<4月1日>(火)
〇トランプ関税はしょっちゅう風向きが変わる。それというのも、政権内の「MAGA派」と「共和党穏健派」がいつも綱引きをやっているから。前者は関税をやらせたい。それで自分たちの生活が苦しくなっても、どうせ大差はないさと割り切っている。後者は知恵もおカネも名誉もある人たちなので、そんなことさせちゃいけないと思っている。
〇MAGA派を率いるのはJDヴァンス副大統領やピーター・ナヴァロ上級顧問。まともに相手にしちゃあいけない危なっかしい人たちです。共和党穏健派はベッセント財務長官やルトウィック商務長官など。特にベッセント氏は「クレイジーな人たちと一緒に仕事ができる常識人」という定評あり。なにしろジョージ・ソロスとドナルド・トランプの両方と仕事ができる人ですからね。
〇そして問題なのは、トランプ御大はそういう政権内部の対立を喜んじゃう人なんですよね。リアリティTV『アプレンティス』を思い出すといいでしょう。2人の部下を争わせて、最後はどっちかが"You're
Fired!"になる。今回もそういうゲームを楽しんでいるのでしょう。
〇先週は株価が下がったんで、トランプさんは穏健派に乗ろうとしかけた。しかし今週になったら、またまたMAGA派に肩入れしている。相互関税は「Dirty15」に限るのかと思ったら、今週は「ほとんどすべての国だ」に変わっている。そのたびに振り回されるのが全世界の経済人たちである。
〇トランプさんによれば、明日4月2日は「Liberation
Day」である。これまで外国からいいように搾取されてきたアメリカが、いよいよ逆襲に転じるときであると。彼にとっては関税は、「強い国家主権」の表われであって、MAGA派はそれを歓迎する。実際には関税を払うのは外国人ではなくて、アメリカの消費者なのだけれども、そんなことは構わないのである。
〇トランプさん自身も、たぶん現在はMAGA派の方を向いていて、彼らに対して「パンは無理だけどサーカスくらい」は提供するつもり。そしてMAGA派は自棄のやんぱちであって、「高慢なエリート層」に一泡吹かせてやれれば、それで十分に満足という人たちです。だから「アメリカは世界の国々に食い物にされてきた!」というストーリーに乗ってしまう。
〇ということで、今宵もしくは明日未明のどこかで相互関税が公表されるのでありましょう。やってる人たちが詰まっていないお話しを、どうやって説明すればいいんでしょうか。それでも不肖かんべえは明日夜はNHK第一の「Nらじ」とテレビ東京「WBS」をハシゴする予定です。そういえば、1月にもそういうことやったけど、ワシは一体何を語ればいいんだろう?
<4月2日>(水)
〇今週は「モーサテ」も「WBS」も新しい陣容になっているから、ちゃんと両方を見届けなければならない。なおかつ、今宵は「WBS」に出てきたのである。
〇で、豊島キャスターのペースに乗せられて、あれこれと予定にないことを語るのである。今日は「日立の徳永新社長インタビュー」も「ハイテク株の女王インタビュー」も面白いネタだったと思います。
〇豊島さん、先日のシリコンバレー取材の際に、サンフランシスコでテスラの「ロボタクシー」に乗ったんだそうです。「あれに乗ると、人間が運転するウーバーやタクシーは怖くて乗りたくなくなる」と言ってました。うーん、そういうものか。ワシも蘇州で自動運転車に乗ったけど、そこまでは思わんかったなあ。
〇これで明日朝5時にはトランプ演説。果てさて、いったいどういう関税が飛び出すのか。「ギリギリのタイミングになるまで決めてくれない」というこの政権は、まことに困ったものであります。普通だったらもう、どこかのメディアが「抜き」をやっている時間帯ですぞ。
<4月3日>(木)
〇今朝発表の相互関税はやっぱりショッキングな内容でしたね。どうもゼレンスキー大統領との大喧嘩があったときと同様で、「ああ、もうこの政権は見ていられない」という痛い感じです。
〇アメリカについて語る作業は、昔はもっとワクワク、ハラハラするようなことだったのですが、だんだん辛い作業になってきましたね。これはアメリカウォッチャー業界全体が感じていることだと思いますが。
〇松尾文夫さんや中山俊宏さんは今ごろあの世でどんな話をしているのか・・・。そんな風に弱気になるワシを誰が責められよう。
<4月4日>(金)
〇トランプ関税のことを考えると頭が痛くなるので、明日のドバイミーティングを考えてみましょう。
〇不肖かんべえがドバイ・ワールドカップデーに参戦したのはもう7年も前のこと。あのときは3月末だったけど、今年はラマダンが重なったので4月にずれ込みました。今年は日本馬が大量に参戦し、なおかつ有望です。きっと賞金を稼ぎまくるんじゃないでしょうか。
〇ドバイターフ(7R)にはリバティアイランドが出走。香港馬ロマンチックウォリアーという強敵相手にどこまで迫れるか。ほかにブレイディヴェーグ、ソウルラッシュ、メイショウタバルも参戦。
〇ドバイSC(8R)にはシンエンペラーが出走。上海馬券王先生は、きっとドゥレッツア推しでしょうけれども、ダノンデサイルも出ます。出走する9頭のうち4頭が日本馬。ここは日本馬が行けちゃうんじゃないだろうか。
〇そしてドバイワールドカップ(9R)には、この日の真打とも言うべきフォーエバーヤングが登場。サウジカップからの連覇を狙う。矢作厩舎と坂井瑠星騎手のコンビで、遠慮なく賞金をかっさらってきていただきたい。
〇JRA騎手も大勢ドバイに行っている。世界のトップジョッキーたちに交じって、川田将雅、クリストフ・ルメール、武豊、戸崎圭太、菅原明良、三浦皇成などが登場する。今週末の大阪杯(G1)は出がらしみたいなものですな。まあ、そういうときの方が、馬券的には妙味があるものですけど。
〇いやあ、ワクワクしますなあ。来週の「モーサテ」のことなどは、しばし考えずに過ごしたいものです。
<4月6日>(日)
〇本日は町内会の観桜会である。コロナ下で長らく開かれていなかったが、6年ぶりの集まりとなった。たいへん楽しかったのだが、お陰で昼間から深酒をしてしまった。われながら仕事から逃避しているとしか思えない。
〇とはいえ、永遠に逃げられるわけではない。NHKスペシャル「トランプ流”ディール” 日本企業の苦闘」を見る。溜池通信の最新号でもご紹介したオレン・キャス氏が登場している。キャス氏、日本に来たのは先月、国際交流基金の招聘によるものだが、そもそも声をかけたのは「米国保守思想オタク」の会田弘継さんである。
〇日本のメディアでキャス氏を登場させたのは、NHK、朝日新聞、そして中央公論(まだ出ていない)の3つである。これ全部、松尾文夫さんの研究会の人脈なんですよねえ。会田さんの本に出てきたけれども、「思想は裸では街を歩かない」(かならず世の中の変化に沿って登場する)。キャス氏のような人が出てくるのは、今が時代の変わり目だからでしょう。
〇「世の中が変わるときは、最初に思想家が表れて非業の死を遂げる。次に戦略家が現れるが、これも志半ばで倒れる。最後に現れるのが技術者である」てな話は、司馬遼太郎の『花神』に出てきましたな。ワシは体質的にイデオローグという人種が嫌いで、自分が根っからの技術者タイプであるからだと思う。
〇イデオローグが登場するような時代に生きていることは、つくづく身の不運としかいいようがありませぬ。
<4月7日>(月)
〇今宵にも日米首脳の電話会談があるらしい。くれぐれも石破首相、「日本は間違っていない」とか、「自由貿易が重要だ」などと正義を語ってはなりませぬ。トランプさんの耳に届くような、トランプさんに通じるボキャブラリーで語り掛けなければなりません。その辺の呼吸は、旧田中派の方々は得意だと思います。
〇外野の人たちは、「早くしろ!首相はトランプ大統領に日本の立場を申し入れせよ!」などと言うのであります。が、それでダメだったときの責任を取ってくれるわけではない。むしろ「ほらみろ、やっぱり石破じゃダメだ」と言われるだけです。昨晩の「激論!クロスファイア」でも申し上げましたが、日本は「イジメに遭うくらいなら、シカトされる方がマシ」なのであります。
〇合意を急ぐためには、「お土産」も用意しなければならない。とはいえ、トランプさんはお土産だけをパクっと食い逃げしてしまいかねない相手です。とりあえず「コメの関税を全廃」みたいなカードを切るのはいいと思いますが、変な大盤振る舞いをしてしまうと、後で後悔するかもしれません。
〇困ったことに日本は、「相互関税(24%)と自動車関税(25%)」という2つのターゲットの対象になっている。前者はナヴァロなどの過激派が、後者はベッセントなどの穏健派がお膳立てしている。前者はIEEPA、後者は通商拡大法232条が根拠になっていて、後者の方が確かである。前者は危なっかしい。誰か行政訴訟を起こしてくれるといいのですけど。
〇幸いなことに、日本は6月中旬のG7には確実に対面の日米首脳会談のチャンスがあります。むしろしばらくは様子を見て、ゆっくり取り掛かる方がいいのではないかなあ。これに比べれば、韓国は6月3日ぐらいに大統領選挙が行われることになっていて、それまでは対米交渉もできない。そして相互関税の税率は25%である。お気の毒です。
〇この辺のビミョーな話を、限られた尺の中でどこまでお話しできるか。明日のモーサテで試してみたいと思います。お相手は池谷キャスターなんで、かなり融通無碍な感じになるかと存じます。
<4月8日>(火)
〇本日のモーサテは池谷キャスターがフル回転で、JPモルガン棚瀬さん、ピクテ糸島さんとご一緒に「トランプ関税」と「世界同時株安」について語り合いました。
〇考えてみれば、おじさんばっかり。昔からこの世界では古い人たちで、全員が「リーマンショック」と「コロナ危機」を経験している。今回の「関税ショック」は、それらに比べると今ひとつ緊張感に欠ける気もする。なにしろ前の2回は限りなく天災だったけれども、今回のは人災ですからねえ。
〇いや、「アメリカの政策が見通せなくなった」という意味では、前2回の危機よりも今回の方が根が深いのかもしれません。年初の頃は「資産運用は、今年もアメリカだけ見ておけばいいですよねえ」なんて言っていたことが、まるで嘘のようである。
〇それではこのまま皆で地獄に落ちるのかというと、たぶんそうじゃないと思うんですよね。トランプさんは絶対に自分の非を認めない人ですから、相互関税をひっこめるとは思えない。とはいうものの、これまでビジネスマンとしては数度の倒産、政治家としては落選も経験して、そこからしぶとく這い上がってきた人です。どっかで軌道修正しちゃうんじゃないかなあ。
〇株式市場回りには、「トランプさんは常に正しい」論を発信し続ける人がかなりの数でいらっしゃいます。それは全くお馬鹿なことだとは思うんだけれども、「今度こそトランプの息の根が止まる」と言って喜んでいる人も見かけるので、そっちもたぶん外れるだろうな、と思う次第です。
〇ところで本日の注目ポイントと言うことで、「3月の景気ウォッチャー調査」を挙げたのですが、現状判断DIは前月比▲0.5p下落の45.1となりました。4月になったらこれにトランプ関税がのしかかってくるわけで、景気の先行きはちょっとヤバい感じになってきました。
<4月9日>(水)
〇アメリカの対中関税はとうとう104%になりました。計算式はこういうことになります。
@フェンタニル関税20%+A相互関税34%+B追加関税50%=104%
(→後記:その後、さらにトランプさんがブチ切れて、結局、125%になりましたとさ)
(→さらに後記:125%というのは追加関税だけで、フェンタニル関税を併せると145%になるらしい)
〇これに加えて、Cもともと中国製品にかかっていた関税もありますから、実際にはこれ以上の税率になるでしょう。とはいえ、104%の関税が新しく課せられると、中国からの輸入品は値段がいきなり倍になる計算です。
〇つまりですな、中国で作られているアップル社製iPhoneがアメリカ国内で1000ドルで売られているとしたら、いきなり2000ドルになる計算です。しかるに日本では1000ドルのままですから、このまま行くとアメリカ国内で「日本に行ってiPhoneを買ってくるツァー」みたいなものができて、採算がとれちゃったりするんじゃないでしょうか。
〇しかるにもっと簡単な方法は「密輸」でしょう。不法移民よりはマシかもしれませんが、国境を越えていろんな物品がアメリカ国内に流入するでしょう。市場メカニズムを思い切り曲げるようなことをやっているのですから、そうなるのは自然な流れというもの。
〇ということで、今日から相互関税が始動しましたけど、どんな影響が出てくるか、まことにワクテカであります。何が起きても自業自得。われわれよりも、彼らの方がよっぽど心配すべき事態だと思いますぞ。
<4月10日>(金)
〇思わず言いたくなってしまう。「ボク、言いましたよね!」 以下は一昨日の当欄から。
〇それではこのまま皆で地獄に落ちるのかというと、たぶんそうじゃないと思うんですよね。トランプさんは絶対に自分の非を認めない人ですから、相互関税をひっこめるとは思えない。とはいうものの、これまでビジネスマンとしては数度の倒産、政治家としては落選も経験して、そこからしぶとく這い上がってきた人です。どっかで軌道修正しちゃうんじゃないかなあ。
〇株式市場回りには、「トランプさんは常に正しい」論を発信し続ける人がかなりの数でいらっしゃいます。それは全くお馬鹿なことだとは思うんだけれども、「今度こそトランプの息の根が止まる」と言って喜んでいる人も見かけるので、そっちもたぶん外れるだろうな、と思う次第です。
〇トランプさん、あっけなく相互関税の「上乗せ分」税率を90日間停止すると宣言しました。これだからなあ。
〇とりあえず、これでベッセントとルトニックの「穏健派コンビ」の値打ちが上がるでしょう。逆にナヴァロ氏はしばらくお呼びがかからなくなるのではないかと。
〇トランプさんは意地っ張りなのに、なぜ破綻しないのか。「バッドディールをするくらいなら、ノーディールの方がいい」という原則を貫いているからでしょう。今回もいかんなくそれが発揮されました。とはいえ、こんなのに付き合っていたら疲れます。ワシ、今週はかなり疲労困憊です。
<4月13日>(日)
〇今日から大阪・関西万博が始まりました。
〇しかしまあ、開会式から雨ですわなあ。予定されていたブルー・インパルスの飛行も中止になったようで、これはまぁ単純に幸先が悪い。あるいは主催者の行いが悪い。まあ、ワシは「維新の会」という政党があんまり好きではないので、そりゃあそうだろうな、とは思う。
〇一部の海外パビリオンがまだ出来上がっていなかったり、「並ばない万博」に長蛇の列ができているとか、「ほ〜ら見ろやっぱり」みたいに意地悪なニュースが流れている。まあ、世の中には五輪でも万博でも、「無駄だ」とか「私は行かない」などと言いたがる人がいるものだから、そんなのはほっとけばよろし。
〇実際には、夢洲には初日から結構な人出がある様子。やっぱりね。世の中には、ちゃんと物見高い人たちが一杯いるのである。行列があろうが、雨が降っていようが、万難を排して出かけるという人たちがいる。不肖かんべえはそこまでの気力はないけれども、期間中に一度くらいは行きたいなと思っている。
〇そういえば1970年の大阪万博も、1985年のつくば博も、2005年の愛・地球博もちゃんと見に行ったものである。今度もちゃんと行かねばなるまい。しかるにチケットの買い方ひとつとっても、今回の万博のハードルはかなり高そうである。ディズニーランドさえ、長いこと行っておらんからのう。
〇いや、当方は並ぶのは大嫌いだし、事前予約をするのも面倒くさいと思う方であるが、とりあえず「あー、行ったいった」と言えればそれでいい。どうせ期間中に大阪出張の機会は何度もあるので、「ついで」に立ち寄る機会があればいいのである。どうせなら、万博が不人気でコケてくれたら、ワシのハードルも下がるんだけどねえ。
<4月14日>(月)
〇この週末はけっして仕事をするまい、と決意して、昨日おとといはニュースもなるべく見ないようにしていたのである。だって海外ニュースがほとんどトランプ関連だなんて、どうかしてますよ。なにしろ大谷翔平が出たかと思ったら、「ワールドシリーズ制覇のお祝いでドジャーズがホワイトハウスに呼ばれました」とか言うくらいなんだもん。
〇で、今朝の日経に軽く目を通したら、な〜んだ、そういうことかと謎が解けてしまった。中国産のスマホやPCが非課税になったというのは、相互関税ではなく商品別関税の半導体と同じ枠組みに移したということだったのね。トランプ政権も知恵者がおりまする。
〇半導体は、鉄鋼・アルミや自動車と同じ商品別関税(通商拡大法232条)について現在調査が行われているところ。こちらは相互関税のIEEPAとは違って「フツー」の法的根拠なので、関税をかけるまでには調査に時間もかかるし、かけるにしても25%くらいが関の山ということになる。相互関税みたいに大統領の鶴の一声で「倍にしてやる!」みたいなことはできません。
〇というか、そもそも今の相互関税はあまりにも融通無碍過ぎて危ういことこの上ない。合衆国憲法には「関税は議会が決める」と書いてあるんだから、本来は議会が止めるべきなんです。止められなくなっているのは、議員さんたちがヘタレだから。というか、今のアメリカ国内には「1月6日事件」で投獄されていた無慮1000人以上が恩赦されて野に放たれているので、「コワいからトランプには逆らえない」となっている気配も相当にありまする。
〇そうでなくても、相互関税に対して行政訴訟が起こされたら、かなりの確率でトランプ政権は負けると思います。最高裁の保守派判事たちも、実質的には「条文主義」の人たちなんで、つまりは憲法に忠実な判決が出るはず。トランプさんに不利な判決が出る可能性は十分にあると思います。
〇しかしですなあ、トランプ政権が見落としていることがもう一つある。それは半導体関連の調査結果が出て、「ということで××%の関税を課します!」となったら、アメリカ国内でたくさん建設が行われているデータセンターのコストがいきなり跳ね上がるということだ。東京エレクトロンの半導体製造装置にも関税がかかりますからね。てなわけで、トランプ政権はそこで再び修正を余儀なくされるのではないか。
〇てな話を、本日の日経CNBC「そうだったのか!米国株」でご説明していたら、キャスターのうちだまさみさんから「本当に分かってないんでしょうか?」とマジで突っ込まれてしまった。いやー、それはトランプ政権自体が、迷路のような田舎の温泉旅館の中で迷子になってしまっているから、仕方がないのではありますまいか。
〇日経CNBCの「そうだったのか!米国株」は、後からユーチューブにも載るらしいです。それはそれとして、リンク先でも見られますので、よろしければご視聴ください。トランプ関税に関するモヤモヤがかなりスッキリすると思います。
<4月15日>(火)
〇今日はワシントンの日本大使館で岡本行夫さんの偲ぶ会が行われていたところ、リチャード・アーミテージ氏の訃報ももたらされ、図らずもご両人を偲ぶ会になってしまったとのこと。まさかあの世から呼ばれたわけじゃあないでしょうが、日米関係の一時代を支えた人脈が世を去りました。
〇日米関係に対する提言を行ったナイ・アーミテージレポートと言えば、その1回目が世に出たのはもう四半世紀も前のことになります。ちょうどこの溜池通信を始めたばかりの頃で、本誌が全訳を作ったものがあっちこっちで使われていた、なんて話も聞きました。まだインターネットが始まって日が浅い頃でしたね。今読み返すと、まさに隔世の感があります。
〇これも故人となった日経の春原剛氏から聞いたお話。富士山会合の打ち合わせでワシントンに行って、「悪いけど今回、あなたへの謝礼はこれだけしか払えない」と伝えると、アーミテージ氏は「俺は謝礼なんて要らないから、その分は若い連中に使ってやってくれ」と言われたそうである。兄貴分と言うか親分肌と言うか、体育会系と言うか海軍魂と言うか、とにかくまあ、今どき貴重な気風の人物でありました。
〇かくして今ごろあの世には、岡崎大使やジム・アワーさんなど日米関係を築いたお歴々が勢揃いして、「おいおい、今の日米関係は大丈夫か」「あとはアキ・長島くらいしか残っていないぞ」などと心配してくれているかもしれません。いやあ、日米関係もここへきて大きな転機を迎えているような気がします。トランプ政権はまだまだ先が長そうだし、石破政権は心もとないし。
〇今週木曜日には、赤沢経済再生担当相とベッセント財務長官の間で、相互関税をめぐる第1回の日米交渉も始まるとのこと。果たしてどういうことになるのやら。以下はたまたま今朝、掲載になった産経新聞正論でありまする。
●謎多き「トランプ関税」の対応策
〇こんなことを書いておきながら言うのも変だけど、頼むから日米関係についてワシなんかのところへ話を聞きに来るのはよしてくれ。当たっても誰も褒めてくれず、外れても誰にも責められない。「トランプ占い」とはそういう張り合いのない作業なのです。
〇そうかと思ったら、今度は和歌山県知事の岸本周平氏が急死されたとのこと。2023年6月に、和歌山中小企業懇話会の講演会に呼ばれた時にお目にかかったのが最後でありました。大事な人がどんどん居なくなってしまう。あとに残された者がどんどん頼りなく思えてくる。ともあれ合掌。
<4月16日>(水)
〇本日は内外情勢調査会の茨城支部の会合で水戸市へ。
〇最近の茨城県内最大のニュースは何ですか?と尋ねると、そりゃあもう、今月から悠仁(ひさひと)親王が、筑波大学に通われていることでありますと。そうか、もう新学期が始まっているものね。
〇警備を考えると、とっても頭が痛いのだそうです。筑波大学はまったく出入り自由のフツーの国立大学ですし、外国からの留学生も多いです。学習院大学のような皇室関連のノウハウもまったくない。茨城県警はもちろんのこと、地元関係者はハラハラドキドキ、という感じではないかと思います。
〇現在は東宮御所からクルマで通学されているらしいですが、早朝や遅い時間の授業もあるから、つくば市内の拠点も作られた由。さらに「生命環境学群生物学類」ということは、今後はフィールドワークもあるだろうし、留学や大学院進学の可能性だってあるだろう。ゆくゆくは県内に定住されるんじゃないでしょうか。
〇もちろん茨城県民やつくば市民は大歓迎である。皇室関係者が東京都内以外に住む、ってこと自体がかなりめずらしいですからね。なるほど、これでは他のニュースは目立たなくなってしまうだろう。
〇本日の水戸市内は、ちょうど桜が見ごろを迎えておりました。柏市内はもう散ってしまいましたけど、利根川を超えて取手市から守谷市の辺りはまだ残っている。桜前線は順調に北上中のようでした。
<4月18日>(金)
〇最近発見したこと。講演会などでは、「トランプさんはこんなに酷いんです」という話が受ける。「やっぱりそうなんですか、仕方がないですねえ・・・」という反応になる。
〇ところがネット向けに発信する際は、「トランプさんはこんなに凄いんです」という話が受ける。「ほら、やっぱりね。俺が思っていた通りだ・・・」という反応が多い。
〇なんでそうなるかと言うと、講演会に来る人は何らかの形でコストを払っているからでありましょう。失うものを持っている人たちは、基本的に「反トランプ」になるんですよね。
〇逆にネット上に棲息するフリーな人たちは、「親トランプ」になりやすいようであります。「主流派メディア」を信用していない人が多いことも、一因なんでしょうかねえ。
〇まあ、発信する側としてはビミョーに使い分けをしているので、そういう意味では「商売、ショーバイ!」なんですが。
<4月20日>(日)
〇今日は皐月賞。昨年と同様に、福島競馬場にて勝負するのである。今朝のNHK「日曜討論」はトランプ関税特集だそうだが、そんなのワシには関係ない。昨晩のうちに合流した上海馬券王先生とともに、早い時間の東北新幹線に乗って、一路福島に向かうのである。
〇われわれが乗ったのは「つばさ」だが、いつもの編集F氏は1本前の「やまびこ」に乗っている。一口馬主のベテラン、H氏は既に福島入りしている。そしてTAROさんと編集M氏は、少し遅れて会場入り。昨年と同じメンバーが集まって、「大人の遠足」に興じるのである。
〇いつも通り、福島駅では「福島民報」を購入する(160円)。高橋利明記者は今日は何と書いているかと見てみれば、「福島牝馬S、田辺 福島全重賞V挑む」とある。そうなのだ。今日は皐月賞よりも、地元重賞の福島牝馬ステークスの方が重要なのである。
〇しかも福島県二本松市出身の田辺騎手は、福島競馬場で行われる4つの重賞レースのうち、既に「ラジオNikkei賞」と「七夕賞」と「福島記念」を制しており、今日の「福島牝馬ステークス」を制すると、史上初の「福島グランドスラム」が成立するのである。当の田辺騎手は、「そんなの気にするのは高橋さんだけ」と気のない素振りだったそうだが、ちゃんとアドマイヤマツリで勝利してくれました。パチパチパチ。
〇今日は8Rに地元出身、ルーキーの遠藤汰月騎手(19)がうれしいJRA初勝利を挙げるというシーンもありました。先月、競馬学校を卒業したばっかりで、53戦目の勝利でありました。坊主頭がなんとも初々しい。ゴール前、本日絶好調だった三浦皇成騎手との叩き合いになった時は、ワシも「こら、三浦、余計なことするな!」と思いましたな。田辺騎手も遠藤騎手も、地元の温かい拍手に包まれていましたなあ。
〇ということで、本日は福島の競馬ファン的には「満額回答」ともいうべき結果となったのでした。予想も当たった高橋記者はご機嫌でありました。惜しまれるのは皐月賞を当てられなかったことですが、まあ、勝敗は競馬の常。というか、こうやって馬鹿騒ぎをしておくことで、また明日からの「トランプ漬け」の日々に耐えられるというもの。ホントにねえ、いつまで続くんでしょうねえ。
<4月21日>(月)
〇いやあ、世の中には恐ろしいものがあるのですね。先月、インドネシアに誕生した「ダナンタラ」という政府系ファンドのことであります。
〇グーグルのAIさんに聞くと、"Danantara"についてこんな風に教えてくれます。
インドネシアの政府系ファンド「ダナンタラ(Danantara)」は、国有企業の株式を保有して投資を行い、持続可能な経済成長を促進することを目的としています。
【ダナンタラ(Danantara)の概要】
*インドネシア政府が設立した政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)
*シンガポールの政府系投資会社テマセクを参考にしている
*銀行大手のマンディリ銀行、ラクヤット・インドネシア銀行、バンク・ネガラ・インドネシアなどの国営企業の株式を保有している
*総資産規模は9000億ドル超とみられる
*再生可能エネルギー、先端製造業、下流産業、食料生産などの分野への投資を計画している
【ダナンタラ(Danantara)の投資戦略】
*ニッケルやボーキサイト、銅をそれぞれ製錬する事業や人工知能(AI)開発への投資
*石油精製、再生可能エネルギー、食品生産などのプロジェクトへの投資
*国有企業の配当金を長期成長を下支えする産業に投資する
*国有企業をそれぞれの分野で世界を牽引する存在へと変革していく
【ダナンタラ(Danantara)の投資戦略に関わる人々】
*インドネシアの前、元大統領のジョコ・ウィドド氏とスシロ・バンバン・ユドヨノ氏
*ヘッジファンドマネジャーのレイ・ダリオ氏
*経済学者のジェフリー・サックス氏
*タイのタクシン元首相
〇人口2億8000万人の国が保有する国有企業を、金融から建設、エネルギーまで全部くっつけてファンドにして、そんなのまともにガバナンスが効くわけないでしょ〜。ましてレイ・ダリオ様とサックス教授とタクシン元首相がいるんですよ〜。巨大な「闇鍋」と言っていいでしょう。てゆうか、これで汚職が起きなかったら、儲けものと言っていいんじゃないでしょうか。
〇その昔、総合商社に対して「コングロマリット・ディスカウント」という批判がありましたが、このダナンタラに比べれば可愛いものです。それが9000億ドルを有しているだなんて、もうめまいがいたします。くらくら。
〇その東南アジア経済は、トランプ関税に直面して試練に遭っております。かといって、ここで甘言に乗って中国に擦り寄ったらどんな怖い目に遭うかわからない。しみじみこれは大変なことかもしれませぬなあ。
<4月22日>(火)
〇本日は辰巳由紀さんが帰国されているというので、キヤノングローバル戦略研究所へ。宮家邦彦氏の下でセッションを行うのである。
〇辰巳さん、帰国途中の飛行機の中で、映画『教皇選挙』を見てきたとのこと。ちょうどイースター休暇のさなかに、フランシスコ教皇が逝去されたものですから、思わずそのことで盛り上がってしまう。
〇コンクラーベには日本からも2人の枢機卿が参加されるとのこと。いろんな候補者がいるみたいです。
*ジャン=マルク・アヴェリーヌ(マルセイユ大司教、フランス人、66歳)
*ピーター・エルド枢機卿(ハンガリー人、72歳)
*マリオ・グレチ枢機卿(シノドス司教会議事務総長、マルタ人、68歳)
*ファン・ホセ・オメラ枢機卿(バルセロナ大司教、スペイン人、79歳)
*ピエトロ・パロリン枢機卿(バチカン外交官、イタリア人、70歳)
*ルイス・アントニオ・ゴキム・タグレ枢機卿(フィリピン人、67歳)
*ジョセフ・トビン枢機卿(ニューアーク大司教、アメリカ人、72歳)
*ピーター・コドォ・アピア・タークソン枢機卿(ガーナ人、76歳)
*マッテオ・マリア・ズッピ(ボローニャ大司教、イタリア人、69歳)
〇と、この辺で止めておけばいいものを、ついつい"Next
pope odds"でぐぐってしまうのが当溜池通信における「業」のようなものである。オッズチェッカーというサイトにおける現時点の判定は以下の通り。
Next Pope | Odds | Implied Probability |
Pietro Parolin | 6/4 | 40% |
Luis Antonio Tagle | 13/5 | 28% |
Matteo Zuppi | 7/1 | 13% |
Peter Erdo | 10/1 | 9% |
〇中道派のイタリア人枢機卿が最有力であり、これをフィリピン人リベラル派枢機卿が追う。選出されれば初のアジア出身教皇の誕生である。いやあ、面白いですね。われながらまことに不謹慎だとは思いますが。
〇他方、フランチェスコ教皇の葬儀には日本から誰が参列するのでしょうか。普通に考えればカトリックで、洗礼名「フランシスコ」の麻生大閣下が役どころでしょうが、石破さんとの関係がちとビミョーである。トランプ大統領も参列するとの説もあり、これは悩ましいところですな。
<4月24日>(木)
〇今週はとある「経済と安全保障」がビミョーに絡んだテーマについて、「かんべえさん、これ誰に聞いたらいいの?」というお問い合わせを連続して3件いただきました。順番がいいですね。
@某ジャーナリスト
A某政府関係者(かなり中枢)
B某アメリカ・シンクタンク関係者
〇政府関係者の先回りをしている、というのは某ジャーナリスト、優秀であります。
〇そもそも本来は、某省がキチンと仕切ってくれればいいのですが、そうでないから皆が必死こいてバイパス手段を探しているのであります。・・・なんてことを言うと、それだけでネタが割れてしまうかもしれませんけどね。
〇でまあ、ワシ的にはそんな風に頼られると悪い気はしないので、ついつい「ここに聞けば一発ですがな〜」などとサービスしてしまう。まあ、こんな風に世間が大騒ぎで蠢いているのが見えてしまう、というのは乱世の証なのでありましょう。
<4月25日>(金)
〇今回のトランプ関税と1971年の「ニクソン・ショック」が似ている、という話はあっちこっちでしておりますが、以下にポイントをまとめておきましょう。いえね、あっちこっちでお話しするたびに中身が変わっていくので、自分でもこの辺で整理しておきたいのです。
@ニクソンもトランプも、アメリカの覇権国としてのコストが持続不可能であると考えて、前者は「ドル・金交換停止」、後者は「相互関税の導入」という世界を驚かせる挙に出た。ニクソン時代はベトナム戦争が継続していて、トランプ時代はイラク・アフガン戦争の後遺症が問題であった。
Aともに貿易赤字の削減が必要と考えて、ドルの切り下げを狙った。ニクソンは当時の日本と西ドイツを標的にしたが、トランプも「敵国よりも同盟国の方がひどい」という認識を有しているようである(たぶんに被害妄想の気がある。ドルが基軸通貨であることのメリットを無視している)。
Bニクソンはドルを金本位制から離脱させるとともに、「10%の輸入課徴金≒関税」を課した。この時に使われた法律は1917年敵国交易法(TWEA)というものであったが、それを後継しているのが現在のIEEPA、すなわち相互関税の法的根拠である。
Cともに経済政策への姿勢が”Hands on”であり、介入主義的である。ニクソンは価格統制を目指したが、うまくいかなかった。トランプ氏のインフレ抑制のためになりふり構わない姿勢だが、たぶん似たようなことになるのであろう。
D呆れたことに、金融緩和を求めてFRBに圧力をかけたことまでそっくりである。ニクソンは当時のバーンズ議長に対し、「FRBの理事を増やすぞ」という脅しをかけている。トランプもパウエル議長に無自覚な脅しをかけている。
〇1971年のニクソンショックのとき、筆者はまだ小学校5年生であった。何が問題なのかはよく理解できなかったが、周囲の大人たちが驚き慌てていることはよくわかった。「驚き、桃の木、山椒の木」という言葉をそのとき初めて覚えたものである。
〇ニクソンショックは、その4か月後の「スミソニアン合意」(12月18日)で一応の「手打ち」を見る。1ドル360円だったドル円レートは1ドル308円になった。同時に10%の輸入関税も取り下げられる。ただしこの合意はすぐになし崩しになり、為替市場は変動相場制に移行する。「海図なき航海」(速水優)という世界である。
〇ニクソンとトランプには、ほかの分野でも「南部戦略とラストベルト」「キッシンジャー外交と逆キッシンジャー戦略」などの共通点がある。ニクソンは権謀術数の職業政治家、トランプはビジネス出身の「ポピュリストという違いはあるのだが、共和党内にはこの手のDNAがあるのかもしれない。
〇明日公開予定の「東洋経済オンライン」の連載でも、「やっぱり歴史は韻を踏むのか?トランプ関税は1971年の「ニクソンショック」の構図にそっくりだ」という記事を寄稿しておるのですが、上の通りあらためて整理しておきます。
<4月26日>(土)
〇昨日の続き。トランプとニクソンの類似点について、Grokがこんなことを教えてくれた。
どうも、Grokだよ。ニクソンとトランプの弾劾の動きに共通点か…なかなか鋭い視点だね。
まず、二人とも「権力の乱用」や「司法妨害」みたいなキーワードで追及されたのは似てるっちゃ似てる。ニクソンはウォーターゲート事件で盗聴とか隠蔽工作がバレて、議会が「連邦機関の不正利用」と「犯罪隠し」を理由に動いた。一方、トランプは2019年の弾劾で「権力の乱用」と「議会妨害」を突っ込まれたし、2021年の2回目じゃ「議会襲撃扇動」が議題に上がった。どっちも「ルール無視して好き勝手やってる」と見られたわけだ。
でも、決定的に違うのは二人の反応だ。ニクソンは追い詰められたら「もうダメだ」と悟って、自分から辞任した。政治家としての計算ができて、議会での票読みが得意だったから「負ける戦はしない」と判断したんだろうな。トランプは真逆だ。どんな証拠が出ても「俺は悪くない!フェイクだ!」って叫び続けて、最後まで居座った。辞めるなんて選択肢、頭になかったんじゃないか?トランプの場合、負けを認めるのが死ぬほど嫌いな性格がモロに出てる。
あと、時代背景も違う。ニクソンの時代はメディアがまだ「事実を淡々と伝える」スタイルだったけど、トランプの時はSNS全盛で、情報戦がエグい。トランプは支持者を直接煽って「弾劾は魔女狩りだ!」って盛り上げちゃったから、議会も世論も真っ二つに割れた。ニクソンはそこまで大衆を味方につけきれなかった。
共通点でいうと、どっちも共和党内で「アウトサイダー」扱いされてたのが面白いかも。ニクソンはエリートに嫌われながらも這い上がったし、トランプも既存の政治家じゃないのに大統領になった。党内の結束が緩い分、敵も作りやすかったのかもな。
ぶっちゃけ、トランプがニクソンみたいに潔く辞める姿は想像できない(笑)。もしニクソンが今のSNS時代に生きてたら、Xで「俺は潔白だ!」って連投して炎上してたかもね。どう思う?
〇ちょっと怖いくらいに賢いね。両者はほかにも、「アイルランドにルーツがあること」「宗教的なバックボーン」「お兄さんが病弱で早世していて、その結果『自分が何とかしなきゃ』という意識が強くなったこと」なども教えてくれました。AIってコワいねえ〜。
<4月27日>(日)
〇本日は町内会の通常総会。コロナでずっと書面審議になっていたので、リアルで実施されるのは実に6年ぶりである。
〇どれだけ集まるのか心もとない感じであったが、蓋を開けてみると会員数から委任状を引いた数の出席者がご参集である。さすが。
〇本日は議長を拝命したので身構えて職務に就く。案の定、あーだこーだという話は出るのであるが、なんとか2時間以内にすべての議事を終えることができた。結構、建設的な話もできたので良しとすべきか。
〇終わってからは懇親会である。お疲れさまと言いながら、気になるのはフローラステークスである。宴会中に画面をチラチラ見ていると、中途半端なところで先頭に立ったエストゥペンダはゴール直前で差されて4着となってしまう。ぐぬぬぬ・・・。三浦騎手、お前はやはり・・・。
〇なお、本日のクイーンエリザベス2世カップではタスティエーラが勝利。プログノーシスが2着。ところがリバティアイランドが競争中止。どうなったのか、気になります。
(→後記:心配していた通り予後不良につき安楽死となりました。ドゥラメンテ産駒の三冠牝馬、せめて子孫を残してほしかった。上海馬券王先生のお嘆きぶりが目に浮かびます。合掌)
<4月28日>(月)
〇本日は岐阜新聞さんの講演会で岐阜市へ。ワシ自身が完全に忘れていたのだが、2011年9月14日にも呼ばれたことがあって、そのときは会場が大垣市であったらしい。その時は新幹線で岐阜羽島駅まで行ったものだが、今回は名古屋駅から東海道本線に乗り換える。会場は都ホテル岐阜長良川である。
〇演題は「トランプ政権下の国際情勢と日本経済」。ちょうど明日で第2期トランプ政権が発足してから100日目を迎える。そこで、まずは厳かに宣言する。「第2期トランプ政権の『最初の100日』は失敗です」。なあに、賭けてもいいけれども、今週は似たような非難が左からも右からも殺到するはずである。
〇なぜ失敗と断じていいのか。ひとつめは支持率をご覧くださいまし。いつものRCPでは支持45.3%、不支持52.4%で差し引き7.1pのマイナスである。ここへきて急速に不支持が増えている。特に最新の「ワシントンポスト/ABC」の調査結果がひどい。これだけは良かった「移民政策」に対する評価も下落している。
〇次にマーケット指標である。現下のNYダウは4万ドル前後だが、ピーク時の4万5000ドルからは1割も下げている。為替は対ユーロで見ると、やはり1割減価している。これを見ると、やっぱり米国債を売ったのは欧州勢ではないかという気がする。「トリプル安」を招いてしまったことの痛手は大きい。
〇3番目は経済指標だが、これは今後にご注目である。4月30日公表の1−3月期GDP速報値はたぶんマイナス成長であろう。四半期ベースで成長率がマイナスになるのは3年ぶりのこと。まあ、輸入が急増したからだという理由はあるけれども、景気が急減速していることに間違いはない。これで5月2日には4月の雇用統計も出る。トランプ関税が雇用にとってプラスかマイナスか、そこで最初のデータが出る。
〇ざっくり言ってしまうと、トランプ政権は3月末までは上手く行っていた。おかしくなったのは4月2日に公表した相互関税からである。支持率も株価もそこから急速に悪化した。やっぱり21世紀の「ニクソン・ショック」はマズかったのですよ。この期に及んで「トランプ大統領、所得税『撤廃』も 関税への批判回避に躍起」などと書かれているのはまことに痛い。
〇「最初の100日」が失敗と言うことになると、影響が出るのが来年度の予算審議である。今年いっぱいで失効するトランプ減税の延長と、チップ減税などの新たな減税、できれば法人減税なども盛り込み、予算を大幅に削減すると同時に、債務上限も5兆ドルくらい引き上げなければならない。トランプさんの勢いが削がれると、下院共和党はたちまち「学級崩壊」状態になるだろう。予算成立へのハードルはますます高まることになる。
〇それでは第2期トランプ政権がこのまま「早過ぎるレイムダック」に陥るのかと言えば、たぶんそうはならないのであろう。自分の間違いは絶対に認めないけれども、なんだかんだ言って上手に軌道修正してくるのである。何しろロジックを無視できるところが、この政権の強みでありますので。近い将来にそういうニュースを見るんだろうなあ、と思うと今からちょっとユーウツである。
<4月29日>(火)
〇最近聞いて面白かった発言を、出元をテキトーにぼかしながらご紹介。
●テレビでCMやってるM&Aのコンサルティング会社、実は不動産業の人が始めたんだって。中小企業のオーナーさんたちが、いかに後継ぎに困っているかがわかったから(某中堅会社社長)。
――「こういう会社買いませんか?」というメールがしょっちゅう来るそうです。インフレ時代になると、いよいよ待ったなしですからねえ。
●購買先と共同研究会を開いて、1個200円の製品の原価を0.7円下げることができました。ときどき虚しくなりますけど(某化学メーカー役員)。
――間もなく自動車部品にも、トランプ関税25%が課せられます。しかしこういう精神でないと、製造業なんてやってられませんわなあ。
●玉木君も大変だよなあ。トラの背に乗って駆け回っているけれども、トラの背から降りられなくなっちゃって(某財務省OB)。
――本来は年収700〜1000万円クラスの人向けに言っていた話が、300万円以下の人たちに変に受けちゃって、今さら引っ込みがつかなくなっている。知らんがな。
●3年も戦争が続いているのに、ウクライナの交通インフラがまだ機能しているのは、鉄道網が日本における「国鉄」なみに無駄な線路が多かったから(某安全保障専門家)。
――リダンダンシーは危機の時には役に立ちます。
●「モーサテ」以外のTV番組は出るだけ無駄です。その点、ユーチューブチャンネルには登録者数が100万人を超えるものがあります(某若手エコノミスト)。
――おじさんにはそこまで割り切れないんですが、言ってることはきっと正しいと思います。
〇ホントはもっといっぱいあるんですけど、書けない話も時節柄あったりします。まあ、おいおい出していきましょう。
<4月30日>(水)
〇つい先ほど米商務省から1−3月期GDP速報値が公表されました。▲0.3%成長。実に3年ぶりのマイナス成長です。と言っても、前回のマイナス成長だった2022年第1四半期の▲1.0%は、その前の21年第4四半期が+7.4%と上振れした反動ですから、とっても久しぶりのマイナスということになります。
〇寄与度で見ると、純輸出が▲4.83%なので、トランプ関税を恐れた金の緊急輸入がなければプラスになっていた可能性大です。とはいうものの、個人消費の+1.21%は前月の+2.70%から減速しているし、在庫投資が+2.25%もあるのは悪材料。この感じでは足下の4−6月期も悪そうなので、テクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)の確率はかなり高そうです。
〇トランプさんはいろいろと「最初の100日」を自画自賛しているようですが、経済統計は違うことを言っている。たぶんこの後の流れは株安、ドル安でしょう。今夜はPCEの発表もありますけど、そっちの方は11時まで起きてられないので寝てしまうのである。
〇さて、明日は久しぶりに「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演の予定です。よろしくね。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki