●かんべえの不規則発言



2020年11月 






<11月16日>(月)

〇この週末にRCEPが合意に至りました。経済界で長らく通商交渉を見てきた者としては、大喜びするほどのことはありませんが、中喜びくらいはしてもいい。その辺の感覚は、なかなか今の報道では伝わらないような気がしておりますので、以下、私見を少々。

〇RCEPは日中韓+ASEAN10+豪NZからなる自由貿易圏ですから、この15か国は世界の人口とGDPの約3割を占めます。質はともかく、量から行ったらこれより大きなFTAはありません。問題は最終局面でインドが抜けちゃったことですが、これはまあ仕方がないことでしょう。「インドが抜けては意味がない」みたいなことを言う人もおりますが、安全保障面はさておいて、経済や貿易面から見たらインドは悪いけどさほど大きな存在ではありません。なおかつ面倒な交渉相手であり、内政面がまことにややこしい。深追いすべき相手ではないと思います。

〇RCEPの構想は2005年頃にさかのぼります。当時、中韓が提唱する「ASEAN+3」と、日本が提唱する「ASEAN+6」の2つの貿易自由化構想がありました。「+3」だと中国の声が強くなりすぎるので、当時の日本は「印+豪+NZ」を入れて民主主義色を強めることを考えたわけです。そしたらASEAN諸国は、そっちの方が良いと考えたようでした。余談ながら当時の経済産業大臣は二階俊博さんで、今から考えるといい仕事をしています。東アジアサミットに対して提言を行うERIAという国際シンクタンクが創設されたのもこの時です。

〇めずらしいことに、そこで中国が折れてきた。それで名前を変えてRCEP(地域的包括的経済連携協定)として、「ASEAN+6」で交渉が始まったわけです。一時は「(アメリカ入りの)TPPか、(アメリカ抜きの)RCEPか」どっちが早いか、などと言われたものです。はっきり言っちゃうと「質のTPP、量のRCEP」なんで、前者はルール作りで世界のスタンダードを創ろう、みたいな高度な理想があり、後者はとにかくでっかいFTAを作って実利を得よう、みたいに現実を追っていた。そして交渉妥結に至る過程で、前者はアメリカが抜けてしまい、後者はインドが抜けてしまった。ゴールインしてみたら「ASEAN+5」だった、ということになりました。

〇今から思い起してもまことに腹立たしいのですが、TPPも当時はずいぶん反対を受けたものです。「アメリカの陰謀だ!」などと言っていた人たち、「TPPで国民皆保険制が崩壊する!」と言っていた人たち、小生の職場まで抗議の電話をかけてきた人たち、まだ息をしているのでしょうか。トランプさんがTPPを抜けてくれたおかげで、陰謀論者はすっかり見かけなくなりました。まことにありがたいことです。

〇もっともそういう人たちはアメリカにも大勢いて、民主党左派がヒラリーさんの足を引っ張ったり、QAnonがトランプさんの当選に貢献したりしたわけです。今から考えればまことに愚かしいことです。通商協定というものは、陰謀論者にとっては格好の標的なんですな。たぶんRCEPも同様の認識で、「中国の陰謀だ!」と言う人が出てくるのでしょう。大丈夫、それほどのことはありません。せいぜい関税がちょっとだけ減る、というくらいです。日本なんて農産物5品目をまたまた聖域にしてしまいました。こんな甘ちゃんが通じるくらいですから、どの国もそこまで本気じゃないのです。

〇普通はこの手の通商交渉になると、豪州やNZが大真面目になって自由化を求めてくるのですが、彼らは既に中国とも韓国ともASEANともFTAを結んでいます。そして日本とはTPPがあります。だったらこの交渉で本気になるはずがないですよね。そしてASEANは中国とも韓国とも日本ともFTAを結んでいます。だったらRCEPという大きな枠組みにこだわるのは、日・中・韓の3か国だけということになります。

〇おそらくRCEPのいちばん大きな意味合いは、事実上の日中韓FTAができました、ということになります。日韓FTAなんて1990年代からやっていて、一向に進まなかった。主に韓国側の理由でですが。そして日中FTAも、今や貿易のほとんどの品目が工業製品になっていて、限りなく自由貿易に近くなっているのに、お互いに内政上の理由で二国間FTAには及び腰になる。ちなみに中韓FTAはとっくの昔にできています。

〇日本にとって第1位の貿易相手国は中国、そして第3位が韓国なんです。これで日本は主要な貿易相手国のほとんどとFTAが結ばれたことになります。


日・シンガポールEPA(2002年11月発効、2007年9月改正議定書発効)
日・メキシコEPA(2005年4月発効、2007年4月追加議定書発効、2012年4月改正議定書発効)
日・マレーシアEPA(2006年7月発効)
日・チリEPA(2007年9月発効)
日・タイEPA(2007年11月発効)
日・インドネシアEPA(2008年7月発効)
日・ブルネイEPA(2008年7月発効)
日ASEAN・EPA(2008年12月から順次発効)
日・フィリピンEPA(2008年12月発効)
日・スイスEPA(2009年9月発効)
日・ベトナムEPA(2009年10月発効)
日・インドEPA(2011年8月発効)
日・ペルーEPA(2012年3月発効)
日豪EPA(2015年1月発効)
日・モンゴルEPA(2016年6月発効)
TPP11(2018年12月発効)
日EU EPA(2019年2月発効)
日米貿易協定(2020年1月発効)
日英EPA(2020年10月署名)
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定(2020年11月署名)


〇この後の大きな目標と言ったら、もうメルコスールくらいしか残っていないのです。それくらい、日本のFTA政策というジグソーパズルにおいてRCEPは大きなパーツでした。はるけくも来たりしものかな。日本がFTA後進国とはもう誰にも言われないし、言わせない。この20年間は本当に大きな前進でした。

〇実をいうと、この後、とっても大きなハードルがひとつだけあるのです。それはアメリカが「TPPに戻りたい」と言い出した時なんです。そのときの日本外交はかな〜り困るでしょう。なにしろTPP11交渉の時に、アメリカ向けに用意していた自由化枠をほとんど使っちゃったから。しかも今度のアメリカは民主党政権です。トランプさんはカリフォルニア州のコメ農家のことなんてアッサリ無視してくれましたけど、次期バイデン政権はコメ輸出を要求してくるでしょう。これは面倒なことになります。

〇とはいえ、バイデンさんは「TPP復帰」を言い出すほどの政治力はたぶんない。議会上院では少数派となって、弱い政権になるでしょうからね。対中関係を考えるとそれでは困るのですが、仕方がありません。アメリカは民主主義国家で、しかも陰謀論者が大勢いるのですから。ということで、「めでたさも中ぐらいなりRCEP」というのが結論になります。


<11月18日>(水)

〇旧日商岩井同期入社で、富山県で再就職して活躍していたY君が、諸般の事情でこのたび赤坂の会社に転職したという。今日は出張で上京すると言うから、「夕方なら暇だけど」と伝えると、「おー行く、いく」と言う。午後4時になったら本当に飯野ビルに現れた。おいおい、大丈夫なのか、新しい会社は。

〇カフェテリアに行ったら、これまた同期のM1君とT君がお茶しているではないか。「おー、久しぶり、偶然」ということになって4人でくつろいでいたら、今度は本部長になっているM2君が通りかかる。ついつい還暦前後のオヤジが5人で座り込んで雑談に花が咲く。まるで昭和のような光景で、若いものたちに対してまったく示しがつかない。いや、一応マスクはしておりますよ、全員が。

〇時節柄、「この年齢での転職事情」について話が盛り上がる。貴重なノウハウをいくつか拝聴する。


(1)元商社マンで、海外駐在経験がそこそこあると、それなりの市場価値はある。

――「今すぐインドへ行ってくれ」みたいな仕事はいっぱいあるらしい。なり手が居ないから、還暦世代でも十分に通用する。もっともコロナ下のインドへ行きたいかと言われると、そこはやはり辛いものがある。

(2)リクナビやらビズリーチやらコトラやらといった転職案内サービスは、思いがけないジョブを紹介してくれることもある。

――「昔、××をやったことがある」というよりも、直近5年以内の経験の方が評価されるらしい。特に新しいビジネス(例:再生可能エネルギー開発)は中途採用への敷居が低く、条件もそこそこ悪くない。

(3)この年になると、履歴書の年齢だけで切られてしまう(例:「社長より年上なのはちょっと・・・」)こともあるが、「見た目年齢」が若ければチャンスはある。それから性格の明るさも重要。とにかく暗いのはダメ。

――この点でY君やM1君は十分に有資格者である。というか、商社マンというのは一種のオプティミスト集団なので、すぐに「なんとかなるさ〜」と開き直ってしまう手合いが多い(ワシもそうだ)。


〇もっともワシの場合は、かなり以前に商社マンコースを外れてしまっているので、今からリクナビに登録してもあんまり意味はなさそうだ。とりあえず今の稼業を、なるべく長く続けられるようにするしかない。さて、ワシは2024年の米大統領選挙においても、ちゃんと仕事が来るのであろうか。

〇もちろんそんなことは、今から心配してもしょうがない。明日は明日の風が吹くと、ふてぶてしく考えるべきである。つくづく自分が「昭和の商社マン教育」を受けて、鈍感力を強化してきたことに感謝するのみである。


<11月19日>(木)

〇今日は成人病検診へ。クリニックは例年よりも空いている。時節柄、こういう場所には近寄りたくない、ということなのだろうか。とはいえ、コロナに懸からないためにも、自分の体調を知っておくことが大事である。なにせワシは還暦ですから。

〇体脂肪率は23%なので、いちおうセーフである。ただし視力は低下している。何しろ最近は、仕事や読書に老眼鏡が欠かせなくなっているので。ここ2年程、薬を飲むようになったので、血圧は低下している。もっとも長年にわたる高血圧の結果、血管年齢がどうなっているかは不明である。

〇それでもまことに幸いなことに、夜は寝つきがいいし、メシは3度3度おいしく食べているし、酒もほぼ毎晩いただいておる。腰痛も峠を越えつつある。やはりトランプさんが原因だったのではないだろうか。何しろ最近はトランプさんのツィートを読まなくても良くなった。精神衛生上、まことに結構なことである。

〇思えば3年前に初めて腰痛になったとき、「医者などは所詮、何もわかっておらぬ。自分の健康は自分で守るしかない」と痛切に感じたものである。やっぱり大事なのは自助なのである。共助や公助を求めるようになる頃には、もはや肉体は抜き差しならないことになっているはず。そんなのは御免である。好き勝手ができなくて何の人生ぞ。健康は命より大切と知りたまへ。

〇世の中、警戒すべきはコロナだけではないのである。先日、日本ドラッグストア協会(JACDS)さんの年次総会の講師を務めたのだが、「お陰様でマスクは売れているが、風邪薬がまるで売れないものだから売り上げは行ってこい」だと伺った。そういえばワシも例年なら年間10本以上飲む葛根湯を、今年は1本も飲んでいない。


<11月20日>(金)

〇本日は経団連昼食会の講師を務める。昼食会と言っても、ランチが出るわけではない。なにしろZoom会議なので。たぶん見ている人たちは、お弁当なりサンドイッチなりを食べながら、ご自分のデスクのPCで見ていることであろう。そして経団連であるから、見ている人は会員企業の社長・会長さんであることもあるし、米国担当の課長代理さんだったりもする。あいにくこっちからは見えません。でも、ワシが個人的に存じ上げている人が少なからず参加していたのであった。

〇30分前に経団連に到着すると、事務方がZoom放送のセットアップに苦労している。「PCがフリーズした!」などと意外に初歩的なことを言って慌てている。とはいえ、驚いてはいけない。ワシは以前、某外資系証券会社のZoom会議の講師を務めて、ものの見事にトラブって放送ができなかったという場に居合わせたことがある。そのときはバックアップの電話会議で間に合わせていた。香港だかロンドンだかの技術担当者が怒られていたが、そうは言っても仕方ないよね。自分じゃどうにもできないんだから。

〇どうなることかと思っていたら、そこはさすがの経団連である。本番開始2分前にものの見事に回線がつながって、事なきを得た。パチパチパチ。かくして米国大統領選挙の結果と今後の日米関係について、不肖かんべえがお話しするのである。

〇さて、米国大統領選挙の開票状況についてだが、手作業によるジョージア州の再集計作業がようやく終了した。バイデン氏のリードはわずか1万2000票程度であった由。まことに遺恨が残るような結果で、こうなると2024年は少なくともジョージア州では共和党票が増えるのであろう。その前に同州では、年明け1月5日に上院選挙の決選投票があるのですけどね。

〇2016年選挙の際には、民主党支持者は「ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州でトランプはクリントン票をわずかに7万7000票上回っただけだった。それで46人の選挙人が奪われて、ヒラリーは負けた」てなことを嘆いたものである。それを言うと、「ヒラリーはせめて一回でもウィスコンシン州に入っておけば良かったのにねえ」などという反応も招くのだが、今回も同様なことがあったようだ。

このデータによると、2020年選挙は下記の3州が僅差であった。アリゾナ州(AZ)、ジョージア州(GA)、そしてウィスコンシン州(WI)である。


〇3州を併せると4万4000票弱で、選挙人の数は37人である。トランプさんの票がこれら3州であと5万票くらい増えていた場合、この37人分がそっくり入れ替わるので、ものの見事にバイデン対トランプは269対269で同点になっていた。この場合は否応なく憲法修正12条が適用されるので、下院決選投票になだれ込むことになる。そうでなくとも下院は共和党が議席数を増やしていることもあり、各州1票ずつの投票はトランプ再選という結論に至った公算が大である。いやはや、2020年選挙も2016年選挙に負けず劣らずの接戦であったということになる。

〇かくして2大政党の遺恨はどんどん積み重なっていく。これほど僅差でなければ、少しはあきらめもつくかもしれないのだが。


<11月21日>(土)

〇世の中はコロナ第3波でたいへんなようである。幸いなことにこの3連休、仕事はいっぱいあるので、外出せずにせっせと片付けなければならない。今日などはZoomミーティングを2時間もやっていた。お仲間がいるのはありがたいことである。

〇さらにありがたいことに、世の中には競馬がある。明日はマイルチャンピオンシップ。当方は過去2週連続、大外18番の馬を単勝で買って当てている(アルゼンチン共和国杯=オーソリティー、エリザベス女王杯=ラッキーライラック)ので、明日はQサリオスの単勝で勝負する予定なり。さて、馬券王先生は明朝、どんな予想を送ってくれるのか。


<11月22日>(日)

〇我慢の3連休の中日である。と言っても、せいぜい仕事に精を出すくらいしかない。

〇午前中に仕事をしていたら、ものの見事にNHK将棋トーナメントを見逃してしまった。何と今日は藤井総太2冠対木村一基9段の対戦。木村9段としては、王位戦では4連勝でタイトルを取られ、つい先日も王将戦リーグで負けたばかりの相手である。それが何となんとナント!木村9段が勝っているのである。後で棋譜を見たら、圧勝ともいうべき内容であった(逆に言うと、一手違いの勝負では藤井二冠にはなかなか勝てない)。とんでもない好対局を見逃してしまった。悔やまれる。

〇午後は競馬。マイルチャンピオンシップは「グランアレグリアからインディチャンプへの馬単」と言っていたオバゼキ先生の言う通りとなる。サリオスは来なかった。悔しい。かくなる上は、何かもっともらしいことを書こうかと思うが、そんな気力もわいてこない。

〇せめてこんなものでもご覧いただきたい。米大統領選挙後の素直な感想を述べた内容がユーチューブに載っております。

【緊急企画セミナー】大統領選挙後の米国投資戦略〜吉崎達彦(かんべえ)氏×大和アセットマネジメント×マネックス証券〜 


<11月23日>(月)

〇さすがに仕事は峠を越してきたが、今度は1年分の領収書の整理、などといった雑事がたまっておる。ああ、めんどくさい。と言っても、代わりにやってくれる人がいるわけではないし、そもそも自分にしかわからない仕事であるから他人には頼めない。しくしく、自分でやるしかない。

〇雑事の中でも最大の障害は、かなり前から取り組んでいるモバイル端末の解約である。電話をかけると、「店舗に行ってください」と言われる。店舗に行くと、「これはウチでは扱えません」と言われる。店で教えてくれた場所に電話をすると、「ここではダメなので、この電話番号にかけください」と言われる。その電話番号にかけたらなんと通じない。馬鹿野郎。

〇散々たらいまわしになった挙句、なぜか本日かけた電話いっぱつで解決した。途中解約料が2万円かかる、などと言われるが、もう構わぬ。とにかくこれ以上、この会社とは関わりたくない。そもそもこのモバイル端末、すぐに電池が切れるし、電波も弱いし、ろくなものではなかった。菅さんに言いつけて鉄槌をくらわしてもらいたい気もするが、もうこれ以上関わり合いになるのも御免だ。

〇ちなみにその会社が日本シリーズで勝つのは構わない。たぶん4タテだろうなあ。一方的なんだもん。


<11月24日>(火)

〇大統領選挙の年は、感謝祭の直前に最初の閣僚人事が公表される。これはお約束です。議会はちょうど感謝祭休みに入っていて、承認への反応を窺うにも都合がいい。

〇とりあえず今日のところはこんな感じ。いやー、手堅いですねえ。地味ですねえ。大物と言えばジョン・ケリーくらい。議会が反対しそうな人が見当たらない。そもそもこんなところで物議をかもすようでは、議会承認どころか1月5日のジョージア州上院決選投票でとばっちりを受けてしまう。民主党左派としては、当面は隠忍自重の日々が続く。


国務長官:アントニー・ブリンケン(58)元国務副長官→バイデン副大統領の安保担当補佐官を務める

国土安全保障長官:アレサンドロ・マヨルカス(60)元国土安全保障省副長官→ヒスパニック系としては初のポスト

国連大使:リンダ・トーマスグリーンフィールド(68)元国務次官補→ベテランの職業外交官。黒人女性。

気候変動問題担当大統領特使:ジョン・ケリー(77)元国務長官、元民主党大統領候補→バイデン=サンダース・ユニティ・タスクフォースで「気候変動編」の起草メンバー

国家情報長官:アブリル・ヘインズ(51)元CIA副長官→女性では初のポスト

国家安全保障担当補佐官:ジェイク・サリバン(43)→オバマ政権時代の外交スタッフ


〇もっとも左派がホントに隠忍自重しているはずがなくて、国防長官候補と言われるミシェル・フローノイを呼び出して、「軍事費を減らすんだぞ、わかってんだろうな!」とカツアゲしているという噂も聞く。フローノイさん、女性初の国防長官となれますかどうか。ヒラリー・クリントン大統領が誕生していれば、4年前に就任確実だったのですが。

〇財務長官はあっと驚くジャネット・イエレン前FRB議長とのこと。まあ、金融政策が機能しなくなった昨今、財政の方が大事だというのはよくわかる。もっとも学者一家の方ゆえに、議会対策だとかG20をリードするとか、ガラの悪い連中を相手にどうするのか。ちょっと心配な感じはいたしまする。

〇思い起こせば4年前は、トランプ政権がよくわからぬままに船出をしていた。やはり感謝祭の直前に人事発表があり、最初に決まったのはラインス・プリーバス首席補佐官、スティーブ・バノン首席戦略官などとともに、ジェフ・セッションズ司法長官であった。セッションズは今や「どこでどうしているのよ」状態であるが、何しろ共和党上院議員で最初にトランプを支持した人だったので、「どのポストでもご自由に選んでください」とやったところ、ご当人が司法長官を選んだらしい。この年は国務長官が最後の方になって決まる(レックス・ティラーソン)など、波乱含みの人事でした。

〇その点でお見事だったのが、12年前のオバマ政権でしたね。なにしろリーマンショックの直後で、国際金融危機のさなかの政権移行であった。ゆえに最初の発表は財務長官で、これも感謝祭の直前で、選ばれたのはティム・ガイトナーであった。オバマ人事は秘密が漏れず、サプライズもあり(ヒラリー・クリントン国務長官)、トラブルも少なかった。バイデン次期大統領は、あのときのことをお手本に考えているはずです。あのときの彼は副大統領候補だったからね。

〇そしてなかなか負けを認めないトランプさんですが、これも感謝祭の前後で変化を見せると思います。どうみたって詰んでいるんだもの。今のトランプさんは負けたプロレスラーが「俺はホントは負けてない!」と言っているようなところがあって、「潔くない!」「民主主義の否定だ!」などとマジレスしちゃいけません。きっと世論の風向きを見ながら、タイミングを計っているはずですよ。


<11月25日>(水)

「見えないものと戦った1年は、見えないものに支えられた1年だった」


〇ちくしょう、涙が出てしまうじゃないか。「カロリーメイト」のCM、ユーチューブで120秒バージョンを見たら、ホントに泣けた。

〇今年は本当に大変な年だった。学生さんは特にそうだろう。先生もさらにそうだった。何も悪いことしたわけじゃないのに、楽しみだったことが全部、手の届かないところへ行ってしまった。全世界の教育現場は、不条理の塊みたいになってしまった。

〇CMの後半、森山直太朗の歌声が高まるところで、急に思い出した。俺も悔しかったんだよなあ。家の近所の大堀川の桜を見上げながら、「あ〜、あれもこれも中止になってしまって・・・」とボヤいたものである。あんな桜はもう二度と見たくない。

〇で、このCM。受験生を演じているのは加藤清史郎さん。10年前にトヨタ自動車の「こども店長」で一世を風靡した子役が、英国留学を経て今は大学1年生なんだそうだ。2009年のNHK『天地人』では、幼年期の直江兼続を演じて、「わしはこんなところへ来とうはなかった!」と叫んで、今も残る新潟県の雲洞庵(上杉景勝とともにここで学んだ)を観光客で一杯にしたそうである。

〇いつかコロナが収束した後に、このCMを見返したらまたきっと泣けると思う。やっぱり悔しかったんだよ。認めたくなかったけれども。


<11月27日>(金)

〇あんまり感染者数が増えるから、来週予定していた忘年会をキャンセルする。お店に電話をしてその旨を告げたら、けっして営業的ではない明るい声で、「それではまた、当店をご利用ください」という返事が戻った。ああ、申し訳ない。きっと、似たような電話をたくさん受け取っているだろうに、悪いのはあなたではないというのに。

〇別の幹事さん曰く、延期するとしたら次のチャンスは2月の後半ですね、と。なぜそうなるかというと、感染者数が減少してから日程を決めると第4波に当たってしまう。今の第3波が沈静化するのはたぶんその頃なので、今から予定を抑えておいた方がいいのではないか。なるほど。

〇曰く、ある学術論文によれば、コロナには季節性はないらしい。医療体制がちゃんとしていれば、第7波まで繰り返して2022年3月に収束するとのこと。その場合は「収束」ではなくて、「終息」と呼んでもいいのかもしれない。、要はコロナ感染拡大からちょうど2年、足掛けでは3年続いて終わることになる。

〇われわれオヤジ世代としては、「なーんだ、3年待てばいいのかあ。だったらそれまで、おとなしくしていよう」ということで済む。しかし若い衆にとっては、3年はとてつもなく長い日々である。お気の毒としか言いようがない。残念なことだが、我慢の代わりはしてあげられない。

〇こんな不条理をどうやって耐えればいいのか。とりあえず当該のお店には、そのうち無理やりランチに出かけてみたい。








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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)