●かんべえの不規則発言



2008年10月





<10月1日>(水)

○豊田市民文化会館ホールへ。毎度お世話になっている時事通信社さんのご紹介で、豊田市役所の研修会講師として招かれました。普通の自治体とは違って、豊田市ではこの手の会合は就業時間外に行われます。ということで、午後6時15分スタートです。研修会の始まる前には、参加者一同が「豊田市民の誓い」を唱和します。これぞトヨタイズム。もちろん市の財政はすこぶる良好であります。

○本日の演題は「今後の政治と経済の動きを読む」でした。金融問題あり、国内政治あり、米大統領選挙あり、という昨今には、まことに適したテーマであったかも。相互に入り乱れて影響が出てしまうので、この先の展開がなかなか読みにくい。ホントにどっちに転ぶのやら。以下は若干の読み筋であります。

○とりあえず解散の時期については、脱力さんが言っている通り、先に延びるのではないでしょうか。世界中が金融危機だといって恐れおののいているこの時期に、「うちは解散総選挙です」と言って、政治の空白が生じるとか、財務大臣兼金融担当大臣が選挙区にしがみついているとか、それはやっぱりマズイでしょう。世界第2位の経済大国が何をしてるのか、といって呆れられることになる。

○公明党さんは、「11月2日総選挙」に向けてすでに走り出しているはず。自民党や民主党の議員さんの中には、迷った挙句に「そろそろプレハブの事務所を建ててくれ」という指示を出した人も少なくないだろう。それでも、解散は難しくなった。麻生さん自身が、そもそも早期の解散を望んでいない。やりたいことはいくらでもあるのだから。金融不安は、麻生さんに解散の時期を先送りする絶好の機会を与えたのではないか。

○国内経済はと言えば、日銀短観を見ても、鉱工業生産を見ても、明々白々な景気後退局面である。補正予算は必要だ。ここで補正を出さずに深刻な不況に陥るとしたら、それこそ悔やみきれないことになる。ここに至って麻生政権のバラマキ政策は、金融不安という非常事態によって正当化されてしまうのかもしれない。この期に及んで「財政規律」なんて言ってられないし、どの道、歳入欠陥が生じるから赤字国債は出さざるを得なくなる。

○アメリカのTARPは、明日10月2日(日本時間ではたぶん3日未明)に再投票される。まあ、9月29日に否決した下院も、わずか12人差だったのだから、普通だったら今度は通る。(23票差だったから、12人が賛成に回ればいい)前回反対票を投じた議員のところには、抗議の電話がジャンジャン鳴っていると聞く。とはいえ、通らない可能性だって充分にある。いつものことながら、政治の世界と経済の世界の間には、分厚い「バカの壁」がある。2回続けて否決されたら、そのときは大事件となる。(ちなみに法案が通った場合でも、9月29日に書いたような事情がありますので、深刻な状況は続くはずですが)

○世間一般的には、こんな大事な法案を否決してしまうアメリカは、もうお終いではないかという声をよく聞く。世界に対する指導力を喪失しているのではないかと。ワシなどはへそ曲がりもあるので、「こうゆうことをするんだよなあ、アメリカ政治って」と、半分呆れながらも、嬉しくなってしまうようなところがある。「嫌なものは嫌」とハッキリ言っちゃうんだもの。馬鹿だよねえ。でも、ある意味では健全だと思います。

さる人からのメールにいわく。「これはもう、アメリカ人は追いはぎに遭っているようなものです。どうやったら財布の中身を減らさずに逃げられるか、今、必死になっているんです」とのこと。なんでウォール街の連中を助けるために、有権者の税金を使わねばならないのか。これを説明するのは難しい。日本もそうだったんだもの。あのとき、日本を笑ったアメリカが、今は同じ問題を抱えて立ち往生している。まことに因縁深い構図としかいいようがない。


<10月2日>(木)

○TARPと米大統領選について、世の中の関心が高いです。本日は「金融系」と「新聞系」の2箇所でプレゼンしました。説明しているうちに気づいたのですが、このポイントがちょっと盲点になっているかもしれない。それは、「誰が次期財務長官になるのか」です。

○TARPは、「財務長官個人に7000億ドルを託す」というおそるべき法案です。これが通った瞬間に、ポールソン財務長官は「75兆円の男」になる。この公的資金を使って、誰から、いくらで、どんな風に不良債権を買うのかは、法律にはきわめてファジーに書かれている。もちろん、そこに柔軟性が必要だからそうなっているのだけれど、仮に財務長官が0.1%の金額をごまかした場合には、超巨大収賄事件が発生してしまう。

○しかもポールソンの任期は来年1月19日までである。後任の財務長官は次期大統領が選ぶ。しかし、「75兆円の男」を選ぶというのは、いったいどういう作業になるものか。どうやって候補者を選び、どうやって「身体検査」を行い、どうやって議会が承認するのか。さらに、次期財務長官が決まるまでの「空白期間」をどうするのか。ポールソンとの引継ぎはうまくいくのか。・・・などと考え始めると、詰まっていないことが結構多いのではないか。

○仮にマッケインが当選した場合は、拝み倒してポールソンに再任してもらうことになるでしょう。「お前が作った法律なんだから、ちゃんと責任を取れ」とか何とか言って。本人が「もう疲れた」と言い出すかもしれませんけれども。また、彼の評判もそろそろ急降下する可能性があり、そのときになって民主党議会が「やっぱり認めない」と言い出すかもしれない。その場合、共和党に次のタマがいるかというと、これはかなり怪しい。

○次にオバマが当選した場合は、民主党多数議会を背景にしているので、しかるべき人間を立てれば承認は楽でしょう。ただし、やはり「75兆円の男」を決めるのは簡単ではないはず。おそらくルービンの弟子筋の人たちから選ばれるんじゃないかと思いますが、議会やマスコミのチェックは相当にきついものになるでしょう。うーん、これは簡単には決まりませんぞ。

○公的資金ポリティクスというのは、こんな風にどんどん難しくなってしまうものなのです。


<10月3日>(金)

○今日はジョー・バイデン対サラ・ペイリンの副大統領候補対決。見るチャンスはなかったですが、意外と平穏に終わったようです。でも、マンガはもうたくさんできている。なにしろ"Loose Canon"vs."Moose Mom"でありますから。

○思えば今日は、彼女の衝撃的デビュー(副大統領候補受諾演説)からちょうど1ヶ月。いまや押しも押されぬスターです。娘の妊娠に始まって、豚にリップスティック論争、福井県特製のメガネ、さらには「アラスカからはロシアが見える」発言など、ネタもいっぱい提供してくれるので、メディア的にはとってもおいしい存在でありましょう。

(例)

「サラ・ペイリンは、今、討論会に備えて、アリゾナにあるマッケインの別荘で缶詰になって猛勉強中だ。外交の勉強にはいいと思うよ。だって、アリゾナからはメキシコが見えるから」(byデイビッド・リターマン)

「ペイリンはとってもイケてるだろ? でも、マッケインはそれで頭が痛いんだよ。だってあのチケットは『美女と死人』と呼ばれているから」(byジェイ・レノ)

○金融問題に明け暮れている今のアメリカでは、この手のペイリンジョークが一服の清涼剤になっているのかもしれません。もちろん、「そんなこと言ってられるのか!」と怒る人もいそうですけれども。

○ちなみにこのページを見ると、なんとオバマ331対マッケイン207の大差がついている。これはもうlandslideです。うーん、マッケインが勝つには、オクトーバーサプライズが必要になってきたのかな。


<10月5日>(日)

○今日の夕方の飛行機で、これからニュージーランドに行ってまいります。(例によって成田空港から更新中です)。「日本ニュージーランド経済人会議」のためで、今回はネルソンという都市で行われます。ニュージーランドに行くのは、これが7回目だったかな。今年は3月に続いて2度目です。

○実はニュージーランドも選挙の季節を迎えております。11月8日(土)が投票日と決まっておりまして、日本が当初言われていたように、11月2日か9日あたりになると、ほとんど同時期ということになります。二大政党で、連立政権で、選挙制度が小選挙区と比例代表の組み合わせであることなど、日本とニュージーランドには共通点が多いです。

○ただし大きな違いは、ニュージーランドではきわめて規則的な政権交代が行われていること。だいたい10年に1度くらい、交代が起きます。現在の首相は労働党のクラーク首相ですが、ちょうど3期9年を迎えたところなので、特に失政といえるほどのことはないし、国論を二分するようなテーマも見当たらないのだけれど、たぶん国民党が勝つだろう、などといわれているようです。あまり長い間、野党を野党のままにしておくと、どんどん政治能力が低下していくので、10年に1回くらいは政権を取らした方がいい、という割り切りもあるとのこと。

○日本も同じような時代が来るのかどうか。政権交代というものを、ニュージーランドの人たちがどんな風に捉えているのか、聞いてこようと思っております。


<10月6日>(月)

○ネルソンにやってきました。南島の北端でタスマン海に面した美しい町です。林業が盛んで、住友林業さんの工場があったりします。ここは「サニーネルソン」という異名をとるほどに天気のいいところで、いかにもニュージーランドらしい大自然を満喫できる場所といえましょう。

○第35回の日本NZ経済人会議も始まりました。今年5月のクラーク首相の訪日、それにあわせて行われたパートナーシップフォーラムの成功、さらには首脳会談で飛び出した福田首相の「FTAの共同研究を前向きに検討する」発言があったものだから、NZ側はとても積極的です。とはいえ、現在の政治状況も手伝って、日本側官僚機構は動きが鈍くなっています。でも、この辺は想定の範囲内というものです。

○おりからの金融危機をNZの人たちはどう見るか、というところが注目点です。グローバリゼーションのお陰もあって、NZは10年間にわたって同国史上最長の景気拡大を続けてきました。しかし今年上半期は2期連続のマイナス成長。とうとう不況入りです。アングロサクソン経済のご多聞に漏れず、住宅価格がずっと上昇しておりましたので、そっちの影響も出てくるかもしれない。また、渇水による乳製品の不調、なんていうトラブルもあった模様。

○当地の大事件は、中国で例のメラニン混入をやらかした乳製品会社は、NZのフォンテラ社が43%の株を持っていたということ。フォンテラは、NZの酪農公社が民営化した巨大企業で、いわばこの国の主力産業である乳製品のご本尊。日本で言えば、トヨタで不祥事があったようなもの。今回のケースは、同社の中国市場参入がもろに裏切られてしまったということで、ショックは大きかった模様。まあ、われわれから見ると、「まだ序の口」だと思うのですが・・・。

(読者から、当サイトが中国国内で見られなくなった、とのお知らせあり。名誉なことに、Great Firewallに引っかかったのでしょうか。あっぱれ、溜池通信)

○それから観光分野では、日本からNZへの観光客が昨年、とうとう12万人にまで減少してしまった。これは豪州やカナダも同様な傾向になっており、日本人の海外旅行自体が減っている。若者は昔ほど海外旅行をしなくなり、かつては賑やかだった「OL市場」も衰退している。団塊世代がかろうじて気を吐く、といった状況であるらしい。そんな中で、「どうやって日本への観光客を増やすか」が業界の関心事となりつつあるとのこと。

○ほかにも数多くのネタを仕込んだはずなのですが、いかんせん眠いのであります。いえ、出張間際にいろんな締め切り(この会議での発表内容を含む)に追われていたので、観光地に来て急に眠気を催してしまいました。そう、下記のようなものも書いたんですよね。では、また後ほど。


●オバマ対マケイン、最終決戦へ

http://markets.nikkei.co.jp/column/rashin/ 

米大統領選挙もいよいよ最終コーナーを回った。共和党のジョン・マケイン氏、民主党のバラク・オバマ氏という2人の上院議員の間には、いくつものドラマがあった。・・・・


<10月7日>(火)

○一夜明けたら嵐が着ておりました。「サニーネルソン」ではめずらしいことだそうです。そういえば今年のオークランドも雨が多いんだそうで、これも一種の異常気象なのでしょうか。一部のNZ側参加者が、飛行機が飛ばなくて来られないという椿事あり。ま、当地の飛行機は小型のプロペラ機なので、しょうがないのではありますが。

○今日は終日、日本NZ経済人会議のプログラムが行われました。この間に、NYも東京も大幅に株価が下落した模様。こんな経済危機の最中に、日本とNZの関係強化を話しているのは、ちょっと浮世離れしているかもしれません。でも、例によって、今回の定点観測から学習できることは数多くありました。以下はとりあえず忘れないように。

NZ経済:10年ぶりの景気後退へ。ただしそんなに切羽詰っている感じがない。住宅市況は案の定、下げている模様。ひとつには当国の主要な金融機関が、豪州資本の傘下に入っていて、金融問題が今ひとつ「他人事」だからではないかと思う。しかし豪州経済は、米国経済との関係が強いので、間接的な影響は及ぶだろう。それにしても、「ナショナル銀行」が外国資本っていうのは一体どうなのよ。

グローバルな荷動き:やはり変調をきたしている模様。北米航路の米国向けコンテナ船がガラガラなんだとか。海運の世界では、新造船が集中する「2010年問題」があって、その頃になると値崩れするといわれていたが、かなり前倒しで来ているようですね。デカップリングシナリオ、破れたり、です。

政権交代:11月8日の選挙では、「ほぼ8割の確率」で政権交代があるらしい。国民党の単独政権になるかもしれない。となると、長く続いた連立政権時代(労働党+緑の党+その他)が終わるので、地元経営者の間では「プロ・ビジネス」な政治になるだろうと好感する向きもある。現クラーク首相は特に失政があるわけではなく、年齢も若いので、将来は国際機関のトップなどが回ってくるかもしれませんな。

FTA交渉:日本の農業問題がネックでなかなか進まない。ただし、日本の農水族が「カタキ」とみなしているのは「米、加、中、豪」の4カ国なので、NZはあまり眼中にはないらしい。まあ、国の規模から考えれば、それは正しい判断なんだろうと思います。ということは、「日豪FTAが通れば、日NZは勢いで通る」のでしょう。その日豪が完全にストップしているので困るのだなあ。

食事:ネルソンは小都市なんですが、食事は2晩ともなかなかのものでした。特にサーモンがお勧めですね。この国はもともとがサービス業は人手不足気味なので、この会議のように100人を超えるお客を相手に一度にサーブする、てなことがあんまり得意ではありません。昔はオークランドのホテルでも、なかなか料理が出てこないことが多かった。今回はちゃんと、お客全員に「肉料理か魚料理か」を選択させたという点にちょっと感動しました。お隣の豪州では、テーブルごとに肉と魚を半分ずつ配って、「あんたたち、適当に分けて」っていう流儀(アルターネイト・ドロップ)があるんですよね。


<10月8日>(水)

○今日で48歳になりました。

○ネルソンの近くのマルボロ地方("Marlborough"です。アメリカの煙草と一緒にすると、現地の方が哀しみます)で、地元の商工会議所ほかの皆様の歓待を受ける。ボートで入江をクルーズし、当地の絶品辛口ソービニオン・ブランを頂戴しながら、名物のムール貝やサーモンをご馳走になる。いやー、世界は大変な金融危機だというのに、こんないい目を見ていいのだろうか。ありがたいことに、ケータイの電波は圏外となっている。皆さん、ご免なさい。

○天気は良好。入江の両岸にはところどころ別荘が建っている。そのうちの一軒は、同乗の人が近年、商売のために手放したものだったそうだが、その金額が72万ドル(日本円にして5000万円ちょっと)。2エーカーの土地にプライベートビーチも付いているとのことだが、はたしてこの値段、高いのか安いのか。おそらく、今後は激しく値下がりするのではないでしょうか。うーん。

○夕方になってオークランドに移動。選挙のポスターは国民党ばかりなので、タクシーの運転手に聞くと「どうせあと1ヶ月で、いっぱい出るようになるって」とのこと。とはいえ、アメリカのように自家用車に「Vote OBAMA」とか「McCAIN 2008」なんてステッカーを貼る人は、当地では絶無のようである。なんて静かな選挙戦。

○11月は4日に米大統領選、8日にNZ総選挙。日本もあるでしょうなあ。

(ネルソンではFFFTPソフトの調子が悪かったので、ここで一気に3日分更新します)


<10月9日>(木)

○オークランドの人々があまりにも春風駘蕩としているので、ついつい忘れてしまうのだけど、CNNをつければそこには金融危機がある。おそらくニュージーランドへは、じわじわと影響が及んでくるのでしょう。外需に依存している経済ですから、無事では済まないはずです。まあ、絶好調の豪州に行っていたキウイたちが帰ってくる、というのが強いて言えば好材料でしょうか。あと、石油価格ももうちょっと下がってほしいというところです。

○で、日本に帰ってきました。NZ会議に参加していた某経営者は、成田空港から会社に直行して、深夜まで幹部全員とミーティングを行うと言っていました。さすがに緊張感があります。株式市場の混乱というのは、株価が下がるという形で目に見えるので分かりやすいのですが、マネー市場の混乱は見えにくいから始末に悪い。お金が動かない、というのでは経済は麻痺してしまいます。

○正直言って、状況がここまで悪化することを見通せなかった自分が悔しい。年初の頃は、楽観的な予想をしていたからなあ。さらに問題なのは、こんなワシのところに用事がある人が少なくないことだ。しばらくは、とんでもないくらいに忙しい日々が続きそうである。ワシは「外れのエコノミストだぞ」、と強調しておこう。


<10月10日>(金)

○アイスランドは人口30万人で、なぜ金融業が盛んでリッチにやっているのか。それはロシアのマネーロンダリングの基地だったから、というのは面白い話ですね。だから資金逃避で国が立ち行かなくなったとき、ロシアが援助した。偉い人たちがお金を預けているんだから、これはほっとけないでしょう。いろんなものの本性が表れるというのは、危機が到来したときの数少ない利点の一つかもしれません。

○似たような話で、「マカオが売上高でラスベガスを抜いた」という話がありましたが、なぜそんなことが可能なのか。一つの理由は「太子党がマネーロンダリングに使っているから」という噂を聞きました。なるほど、カジノを使った資金洗浄というのは、安全かつ確実といえましょう。しかし国のトップがそんなことでは、腐敗防止も食の安全もお題目だけで、下々は言うことを聞かないでしょうなあ。

○てな具合に、マネーは普段、地下にもぐっていることが少なくありません。確かにお金のことは、おおっぴらに話すものではなく、内輪でコソコソと話すものですよね。マネーは究極のプライバシーですから。「お前の年収いくら?」なんて聞けるのは、よっぽど親しい間柄だけでしょう。「税務署が怖いから」という理屈はさておいて、マネーは本質的に「恥ずかしがり屋」です。

○マネーというものは、総じて古典的な意味で女性的なんだと思います(女性の皆さん、御免なさいね、貴女のことではありませんから)。マネーは、「秘密が好き」で、「ブランドに弱く」「嫉妬深く」「理屈よりも感情で行動」し、「群れたがる」。そしてときどき「ヒステリーを起こす」。現在は、マネーがヒステリー状態に陥っているわけで、本当はそんなに長くは続かないはずなのだけれど、対応を間違えると永遠に思えてしまうことがある。

○では、そういうときはどうしたらいいのか。女性に関しては、「得てして紳士的な男よりも、乱暴な男の方が扱いには長けている」という法則があります。このことがヒントになりますかどうか。ワシントンのG7会合に集まる皆さんは、どういう判断を下されるのでしょうか。


<10月12日>(日)

○金融危機のどさくさにまぎれてというべきか、ニュージーランドに行って目を離している隙にというべきか、巨人にリーグ優勝をさらわれてしまいました。阪神ファンとしてはまことに残念無念であります。13ゲーム差をひっくり返されたからということで、岡田監督も辞意表明。いやー、最後の方は不甲斐ない試合が多かったから、その気持ちは分からんではない。

○かつて阪神の監督というものは、最後は必ず石持て追われるものでありました。それが星野監督に続いて2代連続、自分の意思で、しかも惜しまれつつ監督が去るという快挙が達成されそうです。これはとっても大切なことです。阪神タイガースの負の連鎖が、21世紀に断ち切られるのですから。せっかく小泉首相が快挙を成し遂げたのに、その後の2代が続けて台無しにしてしまった自民党と比較すると、この点はまことに光るものがあるではありませんか。

○岡田監督は2004〜2008年の5年間を務めて、リーグ優勝が1回だけ。それでも充分に「いい監督」だったと思います。とにかく5年間、毎シーズンいいところまで頑張ったし、そもそも内紛抜きで阪神の監督を務めること自体が奇跡みたいなもの。まだ50歳でありますし、ここはいったん解説者にでもなって外から野球を見て、将来は本当の名監督になってもらいたいものです。

○それにしても、これで阪神ナインは奮起しなければあきまへんな。せっかくだから、岡監を日本一にして引退させてあげようじゃありませんか。気に入らん制度やけど、クライマックスシリーズというものがあるんだし。特に岡監に散々お世話になりながら、いいところを見せられなかった今岡は、ここで恩返しをしなかったら男じゃないぞ。

○最後に遅くなりましたが、巨人ファンの皆さんにお祝いを申し上げたいと思います。プロ野球を盛り上げていくためには、巨人ファンの頑張りが必要です。10月8日の巨人×阪神最終決戦の視聴率が15%前後で、「ヘキサゴン2」よりも低いというのでは悲し過ぎます。アホな阪神ファンだけが盛り上がっているのでは、やっぱりいかんです。


<10月14日>(火)

○今から思えば、いくらでもヒントはあったのである。

(1)まず2008年という年は、何かとてつもないことが起こりそうな気がしていた(パーフェクト・ストーム論)。
(2)昨年夏に発生したサブプライム問題が、重大であることも分かっていた(ぐっちーさんもそう言っていた)。
(3)2008年に金融関係で何か事件があるとしたら、そりゃもう10月に決まっているではないか(1929年も1987年も、歴史に残るような株式大暴落は10月が多い)。

――なぜ、ワシは「2008年10月の金融恐慌」が予測できなかったのか。って、これは典型的な「後知恵」なのだけれど・・・・。

○そもそもアメリカ経済に対する見方が根本的に誤っていた。まずはそこから反省しなければならない。

○なぜ間違ったかというと、アメリカ経済にはマクロの脆弱性(経常収支の赤字、家計貯蓄率の低さ、財政収支など)がある一方で、ミクロの優位性(企業経営者の優秀さ、労働市場の柔軟性、高度な科学技術、分権・分散型の経済構造など)がある。どちらに着目するかというと、だいたいのエコノミストはマクロを重視してしまう。すると、「アメリカ経済は破綻する」とか「ドルは暴落する」という予測になってしまうが、90年代から2006年くらいまでは、そういう予想が外れ続けた期間であった。

○ミクロの優位性に着目した数少ないエコノミストの一人に杉浦哲郎さんがいて、『アメリカ経済は沈まない』(2003年)という本の中で、「米国のメッシュ型経済は、一極集中型の日本に比べてしたたかだ」という議論を展開していた。アメリカ経済悲観論が優勢だった当時としては、これは勇気ある少数意見だったと思う。そしていつも通り(?)、多数派が外れた。――実はその杉浦さんは、2004年くらいから「やっぱりマクロの脆弱性があるから、今後のアメリカには期待しにくい」と立場を変えていたのだが、このタイミングが2年ほど遅れていたら、文字通り「神降臨」であった。

○ともあれ、そういう時期が長く続いたので、アメリカ経済について語るときは、自然にミクロの優位性に目が行くようになった。と同時に、マクロの話をするのがためらわれるようになった。経常赤字の増大に歯止めがかからないけれども、これは安定的な不均衡の拡大であるから持続可能だとか、アジアの国々がドルを買い続けるから問題ない(ブレトンウッズ2理論)とか、今から考えるといかにも変な議論をしていた。(ワシもその手のことを、さんざん書いた記憶がある)

○で、今起きている事態は、「アメリカ経済のマクロの脆弱性が表面化した」ことに尽きる。経常収支の赤字を資本流入で補うために、いろんな仕組みがあったわけで、その中にサブプライムやらCDSやらが入っていたのだが、それがパァになった。もちろん、今でもミクロの優位性は残っていて、例えば向こう10年で世界がアッと驚くような発明が10件出るとして、そのうち5件くらいはメイドインアメリカ、ということになるだろう。その辺はノーベル賞の分布を見ても一目瞭然というもの(でも、クルーグマンの経済学賞は政治的過ぎるよな)。しかるにミクロの優位性は、今後はマクロの脆弱性の陰に隠れてしまうのであろう。

○次に、金融の仕組みはどこがおかしかったのか。

○世間一般的には、投資銀行の強欲さがウォール街をおかしくしてしまったのだということになっている。いわば肉食動物=悪玉論である。あいつらが全滅したから「ザマーミロ」ということになるだろう。だが、ワシはへそ曲がりなので、実は商業銀行=草食動物の側にも問題があったのではないかと思っている。

○本来、銀行というものは、人を見てカネを貸す職業である。なぜなら、カネを借りた人がカネを返すかどうかは、本質的にグレー(分からない)だからだ。しかし、グレーな貸し出しを増やすには限界がある。相手をキチンと見ていなければならないし、そんなのは面倒ですからね。手っ取り早く業容を拡大するにはどうしたらいいか。そう、グレーを白か黒にデジタル化できればいいのである。

○金融の証券化とは、まさしくグレーを白にデジタル化することであった。住宅ローンを100件まとめて、貸し倒れが5%あるとして、利回りはこれくらい、格付けはこれくらい、ということで商品化して誰かに売り飛ばしてしまう。そしてB/Sから消してしまう。一丁上がり。あるいは貸出先の企業のCDSを買う。これで相手が倒産しても大丈夫ということになり、貸出債権をB/Sから消せる。これもグレーが白になるマジックである。「人を見てカネを貸す」なんてアナログな商売をしていたのでは、こうはいかない。

○しかし証券化商品を売り飛ばす相手は、場合によっては自社の関係会社であったりして、本当の意味でオフバランス化されていないことが多かった。あるいは、CDSもいろんな人がいろんな人を相手に出しまくって、想定元本が54兆ドルにもなってしまったが、基本が相対取引だから情報開示も不十分、という怖いことになっていた。要はお手軽な信用拡大によって、誰もが自分のリスクをコントロールできなくなっていた。だって、自分が貸した相手が分からなくなっちゃったのだから。この状態から「基本に帰る」のは大変なことでありましょう。

○ま、「今頃言っても遅いよ」てな話ばかりなのですが、自分でも悔しいと思いつつ、上記のようなことを考えております。


<10月15日>(水)

○「当面の金融問題と米大統領選挙」というテーマで、本日2箇所で講演をいたしました。どちらも格調の高い質問をたくさん頂戴しまして、その辺について少々メモしておきます。

○今回の金融危機に対して、「アメリカの時代の終わり」「自由な市場主義の終わり」「小さな政府の時代の終わり」といった受け止め方が少なくありません。というか、それはきわめて自然な反応であろうかと思います。ところが、それで次に始まるのがどんな時代かというと、なかなかにイメージがつかめないのであります。

(1)アメリカの時代が終わるとして、次はどの国の時代なのか。ユーロ圏にその気概なく、中国にその資格なく、日本にその自覚なく、ロシアなんぞはみずからが深刻な経済危機に陥っている。つまり受け皿がない。外交安保の世界では「アメリカ一極時代の次は無極時代」という議論があるが、グローバル経済において「リーダーシップの空白」を招くと大変なことになるだろう。要するに、皆さんの共通の利害は「しっかりしてよ、アメリカさん」ということに尽きるのではないか。

(2)自由な市場が望ましいことは誰もが同意するところだが、今やそれでは動かなくなってしまい、金融の世界がほとんど国家統制になってしまった現状というものがある。今後は、効率的な規制と監視が求められるだろう。そのためには、「証券会社はSEC、銀行はFRB、保険は各州の監督署、コモデティには商品先物取引委員会があって・・・」という現状を、バッサリ大改革する必要がある。それだけでも、大変な構想力が必要になるはずだが、それはかなり先の課題ということになりそうだ。そもそも、そんな心の準備ができていないのである。

(3)金融危機の克服のために、政府がジャンジャンお金を注ぎ込む事態が進んでいて、それだけでアメリカは「大きな政府」になってしまいそうである。それでは、これまでの「小さな政府」時代の保守主義に変わる新しい理念が用意されているかと言えば、そんなものはどこにも見当たらない。これはある意味、リベラル派の不作為というもので、今年のノーベル経済学賞を受賞された方なども、ただただブッシュの悪口を言い続けてきただけで、代わりの受け皿になるようなアイデアを用意していないのではないか。

○それでは、次の時代をどうやって用意するかというと、とってもグリードで、とっても頭が良くて、要はこれまでインベストメントバンクでガッツリ稼いでおられたような肉食動物系の方々に頑張っていただくしかないのではないか。「金融危機とひとつの時代の終わり」という現状は、勧善懲悪的に捉えたくなったりもするわけですが、本当のところは「もういっぺん悪が栄える」ことになってしまうのかもしれません。まあ、それにしたって、今の無秩序状態が長引くよりはずっとマシだと思いますけれども。


<10月16日>(木)

○ふーん、10月末解散、11月末総選挙ですかあ。補正予算は通った、イラク給油活動も通す、二次補正はあきらめる。政治空白は出来るけど、アメリカだって選挙やってるんだから構わんだろう。そういう理屈なら、できないこともないけど、「文芸春秋の記事」のお陰で解散が早まると言うのは、ちょっと解せないですなあ。この記事にある通りでっせ。

○その一方で、この記事なんかを見ると、解散が早まるのを無邪気に喜んでいる様子が窺えます。察するに、「10月26日総選挙」という誤報を出した各紙にとって、文芸春秋の記事は「大ラッキー」だったのでしょう。実は「解散権は麻生太郎にではなく、赤坂太郎にあったのだ」って、ちょっと面白過ぎはしないか。

○政治家の間でも、「10月冒頭から事務所を借りちゃった。投票日が10月26日だと思ったのに、万が一、越年するようなら、いっぺん解約しなきゃ」といって悩んでいる人が居ると聞く。それでも11月末であれば、賃料を1か月分払うところを2か月分になっただけで済む。頼むから、早いとこ解散してくれ〜、という声は与野党ともに多いんじゃないだろうか。

○もっともその場合、麻生政権にとって良いかどうかは別でありますな。11月末には景気もきっと悪くなっているし、「こんなことなら冒頭解散の方がマシだった〜」ということになるのかもしれない。将棋の世界では、疑問手とか悪手とか、悪い手にはいろんな呼び名がありますが、その最上級に「ココセ」(ここに指してくれ。そしたら俺の勝ちだ)という言葉があります。11月30日、先勝というお日柄が、ココセになりませんように。


<10月17日>(金)

○世界経済研究協会主催、「AAMO」(アジア経営団体協議会)の国際シンポジウムでパネリストを務めました。香港、インド、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ニュージーランド、ネパール、スリランカなど、いろんな国の方々が来ていて、久しぶりにアジアの息吹に触れた気がしました。いや、やっぱブロークン・イングリッシュの世界はいいですよね。

○改めて確認しましたが、アジア経済はなおも自信を持っている。「デカップリング」という議論が堂々とされている。国際金融危機はたしかに起きているかもしれないが、ワシらは違うぞという思いがあるようです。日本国内の議論はかなり悲観ムードになっていますが、アジアのオプチミズムは健在であります。

○それはまあ、上海でもムンバイでも株価は落ちている。だが、金融市場が疑心暗鬼に陥って、高い金利を払わないと資金調達ができないとか、銀行同士の貸し借りに中央銀行が入るとか、そんな馬鹿なことはアジアでは起きていない。それなら、株価など下がれば上がり、上がれば下がると達観していれば良い。

○もしも現在の金融危機が、世界全体を巻き込むような恐慌に至るのであれば、なんとかアジアは「デカップリング」を図らねばならない。間もなくAPECや東アジアサミットの季節を迎えますが、そういう前向きな議論をやっていきたいものです。麻生首相には、そういうのが似合いそうですし。


<10月18日>(土)

○本日は秋日和で良かったですな。当方は浮世の義理で、子供のドッジボール大会の審判を務めました。

○審判は初めてだったので、「モンスターペアレンツの猛抗議を受けたらどうしよう」なんて心配してたんですが、総じて無事に終了しました。ただし見ていると、特に低学年の部の場合は、後ろで応援している親の熱意が、そのまんま試合結果に反映されるものですね。なにしろ低学年は、ボールに背を向けたまま固まっちゃうような子供がいますから。3人しかいない外野の子が一箇所に集まってしまい、それ以外の方向に飛んだボールが拾えないとか。

○これが高学年ともなると、さすがにドッジボールのノウハウが備わっています。残りの人数と時間を計算して、「これは勝てる」と思ったら、ボールを回して時間稼ぎをするような高度なプレイも見られます(しかし、そんなことを後ろから大人がアドバイスするのはいかがなものか)。そうかと思うと、背後のヤジを気にしてムキになる、なんて子供らしいシーンもあります。

○高学年の決勝戦ともなると、かなりの迫力です。ボールを受け止める際の「ドシン」という音が校庭に響いたりします。このクラスになると、はっきり「勝負の流れ」みたいなものがあって、わずかなきっかけで大逆転が起きることもめずらしくありません。審判というのは、オーバーラインを厳密にとるかとらないか、みたいなことで簡単に勝負を左右してしまいますので、なかなかに難しいものがありますな。その点、小学校の先生はさすがで、PTA審判に比べるとはるかに慣れておられました(当然か)。

○記念品として、500円分の図書カードをもらいました。しかしこんな日に風邪を引いて、欠場してしまうウチの子供はなんとケシカラン。


<10月19日>(日)

○忘れないうちに宣伝をしておきましょう。11月1〜2日に都内でATICというコンベンションがありまして、そこで私めが講師を務めます。


■11月2日(日) 13:30〜14:15 定員 200名

■東京ドームシティープリズムホール 

  最寄り駅:JR中央線・総武線・三田線「水道橋駅」
  大江戸線「春日駅」丸の内線・南北線「後楽園駅」

■「米大統領選の行方と今後の米国経済」

■吉崎 達彦氏(双日総合研究所副所長)


○事前申し込みはこちらから。もちろん無料です。

○ほかに偉い人が一杯出る予定ですし、当節の情勢ではマネー関連のセミナーに出足は悪かろうかと存じます。定員200人ということですが、「お前のところの客足がいちばん悪かったぞ」などといわれると悲しいので、お暇な日曜日、米国大統領選の最終情勢について聞いてみたいと言う方は、どうぞお申し込みをお願いいたします。


<10月20日>(月)

○唐突でありますが、「朝まで生テレビ」について。以前2回ほど出たことがあるのですが、正直なところあんまり自分の性には合わないと思っております。局の側でもそう思ったらしく、その後は見事にお声がかからなくなりました。そもそもあまり夜更かしはしない方なので、普段から家でも見てないんですよねえ。でも、こういうメンバーだったら見てみたいかなと思ったりする。


植草一秀(エコノミスト)
潮 匡人(軍事ジャーナリスト)
梅田望夫(ITコンサルタント)
大村秀章(衆議院議員・自由民主党)
勝谷誠彦(コラムニスト)
香山リカ(精神科医、立教大学教授)
小池 晃(衆議院議員・共産党)
佐藤 優(起訴休職外務事務官)
辻元清美(衆議院議員・社会民主党)
長妻 昭(衆議院議員・民主党)
西川りゅうじん(マーケティングコンサルタント)
二宮清純(スポーツジャーナリスト)
福田和也(文芸評論家、慶応大学教授)


○上記のメンバーは、一部に「テレビには出ない人」も入っていますけど、わりと「朝生」的には自然に思えちゃうでしょ? これがどういう顔ぶれかというと、全員がワシと同じ「1960年生まれ」なんです。こうしてみると常連が多いし、どんなテーマでもいけちゃいそうだし、意見も割れて白熱しそうで、番組としても悪くないのではないかと。

○ほかにも1960年生まれといえば、サンプラザ中野とパッパラー河合とか、真田広之と佐藤浩市とか、アンカツこと安藤勝巳とか、横峯パパとか、U2のボノとか、「神の手」ことディエゴ・マラドーナとか、恐れ多くも皇太子殿下とか。これが全部、子年48歳、年男年女の同級生たち。まことに人生いろいろでございます。

○たまたま今日、同じ年のこの人と雑談していて、こんな馬鹿話を思いついてしまいました。でもねえ、ワシは同じ同級生なら、黒木瞳さんがいいなあ。などと言いつつ、明日は「ムーブ!」で勝谷さんとご一緒だという話もチラホラ。(ちなみに、須田慎一郎さんは勝谷・吉崎よりも年がひとつ下です。信じられますか?)


<10月21日>(火)

○新大阪の駅でタクシーに乗り込んで、「意外と暑いですねえ」。そしたら、運転手さんが「このところ毎日ですわ」。それを聞いてなぜか、「そういや、昨日で岡田阪神も終わりましたなあ」という言葉が口をついて出た。そしたら、運転手さんの言葉が止まらなくなってしまった。

「そもそも岡田は采配が下手や」(ホンマや。いつも欲張り過ぎや)

「いつまでもJFKじゃあかん。かといってアッチソンもあかん」(そやそや、ピッチャー替えるタイミングが早過ぎる)

「関川はあんな図体して、犠打じゃのうてホームラン打たなあかん」(人間的にはいいヤツみたいですけどなあ)

「3番桜井、4番新井、5番金本でもええやないか」(林威助も、もっと伸びてもらわな)

「今岡は打点王になってからおかしくなった。スイングが無茶苦茶や」(よう見てはりますな)

「だいたい阪神は若手には逸材がおるのに、よう育てきらん」(いつものことや)

「ドラフト1位で採った選手が全然あかんやないか」(鳥谷の前は岡田で、その前は田淵しかおらんわなあ)

「13ゲームも離しておいて、こんなんじゃ情けないわ」(まったくや)

○あっという間に朝日放送新社屋に到着。本日の「ムーブ!」が放送開始。MCの堀江&関根、コメンテーターの勝谷、須田、吉崎と、全員が重度の阪神ファンである。番組はもちろんのこと、大阪全体に昨夜の敗戦が尾を引いている。藤川がウッズに打たれて、阪神、クライマックスシリーズ敗退。東京に居ると気がつきませんが、大阪の新聞はど派手なんです。

「守護神、背信の1球」

「岡田阪神、無念の幕引き」

「藤川ぼうぜん」

「岩田 8回零封も実らず」

「雪辱なき終戦〜黄金時代、一転悪夢に」

○大阪の報知新聞は、一面が「岡田胴上げ」のニュースなんです。胴上げ、ちゅうたって、優勝したんちゃいますけどね。阪神ファンの「岡田コール」に応えて、監督が宙に舞いました。実は阪神ファンは、とっても岡田監督が好きだったんですねえ。(ひとつには、星野監督が北京五輪で男を下げたから、という背景もあるのでしょう)。

○かく言うワシも、岡田監督が好きだ。采配が欲張りでも、藤川に勝負させて負けちゃっても、ええやんか。勝負に辛い野球は阪神タイガースには似合わんで。岡田阪神の5年間は、優勝は1回だけだがAクラスが4回。強い野球を見せてもらったし、観客動員数でも巨人を圧倒した。そしてタイガースを愛することにかけて、岡田を超えるものは誰もおらん。いやー、お疲れ様でした。

○次は真弓監督らしいですが、実は岡田彰布と真弓明信、二人とも名前が「あきのぶ」なんですな。まあ、真弓監督がダメでも、平田もいるし、木戸もいるし、和田もいる。(って、全部、1985年組ですが)。その辺でつないでいるうちに、矢野あたりがいい指導者に育つはずである。こんなに生え抜きの指導者が豊富におる球団はほかにないで。

○で、本日は大詰めの米大統領選挙特集で、「オバマの勝ちが見えた」てなことを言ってきました。その辺のことは、またあらためて。


<10月22日>(水)

長島昭久衆議院議員の「エンパワーメント・ジャパン・フォーラム」で、アメリカ大統領選挙をテーマに、ナベさんこと渡部恒雄さんと3人でパネルディスカッション。時間が短いので、深く突っこんだ話はできませんでしたけれども、大統領選挙投票日まであと2週間、日本の総選挙も近い(かもしれない?)この時期に、良い機会を頂戴したと思います。

――ついでにいいますと、来週号の「SPA!」と「週刊朝日」に登場して、米大統領選挙直前情報を語る予定です。ご注目いただければ幸いです。(ちなみに両方とも、この人とご一緒であります)。

○選挙の情勢は、ますますオバマに傾いております。いつものこのページをチェックすると、10月22日現在、オバマ364対マッケイン171、不明3という結果。ここからマッケインが逆転勝利を目指すには、フロリダ(27)、バージニア(13)、ノースカロライナ(15)、オハイオ(20)、ミズーリ(11)、ネバダ(5)、ノースダコダ(3)を全部ひっくり返して、それでも265と過半数に届かない。候補者としては、体はひとつしかないわけですから、あと2週間で全部の州を回るのは至難のわざとなります。こうなると、アメリカの広さが仇になってしまうのですね。

○そこで苦し紛れの戦法というか、マッケイン陣営ではペンシルバニア州(21)での運動に力を入れている模様。一か八かの勝負手というわけですが、なかなかにハードルは高そうです。そしてintrade.comでは、オバマ86対マッケイン14という大差が付いてしまいました。

○実を言うと、こんなに大差が付くとは予想外でした。なにしろ、直近でランドスライドというと1996年まで遡ってしまいますから。例えば、11月4日の結果は日本時間の何時頃に判明するか。2000年は何日もかかって裁判沙汰になったし、2004年も翌日の午前になってケリーが敗北宣言してケリが付きました。ところが2008年は、ひょっとするとバージニア州とノースカロライナ州の出口調査が出た時点で当確が打ててしまうかも。

○これはイースタンタイムの夕方ということですから、日本時間では5日朝ということになってしまいます。すると日本のマスコミは、5日の昼くらいに「歴史的瞬間」を報道することになるのでしょうか。長い戦いのゴールがようやく見えてきて、なんとも感慨深いものがあります。


<10月23日>(木)

○昔、欽ちゃんがやっていた「良い子・悪い子・普通の子」というネタを思い出しますな。これは。

●Candidate Equals http://www.candidateequals.com/

What do Barack Obama, Joe Biden, John McCain and Sarah Palin equal? Find out with these pictograms what your fellow voters think of the candidates. Enjoy our free collection of Candidate Equals photos and feel free to make and submit your own. This site is meant to be humorous so leave your party affiliation at the door and enjoy! Remember to vote Nov 4th!


○要するにサラ・ペイリンを笑い飛ばす企画なのですが、アメリカの正副大統領候補に対してこの仕打ちは前代未聞です。


「バラク・オバマはi-Phone、ジョー・バイデンはブラックベリー。ジョン・マッケインは旧式の電話、サラ・ペイリンはおもちゃの電話」(電話機編)

「バラク・オバマはルーク・スカイウォーカー、ジョー・バイデンはハン・ソロ。ジョン・マッケインはジャバ・ザ・ハット、サラ・ペイリンは、ジャバに捉えられたレイア姫」(スター・ウォーズ編)


○・・・・うーん、このノリは、「良い子・悪い子・普通の子」というよりも、昔懐かしい文化放送「セイヤング」、谷村・バンバンの「天才・秀才・バカ」シリーズに近いよな(こんなこと書くと年がバレるなあ)。いかに深夜放送だったとはいえ、あの手のギャグは今では放送できないでしょうなあ・・・・。

○話を戻して、ペイリンさんが思い悩む必要はないと思います。悪名は無名に勝る。政治家の人気のバロメーターは、(1)タブロイド紙(もしくはスポーツ新聞)が取り上げること、(2)モノマネが登場することです。2ヶ月前までは誰も知らなかった彼女がここまで来てしまうというのは、現代米国政治における一種の奇跡かもしれませんぞ。なにしろ彼女は、ニュージーランドのタブロイド紙でも見出しになっておりましたからな。

○もういっちょ。こんなジョークはいかがでしょうか?


民主党陣営にて。

記者A「オバマさん、あなたにいいニュースと悪いニュースがあります」

オバマ「いいニュースから先に教えてくれ」

記者A「あなたは大統領になれます」

オバマ「ありがとう。では、悪いニュースは?」

記者A「あなたは大統領になってしまいます」

そのとき、共和党陣営では。

記者B「マッケインさん、あなたにいいニュースと悪いニュースがあります」

マッケイン「悪いニュースから先に教えてくれ」

記者B「あなたは大統領になれません」

マッケイン「ありがとう。では、いいニュースは?」

記者B「あなたは大統領にならなくて済みます」



○と、こんな風に政治家を笑い飛ばすのは大いに結構なことですが、麻生首相に対するぶら下がり取材で、夜飲み歩くのケシカランとか、ホテルのバーは庶民から見ると高いとか、イチャモンをつけた新聞記者がいると言う話にはガッカリですな。こういう「下から目線」は、政治報道の質を貶めると同時に、政治家を小粒にしてしまう原因になるんじゃないでしょうか。


<10月24日>(金)

ビデオニュースドットコムにて、「マル激トーク・オン・ディマンド」の収録。10日後に迫ったアメリカ大統領選挙について、神保哲生さんと宮台真司さんと3人で語る。カメラを回しっぱなしにして、3人で話が弾んで、なーんと2時間半。普通の映画よりも長い。というか、新幹線「のぞみ」に乗っていたら、大阪まで着いてしまうではないか。


ワシ「これ、多少は枝葉を切って編集するんでしょ?」

神保「いえいえ、ほとんどこのままで載せますよ」


○うーん、信じられん。いくらオン・デマンドとはいえ、こんな長いビデオを見る人がいるんですか。人によっては、i-podに落として見ているそうですが。まあ、アメリカ大統領選挙オタクには、それなりに面白い内容になったとは思いますけれども。

○収録を終えて、どーっと疲れたのですが、ホストのお二人はそれほどでもない様子。当たり前のことだが、慣れておられる。というか、そもそも話している間もリラックスしておられるのですね。その点、ワシはテレビの文法に沿って話しているので、2時間半も緊張が続かないのである。

○テレビってものは、視聴者はお茶を飲んだり、皿を洗ったり、パソコンを叩きながら見ているメディアですから、普通の話し方ではダメなんですよね。とにかく振り向いてもらわなきゃいけない。ということで、独特の話法ができる。筆者の考えるテレビの文法とは、例えば以下のようなものです。


(1)結論から先に話す。

(2)ネタの出し惜しみをしない。(いつもその場で、いちばん面白い話をする)。

(3)感情を込めて、抑揚をつけて語る。

(4)長くても1分半くらいで区切りをつける。

(5)できればMemorable Phraseを入れる。

(6)姿勢は正しく。


○ところがネットの文法というのはこれとは違い、もっと普段着でいいのですね。大学の講義のように、ゆるゆると語るので良いのです。見る側も、ゆるゆると見てくれる(聞いてくれる)らしいので。「気の抜けた瞬間ができると、そこでチャンネルを替えられてしまう」という恐怖は考えなくてもいい。そんな部分は飛ばしてしまえばいいわけですし。

○ということで、本日の収録はおそらく日曜日にはアップされていると思いますので、よろしければ覗いてみてください。

○今日出た話の中では、「オバマにはアメリカの再統合という夢があり、マッケインには国への献身というドラマがある。大きな物語を持つ同士の対決なのだ」という指摘が印象に残りました。昨日の「良い子、悪い子、普通の子」風にまとめると、こうなります。


オバマの物語は、未来のアメリカにおける理想の物語。

マッケインの物語は、過去のアメリカにおける美しい物語。

ペイリンの物語は、現在のアメリカにおけるありがちな物語。


○おそらく普通のアメリカ人にとっては、「17歳の娘が未婚で妊娠しちゃってぇ」てなペイリン家の事情が、一番身近な物語に感じられたのではないでしょうか。


<10月26日>(日)

○来週も大変ですな。下記のように重要な指標の発表が相次ぐ。主要企業の決算発表も本格化するし、その過程で円高、株安による業績の下方修正も相次ぐだろう。結果として、景気の急速な悪化が確認されることになる。


28日(火) 米FOMC(29日まで)

29日(水) 鉱工業生産(9月、経済産業省)

30日(木) 米国・実質GDP速報値(2008年7−9月、米国商務省)

31日(金) 新設住宅着工(9月、国土交通省)
      家計調査(9月、総務省)
      失業率・有効求人倍率(9月、総務省・厚生労働省)
      消費者物価指数(10月都区部、9月全国、総務省)


○ということは、株式市場はなおも荒れる公算が高い。これだけ下落したというのに、なんというか底に当たったような感触がないのである。おそらくはバブル後最安値を更新するだろう。政府としては、緊急市場安定化策をまとめて、その反応を窺って、ということで当面は忙しく過ぎていきそうだ。

○外交日程も目白押しである。特に11月4日に(おそらくは)オバマ政権誕生ということになると、その後はそれ一色という感じになる。11月15日の金融サミットも、主役はオバマ氏ということになるだろう。ホストはブッシュさんだけど。そこでお馴染み「誰が次の財務長官になるか」という話が飛び交う。そこに集まるG20の中には、洒落にならないくらいヤバイ国もある。とりあえずはロシアだな。ガスプロムが危ないって、そりゃどういうことよ。

○金融サミットにおける日本の役割とは何か。そりゃあもう、米ドルを支えられるかどうかということに尽きる。来年の米国財政赤字は、軽く1兆ドルを越えるだろう。なにしろ、何もなくて4000億ドル、資本注入に使っちゃったのが2500億ドル、それに加えて景気悪化による歳入減あり、不良債権の買取あり、追加の景気刺激策ありですから。

○これを誰がファイナンスしてくれるのか。中国はASEM(欧州アセアン会議)を北京で主催して「さすが」という感じなのだが、なにしろ初めての本格的な金融危機を迎えているので、内心は動揺していると見る。現在の資源価格では、産油国もあまり手が出ないだろう。となれば、日本しかない。ここで秘策は、サムライ債の発行で、米側に対して「円建てのオバマボンドを出せ」と催促することだと思う。

○何しろ1兆ドルは、ほんの少し前までは120兆円であったが、今なら95兆円である。とりあえずその10分の1程度の金額であれば、為替リスクのない円建て米国債なら、国内の民間資金のみで軽く集まるのではないか。利率がいいはずなので、生保さんあたりが競って買うはずである。これが決まれば、金融安定化に対する貢献は大といえよう。果たして、できるかな?

○ということで、大変な日々が続く。年内解散はないと思うぞ。少なくとも、している暇がない。


<10月27日>(月)

○ロバート・フェルドマン氏の講演会を聞きにいったら、大盛況であった。まあ、こういう日ですからね。ちょうどお昼だったのですが、その時点ではまだ株価は大きくは下げていない。「それだけでもグッドニュースではないか」と言われると、なるほどごもっともである。

●ここでクヨクヨしている暇はない。とにかくアイデアを出して、行動しなければならない。

●麻生首相が指示を出した内容は玉石混交。資本注入は良いこと。株の買い取りは、こういうときだけにやむをえない。時価会計を緩めることには反対。時限措置をつけなければならない。――それでも、とにかく元気に動いていることは評価できる。

○なるほど、株がバブル後の最安値をつけるような状態になったら、とにかくいろいろやってみるしかないのだし、その結果が悪かったところでそれほど思い悩む必要もないのである。とにかく行動せよ。萎縮してしまうのが、いちばん良くない。危機を迎えたときのアングロサクソン的発想というのは、そういうものなのかなと感じました。

○個人的には、いちばん興味深く感じたのは、この人が行った質問(「この時期に、選挙による政治空白ができることをどう思うか?」)への答えでした。

●1929年のときは、4月にフーバー政権が誕生して、10月に大暴落が起きた。そして政策変更が起きるまで、実に3年半もかかった。そのことが事態を悪化させた。今回は間もなくブッシュ政権が終わるわけで、次期政権は新しいスタートを切れる。これは空白というよりも、良いことではないか。

――これぞ米大統領選挙の本質を言い当てるような指摘であります。

○さて、「今こそアイデアを出せ」という言葉に触発されて、ちょいとこんなことを考えてみました。景気対策としての定額減税などは筋が悪い。多少は金がかかってもいいから、もうちょっと後世に残るような、ありがたみのあるような事業はできないものか。日本版のニューディール政策というと大袈裟になってしまうが、簡単に言ってしまえば「筋のいいバラマキ政策」である。

○そこでこんなのはどうでしょう。日本各地の限界集落や無医村に、ヘリコプターが離着陸できる基地をバンバン作ります。でもって、各県ごとにお医者さんの部隊を作る。つまり「ヘリコプター・ドクター」のネットワークを作るんです。高齢化でも人口減少でもご心配なく、これからはお医者さんが飛んできてくれますから、というサービスを始めます。

○基地の整備のためには、道路特定財源を使います。需要がなさそうな道路を作るときに、よく地方では、「医者に行けないから、高速道路が要る」と言いますよね。「それよりもヘリコプターで医者が来てくれる方が安心でしょ」というわけです。もちろん基地がたくさんできれば、お医者さんに限らず、ヘリコプターを移動手段としてどんどん使えばいいわけです。

○この計画、べらぼうなカネがかかるわけではなく、時代の要請にも適しているし、安心安全を保証する政策でもある。となれば与野党ともに、反対することが非常に難しいと思うんですね。

○で、このアイデアには「落ち」もついている。すなわち、名づけて「ヘリコプター・マネー作戦」と呼ぶ。・・・・ああっ、すいません。ついでにケチャップもつけましょうか。


<10月29日>(水)

○ある人から教えてもらったこの話、さっそく今日の講演で使わせてもらいました。めちゃ受けました。

問い:

福田政権(上から目線)と、麻生政権(頭が高い)の違いを説明せよ。

答え:

「上から目線」とは、知識や教養がある人が、「あなたは分かっておられないようだが、私はあなたとは違うんです」などと慇懃に講釈をたれること。聞かされる方としては腹が立つけれども、黙って聞かなければならない。

「頭が高い」とは、あんまりよく分かっていない人が、「あんたは分かっていないみたいだけど、ホテルのバーってのは高くはないんだよ」などと傲慢に説教すること。聞かされる方としては、「でもカップラーメンは400円もしません」と言って反論したくなる。

○どちらも人の上に立つ人として褒められた話ではありませんが、個人的にいえば「頭が高い」方が陽性で、本人があまり根に持たないように見えるところが救いであると思います。

○さて、「頭が高い」太郎さんは解散を先送りするようです。まだ「年末解散、年頭選挙」の可能性は残っていると思いますが、このことで300人の自民党議員が冬のボーナスを手にすることになるし、政党助成金の分配も現有議席に基づくことになるのですよね。これが選挙後であれば、「自民党200人、民主党200人」になっていた公算が高いので、100人分くらい損するところでした。ちゃっかりしておられますねえ。


<10月30日>(木)

○これは松尾文夫さんに聞いた話ですが、アメリカでは2004年の選挙時の経験から、「政権交代が起きたときには、投票日の翌日から引継ぎを始める」ことが法制化されているのだそうです。今回のケースでは、すでにボルテン首席補佐官がオバマ、マッケインの両候補と連絡を取っており、次期大統領が決まればその翌日から、国家機密へのアクセスを認める準備が整っているとのこと。

○11月4日の投票日で決まる次期大統領が、実際に政権に就くのは2009年1月20日であり、それまでは政権移行期間となります。従来であれば、次期大統領はこの間に人事構想を練ったり、自分の政策に関する専門家の意見を求めたりしたのですが、それを前倒しするという考え方です。現在はテロとの戦いの真っ最中であるし、100年に1度の国際金融危機であることも考え合わせると、こういう措置はきわめて望ましいものだと思います。

○また、「ワシントン・ウォッチ」という情報誌の最新号によると、来週の投票日でオバマの当選が決まったら、「直ちに新政権の財務長官を決め、その人物の指名をブッシュ大統領に頼み、第2次景気対策法案の審議、採決のため11月17日から始まる予定のレイムダック議会で同指名を承認する」ことが検討されているようです。年内にも新財務長官が誕生し、入れ替わりにポールソンは退任する。ことによると、顧問という形でしばらく残り、「併走期間」を作るかもしれません。言うまでもなく、狙いは「金融危機下における切れ目のない政策運営体制」にあります。

○できれば11月15日の金融サミットでは、オバマ次期大統領と次期財務長官候補者が参加し、ポールソンと堅い握手をしてほしいものです。つまり、「政権交代による混乱はありませんよ」と全世界に対してアピールするわけです。現在の金融不安は、多分に心理的な要素が多くなっていると思いますので、こういうことはきわめて重要だと思います。

○さて、問題は次期財務長官の候補者なのですが、今までに名前が挙がったのは以下のような方々です。

ロバート・ルービン     元財務長官
ローレンス・サマーズ   ハーバード大学前学長
ティモシー・ガイトナー   ニューヨーク連銀総裁
ポール・ボルカー      元FRB議長
クリストファー・ドッド   上院議員、銀行委員長
ウォーレン・バフェット    バークシャー・ハザウェイ会長
ジョン・コーザイン     ニュージャージー州知事
ジェイムズ・ダイモン   JPモルガン・チェイス会長
シーラ・ベアー       連邦預金保険公社総裁

○当溜池通信の趣味としては、さっそく本命、対抗、穴馬と言った印を打ちたくなるところですが、これが案外と難しい。というか、皆目見当がつかないのです。次期財務長官のポストは、日本のWBC監督を決めるのと同じくらい難しい

なんとなれば、

(1)能力のない人は論外→失敗したときのショックが大きすぎる。実績も実力も運も必要です。

(2)少しでも傷があってはならない→なにしろ7000億ドルを預かる人です。完璧にクリーンでないと困ります。ウォール街からのわずかな献金でも命取り。

(3)できればビッグネームであってほしい→「誰それ?」という人では国民が納得してくれない。でないと安心できません。


要するにこんな感じですかね。

ロバート・ルービン→王貞治(理想的だが、本人が受けてくれそうにない)

ローレンス・サマーズ→星野仙一(本人はやりたそうだが、周囲が認めたくない)

ウォーレン・バフェット→広岡達朗(一瞬、妙案に思えるけど、現実味がない)

ポール・ボルカー→野村克也(さすがに貴方の時代ではないよね)

ティム・ガイトナー→原辰徳(軽量級で頼りないけど、これしかないか)


○結局、軽量級のガイトナーがもっとも有力であるらしい。でも原さんじゃ心配だよなあ、と思うのは阪神ファンのワシだけではないだろう。だって、負けられない戦いですぜ、これは。


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広告:明日はこんな番組があるんです。よろしくね。

http://www.nikkei-cnbc.co.jp/program/keizaitouron/plus081031.asp 

■日経CNBC 

■ザ・経済闘論 「決戦前夜 Eagleは甦るか」 米新大統領誕生で世界は?

■10月31日(金) 21:00〜22:30

(再=10月31日(金) 23:30〜25:00、26:20〜27:50)

■出演者

五十嵐 敬喜(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長)

金子 勝(慶應義塾大学教授)

藤原 帰一(東京大学大学院教授)

冷泉 彰彦(作家(米国在住))

吉崎 達彦(双日総合研究所副所長)

司会:谷本 有香(「夜エクスプレス」メインキャスター)








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki