●かんべえの不規則発言



2017年11月 






<11月17日>(金)

○今宵は飲み会の開始時刻の10分前に到着したら、あらあら幹事も含めて誰も来ていない。ややあって、「突発事項で」「道路が混んで」などといろんな事情で遅れて、三々五々と集まってくる。そもそも今どき都内では、金曜夜に個室を予約すること自体が奇跡的な難事業なのだとか。皆さん「実感を伴わない」とおっしゃいますけれども、やっぱり景気は良くなっているのではないのでしょうか。

○11月15日発表の7−9月期GDP速報値では、「個人消費はマイナスで、外需主体の成長」ということになっておりました。でも、GDPは前期比ですから、4‐6月期が出来過ぎだった後は、かならず割戻しが来るのです。しかも長雨で、消費の足を引っ張ったことは自明なのですから。むしろ外需の健闘ぶりを称えるべきではないかと存じます。

○7-9月期GDPでは、デフレーターがしっかりプラスに転じていたことも好材料。名目GDPが実質GDPを下回るという「名実逆転」現象も、解消されてからもう3年以上たっておるのです。物価上昇2%はもちろん未達なれど、デフレは脱却したと言ってもそんなに罰は当たらないのではないでしょうか。

○もっとも安倍政権としては、「引き続きデフレ脱却を目指していく」と言い続けている方が気楽な立場である。脱却してしまったら最後、次の課題に取り組まなければならなくなってしまうから。それは社会保障改革とか財政再建とか、とにかく不人気な政策となることは間違いない。そんなこと、国民も本気では望んでいないはず。ここがとっても微妙なところでありますな。

○日経新聞が朝刊で「愉楽にて」という連載小説を掲載し、エッチな場面が出てくるという展開で、「これはもう渡辺淳一の世界再び。ジンクスから言って株価は上がるぞ!」とマーケットの一部関係者がはしゃいでいる。外国人投資家は、今まで軽視していた日本株が上がるので、「持たざるリスク」を感じて慌てて買っている。他方、国内の個人投資家は売り一色。日経平均2万3000円なんて怖くて買えない。結論として国内にはキャッシュが余っている。

○なーんだ、そういうことで景気が良くなっているのか。やっぱり今年の忘年会シーズンは、ちょっとした過熱モードになるんじゃないでしょうか。


<11月18日>(土)

○今宵はBS-TBS『週刊報道Biz Street』へ。今日は「みずほFG構造改革、1.9万人削減」、「トランプ氏、アジア歴訪自画自賛」、「企業収益絶好調と賃上げという課題」などのテーマがあったのだが、めちゃめちゃ面白かったのが「中古売買が熱い!リユース市場急成長の現場」という話題でした。

○いやまあ、メルカリがやってることなど可愛いもんです。リアル店舗の買い取りで急成長するSOUこと「なんぼや」さん。やってることは、ITを使った大掛かりな質屋さんみたいなものですな。ブランド品や貴金属、高級時計などを全国から買い集めて、それを会員制オークションで売りさばく。なんと4日間で1.5万点、12〜13億円を売却する。落札率は98%。番組をご覧になった方は、何百万円もの時計がオークションであっという間に取引される様子に圧倒されたんじゃないかと思う。ほんの数秒で値段が決まる。あの場で飛び交っていたのは、最近はちょっと聞いたことがないような真剣そのものの声でした。

○考えてみれば、日本には死蔵されている高級品がいっぱいある。それらをキャッシュに換えるのは、まったく合理的な行為なのだが、いかんせん心理的な壁というものがある。親の遺品だって、なかなか処分できませんわなあ。ところが世の中は所有価値から使用価値へ。使わないものは要らないし、古いものを売って新しいものに買い替えるのも当たり前、という風に意識が変わってきた。リユース市場の発展は、まことにもっともなことなのです。

○ところがこの商売、考えてみればリスクは大きい。フェイクを掴まされるかもしれないし、盗品の怖れだってある。売れない在庫を抱えてしまい、その中古品の市場が値崩れした日には目も当てられない。ところが日本には既に充分なボリュームを持つ中古品市場が出来上がっており、値付けのプロがいて、売りさばくネットワークもある。あの商品群、きっとアジア各地に売りさばかれていくんだろうなあ。課題先進国である日本経済には、こんな形の「使い道」もあるんですな。

○てなことで、この番組は勉強になります。不肖かんべえは次は12月9日(土)放送分に登場いたします。


<11月19日>(日)

○今月は「山一・北拓ショック」から20周年。ということで、あちこちで取り上げる記事が出ていますね。

○北海道拓殖銀行の経営破綻は11月17日、月曜日であった。その前日は世に言う「ジョホールバルの歓喜」である。FIFAワールドカップ・アジア最終予選、イランとの決戦が2−2で延長戦に突入し、日曜夜であったがワシも深夜まで粘って見ておった。中田英寿のアシストを野人・岡野が蹴りこみ、決勝Vゴールで日本の1998年パリW杯への参加が決まった。その夜は感動に浸っていたのだが、翌日、出社したところ日本経済は大混乱であった。

○当時、大蔵省は「大手21行は1行たりともつぶさない」という護送船団方式をとっていた。今となっては、「当時の21行を名前を全部言えるか?」というのは同世代人の間でもかな〜り難しいクイズとして成立する。大和銀行とか埼玉銀行が意外と出てこない。信託銀行が7つもあるのが鍵です。

○山一証券の自主廃業は11月24日、月曜日、ただし振り替え休日で3連休の最終日であった。金融機関の経営危機は、いつも週末にやって来る。早朝の臨時取締役会で自主廃業が決まった。押し寄せた取材陣に対し、野澤社長が「社員は悪くありませんから!」と号泣した映像は語り草となった。

○四大証券の名前はさすがに簡単だ。当時は「大きな山に日がのぼる」(大和、山一、日興、野村)と覚えたものである。とはいえ、証券界も今では様変わりである。店舗の雰囲気からして、えらい変わりようですなあ。

○こんな事件が相次いだために、1997年の年の瀬は大騒ぎであった。当時のワシはいろんなところからキャッシュを集めて、住宅ローンの前倒し返済に踏み切った。これは絶好の判断というべきで、翌年には日商岩井が不良債権問題で経営危機に陥って、他人事ではなくなった。あれからもう20年になる。

○「1の位が7の年は金融危機がつきもの」という話は、過去に何度も書いてきた。ブラックマンデー(87年)、山一北拓(97年)、サブプライム(07年)と来ているのだが、2017年はここまでは不思議と無事に来ている。とはいえ、残り6週間、まだまだ何が起こるかわかりませぬぞ。


<11月20日>(月)

○先日、某外資系企業の人事制度について拝聴する機会があった。内容を聞いて、文字通りぶっ飛んでしまうほど驚いてしまった。採用→研修→評価→報酬→昇進あるいは外部転身に至るまで、まことにきめ細かなシステムが出来上がっていて、なおかつそれが頻繁に変わっているのである。「よくまあ、ここまでやりますね」と聞いたら、「だってわが社は人材こそが命ですから」とお返事されて、とっても恥ずかしく感じてしまった。

○グローバル企業というものは、当然のことながら全世界統一の人事制度がある。とはいえ、世界各国にはそれぞれお国柄というものがあるし、法制度もそれぞれに違うから、ローカルルールも取り入れなければならない。そこでグローバルルールとローカルルールのせめぎ合いのようなものが生じて、それは文字通り朝令暮改でなければならない。日本国内の有名外資系企業の間では、そういう情報交換も密にされているとのこと。

○その点で純正・日本企業はどうだったかというと、この20年くらいホワイトカラーの人事制度は基本的に変わっていない。いや、もちろんセクハラだのパワハラだのといったルールは新しく加わった。ブラック企業と呼ばれないように、残業を青天井にしちゃいけない、などの禁忌もできた。総合職に占める女子の比率も上がっている。が、新卒一括採用から定年に至る人事制度の根幹は、昭和の頃と同じである。

○最近になって言われ始めたのは、「定年制を止めるべきではないか」である。あんなものは取り払ってしまった方が、人生100年時代には適しているのではないかと。それに日本政府のホンネとしては、企業定年から年金支給開始年齢までのギャップがあるものだから、なるべく長く働いてもらう方がありがたいという都合もある。まして今の日本は人手不足なのだし。

○しかるにそれをやるのだったら、同時に会社都合で社員を解雇できるような制度を導入すべきだろう。なんとなれば定年制が真に意味するものは、「会社にとってどんなに困った社員でも、その年齢になれば遠慮なくおさらば出来る」というルールであるからだ。変な期待を持たれちゃ困るから、年齢で平等に切ってしまう。個別に見たらお気の毒なケースであっても、悪法も法なり、というわけである

(余談ながら、日本社会ってこういうデジュリ・スタンダードが得意ですよね。景品交換所があるからパチンコ屋はギャンブルではない、みたいな例が一杯あります)。

○わが総合商社業界も、「人こそ資産」が決まり文句です。今のところ、社員の高いモチベーションは維持できているように思われます。それだって10年後にどうなっているかと言えば、まったく自信はありません。少なくとも人事制度という面では、ワシが入社した頃と基本、同じなんだもの。「今の若い人たち」にどれだけ通用するのか、サッパリ分かりません。

○もっと言いますと、「企業業績がいいのに賃金が上がらない」という最近よく聴く不満も、人事制度が旧態依然のままだからではないのでしょうか。今どき全社員にベースアップがあって、皆が等しく給料が上がるなんて、ちょっと変だと思いませんか? 少なくともホワイトカラーの処遇は、上昇志向から安定志向まで企業はいくつかの選択肢を用意すべきでしょう。今のままでは、「賃金を上げたい人でも上げられない」という悪平等になっているのではないかと。

○などと、また嫌われるようなことを書いてしまった。今に始まったことではないんですけどね。


<11月21日>(火)

○本日は「自民党ナイトタイムエコノミー議連」に出席。総選挙後では初の会合となる。この動き、先日、日経ビジネス誌が「寝るな!日本人」なる特集を組んでくれたりしたので、ちょっとずつ世間の注目を集めつつあるらしい。

○世界の大都市間では、「夜のマーケットをいかに広げるか」という国際競争が繰り広げられている。東京から見ると、ベンチマークとなるのはロンドン。2012年のロンドン五輪を機に、「地下鉄の24時間運行」などの施策を始め、夜の街に多様なコンテンツを提供しようとしている。今日伺った話では、豪州のメルボルンも「深夜都市」を目指しているのだとか。その点、東京は「晩飯食った後にすることがない」という不満が外国人観光客にあるという。

○本日伺った話の中では、株式会社バグースさんのプレゼンが面白かった。この会社、プールバーやダーツバーなどの業態で「大人の社交場」を展開している。この業界も、10年前とは様変わりであって、外国人が増えていることもさることながら、昔は午前4時までがピークタイムであったが、今では終電に間に合うように皆さん午後11時半には引き上げるのが普通になっているとのこと。それでも店舗自体は増えているんだそうだけれども。

○同社によれば、ナイトアミューズメント業界の歴史は以下のように移り変わってきたのだという。

●70年代:インベーダーゲームが登場して一世を風靡する。当時の飲食店は競ってゲーム機を導入したのだが、「1台置くにも風営法上の許可が必要だった」。

●80年代:ビリヤードブームが起きたりしたが、ここで登場したのが「10%ルール」。深夜酒類提供飲食店を念頭に、「遊興器具の設置許可面積は、客席面積の10%以下とする」というもの。ダーツもこの対象となる。

●90年代:テレビゲームの全盛期。ゲーセンがそこらじゅうにできましたわなあ。

●00年代:国産デジタルダーツが登場。シミュレーションゴルフも始まる。ところがデジタルコンテンツ設置店も、10%ルールの適用対象になってしまう。

●10年代:AR、VR、e-スポーツが登場する。ナイトマーケットにおける総合アミューズメント化が進む。ところが今でも10%ルールの範囲内である。

○要するに「早く規制緩和してくれ〜」という訴えなのだが、インベーダーゲームの時代にできた規制が、今のデジタルダーツを縛っているというのはなかなかに理不尽なことではないだろうか。こういう規制を緩和する際に、構造改革特区を持ち出したり、官邸に対する「忖度」が必要、という世の中ではないようにしたいものである。

○ということでわが「遊民経済学」としては、「夜の街の国際競争」を応援したいと思うものであります。


<11月23日>(木)

○今日は銀座で同期会。数年ぶりに声を懸けたところ、やけに大勢集まる。なにしろ入社は33年前の昭和時代だから、男子は5人物故者がいるのだが、女子は全員元気なようである。

○つい先日も人事制度について書いたばかりだが、最近は「日本企業の新卒一括採用」がよろしくない、という議論がある。なるほど、こんなことやってるのは日本だけかもしれない。それにこれをやっていると、外国人採用が難しくなる、という問題も生じる。なにしろ桜の季節に大学を卒業するのは日本人だけですから。

○一方で、この「同期のつながり」というのはまことにありがたいもので、個人的にはどれだけ世話になったかわからない。とくに商社のような商品別縦割り型組織では、これがないよ情報が横につながらない、という事情がある。通年採用が当たり前になると、こういう横のつながりも消えて行くわけであって、「何かを得れば何かを失う」ということになるのであろう。この辺は結果を恐れずに、「朝令暮改」をやってみるしかない。

○もっともそれはこれから先の日本企業のことであって、「ワシらにはもう関係がない」世界である。だってほとんど「ご卒業」に近い身分ですから。たまたま古い制度に馴染んで育ってきた者としては、ああ、結構な時代を過ごしてきたものだ、としみじみ思うばかりである。

○それとはほとんど関係がないんですけど、明日はこの番組に登場します。この時間帯は朝令暮改なんですよねえ。テレ東さんには頑張ってもらわないと。











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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)