●かんべえの不規則発言



2006年12月







<12月1日>(金)

〇GDP統計が改訂されました。推計値なので、しょうがないといえばそれまでなのですが、2005年度の実質成長率は3.3%ではなくて2.9%(←訂正:2.4%)であり、2004年度は1.7%ではなくて2.0%でした、と言われると、随分景色が変わって見えますね。1996年から遡って数値が変わっておりますので、内閣府の下記のお知らせは後でしっかり見ておく必要がありそうです。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/061201/point.pdf 

〇これで2006年度の成長率が2%台後半となると、4年連続で日本経済は2%台成長ということになる。で、おそらく2007年度も以下同文となるんじゃないだろうか。リスク要因がないわけじゃありませんが、さりとて決定的な不安材料が揃っているわけでもない。「なんとなく、このままずるずると続く」というのが、2007年のメインシナリオであろうかと思います。

〇アメリカや欧州でも同様なことがいえますが、景気の山谷がだんだん見えにくくなっている。「先進国経済は2〜3%」というのが相場になっているような。「上げ潮戦略」という観点からは物足りない話ですが、一方でマイナス成長みたいなことがなければとりあえずオッケーという気もする。それにしても2007年は、政治も経済も注目点が見つかりにくくて、なかなか予測をたてるのが難しいですね。


<12月2日>(土)

〇昨日の日刊ゲンダイの記事から。

●ホリエモン TV解禁

 裁判対策のためマスコミ取材をシャットアウトしてきたホリエモン(34)が、電波ジャック計画を練っている。裁判も一段落したことから、発言の場を法廷からテレビに移すという。すでにTBSのニュース23、テレ朝のサンデープロジェクトなどへの出演依頼に応じている。いずれも生放送の報道番組ばかり。現在の心境をナマの声で伝えたい意向らしい。また、あのデカイ顔とナマイキな態度が画面に出てくるかと思うと…。

〇とりあえず、明日のサンプロは見逃せませんぜ。


<12月3日>(日)

〇ということで、サンデープロジェクトにて「生ホリえもん」を初めて見てきました。今年1月に強制捜査があってから、逮捕、取り調べ、保釈、裁判と、彼にとっては目まぐるしい1年だったでしょう。実物を見たときに、ああ、こんな人でしたか、と思いましたな。

〇ここで再び「ホリえもんの法則」を思い出してみましょう。

@ ホリえもんが旧体制に挑戦するとき、計画のあまりの粗雑さゆえに、本人はかならず敗退する。

A その一方で、彼の異議申し立ては世間の耳目を騒がせ、予想外に多くの人の支持が集まる。挑戦を受けた旧体制は動揺する。

B 同時発生的に、ホリえもんと同様の挑戦をする人間が増え、彼らは比較的楽に成功を手にすることができる。

C かくして、プロ野球への新規参入も、メディアに対するM&Aもタブーではなくなった。今回の場合(総選挙)で言えば、若者が政治参加することへの参入障壁が著しく低くなった。


〇プロ野球機構、テレビ局、自民党抵抗勢力、と続いたホリえもんの戦い、今回は東京地検が相手です。過去の法則が今回も当てはまるとすれば、ホリえもんは有罪になっちゃうけど、おそらくは執行猶予がついて大きな痛手とはならない。逆に彼を憎んだ側がより大きな被害を受ける。つまり、東京地検の評判がガタ落ちになって、2度と「国策捜査」ができなくなってしまう・・・・という結末が予想できます。

〇それでは「4度目のホリえもんの法則」は成立するでしょうか。かんべえはちょっと懐疑的である。だって今日見たのは、「ホリえもん」じゃなくて、単なる「堀江前社長」だったような気がするから。昔みたいな可愛げがなくなっていて、「そりゃないよ」てな発言が多かったし。今日の調子では22万人もいたライブドア株主は納得しないだろうし、人気復活は難しいと思うなあ。


<12月4日>(月)

●ライブドア、平松社長除く5役員退任へ 外資主導に(2006年11月24日23時03分)

 ライブドアは24日、平松庚三社長を除く全役員5人が退任し、新たに大株主の外資系投資ファンドなどから役員を迎え入れる方針を固めた。12月の株主総会で諮る。複数のファンドなどで発行済み株式の約50%を持つ外資系が経営の主導権を握ることで、子会社や資産の売却、事業再編が進む可能性がある。

 現在の役員は、平松社長ら6人。堀江貴文前社長ら前経営陣による証券取引法違反事件を受け、6月に新たに就任した。

 事件後に経営支援に乗り出し、約13%のライブドア株を保有する有線放送・メディア事業大手USENの宇野康秀社長も社外取締役を退くが、高垣佳典・USEN取締役が就任する見込みだ。

 証取法違反に問われている堀江前社長は、ライブドア株の約17%を保有する筆頭株主だが、経営にはかかわっていない。


〇今後のライブドアをどうするかということで、上記の通り経営陣が一新されるらしいのですが、「ひょっとしてこの人が代表取締役になるかもしれない」といわれているのが高垣佳典USEN取締役である。どーゆー人物であるかは、この記事あたりを読むと良いでしょう。要するにGyaoを立ち上げた人、ということです。

〇で、高垣さんというのは、この不規則発言で過去に何度か登場している、日商岩井時代の「T先輩」のことなのでありますね。ですから、ワシ的には上記の噂を聞いて、「どっひゃーっ!」という驚きなのであります。T先輩がなぜに会社を辞め、パチプロを経由してベンチャー経営の道を歩み始めたかという経緯は、2000年7月24日付けの当欄で詳しく書いてある。

〇何分にも長いつきありでありますので、ネットでは書けないようなネタも一杯ありますぞ。メディア関係の皆様、上記の人事が実現した場合、かんべえのところに取材すると、面白い記事が書けるかもしれないよ、と言っておこう。


<12月5日>(火)

〇活字と電波の仕事が増えると、ネットが手抜きになってしまいます。そうでなくとも、最近は公私共にヘトヘトなのであります。とりあえず、今日のところはこんなものをご紹介してお茶を濁しておきましょう。

●2007年度の貿易動向見通し(日本貿易会) http://www.jftc.or.jp/research/index2.html   

〇本日、記者発表いたしました。2007年度の通関統計は、輸出が81兆円、輸入が70兆円になる見込みです。その結果として経常収支は24兆円の黒字になる。昨年度も強調しましたが、日本はやっぱり貿易立国ですね。

〇ハイ、ということでCMは終了。以下2点をお楽しみください。

●フリーザ様に学ぶフリーター問題 http://ranobe.com/up/src/up154312.jpg 

〇痛い。痛過ぎる・・・。誰も教えてはくれないけれども、知っておいた方が良い厳然たる真実。でも、これを読んで笑ってしまうのはなぜ?

●2006年、最大のお馬鹿さん http://www.fearnfun.com/detail.php?detid=238 

〇これは癒しです。そう、人間はお間抜けさんなんですよ。きっとそうだ・・・・。


<12月6日>(水)

〇貿易統計の話をしていると、世間では水産輸入に関する関心が高いことに気づきます。というか、そればっかしという感じですな。「マグロが高くて入ってこなくなった」ということに、少なからぬ人々が恐怖感を抱いているらしい。だいたい日本人は、食い物のことになると目の色が変わる。「対米関係の最大のイシューはBSE」と言われた時期もある。逆にいえば、食い物のこと以外はあんまり心配しない、まことに変な国民である。

〇で、問題はマグロである。最近は、一番良いマグロは台湾の業者が落札してしまう。そのうち「台湾に極上のトロを食べに行くツァー」が成立するかもしれぬ。日本が台湾を植民地化した当初、「こんな亜熱帯で、魚を生で食べられるはずがない」と、台湾人は刺身は忌避したそうだ。しかし生活水準が上がった今では、マグロの刺身の旨さはバレバレであり、今さら食うなとも言えない。そのうち、中国の富裕層が大量にマグロを買い付けるようになれば、価格はますます上昇して、日本のスーパーや回転寿司ではマグロが手に入らない、てなことになるのかも。

〇その昔、かんべえが入社した当時に、「商社の食料部隊の仕事とは、世界の食料ピラミッドの頂点の部分を、カネに糸目をつけずに買い漁ってくること」だと教わりました。そういうことをする国は、当時はほかには存在しなかったのです。だいたい先進国は、農産物輸出国であることが多いですからね。そして商売の世界では「バイヤーは王様」ですから、多くの農産物の価格決定権は日本の需要家にありました。古きよき時代ですね。かくして日本の商社は、世界中から穀物を、肉を、水産物を、ワインとチーズを、買い漁ったのであります。

〇しかし、次々と途上国が豊かになるようになると、カネにモノを言わせて世界中の美味を買い集めなければならず、という競争相手が増えて来る。最近はロシアあたりも日本食ブームで、寿司や刺身を喜んで食べているらしい。他人に向かって「マグロを食うな」とは言えませんから、これはやむなしですな。というより、今までの日本人が、マグロを食い過ぎていたんじゃないかという気もする。今後は国産のカツオが代用品になるのかもしれません。富山県出身者としては、せめてこの上はブリの旨さが他国民に知られないように祈るばかり。

〇一方で、食品ピラミッドの裾野にも手が出なくて、国中が飢えているという国だってある。そもそも今後の人口増加をどうやって養うかを考えた場合、食肉の生産は飼料の増産を必要とするので非常に不効率。それよりも水産物の養殖を考えた方が合理的なのは火を見るよりも明らかである。マグロの畜養技術も今では日進月歩であり、当然のことながら日本企業がその先頭を切っている。そろそろグルメのためではなく、貧困救済のためのマグロを考えるべきかもしれません。

〇これを称して「マグロ経済学」というのは、無用な落ちですな。ジャンジャン。


<12月7日>(木)

〇「イラク・スタディ・グループ」(ISG)の報告書が発表されました。要旨はここ、全文はここをご参照。全部で160pもありますが、簡単に言ってしまうと、ポイントは2つだけです。

〇ひとつは軍事面で、駐留米軍の目的と規模の見直しについて。具体策は以下の通り。

@「とにかく帰るぞ」という姿勢を見せることが必要で、そうでないとイラク政府が甘えてしまう。
A15旅団をじょじょに撤退させる。2008年1-3月期までには完了。これで15万の兵力はほぼ半減する。その後は米軍の任務は「イラク軍の支援」に限られる。
B特殊部隊は残ってアルカイダと戦う。
Cイラク軍がぼやぼやしているようなら、米軍はとっとと帰るぞ、とイラク政府に圧力をかける。
D撤退のためには一時的増強が必要。
Eイラク軍の量と質を向上させる。

〇これは常識的な線でしょう。現時点では、A「2008年までに半分撤退」が注目を集めていますが、実際にはDの「一時的増強」という点が重要になってくる。やはり米軍撤退は言うは易く、行うは難い。でも、とにかく「米軍は撤退する」と言って脅かさないと、いつまでたってもイラク政府とイラク軍が独り立ちしてくれないので、こう言うより仕方がない。

〇イラクの現状については、「内戦」という声も出ている。が、そもそも内戦とは複数の勢力があい争う状態であって、それであればボス同士の合意を得ることで、戦闘を停止することもできるはず。現在のイラクでは、スンニとシーアと海外から入ってきたテロリストと、あらゆるものが入り乱れて、殺し合いをしている。この間に、余裕のある人たちはヨルダンやシリアに逃げてしまい、行き場のない人だけが残っている。ブッシュ大統領は、「イラクからの"Graceful exit"がある、などという意見には現実味がない」と言っている。それは多分、正しい。

〇2番目のポイントは外交面で、「イランとシリアとの対話」である。これも難しい。なにせイランは、このままアメリカがイラクの泥沼にはまっていれば良い、とほくそえんでいる。それでも、この状況を放置しておくと、イラクの混乱がイランに及ぶかもしれない。なんとなれば、イランのペルシャ人は50%を少し超えるくらいであって、アゼリ人とクルド人、アラブ人などの少数派がいる。部族対立がイランに及ぶようになれば、大変なことになる。だから協力を得られるチャンスはあるだろう、と言っている。

〇これも言うは易し、であろう。もっとも、イランやシリアの指導者にとっては、これは悪くないメッセージといえる。

〇結局、この報告書を読んでも、あんまり救われた感じがしない。というのも、ISGは大物を集めたグループ(元国務長官2名、元最高裁判事1名、元国防長官1名、元上院議員が2名、元首席補佐官1名、元司法長官1名など)であるけれども、軍事専門家や中東専門家は含まれていない。巻末の資料を読むと、関係者へのインタビューもたくさん行っているが、バグダッドに行ったのは「8月30日から9月4日まで」という5泊6日だけである。要するに、ISGはワシントン向けの人選であって、イラク向けの人選ではないのである。

〇その一方で、こういう一種の「有識者会議」がアメリカ政治で重きをなしているという現状も興味深い。日本政治であれば、「有識者会議に丸投げ」はめずらしくもなんともないが、こういうケースはアメリカでは少ない。ところが現役の政治家たちは、党派色が強くなってしまって、冷静な違憲を求められない。そこで両党のOBの大物たちに登場願い、超党派で議論をしてもらう。ちょうど「9/11コミッティー」がそうでしたが、こういう手法でないと客観的な意見を得られない。そのくらい、今のワシントンは麻痺状態である、ということかもしれません。


<12月8日>(金)

〇昨日、「ISGレポート」について下調べをしておいたので、「これで誰に聞かれても大丈夫」と思っていたところ、朝から問い合わせは社内外とも1件もナシ。ちぇっ、せっかく準備したのに、と思っていたら、夕方になってから某夕刊紙のKさんから電話あり。「石原真理子の件でコメントもらえませんか?」 ――おいおい、わしゃ芸能評論家と違うで、と思いつつ、それでも『ふぞろいの林檎たち』の時代背景を説明してしまう自分の軽薄さが悲しい。

〇『ふぞろいの・・・』が放映されていたのは1980年代前半、つまり「バブルの使用前」である。当時はまだまだ学生がビンボーであり、カッコよくもなかった。もちろんケータイはまだなく、下宿に電話がない学生だってめずらしくはなかった。音楽はLPレコードが主流であり、レンタル屋さんで借りてきて、カセットテープに落として発売後間もない「ウォークマン」で聴くのがお洒落だった。エアコンのついた部屋に住んでいる学生は圧倒的な少数派であった。思えばかんべえから石原真理子当たりの世代は、そういう青春時代だったのである。・・・・などと、1980年代を語り始めると、『1985年』の著者としてはついつい熱がこもるのであった。

〇ところで、アメリカにおける1980年代はどうだったでしょうか。以下は「80年代に育ったアメリカ人が、ついついやってしまうこと」の67か条。あなたはいくつ分かりますか?

1. You've ever ended a sentence with the word "PSYCHE".

2. You watched the Pound Puppies.

3. You can sing the rap to the "Fresh Prince of Belair " ...and can do the "Carlton".

4. Girls wore biker shorts under their skirts and felt stylishly sexy.

5. You yearned to be a member of the Baby-sitters club and tried to start a club of your own.

6. You owned those lil' Strawberry Shortcake pals scented dolls.

7. You know that "WOAH " comes from Joey on Blossom.

8. Two words: Hammer Pants.

9. If you ever watched "Fraggle Rock ".

10. You had plastic streamers on your handle bars... and "spokey-dokes" or playing cards on your spokes for that incredible sound effect.

11. You can sing the entire theme song to "Duck Tales". (Woo ooh!)

12. When it was actually worth getting up early on a Saturday to watch cartoons.

13. You wore a ponytail on the side of your head.

14. You saw the original "Teenage Mutant Ninja Turtles " on the big screen... and still know the turtles names.

15. You got super-excited when it was Oregon Trail day in computer class at school.

16. You made your mom buy one of those clips that would hold your shirt in a knot on the side.

17. You played the game "MASH ". (Mansion, Apartment, Shelter, House)

18. You wore stonewashed Jordache jean jackets and were proud of it.

19. L.A. Gear... need I say more.

20. You wanted to change your name to "JEM " in Kindergarten. (She's truly outrageous)

21. You remember reading "Tales of a fourth grade nothing " and all the Ramona books.

22. You know the profound meaning of "WAX ON, WAX OFF".

23. You wanted to be a Goonie.

24. You ever wore fluorescent clothing. (some of us... head-to-toe)

25. You can remember what Michael Jackson looked like before his nose fell off and his cheeks shifted.

26. You have ever pondered why Smurfette was the only female smurf.

27. You took lunch boxes to school... and traded Garbage Pail Kids in the schoolyard.

28. You remember the CRAZE, then the BANNING of slap bracelets.

29. You still get the urge to say "NOT " after every sentence.

30. You remember Hypercolor t-shirts.

31. Barbie and the Rockers was your favorite band.

32. You thought She-ra (Princess of Power!) and He-Man should hookup.

33. You thought your childhood friends would never leave because you exchanged handmade friendship bracelets.

34. You ever owned a pair of Jelly-Shoes. (and like #24, probably in neon colors, too)

35. After you saw Pee-Wee's Big Adventure you kept saying "I know you are, but what am I?"

36. You remember "I've fallen and I can't get up"

37. You remember going to the skating rink before there were inline skates.

38. You ever got seriously injured on a Slip and Slide.

39. You have ever played with a Skip-It.

40. You had or attended a birthday party at McDonalds.

41. You've gone through this nodding your head in agreement.

42. You remember Popples.

43. "Don't worry, be happy"

44. You wore like, EIGHT pairs of socks over tights with high top Reeboks.

45. You wore socks scrunched down (and sometimes still do...getting yelled at by "younger hip" members of the family)

46. "Miss MARY MACK MACK MACK, all dressed in BLACK BLACK BLACK "

47. You remember boom boxes. and walking around with one on your shoulder like you were all that.

48. You remember watching both "Gremlins" movies.

49. You know what it meant to say "Care Bear Stare!"

50. You remember watching "Rainbow Bright" and "My Little Pony Tales "

51. You thought Doogie Howser/Samantha Micelli was hot.

52. You remember Alf, the lil furry brown alien from Melmac.

53. You remember New Kids on the Block when they were cool... and don't even flinch when people refer to them as "NKOTB".

54. You knew all the characters names and their life stories on "Saved By the Bell ", the ORIGINAL class.

55. You know all the words to Bon Jovi - SHOT THROUGH THE HEART.

56. You just sang those words to yourself.

57.You remember watching Magic vs. Bird.

58. Homemade Levi shorts. (the shorter the better)

59. You remember when mullets were cool!

60. You had a mullet!

61. You still sing "We are the World"

62. You tight rolled your jeans.

63. You owned a bannana clip.

64. You remember "Where's the Beef?"

65. You used to (and probably still do) say "What you talkin' about Willis?"

66. You had big hair and you knew how to use it.

67. You're still singing shot through the heart in your head,aren't you!


<12月9〜10日>(土〜日)

〇土曜日から急に冷え込んで、風邪気味。「葛根湯」の助けを借りて「サンプロ」へ。先週の「ホリえもん」に続き、今週は「同和行政」というコントラバーシャルな話題が続くので、スタッフルームは朝からピリピリしている。いつもにも増して寝てない人が多そう。ああ、なんかチームで仕事をしているんだな、と思う。5月からこの仕事を始めて今日は12回目。こんな風に、毎回、緊張感を共有できるのがコメンテーター業の醍醐味である。ちなみに来週も出る予定です。

〇終わってから台北駐日経済文化代表処へ。「日本における台湾のプレゼンスを高めるプロジェクト」の会合で、あれこれアイデアを出す。いちばん肝の部分は、司馬遼太郎とか深田祐介氏のような「台湾通の日本人」、あるいは金美齢さんのような「魅力的な台湾人」の後継者を作っていくことだと思うのだけど、これは誰かが支援してできるというものではない。とりあえず、れんほうさん頑張ってね、と言っておこう。

〇「台南タンツー麺は絶対に日本で受ける。あれを流行らせましょう」と力説したところ、あ、それなら今晩の忘年会に出るかもしれませんよ、と言われる。が、明日が締め切りの「世界週報」が仕上がっていないので、泣く泣く途中で帰る。なんてストイックなワシの週末。トホホ。年内、これ以上、仕事が増えませんように。


<12月11日>(月)

〇心に浮かぶよしなしことの備忘録。

〇成人病検診に行く。バリウム飲む。ちゃんと飲めてしまう。昔はあんなに苦手だったのに。ふと、どんなことでも、慣れてしまうものだな、と思う。ことによると何かの拍子に、納豆も食べられるようになったりするのかもしれぬ。嫌だけど。

〇何かの拍子に、あー、この人は人相が悪くなったなー、昔はとってもいい人だったのになー、と思う。気がつけば週刊誌でスキャンダルが出て叩かれている。ネタは女性問題。中年男が偉くなると、考えることはみんな同じなのですかね。

〇モノ作りで限界を越えようと思ったら、狂気が必要になる。狂気は伝染しやすい。しかし長続きしない。他人に上手く狂気を伝えることができる人が、カリスマ経営者や革命家や宗教家になるのだろう。個人でモノ作りに挑戦する人は、内なる狂気を飼いならしていく必要がある。

〇アメリカ研究の松尾文雄さん、日本政治史の坂野潤治東大名誉教授の話をあいついで聞く。このクラスの人になると、話の内容はさておいて、その場の同じ空気を吸っていられるというだけで、自分が少し賢くなった気になれる。いや、もちろん話の内容も面白いんですけど。

〇硫黄島を舞台にしたクリント・イーストウッドの映画2本の評判が良い。「アメリカが相手側から見た戦争映画を作るのはめずらしい。イラク戦争という世相を反映しているのではないか」という意見に妙に納得する。『許されざるもの』以降のイーストウッドの映画は名作揃いだが、硫黄島シリーズは見ていない。ああ、映画見に行く時間がほしい。

たむたむさんから、「僕の本の紹介をしてください」とのメールあり。あいかわらず厚かましい人だなあ。「新憲法はこうなる」は、積読リストのかなり下の方に埋もれているんですけど。


<12月12日>(火)

〇ビールが売れてないんですな。今年は5億ケースを割り込むことになるらしい。少子高齢化や、若者がビールを飲まなくなっていることの表れなんでしょう。飲酒運転の取り締まり強化も、地方都市なんかでは効いているのかもしれない。記事はこちら


●(12/12)11月のビール系飲料出荷量、3カ月ぶりプラス

 ビール大手5社が12日まとめた11月のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の出荷量は前年同月比1.8%増の3974万7000ケース(1ケースは大瓶20本換算)と3カ月ぶりにプラスとなった。1―11月累計は前年同期比0.5%減の4億4706万4000ケース。2006年の年間出荷量は5億ケースを割り込む公算が大きくなった。

 出荷量低迷は若者のビール離れや、消費者の健康志向の高まりなどが背景。今年通年で5億ケースを上回るためには、12月に前年同月比3%弱増える必要があり、到達は厳しいとの見方が出ている。5億ケースを割り込めば、現行の集計が始まった1992年以降初めてとなる。


〇日本のビールは国際的に見ても、水準が高いと思いんじゃないでしょうか。とくにエビスとかプレミアムモルツ。もちろんその分、お値段の方も高目ではありますが。ひょっとすると農産物と同じで、国内市場が頭打ちだから輸出に活路を見出そう、ということになるのかもしれません。

〇最近の忘年会は、個室で飲み放題というパターンの店が増えてますね。最初はビールで始めて、途中で日本酒やワイン、焼酎に変えて、最後はウーロン茶、というパターンが多いようです。かんべえの場合は、ただただビールだけを飲み続けることが多いです。あ、そういや明日も忘年会であった。


<12月13日>(水)

〇今日聞いた日本の某電機メーカーの海外進出の歴史についての回顧談が感動ものでした。以下は私的なメモ。

●円高が進行したときに、「安い労働力」だけを求めて行った海外進出は、後から考えると間違いだった。最初は東南アジアに行き、次に中国に行き、最後はアフリカかもしれない。行く先々で労働コストは上昇するから切りがない。その分、グローバルな人材育成が遅れてしまった。海外進出の本来の目的は、マーケットとして入っていけるかどうかであるべき。

●この国はインセンティブがあるから、ということで工場を作っても、それでうまく行くとは限らない。海外進出は、バリュー・チェーンを考える必要がある。

●自社製品を使うか、他社製品を使うか。自社製品優遇主義をやると、市場の評価に耐える製品が作れなくなる。まして他社から、「お宅はどうせ自社製品でしょ」と思われてしまったら最悪。品質がよければ他社製品を使うということは、自社の競争力を守るために、「憲法で決めておく」必要がある。

●いわゆる「集中と選択」でアウトソーシングを進めていくと、品質保証がガタガタになってしまう。日本企業は、価格競争で中国には勝てないのだから、品質保証で勝負するしかない。丸投げをせず、人と技術を提供してキチンと作らせる「インソーシング」がこれからは重要。

●日本企業が技術を抱え込むことで、空洞化が避けられるとは限らない。敵失に期待するような気持ちでは国際競争に負ける。ライバルの存在は重要。イノベーションはそこから生まれる。

〇日本企業の「モノ作り」の心意気を再確認しました。要はタイガー・ウッズのように、「最後は自分は勝つ」ことを信じつつ、ライバルの健闘を祈るようなフェアな精神を維持することが重要である。楽して勝ちたいなんてことを考えていると、バチが当たりますよね。


<12月14日>(木)

〇昨日、サウスダコダ州選出のチム・ジョンソン上院議員が倒れて病院に担ぎ込まれた。所属は民主党である。さっそくワシントンは色めきだっている。日本の永田町であれば「政局だ」というところでしょうな。(情報源)

〇いちおう解説しよう。中間選挙の結果、2007年1月3日に召集される新しい上院は、民主党51議席、共和党49議席(ホントは無所属が2人居るのだが、その辺の細かい話は抜き)となる。だから、民主党が全部の委員長ポストを取り、閣僚、最高裁判事、大使人事などに対する事実上の拒否権を得ることになる。ブッシュ政権大ショック、という話はこれまでに何度もやった。

〇仮にこの民主党議員が死んだとしよう。この場合、代わりの人を選ぶのは州政府であり、普通は知事が指名する。サウスダコダ州の知事は共和党である。誰を選んでもいい、ということになっている。ということは、上院の勢力図は50対50になってしまい、上院議長を兼務するチェイニー副大統領の1票がモノを言うので、与野党の再逆転が生じてしまう。

〇あわてて周囲がサウスダコダ州の規定を調べたところ、ここでは7〜80日後に補欠選挙をやれということになっているらしい。まあ、今のアメリカの雰囲気であれば、民主党候補が共和党候補に負けることはないだろう。ところがですな、民主党で誰が出てくるかというと、おそらくはダッシュル元上院院内総務となる。

〇2004年の大統領選挙において、共和党はあらゆる手段を講じて、ダッシュルを落選させた。それさえなければ、本来は大統領候補になっていても全く不思議のない人物である。じゃあ、ダッシュルがすんなり上院に返り咲くかというと、そこは共和党側としても黙っていられない。なにせ2年前には落とせた相手である。負けてモトモトだが、勝てればもうけもの。死力を尽くして勝ちに行きたいところであろう。

〇ところがお立会い。ジョンソン議員はまだ死んではおりませぬ。この先がどうなるか、まったく分かりませんが、こういう話を聞くと、アメリカ政治も結構ばかばかしいと思うでしょ? ホント、政治の世界は一寸先は闇であります。

●追記:サウスダコダ州の「補欠選挙」規定は、下院にのみ適用されるとのことで、ジョンソン議員が引退を余儀なくされると、やはり共和党議員が誕生することになるそうです。ちなみに、病気だからといって議員を辞めさせることはできず、昏睡状態のまま4年後に任期切れを迎えた例も過去にはあるとの事(12月15日加筆)。


<12月15日>(金)

〇日本貿易会の懸賞論文が発表されました。審査結果はこのページをご参照ください。「ジャパンブランドの可能性」をテーマに、全世界から多くの論文が集まりました。かんべえも審査委員を務めましたので、玉石混交の「ジャパンブランド論文」を読ませてもらいました。面白い経験でした。

〇大賞作品は、25歳のノルウェー人による英語の論文です。手堅い内容を平易な文章でまとめており、「ジャパンブランド」を持ち上げつつ、なおかつ適度に苦言も呈するというバランス感覚にも優れ、好感度の高い論文でした。文句ナシ、ですね。

〇ただし、かんべえのご推奨は、優秀賞となった「守破離」という論文です。完成度という点では荒削りですが、とにかく文章がみずみずしくて、グイグイ読ませる。アメリカで育った著者は、剣道を通して日本文化を知るのですが、そこで学んだ「守、破、離」という思想を紹介している。ボーダーレスな環境で育った新世代による日本文化論ですね。

〇これを書いたダイスケ君(26歳)は、おそらくレッドソックス入団を決めた松坂大輔と同じ年。察するに、甲子園で活躍した荒木大輔投手にあやかって命名されたのではないでしょうか。松坂投手は今日は人生最高の日かもしれませんが、こっちのダイスケ君にも大いに活躍してもらいたいものです。


<12月16〜17日>(土〜日)

〇「2007年は団塊世代の先頭が定年を迎える年」ということがよく言われます。では、来年、60歳になる人、つまり還暦を迎える人たちとは、具体的に誰であるのか。ウィキペディアで「1947年生」を検索して見ると、うあああああ、ものすごい数であります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:1947%E5%B9%B4%E7%94%9F 

〇実はこれ、今日のサンプロの舞台裏で、草野厚先生が「来年で還暦」と言っていたことから思いついたんですよね。今日の出演者では、中西輝政先生も47年生まれでした。そのほか、かんべえが存じ上げているところでは、石川好さん、寺島実郎さん、円より子さんなんてところが「還暦」にリーチがかかっているようです。(でも、「おめでとうございます」と言ったりすると、怒られそうなので黙っていよう)。

〇一見して、スポーツと芸能人が目立ちます。特に野球選手は豊作ですね。江本孟紀、衣笠祥雄、大矢明彦、鈴木啓示、福本豊、藤田平、星野仙一、松岡弘、若松勉、という名前を並べると、古きよき時代のプロ野球の群像が蘇ってきます。生まれた時代はまだ焼け跡闇市、遊びといえば他にはなかった世代であったからかもしれません。しかしこの名前を見ていると、男臭いうるさ型のオッサンたちが並んでおって、とても還暦という感じではないですな。

〇漫画家も豊作です。池田理代子(ベルサイユのばら)、大島弓子(綿の国星)、西岸良平(三丁目の夕日)、はるき悦巳(じゃりんこチエ)、弘兼憲史(課長島耕作)、本宮ひろ志(俺の空)、安彦良和(ガンダムシリーズ)、山上たつひこ(がきデカ)、山岸凉子(日出ずる国の天子)・・・・団塊の世代は、漫画というジャンルの成長とともに大きくなったのでしょう。そして、かんべえの世代は、彼らの漫画を大量に読んでいたりする。

〇政治家は少ないです。よく名前が出るのは、鳩山由紀夫さんくらいですね。考えてみれば、総理大臣の座は1942年生まれの小泉純一郎氏から、団塊の世代を一気にすっ飛ばして、1954年生まれの安倍晋三氏に飛んでしまいました。

〇などと細かいことを言い出すと切りがないのですが、後はどうぞ皆様で楽しんでください。あと1点だけ、面白いことに気がつきました。スティーブン・スピルバーグ、スティーブン・キング、アーノルド・シュワルツェネッガーの3人が、揃って1947年生まれなのですね。この3人が原作、監督、主演を務めると、果たしてどんな映画ができるのか、見てみたい気もするけど、若干約1名が州知事をやってますので、これは不可能でありましょうね。


<12月18日>(月)

〇引き続き2007年はどんな年になるかを考えています。今日は政局を取り上げてみるとしましょう。

〇一般に言われているのは、「2007年は選挙の年である」ということ。統一地方選挙と参議院選挙が行われるからだ。前者の中には東京都知事選も含まれる。これはこれで面白いとは思うが、それでも「参議院選挙を足がかりに、民主党が政権交代に成功する」というシナリオがあまりにもウソ臭い。かんべえは元来が「小沢嫌い」なので、この辺は割り引いて読んでいただきたいが、やはり2007年も民主党が政治の主役になることはないと思うのだ。

〇それではどういう対立軸が考えられるのか。かんべえとしては、やはり自民党内の「ネオ対クラシック」の図式にもう一度、期待をかけてみたい。なんとなれば、安倍政権発足以来、クラシック側が破竹の連勝を続けている。

(1)復党問題で、造反議員の復帰に成功。

(2)道路特定財源で、07年度から生じる剰余金5000億円の一般財源化を目指すも、わずか1800億円で手打ち。

(3)社会保険庁改革で、「強制徴収権」の国税庁への「移管」が「委託」に化ける。

(4)経済財政諮問会議で公務員制度改革を議論するも、天下り全面禁止の提案が総スカン。

(5)政府系金融改革で、JBICの分離を目指す動きがある。理屈としてはもっともなところもあると思うのだが、これが成功したりすると、またしても「反改革成功」となる。

(6)郵政民営化もサボタージュがはなはだしいと聞く。

〇とにかく小泉時代の「改革疲れ」がどっと出てきて、いろんなものがなし崩し状態になっている。その分、増税すればいいでしょということになるのだろう。これってケシカランと思うのですが、小沢民主党はとっくに昔に「反・改革」の側に回ってしまっているので、抵抗勢力に対してプレッシャーをかけることができない。

〇自民党内ネオ派の反撃はいつ始まるのか。現状では官房長官を筆頭に大勢いる補佐官が役に立たず、復党問題で傷ついた中川幹事長が孤軍奮闘状態。これで本間税調会長を守るという仕事が降ってきたりすると、いかにも中川(女)という感じになって、さらに切ない。安倍首相が指導力を発揮しなければならないところだが、たくさん作った会議に出ているだけで疲れ果てているらしい。困ったものだ。

〇しみじみ感じるのは、安倍さんのように党内の幅広い支持を得て首相になった人は、大胆な改革が難しいということ。今の流れを逆転させることは簡単ではないでしょう。ひょっとしたら、07年中のどこかで「小泉再登板カード」が飛び出すのかもしれません。


<12月19日>(火)

〇昨日の続きである。2007年の日本経済は、なんだかんだで今年並みの牛歩景気だろう、というのは先週号で書いた通りなのだが、いろいろリスクもあるわけであって、特に経済政策がもたらす間違いが怖い。

(1)来年の年明け早々、おそらく日銀が利上げを行う。借金して、都心の不動産物件を買いまくっている人たちはご用心(少なくないと思うぞ)。不動産価格には、多少の影響が出るかもしれない。

(2)平成18年に半減された定率減税が、いよいよ廃止される。これによるマイナスが1.7兆円くらい。

(3)春(→9月の間違い)になると、厚生年金保険料がまた上がる。(この人に教えていただきました。深謝)

(4)6月になると、住民税のフラット化が行われる。

〇これで7月の参議院選挙に勝とうという自民党は、相当に虫が好いといえる。散々言われている通り、「企業業績は好調で、雇用状況も良くなっているのに、個人消費が伸びない」ことが現下の日本経済の課題である。ところが、法人減税をやりつつ、家計からはしっかり取る、という政策のバランスは明らかにおかしい。国際標準にあわせて、減価償却費を95%から100%に上げるのは、方向としては正しいと思う。が、かかる「プロ・ビジネス政策」を採る際には慎重でなければならない。なぜなら、この先には消費税の議論をしなければならないのだから。

〇小泉政権〜安倍政権の経済政策は、見事なまでの「プロ・ビジネス政策」であった。低金利、規制緩和、民営化、不良債権処理、産業再生、そして財政再建。経済が危機的状況にあるときは、それでも誰も文句を言わない。しかし、喉もと過ぎれば熱さを忘れるのは世の習い。経済が安定してくると、格差の是正や地域振興が関心事になってくる。プロ・ビジネスがアンチ・ビジネスに振れないように、上手に現実的な政策を実施していく必要があるのだが、この調子では非常に危なっかしい。

〇総じて安倍政権が07年につぶれるとしたら、それは経済政策の失敗によるものであろう。逆にいえば、安全保障政策が助け舟となるかもしれない。すなわち、北朝鮮情勢が風雲急を告げてきたら、「ここで安倍政権は倒せない」という形になる可能性がある。何しろ今までずっとそうだったように、金正日は最大の安倍応援団であるから。

〇さて、今日、明日と連荘で自分が幹事役の忘年会が続くので、ちょっと息切れ気味である。考えてみれば、この季節は例年、たくさん幹事を掛け持ちしていたので、今年はマシな方なのであるが、それにしたって忙しすぎである。07年予測は明日も続く予定。


<12月20日>(水)

〇午前中に慶応大学の三田キャンパスへ。日本貿易会の研究プロジェクトで、某先生にお願いの儀があって、他の委員と待ち合わせして研究棟へ。入り口で、なぜか「論座」編集部のTさんとバッタリ遭遇する。あー、良かった、入稿後で。

〇某先生との仕事、あっさり終わる。ちょうど11時20分である。頃は良し、「有名なラーメン二郎って、どこにあるんですか?」と尋ねてみる。同行者では唯一の慶應ボーイO氏が、「正面玄関を出てすぐ右手」と教えてくれる。なんと早くも行列が出来ているではないか。が、この機会を逃したら、おそらく生涯縁がないであろう。ぐっちーさんご推奨の手前もあり、行列についてみる。(ちなみにO氏はさっさと帰ってしまった。さすがに事態を呑み込んでいたのであろう)。

〇30分待って、「豚入りラーメン600円」を注文する。すると、で・で・で・でかい!! 麺も豚さんもキャベツも山盛りである。一口食べると、これが実に旨い。麺も豚さんもキャベツも、そしてスープも、見事なハーモニーである。せっせと食べるが、すぐに満腹になる。その時点で、ようやく普通のラーメンくらいの盛りである。そこから先は、食べても食べても丼の底が見えてこない。ややあって、完全にかんべえの箸が止まる。ここから先は難行苦行。左右のテーブルを見ると皆さん完食されているので、しばらくは意地で頑張るが、とうとうギブアップ。

〇会社に戻る途中、電車から降りて歩いてみる。そうでもしないと全然腹が減らない。ワシは確か、忙しいはずではなかったか。アメリカ大使館前を歩いていると、今度はアルコニックスの正木社長とバッタリ出会う。よくよく人と会う日である。正木さんがバンコク店長の時代によくお世話になりました。

〇会社に戻り、今宵は忘年会でふぐコースであったことを思い出したときにはもう遅い。夕方になっても、全然腹が減らない。そのくせ、忘年会に行くと、気がつけば鍋の底の方にある白菜を拾っているワタシ。これでは痩せないのも無理はない。一層の努力を要す。

〇それで2007年はどうなるかという話であるが、それはもう少し減量してから考えるとしよう。


<12月21日>(木)

〇不思議な運命のめぐり合わせから、「大使夫人」になった女性がいた。慣れないで困っていたところ、「先輩」の大使夫人からこんなことを教わったのだそうだ。

「パーティーでは、あなたが最初に椅子に座りなさい。そうでないと、ほかの人が座れないでしょう?」

〇なるほど、世の中にはいろんな礼儀作法があるもので、「いちばん偉い人」が気づいてくれないものだから、周囲が振り回される、なんてことはめずらしくない。この「先輩」夫人は、周囲に気づかれないように、ごく自然にパーティー会場から立ち去る、という特技もあったのだそうだ。地位にふさわしいエレガントな態度、ってのは難しいものです。意識的に努力しなかったら、きっと身につかないでしょう。

〇その一方で、「いちばん偉い人はどんな風に振舞うべきか」を教えてくれる人はあまりいません。昔はそういうお手本になる人がいたんでしょうが、最近では少なくなったと思います。逆に「いちばん偉い人」の見苦しい振る舞いは、昨今の政府税調会長のような例には事欠きません。まあ、ノブレス・オブリージなんてものを感じさせてくれるのは、口は悪いけれども、この人くらいじゃないでしょうか。


<12月22日>(金)

〇そろそろ出始めた「来年の干支」話。別にかんべえが詳しいわけではないのだが、来年を読むという作業においては、この手のネタは重宝されるので、いちおう以下のようなものを書いておきます。

2007年の干支は丁亥(ひのと・い)である。

十干のうちの【丁】は、植物の芽が伸びようとして、地表にT字型にあたり、なお表面に出きれない時期である。漢字は、地中では新しいもの「|」が育っているが、古い勢力「―」に阻まれている様子を意味している。

 先の丁の年である1997年はアジア通貨危機、もうひとつ前の1987年はブラックマンデー、さらに前の1967年には英ポンド危機など、国際金融の世界では大きな事件の当たり年である。いずれも単なる危機の到来ではなく、それぞれ「アジア経済の勃興」「日本のバブル景気」「EC(欧州共同体)の発展」など、新しい動きの前触れであった。2007年も金融ショックがあるかもしれないが、背景にある新トレンドを見逃してはならない。

 十二支のうちの【亥】は、ブタの全身に行き渡った骨組みを表す象形文字。転じて「核」、「極」、「革」などに通じ、起爆的なエネルギーを秘めている。また、十二支の最後に控えていることから、「全部に行き渡る」意を含む。

 先の亥の年である1995年は、阪神大震災、オウム真理教事件などで、戦後50年が大揺れだった年。1983年は、ロッキード裁判での田中角栄元首相の有罪判決、1971年はニクソンショックによるドルの防衛策発表など、ひとつの時代が終わりを告げる年が目立つ。

 さて、先の【丁亥】はどんな年であったのか。60年前の1947年、日本はまだ戦後の混乱を抜け切れていない。「2・1」ゼネスト、インフレの進行、「斜陽族」が流行語となった。その一方、日本国憲法と教育基本法が施行され、新皇室典範や改正刑法・民放が公布された。農地改革が行われ、六三三四制と男女共学が始まった。文字通り、戦後日本の出発点であったと言っていい。

 戦地からの引き上げ組が、「集団見合い」で結婚を決めたのもこの頃。この年から3年間に誕生した約800万人が、後に「団塊の世代」と呼ばれようになる。その第一陣が、2007年にはいよいよ「還暦」を迎える。

 2007年は、新旧の勢力が激しくぶつかり合う年となるかもしれない。新しい動きをしっかり見据えて、派手な事件にも一喜一憂することなく、時代を先取りしていきたいものである。


<12月23〜24日>(土〜日)

〇積もりつもった年内の仕事が、ようやく残り少なくなってきた。とりあえず締め切りはあと2本。顧みてこの年末は、平均台の上を自転車で駆け抜けるような危なっかしい仕事をしている。われながら、なんという恥知らずな仕事ぶりであろうか。「こんな苦労するなら、もう少し断っておけばよかった」と本当は後悔しているのだけど、頼まれるうちが花というか、本当は感謝しなきゃいかんのかな、とも思う。

〇仕事をしていて、長い文章が書けなくなってきたな、と思う。2000字くらいまでのコラムはさっと書けるのだけど、1万字となるとため息あるのみである。今週末も、仕事が行き詰まるたびに、娘と一緒に凧揚げにいったり、洗濯を始めたり、ネットの更新をしたりする。変だとは思うけれども、ワシの仕事の作法はいつもそうなのである。だいたいが長時間、根を詰めるのは向いておらんのだ。そういえば、有馬記念を買わなかったのは何年ぶりだろう。テレビ観戦では、今日のディープインパクトは強かったし、いいものを見たと思うけど、買いたい馬券はなかったな。来年の中山金杯を楽しみにすることにしよう。

〇ということで、寂しい聖夜を過ごしている。あ〜あ、ホントにこの原稿、今日中に終わるのかしらん。


<12月25日>(月)

〇財務省で開催された「学識経験者への説明会」に出席しました。平成19年度の予算に関する説明会である。正直、国の財政制度については、そんなによく分かっているわけではないので、たぶんに「ネコに小判」という気もするのだが、とりあえず呼んでもらえたということは、かんべえも偉くなったものだと慶賀しなければならない。

〇国の財政状況を示す尺度として、プライマリー・バランス(PB=基礎的財政収支)という言葉が使われるようになって久しい。2003年度にはマイナス19.6兆円の大赤字であったものが、2007年度にはマイナス4.4兆円まで回復する見込みである。というと、「なーんだ、もうほとんど黒字化を指呼の間に捉えているじゃない、確か政府は2010年代初頭に黒字化を目指すと言っていたのに」、という声が聞こえてきそうである。

〇もちろん、これはこれで多とすべき数字であって、来年度予算は「きれいにできた予算」と言ってあげたいところである。とはいうものの、楽観できるわけでもない。今度の予算は、法人税などの歳入増による追い風を受け、定率減税の廃止という特殊条件もあり、しかも2009年度からは年金の国庫負担分の増加(1/3→1/2)という新たな重荷も加わる。

〇さらにいえば、PBとは「国債などの借金を除いた歳入と、過去の借金の元利払いを除く歳出を比較する」数値である。PBが均衡していれば、毎年の政策的な経費が税収などの毎年の収入でまかなわれていることになり、仮に「利子率と経済成長率が同じであれば」、公債の対GDP比は一定となる。でもって、長期金利と経済成長率はどっちが高いのかといえば、今年3月頃の経済財政諮問会議で行なわれていたような神学論争の世界なのである。

〇ゆえに本当の意味の財政再建とは、PBの数値がどうこうではなくて、国債の対GDP比が減少することであり、欲を言えば国債残高が実額で減少することである。そのためには、単年度の財政収支が黒字にならねばならず、それは結構、ため息が出るほど遠い目標である。要はここ数年、PBの話をし過ぎてしまったために、本当の目標が見えにくくなっている怖れがある。

〇なおかつ、この辺の話はたぶんに「絵に描いた餅」であって、強力に財政再建を進めた結果、景気の失速を招いてしまったりすると、すべてが吹っ飛んで「ご破算」となってしまう。それでは橋本内閣の二の舞となって、シャレにならない喜劇となってしまう。ということは、あんまり急ぐわけにも行かない。

〇つくづく現在の日本経済は、「順境に耐える」という言葉がよく似合う。90年代に日本経済が坂道を転げ落ちていた当時、「株の含み益」やら「隠れ借金」やらで、どんどん悪くなるように見えて、なかなか悪くはならなかった。今はそれとちょうど逆の現象が生じていて、良くなるはずのところが、なかなか良くならない。企業は内部留保を積まねばならず、財政では隠れ借金を返済しなければならない。人材が余っていた時代ならすぐにでくることが、人材不足の今はすぐには手が回らない。(実は弊社も人材募集中です。ついでながらCMまで)。なんだかんだと、重荷の多い2007年である。


<12月26日>(火)

〇本日は名古屋に行って、東海テレビ放送の「年末報道スペシャル番組 田原総一朗の2007年大予測」というシンポジウムに参加しました。パネリストは竹中平蔵、中西輝政、岸井成格にかんべえ、という4人。今日が収録で、放映は12月29日(金)の24時30分から26時10分だそうです。近畿東海ローカルの番組なので、首都圏では放映されませんが、ご関心のある方はどうぞよろしく。

〇竹中さんは、大臣辞任後初のテレビ出演で、これが「口開け」ということのようです。今日も厳しい官僚批判や小泉改革の打ち明け話などが飛び出し、久々の竹中節全開といった感じでした。ちょうど回顧録も出たところで、おそらく年明け以降は、マスコミ登場の機会も増えるのではないかと思います。

〇かんべえの方は、後は夕刊フジの書評を書いて、明日夜のTBSラジオでミヤテツさんの番組に出れば、年内の仕事はだいたい終わりです。ああ、やっと出口が見えてきた。年賀状はもちろんまだ書いてないけど。

〇帰りの新幹線の中で、「税調会長に香西氏」の速報を見る。これっていい人事ではないでしょうか。困ったときは長老にお願いする。基本ですね。


<12月27日>(水)

〇年内の仕事は終わりつつあるのだけれど、そんな日にややこしい案件が山のように・・・・。明日はどっちだ?

〇今度は佐田行政改革担当大臣が辞任。ほとんど政権末期のような状態でありますな。とはいえ、これが本当に問題であるとは思いません。たしかに「復党問題→TMやらせ事件→本間税調会長→佐田行革担当相」というのは、かなりカッコ悪い連鎖ですが、この秋の臨時国会は成立した法案の数といい、来年度予算の「きれいさ」といい、そんなに安倍政権の成績が悪いとは思えない。

〇それよりも問題なのは、「道路特定財源→社保庁改革→公務員制度改革」と、次々と改革の後戻りが続いていること。来年早々には「政府系金融改革」が、次は僕らも何とかなっちゃうかも、と爪を研ぎながら待ち構えている。その次はいよいよ郵政民営化のサボタージュの番でしょう。そこまで続いてしまったら、いよいよ存在意義を問われてしまいますぞ。安倍さん、くれぐれもご用心。

〇佐田大臣の後任が、林芳正さん(内閣府副大臣、行政改革担当)にならないかなー、と言ってみるテスト。(テスト失敗。後任は渡辺よしみ先生でありました。おめでとうございます)。


<12月28日>(木)

〇仕事納め。昨日の時点で緊張の糸が切れた感あり。とくに今月は忙しかったもの。今日はOutlook Expressの整理。受信箱の6000本を、なんとか1000本以下に減らす。途中、何度もフリーズする。

〇夕刻、職場で軽くビールで乾杯。ややあって「良いお年を」で1年の仕事に幕が下りる。正月休みは、「積ん読」リストの本を減らすことが目標。映画「硫黄島からの手紙」も見なければ。


<12月29日>(金)

〇年賀状の宛名を書く。住所録の「あ行」から「た行」まで書いたところで、テレビ東京の恒例忘年会へ。大納会が終わったので、マーケット番組関係者が勢揃いするのである。

〇ちょうど1年前、12月30日が同じ忘年会で、その日にかんべえはこんなことを書いている。


●そういえば28日に発表された鉱工業生産は、前月比1.4%上昇の103.5となり1991年5月の103.4を上回り過去最高を更新した。この「103」という水準がクセモノで、今まで何度も挑戦して抜けなかった水準だ。一部には「一〇三高地」などと呼ぶ声もあったくらいである。設備投資と輸出の好調さを考えると、しばらくは一〇三高地を越える状態が続くだろう。となれば、鉱工業生産とリンクすることが多い東証指数も期待できるのでは、という理屈になる。

TOPIXを長期で見ると、こちらは1700あたりに壁がある。2006年の株価は「1700高地」を抜けるかどうかが試金石となろう。かんべえはこの点、懐疑的である。ここでも書いたけれども、あんまり上値はないような気がしている。というか目先、調整は近いのでは。まあ来年は1500〜1700くらいであれば十分ではないかと思います。


〇今年の暮れの鉱工業生産は108.6という高水準です。一〇三高地は完全に突破されました。でもって、2006年のTOPIXは、一瞬だけ1700を越えたけど、終わってみれば「行って来い」でありました。いわばこの1年は休みだったわけです。おそらくその分がプラスに働いて、2007年は1700を大きく越えてくるんじゃないかと思います。とりあえず目標は1800、日経平均なら1万8500円としておきましょう。

〇忘年会には竹中前総務相が来てました。昨日がテレビ東京への久々の出演だったそうで、いよいよエンジン全開になると見ました。28日の名古屋のセミナーでは、田原さんに「今後の予定は?」と聞かれて、「象牙の塔にこもります」などと言ってましたけど、そりゃ平蔵さんには似合わないと思いますぞ。

〇ちょうど年末恒例の福引が始まったところで、飛行機の時間が迫っていたので、自分の分の引き換え券を久々に会った伊藤師匠にお渡しして退場する。実は先日も、サンプロ忘年会でとっても大きな「エスプレッソ製造機」を当ててしまったので、ひょっとして「プレステ3」とか「ウィー」とかを当てちゃうんじゃないかと心配になりまして。伊藤さーん、その後、「67」番は来ましたかね?

〇羽田空港から富山へ。今日の日本海側は朝から雪で、欠航になった便もあったようですが、無事に着陸してくれました。さて、年賀状の「な行」以降を書かなければ。年賀状を書きながら、「2007年は意外と手強い年」という予感がしてきました。2007年は円高、株高だと思いますが、いろいろ物騒なこともありそうですし。政治もちょっとは荒れるんじゃないでしょうか。


<12月30〜31日>(土〜日)

〇気がつけば今年も残り数時間。サダム・フセインは処刑されてしまったし、紅白歌合戦も始まってしまった。ということで、あわてて年内最後の更新のためにPCのスイッチを入れる。

〇毎回、こうやって年を越していくわけでありますが、当溜池通信は何と足掛け9年目を迎えることになります。このHPを始めた頃は、かんべえもまだ30代であったわけで、なんという時間の経過でありましょうか。この間に世の中は変わるし、子供は大きくなるし、ワシは老けるというわけである。

〇でも、他人事だと思って読んでいるそこのアナタ、自分だけが例外でいることはできませぬぞ。明日になって、新しい年が来たら、皆それぞれに荷物を背負って行かなければなりませぬ。めでたくもあり、めでたくもなし。

〇ということで、来年になったからといって、とりたてて感想もなく、このHPも旧態依然のままで続いていく予定である。ブッシュ大統領ではないが、"Stay the course." 2007年もどうぞお見捨てなく。







編集者敬白



不規則発言のバックナンバー

***2007年1月へ進む

***2006年11月へ戻る

***最新日記へ


溜池通信トップページへ


by Tatsuhiko Yoshizaki