●かんべえの不規則発言



2012年12月







<12月1日>(土)

○今日は日帰りで御殿場へ。お台場ならともかく、御殿場は遠いのである。なんと箱根の向こう側にあるではないか。駅伝の、そのまた向こうである。さて、どうやって行けばいいものか。

○あれこれ迷った挙句、ロマンスカー「あさぎり」にて御殿場に向かう。小田急線はのどかである。到着駅から見る富士山は、新幹線から見えるそれとは違ってmassiveでmagnificientであった。既に麓のあたりまで白くなっている。まことに眼福なり。

○ちょうどお昼に会社の研修所について、午後は当社若手社員の研究発表会に付き合う。さすがに20代は元気がよろしい。パワポもきれいだし、プレゼンも上手である。報告内容も、案外レベルが高い。少しだけほめて、少しだけイジワルを言う。なかなか面白い。これは来てよかった。

○最後はバスに乗って帰って渋谷で散会。考えてみれば、20代の連中と話す機会なんて最近はあんまりないものねえ。少し若さを注入してもらった気がします。


<12月2日>(日)

○今日の上海馬券王先生が大変に怒っておられますが、競馬の収益に課税するという大阪国税局の判断、私もまた怒りを共有するものであります。すでに25%の寺銭を取っておきながら、さらに所得税法の対象にしようというのは、いったいいかなる強欲でありましょうや。

○宝くじのことを別名「痛みを伴わない税金」と申します。競馬・競輪・競艇などの公営ギャンブルも、基本は同様でありましょう。酒やたばこに重税が課せされるように、「この国では賭博は取り締まるが、おかみが胴元になる分にはよろしい」というご都合主義がある。つまり「取りやすいところから取る」というわけですな。ついでにもっていうと、「射幸心をあおると、大負けして貧乏になる人がかわいそうだから、おかみが介入する必要がある」という偽善も入っているわけです。

○博打というのは人類の歴史にはつきものであって、これをどう取り締まるかは権力者にとって難しい課題であった。特にわが国においては、アングロサクソンのように「すべては自己責任」と言えるほど個が強くはなく、イスラム教徒のように「すべて禁止」と言えるほど禁忌の強い社会ではない。それゆえに歴代の権力者たちは、取り締まったり緩めたりを繰り返してきた。その要諦は、「あまり厳しく取り締まると弊害の方が大きくなるので、少しくらいは大目に見ておく」というもので、これは人類共通の知恵みたいなものだと思う。

○法律では確かに、競馬の稼ぎは所得税の対象となっている。この点は宝くじとは違う。しかるにインターネット投票ではなく、競馬場で馬券を買い続ける限りにおいて、所得の補足は困難であって、まともに税金をとれるとは国税局とて考えてはいないだろう。問題はこれがインターネット投票の場合、動かぬ証拠があがってしまうわけで、今回のケースの不幸はここにありました。つくづく面倒ではあっても、馬券は競馬場かWINSで買うにしくはなし。ちなみに私の場合、「博打は現金」一本主義であります。

○考えてみれば、博打というものはネットで投票したり、必勝ソフトを作ったりするようなものではないのではないか。そんなことをするから、まじめに税金を取ろうなどという権力側の暴走を招いてしまうのであろう。あくまでもグレーゾーンにあってこその博打。ということで、今週はジャパンカップダートを休んで映画を見に行った私でありました。


<12月4日>(火)

○出張で佐賀市に来ております。2003年7月以来です。確かあの頃は「はなわ」の『佐賀県』という歌が流行っておりましたな。ずいぶん前にお引き受けした佐賀新聞さんの講演会が明日なんですが、まさか選挙期間中になっているとは。

○佐賀は民主党と自民党ががっぷり四つになっている選挙区で、しかも「ゼロ増5減」の対象県である。ということは、今回勝っても次はどうなるかわからないわけで、さぞかし選挙戦は熱を帯びることでしょう。とりあえずの注目は1区の原口さんでしょうな。2区も激戦だとか。3区は保利耕輔氏が強そう。

○昔であれば、こういうとき外をさ迷ってあれこれ取材したものなんですが、今日は夜に到着してそのままホテルで仕事。やっと「新潮45」の分を仕上げたが、霞山会「東亜」が残っている。なんとか心安らかにならんものですかねえ。


<12月5日>(水)

○佐賀市は古い城下町で、お濠や太い樟が残っていて、あまり高い建物がない。今日の地方都市においては、まことに贅沢な景観といえましょう。そして城跡の中に、県庁や美術館やNHK放送局や佐賀西高が入っている。これまた風情のある街の造りといえましょう。

○佐賀城は佐賀の乱で焼失したのだそうだ。ちゃんと当時の弾痕が残っている。すなわち、ちゃんと実戦経験のある城ということになる。熊本城のように豪壮ではないが、質実剛健でいかにも鍋島藩にふさわしい風情である。今は本丸が再建されて資料館ができている。せっかくだから、天守閣も作ればいいのに、と思うが、これは予算とご相談が必要でありましょう。

「佐賀の七賢人」というものの存在を初めて知りました。全員が幕末から明治にかけての人物で、以下のように並べてみるとなるほど納得である。要は鍋島閑叟が英才教育を行ったから、肥前藩は若い俊秀が多かったのでありましょう。こんな風に、教育を誇ることができる風土というのはうらやましいですな。


●鍋島直正(なべしまなおまさ) 佐賀藩十代藩主
●大隈重信(おおくましげのぶ) 内閣総理大臣、早稲田大学創立者
●副島種臣(そえじまたねおみ) 外交官。文化人
●江藤新平(えとうしんぺい) 初代司法卿
●島義勇(しまよしたけ) 北海道開拓に貢献。札幌市を開拓。
●大木喬任(おおきたかとう) 初代文部卿
●佐野常民(さのつねたみ) 日本赤十字社を創設


○資料館でボランティアの方に城内を案内いただきました。このご老人が半端じゃない知識で話好き。よく聞き取れないところもあった(涙)のですが、大変面白かったです。葉隠の精神とは、みずから死に損ねた人が残した言葉であったというのが、なるほど深いと感じました。


<12月6日>(木)

○昨日とはうって変わって、今日は青森県むつ市に来ております。さすがは下北半島で、三沢空港に着いた午前中はいい天気でしたが、午後からは急速に荒れ模様となって雪が舞い始め、夜は尋常ならざる強風です。明日はどうなっていることやら。とはいえ、これはまだ冬も序の口の段階で、これから先がいよいよ本番。厳しい季節のほんの「さわり」の部分を味わっているところです。

○今日はまず六ヶ所村を訪れて、日本原燃株式会社を訪問。PRセンター、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、再処理工場、MOX燃料工場などを見学。何事でもそうですけど、現場を訪れてみて初めて分かることがたくさんあって、説明を聞いていて「ええっ、そうなんですか」と何度も驚きました。

○例えば「高レベル廃棄物」と「低レベル廃棄物」の差はどこにあるのか。言葉だけから受ける印象は、程度の差なんでしょ、ということになりますが、実態は天と地ほども違う。低レベル廃棄物はほとんど危険性がないので、ドラム缶に詰めて埋設する。その真上で線量計を使っても、ほとんど影響はない。受け入れる地元側も、心理的抵抗感は少ないようです。ところが「高レベル廃棄物」となると、近づいただけで命にかかわる。貯蔵管理には細心の注意が必要で、とにかく時間をかけて冷やすという作業が欠かせない。再処理工場に持ち込まれるのは、十分に時間がたってからということであるらしい。

○「再処理」という作業がどんなふうに行われるかも驚きでありまして、BWR、PWRの原子炉で4〜5年使った使用済み核燃料を、まずは物理的にせん断するところから作業が始まる。それを溶かして、分離して、精製するのだけれども、そこで得られるプルトニウムはわざわざウランと混ぜて、核兵器として使えないようにしている。このプロセスはIAEAの査察官が常駐して、しっかりチェックしている。原子力はもともと兵器として誕生し、発電はあくまでもその平和利用という位置づけである。従って、核不拡散の原則がすべてに優先する。ウラン濃縮の技術にしても、わざわざ特許も取らずに関係者一同でノウハウを守ろうというブラックボックスの世界なんだそうです。まあ、そうは言いつつも、北朝鮮にパキスタンにイランとなど、核開発を始めてしまう国は後を絶たないわけですが。

○というわけで、「日本は再処理はやっていいけど、プルトニウムは取り出しちゃダメ」というのがIAEAのお達しです。ときどき「日本も核兵器を持て」という勇ましい意見がありますけど、実現に向けたハードルはかなり高いことになります。さらに言えば、今この瞬間に「原発ゼロ」を宣言してしまうと、「お前の持っているプルトニウムはなんに使うんだ」と言って怒られる。以前は「MOX燃料にして使いますから」と言ってきたけれども、それだっていつ再稼働できるかわからない。できれば燃料として使ってしまい、結果としてゴミの量も減らしたいというのが電力会社のホンネであるわけなのですが。

○青森にあるのは中間貯蔵施設で、最終処分地は決まっていない。NUMOが探しているけど見つからない。これもよく知られた事実でありますが、使用済み核燃料はとにかく冷やすことが必要で、それは中間貯蔵施設で「空冷式」で行われる。青森県としては、「最終処分地はほかで探してくださいね」と言っているけれども、実は最終処分地の方が安全度は高いのかもしれない。青森県としては、それこそ「原子力船むつ」の時代から、長い時間をかけて原子力開発に協力してきたわけで、今から「核燃料サイクルの開発は止めにします」などと言われると、「話が違うじゃないか。だったら核のゴミはほかへ運び出してくれ」ということになる。ここもこの問題の難しいポイントです。

○六ヶ所村の再処理プロセスにおいては、最終プロセスの「ガラス固化」がうまくいっていない。これもよく知られた事実でありますが、もともとフランスの技術を導入した際に、そのままではゴミが多くなり過ぎるので、容量を大きくしたことで試運転が難航しているとのこと。何度か遅延して、2013年10月に完成予定ですけれども、ここまでやりかけたからにはあと1年くらい待ってもいいんじゃないだろうか。途中で投げ出すのはもったいないと思います。それと将来の廃炉作業のためにも、原子力技術者を養成することが必要です。「原発ゼロ」をいうのは簡単だけど、そのためには長い時間がかかるということを忘れてはならないと思います。

○夕刻になってむつ市に移動して、今度は工事中のリサイクル燃料備蓄センターへ。もともと原子力船「むつ」の母港だった関根浜港の近くにあります。ここも来年開業予定ですが、発電所から再処理までの「つなぎ」をする場所となります。が、そのつなぎの期間が50年、その間は空冷式でリサイクル燃料を冷やします、などと聞くと、ほんとうに気が遠くなります。そもそも日本が原子力発電を始めたのは1970年。過去の分だけでも大変な量になるのです。「トイレのないマンション」と言われつつ、同時進行で「トイレ」を作る作業を続けてきた。問題はそのための努力があまり知られてないことで、そうだとすると青森県の犠牲的精神はまことに浮かばれないことになる。

○これらの施設には、「3・11」以降、大勢の政治家が訪ねてきたそうです。たぶん私と同じような説明を聞いたことでしょう。私なりの感想を言えば、(橋下市長がよく言うところの)「原発ゼロへの工程表」なんて本当にできるのか、ということになります。それこそ時間をかけていろんな要素を確認しつつ、漸進主義でやっていくほかはない。再生可能エネルギーはどれだけ使えるのか、日米原子力協定をどうするのか、予定変更をするなら青森県をどうやって説得するのか、そうこうするうちにイギリスに預けてあった放射性廃棄物も戻ってくる(フランスの分は既に完了)。それこそ「9年で卒業」なんて生易しい話ではないことは間違いありません。


<12月7日>(金)

○窓の外ではひっきりなしに風の音がしている。外に出てみると、雪の量はともかく、この烈風が身に突き刺さるように痛い。この風に耐えられなければ、人も樹木も建物もこの地では生きていけない。いやはや、大変なところでありまするぞ。むつ市はまことにディープな青森であります。

○本日はここから本州の最北端、大間町へ。目指すはJ-POWERが建設中の大間原発。改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)、出力138.3万キロワット、わが国初のフルMOX発電所である。「3・11」後に建設を中断していたが、今年10月1日から工事を再開。進捗率は40%ということでしたが、圧力容器もすでに別の場所で完成していて、送電網もほとんどできていたりして、実際にはもう少し進んでいるという印象でありました。

○大間町商工会が町議会に対し、原発立地の調査を請願したのが1976年。その後、漁業補償やら、フルMOX化やら、耐震設計の変更やらいろんな紆余曲折を経て、設置許可が出たのが2008年。そして現時点での運転開始時期は「未定」。時間がかかればかかるほど建設コストは上がるわけで、それらは結果的に電力料金に反映されることになる。建設を止めた場合も、今までにかかった分はサンクコストとして、誰かが払っていかなければならないのだが・・・。

○さて、ここから大間岬まではごくわずか。もちろん本州の最北端である。阿久悠作詞の『津軽海峡冬景色』が、「ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと」と歌い上げてしまったので、津軽半島の方が北にあると勘違いしている人がいるかもしれないが、もちろん下北半島の方が突き出ている。おそらく「大間岬」は、「竜飛岬」という語感に負けてしまったのであろう。しかるに本州最北端の地に立つと、大変な強風で吹き飛ばされてしまいそうである。聞けばここ数日はしけで、函館に向かうフェリーはもちろんのこと、漁船も漁に出られないとのこと。

○漁船といえば、大間のマグロ一本釣りである。お昼にマグロ丼をいただいた店の女将さんによれば、一番腕のいい漁師さんが昨年釣り上げたマグロは60本であった由。1本200万円として、1億円を超える金額である。おそらく第一人者だけが抜きんでていて、2位以下は団子レースになってるんじゃないだろうか。どこの世界も同じですが、第一人者とそれ以外の間にはすごい差があるものですから。ただしこの店によく来ていた漁師さんも、1年前に行方不明になった人がいるとのことで、まさしく板子一枚下は地獄と言えましょう。

○ところで2日間にわたって青森県内を動き回って感じたのですが、冬の季節の選挙は北国にとっては大変な負担であります。あの吹雪の中では、人を集めるのもポスターを張るのも一苦労。冬のさなかの選挙はおそらく1990年2月の衆院選以来ですが、投票率が下がるんじゃないかなあ、という予感がしましたな。


<12月9日>(日)

○選挙前最後のサンデー、でも関心は今一つ盛り上がってない感じ。朝起きて「新報道2001」をつけるも、党首が12人も出てくる様子を見て、呆れて消してしまう。「報道ステーションSUNDAY」を見ると、こちらは浅田真央ちゃんが復活した、みたいなニュースを流している。察するに選挙がらみの報道をすると、テキメンに視聴率が下がるような地合いなんじゃないかと思う。その気持ちは分かる。というか、ワシも同感である。有権者の中で、答えは既に出ているのかもしれない。

○かくてはならじと、新松戸のダイエーまで遠征して、さいとう健氏の演説会に行く。午後2時から小泉進次郎が登場するというので。時間ぎりぎりに到着すると、すでにさいとうさんが演説をしている。デフレ脱却、TPP、教育問題などと、いつもの直球勝負の演説が続く。しかるに寒風の中を立っている大勢のお客さんはダレ気味である。ワシの隣のお爺さんなどは、「早く来ないかねえ。もう30分も待っちゃったよ」などと言っている。皆さん、お目当ては進次郎なのである。

○本日の主役であるはずのさいとうさん、演説のさなかに「まだ来ないからもう少し続けます」とか、「あと2分で到着しますから」などと挟んで笑いを取りつつ、演説を続行。これ、難しいですよ。なにしろ話を終わらせちゃいけないんで。午後2時30分になって、待望の進次郎氏が到着。自民党青年局長として、全国を駆け巡っているだけあって、今日も1日に9件の応援が入っている。選挙カーの上に登ると、既に観衆の気持ちはそっちに向いている。恐るべし、この人気。

○進次郎氏、まずは新松戸ダイエー前の聴衆に語りかけるが、次に近所のケンタッキーフライドチキンのお客さん、それから駐車場で聞いている人たち、あるいは隣のビルの階段で鈴なりになっている学生たちなど、次々に声をかけていく。一気に聞いている人の輪が広がって、なおかつひとつにまとまっていく感がある。なるほど、「つかみ」が上手いのである。

○他党の悪口は出てこない。「さいとうさんと私は、3年前に初当選した4人だけの自民党新人なんです」「この4人だけは与党の時代の自民党を知りません」「しがらみがないことが、自民党を変えていく武器になるんです」などと語りかける。自民党を変えて、日本を良くするという、小泉純一郎氏を彷彿とさせるようなロジック。まさしくマジックのような15分間でありましたな。あれなら寒風の中を待たされても納得というものです。

○局所的に盛り上がった演説会でしたが、こんなのは今回の選挙ではめずらしいんじゃないだろうか。柏駅前でも、とんでもなく寂しい候補者を見かけるものなあ。投票日まで残り1週間。朝日フューチュリティステークスよりも重要な投票が待っております。


<12月10日>(月)

○先週、出張している間に発表されたのですが、日本貿易会の2013年度貿易動向調査が発表されました。ざっくり言って、輸出が63〜65兆円、輸入が70兆円前後という状態が、2011年から13年にかけて3年連続で続く見通しです。

○昨年の予想は、不肖かんべえが座長を務めましたが、いささか楽観的なものであったということを認めざるを得ません。貿易収支は再び黒字に戻ると思いましたが、どうやらそれは甘かった。リーマンショックと「3・11」を経たことで、日本経済の体質が変わってしまっているのでしょう。今回の見通しの中には、以下のような解説があります(by 三井物産の平石座長)。


当会見通しの特徴は、専門委員会参加8商社が社内外にヒアリング等を実施し、それらを商品別に積み上げて作成している点である。日本経済の実相を映す鏡である貿易動向の詳細から以下のような興味深い点が浮き彫りとなる。

まず輸出における商品・産業ごとの「光と影」である。製造業にとって「6重苦」ともいわれる厳しい環境が続くにもかかわらず、世界経済の持ち直しとともに2013年度には、高機能素材や工作機械、自動車・同部品等が輸出のけん引役となる。企業の海外展開が加速しアジアを中心に国際分業関係が深化する中で貿易構造は激変しているが、依然として日本のモノづくりの基盤のコアの部分は維持されているということだ。

一方、電気機器は減少が続く。特に、情報通信機器関連や電子部品・デバイス関連といったICT 関連商品の足どりが重い。これら商品は、電気機器や一般機械等に散在するため分かりにくいが、半導体等電子部品、電算機類、半導体等製造装置、液晶テレビ等の映像機器、スマートフォン等の通信機等を合計すると、2012年度上半期はICT関連商品の減少額が輸出総額減少額の7割相当となった。さらに、2013年度はスマートフォン・ブームが一服し、輸出の回復を抑える一因となる。2014年度以降に輸出の回復が本格化するためには、これらICT関連商品が増加に向かうことが条件となるだろう。

輸入に関しては、日本の経済活動におけるあらゆる側面で輸入品の活用が進展し輸入浸透度の上昇が顕著なことが指摘できる。特に、消費関連の一部商品が高い伸びを続けており、輸送用機器のうち自動車や、電気機器に含まれる通信機の伸び率は3年連続で前年度比2割増を上回る。自動車では欧州メーカーのエコカー減税適用車投入が注目を集め、通信機では米国メーカーや韓国メーカーのスマートフォンが人気を博した。化学製品に含まれる医薬品も10%内外の伸びを続けている。その他に含まれるバッグ類やはき物といった身の回り品、家具等も着実に増え、さらに衣類・同付属品は高水準が続く。震災後の輸入増が契機となり徐々に市場浸透率を高めつつあるとみられる商品もある。

なお、震災後に鉱物性燃料の輸入が増加した原因である原子力発電所の稼働状況については、見通し作成時点の状況が続くとの前提で作業を行った。


○輸出の行方には光と影がある。果たして日本企業のICT分野復活は可能か。これは謙虚に見ていくほかはありません。以上、自戒の念を込めてご報告まで。


<12月11日>(火)

○本日の東洋経済オンラインに寄稿しましたので、ご参考まで。


●市場の関心はすでに、来年の日銀人事に〜吉崎達彦が分析する総選挙後の焦点

決戦の時が迫っている。市場関係者の関心は、ぶっちゃけもう総選挙の結果ではないだろう。だいたい答えは見えている。今回の場合、「投票日の3日前に流れが変わった」なんてことはなさそうだ。むしろここでは、12月16日以降の政治日程を考えてみたい・・・・。


○選挙後の政治日程を左右するのは、「名札書き」という国会慣習であった、という点に意外性があると思います。ところで同じ東洋経済オンラインにはオバゼキ先生が寄稿していて、これがまた面白い。


●判官びいきから勝ち馬側へ、変質する浮動層〜行動経済で読む選挙

今回は選挙直前ということで、少し趣向を変えて、金融市場ではなく、選挙市場を行動経済学的に読むことにしよう。


○昔の選挙では「アナウンス効果」というものがあって、不利だと言われた方に票が集まったものだが、今はそうではなくてむしろ優勢な方に票が集まりやすい。それが今日の浮動票というものだ、という説明に納得しました。浮動票とはつくづく残酷なもので、「水に落ちた政治家を叩いてやりたい」的な情念を秘めているような気がします。


○それから本日のランチについて。日比谷図書館の地下1階レストランは、内幸町界隈ではお勧めの場所の一つです。「来年のヒント」を求める飯田記者に対し、ついついルチール・シャルマの記事や本をご推奨しました。


●BRICsの先

千代田区立日比谷図書文化館へ。前はよく通りますが、中に入るのは初めて。


○夜はこの季節恒例のエコノミスト懇親会。今宵もいろんな情報が飛び交っていたような。特に日銀関連の話は旬でありますねえ。むふふ。


<12月12日>(水)

○ミサイル発射のどさくさに紛れて、先週が締め切りだった「東亜」の原稿、やっとゲラチェック。テーマは「日米摩擦と米中経済関係」。1万字。ああ、しんどかった。

○北日本新聞のコラム原稿、テーマは「新興国経済」。1200字。そそくさと入稿。

○そういえば「新潮45」のゲラチェックもあった。テーマは「わが日本再建策」。4400字。前向きな暴論を展開。とりあえず編集者にはウケた。

○忘れてたけど、こんなのも書いていた。世界経済評論IMPACTに、テーマは「インスタントラーメンに感動できる経済」。手抜きか。

○今宵は中央公論の座談会を収録。テーマは「アベノミクス」。オバゼキ先生はやはり天才だが、実は財務省的な悪知恵の持ち主でもあることが判明。もうお一人は飯田泰之先生。頭がウニになる楽しい議論。

○そういえば、東洋経済オンラインの競馬予想も追加せねばならない。枠順が決まるのは明日だっけ?

○で、これだけいろんなことをあちこちで書き散らして、今週の溜池通信はワシは何を書けばいいのだろう。さて、困った。


<12月13日>(木)

○今朝はTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」にお邪魔しました。かつて知ったる生島さんなので、打ち合わせなしにいきなり午前5時から本番スタート。それでも快調に飛ばして、あっという間の1時間半でした。以下はそこで教わった話。

「吉崎さん、トーゴーサン、って知ってる?」

「え?クロヨンの変種のことですか?」

○昔、税の補足率のことをよく「クロヨン」と言いましたね。サラリーマンが9割、自営業者が6割、農林水産業が4割、というやつです。「いや、10割、5割、3割だ」という説もあって、それが「トーゴーサン」。最後に政治家の1割を足して、「トーゴーサンピン」と言ったりしました。ほとんど死語になってますかねえ(実態は多分、そんなに変わっちゃいないはずですが)。

○そしたら全然違ってて、この「トーゴーサン」はこの季節の天気のことなんです。1日の気温差がこんな風なんですって。

●晴れの日:最高気温―最低気温=10度

●曇りの日:最高気温―最低気温=5度

●雨の日:最高気温―最低気温=3度

●雪の日:最高気温―最低気温=0度

○これを称して「トーゴーサン、ゼロ」。もしくは逆に最後から読んで「オミゴト」。

○関東地方は連日晴れですが、北陸などは12月には珍しい豪雪になっているようです。こんな時期の選挙はきっと大変ですよ。なにしろ最後にやった冬の選挙は1990年で、そのころはまだ日本も若かったですからね(団塊世代の先頭が43歳)。高齢化した今の日本では、冬の選挙はちょっとした試練なんじゃないかと思います。


<12月15日>(土)

○いよいよ明日は投票日でありますね。午後8時からは選挙速報にかじりつき、という方も多いんじゃないかと思います。まあ、ワシもそうですけど。

○PCをつけながらテレビを見る、という人も多いんじゃないかと思います。以下の企画は、そういう方にお勧めだと思いますよ。と言いつつ、どんなことをするのか、ワシもあんまりよくわかっておらんのですけどね。


総選挙ライブチャット(WSJ日本版)

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は、衆議院選挙の投開票が16日に行われるのに合わせ、同日午後7時30分から、WSJ記者や複数の専門家がオンラインで会話するライブチャット方式でお伝えします。ゲストには、政治評論家の八幡和郎氏、双日総研チーフエコノミストの吉崎達彦氏、シティバンク銀行チーフFXストラテジストの高島修氏をお迎えします。

<パネリスト>

・八幡和郎氏(政治評論家)

・ 吉崎達彦氏(双日総研チーフエコノミスト)

・高島修氏(シティバンク銀行チーフFXストラテジスト)

・吉池 威(WSJ日本版記者)

・小野由美子(WSJ日本版編集長)


○ま、選挙速報をご一緒に楽しみましょう、ということです。どうぞよろしく。


<12月16日>(日)

○いやあ、すごい結果になりましたねえ。いちおう予想通りではるんですが、それでも呆然とするしかありません。

○溜池通信の最新号で書いた「無党派層ではない、浮動票層」が、大きく動いたなあという感じです。

無党派層 浮動票層
(1990年代〜2005年頃?) (2005年頃?〜2010年代)
支持政党なし 支持政党なし
政治に関心あり 政治が嫌い
TVの政治番組をよく見る メディアに不信感。ネットで情報を得る
「○○改革」などポジティブな変化に関心 「反○○」などネガティブな主張に賛同
(政治改革、省庁再編、郵政民営化など) (反増税、反TPP、反原発など)
気分屋でへそ曲がり ロジカルでデジタル
(政治家の些細な失言が命取りになる) (小泉支持から民主党支持へ転換)
投票日の3日前になって誰に入れるか考える 投票行動を途中で変えない
→投票日直前の逆転劇がある →序盤から終盤にかけて流れが加速する
(ex:1998年参院選) (ex:2005年、2009年衆院選)
アナウンスメント効果 バンドワゴン効果
「与党を勝たせ過ぎない」 「与党を懲らしめたい」
(危ない候補者は助けてあげたい) (水に落ちた候補者を叩いてやりたい)
心情的には左寄り ナショナリズムと親和性あり


○また、おいおいいろんなことを考えていきたいですね。


<12月17日>(月)

○選挙から一夜明けて、溜池通信恒例の「比例代表得票数一覧」をチェックしてみましょう。どんぞ。

  2012年
衆院選
2010年
参院選
2009年
衆院選
2007年
参院選
2005年
衆院選
民主党 9,628,483 B16.00 18,450,140 @31.40 29,844,799 @42.41 23,256,247 @39.48 21,036,425 A31.02
自民党 16,623,542 @27.62 14,071,671 A23.95 18,810,217 A26.73 16,544,761 A28.08 25,887,798 @38.18
公明党 7,116,265 C11.82 7,639,432 C13.00 8,054,007 B11.45 7,765,329 B13.18 8,987,620 B13.25
共産党 3,689,988 6.13 3,563,556 D6.07 4,943,886 C7.03 4,407,932 C7.48 4,919,187 C7.25
社民党 1,420,928 2.36 2,242,735 3.82 3,006,160 D4.27 2,634,713 D4.47 3,719,522 D5.49
国民新党 71,102 0.12 1,000,036 1.70 1,219,767 1.73 1,269,209 2.15 1,183,073 1.74
新党日本   300,000 0.51 528,171 0.75 1,770,707 3.01 1,643,506 2.42
みんなの党 5,245,586 D8.72 7,943,649 B13.52 3,005,199 4.27    
たちあがれ日本   1,232,207 2.10            
日本維新の会 12,262,144 A20.38                
日本未来の党 3,424,071 5.69                
新党改革 134,781 0.22 1,172,395 2.00            
その他 562,998 0.94 1,137,608 1.94 958,049 1.36 1,264,802 2.15 433,938 0.64
合計 60,179,888 100.00 58,753,429 100.00 70,370,255 100.00 58,913,700 100.00 67,811,069 100.00


○民主党はこれまで、2005年の郵政選挙以外は常に1位でありました。それが一気に3位転落。これまでの民主党の強みは「知らない魅力」でしたから、それが3年間の与党経験で「知ったら終い」ということになりました。その分は維新の会に流れた、ということなのだと思います。

○初挑戦の日本維新の会は、いきなり1200万票も取りました。民主党に流れていた分が、ざっくり1000万人分くらいがこちらに来てしまった感がある。さらに今まで、たちあがれ日本の基礎票や、みんなの党が取っていた分も吸収してしまった。

○自民党は久々の1位でした。とはいうものの、1662万票という票数は、さほど威張れたものではありません。投票率が低かったとはいえ、2009年よりも少ないのですから。自民党への期待値は、2005年の郵政選挙に比べればはるかに低いと考えていいでしょう。

○公明党は711万票。これはかつてに比べると、力量が落ちていると言わざるを得ませんね。町内のご近所付き合いも減っている中にあっては、学会員以外への波及効果が弱まっているのではないでしょうか。

○共産党と社民党は合わせて500万票。長期低落傾向は否めません。日本未来の党もあるとはいえ、今回もまたリベラル退潮の選挙でありました。

○細かな話で恐縮ですが、ちょっと信じられない思いがしているのは、富山県の投票率(小選挙区56.89%、比例代表56.88%)が、千葉県のそれ(58.49%と58.48%)よりも低いということです。不肖かんべえの出身地富山は、投票率が高いことで有名で、現職知事に共産党の候補者だけが挑戦する選挙でも、恐るべき投票率を誇った県なんです。そして現住所の千葉県は、投票率の低さで定評がある。ちなみに前回の投票率は、富山が73.75%/73.73%で、千葉は64.87%/64.84%だったんですよ。やっぱり冬の選挙がたたったんじゃないでしょうか。


<12月18日>(火)

○今朝は身内の葬儀があったんで、「くにまるジャパン」をお休みしたりしたんですが、あらあら、米長邦雄さんも亡くなられていたんですね。現職の将棋連盟会長、69歳はちょっと早いです。惜しいです。余計な詮索ですが、『三月のライオン』に出てくる将棋連盟会長さんは、あれはどう見てもヨネさんがモデルでありましょう。というか、あのマンガはヨネさんの不肖の弟子、先崎学八段が情報を提供しているんで、それ以外にないですよね。

○小学生の高学年で、将棋の棋譜の切り抜きを始めました。読売新聞の十段戦(現在の竜王戦の前身)でした。すぐに好きになったのが米長八段の将棋でした。当時は中原誠十段が大山十五世名人の牙城を崩し始めた時期であって、その中でもヨネさんの将棋は魅力的でした。「角頭歩突き戦法」なんかもリアルタイムで見てました。NHK杯の解説も鋭かったしね。中原名人に挑戦した数限りない矢倉の対局、大山十五世の振り飛車に対する玉頭位取り戦法など、いろんな熱戦が思い浮かびます。

○ヨネさんの本もいっぱい買いました。棋書以外にも、柳瀬尚紀さんとの対談本は世界が広がるような面白さがありましたな。しかるにいちばんスゴイのは、藤沢秀行さんとの対談本でありました。天下のシューコー先生の前に出ると、あのヨネさんが子供のように見えてしまうのである。なおかつ、当時クレスト社の編集者であった潮匡人氏の証言によれば、テープを起こした材料のほとんどは「とても印刷できない」内容であったとのこと。ああ、なんと惜しい。貴重なオーラルヒストリーとして、なんとか公表してもらえませんかねえ。

○そうそう、街中でヨネさんを見かけたことが2回あります。2度ともあの甲高い声ですぐに気がついた。ワシはそういう時、話しかけたり、サインを求めたりするタイプではないので、「ああ、あそこにいるわ」と思って通り過ぎただけである。しかもそのうちの1回は、喫茶店で女性を口説いているところであった。まあ、ヨネさんの場合その程度はかわいいもので、週刊文春に連載していた「泥沼流・人生相談」なんぞは、とてつもない内容を含んでおりましたからなあ。

○で、ワシの米長ファンとしての歴史は、1994年の名人戦で羽生善治竜王の挑戦に敗れたところで完全に終止符を打った。その頃には羽生将棋があまりにも面白くて、毎週、「週刊将棋」を買っていたくらいだったので。確か最終局は、千駄ヶ谷の将棋連盟に解説を聞きに行った。解説は青野九段で、投了は7七角だったと思う。正直なところ、49歳で名人位を取ったところが米長将棋の最後の輝きであって、その後はあまり見るべきものがなかった。いやあ、将棋ファンってわれながら残酷ですねえ。

○ヨネさんの最初の著書は、『人間における勝負の研究』であった。書名が変だよね。普通は「勝負における人間の研究」でしょう。でも、そこが逆になるところのが勝負師たる棋士というもの。有名な米長理論(自分にとっては消化試合で、相手にとっては重要な対局こそ、全力で勝ちに行かなければならない)なども、本書が初出であった。ワシにとっては、「人生は借りではなく、貸す側に回らなければいけない」という教えが特に印象に残った。

○20代前半でこの本に出会って、ワシはひとつ人生上の重要な方向転換を行っている。それまではわりと小銭を気にするタイプで、割り勘負けが大嫌いだった。要は「ケチ」だったのである。飲み会などでは、明らかに他人よりもよく食べる方なのだが、お金はキチンと平等でなきゃいかんという方針であった。しかるにヨネさんの理論によれば、そんなところで借りを作って運気を損なうのはもってのほかということになる。

○それ以降、なるべく飲み会の幹事を引き受ける、お金が足りなかったら自分で被る、誰がいくら払ったとか細かな勘定は気にしない、ということにした。そうは言っても、若いころの5000円はとっても痛いのだけど、「これは米長理論だ」と思って我慢することにした。それから幾星霜、今ではものの見事にドンブリ勘定の人になってしまった。それが良かったかどうか、あるいはそれで運気を良くしたのかどうかは不明なるも、とりあえず人生のストレスはひとつ減ったと思う。元はと言えば、これもヨネさんの薫陶によるものである。

○ヨネさん、本当にどうもありがとう。あなたを通して、大事なことをいっぱい教わりました。勝手ながら、不肖の弟子のひとりという風に思っております。


<12月19日>(水)

○正確を期すために、二日前に掲示した「比例代表得票数一覧」の数字を見直しました。ご使用になる場合は、下記をお使いください。

  2012年
衆院選
2009年
衆院選
2005年
衆院選
2003年
衆院選
2000年
衆院選
1996年
衆院選
民主党 9,628,483 16.00 29,844,799 42.41 21,036,425 31.02 22,095,636 37.39 15,067,990 25.18 6,001,661 10.80
自民党 16,623,542 27.62 18,810,217 26.73 25,887,798 38.18 20,660,185 34.96 16,943,425 28.31 18,205,955 32.76
公明党 7,116,265 11.82 8,054,007 11.45 8,987,620 13.25 8,733,444 14.78 7,762,032 12.97    
共産党 3,689,988 6.13 4,943,886 7.03 4,919,187 7.25 4,586,172 7.76 6,719,016 11.23 7,268,743 13.08
社民党 1,420,928 2.36 3,006,160 4.27 3,719,522 5.49 3,027,390 5.12 5,603,680 9.36 3,547,240 6.38
国民新党 71,102 0.12 1,219,767 1.73 1,183,073 1.74            
みんなの党 5,245,586 8.72 3,005,199 4.27           新進党 15,580,053 28.04
日本維新の会 12,262,144 20.38           自由党 6,580,490 11.00    
日本未来の党 3,424,071 5.69           保守党 247,334 0.41    
その他 697,779 1.16 1,486,220 2.11 2,077,444 3.06     920,634 1.54 4,965,543 8.94
合計 60,179,888 100.00 70,370,255 100.00 67,811,069 100.00 59,102,827 100.00 59,844,601 100.00 55,569,195 100.00



  2010年
参院選
2007年
参院選
2004年
参院選
2001年
参院選
1998年
参院選
民主党 18,450,140 31.56 23,256,247 39.48 21,137,457 37.79 8,990,523 16.42 12,209,685 21.75
自民党 14,071,671 24.07 16,544,761 28.08 16,797,686 30.03 21,114,706 38.57 14,128,719 25.17
公明党 7,639,432 13.07 7,765,329 13.18 8,621,265 15.41 8,187,827 14.96 7,748,301 13.80
共産党 3,563,556 6.10 4,407,932 7.48 4,362,573 7.80 4,329,211 7.91 8,195,078 14.60
社民党 2,242,735 3.84 2,634,713 4.47 2,990,665 5.35 3,628,635 6.63 4,370,763 7.79
国民新党 1,000,036 1.71 1,269,209 2.15            
みんなの党 7,943,649 13.59                
            自由党 6,580,490 12.02 5,207,813 9.28
            保守党 1,275,002 2.33    
その他 3,542,210 6.06 3,035,509 5.15 2,022,139 3.62 2,988,440 5.46 4,276,664 7.62
合計 58,453,429 100.00 58,913,700 100.00 55,931,785 100.00 54,741,492 100.00 56,137,023 100.00



○上記を使って「民主党盛衰記」を論じるもよし、「小泉なき自民党は25〜30%が関の山」ととるもよし、「公明党はやはり抜き打ち解散には弱いんだねえ」という証拠にするもよし。いろんな風に使えるデータだと思います。

○ところで信じられますか? 20世紀には有権者の5人に1人は、共産党か社民党に投票していたんです。それが今じゃあ一けた台。ところが負けても負けても党首が変わらない。この分じゃ、そのうち消えてなくなるでしょうなあ。


<12月21日>(金)

○昨日は自由報道協会のシンポジウムに顔を出しました。田原総一朗さんが司会で、メディアのあり方に関するいろんな問題提起があった中で、脱力さんのこの指摘が面白いと思いました。

「ニューヨークタイムズの記者心得には、一番上のほうに”Sense of Humor”を忘れるな、という項目がある。実際に戦場取材などをするときに、これは非常に重要なこと。日本のメディアにはそんな感覚がないのではないか」

○当溜池通信は、ふだんから「読者を笑わせること」に高いプライオリティを置いております。これはそこまで深い意味はなくて、@書いている本人が純粋に好きである、A定期的な読者を獲得するための戦術、という2つの理由があります。無料でささっと読めるネット上のサイトに対し、人々が求めているのは「人に話したくなるような面白いネタ」だと思うんですよね。真面目くさって、本人の思いが空回りしているような文章が読まれるはずがありません。

○その点、昨今の大新聞などは、「読んでもらえるのが当たり前」的な感覚があるから、”Sense of Humor”を忘れているんじゃないのかなあ。その昔、大宅壮一は、「ジャーナリズムの反対語はアカデミズムではなく、マンネリズムである」と喝破しました。面白くないものは手に取ってもらえない。その辺の緊張感を失っているから、メディア離れが進んでいるのではないだろうか。ネットの世界においては、「あ、これおもしろい!」というネタが1か月もなかったら、どんな人気サイトでもすぐに忘れ去られてしまうでしょうから。

○シンポジウムの後のパーティーで鈴木宗男氏が登場。マイクを握っての挨拶が爆笑ものでした。

「さっき挨拶していたのは××議員ですよね。どこに居るの? え、もう帰っちゃった? そういうことだからいけないんですよ。そもそもね、民主党は選挙が下手過ぎる。今度の選挙、民主党は北海道の小選挙区は全敗ですよ。前回は全員が当選。どこが違ったか分かりますか。われわれ新党大地を、味方にしていたかどうかの違いですよ。前回は助けてあげた。今回は要らないというから助けなかった。足し算と引き算じゃ大違いですよ」

○民主党の敗因として、マニフェストを裏切ったからとか、投票率が低かったとか、いろんなことが言われてますが、端的に言って党分裂による同士討ちが多かったこと。これに尽きるんじゃないでしょうか。今まで足し算を繰り返して大きくなった党が、初めて引き算をやったらこうなった。要するに「反自民」という接着剤が失われたためですけどね。これで参議院議員の離党が始まったら完全にアウトですけど、できればそうならないように、ちゃんと新しい代表を選んで再出発して欲しいと思います。

○だってせっかく「ワル」が消えて、「バカ」も引退して、「ズル」も落選して比例復活になったんだから。あの三兄弟さえ居なければ、民主党はそんなに悪い政党じゃないと思うんですよ。ちゃんと綱領を作って、理念をまとめて、地方組織を作る。そうすれば道は開けてくると思うんです。

○逆に自民党は慢心しちゃいけません。もともと「反自民」だけで集まってた人たちが分裂してくれたから勝てたけど、自民党が与党に返り咲いて偉そうにしてたらまた「反自民」でまとまってしまうじゃないですか。それはお互いにとってためになりません。与党も野党も、競い合ってもらわないと困るんです。


<12月22日>(土)

○マヤ暦の予言はどうやら不発だったようで、新しい日を迎えました。そりゃそうだよね。この世の終わりに遭遇できるのは、よっぽど運のいい人しかいないでしょう。Life goes on.

○毎週土曜日の町内会「火の用心」、今日は新機軸で午後5時から町内の小学生と一緒に行いました。拍子木を叩くというのは、子どもにとっては快感であるらしく、終わってから「またやりた〜い」という声が出ました。来年もまたやりましょう。他方、町内からは「せっかくの機会なのに、子どもの声があまり聞こえなかった」との反響もありました。次回からはちゃんと発声練習をやった上で「火の用心」と呼びかけてもらいましょう。

○さて、明日はいよいよ有馬記念。馬券王先生がどんな予想をしてくれるかも気になりますが、東洋経済オンラインでも予想をやってます。あ、そうそうオバゼキ先生の予想はこちらをご参照。さて、だれが当たりますやら。


<12月24日>(月)

○有馬記念で当てが外れて、というかゴールドシップを買えなかった自分が歯がゆくて、つい悔しさがつきまとう今日のクリスマスイブ。腹立ちまぎれに、今年の競馬界の私家版10大ニュースを掲げておきましょう。

@オルフェーヴル、凱旋門賞に挑戦も無念の2着

――世界最強の一角であることは証明したけれども、過去に2回ある2着と同じでは喜びも今一つ。とはいえ、何しろオルフェーヴルがやることですから逆らえません。


Aジェンティルドンナが牝馬三冠+ジャパンカップ勝利!

――そのオルフェーヴルに体当たりを食らわして、見事ジャパンカップを制したのがジェンティルドンナ。ディープ産駒による意趣返しのように感じたのは被害妄想でしょうか?


Bゴールドシップが牡馬2冠+有馬記念勝利!

――そのディープ産駒が居ない有馬記念では、ステイゴールド産駒がワンツーフィニッシュ。つまりは広くて平坦な府中はディープ産駒、トリッキーな中山と阪神はステゴ産駒、ということか。


C阪神大賞典、オルフェーヴル逸走で見せた「心の闇」

――夢に出てきそうな瞬間でした。第3コーナーで逸走し、なおかつレースに復帰して2着で終える。競馬ファン以外の人もさぞ驚いたことでしょう。オルフェーヴルはやはり普通の競走馬ではない。


D競馬の負けは必要経費か?競馬ファン注目の所得税裁判始まる

――馬券王先生も悲憤慷慨。PATで勝ち続けると銀行が情報を提供し、国税の査察が入るという競馬ファン恐怖の事態が。大阪国税局の「勇み足」となることを切に希望す。


E福島競馬が再開。夏の七夕賞はアスカクリチャンが勝利

――震災と原発事故で閉鎖されていた福島競馬場がこの春に再開されました。不肖かんべえも夏の七夕賞に参戦しましたぞ。もちろんボロ負けでありましたが・・・・。


F秋の天皇賞、エイシンフラッシュ騎乗のデムーロ騎手が天皇陛下に最敬礼

――久々の勝利に沸いたエイシンフラッシュですが、内枠を見事に走らせたデムーロ騎手の妙技が光りました。しかも陛下に対して膝をついて深々と一礼。日本国民として脱帽です。


G中京競馬場がリニューアル。最初の高松宮杯はカレンチャンが制す

――中京競馬場が改装されて、「小回り・平坦」から「長い直線と急坂付き」に。過去のデータが通用しない一戦はカレンチャンが制しました。今年の彼女は強かったなあ。


Hダービーのディープブリランテ勝利で岩田騎手の目に涙

――岩田騎手が目立った年でもありました。騎乗停止中にディープブリランテの調教を買って出て、ついにはダービー馬の称号をゲットしました。「アッパレ」をあげてください!


I東洋経済の新連載「市場深読み劇場」が開始!

――ぐっちーヤマゲン、かんべえの3人による連載がスタート。本当はオバゼキ先生にも入ってもらいたいところなんですが・・・。馬券王先生と合わせてよろしくお願いします。


<12月25日>(火)

東海テレビの年末報道スペシャル「田原総一郎の2013年大予測」(12月29日土曜日、午前1:10〜)の収録のために名古屋へ。パネリストは、岸井成格(政治ジャーナリスト)、中西輝政(京都大学名誉教授)、孫崎亨(元外務省局長)、それに不肖かんべえ。

○時節柄、話題になるのは「総選挙結果」「安倍論」「金融政策」「領土問題」などなど。2時間フルにやりましたし、案の定「中西vs.孫崎」の攻防もあったんですけど、不思議と後味の良いディスカッションでした。

○中西教授の発言が特に興味深かったですね。「安倍さんが待っていてほしい相手が3つある。ひとつはアメリカのオバマ大統領、2番目が国内の保守派、3番目が中国」。なるほどと思いましたけど、保守派の論客である中西さんご自身が、「ここは参院選まではじっと我慢」という風に割り切っておられる点が面白いと思いました。

○考えてみれば、2006年末にもこの東海テレビのシンポジウムに出た記憶があります。あのときも安倍政権でした。そして明日には安倍政権が発足する。そして保守派は「ガマーン!」とみずからに言い聞かせている。問題はその先ですね。一方で民主党は海江田さんを代表に選んだとのこと。うーん、それはちょっと党首討論を考えるとツライものがあるんじゃないかな。まあ、ともにお手並み拝見ということにいたしましょう。


<12月26日>(水)

○今回の総選挙においては、「アナウンスメント効果もバンドワゴン効果もなかった」という指摘があります。当溜池通信では、「アナウンスメント効果からバンドワゴン効果へ」という見方をしてましたが、データ的に見ると選挙期間中にはそれほどの変化がなかったのだそうです。

○普通、選挙では序盤戦、中盤戦、終盤戦と情勢は変化するものですから、これはめずらしい現象と言えます。実際のところ、各社の票読みは比例区の議席数で多少のミス(自民党は思ったほど多くなかった)があったものの、小選挙区の読みはほとんど当たっているとのこと。

○いろんな解釈ができるでしょう。@有権者は、今回の選挙には関心が持てなかった。A従来に比べてメディアの影響力が落ちている。B有権者はロジカルでデジタルでシニカルになっている・・・・・・などですね。考えてみれば、最近は政治討論番組も減っていることだし、選挙期間中の誰かの一言で戦局が大きく傾く、なんてことはもうないのかもしれません。

○たまたま今日、落選したさる民主党議員から聞いた話なんですが、公示日直後の世論調査で「自民過半数の勢い」という報道があった瞬間に、選挙区の風がぴたりと止んだのだそうです。アナウンスメント効果などというのは都会の話であって、中央から来るお金が命という地方においては、有権者が「ああ、これで昔に戻るんだな」と思ってしまったらしい。ちょっとさびしい話ですが、いかにも、という証言だと思います。


<12月28日>(金)

○今朝のモーサテに登場して、ようやく今年の仕事が終了。後は書類の整理をして、年末の挨拶があって、軽く打ち上げをして解散。「よいお年を」ということで。

○後は若干の備忘録。

○安倍政権の支持率はここを参照。高い方から順に、読売新聞65%、日経新聞62%、時事通信62%、朝日新聞59%、毎日新聞52%となる。概ね、各紙のスタンスを反映しているように見える。まだ出ていない産経新聞は67%ってところかな? ざっくり6割というのは、新政権の支持率として妥当な水準じゃないかと思います。

○一部に、「安倍政権は徴兵制をやるんじゃないか」などの声がある。そんなわけないんですけど、そういう風に思われてしまう。これって民主党の時代に、いわゆるネトウヨと呼ばれる人たちの間で「外国人参政権」が懸念されていたことの正反対の現象でありましょう。「敵」の姿は、ついつい一枚岩に見えてしまうものです。でも、本当はそうでないことの方が多い。尖閣問題を考えていると、ついつい中国も「一糸乱れず」に見えちゃうのと同じ理屈です。

○国民が政治のニュースに飽き始めた今日というタイミングに、日本時間午前7時から引退の記者会見を始めたゴジラ松井は、なかなかに商売がお上手であるかもしれません。野球だけで終わる人ではないような気がするので、今後の活躍に期待したいところ。ちょっとだけ嫌な予感がするのは、郷里・石川県に帰るとさっそく森喜朗先生がやってきて、「松井君、君は参院選に出るべきだあっ」と言い出すこと。これで100万票、というのは話旨過ぎ。

○突然思い出したんだけれども、自分は中学生くらいの頃にマヤ文明に関心があって、大人になったらあの辺の遺跡を見に行こうと思っていたのであった。ところがそんなことは忘れて久しく、いまだにメキシコにも行ったことがない。ユカタン半島のチェチェン・イツァーという遺跡、いつか行こう。


<12月29日>(土)

○ようやく仕事のない一日である。ああ、すがすがしい。10時間睡眠して、昼寝も2時間。

○2013年は、「1月4日に出社しますか?」が重要な選択肢となります。ここを休むと9連休ですからね。ワシはもちろん出ますよ。これが来年はすごい。2013年の年末は、12月30日が月曜日で1月3日が金曜日。つまり、何もしなくても9連休なんです(証券界などは30日が出勤日ですよねえ。お疲れ様です)。

○こうなると「来年の年末年始こそは大型海外旅行へ」ということになりそうです。ただしその場合、為替レートは1ドル90円くらいになっているかもしれませんぞ。行くなら今のうち。さて、2013年はどんな年になりますか。

○とりあえず株は上がったので、気分的にはちょっと明るい。鉱工業生産もちょこっと明るさが出てきたんで、足元の景気後退は意外と早く終わるかもしれない。嶋中さんは、「10月末で底打ち」と言っていたし。

○先日、ランチの際に、隣の席の若いサラリーマンが「住宅ローンをいつ固定金利に変えるべきか」を議論していた。ちょっとずつ、そんな変化を感じる年の瀬であります。


<12月31日>(月)

○年の瀬とお盆はだいたい体調が悪い。といってもたかだが、風邪と花粉症と肩こり程度なのだが。以下は休日中の読書録。

●激論 日本の民主主義に将来はあるか 岡崎久彦×長谷川三千子 海竜社

民主主義とは何ぞや、という対談本である。お二人とも、「民主主義って、それ自体がすばらしいものではないし、ほかにないからやっているようなもの。ちゃんと補うものがないとうまくいかないよ」というトーンである。きわめてまっとうな認識であるし、特に昨今は反論する向きは少ないんじゃないかと思う。ゆえにお二人の議論も、「激論」というよりは、「協論」「共論」といった感がある。

世界史や日本史を縦横無尽に駆け巡っているのが楽しい。岡崎大使が板垣退助を高く評価している、というのは新鮮な印象がありましたな。

●関西人には、ご用心  山本健治 三五館

表紙と帯のせいで、ふざけた本かと思ってしまうが、実はごく真面目な「憂国」ならぬ「憂関西」の本である。関西は奥が深い。そして関西を理解しないうちは、けっして日本を分かった気になってはならない――とワシは勝手に思っている。一応、関西系商社の録をはんで長いんですが、ちっともわかりませんので。ま、それはさておいて、以下のような話はいかにも関西らしくて面白いではないですか。

*大阪:かつて大阪のおばちゃんは「オレオレ詐欺」に引っかからない、と言われていた。しかし大阪弁を操る詐欺グループが登場したことで、ドケチなおばはんたちも騙されるようになった。

*京都:京都の街は、ベンチャー企業にやさしいわけではない。あるベンチャー起業家曰く、「京都でよかったことは京大があったこと。それと海外に売り込みに行くときに、『キョートから来た』というだけで、ウケること」。

*兵庫:兵庫出身の偉大な学者、研究者がいるのだが、地元でまったく知られていないし、大事にされていない。三木清、美濃部達吉、柳田國男、和辻哲郎など。どれ一つとして知りませんがな。

*奈良:昔のモノを大事にしていない。平城京跡をスパッと斜めに切るように、近鉄奈良線が走っている。

*和歌山:新大阪から千葉の勝浦へは4時間23分で行くのに、和歌山の勝浦に行くには4時間17分かかる。

*滋賀:「新幹線の新駅建設なんてもったいない」と叫んだ女性が知事になったが、最近になって「リニアが走るのなら滋賀県にも駅を」と言いだし、JRから「何を今さら」とあしらわれている。旧住民は「この人、埼玉出身やからしゃーないわ」と諦めている。この人は今、「未来」を叫びだした・・・。

○それでは皆様、よいお年を。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki