●かんべえの不規則発言



2010年3月







<3月1日>(月)

○もう3月でありますな。周囲ではこんな会話が飛び交っております。

「4月からXXに赴任することになりました」

「4月でタイトルがXXに変わりまして、お陰で仕事が少し楽になります」

「4月から違う職場に移動します。次回は後任の者が参りますのでどうぞよろしく」

○そうなのだ。皆さんのサラリーマンすごろくは、ちゃんと動いておるのだ。たまたま自分が同じところをグルグル回っているだけの人なので、ついつい忘れてしまうのだが、4月は人事の季節なのだ。スイスイとすごろくを上がっていく人の挨拶を聞いたりすると、ちょっとだけまぶしく感じたりする。

○まあ、ワシは「好き」を「仕事」にしてしまった果報者なので、同じ職場にズルズルといるのも、自分の都合でそうしているだけである。ということで、今週、来週なんぞは半端でなく忙しかったりする。我ながら、変なことを一杯やっている。どう考えても、普通のサラリーマンの暮しではない。まあ、ちょっとこんなもんでも見てやっておくんなさいまし。

●外為コレクション:http://www.gaitame.com/gaitame/index.html?app 

○それから明日のNHK「クローズアップ現代」を見ると、いいことがあるらしいぞ。午後7時半です。


<3月2日>(火)

○午後5時半、NHKのスタジオに入って、今日の「クロ現」のVTRを見せてもらって、ちょっとのけぞりましたな。すごい。面白い。でも、ワシントン取材を中心に作ってあるから、トヨタに対して非常に辛口である。というか、こんなの民放では絶対に作れませんぞ。

○さて、番組としてこの素材をどんな風に料理するか。いつもながら、VTRは直前まで何度も作り直しをしているので、出来上がりは事前の予想と違ってくる。だから、予習をしてもあまり意味がない。VTRを見てから、本番までの時間が勝負です。伝えるべきポイントは何か、どういう議論にするか、順序はどうするか、てなことを1時間少々かけて協議する。

○論点を絞って、4分11秒と4分25秒の枠に落としこむ。イナバウアーは捨てましょう、トリプルアクセルは2回やりましょう、みたいな作業である。で、本番。時間ピッタリで予定した論点を全部話し終えたのでホッとするのだが、家で見ていた配偶者に聞いたらこんな評価であった。「顔色悪いし、声は低いし、今日はどうしたの?」 

○あらら、緊張してたのかな。まあ、テレビの仕事ってそういうもんです。笑われるかもしれませんが、こういう作業って、ワシは好きです。緊張感がクセになるんですな。

○終わってから関係者一同で記念撮影。「NHKって、放送界のトヨタですよね。”よくまあ、ここまでやるわ”といつも感心してます」と言ったら、国谷キャスターが「それって褒め言葉ですね」。もちろんですとも。自分はいい加減な人間ですが、他人の職人気質は無条件に尊敬します。

     ◇     ◇     ◇

○さて、明日は上院でのトヨタ公聴会が予定されている。不肖かんべえの読み筋としては、この問題はワシントンの政治ショーとしてはほぼ終息しつつある。その根拠は、3月1日付のネルソンレポートがA4で11ページもの量なんだけれども、トヨタのトの字も出ていないから。すでにワシントン雀たちのレーダースコープからは、本件は抜け落ちているらしい。(ちなみに、国谷キャスターもネルソンレポートの愛読者であることが判明しました)

○もう一点。日本版WSJをチェックしてたら、こんな記事が出ていた。

●トヨタ、品質委員会に元米運輸長官を招く

【デトロイト】トヨタ自動車は、クリントン政権で運輸長官を務めたロドニー・スレーター氏を外部有識者からなる新設の品質委員会に招く。2日の上院公聴会での証言向けに用意された原稿で分かった。

 北米トヨタの稲葉良睨(よしみ)社長は原稿の中で、この委員会を率いるスレーター氏が、同社の新たな品質管理を「業界最高の水準に一致させる」としている。

 また、内山田竹志副社長(技術担当)は、公聴会のために準備された原稿の中で、電子スロットル制御システムの信頼性を強調し、電磁気の干渉にまでいたる広範な調査を行ったことを明らかにしている。同副社長はハイブリッド車「プリウス」初代モデルのチーフ・エンジニアを務めた。

○ワシが推薦したノーマン・ミネタさんではなく、その直前の運輸長官が指名されるみたいです。スレーター氏の方が若いし、馬力もありそうですね。良い判断だと思います。


<3月3日>(水)

○群馬県前橋市で講演しました。こういう団体の会合でした。前回は、2007年秋にも呼んでもらいました。どんな商売でも同じことですが、リピートオーダーをいただけることが繁栄への道であります。

○群馬県も製造業が多いところだけに、少しずつ外需の伸びが浸透してきているように感じました。と、同時に与党に対する風当たりが強いですね。やはり企業経営者は、今の政権に対して批判的です。今回の「休日を全国で分けてとる政策」が典型的ですが、産業界のことを考えてないのが丸分かりでありますから。

○今月はこの後も、大分、徳島、大阪、沖縄に行く予定があります。うーむ、なんでこんなにたくさんあるんだろう。まあ、なるべくいろんな場所を見て来たいと思います。


<3月4日>(木)

○久しぶりに脱力さんに会ったら、ツィッターに凝るわ、検察批判はするわ、立花隆に喧嘩を売るわ、ますますお盛んなようであります。元気と情報を少しだけ、分けてもらいました。

○BSジャパン「マーケット・ウィナーズ」のスタッフが来社。今月末で番組が終わるのだそうで、「最後の出演」の打ち合わせ。「サンプロ」もそうだが、この3月末でいくつ番組が終わるんだろう。日本テレビの「リアルタイム」やTBSラジオの「アクセス」まで、ワシが出たことのある番組だけでも4つもあるではないか。

○電波業界というのは、今回が初めての不況なんじゃないでしょうか。「冬の時代」と言われて久しいわが商社業界から見れば、まだまだ試していない企業努力がたくさんありそうで、こういうときこそチャンスなんじゃないかと思います。まずは「前向きの失敗」が必要なところですね。


<3月5日>(金)

○今宵は某所で経済政策を論じておりましたが、時節柄、話題が集中したのは「なぜ韓国企業は元気で、日本企業はサッパリなのか」でした。いろんな仮説がありますね。

●韓国企業は、基礎研究にカネをかけていないから利益率が高い。その点、日本企業は無駄な投資が多い。

(思えば昔の日本企業も、応用研究だけで楽して儲けていると批難されたものであった)。

●韓国企業は、新興国市場でやりたい放題をやっている。その点、日本企業はコンプライアンス過多になっている。

(お行儀が良くなり過ぎてしまったのでしょうか。商社業界も「不毛地帯」の頃とは様変わりしておりまして・・・)

●韓国企業は、実効税率が1割程度である。だから内部留保が多く、投資額も増やせる。その点、日本の法人税は高過ぎる。

(でも、それなら日本企業もシンガポールあたりに本社を移せば良いのである。それができないドメスチック体質が哀しい。もっとも某有名企業は、海外移転のシミュレーションをやったそうですが)

●韓国企業は、寡占体質への絞込みが出来ている。その点、日本企業は国内の競合相手が多過ぎる。

(アジア通貨危機の際に、韓国は「ビッグディール」で企業を絞り込んだ。だからサムソンとLGが世界ブランドになった。日本は総合電機が今も9社もある。これでは海外に出たときに勝負にならない)

●韓国企業は、大胆に若手社員を海外に出している。その点、最近の日本では商社や外務省でも若手が海外に行きたがらない。

(日本は国内の居心地が良すぎるのかもしれません。こればっかりは手の打ちようがないですな)

●韓国企業は、国内市場が狭いために危機感が強い。官民連携も進んでいる。その点、日本は中途半端に国内市場があるので本気になれない。

(その国内市場も、少子高齢化で先細っているわけです。その点、韓国には北朝鮮というワイルドカードがありますからなあ・・・・)

→追記:これに次の項目を加えると、「日本が韓国企業に負ける7つの理由」が完成します。皆さん、流行らせましょう!

●韓国企業はオーナー社長が多いので即断即決で物事が進むが、日本企業はボトムアップ式だから意思決定が遅い。

(オーナー経営者は時代遅れの存在だ、などと思っている人が多いようですが、国際的に見てもけっしてそんなことはないと思いますぞ)


○ということで経済界でも、キムヨナ一人に真央、美姫、明子が挑んで返り討ちに遭っているという図式です。やっぱりパシュートで勝負するしかないのでしょうかねえ。


<3月7日>(日)

○ウオッカが引退ですか。ドバイでGIIのレースに出走して鼻出血を発症。もう6歳馬なので、今後のことも考えて、オーナーが引退を決断。懸案のドバイワールドカップには出場せず、とのこと。うーん、惜しいですなあ。

○とにかく彼女は強かった。なにせGTレース通算7勝(史上最多タイ)、獲得賞金13億円(歴代3位)、2年連続年度代表馬ですから。特に東京府中では無敵の強さでした。個人的には、いつもウオッカに逆らって買って、取られておりましたな。「まさか牝馬が・・・」と、つい思ってしまうのです。最後のジャパンカップで初めて学習しました。コイツはホントに強いのだと。

○引退後のウオッカはアイルランドに渡り、昨年の凱旋門賞を制したシーザスターズとの種付けが予定されているとのこと。いつの日か、その仔の活躍を見てみたいものです。競馬とは、つまるところ親子の物語と見つけたり。そのときはきっと、ウオッカで乾杯、でありますな。

○その一方、同じレースで見事に勝利したレッドディザイアが、ドバイWCに参戦するとのこと。これまた楽しみな話で、個人的にはブエナビスタよりも彼女の方が好きですね。マンハッタンカフェの子だし。ウオッカのように大きな期待を背負っていないことも好材料。

○ドバイWCは、一等賞金が600万ドルという世界最高峰。でも、ドバイのお金もいつまであることやら分かりませんぞ。ギリシャショックが飛び火する前に、しっかり稼いできてもらいたいところです。バンクーバーは終わっても、日本勢の世界への挑戦は続きます。


<3月8日>(月)

○米国債の話になると、急に冷静さを失う人って多いですよね。「日本は早く米国債を売れ」「中国はしたたかにやっている。それに比べて日本は何だ」「もっと戦略的に考えろ」。・・・・まあまあ、そこは落ち着いて、まずは元データに当たってみましょう。

http://www.ustreas.gov/tic/ 

○さて、上のデータを元に、こんなグラフを作ってみました。ちょっと見てくださいまし。

○米国債の各国の保有高を棒グラフ(上)にしてみると、なるほど中国は多い(2009年末8,948億ドル)。でも、全体の量も増えているので、シェア的にはそれほどではありません。日本も7657億ドルと多いですが、ここ5年ほどはそれほど増減はありません。とにかく日中が突出していることが分かります。

○そこでシェアのみのグラフ(下)を作ってみると、中国は4分の1、日本が5分の1となります。このくらいなら、持ち過ぎて怖いというほどではないでしょう。ただし中国はこれ以上増えると、もう売れなくなりますね。逆に日本は、あと一息で全体の1割台に落とせます。

○しかし数年前を振り返ってみると、実は日本は海外保有分の米国債の3分の1以上を保有していたんですね。2003〜04年の円安介入の効果です。これはもう、売りたくても売れない。冷や汗ものですね。でも、当時はこの円安介入でデフレを脱出した。そして当時はテッパンの日米関係があったから、これが許された。

○ところがその後は、日本は着実に米国債のシェアを減らしているのです。実は日本は、上手にリスクを回避しているのではないでしょうか。なおかつ、「あいつは逃げた、けしからん」「不気味だ、怖い」的な非難も浴びてない。逆に中国ばかりが目立っている。

○さて、米国債を戦略的に扱っているのは、中国と日本の一体どちらでしょう。


<3月9日>(火)

○大分市工業会の通常総会で、講演会の講師に呼んでいただきました。ということで、大分まで日帰り出張。で、いろいろ面白かったのですが、本日最大の感動はこれでありました。

鮨 海甲

○大分空港の中の3階にある小さな鮨屋です。かねて商船三井さんから評判を聞きつけておりましたので、飛行機待ちの時間にえいやっと飛び込んで試したのですが、これが感動もの。

関アジ!

関サバ!

ひらめ!

ホンマグロ!

あなご!

(最後になぜか)平貝!

締めは卵!

○お陰さまで、短時間で豊後水道の海の幸を堪能いたしました。けっして便利な場所にあるとは言い難い大分空港ですが、鮨屋は絶品であります。

○ただし、お値段も「大人の料金」でありました。ご注意ください。とにかく単なる「空港内の鮨屋」と思ってはいけません。感動あるのみです。


<3月11日>(木)

○やっと天気が良くなったけど、今日はくしゃみもでるし、目も痛い。ご同様の方は少なくないようですが、まったく何とかならんものでしょうか。この花粉というやつは。

○さて、例の「日米密約」について少々物申したく。

○先進民主主義国では、なぜ外交文書の公開を行なうのか。それは正しい歴史を後世に伝えるとともに、国民に対して、「わが国外交は変なことはやっておりませぬ」ということを見せるためである。国民の信頼が強まれば、外交はやりやすくなる。相手国からの信頼も高まる。情報公開は外交に力を与えるのである。

○もっとも、そのためには民度も高くないといけない。情報公開とは、基本的に時効になった話を扱うものだ。「あのときのアレは嘘でした」みたいな話が出てきたときに、「ほら見たことか」などと鬼の首を取ったようになってもらっても困るのである。でないと、ますます真実が聞きだせなくなってしまう。「30年たったら情報公開」という原則は、「30年たったら歴史」(ゆえに個人の責任は問わず)と解釈すべきであろう。

○今回の密約も、「ウチの亭主は30年前に浮気してました」みたいな話であって、今や老夫婦になってしまった日米にとって、それほどクリティカルな事実とは思えない。もちろん多くの国民は「浮気」を感づいていたし、その手の証言も少なくなかった。それでも政治家や外交官が「浮気はありません」と言い続けてきたのは、もちろん保身もあるけど、その方が国益だし、傷つく人が少なくてすむと思ったからであろう。

○今となっては「30年前の浮気」は、淡々と認めればいい話であって、詫びろとか許せんとかいう話ではないだろう。なにしろ冷戦時代のことである。ぶっちゃけ亭主としては、「あのときは皆がそうだったんだから」と言うほかはない。問題は白状するタイミングがなかったことである。政権交代はいい機会なので、この機に正直な歴史を残すべきだろう。

○ただし過去を暴くことによって、今の問題に影響が出てはいけない。どの艦船が核を積んでいるかどうか、なんてことは米軍にとって機密の最たるものだし、それを敢えてぼかすことによって核抑止力を高めるという「戦略的曖昧性」の原則がある。そして日本はみずからの安全保障を、アメリカの核に依存しているわけであるから、このことは「非核三原則」を守る以上に重要なことだと思う。

○ということで、核持ち込みの密約が明らかになったことが、現政権の得点になると言いたげな岡田外相や、「だから外務省は信用できない」と言いたげな河野太郎氏は、あんまり外交には向いておられないんじゃないかと推察する。これぞジョージ・ケナンが忌み嫌った「法律家的=道徳家的アプローチ」であって、清濁併せ呑む外交の世界はそればっかりでは務まらない。まあ、お二人とも野党の党首であればいいけど、外相や首相には向いておられないのではないか。

○逆説的に聞こえるかもしれないが、「法律家=道徳家」が多い世界では正直者が現れにくくなる。そして情報化社会というものは、ついつい「法律家=道徳家」を増やしてしまうものなのだ。ご用心。


<3月12日>(金)

○JSジャパンの「マーケットウィナーズ」の収録。この番組、図表をいっぱい使うこともあって、打ち合わせとリハーサルにとっても時間がかかるのである。だもんで、午後5時半にTV東京に関係者が集まって、収録が終わるのが10時過ぎとなる。45分番組をこれだけ丁寧に作るのは、ほとんどNHKのような仕事ぶりである(褒めているんですよ)。

○2004年から始まった番組なので、本当にいろんなことがあったなあと思うのでありますが、この番組も「サンプロ」と同様に今月末で終了なのであります。寂しくなりますね。以前から、「かんべえがこの番組に呼ばれるとマーケットが荒れる」という法則があった。いろんなことがあったものです。

○特に印象に残るのが、2008年11月に米大統領選挙の直後に出演した際のこと。リーマンショックの直後でしたから、コメンテーターの岡崎良介さんが大恐慌時の株価の研究を報告されていた。この内容は、当時執筆中であった「オバマは世界を救えるか」でそのまま使わせていただいた。とにかく出るたびに、何か学習する機会があるという、まことに得難い番組でありました。

○今回は「あと3回で終わり」を意識したのか、岡崎さんの奥様が見学に見えてられました。信じられないような夫婦仲の良さでありましたな。同世代人としては即座に脱帽であります。

○さて、問題です。これまでずっと金曜夜には番組の収録をしていた岡崎さん、これから先はどうするのでしょうか。答えは、これからは"Market Winers"で、ワインを飲みまくるのでありましょう。ジャンジャン。肝心の番組の放送は、明日の午前10時からです。


<3月14日>(日)

○1980年代のアメリカにはこんなジョークがあった。もうほとんど「歴史」みたいなものであるから、若い世代が聞くとビックリするかもしれない。が、当時は確かにこんな感覚があったのである。


問い:目の前にアメリカの3人の敵が現れた。ホメイニと、サダム・フセインと、ジャパニーズ・ビジネスマンである。ところが手元の拳銃の中には、弾丸が2発しか入っていない。どうするのが正しいか。

答え:ジャパニーズ・ビジネスマンを2回撃て。


○まあ、それくらい日本はしぶとくて、嫌な存在だと思われていたのです。でもそれは遠い昔のこととなり、今では何が恐怖かと言うと、「中国」である。「中国からの借金」(58%)の方が、「イスラム過激派によるテロ行為」(27%)よりも脅威である、てな世論調査があった。(ゾグビー、3月3日発表)

●Zogby Interactive: Americans Say Debt to China More Serious Threat Than Terrorism 

○しかし、ジャパニーズ・ビジネスマンがアメリカにとって真の脅威ではなかったように、中国による米国債の保有もアメリカの長期的な安全保障や国民の生活を脅かすものではないだろう。そもそも米国債の発行額はすでに10兆ドルを超えており、なおかつ今後も毎年1兆ドルを越える赤字が続く予定である。中国に9000億ドルくらい持たれても、せいぜい7%くらいである。先日も書きましたとおり、この問題で困っているのはむしろ中国の側だと思います。

○そんなことよりも、中国が買っているほかのものに気をつけた方がいいのではないか。イランに過去5年で100億ドルも投資しているとか、豪州やカザフスタンやコンゴの資源を買いあさっているとか、弱り目に祟り目のアイスランドに助けを申し出て、巨大な大使館を建設しているとか、おっかない話はたくさんありますぞ。

○ということで、そのうち「中国人を2回撃て」みたいなジョークが流行るんでしょうな。今年はこのページをちょくちょく覗いた方がよさそうです。


<3月15日>(月)

○全人代が終わったら、さりげなく人民元の切り上げがあるんじゃないかな〜などと軽く考えておりましたけれども、完全に当てが外れましたな。

●元切り上げ圧力に屈せず=中国首相が対米批判(WSJ)

○消費者物価の上昇率が3%近くなっているんだし、こりゃもう市場に逆らわずに、2008年7月以前の状態(バスケット制に基づくフロート制)に戻せばいいのに、と思いましたけどね。そこは政治と経済を秤にかければ、政治が重たい中国であります。周囲の雑音が気になったらしく、「冗談じゃない」ということになってしまいました。

○それにしても温家宝さん、手元には何も資料を持っていませんでしたが、データもちゃんと頭に入っているようで、しっかりした記者会見でしたね。「中国は既に欧州と米国にとっても輸出市場になっています」とか、「2008年7月から2009年2月にかけて人民元相場が下落せず、実効レートは14.5%上昇した」などという反撃は、いかにもツボを心得ています。

○しかしこのタイミングを逃してしまうと、なかなか「次」の機会がないのですよね。4月になると、米財務省の「為替報告書」があるので、そこで中国が為替操作国に指定されるかどうかという点が気になってくる。6月になると、カナダでG20があるので、そこで外圧がかかるのかどうか微妙なことになる。7月になると、そろそろ米中戦略及び経済対話ですよね、ということになるし、おお、人民元切り上げ5周年でもありますね、となる。

○結局、諸外国としては黙って見ている方がいいわけですが、かといって黙っていられないのも民主主義政治のアメリカでありまして、クルーグマン教授などがいろんなことを仰ったりするので、この辺が米中関係の面白いところです。

○今日は講演会で徳島県阿南市へ。気がついたら今は連続テレビ小説が「ウェルかめ」(徳島)、大河ドラマが「龍馬伝」(高知)、それとは別に「坂の上の雲」(愛媛)があったりして、NHKが四国シフトをしているのですね。今日はちょっと慌しかったので、じっくり見物する暇がなかったのですが、あらためて研究してみたいところであります。主催者の阿波銀行さん、事務局の日経BP社さんに御礼申し上げます。


<3月16日>(火)

○一昨日、『新報道2001』をボーッと見ていたら、鳩山邦夫さんが出ていて、新党を作ると言っている。ああ、明るい法螺吹きはいいなあ、最近はこの手の豪快な政治家が少なくなったからなあ、民主党の若手は暗いのばっかりだし・・・などと思っていたら、昨日、本当に離党してしまいました。番組中、平井政治部長は少々ヨイショ気味に、「舛添さんの人気、与謝野さんの政策、鳩山さんのお金が結びつけば・・・」などと言っていたけど、ちょっと話がうますぎるんでないの。

○今朝の文化放送で、『ソコトコ』に出ている内田誠さんに聞いたら、「邦夫さんは想像妊娠しちゃったのでは」と鋭いご意見であった。どうも龍馬伝を見ているうちに、勝手に気持ちが高揚してしまって、与謝野さんや舛添さんの意向を無視して突っ走っているのではないかと。確かに今、鳩山さんに同調すると、「お母様のお手当てが目当てか」などと腹を探られてしまう。これじゃホントに5人、集まるのかどうか。

○タイミングよく、お昼に脱力さんに遭遇。かつてのボスのご乱心に対し、「与党から割れて出る新党は続くけど、野党から割れる新党は消えますからねえ」と、きわめて妥当かつ客観的なコメントでありました。つまり、離党するなら去年の選挙前にすべきであったと。そういう意味では、「みんなの党」はあの時期に抜け出たのが正解だったわけですな。ちなみに上杉さん、新党事務局長のオファーは速攻でご辞退されたそうです。

○しかしまあ、ベテラン国会議員で、元法務&総務&文部大臣で、億万長者で、元東大首席で、料理家で、蝶の収集家で、とにかく怖いものなしの鳩山邦夫さん、何という蛮勇でありましょうか。今の永田町では笑われちゃうのかもしれませんが、これだけ突き抜けるとアッパレであります。さすがはアルカイダのともだちのともだち。

○思うに政治の世界って、打算や計算だけじゃダメであって、ときには明るい法螺吹きにもならねばなりません。坂本龍馬だって、三分の計算を七分の愛嬌でくるんだところに彼の勝ちパターンがあったわけですし。近頃の政治が停滞気味なのは、妙に計算高い若い人が多くなっているからではないでしょうか。力のある人の「捨て身」を甘く見てはなりません。麻生政権の末期も正にそうでしたが、鳩山邦夫の思いがけぬ行動は、大きな波紋を投げかけるような気がします。

○つい先日、佐野眞一『鳩山一族その金脈と血脈』(文春新書)を読んで、鳩山一族ってつくづく嫌な人たちだなあ、と思ったところでしたが、ちょっとだけ印象が変わりましたな。というのは別にして、この本、面白いです。


<3月17日>(水)

○今日は外務省の「EPAシンポジウム」でパネリストを務めました。この問題の専門家が一堂に会して、FTA/EPA問題の最新事情が一発で分かる、という大変お得な会合でありました。面白いことに、第1部には浦田先生、寺田先生という早稲田の教授が並び、第2部では木村先生、渡邊先生という慶応の教授が並びました。この問題をやるときは、早慶戦になることが多いのです。

○で、ワシは民間企業代表という位置づけなのですが、ちょうど2年前の2008年3月、ニュージーランドで行なわれたERIAセミナーに参加したときと比べると、アジアの広域経済連携についての認識はずいぶん変わってしまいましたね。要は、2年前はリーマンショックの前であるから、日本企業もまだまだ自信があって、「上から目線」でこの問題を語る余裕があったのです。今やアジアの雁行形態の先頭から脱落しかけている状況では、もうちょっと切迫した感じにならざるえを得ません。

○基調講演に立った岡本行夫さんが、「最近、国際舞台で日本の存在感が消えている。経済でも韓国に負けている」と思い切り煽ってくれたので、自分の番が回ってきたときに、3月5日分でご紹介した「日本企業が韓国企業に負ける7つの理由」をご紹介してみました。案の定、熱心にメモを取っておられる方が多かったですね。早く気がつかないと、エライことになりますぞ。

○今日は会場から、とっても鋭い質問が寄せられました。「EPAは国内を説得するコストが非常に高いので、政策としての費用対効果が悪いのでは」――誰だ、そんなヒドイこと聞くのは、と見たら、なんと関山健さんではないか。主催者側の思考の枠組みを大胆に外していて面白い。この手のシンポジウムにおいては「あらまほしき質問」だと思いました。

○浦田先生が、「単なるコストの問題ではなく、日本経済の構造改革の手法として必要。このままだと未来は暗い」とオーソドックスに答えられいたので、当方からは「日本にとって正しいことでも、人口の5%が反対するからできない、というのでは、そもそも意思決定システムとして、どこかおかしいのではないか」と”勇気ある発言”をしてみました。

○EPA政策は農業関係者の反対が強いので、自民党時代は十分に進まなかった。そして民主党政権になっても、参院選の前にはなかなかモノが言えない、という現実があります。これでダメだったら、いよいよ第三極を試すくらいしか手がないわけですが、そうなる前に何とかしたい。でないと、日本政治って何してるの、ということになる。

○たまたま、今日は国際問題研究所でも同様なシンポジウムがあって、挨拶に立った鳩山首相が「EPA政策の推進を」と述べたのだそうだ。厚生労働省や文部科学省に対する「お小言」もあったらしいけれど、あなたは総理なんだから直接、大臣に指示すればいいんじゃないの。国家戦略局で省庁間の利害調整をするのも良いと思いますよ。


<3月19日>(金)

このチャートはニューヨークタイムズ電子版の1ページですが、先日来、何度もチェックしております。これを見ると、党議拘束というものがないアメリカ議会の奥行きがよく分かります。

○間もなく、下院では医療保険改革法案の最終決選投票が行なわれます。435議席、うち欠員4、都合431人の下院議員のうち、過半数を取るためには216票が必要になります。今現在、賛成が197人、反対が200人。残り34人がどっちに向かうか。これで「オバマ政権の逆転大ホームラン」になるか、「やっぱりダメだった医療保険改革」になるかが決まります。最後の勝負はおそらく今週末。

○ちなみに2〜3日前にチェックしたときは、賛成が193人、反対が198人、態度未定が40人でした。まさに刻一刻、個々の議員の説得工作が行なわれている。その過程では、かなりキョーレツなことも行なわれているらしく、例えばこんな動きもある。


■米民主議員が議員辞職 法案反対に「執行部が圧力」(産経新聞、3月19日)

 米議会下院の民主党新人議員が突然、辞任した。辞任の理由として同議員自身はオバマ政権が全力で推す医療保険改革法案に反対し、大統領側近から脅されたことも含まれると主張する。いま一般国民の支持を減らしつつある民主党の動揺を象徴する事件として、この議員の辞任は波紋を広げ始めた。

 ニューヨーク州選出のエリック・マサ議員は3月はじめに唐突に辞意を表明し、9日、実際に議員を辞職した。民主党の1年生議員として議会活動を昨年1月に始めたばかりなのに辞任というのはきわめて異例だった。辞意の表明の際には、同議員は数年前に治療したがんの再発などを理由に挙げていた。

 ところがマサ議員はその直後、ラジオのインタビューで「本当の辞任の理由は私がオバマ大統領の推進する医療保険改革法案に反対票を投じたため、民主党執行部や大統領側近からものすごい圧力をかけられていたことだ」と語ったため、様相が一転した。

 下院本会議がオバマ政権の進める医療保険改革法案を昨年11月に可決した際、与党の民主党議員39人が反対票を投じたが、マサ議員もその1人だった。その後、医療保険改革への国民一般の反対が高まり、上院では下院案より政府の管理度合いをずっと緩めた法案が通った。オバマ政権はいまその上院案を下院にかけて成立させることを狙っている。

 この状況についてマサ氏は「私が下院に残れば、ナンシー・ペロシ下院議長ら民主党指導部はこんどの法案の可決には217、あるいは218の賛成票が必要だが、私が辞任すれば、216票ですむ。そのために辞職に追い込むよう脅しも含めて、いろいろな圧力をかけてきたのだ」と主張した。

 マサ氏はその「圧力」の実例として、大統領首席補佐官のラム・エマニュエル氏に議会のスポーツジムのシャワー室で「医療保険改革に反対を続けると、ひどい目にあわせるぞ」と脅されたと述べた。ホワイトハウス側はそれを否定し、民主党内で罵(ののし)り合いのような争いとなった。


○まったく、エマニュエル首席補佐官ならやりかねない話で、「これだからシカゴマフィアは・・・・」と言われるところでありますね。彼は、昔々の山口敏夫か鈴木宗男か、てなノリの辣腕政治家ですので。その一方、オバマ大統領も本気を見せてます。


●米大統領、外遊延期 医療保険改革、交渉が大詰め(朝日新聞、3月19日)

 ホワイトハウスのギブズ大統領報道官は18日の記者会見で、オバマ大統領が21日から予定していた米領グアム、インドネシア、オーストラリアへの訪問を6月まで延期すると発表した。

 オバマ大統領が内政の最重要課題に掲げる医療保険制度改革をめぐり、関連法案の採決に向けた米議会内の交渉が大詰めを迎えており、ギブズ氏は「関連法案の可決は最も重要であり、大統領は、それを見届ける決断をした」と説明した。

 オバマ氏は当初、18日から今回の歴訪に出発する予定だったが、同改革の採決に備える理由で延期、21日からとしていた。今回は2度目の延期となる。


○ポーカーの達人にして、意外なギャンブラー、オバマがとうとう本気を出している。勝負の流れとしては、逆風もいいところで、共和党議員を一人も味方につけていない時点で、かなり苦しい戦いだと思います。ただ今現在、態度未定34人のうち、19人に「イエス」と言わせればオバマの勝ち。18人であれば、ゲームセットです。

○下記の記事なぞを読むと、いよいよ最後はミクロの勝負になってきたことがよく分かります。ここは勝負師たるもの、ポーカーであれば「コール」、麻雀であれば「リーチ」と叫ぶところ。おそらく週明けには答えが出ていることでしょう。


●米医療保険改革法案、10年間のコストは9400億ドルに=CBO (2010年 3月 19日 8:07 JST)
..
http://jp.wsj.com/US/node_43193/?nid=NLM20100319 


<3月21日>(日)

○先日聞いた話です。福岡に出張した際に、「県内を代表するおもしろい中小企業はありませんか?」と聞いたところ、大牟田市にある小さなコンニャク工場に連れて行かれたとのこと。なんとここでは、海外の日本食レストランなど向けにコンニャクを輸出している。有名なところでは、アキバの「缶入りラーメン」の原材料の糸コンニャクは、ここが供給しているのだとか。

○大牟田市の石橋屋というらしく、「ミスター・コンニャク」と呼ばれている社長さんのブログもあるようですね。最近はTVや新聞で取り上げられたり、注目度が上がっています。コンニャクと言えば、1700%の関税に守られている典型的な過保護農産物ですが、それを高値で輸出しようという心意気が良いではありませんか。

○で、何とも不思議なのは、なぜ福岡でコンニャクなのか。コンニャク農家って、群馬県だけだと思っておりました。そのことを口にしたら、福岡出身の方がこんなことを言うんです。

「だって辛子明太子だって、地元の食材じゃないですから」

○そりゃそうだ。スケトウダラはたぶん北海道産だろうし、唐辛子は輸入品だろう。でも、福岡と言ったら明太子である。あれは地元の食材を使っていない名物、なのである。

○察するに福岡は、昔から半島経由の文化や情報が最初に入ってくる土地であったから、他所の素材を取り込んでオリジナルを生み出す能力が高いのではないか。それにしてもコンニャクの輸出、果たして成功するでしょうか。


<3月22日>(月)

○オバマのギャンブル、見事成功であります。医療保険改革法案は219対212で下院を通過しました。とりあえず、良かったと思います。もしこれがダメだったら、われわれは向こう3年間、レイムダックのアメリカ大統領と付き合わなければならなかったかもしれません。

○上下両院の法案をまとめるプロセスは、かなりトリッキーなもので、裏口から入るようなものでした。法案の内容もたくさん問題があって、「足りない」と「行き過ぎ」という双方からの反対があった。ただし、この際、"Better than nothing"と考えるべきでしょう。国民皆保険とは行かないまでも、先進民主主義国であれば当たり前の制度に、アメリカが一歩近づくことになるわけですから。

○ただし、この法案が通ったことによる反発も強そうです。この世論調査を見ると、アメリカ国民はこの法案のことを、「無保険者(+37)や低所得者(+27)にとってはいいだろうけど」、「アメリカ全体(▲5)や医薬品会社(▲7)、病院(▲9)、ミドルクラス(▲10)、高所得者(▲11)、医者(▲16)、保険会社(▲25)にとってはよくない」し、何より「自分と自分の家族(▲9)にとってよくない」と見ている。つまり民意はかならずしもついてきていない。

○こういう見方に対し、オバマは「それは法案が正しく理解されていないからだ」と反論してきた。またリベラル派からは、「公民権法やメディケアが成立したときも、全国民が賛成していたわけではない」という指摘がある。そうであれば、まことに結構。ただし、それでもこの法案がいろんな意味で「高くつく」可能性は否定できません。

○ひとつは財政の問題。「向こう10年間で9400億ドル」(CBO試算)というけれども、「3年連続で1兆ドルの赤字」を出そうというこの国にそんな余裕があるのか。そんなんで米国債を増発しても、もう買ってやらんぞ、と諸外国に言われたらどうするんだろう。まあ、赤字国債で子ども手当てを出そうという国もどこかにありますが。

○もうひとつは景気の問題。例えばこの法案では、「従業員50人以上の企業は医療保険を提供するか、罰金を払う」(Play or Pay)の原則が盛り込まれているが、これは当面の雇用情勢にとってマイナスであろう。増税(といっても年収25万ドル以上の人だけだが)も含まれているし。金融危機からの病み上がりの米国経済で、これで景気がこけたらどうするんだろうか。初めてSocial Security Taxが導入された1937年も、景気は崩れておることですし。

○最後に政治の問題。この法案成立は、共和党やTea Party運動にとっては「敗北」以外の何ものでもありません。中間選挙がどうなるか、という問題はさておいて、当面「超党派」という言葉は死んだも同然でしょう。オバマはアメリカを統合する人ではなく、分断する人になってしまった。しばし、米国政治は嫌な雰囲気が続くでしょう。


<3月23日>(火)

○大阪出張の帰り、新幹線の中からの更新です。

○聞けば大阪駅周辺(通称、梅田北ヤード)では、いろんな再開発構想が飛び交っているようですが、変なシンクタンクの誘致などを考えるよりは、新幹線の駅をこちらに移動することはできないんでしょうか。だって新大阪の駅って、ハッキリ言って不便だし、梅田に新幹線が止まるようになる方が、大阪の発展のためにはずっといいと思うんですけど。

○名古屋では大概の場所は、新幹線で降りてからすぐに用事が済むけれども、大阪では新大阪駅から30分以上を見込まなければならない。東京から見ると、だから名古屋は便利だけど、大阪は不便だなあ、ということになる。このことによる逸失機会は少なくないと思います。「大阪の地盤沈下」ということがよく言われますが、その何%かの理由は、新大阪駅の場所のせいだと思います。

○仮に新幹線が梅田に止まってくれるのであれば、おそらく筆者が千葉県柏市の自宅に帰り着く時間は、今より30分くらい早くなるでしょう。(今日だって、とっても遅い時間になってしまうんですよ、トホホ)。新幹線の駅が変われば、大阪はずっと身近になるはず。まして今後は、鹿児島行きの新幹線も大阪から出るようになるわけですし、北陸新幹線だっていつかは大阪に乗り入れするでしょう。だったら、新幹線の起点を変えるというのは、非常に良い投資だと思うのであります。

○少なくとも、今さら「環境ナレッジキャピタル」なんぞを誘致しても、あんまり意味ないと思いますよ。神戸の医療先端都市構想だって、行き詰っているみたいじゃないですか。以上、素人考えですけど、ご提案申し上げる次第です。


<3月24日>(水)

○鳩が豆鉄砲くらったみたいになって、必死こいて電話してきたから承諾したけど、オレはウブカタなんて雑魚は知らねーっつーの。そんなヤツ、クビにしようが、復帰してもらおうが、どっちでも構わんよ。読売新聞の出身なんだって?じゃあ、あれじゃねえか。ナベツネ野郎の差し金なんじゃねえのか。どの道、天下のご政道に影響はねえんだよ。オレの評判が下がったって、別に構わんよ。今さらどうしようもねえんだし。

○それより洒落にならねえのはアメリカとの関係だよな。こないだやって来たカート・キャンベルのヤツ、血相変えて「日米合意の履行以外は受け入れられない」とか言ってたけど、そりゃ鳩の野郎があんな風にしちゃったんだもの、オレには責任ねえわな。昨日、官邸で学級会よろしく、「○○君はどこがいいと思いますか?」「ハーイ、ヘノコの陸上がいいと思いまーす」「オオムラワンもいいと思いまーす」とかやってたらしいけど、そりゃ意味ねえって。いくつ案を出しても、答えは一緒だっつーの。

○問題なのは、4月の安保サミットなんだな。まさか鳩が出ないわけにはいかないし。ここはひとつ、ワシントンに乗り込んでいって、「わが国は唯一の被爆国として・・・」ちゅーいつものお題目を唱えなきゃいけねえわけだ。でも、行けばオバマも困るだろうな。会えば「おい鳩、宿題はどうしたんだ。もうすぐ5月だぞ」なんて、イヤミのひとつも言うだろうし。でも、こっちは答えがないわけだ。トラストミー、も2度目は使えないし。いっそ、国会を理由に欠席した方がいいんでねえの。

○ところが妙な巡り会わせで、4月はわが国が国連安保理の議長国なんだわな。ということは、イランの核開発に対する制裁を決めなきゃいかんのだが、アメリカさんとしてはウチに仁義を切らなきゃいけないわけで、鳩もツイてないようでツイてる男だわな。5月の安保理議長はレバノンなんだって。アルファベット順だと、Jの次はLなのか。そりゃ4月中になんとかしなきゃいかんわな。ホントのところ。

○まあ、ウチはイランがどうなろうが知ったこっちゃないから、細かいことはどうだっていいんだよ。で、5月になって、いよいよ日米関係が座礁寸前のところで、オレが出て行くしかないわけだ。ワシントンなんて久しぶりだけど、要は嫌われ役を買って出る人間がいるっつーことよ。

○でもって、沖縄の皆さんゴメンナサイ、やっぱりアレしかないんです。社民党の皆さん、お気に召さないなら出てってください。国民新党さんはどうされますか? とまあ、オレが頭を下げる。それでうるさい奴らはいなくなる。これでアメリカに恩を売れる。中国はもとより怖くない。検察もおとなしくなったし、結構毛だらけじゃねえか。

○ただし選挙は負けだな。そりゃま勝てりゃあそれに越したことはねえけど、普通は負けるわな。鳩はそこで引責か。みこしは軽くてパーがいい、とは我ながらよく言ったもんだわ。幸いなことに、コーメイちゃんが連立したがっているから、議席が減ったところでどうってこたあねえ。ねじれたところで、衆議院で300議席があるんだから、再可決の連発でも文句は言わせねえ。要は2013年夏までは電車道ってことよ。

○さて、次のパーは誰にしようかな。いっそ女性っつーのも、意表を突いてて面白いかもしれんな。ま、そんときになってから考えるとしようか・・・・。


<3月25日>(木)

○今日、軽くショックを受けたこと。時計屋さんで電池を変えてもらっている最中、ふと隣で並べてあった老眼鏡をかけてみたら、ビックリするくらい細かい字が読めたこと。ああ、そうだった。オレって昔は、どんな細かい文字でもビシッと見えたのだ。今や家でPCを見ていると、「眉間に皺が寄っている」などと娘にからかわれる。電車の中の読書もツライ。まあ、しょうがないんですけどね。

○ちょっと迷ったが、1575円也のメガネを買わずにその場を撤退。だってメガネって、使ったことないんだもの。せめてこの秋の50歳の誕生日までは、メガネフリーの生活を継続しよう。こういうのを意地というのか、モノグサというのか。(たぶん両方だと思います)。

○さて、明日はちょっくら沖縄に行って来ます。


<3月26日>(金)

○昨日まで雨でコートを着ていた身には、18度Cの気温はちょうど心地よく感じます。ところが、昨日の那覇は27度Cもあったとのことで、地元の人は「今日は寒い」と言っています。当地では3月が「衣替え」のシーズンなんで、かりゆしウェアの人もいらっしゃいますが、「やっぱり、やめときゃ良かったかな」てな声も。

○でも、そこは1月に桜が咲く沖縄ですから、夏はもうそこまで来ている。当地で子供服店を営む人に聞いた話では、「春物の服なんて、ここじゃ必要ないんですよ。本土に合わせていちゃ、やっていけないんです」。なるほど、日本は広い。

○本日はこちらのジャスコ関係店の総会で、講師に呼んでもらいました。テーマは日本経済で、群馬でも、大分でも、徳島でも、大阪でも似たようなことを話しておるわけですが、沖縄経済といえばやはり観光産業は外せない。ということで、最近はやりの「観光立国」という話は、ちょっと間違っているんじゃないか、という話をしてみました。

○カネをかけない景気対策として、観光振興に力が入ることは自然な流れだと思います。今の日本人は、モノは飽きるほど持っていて、家は狭いし、あの世まで持っていけないから、これ以上モノは要らないと言っている。でも、旅の思い出はいくらあっても邪魔にはならない。ゆえに究極の平和産業たるツーリズムには、無限の可能性がある。と、ここまではよろしい。

○で、わが県はとってもいいところですから、皆さん来てくださいと訴える。そのためには、世界遺産に登録したり、グルメを作ったり、気の聞いた土産物を考案したり、変なキャラクターやPRソングを作ったりする。でも、それでホントにお客さんが来てくれるんでしょうか。それって、とっても間違った努力をしてるんじゃないかと思うのです。

○風光明媚だとか、歴史上の遺跡があるとか、旨いものがあるからという観光は、1回行って写真を撮ったらそれでおしまい。リピーターを獲得できるかどうかは分からない。外からお客を呼ぶ力は、本当は人間にこそあるのではないかと思うのであります。沖縄が典型ですけれども、愛される観光地というのは、そこに住む人や文化がファンを作っている。

○海外に比べると、日本はインバウンド、アウトバウンドともに旅客数の比率が少ない。でも、それって当たり前の話で、外国で「渡航目的」を尋ねると、「観光」の次くらいに「親戚・友人を訪ねる」という項目がある。海外に親戚や友人が居る日本人は多くないですから、その分、人の移動が少なくなる。仮に、家族の誰かが国際結婚をしているとか、海外暮らしをしたことがある人に限って統計を取れば、かなりの確率で海外旅行をしているということになるでしょう。

○要は旅行を決意させる動機は、ガイドブックや世界遺産ではなく、「自分が知っている人」にあるということです。だとしたら、「観光客を呼び込むため」の努力とは、「まず自分が他所へ出かけること」でなければならない。他所の魅力を知ると同時に、自分のところの良さを確認する。そして人間関係を広げることで、お客を呼んでくることでありましょう。

○今の日本は「貧すりゃ鈍す」的な間違いが多くなっていて、自分は他所へ行かないけど、他人には来てほしいという虫のいいことを考えている。そんな貧しい発想で、人が来てくれると思ってはいかんでしょう。

○しかも政府が先頭に立って、休日を分散すれば旅行客が増える、なんて馬鹿なことを言っている。兜町が開いている日に、北浜は休めというのか。製造業はジャストインタイムをあきらめなきゃいけなくなるし、単身赴任のお父さんは子どもたちと休みの日が合わなくなる。せめて「勤め人経験」がある人がもう少し政権内に居れば、こういう愚かなアイデアは出てこないと思うのですが・・・・。

○さて、本日の高校野球では、当地の興南高校が4対1で岡山代表の関西高校を下し、1回戦を突破しました。3度目の甲子園で初勝利を上げた島袋投手への評価は高いです。さて、ここで問題。沖縄代表校の球児たちは、かつては「寒さに弱い」ために、春の甲子園大会ではなかなか勝てませんでした。さて、沖縄勢がセンバツで初勝利を上げたのは何という高校でしょうか?

○答えは1971年の普天間高校。本土復帰の1年前に、「フテンマ」の名前を全国にとどろかせたのでした。


<3月27日>(土)

○那覇空港で見つけた数字。以下は那覇空港から各都市への距離(直行便)です。

<国内>

札幌 2418キロ
東京 1721キロ
名古屋 1470キロ
大阪(伊丹) 1304キロ
福岡 1008キロ
松山 978キロ
鹿児島 758キロ
石垣島 414キロ
宮古島 352キロ

<国外>

台北 655キロ
上海 792キロ
香港 845キロ
ソウル 1258キロ
マニラ 1300キロ
シンガポール 3745キロ

○つまりこういうことです。

「鹿児島よりも、台北が近い」

「福岡よりも、上海や香港が近い」

「大阪よりも、ソウルが近い」

○このポジションをどう生かすか。ビジネスや観光はもちろん、安全保障面においても、沖縄はまことに重要な拠点なのであります。


<3月28日>(日)

○テレビ朝日「サンデープロジェクト」が今日で最終回。1989年4月から2010年3月一杯まで、ちょうど21年。平成の歩みとともに、何度も政局を揺るがすような放送を繰り返してきた番組です。後半の特集コーナーも、優れたドキュメンタリーを数多く送り出してきたと思います。ちょうど「"Meet the Press"と"60 Minutes"を組み合わせたような番組」でありました。

○他方で、こんなに物議を醸した番組もなかったでありましょう。「あの田原は何とかならんのか」みたいなことを、今までに何度聞いたか分からない。でも、他人が何を言っても聞かないからこそ田原さんなのでありまして、今日だって全然めげていませんし、涙もなし。とにかくお疲れ様でありました。

○今日のお昼から行なわれた「サンプロ終了パーティー」では、黒岩祐治さんがいらしてました。考えてみれば、日曜朝の政治番組を飾っていた2人が相次いで降板したのは、やはり時代の変わり目だったんでしょうか。「もっと続けられるのに」という思いはありますけど、番組とか雑誌というものは、「旬」や「寿命」というものがありますので、これはこれで正しい判断だったのでしょう。

○不肖かんべえは2006年5月から2009年2月まで、この番組のコメンテーターを務めました。登場回数53回は歴代9位だったそうです。とはいえ、8位の松原聡先生が100回だそうですので、レベルはとっても低いです。どの程度、番組に貢献できたかは怪しいところですが、個人的にはとても収穫の多い3年弱でした。

○番組のお陰で知り合った人たちとの話に花が咲いて、ふと外を見ると六本木ヒルズの桜が咲き始めております。そういえばもう年度末。いろんな番組や雑誌が終わったり、リニューアルしたりします。間もなく2010年度の始まりですね。


<3月30日>(火)

○「サンデープロジェクト」の後継番組は「サンデーフロントライン」といいまして、来週日曜から同じ枠(10:00〜11:45AM)で始まります。略称で言うならば、「サンプロ」が転じて「サンフロ」となる。さて、ここで問題です。サンプロとサンフロの違いはどこにあるでしょう?

○答え:新番組「サンフロ」にはマル(お金)がない。

○あんまり洒落にならないギャグなんですが(テレビ朝日さん、我慢し切れなくて書いちゃいました。ゴメンナサイ)、ふと思えば今までの政治討論番組って、とっても贅沢な作りだったんじゃないでしょうか。

○アメリカでも日曜午前といえば、Meet the Press(NBC)とか、This Week(ABC)とか、Face the nation(CBS)とか、最近はFox News Sundayというのもあるらしいですが、やはり政治討論番組の時間帯です。ただしこれらの番組は、VTRやアバンはナシで、素朴なスタジオに政治家のゲストを招いて、ホストが一人と保守、リベラルのコメンテーターが一人ずつくらいで、地味〜にお話を聞くのが普通です。要はBS放送みたいな感じなんです。

○おそらく視聴率もさほど高くなくて、媒体としての広告料も格安で、でもそこは物好きなスポンサーも居るので、一応ビジネスとして成立する、という感じなんじゃないかと思います。それでもって、政治に与える影響は抜群に強い。おそらく政治の世界の人たちや、シンクタンクなどの政策コミュニティの人たちは、非常に高い確率で見ている。それ以外の人たちにとっては存在しないも同然である。要は政治オタクに特化した番組なんです。

○日本では民度が低いようで高いですから、政治討論番組を朝から順番に見比べるような人たちが全国各地にいて、床屋清談のレベルが意外と高かったりします。でも、それは竹村健一さんとか田原総一朗さんたちが、過去に民放各局と一緒に作り上げてきた「聴衆」でもあるわけです。彼らを惹き付けるために、真面目な政治討論をいかにエンタテイメントにするか、単なるエリートの議論ではなくて、ちゃんと数字の取れる番組にするかという努力が、積み重ねられてきた結果だったと思うのです。

○でもまあ、そろそろその辺の「ケレン味」はもうそろそろ不要なのではないか。一昨日のように、生放送の本番で閣僚同士が相手を罵りあうという図式は、確かに面白くはありますが、これはかなりみっともない状況です。中国大使館あたりでは、番組を見ながら、本国にどういう電文を打っているか。この辺で少し政治討論番組を、オトナにした方がいいのではないかと思う次第です。


<3月31日>(水)

○ふと手に取った『人間の器量』(福田和也/新潮新書)。「なぜ日本人はかくも小粒になったのか」という帯がついていて、過去の偉人たちが福田流で解説されている。大隈重信は50歳を超えてから人間が変わったとか、山本周五郎は原稿料を貯めずに使ったとか、田中角栄はすごい人だったけども、直接会った人以外には伝わらなかった(だから早坂茂三のような語り部が必要だった)とか。・・・・通俗的ながら、こういう話は楽しい。

○人物月旦というのは本来、楽しいものです。今の政界を見渡すとホントに人材がおりませんし、経済界も低落傾向を否めません。まあ、ないものねだりをしても仕方がないし、鳩山政権のここが悪い、あそこがケシカランなどと言い出すと、いくらでも出てきて精神衛生上よろしくない。(まあ、せめてもうちょっとラーニングカーブがあるといいんですけど、あの人たちはずっとこのままでしょうなあ)。

○ということで、別に現実から目をそらすわけではありませんが、わが国の歴史上には「人間の器量」の見本のような人物がゴロゴロしております。それを評論してくれる人もいっぱいいる。だから今日のわれわれは、彼らから学ぶことが出来る。その点は何とも幸福なことといえましょう。

○実は先日、少し前にちょっと面白い経営者の話を聞く機会があって、感心したのです。翌日になって、その人が話していた内容を思い出して、メモを作ろうとしばし格闘したのですが、急にあほらしくなって止めました。だって今どき、「ああ、久しぶりにバケモノみたいな経営者がおるなあ」と思えたのだから、それだけで十分に幸せなことではないかと。

○あの人、会社をつぶすかもしれないし、社内クーデターで引きずり降ろされちゃうかもしれない。でも、そういうのを見てみたい。やっぱり党や会社は、キッチリ内部闘争をやらなきゃあきまへんで。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki