●かんべえの不規則発言



2024年12月 






<12月1日>(日)

〇沖縄で、もうひとつだけこだわりのある食べ物が「紅いもアイス」なのである。首都圏ではあまり売っているところを見かけない。

〇その昔、なぜか中山競馬場の中で、船橋法典駅からスタンドに向かう途中に、「紅いもソフトクリーム」を売る店があった。紫色のソフトクリームの看板を置いていたから、かなり本気モードなのであった。で、いつ頃からかこの店に立ち寄るのがルーティーンとなったのである。

〇とにかく競馬場に着いたら、すぐに紅いもソフトを買っていた。当時はよく娘を連れて行って、馬場内公園で遊ばせながら勝負していたので、親子でよく一緒にアイスを食べたものである。冬でもお構いなしであった。いったい何個食べたか、トータルするとかなりの数になったのではないかなあ。

〇ところが哀しいことに、あるときこの店は紅いもアイスの販売を中止してしまい、ごく普通にバニラとストロベリーのアイスを売る店になってしまった。紫色の看板はそのままであったが、そうなると腹立たしくて、嫌でもストロベリーアイスなどは注文したくない。そこで場所を移動して、「耕一路」のモカソフトに宗旨替えしたのであった。

〇ギャンブルをやらない人は馬鹿らしく思われるだろうが、勝負事はゲンを担ぐものなので、「いつものアレがない」となったら、それだけでイヤ〜な気分になってしまうのである。てなわけで、ワシの中で「紅いもソフト」は2000年代の中山競馬場の記憶と結びついている。ディープインパクトやシンボリクリスエスが目の前を走っていた頃である。おお、なんと懐かしい。

〇てなわけで、昨日、那覇空港を発つ最後の瞬間に、ワシがご当地の「紅いもソフト」を購入したことは言うまでもないのである。


<12月2日>(月)

〇溜池通信の11月1日号でご紹介したが、Five Thirty Eightのネイト・シルバー氏がNYT紙の10月23日号のオピニオン欄でこんなことを書いていた。


世論調査の平均値が非常に接近しているために、小さな系統的エラーが大差をもたら
す可能性もある。私のモデルでは 7つの激戦州のうち、どちらかが 6つ以上を制する
確率が 6割もある
。調査会社はSNS上の批判を恐れて、異常値をもみ消してコンセン
サスに靡くからだ。どちらかが決定的な勝利を収めたとしても驚くべきではない。


〇そしてこの予言通り、トランプ氏が7つの激戦州すべてを制して勝利を収めた。勝敗の確率は、まったくの50対50だったのだが。「どちらかが決定的な勝利を収めたとしても驚くべきではない」とは、まったくの卓見であった。

〇なぜそんなことになるかというと、世論調査会社が「外れ値(アウトライアー)をもみ消してコンセンサスに靡くから」であった。だいたい「7つの激戦州は全部1%内外の差です!」などということが生じるのは、それこそ天文学的に小さな確率であるはずだ。われわれがいかに偏った統計を見ていたか、ということである。

〇しかるに世論調査に誤差があるのは当たり前であるし、統計は外れ値も含めてデータなのである。恣意的にアウトライアーを外していたら、統計は確実に歪んでしまう。まして世論調査の平均値を出してくれるリアル・クリア・ポリティクスなんかも、非常に危うい存在であったことになる。

〇問題なのは、昨今は「アウトライアーを弾く」ことのコストが異常に低下していることだ。コンセンサスから外れた意見はすぐに見つかってしまう。あるいは「あなた、午前8時前にパソコンつけてたでしょ?」で犯罪者扱いされてしまうとか。「不適切にもほどがある」(ふてほど)行為はもちろんのこと。SNSであれば容赦なく炎上してしまう。かくしてリスク回避のために、人はどんどんコンセンサスに身を寄せるようになっていく。

〇そんなことをしていたら、組織も確実に劣化するだろう。組織には多様な意見が必要だ。少数意見を大切に、という原則は多数派を守るために存在するのではない。「多数派の誤り」を避けるために必要なのである。なにしろ多数派が誤った場合、組織は立ち直れないくらいの打撃を受けてしまうから。

〇統計がアウトライアーを大事にしなければいけないように、日本という国は沖縄を大事にしなきゃいかんのではないか。沖縄を粗末にするときは、それこそ多数派が誤りを犯すときとなりかねない。二泊三日を過ごしただけですが、ふとそんなことを考えた次第。


<12月3日>(火)

〇「トランプは一体何をしでかすのか?」という議論が引きも切らない昨今でありますが、困ったときは基本に帰れ。たぶん、これ(アジェンダ47)がいちばんいい指標になると思います。

〇何しろ「全部大文字で書かれている」という点が、いかにもトランプさんらしいじゃないですか。賭けてもいいですが、トランプさんはヘリテージ財団の"Project 2025"なんて読んでませんからね(長過ぎる上に理屈っぽい)。でも下記の20か条は、全部ご自身の手でチェックしたはずです。


President Trump's 20 CORE PROMISES
TO MAKE AMERICA GREAT AGAIN!

(1) SEAL THE BORDER AND STOP THE MIGRANT INVASION


(2) CARRY OUT THE LARGEST DEPORTATION OPERATION IN AMERICAN HISTORY

(3) END INFLATION, AND MAKE AMERICA AFFORDABLE AGAIN

(4) MAKE AMERICA THE DOMINANT ENERGY PRODUCER IN THE WORLD, BY FAR!

(5) STOP OUTSOURCING, AND TURN THE UNITED STATES INTO A MANUFACTURING SUPERPOWER

(6) LARGE TAX CUTS FOR WORKERS, AND NO TAX ON TIPS!

(7) DEFEND OUR CONSTITUTION, OUR BILL OF RIGHTS, AND OUR FUNDAMENTAL FREEDOMS, INCLUDING FREEDOM OF SPEECH, FREEDOM OF RELIGION, AND THE RIGHT TO KEEP AND BEAR ARMS

(8) PREVENT WORLD WAR THREE, RESTORE PEACE IN EUROPE AND IN THE MIDDLE EAST, AND BUILD A GREAT IRON DOME MISSILE DEFENSE SHIELD OVER OUR ENTIRE COUNTRY -- ALL MADE IN AMERICA

(9) END THE WEAPONIZATION OF GOVERNMENT AGAINST THE AMERICAN PEOPLE

(10) STOP THE MIGRANT CRIME EPIDEMIC, DEMOLISH THE FOREIGN DRUG CARTELS, CRUSH GANG VIOLENCE, AND LOCK UP VIOLENT OFFENDERS

(11) REBUILD OUR CITIES, INCLUDING WASHINGTON DC, MAKING THEM SAFE, CLEAN, AND BEAUTIFUL AGAIN.

(12) STRENGTHEN AND MODERNIZE OUR MILITARY, MAKING IT, WITHOUT QUESTION, THE STRONGEST AND MOST POWERFUL IN THE WORLD

(13) KEEP THE U.S. DOLLAR AS THE WORLD'S RESERVE CURRENCY

(14) FIGHT FOR AND PROTECT SOCIAL SECURITY AND MEDICARE WITH NO CUTS, INCLUDING NO CHANGES TO THE RETIREMENT AGE

(15) CANCEL THE ELECTRIC VEHICLE MANDATE AND CUT COSTLY AND BURDENSOME REGULATIONS

(16) CUT FEDERAL FUNDING FOR ANY SCHOOL PUSHING CRITICAL RACE THEORY, RADICAL GENDER IDEOLOGY, AND OTHER INAPPROPRIATE RACIAL, SEXUAL, OR POLITICAL CONTENT ON OUR CHILDREN

(17) KEEP MEN OUT OF WOMEN'S SPORTS

(18) DEPORT PRO-HAMAS RADICALS AND MAKE OUR COLLEGE CAMPUSES SAFE AND PATRIOTIC AGAIN

(19) SECURE OUR ELECTIONS, INCLUDING SAME DAY VOTING, VOTER IDENTIFICATION, PAPER BALLOTS, AND PROOF OF CITIZENSHIP

(20) UNITE OUR COUNTRY BY BRINGING IT TO NEW AND RECORD LEVELS OF SUCCESS


(1) 国境を封鎖し、移民の侵入を阻止する
(2) アメリカ史上最大の強制送還作戦を実行する
(3) インフレを終わらせ、アメリカを再び手ごろな価格にする
(4) アメリカを、圧倒的に世界有数のエネルギー生産国にする!
(5) アウトソーシングを止め、米国を製造業大国にする
(6) 労働者に大幅な減税を行い、チップには課税しない!
(7) 憲法、権利章典、そして言論の自由、信教の自由、武器を保持し持つ権利を含む基本的自由を守る
(8) 第三次世界大戦を防ぎ、ヨーロッパと中東の平和を回復する、
(9) アメリカ国民に対する政府の兵器化に終止符を打つ
(10) 移民犯罪の蔓延を阻止し、外国の麻薬カルテルを解体し、ギャングの暴力を鎮圧し、凶悪犯罪者を監禁する
(11) ワシントンDCを含む我々の都市を再建し、安全で清潔で美しい都市を取り戻す。
(12) 我が国の軍隊を強化・近代化し、間違いなく世界最強・最強の軍隊にする
(13) 米ドルを世界の基軸通貨として維持する。ドルを世界の基軸通貨として維持する
(14) 定年年齢の変更を含め、社会保障と医療を削減することなく守り抜く
(15) 電気自動車の義務化を中止し、費用のかかる負担の大きい規制を削減する
(16) 批判的人種論、急進的ジェンダー・イデオロギー、その他不適切な人種的、性的、政治的内容を子どもたちに押し付ける学校への連邦政府資金を削減する
(17) 女性スポーツから男性を締め出す
(18) ハマス過激派を国外追放し、大学キャンパスを再び安全で愛国的なものにする
(19) 選挙を安全にする、 同日投票、有権者の身分証明、紙投票、市民権の証明を含む
(20) 新記録レベルの成功に導くことで、国をひとつにする


〇まずしょっぱなに来ているのが「不法移民問題」です(@A)。この問題こそが、次期政権にとっての一丁目一番地。そしてDeportation(国外強制送還)は本気と考えるべきでしょう。メキシコ大統領は大丈夫かあ?

〇意外なことに、Tariff(関税)という言葉は1回も使われておりません。そりゃそうですよね。こういうところで「関税上げるぞ!」と言明してしまうと、誰も通商交渉に応じてくれなくなりますからね。以前から繰り返し言われてきたことですが、トランプさんのことは真剣に受け止めなければいけませんが、言葉尻に捉われてしまうのは愚の骨頂です。

〇「エネルギー生産国になる」(C)、「チップ非課税税制」(E)も本気だと考える方がいいでしょう。どちらも比較的ハードルは低いはずです。「製造業大国にする」(D)のはちょっと難しそうですが。この点は「日本製鉄のUSスチール買収を次期政権が認めるかどうか」が判断材料になると思います。

〇気になるのは「平和を回復する」(G)という目標の実効性です。とはいえ、これはアメリカの仲介調停ではなく、当事者の意思が問題でありますから、ロシアやイスラエルがその気になれば、できないことはありますまい。逆に言えば、当事者が停戦は嫌だというものは止められません。アメリカにとって重要なのは、「他人のふんどしで相撲を取る」ことであります。

〇経済界にとって重要なのはLでありまして、「強いドルは国益」(ルービン財務長官)といっております。次期財務長官人事も併せて考えると、「トランプはドル安志向だ」というのはちょっと違うかもしれません。彼はウォール街の利益は守る人です。たぶんご自身もいっぱい株を持っているでしょうし。

〇EVにカネを注ぎこまない、というNは放っておいてもそうなるでしょう。だって、バイデン政権があれだけ補助金を注ぎこんでも高過ぎるんですから。消費者が「嫌です」と言っているんだから、これはもう仕方がない。でなきゃ日産自動車の経営もこんなには傾かないはずです。

〇トランスジェンダーの問題は意外と根深いようでして、Pはそのことを言ってます。従ってLGBTやDEIやその他の”Woke”なことは向こう4年間は影をひそめるでしょう。「トランプが勝ってくれてよかった!」と思っている人は、とりあえず経済界には少なくないようで、そのことは株価を見ていれば一目瞭然ですね。

〇先日の「トランプ四季報」に加えて、上記をマスターすればますます恐怖感は薄れるものと存じます。まあね、向こう4年間続きますから、今さら嫌だと言ってもしょうがないんですよ。蒸気を前提にしたうえで、投資戦略なんぞを考えなければなりませぬ。


<12月5日>(木)

〇今宵は今年一発目の忘年会。政治オタクの皆さまが集まって、「選挙の年」だった2024年を振り返る。

〇「来年は本当にどうなってしまうのか」の声あり。いやもう、ホントに訳が分かりませんな。韓国は大統領弾劾になりそうだし、フランスは内閣不信任案可決だし。キャンプデービッドの日米韓首脳会談の体制は、1年半も持たずに崩壊することになる。岸田さんが去り、バイデンさんも去り、そしてユン大統領も居なくなりそうで。

〇韓国で後に来るのは、親北・反日・反米の進歩派政権になるんじゃないか。ホントに心配ですねえ。

〇一方で北朝鮮は、トランプ大統領の復帰を歓迎していない様子。そりゃそうだろう。金正恩氏は完全にネタにされたから。それにしてもトランプさんは、金正恩と会ってどうするつもりだったのか。「出たとこ勝負」を楽しんでいたとしか思われない。普通の政治家ではあり得ない発想ですよね。

〇2025年はその手の離れ業が乱発されそうである。まあ、腹を据えてかかるしかありませんな。


<12月6日>(金)

〇この時期恒例、日本貿易会の貿易動向見通しが本日発表されました。お役立ていただければ幸いであります。

〇この作業をするときに、いつも揉めるのは為替レートの設定である。149円/ドル(2024年度)、140円/ドル(2025年度)だそうである(パワポ部分の「参考資料」P2に小さな文字で書いてある)。来年はFedの利下げと日銀の利上げが数回あるはずなので、これは妥当な水準ではないかと思う。

〇原油入着価格は24年度84ドル/バレル、25年度83ドル/バレルとなっていて、こちらはもう少し下がるかもしれない。これはトランプ政権発足が分かる前に前提条件を決めて、作業を始めているからである。この辺は毎回ビミョーです。

〇原発再稼働が進んでいることもあって、2025年度の鉱物性燃料の輸入は減少する。となると、25年度の貿易収支(IMFベース)は黒字に転換するとのこと。わずか1.9兆円とは言え、5年ぶりの黒字転換となる。

〇他方ではサービス収支の赤字拡大は止まらない。「インバウンド黒字<デジタル赤字」でありますからね。インバウンドの稼ぎは肉体労働、デジタル赤字の支払いは頭脳労働で不労所得。そんな風に考えると、日本経済はちょっと寂しい。

〇経常収支の黒字は29.96兆円と史上最高を更新するのであるが、これはあんまり喜んでいられない。第1次所得収支の黒字は、ほとんどが海外に「置きっぱなし」で円転されることはありませんからね。

〇それから第2次所得収支の赤字が4兆円になっている、というのは、昔この作業をやっていたものにとっては驚きです。第2次所得収支は「タダであげちゃうおカネ」を意味しますので、昔はODAくらいしかなかったのです。それが今では日本に住む外国人が多くなり、海外送金がかなりの金額になっているのでしょう。

〇こうして考えてみると、なかなか円安是正は簡単じゃありません。国際収支はこの10年ほどで本当にドラスチックな変化が起きたのだなあ、と実感いたします。


<12月8日>(日)

〇最近聞いたお話の中から印象に残ったもの。


「最近、銀座にラーメン屋が増えた。インバウンドが増えたからじゃないかなあ」(バブル世代女史)

――銀座は鮨、とんかつは上野、てんぷらは浅草、ラーメンは新橋、といった秩序が破壊されそう。そのうちラーメンに「銀座価格」ができるかもしれない。


「息子が言うんです。『僕らの世代の苦しさは石丸さんしか理解してくれない』って。・・・・そんなに苦労をさせたつもりないんだけど」(悩める母親)

――親世代はテレビと新聞、子供世代はSNSと動画サイトですから、こういうギャップはますます深刻ですな。


「近年に発生した大地震25件のうち、夜間が16件あります。被害の実態がわからないので、じりじりと朝を待つのがツラいです」(防災関係者)

――神戸大震災は早朝、東日本大震災は昼下がり、能登地震は夕刻。あれはラッキーだったのかもしれません。


「ちょっと前まで官民挙げて『デフレ脱却』、と言っていたのが、最近は『実質賃金を上げよう』に変わりましたね」(エコノミスト)

――実質賃金を上げるためには交易条件を改善する必要があって、そのためには円安は困りものです。そのことが理解され始めたのは朗報でありましょう。


「来年の資産運用は、アメリカだけ見ていればいいんじゃないでしょうか」(金融関係者)

――なるほど株もヨシ、債券もヨシ、ドルも弱くならないし。おかしいなあ、そんなはずないんだけどなあ。



〇香港カップは@ロマンチックウォリアー、Aリバティアイランド、Bタスティエーラでありました。うーん、勝てませんなあ。というより、ここは3連覇してしまう「浪漫勇士」の強さを称えるべきなのでしょうな。でも「自由島」は惜しかった!


<12月9日>(月)

〇電車の中で「中づり広告」を見かけなくなって久しい。週刊誌だけでなく、いつの間にか女性誌の広告もなくなりましたなあ。こんな風になると、「情報源」として広告を見る習慣がなくなってしまうので、車内広告の出稿料金は下がっているんじゃないかと思う。

〇電車内の情報源ということになると、夕刊紙もなくなりつつある。夕刊フジは来年1月31日で休刊になってしまう。かな〜り昔のことになるが、ワシが書評の連載を書いていたこともある。産経新聞の記者は、夕刊フジに出向した際に、「少ない材料で面白い記事を書く」訓練をさせられる、と言われたものなのだが。

〇夕刊紙の相方である日刊ゲンダイさんは、今日も元気に各方面にかみついておられる。しかるに夕刊フジというライバル紙を失うことは、おそらくは経営的にもマイナスに働くだろう。そもそも今は駅のホームから売店が消えつつありますもんねえ。昔は夕刊紙の見出しで、「おっ、今日のイチローはどうだったんだ」を確認したものである。今なら大谷翔平選手の活躍はWindows画面が勝手に教えてくれますからなあ。

〇夕刊紙で今も元気なのは東スポさんですねえ。この辺の生き残り策は、つまるところは週末の競馬欄がモノを言うわけでありまして、カネ払いのいい馬券師さんたちに負うところが大きい。ワシも今みたいなG1シーズンは、「アンカツ先生」のひとことを読むためだけに毎週木曜日に東スポ買いますもん。最近はあんまり当たってませんけど。

〇ということで、その昔は電車の中に、「今週は何が話題になっているか」という一種の情報共有の場があった。昨今はそういうものがなくなって、電車内では皆が個別にケータイの画面を覗き込むようになった。情報環境の変化は、こんな形でも起きている。世代間で「共有できる話題」が少なくなるというのは、こういう理由もあるのでしょうなあ。


<12月10日>(火)

〇今宵は富山県人の集まり。場所は赤坂の「かさね」というお店で、ここはおかみさんが富山県出身である。個人的には、お店が一ツ木通りにあった頃からのお付き合いである。

〇ということで今宵は富山ネタ。以前から一度やってみたいと思っているのが、「富山弁漫才」である。恐縮ながら、お相手は日本銀行の氷見野良三副総裁である(同じネズミ年うまれ)。


「ひみのさん、あんた、どっだけ金利上げるつもりながけ。わし、こわ〜なってくるわ」

「よっさきさん、あんた知っとられよう。今の日本で1%くらいの金利は当たり前やないがけ」


〇かなりホンネで切り込んだ話ができるのではないかと思うのだが、惜しむらくは理解できる人がきわめて限られることになりそうだ。いや、富山県関係者には確実に喜ばれると思うのですけどねえ。


<12月11日>(水)

〇「モーサテ」に出た日は、その後の一日が長いが、「WBS」に出なきゃいけない日も、それまでの一日が長い。今日なんて講演会でつくば市に行っているから、まことに一日が長いのである。

〇つくば市に向かう途中のTX(つくばエクスプレス)の中で知ったのだが、悠仁(ひさひと)親王が筑波大学の推薦入試に合格されたとのことである。未来の陛下が来年4月からつくば市に通うのか、それとも住まわれるのかはわかりませんが、これは地元的には朗報でありましょう。

〇そんな日に偶然、つくば市に居たというのも不思議なことであります。講演会後にリモートでテレ東と打ち合わせをして、そこから都内に戻ってWBSに出演する。本日のコメントは「USスチール買収」「米11月CPI」「日米韓協力」の3点でありました。


<12月12日>(木)

〇毎年恒例、クラブ関西さんの午餐会講師として大阪へ。

〇たまには気分転換ということで、新幹線ではなくANA便を使ってみる。朝9時の羽田発に間に合わせるのは楽ではないのだが、乗っているのが1時間ちょいで済むのはありがたい。また、東京−伊丹便は乗客が多いこともあって、62番とか59番ゲートとかいい場所に着くので、あまり歩かなくて済むという利点もある。

〇そして伊丹空港にしばらくぶりに来てみると、手ごろで使い勝手のいい空港なのである。小ぶりであるし、天井も低いけれども、どこに何があるかがすぐわかるし、トイレも近いのがありがたい。改装前の福岡空港がちょうどこんな感じだった。そして「551」の豚まんを買い求める行列も、新大阪駅に比べると格段に短いのである。

〇昨今の羽田空港は建物は立派なのだけれども、あまりにも便数が増え過ぎて、やけに歩かされるので客にとっては優しくない。お店の類も増え過ぎて、どこに何があるのか、何がお得なのかがわからない。空港は、あんまり大きくならない方がいいのではないかなあ。

〇クラブ関西さんにおいては、不肖かんべえは古参の講師である。いちばん古かった五百旗頭先生が今年亡くなられたので、あなたが一番になりましたと言われて少々焦る。ワシはそんなに偉くない。経済漫談師みたいなものでありまして、昨今はトランプ漫談で好評をいただいておりますが。

〇このクラブの常連に、池田泉州銀行の清滝一也さんという方がおられた。毎年、年の瀬には来年の干支を読み解くカードを作っていて、これがたいへんなスグレモノだったので、いつも頂戴するのを楽しみにしていた。その清滝さんは今年5月に亡くなられた(プリンストン大学の清滝教授はそのご子息である)。

〇清滝さんなら、来年の干支「乙巳(きのと・み)」をどう読み解いたのだろう。あんまり自信はないのですけれども、自分流の解釈を考えてみたので、それは明日の溜池通信本誌にてご紹介いたします。











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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)