会における黒人の立場のものすごく深い部分を語っていて、ズシリと胸に響くものがありました。いやはや、「オバマ研究」は奥が深いです。


<7月17日>(木)

○FNN/産経新聞が先週末に行った世論調査の結果が出てましたが、その中で「アッ」と驚いた項目があるのでご紹介します。(これは産経政治部のI記者に送ってもらったデータを元にしているので、ひょっとしたら紙面に反映されなかった分であるかもしれません。でも、問題ないですよね?)

●今後、福田政権にあなたが最も期待する政策は次のうちどれですか。次の中からひとつだけお知らせください。

1.消費者行政の充実 3.8%
2.医療・年金などの社会保障 26.4%
3.北朝鮮問題の解決 1.8%
4.治安・安全対策 2.6%
5.消費税などの税制改革 4.7%
6.地球温暖化対策 4.6%
7.財政のムダづかいの見直し 38.8%
8.物価・景気対策 14.3%
9.わからない、言えない 3.0%


○なんと4割近くの票を集めて、圧倒的な第一位に輝いた項目は「財政のムダづかいの見直し」でありました。ワシはてっきり「医療・年金などの社会保障」がダントツだろうと思いましたが、それは26.4%の第2位でありました。そして第3位が「物価・景気対策」。国民生活に直結している医療年金や物価景気よりも、国民は税金の無駄遣いを心配している。こうなると、『CHANGE』最終回の政策ネタとして、「閣僚連絡会議のお茶をなくすかどうか」が取り上げられた背景が改めて浮かんでくるような気がします。

○しみじみ「スモール・ポリティクス」そのものという感じでありますが、こんな風になってしまった昨今の政治情勢というものを、深く考えてみる必要があるんじゃないかと思います。つまり有権者は自分たちにメリットがあることよりも、デメリットがなくなることの方を気にしている。政治というものは、ある時期までは利益を分配してくれるものでした。田中角栄さんなんてのは、そのチャンピオンでありました。ところが今では、政治とは負担の分配をお願いに来るものになってしまった。国民は賢いから、その辺のことがちゃんと分かっている。そこで、その前に負担を減らしてくれ、ということが政治課題のナンバーワンになってしまうのです。

○思えばこの10年ちょっとの間に、民間企業のお金の使い方はとっても厳しくなった。20年前には「上様領収書」てなものが堂々とまかり通っていました。レストランのレジなどでは、「領収書のお宛名は上様でよろしいでしょうか?」みたいな言葉が聞かれたものであります。今じゃ「上様領収書」を回したら、経理にぶん殴られますわな。そのくらい、リストラ時代に民間企業のおカネの出し方は渋くなったのです。ところが、永田町や霞ヶ関の金銭感覚ときたら、昭和の頃からあまり変わっておらず、昨年の「ナントカ還元水」から今年の「居酒屋タクシー」に至るまで、庶民の神経を逆撫でし続けている。これはまずいっす。

○個人的にはワシは、そんな小さな金額に目くじらを立てるのは大人気ない、と寛大に構えるものであります。悪名高い議員年金なんぞも、そのまま残しておいたほうが良かったと思っているくらいです。だって政治家という悪事をなしえるポジションの人たちに、老後の心配をさせないようにしておくことは、ありうべき汚職の芽を事前に摘むという面で、きわめて安い投資だったんじゃないでしょうか。ところがそんなワシでも、「道路財源が10年間で59兆円」というのを聞いてしまうと、「そのカネを何とかしろおおおお!」と思います。だって、そんなおカネをぜんぶ道路に使ってしまったら、愛媛県と大分県を結ぶ橋、みたいな馬鹿なものができてしまいますよ、きっと。

○ワシが知る某ベテラン官僚も、「10年で59兆円」を聞いてハラハラと落涙しつつ言っておりました。「そんなカネがあるなら、俺の政策に10億円でいいから使わせてくれ!」――同様なことを考えた人は、霞ヶ関では少なくなかったでありましょう。そのほかにも、茨城に空港を作るとか、お馬鹿な話が一杯あるではありませんか、この国には。かくして「物価景気よりも、医療年金よりも、とにかく財政の無駄を減らせ!」という民意が出来てしまった。

○ひとつだけ確かなことは、政治が「負担の分配」を国民にお願いするときが遠からず訪れるだろうということです。そのとき、お願いをする人は身綺麗にしておく必要があります。「埋蔵金」は当然全部表に出すし、議員の数は減らすし、公務員の数も減らす。そして当然、財政のムダは極力なくさなければなりません。「どのツラ下げて負担増を言ってくるのか」と国民は身構えている。そんなことを、チラッと考えさせてくれる世論調査データでありました。


<7月18日>(金)

○某所でエコノミスト業界の寄り合い。本題は米大統領選挙でワシが報告者だったのだが、昨今の情勢ゆえに議論はGSE問題へ。ファニーメイとフレディーマックはどうなるのか。そもそも何なんじゃ、それは、てなことに。本日のところの結論は、アメリカは日本のバブル崩壊をよく研究していて、同じような馬鹿なことをするはずがないとされていたけれども、実はまったく学んでいなかったのではないか。それどころか、こっちの方がよっぽどと規模がデカいんじゃないのか、てなことに。

○サブプライム問題が巻き起こした危機の第一陣が金融機関の経営悪化であったとすると、それは今年3月のベアスターンズ救済でいちおうの峠を越した。第二陣は資源バブルで、これは当分はしこりそうだけれども、とりあえず7月3日のECB利上げで転換点を迎えた可能性がある。そこへ襲ってきたのが第三陣のGSE問題で、これまた非常に深刻な状況である。とにかく「大き過ぎてつぶせない」ことは間違いないのだが、本当に大き過ぎるので無敵の米国債をもってしても支えきれるのかという心配がある。仮にこの後、第四陣があるとしたら、それはドル危機になるのではないか。人心を惑わすようで恐縮でありますが、やっぱりこの夏は怖いような気がします。

○もっとも、それで世の中の底が抜けるかというと、むしろ早いとこ悪材料出尽くしになってしまった方がありがたいというもので、「これ以上は悪くならない」という共通認識が出来てしまえばそこが転換点になる。いつも同じセリフで恐縮ですが、「山より大きなイノシシは出ない」。人間の世界に大きな進歩はありません。だから10年単位で金融危機が起こります。かといって、完全な破綻もありません。ありがたいことに、命までは取られません。とりあえずシートベルトのご用意は必要であろうかと考えますけれども。

○夕方から新潟県浦佐へ行き、国際大学のオープンセミナーで講師を務めました。毎度おなじみの信田先生のお誘いであります。大学のご近所にお住まいの方々が対象なのですが、とっても質問のレベルが高くて感心いたしました。

○ひとつだけ惜しまれるのは、新幹線の中で傘を置き忘れてしまったことです。これでもう8年くらい使い続けてきた三段折りたたみ傘で、もともとは帝人さんを訪問したときに頂戴したノベルティの記念品でした。後年はかなりボロボロになっていたものを、手入れをしながら使っておりましたが、とうとうお別れのときがきてしまいました。悲しいけれども、まあ、どんなことにも終わりはあるものです。過去は過去として、また前へ進むしかありません。

○今週末は恒例の町内会の夏祭り。明日は朝から山車の組み立てが待っております。


<7月20日>(日)

○今日はこの夏いちばんの暑さであったとのこと。夏祭りのために、朝からずっと外に出ていたので、とっても日焼けをしてしまいました。あーしんど。どうせなら、ハワイかどっかで焼きたいものであります。でもって、朝からビールばかり飲んでいる。まあ、全部汗になって出てしまうわけですが、夏祭りといえばとにかくビールであります。それから枝豆、アイス、カキ氷。あ、何か忘れていると思ったら今日はスイカがなかった。今年も重労働だったけど、とりあえず無事に済んでめでたいことです。

○ひとつだけ驚いたのは、今年は土曜夕方の宵宮の宴会の最中に、地元選出の衆議院議員(自民党)と県会議長さんが顔を出したことです。ウチの町内会は人数も少ないのに、やっぱり選挙が近いぞということなんでしょうか。こんなのは文字通り始めての現象です。


<7月22日>(火)

○お昼に今井澂先生が来社。ご一緒に赤坂サカスへ繰り出してみたところ、かつての混雑はどこへやら。おばさま族は飽きてしまったのか、それとも物価高で遠出を控えておられるのか。ともあれ、地元民としては良かった、よかった。やっと赤坂に日常が帰ってきた。イタリアンの「グラナータ」に入ってみると、定番の二色パスタのランチが以前と変わらぬ1500円であった。でも、食前のブルスケッタはなくなっていた。やはり場所代が上がってしまったのか。ちょっとさびしい。今井先生とは、当今の情勢などについて懇談。いつもながら勉強になります。

○ところで明日からちょっくら上海に行ってまいります。昨年秋に訪れた上海対外貿易学院に「日本経済研究センター」ができましたので、若干の仲間(実はかなりの豪華メンバー)とともに渡航して、日中経済対話を行ってまいります。いろんな意味でいいタイミングになったと思います。まず、北京五輪まであと2週間ちょっとであり、にもかかわらず物騒なことが起きたりする今の中国の内情を、果たしてどう見るべきなのか。そしてそれ以上に、アメリカ経済は得体の知れないことになっており、サブプライム→モノライン→ファニーメイ→ホントに明日は何が起きるんだ、みたいな状態になっています。こうなると、日中の経済は完全に「同じ船」(例:エージェンシー債ってどうしたらいいの?)で、どうやって互いの無事を確保するか真剣に考えざるを得ません。

○そういうわけで、3日ほど留守します。皆様、よろしく。


<7月23日>(水)

○羽田から出国して虹橋空港に着陸すると、上海はとっても近いのである。でも、うだるような暑さでは東京に負けていません。当地は37度Cです。湿気もあります。

○早速ながら、日本側出席者の打ち合わせを始める。滝田洋一氏、小林慶一郎氏、関山健氏、それに不肖かんべえの4人であります。上海の高層ビルや古い建物を見ながら、当地の本格的なお茶を飲みながら話をしていると、ついついハイな気分になってしまい、下記のように高度なギャグが生産されてしまいます。Politically Incorrectの段は平にお許しを願いたく存じます。

●昔 「米国帝国主義は日中人民共同の敵である」(浅沼書記長)

 少し昔 「日本の金融不安は、米中共同の懸念である」(クリントン大統領)

 現在 「米国サブプライム問題は日中共同の懸念である」


●問い:アメリカが世界に輸出している害毒は何か?

 答え:「GSE」(日本と中国)、「BSE」(韓国)


●問い:1980年代の累積債務問題と、今日のサブプライム問題の違いは何か。

 答え:80年代は、貸してはいけない中南米諸国にお金を貸してしまった。今回は、貸してはいけないヒスパニックの人々に貸してしまった。


○夜は中国側を交えての歓迎晩餐会。蘇州料理をいただきつつ、とっても強い白酒を十数杯、「カンペイ」を繰り返す。ワシはこんなに酒が強かったのだろうか。

○食卓を、日本語と中国語と英語の会話が乱れ飛ぶ。日中は漢字文化を共有するも、仏教になると非常に翻訳が難しいのだそうだ。「色即是空、空即是色」を何と説明するか、てな話で盛り上がる。答えは"The emptiness is the substance, the substance is the emptiness." この境地、きっと欧米人には理解不能でありましょう。これが分かるのは、アジア人のみなるぞ、てなことでお後がよろしいようで。

(21:44PM記)

○その後、上海馬券王先生と合流し、夜の上海ツァーに出かける。

(1)最初に行ったのが「カフェ・ド・カルモ」。このコーヒー、荻窪駅の南口にある「繁田園」というお茶屋の二階にある「ブラウンチップ」というコーヒー豆販売店と、同じ豆を中国で売っている。名物は、ブラジル在住の下坂さんの農園で作っている「カルモ・シモサカ」というブランド。ワシが荻窪に住んでいた20年位前にほれ込み、柏に引っ越してからもずっとこのコーヒーを飲み続けている。拙宅で「カルモ」の味を覚えた馬券王先生が、ほかならぬ上海で支店を発掘したときの驚きたるやいかばかりであったか。

(2)それから某内緒のビデオショップへ。いつもは海外モノの海賊版を売り物にしている店なのだそうだが、今宵は見事に国内モノだけの店に変身していた。これでは商売にならないと思うのだが、どうやら「オリンピックモード」であるらしい。察するに北京五輪終了後は、またまた海外モノの販売が復活するのであろう。いやー、それにしても先週、最終回を迎えた「CHANGE」のDVDがもう売っているなんて・・・・。恐ろしい世界であります。

(3)そこから足裏マッサージへ。1時間70元というから、日本円では1000円ちょっとくらい。ときどき「痛いっ」という瞬間があるけれども、心地よく寝させていただきました。先週末の町内夏祭りの重労働のお陰で、腰を痛めておったのですが、これでよくなったかもしれません。酔い覚めの、水の美味さや、マッサージ。

(4)最後の仕上げは「白木屋」でおそば。上海における日本そばは栄枯盛衰が激しいとのこと。馬券王先生の現地における仕事上の苦労話などを拝聴する。馬券王先生にとって、JRAはあくまでも週末の趣味であって、ふだんは某日本企業でご活躍中である。ときどき「架空の人物ではないか」と言われることがあるので、念のために申し添えておきます。

(2:06AM記)








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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)