●かんべえの不規則発言



2010年6月






<6月1日>(火)

「小沢が動いたからには、鳩山も今日までだろう」

「あの人は辞めないでしょう。マスコミがまた勘違いしているだけ」

○両方の意見が交錯した一日でしたが、夜になってみると「鳩山降ろし」は不発で、どうやらサスペンデッドゲームのようです。総理がその気にならないものを、周囲が辞めさせることはできませんものね。いつものことながら、周囲を失望させることに関しては、鳩山さんの能力を見くびってはなりませぬ。

○おそらく参院の民主党改選組の皆さんは、「このままじゃ選挙を戦えない」ということで、鳩山降ろしをやるんでしょうけれども、できれば鳩山さんにはもう少し「鈍感力」を発揮してもらって、時間を浪費してもらえばいいんじゃないかと思う。そうやって郵政見直し法案が廃案になる方が、日本経済のためにはよさそうだし。

○さてさて、明日もスリリングな一日になりそうです。


<6月2日>(水)

○結局、鳩山さんは辞任でありました。窓の外の青空を見ながら、そういえば2007年9月12日の安倍さんの辞意表明の日もこんな感じであったなあ、などと思い出しました。こんな風に、日本のリーダーが「辞任慣れ」していくのはしみじみ哀しいことであります。

○早速、WSJでは厳しい論説が掲載されていて、誰がこんな上手いこと書くんだろう、と思ったらマイケル・オースリンの筆であった。ばかもん、ちょっとは遠慮せんかい。ぐさっ。


 日本で過去5年間に見られたような政治花火ショーは、いかなる民主国家にとっても憂慮すべきものだ。アジアで最も古い民主主義国家で、かつ世界2位の経済大国である日本では一層懸念される。中国が政治的・軍事的影響力を強め、タイで民主主義が包囲され、北朝鮮が韓国を襲い、世界の景気回復が停滞する危険性があるなか、日本が強くあるべきと唱えるのはメロドラマ的であるかもしれない。日本はアジアと世界で主導的な役割を担う人的・物的資本を持つが、政治システムが常に混乱した状態でそうした役回りを演じるのは不可能だ。

 ほぼ20年に及ぶ経済・政治的スタグネーションに耐えてきた日本国民は、信頼と夢を託した政治家からもっと多くを得てもいいはずだ。


○てなわけで、今週金曜日には民主党代表選→首班指名→組閣→認証式→新政権発足となるでしょう。誰が次期首相になるのかは分かりませんが、あんまり冒険はしないでしょう。おそらくは、過去の民主党代表経験者の中から選ばれる。候補者は2人程度で、勝ったほうが代表になり、負けたほうが幹事長になって挙党体制を演出する。・・・・あまりパッとしませんなあ。

○そして次期政権の前途には、今月のサミット出席やら、来月の参院選やら、8月末の辺野古の工法検討期限やら、いろんなハードルが控えている。最悪の場合、9月の代表選でまたまた首相差し替え、なんてことになるかもしれない。実は今月はダライラマが訪日する予定なんですが、その辺の扱いひとつとっても地雷が一杯なのであります。

○自民党は1年ごとに首相が代わった。それを批判していた民主党が政権を取ったら、1年に2回代わるようになった。というのではまったく洒落になりません。もちろん自民党にそれを批判する資格はないけども、有権者は許さないでしょう。となれば、「早く解散・総選挙を」ということになる。解散が近いと見れば、みんなの党や公明党も民主党と連立しようなどとは思わなくなるでしょう。

○さて、かつての細川内閣からちょうど1日短くなった鳩山政権8ヶ月の経緯から、何か教訓じみたものを拾い上げるとしたら、やっぱりリアリズムの欠如した政権だったということに尽きると思います。今日の退任挨拶も、全文を読んで見ると、前半はそうでもないのだけど、後半部分はしみじみ頭痛がする。宇宙人の面目躍如というか、女々しい自己憐憫というか、とにかく語れば語るほどボロが出てくる人でありました。

○永田町に当たり前のリアリズムを取り戻さないと、ホントに大変なことになりますぞ。例えば国会日程からいって、郵政法案が廃案になりそうなのは、私的にはまことに結構なことだと思うけど、その場合、日本郵政の現場はどういうことになるんだろう。

○ところで明日は急きょモーサテに登板となりました。少し寝ます。


<6月3日>(木)

○今朝の新聞各紙を見ていて思ったこと。

○鳩山首相退陣を受けて、各紙で「民主党はちゃんと大人になれ!」的な座談会が行なわれている。でも、そこに出ている政治学者の中には、昨年夏には「もう自民党はおしまいだ」と言って民主党支持の旗を振っていた人たちが少なからず含まれている。山口二郎教授あたりは素直に反省の弁を述べているけど、過去の自分の発言に口をぬぐって、「日本政治の劣化は目を覆わんばかりである」などとごまかしているのはどうかなあ、と思います。

○まあ、これは構造的な問題でもある。エコノミストの世界で「郵政民営化に賛成か反対か」と聞かれて、反対だと答える人はあんまりいない。それはほとんど自己矛盾に近い。金融界でも、郵政見直し法案に賛成だ、なんて人はいないだろう。だからこの点で、エコノミスト業界はどうしても反民主党の党派色を帯びてしまう。

○他方、政治学者に向かって「政権後退に賛成か反対か」(後記:これはもちろん「政権交代」の誤植。フロイト的な言い間違いというべきか)と聞いた場合、反対だと答える人も少ないだろう。だから政治学者のほとんどは、民主党寄りの党派色を帯びてしまった。今となってはすごくカッコ悪い。でも、悪いのは彼らではなくて、民主党自身であろう。

(正直なところ、当初からこの政権に気乗りがしなかった当方としては、「あの人たちのことが分かってなかったんじゃないの?」と突っ込んでみたくもあるが)

○二大政党の時代というものは、こんな風に政策に携わる人全体を巻き込んで対立の構図を作ってしまうものらしい。つまり勝ち組、負け組ができてしまう。「鳩山のブレーン」を自称していた人たちなんて、カッコ悪さにおいては極致みたいなものだろう。今まで宇宙人に進言してきたわけですから。

○まあ、それでも民主党政権が8ヶ月進むと、「日米関係はやっぱり大事だよね」「経済成長戦略は必要だよね」「経済界と距離を置くのは考えものだよね」程度のコンセンサスはできてきたんじゃないかと思う。次期政権も、この辺は是非、共有してほしい。

○対立点を明らかにした上で、一致点を見出していくのが政治というものですから、人は意見を変えることにやぶさかであってはなりませぬ。


<6月4日>(金)

○名前を言えば誰でも知ってる某重要組織において、先週、新旧会長の交代パーティーが行なわれた。鳩山首相が来賓として祝辞を述べた。祝辞が終わった後で、新会長はこう言ってしまったのだそうだ。

「総理はここでご退任されます。皆様、盛大な拍手をもってお見送りください」

○フロイト的な言い間違えなんでしょうけれども、これはさすがにスゴイ。途中で気づいても、けっして訂正したりしてはいけない、という種類の失敗でありました。いやあ、やりますねえ、新会長。さすがは財界の総本山。

○この予言が的中したかのように、今週、鳩山さんは退任を表明しました。今日は首班指名が行なわれました。でも、実はまだ鳩山さんが首相のままなんですよね。だって認証式が行なわれていないもの。菅さんは「首班」に指名されたけど、「首相」にはまだなっていない。「仙谷さんを官房長官に」などと言っているのは、すべて内定ベースの話です。

○今日中に組閣を済ませてしまえば、こんなことにはならなかった。でも、菅さんは6月8日に先送りしてしまいました。今朝の時点ですべての閣僚は辞表を提出しているけど、代わりが決まらないから空席です。今週末は空白の3日間となります。何か突発的な事件が起きたら、鳩山内閣の大臣が対応するでしょう。さすがは危機管理の民主党内閣。

○ちなみに、天皇陛下は6月4〜8日は葉山で静養のご予定でありました。でも、4日が組閣になりそうだから帰ってきてください、とお願いして予定を変更させ、今日になってやっぱり8日にしましたから、どうぞゆっくりなさってください、と伝えるというのは何というべきか。以前であれば考えられない失態でありますが、さすが全共闘世代は違う。

○ということで、今週末までは鳩山さんが首相です。言葉が軽い、と言われた首相でしたが、以下の言葉は今後は使いにくくなってしまいました。

●「命を守りたい」→今から思えば、渾身の一発ギャグであったのかも。

●「東アジア共同体」→中国や韓国はお付き合いで「結構ですねえ」と言ってくれてたけど、しばらくは禁句ですね。

●「トラストミー」→日本人全体が自粛したほうがよさそうです。

●「腹案」→ギャグならいいけど、真面目な文脈ではしばらく使えません。

●「宇宙人」→ホンモノの宇宙人がいたら怒るでしょう。

(後記:「友愛」を忘れてた。でも、この言葉は鳩山家御用達ですから、いいですかね)。

○とりあえず次期首相には、「言葉を大切に」とお願いしたいですね。


<6月6日>(日)

○今週末は町内会ウィークである。

○土曜は、町内会の親子会で恒例のボウリング大会。でもウチの娘は居なかったりする。親だけ付き合いででるとはいかなることぞ。ちなみにスコアは108と117であった。「ちびっ子レーン」でガーターのない状況であったわりには低レベルであるが、毎年こんなものである。右ひじと足に筋肉痛が残るのも例年通り。

○日曜は、町内清掃のドブさらいと草むしり。朝9時からと言いつつも、「新報道2001」が終わるより早く外が動き出してしまうのが、いつものことながら町内会の恐ろしさである。一斉に動き出すので、異様に早く仕事が片付くのも例年通りである。それにしても今年は天気が良くてよかった。

○問題は、清掃後の打ち上げが長引くことである。昼間からビールを飲むと、一日使い物にならなくなってしまうではないか。ということで、打ち上げはスルー。夕方になって集会場の前を通ったら、まだ続いていた。うーん、あぶないところだった。次はいよいよ夏祭りだなあ。


<6月7日>(月)

○このところ民主党議員の友人・知人から、いくつか案内状が舞い込んでいる。時節柄、ビミョーなものが少なくない。


●たるとこ伸二 政経フォーラム 朝食勉強会 6月10日

 講演「日本のために―参院選の課題と民主党」 衆議院議員 樽床伸二

――まさに絶妙のタイミング。まさか「鳩山退陣→代表選名乗り」を事前に想定していたわけではないでしょうが、おそらく今週木曜の朝は千客万来でしょう。ちなみに不肖かんべえは、以前にこの会の講師を務めたことがある。もしもお客が少ないんだったら、2万円持って出かけてみてもいいんだけどな。


●蓮舫総決起集会のご案内 6月16日(水)19:00開会  日本青年館

 来賓予定:仙谷国家戦略相、枝野行政刷新相、長妻厚生労働相、野田財務副大臣

――こちらは6月16日の会期切れを想定して、この夏の改選に向けて予想を組んでいた。しかしどうやら会期は延長、ご本人は大臣のお鉢が回ってきた。それも少子化担当大臣どころか、重量級の行政刷新大臣である。さらに来賓は官房長官、幹事長、財務相に次々とグレードアップ。めでたいのか、迷惑なのか、ちょっと測りがたし。


○ということで、この週末の鳩山→菅の首相交代劇により、いろんな予定が変わって悲喜こもごもといった様子である。さて、今後の日程はどう考えればよいのだろう。

○目下のところ、いちばん多いのは「2週間程度の会期延長、投票日は7月25日」という声で、これはまあ無難な線といえましょう。皆さん、やっぱり8月の選挙戦はイヤですよね。2年連続で暑い夏の選挙なんてのは、願い下げにしたいというもの。2週間の会期延長があれば、とりあえず、与野党で合意ができている公職選挙法改正案(選挙期間中のインターネットを利用した選挙運動の解禁)あたりは、すっと通せるというもの。

○問題は郵政見直し法案ですな。これは簡単じゃない。そもそも総務委員会では放送法の改正案がかかっていて、審議入りの目処がついていない。なおかつ、「参院選のある年は審議未了法案は継続審議にしない」ことが慣例となっているので、ここで決まらないと廃案になってしまう。この点、まだ衆院を通っていない労働派遣業規制法案の方が扱いやすいというもの。

○郵政見直し法案の場合、本気で通そうと思ったら結構、難しいだろう。参院における与野党の議席数差はビミョーなので、民主党内の消極派議員が何人か造反、もしくは欠席すれば通らなくなってしまう。そもそも新・官房長官殿や新・幹事長殿も郵政見直しには消極的で、「小沢さんが言うから仕方なく」というモードではなかったか。逆に自民党側には、内心では賛成したがっている「元・民営化反対議員」が少なからず存在する。強行採決すれば、とっても面白い絵図が見られそう。

○しかるにクリーンな政治を目指す菅新首相としては、発足早々に強行採決なんてことはやりたくない。ここはひとつ、「一生懸命やってみたけどダメでした」という構図を作るほうが利口ではないだろうか。国民新党としても、「衆議院までは通しましたが、参議院で負けました。だから一層のお力を与えてください」と言いつつ選挙に突入できるので、その方がお得だと思うのですよね。

○あらためて振りかえってみると、菅新首相と亀井郵政相の連立合意は、「郵政法案の速やかな成立を期す」という、この手の文言にしてはファジーな内容であった。「成立を期す」という言葉は、「成立を目指す」よりは強いけど、「成立させる」、もしくは「成立を図る」よりは弱い。つまり、これは菅&亀井のプロレスかもしれないわけだ。

○もとより郵政見直し法案が廃案になれば、経済界にとっては悪い話ではない。WTOで欧米から提訴される心配もなくなるし。あ、日本郵政の現場でどんな混乱が起きるのかは分かりません。斉藤社長、どうするのかな。

○困るのは自民党である。菅政権を攻める材料は多いようで少ない。「小沢を政倫審に呼べ」→「もう幹事長を辞めましたから」、「普天間はどうするのか」→「日米合意を守りますから」で、後が続かない。「郵政民営化はわが党が得た国民的合意である」というカードが使えなくなるのは痛い。鳩山&小沢コンビが消えた効果は絶大といえよう(この点については、当欄5月1日付けをご参照)。

○そんなわけで、政治日程というのは非常に重要です。「天皇陛下の日程をチェックしてませんでした」なんてのはこれを最後にしてくださいな。


<6月8日>(火)

○その昔、ワシントンに出張してどこかのシンクタンクのセミナーを聞いていたところ、隣に座っていた長身の女性がどうも日本人っぽい。はて、話しかけようか、その場合は英語か日本語か、などと考えていたら、当の女性に話しかけられた。

「ひょっとして、“かんべえさん”じゃないですか?」

○それがビビアンこと東海由紀子さんとの初対面でありました。で、今日は彼女の選挙事務所開きだったのです。よりによって菅内閣が発足する日に、何と酔狂な。しかも、今や候補者が乱立して「鬼の住処」の感もある東京選挙区に、自民党二人目の候補者として突入する。何と勇敢な。事務所が六本木一丁目とご近所なものだから、ついつい見に行ってしまいましたがな。

○やや手狭な東海事務所の前に街宣車が横付けし、自民党のお歴々が勢ぞろいしている。先週まではちょっと余裕をかましていたかもしれないけれど、皆さん表情は硬い。それもそのはず、鳩山&小沢のW辞任を受けて状況は一変しましたからな。執行部同士を突き合わせてみれば、以下の通り明々白々ではありませぬか。

党首決戦:菅対谷垣、迫力で菅の勝ち

幹事長決戦:枝野対大島、理屈が通って枝野の勝ち

政調会長決戦:玄葉対石破、理屈で勝てても、見てくれで玄葉優勢か

国対委員長決戦:樽床対川崎、理屈でも好感度でも、たぶん樽床の勝ち

○とはいえ、そこは野にあっても自民党。マイクを握る皆さん、揃って芸達者なのである。林芳正さん、声が腹から出ていて貫禄あり。山本一太さん、いつも通りの直滑降アピール。河本健夫さん、すんません、何を言ってたのか忘れてしまいました。途中で駆けつけた谷垣禎一さん、人差し指を立てるポーズが板についてきた。三原順子さん、これが意外な拾い物で、癌サバイバーの体験を熱く語って技能賞。

○そして、何といっても真打ちは麻生太郎前総理である。「今日はね、日本で初めての本格的左翼政権が誕生しますよ」「市民運動出身だなんて、べ平連のことじゃないか」・・・・いつもの麻生節なんだけど、聴衆の受けは今ひとつか。やはり、「民主党は表紙だけ変えてもダメ」みたいなことを口にした瞬間、「アンタたちには言われたくない」というツッコミが入りそうなので、この辺が下野したばかりの辛さというものか。

○新首相は"Natural Born Populist"であり、"Super Realist"である。前任者と同様に、野党の幹部を10年以上もやってきたのに、経済・金融も外交・安保もほとんど知識がない。にもかかわらず、意外とボロを出さないのは、前任者と違って政治的嗅覚が鋭いからだろう。民主党としては、その直感力に賭ける以外にない。果たしてどこまで行けるのだろうか。G20の外交デビューはちょっと怖いぞ。

○投票日は少し先に伸びるかもしれないが、決戦のときは遠くない。どうなる、どうする参院選。


<6月9日>(水)

○小沢さんは嫌いだし、鳩山さんは許せない、とかねてから思っていた不肖かんべえとしては、今週発足した菅政権の前途を祝福するつもりはないけれども、さりとて呪いたくもない。今のところは、まあまあ上手くやってるんじゃないかと思う。というより、これがまたまた短命政権で終わってしまうと、それこそ日本政治の対外的信用が地に落ちてしまうので、ここはひとつ頑張っていただきたい。

○そのためには、何はさておき鳩山政権の失敗に学ばねばなりませぬ。鳩山政権の「失敗の本質」は、「何でもかんでも自民党の逆をやろうとした」ことでありましょう。これはアメリカ政治においても、政権交代時にはありがちなことです。歴史と伝統のある二大政党制システムの下であれば、そういうのを試してみるのもいいでしょう。でも、本邦のそれはまだ駆け出し段階です。やはりここは慎重でなければなりません。

○ここに、『イギリス・オポジションの研究〜政権交代のあり方とオポジション力』(渡辺容一郎/時評社)という本があります。「まえがき」部分からいきなり感心したんですが、「英国政治においては、普通の野党のことは"Opposition"とは呼ばない」んだそうです。野党第一党で、前の選挙で負けるまでは与党だった政党こそが"Opposition"であり、"Government"に対する力を持つ。ということは、わが国においては今まで「オポジッション」は不在だった。今の自民党が、戦後政治ではほぼ初めての「オポジッション」と呼ぶことができる。

(先日、世耕さんにこの話をしたら、「勇気づけられた」と言ってました。頑張ってくださいね)

○そもそも英国政治においては、二大政党制の源流は名誉革命(1688年)に遡る。日本で言えば、徳川綱吉将軍の下でまもなく元禄文化が栄えようかという頃である。われわれ日本人としては、その歴史の長さにまずは深く頭を垂れなければならない(赤穂浪士の討ち入りは1701年である)。たまたま、先日の英国総選挙で「ハング・パーラメント」が生じたからといって、「英国の二大政党制も行き詰っているみたいだねえ」、などと偉そうな口を叩いてはならない。

○名誉革命後の英国では、国王と議会の両方に顔が利いたウォルポールが長らく首相を務めて、その融合体制の基盤を築いた。暴力行為を抜きにして、政治体制を代えることができたのだから、当時の欧州としては画期的なことであったに違いない。そのうちに、国王に近かったトーリーと、議会下院に近かったホイッグが、それぞれ党派を作って君主的な要素と議会的な要素を代表しあうようになった。さらに19世紀になり、国王が政治の舞台から後退するようになると、いよいよ保守党のディズレイリと自由党のグラッドストーンが登場し、英国二大政党制はいよいよ黄金時代を迎える。

○それでは、現在の労働党はどのように誕生したのか。第一次世界大戦という国難を機に、ロイド=ジョージによる自由党と保守党の連立政権が誕生する。今風に言えば「大連立」だ。しかし戦後になっても連立はなかなか解消せず、この間に社会主義勢力であった労働党が、急速に台頭することになる。

○久々に連立が解消した1922年選挙において、保守党が大勝して与党となった。その翌年、ボナ=ロー首相が健康上の理由で引退すると、後継のボールドウィン首相はなぜか関税政策を争点に解散総選挙に打って出る。保守党は比較第一党となったものの、保護貿易政策は受け入れられず、「ハング・パーラメント」が出現する。そこで組閣の大命は、第2党となった労働党のマクドナルド党首に降下した。このとき、労働党内ではさまざまな意見が飛び交ったのだそうだ。(P66)

(1)わが党には政権担当能力はない。自由党と連立しよう。

(2)組閣して社会主義政策を断行しよう。保守党と自由党に反対されたら、解散して国民の信を問え。

(3)とりあえず少数与党で船出して、自由党の言い分もときどき聞こう。

(この意見の割れ方、いかにも左派政党らしくて面白いですな)

○結局、労働党は(3)を選択する。マクドナルド内閣は、柔軟で現実主義的な路線を採ったわけである。この内閣は短命に終わり、保守党による第2次ボールドウィン内閣に後を譲ることになる。どうやらボールドウィンの長期戦略は、労働党との政権のキャッチボールを続けて、自由党をじょじょに退潮させることにあったらしい。そしてこの間、労働党は少しずつ政党としての能力を強化していく。つまり出だしで欲張らなかったからこそ、安定軌道に乗ったわけである。

○英国労働党の歴史を鑑とするならば、民主党もなるべくLow keyな路線を目指すべきであろう。何しろ今まで「オポジッション力」を蓄えてこなかったのだから。綱領を作るとか、外交・安保政策をまとめるとか、その辺の地道な活動が必要となる。英国労働党はそれをやったから、今日の姿がある。

○さて、鳩山政権の失敗から分かったことは、政権を安定させるためには次の4つが必要だということだ。

@安定した対米関係

A経済界との良好な関係

B財政規律の維持

C官僚機構の掌握

○まあ、これは「ほんの基本」というもので、自民党時代だって長期政権を築いた中曽根さんや小泉さんが実践していたことである。逆に言えば、あれだけ有能だった田中角栄も、@とBを踏み外したために短命で終わっている。首相たるもの、これは黄金律として銘記すべきであろう。

○その点、鳩山内閣の場合は、@普天間問題などでアメリカと不要に衝突し、A連合と蜜月、経団連を袖にして「アンチビジネス政策」を連発し、Bマニフェスト至上主義で「子ども手当て」などを大盤振る舞いし、C官僚を相手に喧嘩を売った。これではダメの4乗である。

○菅内閣は、@〜Cの軌道修正を図っているようである。これは賢明な態度といえよう。とはいえ、あまり忠実にこれを実践すると、支持者の中から「これでは第2自民党ではないか」などという声が飛び出すかもしれない。まあ、いつの時代においても、現実主義路線というものはあまり人気を得ることができないものである。だから上手にやらなければならない。

○一例を挙げると、鳩山時代の官邸が機能不全に陥った一因は、事務次官会議を廃止したことであろう。あれがあったからこそ、省庁間の調整が図られ、政治日程が守られ、事務の官房副長官が機能してきた。菅内閣においては、できれば再開したほうがいいと思うのだが、さすがにそれは不評を買いそうだ。さりげなく、事務次官会議に代わるようなシステムを作れるかどうか。その辺がプロの政治というものではないかと、ワシは思うのだ。


<6月11日>(金)

○今週はまるで政治ゴロみたいな1週間でした。出陣式に行ったり、樽床さんの朝食会に顔を出したり。昨日のお昼などは、「オリガミ」でランチしながら情報交換をしていたら、脱力さんがニヤニヤしながらこっちを見ているではありませんか。てっきりもう全米オープン取材に出かけたかと思っていましたが。

○その一方で、三浦展さんの研究会で日米関係を語ったり、シンガポールのIISS会議出張から帰ってきたナベさんの話を聞いたりもしているのであります。こっちも面白い。オバマのNational Security Strategyでは、かならずしも「ブッシュドクトリン」を否定していない、というのは気がつきませんでした。なるほど。

○世の中ではいろんなことが起きている。今日は菅首相の所信表明演説もあったようで。どうも何か、大きな見落としをしているような気がして不安になってくる。


<6月12日>(土)

○政治とカネ問題、この対談がとっても面白い。

田原総一朗x上杉隆 vol.1〜3

○お二人とも「怖いものは何もない」状態のようですね。紙袋1つに1億円入るのか、それとも5000万円なのか、ちょっと実験してみたい気がします。こういうの、実は日銀の人が詳しいんですよね。



<6月13日>(日)

○柏市から、「子ども手当て認定通知書兼振込み予定通知書」が届いた。「算定の基礎となる子供の数」が1であるためにに、「手当て月額」1万3000円也を、「平成22年4月」から支給を開始するという。

○皆さまご存知の通り、ワシはこの政策には反対である。せめてウチなんぞは所得制限しろよと思う。とはいえ、くれるというものを断るわけにも行かぬ。せめて嫌がらせとして、支払先として滅多に使っていないゆうちょ銀行の口座を指定しておいた。このまま間違った政策のマネーが、間違った口座に溜っていくのを放置しておくとしよう。

○皆さまご想像の通り、ワシは郵貯におカネが集まることにも反対である。だいたいですな、1人100万円を100万人が集めてやっと1兆円である。限度額の1000万円を1000万人が預金して、それでやっと100兆円である。なんでそれが170兆円もあるのか。「郵貯は山間僻地のおカネを集めたもの」というのは大嘘つきであって、あれは日本中の小金持ちマネーの逃避場所なのである。そんなものを政策的に優遇する理由がないではないか。

○とはいえ、個人の立場で資金運用を考えると、郵貯の有利さは無視できない。ゆえに定額貯金を500万円だけ入れている。ワシは限度額を上げることには反対だが、もしも上げられるようなら、きっと金額を増やしてしまうだろう。

○それにしても、郵政見直し法案が見送りになったのはともかく、亀井さんが深夜に「大臣辞める」とゴネて、民主党との間で継続審議を決めてしまったのはお見事なプロレスでしたな。下手に法案を通して用済みになってしまうより、「法案成立に向けて今一層のご支援を」の方がいいものね。

○それにしても子ども手当てと郵政見直し、参院選が終わったら「やっぱり止めました」にならんだろうか。もちろん選挙結果次第で、いろんな連立の組み合わせがあり得るので、その可能性はゼロではあるまい。政治の先行きに、少し楽しみができてきた。


<6月14日>(月)

○小惑星探査衛星「はやぶさ」が無事帰還。小惑星の石の調査も大事ですが、とにかく帰ってくるまでが遠足です。7年間もよく頑張りました。お疲れ様です。

○ワールドカップE組、緒戦。日本がカメルーンに勝利して勝ち点3をゲット。いやー、ホントに見ていて疲れました。でも最後まで相手のよさを封じ込んでました。エライです。良かったです。

○ということで、日本もまだまだ捨てたものではない。少なくとも今日のところは。


<6月15日>(火)

○昨日はUBS証券のセミナー、本日は内外情勢調査会東葛支部(船橋市)にて講演をしております。その中で、「菅新政権をどう見るか」てな話をしております。概略以下の通り。

(1)菅首相は「空き缶」である。つまりどんな政策でも受け入れ可能。単なる左翼だと考えると間違える。理念で動く人ではない。薬害エイズで有名になる前は、地価高騰問題で台湾の土地制度を調べていた。さらにその前はリサイクル運動で、文字通り空き缶拾いをしていた。さらにその前は「べ平連」だった。

――問題は「空き缶」の中身を誰が入れるかである。鳩山さんと違って、菅さんにアクセスすることは難しい。でも、誰のいうことでも聞いて、しかもその都度「上書き保存」でコンテンツを入れ替えていた鳩山さんに比べれば、菅さんの方がむしろ無難というもの。仄聞するところによれば、財務省はかなり上手に「空き缶」へのルートを確保した模様。

(2)菅首相は「バルカン」である。こんな言葉、今ではほとんど死語に近いけど、バルカン半島には小さな国が割拠している。なぜかサッカーが強い国が多い。今W杯においては、スロベニアとセルビアが参加しており、実は日本よりもFIFAランクが上のクロアチアなどもある。そんな群雄割拠の中を生き延びるのが「バルカン政治家」である。

――かつては少数派閥を率いた三木武夫が、そして新党さきがけを率いた武村正義が「バルカン政治家」と呼ばれていた。社民連という小さな所帯から身を起こして、ついに最大与党のトップの座を射止めた菅さんは、絵に描いたようなバルカンである。

(3)ということで、「政策は空き缶、政局はバルカン」というのが、菅首相の本質である。これは別に駄洒落で言っているのではなく、偶然の一致である。駄洒落などはオヤジ臭くて、ワシはキライである。

――もっともこれをもって、「ぴったしカンカン」と呼んでみるのも良いかもしれない。


<6月16日>(水)

○とうとう国会が閉幕です。この後はサッカーに集中、と行きたいところなんですが、その前に参院選の予測を少々。以下はとりあえず考え方のご紹介。

@民主党と自民党を併せた議席数はいつも90台

2001年 民26+自64=90
2004年 民50+自49=99
2007年 民60+自37=97

A2010年は「みんなの党」など第三勢力が多いので、民+自=90と仮定する。

B5月末時点は民30+自60=90だった。
 それが6月上旬時点では民50+自40となり、
 現在の6月中旬時点では民55+自35と見る。
 
Cただし近年の参院選は投票日の3日前で決まる。(無党派層はギリギリで判断するから)
 今回、無党派層は民主党支持に戻ってきたように見える。ただしそれはsolidな支持ではない。
 事と場合によっては、積極的に「与党にお灸を据える」行動に出るだろう。

○W辞任の効果によって、「単独過半数も見えてきた」「いっそ衆参ダブルを」などという欲深な声も聞こえてくる昨今ですが、それはちょっと傲慢というもの。あと1ヶ月弱、まだまだいろんなことがある、と見ておくべきでしょう。選挙区と比例に分けた分析もいずれまた。


<6月17日>(木)

○今宵もサッカーを観戦。アルゼンチンは強いなあ。韓国相手に4−1。日本も緒戦は勝てたけど、次のオランダ戦が急に心配になってきた。ここはひとつ、「一局、教えていただく」つもりで戦うほかはありません。

○ここまで見ていて、意外な国が負けている。ギリシャが負け、スペインが負け。って、そりゃ「PIIGS」じゃありませんか。そういえばイタリアはパラグアイに引き分け、ポルトガルもコートジボアールに引き分けている。財政赤字に押し潰されているんでしょうか。サッカーくらい遠慮なく、南欧の実力を発揮願いたいところですが。

○財政赤字の実額チャンピオンと言えば、なんといっても日本とアメリカ。その日本は厚かましくもカメルーンを破り、アメリカはイングランドと引き分けている。やはりツービッグツーフェイル、てなことなんでしょうか。

○ところでNHKのテーマ曲、「タマシイレボリューション」が私的にはツボです。出だしからサビ、という作りがサッカーにはピッタリですな。この曲に乗せて、もっともっと痺れるシーンを見てみたい。

http://ongakuno.dtiblog.com/blog-entry-2095.html 

<追記>ギリシャはナイジェリアに勝ちましたね。借金なんかに負けてちゃいけない。後は財政破綻の大先輩国であるアルゼンチンの胸を借りて堂々と戦い、「IMFがナンボのもんじゃい!」と高らかに宣言いたしましょう。


<6月19日>(土)

○菅内閣の「強い財政、強い経済、強い社会保障」とはいかなるものぞ、てな話を書こうかと思っていたのですが、今宵のオランダ戦を前に、そんなことを考える気にもなれず。思考がサッカー中心になっておるようです。

○せめてハイネケンでも買ってきて、相手を呑んでしまおう、などとくだらないことを考え、酒屋に行ったら「置いてません」とのこと。「最近は外国のビールって売れないんですよねえ。発泡酒の売り場が増えちゃいましたから」。ああ、さよでしたか。でも別の店で、グリーンの瓶を買ってしまったワタシ。

○もっともオランダ暮らしの長かったこの人の言によれば、「オランダ人はハイネケンなんて贅沢なビール、飲みませんよ。あれは輸出用です」とのこと。だったら日本の発泡酒を、オランダに輸出してしまえば良いかもしれませぬ。最近は日本人も負けずにケチですからなあ。

○願わくば、互いに1点を惜しむようないいゲームとなりますように。もちろんGoing Dutchで割り勘にしても良いですぞ。

(16:33記)


○いっそのこと勝ち点3を山分けしましょう、てなわけには行きませんでしたが、1−0の敗戦は上出来かもしれません。何しろFIFAランキングでは4番目と45番目の対戦でしたから。でも、これで「日本はデンマークよりも格下」とは見る人は少なくなったでしょう。岡田監督も、判断に迷いがなくなったことでしょう。

○イエローカードも少なくて、非常にキレイで良い試合だったと思います。ちなみにFIFAの評価は以下の通り。

The Oranje carnival rolled noisily into Durban on 19 June, but Bert van Marwijk's Netherlands team were forced to endure a tricky test against a disciplined Japanese outfit, the only goal of the game coming from Wesley Sneijder shortly after the break. Despite not having things their own way at the Moses Mabhida Stadium, the Dutch -- still without injured winger Arjen Robben -- will nevertheless be thrilled with their six points from two games and a spot at the top of Group E.

(23:26記)


<6月20日>(日)

○都内某所で選挙情勢に関する密談。角谷浩一氏から、全国各地の情勢を拝聴する。6月16日に少し書いたけど、今回の参院選は票読みが難しい。無党派層は民主党支持に戻ったのかどうか、自民党支持層はどの程度残っているのか、そしてみんなの党はどの程度、票を取れるのかetc.

○ワシはどうも今回の参院選は、1998年に似ているような気がしている。無党派層の比率が上がっていること、小党が乱立したこと、直前になって税金の問題が飛び出したこと、などの共通点がある。ということは、投票日の数日前になって大混乱、てなこともあり得ると思う。角ちゃんはあまり動かないのではないか、と言う。さて、どうなりますか。

○選挙関連情報については、数日後にどえらいサイトが立ち上がる予定ですので、請うご期待。本日の密談内容も、そこで公開されますぞ。

○さて、サッカーに浮かれていたら、中国が人民元レートを弾力化するとのこと。要するにG20を来週に控えての「手土産」というわけで、いつものことながら上手なタイミングでやりますなあ。欧州のユーロ危機も一段落したようだし、いっちょこの辺で、というわけでしょう。

○人民元レートが上昇すると、中国国内の消費者物価上昇率は3%を超えてきたところであり、インフレ対策にも役立つ。それは大いに結構なことなるも、新興国経済の先行きはちょっと心配になってきましたな。バルチック海運指数がちょっと嫌な感じじゃございませんか。もうしばらくすると、原油価格も落ちてくるんじゃないか。

○何だかんだで、今週末のG8とG20は面白いことになるかもしれません。


<6月21日>(月)

○講演会稼業の不肖かんべえにとって、いちばんのお得意先は愛知県であります。今年だけでも3回目。これまでに訪ねた場所は、名古屋を筆頭に一宮、春日井、豊田、岡崎、西尾、刈谷、豊川、知多などがあります。なぜか尾張・三河ではご贔屓にしていただいております。で、本日は安城市でありました。

○三河安城駅で看板を見たときに、ふと小学校の社会科の教科書を思い出したのであります。

「愛知県安城市は、先端的な農業が行なわれているので、“日本のデンマーク”と呼ばれる」

○いえ、日本のデンマークは大いに結構なんですが、今週の日本はデンマークを打ち破らなければならないのであります。まあ、引き分けでも良いとはいえ、仮に「0−0」でラスト10分を迎えるとしたら、見ている方はおそらく生きた心地もしないはずなので、できれば1点リードしておきたいと切に願うものであります。

○なにしろデンマークは強いチームである。ランキングだって向こうの方が上だ(36位と45位)。それがカメルーンに勝って、本来の調子を取りもどしつつあるわけで、「あとひとつ」は大変なのであります。・・・などと、ついついサッカーに思考を支配されてしまうのは、ワシだけではないはずである。

○安城市に戻って、今日の会場は碧海信用金庫の総代会でありました。この信金、なんと預金量が1兆5000億円もあって、どう考えても地銀クラスである。こんな規模の信金がゴロゴロしているのが、西三河地区の恐ろしさであります。それというのも、当地に広がるトヨタ関連企業の繁栄があるわけでして、「日本のデンマーク」というよりも、「日本のデトロイト」なのかもしれません。まあ、デトロイトはすっかり衰退しちゃったわけですが。

○ところでクイズです。これ、ちょっといいと思いませんか?

問い:先週、小惑星探査衛星「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルは、1ミリ以上の物体は入っていない模様です。では、中に詰まっているものは何でしょう?

答え:夢と希望。そして日本人のささやかな誇り。


<6月22日>(火)

○本日の文化放送「くにまるワイド」でお話した材料をご紹介。以下に掲げるのが、過去4回分のFIFAワールドカップで公式パートナー&スポンサーになった企業の一覧表です。

●FIFAワールドカップ オフィシャルパートナーの歴史

2010 南アフリカ 2006 ドイツ 2002 日韓 1998 フランス
<パートナー> アディダス(独:スポーツ) アディダス(独:スポーツ) アディダス(独:スポーツ)
アディダス(独・スポーツ) バドワイザー(米:ビール) バドワイザー(米:ビール) ブラウン(独:電機)
コカコーラ(米:飲料) アバイア(米:IP電話) アバイア(米:IP電話) コカコーラ(米:飲料)
エミレーツ航空(UAE:航空) コカコーラ(米:飲料) コカコーラ(米:飲料) キヤノン(日本:電機)
現代自動車(韓:自動車) コンチネンタル(独:タイヤ) 東芝(日本:電機) ジレット(米:剃刀)
ソニー(日本:電機) ドイツテレコム(独:通信) ジレット(米:剃刀) 日本ビクター(日本:電機)
VISA(米:金融) エミレーツ航空(UAE:航空) 日本電信電話(日本:通信) 富士フイルム(日本:写真)
  富士フイルム(日本:写真) 日本ビクター(日本:電機) オペル(独:自動車)
<スポンサー> ジレット(米:剃刀) 富士フイルム(日本:写真) マスターカード(米:金融)
バドワイザー(米:ビール) 現代自動車(韓:自動車) 現代自動車(韓:自動車) マクドナルド(米:食品)
カストロール(英・石油) マスターカード(米:金融)  マスターカード(米:金融) フィリップス(蘭:電機)
コンチネンタル(独:タイヤ) マクドナルド(米:食品) マクドナルド(米:食品) スニッカーズ(英:食品)
マクドナルド(米:食品) フィリップス(蘭:電機) フィリップス(蘭:電機)  
MTNグループ(南ア:通信) 東芝(日本:電機) Yahoo!(米:インターネット)  
マヒンドラ・サティヤム(印:IT) Yahoo!(米:インターネット)    
サエラ(ブラジル:食品)      
英利ソーラー(中:発電)      


(1)今回、日本企業はとうとうソニー1社になってしまいました。かつての常連、JVCや富士フイルムは既に退場。国内で猛烈な「広告デフレ」は、こんなところにも及んでいます。

(2)1998年には日米欧のみがスポンサーでしたが、2010年には中国、インド、ブラジル、韓国、UAE、南アと半分近くを新興国が占めています。サッカーの世界でも、「G8からG20へ」が進行中のようです。

(3)アメリカ企業もシェアを落としています。気がつけば、アバイアやYahoo!などのIT企業が姿を消しました。それから変にCMが目立つなと思っていましたが、クレジットカード会社はマスターカードからVISAに変わっていたのですね。

(4)以外にしぶといのがドイツの会社。というか、アディダスがこの世界では本家本元なのであります。

○以下に集計票を掲げておきましょう。いろんなことを考えさせられるデータではないでしょうか。

2010 南ア 2006 ドイツ 2002 日韓 1998 フランス
アメリカ 4 アメリカ 7 アメリカ 7 アメリカ 4
ドイツ 2 ドイツ 3 日本 4 日本 3
日本 1 日本 2 ドイツ 1 ドイツ 3
韓国 1 オランダ 1 オランダ 1 オランダ 1
UAE 1 韓国 1 韓国 1 イギリス 1
イギリス 1 UAE 1        
インド 1            
中国 1            
ブラジル 1            
南ア 1            
合計 14   15   14   12



<6月23日>(水)

○ウォールストリートジャーナルに、不肖かんべえのコメントが掲載されました。

JUNE 11, 2010.

DPJ sees revival in opinion polls

http://online.wsj.com/article/SB30001424052748704312104575298062631396320.html 

Still, Mr. Kan's honeymoon with voters may not last long. Japan has had five prime ministers in five years, and in several cases high initial ratings plunged to rock-bottom levels in a matter of months.

Mr. Hatoyama enjoyed support of about 75% when he took office in September, after he led the DPJ to a landslide election victory that ended the Liberal Democratic Party's half century of nearly uninterrupted rule. But by last month, some polls showed his popularity below 20%.

Similarly, when LDP politician Yasuo Fukuda became prime minister in September 2007, his favorable rating was about 55% compared with his predecessor Shinzo Abe's final numbers of about 30%. But a year later, Mr. Fukuda's support had plunged to 20%, prompting him to step down.

"I don't think that the Kan administration is different from the last four governments," said Tatsuhiko Yoshizaki, executive vice president at the Sojitz Research Institute.


○いやもう、畳と首相は新しい方がいい、ってことなんでしょうか。菅政権が発足して2週間、ここを見ると支持率はもう10pくらい落ちていますから。

○これは「消費税効果」だと言われています。なんてもったいなことを、てなご意見をよく聞きます。でも、「消費税問題」という第2戦線を作らなかった場合、民主党には「マニフェストはどうなったんだ!」という罵声が浴びせられていたはずです。子ども手当ても、高速道路無料化も、政治主導も突っ込みどころは満載ですから。

○「消費税」という新たな争点を作ったお陰で、今はこれらの第1戦線は沈静化しています。だから、どっちにしろ支持率は低下していたはず。だったらG20に参加する手前もあって、「オレは選挙前にも増税を言える首相なんだぜ」とアピールすることはムダではない。どうせ2〜3年後の話なんだし。

○それにしても、この記事はWSJ日本語版には出てないんですね。その代わりにビビアンさんの記事を発見。果たして打倒蓮舫の野望はどうなるのでしょうか。


<6月24日>(木)

○選挙情報に関する「どえらいサイト」、いよいよ本日、アップされました。その名も"Real Politics Japan"と申します。政治オタクの皆さま、今すぐブックマークのご準備を。かんべえが登場する座談会もございます(第1部「2010参院選の見方」編と第2部「当落予想」編)。

○ゆくゆくはアメリカにおけるこのサイトのように、政治情報のポータルサイトになったらいいな、と考えております。どうぞご活用ください。

(22:17pm)


祝、サムライブルー勝利。デンマーク戦、3−1は立派でした。ありがとう。いいものを見せてもらいました。

(5:57am)


<6月25日>(金)

○午前3時起きはさすがにツライが、ときどき「モーサテ」に出ていることもあるから、午前4時起きなら何とかなりそうだ。ということで、午前4時に目覚ましをセットして、起きてテレビをつけてみたら、「2−0」だという。なんと。負けているなら分かるけど、勝っているとは驚いた。しかもデンマークは、早々と選手交代で雰囲気を変えようとしている。圧倒的ではないか、わが軍は。

○誰が得点してくれたのかと思ったら、案の定、本田である。エライではないか。もうひとつは本田が蹴ると見せかけて、遠藤。これも決まる。スゴイではないか。後半戦、PKでトマソンに一発食らう。川島がいったん跳ね返すが、蹴りこまれてしまう。地面を叩いて悔しがる男・川島。このガッツが、今大会のサムライブルーの真骨頂である。

○今までの日本チームであれば、ここで終わっていた。が、ここでもう一波乱。本田がゴール前に持ち込んで、サラリと交わして、岡崎がソロリと決める。こんな冷静なゴール、見たことない。値千金の3点目。日本チームはここまでやるぞ、と全世界に知らしめた。

○W杯出場はこれが4回目の日本チームだが、今までの得点は全部あわせても9点しかない。今日は一気に3点。ああ、夢ではあるまいか。よくぞここまで来たものである。

(参考:1998=中山 2002=鈴木、稲本、稲本、森島、中田 2006=中村、玉田 2010、本田、本田、遠藤、岡崎)

○イエローカードも少ないし、変な形の時間稼ぎもない。まことにサムライらしいアッパレなフェアプレイであった。こういう試合を応援できて良かった。日本サッカーの理想形とは、かくあるべしではないか。

○終わってみれば、岡田監督がほとんど「神降臨」状態である。まるでサムライのように見える。終了後のインタビューも、まことにカッコいい。

"Our team has a strength that others don't have. We are truly united. We wanted to demonstrate that football is a team sport. "
Takeshi Okada, Japan coach

○トーナメントでどこまで行けるか分かりませんが、まことに結構な試合でありました。次は来週火曜日のパラグアイ戦。正々堂々、サムライらしい試合を期待しましょう。


<6月26日>(土)

○ご案内の通り、ワシは競馬ファンである。海外に行くとカジノでバカラをしたりもする。若い頃は、かな〜り高いレートの麻雀をやっていたこともある。別に強いわけではないが、ギャンブルは好きな方である。そんなわけで、相撲取りの野球賭博についても、ちょこっと口を挟んでみたくなるのである。

○日本国内の博打の取締りは、グレーゾーンが大きくなっている。交通違反などと同じで、「規定は厳しく、取り締まりは甘く」なっていて、当局に裁量の余地が大きい。これはまあ、方向として正しいことであろう。博打という犯罪は、麻薬や売春などと同じで、「客が喜んでいる犯罪はなくせない」という万国共通の法則が働く。禁止したりするとかえって弊害が大きかったりするので、軽いやつは見逃しておけ、というのが人類の知恵である。

○ところが、明らかに取り締まらなければならないときもある。端的に言えば、「暴力団の資金源になる」場合である。今回のケースはそれでしょう。おそらくお相撲さんたちが、部屋単位でトトカルチョをやっているのであれば、見逃してもらえたんじゃないかと思う。でも、野球賭博はハンディのつけ方が難しい。誰もが納得するようなレーティングができるのは、それを専業とする胴元さんだけであろう。ということで、大掛かりな野球賭博は、ほぼ確実に「ヤバイ筋」によるものになってしまう。

○プロの胴元さんとしては、野球賭博というビジネスを繁栄させるためには、なるべく口が堅くて、あぶく銭を持っていて、派手に賭けてくれる客を確保する必要がある。プロスポーツ選手なんてのは、格好のねらい目ということです。逆に堅気の衆を引き入れたりすると、大負けした客がその筋にタレこんだりする恐れがあるので、あまり得策ではない。床山さんを介したシステムができていた、なんていうのは、なるほど納得であります。

○逆に言いますと、小市民がやっている高校野球のトトカルチョとか、社内コンペの馬券だとかは、警察はいちいち取り締まったりしないと思うので、ご心配なくということです。最近の若い人たちは、あまりギャンブルをやらないようなので、そのうち廃れてしまうかもしれないけどね。

○さて、ここから先は少数意見というか、顰蹙を買うかもしれないんだけど、お相撲さんたちに普通の人と同じ基準を求めるのも変なんで、そんなに大騒ぎするなよ、と思うんですね。「国技が・・・」とか「財団法人が・・・」という議論は確かにありますよ。でもこれって、今に始まった話じゃないんでしょ。年金記録問題などと一緒で、昔からずぅーっと続いてきて、たまたま今になってバレただけでありましょう。

○あと一言だけ。ときどきインターネットで升席を買うファンとしては、せめて「名古屋場所を中止にせよ」なんて気安く言わないでくれよ、と思うんですよね。相撲を見に行くっていうのは出費も高いし、会社も休まなきゃいけなかったり、さらに言い訳も考えなきゃいけなかったりで、行く人はとっても楽しみにしてるんですよ。


<6月27日>(日)

○ギャンブルの楽しさとは何だろう。あるいはまた、人はなぜギャンブルに嵌るのだろうか。

○以下は今から約20年前、長島信弘・一橋大学教授による『人類学的ギャンブル考〜ヒトはなぜギャンブルをするのか』(Tradepia1990年2月号)という論考の中で、ギャンブルの魅力として挙げられている7つのポイントである。これ、とても納得だと思うのですよね。

@他人に勝つ喜びと満足度
A勝負が決まるまでのわくわくするような興奮
B知的推理の喜び
C結果として得られる財への期待と得たときの満足感
D勝負の記憶が持つ叙情性
E次の勝負を想像する喜び
F短時間のうちに「結果」が出る

○上記のうち、Cの射幸心がいちばん大きい、というのはギャンブラーとしてあまりレベルが高くない。年季の入った競馬ファンなんぞは、B―D―Eの三連単でこの世界に耽溺してしまうのですよね。麻雀であったら、@―A―Dくらいでしょうか。こんな風に、ギャンブルの魅力は多様なのであります。

○その中でも、意外にこれが本命ではないかと思うのがFである。この世の中の大半の出来事は、短時間では答えが出ないようになっている。そこにイライラがあるわけだが、ギャンブルは決まった時間に答えが出て、勝者と敗者をくっきりと分けてくれ、そのことで強制的に経済的な差異を生じさせる。ギャンブルに嵌ることは、人生を短時間にいくつも生きることに似ている。ゆえにワシなどは常々、「人生の重要なことはすべて四角い卓の中で学んだ」、と思っている。

○ところで上の長島論文は、当時、日商岩井広報室で広報誌Tradepia(トレードピア)の編集担当であった不肖かんべえが、自分で依頼した原稿である。長島先生は、堂々と締め切りに遅れて、「執筆者が締め切りを守るかどうかは、編集者にとってギャンブルである。遅れてすまなかった、と一応言っておこう」という素敵な一言ともに、FAXを送ってこられた。まあ、こちらも在学中に、長島先生の「人類学」の授業を1回も出ずに、なぜか「B」で通してもらっているので、文句を言えるような筋合いではなかったのである。

○そんなわけで、この『人類学的ギャンブル考』は、こんな風に結論している。


 ギャンブルを善とする考え方は欧米型である。自分と他人の判断の間に食い違いがあるとき、結果を賭けて争うのは、裁判で宣誓するのと同じことだという考え方である。・・・イギリスのギャンブル史は、全財産を失って顔色も変えずに立ち去る「高貴な敗者」たちの話で彩られている。

 悪と考える立場は大別すれば3通りある。

 第1は権力者で、自分がやるのはいいが庶民がギャンブルにふけっては国が滅びるという身勝手な議論で、これに経済的・社会的破滅をしないように、という偽善が加わると日本型になる。

 第2は宗教的・論理的にギャンブルを悪とする立場で、これは労働によらない利益獲得を否定するイデオロギーによっている。しかし、多くの場合、反対することによって労働によらない利益を得ているのも彼らである。

 第3は、ギャンブルは悪いことだという小市民たちである。彼らこそギャンブルに手を出すと最初に破滅する人たちでもある。


○20年たっても細部まで覚えている。かんべえの広報誌編集の仕事は3年半くらいで終わり、30歳になると同時に調査の仕事に分け入って行ったのだが、この原稿は編集者としては「会心の出来」であったな、と懐かしく思うのである。


<6月28日>(月)

○G8/G20が終わりました。「欧州=財政再建vs.米国=景気重視、日本=両方」という図式になりましたね。これは欧米間に一種のイデオロギー闘争があるからだと思います。

○アメリカ側は大恐慌以来という事態に対し、ローレンス・サマーズを頭目に、「ケインズ政策で行くぞ!」ということで意思統一がされています。だから大型景気刺激策を発動させた。ところがその効果が今ひとつだから、最近では「マズイんじゃないか」という声が出始めている。特に4月末に住宅減税が期限切れになったら、とたんに5月の住宅着工が減ってしまった。官公需から民需へ、というバトンタッチがうまく行っていないのだ。

○ところで今日、久しぶりにこのページを見たら、この7870億ドルの支出のうち、既に4150億ドルが使われてしまっているのですね。ということは、今後の景気刺激効果は急速に失われていく。GDPはいつも前期比で見ますからね。アメリカ経済、ちょっとヤバイです。

○逆に欧州側は、リーマンショックではいわば「被害者」の立場なので、方向が定まっていない。だから「いまどきケインズでもないだろう」→「とにかく財政再建を急ごう」→「自分の国だけでも安泰に」→「他所の国の事なんか知ったことか」という発想になっている。この調子で各国が緊縮財政に走ると、ちょっと危なっかしいですね。それこそ1997年の日本のパターンです。

○確かにギリシャはマズイです。なにせ国債がトリプルB(ジャンク債)になっちゃいましたから。でも、欧州財政危機の本命はスペインやイタリアであって、そこはまだ時間がある。あまり財政再建を急がない方がいい。できれば数値目標なんかも、やらない方がいいと思うぞ。

○さて、日本はどうすればいいのか。景気を崩さないように、財政を立て直ししなければならない。どっちつかずに見えるかもしれないけど、それは仕方がない。どっちにしろナローパスなんです。でも、今までもずっとそうでしたから。

*追記:上記に不正確な記載がありました。ギリシャ国債は、ムーディーズがBa1、S&PがBB+で投機的等級(ジャンク)で、フィッチはBBB-でまだ投資適格です。トリプルBとダブルBの間には大きな差があります。Mさん、ご指摘深謝です。


<6月29日>(火)

○本日は午後から西明石に移動し、神戸製鋼傘下のコベルコクレーンにて講演会。ご関係の企業経営者の方々とお話してつい先ほど新神戸のホテルに到着。

○ギリギリ11時に間に合いました。さあ、打倒パラグアイ。Go Samurai Blue!!

(22:57)

○120分戦って0−0。最後はPK戦。今宵のプロ野球は乱打戦ぞろいだったそうですが、お互いになんと点が入らないこと。日本もパラグアイも守りのチームで、将棋でいえば取った駒を敵陣ではなく、自陣に打つような展開。それだけ双方ともに必死だったということでしょう。

○でも相手がかすかに一枚上手でしたかね。なにしろ、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた国ですから。終わってみれば、なんとベストエイトのうち4カ国が南米。アジア最後の一角、岡田ジャパンは手が届きませんでした。

○それでも事前の予想から考えてみれば、はるけくも来たりしものかな。選手の皆さん、お疲れ様でした。とても楽しませてもらいました。どうもありがとう。

○これで明日になったら、きっと深い喪失感にさいなまれることでしょう。でも、ワールドカップはいつもそうやって終わるんですよね。明日からもまた、違う名勝負が続くことでしょう。明日からはオランダの応援かな。

(2:18)


<6月30日>(水)

○神戸ではモノづくりの中小企業さんから、いろんな話を伺いました。大手はいよいよ新興市場を目指して動き始めた。ということは、下請け企業も海外に出て行くよりほかに仕方がない。さて、行くべき先は上海か、広東か、それともベトナムか。

○「いったいどうしたら良いでしょう」と、某社のトップが相談を持ちかけた先は、某カリスマ経営者であった。相手は答えて曰く。「海外に出かけるのは大変だよ。今まで考えたこともないようなリスクがあるからね。どうぞお気をつけてお行きなさい。でもね、最大のリスクは、このまま日本にとどまることだからね

○また某社のトップは曰く。「当社では今年のスローガンをこんな風に決めました。『とりあえず変えてみよう』と」。――このスローガン、”とりあえず”とつけたところが技能賞ですね。上からいきなり「変えてみろ」と言われると、現場としては反発がある。それじゃ今までやっていたことは何だったのか。でも、「とりあえず」と言われれば、角が立たない。現場の面子をつぶさなくて済む。神は細部に宿れり。

○新興市場を目指す大手のブランド企業にも、計り知れないような悩みがある。気がつけば自社の製品は、過剰品質、過剰性能、高コストになっている。ところが新興国市場では、そこまでの製品は求めていない。というより、1ミリ単位で操作が可能な日本製品を、使いこなせる人材が育っていない。こんな中で、どうやって比較優位を求めればいいのか。

○先日教わった話ですが、白物家電の世界一企業に躍進中のLGでは、「イスラム圏向けのコーランが入ったテレビ」とか、「インド市場向けの鍵がかかる冷蔵庫」を作って新興国市場で成功を収めているのだと。コロンブスの卵みたいな話ですが、要はどうやってマーケットの需要を汲み取ることができるか。プロダクトアウトの発想では勝てません。

○今朝は地元記者の方から、最近の関西政治情勢について伺う。岡部まりはトップ当選の勢い、というのは今さら驚きませんが、「大阪府vs.大阪市」対立の図式は聞いてビックリ。生活保護の問題など、大阪市の闇はまことに深い。近隣の自治体の中には、生活保護の申請を断るときに「大阪に行きなはれ」と言ってバス代を渡すところもあるとか。そういえば、『ナニワ金融道』の中でも、「大阪市は使えるが、大阪府はあかん」てなことが書かれていたような。

○東京に戻り、夜は久しぶり、三原御大を囲んで満州視察旅行の話を伺う。江沢民の愛国主義教育のために、いろんな歴史的遺物が捏造されているのだそうだ。やっぱりねえ、と思うことしきり。日本振興銀行をめぐる経緯についてもいろいろ伺う。なるほど、この人が言っていたことは、いちいちごもっともであったのですな。

○気がつけば、いろんな人に出会って話を聞いて、今年の上半期が終わったのであった。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki