●かんべえの不規則発言



2000年4月





<4月1日>(土)

○新年度入りしたので、トップページを少し整理してみました。1999年分のバックナンバーページを作る、3月分の日記をまとめるなど。あいかわらず愛想のないつくりですけど、軽いページでケイタイでも読みやすい誌面作りを目指しております。

○それにしても、新年度をもって新天地にはばたく人のなんと多いこと。昨日の送別会では、入社6年目で会社を辞め、政治の世界に飛び込むことにした、という人がおりました。つても何にも無しに郷里の政治家の事務所を訪ねて、いきなり「雇ってくれ」と言い出したそうです。もちろん無給で、しばらくはぞうきんがけの毎日。将来の保証はまるでなし。

○40歳も近くなると、こういう威勢のいい決断をみると、やるのぅ、とうれしくなってしまいます。あとから、「ワシは何をしとるんじゃ」とふと思ったりもする。この季節、勤め先を変える友人が多いです。起業する人、フリーになる人、会社を変わる人、政治家を目指す人、みなさんのご多幸をお祈りします。

○近所の桜がほころびはじめています。来週は花見シーズンですな。



<4月2日>(日)

○『播磨灘物語』を読み返してみました。「かんべえ」というハンドルネームの元となった黒田官兵衛の生涯なんですが、あらためて気がつくと、彼は20代にはほとんど何もしていないんですね。官兵衛が世の中に飛び出すのは、30を過ぎて羽柴秀吉に出会ってから。その後の活躍はわりと有名ですが、若き日の官兵衛が何をしていたのかはほとんど伝わっていない。ことによると鬱々とした日々だったような気もする。

○『播磨灘物語』の中では、官兵衛がキリシタン仲間との交流したり、将軍足利義昭擁立に協力したことが書かれているけど、このあたりは司馬遼太郎さんの想像力の産物と考えたほうがいいでしょう。のちの天才軍師は、どんな青春時代を送っていたのか。ということで、架空インタビューを実施してみました。

かんべえ 「官兵衛さんは20代の頃は何をしていたんですか?」
官兵衛 「いやもう、正直なところ暇で暇で・・・・。こんな田舎でくすぶっていていいのかと、何度も思いましたよ」
かんべえ 「やめちゃいたいとは思いませんでしたか」
官兵衛 「そんなこといっても、僕は長男だし、筆頭家老だし、無責任なことはできませんよ」
かんべえ 「長男だなんて、そんなこと気にする人だったんですか」
官兵衛 「親父が40代で隠居して、僕に家督を譲ってくれたでしょう。それでいきなり小寺家の筆頭家老でしょう。最初のうちは重荷だったですよ。弟もいるし、家臣はみんな真面目だし、周囲の期待は大きかったし・・・・。それに小寺氏の家老って、ほかに頼りになるひとはあんまりいないし、退屈なわりには結構きつかったですよ」

かんべえ 「小寺家を乗っ取って独立、なんて思いませんでしたか」
官兵衛 「全然。僕はそんなガラじゃないって・・・・」
かんべえ 「そういうところが後世では人気があるんですけど、その気になれば20代のうちに播磨一国くらいは取れてたでしょ」
官兵衛 「(笑い)・・・・かもしれないけど、その場合は人生そこで終わったでしょうね。後になってから良かったなと思ったんだけど、僕は20代では何もしなかったけど、無茶や無理もしなかったの。それで信用されたと思うんだな。田舎で信用されるには、“昔から知ってる”ってのがいちばんですからね。とくに黒田家内部が僕を信用してくれた。その後、僕はいろんなギャンブルをしたけど、みんな最後までついてきてくれましたからね」
かんべえ 「それじゃやっぱり、無駄にしてたわけじゃないんだ」
官兵衛 「やっぱり二代目ですからね。親の代からの家臣に信用されるのって、難しいですよ」

かんべえ 「20代で楽しかったことって何がありますか」
官兵衛 「やっぱりキリシタンになったことでしょうね。正直に言いますけど、僕はそれほど信仰心が厚かったわけじゃないんです。ただね、キリシタンになると情報が入ってきた。それが面白かった」
かんべえ 「なぜキリシタンは情報が入るんですか」
官兵衛 「キリシタンになるって連中は、当時としてはインテリなんですよ。それも若くて面白い奴が多かった。そいつら全員と友人になれたんです。しかも神の前にはみな平等だから、大名でも商人でも対等に付き合うんです。今でいうネットワーキングですか。田舎に住んでいたけど、あれで世界が広がったと思う」
かんべえ 「なんだか勉強会みたいなことをしてたんですね」
官兵衛 「情報を集めるとか、形勢を分析する技術なんてのは、あの頃に覚えたんです」

かんべえ 「官兵衛さんの20代には、播磨の国はまだ空白地帯ですね」
官兵衛 「東から織田家、西から毛利家が伸びてきていた。でも播磨に到達するまでには、5年以上かかると思っていたから、あわてることはなかった。そうそう、それでお金を貯めてましたね」
かんべえ 「官兵衛さんは晩年になってもケチだったという評判が残っています」
官兵衛 「若いときからの癖なんだな、きっと。いずれ勝負のときが来る、と思ってたから」
かんべえ 「そういうお金は何に使ったんですか」
官兵衛 「主に情報を集めるためかな。そうそう、僕は初めて秀吉に会ったときは袖の下を渡してるんですよ。あの人はお金のかかる人だって知ってたから」

かんべえ 「官兵衛さんは、意外と生臭いこともしてるんですね」
官兵衛 「その辺が竹中半兵衛さんとの違いかな。僕はね、秀吉の若い頃からの悪事をいっぱい知ってるの。とても書けないようなことも含めて」
かんべえ 「歴史に残ってないことも含めて、ですね」
官兵衛 「歴史に残っていることなんて、ほんの一部ですからね。年取ってから、僕は秀吉から干されるわけだけど、それって無理のない話なの。弱みをいっぱい握っているわけだから」
かんべえ 「歴史に残ってない話を少し教えてくださいよ。本能寺の変は実は秀吉が仕組んだとか」
官兵衛 「そりゃあちょっと無理があるけど、司馬さんが書き残したことはたくさんありますよ。いい本だけどね」



<4月3日>(月)

○かんべえと官兵衛の会話は思ったよりはずんで、どんどん先へと進みます。

かんべえ 本当は、官兵衛さんの20代についてだけ聞くつもりだったんですけど、ご機嫌が良いようなので、もう少し話を伺ってみましょう。で、司馬さんがあの時代について書き残したことって、どんなことがあるんでしょう。
官兵衛 たとえばね、織田軍団の内部事情なんかは、あんなに生易しいものではなかったね。
かんべえ と、いいますと?
官兵衛 当時の織田軍団というと、今でいうとオーナー社長の下で急成長している企業なわけですよ。もうソフトバンクか光通信かってくらいで。組織の内部はもうむちゃくちゃね。朝令暮改に下克上で、落ち着きがない上にピリピリしているの。仲間内の足の引っ張り合いもすごくえげつない。
かんべえ たとえば、秀吉と柴田勝家は仲が悪かったそうですね。
官兵衛 あの二人はまだいいの。お互いに認め合っているところがあったから。でも、汚いことするやつもいるわけ。たとえば信長の晩年に、重臣の林、佐久間が放逐されるでしょ?あれだって仕掛けるやつがいるの、内部に。もう油断も隙もない。前線に立ってても、いつ後ろから弾が飛んでくるか分からない。正直なところ四分六で内部の方を向いてないと、仕事ができないって感じ。

かんべえ でも、織田軍団の中で秀吉は出世しますよね。あれはやっぱり他人の足を引っ張ってのし上がるんですか。
官兵衛 そういう面がなかったとはいえないよね。たとえば、ある時期の織田家は、誰が中国方面担当司令官になるかがすごく注目されるんです。誰が見たって打倒毛利家が最重要課題だし、その担当者が織田家ナンバーワンの評価になるから。信長はそういうとき、部下にコンペをさせるんです。もっとも早く、確実に、安上がりに勝てそうな部下を選んで指名する。実はある時期までは、この競争は光秀が一番札だった。
かんべえ 秀吉はそれを大逆転するわけですね。
官兵衛 そう、そのやり方がおかしいの。秀吉はいきなり僕を岐阜城に連れていって、「すごい男を見つけました。この男ひとりで播州は取れます。ついでに中国方面も全部取れます」って宣伝するわけ。そこで僕は初めて信長の前に出て、「こうすれば毛利は倒せます」と一席ぶたされるんです。これが受けちゃって、「よし、だったら秀吉、毛利攻めはお前がやれ」。これで決まり。
かんべえ いきなり自分の出世に利用されちゃったわけですね。
官兵衛 そう、だから秀吉は僕には恩義があるんです。

かんべえ じゃあ、毛利攻めの最中にも、同僚によるいじめがあったんですか。
官兵衛 端的にいうと、荒木村重が造反するでしょ。あれで僕はエライ目にあうわけだけど、僕の前に、最後に説得に行ったのは明智光秀なの。でも説得に行ったのか、寝返りをけしかけたのかは分からないよ。
かんべえ ひえー、そりゃひどい。
官兵衛 だって、彼は秀吉にポストを取られて、気の進まない丹波攻略なんかをさせられてるんだもの。邪推かもしれないけど、「おぬしの気持ちはよく分かる」なんて言ってたんじゃないの?摂津の村重が寝返ると、播磨の羽柴軍は困るけど、丹波の明智軍は関係ないしね。
かんべえ 光秀はけしからんやつですね。
官兵衛 でもね、こっちも彼に対してはいろいろやったから。

かんべえ 具体的にどんなことをしてたんですか。
官兵衛 スパイを送ってたんだよね。明智軍だけじゃないよ、秀吉軍てのは自民党田中派みたいなもので、そこらじゅうに「隠れ秀吉派」を作ってあるわけ。光秀はとくに危ないってんで、優秀なのを送り込んどいたの。そしたらある日、様子がおかしいことに気づいたんだな。
かんべえ ひょっとして・・・・
官兵衛 そう、明智軍が亀山城を出て、老の坂まで来たら、「わが敵は備中にあらず、本能寺にあり」って言うんだもん、そのままスパイは逐電して秀吉陣営まで飛んできた。
かんべえ 本能寺の変を知らせたのはスパイだったんですか。
官兵衛 もちろん、信長が死んだかどうかはわからなかったけど、結果は察しがついたよね。堺の商人が飛脚をよこしたとか、明智の使者が報告先を間違えたってのは、僕らが後で作った話。これが「中国大返し」の実態ですよ。

○かんべえさんのインタビューに対し、官兵衛さんは快調に何でもしゃべってくれる。明日はいよいよ本能寺の変の真相が明らかになる。乞うご期待。



<4月4日>(火)

○光秀の謀反は秀吉陣営にはつつぬけだった、という。そうなると気になってくるのは、日本史最大の謎のひとつである本能寺の変の真相だ。

かんべえ そこまで話したら、本能寺の変の真相についても教えてくださいよ。
官兵衛 うーん、本当のところはね、僕らもわかんないよ。光秀がなんであんなことをしたのかはね。でも、彼の気持ちは分かるんだ。
かんべえ 後世では怨恨説、野望説などが有力とされています。
官兵衛 野望ってことはないよ。奴はそんなタマじゃなかった。怨恨も当たらないね。浪人してたところを拾ってもらったんだから、信長への恨みよりは恩義の方が圧倒的に大きい。強いていえば、正当防衛に近いのかな。あのままいけば、彼は確実に殺されていた。だから殺られる前に殺った。それと、最後の頃の光秀は、心身症に近かったからね。
かんべえ 光秀をそんな風に追い込んだのは信長自身だった、と。
官兵衛 うーん、これを説明するのは難しいんだけど・・・・・

かんべえ いろいろわけがありそうですね。
官兵衛 そうだな、ある時期から信長は明らかにおかしくなっちゃうわけ。もう、全然、感情の抑制が効かなくなってしまうの。やたらと人を殺させたり、かと思うとボロボロ泣いたり、冷静な指導者ではなくなってしまう。元亀年間の頃は、織田家がいつ滅ぼされるかわからないという緊張感があったけど、長篠の合戦あたりからはそれもなくなって、完全に自分を止められなくなった。天正9年には「伊賀のもの、一人も生かすな」なんて無茶苦茶な命令を出してしまう。でも、なにしろ織田家はワンマンカンパニーだから、そうなっちゃうと誰も止められない。組織としての抑止力もゼロだったし。
かんべえ オーナーが変になって、バブル企業が崩壊する感じですか。
官兵衛 もちろん、止めようとはしたんですよ。秘書役の森蘭丸なんかが、「ちょっと御館様が変なんです。秀吉さん、あんたがいちばん呼吸が合うんだから、なんとか言ってやってください」って頼んでくるわけ。でもさ、秀吉はイエスマンだから、結局何も言えないの。
かんべえ 信長がそんなふうになった理由はなんだったんでしょう。
官兵衛 僕ははね、殺し過ぎたんだと思うんだな。あの人は叡山焼き討ち、伊勢一向一揆虐殺とかやるでしょ。でも彼だって人間だから、良心の呵責は感じていると思うんだ。そうすると苦しむよね。苦しいのを忘れるために、もういっぺん虐殺をやっちゃうの。それで、「こんなことはたいしたことじゃないんだ、こいつらが悪いんだ」って思うんだろうね。そうやって自己正当化を図っているうちに、暴力が拡大再生産されていく。最後の時期には恐くて、誰も面と向かってものが言えなくなっていた。

かんべえ それでも、織田家の快進撃は続いていた。
官兵衛 ある時期からの織田家は事業部制になって、羽柴、明智、柴田、丹羽、滝川といった子会社が競争しながらどんどん成長するのね。でも、親会社の社長は狂っていて、自分がいつクビになるか分からない。そういうとき、子会社の社長はどうすると思う?
かんべえ ・・・・分かりませんね。
官兵衛 自分だけはやられたくないから、やられ役を作っちゃうの。つまりイジメだね。信長の怒りが爆発しそうになると、「悪いのは全部こいつです」とみんなで口裏を合わせてしまう。そうしておけば自分自身は無事だからね。
かんべえ 犠牲になったのが光秀であったと。
官兵衛 そう、彼は典型的ないじめられ役だったの。信長がひとりで怒り狂っているときに、なーんとなく光秀がスケープゴートになってしまう。そういう雰囲気作りは、秀吉がいちばん上手だったよ。小さな頃にいじめられた子供は、大人になってからそういう勘が働くのね。
かんべえ それじゃ光秀はたまりませんね。
官兵衛 そう、最後の頃には、「俺はこのままじゃ殺される」と思ってただろうね。

かんべえ それじゃ、官兵衛さんなんかは、光秀の裏切りはうすうす感じていたんじゃないですか?
官兵衛 感じてなかったといったら嘘になるね。というより、信長が死んだと聞いて、織田家の部将はみんなほっとしたと思うよ。正直なところ、最後の頃はみんなが戦々恐々で、「誰かなんとかしてくれ!」って感じだったもの。光秀の謀反に内心、拍手を送った部将は少なくないと思う。
かんべえ 言葉は悪いですけど、彼は家臣団を右代表して手を下しちゃったというか。
官兵衛 そう。光秀の気持ちになるとね、信長を殺せばみんなが拍手してくれると思ってたんじゃないかな。でもそれって甘いよね。自分の主君を殺した人間は誰にも信用されない。そういうことって、実際に手を下してみると気がつくんだよね。本能寺の後の彼の行動は明らかに変でしょ。非常に中途半端な行動を続けて、まるで自滅するように死んでしまう。
かんべえ なんだか光秀が可哀相になってきたな。

官兵衛 そういう罪悪感は、当時の織田家の部将はみんな感じていたと思うよ。「あいつ馬鹿だなー」なんていいつつ、まあ、でも取りあえず自分が助かって良かったな、って。
かんべえ そういう計算をしていた官兵衛さんも結構ずるいというか。
官兵衛 たしかに、ついに光秀が動いた、という情報を得たときは、立ち込めていた雲が消え去ったような気がしたな。高松城で毛利軍と対峙していたけど、彼らは最初から戦う気なんかなくって、お互い八百長試合もいいところだったからね。吉川、小早川とはツーカーの意思疎通ができていたし、僕らはいつでも好きなときに席を立つことができた。僕らはついてたんだ。
かんべえ 聞いててだんだん腹が立ってきたな。やっぱり本能寺の変は秀吉が仕組んだんじゃないの。
官兵衛 そういうなって。その後の「中国大返し」から山崎の戦いのプロセスは、やっぱりギャンブルだったからね。もちろん、負ける気は少しもなかったけど。
かんべえ 秀吉と官兵衛さんは、相当に腹黒いことを相談していたんですね。
官兵衛 あははー、でもね、秀吉と僕のコンビは、当時の日本では掛け値なしに最強だったと思うよ。二人で知恵を絞って強敵に打ち勝っていくという体験は、強烈な快感だった。・・・・それに、君だってこういう話は、まんざら嫌いでもないんだろう?



<4月5日>(水)

○かんべえさんと官兵衛さんの戦国時代問答は、3日間にわたって続けられました。二人の間には、若干の余熱が残っているらしく、昨今の状勢に関しての雑談が続いています。

官兵衛 ときに今度はこっちから聞くけど、僕が戦国時代の話をしている間に、この時代では総理大臣の交代があったんだね。本能寺ほどではないが、最高権力者の無力化という一種の異常事態が発生した。ところが乱世になるという感じでもない。これはどういうことだい。
かんべえ 小渕前首相が倒れたのは4月1日の夜。それが4月5日には新内閣発足。「中3日」で処理したわけですが、うち1日は事実を隠していたから本当は「中2日」でした。危機管理としては上出来の部類で、個人的には久々に「自民党という知恵」を感じましたね。現にこの間の株価は、ほとんど政局とは無関係でした。

官兵衛 それで次の政権はちゃんと機能するのかな。どうも簡単すぎるように感じるけど。
かんべえ 今回の事態を本能寺の変に置き換えれば、せいぜい清洲会議が行われたあたりでしょう。やっぱり戦争をやらなければ政治は安定しません。現代日本では戦争をしませんから、代わりに選挙をやって決着をつけます。選挙で勝てば森政権は認知を得ますし、負ければ他の人に取って代わられるでしょう。
官兵衛 だったら早くやったほうがいいな。
かんべえ 新聞紙上では、解散・総選挙は近いという見方がもっぱらです。
官兵衛 戦争でも選挙でもいいが、天下を取るときはちゃんとライバルを倒して、自分の正統性を立証しなければならないね。リスクを回避してちゃ、権力は安定しないよ。

かんべえ ところがホンネの話、政治家は選挙が恐いんです。森さんも「ノミの心臓」で解散を先送りするという説もある。
官兵衛 政治家のことは知らんが、戦国大名が戦争を逃げちゃいかんね。この世界は、いつも戦い続ける、ということが大事なんだな。織田信長が戦国時代の勝利者になった理由が分かるかね? 勝っても負けても、しじゅう戦争をしていたからさ。武田や毛利なんて、勝てるいくさだけ選んでやっていたから、織田家の脅威にはならなかった。
かんべえ ほほう、武田、毛利はいくさが足らなかった、と。
官兵衛 だいたい彼らは、ロジスティクスの概念を知らなかったから、大規模な遠征軍を組織できなかった。しかし織田軍団はいつも各地を転戦して、細かな無数のノウハウを蓄えていた。そこの違いが大きい。

かんべえ 今の話を現代に置き換えてみると、いつも選挙を戦うことが政党を強くするということですね。思い当たることが多いなあ。自民党の中でも、これまで武闘派といわれる集団が権力を握り、リーダーを生み出してきた歴史がありますしね。あ、そういえば企業だって競争がなければ駄目になりますわな。
官兵衛 戦うということは、人材を育てる上でも大切なことなんだ。勝ちぐせをつけてのしあがるか、敗北から教訓を得るか、いずれにせよ戦わないことにはリーダーは育たない。
かんべえ 現代はリーダー不在の時代などといわれますが、それは政治家が「君子の争い」をしたり、「相乗り選挙」をやっているからかもしれませんね。
官兵衛 そういうところは戦国時代を見習ってください。
かんべえ 最後は『プレジデント』の対談みたいな落ちになりましたな。
官兵衛 あははー、ところで誰がこんなもん読んでるんだ?



<4月6日>(木)

○官兵衛さんが帰ってしまったので、再びかんべえの独白モードに。ここ数日間、小渕内閣総辞職から森政権発足への移行について、「読者のページ」にいろいろ書いておりましたが、この間に筆者が受け取ったメッセージの数々を以下、ご紹介します。

○「森に100万円かけます。寝てないH」――これは某テレビ局の政治部デスクから。河野を本命とした本誌としては恐れ入るしかございません。

○「わはっはっ。ヤミノテイオーは言いえて妙ですね。昨日お会いしたTさんは「森で決まり」と言いきっておられましたけどね。ヒトガラソーリーの落馬の「弔い合戦」に打って出て、5枠の選挙管理内閣の後1枠が入る、またはいっそのこと、エツザンジョウオーを担いで、満期総選挙を戦うということもあったりして。」(笑)――友人O氏から。

○「そう言えば昨日のNステでは、白鴎大学の福岡先生が宮沢本命説を出していたような気がいたしますが、あっけなく森喜朗に傾いてしまいましたね。エリツインは倒れようがアル中だろうがあんなに持ちこた えたのに、日本の首相は倒れた傍から総辞職...げにはかないものでございます」――友人A氏から。

○「クイズなら森がいつまで持つかの方が面白いでしょう。羽田を抜くか抜かないか。海部とどっちが頭がいいか。とにかく、このままじゃ終わりですよ。ニッポンは」――憂国のジャーナリストT氏

○「お久しゅうござんす。いつも読んでますよ。元小結の板井関も言っていましたが、このレースは八百長なんじゃないかって?(板井が東京湾に浮かんだって話はどなたかまだ聞いてませんか?)永田町政治に八百長もへったくれもありませんが、私が聞いたところによると、世の中には『竹下遺言』なるものがあるそうでござんすよ。それによると小渕の次はもう最初から森と決まっているとか。なにせ相手はおんぶおばけだから、化けて出るのが怖くて誰も逆らえない。さてさて、この経緯をBBCやCNNはどう伝えるのやら。オムツをつけたお化けが総理をhandpickなんてね。ちなみにクリントンさんの耳には、この話ちゃんと入れておきました?!結構ウケたらしいですよ」――元AP通信記者、J氏。

○「そういえばさー、オブチ、もう死んでるんだって?XXが国会議員のガイジン秘書に聞いてきたっていうんだけど、ホントかしらあ・・・・。皆さん何かお聞きになってるかしらあ?武田信玄かっ。」ジャーナリストK嬢から。こういうときに必ず出る話。恐い話としては、「補欠選挙をやりたくないから、今は生命維持装置をつけているけど、選挙が決まったら外す」とか。「ご本人は平成騒ぎのときによくご存知のはず」なんてますますコワイ・・・・

○本件につきましては、今週号の本誌でまとめて書きます。



<4月7〜8日>(金〜土)

○金曜の夜にパーティーをはしご。またまたネタを集めてきました。

○防衛研究所の武貞秀士教授を見かけたので、「日朝交渉はどうですか?」と聞いたら、「非常にうまくいきそうです」とのこと。「金正日は、パク・チョンヒの路線を目指すらしいです。軍の力を背景に、北朝鮮経済の近代化を図るつもりでしょう」とも言っていた。「朴大統領だと最後は殺されますね」とつっこんだら、「あ、そうか、その手があったか」――最近、『Voice』にそういう記事を書いたんだけど、それを落ちにすれば良かった、と。

○あるお医者さんから聞いたのですが、小渕さんの入院に医療ミスがあった可能性があるとのこと。これは内部情報ではなく、一連の発表をプロが聞くとそういう推論が成り立つという話。専門的な話は分かりませんが、要は心臓の病気のつもりでいたら脳に行っていた、ということらしい。一国の総理がそれでは浮かばれませんが、「病院に運び込まれるときは土日は気をつけましょう」。

○最近、竹下さんのことを書いた本が出たが、書店から消えたという。出版社に聞くと、重版の予定はなしと。どうやら誰かが回収しているらしい。何が書いてあるんでしょうね。『竹下政権の五XX日』みたいな題名だそうです(数字は不確か)。ご存知の方は教えてください。竹下さんは、こないだ『われ万死に値す』という暴露本が出たばかりで、もう新しいネタはあんまり残ってないと思ったのですが。

○最後にこれは、古希を迎えられた岡崎久彦大使の挨拶。「人間、60歳まではずっと反抗期ですね。だから孔子も『60にして耳順(みみしたがう)』と言っている。私も60歳を過ぎてやっと人の意見が聞けるようになりました。四柱推命学では、60年で運命は一巡するそうですから、私ももう一周やるつもりでいます。よろしくご支援ください」

○筆者は今年10月で「不惑」です。するってえことは、あと20年はひとの意見に耳を貸さなくてもいいようで。昨晩一緒だった信田さんは一足先に今日で不惑。おめでたくないけどおめでとう。



<4月9日>(日)

○今朝の報道2001によれば、森政権の支持率は意外と高い。少なくとも不支持率を上回っている。サンデープロジェクトでも、森政権支持は47.7%で不支持が22.3%になっている。小渕さんへの同情票が反映されているようだ。本誌の「From the Editor」でも書いたけど、マスコミの小渕政権への評価はちょっと低すぎ。惜しまれるのは当然だと思います。

○ということは、解散は近いってことですな。ただし、だからといって総選挙で自民党が勝てるかどうかは分かりません。支持政党なしが6割という世の中で、どんな結果が出るかは分かったもんじゃない。民主党政権誕生、なんてこともあるかもしれません。その場合はサミットでの準備不足と、参議院で絶対少数であることによる混乱は避けられないでしょうけど。

○明日からの国会では、森首相のお手並み拝見ということになります。国会答弁くらいは無難にこなすだろうけど、クエスチョンタイムをしのげるか。不規則発言が飛び出すようだと、支持率は急落するかもしれない。マスコミはすでに、スキャンダル探しに余念がないと聞く。ひとつ間違えば宇野首相のパターンにはまりますぞ。

○例の「日本のカイシャ、いかがなものか」で「フィクションはタイトルで泣け!」という連載を始めました。毎週末に連載していくつもりです。会社や組織の話とはまるで関係ないから、こんなんでいいの?といったんだけど、まあちょっとは気分が変わっていいかも。



<4月10日>(月)

○「コンピュータは絶対に間違いを犯さないから」――少し前の少年向けSF小説にはこんなセリフがよく出てきたものだ。今日、パソコンが実際にこれだけ普及すると、コンピュータがいかに当てにならないものかということが全世界的にばれてしまった。「データが消えた」「立ち上がらない」「強制終了」など、不愉快な経験はどなたもお持ちのことでしょう

○「コンピュータの決定に人間が従わされる」というSFも少なくなかった。手塚治虫の『火の鳥』未来編なんぞが典型的な例。巨大なホストコンピュータ(これ自体が時代遅れになってしまった)が命ずるので、未来人は朝は白いご飯ではなく、人工パンを食べなければならない。しまいには戦争までやらされてしまう。これも今から考えると噴飯ものだ。コンピュータというものは、少なくとも電源を抜けばただの箱である。

○もうひとつ、過去のSFが間違えたのは、「コンピュータは巨大な容積を必要とする」と見込んだことだ。『2001年宇宙の旅』はもちろん、1970年代に作られた『エイリアン』や『スターウォーズ』でさえ、宇宙船の内部は壁一面がコンピュータになっている。松本零士の描くマンガも同様。インテルのマイクロプロセッサがなかった時代ゆえにしょうがないか。

○などと、これだけコンピュータに関する幻想が崩壊しているのに、世の中にはいまだに過去の固定観念にとらわれている人が多い。テレビに出て堂々と、この手のセリフを吐く人のなんと多いことか。「コンピュータの世界は冷たい」「メールを使うと人間同士のコミュニケーションが希薄になる」「人間が機械に使われているような気がする」「サイバー空間はセキュリティにいまひとつ不安がある」

○筆者などは正直なところ、「コンピュータは暖かいツール」「メールのお陰で人の輪が広がる」「機械は人間が使わなければ何もできない」「電話で株を買うのは安心で、インターネットでは不安だという理由がよく分からない」方が自然だという気がします。まあ、インターネットでこのHPをご覧いただいている方の大多数は、ご賛同いただけるのではないかと思いますけれども。

○そういえば昔のSFは、デジタル・ディバイドの可能性も見落としていました。「コンピュータはなんとなくイヤ」「変化が早すぎる」「取り残されるのが不安」という人間の気分は、それ自体は自然な感情です。だからデジタル社会に背を向けて生きるというのも、ちょっとオシャレな感じはあります。今いわれているデジタル・ディバイド対策は、「いかに落ちこぼれを減らすか」を検討していますけど、「PCなしでも生きていける社会を」と考える方が現実的かもしれません。



<4月11日>(火)

○今週号の政局特集はいい線行っていたような気がしてきました。筆者の下に寄せられてくるお馴染みさんの受けがわりといい。ついでに、「こんな話もあるんだよ」と教えていただくこともある。

○たとえば、「早期解散説は有力だが、有珠山の動静が無視できない」という話がある。いわれてみれば「あ、そうか」で、有珠山がエライことになっているさなかに政争はできない。解散総選挙の時期が、当初6月上旬といわれていたのが、下旬になりそうなのはそれも勘案してのことかもしれません。

○もうひとつ面白かった指摘は、「森首相誕生により、三角大福の4大派閥すべてで後継者が首相になったことになる。これを機に派閥政治はご破算にしてはどうか」――なるほどね。三木―海部、田中―竹下&橋本&小渕、大平―鈴木&宮澤、福田―森となる。そうそう、中曽根―宇野、というのもあったね。この場合、いくら首相になったからといって、田中派出身の細川さんと羽田さんは別枠と考えるべきでしょう。もちろん村山さんは無関係。

○さて、森政権の前途はいかに。もしも自前の政権にしたいと思うのであれば、まずは官房長官ポストを自派で取りに行くべきでしょう。幸か不幸か青木官房長官は、小渕入院に関する食言したおかげで、記者団の受けが悪くなっている。野中幹事長を味方につければ、詰め腹を切らせることは不可能ではないはず。それでもって、中川秀直や町村信孝ではなく、小泉純一郎を登用する。梶山静六や野中広務の例が示す通り、大物議員が官房長官をやるとすごいパワーを発揮することがある。とにかく今のままでは、官房機密費さえ小渕派に押さえられていて情けない。

○官房機密費とは、正式名称はたしか内閣官房報奨費といったと思うけど、要は官邸の中に領収書の要らないキャッシュが詰まった金庫がある。使えばその分は自動的に補充される打ち出の小槌。この金庫の鍵は内閣官房長官とその政務秘書官だけが持つ。使い道はまったく明かされない。たとえば政治家が外遊に行くときは、出発前に官邸に挨拶に立ちより、その場で官房長官が「お餞別」を渡すといわれる。早い話が「つかみ金」なんだけど、総理になって官房長官ポストを取る旨みのひとつはここにある。

○問題は森首相にそんなつもりがあるかどうかで、ご本人が「政局は小渕派にお任せ」モードであればこれは仕方がない。しかし本誌でも書いた通り、小渕派自身が跡目不在で空洞化しているのだから、あえて勝負に出れば分のない勝負ではないはず。今の森首相は、いわば実績もなければ責任もない立場。リスクを取る値打ちは十分になると思うけど。せめて官房機密費くらいは取りに行けばいいのに。



<4月12日>(水)

○ゴホゴホ、ぐすぐす。花粉症の最終局面で風邪をひいたので体調不良です。なんか最近、しょっちゅう風邪をひいています。こまったもんだ。

○石原さんの「三国人」発言が物議をかもしているようです。前の「支那」発言と同じで、あえて地雷を踏みに行くところがあの人らしいところで、正直なところ「またか」って感じですが、今日の夕刊各紙を見て面白いなと感じたことがある。

○今日の会見で石原さんが怒っていたのは共同通信の報道について。「不法入国をした三国人、外国人が治安悪化の原因になっている」がもともとの発言だったのに、「石原は三国人と呼んで外国人を侮辱した」的なニュースが流れたらしい。不法入国がいいことのはずはないし、そうした勢力が東京都の治安悪化の原因になっているのは、馳星周の小説などでつとに有名なところ。ゆえに問題にすべきは「三国人」という言葉使いであって、今日の会見で石原さんは大辞林まで持ち出し、「これこれこういう意味で使ったが、心中を察して今後は使わない」と述べた。これはこれで筋が通っている。もちろん彼の言語感覚のずれ加減は、深刻なレベルだと思いますけれど。

○さて、今日の夕刊で朝日、読売などがそろって記者会見の一問一答を掲載しております。どれも同じような内容でしたから、おそらくは正確に掲載したと思われます。石原さんは、「あんたのところの報道は」と言って怒っている。ここで各紙が(共同通信が)と但し書きをつけているのが面白い。これはいざとなったら、「不正確な報道をしたのは一部の通信社である」という逃げ道を作っておいたのでしょう。実はこの喧嘩、まんざら石原さんに分がないわけではなく、いざというときのために保険をかけたのではないでしょうか。

○つまり、これから石原リコール運動も始まるかもしれない。そこでじゃんじゃん署名が集まるようなら、かさにかかって石原バッシングをしよう。逆に集まらないようなら、知らん顔をして済ませたい。そのときは共同通信をスケープゴートにすればいい。共同は電通の大株主だから、上場を当て込んで新橋にでっかいビルを建てている。それにひきかえ、朝日などは広告費が値崩れしてピンチになっている。地方紙に対する情報提供でもライバル関係になるから、身内を叩いておいて損はない。こういう計算が働いているのではないかと。

○考えてみれば、新聞が記者会見の一問一答を正確に掲載するというのも希有な話で、これは記者があとで責任問題にならないようにリスクを回避したと見ることもできる。ずいぶん意地の悪い見方をすると思われるかもしれませんが、大マスコミってずるいですからね。今日のところは、世論が石原発言に本気で怒るかどうか、瀬踏みをしているところなのでしょう。別段、石原さんの肩を持つ義理はありませんけど、「石原VSマスコミ」の闘いは、少なくとも後者はリスクを取ってない。そういう構図がちょっと興味深く感じました。



<4月13日>(木)

○昼休みに本屋に立ち寄った。文庫化された『私は闘う』(野中広務・1996年)があったので購入。最初のところをパラパラとめくったら、村山政権下の自治大臣・国家公安委員長として、オウム真理教と戦った話が出てくる。いろいろ裏話が紹介されている中で、「河野洋平には失望した、こんな人が自民党総裁じゃ駄目だと思った」という話が出てくる。そのときの怒りがもとで、95年夏の総裁選では橋本龍太郎をかついで喧嘩を売ることになる。そうかー、影の総理がそれじゃ、河野首相は誕生しないよね、と納得。

○筆者は「政治オタク」ですから、この手の政治内幕モノはつい読んでしまう。早坂茂三の本なんかはほとんど読んでいる。内容はワンパターンだけど、達意の名文だと思います。政治ジャーナリストでは、岩見隆夫がいい文章を書いています。田瀬康弘も面白いけど、筆者とは意見が合わないことが多い。さて、政治家が書いた本は、大部分は秘書に書かせているものですから、読んで面白いものは少ない。でも、この『私は闘う』は面白いです。もっと早く読んどくべきでしたね。

○「政治オタク」というのは不思議な人種で、竹下派七奉行がいえるのに、SMAPの5人がいえなかったりする(厳重な注:筆者は調子のいいときは両方言える)。だれそれは何内閣のときの何大臣だった、当選回数はX回だ、などと、すらすらと出てきたりする。政治オタク同士が集まって話し出すと止まらない。総じて下世話な話が好きで、『噂の真相』みたいな雑誌をきっちりチェックしている。悪い話が出るたびに笑うので、楽しい酒になる。

○ところで「政治オタク」の亜種に、「政策オタク」という人種もいます。この分野に属する友人も多い。これは理屈っぽい連中で、頭の中には年金は何歳からが損になるとか、消費税を何%上げると何兆円になるかといった数字が詰まっていて、その一方、モーニング娘。が何人かもご存じない(注:実は筆者も自信がない)。こういう人たちと飲んでいると、これまた議論が止まらない。総じて詰まった議論が好きで、『文芸春秋』や『中央公論』をちゃんと読んでいる。許しがたい話が出るたびにみんなで怒るので、飲んでいて疲れる。

○類は友を呼ぶというか、同類相憐れむというか、政治オタク、政策オタクはつい群れ集う。気がつけば、そういう友人ばかりが増えている。まあ、これも趣味のひとつとでもいいましょうか。そうしてSMAPやモーニング娘。のことは、何ひとつ知らないままに日々が過ぎていく。

<4月14日>(金)

○今日は1日に3回もスターバックスのコーヒーを飲んでしまった。昼、食後のホットラテを楽しみ、午後は友、遠方より来たりてアイスラテで談笑し、夜、勉強会のお供にアイスモカを買った。ふだんはコーヒーにミルクを入れない主義なのですが、スターバックスのラテは例外的においしいと思う。昔はやったウィンナーコーヒーを思い出します。

○考えてみれば、3杯あわせると1000円近くになる。豪勢な話ですわな。それに毎朝、家で自分でいれて飲んでいる分があるから、1日4杯はちと多いような気がする。幸い、胃を壊しているわけでもなし、ほかにこの手の嗜好品があるわけでもないから、このくらい構わんかという気もする。思えば学生時代には、「本代とコーヒー代に不自由しない暮らし」ができたらいいなと思っていた。けっこうつつましかった。

○ビジネスモデルとしてのスターバックスは、なかなかよくできていると思う。オシャレなビルにはスターバックスがよく似合う。紙コップを持って歩いていると、いかにも「ワタシは高給取りで、知的な職場で働いてるのよん」という感じがしないでもない。ところがふと気がつくと、リクルート活動中の学生が企業研究をしながら、スターバックスでコーヒーを飲んでいた。なんだか釈然としない。心が狭いかしら。



<4月15日>(土)

○ニューヨーク市場が下げています。ナスダックも年初来安値。来週の東京市場はどうなるか。週末のG7もあるので、非常に微妙な感じになってきました。

○4月15日号の"The Economist"誌のカバーが"Rosy prospects, forgotten dangers"(ばら色の展望、忘れられた危険)。日本にいると気がつかないけど、欧米は景気先行きに対して楽観論一色なんですね。それで心せよといっている。いいタイミングで注意を喚起しました。

○今週号の本誌「溜池通信」もいいタイミングになりました。最近、誰と会っても「光通信」の話が出てきます。伊藤さんに教えてもらったのですが、ヤフーファイナンスの中で、光通信に関する掲示板がある。ここをご覧ください。大勢が参加していますが、実際に株を持っている人たちは大変です。

○ところで、古い付き合いの神保哲生さんが、日本ビデオニュースのHPを作られました。HPを使って報道映像を提供していこうという試み。お役に立つと思います。



<4月16日>(日)

○大崎善生著『聖の青春』講談社刊、を読みました。「さとしのせいしゅん」と読みます。さとし、とは異色の棋士、村山聖のこと。一度見たら忘れられない顔ですから、将棋に縁のない方でもご記憶の方は少なくないかもしれません。5歳でネフローゼという病におかされ、病院に出たり入ったりしながら少年期を過ごす。病床で将棋に出会い、熱中して強くなる。何歳まで生きていられるか分からないけども、「名人になりたい」と念願してプロの道に入る。森信雄という風変わりな師匠に出会い、谷川浩司、羽生善治などの得難いライバルに出会う。あいにく名医には出会うことがかなわず、最後は癌に倒れた。享年29歳。最後は名人挑戦権を競うA級8段に在籍していた。

○本書によれば、村山の生涯はまことに壮絶なものでした。「終盤は村山にきけ」と呼ばれた寄せの強さは、限りある命を生きていることからくる集中力によるものだったのかもしれません。20歳の誕生日を迎えたとき、村山聖はわざわざ麻雀荘にいる師匠の横へやってきて、「今日で20歳になりました」と報告する。師匠は「ああそうか、それで?」。弟子が帰ってから師匠は気がつく。村山は20歳まで生きられるとは思っていなかったのだ。師匠は牌を握りながら、「そうか、村山君、よかったなあ」とつぶやく(161p)。

○それにしても人との出会いとは妙なものです。森信雄という師匠に出会わなかったら、彼の才能が花開くことはなかったでしょう。森と村山の師弟が、大阪の貧乏アパートで肩を寄せ合うように過ごす日々の描写は、不思議なほどの幸福感に満ちていました。真冬の深夜の大阪の公園でふたりがばったりと出会う。師匠が声をかける。「飯、ちゃんと食うとるか?風呂はいらなあかんで。爪と髪切りや、歯も時々磨き」。それから弟子の手を取ってやさしくさすりながら、「まあまあやなあ」と言う。村山は何も言わずにもう一方の手を差し出す。著者はこの情景を、「人間のというよりも、犬の親子のような愛情の交換」と描写する(146p)。

○とても幸福だったとは言い難い村山聖の人生ですが、「いい師匠にめぐり合えて良かったね」ということはできる。思うに限りある時間の中で、自分にとって必要だと思える人に出会うことは、幸運の最たるものではないでしょうか。

○これまで棋士・村山聖については、将棋ファンとして多少のことは知っておりました。死んだと聞いたときには「ああもったいない!」と思ったものです。それにしても、私のように健康に不安なく生きてきた者は、こういう本を読んだときは後ろめたさを感じてしまいます。今日もまた、先週もまた、無意味に過ぎてしまったのではないいのか!人生という勝負の、持ち時間には限りがあるものを・・・・。身に覚えのある方は、ぜひ本書を手にとってみてください。



<4月17日>(月)

○今日はやられたー、というほど株価が下げました。今日一日で財産を減らした方は相当な数になるでしょう。日経平均は1万9000円ギリギリが終値に。でもまあ、いい線でとどまったような気もする。いずれにせよ、鍵を握るのは今夜のNY市場。世界中が固唾を飲んで見守っていることでしょう。もうあとしばらくでオープンしますけど。

○ネットバブルが調整することはいいことだと思います。マーケットはときたま「行き過ぎ」を演じることで、参加者を鍛えてくれます。21世紀のIT産業の担い手たちは、この荒波を乗り越えなければならない。孫さんや重田さんにそれができるかどうか。それを決めるのは投資家です。

○一昨日の当欄で、ヤフーの株価掲示板で光通信に関する情報が飛び交っていることを紹介しましたが、本日は閉鎖の憂き目に遭っていました。なにせ「自殺する」など、不穏当な発言がありましたから。風説の流布もさることながら、そもそもヤフーって孫さんの会社ですもんね。

○さて、問題は、ネット株だけにとどまらず、米国株式市場へのマネーの流入自体が止まってしまったらどうなるかということです。先日書いた「米国経済ハードランディング仮説」が現実味を帯びてきます。正直なところ、考えはまとまらない。ただ直感勝負であれば、迷わず「NY市場は反転、明日の東京市場も復活」に賭けたいと思います。



<4月18日>(火)

○ここしばらく、たいそうな羽振りで夜の街をにぎわせていたネット・ベンチャー族が、めっきりおとなしくなったという今日このごろ、皆様はいかがお過ごしでしょうか。今夜のかんべえ氏は、つつましく遊んで深夜のご帰還です。(←酔っている上に常磐線車中でも爆睡していた)

○ネットバブルの崩壊はいいことだ、なんて書きましたけど、よくよく考えてみると被害は甚大なんですね。日経金融新聞では、毎週金曜日に時価総額ランキングが掲載される。4月14日を見ると、こんなふうになっている。
  • ソフトバンク・・7兆2966億円、7位
  • 光通信・・・・・1兆1401億円、82位

    ○これが2ヶ月前の2月17日だとこうだった。
  • ソフトバンク・・18兆6847億円、3位
  • 光通信・・・・・6兆9666億円、7位

    ○2社あわせると、25兆円が8兆円くらいにしぼんでしまったわけで、3分の1になった計算になる。2ヶ月でですよ。しかも両社の株価は今週も下げている。ものすごいバブル崩壊です。追い証だなんだで、血みどろになっている投資家は少なくないでしょう。当然、景気にも影響するはずです。たとえば夜の街などで。

    ○国際証券エクイティ調査部の「今週の景気・金利見通し」によれば、「2月の株式投資信託の設定額は2.7兆円で、89年12月に次ぐ過去2番目の高水準」だそうだ。この時期に設定された投信は、IT関連ということで2社の株を相当仕込んだことが予想されます。これらは赤字になっているでしょう。こんなことでは、ようやくリスクを許容し始めた個人マネーが、再び安全志向に戻るかもしれません。

    ○ところで先週書いた内容に対し、「ベンチャーに対してきびしい見方をしてるんですね」という感想がありました。そういうつもりでもないんで、ただ「株式公開で一攫千金」をドリームだともてはやすような潮流に対して、大いに疑問を感じておるわけです。

    ○株式公開とは、自分が手塩にかけて育てた企業を投資家に売り渡すことなのです。公開したら最後、自分ではなくて投資家がリスクを負ってくれるようになる。この時点で会社はパブリックなものになり、経営者は投資家の奴隷になる。こういうことを自覚している起業家はどれだけいるのでしょう。理解していないネット・ベンチャー族は、株式公開で億万長者になったことで満足し、さっそく夜の街に繰り出して散財する。それじゃあ投資家が気の毒ですぜ。

    ○グッドウィルの折口氏は、株式公開で得たお金でランボルギーニを買ったそうだ。でも彼は同時に、介護ビジネスに200億円をつぎ込む。起業家とは本来、そうでなきゃいけない。最近は、「介護にビジネスの論理はなじまない」的な批判を浴びているようですが、だったら福祉に身銭を切る度胸がある人間がほかにいるのか。仮に彼が失敗したとしても、介護に関するノウハウは残る。こういうベンチャー精神は、資本主義社会には絶対に必要なことだと思うのです。



    <4月19日>(水)

    ○今週は訪問客が多いような気がします。考えてみれば、当方も連日、株式関係のHPを訪ねてはチェックを入れてますから、同じようなことをしている人が多いのだと思います。

    ○てなわけで、気がつけばカウンターが1万に近づいております。5000のときは大騒ぎしてしまいましたが、今回は静かに5ケタの到来を待ちたいと思います。せっかくだから、大台乗せをきっかけに新企画を始めようかな、などと考えております。名づけて「かんべえのお勧め図書館」(仮称)。雑誌『財界』で連載している書評を、まとめてHP上にのっけちゃおうと思っています。乞うご期待。

    ○現在も「1日50件ペース」が続いておりますが、お馴染みさんがついているようなのがうれしいですね。このペースが今後も続くよう、続けていきたいと思います。昨日が長かったから今日は短めに。



    <4月20日>(木)

    ○会社でいつも使っているPCが更新になりました。同じFMVなんですが、新しいマシンはさすがによろしい。早いのなんのって。前は1ギガのCドライブをいっぱいいっぱいに使ってたので、IEを立ち上げるのもずいぶん待たされた。今度は快適にぶっ飛ばすことができる。思わず"Highway Star"を口ずさんでしまうぜぃ。

    ○前のマシンを使い出したのは1996年。まだ「一人一台」になる前の頃、部の中に2台だけあったノート型を勝手に占拠し、ほぼ独占状態で使い始めたのが始まり。こんな身勝手な私を周囲はほっておき、一人だけ快適に使っていた。ところが2年もたつと、周囲はもっと新しいマシンを手に入れ、自分一人だけが古いマシンで苦労するようになってしまった。この世界ではよくある「先行デメリット」というやつ。新しいのが欲しくなっても、「ちゃんとリース期限が来るまで使ってね」といわれてしまった。

    ○諸般の事情で本日、新しいマシンを手に入れ、古いマシンをリース会社に戻すために、My Documentsやユードラの中身をせっせと消去しました。するとあるわあるわ、この間の長い会社生活が、ほとんどこの中に入っているような感じ。いろんなことがあったなぁ、としばし感慨にふける。その割りにはあっさりとお別れしてきました。ふん、ワシは情が薄い人間なのさ。

    ○自宅のPCはB5版のLet's Note、"AL-N1"という初期のモデルで、98年夏から使っている。これまた年季が入っている。アセアン各国やニュージーランドなど、いろんな場所に連れていった歴戦のツワモノ。しかも当「溜池通信サイト」をこれだけで維持している。今夜も今週号の溜池通信をせっせと書いておる。お前にも苦労をかけるのぅ。いずれ新しいのが欲しくなるだろうが、当面は機嫌良く頼むよ。



    <4月21日>(金)

    ○いまの日本経済にとっては、「IT」と「株高」と「輸出」が希望の星です。このうち、株価は今日も下げました。ネットバブル崩壊の影響は、けっこう大きい。日本の株式市場の根本的な問題点が表面化した。ITに関しては、プレステ2がリコールになったり、i-modeがつながらないといった問題が起きています。これで輸出が伸びなくなったら、何を信じたらいいのでしょう。

    ○これまで景気と株価の先行きには、強気の見通しをしていたかんべえさんですが、今週号を書き終えて、なんだかイヤーな予感がしています。1990年代には、何度も景気回復局面がありました。最初は93年夏で、「冷夏、円高、ゼネコンスキャンダル」の3点セットで景気は腰折れ。次ぎは95年春でしたが、「阪神大震災、オウム、超円高」という不運で再び失速。97年には「消費税など国民負担増、アジア通貨危機、金融スキャンダル」が続いて、しまいには北拓・山一ショックまで引き起こしてしまいました。この中には不運も失政もあったけど、とにかくわれわれは3回チャンスを逃している。

    ○99年春頃から、またまた景気は上昇軌道に乗り始めた。今度失敗したらいよいよ後がない。金利はゼロだし、財政は大赤字だ。ところが今年4月、だんだん雲行きが怪しくなってきた。有珠山噴火、小渕首相重体、そしてネットバブルの調整。予想外の事態が連鎖し始めています。こんなことが前にもあったような・・・・取り越し苦労で終わればいいのですが。

    ○今日の夕方、会社で見たらアクセス件数は「9948」。今週末にはいよいよ大台でしょうか。



    <4月22日>(土)

    ○歴代の総理大臣には鬼門がある。それは「教育問題に取り組むと短命になる」というジンクス。田中角栄は政権末期になって、「5つの大切、10の反省」(←笑止)などと言い出した。中曽根康弘は、任期が残り1年になって教育臨調を始めた。橋本龍太郎は「5つの改革」を始めようとした矢先に、「教育改革も大切だ」といわれて急きょ6つにし、やっぱり短命内閣に終わった。そして教育改革国民会議を設置した小渕恵三は、重体に陥って本人の意識がないままに首相の座を降りた。

    ○文教族といわれる森新総理は、やっぱり教育改革に手をつけるんでしょうか。最初から短命で終わりそうな森政権のことだから、思い切ってやればいいんでしょうけれども、かんべえ、個人的にはこの教育論議というのが好きではない。教育が重要ではないと思っているわけじゃないけど、そんなもん議論してもしょうがないと思っている。

    ○教育問題については、誰もが一家言を有している。自分の受けてきた教育に対して、不満がない人はいないからだ。だから教育を議論し始めると、延々と個人的な怨念の話が続いてしまう。それから「とにかくXXが悪い」という極端な話が出てくる。XXの部分には、「日教組」とか「学歴社会」とか「近頃の母親」みたいな言葉が入る。最後は「昔は良かった」という結論になったりする。教育を議論し始めると、そういう不毛な時間を我慢しなければならない。

    ○というわけで、「21世紀の日本においては、教育改革が重要である」みたいな話を聞くたびに、「よせばいいのに」と思ってしまう。審議会を作ったり、制度を変えてみたり、新しく何とかセンターを作ったところで、現状を変えることができるとは思えない。どうせなら「悪法も法なり」で、下手に制度を変えたりしないほうが、まだしも水準の悪化を避けることができるのではないか。

    ○大学入試だって、共通一次やらセンター試験やら、猫の目のように方式が変わっているけど、あれは絶対に良くないと思う。思うに、変えやすいところを変えて、変えにくいところはそのままにしているのではないか。たとえば英語教育を充実させるために、今いる英語教師は全員クビにする、くらいの度胸があるんならともかく、生半可な覚悟で教育改革に取り組むのは、政治的資源の浪費に終わるような気がするね。



    <4月23日>(日)

    ○午後8時に覗いてみたら、カウンターが10,011と大台を越えていました。1月6日が5000件でしたから、それから3ヶ月半で5000件を上積みした計算になります。こうしてみると「1日50件」というペースがずっと続いているようですね。皆様のご愛顧に深謝。

    ○当HPは口上の部分で、「情報通と呼ばれる人が、毎週ネタを仕込みにくるサイト」を目指す、と宣言しております。これは別段、利他主義でやっているつもりはなく、情報というものはギブから入らないとテイクできない、と思っているだけのこと。「ここに来れば鮮度のいい情報があるよ」と宣伝することで、結果として鮮度のいい情報を集めようというのがもともとの狙いです。そういう意味では、かんべえの狙いはいまのところいい線行っているような気がする。

    ○その一方で、役立つ情報を求めるなんて気はなくて、日々ここに書いているような無駄話を面白がって読んでくれている人も少なくないような気がする。たとえば花粉症で苦しんでいるとか、SMAPの5人の名前を言えないとかいう話は反響がある。反対に「官兵衛とかんべえ」シリーズは、自分では気に入っていたのだが、誰も何とも言ってくれないところを見ると受けなかったようだ。

    ○ともあれ、こういう形で文章を人目にさらし続けるということは、それなりの緊張感があってよろしい。今後も情報発信を続けますので、引き続きお立ち寄りください。



    <4月24日>(月)

    ○あらためて昨日の発言を読んでみると、なんだか素直に喜んでいないみたいで、われながら不遜な感じがします。いかんよね。そうそう、モスクワの杉岡さんから「10,001ゲット」のお知らせあり。杉岡さんは6,000もゲットしていましたよね。お互い、これでネット上だけのおつきあいというのが不思議ですけど。

    ○今夜はいつもやっている勉強会のコアメンバーが結婚したので、そのお祝いをやりました。そしたら19人も集まり、とても楽しいパーティーになりました。この会はもう6年くらい続いている。これだけ続くとさすがに雰囲気が良くて、面白い話がぽんぽん飛び出す。以下、さわりを紹介しましょう。

    ○来週は大型連休がありますけど、「5日連続で市場が閉じるのは前代未聞ではないか」、という指摘がありました。ニューヨーク市場は、連休が3日を超えて続かないようにしているのだそうだ。たとえば5月3日に、海外で日経平均先物などを売り浴びせる動きがあった場合、日本の投資家は動けない可能性がある。そういう危機管理は誰か考えているのでしょうか?――してないよな、きっと。

    ○解散・総選挙で投票日を6月25日日曜ではなく、24日土曜日にしようかという話が出ている。小渕派のシナリオ通りにものごとが決まるのはしゃくだから、森派の中川秀直幹事長代理が変化球を投げてみたのだそうだ。しかしこの案には弱点があった。それは・・・・・「投票率が上がってしまうかもしれない」。投票率が高いと風が吹く可能性がある(ex:1998年の参議院選挙)。自民党としては、ちょっと情けない話だな。

    ○今度の選挙からは、比例代表で当選した議員は政党間の移動ができなくなる。趣旨からいえばもっともな話なのだが、自由党や保守党などの議員にとっては、これはゆゆしき問題になりかねない。選ばれてしまったら最後、自民党への移籍が不可能になる。ミニ政党に転落してしまうと、そのままの状態で次の選挙まで我慢しなければならない・・・・。

    ○闘う夕刊紙、日刊ゲンダイは遠慮のない批判が売り物だが、毎度各方面から猛烈な抗議を受けている。たとえば自自公を批判すれば、創価学会さんから電話がじゃんじゃんかかる。最近増えているのは巨人ファンからの電話。昨今のように連敗が続いているときに、「これじゃ負けるのは当たり前」なんて書くから頭に血が上る。しかしまあ、こういう姿勢を貫き続けるのはしんどいことでしょうなぁ。寺田さん、どうもご苦労様です。二次会はご馳走さまでした(ヨイショ!)



    <4月25日>(火)

    ○昨晩の寺田さんから言われたのだけど、「吉崎さんは一橋だから、石原慎太郎に甘いでしょ」。4月12日に書いた「三国人」問題についてのコメントが印象に残ったのでしょうけれども、なるほど読み返してみると、遠慮がちに石原都知事を応援しているようなトーンが感じられる。うーん、きびしい読者もいるものでございます。

    ○一橋大学のOB会は如水会といいます。余談ながら、この言葉の語源は「君子の交わりは淡きこと水の如し」で、如水・黒田官兵衛とは無関係だそうです。で、如水会はそもそもが身内びいきの強い集団で、石原都知事へもかなり肩入れをしています。筆者などは人並み程度の愛校心はあるつもりですが、ときどきついていけなくなることも。でもまあ、気がつかないうちに言動にバイアスがかかっていることはありそうな話なので、この際、自分はいつも何をひいきしているかを考えてみました。

    ○「溜池通信」読者には自明のことでしょうが、まずこの筆者はアメリカに対して点が甘い。クリントン政権についても評価が高い。やっぱりその国で暮らしたことがあって、それがとにかく楽しかったもので、悪口を言おうという気にならない。逆に行ったことのない中国に対しては評価が辛い。これは比較的、自覚症状を持っている身びいきです。

    ○政治に関しては、無党派層を自認しておりまして、自民党にも民主党にもそれほどの思い入れはありません。ただし、その昔は日本新党の党員だったので、ついつい細川政権に対する評価が高くなる傾向がある。これについては、最近は異論のある人が多いようです。

    ○それから経済を議論するときに、日本銀行をついついかばうというバイアスがある。めったに誉められることのない組織ですから、これはめずらしいかもしれない。それから「溜池通信」では、よく経済同友会の提言を引用することがありますが、これは2年間出向したことがあるからで、これもはっきりした身びいきですね。

    ○ほかにも自分で自覚のない身びいきがたくさんあるはずです。「溜池通信」をお読みになる読者は、こういうことを多少、意識しておかれることをお勧めします。ほかに罪のないひいきとしては、「阪神タイガース」があります。8連勝となるとちょっとうれしいですね。本日10時半現在、広島と延長戦が続行中。勝てば首位。まっ、今のうちだけでしょうけどね。はは。



    <4月26日>(水)

    ○連休にすることがないから、本を買い込んでいます。『財界』の原稿料があるから、わりと気前良く買ってしまうのだ。今のところ下記が「積読」状態。そのうち、書評に取り上げるかもしれません。

    『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦(PHP)
    『グリーンスパンの魔術』デービッド・B・シシリア、ジェフリー・L・クルックシャンク、 伊藤洋一訳(日本経済新聞社)
    『戦後史のなかの日本社会党』原彬久(中央公論新社)
    『オランダモデル』長坂寿久(日本経済新聞社)

    ○このところフィクションを読んでおりません。高村薫とか、好きな作家がないではないのですが、なんとなく熱が冷めている。最近、出ている本の中では『ハンニバル』が面白そうだな。これはかの『羊たちの沈黙』の続編。これを読んだジョディ・フォスターは、続編への出演を「絶対にヤダ」といったそうです。『羊たちの沈黙』のクラリスは若きFBI研修生ですが、なんでも今度の本では人食いを演じるらしい。

    ○もちろん、どっか出かけるところがあれば、本は積んだままにして遊びに行くのですけどね。そうそう、来週の溜池通信は休みますよ。だって5連休なんだもん。



    <4月27日>(木)

    ○阪神が今夜で9連勝。広島に勝ってついに首位!あんな陣容でよくまあ、という感じですが、今夜の試合も0対0で迎えた10回裏、ボテボテの併殺コースなのに、3塁ランナー矢野が本塁突入して、補逸を誘って取った1点でサヨナラ勝ちです。たいへん効率がよい勝ち方。選手獲得に何十億円もつぎ込んで、なおかつ低迷しているどこかの球団と比べるとROEが高い経営と申せましょう。

    ○最近の阪神好調の理由は、おそらくは矢野の成長でしょうね。野村さんの指導がうまいのか、それとも「カツノリなんぞに負けてられるか」と本人が奮起したのかは存じませんが、とにかく阪神に久々にしっかりした捕手が育った。やはり野球のかなめは捕手ですよ。某球団はここを補強する必要がありますね。え?来年あたり古田がフリーエージェントですって? そこまでする?

    ○てな話は、この不規則発言には書かないつもりだったのですが、うれしいからとうとう書いてしまいました。だって滅多にないことなんだもん。それにあの戦力から考えて、じきに転落するだろうから騒ぐんだったら今のうち。やはり阪神が一時的に首位だった去年の夏、大阪に出張したら駅で「野村監督ありがとう」という和菓子を見かけました。秋にはきっと姿を消したはずですが、阪神ファンの気持ちはうつろいやすいのです。

    ○某阪神ファンが、プロ野球の楽しみとは「責任のない喜怒哀楽をエンジョイできること」と表現していました。筆者なんぞは、90年代のかくも長き不振の挙げ句、熱狂的でない阪神ファンになり下がってしまいましたが、試合が終わっても立ち去らない甲子園の観客が、六甲おろしを熱唱する姿に往年をふと思い出した今夜のBS放送でした。



    <4月28日>(金)

    ○舞台裏を明かすと、今週号は違うネタを書く予定でいました。ところが木曜日、つまり昨日のお昼になって、ある理由でそれが使えないことが判明。急きょテーマを変更しました。それを一晩と一日で書いたのが今週号。「なーんだ、結構いいかげんに書いてるんだ」と思われた方、あなたは正しい。

    ○毎週水曜日くらいになると、「午後4時に冷蔵庫の中を見ながら、晩ご飯は何にしようかと考える主婦」みたいな状態になります。「何にするかはあらかじめ決めてある」とか、「めずらしい食材を使って驚かせよう」という日もありますが、「忙しいから、買い物をせずに適当に済ませたい」みたいな日も当然あります。今週はたまたま、以前から冷凍室に入れておいた肉が解凍できないことに気づき、ありあわせの材料で別の料理を作る羽目になりました。自分ではまあまあの出来だと思っているのですが、子供たちからは「なーんだ、またか」という声が聞こえてきたりして。

    ○本当は最初にテーマを定め、新鮮な材料を仕込み、一気呵成に料理するのが理想なのでしょうが、そういうグルメな仕事をすることはめったにありません。シェフではなく、主婦の料理法なんですな。主婦はシェフと違って、「こうすれば楽して、安上がりに作れる」みたいなことを、しっかりと計算に入れている。ちなみに今週使わなかった材料は、鮮度が維持できる見込みなので、またの機会に調理する予定。



    <4月29日〜30日>(土・/p> ○連休前の雑誌は合併号で読みでがある。そんなわけで『東洋経済』『エコノミスト』などを寝そべって読む。株価下落を扱った記事が多い。どうやら米国の方は落ち着いてきた。ダウは1万〜1万1000に戻して、ナスダックは3000台半ばで推移。どちらも値ごろ感がある。日本はどうか。日経平均はしばらくは見ないことにして、TOPIXを見るとそう悪くはない感じ。ただしネットバブルの怪我人は多いはず。とくに投資信託が心配ですな。

    ○ウォーバーグ・ピンカスの「日本成長株ファンド」というのをご存知でしょうか。ニコラス・エドワーズという運用担当者の絵が出ている広告がしょっちゅう出ている。この人、1月頃の日経金融新聞のインタビューで「光通信はまだまだ買える」と言っていた。案の定、このファンドは2月高値から2割近く下落している。最近買った人はみな損をしていることになる。似たようなファンドはたくさんあるだろうなあ。

    ○『SPA!』が「今そこにある貧富の差」という特集をやっている。日本の中流社会が危ない、という特集は最近のはやりで、文芸春秋も中央公論もやっていた。でも、80年代に『金魂巻』という本が、芸能人からサラリーマンまであらゆる職業を、マル金、マルビに分類してたように、貧富の差ってのはもとからあったんだよね。それでも、この国では年収2千万円の人から課税最低限の人まで、上・中・下いずれと聞かれれば、みな揃って「中流」と答えるようなメンタリティーだったため、日本は中流社会ということになっていた。だから正しくは「中流意識が危ない」と考えるべきでしょう。

    ○毎月1日発行の情報誌『選択』が届いた。この雑誌、政治情報が充実している。最近の話題の主はもっぱら野中広務。村山政権の自治相から、幹事長代理、官房長官、幹事長代理、幹事長とこの6年間、休みなしに要職を歴任。次の総選挙で自民党が勝てば、いよいよ誰も逆らえなくなる。で、この人が目指しているものは何か。金丸信のようなキングメーカーを目指しているといわれるが、幹事長が最終ポストではないだろう。

    ○というわけで大型連休、予定もなく家でゴロゴロしています。同様に暇でインターネットを見ておられる方、メールでもいただければ幸いです。





    編集者敬白



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    by Tatsuhiko Yoshizaki