●かんべえの不規則発言



2003年10月





<10月1日>(水)

○日本でも「造反」大使の更迭劇が話題を呼んでいるようですが、アメリカではウィルソン・元ガボン大使が言うことを聞かないから、「お前の奥さん、CIAだろ」とばらしてしまった政府高官がいた。程度の低い嫌がらせのつもりが、「スパイの正体をばらすのは、犯罪行為ではないか」という話になり、ワシントンがちょっと色めきだっている。情報漏洩のご本尊が、ブッシュ政権のコントロール・タワー、カール・ローブ御大かもしれないというから、民主党にとっては敵失による絶好のチャンスである。

○それでもおそらく、この問題は大事にはならないだろう。ローブの首を取れれば大戦果だが、この情報が出たのが、保守派の政治評論家であるロバート・ノバックのコラムである、というあたりがポイントで、おそらくニュースソースの特定は難しいだろう。エンロン疑惑もそうだったが、ブッシュ政権はこの手のスキャンダルを逃れるのは上手い。まして相手が悪い。

○それにしても、この問題は現ホワイトハウス執行部による完全なるボーンヘッドである。つまり「ヤキが回った」ということ。9月29日付ワシントンポストの記事では、An administration official said the leaks were "Simply for revenge" for the trouble Wilson had caused Bush. とあるくらいなので、軽挙妄動もいいところ。コントロール狂のローブとしては、自分で自分が許せないような失策だったかもしれません。

○思うに、現在のブッシュ政権の苦境は、自ら招いてそうなっている面がある。イラク復興がなぜうまく行っていないかというと、ひとつは準備不足であり、もうひとつは内部の不一致があるから。ペンタゴンと国務省の対立がなければ、事態は相当マシになっていたはずである。また、減税を通した結果、財政赤字が9月末で4000億ドルになったところで、イラク関連で総額870億ドルの補正予算を出すというのも、いかにもちぐはぐな動きに見える。これで国民の理解が得られるのか。

○要するに政権中枢のコントロールがうまくいっていない。ここからどうやって立ち直るのか。何がきっかけにして、誰が音頭を取って、体勢を立て直すのか。スポーツと同じで、エラーを出した後が勝負どころです。

○話は変わって、為替の方でもちょっとした動きがあった。9月20日のG7では、「日本の介入いかがなものか」的なムードが流れ、それまでの防衛ラインであった115円が破られた。ところが昨日、110円まで行ったら、政府・日銀がNYで委託介入に打って出た。つまり「介入してもいいんだぞ」、と言わんばかりの振る舞い。これでしばらくは円買い圧力が減るのでしょう。

○いつも言うことですが、ブッシュ政権の経済政策は自由放任主義であり、為替についても戦略的に使おうという意識がない。市場では、「選挙が近いから、ブッシュ政権はドル安を放置する」みたいなことを言いたがるけど、考えすぎだと思う。人民元に対するイチャモンも、国内向けのリップサービスといった色合いが濃い。とにかく、経済スタッフは哀れなほどに権限を持たされていないのだ。くれぐれもスノウ財務長官あたりが何を言っても相手にしないように。

○「円高で景気が悪化しませんか?」という質問を何人かの方から頂戴しましたが、それほど心配はないと思います。(1)まず、上のような次第なので、極端な円高には進まないだろう。(2)今は99年の景気回復局面に似ていて、外国人買いによる株高と円高が同時に発生している。このパターンのときは、景気は大きくは崩れない。(3)今は99年当時に比べても、現地生産の比率が上がっているので、円高への抵抗力がついている。

○今日の日銀短観では、大企業製造業の景況感が久々のプラスになった。最近の日本経済は、「順境に耐える」といった風情がありますね。これはこれで難しい課題です。


<10月2日>(木)

○溜池通信には、愛読者から情報提供をいただくことがあり、それが貴重なネタ元になっていることが少なくありません。最近はそれが減って残念だなあと思っておりましたが、本日は久々にドキッとするようなメールを頂戴しました。発信元は金融情報の世界では知る人ぞ知るK記者です。以下、全文を掲載します。

Subject: Informal Information

  03/10/02 証券筋より   仏大統領のスキャンダルについて

・ シラクの訪日回数が多いことは、周知の通り(公人・私人含め過去44回の来日)。

・ 相撲ファンでもあり、日本文化に造詣の深いことはともかく、その訪日が多い理由として「日本国内に隠し子がいるのではないか?」−−との噂はこれまでにも根強かった(2日付・インディペンデント紙が報道、決定的証拠はないとされる)。  

・ 70年代に芸者との間にできたと見られる隠し子は、現在スイス在住とされる。

・ しかし、実は日本に滞在している模様。

・ その名も、「
立川志らく」。  


○どうです。これは「100へぇ」は軽くクリアですね。あまりの感動に、しばらくは仕事が手につきませんでした。

○実は上記の話には後日談があるのです。とっても「粋」で「おとな」のシラク大統領は、上記の愛人をみずからの政治上の盟友とshareしていたのです。その盟友とは、とある中東の国の独裁者で、なぜ両者が深い絆を有しているのかは、長年にわたって国際政治上の謎とされてきました。実は二人を結び付けていたのは、遠い日本のひとりの女性であったという点が、まことにドラマであるといわざるを得ません。そして愛人はもう一人、父親の違う弟を育てていたのです。ちなみにその名は「立川い楽」というんだそうで・・・・


<10月3日>(金)

○一昨日、こういう場所で、本格的な台湾料理をごちそうになっちゃいまして、これが本当に美味かったのです。料理もさることながら、食後の烏龍茶がまた絶品。お礼の意味もかねて、推奨&宣伝しちゃいます。

●台湾ウィーク http://www.kin-birei.jp/formosa-week.html 

○ああ、また台湾に行きたいなあ。


<10月4〜5日>(土〜日)

○日曜午前の討論番組は、あんまりふだんは見てないのだが、ひとつ唖然としたことがある。それはNHKの日曜討論が、「与党3vs野党3」になったことである。言うまでもなく、以前は「与党3vs野党4」だった。民由合併によって、自由党の藤井幹事長が出なくなった。それだけのことなのだが、実際に見てみると勢力図が大きく変わったような気がする。

○NHKは出演者に平等に時間を振る。その結果、どうなるかというと、つまり野党の意見のうち、3分の2は「あさって」の意見になってしまうのだ。「あさって」とは、イラクに派遣するも何も自衛隊は違憲である的な、私のような視聴者が「異次元」ないしは「亜空間」と感じるような世界のことを指す。以前も2分の1は「あさって」だったのだが、それが3分の2になるとずいぶん雰囲気が違う。要は「野党が言うことって、むちゃくちゃだなあ」と思えて、与党がしっかりして見えるのである。これは民主党にとって、気の毒なことだと思う。

○いっそのこと、保守新党と社民党を呼ばないことにして、「与党2vs野党2」にすれば、もう少しまともになると思うのだけど。国会で予算を審議されちゃうNHKとしては、弱小野党といえども敵には回せないんだろうな。ご同情申し上げます。

○テレビ朝日のサンデープロジェクトの方は、菅&小沢を呼んでいろいろ聞いていたけど、すぐに飽きてNHKの将棋の時間に変えてしまった。そしたらこれが不出来な凡戦。まあ、それでも将棋の対局は、討論番組にない長所がたくさんあると思う。

(1)かならず12時までには勝負がつく。
(2)悪い手を指した側がちゃんと負ける。
(3)CMがない。
(4)司会者が静か。

○かくしてどんなに遅くても、11時20分には3チャンネルにしてしまう私。将棋の終盤戦よりも面白い論戦というものは、ありあそうでないものなのだ。


<10月6日>(月)

○さるジャーナリストの詠める。

牛を見て 憂しを忘るる 相場かな
カウパレードも 五日までなり(丸の内にて)

元攻めて 円が責めらる ドバイかな(小泉詠める)
それにつけても 票のほしさよ(ブッシュ返す)

鍋つつき 原や堀内 語り合い
恒は監督 それともオーナー(大手町にて)

○最初の歌を解説いたしますと、丸の内にある某外資系金融会社の豪勢な庭先で、牛のオブジェを展示しておりまして、それを「ブル相場」にひっかけておるわけですね。とりあえず今日も相場は堅調。今は株高がふたをしてくれていますが、「憂し」とされる問題はちゃんと残っているわけで、この先、どうなるんでしょうね。

○当HPにしばしば登場する角谷浩一氏、今朝、お父様が亡くなられました。ご愁傷様です。それでも今夜の番組もしっかりこなしていたようで、ひとこと、「お疲れ様」と申し上げたいと思います。合掌。


<10月7日>(火)

○今年の年初から春頃にかけては、イラク関連をめぐっていろんなことを書いた。(勢いあまって本まで出してしまった)。その中には、当たったこともあるけれども、外した話もある。全部、HP上に証拠が残っているので、今さら隠し立てもできない。読者は私を羞恥心のない人間と思っているであろうが、書いた本人としては少しは気にしているのである。とくに以下の3点は、思い出すと今でも心がちくちく痛む。

@国連安保理決議で、フランスは最後に降りると予測したこと。

○だいたいが私はフランスのことを知らない。ほとんど食わず嫌いである。私のフランス嫌いは、小学生の頃に読んだアルセーヌ・ルパンに始まったような気がする。なぜかというと・・・・という話は適当に切り上げることにして、とにかくフランスの世界観がまるで分かっていなかった。今でも、エマニュエル・トッドみたいな思考法には馴染めない。

○それでも、同様な読み違えをしていた人はほかにも大勢いた。ある外交官は、「深刻な事態に陥る」という安保理決議1441の文言を指して、「われわれの世界では、あれは普通、武力行使を指すとしか読めないんですがねえ」とぼやいていた。まったく同感である。爾後、なるべく欧州のことに関しては、断定的なことを書かないように心がけている。

A石油価格は、戦争終了後に1バレル10ドルぐらいまで下げると予測したこと。

○ここ5年以上、石油価格は22ドルから28ドルくらいの「適温」をいつも避けるように動いている。高いときは30ドル台、安いときは10ドル台と、いつも行き過ぎる。理屈はさておいて、石油はそういう商品なのだ。だから戦争が終われば、一気に下まで抜けると思った。ところが現実には、今でも30ドル近辺である。この点に関しては、賭けに負けたようなものなので、あんまり悔しいとは思っていない。

B戦争が始まれば、すぐに大量破壊兵器が出てくると思っていたこと。というよりも、米軍はWMDを隠してある場所をとっくの昔に掴んでいるものと思っていたこと。

○問題はこの3点目なのである。2月5日にパウエル国務長官が、国連安保理でイラクがWMDを隠している説明を行った。あそこでsmorking gunが出なかったのは、単なる出し惜しみだと思ったが、実はあれが限界だったようだ。実際に戦闘が始まってからも、化学兵器に対する厳重な準備をしていたところを見ると、「フセインは当然、WMDを持っている」と信じ、それを怖れていたことが窺える。

○ところが、いまだにWMDは出てこない。シリアに隠してあるとか、ロシアの工作隊が消してしまったとか、いろんな解釈はあるが、やはり「なかった」と考えるのが自然だと思う。その場合、謎が2つ出てくる。「昔、対イラク戦争やクルド人相手に使っていた化学兵器はどこへ行ったのか」と、「だったらなぜ、フセインが国連の査察を妨害したのか」である。もちろん私には分からない。ただなんとなく、いかにも妙なのだけど、フセインとしては、「本当は持ってない、だなんて口が裂けても言えなかった」のだろうなあ、と思う。

○ひとつだけ言えることは、この後になってWMDが出てきたとしても、「あれはヤラセだ、仕込みだ、神の手だ」という話になるだろう。そして、ブッシュとブレアは、イラクにWMDがあるという話を誇張していたんじゃないかという疑念は、あまねく広まってしまった。今週のThe Economistのカバーストーリーは、"Wielders of mass deception?"である。大量の欺瞞を振りまく人々、というわけ。でも、騙されたァ、なんて言っちゃいけないと思う。あくまでも、私が予想を外したのである。未熟なのである。

○上の3つはたまたま覚えているもので、忘れている間違いもいっぱいあるだろう。私は骨太な哲学とか、重厚な思想とか、国家百年の計というものには関心がない。単に半年先くらいがどうなるか考えて、当たるとうれしいという単純な人間である。的中率を上げるためには、やはり反省は欠かせません。

○ところで、明日は私の43回目の誕生日である、と言ってみるテスト。



<10月8日>(水)

○昨日、催促するようなことを言ってみた結果、本日は多くの方々からHappy Birthdayのメッセージを頂戴いたしました。ありがとうございます。阪神タイガースワインもごちそうさまでした。厚く御礼申し上げます。

○星野仙一監督が書いた『夢』(角川書店)。こういうときに出るお決まりの本ですが、読んでみるとやっぱり貴重な証言がある。星野監督が就任する前の阪神タイガースは、案の定とっても駄目な組織であって、そしてその駄目さ加減は今のいろんな組織に共通する現象です。そこをどう改革したかは、いろんな人の関心を集めることでしょう。しかし、プロローグにある次のひとことは、ガツンと来るものがある。

「周りは『星野の改革や、改革や』っていってくれるけれど、考えてみたら特別なことをやってきたんでもなんでもない。あたりまえのことをあたりまえにやってきただけなんや。ただし、本気で――」

○構造改革の8割は制度改革、制度改革の8割は意識改革。そこまでは分かっていても、では、どうやったら組織全体のムードを変えられるか。これはもう指導者が本気を見せるしかない。そんなに難しいことではない。でも、それができる人は少ない。

○この辺の感覚は、日産のゴーン改革と通じるものがある。組織が煮詰まって、どうにもこうにも身動きが取れなくなったとき、本気の指導者が外からやってきて、事態を改善する。そういうときに必ず出るのが「よそ者だからできた」という評価である。これに対し、星野監督は大いに不満のようだ。選手24人を一度に首切りしたことも、「前任者たちの背任行為の尻拭いにすぎない」と語る。誰が考えてもやらなければならないことを、なして当然ではないか。なぜそんなことを驚くんだ、と。

○思い当たることがいっぱい出てくる本です。阪神ファンだけに読ませておくのはもったいないですぞ。


<10月9日>(木)

○自民党の林芳正参議院議員の朝食勉強会に出たら、自民党の機関紙を頂戴した。裏表紙に、小泉さんと安倍さんがガッチリ手を握り合った写真が出ている。これが超ド迫力である。これに対抗するために、民主党で菅さんと小沢さんが握手している写真を作ったら、とても嘘臭くて見てられないような気がする。要するにこういう対比である。

菅&小沢「二人とも、心にもないことを言っている」
小泉&安倍「二人とも、言っている以上のことは考えていない」

○このダブルス勝負、後者の勝ちだろうなあ。そういえば、こんなことを言っている人がいた。

小泉首相 in 2001「感動したッ!」

小泉首相 in 2003「菅、どうしたっ?」

○さあ、明日は解散です。


<10月10日>(金)

○こういう資料を面白がる人は、きっと私以外にもいるはずなので、公開しておきましょう。題して「解散の歴史」。

解散日 六曜 内閣 命名
1948年12月23日(内閣不信任) 先負 第2次吉田内閣 なれあい解散
1952年8月28日 友引 第3次吉田内閣 抜き打ち解散
1953年3月14日(内閣不信任) 大安 第4次吉田内閣 バカヤロー解散
1955年1月24日 先勝 第1次鳩山内閣 天の声解散
1958年4月25日 先負 第1次岸内閣 話し合い解散
1960年10月24日 先勝 第1次池田内閣 安保解散
1963年10月23日 先負 第2次池田内閣 ムード解散
1966年12月27日 友引 第1次佐藤内閣 黒い霧解散
1969年12月2日 友引 第2次佐藤内閣 沖縄解散
1972年11月13日 大安 第1次田中内閣 日中解散
1976年11月5日(任期満了) 先負 三木内閣 ロッキード解散
1979年9月7日 仏滅 第1次大平内閣 増税解散
1980年5月19日(内閣不信任) 先負 第2次大平内閣 ハプニング解散
1983年11月28日 先負 第1次中曽根内閣 田中判決解散
1986年6月2日 仏滅 第2次中曽根内閣 死んだふり解散
1990年1月24日 先負 第1次海部内閣 消費税解散
1993年6月18日(内閣不信任) 友引 宮澤内閣 政治改革解散
1996年9月27日 仏滅 橋本内閣 政策論争解散
2000年6月2日 大安 森内閣 神の国解散
2003年10月10日 大安 小泉内閣 ???


○意外と大安吉日は少ない、とか、昔は味のある名前の解散が多かった、とか、思うことはいろいろありますね。

○では、総選挙の日取りのほうはどうかというと、これまた手元に資料はあるんですけれども、あまりに面倒なので今日はここまで。



<10月11〜12日>(土〜日)

○上の表、ちょっと間違いを訂正したりしました。案の定、面白がってる人がいるんですね。それじゃ、ついでに公布日と総選挙の日も追加しておきましょう。

解散日 六曜 総選挙公布日 六曜 総選挙期日 六曜
1948年12月23日(内閣不信任) 先負 12月27日(+4) 先勝 1月23日(+31) 赤口
1952年8月28日 友引 9月5日(+8) 仏滅 10月8日(+34) 友引
1953年3月14日(内閣不信任) 大安 3月24日(+10) 大安 4月19日(+36) 友引
1955年1月24日 先勝 2月1日(+8) 先負 2月27日(+34) 赤口
1958年4月25日 先負 5月1日(+6) 先負 5月22日(+27) 先勝
1960年10月24日 先勝 10月30日(+6) 先勝 11月20日(+27) 大安
1963年10月23日 先負 10月31日(+8) 大安 11月21日(+29) 先負
1966年12月27日 友引 1月8日(+12) 友引 1月29日(+33) 赤口
1969年12月2日 友引 12月7日(+5) 先勝 12月27日(+25) 大安
1972年11月13日 大安 11月20日(+7) 赤口 12月10日(+27) 先負
1976年11月5日(任期満了) 先負 11月15日 友引 12月5日(+30) 大安
1979年9月7日 仏滅 9月17日(+10) 友引 10月7日(+30) 赤口
1980年5月19日(内閣不信任) 先負 6月2日(+14) 大安 6月22日(+34) 友引
1983年11月28日 先負 12月3日(+5) 友引 12月18日(+20) 先勝
1986年6月2日 仏滅 6月21日(+19) 先勝 7月6日(+34) 仏滅
1990年1月24日 先負 2月3日(+10) 友引 2月18日(+25) 大安
1993年6月18日(内閣不信任) 友引 7月4日(+16) 先勝 7月18日(+30) 先負
1996年9月27日 仏滅 10月8日(+11) 先負 10月20日(+23) 大安
2000年6月2日 大安 6月13日(+11) 仏滅 6月25日(+23) 仏滅
2003年10月10日 大安 10月28日(+18) 先勝 11月9日(+30) 先勝


○今年の「解散―公示―総選挙」のお日柄は、「大安―先勝―先勝」という組み合わせ。過去を振り返っても、これよりもいいお日柄を探すと、1953年の「大安―大安―友引」くらいしか見当たらない。それって「バカヤロー解散」だったりして。実は昔は、今ほど六曜をうるさく言わなかったのでしょう。

○以下はちょっと便利です。

●六曜を探したいとき http://rokuyou.com/ 

●六曜の意味について http://www.nannohi.jp/yomikata/6you.html 


<10月13日>(月)

○というわけで、昨日、天下のNHKに出演してしまいました。午後6時10分からの「海外ネットワーク」、テーマは「カリフォルニア州知事選挙における、シュワルツネッガー氏の選挙手法」でした。ここではその顛末などをご紹介しましょう。実録・NHK出演記というわけです。

○10月9日(木)、NHK報道局「海外ネットワーク」から電話取材を受ける。「シュワちゃんのバスを使った選挙戦術は、もとはクリントンが使った作戦なんです」てなことを申し上げる。その夜、この人と飲んでいるところに再び電話が入り、出演依頼あり。深く考えずにOKする。

○10月10日(金)、お昼に番組スタッフのS氏がお台場までやってくる。「台場一丁目商店街」の「ハイカラ食堂」で雑談。仕事熱心な人だなあ、と思ったが、これは文字通り序奏に過ぎなかった。

○夕刻、渋谷区神南のNHK放送センターに赴く。増築に増築を重ねた建物なので、中はまるで迷路のよう。冗談抜きに、トイレも一人では行けない。食堂やら仮眠室やら、あらゆるものが揃っているので、何日でも立てこもることが可能だという。

○「海外ネットワーク」の制作室につくと、人がごった返している。その場で道傳アナウンサーはじめ、関係者とバタバタと名刺交換。シュワちゃんのビデオ素材を見ながら、打ち合わせ始まる。スタッフに取り囲まれ、あれはどう、これはどうと質問攻めに会い、適当に返事をする。こんなことで大丈夫なのかと不安に思ったところ、途中から現れたデスクがてきぱきと話をまとめていく。結局、1時間半かかって終了。

○「番組の当日は午後1時半に来てください」と言われて愕然とする。だって放送開始時間は午後6時10分ですぜ。そんなに早く来てどうするんですかああああ、とBSやCATVの大雑把でスピーディーな仕事に慣れた体が拒絶反応を示す。おそるべしNHK。ここでようやく悟りをひらく。NHKの仕事の仕方は人海戦術で、ひとつひとつの作業に時間がかかる。それでも、品質に対しては妥協がない。これではこっちも手抜きができないではないか。

○10月11日(土)、S氏からは電話、FAX、メールといろんな形で自宅に連絡が入る。最後のメールが到着したのは翌日の午前5時である。なんという無茶な仕事の仕方であろうか。あいにく最終メールに添付されていた台本は、ウイルスと間違えられて消去されていた。

○10月12日(日)、12時半。自宅に差し回しのタクシー到着。観念して乗り込む。1時半にNHK放送センターに到着。さっそく打ち合わせ開始。2日前に見た素材が編集され、見違えるほど面白くなっているのに感心する。一昨日、「どうしても欲しい」と言っていた映像も、あらかた揃っている。アーカイブをとことん探したらしい。恐るべきプロ意識である。

○午後2時。番組の収録スタジオに移動し、道傳アナウンサーと「通し」練習。深く考えずに、「リスクマネージメント」という言葉を使ったら、そこは「危機管理」でお願いしますといわれて驚く。スタッフが、「うちは高齢者の視聴者が多いですから」と済まなそうに言う。いえいえ、ここは皆様のNHK。いつも出ているマーケット番組とは勝手が違うのだ。

○午後3時。待ち時間ができたので、これ幸いと控え室に立てこもり、フジテレビの「スーパー競馬」を見る。ハイビジョンの画面で見ると、競馬の実況は迫力がある。毎日王冠、ファインモーションが7位に敗れるのを見て愕然とする。どう考えても、今日のレースは取れていない。でも行きたかったなあ。

○午後4時からカメラリハーサル始まる。一発でクリア。スタジオは広いが、使っている機材は新しくはない。「津波警報」や「地震、震度3以上」などといったスイッチがあるところが、いかにもNHKらしい。再び待ち時間になり、控え室で週末の宿題であるゲラチェックに精を出す。

○午後5時半。メイクして再びスタジオ入り。質問の答えの冒頭部分のみ確認して本番を迎える。ここまで来ると、もう頭はほとんど使わない。あっという間に約10分間の出番が終わる。

○出てみてよく分かったことですが、NHKというのは典型的な「日本のもの作り」の現場なのである。ひょっとすると、こんなに良心的な仕事をする職場は少なくなりつつあるのかもしれない。あらためて受信料の意味を確認したような思いがしました。


○さて、以下はオマケです。シュワちゃんに敗れた現職知事のデービスが、David Letterman Showに出て、「シュワルツネッガー新知事に贈る10のアドバイス」を表明した。これがいい味しているんです。以下をご参照。余談ながらシュワちゃんが出馬表明したのは、CBSのLettermanとはライバル関係にある、NBSのJay Leno Showでした。

Davis offers 10 pieces of advice to Schwarzenegger

The list:

10. Governor, when you realize you don't know what you're doing, give me a call.

9. Body-building oil will stain the mansion's Italian silk sofa.

8. Listen to your constituents -- except Michael Jackson.

7. (Sorry, joke number 7 was recalled.)

6. To improve your approval ratings, go on Leno - when you get kicked out, go on Letterman."

5. Study the master -- George W. Bush."

4. You could solve the deficit problem simply by donating your salary from 'Terminator 3."'

3. If things are bad, just yell, 'Save us, Superman!"'

2. While giving a speech, never say, "Santa Cruz, Santa Barbara ... same thing."

1. It's pronounced "California."


<10月14日>(火)

○悪いニュースはすぐに広がるが、いいニュースはなかなか伝わらないものです。そんな意味では、このニュースも大きくは報道されないかもしれませんね。かんべえが贔屓にしているギャラップ社の最新情報によると、ブッシュ大統領の支持率が理由不明で上昇したようです。

●Bush Job Approval Up Despite Iraq, Economy

http://www.gallup.com/poll/releases/pr031014.asp

○本誌10月3日号で紹介したとおり、ブッシュの支持率はギャラップ調査で50%と政権発足以来最低水準に落ち込んだ。これが9月19‐21日の調査。イラク戦争直後は71%あったのに、一直線で落ちてきたから、このまま低迷が続きそうな感じだった。しかし、その次に行われた10月10‐12日分の調査結果を見ると、支持率は56%に回復している。はて、この理由はなんだろう。

○ギャラップ社もこのリバウンドには思い悩んだようで、いろいろ理由付けに苦しんでいる。ちなみにイラクと経済問題について尋ねてみると、こんな結果が出た。

(1)イラク情勢はますます悪化していると認識している。
(2)ブッシュのイラク対策も、否定的な評価が肯定的な評価を上回っている。
(3)870億ドルのイラク/テロ戦争関連補正予算も、反対意見が多い。
(4)イラク戦争は戦う価値があったかどうか、という質問には、あったという意見の方が多数である。
(5)景気に関しては、やはり否定的な意見が多い。それでも先行きは明るいという答えが、前回に比べてやや増えている。

○こうしてみると、ブッシュ政権の支持率にとっては、大きなプラス要素が見あたらない。よく分からないけれども、アメリカ国民の間に楽観的なムードが流れ始めたとでも理解する以外にはない。ひとつの可能性としては、10月上旬にはカリフォルニア州知事選挙があったので、シュワちゃん報道が過熱して、一時的にブッシュ政権への報道が手薄になったのかもしれない。そうだとすると、リバウンドは短期的な現象に終わるだろう。

○その一方で、このグラフの形には見覚えがある。2000年9月頃に、ブッシュとゴアの支持率が微妙に交差したことがある。夏の間はずっとブッシュの方が好感度が高かった。それが9月にいったん逆転してゴア優勢になり、10月に再逆転したのである。このときのきっかけは、テレビ討論会の際にディベートの内容ではゴアが勝っていたのに、わざとらしいため息をつくなど視聴者の反感を買う仕草が目立ち、かえって素朴なブッシュに同情が集まったからだといわれている。

○3年前の話なのだが、大統領選挙オタクのかんべえとしては、上記の逆転劇が強く印象に残っている。「アメリカ人のブッシュ人気って、いったい何なのだろう?」と心底、不思議だったのだ。今でもよく分からないのだが、今回のリバウンドにもそのときと同じような不思議を感じています。

○ところでただ今、ワシントンのT先輩が帰国中。「最近、ネオコン連中はどんな感じ?」と聞いたら、洒落た答えが返ってきました。なんだか額に入れて飾っておきたくなるような素敵なリマークです。

「どんな人でも15分間くらいなら、周囲の関心を集めることはできる。でも1時間続けるのは難しいよね。とくにワシントンでは」


<10月15日>(水)朝

○ただ今、新宿駅の5番ホームにおります。これから松本、諏訪に出張ですので、今日、明日は会社ではつかまりません。御用の方は、メールにてお願いします。

○ということを知らせるために更新しているのではないのです。なんと、私が乗る電車は「8時ちょうどの特急スーパーあずさ3号」であるということに感動しているのです。そりゃあ、そうだよなあ。下り電車は奇数番号じゃないとおかしいもんな〜。すいません、それだけです。では行ってまいります。


<10月15日>(水)夜

○毎度おなじみ、内外情勢調査会の仕事で、今日のお昼は松本で講演。そこから諏訪に移動して、明日はもう一仕事。諏訪といえば、伊藤洋一師匠の地元である。「土産物は何がいいですかー?」と聞いたら、こんな返事がありました。

うーん、鯉こく、ワカサギ....
でも一番良いのは、諏訪大社下社の近くにある塩羊羹が一番おすすめ。あそこでしか買えない。

○諏訪大社ですね。では明日は早起きして、散歩してくるといたしましょう。

○ところで伊藤さんは相当なグルメで、どんな料理でも一家言ある人ですが、そういえば川魚に関する話を聞いたことがない。こればっかりは地元のものじゃないと駄目、ということではないかと拝察いたします。なんとなれば小生も、先週、六本木の富山料理の店でやった宴会に出たところ、周囲は皆満足しているのに、ひとりだけ「ちがーう!」と内心で叫んでしまいました。やっぱりネイティブにはネイティブのこだわりというものがあるのです。

○それにしても出張に出ると太ってしまうような気がする。明日帰ったら、いよいよダイエットと腹筋運動を始めるとしましょう。(決意)


<10月16日>(木)

○朝、ホテルの1階で諏訪の観光案内マップを手にとって愕然としました。諏訪大社って、上社と下社があって、今泊まっているのは上諏訪だから、下諏訪まで行かないと伊藤洋一師匠推奨の塩羊羹は買えないではないか。がが〜ん。なんだお前、そんなことも知らんのか、と言われそうだが、本当に知らなかったのだ。しかるに伊藤さんのサイトを見ると、ご丁寧にも昨日分にこんなことが書いてある。

下諏訪諏訪大社下社の近くの塩羊羹を推薦しておきました。凄くうまいのに、絶対他に出店(デパートなど)しない。

○どうしよう。溜池通信と伊藤さんのサイトは、両方読んでいる人が軽く千人はいるだろう。「吉崎はちゃんと塩羊羹買って帰っただろうか」などと思う人もいるはずだ。これで買わずに帰ったら、あとから何と言われるか・・・・幸い、今日はお昼の講演まで、時間はある。下諏訪まで行って、帰ってくればいいのだ。かくして、塩羊羹をめぐる小さな冒険が始まったのである。

○あらためて強調しておきたいのだが、私は塩羊羹なんて興味はないのである。まあ、土産に買うなら「ざざむし」や「はちのこ」よりはマシ、というくらいで、昨日だって「ダイエットを始める」宣言をしているし、配偶者は羊羹嫌いである。それでも下諏訪に行かねばならぬ。本当なら今日の午前は、大浴場でのんびりしていてもいいのであるが、これは浮世の義理、いや自ら招いた責務というべきか。塩羊羹を買わないと先には進めない。なんだかドラゴンクエストシリーズにおける「お使い」みたいである。

○上諏訪駅で今朝の日経新聞を買い、180円の切符を買って、中央本線の下り各駅停車に乗る。あっという間に下諏訪につく。上り電車の時間を確認し、どうやら1時間以内に買えればよし、と分かる。ここでまた重要な発見があった。なんとっ!諏訪大社下社には「春宮」と「秋宮」があるのである。伊藤さんは下社としか言ってない。うーん、どっちだ。迷ったときは、近い方。ということで「秋宮」を目指して歩く。

○ところが秋宮が容易には見つからない。これがまた不親切な街で、観光案内が極度に少ないのである。目立つのは共産党のポスターばかりである。どうも長野県人は富山県に似てて、精神構造がサービス業に向いていないと見える。そんなことで、来年の御柱祭はどうするんだ?と心の中で文句を言いながら歩く。

○やっとたどり着いた秋宮で、参拝して100円玉を投げ、御神籤を引いてから、巫女さんに尋ねてみた。「塩羊羹売ってる店はどこ?」――答えは「そこの階段を降りてすぐ」でした。良かった!秋宮が正解でした。全国の皆様、伊藤さんが推奨していたのは、長野県諏訪郡下諏訪町3501の有限会社 新鶴本店です。ちゃんと発見したうれしさ、そのまま伊藤さんの携帯に電話しました。

「伊藤さん!ついに見つけましたよ、塩羊羹」
「お、よしよし。俺の分も買っといて。2本くらい」

○んもー、買いましたよ。全部で4本。塩羊羹自体は、諏訪のいろんな店で売っているんですが、この「新鶴」さんは特別で、地元でも有名です。塩といえば、海のない信州では、昔は塩を手に入れるのに苦労をした。上杉謙信が武田信玄に塩を送ったというエピソード(たぶん作り話だが)は有名だが、実際に南と北の両方から信州に至る「塩の道」があったのだそうだ。その終着駅が「塩尻」であったというのは出来すぎた話である。ともあれ、貴重な塩を使って誕生した文化が塩羊羹に結晶している。

○時間があったので、ついでに春宮にも行ってきました。そこで分かったのですが、下社の秋宮と春宮では半年ずつ神様が移動することになっているのだそうだ。ちなみに上諏訪にある上社も2つあって、こちらは「本宮」と「前宮」に分かれている。つまり諏訪大社は都合4つに分かれている。御柱祭では、それぞれが社の四隅に柱を立てるので、4X4=16本も立つことになる。それを曳いたり、逆落とししたり、川を渡ったりするわけだから、勇壮この上ない祭りなわけですね。

○詳しくはこちらをどうぞ。 http://www.onbashira.jp


<10月17日>(金)

○不規則発言の9月16日に口走ったように、阪神ファンの嫌な予感は的中してしまいました。星野ぉ、辞めないでくれよぉ。でも、これはきっと予定の行動なんだよね。阪神の歴代監督の誰もができなかった「勇退」。あんたにはその資格がある。立派なものだ。駄目なタイガースのために、体をすり減らして頑張ってくれてありがとう。選手諸君は、明日からの試合で監督のご恩に報いるように。

○某中日ファンがこんな予想を送ってくれました。中日ファンの8割は星野ファンだそうで、この人もご多分には漏れないようです。

☆上海馬券王の展開予想

@劇的な引退宣言の後、星野阪神、何かに取り憑かれたような強さで日本シリーズを連勝。4−0でダイエーを屠る。

A厳重警備の道頓堀で機動隊の制止を振り切って星野留任を訴えダイヴするトラキチが続出。大阪ミナミは騒乱状態に。

B義理や情より、男の美学を重んじる星野は結局勇退、NHK解説者に復帰。(これにより土日のNHKスポーツワイドは視聴率20%を超えるお化け番組となる)

C2年後、中日ドラゴンズ、常人の理解を超えた監督の采配により03年度の横浜もまっつぁおな最下位路線を驀進。チーム不振の責任をとり、反星野でごりごりの中日現オーナーが、落合を道連れに退任。親会社の親星野派重役が代わってオーナーに就任。

D何故か病が癒えた星野、「愛する中日を救うため」と言う名目で、中日監督に返り咲き。

○こういう男の身の引き際というものを見て、中曽根クンや宮澤クンは何か思うところはないのかね。いや、ワシが言うような問題じゃないんだけどね。


<10月18〜19日>(土〜日)

○ブッシュ訪日とアジア歴訪について、いろいろ書こうと思ってはいたのですが、昨夜の日本シリーズ緒戦の敗北を見て愕然。どうでもいい話をひとつ。

○こんな名前の商品があります。恥ずかしくないのかね。

「燃焼系アミノ式 おいしい牛乳」

○ご丁寧なことに、小さく「元気ハツラツ」とまで書いてある。サントリーと明治と大塚食品にあやかろうってか?発売元はグリコです。


<10月19日>(日)

○スティルインラブの牝馬三冠誕生を見てまいりました。ちと気を取り直して、「風が吹けば桶屋が儲かる」の現代版、「シュワちゃんがカリフォルニア州知事になると、円高圧力が軽くなる」をご説明いたしましょう。

○来年の選挙情勢を考えると、ブッシュの共和党は、南部と西部山岳州はほぼ完璧に取れる。テキサスとフロリダもほぼ確実だろう。逆に民主党は、2000年と同様にカリフォルニア州、ニューヨーク州という大票田を押さえてくる。そうなると決戦の場は中西部の五大湖周辺州となる。ペンシルバニア、オハイオ、ミシガン、イリノイあたりがねらい目で、この辺は選挙のたびに動向が変わる。(なぜかインディアナ州は昔から共和党の金城湯池となっている)。

○いつものことですが、大統領選挙は「地面取りゲーム」です。五大湖周辺州はクリントンもかねてから重視していて、この辺に多い自動車産業や鉄鋼産業のために、「ドル安誘導」やら「日本に対する黒字減らし圧力」などをかけてきたものです。今のブッシュ大統領は、本質的には「為替は市場メカニズムにお任せ」なんだけど、8月から9月にかけて支持率が急落してくるとそうも言っていられなくなった。かくして、スノウ財務長官を中心に、「ドル安誘導」的な発言が目立ち始めた。

○10月17日のブッシュ訪日も、ひとつ間違えばそういう場になっていたでしょう。ところが小泉さんも強運で、その直前の10月7日にとあるサプライズが舞い込んだのでした。それはカリフォルニア州でリコールが成立するとともに、48%という大量得票でシュワルツネッガー氏の当選が決まったことです。選挙運動中は「まるでサーカス」と酷評されていた選挙ですが、終わってみて皆がハッと気づいたことがある。シュワちゃんの大勝利は3つのことを意味していたのです。

(1)共和党の勝利

共和党のタカ派候補者、マクリントック氏の得票が13%。シュワちゃんと足すと、共和党が圧勝したことになる。すなわち、2004年の大統領選挙において、共和党がカリフォルニア州を取る可能性が出てきた。人口増により、カリフォルニア州の選挙人の数はさらに増えてX57X=55になる。全体で538の票のうち10%以上が寝返るのである。これでは民主党は、「どこの州を取って勝てるか?」をあらためて計算し直さなければならない。

(2)アウトサイダーの勝利

シュワちゃんの勝利は、既成の政治家に対する批判がいかに強いかの表れである。そういう目で民主党の大統領候補者をながめると、ケリー、ゲッパート、リーバーマンなどベテランの政治家ばかりである。それ以外のディーンではリベラル過ぎ、クラークは未知数。「シュワちゃん現象」を追い風にできるような候補者は誰一人いない。

(3)穏健派の勝利

シュワちゃんは中絶問題ではPro Choice、ゲイの権利に寛大、銃規制に賛成(ギャグではない)など、社会問題ではリベラル路線である。でも、自動車税や支出拡大には反対である。いってみれば、バリー・ゴールドウォーターの衣鉢を継ぐ「リバタリアン」的な共和党なのである。ブッシュとしては、これを味方に取り込んでしまえば千人力といえる。

○ということで、ブッシュ大統領は訪日の直前に、駆け込みでシュワちゃんに会いに行った。シュワちゃんは、ブッシュ・パパにはお世話になっているし、もとより大歓迎である。これで選挙戦の見通しはずいぶん明るくなった。つまり、中西部の州のことはあんまり考えずともよくなったのである。日米首脳会談が好ましい結果になったのは当然の成り行きである。円高誘導発言など出てくるはずがない。

○小泉さんの「ツキ」はまだ続いているようです。ね、すごいでしょ?


<10月20日>(月)

○昨日書いた分で1箇所訂正。2004年のカリフォルニア州の選挙人の数は、54から1人増えて55が正解です。選挙人制度のことは、英語ではElectoral Collegeといいまして、正しい数字は下記にあります。これは便利です。こういうものを見てニコニコしているのは、相当な重症と申せましょう。

http://www.archives.gov/federal_register/electoral_college/calculator.html 

○他方、わが国の総選挙ですが、この予想が難しい。かんべえは聞かれると、いつも「意外と分かりませんぞ」と答えております。普通に考えれば、自民党が負ける理由がない。2000年、あの人気のない森政権下で、自民党は233議席取っている。今回の目標である241議席は、そこからわずか8議席上乗せするだけでいい。小泉=安倍ペアの人気を持ってすれば、それくらいは楽勝だというのが常識的な線である。

○ところが2000年と2003年を比べると、いくつか条件が変わっているところがある。

(1)民由合流の効果によって、民主党にプラスアルファが生じている。1995年の参議院選で、新進党が思い切り伸びたときと似たような条件が揃いつつある。

(2)小選挙区における自民党のマシーンが著しく劣化している。

(3)最近の選挙の勝ちパターンは、「クリーンで、しがらみがなくて、タカ派」である。どう見ても民主党の方が、クリーンでしがらみがなく、候補者も若い。そして菅民主党は「強い日本を作る」と宣言し、民主党の軟弱イメージの払拭を図っている。

○てなわけで、自民党の大敗も十分にありうる状況だと思います。実際、自分自身が小泉さんを勝たせたいと思っていても、小選挙区で自民党の候補者に入れるのかと思うと、いっぺんにユーウツになってしまう。これは都市型有権者にはありがちな構図だと思う。

○不思議なことに、個人的に知り合いであったりして、是非、勝って欲しいと思う候補者は、ほとんどが民主党なのである。

●大谷信盛(大阪9区) http://www.nobumori.jp/

●長島昭久(東京21区) http://www.nagashima21.net/ 

●近藤洋介(山形2区) http://www.kondo21.com/ 

●吉良州司(大分1区) http://www.genkina-oita.com/

○なおかつ、自民党敗北で政局入り、小泉政権がレイムダックになってしまうなんていう事態は、何とか回避して欲しいものだと切に思います。


<10月21日>(火)

○昨日はこの話を書き忘れた。民主党の円より子参議院議員に聞いた話。遊説しているときに、熱心な支持者からこんな声をかけられたそうです。

「先生!民主党のフェミニストください!」

○いいでしょ、この話。ニッコリ笑って「はい、これがマニフェスト」と渡したそうです。民主党が用意したマニフェスト400万部はもう出尽くしてしまい、増刷にかかっているという話でした。そこそこ関心は高いようですね。

○私はPDFファイルで読んだ口ですが、あの中で菅さんが「最小不幸社会を作りたい」と言っていたことが面白いと思いました。最大多数の最大幸福、とはベンサム言うところの民主主義の目標ですが、不幸を最小にすることというアプローチはまるで保守主義の発想です。それを民主党が掲げるというのは画期的で、なぜこの言葉が大きく取り上げられないのかはいささか不思議です。たぶん誰も全文は読んでいないんだろうなあ。

○「XX年度までにXXします」みたいな公約は、半年先の経済情勢が予測不可能なことを考えれば、あんまり意味のある話ではないと思います。そういう意味ではマニフェストとは、ベンチャー企業の「ビジネスモデル」みたいなもので、エンジェルから金を引き出すための方便(有権者から票をいただくための手続き)ということでしょう。ベンチャー経営というものは、最初のお客がついた瞬間に、ビジネスモデルは無用の長物となり、それから先が勝負なのだそうです。政党も、政権も取ったその瞬間から地獄は始まるわけで、マニフェストの絵図面どおりに政治ができるのなら誰も苦労はしない。

○ベンチャーキャピタルは、起業家が熱心にビジネスモデルを説明するのを聞き、「こいつはどの程度の人物か」を見抜きます。彼らのプランは所詮、絵に描いたもちに過ぎませんが、それをもっともらしく語り、なおかつ仲間を集められる人物であれば、出資してみても悪くはない。有権者もそれと同じで、単に政党のマニフェストを比べるのではなく、候補者がどんな言葉でマニフェストを説明するかを見ればいいのです。そんなのは当たり前の話で、人々が票を投じるのは人物に対してであって、紙切れに書かれた文句を信じるわけでは断じてないのである。

○それにしても、政治家の言葉で印象に残るものは本当に少ない。私がかろうじて覚えているのは、1992年の日本新党の旗揚げ宣言「今は第一バイオリンでも・・・」(細川護煕)と、1996年の民主党結党宣言「リベラルとは愛である」(鳩山由紀夫)だけです。この2つは、何がしかのメッセージがあったと思う。さて、それ以外にどんな言葉があっただろう。

○「XX年度までにXXする」のもいいけれど、もうちょっと気のきいたことを言ってくれよ、と書いておこう。


<10月22日>(水)

○諸般の事情で、本日は1日に3回も熱弁を振るってしまいました。しゃべりくたびれたけど、それぞれに状況が違うというところが面白かった。

(1)お昼

テーマ:ブッシュ政権は大丈夫か
場所:外資系証券会社の研究会
聞き手:金融関係者
訴えたいポイント:共和党の足腰は強い
反響:天気が悪かったのに盛況御礼
感想:金融関係者の間ではブッシュ政権の評判は悪い(当然か)

(2)夕方

テーマ:トラブルへの対処とご説明
場所:社内
聞き手:機密
訴えたいポイント:私が悪いんじゃないんです
反響:まあ、仕方がないな。
感想:火消しは早めに

(3)夜

テーマ:最近の日本経済
場所:富山県赤坂会館
聞き手:富山県関係者
訴えたいポイント:地方経済はどうすべきか
反響:談論風発
感想:ふるさとの訛りなつかし

○さて、上記の3つのうち、どれが一番力が入ったでしょうか?この答えは言わぬが花というものでしょうか・・・・


<10月23日>(木)

○来週火曜日の28日になると、いよいよ総選挙が公示になるので、今週はいろんな予測が行われています。見比べてみると非常に面白い。端的に言って、自民党が何議席になるのかが勝負です。

●前回結果:233

●現有議席:246

選挙でGo:254

●福岡政行(週刊朝日):251

●三浦博史(サンデー毎日):238

森田実(週刊朝日):216

●宮川隆義(週刊文春):215

○上記の数字にはいろんな思惑が秘められている。「自民党を勝たせるために、わざと控えめな数字にする」「民主党に勝って欲しいから、あえて自民党勝利を予測をする」、「とにかく自民党が嫌いだから、わざと民主党の数字を膨らませる」などなど。それにしても254〜215と大きく予想が割れるところが、今日の選挙の難しさといえるでしょう。

○実際、今月になってから小泉政権は失態が目立つ。(1)藤井道路公団総裁をめぐるドタバタ劇、(2)メキシコとのFTAの締結失敗、(3)APECにおける拉致問題の扱い、(4)田中真紀子さんの離党、などである。これに加えて(5)中曽根大勲位を引き摺り下ろせない、という問題が今日になって加わった。

○最近になって気づいたんだけど、安倍幹事長がいくらフレッシュなムードを振りまいても、実際に自民党の候補者を見ると、あっと驚くようなご老体であったり、若いけれどもな〜んだ二世かよ、というギャップがある。小泉=安倍ペアが魅力的であっても、実際に名前を書くべき人に魅力がなかったら、かえって逆効果になってしまうのだ。その意味でも、中曽根大勲位が降りるか降りないかはまことに重大な岐路といえる。

○「日本は高齢化時代なのだから、高齢者の議員がいてもいい」などと言う人がいる。しかるに実際の70代、80代の人たちから見ると、それはまことに我田引水な理屈であって、むしろ「この年になっても地位にしがみつくなんて見苦しい」という印象の方が強いのではないだろうか。まして公明党の選挙協力にすがるとか、安倍人気を追い風にしようなどという努力をすると、ますます彼らが姑息に見えてしまうのだ。悪いことは言わないから、早いとこ世代交代をしておかないと、自民党大敗の可能性が高くなる。洒落になんないっすよ。

○昨夜も今夜も所用があって、日本シリーズを見られませんでした。そうしたら連夜のサヨナラ勝ち。やっぱりワシが見ていてはいかんのかのう。明日の夜は見たものか、見ないものか、阪神ファンの心は乱れるばかり。それにしてもありがとう、金本。


<10月24日>(金)

○なかなか引退してくれない中曽根大勲位をどうやって説得するか。岡本呻也氏がこんな提案をしています。

1.2008年に退役する予定のキティホークを繰り上げて海自に下げ渡してもらう。

2.それを、海自始まって以来の人名の付いた艦船として、「ナカソネヤスヒロ」(別名:浮沈空母)と命名する。

3.米空母ロナルド・レーガンとロンヤス艦隊を組んで、一体運用する。「太平洋の覇者、ロンヤス艦隊」(でも出撃するのはもっぱらインド洋より西)。めでたしめでたし。

○海の友情というところがいいですねえ。パチパチパチ。これで日本のシーレーンは安泰だ。

○ところでご紹介。以前、当不規則発言で登場して少なからぬ反響を呼んだ二瀬兼清造くんが、活字デビューしました。登場したのは『国富消失』(葉山元)という本の144p以降。奇しくも因縁浅からぬ新潮新書です。

http://www.shinchosha.co.jp/shinsho/shinkan/

○「二瀬兼清造って、なんだあ?」という方は、ここをご参照ください。

○今宵、星野監督は甲子園での最後の采配を勝利で飾りました。あと1勝だけ、させてやってほしい。できれば1点差とかじゃなくて、初回から大量得点で、血圧が上がらなくて済むような試合がいいんだけど、この際だから贅沢はいいません。


<10月25〜26日>(土〜日)

○アメリカ大統領選挙に関する傑作なURLをご紹介しましょう。

●ヒラリーを踊らせろ!http://www.miniclip.com/dancinghillary.htm

――やっぱりこの人が出ないと選挙は盛り上がらないかな?

保守派、リベラル派トランプ http://www.playingpolitics.net/

――ちゃんと日本にも送ってくれますぞ。さっそく注文してしまったワタシ。

○それから以下は、日本の選挙に関してコメントを引用してもらいました。ご参考まで。

●アサヒドットコム http://www2.asahi.com/senkyo2003/localnews/shizuoka/TKY200310240286.html

○ああ忙しい。今日は子供のバザー、菊花賞、日本シリーズ、ゲラチェック、SAPIOの原稿、来週の出張の準備など。ほかはともかく、ネオユニヴァースと阪神タイガースに勝ってもらいたい。


<10月27日>(月)

○負けた。結局、福岡ドームでは一度も敵の心胆をさむからしめることなく、阪神タイガースは敗れ去りました。なんだか、悲しいことに負け試合に限って、最初から最後まで見ているんですね。4回も続くとさすがに疲れます。昨年6月、ワールドカップで日本が敗退したとき以来の脱力感です。本当にガックリしているので、家族も扱いかねているようですが、そんなこと知っちゃありません。ふん、これからやけ酒も飲まずに仕事してやる。

○たまたま明日から3日ほど国内出張。ほとぼりが冷めるまで野球のことは忘れよう、と言いたいところだが、よりによって行き先が神戸というのはどういうものか。きっと向こうには傷心のご同類がいっぱいいるでしょうなあ。とほほ。


<10月28日>(火)

○一夜明けてみれば、今年ほど阪神ファンが幸せな年は久しくなかったのである。そもそも、10月末になっても野球を見ているなどという年が、近年あっただろうか。日本シリーズもしっかり7戦まで戦った。思えば星野監督は、何が何でも勝とうというよりは、正々堂々と「歴史に残る戦いを」という意識だったようだ。本当に勝とうというのなら、井川は第2戦先発という手もあったし、何より第6戦の伊良部先発はない。そこは勝利への執念よりも、1年間苦労をともにした伊良部への温情の方が先にあったようだ。

○正直言って、伊良部先発には腹が立ったのである。だいたい古い阪神ファンはよく知っている。阪神はデブに頼っては駄目なのだ。田淵に遠井吾郎の時代から碌なことがない。そもそも第1戦と2戦で広沢を出したことも気に食わない。こらっ!明治大学の後輩だからといって、情実人事をするなっ!どうせなら、若手で痩せている、関本当たりにチャンスをやればいいではないか。プンプン。と思っていたら、星野監督は第7戦の9回になって、矢野に代えて広沢を代打起用。広沢が監督の温情に応えて、焼け石に水のソロホームラン。あの一打は、投了前の王手みたいなものでしたが、とっても救われました。

○大多数の阪神ファンがそうであるように、私も1985年しか記憶にないものだから、日本シリーズといえば「1勝0敗」なのである。だから日本シリーズに出て負ける、ということがなかなか納得できなかった。終わってみれば、そんなに不思議なことではなくて、ダイエーってやっぱり強かったのね、ということでした。甲子園は魔物が棲んでいるから勝てるけど、普通に戦ったら向こうの方が上ですね。

○あらためて来年のことを考えると、相当に難しそうです。フロントの渋ちん体質は変わらないでしょうから、オフの更改は大荒れ必至。金本、片岡、伊良部といったベテラン陣は、来年はあんまり期待できないでしょう。大活躍の井川も、疲れが残っていそう。それでも今岡、赤星、桧山、浜中、矢野、藤本、というラインナップは、けっして悪くはないわけでして、とにかく最下位でなかったら許すというくらいの寛大な気持ちで見守りたいと思います。

○星野監督はすごい置き土産を残してくれました。それは「阪神の監督でも、花道を飾って勇退できる」という先例です。次の岡田監督は、何よりもそれを目指さなければなりません。そもそも岡田は大阪出身、早稲田のキャプテンを務めて、堂々と籤を当ててドラフト1位で阪神に入団し、1985年には選手会長をやっていた男です。阪神の監督は最低でも5年、できれば10年くらい務めてもらいたい。そのためには、まず何よりもファンの我慢が大事なわけでして、同じファンの皆様に申し上げたい。一緒に岡田監督を育てましょう。悲しい内紛の連鎖の歴史を、ここで止めようではありませんか。(神戸ポートピアホテルにて)


<10月29日>(水)

○神戸は震災以前に一度来たことがあるだけで、とっても久しぶりである。前回来たときは、「なんでこの街がそんなに人気あるの?」というのが正直、分からなかった。地元の人や神戸ファンの方々には申し訳ないが、だいたいが私は不精で、坂の多い町は苦手なのである。

○今回は、会場がポートピアなので坂がない。昨日、ここに到着して唖然としたのだが、景色がお台場とまったく同じなのである。ポートライナーをゆりかもめに置き換えると、展示場にテレビ局に企業の本社ビル、ホテルに公園に高層住宅、港湾に広い道路など、お台場にあるものはほとんどがここに揃っている。逆に神戸市民病院のようなものは、お台場にはない。この辺は歴史の厚みの違いか。神戸では山並みが迫っていることを除けば、とにかくよく似た景色なのである。

○そこでやっと気がついた。「東京湾岸の開発って、神戸のまんまパクリじゃん!」――いえ、まあ規模が大きいことと、さる理由で博覧会が開けなかったことぐらいの違いはあるのですが。それにしても、80年代前半にこんなものを作ってしまったとは恐れ入るしかない。ポートピアのプランを描いた人は、今どこで何をしているのでしょう。『プロジェクトX』あたりで取り上げて欲しいものです。

○ところでポートピアは2期工事が進んでいて、震災10周年になる2005年には神戸空港の開港が決まっている。「陸海空を活用できる総合交通体系」というのが売りだが、関空と伊丹があるところに新空港を作るのは、やっぱりtoo muchであろう。今朝の神戸新聞によると、「スカイマークが神戸空港に就航を表明した」とのこと。羽田と1日に4往復するそうです。しかし、のぞみで3時間以内の距離を、誰が飛行機に乗るんでしょうか。とりあえず全日空はほっとしているかもしれませんね。

○こちらには第30回の「日本ニュージーランド経済人会議」で来ています。明日が本番で、今日は前夜祭でした。その席上、ニュージーランド側の代表が、阪神・淡路大地震の記念館を訪問したことについて触れ、"It was a sobering experience."と評しました。ほほう、そんな英語表現があるのかと感心していたら、通訳の長井鞠子さんが間髪を入れず、「襟を正すべき瞬間であると感じました」と訳しました。なるほど、うまい表現があるものですね。いつものことながら、とっても勉強になります。


<10月30日>(木)

○ニュージーランドの会議は、私にとっては毎年秋の恒例行事です。2002年のオークランド会議2000年のクライストチャーチ会議は出張の記録が残っているし、2001年の京都会議(11月14‐16日分)でもああだ、こうだという話を書いている。ここまで来ると、今さら追加することも少ないので、散発的な話をここで紹介しておきます。

○今年の暮れに公開される予定の『ラスト・サムライ』(トム・クルーズ製作)は、ニュージーランドのニュープリマスという土地で撮影された由。ここが日本の昔の景色を残していて、なおかつ電線もないからであろう。撮影に当たっては、日本人のエキストラが大量にやってきて、かつてない規模の人的交流が実現したという。映画撮影というものは、なかなかに波及効果の大きい経済活動である。どうもニュージーランドは、『ロード・オブ・ザ・リング』で味をしめたのかもしれない。

○オークランド大学の関係者に聞いて驚いたのだが、同大学の学生数は3万人とのこと。ニュージーランド全体の人口が400万人。(羊の頭数はここでは聞かないでね)。つまり国の人口の0.75%が、単一大学の学生ということになる。これを日本に置き換えると、90万人のマンモス大学ということになる。たしか大学入試センター試験を受けるのが50万人くらいでしたから、おそるべき数ですな。ちょっとビックリしました。

○今年の会議では、ニュージーランドからの参加者が少なかったので、日本側参加者との比率が1対3くらいになってしまった。そこで「食事のときなどは、ニュージーランド人同士で固まらずに、なるべく分散して座りましょう」という申し合わせをしていたのだそうだ。この発想、いかにも島国的でなんだか楽しい。同じような状況になったときに、アメリカ人やオーストラリア人には浮かばない発想ではないだろうか。ところが実際に夕食会になってみると、日本人だけのテーブルができてしまったりする。この辺も合わせて、島国のメンタリティというものはやっぱりどこかしら似ているような。

○ところでポートピアに泊まって3日目。昔、ファミコンが出始めた頃に、「ポートピア殺人事件」というゲームソフトがあったことを思い出した。今から思うと、あれは初期ゲームソフトの傑作でしたね。懐かしいです。


<10月31日>(金)

○神戸では11月3日に阪神タイガースのパレードが予定されていて、ちょっと気になったりするのだけれど帰ってまいりました。新神戸駅でタイガースのストラップなどを買い込み、スポニチの「日本シリーズ星野阪神特集号」なども買って、あらためて余韻に浸たる。さすがは大阪版、表4の全面広告は近鉄百貨店のバーゲンの案内で、「来年こそは大阪決戦!」とある。そりゃそうだ、ダイエーと阪神百貨店ばかりに客を取られるわけにはいけないということですな。

○そういえばシリーズの期間中、イオン系のスーパーでは六甲颪を流していましたな。気がつけばダイエー系はホークス、西友系はライオンズ、イトーヨーカドー系はジャイアンツという色分けが出来ているので、残るイオンとしてはタイガースを取ったということなのでしょう。こんな風に人気が割れるのは結構なことで、このところ低落傾向にあったプロ野球人気も一息つくかもしれません。もっとも「球界の盟主」が原監督を辞めさせちゃったのは惜しまれますが。

○神戸の三宮近辺では、「タイガースお疲れさん」の看板を多く見かけました。さすがにもう負けて悔しいなどという感じではなかったですね。ファンとしては、「例年なら来年の話をしているはずの10月になっても、勝った負けたと大騒ぎをしていたのだから、こんなに結構な年はなかった」ということになります。いっぱい楽しませてくれた星野監督と選手たちには多謝あるのみです。

○今度の日曜は天皇賞ではないか。シンボリクリスエスの連覇は難しいような気がします。荒れるとしたら何が来るか。上海馬券王先生はどう出るか。楽しみな週末です。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki