●かんべえの不規則発言



2017年11月







<11月2日>(木)

○今日の夕方の首都高は思い切り混んでいたとのこと。「トランプならまだだと思っていたのに、イヴァンカが来ちゃってるんだってねえ」との声あり。国際女性会議ことWAW!は今日が2日目。明日の基調演説が、イヴァンカ・トランプ大統領補佐官なんですなあ。

○それでもって、トランプ大統領は11月5日に到着。日本におけるメインイベントは、おそらく霞ヶ関カンツリー倶楽部でのゴルフ。今日の「天声人語」がいちゃもんをつけてましたが、6日になったらテレビがその話題一色になっていることは請け合いでしょう。

○日米首脳会談において、「自由で開かれたインド太平洋」という理念で一致するかもしれない、というニュースには驚きました。これが実現すると、日本が提示した価値外交に、アメリカが乗っかるという形ができる。もっと言えば、安倍さんがトランプさんを教育したということになる。これを画期的と言わずして何と言いましょうや。

○他方、トランプさんは出発間際にFedの議長を指名したり、税制改正のとりまとめを命じたり、あいかわらず忙しく、お騒がせである。それにしても、出発間際に起訴されたマナフォート元選対本部長の件は厳しいですな。ムラー特別検察官の狙いは、思い切りマナフォートの旧悪を暴いておいて、「ロシアゲートで協力してくれれば罪を軽くしてあげるよ」という取引であろう。

○そしてここで登場したのがジョージ・パパドポウロスという聞き慣れない名前。トランプ選対とロシアをつないでいたと言われる人物である。ここから一気に本丸に迫れるか、などなど、今週末はトランプウィークですな。


<11月4日>(土)

○「ブレードランナー2049」を見てきた。見終わった瞬間、映画館で隣の席の配偶者に向かって、思わず「ひとつで十分ですよ!」(なんで続編なんか作ったんだよお〜)と言ってしまった。この映画、哀しいけどヒットしないだろうなあ。

○それでも、この映画をけなす人が身近に居たら、ワシはきっと全身全霊を傾けて罵倒するであろう。「お前ごときに何が分かるのだあああ」と。頼むから明日以降のワシに議論を吹きかけないでくださいまし。「デッカードはやっぱりレプリカントなんですよね?」などと。

○初めて「ブレードランナー」を見たのがどういう状況であったか、実はよく覚えていない。大学生時代にビデオで見たのだと思う。自分が見る以前に、上海馬券王先生から熱っぽく、いかに傑作であるのかを聞かされた記憶の方はちゃんとある。それでも1980年代に、ほぼ同時進行であの映画を見られたのは幸福なことであった。あの作品を機に、SF映画は「ブレードランナー前」と「ブレードランナー後」にくっきりと二分されることになったのだから。

○今回の「BR2049」は、そこまで画期的な作品ではない。だが昔の映画を愛した者としては、見ないわけにはいかない。見たらきっと見ると後悔する。でも、見ないでいるのも落ち着かない。とりあえずハリソン・フォードが元気なうちにこの映画ができたことを喜ぶべきだろうか。部分的に面白いところはあるんです。日本のアニオタが泣いて喜ぶような美少女ジョイとか。でも、畢竟技巧の範囲内である。

○間もなく「スターウォーズ」のエピソード8(最後のジェダイ)も封切りになる。今のハリウッドは、新しいアイデアが枯渇しているのではないか。とりあえず過去の作品の続編やリメイクが安全策になってしまっている。しかしそれは時代全体がそうなっているのかもしれない。1980年代にあの酸性雨に濡れるロサンゼルスを描くことができたというのに、今日の才能たちはその延長線上の未来しか描けていない。

○もっともっと見る者を驚かせてくれないと、「ブレードランナー」の名が泣くと思うのである。


<11月6日>(月)

○今朝はモーサテに出演。

○トランプ訪日に合わせてのことだけど、同時進行で物事が進むので、論評することはもちろん難しい。それでも「プロの眼マンデー」で語る。うむ、我ながらずいぶん踏み込んだ発言をしておる(ゴメンね、有料サイトになっちゃって)。

○本日は出演者大勢で、「今日のオマケ」も盛り上がりました。後半になってくると、TARPの否決(2008年)やらパリバショック(2007年)やら、懐かしい話が飛び出しています。そういえば本日共演した木野内さんが、「これから減税になるかもしれないから、株は売りにくくなっている」「カーター政権でもレーガン政権でも、減税の後は株が売られました」と言っていたのは面白かった。やはりちょっとバブルっぽくなっているのではないでしょうか。

○会社に出て、産経「正論」の原稿を入稿。それから共同通信の電話取材があるので、午後2時半からの日米首脳会談の共同記者会見を見なければと思ったら、会社の中にはNHKを見られるテレビがほとんどないことが判明。仕方がないから、ケータイのワンセグで視聴する。よかった、ワシのはスマホじゃなくてガラケーで。

○思うことはいろいろありますが、今日のところは「安倍さんの『逆張り』投資が成功」ですね。他国の首脳が二の足を踏む中で、思い切りトランプさんの胸元に飛び込んだ。なにしろこの1年間で首脳会談が6回目(非公式含む)、電話会談は公表ベースだけで16回、ゴルフは2回、メシは何度一緒にしたかわからないくらい。しかもイヴァンカさんも厚遇した。先週末はあれで日本国内の雰囲気が変わりましたからね。

○先行投資の成果を刈り取ったのが今日というわけ。対北朝鮮で強硬姿勢を確認し、日米摩擦はあるものの「日米FTA」という言葉は出ずじまいで、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉を日米共同で売り込む形が決まったのですから。これまでの日米関係で、日本がアイデアを出してアメリカがそれに乗った、なんてことがあったでしょうか。

○もっとも問題はこれからです。APEC首脳会議と東アジアサミットでどんな風にふるまうか。そして米中首脳会談ではどんな協議がなされるのか。今週はホントに東アジア外交ウィークですね。


<11月7日>(火)

○今日の午前10時頃にトランプ大統領は横田基地を旅たち、次の訪問先である韓国に向かいました。やれやれホッとした。これで首都圏の渋滞も解消するし、「トランプさんが何を言い出すか」「ツィートするか」とハラハラすることもなくなった。しかも「日米FTA」に対する言及もなかったし、訪日中の北朝鮮の妙な動きもなかった。もちろん国内のテロ事件もなかった。後は当面、うちが知ったこっちゃない。

○ということで、本日の株価は盛大に上げました。とりあえず日米通商摩擦の再燃もないのだから、円高懸念は不要だったということになる。「有事の円買い」も起きなかった。結果として円ドルレートの110円台後半と、日経平均の2万3000円台は近いんじゃないかという気がします。

○本日は「こまち」に乗って秋田市へ。東北経済連合会さんのフォーラム講師を務めました。本日のお題は「トランプ政権の行方と今後の日本経済」。まことに時宜を得たテーマであります、って演題を決めた時点では、この日にトランプ大統領が日本に居るとは思っていませんでしたけど。

○それにしても秋田は日本酒の種類が多いですなあ。ちょっと覚えきれません。もちろん文句を言ってるわけではありません。今宵は7種類くらい、嗜みましたかね。今宵の秋田は暖かくて、コートは全然不要であります。それから「きりたんぽ鍋」もおいしかったです。


<11月8日>(水)

○たまたま秋田に行っていたことで、河北新報と秋田さきがけ両紙に、共同通信社から受けたインタビュー記事が掲載されているのを見ることができました。こういうのって、実はなかなかモノホンが手に入らないのです。ということで、以下はそのままご紹介。


●首相の「逆張り」奏功

双日総研チーフエコノミスト 吉崎達彦

 安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談は、日本の思惑通りの展開になった。対北朝鮮での圧力路線を確認すると同時に、トランプ氏が求める日米の自由貿易協定(FTA)への言及が避けられ、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた協力の強化でも一致したからだ

 この構想は元々、首相の考え方であり、米国第一主義を掲げるトランプ氏が賛同したことは米国の関与で中国をけん制したい首相にとって大きな成果だったと思う。

 またトランプ氏は北朝鮮による拉致被害者家族と面会し、拉致問題での取り組みも表明した。今回の首脳会談は、トランプ氏に「逆張り」してきた首相の外交が奏功したと言えるだろう。

 逆張りは、大勢に逆らって株を売買することであり、首相はトランプ氏が大統領に就任すると、その言動に警戒感を抱く他国の首脳にさきがけて訪米し、日米関係の重要性で一致した。

 トランプ氏の就任後、日米首脳会談は非公式を含めて6回目で、電話会談は少なくとも16回。そこで培った個人的な信頼関係が日米間の強固な連携の源になっている。

 日本でもトランプ氏との距離を置くよう主張する意見もあったが、悠長なことは言っていられない。核・ミサイル開発を進める北朝鮮と海洋進出を図る中国への対応で日米の緊密な連携は欠かせない。さらに、米国で対日貿易赤字を政治問題化させないためにも、トランプ政権との信頼関係は必要だ。

 その意味で、トランプ氏に加え、先だって来日した長女のイヴァンカ大統領補佐官を厚遇したことも妙手だった。

 ただ、今回の首脳会談で日米FTAが取り上げられなかったとは言え、トランプ氏は日米経済人との会合で「対日貿易は厚生ではなく、開かれてもいない」と不満を明確に表明したように、予断を許さない。

 2016年度の日本の対米輸出額は14兆円に上る一方、米国の対日輸出は7.5兆円にとどまる。この貿易不均衡を解決する方策は見当たらず、トランプ氏が「互恵的ではない」と注文を付けてくる可能性がある。

 トランプ氏は記者会見で、米国の防衛装備品を大量に購入するよう求めたが、これは長期にわたる支払いであり、即効的ではない。貿易不均衡を是正できなければ、トランプ氏は自衛隊の役割強化など日本に別の形でさまざまな圧力を掛けてくる展開もあり得るだけに、日本としては先を見通した戦略を描かなければならないだろう。
   ×   ×   
(聞き手は共同通信・久江雅彦)


<11月9日>(木)

○この季節につきものの「新語・流行語大賞」。本日、2017年のノミネート語が発表されました。「忖度」とか「ちーがーうーだーろー!」など、いかにもな候補が並んでおります。

○以下は当溜池通信における2017年の新語・流行語大賞を挙げておきましょう。今年、当欄や溜池通信本誌で良く取り上げた話題です。


●地政学リスク

●トランプ占い

●ジェロントロジー

●平成30年史

●経済ナショナリズム

●インバウンド

●別子銅山&石見銀山

●合衆国憲法修正25条

●新海ワールド

●バンコク馬券王先生


○そういえば今年の前半は腰痛に苦しんでいたのであった。うむ、1年はあっという間じゃ。


<11月10日>(金)

○TPP11が昨日、閣僚会議で大筋合意に至ったようです。やれ、めでたや。ということで、勝手に家で一人で祝杯を挙げております。

○酔っぱらってくるにつれて、だんだん腹が立ってきた。自称「TPPの伝道師」を何年もやってきて、これまでに受けたTPP反対派による仕打ちを思い出すからである。何だったんだろうね、あの人たちは。

○「日本がTPPに参加すると、国民皆保険制が崩壊する」と言って、会社に苦情の電話をかけてきた人が居た。「TPPはアメリカの陰謀だ。なぜ、それがわからないのか」と大真面目に語っていた学者が居た。「日本の農業を壊滅させる」と言って嘆いていたJAの人が居た。そうそう、月刊「文芸春秋」という雑誌は、今までにどれだけTPP懐疑論を広めてきたことか。今ではたぶん知らんぷりするのだろうけれどもね。

○突然、思い出すのは某所で行われたTPPシンポジウムのことである。Sという前民主党議員がTPP反対論をぶっていて、「なぜなら私はTPP秘密文書を見たんだ!」と言い出した。同じパネリストを務めていたワシは、最後におそるおそる「S先生、その秘密文書はどうやって入手されたんでしょうか?」とお尋ねしてみた。そしたら、「ネットで見た!」と言っておられた。思わず会場から失笑が漏れたものである。あの人、まだ息しているんだろうか。

○それから昨年のちょうど今頃、トランプさんの当選が決まった後に、経済産業省の前でTPP反対派が鳴りモノ入りでパフォーマンスを演じていた。踊りながら、こんなことを言っていた。

「TPP、ゼッタイ反対! トランプは、当てにはならない!」

○まさか本当に、トランプ大統領がTPP離脱を宣言するとは、彼らも考えなかったのであろう。でも、お蔭でアメリカ陰謀説は粉々になった。TPP11は、もともとの条件からはやや後退したけれども、「アジア太平洋地域における新しいルール作り」という目的を考えると、その方が良かったかもしれない。これから先を考えると、たぶんタイやインドネシアや台湾が入りやすくなるだろう。

○今週は秋田県に行っていたけれども、今はどこの地方に行っても、「地方活性化のカギは観光と農業です」というのがコンセンサスである。観光とはすなわちインバウンド、農業とはすなわち農産物輸出。人口減少社会の日本は、グローバリズム抜きには物事が進まない。ここ数年で、わが国の雰囲気はずいぶん変わったんじゃないだろうか。

○とまあ、そんな風に考えないと、せっかく開けた高めのワインがおいしくなくなっちゃうのでね。ちなみにいつものニュージーランド産ではなく、フランス産のブルゴーニュでありました。


<11月11日>(土)

○TPP11は変なことになっているようで、カナダが難色を示したので首脳会談は開かれず、でも閣僚レベルでは大筋合意に至っているらしい。するとどうなるのか。このまま自然体で放っておくと、批准した国が6カ国を超えた時点で自然に発効する、てなことになるのかもしれない。日本はいつ、審議するのか。今月の臨時国会でやるのですかね?

○なにしろ話が現在進行形なものだから難しい。ベトナムのダナンではAPEC首脳会議に加えて、いろんな二国間会談が開かれている。このページを見ると、昨日だけで安倍首相は「ロシア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、ベトナム、ペルー」という6カ国と会談している。

○つくづく「外国人と話すのは苦手だ」とか、「飛行機の中ではよく眠れない」という人には、首相が務まらないような時代になってしまいましたな。などと言いつつ、昨日のワインの残りを飲んでいる私。

○そういえば明日はこんなものに出演します。この問題も過去完了形のように見えて、現在進行形なんだよなあ。まあ、明日の朝、あらためて考えることにしましょうか。


●NHK総合/ラジオ第一 午前9時00分〜 午前10時00分

日曜討論「北朝鮮・経済… 米中首脳会談を読む」


世界が注目した米中首脳会談。北朝鮮問題や貿易問題などを巡りどのような議論が交わされたのか?超大国である両国の関係は世界に何をもたらすのか?専門家が読み解きます。

藤崎一郎,宮本雄二,柯隆,高原明生,森聡,吉崎達彦,【司会】島田敏男,牛田茉友


<11月12日>(日)

○今回のアジア歴訪では、トランプさんの演説が改善されているような気がするんですよねえ。いや、もちろん中身はあいかわらずで、APEC首脳会議での演説も「経済ナショナリズム」路線だったんですが、「小技」みたいなところがちゃんとしてきている。

○たとえば中国に関するところでは、「独立戦争直後のアメリカから、最初の船が中国に渡った」という故事を披露している。これって松尾文夫さんの『アメリカと中国』に出てくる話です。ペリーの黒船が日本にやって来るより、ずっと前の話なんですよね。


In 1784, the first American ship sailed to China from the newly independent United States. It went loaded with goods to sell in Asia, and it came back full of porcelain and tea. Our first president, George Washington himself, owned a set of tableware from that ship.


○それどころか、アメリカはタイにも行っていたんですね。


In 1818, we began our relationship with the Kingdom of Thailand, and 15 years later our two countries signed a treaty of friendship and commerce -- our first with an Asian nation.


○ちゃんと歴史を説き起こす、というのは大切なことです。トランプさんは韓国の国会でも演説をしていますが、これもなかなか読ませます。スピーチライター陣がしっかりしてきたのでしょね。

○もちろんこうした演説が、「トランプ政権のアジア戦略」を語っているわけではない。それはもう、オバマ大統領の「リバランス政策」に比べるとレベルは低いのです。とはいうものの、単なる「アメリカ・ファースト」ではなくなってきている。対北朝鮮問題にもコミットしているので、ある日突然に二国間でディールをして、「後は知らんよ」とは言わないのではないか。。

○なにしろわれわれは今年1月、トランプ政権の立ち上げ時期には、「尖閣諸島を守ってほしかったらカネ払え」と言われるんじゃないかと恐れていたのですから。それを思えば長足の進歩と言ってもいいんじゃないでしょうか。悪い話ではないと思います。


<11月13日>(月)

○というわけで、とうとうアメリカの対アジア政策の代名詞となった「インド太平洋」という言葉の根源はどこにあったのか。実は10年前の安倍さんの演説にあったのであります。


「二つの海の交わり」 Confluence of the two sea 2007年8月22日


さて、本日私は、世界最大の民主主義国において、国権の最高機関で演説する栄誉に浴しました。これから私は、アジアを代表するもう一つの民主主義国の国民を代表し、日本とインドの未来について思うところを述べたいと思っています。

 The different streams, having their sources in different places, all mingle their water in the sea.

 インドが生んだ偉大な宗教指導者、スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ(Swami Vivekananda)の言葉をもって、本日のスピーチを始めることができますのは、私にとってこのうえない喜びであります。

 皆様、私たちは今、歴史的、地理的に、どんな場所に立っているでしょうか。この問いに答えを与えるため、私は1655年、ムガルの王子ダーラー・シコー(Dara Shikoh)が著した書物の題名を借りてみたいと思います。

 すなわちそれは、「二つの海の交わり」(Confluence of the Two Seas)が生まれつつある時と、ところにほかなりません。

 太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、一つのダイナミックな結合をもたらしています。従来の地理的境界を突き破る「拡大アジア」が、明瞭な形を現しつつあります。これを広々と開き、どこまでも透明な海として豊かに育てていく力と、そして責任が、私たち両国にはあるのです。

 私は、このことをインド10億の人々に直接伝えようとしてまいりました。だからこそ私はいま、ここ「セントラル・ホール」に立っています。インド国民が選んだ代議員の皆様に、お話ししようとしているのです。


○日本外交がこんな風に「言葉の力」を持ち始めたのは、実に今から10年前のことだったのであります。ちゃんと外務省ホームページに全文が載っていますので、是非読んでみてください。インドのことを詳しく調べ上げて、岡倉天心、パール判事、マハトマ・ガンディーなどに触れ、さらに対印ODAや地球環境問題を取り上げる。そして日印EPAの締結を促す。こんな用意周到な演説がインドで受けないはずがないわけであります。

○演説の最後は、以下のように個人的な述懐で締めくくる。


 私の祖父・岸信介は、いまからちょうど50年前、日本の総理大臣として初めて貴国を訪問しました。時のネルー首相は数万の民衆を集めた野外集会に岸を連れ出し、「この人が自分の尊敬する国日本から来た首相である」と力強い紹介をしたのだと、私は祖父の膝下(しっか)、聞かされました。敗戦国の指導者として、よほど嬉しかったに違いありません。

 また岸は、日本政府として戦後最初のODAを実施した首相です。まだ貧しかった日本は、名誉にかけてもODAを出したいと考えました。この時それを受けてくれた国が、貴国、インドでありました。このことも、祖父は忘れておりませんでした。

 私は皆様が、日本に原爆が落とされた日、必ず決まって祈りを捧げてくれていることを知っています。それから皆様は、代を継いで、今まで四頭の象を日本の子供たちにお贈りくださっています。

 ネルー首相がくださったのは、お嬢さんの名前をつけた「インディラ」という名前の象でした。その後合計三頭の象を、インド政府は日本の動物園に寄付してくださるのですが、それぞれの名前はどれも忘れがたいものです。

 「アーシャ(希望)」、「ダヤー(慈愛)」、そして「スーリヤ(太陽)」というのです。最後のスーリヤがやって来たのは、2001年の5月でした。日本が不況から脱しようともがき、苦しんでいるその最中、日本の「陽はまた上る」と言ってくれたのです。

 これらすべてに対し、私は日本国民になり代わり、お礼を申し上げます。


○まことに残念なことながら、安倍晋三氏はこのときの外遊でお腹を壊して、その翌月に突然の辞任に至るわけであります。それでも"Ideas have consequences."(理念には力がある)と申します。10年たったら、この言葉はアメリカの対アジア政策になったのです。え?トランプが言ってるんじゃ、中身がないんじゃないかって? そんなことを言うもんじゃないですよ。これから作ればいいんですから。レーガン大統領はこんな風に言っております。


"Ideas do have consequences, rhetoric is policy, words are action."

(理念はまさに結果を生む。レトリックは政策である。言葉は行動である)


<11月14日>(火)

○お昼は長島昭久さんのパーティーへ。

○長島さんは希望の党の候補者としては、東京都選挙区で唯一、小選挙区で当選していている。いちおうはめでたいのであるが、党の雰囲気は明るくない。ただし長島さん自身は、いつも通り明るい。ご本人の弁によると、希望の党は発足した直後にジェットコースターのような落下状態になり、これは尋常なことでは勝ち目はないと覚悟を決めたのだそうだ。

○そこで宣伝カーを一切使わずに、なりふり構わず人の居る所へ出かけて行って、握手戦術に徹したのだそうだ。1万人を目指していたが、あっという間に達成してしまい、最終的には2万1430人と握手できた。しかるにその5倍くらい、たぶん10万人くらいに握手を拒否されたのだとか。

「裏切り者!」(←民進党の支持者)

「お前の離党宣言を見て感動した。でも、なぜ希望の党なんだ?」

○などなど、いろんな声を浴びせられたが、最終的に9万2365票を得て、当選することができた。いや、よかった。おめでとうございます。

○パーティーには前原さん、細野さん、玉木さん、古川さん、岸本さんなど、希望の党の有力どころがズラリ。で、今日の午後に両院議員総会、そして5時から役員人事の発表というタイミングだというから驚いた。先ほどになって蓋を開けてみたら、長島さんは政調会長であった。

○ところがこの日のトップニュースは小池さんが代表を辞任するとのこと。まあ、希望の党にとっても東京都にとっても、その方がいいよね。ワシ的には小池さんが居ないのなら、遠慮なく希望の党を応援できる。顔ぶれ的には、どう考えても立憲民主党よりもいいと思うもの。なんだか2003年に小沢・自由党と合流する以前の民主党の雰囲気がある。

○いいじゃないか、支持率が3%だって。今なら無理して政権交代を目指さなくていい。長島さんが言うとおり、二大政党の鉄則は「政争は水際まで」。外交・安保政策では無理して与党に異議を唱えず、日本の構造問題にしっかり取り組む野党をつくればよい。とにかく韓国みたいなやり方は最悪ですからなあ。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki