●かんべえの不規則発言



2014年2月





<2月2日>(日)

○とうとう我慢が出来なくなったので耳鼻科へ。去年の暮ぐらいからクシャミが出ていたのだが、とうとう夜中に鼻づまりで目が覚めてしまうほどになった。ということで、いつもの花粉症治療。45分待って5分で治療。10分待ってお会計。1100円也。続いて薬局に行って、20分待って薬をもらう。こちらは5460円也。毎年同じ薬であるが、今年は目薬までは不要である。たぶんワシが使う健康保険の唯一の機会であるから、自分の記録のためにここに記しておこう。

○待ち時間に読んでいたのが『第四の消費』(三浦展/朝日新書)。と言っても、そんなに面白くはない。今は亡き堤清二氏(辻井喬氏)との対談が読みたくて買ったのだが、うーん、微妙であった。ということで、耳鼻科の待合室で居眠り。家に帰って、競馬中継を見ながらまた居眠り。夜は火の用心。

○こんな風に、ダラダラと週末を過ごしながら、ときどき仕事。ふっと気になって、東京都知事選の様子は同なのかと思っていろいろ調べると、歳川隆雄さんが世論調査の数字をバラしてしまっている。興ざめかもしれないが、まあ、こんなもんだろうな、と思う数字が並んでいる。要はダブルスコアで単勝は決まりだが、3連単を当てるのはやや難しい情勢であるらしい。

○一方で維新の会では橋下氏が大阪市長の出直し選をやると言っている。この時期に選挙をすると、予算はどうなるんだろう。もちろん、橋下氏はそんなの知ったこっちゃないのであろう。選挙は強いけど、行政はあんまり得意じゃないという政治家は困ったものだと思う。まっ、それを言ったらオバマも同じか。

○それはそれとして、維新の会と公明党が自民党に向かって「どっちを取るんだ」と迫るという図式がしばらく続くのかもしれない。集団的自衛権の問題がありますからねえ。思うに、連立の組み替えがあるかどうかが、今年の政局の最大の焦点じゃないかと思う。

○ということで、この週末はぬるく過ごして、明日からはまた本気出そう。どれ、ビールをもう一本。


<2月3日>(月)

○日露専門家会議に出席。ワシにとっては昨年のモスクワ会議に引き続き2度目だが、会議そのものは30回目だという。何と1970年代に始まった歴史のある会合である。

昨年、参加してしみじみ思ったのだが、ロシア人の発想は日本人とは根本から違っているので、議論をしていて発見が多い。ロシアから見えるアメリカや、ロシアから見える中国は、われわれが見ている姿とかなり違う。しかも相手は筋金入りのインテリゲンチャである。割り切って付き合ってみると、なかなかに味のある相手なのである。

○ロシアは冷戦時代にはアメリカと対等な立場にあった。今更その当時には戻れないけれども、少なくとも今のステータスが自分たちにふさわしいものだとは思っていない。そういう意味では、現状維持勢力であるとともに、現状を変えたい勢力でもある。すなわち、中国が中央アジアに手を出してくることを苦々しく思っているけれども、中東では自分がちょっかいを出したいと思っている。昨年のシリア問題では、まんまとアメリカを出し抜いてやったので、思い出すたびに笑いがこみあげてくる、てなところがある。

○こういう姿を見て、ついつい見苦しいなあ、大人げないよなあ、などと思ってしまう。だが、ロシアのその手のジタバタは、経済大国の地位を滑り落ちつつある昨今のわが国と、少々重なっているかもしれない。日本は堂々たる現状維持勢力であるが、中国による追い上げや領土問題に関するハラスメントには、かなり頭にきている。最近では、「第2次世界大戦の結果を受け入れていない」などと言われるたびに、何年前のことを言ってるんだよと腹が立つこともしばしばである。

○トラウマを抱える者同士で、ロシア人とちょっと腹黒い対話をしてみるのも面白いかもしれない。安倍首相は今週7日、北方領土問題の全国大会に出席した後、ソチへ飛んで五輪開会式に参加し、翌日、プーチン大統領と5度目の会談に臨むとのことである。とりあえず、テロなどないことを祈りましょう。もっとも人口40万人のソチには、10万人の兵士が配備されているとのことゆえ、滅多なことはないと思いますが。


<2月4日>(火)

○昨年12月の景気ウォッチャー調査を見ていたら、こんなコメントが載っていた。


◎バレンタインデーやホワイトデー、節分などのイベントがある。また、練りに練った大
雪対策も実行してみたいと思っている。チャンスはまだまだある(北関東=コンビニ)。


○ハタと気がつきました。日本の食品業界が仕掛けた大イベント、「バレンタインデー」(チョコレート業界)と「恵方巻き」(海苔業界)は、いずれも2月なのであります。「ニッパチ」と呼ばれ、そうでなくても売り上げが落ちる2月に、この2つの大型イベントが用意されている。うむ、何という悪辣で用意周到なたくらみであろうか。

○なおかつ、この2つのイベントはどんどん自己増殖を続けている。バレンタインデーは「友チョコ」などという副産物を生み、さらには「3倍返しのホワイトデー」というブーメランまで用意している。若者たちに「ご贈答文化」を浸透させるうえで、バレンタインデーが果たした役割は大きかったのではないかと思う。さらに恵方巻きは、当初は海苔巻きであったものが、しまいには「何でもアリ」になりつつある。まあ、この先少しは淘汰されるんだろうと思いますけれども。

○年末年始に消費者がお金を使った後の2月に、新たな消費を誘発する仕掛けが用意してある。ほっときゃ海苔もチョコレートも食べませんわなあ。この調子で「成長戦略」を考えている食品業界は、少なくないものと拝察いたしまする。


<2月5日>(水)

○あと2日でソチ五輪が始まるわけですが、この数字、あんまり口にしてはいけないものだとばかり思ってました(ワシは当社の駐在員経由で聞いた)。でも、"The Economist"誌がカバーストーリーではっきり書いているんだもの、もう表に出ているのも同然だよね。ちなみに、「英語なんか読んでられるか!」という方はこちらをご参照ください。


At the president’s behest, the games are being held at Sochi, an unsuitable subtropical resort, and the government has spent $50 billion--four times the cost of the jamboree in London in 2012--on staging the event.

プーチン大統領たっての要請で、今回のオリンピックは冬季五輪には不向きな亜熱帯性気候の保養地ソチで開催されることになっている。ロシア政府はオリンピック開催のために500億ドルを費やした。その額は2012年ロンドン五輪の4倍に上る。


○500億ドルって5兆円ですぜ。それからロンドン五輪の4倍(ロンドンは確か120億ドル)というよりも、北京五輪が430億ドルだった、という方がピンとくると思う。あの派手な開会式や、「鳥の巣」と呼ばれた競技場などを含めた北京五輪のコストよりも、ソチ五輪の方が多いのであります。でも、競技種目も参加国も夏より少ない冬季五輪が、夏季五輪以上に金がかかるということ自体が信じられないじゃありませんか。

○だったらその金はどこへ行ったのよ、ということになるわけですが、その点についてはこんな記述があります。


And, as the Sochi costs indicate, corruption is endemic. Graft and inefficiency cost Gazprom $40 billion in 2011, according to the Peterson Institute, an American think-tank. An even larger sum is siphoned off by well-connected oligarchs -- and squirrelled away in countries like Switzerland and Britain that are prepared to tolerate the crooks whom America wisely rejects.

そして、ソチ五輪の費用からもうかがえるように、腐敗が蔓延している。米国のシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所によれば、汚職と効率の悪さに起因するガスプロムの損失は2011年には400億ドルに上ったという。さらに大きな額が、強力なコネのあるオリガルヒに吸い上げられ、スイスや英国といった、米国が賢明にもはねつけたペテン師たちを大目に見る態勢の整った国で貯め込まれている。


○ハッキリ言っちゃうと、ソチ五輪に費やされたお金のかなりの部分が、どっかへ消えちゃっている(賄賂として受け取られて海外に隠されている)というのであります。ああ恐ろしい。テロなんかよりも、そっちの方がよっぽど怖いとワシは思うぞ。


<2月6日>(木)

○橋下市長の言動は、以前からワシにとっては謎であったし、今回の市長再出馬ももちろん訳が分かりません。大阪都構想も、なぜ必要なのかよく分からない。まあ、しいて言えば、こんなことなのかなと。


●理想:大阪「ふ」が、「と」になれば「成金」である。→めでたい、めでたい。

●現実@:大阪「し」が、「と」になれば、「市都ふめい」(使途不明)である。→めでたくない。

●現実A:大阪「ふ」が、「し」と一緒になれば「府市合わせ」(不幸せ)である。→これもめでたくない。


○結論として、大阪は都にならない方がいいんじゃないだろうか。


<2月7日>(金)

○あたしゃ世事に疎いもんですから、「××河内守」っていう江戸時代の人がニュースになっているのかと思ったら、現代人の人名なんですねえ。って、そもそもNHKスペシャルも見てないし、あの人のこと全然知らないし、もちろん音楽も聞いてないもんだから、なんで皆さんがそんなに大騒ぎしているのかもよく分かりません。

○世間というものは浅はかなもので、美談に飢えておるのであります。つまりは「いい話があったら騙されたい」と思っているわけです。アメリカでも少し前にNYタイムズ紙の敏腕黒人記者が、ウソを記事にして自分の評判を上げていたのがバレたというニュースがありました。もちろん記者は即座にクビで、NYタイムズ紙は平謝りです。そんな風に、およそこの手の話は尽きないわけでありまして、しかも結構、世間の目は節穴であったりするわけです。

○残酷なことを言わせてもらえば、それがたとえオレオレ詐欺であっても、株のもうけ話でも、新興宗教でも、どこかの政党のマニフェストでも、「騙されたがっている人が騙される」という面があると思うのです。でも、欲のない人は居ませんから、ついつい引っかかるんです。騙されたっていいじゃないか、人間だもの。

○以上、毎日のように大量の駄文を生産しているために、「今日の俺は、誰かを騙してはいなかっただろうか?」という恐怖をしょっちゅう感じている人間の繰り言でありました。


<2月9日>(日)

○朝から雪かき。大消耗である。ああ腰が痛い。こういうときになると、角地の一戸建ては辛い。でも、お隣さんが朝早くから家の前をキレイに片付けちゃっているから、やらないわけにいかんではないか。

○午後になって家の周りを見ると、ものの見事に雪が融けている。やれやれ、結構なことである。しかしクルマの通行量は激減。そりゃワシだって、こんな日にクルマを出す気にはならんもん。(ホントは定期点検に出す日だったのだが、延期してもらいました)。

○首都圏はどこでも似たような感じかと思いますが、下記のサイトを見ると、あっと驚くほど投票率が低いですぞ。都民の皆様、ちゃんと権利を行使、もしくは義理を果たしてくださいまし。でないと今宵は、岡田准一君が出てくる前にNHKが当確を打ってしまいますぞ。

●東京都知事選挙 投開票速報

http://sokuho.h26tochijisen.metro.tokyo.jp/

(14:51)


○あらら、今日の「軍師官兵衛」は7時15分からだったのね。でもNHKはホントに午後8時に当確を打ちました。大差でありました。

○東京都知事選の歴史は、ピカピカの候補者が敗れ去っては屈辱を受ける連続です。NHKの磯村尚徳さん、元官房副長官の石原信雄さん、元国連事務次長の明石康さんなどは、いずれもそれぞれの分野で超一流の方々でしたが、気の毒なことにこれでほとんど再起不能になってしまいました。ところがごく稀に、敗北から復活するケースがあるのです。美濃部都知事に勝てなかった石原慎太郎は、皆が忘れたころになって再チャレンジして都知事になったのでした。

○その時の1999年選挙で、3位に終わったのが舛添さんでした。今回はそれから15年ぶりのリベンジとなりました。意外と忘れている人が多いかもしれません。ちなみにこのとき僅差で2位になったのは、舛添さんとは東大同級生の鳩山邦夫氏でした。二人の友情は今でも続いているらしく、舛添選対には鳩山事務所からスタッフが入っているとのこと。

○さて、選挙結果にさほど意外感はないですが、今回の最大の注目点は「元首相コンビ」の今後にありますね。気の早い話をすると、この後、2月23日に投開票となる山口県知事選挙が気になります。元首相コンビは、反原発候補への応援に駆けつけるんでしょうか。そういうば本日、郡山市で党大会を行った民主党は、こういう政策提言をまとめているみたいです。(しかし、そんなこと言ったら、会津と長州の歴史的な遺恨に火が点いちゃうんじゃないのか?)

(21:19)


<2月10日>(月)

○さてさて、都知事選の反省会をやってみましょう。さて、ここからどんな民意が読み取れるでしょうか。

  候補者名 得票数 党派名
1 ますぞえ 要一 2,112,979 無所属
2 宇都宮 けんじ 982,595 無所属
3 細川 護熙 956,063 無所属
4 田母神 としお 610,865 無所属
5 家入 かずま 88,936 無所属
6 ドクター・ 中松 64,774 無所属
7 マック 赤坂 15,070 スマイル党
8 鈴木 たつお 12,684 無所属
9 中川 智晴 4,352 無所属
10 五十嵐 政一 3,911 無所属
11 ひめじ けんじ 3,727 無所属
12 ないとう ひさお 3,575 無所属
13 金子 博 3,398 無所属
14 松山 親憲 2,968 無所属
15 根上 隆 1,904 無所属
16 酒向 英一 1,297 無所属
  合計 4,867,801  
  総投票数 4,930,251 投票率46.14%


(1)舛添さんは、さすがに過半数には達しなかったけど、有力候補が4人も居たら、そんなものでしょう。東京における自民・公明の基礎票をがっちり押さえ、なおかつ浮動票もとったという横綱相撲でした。

(2)宇都宮さんが2位になった。共産党陣営の「打倒!小泉」というモチベーションのお蔭でしょう。しかし選挙で2位を喜ぶというのは、美しくはないですな。4位に終わって笑顔で帰ってくる上村愛子さんとはちょっと意味が違います。

(3)宇都宮さん+細川さんを足しても舛添さんには届かなかった。固唾をのんで見守っていた電力会社の皆さんは、ホッと一安心といったところでしょう。とりあえずエネルギー基本計画は今月中くらいにはまとまりそうです。

(4)田母神さんが61万票もとった。法定得票数(10分の1)を越えられるか・・・という事前の読みを上回ったので、ご本人的にはビールがうまいはず。いろんな国のジャパンウォッチャーたちが、これで悩んでくれることでしょう。

(5)今回、初参加の家入さんが歴戦の猛者、ドクターを上回ったのは、偉かったのではないでしょうか。供託金はとられますけどね。

(6)マック赤坂氏は、今回唯一の政党による候補者であった。どうなってるんでしょ。

(7)総投票数から無効票を抜いた差は6万票と少々であった。ということは、「小泉純一郎と書いた票が10万票出る」というのは、都市伝説だったことになる。


○都議会の自民党と公明党にとってみれば、「自分たちの言うことを聞いてくれる都知事」なんて、いったい何年ぶりのことでありましょうか。こんないい都知事を都議会が無下に扱うとは思えませんので、仮にスキャンダルが出たとしても、しばらくは安泰でしょう。これで当分、都知事選は行われないと思いますぞ。

○さて、勝者のことはどうでもいいんです。2位になって満足しているような敗者もほっときましょう。3位になって、負け惜しみばかり言ってる元首相もがっかりです。気になるのはやはり小泉さんの動向ですね。今日になってツイッターのアカウントを閉じられたそうですので、山口県知事選挙がどうこうという感じではないようです。想像するに、「もう自分は風を起こせない」ことに気づかれたのではないでしょうか。

○郵政選挙の時は、小泉さんは首相で自民党総裁でした。そういう偉い人が、「郵政民営化に賛成か反対か」と、大人げなく自党の議員に踏み絵を迫った。これは大義名分があったし、面白くて分かりやすい図式だった。いわば自公連立に乗った人が、無党派層を味方につけたから最強になった。ところが今回は、自公連立を敵に回して、無党派の風を起こそうとした。しかも「原発ゼロ」という旗印は、郵政民営化のように誰の損にもならない、賛成しやすい政策ではない。それをなぜ、都知事選で問わなければならないのかも、いまひとつ明確ではなかった。

○結果として、どこへ行っても小泉さんの演説には人が集まったけど、票にはそれほどつながらなかった。しかも途中から候補者の細川さんがどんどん軌道修正して、「原発だけでなくほかの政策も・・・」とぶれるようになった。お二人の関係がどうなったかは知る由もありませんが、1月14日の山里会談のときのような意気投合ぶりではなくなっていたと思います。もちろん他人の悪口を言うような人ではありませんから、けっして細川批判はされないでしょうけれども。

○日経新聞の清水真人記者の11月26日付電子版記事によれば、小泉さんは昨年7月の「みたままつり」で靖国神社にドンキホーテの「見果てぬ夢」の一節を揮毫したのだそうだ。「変人宰相」がこの歌詞に心境を託したら要注意で、「戦闘モードのスイッチが入ったことを意味する」のだとか。「敵はあまたなりとも 胸に悲しみを秘めて 我は勇みていかん」ですから、きっとこのままでは終わらないのでしょう。ただしかつてのようなオーラは失われている。それでもいいのかなあ。私はむしろ、オペラや歌舞伎見物に悠々自適の方がいいと思うけど。


<2月11日>(火)

○今日の「くにまるジャパン」は短縮バージョンながらいつも通り。ということで、祝日ながら浜松町へ出勤。本日はロシアについてのお話。

○ソチ五輪にかかった費用が500億ドル、これは北京五輪(430億ドル)を超えて史上最高。ただし使途不明金が、一説によると300億ドル(3兆円!)というお話をご紹介しました。オチはもちろん、「ソチもワルよのう」

(ウソかホントか、日曜夜の細川陣営では「大雪とオリンピックで都知事選が霞んじゃいましたねえ」という声が上がり、そしたら殿が「予が負けたのはソチのせいじゃ」と言ったとか、言わなかったとか・・・・)。

○さて、仕事が終わってから、所用にて日本橋の三越へ。そしたら、壁一面に懸っているキャッチコピーが、「越後屋お主も春よのう」。(写真

○言うまでもなく、日本橋の三越こそが元祖・越後屋である。呉服屋として創業したのが1673年。越後屋と三井家の名前を取って現在の名前となり、1904年に改名。ここにわが国、百貨店の歴史が始まるわけであって、けっして悪代官とつるんでいたわけではありませぬ。それにしてもこのコピー、最近好調の百貨店業界を象徴するような感じであります。これまでずっと冬の時代が続いていたものね。

○ちなみにWikiで「悪代官」を引いてみると以下のような記述がある。


「○○屋、お主も悪よのう」

悪代官の代表的なイメージのひとつが、「お主も悪よのう」という台詞である。ステレオタイプな場面設定としては、夜、悪代官の屋敷において悪徳商人(廻船問屋とされることが多い)との謀議の際に、悪徳商人から袖の下(山吹色の菓子を詰めた菓子箱など)を渡された状況が挙げられる。悪代官といわれてこの台詞を連想する人も少なくないが、実際はドラマではあまり使用されていない。時代劇の悪代官役で知られる俳優の川合伸旺によると、これは田口計と共演したCM撮影時にアドリブとして生まれ、それが採用された結果視聴者にインパクトを与え、定着したとのことである。なお、この台詞につづく悪徳商人の台詞は、「いえいえ、お代官様ほどでは…」が代表的である。


○ワシ的には越後屋よりも、「廻船問屋の備前屋」あたりがとってもワルそうで好きです。


<2月12日>(水)

○念のために申し上げておきますが、これは私のことではありませんからねっ!

●かんべえくん、内規違反…国会議員新年会に出席(2月11日、読売新聞

○まあ、どっちにせよ、そんなに大騒ぎするような話ではございませぬ。ゆるキャラ「かんべえくん」も、松本剛明さん(そういえばご無沙汰してます)も、一層のご活躍を祈念いたします。

○ちなみにNHK「軍師官兵衛」は、ちゃんと欠かさずに見ておりますぞ。今のところ、荒木村重のキャラがいいですな。栗山善助の描き方もよろしいので、これは有岡城からの官兵衛救出シーンが今から期待できます。ただし、初恋の人のエピソードは全く不要。ドラマの後半で生きてこない無用の伏線だと思いました。


<2月13日>(木)

○ハッと気がついたら明日はバレンタインデー、というのが本題ではなくて、明日のモーサテ池谷キャスターがご卒業なんですね。来週からはニューヨーク駐在で、入れ替わりに大江麻理子キャスターが帰国して、3月31日からWBSキャスターに就任します。モーサテは現在の佐々木あっこさんが引き続きメインを務めます。テレビ東京の大型三角トレードというんでしょうか。かなり前からの構想だったようですね。

○池谷さんがモーサテのメインを務めるようになったのは2009年4月からで、ちょうどその時からワシも月1回のコメンテーターを務めるようになった。考えてみたら、ほぼ5年近くになる。いやあ、長い。先週は関係者による池谷さん送別会があったけど、あまり長くはお話しできなかったので、たぶんこのままお別れになってしまう。せめて明日もちゃんと起きて、「池谷さんの最後のモーサテ」を見届けなければならぬ。

○以前、さる人がモーサテのコメンテーターを務めることになったとき、「何かアドバイスはありませんか」と言ってきたことがある。そこでワシは、こんな風に答えたものである。


池谷さんを相手に話すときは注意が必要ですからね。例えば6分間の尺がある場合、AとBとCという3点ぐらいの論点を用意するでしょう。で、最初に1分30秒くらいかけてAについて語ったところで、池谷さんはこんな風に切り込んでくるんです。

「でも、BとかCとかいう話もありますよねえ」。

ええっ、それを言われてしまうと、私はもう話すことがなくなっちゃうんですけど!と心の中で叫んでももう遅い。実は池谷さんは、インタビューする際の踏み込みがとっても早いんです。そうやって短い時間に、情報量を詰め込んでこようとくる。少なくともスタッフが書いてくれた台本を、ひとつひとつ丁寧に読んでいく・・・・という形ではない。

くれぐれも打ち合わせの時に、手の内を全部さらすようなことはしちゃダメですよ。最悪、「先に言われちゃったら、このネタとあのネタで対応する」という準備をしておいた方がいいですからね。


○ワシ的には、生放送のそういう掛け合いが本質的に好きなので、池谷さんの流儀は望むところでありました。それに話す内容をあんまり入念に打ち合わせしてしまうと、本番が面白くなくなるんですよね。だいたい月曜にする話を、前の週の金曜日に決め打ちしてしまうのも現実的ではない。週末の間にも、市場はどんどん動いていきますからね。

○マーケット情報は鮮度が命。生放送で、刻一刻が真剣勝負。モーサテって、そういう番組だと思います。池谷さん、NYでも引き続きどうぞよろしく。


<2月15日>(土)

○昨日は京都へ。日帰りのつもりだったんだけど、降雪に恐れをなしてそのまま一泊。雪の京都を見物するのもいいかな、と思ったんですが、自宅の除雪やら町内会の仕事やらがあるのでまっすぐ帰宅。まあ、雪はほとんど溶けてましたけどね。

○びっくりしたのは、2月だというのに修学旅行生が居るんですね。この時期なら確かに宿は安いかもしれませんが、学校の行事としてはたいへんでしょう。まあ、それくらい春と秋の京都は混む、ということであります。今年はリッツカールトンとフォーシーズンズが出来るという京都、外国人観光客が増えて(でも中国人はそんなに多くない)、好調なようであります。

○一方で京都と言えば、ハイテク企業が多いことで知られています。でも、「京都に工場を持ってはるのはロームさんくらいちゃいますか? 最近になって京セラさんが綾部に工場を作ったら、パートさんが集まらなくて往生してはると聞いてます」とのこと。うーん、ここでもやはり非製造業の時代なんだろうか。


<2月16日>(日)

○いや、これまで黙ってましたけど、ソチ五輪はいいですねえ。15歳と18歳がスノボでメダルを取ったかと思ったら、今度は41歳が7度目の五輪で悲願のメダルに手が届きました。しかも唯一の金メダルは19歳の羽生結弦さんですから、若手とベテランの健闘が目立ちます。20代アスリートはいったい何をしてるんだろう。そうか、ノルディック複合の渡部暁斗が20代か。ついでに団体も頑張ってほしいです。

○強いて言えば、やっぱり「レジェンド」こと葛西選手ですありますなあ。銀メダルを取って、「いい目標ができました」と言うんだから恐れ入るしかない。自分はもう限界、と思っている人は、あれを見たら恥じ入るほかはない。でもこうなったら、ラージヒルの団体で金メダルを取らせて、葛西選手を「成仏」させてあげたい。いや、ご本人が若手を鼓舞するために、敢えてそう言っているのかもしれませんけれども。

○競技を見ていると、4年前や8年前や12年前とは全く違うゲームになっていることを思い知らされます。例えばスピードスケート。1998年の長野五輪では、清水宏保選手のロケットスタートが技術革新でした。が、それに安住していると、ちゃんと真似されたり、それを上回る技術が出てきたりする。今回のスピードスケートは、オランダ勢が金4、銀4、銅5の大健闘ですが、日本勢は初心に帰ってそれを追わねばなりませんね。

○テレビで解説をしているジャンプの原田やノルディック複合の荻原の言葉が、見ていていちいち胸に沁みます。かつての栄光を知る彼らが、「今は昔の競技とは違う」ことを前提に、素直に心から現役選手を称えている。スポーツの世界も日進月歩なんですね。キャッチアップしていくためには、選手が並はずれたモチベーションを維持していくしかない。「いつかやれば出来る子」では、頂点を目指すことはできないのです。

○例えば羽生選手にとっては、ソチで金メダルを取れたけれども、演技には不満が残った、というのが今後の選手生命を支えていくのかもしれません。初の女子ジャンプで、4位に終わった高梨選手の今後にも幸多かれと祈らずにはいられません。てなことで、日夜いいものを見させてもらってます。寝不足もやむなし。ソチもワルよのう。


<2月17日>(月)

○遠方より来たる朋あり。お昼に昔の仲間が4人で集まってワイワイと。久しぶりに会ったけど、Facebookでつながっているから、そんなに変わっていないかと思ったら、離婚したとのこと。ええっ、聞いてないよ、てなことを言うと、そんなこと、どうやってFacebookに書けばいいんだよ、と。御意。SNSっていいことは書けるけど、悪い話は書けないから辛いよね。ホントのことは、じかに会って話すしかありません。

○他の二人は、諸般の事情で現在失業中、というのと、もう一人はいやあ、実はこの週末にホールインワンをしちゃってさあ、でも保険が下りないから誰にも言えないんだよねえ、などと。人生苦もありゃ楽もある。笑える時には笑っておきましょう、

○不肖かんべえは今宵はフジサンケイグループの正論賞贈呈式で、いろんな人におめでとうと言われて舞い上がっておりました。深くふかく、首を垂れて皆々様に御礼を申し上げる次第でございます。


<2月18日>(火)

○東北生産性本部さんのシンポジウムで仙台へ。雪景色の中を、はやぶさで片道1時間半。とっても近いのである。

○街の景色はところどころ変わっている。古いホテルが取り壊されて、新しいものが建っていたりする。震災から間もなく3年。被災した3県は、経済統計を見る限りそんなに悪くはないようなのだが、どうですか、と地元の方に尋ねたら、「いやもう、とにかく福島です。福島がすべてです」とのこと。納得であります。

○ソチ五輪の金メダリスト、羽生結弦選手は仙台出身。本日の河北新報を見ると、県民栄誉賞を授与するという話になっている。栄誉賞は1990年に創設され、これまでに地元出身の大魔神・佐々木(1998年)、富山出身だけど東北大卒でノーベル化学賞の田中耕一さん(2002年)、WBCで活躍した東北楽天の岩隈久志投手、そしてトリノ五輪金メダルの荒川静香さん(2006年)などが受賞している。この金メダルコンビは高校も同じなんですね。あ、ちなみに昨年はシーズン24連勝の田中マー君が受賞しています。

○牛タンと笹かまぼこを買って帰宅。後は「萩の月」ですね。名物が3つあったら大都市です。


<2月20日>(木)

○天国と地獄。真央ちゃんはショートプログラムで「まさか」の演技で16位に終わり、フリーでは完璧な演技を見せて自己ベストを更新しました。メダルを取るための「勝負の鬼」ではなかったけれども、技術を究めることを貫いた「スケートの鬼」でした。無難に得点を目指せばいいのに、なぜそこまで3回転ジャンプにこだわるのか。それは求道者であるから。妥協を怖れるから。

○ここまで来たらメダルなんて関係ない。他人の評価よりも自分の達成感。損な道かもしれないけれども、分かる人には分かってもらえるはず。マーケットインではなくて、プロダクトアウト。そんなんだから日本企業はあかんのや、てなことが言われたりする昨今ですが、これが日本の生きる道なんじゃないでしょうか。

○真央ちゃん、最後の演技が満足の行くものになってよかったね。深夜にいいものを見せてもらいました。ありがとう。ありがとう。


<2月21日>(金)

市場深読み劇場に寄稿しました。テーマは新興国経済について。ま、いつも書いてるような話であります。

○で、肝心(!)のフェブラリーステークスの予測については、正直絞り切れなかったので、「キンカメ産駒のボックス買い」を提唱してみた。ワシはダート戦はあんまり得意じゃないのだ。そしたらダート戦が大好きな、オバゼキ先生が反応してくれて、やっぱり似たような予測になっている。こうなると、上海馬券王先生がどんな予測をするかがとっても気になりますなあ。

○このところ、しばし競馬をお休みしておりました。今週末は宿題も少ないから、優雅に行きたいですなあ。


<2月23日>(日)

○最近の世の中は、ちょっとおかしいんじゃないかと思うこといろいろ。

○その1。柏市近辺の某市での出来事。市の施設に用事があって、ほんの一瞬だけクルマを止めたいと思ったが、臨時の無料駐車スペースには停められず、有料の立体駐車場に止めろと言われる。瞬間、隣のスーパーの駐車場に入れてやろうかと思ったが、あんまり大人げない真似もできないので、係員に促されるままに立体駐車場に入れる。これがすごい設備で、入れたクルマはどこか遠くまで運ばれていく。

○案の定、用件は1分で終わって、再びクルマを出してもらおうとする。「30分以内だから無料です」と言われるが、なかなかクルマが出てこない。ふと見ると、この立体駐車場は90台も入れられるのだが、その時点で入っているのは7台のみ。そりゃそうだ。こんな面倒な、しかも有料の駐車場に停めたいと思う客なんて、おらんわなあ。

○察するにどこかの業者に騙されて、市が無用にデカい施設を作ってしまい、無駄に電気代と係員のコストを負担している模様。とはいっても、作ってしまったこの駐車場はサンクコストだから、今さら「仕分け」したところで意味はないわけで、このまま使い続けるしかないんだろうなあ。

○その2。昔はワシも駆り出されたことがある近所の小学校のドッジボール大会。いつの間にか中止になっていた。理由は「ゲームの主審に対する一部モンスターペアレンツの抗議がひどすぎて、審判の引き受け手が居なくなったから」。どっひゃー。

○正直なところ、目に浮かぶようです。数年前にワシが線審をやったときも、目に余るような親が居たもんなあ。

○その3。さる韓国研究者のひとこと。「韓国人の悪い癖は、自分が起きてほしいことを現実だと思ってしまうこと。その点で、最近のいわゆるネトウヨ的な嫌韓論は、とっても韓国人の思考法に似ている」。

○痛い。痛過ぎる。

○というわけで、特に解決策などに言及することなく、この項終わり。


<2月24日>(月)

○昨日の最大のニュースは、ソチ五輪が閉幕したことと、ウクライナで政権が崩壊したことの2点でありましょう。で、この2か所が目と鼻の先である、ということをちゃんと書いた新聞はどこだろう。ワシとしては滅多にしないことなんだが、今日は全部の全国紙を読み比べてみました。

○これを一面でキチンと書いていたのは、毎日新聞だけでした。「ウクライナ政権崩壊」という記事を、「ソチ五輪が閉幕」という記事の真上に置いている。車いすのティモシェンコ元首相の写真を、ソチ五輪閉会式の写真の上に、それぞれカラーで載せている。まことに嫌味たっぷりで、好感が持てますね。なおかつウクライナの地図を載せて、そこにさりげなくソチの地名を入れている。こういうのを見ると、新聞はネットで読んじゃいかんよな、と思います。新聞の紙面づくりというものは、こういうところが腕の見せ所です。

○ただし毎日新聞が使った地図は、今週のThe Economist誌がカバーストーリー("Putin's inferno")で使っていたものの「まんまパクリ」でありまして、ウクライナが東西で分裂しかねないという状況を、「2010年大統領選でヤヌコビッチ氏が勝ったところとそうでないところ(ティモシェンコが勝ったところ)」で説明しております。バレないと思っているのかねえ。ちなみにThe Economist誌は、「かつてオーストリア=ハンガリー帝国の一部であった西部と、ロシア語を話す南部と東部を統合したウクライナ」 と説明していおります。こっちの方が上手ですわな。

○朝日新聞は二面で同じような地図を掲載して、ヤヌコビッチ(東部と南部)対ティモシェンコ(西部)の図式を説明している。こちらは「ソチ五輪の閉幕直前――プーチン氏威信に傷」という重要なポイントを囲み記事で書いています。なにしろロシアは、2008年の北京五輪の際に、どさくさに紛れてグルジアに侵攻した前科がありますので、今回もどう出るか分かりません。おそらくプーチン閣下は、「これも西側諸国の陰謀」と考えて、今頃は怒り心頭でしょう。でも閣下、パラリンピックはまだ終わっていませんから!そこんとこ、よろしく。

○ウクライナという国は、かつてフレデリック・フォーサイスが『悪魔の選択』(1979年作品)で取り上げ、ソ連からの独立運動を目指す国として描いている。ソ連としてはウクライナの穀倉地帯を失うと、穀物を輸入しているアメリカの言いなりにならざるを得ないので、それだけはどうしても避けようとする。「ウクライナの切れ目がソ連の切れ目」であるという先見の明を示していて、当時としては画期的な近未来小説だったと思う。実際に1991年12月にソ連邦が分裂した時は、当時のワシはワシントンにおったのだけど、「ああ、これで二度と冷戦には戻らなくなったわなあ」と思ったものである。

○もうひとつ、ウクライナはロシアから欧州への天然ガスのパイプラインが通っている国であって、それがあるからウクライナはガスを安く買えるというご利益がある。ロシアはそうやってウクライナを抱き込んでいるわけですな。一方で、ウクライナが分裂して欧州へのパイプラインが途切れちゃったりすると、ロシア最大の企業であるガスプロムの経営が傾いてしまうという問題もある。

○一方、読売新聞は、「ウクライナってどんな国?」という囲み記事を作っていて、「欧州の穀倉地帯、ボルシチ発祥、チェルノブイリ」という基礎知識を押さえている。それから、これも毎日新聞なんですが、「腐敗映す大統領邸 140ヘクタールに健康センター・動物園も」という記事を、豪邸の写真入りで載せているのが技能賞モノです。つまり、ヤヌコビッチ大統領のお屋敷があまりにも豪華なんで(なにしろダチョウやシカを飼育するプライベートな動物園がついていた)、「なるほど、こりゃあ国民は怒るわねえ」というポイントを押さえている。古い話ですが、フィリピンのマルコス失脚の際の「イメルダ夫人の3000足の靴」を思い出しますね。

○とまあ、いろんな情報が飛び交っておるわけですが、ワシ的にはいちばん驚いたのはThe Economist誌のご立腹振りで、「ロシアをG8から追い出せ!」(At a minimum, the diplomatic pretence that Russia is a law-abiding democracy should end. It should be ejected from the G8.)とまで仰っている。そんなこと言ったって、今年のG8サミットはロシアが議長国で開催地はソチですがな!どないするねん?

○それはさておいて、西側諸国がウクライナ問題で対ロ批判に足並みをそろえるようですと、われらが安倍首相の出方はちょっとややこしくなりますね。ウクライナ問題は縁遠いように思えますけど、これが試験であれば山を張らなきゃいけないところだと思います。


<2月25日>(火)

○昨日の続き。

○ウクライナは当面、外貨繰りも苦しいようなので、どうやって支援するかが悩ましいところである。ロシアは多分、これから手を引いてしまうので、IMFやEUがどれだけコミットできるかが勝負になりますね。

○かくして、国際金融市場をにぎわすのは1月のアルゼンチンに続いて2月はウクライナ。奇妙に符合するところがあります。この両国に共通しているのは、以下の通りです。


(1)新興国市場よりも一段下の「フロンティア市場」に属しており、

(2)ともにエリート層が腐敗していて統治能力に問題があり、

(3)自分よりも図体の大きい隣国(ブラジルとロシア)の存在に苦しめられ、

(4)穀物輸出に比較優位があるが、穀物価格は今は下落気味であり、

(5)でも、まさかこんなことになろうとは、今年の初めまでは誰も真面目に考えてはおらず、

(6)これは冗談と思って聞いてほしいのだが、いずれも美人が多い国とされており、

(7)ちょっといわくありげな女性指導者(フェルナンディス大統領とティモシェンコ元首相)が命運を握っている。


○ちなみに今朝、くにまるさんに聞いた話では、ロシアン・パブには「ウクライナ出身」と称する女性が多いのだけど、実は「そう言った方がモテるからそう名乗っている」だけで、偽物も少なくないんだそうだ。あんまりいい喩えではありませんが、わが国のお水関係方面において、東北出身の女性の多くが「秋田出身」になっちゃうようなものなんでしょうか。ウクライナ美人については、こちらをご参照。

○それでは今後のウクライナが、完全にロシアとは手を切って、欧州の一員になると決めて、例えばEUやNATOに加盟するかというと、それもちょっと非現実的なんじゃないかという気もする。ウクライナにはロシアという兄貴が居て、これは突然、弟の首を絞めたかと思ったら、後で小遣いをくれたりする変な兄貴で、縁を切りたくもあるが、切りたくもなし。まあ、生まれてくる場所と家族は選べない。そういう不条理は誰もが抱えているものですが、ウクライナもまことに「業」の深い国なのかもしれません。


<2月26日>(水)

○福井市に来ております。で、何と言いましてもここが素晴らしい。

○地元食材が良く、シェフが良く、ワインが良く、まことに圧巻にして至福でありました。おほほほほ。


<2月27日>(木)

○ときどき、よりによってワシのところへ「ビットコインって、ありゃあ何ですか」などと聞きに来る人が居る。そんなもん、知ってるわけがないだろう。てゆうか、ワシはその手のものには最も関心の低い人間である。少なくとも新しがりではないし、インターネットの知識もたいしたことないし、そもそもあんまり信用してないからネットバンクも使いたくない。あ、そういえば競馬ファンではあるけれども、未だにPATもやってない。博打は現ナマに限る、という古いタイプの人間である。

○でも世の中には、ビットコインが便利だと思う人も居るし、技術の進歩に参加したいという人も居るだろうし、「国家とは無縁なグローバル通貨」みたいなものに幻想を持つ人も居るし、「通貨の発行権を国家だけに認めるのはおかしい」などという理屈っぽい人も居る。もちろん、そういうイノベーター(おっちょこちょい)が居るからこそ、世の中は進歩していく。

○でも、為替の世界においては、「権力なきところ、通貨は一片の紙切れに過ぎない」というのが鉄則であります。なんのために国家権力が必要かというと、「いざというとき」のためなのである。平和な時にはもちろん不要だ。でも、マネーの世界はときどき、取り付け騒ぎみたいなことが起きる。起きてしまったら、誰かが悪者になって始末をつけるしかない。その覚悟がない人は、通貨を発行したりしてはいけません。

○ということで、ビットコインで損が発生したからと言って、金融庁や消費者庁を煩わせてはなりません。もともと既存の法体系とは別の世界で実験していたことなんですから、冒険はあくまで自己責任でなければなりません。


<2月28日>(金)

○「総理の通訳」と呼ばれて久しい長井鞠子さんの著書『伝える極意』(集英社新書)を拝読。サミットなどで幾多のVIPたちに接してきた名通訳者は、どんなことを考えてきたのか。あるいは草分けとして同時通訳の世界に入って、どんな人生を送ってこられたのか。気になるので、早速買ってきました。

○とりあえず、本書の以下のくだりにしびれました。

「伝えるべき内容(コンテンツ)と、それを伝えたいという意欲を持った発言者のスピーチは、わたしたち通訳者を奮い立たせてくれます」(p39)

○そうなんです。大事なのは英語じゃなくて、話す中身。英語力をつけましょうとか、プレゼンを上達しましょうという前に、話す中身を鍛え上げなければならない。でも世の中には、聞いていて眠くなるようなスピーチやら、独り合点の長広舌があいかわらず少なくない。これはまあ、「皆まで言うな」を旨とする日本社会のなせる業なのかもしれません。でも、いい話をされる人も居るし、ちゃんとロジックが通っている人も居る。そういうとき、ブースの中で通訳者も意気に感じているものなのですね。

○過去、いろんな国際会議に出ては、長井さんの歯切れのいい声をレシーバーで聞いて、「おお、今日もいい仕事をされているなあ」と感心する機会がありました。この10年くらいは、私のプレゼンを訳していただく機会も何度かありました。あ、そういえば今月も某所で1回ありましたね。でも、あの日の私はコンテンツに自信がなかったので、ホントのこと言うとちょっと反省しています。

○確か2年くらい前でしたが、経済広報センターの仕事で、欧州のジャーナリストに対して日本経済の現状を説明するという仕事がありました。すぐ隣で長井さんに同時通訳をしていただいたのですが、私がひとつのセンテンスを言い終わる前に、英語の方が終わりかけていたりする。つまり、私が言うべきことを先回りされちゃっている。途中で可笑しくなるくらい、日本語と英語がピッタリ合っていて、あれは本当に幸福な体験でありました。

○長井さんは、3月3日のNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にも登場されるようですよ。これは要マークですね。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki