●かんべえの不規則発言



2004年8月





<7月31〜8月1日>(土〜日)

○こういうHPをやっていると、「忙しいでしょう」などと聞かれることがある。んなわきゃ、ないのである。忙しいかったら、HPの更新なんて面倒なことをするはずがない。昨日なぞは昼寝を4時間して、なおかつ午後9時には寝てしまった。とりあえず、米民主党大会には飽きてきたし、夕刊フジの書評も書く気にならぬ。てなわけで、適当にサボるのである。

○昨晩、アジア大会の日本―ヨルダン戦を見ておりましたが、延長戦になった時点で、これはもう絶対に勝ち目はないと思って寝ちゃいましたな。ところが今朝になってみたら、守護神・川口のお陰で日本はPK戦を制しているではないか。何だか申し訳ない。が、とにかく偉い。偉いぞ。審判も会場全体も敵に回して、ピッチもあんなに荒れ放題で、よくまあ勝てたものだ。

○それにしても中国の重慶とは民度の低い土地である。2002年のワールドカップにおける韓国の応援も、見境いがない点ではいい勝負だったが、あれはまだ自国の応援だからナンボかマシである。「あの国は嫌いだから負けさせたい」などと願うのは、少なくともサッカーファンではあるまい。日中関係がどうこういうのをさておき、とにかく見苦しい光景である。

○その昔、クリントンが中国政策の専門家に対し、「中国は民主化すべきではないのか」と尋ねた。すると専門家は答えていわく、「あの国が民主化してご覧なさい。たちどころに四方の国に攻め込んでいきますぞ。そんな恐ろしいことは誰も望みません」。なるほど、その場合、とりあえず台湾侵攻は避けられないだろう。民主化された中国よりは、共産党政権の方が付き合うにはまだマシな相手かもしれぬ。

○が、スポーツマンシップのない国で開かれる4年後のオリンピックは、いかなるものになるのであろう。「チャイナ・コンセンサス」は、案外とこういうところから崩れていくのかも知れぬ。

○ところで日経新聞社主催、幕張メッセでやっている大恐竜博を見に行ってきた。次女Tいわく。「これ、トカゲに似ているね」。そんなの当たり前だろ。サウルスってのは、トカゲのことだぞ、と言うと、「じゃあ、恐竜も尻尾を切って逃げることがあったの?」・・・・かんべえ、答えられず。見たところ、恐竜の尻尾は骨が入っているので、簡単には切れそうではない。はて、トカゲの尻尾には骨が入っていないのだろうか。また、今日の目玉商品であるチュアンジェサウルスのように、全長27メートルの恐竜の尻尾が跳びはねているのは、あんまり見たい光景ではない。誰か詳しい人、教えてください。


<8月2日>(月)

○昨日の疑問はこの方が教えてくれました。

社内の恐竜博士に確認したところ、次のような回答でした。

・トカゲの尻尾には骨が入っています。
・恐竜の尻尾にも骨が入っています。
・「恐竜の尻尾切り」は無理でしょう。それだけ大きな部分を再生することはできないだろうと見られているからです。

以上です。ご参考まで。

○なるほど。これは納得です。ありがとうございました。

○さて、新しいネタです。日米間で行われているBMD共同研究の現場では、こんな会話が繰り広げられているらしい。

米「うーん、困ったな。こういう部品があるといいんだけどな」
日「あ、それならわが国にありますよ。ほら」
米「おおおお、すごいぞすごい。ピッタリではないか。おい、この部品、俺にくれ。もとい、売ってくれ」
日「あのー、申し上げにくいことなんですが、売れないんです。だって武器輸出三原則にひっかかっちゃうから」

米「何だよそれ。俺たちが昔作った憲法には、そんなの書いた覚えはないんだがな」
日「三木内閣の負の遺産なんですよ。まあ、話すと長くなるので、それは止めときますけど」
米「ほー、それじゃ何か。俺に協力できないってわけか。テポドン飛んで来てもいいってわけか」
日「いや、それじゃ困るので、この部品を作るための技術を差し上げます。設計図はさしあげますから、ご自分で作ってください。とにかく製品を供給しちゃあいけないんです。」

米「へー、それじゃ技術だったらいいってわけか。俺、真似しちゃうかもしれないよ」
日「はい。仕方ありません」
米「お前もつくづく変な奴だなあ。普通の国だったら、こういう高度な技術は絶対に外に出さないけど、製品だったら売ってやってもいい、って言うもんじゃないのかよ」
日「えーえー、どうせウチは普通の国じゃありませんよ」

米「ま、ともかくサンキュー。あああ、何だよこの設計図。こりゃダメだ」
日「え、どこがマズイんですか?」
米「こんな難しいもの、俺に作れるわけないじゃないか」
日「嘘。信じられない。アンタ、この程度のものが作れないの?」
米「俺だって20年前ならこのくらい作ったさ。でも、これだけグローバル化が進んだら、こんなの中国かインドに外注しちゃうよ」
日「情けない。われわれも昔はアンタを手本にしてたというのに」

米「でも、これじゃしょうがないな。お前の武器輸出三原則というやつ、変えられないんだろう?」
日「経団連などでも盛んに要望していますけど、自民党もあの体たらくでは、すぐには変えられないでしょう」
米「やーれやれ。それじゃ別の方法を考えるとするか。ったく、お前と付き合ってると、これがあるからなあ・・・・」

○念のために言っておくが、かんべえ流にデフォルメしてあるので、この通りの会話があったと信じてはなりませんぞ。まあ、大筋として上のような状況があるので、「そろそろ武器輸出三原則を止めましょう」という議論がある。詳しく知りたい人は下記をご参照。

●武器輸出三原則について http://www.rosenet.ne.jp/~nbrhoshu/Bukiyushutu3gensoku.html 

○で、これが本題ではない。このエピソードから窺い知れる米国経済の現状、という方向に話を持っていってみたい。あとは明日に続く。


<8月3日>(火)

○今さら、という感じの話題だが、「スマイルカーブ」という概念がある。経営学における近年の大ヒットで、台湾のパソコンメーカー、エイサーの創業者スタン・シー会長が提唱したもの。縦軸に付加価値、横軸に製造業の川上から川下まで(開発→部品製造→組み立て→販売→サービス)を並べたグラフを書くと、付加価値カーブは両側で高く、中央で低いという「人が笑ったような形」を描く。これはパソコン産業において、モジュール化が進んだことで製造(組み立て)作業が簡単になったからだ。でもって、「付加価値の低い中央部分はリストラして、アウトソーシングしてしまえ」というのが、今日的な経営だという話になる。

○日本企業は、この動きに乗り遅れた。80年代に世界を制覇した電子産業が、90年代になって競争力が低下したのは、この辺に理由があるとされている。その証拠に、スマイルカーブが成立しない世界、たとえば自動車産業においては、相変わらずの強さを維持している。自動車という人の命に関わる製品は、部品製造からアフターケアまでを一貫した経営が必要であり、そうでなければブランド・ローヤリティを維持できない。製造を外注するなどという話は論外な世界である。この場合、付加価値は横一直線になるので、「サムライカーブ」となる(サムライは笑わないから)。

○電子産業においても、現在、うまくやっているキヤノンのような会社は、このサムライカーブ経営に徹している。アウトソーシングやリストラを排し、開発が失敗しても温存する。開発に当たっては、顧客の声に耳を傾けるよりも、独自コンセプトや美しいデザイン、自分たちが感動できる製品を作ろうとする。その結果、「IXY DIGITAL」のような製品が生み出されている。歯を食いしばってでも「製造、組み立て」にこだわり続けたから、今日の成功がある。(もっとも、当初からこれを見通していたと言ったら誉めすぎで、たぶん日本企業にありがちな「あきらめの悪さ」を維持していたら、サムライにはサムライの良さがあったということなのだと思う)。

○もしも利益追求を経営の第一義と考えたら、「スマイルカーブ」に沿って付加価値の低い部分を外注すべきであろう。アメリカ企業は、それを忠実に行ってきた。その結果、製造業が衰退した。それでも製造の元になる技術や開発、そして販売やメンテナンスといった「ソフトとサービス」を押さえているから、アメリカ企業は高収益でいられる。製造部門など、中国やインドに任せればいい。企業経営としてはそれでオッケーなのである。

○が、その結果としていくつかのマイナス面が生じた。まずは製造業が雇用してきた労働者が困った。「オフショアリングとアウトソーシング」が政治問題になるような土壌ができた。さらに言えば、製造の現場が持ってきた「知」のノウハウが失われた。日本が設計図を渡しても、自分では作れないという事態に立ち至った。野中郁次郎氏的な観点からいくと、これはとってもマズイことではないかと思う。(実は野中郁次郎&勝見明『イノベーションの本質』日経BP社を読んで、その書評を考えているうちに、この長い文章になってしまったのだ)

○明日はいよいよこの問題が「アメリカ政治」につながる。予定である。


<8月4日>(水)

○というわけで、「儲かることだけやる」「資本効率の悪いことはしない」というアメリカ流経営方式は、マクロから見た米国経済の現状にも多大な影響を及ぼしている。すなわち、米国経済はこれだけ景気が良いにもかかわらず、設備稼働率は75%に留まっている。設備稼働率が上昇する代わりに海外からの輸入が増えて、貿易赤字が増えているのである。「設備投資は伸びているのに、設備稼働率は低い」というアメリカ経済の謎は、この辺に理由がありそうだ。古い設備を動かす気はないけど、儲かりそうな事業のために新しい設備を作るのはオッケーなのだ。

○これは経済原理から考えると、まことに理にかなった行動である。そのお陰で、米国経済の生産性は伸びている。ところが政治的には奇妙な現象が起きる。失業という問題を解決するために、政府は減税をしたり金融緩和をしたりして景気浮揚に努める。ところがそうしても失業は減らず、貿易赤字が増えるだけなのだ。もちろん、この間に企業収益は上がり、金持ちは潤うので、消費はそこそこに伸びるし、景気は長持ちする。が、Working Classの生活は、なかなか楽にならない。

○ケリー民主党が問題にしようとしているのはここである。指名受諾演説の中で、彼が述べている経済政策は以下のようなものだ。

*New incentives to "revitalize manufacturing"
*Invest in technology and innovation to create "good-paying jobs"
*Reward companies that "create and keep good-paying jobs" at home
*"Fair playing field" for American workers to compete in global economy

○要するに「オフショアリングとアウトソーシングを止めたい」のである。しかし、それはグローバル化とアメリカ流経営方式の否定につながる。例えば、今度の選挙の激戦地のひとつオハイオ州では、州内第2の雇用主はホンダである。ホンダは日本における雇用をアウトソーシングして、オハイオに工場を建てている。日本の雇用をアメリカが奪っているわけだ。それは良いけど、逆はダメだというのでは、「フェアな競争」という理念が泣くだろう。また、アメリカの経営者が「製造業のような儲からないことをやっても仕方がない」と思っている中で、いくら政策を動かしても「笛吹けど踊らず」に終わる公算が高そうだ。

○考えてみれば、アメリカの経営者が「儲かることだけやる」のは、資本市場が高い資本効率を求めているからである。その辺のことをさておいて、「雇用を国内に留めよ」と言ったところで、効果は薄いだろう。問題は民主党の政策当事者たちが、その辺のことに気づいていないようだから悩ましいのである。

○最悪のケースを考えると、米民主党が先祖帰りして、「貿易赤字を減らすことで、失業を解決しよう」というアジェンダ・セッティングをしてしまうかもしれない。90年代前半のクリントン時代には、そういう政策が本当に実行された。すなわち、(1)貿易黒字国に対して市場開放を求める、(2)産業政策で供給力を改善する、(3)為替調整によって輸出を増やし輸入を減らす、などである。その結果がどうだったかというと、もちろんそんなことで製造業はよみがえらなかったし、日本人には愉快ではない記憶が残ったわけである。

○米国経済の「失業」という問題は、90年代後半にはニューエコノミー景気による内需拡大によって解決に向かい、一時は4%を割り込むところまで改善した。が、貿易赤字は一貫して増え続けた。この間、経済のソフト化・サービス化とともに、「モノ作り」の衰退が進んだのだ。お陰でアメリカ企業は高いROEを達成し、株価を高めることができた。その反面、「高度な技術を数多く有しながら、他国からもらった設計図を自分では作れない」という頭でっかちで不器用な経済になってしまったのだ。

○民主党ケリー陣営が、本気で米国経済の「失業と赤字」問題に取り組むつもりなら、他国への市場開放要求や為替調整ではなく、全米のビジネススクールに行って、スマイルカーブ経営の概念を葬り去ることであろう。あるいは、「日本に学べ」とサムライカーブ経営を普及させるという手もある。が、そんなことをしても、弊害の方が大きそうだし、そもそもアメリカ人に「我慢の経営」は向いていないだろう。

○それにしても、今の共和党政権は「失業と赤字」という問題に、さほどの痛みを感じていないようである。政治的にはいかがなものかという気がするが、経済的にはまことに賢明な態度といわざるを得ない。


<8月5日>(木)

○3日間にわたるこの話は、そもそもが武器輸出三原則から始まったのであった。9月末に防衛懇談会の答申が出るので、その勢いで三原則見直しまでは軽く行きそうな雲行きではあるのだが、そんなに簡単ではないぞという声もある。今日の昼間、さるご老体の国家主義者がこんなことを言っているのを耳にしたような気がする。いや、もちろん空耳だとは思うのだが、結構、リアルな感じだったので、以下に要旨を記す次第である。

「まったく、なんということだ。こうまで見通しが外れてしまうとは!」

「まず参議院選の結果が大きな間違いだった。本当ならば軽く自民党が56議席を越えて、衆参単独過半数を実現していたはずなのだ。その上で、『自民党はやはり憲法改正に向けて進まねばならぬ』とか何とか言って、公明党との連立を解消してしまうつもりだったのだ。そうすれば、それだけで自民党に戻ってくる保守層がいるから、小泉政権の支持率は軽く6割は越えていただろう。その勢いで秋には『憲法改正、教育基本法改正、集団的自衛権見直し、ミサイル防衛推進、新防衛大綱』というタカ派路線を打ち出し、これに合流する民主党右派を待つという作戦だったのだ」

「ところが自民党は参院選で大敗。公明党に大きな借りを作ってしまった。これで彼らが『外国人参政権』などで詰め寄ってきたら、どうしたらいいのだ。憲法改正はおろか、タカ派路線も夢のまた夢になってしまうではないか」

「もうひとつの誤算は、わが盟友、渡邊君がレイムダックになってしまったことだ。それもプロ野球球団の合併などという、くだらない話で。ワシはプロ野球が1リーグだろうが2リーグだろうがちっとも構わんのだが、そんなことで読売グループが麻痺してしまったのでは、憲法改正の旗振り役がなくなってしまうではないか」

「さらにだ。安全保障問題に国民の関心を引きつけるためには、ある程度の脅威が必要なのだ。そのためには北朝鮮の怖さをアッピールする必要があるのだが、小泉の馬鹿野郎め、こともあろうに金正日に選挙を手伝わせよった。国民も馬鹿じゃないから、なーんだ、北朝鮮はもう怖くないんだ、ジェンキンズさんだって返しちゃうんだ。あいつらもう日本の経済協力を得るためだったら、何でもしちゃうじゃないか、って気づいてしまった。これではワシも困るではないか」

「ん、でも、北朝鮮がダメなら、中国の脅威を煽るという手もあるな。重慶のサッカーの試合を見てたら、あれでもう日本国内で中国の弁解をする手合いは、朝日新聞も含めて一人もおらんだろう。なにしろ中国には領土問題も含めてネタは豊富にあるからのう。ここはひとつ方針を変更して、日中関係を梃子にして安全保障問題を盛り上げるしかあるまいな。ひとつ明後日の日中決勝戦は、大荒れに荒れて、遺恨試合になってくれないかなあ」

○と、ここまで言って、ご老体は急に消えてしまった。もはや姿も形も見えぬ。さすが、昔は風見鶏と呼ばれた人のことだけはある。


<8月6日>(金)

○夏休みで一時帰国中の「台湾つれづれ」のらくちんさんと会う。ここに出張帰りのhakunamatataさんも加わって、あーでもない、こーでもないと。話題としては、日本と台湾のハイテク産業比較論、日本政治の現況、アジア経済の動向、強くなったぞジーコ・ジャパン、などなどなど。

○アジアカップ。中国全土が反日で染まっているわけではなく、重慶がとくにヒドイ。それはもう、北京でも持て余すような状態とのこと。かといって、反日運動はあっても反米運動が起きないところを見れば、おのずと政府のコントロールが効いていることは疑うべくもないのだけれど。らくちんさんいわく、サッカー選手は試合時間が終われば元に戻れるが、重慶で頑張っている日本人駐在員は、1日8時間ずつ毎日あの環境下で仕事をしなければならない。かといって、反日運動はあっても反米運動が起きないところを見れば、おのずと政府のコントロールが効いていることは疑うべくもない。そりゃあ、大変ですよ、とのこと。御意。

○らくちんさんのお土産は「モソブラソ」。それがどういうものであるかは、他言を慎むことにしよう。でも、しばらく持ち歩いて見せびらかす予定なので、気になる人は直接、かんべえまで。


<8月7日>(土)

○赤坂に戻ってきて2週間。久しぶりに訪ねる懐かしいあの店はいかに。連日のようにお昼メニューを再訪しています。現時点の採点表は以下のとおり。

・赤坂ラーメン 去るもの日々に疎し10円安
・鮨兆のおまぜ 今でも強気な価格帯3円高
・和喜 ここだけはしょっちゅう行ってる変わらず
・天茂のかき揚げ丼 お客が減ったよね2円安
・ハシヤのサラダ・スパ 今でも行列に納得の5円高
・ラ・カンパーニュ オーナーのユニークなキャラが懐かしい3円高
・東京ジョーズ キーライムパイはどこへ行ったの4円安

○こんな日々を送っているために、かんべえは太りつつある。困ったものである。

○カウンターを付け替えました。以前のはNiftyメンバーズのものをずっと使っていたのですが、今月いっぱいでサービスが終わるらしいので、現在使っているCPIというレンタルサーバーの会社のものに変えました。お知らせまで。


<8月8日>(日)

○昨日はアジアカップ日中決戦がしかるべき結果に終わったので今日はいい気分である。「2点差で勝て」と念じつつ見ておりました。1点差だと、後で何かと言われそうなので。案の定、2点目は「神の手」で入れちゃったみたいだが、ロスタイムで入れた3点目が値千金というべきで、まあ、順当な結果というか実力の差だよね、という結果になった。玉田くんは偉い。

○サッカーがナショナリズムの発露の場となるのはいずこも同じですが、今回の中国はさすがに極端でした。それでも、中国サッカーが韓国と同じくらい強くなったときには、今回のようにいちいち日本相手に腹を立てることもなくなるでしょう。中国人プレイヤーが、Jリーグで活躍するようになるのも時間の問題ではないでしょうか。日韓戦も昔はいろいろ感情的なあつれきがあったような気がするが、最近では互いの強さを認め合うようになっているので、比較的冷静に見ていられる。ある程度相手のことを知ったら、腹は立たなくなるものです。

○さて、夜は金美齢さんからのお誘いで、新宿の日台交流サロンで行われる花火鑑賞パーティーに伺う。千客万来でございました。古森義久夫妻が来ておられたので、ボストンの党大会の話などを伺ったのは収穫でした。ついでに神宮外苑の花火は、土曜日にウチの近所の手賀沼でやっていた花火よりも芸が細かいというか、ハイテクであることが分かった。というわけで、花火も台湾料理も結構でございました。


<8月9日>(月)

○この本はちょっと勉強になりました。『アメリカ外交とは何か―歴史の中の自画像』(西崎文子/岩波新書)。

○世界を善と悪に二分し、自由や民主主義を盾に武力行使に走るアメリカ、というのは、今に始まったことではない。例えば米西戦争に勝ってキューバとフィリピンを「帝国主義支配から解放」し、「自由の領域を拡大する」過程は、今日のイラク戦争に重なって見える。当初は共闘していたフィリピンの独立運動の指導者は、最後にはアメリカと戦うことになってしまう。当時、マーク・トウェインはこのことを非難し、「2つのアメリカがあるに違いない」と論じている。

○かんべえは以前、イラクはひょっとすると「反米的な民主主義国」になるんじゃないかと書いたことがある。この本を読んで、ああそうか、イラクはフィリピンのようになるのかなあ、と感じた。すなわち、エリート層は親米、大衆は反米という形に分裂し、何だかんだ言ってアメリカに依存している国ということだ。

○もうひとつ、ウィルソン大統領がメキシコの革命に介入した過程も、今日から考えると示唆に富む。権力を簒奪して政権を奪取した軍人、ウェルタに対し、ウィルソンは追い落としを目指して干渉する。ついには海兵隊を上陸させるのだが、メキシコ国民は自由と民主主義を説く北方の外国人よりも、同胞である軍部指導者の方に同情する。結果として、民主主義の売り込みというアメリカのお節介は、その国のナショナリズムを強くするだけで終わってしまう。

○就任当時のウィルソンは外交には関心が薄く、国内政治に対する価値観と目標をそのまま外交に当てはめようとしたのだという。どこかの誰かさんに、ちょっと似ているではないか。アメリカが善意で他国に武力介入し、現地の人々の心をつかめずに最後は失敗するという例は、実は建国以来何度も繰り返されている。それはモンロー主義以来の米国外交のDNAがそうさせるのだろう。

○本書はリベラル色を強く表に出さないように、注意深く書かれている。それでも冷戦に対する評価として、「レーガンとゴルバチョフの信頼関係が冷戦を終わらせた」とし、「レーガンが軍事力を後ろ盾にして迫ったからではない」と言いたげな辺りは、唖然とするようなナイーブさである。でもまあ、そういう立場で書かれている本であり、「9/11」以後のアメリカに対する違和感が、執筆の動機になっているようだ。

○かんべえの好みから行くと、同じテーマを扱った本としては『銃を持つ民主主義』(松尾文夫/小学館)の方がしっくりいく。本書の終章のように、「9/11」後のアメリカが保守的で危険な方向に走っているからといって、サイードが説く「もう一つのアメリカ」による異議申し立てに期待をかけるという発想は、あんまり現実的ではないし、単なる気休めに過ぎないと思う。

○実も蓋もない言い方をしてしまうと、かんべえはリベラルでマルチ・カルチャリズムのアメリカ、というものをあんまり信用したくないのである。WASP中心のマッチョでピューリタンのアメリカの方が、扱いにくくて疲れるけど、はるかに自然だと思うのだ。


<8月10日>(火)

○今日のご紹介は『通貨を読む』(滝田洋一/日経文庫)です。

○為替について書かれている本は、おそらく9割くらいは「トンデモ本」でしょう。それは「ドルは大暴落する」と断じる恐怖の予言であったり、「円安になればすべて解決する」という政策提言(実体はポジショントーク)であったり、「金本位制が復活する」という巨大な陰謀の解説だったりする。書いている本人もよく分かっておらず、読んでいる人はさらに分からず、でも需要だけはある。それが為替本の世界である。

○たとえばこんな文章を見かけることがある。「アメリカの経常赤字はサステナブルではないのに、基軸通貨国であるがためにドル紙幣を刷ることでファイナンスされてしまう」。――どこが間違っているか分かるでしょうか。輸入をするときは、かならずモノに見合った対価を支払うことで決済されます。でなきゃあ、相手国はモノを売りません。当たり前ですよね。経常赤字というものは、計上された時点でかならずファイナンスされるのです。なにもドル紙幣を印刷する必要はありません。

○この手の変な言説は、エコノミストや為替ディーラーの中でもめずらしくない。まして得体の知れない著者による為替本は、まあ、百発百中のトンデモと断じて間違いないでしょう。世の中には元財務官が書いた為替本もありますが、あいにくこれらは昔の講演の寄せ集めであったりすることが多いので、正確だけれども面白くない。為替に関する本は、最初から需要と供給がかみ合っていないのである。

○そんな中で、この本のマトモさは希少価値といっていいかもしれない。入門書としては申し分ないし、ある程度詳しい人でも頭の中を整理するのには適していると思う。昨今の情勢は言うに及ばず、円ドルレートの90年代の経緯や、ユーロ誕生に至る経緯などもよくまとまっている。読んでいて印象に残るのは、「そういえばクリントン政権時代の日本叩き、中国びいきはひどかったなあ」である。これはまあ、昨今の情勢を考えると、どうしてもそこに関心が行ってしまう。

○本書は、著者特有のサービス精神にも彩られている。前書きで著者は、「落語のように、枕から話し始め、落ちをつける。そんな文章は筆者の理想であり・・・」などと、言わいでものことを書いている。そして「円ドル運命共同体」の話を持ち出すに当たって、「ゴルゴ13」のエピソードから入ってくる。ユーロを語るときは『ローマの休日』から始める。まあ、滝田の文章は書き出しで分かるというのは日経の読者にはお馴染みの事象かもしれない。(そういや、田勢さんも分かるなあ)

○実際、滝田さんと話していると、「含羞と韜晦」が多いのである。それがまた面白いものだから、ついついそっちに引き込まれてしまい、本題がどこにあるのかを見失ってしまうことがある。ジャーナリストとしてはめずらしいタイプかも。本書でも、さりげなく重要な指摘が書かれているようなので、そこだけはお気をつけください。

○ところで本書には「ドル・円・ユーロ・元の行方」という副題がついている。それを見て思い出したのだが、この連載もいずれは本になるんでしょうか。それもちょっと楽しみだったりする。

●円、元、ドル、ユーロの同時代史 http://nikkeibp.jp/jp/report/senior/index04.html 


<8月11日>(水)

○今日から夏休み。ということで、会社には出てません。読書と家族サービスの夏休みになる予定。

○次女Tのポケモン・スタンプラリーに付き合って、松戸駅まで。配偶者がパンフレットをもらってきて、スタンプを4つ集めてくれたので、ゴールの一つである松戸駅に行けば、めでたく賞品がもらえるのである。ところが、賞品と同時にくれるスタンプ帳がクセモノなのだ。首都圏の91駅で置いている各種ポケモンのスタンプが押せるようになっている。地図はここ。ついついこのゲームにはまってしまう。

○さすがに電車賃を使うのはあほらしいので、試しに定期で降りられる新松戸で降りてみた。改札を出ると、手にスタンプ帳を持った親子連れがビックリするほど多い。10冊近く持っているお母さんまでいる。おそらく、手分けして完成を急いでいるのであろう。ここでライコウのスタンプを押す。ホームで下り電車を待ち、今度は北小金駅で降りてみると、さっきと同じ子供たちがエスカレーターを駆け上がっているではないか。あっという間に10人くらいの行列ができる。ニョロモのスタンプをゲット。次なる南柏駅ではまた同じ顔ぶれと一緒に、マリルのスタンプを求めて行列を作る。だんだん本気になってくるではないか。

○このスタンプラリーという企画、JR東日本はもう何年も繰り返しているが、今年はやけに大規模な感じである。JR側としては、やるべきことといったら、午前10時から午後4時の間、各駅でスタンプ台を置くだけのことなのだが、これによる効果は絶大。暇な夏休みの日中に、本当ならば何の用もない親子が、スタンプを集めるためにせっせとJRを利用し、各駅で乗降してくれるのだ。お盆の時期の昼間の電車は、本数も少ないし空席も多い。需要拡大にはもってこいの企画である。

○たとえば山手線の恵比寿駅でピカチュウをゲットしたとする。「だったらピチューも」と思うのが人情(ないしは子供心)で、ピチューがいるのは中央線三鷹駅である。このページを使って計算すると、最短で片道33分、290円かかる。三鷹駅でピチューをゲットしたら、今度は進化形であるライチュウも、と考える。ところがライチュウは東北本線の尾久駅にある。赤羽経由で54分、450円となる。この辺の散らし方が天才的というか、邪悪というか、とにかくお見事である。

○ところでポケモンの生みの親、というよりポケモンの伝道師である小学館の久保雅一氏によると、キャラクター成功の条件とは、@シルエットでそれと分かること、Aひとこと聞いただけで分かること、であるという。@でいうと、ピカチュウのギザギザ尻尾やミッキーマウスの耳、鉄腕アトムの頭の角などが典型である。とにかく、チラッと見ただけでそれと分かるのが成功するキャラクターだという。Aはいわゆる「決めの言葉」で、ピカチュウの「ピカピカ」やウルトラマンの「シュワッチ」などがすぐに思い浮かぶ。ドラえもんも、大山のぶ代の声がなかったら、あれだけの成功は収めなかっただろう。

○これらの条件を政治家の世界に当てはめてみると、あの独特のヘアスタイルを持ち、ワンフレーズを多用する小泉純一郎さんは、見事に成功するキャラクターとしての条件を満たしているといえる。小泉首相の人気には、こんな隠し味があったのですね。民主党の岡田代表も、シルエットだけで分かるような髪形に変えてみてはいかがでしょう。


<8月12日>(木)

○今日も子供と一緒にスタンプラリー。しかしまあ、山手線内などは、ホントにスタンプ帳を手にした親子連ればかりですな。まーったく、何という世界でしょうか。

○そろそろ「不規則発言」で書いておこうかなあ、と思いつつ、ほったらかしになっているネタが溜まっています。自分でも忘れてしまいそうなので、骨子だけを以下に書いておきます。

●岡田民主党代表の「集団的安全保障はいいけど、集団的自衛権は認めない」論。普通の人は理解できないだろうし、プロの人は「こいつ、アホか」と思うでしょうなあ。

――国連憲章は集団的安全保障の実現を目指しつつも、その経過的措置として集団的自衛権を認めているのに、なんでそっちの方は認めないんでしょう。

●少子化現象を嘆いている人たち(なぜか老人が多い)へ。少子化は日本だけではなく、東アジア全体の現象です。なぜか儒教文化が色濃く残っている地域で起きている。これって「年寄りが威張っている社会」に共通している現象じゃないですかねえ。

――ナベツネさんを見ていて、なぜかそう思ってしまった。出生率が反転した北欧などでは、年寄りの引退が早いのではないでしょうか。

●中国経済について。引き締め効果で投資が落ち込むので、個人消費を活発化させたいのだろうけれども、これだけ貧富の差が大きいとそうもいかない。今の中国に求められているのは、所得の再配分というか、1970年代の日本のような「リベラルな経済政策」かもしれませんね。

――参考資料として、これこれを推奨しておきます。それにしても、中国の社会主義はどこへ行ってしまったんでしょう。

●日本経済について。不良債権問題について騒ぎつづけた十数年がついに終わりつつある。すなわち、民間部門の赤字はあらかた政府部門に付け替えられた。これから先の十数年は、財政赤字問題について苦しみ続けることになるのだろうなあ。

――たとえば毎年春になると、「財政赤字問題は峠を越した」と政府要人が発言するけれども、すぐに新たな「隠し借金」が見つかって、国際機関による格付けが下げられて苦労するというように、同じようなことが繰り返されるんだろうなあ。


<8月13日>(金)

QE発表。四半期GDP成長率が0.4%、しかもうち0.3%が外需というのは、そろそろ景気も「お湿り」という感じでしょうか。通関統計を見ている分には、まだまだ輸出は強い数字が出ているのだけれど、今回の景気回復局面はやはり年末あたりで着地点を迎えるのだろうと思います。この夏の暑さと同じで、永遠に続くものではない。どこかで止まる。ちょうど今日、富山に帰ってきているのですが、当地では明日は雨が降るそうです。

○ナベツネさんが巨人のオーナーを辞任。読売グループの会長兼主筆はそのままだそうですが、この欄の8月5日で書いてたような話がシャレにならなくなってきたようです。「たかが野球」で憲法改正がつぶれるというのは、我慢がならんのでしょう。でも78歳なんだから、そろそろ完全引退してこういう境地に達したらいいのに、と思いますけどね。

○そうそう、昨日、書き忘れた話を追加しておこう。

●名ばかりの臨時国会を終えて、与党は一安心、野党も最初からそれを見越して夏は外遊の予定を入れている。あとは年金改正の邪魔にならないように(年金改正法は10月1日施行)、秋の臨時国会は10月1日以降に開幕なんだって。よく出来てるね。

――「三党合意」とはこのことと見つけたり。

●岡田代表の再選にいちゃもんをつけたい小沢一郎。7月末には鳩山、横路、米沢など15人を訪欧ドンチャン騒ぎ外遊に誘っておいて、仕込みは十分ということか。

――経世会の体質がそのまんまですな。

○どうも最近は口が悪くなっていけない。別に不幸な夏休みを過ごしているわけではないのですが。そうそう、ひとつばらしてしまえ。昨日の新聞に出た↓の件は、この人の仕事です。


■木村剛氏編集新ビジネス誌 月内に準備号無料配布

 金融界の論客として知られる金融コンサルタント会社、KFi社長の木村剛氏が責
任編集するビジネス・投資の月刊誌「フィナンシャル ジャパン」が十月二十一日創
刊される。創刊準備号を八月中旬から都内主要書店などで無料配布する。

 経営幹部や投資家、富裕層を対象に、経営・投資・ライフスタイル情報を満載。既
存のマネー雑誌に飽き足らない読者向けに実践的な資産運用術も提案する。「一流と
は何か」を知る大人のために豊かな人生、本物の生き方を追求する記事を掲載すると
いう。A4判千円。木村氏が社長を務めるナレッジフォア社(東京都千代田区)が出
版、五万部の発行を予定している。

 木村氏は、竹中平蔵金融・経済財政担当相が「金融再生プログラム」を策定する際
に協力した金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームのメンバー。インターネットの
サイト「週刊! 木村剛」での情報発信に力を入れており、そこから「月刊! 木村
剛」といった定期刊行物も誕生させている。


<8月14日>(土)

○親戚の子供たちの会話から。

Boy A 「1たす1は?」
Boy B 「2」
Boy A 「じゃあ2たす2は?」
Boy B 「4」
Boy A 「4たす4は?」
Boy B 「8」
Boy A 「8たす8は?」
Boy B 「16」
Boy A 「16たす16は?」
Boy B 「32」

(どなたも覚えがあると思うが、この辺りから両者は白熱してくる)

Boy A 「32たす32は?」
Boy B 「64」
Boy A 「64たす64は?」
Boy B 「128」
Boy A 「128たす128は?」
Boy B 「256」
Boy A 「256たす256は?」
Boy B 「512」
Boy A 「512たす512は?」
Boy B 「1024」
Boy A 「1024ひく1024は?」
Boy B 「2048!」
Boy A 「ブッブー。ひく、って言ったでしょ」

○面白いこと考えるなあ、と思いつつ、おじさんは知らん顔していたのであった。


<8月15日>(日)

○昨晩は雨が降ったので、一気に涼しくなりました。今日の富山県は冷房がほとんど不要な気候。昨日までの暑さが嘘のようです。

○学生時代に、夏休みにデパートでアルバイトをしていたことがあります。お盆を過ぎると急速に客足が減っていくのは見事なものでした。その時期になると、アルバイトの残り日数も少なくなり、なんとなく寂しい雰囲気が流れ始める。デパート側としては、景気付けにセールを始めたりするわけですが、売上の落ち込みははっきりと見て取れます。まあ、それが毎年夏のお約束というもので、ある一点を過ぎると物事はそれまでの過熱が嘘のように、逆向きのトレンドになってしまうことがめずらしくない。この夏もいろんなことで、ターニングポイントになるのではないでしょうか。

○まずは景気の行方。以前から何度も繰り返している話ですが、「日本がスポーツで頑張ると、景気は下降する」というジンクスがある。

●正反対の動きをする経済とスポーツ?

  スポーツの出来事 経済の出来事
1993年9月 ドーハの悲劇。イラク戦、ロスタイムに同点にされ、オフト・ジャパンはW杯アメリカ大会進出を逃す。(X) バブル後の景気落ち込みが底打ちし、緩やかな景気回復が始まる。(○)
1996年8月 アトランタ五輪。大選手団を派遣するも、金メダルわずかに3個。(X) この年、90年代で最高の成長率を達成。(○)
1997年11月 ジョホールバルでのイラン戦、岡田ジャパンは延長Vゴールで勝利。フランス大会進出を決める(○) その翌日に北海道拓殖銀行が破綻。この月、山一證券も自主廃業に。金融不安は頂点に達する(X)
1998年2月 長野冬季五輪で、日本勢大健闘。金メダル5個。スキージャンプの逆転劇に日本中が感動。(○) 景気の急速の悪化に対して橋本政権が迷走。米国の外圧と株安に背中を押され、公的資金の投入を決める。(X)
1998年6月 W杯フランス大会に初出場も、0勝3敗、得点1、失点4で終る。ジャマイカ戦で中山が唯一のゴールを果たす。(X) 長銀の経営不安説が急浮上。この後、参院選で自民大敗、小渕政権誕生、金融国会へと世の中の動きは急展開。(△)
2000年9月 シドニー五輪。高橋尚子など、日本勢大活躍。(○) 米国経済の減速、ITバブルの崩壊などで日本経済は下降局面へ。(X)
2002年2月 ソルトレークシティ冬季五輪。日本勢は不振でメダルは銀1、銅1に終る。(X) 米国景気の回復、円安などの効果で景気は底打ち。(○)
2002年6月 日韓共催W杯。トルシエ・ジャパンは悲願の予選突破。が、決勝トーナメントは初戦で敗退。(△) ようやく始まった景気回復も、地政学的リスクと「竹中ショック」で視界不良に。(△)
2004年8月 アテネ五輪。金メダル量産が期待されている。 株価の下落、GDP統計の減速など、景気反転の予感が・・・・


○アテネ五輪で頑張りすぎると、この夏が景気のピークだったということになるのかも。

○もうひとつ、今日のギャラップのページを見ると、アメリカ人の関心事はオリンピックに向かっており、好きな競技としては水泳、陸上、体操などが挙げられています。この先2週間、国民の関心はそっちの方へ動く。その陰で、ひっそりとブッシュの支持率が51%に戻っていたりする。ブッシュ対ケリーの支持率調査も、50%対47%になっている。スポーツの祭典は「水入り」の効果をもたらすのかもしれません。


<8月16日>(月)

○アテネ五輪が開幕したのは土曜日だったのに、週が明けたらもう金4つ、なんてこんなことって今までにあったでしょうか。この調子で日本人選手の活躍が続くと、これはもう、「景気なんてどうなってもいい」ってことですよね。うん、そうだそうだ。たとえば年末から景気が後退局面に入ったとしても、次の不況期はそれほど長くはないだろう。メガバンクの再編も進んでいるから、金融不安もなさそうだし。この際、とことんメダルを取ってもらおうじゃありませんか。

○北島の「チョー気持ちいい〜」は良かったですね。あれを聞いて、シドニー五輪での田島選手の「金がいいですぅ」を思い出しました。若い者はあれでなきゃ。もっともっと気持ちのいい思いをしてほしいと思います。どうでもいい話ですが、ナベツネさんの「たかが選手」発言は、雪印社長の「私は寝てないんだ」発言に比すべき必殺自爆コメントでしたね。あれに比べれば「人生いろいろ」などは、いろんな解釈の余地があってまだしもカワイイもんです。

○ところで4年前のシドニーオリンピックのときに、こんなものを書いておりました。今読み返すと結構、面白い。4年前のスポーツ事情をいろいろ思い出しました。

● http://tameike.net/writing/dialogue3.htm 

○今夜もきっと起きていられないと思うけど、体操男子団体の健闘を祈るとしよう。さあ、頑張れニッポン!

●NHKアテネ五輪オンライン http://www3.nhk.or.jp/olympic/ (私は「選挙とスポーツ報道はNHKに限る!」という主義者である)


<8月17日>(火)

○いやあ、本当に男子体操が金メダルを取っちゃうんだから驚きました。団体で金ということは、この後の個人部門でもメダルが期待できそうですね。かんべえは、塚原父が初めてムーンサルトを披露したときの衝撃を記憶している世代ですが、これだけ長らく凋落していた体操ニッポンが、復活するという現象に素直な感動を覚えます。

○今回、なぜ日本が勝てたかを考えてみると、例の「6−3−3」制の導入がプラスに働いたように思います。以前は「6−5−4」制で、「6人のうち5人がプレーし、上位4人分の成績を加算する」システムだった。これだと、誰か1人が失敗してもカウントされない。例えば最後の鉄棒で、首位を走っていたルーマニアの選手が落っこちて金を逃したけれども、旧ルールのままであればあれはノーカウントだったはずである。

○それが今年は、「6人のうち3人がプレーし、3人全員の成績を加算する」ことになった。誰か1人でもコケると、テキメンに勝利は遠のいてしまう。このルール、とっても日本人に向いていると思うのだ。鉄棒でルーマニアが失速した後、アメリカ勢が揃って高得点を挙げ、プレッシャーのかかる局面、日本勢は3選手が揃ってきっちり決めた。最後に冨田の演技が終わった瞬間、点数が出る前に日本勢は沸き立ち、アメリカ勢は「ああ、しょうがないな」と負けを認めているように見えた。

○日本には駅伝という独特な競技があって、いつも不思議な人気を誇っている。「誰か一人でもしくじると、チーム全体が迷惑する」というところに、日本人の集団主義の血が騒ぐのだろう。毎年、正月に行われる大学駅伝はまことに過酷なレースで、各ランナーがつなぐ襷の重さがほとんど気の毒なほどに思えるが、ついつい見てしまうんだなあ。「赤穂の四十七士」の昔から、「プロジェクトX」の今日に至るまで、日本人が好むのは「努力と友情と勝利」の物語である。

○昔は、この集団の重みにつぶれる選手が少なくなかった。「円谷はもう走れません」(1968年)なんて、今では覚えている人も少ないだろうなあ。最近の若い選手は、その辺がもうちょっとリラックスしていて、ノルディック団体複合の荻原兄弟や、ジャンプ団体の原田、船木など、ずいぶんサバサバとしているようだ。体操ニッポンの若手たちも、実に屈託なく見えた。いいね。

○ここ20年ほど、夏季五輪というと日本は柔道が終わってしまうと、後はマラソンまで楽しみがないというパターンが続いていた。今年は柔道と水泳と体操で稼ぎ(まだ井上康生クンがいるぞ)、まだ野球あり、レスリングあり、陸上あり、卓球ありと楽しみがたくさん残っている。この調子で、フレッシュな日本人の姿をもっと見せてくれ。


<8月18日>(水)

○2ちゃんねるの「議員・選挙」板にこんなスレが立っています。

●アテネ日本の獲得議席を予想する http://society3.2ch.net/test/read.cgi/giin/1089358164/ 

○この方式で行くと、6個目の金メダルはこんな風に表現される。

当  谷本歩実  新@ (日本党 新人)

谷本候補は初出馬ながら安定した選挙戦で、各地域で相手候補を圧倒
引退した古賀前代議士に師事し着実に実力をつけたのが功を奏した。
日本党はこれで改選議席を上回る6議席を確保、二桁を伺う勢い。


日本党当選者一覧 獲得6議席 開票率20%

谷   亮子 現 A
野村 忠宏 現 B
内柴 正人 新 @
北島 康介 新 @
男子体操  元 E
谷本 歩実 新 @


○日本党、ぜひ2桁議席を目指してもらいたいと思います。柔道選挙区では党首の井上康生(現)、女子レスリング選挙区では党幹事長の浜口京子(新)が未開票。男子体操は比例代表(団体)だけでなく、小選挙区(個人)でも2つくらい行けそうだし、長嶋ジャパンという楽しみもございます。

○などと遊び呆けているかんべえ、明日からは出社いたします。(9:54)

XXXXXXXXXXXXXXX

○えー、今日は『華氏911』(FAHRENHEIT 9/11)を見てまいりました。夏休み最後の一日を使うほどのことはないと思うのですが、見ておかないとこの先いろいろ差し支えるだろうなあ、ということで。ただ今、この映画は恵比寿ガーデンシネマで上映中。ひょっとしたら満員御礼で入れないんじゃないかと怖れたけれど、なんのことはない、10時に家を出て、11時半に到着したら、12時半からの回に悠々間に合いました。

○映画の内容は、だいたい予想通りでありました。マイケル・ムーア自身が語るナレーションは、細かい嘘と誇張が多いのですぐに嫌気がさしましたが、民主党支持者が見れば、フロリダ再集計を振り返る冒頭部分から、後半のイラク戦争に傷つく米国市民の表情まで、大いに鬱憤が晴らせるのではないかと思います。まあムーアもプロですから、露骨に観客を騙しているわけではない。でも上手に誘導している。「デマゴーグ」と呼ぶほどではないけれども、反ブッシュの「プロパガンダ」といったところでしょう。

○この映画の嘘をいちいち指摘するのは疲れるので、「ケリー候補がこの映画については一切コメントしていない」(たとえば「ブッシュ大統領に是非見てほしい」といったことも含めて)とだけ言っておきましょう。確かにこの映画は「ブッシュを落選させよう」という明確な意図のもとに作られているけれども、ケリーがそれを自分のために利用するのが憚られるようなところがある。ブッシュ家がビンラディン一族と特別な関係があるから、特別の計らいで9/11後のアメリカから脱出させた、だなんて、ンなわきゃないでしょうが。

○9/11に関する陰謀史観を展開する前半はさておいて、普通のアメリカ人を多く登場させる後半は面白い。特にムーアの故郷であるミシガン州フリントの若者たち(ほとんどが黒人)に「就職できないから軍隊に行く」と語らせたり、彼らをリクルートする海兵隊員たちの手練手管を撮ったあたりは技能賞といえる。ワシントンの議員たちに向かって、「子供を軍隊に入れさせろ」と絡むシーンなども、ムーアの怒りを率直に表している。

○でも、これは筆者がスレッカラシだからなんだろうけれど、最後の方は「愛の貧乏脱出作戦」のように思えてきた。「お、このシーンは何度も撮り直ししたんだろうな」とか、「この人、素人じゃなくて俳優じゃないのかな」などと見えてくるのである。ムーア自身は確信犯だから、「権力の大きな嘘を暴くためには、メディアの小さな嘘は許される」と思っているのだろう。でも、メディア・リタラシーの高い人たちには通用しない映画であると言っておこう。ムーアの怒りはよく分かるけど、「憤兵は敗る」というやつだ。

○同じようにイラク戦争を批判するのであれば、『攻撃計画』(ボブ・ウッドワード)は良心的なジャーナリズムだと思う。雑誌向けの書評を書いたばかりなんだけど、さすがにこっちは信用できる。ダグラス・ファイスが上司のラムズフェルドを称して、「自分の持っている工具がハンマーしかないと、問題がすべて釘に見えてしまう」と喝破したのは含蓄のある指摘だと思う。ブッシュは天下無敵の米軍という素敵なハンマーを持っていたがために、9/11後にアフガンで勝利した余勢を駆って、ついついイラクという釘を打ってしまった。イラク戦争の理由を石油ビジネスに求めるよりも、そっちの方がはるかに現実らしいと思うのだ。

XXXXXXXXXXXXXXXX

○さて、五輪モードに戻って、今夜のためにお祈りをしておきましょう。

北島こうすけ 北島こうすけ でございます。
泳ぐ都電荒川線、蘇る河童伝説、
北島こうすけ 北島こうすけ でございます。
平成のど根性ガエル、200でも頑張ってまいります。
北島こうすけ でございます。

○行くぞ、7議席目。そこのけそこのけ、北島の出番だあ。(18:26)

XXXXXXXXXXXXXXXX

○北島こうすけに熱いご声援をありがとうございました。強い。まったく強い。一人で2選挙区制覇は水泳選挙区初の快挙であります。

当当 北島康介 現 A (日本党)

日本党北島会派から二議席目、日本党として8議席目の議席確定
出口予想通りの圧勝。


○柔道では上野の金、泉の銀、これでもう8議席であります。日本党、まだまだ有力候補者が勢揃いであります。一層のご声援をお願い申し上げます。(1:43)


<8月19日>(木)

○日本党の9議席目を決めたのは、意外や意外、井上康生党首ではなく、3度目の正直で花を咲かせた阿武教子でした。戦前の票読みでは、「井上、浜口でとりあえず2議席。北島も1議席はいけそうだけど、後は何議席上積みできるか」という感じだったので、これはホントに驚きました。井上、あんなに真面目で良さそうな男なのに、納得のいかない負け方で惜しいと思います。それでもまあ、これが勝負というものなのでしょう。死角は見えないところにある。それでも絶好調の柔道会派、とうとう6議席目。

○銀メダルを取ったアーチェリーの山本、受賞の瞬間がなんて楽しそうなんでしょう。弓を引き絞ったときの仏頂面と、エライ違いです。5回目の挑戦だったのですね。アーチェリーはかんべえが大学時代の体育の授業で選択していたことと、配偶者が大学の体育会でやっていたことで、とっても身近に感じられる種目です。あれはホントに精神力の競技だと思います。山本選手、本当にお疲れさまです。

○ううっ、連夜の夜更かしと猛暑で、身体はキツイんだけれども、これから水泳も見てしまいそう。困った。


<8月20日>(金)

NYの梅本さんと「五輪世代」について意見交換しています。今回のアテネ五輪では、1980年前後生まれの活躍が目立つ。彼らはちょっと今までの日本人アスリートとは違うような感じがする。彼らの強さの秘密は何だろう、というのがかんべえの関心事です。

○この手の世代論については、三浦展さんが詳しい。このコラムによると、「第2次ベビーブーム世代」(71〜74年生まれ)と「団塊ジュニア」(74年〜79年生まれ)を峻別した方がいいらしい。前者はもう30代になっているので、五輪はベテランで、そろそろ疲れが見える年代。後者は20代後半なので、いよいよ結果を出さなければならない年代。そして今回、かんべえが「五輪世代」と呼びたいのは、それよりも若くて、今回初めて五輪に挑戦するような連中。つまり1980年以後生まれの「ポスト団塊ジュニア世代」だ。

○今回の中心選手を、年代別にバッサリ分けてみよう。球技などはこの際、無視することにして、メダリストと注目選手のみを適当に書き出しました。データは下記を参照しました。

●日本選手団紹介 http://www3.nhk.or.jp/olympic/jatl/jatl_top.html 


(おじさん世代)

山本  博 1962年10月31日(アーチェリー・銀)

(第二次ベビーブーマー世代)

岡本 依子 1971年9月6日(テコンドー)
室伏 広治 1974年10月8日(陸上・金)
野村 忠宏 1974年12月10日(柔道・金)
立花 美哉 1974年12月12日(シンクロ・銀)

(団塊ジュニア世代)

田南部 力  1975年4月20日(レスリング・銅)
杉山   愛  1975年 7月 5日(テニス)
轟賢 二郎  1975年 9月 1日(セーリング・銅)
関   一人  1975年 9月11日(セーリング・銅)
谷(田村)亮子  1975年 9月 5日(柔道・金)
伏見 俊昭  1976年 2月 4日(自転車・銀)
阿武 教子  1976年 5月23日(柔道・金)
武田 美保  1976年 9月13日(シンクロ・銀)
井上 謙二  1976年11月 5日(レスリング・銅)
浜口 京子  1977年 1月11日(レスリング・銅)
塚原 直也  1977年 6月25日(体操)
米田   功  1977年 8月20日(体操団体・金/鉄棒・銅)
井上 康生  1978年 5月15日(柔道)
内柴 正人  1978年 6月17日(柔道・金)
野口みずき 1978年 7月 3日(マラソン・金)
山本 貴司  1978年 7月23日(水泳・銀銅*)
長塚 智広  1978年11月28日(自転車・銀)
上野 雅美  1979年 1月17日(柔道・金)
井上 昌己  1979年 7月25日(自転車・銀)

(ポスト団塊ジュニア世代)

末次 慎吾  1980年 6月 2日(陸上)
鈴木 桂治  1980年 6月 3日(柔道・金)
鹿島 丈博  1980年 7月16日(体操団体・金/鞍馬・銅)
水鳥 寿思  1980年 7月22日(体操)
横澤 由貴  1980年10月29日(柔道・銀)
冨田 洋之  1980年11月21日(体操団体・金/平行棒・銀)
中西 悠子  1981年 4月24日(水泳・銅)
谷本 歩実  1981年 8月 4日(柔道・金)
伊調 千春  1981年10月 6日(レスリング・銀)
塚田 真希  1982年 2月 5日(柔道・金)
柴田 亜衣  1982年 5月14日(水泳・金)
中村 礼子  1982年 5月17日(水泳・銅)
泉   浩   1982年 6月22日(柔道・銀)
北島 康介  1982年 9月22日(水泳・金金銅*)
吉田沙保里 1982年10月 5日(レスリング・金)
奥村 幸大  1983年 5月 9日(水泳・銅*)
伊調  馨   1984年 6月13日(レスリング・金)
森田 智己  1984年 8月22日(水泳・銅銅*)
福原  愛   1988年11月 1日(卓球)

*水泳の銅はメドレーリレー

○こんな風に切り分けると、「五輪世代」=ポスト団塊ジュニアの性格がちょっと際立って見えませんか?日本人アスリートの主力はたしかに団塊ジュニア世代なのだけれど、あっけらかんと好成績を上げているのはその下の世代なのだ。おそらく団塊ジュニア世代までは、従来型の日本人アスリートの範疇にあるけれども、彼らはちょっと新しいと思う。たとえば以下のような点。

組織や過去の重圧を感じていない。――水泳の北島は、「チーム北島」を背中にして戦っているはずなのだが、勝ってホッとした、ではなくて「チョー気持ちいい」である。すがすがしいくらいに「自己チュー」なのだ。伊藤みどりが「銀でゴメンナサイ」と言ったことなど、彼らには想像を絶したことではないだろうか(1992年、アルベールビル)。

自分に対する応援を、素直に自分のモチベーションに転化している。――男子体操の団体は、最後の鉄棒になるまでは非常にリラックスして見えた。プレッシャーに弱い日本人アスリート、という過去のパターンは微塵もない。逆に応援を受けることを非常に喜ぶ。メダルを取った第一声は「応援ありがとうございました」が多い。

二世や家族ぐるみが多く、小さい頃からスポーツに取り組んでいる。――室伏、塚原、浜口など「親の業」を受け継いでいる選手もあるけれど、押しなべてそういうことに対して迷いや抵抗がないように見える。

勝ちにこだわる姿勢にためらいがない。――福原愛が1ポイント取るたび、「タァーッ!」と奇声を発するのにビックリしました。ベテラン世代よりも集中力の面で優れているようだ。かつて将棋界では、羽生などの若手棋士が台頭してきたときに、ベテラン勢は「勝負に辛い」と嘆いたものだが、勝負の世界なんだから「綺麗に勝とう」などと考えない方が強いのは自明である。

○どこでこんな違いが生じたのか。1970年代生まれが「生まれたときから日本が豊かだった」としたら、1980年代生まれは「物心ついたときには日本は下り坂だった」世代である。組織や過去の栄光が当てにならないことは身に沁みている。信じるものは自分だけだ。この点、右肩上がりの時代を知っている1960年代生まれの「おじさん世代」は甘い。

○それにしても日本の快進撃の一方で、国別のメダルランキングで、ドイツが金4個、ロシアが3個というのはどういうことでしょう。かつての五輪といえば、1位ソ連、2位東ドイツなんてことがめずらしくはなかったのに。これらの国においても、別の事情による「世代論」があるのかもしれません。(23:11)

●国別メダルランキング http://www3.nhk.or.jp/olympic/mdls/rank.html 

○と、これを書いているうちに塚田と鈴木が金メダルを2個追加。両方とも80年代生まれですぞ。(23:24)


<8月21日>(土)

○ええー? 水泳自由形800メートルでも金ですって? 200メートル背泳ぎでも銅。ということで上の表に、1982年生まれの柴田、中村の2人を追加。下の欄に生年月日を入れてくれれば楽なのに・・・

●日本のメダリスト http://www3.nhk.or.jp/olympic/mdls/jmdls.html 

○繰り返しますが、かんべえの仮説は、「1980年辺りで、アスリートの意識に断層があるのではないか」ということ。それ以前は、まだまだ国家意識を背負っていたり、旧式な精神主義の残滓があるように見える。だから五輪の成績も伸びなかった。ところが昨日の鈴木桂治(1980年生)なんかは、勝利後のインタビューで「(ロサンゼルス五輪で金の)斎藤先生の後に続けたのは良かった」などと殊勝なことを言った後に、「イェ〜イ、勝っちゃった」だものね。山下泰裕の頃は、そもそも柔道選手は笑ってはイケナイ、ってな感じだったのですが。

○かんべえやこの人のように、1960年前後の世代には強いアスリートがいないんです。それが第二次ベビーブーマー世代になると、伊達公子(1970年生)、イチロー(1973年生)、松井秀喜(1974年生)、貴乃花(1974年生)、田村亮子(1975年生)といった際立った個性が登場するようになる。ただし、彼らの自己主張というのは、今から考えれば可愛らしい程度のものであって、日本スポーツ界の伝統に異議申し立てをしたわけではなかった。

○もうちょっと下の世代になって、中田英寿(1977年生)、松坂大輔(1980年生)、北島康介(1982年生)辺りになると、これはもう明らかに従来の枠組みでは収まりきらなくなってくる。日本スポーツ界の、何事かが変わりつつあるのだと思う。アテネ五輪における快進撃は、彼らの「ノリ」に負うところが多いと思うのだ。

○と、このように、五輪の世代論を延々と展開しているのは、今のかんべえが暇であるからにほかならない。五輪が終われば、共和党大会が始まるのである。というわけで、今のうちだけなんだけれど、「ポスト団塊ジュニア世代の底力」みたいなコラムをどっかで書いてみたいのだけど、日経金融新聞の「視点論点」じゃ、さすがにマズイだろうなあ・・・・。


<8月22日>(日)

○昨夜はめずらしくも(?)、アテネで君が代が聞かれない日だったようです。それでも自転車チームスプリントやら、セーリング男子470級など、聞いたこともない競技で、銀や銅がざっくざく取れてしまう日本勢。もう面倒くさいので、8月20日分に書いた「生年月日一覧表」を書き足す気にもなりません。でも、奥村幸大君だけは加筆しておこう。男子水泳メドレーの銅メダル、おめでとう。

○オーストラリアが予選でイアン・ソープを温存して、まさかの予選落ち。(馬鹿だねえ) 運良く決勝に進んだ日本チームは、下記のような陣容であった。

@背泳ぎ:森田智己(銅メダル)1984生
A平泳ぎ:北島康介(金メダル)1982生
Bバタフライ:山本貴司(銀メダル)1978生
C自由形:奥村幸大(予選落ち)1983生

○別に奥村が悪いのではない。日本人で、自由形で彼を超えられる者はいないのだから。日本人の体型が悪いのか、あるいは指導方法が悪いのか、とにかく世界のレベルから見ると、日本水泳は自由形のみが格落ちなのである。で、彼がアンカー。状況から考えて、非常に高い確率で、トップクラスでバトンが渡される。責任は重大。冗談じゃねえや、と言いたいところかもしれない。結果は下記のとおり。

     背   平   バタ  自   計
(1)米 53.45 59.37 50.28 47.58 3:30.68
(2)独 54.26 60.50 51.40 47.46 3:33.62
(3)日 54.25 59.35 51.87 49.75 3:35.22
(4)露 55.15 61.00 51.74 48.02 3:35.91
(5)仏 55.74 60.07 52.22 48.54 3:36.57
(6)ウク 56.19 60.99 50.80 48.89 3:36.87
(7)ハン 54.89 60.25 53.32 49.00 3:37.46
(8)英 55.69 60.30 52.64 49.14 3:37.77

○自由形の成績だけを比べると、奥村の49.75秒は威張れた記録ではない。ここだけ比べると8位、つまりラスである。でも、これは彼が予選落ちしたときの記録(50.06)を上回っている。おそらく日本新だと思う。彼は土壇場でベストの成績を残し、わずかな差でロシアをかわして3位に食い込んだ。重圧に耐えて、アンカーとしての仕事を立派に果たしたのである。

○そんなわけで、奥村君はメダリストになった。おめでとう。

○今回の日本勢の活躍は、柔道や水泳などの個人競技が多く、球技などの団体競技は今ひとつである。この辺がポスト団塊ジュニア世代の「個の強さ」の表れだと思うのだが、彼らの中でも「努力と友情と勝利」の物語は健在のようだ。

○さて、今宵の女子マラソン。世代論で行くと、こういう分布になります。

(第2次ベビーブーマー世代)

高橋尚子 1972年5月6日生=今大会不参加

(団塊ジュニア世代)

土佐礼子 1976年6月11日生
野口みずき 1978年7月3日生

(ポスト団塊ジュニア世代)

坂本直子 1980年11月14日生

○理論から行くと、坂本直子に勝機あり、となります。さて、どうなるでしょう。(12:07)

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

○終日、いろんなスポーツを見てしまう日曜日である。

○祝、駒沢苫小牧優勝。優勝旗は一気に津軽海峡を越えた。この勝利、日ハムの札幌移転と無関係ではないと思う。新庄のプレーと派手な言動が、北海道の高校生たちに勇気を与えた、というのは考え過ぎか。

○五輪サッカーのイラク対豪州戦。地力では豪州が上回っていたが、あれだけチャンスを無駄にしてはいけません。あっと驚くオーバーヘッドキックが一発決まって、イラクがベスト4進出。ここの情報によれば、ブッシュ大統領がアテネにイラクの応援に駆けつけることを検討中とか。

○夕方からは女子バレー(対ケニア)、ソフトボール(対中国)、女子レスリング、それに野球(対ギリシャ)。ううむ、いったいどれを応援すれば良いのか・・・・。それにしても、こんな日に「24時間テレビ」をやっている日本テレビは大馬鹿者ですな。

○これで今夜は女子マラソン、体操種目別決勝に男子ハンマー投げですか。また夜更かししてしまいそう。今宵は「君が代」ありと信じたい。(17:48)

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

○野口だよ。野口みずきだよ。ホントに信じられん。こんなに金メダルが続いていいんでしょうか。す、すごい・・・(2:29)


<8月23日>(月)

○喜怒哀楽の激しい夜と朝が続きます。昨夜は野口みずきのマラソン金メダルに驚き、今朝は室伏のハンマー投げ銀メダルの報にちょっと残念な思いがしました。そして会社から帰ってみたら、浜口京子が準決勝で負けていた。うーん、残念。アニマルお父さんの失望はいかばかりか。井上康生もそうですが、やはり重責を背負うと競技に影響が出るみたいです。これでは北京五輪では、主将も旗手も引き受け手がいなくなるんじゃないかと心配です。

○アテネ五輪の快進撃について、これまではもっぱら世代論で説明を試みてきましたが、もっと単純な理由があって、「JOCが頑張った」ということが大きいようです。JOCは、アテネ五輪のためにこんな戦略を考えていた、というのが下記のURLで読めます。

http://www.joc.or.jp/stories/specialinterview/20040401fukuda.html 

○2月26日に行われたインタビューですが、福田選手強化本部長が実に正確な見通しをしていることに驚かされます。そして01年4月に完成した「JOCゴールドプラン」が少なからぬ効果をあげている、というのは初めて知りました。このプランによると、アテネ大会におけるメダル目標数は25個。本稿執筆時点で、金13、銀6、銅7と合わせて26個ですから、すでに目標はクリアされている。北京は当然、その上を目指すことになります。

○政府の特別予算「日本復活プロジェクト助成金」が役立った、というのは面白い。将来的には、トレーニング施設の整備にも予算がついているようです。厳しい財政事情の折から、公共投資などの削減が続いている中で、スポーツへの補助金が増えていたというのは驚きです。察するにアトランタ五輪(1996年)の際の、数百人の大選手団を送り込んで金メダル3個という結果が、「いくらなんでもこりゃヒドイ」ということになったのではありますまいか。

○「スポーツ振興などに税金を使うのはいかがなものか」という議論は確かにあるでしょう。他方、日本のアスリートたちが、一部の例外を除けば、そんなに恵まれているようには見えないのも事実です。日本という国は、スポーツで国威高揚を図らねばならないような国ではありませんが、ここで述べられているような努力は、税金の使い道として十分に理解を得られる性質のものではないかと思います。

○後もう一つ、アテネ大会では日本は明らかにツイている。プールの水がぬるめだったのが有利だったとか、柔道の審判が正確だった(これは2000年の篠原選手の誤審が一因)とか、マラソンのコースがあまりに過酷でスローペースになったのが日本選手を利したとか。そして序盤のメダルラッシュが日本チーム全体に勢いをつけている。五輪も勝負事ですから、運を軽んじてはいけません。この勢いを大事に最終日まで維持してほしいものだと思います。


<8月24日>(火)

○連日のように、アテネからは金銀銅がざっくざく、というニュースが届きます。今朝の女子レスリングなんて、4階級で金金銀銅ですよ。「惜しい」という気持ちも少しはあるけれど、仮にこれが「フォーナイン」(純金)であったりしたら、「こんなにひとつの国だけが勝つのなら、この種目、次回から止めましょう」みたいな話が出そうで怖い。それにしても、女子柔道も女子レスリングもなかった時代の東京五輪の金メダル16とは、なんと偉大な記録だったのでしょうか。

○ふだんは地味な日経の朝刊が、毎朝カラー写真とともに一面でメダルの速報を伝え続けてもう何日目か。明日の朝は久しぶりに、メダルの興奮がない静かな朝になりそうです。当欄の8月20日分に掲載した、日本人主要選手の生年月日一覧表を書き足しました。引用してくれている人が多いようなので、とりあえず個人のメダリストは全部入れてあります。今後も順次、追加する予定。

○野球の敗戦は残念でした。豪州はそんなに強いとは思えないのに、また負けちゃいましたね。個人的には、ウィリアムズが出てきたところであきらめました。もちろん打てればいいのだが、彼もわがタイガースの主力選手である。藤本が打つのならいいが(凡退しやがって!)、高橋由ごときに易々と打たれてもらっては困るのである。この辺り、我ながらまったく倒錯している。今から考えてみると、日本チームには右の代打が手薄だった。こんなことなら、阪神は今岡か八木を出しておけば良かったのかも・・・。

○負けるべくして負けた、という気もする。そもそも、長嶋本人がいないのに長嶋ジャパンとはこれいかに。大将抜きでいくさに勝とうというのが、根本的な間違いだったのではないか。あのメンバーに対し、中畑が采配を振るえるわけがないのである。彼だって自分が将たる器でないことは知っている。中村ノリにバントのサインを出せたのがいい度胸で、調子の悪い谷を引っ込めるとか、大胆な勝ちにこだわる選手起用は望むべくもなかった。そして、そんな横綱相撲が通じるほど、五輪の舞台は甘くない。

○と、書いているうちにだんだん腹が立ってきたのだけれど、またも松坂を負け投手にしてしまったのが口惜しい。彼はシドニーでも無念の涙をのんだ。おい、日本のプロ野球というのは、本当にこの程度なのか。あれを見た駒大苫小牧の選手たちが何と思っていることか。

○これでまた、「日本のプロ野球、どうする、どうなる?」という議論に火がつくでしょう。及ばずながら、かんべえも口を出していきたいと思っております。来週、こんな催しがありますので、参加希望の方はこのページの下の方からお申し込みください。


●第139回虎ノ門DOJO

日 時:8月30日(月)12:30〜13:45
場 所:日本財団ビル (〒107-0052 東京都港区赤坂1−2−2 特許庁向い、JTビル隣)
テーマ:「これ以外に道はない、日本のプロ野球」
報告者:小林 至(江戸川大学助教授、元プロ野球選手)、吉崎達彦(双日総合研究所副所長)
参加費:無料


<8月25日>(水)

球場の観客席の一角を区切っただけの放送席は暑かった。アテネの太陽は容赦なく降り注ぎ、じっとしているだけで肌の上に玉のような汗が浮かび上がった。いつも冷房の効いた放送席に慣れているNHKのアナウンサーは、自分が写らないのをいいことに、上半身裸のままでマイクに向かっていた。

「どうです、星野さん。長嶋ジャパン、ラッキーセブンの攻撃に期待したいところですが」

解説の星野仙一は、といえば、もう少しマシな格好である。なにしろつい去年まで、すり鉢型の甲子園球場ベンチの暑さを味わっていたからだ。しかし星野の額にも汗が浮かんでいる。ただその汗は、アテネの太陽だけが理由ではない。口先では適当なことを言ってアナウンサーをかわしながら、頭の中を駆け巡っているのは、さっきからひとつのことだけだ。戦況は1−0。予選で唯一の負けを喫している豪州を相手に、何ともいえない焦燥感が日本側ベンチを包んでいることが放送席からも見て取れた。まずい。このままでは負ける。

7回裏の長嶋ジャパンの攻撃も、淡白な打撃で簡単にツーアウト。しかしここで豪州側にエラーが2つ続く。ランナーは1塁3塁。おあつらえむきの舞台が整った。案の上、ここで豪州側のベンチが動く。

「ピッチャー、オクスプリングに代えてウィリアムズ」

長嶋ジャパンにとっては、勝手知ったる、そしてゲンの悪い相手の登場だ。星野がその力量を見込んで、阪神タイガースに連れてきた押さえのエースである。予選もウィリアムズが打ち崩せずに、まさかの敗北を喫したのである。ベンチを見やると、中畑ヘッドコーチの視線が泳いでいるようであった。

「今だ!」

星野は叫んで立ち上がった。

「ど、どうしたんですか。放送中ですよ」

「悪いが、しばらく一人でやっていてくれ」

アナウンサーにそう告げると、星野は勢いよく駆け出し、意外な身軽さで観客席からグラウンドに飛び降りた。マウンド上でウィリアムズが投球練習をしている中を、周囲に気づかれることなく、するすると日本側ベンチに駆け込んだ。

「ほ、星野さん!」

「中畑。いいから、これを読め」

星野が突き出したのは一通の手紙である。封筒の中の1枚だけの便箋に、ごく簡単なメッセージが書かれていた。


「星野兄、いよいよというときには、監督代行をよろしく頼みます。中畑君、この手紙を見たら、言われたことを聞くように」


その後の署名は、もちろんあの人のものだった。顔を上げた中畑の眼は輝いていた。そして叫んだ。

「みんな聞いてくれ。長嶋ジャパンは、今から星野監督代行の指揮下に入る」

期せずして、おう、という声がベンチにこだました。

「よーし。じゃあ、バッター藤本に代えて、代打、相川!」

星野が叫んだ。

「お、俺っすか?」

相川亮二が立ち上がった。横浜ベイスターズの捕手、今大会は城島の控えに回ってほとんど出番がない、とっても地味な選手である。打率だって、2割5分を越えたことは一度もない。

「まあ、任せろ。策はある」

星野は相川に何事か耳打ちをした。それからベンチの前に出て、マウンドを発止とにらみつけて、大声を出した。

「おい、ウィリアムズ。お前の力はよく知っている。全力で投げて来い。お前のスライダーが決まるときは、松井やイチローでも打てん。自信を持って勝負せい」

マウンド上のウィリアムズは、突然現れた昔のボスに戸惑っている。通訳がいないので日本語は分からないが、そこはスポーツマン、大体の雰囲気は察することができる。

「でもなあ、あんまり調子に乗ると、大阪に帰ってから、ちょっと困るかもしれんぞ。北新地のあの子、名前は何と言ったかなあ・・・」

「リンダちゃんでしょう」藤本が言った。

日本側ベンチがどっと沸いた。選手のどの顔にも笑いが浮かんでいた。

「おお、そうだ。まあ、それはともかく、また日本に帰ったら一緒に楽しく野球しようなあ」

ウィリアムズの顔が紅潮していた。これでは動揺しない方が無理な相談というものだ。豪州チームの押さえの切り札は、この瞬間、阪神タイガースの、いや日本プロ野球界の一員に戻ってしまっていたのである。そして日本側ベンチは、さっきまでの緊張はどこへやら。野球を楽しむムードがよみがえっていた。が、誰よりもリラックスしたのは、中畑ヘッドコーチであったかもしれない。

プレイボールの声に、ウィリアムズはセットポジションに入る。動揺したか、代打、相川に対しての第一球はボール。そして彼にはめずらしく、そのままストレートのフォアボールを与えてしまった。満塁である。

「さあ、福留、続けえ」

後は詳しく述べるまでもない。結局、長嶋ジャパンはこの回、城島のホームランを含む5安打を集中して大量得点を挙げ、ウィリアムズをノックアウトしたのであった。

7回の裏の攻撃を見届けた星野は、再びNHKの解説席に戻った。アナウンサーがおずおずと尋ねた。

「いくつか聞いてよろしいでしょうか」

「もちろん」

「なぜ相川だったんですか?」

「別に右の代打であれば誰でも良かったさ。とにかく、雰囲気さえ変えれば、地力では日本の方が上なんだから」

「ムードが大事だったと」

「そう、明日なき戦いだからといって、あんなにベンチが硬直していては勝てんよ。みんな昔、甲子園球児だった頃のことを忘れてしまっている。まあ、それも責められん。俺たちプロはオリンピックと違って、負けても明日があるもんなあ」

ややあって、放送席のところに中畑がやってきた。

「星野さん、明日のキューバとの決勝戦の監督代行もお願いできないでしょうか」

「あほ言え」

と即座に断ってしまった。

「俺を殺す気か。さっきので、久しぶりに血圧が上がってしまったぜ」



○長嶋ジャパンは銅メダルでした。でも、↑な風だったら良かったのになあ・・・・。(オールド野球ファンの負け惜しみ、でした)


<8月26日>(木)

○アテネ五輪も残りは3日と少々。金メダル選挙は「定数301 確定215 残り86」議席となっている。絶好調の日本党はここまでで15議席を確保。今日、豪州党に抜かれて第四党となったが、かつての大政党、ロシア党やドイツ党を下に見るという好結果は、正直、戸惑うほどである。この上の議席の上積みは非常に困難と見られるが、ハンマー投げ選挙区で選挙違反があった疑いがあり、室伏候補の繰上げ当選もあり得る状況だとか。(最新の議席情勢はここをご覧ください)

○ちょっと早いけど、今回のアテネ五輪結果を振り返ってみると、柔道、水泳、体操など、敗北を認め、素直に反省し、体系的な強化策を打った競技は成果をあげた。逆に、女子バレーや野球など、従来と大差のない手法で臨んだ競技は、概して冴えない結果であった。(不思議なことに「長嶋ジャパン」や「なでしこジャパン」など、ジャパンは押しなべて今ひとつの結果となった。「体操ニッポン」は良かったのにね)。

○ここからちょっと飛躍すると、アテネ五輪の結果から「マジメに反省する者はちゃんと報われる」という教訓を読み取ることも可能であろう。「空白の十年」ということで、とかく問題視される永田町でも官僚機構でも金融機関でも、共通しているのは「自分の間違いを認めない」硬直性にある。失敗を認め、反省をし、人を入れ替え、対策を考えれば、大概の物事は前進するものなのだ。そんな当たり前のことを、スポーツの世界から学ばなければならないというのも、いささかアホらしくはあるのだが。

○それから、少子化だから日本はダメ、とは限らないことも分かった。アテネ五輪を見て、誰もが「若い世代は意外とやるじゃないか」と感じたのではないだろうか。新世代アスリートたちには、従来の日本人にはなかった「個の強さ」がある。精神的プレッシャーに強く、本番で自己ベストを出すような集中力があり、勝負に辛い。

○あらためてアスリートの世代を分類してみよう。

@谷間の世代(1960年前後生まれは、人格者が多いのに不思議と勝負弱い。組織や過去を背負ってしまう弱さがあった)

瀬古利彦 1956年7月15日
山下泰裕 1957年6月1日
中山竹通 1959年12月20日
谷口浩美 1960年4月5日

A個性派登場の世代(60年代後半生まれは、「自分のために」スポーツをする明るいキャラクターが多い。かならずしも勝負強くはない)

清原和博 1967年8月18日
中山雅史 1967年9月23日
原田雅彦 1968年5月9日
荻原健司 1969年12月20日

Bマイペース世代(70年代前半生まれは、意志が強く、勝負にも強い。なおかつ人格的にも愛されるタイプが多い)

伊達公子 1970年9月28日
高橋尚子 1972年5月6日
イチロー  1973年10月22日
松井秀喜 1974年6月12日
清水宏保 1974年2月27日
室伏 広治 1974年10月8日
田村亮子 1975年9月5日

C新世代アスリート(70年代後半生まれになると、とんがった個の強さが日本人離れしている。勝負にも強い)

中田英寿  1977年1月22日
野口みずき 1978年 7月 3日
松坂大輔  1980年9月13日
北島康介  1982年9月22日
福原  愛  1988年11月 1日

○ところで現在、軽井沢に来ております。外はしとしと雨が降っている。てなわけで、またまたアテネ五輪報道を見てしまうのだ。


<8月27日>(金)

○本日の軽井沢は、晴れ時々小雨、夜になって霧。来週辺りには寒くなっているでしょうね。夏は終わりに近づいている。オリンピックは間もなく終わる。

○景気の回復は当地においても感じられているらしく、5月の連休は相当な人出であった由。ところが夏場は思ったほど客足が伸びず、さまざまな説がささやかれている。

A)実は景気の減速はもう始まっている。

B)みんな家でオリンピックを見ていて外出しない。

C)あんまり暑いので、エアコンのない避暑地に行くのを怖れている。

○うーん、全部ありそうだな。どっちにしろ、来週はお仕事全開モード。米共和党大会も始まるしね。


<8月28日>(土)

○軽井沢で学んできたこと。


●1776年の独立宣言から1788年の憲法起草まで、アメリカは13植民地の説得に延々12年間もかけた。

――妥協を積み重ねて現実的な結論を得ることは、本来、得意なはずなのである。ところが時々「問答無用」になっちゃうから困るんだよね。寛容さと非寛容さが代わる代わる顔を出す国なのです。

●マッカーサーは"I shall return."と言った。"We"ではなかった。

――フィリピンから撤退する際、すでに日本に対し含むところがあったらしい。戦後の統治時代は、「2度以上会話した日本人は、天皇や吉田首相など16人だけ」で、芸者を揚げて宴会、てなことは一度もなかったという。かなり屈折した人だったようです。

●プラグマティズムが成功するときには、「現実の直視」が必要である。

――たとえば「キューバの13日間」では、ケネディの周囲には「対話」があり、他者の視点で現実を見ることが出来た。逆にベトナムやイラクでは、開かれた対話があっただろうか。

●言語というものは、もともと行き過ぎるようにできている。

――たとえば「全体の幸福がなければ個人の幸福はありえない」などと言ってしまった宮沢賢治は、長生きできないのは当然である。数字が一人歩きするように、言葉も一人歩きしてしまうことがある。

●ハーバードビジネススクールの学生たちの間で、今年は久々に「中国よりも日本」に人気が集まっているらしい。

――ポケモン世代がそこまで成長したからだ、という噂もチラホラ。

●世界の中で、役に立たないロボットを作っている国は日本だけである。

――AIBOもアシモ君もそうですね。これはきっと手塚治虫で育った世代が研究しているからでしょう。

●ポール・クローデルというフランスの詩人がいる。彫刻家のカミーユ・クローデルの弟だ。この人は1921―27年、駐日大使として日本に赴任して、日本文化に関する多くの著作や詩作を残している。これはちょっとしたものです。ちなみに来年は没後50周年。

――たとえば日本人の人生観を、「理知には到達しえぬ優越者をすなおに受けいれる態度」と理解し、山水画の画法の中に「無用な場ちがいの要素を省略するときの、この断乎たるうちにもつつましげな態度」を見出し、日本の四季を「一月の雪から入梅の暖かい雨のもとにみなぎる大地の深い生吹きに至るまで、四月の薔薇色の靄から秋の日の紅の炎上に至るまで、典礼のごとき順序を追って、色彩と豊饒の儀式があいつぎ、くりひろがってゆくのです」と形容する。(以上、すべて芳賀徹訳) うーん、日本にはすごい理解者がいたものだ。

●ノスタルジー(過去)は希望(未来)よりも確かである。

――江戸時代や大正時代のように、美しい過去を持つ日本は幸せである。

●人は自分が住む世界の有限性を自覚しにくい。だからしょっちゅう「痛い目に合う」し、「事実にぶつかる」。

――見えている世界の外側には、巨大な見えない部分がある。見える場所のことだけを考えていても、本当のことは分からないんだよ。


○とりあえず、以上。すべて私的な備忘録なので、解説は抜きよん。


<8月29日>(日)

○オリンピックは間もなく終わる。めでたく室伏の銀は金に化け、日本の金メダルは16個となって東京五輪に並んだ。まだマラソンが残っているが、あいにくもう眠いので付き合いきれない。

○台風がやって来る。夏ももう終わりですね。今日の「サザエさん」では、カツオ君がやはり夏休みの宿題で苦しんでいた(冒頭で今年はもう終わった、と波平さんたちを安心させておき、実は宿題が残っていた、という凝った展開であった)。不規則発言も、そろそろ気分を切り替える必要がある。

○さて、明日からはこっちに注目しなければ。

●2004 Republican National Convention http://www.gopconvention.com/index.shtml 

○ちなみに、ブッシュ人気はやや盛り返しているようだ。

Date      Poll             Bush    BushX KerryX Nader
                       Aprv/Dis
Aug 3-4    Fox News/Opinion Dyn  43/48   42 X 46 X 2
Aug 3-5    AP/Ipsos          49/50   45 X 48 X 3
Aug 3-5    Time             50/46   42 X 47 X 6
Aug 5-10   Pew/Princeton       46/45   45 X 47 X 2
Aug 9-11   CNN/USA Today/Gal   51/46   46 X 45 X 5
Aug 15-18  CBS News          46/45   45 X 46 X 1
Aug 21-24  LA Times           52/47   47 X 44 X 3
Aug 23-25  NBC/Wall St. Journal   47/48   47 X 45 X 3
Aug 23-25  CNN/USA Today/Gal   49/47   48 X 46 X 4


<8月30日>(月)

○アテネ五輪はもう終わってしまった。今朝、NHKニュースの総集編を見て、2週間にわたる幾多の名勝負を思い起こしていたら、思わず涙目になってしまった。37個ものメダルを獲得したとはいえ、ああ、これでもう今日からはオリンピックはないのである。夜更かしをしても、あのハラハラドキドキにはもう出会えない。月並みだけど、アスリートたちよ、感動をありがとう。と、しばし余韻に浸っていたところ、下の娘がいわく。「阪神が17対2で勝っているよ。良かったね」

○ああああ、そんなことすっかり忘れていたのだが、わがタイガースは今ごろになって8連勝で5割復帰である。これでウィリアムズが戻ってくれば(早く帰ってこんか!酷使しちゃるぞ。高橋由伸なんぞに打たれたら承知せんからな!)、いいところまで行くかもしれぬ。でも、これだけのアスリートたちの熱い勝負を満喫したあとで、負けても負けても明日があるペナントレースなんぞを見て、どうやって感動しろというのだ。

○・・・てな話を、今日のお昼の東京財団「虎ノ門DOJO」でひとくさり演じて参りました。多数のご来場をいただきまして、ありがとうございました。東大卒の元ロッテ投手、現在は江戸川大学助教授の小林至さんとご一緒。とっても面白い人でした。小林さんのHPは見所たくさんですが、私的にいちばん受けたのはプロフィールの欄で、千葉ロッテマリーンズ時代のことを語った下記のくだり。

●4月。イースタンリーグで松井秀喜と対戦。カウント1−3から渾身の力を込めて投げた直球を、松井は泳ぎ気味に空振り。翌日のスポーツ紙を見ると、「東大出の大したことの無い投手と聞いていたけど、プロのフォークは凄い」という、松井のコメントが。がっくり。

○さて、そろそろ気分を米共和党大会モードに切り替えねばならぬ。が、しかし何たることぞ。米共和党大会サイト、ジョージブッシュ選対サイトがいずれもサーバー不良でつながらないのである。困ったこまった。アクセスが集中してパンクしたのかもしれぬが、これは反ブッシュ勢力による妨害工作ではないのか。

○それはさておいて、アテネ五輪がテロ事件なしに閉幕したことを、心から祝いたいと思います。最後の男子マラソンで、変な人が飛び出してきてミソをつけましたが、あの程度で済めば上出来というものです。ニューヨークの共和党大会も、警備は厳重なものとなるでしょうけれども、とにかく無事に終わってほしいものです。


<8月31日>(火)

○共和党のサイトがつながらない、というのはいろんな人が言っていて、その一方で「家ではつながらないが、会社では通じる」という人もいる。だから日本国中でつながらないわけではない。どうやらIPアドレスか何かの問題であるらしい。差し当たって、これだけは早く見たいと思っていた共和党の政策綱領は、ニューヨークタイムズ紙が取り上げてくれたので、下記のアドレスからダウンロードすることが出来ます。(安井さん、どうもありがとう)

●共和党政策綱領2004: http://www.nytimes.com/packages/html/politics/gop_2004platform.pdf

○上記は堂々94ページの大作です。民主党のプラットフォーム37ページに比べると、格段に出来が良い。もっとも、政権与党なんだから、そのくらい当然だという声があっても不思議ではない。それでも対アジア政策の部分"Across the Pacific"が148行もあるのを見ると、「うーん、やっぱりこうであって欲しいなあ」と思う。民主党のわずか7行というのは手抜きがひどすぎる。

○ここで大統領選挙オタクの溜池通信としては、2004年プラットフォームの対アジア政策を、2000年の外交プラットフォーム"Principled American Leadership"と比較してみたい。ブッシュ政権の対アジア政策が3年間でどう変わったか。以下のように、「使用前/使用後」が見て取れるのである。まずは冒頭部分の比較から。

●2000年版

As in every region of the world, America's foreign policy in Asia starts with its allies: Japan, the Republic of Korea, Australia, Thailand, and the Philippines. Our allies are critical in building and expanding peace, security, democracy, and prosperity in East Asia joined by long-standing American friends like Singapore, Indonesia, Taiwan, and New Zealand.

●2004年版

Republicans believe that, as in every region of the world, America’s foreign policy in Asia starts with its allies: Australia, Japan, the Republic of Korea, Thailand, and the Philippines. In the Asia-Pacific region, these alliances are bolstered by strong relationships with American friends such as Singapore, India, Indonesia, Taiwan, and New Zealand.

○冒頭、アメリカにとって重要な国を列挙する部分である。2000年には「日本、韓国、豪州、タイ、フィリピン」が同盟国、「シンガポール、インドネシア、台湾、ニュージーランド」が友邦として指名された。2004年版を見ると、同盟国の中で豪州が先頭に出たことが注目される。アフガン戦線でもイラク戦争でも、米軍の行くところ、常にオーストラリア軍があった。論功行賞大、ということであろう。もうひとつ、10月に豪州のハワード政権が総選挙を迎える。親米路線の是非が問われることになっており、米国としてはハワード首相に再選されてもらいたい。この辺の事情については、半年前に書かれたものだが、この分析をご覧いただくと良いと思う。

○そして友邦の部分では、2番目にインドが入ったことが注目点である。2000年の政策綱領では、インドについての言及がなかった。しかし2004年版では「ブッシュ大統領の指導力の下、米国はインドとの二国間関係において歴史的な変容をもたらした」で始まる16行の記述があり、現政権の「インド重視」路線を読み取ることが出来る。これは対テロ戦争でパキスタンと連携する必要があること、中国を牽制する必要が生じたことなどが原因といえるだろう。

○次に日本に関する部分を比較してみよう。

●2000年版

Japan is a key partner of the United States' and the U.S.-Japan alliance is an important foundation of peace, stability, security, and prosperity in Asia. America supports an economically vibrant and open Japan that can serve as engine of expanding prosperity and trade in the Asia-Pacific region.

●2004年版

Japan is a key partner of the United States and the U.S.-Japan alliance is an important foundation of peace, stability, security, and prosperity in Asia. America supports an economically vibrant and open Japan that serves as an engine of expanding prosperity and trade in the Asia-Pacific region. Republicans support an American policy in the Asia-Pacific region that looks to Japan to continue forging a leading role in regional and global affairs based on our common interests, our common values, and our close defense and diplomatic cooperation.

○前段の文章はほとんど同じである。(canがひとつ削られているだけ)。そして後段では、「共和党は、アジア太平洋地域での米国外交においては、日本が我々と共通の利益、共通の価値観、そして緊密な防衛・外交協力に基づき、引き続き地域とグローバルな問題における主導的地位を担うように求める」というメッセージが追加された。「アジアで重要なのはまず日本」という姿勢は変わっていない。

○解釈が難しいのは、中国に関する部分である。2000年版では「中国は戦略的な競争相手」とほとんど敵視せんばかりであったのが、この3年間で、米国は対テロ戦争や朝鮮半島問題では中国の協力を当てにしなければならなくなった。その辺、文面も気を使わなければならなくなり、下記のように長い文章になっている。

●2000年版

America's key challenge in Asia is the People's Republic of China. China is not a free society. The Chinese government represses political expression at home and unsettles neighbors abroad. It stifles freedom of religion and proliferates weapons of mass destruction.

Yet China is a country in transition, all the more reason for the policies of the United States to be firm and steady. America will welcome the advent of a free and prosperous China. Conflict is not inevitable, and the United States offers no threat to China. Republicans support China's accession into the World Trade Organization, but this will not be a substitute for, or lessen the resolve of, our pursuit of improved human rights and an end to proliferation of dangerous technologies by China.

China is a strategic competitor of the United States, not a strategic partner. We will deal with China without ill will - but also without illusions. A new Republican government will understand the importance of China but not place China at the center of its Asia policy.

●2004年版

Republicans believe that America’s relationship with China is an important part of our strategy to promote a stable, peaceful, and prosperous Asia-Pacific region. We welcome the emergence of a strong, peaceful, and prosperous China. The democratic development of China is crucial to that future. Yet, a quarter-century after beginning the process of shedding the worst features of the Communist legacy, China’s leaders have not yet made the next series of fundamental choices about the character of their state. In pursuing advanced military capabilities that can threaten its neighbors in the Asia-Pacific region, China is following an outdated path that, in the end, will hamper its own pursuit of national greatness. In time, China will find that social and political freedoms are the only source of that greatness.

Under President Bush’s leadership, the United States has sought a constructive relationship with a changing China. Our two nations have cooperated well where our interests overlap, including the current War on Terror and in promoting stability on the Korean peninsula. Likewise, we have coordinated on the future of Afghanistan and have initiated a comprehensive dialogue on counterterrorism. Shared health and environmental threats, such as the threat of HIV/AIDS, SARS, and other infectious diseases, challenge us to promote jointly the welfare of our citizens.

Addressing these transnational threats will challenge China to become more open with information, promote the development of civil society, enhance individual human rights, and end suppression of the media. To make that nation accountable to its citizens’needs and aspirations, much work remains to be done. Only by allowing the Chinese people to think, speak, assemble, and worship freely can China reach its full potential. China has discovered that economic freedom leads to national wealth. China’s leaders will also discover that freedom is indivisible ? that social and religious freedoms are also essential to national greatness and national dignity. Eventually, men and women who are allowed to control their own wealth will insist on controlling their own lives and their own country.

Our important bilateral trade relationship has benefited from China’s entry into the World Trade Organization, creating export opportunities and jobs for American farmers, workers, and companies. The power of market principles and the WTO’s requirements for transparency and accountability have bolstered openness and the rule of law in China. Republicans support the commitment of President Bush and Republicans in Congress to ensure that China fulfills its WTO obligations.

There are, however, other areas in which we have profound disagreements, including human rights, China’s observance of its nonproliferation commitments, and America’s commitment to the self-defense of Taiwan under the Taiwan Relations Act. We support President Bush’s efforts to narrow differences where they exist but not to allow them to preclude cooperation where there is agreement.


○最後はきっちり人権問題や台湾問題を取り上げ、中国に対して釘をさしている。そこで気になるのが中台関係についての記述である。比較は以下のとおり。

●2000年版

A Republican president will honor our promises to the people of Taiwan, a longstanding friend of the United States and a genuine democracy. Only months ago the people of Taiwan chose a new president in free and fair elections. Taiwan deserves America's strong support, including the timely sale of defensive arms to enhance Taiwan's security.

In recognition of its growing importance in the global economy, we support Taiwan's accession to the World Trade Organization, as well as its participation in the World Health Organization and other multilateral institutions.

America has acknowledged the view that there is one China. Our policy is based on the principle that there must be no use of force by China against Taiwan. We deny the right of Beijing to impose its rule on the free Taiwanese people. All issues regarding Taiwan's future must be resolved peacefully and must be agreeable to the people of Taiwan. If China violates these principles and attacks Taiwan, then the United States will respond appropriately in accordance with the Taiwan Relations Act. America will help Taiwan defend itself.

●2004年版

The United States government’s policy is that there is one China, as reflected in the three communiques and the Taiwan Relations Act. America opposes any unilateral decision by either China or Taiwan to change the status quo. Republicans recognize that America’s policy is based on the principle that there must be no use of force by China against Taiwan. We deny the right of Beijing to impose its rule on the free Taiwanese
people. All issues regarding Taiwan’s future must be resolved peacefully and must be agreeable to the people of Taiwan. If China violates these principles and attacks Taiwan, then the United States will respond appropriately in accordance with the Taiwan Relations Act. America will help Taiwan defend itself.

Republicans applaud President Bush and the Republican Congress for honoring our nation’s promises to the people of Taiwan, a longstanding friend of the United States and a genuine democracy. Taiwan deserves America’s strong support, including the timely sale of defensive arms to enhance Taiwan’s security. In recognition of its growing importance in the global economy, Republicans applaud Taiwan’s membership in the World Trade Organization and support its participation in the World Health Organization and other multilateral institutions.

○やはり2000年版のように、手放しで台湾支持を打ち出すことはできなくなっている。たとえば「ひとつの中国」ポリシーについても、2000年版では「アメリカは従来、中国は一つであるという見解を認識してきた」と、いかにも嫌々認めていたのだが、2004年版では「合衆国政府の政策はひとつの中国であり、これは3つのコミュニケと台湾関係法を反映するものである」と一歩踏み込んでいる。その反面、「台湾の人々は合衆国のながきにわたる友人であり、純粋な民主主義国である」という決り文句は、今回も生き残った。

○こうして見ると、ブッシュ政権の対アジア政策は、アーミテージ人脈がきっちり仕切っているから、方針は明確であるし、4年前と比べてもブレがないのである。こういうのを見てしまうと、ブッシュ再選の方が日本にとっては有難い、ということを痛感します。










編集者敬白



不規則発言のバックナンバー

***2004年9月へ進む

***2004年7月へ戻る

***最新日記へ


溜池通信トップページへ


by Tatsuhiko Yoshizaki