●かんべえの不規則発言



2001年6月



<6月1日>(金)

○新しいサイトのご紹介まで。

http://world.altavista.com

○これがあればもう翻訳ソフトは不要かもしれない。しかも早い!さらに、URLを入力すれば、どこかのサイトを丸ごと翻訳!なんてこともできてしまう。問題は訳の正確さです。おそらく英語をフランス語に、というくらいなら相当に正確な翻訳ができるのではないでしょうか。問題は英文和訳と和文英訳ですが、筆者もまだ十分確かめてはおりません。皆様もお試しください。

○パウエル国務長官は、このサイトを発見して家中の百科事典を捨ててしまったそうだが、外国語の辞書が不要になる日は来ないでしょうか?それにしても海外のサイトはすごいサービスを提供しますね。


<6月2日>(土)

○昨日、若手ベンチャー・キャピタリストの話を聞きましたが、これがあんまり面白かったので少しご紹介まで。シリコンバレーでワンマンオフィスを開き、幾多のベンチャー企業の盛衰を見てきた男です。最近はシリコンバレーの経験を活かし、日本のベンチャーに投資を行っている。「ITのVCやってます、とかいうとカッコイイでしょ?全然違う。ものすごく泥臭い世界」だという。そうこなくっちゃ。

●1年前、ビットバレーなるものを見て唖然とした。「学生ベンチャーが一攫千金」みたいなことを大真面目で言ってる連中がいる。自分は3年間シリコンバレーにいて、学生ベンチャーが成功するのを1件も見たことがない。技術に強いやつがブリック企業をスピンアウトして、努力の末に成功するのが一番多い。しかも日本のベンチャー起業家はおそろしくレベルが低い。投資したいと思った案件は2〜3しかなかったし、そういう案件は高くなりすぎていた。1年たって、自分の判断が正しかったので安心した。

●「完璧なビジネスモデルを描いて・・・・」みたいなことを言ってる連中を見ると、ああ気の毒にと思ってしまう。ビジネスモデルなんて、はっきりいって金を集めるための手段。金が集まって、会社が動き始めた後は、かならずプランと違うことが起こるもの。机に向かって描いたプランどおりに物事が動くはずがない。とにかく最初の客を見つけること。その瞬間から、社員の熱気が違ってくる。

●ベンチャーがいったん動き出したら、「彼らの責任が及ばないような不条理を押し付けないこと」が大切。それがなければ彼らは真剣に仕事をする。やるよりほかにないのだからこれは当然。それだけ真剣にやれば、たとえ失敗しても納得が行く。周囲も敗者復活を認める。逆にいえば、大企業の仕事がうまくいかないのは、不条理なことが多過ぎるからではないか。

●ベンチャーキャピタルの最大の仕事は、スタートアップの企業に人を送り込むこと。会社のファウンダーは、CEOにしない方がいい。その方が成功確率が上がる。意外と日本人の方が、「これは俺の会社だ」とオーナーの地位にこだわる。でも、CEOが務まるような人は滅多にいない。なぜならベンチャーは中小企業なので、一人で何でもやらなければならない。なんでも経験したことがある人は少ない。

○いつも思うんですが、現場の議論は一味違います。・・・・・ところでこれを書いている間に日本がカメルーンを撃破。鈴木偉し!いや実にいい気分。感動したッ!


<6月3日>(日)

○今朝は年に1度の町内会のドブさらいの日。午前9時開始の予定が、うちの町内会にはありがちなことに、9時にはもう皆さん総出で活動中である。かんべえさんの自宅は低い角地にあるので、家の前と横のドブは特段に汚い。蓋をはぐるとギャア、と叫びたくなるほどに汚れている。そこで作業をしているうちにいろいろ思いついたことがある。なかなか有用な教訓ではないかと思うので、以下にまとめておく。

●なぜドブさらいをやった方がいいかは、作業を始めてみればすぐ分かる。(蓋を開けると、驚くほど汚れている)

●こんなつらい作業は、天気のいい日に大勢でやらないと不可能。(一人でいいカッコしようと思っちゃ駄目)

●ドブさらいをやっている人には、ドブの匂いが染み付く。(掃除をしている人は汚れ役になることを覚悟すべし)

●汚れを根絶することは出来ない。(ドブは汚れるようになっている。汚れを作っているのは自分自身だったりする。だから定期的に掃除する以外にない)

●最後は水に流そう。(後味が悪いような終わり方にしないこと)

○機密費問題という底知れない外務省のドブをさらおうという田中大臣にとって、上記はとくに有用な教訓ではないかと思う。真紀子さんに近い方でこれをお読みの方がおられましたら、上記を是非、大臣に転送していただきたいと思います。

○ちょっと追加です。本日をもってアクセス件数が8万の大台に乗ったのですが、「ともや♪通信」という方からリンクのお知らせあり。

http://www32.tok2.com/home/tomoya/index.htm

○ご覧いただければ一目瞭然ですが、当「溜池通信」のスタイルをそのまま踏襲しておられます。うーむ、当サイトが他人のお手本になるとは。ちょっと自慢したい気分。


<6月4日>(月)

小泉首相とブッシュ大統領の日米首脳会談は、6月30日にキャンプ・デービッドで行われることになった。

○……というのは、よくよく考えればすごいことです。ブッシュ大統領は週末に予定を入れることを嫌う。それが原因で、森首相はなかなかブッシュに会えなかった。国会開催中の平日に外遊すると、野党が「国会軽視だ」と騒ぎ立てるので、日本の首相は週末以外には動きが取れないのである。結局、予算が衆院を通過するのを待ち、日本が祭日である3月20日(火)に訪米してブッシュに会うことができた。中国の銭副首相との会談が22日に控えていたので、アメリカ側もさすがにそれより遅くなるとマズイ、と判断したらしい。

○ブッシュがこれまでに唯一、週末に予定を入れた首脳外交がある。それはイギリスのブレア首相。キャンプ・デービッドの別荘に招いて、泊りがけで親交を深めた。ブレア首相が相手であれば、仕事の話だけではなく、全人格的に付き合おうというわけである。要するにイギリスは別格、ということだ。

○この2つを考えると、小泉さんはブレア首相並みの扱いを受けていることになる。森さんとはえらい違いである。ここでハッと思い出すことがある。それはアーミテージレポートにある「われわれは米国と英国の間の特別な関係が、日米同盟のモデルになると考えている」"We see the special relationship between the United States and Great Britain as a model for the alliance."という文言。小泉首相に対してブレア首相と同じ待遇を与えるということは、アーミテージレポートの構想が実現に向けて動き出す第一歩なのではないか。

○おそらくアーミテージ一派が、「小泉首相は大事にしなければなりません」と進言したのであろう。今は経済から安全保障まで、日米の首脳が語るべきことはたくさんある。キャンプ・デービッドでは日米首脳が時間をかけて意見を交換し、個人的な信頼関係を築くことができるだろう。日本のマスコミをシャットアウトできるのも大きな利点である。

○もうひとつ、ブッシュ政権が小泉首相重視を示すことで、政治基盤が脆弱なこの政権をバックアップしようという狙いもあるはずだ。これには前例があって、1991年にブッシュ父が当時の海部首相をメイン州ケネバンクポートの自分の別荘に招いたことがある。当時の海部首相も支持率は高かったが、党内基盤は弱かった。「海部はブッシュホンの言いなり」などと揶揄されたものの、アメリカ大統領に信用されているという事実は、永田町においてもそれなりの威力を発揮した。

○いずれにせよ、アメリカ側はそれだけ男・小泉純一郎を見込んでいると考えていいだろう。そこで気になってくるのが田中真紀子外相の存在だ。筆者はやっぱり、小泉さんはしかるべきタイミングで「泣いて馬謖を斬る」必要があると思う。7月29日の参議院選挙で、「田中外相」の応援を自民党の切り札として使いたい気持ちは分かる。だが、それだと日米首脳会談(6月30日)もジェノバ・サミット(7月22日)も彼女を使わなければならない。難しいと思うぞ。


<6月5日>(火)

○少し気が早いですが、今年のジェノバ・サミット(7月20〜22日)について調べてみました。まずは日本の外務省のサイトに当たってみたところ、情報はほとんど何もなし。唖然。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/index.html

○沖縄サミットでの大張り切りはなんだったの?去年はホスト国だったし、小渕首相も全力投球だったから、外務省のHPも大サービスだった。予算も大盤振る舞いで、840億円も注ぎ込んで「無駄遣い」とひんしゅくを買った。ところが今年は・・・・言わぬが花というものであろう。

○そこでイタリア政府の"GenoaG8 Summit 2001"オフィシャルサイトを訪れてみた。イタリア語版はもちろん分からないのでパス。英語版は以下の通りです。

http://www.genoa-g8.it/eng/index.html

○ここを見たら、議長がアマート首相になっている。5月に総選挙があって、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派連合が勝ったから、とっくに首相は変わったのかと思ったら、6月中旬に交代の予定らしい。ベルルスコーニは94年に7ヵ月だけ首相をやったが、そのときもナポリサミットの年で、議長を務めた。サミットの議長を2度務める人は滅多にいるものではない。すごい巡り合わせですね。

○日本からは橋本首相が、リヨン、デンバー、バーミンガムと3回連続で出席したが、その後は小渕(ケルン)、森(沖縄)、小泉(ジェノバ)と、毎年新顔がサミットに参加している。実はイタリアも同じパターンなのである。オリーブの木で首相になったプロディさんが3回連続で出席し、その後はダレーマ(ケルン)、アマート(沖縄)、ベルルスコーニ(ジェノバ)となる。イタリアとは妙に気が合いますね。

○ジェノバでは小泉さんだけでなく、サミットにデビューを果たす指導者がほかに2人いる。アメリカのブッシュ大統領は当然だが、なぜかフランスからの出席者はシラク大統領ではなくて、ジョスパン首相になっている。なんでなんでしょ。ところで、最多連続出場記録を持っている首脳は誰でしょう。これは私もびっくりしたな。カナダのクレティエン首相、実に今年で8連荘。

○ところでこの公式サイト、とにかく遅いのだ。デザインは凝っているのだけど、イタリア政府、頼むからもっと回線は太くしておいてくれ。だんだん苛立ってきたところ、こんな便利なサイトを発見。トロント大学のG8情報センターである。G8関連の情報はほとんどここで網羅できます。

http://www.g7.utoronto.ca/

○ここでいろんな文書を見ていたのだが、イタリア外務省がサミットのために用意した"Beyond Debt Relief"という文書がある。これの序章の1行目が間違っておる。The enhanced HIPC Initiative launched in Cologne in 1996 aimed at making a substantial contribution to the fight against poverty. おいおい、ケルンサミットは1999年だぞい。君らは政府の公式文書の1行目を間違えて平気なのかね。年を取るとこういうことが気になってしょうがない。まったくイタリア人の仕事は豪快なんだから・・・・。


<6月6日>(水)

○全米でパールハーバーという新作映画が評判だそうです。ま、映画はどうでもいいんですけど、このパールハーバーについて、日本人の多くが誤解していると思うことがあるので、今日はその話を。

"Remember Pearl Harbor."(真珠湾を忘れるな)というセリフは皆さんご存知だと思いますが、実はこれには次の句があるんです。ご存知でしたか?それは、"Keep Alert America."(アメリカよ、油断をするな)。「ジャップを許すまじ」などと言っているのではない点にご注意ください。ハリウッドが真珠湾の映画を作ると、全米で反日感情が高まるというのは考え過ぎだと思います。

○どういうことかといいますと、アメリカは祖国防衛戦争をやったことがない。宗主国イギリスからの独立戦争やメキシコとの領土争い、はたまたインディアンとの戦闘などはしょっちゅうやっていたが、あらたまって外国から領土を侵略された経験がなかった。そんなことがあり得るとも思っていなかった。実際、アメリカの領土を直接攻撃するなんてことは不可能だった。日本海軍が「航空母艦による機動攻撃」という作戦を考案するまでは。

○一般のアメリカ人が真珠湾攻撃にショックを受けたのは、被害が大きかったからではなく、また対日戦争の準備がなかったからでもなく、とにかく「アメリカの領土が他国の攻撃を受ける可能性がある」という事実に驚いてしまったのである。一度も人から殴られたことのない人間が、ある日、思いがけない相手から不意打ちをくらってしまったようなものだ。アメリカ人が本気で怒ったのは当然である。それと同時に、自分たちがいかに安全な世界に住んでいたかを思い知らされた。ゆえに「油断をするな」という教訓が残った。リメンバー・パールハーバーとは、そういう合言葉である。

○こういうわけであるから、仮に当時の日本大使館がきちんと仕事をして、時間前に宣戦布告文書を米国側に渡していたとしても、やっぱりアメリカ人は激怒したはずだ。余談ながら、「ルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていた」説を唱える人は多いけれども、筆者は同意しない。理由は長くなるのでここでは書かない。

○さて、第2次世界大戦を勝ちぬいたことで、アメリカには再び平和が訪れるはずだった。当初の占領軍が、日本の非軍事化をあれだけ徹底したのは、とにかく自分たちが安心したかったからだろう。ところがすぐに冷戦時代が始まり、アメリカは今度はいつ飛んでくるか分からない核の恐怖に直面することになる。こうしてアメリカの安全保障政策には、「真珠湾以前」と「真珠湾以後」でくっきりとした分水嶺ができた。つまり外敵がなかった平和な時代と、外敵が存在する恐怖の時代である。

○冷戦はとっくに終わった。そうなるとアメリカ人が「真珠湾以前の古き良き時代に戻りたい」と思うのは、自然な感情である。ではどうやったら昔に戻れるのか。イラクにイランに北朝鮮と、世に物騒な国の種は尽きない。ここから「ミサイルの盾で国を守ろう」という発想が生まれてくる。レーガンのSDI構想も同様だ。他国から見ると、いずれも「そんなアホな」と思えるような計画であろう。だが、アメリカ人の心理には「真珠湾以前の幸せな時代」への回帰願望がある。そのためならば、多少の予算を使っても構わないと考える。ましてブッシュ政権を支える「草の根保守主義派」の間では、そういう気分が濃厚だ。さらに今ではIT技術があり、財政黒字がある。ブッシュ政権がミサイル防衛計画に本気になるのはそういう背景がある。

○「アメリカのNMD構想反対」という声は世界中で少なくない。「新たな軍拡を生む」という懸念もわからんではない。ただし、アメリカ人が「ミサイルの盾」にあこがれる気持ちを作った責任の一端は、日本人の真珠湾攻撃にあると筆者は思っている。この辺の心理学は、理解しておいた方がいいと思うのだ。わが国の外務大臣には、ちょっと難し過ぎるかもしれんが。


<6月7日>(木)

○イギリスの総選挙の結果が間もなく判明します。というより、もう分かっているのも同然で、労働党が大差で勝利して、ブレア政権の第2期が発足するのでしょう。対する保守党は冴えません。ヘイグ党首というのは、なんとワシと同じ40歳の若さだという話ですが、あの頭では60歳に見えても不思議はない。この時代に、「ハゲ」を党首に担いだ時点でもう負けている。それに気づいて、サッチャーさんに応援を頼んだところでさらに深みにはまった。対するブレアさんはあいかわらず若々しくてカッコイイ。

○わが国のリベラル派の間では、ブレア首相のことを「第三の道」といってもてはやす意見が少なくない。でも、それって根本的な勘違いだと思う。ブレアはサッチャーリズムを尊敬する保守主義者である。彼がいう「第三の道」は、周囲をごまかすための方便のようなもので、実際にやってきたことはメージャー政権の踏襲か、もしくはそれ以上に保守的な政策である。ちょうどブッシュ大統領の"Compassionate Conservatism"のようなもので、中味よりもスタイルのことを言っているのだと思う。本気で「第三の道」を目指したら、今頃とっくに英国経済はおかしくなっているはずである。

○というのは、今週のThe Economist誌がこの選挙に対する態度表明をやっているのだが、苦しんだ挙句に「ブレア支持」を打ち出している("The choice is clear"6月2日号)。97年5月の前回選挙では、メージャー保守党政権を支持したこの保守的な雑誌は、「ブレアはまあまあよくやっている。とはいっても、それほどたいした出来でもない。悪いのは保守党の自滅」と評価する。そして次のようなご託宣を述べている。

"Tony Blair is the only credible conservative currently available."(今、信用できる唯一の保守派はトニー・ブレアだけだ)。つまり、「サッチャーの後継者たる資格があるのは、ヘイグじゃなくてブレアだ」というのである。小泉さんの後ろに中曽根さんの姿がチラホラするみたいな感じですな。


<6月8日>(金)

○最近は景気指標の悪化が目立ちます。鉱工業生産、物価、失業率、産業活動、景気先行指標、そして輸出入。かんべえさんの職場では、「これだけハッキリしていると、判断に迷わなくていいね」などと言ってます。週明け月曜日には2001年1‐3月期のGDP速報(いわゆるQE)が発表されます。これで2000年度の数字が確定するわけですが、渋い数字が出るような気がしてきました。1‐3月期には、家電リサイクル法による電化製品の駆け込み需要などもあったので、少しは底上げされているはずなのですが。

○株価は先月の高値からちょうど1ヶ月。来週あたりは波乱があるような気がします。今週の不規則発言は、外国のことばかり書いてきましたけど、日本国内こそ要注意ですね。


<6月9日>(土)

○大阪のニュースを聞いて鬱です。何を書く気にもなりません。もともと社会面のネタを取り上げるような柄ではないので、これ以上は申しません。ただ8人の小学生の冥福を祈るのみです。合掌。


<6月10日>(日)

○個別の犯罪事件のことをとやかく言うのは好きじゃないのである。とくに、「犯人探し」のような議論は。「社会が病んでいる」「不況が影を落としている」「教育の無力」といった話は、あんまり意味があることとは思えない。ただしこうした「答えの出ない問いの連鎖」は当分は繰り返されるだろう。刑法39条、犯人の経歴、病める関西、といった議論も「2ちゃんねる」あたりでは盛んなようだ。

○たしかにこんな不条理を放置してはならない。「問いの連鎖」を止めてはならない。われわれが住んでいるのは、オウム真理教の地下鉄テロ事件から6年も経つのに、麻原に判決が出ないという不思議な社会である。アブナイ人たちを柵に入れると人権侵害になるから、小学校の回りに柵を作ろうかという変な議論をしている国である。このゆがんだ精神構造は、安全保障問題を議論するときに出てくるトンデモない発想と無関係ではないはずだ。怒りを忘れた瞬間、この現状は放置されてしまう。

○ただしあんまり事件を一般化するのはやめよう。悼むべきは犠牲者。憎むべきは犯人。この辺で整理をつけて、気を取りなおすことにします。

○今朝の小泉さんのNHKインタビューは良かった。やっぱり今までのリーダーとは一味違いますね。やってることはちょっと心配ですが、彼が首相になって良かったと思いました。コンフェデ杯の決勝戦もいい試合でした。負けたけど、いい守備がたくさんあった。ジタンのいないフランス対中田のいない日本。それでもFIFAのトップクラスの試合に違いはない。93年のドーハの悲劇から考えれば、日本はなんとも強くなったものです。あのときから頑張っていて、今日も途中から出場した中山ゴン、あんたは偉い。

○今日、初めて見たのですが、サントリー「ボス」の新しいCMもいいですね。電車の中で『あしたのジョー』を読むやつ。ふとしょうもないギャグを思いついてしまった。「内角、えぐりこむようにして、鬱べし」・・・・・失礼しました。


<6月11日>(月)

○イタリアからフェラーリさんが出張してきた。当社イタリア法人の社員で勤続10年。機械貿易の担当。クルマの「フェラーリ」とは関係なくて、この名前は北イタリアでは「鈴木」「佐藤」なみに多い姓なのだという。でも「フェラーリさん」って聞くと、ちょっとカッコイイよね。日本の豊田さんや本田さんが海外に行くと、似たような印象になるのでしょうか。

○フェラーリさん、既婚で子供が一人いる30代女性なのだが、日本は8年ぶりの2度目。お台場の風景にはびっくり仰天といった様子。「日本は不況だなんて嘘みたいでしょ」と言うと、イタリアには毎年、膨大な数の日本人旅行客がやってきて、高価なブランド品をたくさん買っていくから、そもそも不況だというのが信じられないらしい。お台場で遊んでいる若者たちを見て、「彼らは学校にも行かないで、どうしてここにいるの?」とお聞きになる。しょうがないから"It's a mystery."と笑ってごまかす。

○フェラーリさん、「寿司が食べたい」というから、デックス東京ビーチのすし屋さんにご案内する。ランチの盛り合わせを見て、「イタリアのすし屋の倍はある」といたく感動。日本のイタ飯屋は、一皿ごとの量が少ないのと同様な現象というべきか。せっかくなので、食べ終わってから3軒先にあるイタリアレストラン「マルモ」の前まで連れていく。この並びでは繁盛している店なのだが、メニューを一目見るなり、「これは相当にジャパナイズされてますね」とのご託宣。やっぱりそうでっか。

○ということで、イタリアの話をいろいろ聞いた一日でした。ところで皆さん、日本とイタリアの共通点をいくつ挙げられますか?ビックリするくらいたくさんあるんですよ。

●地理:北半球で温帯に属する。南北に細長い形。火山国で地震が多い。温泉も多く、人々はお風呂が好き。

●歴史:長い歴史を持ち、かつては広大な領土を作った時期もある。第2次世界大戦で枢軸国側に立って敗戦。その後は民主主義国となり、西側先進国の一員に。G8のメンバー国ではあるが、国連安保理の常任理事国にはしてもらえない。

●政治:議会内閣制。小党乱立気味で、総理大臣はしょっちゅう変わる。サミットでいえば、99年ケルンは小渕とディーニ、00年沖縄は森とアマート、そして今年のジェノバは小泉とベルルスコーニと、毎年出席者が変わる。汚職の蔓延と財政赤字が悩みの種。

●経済:両国とも製造業に強く、幾多のグローバル・ブランドを持つ。経済の中核を担っているのは中小企業。アングラ経済も小さくなく、マフィアが元気。

●文化:いずれも高度な美術や音楽の伝統を持つ。

●食文化:シーフードを好み、イカやタコを食べるめずらしい国民。

●お札:ゼロがいっぱいついている。

○日本におけるイタリア人気というのは、けっこうこの辺に理由があるのかも。


<6月12日>(火)

○案の定、1‐3月期GDPはマイナス成長となり、株価は下げています。「よっしゃ、予想通り!」と喜ぶ気にはとてもなりませんけどね。

○先週号で書いた内容の繰り返しになりますが、とにかく焦眉の急は不良債権処理である。ところがこの問題をめぐっては、関係者が「三すくみ」状態になっている。当の銀行業界は、「恐れながら、このままではエライコトになりまする」と申し出る勇気がない。官僚は自分たちが泥をかぶってまで、シナリオを書くような地合いにはない。政治家は銀行救済のように不人気なことはしたくない。ゆえに危機が生じるのをみんなで待っているのが実態だ。たしかに、事前処理よりは事後処理の方が、政治的なコストは小さくて済む。ところが、経済的なコストを考えたら、事前処理の方がはるかに優れている。この構造は昨年秋くらいからずっと変わっていない。

○小泉政権の誕生は、「ひょっとするとこの人が蛮勇を振るってくれるかもしれない」という期待をもたらした。株価が上げたのはそういう思惑が働いたからだ。ところが小泉さん、金融のことはあまり詳しくないようで、財政の方ばかりに目が行っている。小泉政権の経済政策の指南役は、竹中平蔵さんじゃなくて本当は加藤寛さんらしい。しかし深刻なのは財政よりも金融である。金融の実情を分かっている人が、首相の周辺にいない。かくして「デフレ下のデフレ政策」が行われようとしている。

○もっと言えば、小泉さんの狙いは日本経済の再建よりも、とにかく橋本派を破壊することのようだ。道路特定財源の見直しと郵政民営化は、橋本派の2大拠点を破壊することだから。田中真紀子外相を使った外務省のODA利権つぶしも着々と進行中である。国会で野党から金融問題について質問されると、柳沢金融担当相ほかに振ってしまう。期待の柳沢さんはといえば、「第三分類と第四分類さえやればいい。その範囲内なら、公的資金の再投入も不要であろう」という程度。本当はそれじゃダメだということは分かっているのだろうけども。

○こういう状況を打破する役割を、ジャーナリズムに期待できないだろうか。といえば、それがまったくの期待薄である。「骨太の方針」などは、本来であれば批判されてしかるべきだと思うのだが、それよりも「田中真紀子外相VS外務官僚+橋本派」決戦の方が面白くて、経済政策論議どころじゃない。田中外相は、コイズミ・義経を守る弁慶のような存在である。弁慶が全身で弓矢を受けとめているために、義経には傷がつかない。それどころか、弁慶が手傷を負うたびに、義経・弁慶コンビの人気は上がる。おかげで橋本派つぶしは成功するかもしれないが、問題は日本経済である。

○外国人投資家たちは、こういう構図がだんだん飲み込めてきたようだ。つまり4月の初めに「緊急経済対策」が出た頃の方が、まだしも事態はマシだった。となれば答えは「売り」である。米国の政策当事者たちも、不安になっているはずだ。6月27日には「骨太の方針」が発表され、6月29日には通常国会が終わる。そして6月30日には日米首脳会談。ここで小泉さんをとっ捕まえて、「不良債権処理は国際公約ですぞ、アンタ、分かってるんでしょうね」と質したいところだろう。

○願わくば、それ以前に気づいていただきたい。そのためには、株価がもっと下げた方がいい。どうせ9月末になれば、「このままではいけない」と分かるはずなのだ。義経さん、早く気づいてくださいよ。


<6月13日>(水)

○今夜も金融問題のお勉強。以下は信頼すべき証券アナリストO氏の受け売りである。

○不良債権というものは、定義と処理の仕方でどうとでも変わるもので、たとえば緊急経済対策で提唱された程度でいいのなら、8兆円の償却で事足りる。これなら3年程度の業務純益を使えばなんとかカバーできる。つまり公的資金の再注入は必要ない。とはいえ、金融再生法ベースの開示不良債権は18兆円、その他の要注意先債権が38兆円程度あると想定される。こういう灰色債権が残っている限り、金融不安の払拭は難しいだろう。

○もうひとつ、銀行は「株の持ちすぎ」という問題もあるので、これも処分しなきゃいけない。主要行は2000年度に実に3兆円も株を売った。なおかつ、今後3年間で約10兆円の保有株式を売却しようと計画している。10兆円売ると、ちょうど自己資本に対する株式の比率が100%にまで下がる。このくらいであれば、なんとか市場は吸収できるだろう。とはいえ、「まだ100%か」(ドイツは60%、アメリカは0%)という見方も残る。

○向こう3年間にわたって、今の調子で地道な努力を続けていけば、銀行の経営状況はかなり改善するというのである。つまりソフトランディングは可能だということ。しかしよくよく考えてみれば、それが実現するためには、向こう3年間にわたって、@景気が極端に悪くならず、A長期金利の上昇がなく、B株価もあんまり下がらず、C大型の金融機関の破綻などが起こらない、という前提条件が必要になる。かなり疑わしいではないか。

○それではどうするか。向こう3年間、銀行による自助努力という形で消耗戦を続けるのか。それとも思い切って政府主導で外科手術して、公的資金も使って1年くらいで片付けてしまうのか。短期決戦の可能性はないわけじゃなくて、株主総会後に金融機関がドラスチックな動きに出る(去年も7月12日にそごうの民事再生法申請があった)とか、参議院選挙後に小泉政権が大ナタを振るうかもしれない。今のところ、まったくその気配はないけどね。

○消耗戦の継続か、短期決戦か。たぶんわれわれは政治的コストの小さい前者を選び、高い経済的コストを払うことになるのだろう。そして短期決戦の可能性がない、と分かった時点で、株は下がるし金利も下がるだろう。できればその時点で、「やっぱり短期決戦でないとマズイ」と気づきたいものである。

○ここで話はまったく変わるのですが、台湾在住の友人、「らくちん」さんが台湾を紹介するHPを作られましたのでご紹介まで。その名も「台湾つれづれ」。「溜池通信を随分参考にさせていただきました」というメールを頂戴しましたが、「らくちん」さんは日本にいたときに「大観覧車 unofficial sight」を作っているような人なので、かなり手馴れたサイトです。それにしても、「台湾小発見」にある「蚊取りラケット」にはたまげましたな。ゴキブリ退治用のがあったらワシも欲しいです。


<6月14日>(木)

○5月25日の当欄で「非拘束名簿方式」を取り上げて、最後に「コイズミ」と書かれた票はどうなるのかねぇ、てな冗談話を書きました。事実は小説より奇なり、を地で行くようなスゴイことになるのですね。以下は6月11日付の読売新聞の記事。

◆参院選比例代表で注目、“小泉票”の行方

 七月に予定される参院選の比例代表に「小泉」や「小泉自民党」と投票する有権者が続出するのではないかとの見方が自民党内で出ている。小泉首相は支持するが、同党候補の名前を書くことには抵抗感を抱く無党派層が存在するとの観測からだ。

 改正公職選挙法は、参院比例代表の投票は候補者名もしくは政党名で行うと定めているが、政党名と一緒に党首の名前を書いた場合でも有効。「自民党 小泉純一郎」や「自民 小泉首相」などは自民党の得票となる。ただし、「小泉純一郎」だけでは、首相と同姓同名の候補者がいなければ無効となる。

 また、「小泉自民党」「自民 小泉」などと党首の名前を省略したケースも有効だが、同党の公認立候補予定者の中には首相と同姓の小泉顕雄(あきお)氏がいるため、「『小泉自民党』と書かれた票は政党得票とはみなせず、小泉顕雄氏の個人得票になる」(総務省選挙課)。このため、同党の他の比例候補からは「小泉顕雄氏は当確第一号だ」(現職議員)とやっかむ声も上がっている。


○まとめると以下のようになる。

「小泉純一郎」→無効票
「小泉」「こいずみ」「コイズミ」→小泉あきお氏の得票
「小泉自民党」→小泉あきお氏の得票
「自民党 小泉」→自民党の得票

○支持率80%にあやかろうというコバンザメ候補者は少なくないようだが、この小泉あきお氏こそはラッキーそのものである。単なる間違いだけでも全国で何万票かは獲得できてしまうだろう。で、この小泉あきおって何者?というのが気になってくる。参議院選には今回が初挑戦で、少なくとも比例区にありがちなタレントや著名人ではない。

小泉あきお氏のHP http://www5b.biglobe.ne.jp/~a_koizmi/

○京都府園部町の町議で住職さんだという。園部町といえばあのお方の地元。後援者の名前を見たら、ちゃんとあのお方の親類縁者とおぼしき園部町長が名を連ねている。野中広務さん、あなたという人は、そこまで読んでこの人を比例区に立てたのでしょうか。恐ろしい・・・・


<6月15日>(金)

○なんとも不思議なお店でした。地図を頼りにたどり着いたのはごく普通のマンション。指定された部屋をインターホンで呼び出すと、「どうぞ」という声がして玄関の扉が開く。エレベーターで部屋の前まで行くと、表札も何もない普通のドア。ところが開けると中は石鍋料理のお店なんですねえ。お味のほうは予想にたがわずマルでした。こんな「通」な店を知っているのは、そう、鍋に詳しいこの人しかいない。

○そして目いっぱい遅刻して馳せ参じたのがこの人この人。こうして集まった4人の顔ぶれはといえば、そう、あの「四酔人」なのであります。一部で馬鹿ウケした「爆笑!四酔人サイト問答」の顔ぶれが、今宵は久しぶりに集結しました。今回の四酔人は、なみいる経済雑誌や経済評論家を滅多切りにしております。あまりにも危険な内容は、いずれテープ起こしの上、厳重な修正と検閲を行った上で、後日、田中さんのサイトで紹介されることになるでしょう。田中さん、ご苦労様です。

○終わってから、「さて、もう一軒」という声がかかったところで、かんべえさんが不用意な一言をもらしてしまった。「ワタシ、帰ってサイトの更新をしますから」。お前だけ、そういうことは許せんと強引に拉致され、都内某所のホテルに監禁されてしまった。危し、かんべえ。ところが、たくさん買ってきた酒やつまみに手をつけるまでもなく、二酔人が二睡人となってしまった。しょうがないから、監視役の岡本さんと午前2時まで一緒に飲んだけど、後は逃げ出してタクシーで帰ってきました。

○というわけでなんとか更新を行いました。まったく何をしてるんでしょうねえ。でも、今日は久しぶりにいっぱい飲んで楽しかった。三酔人は明日はどういう状態で目を覚ますのかなあ。


<6月16日>(土)

○というわけで、毎日個人サイトを運営している者同士で話し合うと興味は尽きないのです。とくに気になっていたのは、伊藤洋一さんが6月14日のDay by dayで小泉首相のメルマガ、「らいおんはーと」を全文掲載したこと。筆者はあれを見た瞬間、「そうか!この手があるのか」とあっけに取られました。すぐに全文をペーストして職場に回覧しましたけどね。100万人が購読する人気メルマガとはいえ、登録していない人は多い。そこで自分が入手した分をそのままHPに掲載してしまう。あれを見て「ラッキー」と思った人は少なくないと思う。

○ああいう発想は出て来ないなあ、と思ったのでその通り言うと、伊藤さんは「だって俺は通信社にいたもの。カレントな話題を追いかけるのが習性なんだよ」という。つまり事実を伝えるという、ジャーナリズムの基本をネット上で行っているわけだ。伊藤さんのサイトの読者が多いのも無理はないと思う。かんべえの場合は、昔、月刊の企業PR誌の編集をやっていた時代の発想法が根底にあるので、「らいおんはーと」を私はこう読む、という記事を書くことはあるかもしれないが、全文を転載するというアイデアは出て来ない。

○もっといえば、筆者の場合はカレントな話題を追いかけようという意欲に乏しいのである。普通の人が誰でも知っていることを、知らずに済ませていることが少なくない。新聞もあまり読んでない。他の3人にあきれられたのですが、毎朝、日経新聞を家で10分。あとはネットで済ませている。だから「最近の朝日はヒドイよね」みたいなことを言われても、読んでないから分からない。たまに朝日や読売を見ると、「なんて活字の大きな新聞だろう」と思う。新聞を読むときは、ネタを定めてから過去の一定期間を検索して読むことが多いので、「紙面を通じて毎日の空気を呼吸する」ようなことはあんまりしていない。

○企業PR誌というのは、商業マスコミと違う発想が必要なのである。まず「売れる、売れない」を気にする必要がない。読者はいつも決まっている。ただし読者はレベルが高くて忙しいので、月並みなことを書いていたら、誰も読まないままに回覧箱の中でうずもれてしまう。誰でも知っているような事実をもとに、あんまり他人が考えないような視点を提供する必要がある。そこでユニークな仮説をいかにひねくり出すか、が勝負になる。「溜池通信」も、毎週そういう発想で書いているつもりなのだ。

○おそらくこのサイトは、あんまり多くないお馴染みさんを相手に、「知る人ぞ知る」路線でやっていくのが似合っているのだと思う。四酔人問答で、そんなマーケティング戦略について考えてしまいました。それにしても今日は眠い・・・・。


<6月17日>(日)

○終わってから、部分的に「人間の潜在能力をはるかに超えるさて、苦しまぎれにもう一軒」という声がかかったところで、朝日が昇ると同時にかんべえさんが不用意な一言をもらしてしまった。でも落としても3秒までならオッケーだよね。ね。「ワタシ、いてもたってもいられずに帰ってサイトの更新をしますから(ここで隠し持っていたトカレフ銃をちらつかせる)」。そしたらその女「今日からは私があなた達のお母さんよ」とかヌカしやがった。お前だけ、回転しながらそういうことは許せんと強引に拉致され、都内某所のホテルに監禁されてしまった。ちょっと目立ちたかっただけなのに、警官隊まで出動するんだもの。危し、確かに約束はしたけどかんべえ。俺の正義の鉄拳受けてみろ!!ところが、たくさん買ってきた酒やつまみに手をつけるまでもなく、二酔人が二睡人となってしまった。そしたらバイト先の店長に「君はもう来なくていい」って言われた。しょうがないから、手後れになる前に監視役の岡本さんと午前2時まで一緒に飲んだけど、横断歩道を渡る子供達に気をとられて後は逃げ出してタクシーで帰ってきました。だから近頃の若者は信用できねーんだよ!馬鹿野郎(思わずワンカップの空き瓶を投げつける)!

○というわけでなんとか更新を行いました。科学的には未だ証明こそされていませんが。まったく何をしてるんでしょうねえ。でも、今日は久しぶりにいっぱい飲んで楽しかった。どうしたらいいか分からなくて頭の中が真っ白になって気づくと、あらぬ方向に走り出していましたが。三酔人は明日はどういう状態で目を覚ますのかなあ。でも何とかいつもの絶妙な土下座テクで事無きを得ましたよ。


○何事が起こったかと思われたかもしれませんが、「電波ニュース」<http://www02.so-net.ne.jp/~saitou/denpa.htm>というサイトにこの「不規則発言」のURLをぶち込むとこうなるんです。それにしても「落としでも3秒までならオッケー」とか「絶妙な土下座テク」というボキャブラリーがどこから出てくるのか。まさに電波が飛んでいるとしかいいようがない。「らいおんはーと」に電波を飛ばすとどうなるか、なんてさっそく試してみたくなるじゃあーりませんか。

○ほかにも言葉がニャンニャンいっちゃう「猫になれ」<http://inva.plaza.gaiax.com/neko/>なんてサイトもありまっせ。さっそく試してみましょう。いろんなURLをぶち込んで見ると、ああ面白い。月曜の朝から会社のパソコンでこれを見ているアナタ、電波の飛ばしすぎにはくれぐれも注意しましょう。


<6月18日>(月)

○千葉市市長選挙では、自公保推薦の保守系新人が余裕の勝利。候補者が6人も立ったのは、森首相時代の自民党の体たらくを見て、野党候補者が「これならイケルかも」と思ったからであったそうな。実際、これに先立つ千葉県知事選挙では無党派の風が吹いて、よそ者である堂本おばさんが堂々の勝利を収めた。しかるに小泉政権の誕生で流れは変わったようだ。昨日の日曜、小泉さんは東京都議会選挙の応援に回ったが、各地での人出たるやすさまじいものだったという。

○ということで、来週24日の都議会選挙は自民党に楽勝ムードが流れている。とはいえ、ちょっとしたトリックがあって、「自民党マンセー」というわけにはいかないことになっている。前回97年の都議会選挙は無風状態で、自民党が54議席と頑張った。ところが森政権下で離党者が続出し、現有議席は48しかない。この状態を前提として立てた候補者は53人。全員当選したところで「自民、前回議席を上回る」とはならないのである。

 

現有議席

前回獲得議席

今回候補者数

自由民主党

48

54

53

日本共産党

26

26

44

公明党

23

24

23

民主党

13

12

33

無所属クラブ

生活者ネットワーク

社会民主党

自由党

13

諸派


○おそらく25日の朝刊の見出しは、「自民、現有議席を維持」「共産激減、民主不振」といったことになるのではないか。ということで、「都議会選挙の動向が参院選の試金石となる」のは間違いないのだが、大きな影響は与えそうにない。ただ、はっきりしているのは来週がとてもとても重要な1週間になるということだ。予定表を下記しておきます。続きはまた明日。

●来週の日程表

6月24日(日)東京都議会選挙(→自民、現有議席を維持?)

6月26〜27日 FOMC(→米FRBが今年6度目の利下げ?)

6月27日(水)経済財政諮問会議の「中期経済・財政運営の基本方針」(骨太の方針)出る。

6月28日(木)株主総会の集中日
        日銀金融政策決定会合(→量的緩和を訪米の手土産に?)

6月29日(金)通常国会閉幕

6月30日(土)キャンプ・デービッドで日米首脳会談

7月 2日(月)日銀短観・6月調査(→思い切り悪い結果?)


<6月19日>(火)

○日米外相会談の成否に注目が集まっている。ブッシュさんまで巻き込んだからには、これは成功と言わざるを得ない。本日、ひょんなことから、自宅で日本テレビの「ザ・ワイド」を見てしまった。いわゆるワイドショー番組が、いかにマッキーを取り上げているかがよく分かった。結論として、アンタには負けた、と思いましたね。田中外相対外務官僚の戦いは、世論にブッシュ政権を味方につけた田中真紀子さんの完勝です。「田中外相のクビを獲れ!」と言っていた当溜池通信も完敗ですね。恐れ入りました。

○なぜ小泉政権が誕生したか、という秘話については、この人のサイトに詳しく書いてある。これを読むと、小泉政権は小泉=田中政権であるという理由がよく分かる。少なくともジェノバサミットが終わって、参議院選挙が終わるまでは田中外相で行くのでしょう。その先に待っているのが、外務官僚の大量粛清か喧嘩両成敗かは分からない。いずれにせよ田中外相が犬死することはないだろう。

○となると、次なる課題は外務省改革をいかに実現するか。よくよく考えてみれば、わが国は世界中に「トンデモ大使」とか「勘違い大使夫人」を送り込んでいる。しかし職業外交官が大使になる国、というと、少なくとも先進国では少数派である。大使は政治家か民間人の仕事、というのが普通の国の常識だ。たとえば駐米大使に誰がふさわしいかと言えば、宮沢元首相から槙原三菱商事会長や小林陽太郎富士ゼロックス会長まで、ナンボでも人材はいる。もちろん岡崎久彦大使でもいいと思うのだが、外務省は変な組織だからそれが通らないらしい。

○いっそのこと大使には民間人を起用と決めてしまったらどうか。イギリス大使は中西輝政、フランス大使は磯村尚徳、カナダ大使は大橋巨泉、中国大使は後藤田正晴。この調子で人選をやっていけば、少なくとも機密費疑惑がどうのこうのということはなくなるだろう。もちろん現地の受けはその方がいいはずである。職業外交官で有為な人材は、政治家になるか学者になるか、それでもって大使への道を開けばいい。

○日本に来た駐米大使を思い起こしてみよう。ライシャワーは尊敬すべき学者だし、マンスフィールドやモンデール、フォーリーは尊敬すべき政治家である。数少ない職業外交官であるアマコストは、現在はブルッキングス研究所の所長をやっている。誰一人として、米国の日本に対する配慮を疑わしめるような人物はいない。逆に日本が駐米大使に任命した顔ぶれはどうか。特定の政治家にゴマすった人や、英語の出来ない人がわんさかおるではないか。

○というわけで、今夜は深酒してかなり荒れ気味のかんべえさんです。外務省に対しては、いろいろ含むところがありますもので。その辺の話はまたそのうちに。


<6月20日>(水)

○1日に500件くらいのアクセスがあっても、メールを下さる方というのはそんなに多くはないので、今朝5件のメールをチェックしたときはちょっと感動しましたね。外務省の問題は本当に関心が高いですな。マッキーに関するさまざまな「飽きれた情報」もお寄せいただきました。深謝。しかし「いろいろ含むところがある」なんて暴走気味に書いちゃったのは、われながら反省事項です。

○最近、「ワシントンのYさん」という知人をめぐるゴシップがありまして、フォーカスやフォーサイトにも記事は出ております。これが「外務省のイジメが原因じゃないか」という噂がある。まあ今の時点では、事実関係も明らかではない話です。そういう予断をもとに、私怨を抱いて、批判の材料にしてはいけません。以後気をつけますので、本件に関する深追いはご無用に願います。

○「外務省は本当に伏魔殿なんでしょうか」というご質問もありましたな。決まっとるじゃないか。いちばんの魔物は今日、外務委員会でマッキーに難癖をつけていたあの人ですがな。あの人、アフリカ十数カ国の議連の会長をやっておられるという。それもケニアやコンゴくらいはともかくとして、ブルキナファソなんて聞いたことのない国まで含めて。政治家が奉仕精神だけでそこまでするか?・・・・あるいは、何で沖縄サミットで配られた仕出し弁当の業者が北海道の会社だったのか。変だよねえ。

○ここで話は突然変わるんですが、今日は銀行の方から有益な話を聞きました。不良債権の金額がなぜあんなにたくさん種類があるかという説明です。これは覚えておいて損はないですぞ。

@金融再生法開示債権(大手16行、2001年3月時点):18兆0306億円

Aリスク管理債権(全銀行、2000年9月時点):31兆8190億円

B分類債権(全銀行):63兆9350億円

C問題企業向け金融機関融資:150兆円

○どうしてこんなに差ができるのか。分かりませんよね。

@の数字は、「債務者の業況による区分」なのだそうだ。つまり明らかに経営が行き詰まっていて、銀行も「こりゃアカン」と思っている貸出先のこと。対象には大手企業はほとんど含まれておらず、株価が額面を割っているような「危ない会社」も入っていないらしい。これらに対しては、銀行の側も結論は出ていて、要するに腹はくくっている。緊急経済対策が「今後2年以内に処理」としているのは、@の定義のうち「破綻懸念先以下」とされる11.7兆円である。これくらいであれば、向こう3年間くらいの業務純益の範囲で、何とかなりそうな気がする。

Aの数字は何か。@が金融再生法に基づくのに対し、Aは銀行法に基づく。こちらは「返済の状況による区分」であり、破綻先、延滞先、貸出条件緩和、などに分かれている。逆にいえば、返済が滞っていなければ、この中には含まれない。果たして「そごう」はこの中に入っていたのか、ちょっと気になる。とはいえ、これは米国のSEC基準に準じる方式であり、アメリカ政府が「日本の不良債権問題」というときはこっちの方を指している可能性が高い。

Bはいわゆる第2分類、第3分類、第4分類の総和。それぞれ61.2兆円、2.7兆円、140億円という分布になっている。

Cが問題である。なにしろ一桁高い。これは一部の報道で流れたものだが、金融機関の総貸出の5分の1に相当する。これは「貸出先のうちで、経営が完璧でないもの」を全部足してしまった数字なので、立派な親会社が保証しているとか、減損会計で赤字をいっぺんに出してしまおうという意欲的な企業などが、すべて含まれている。だからこれを全部処理しましょうということになったら、日本中がおかしくなってしまう。

○結論として、@は少なすぎるが、Cは多すぎる。6月30日の日米首脳会談では、「日本の不良債権問題は米国の経済安全保障上の問題」という観点から討議される見込みである。だったら不良債権の定義とは何か。日本側、というよりも金融庁の認識は@である。アメリカ側の認識は@〜Cのうちのどのあたりにあるのか。困ったことに、大きな数字ほどリアルに感じられる。そんな調子では、日米の話はちゃんと噛み合うのかどうか。小泉さん、大丈夫かしら。


<6月21日>(木)

○諸般の事情で、またしてもワイドショーを見てしまった。昨日の外務委員会で行われたマッキーVS鈴木宗男の死闘を延々とやっている。党首討論よりも大きく取り上げられるのがなんと言うか・・・・。しかし外務委員会にカメラが入り、視聴率もそこそこ高い番組で取り上げられるなんて前代未聞の怪挙ではないか。

○外務委員会のメンバーである河野太郎氏は、当日の模様をご自分のメルマガ「ごまめの歯ぎしり」でこう書いている。

外務委員会。間に昼の休憩を挟んで九時から六時まで。外相の米国訪問を受けてというが、質問が滅茶苦茶。委員会室に張り付きっぱなし
で他に何もできないし、質問の内容はとうてい外務委員会とは思えないし。語るのも馬鹿馬鹿しい。

○河野氏、いつも外務委員会で外交以外のことが議論されていることを苦々しく思っており、たしかにそんなので一日拘束されたらやってられませんな。ただし、上司であるところの自民党筆頭理事さんに気兼ねしているようにも読めちゃうけどね。

○ワイドショー政治というのは、単に議論が強いのではダメなのですね。15秒くらいで、カメラを回している人が思わず抜き出したくなるようなセリフを、いくつか決めればそれでいい。小泉さんや田中さんはそれが上手だ。後はテレビ局が何度も繰り返して放送してくれる。逆にいえば、それ以外の問答では、決定的な失言をしないように適当に流してりゃいいわけだ。局地戦で勝てばいい、というのが面白い。全体を通して見ようなどという暇人は今時少ない。

○ワイドショーってのは馬鹿にしたもんじゃありませんね。ただし、こういう番組のコメンテーターをやるのはつらいだろうな。ワシだったら、池田小学校のニュースになった瞬間にスタジオから逃亡します。聞きたくないもん、そんな話。ところでコメンテーターといえば、この人とは変に意見が合うような気がする。実は密かに当HPを愛読しておられたりするのでは? 当方はときどきこの人のサイトを見ているのですが。


<6月22日>(金)

○「中期経済・財政運営の基本方針」が発表されました。米国は大型減税ですが、日本はこれから財政再建です。量的緩和も、これ以上できることなんてほとんどありません。つまり財政政策も金融政策もない袖は振れない。あとは構造改革に突き進むしかないということです。

○問題は景気が耐えられるか、どうか。来週は株主総会ウィークですが、それが過ぎれば9月末中間決算に向けて、思いきった動きが始まるでしょう。昨年の「そごう」がそうだったように、来月は大企業の民事再生法申請がラッシュになるかもしれません。ちまたには「8月恐慌説」なんぞもあるようですが、大型倒産や失業の増加といった事態に直面しても、小泉改革を継続できるかどうかが問われます。いよいよ日本経済が切羽詰ったときに、「カンフル注射」を打つことは可能でしょうか。

○よくよく調べてみると、あと1回くらい補正予算を打つ可能性は残されているのです。小泉さんが、「平成14年度の国債新発額を30兆円に抑える」と公約してしまったので、普通だったらトンデモない話。なにしろ財務省の中期展望によれば、平成14年度の公債金は33.3兆円を見込んでおり、3.3兆円の財政カットが必要。予算を3兆円減らすのは並大抵の苦労ではありません。

○ところが平成13年度の一般会計剰余金が1.8兆円あるという。歳出項目の算定方法改訂による歳出圧縮というのも、2.3兆円あるのだそうだ。さすがは財務省。苦しい苦しいといいつつも、あちらこちらのポケットを揺さぶると、いろんな場所に財源が隠れている。実は平成14年度に限って言えば、歳出の圧縮はそれほど巨額でなくてもいいらしいのだ。(平成15年度以降の台所事情はきわめて厳しいですぞ、念のため)

○加えて「財政の中期展望」は、10年もの国債の金利を3.2%と想定している(実際には1%台前半)。現実よりも厳しい前提条件で計算されているのだ。さらに、平成13年度予算では公共事業予備費0.3兆円と予備費0.35兆円が計上されている。これらを総動員すると、秋に1〜2兆円程度の補正予算を打つことはなんとか可能であるらしい。

○ここで問題です。「最後の補正予算」を何に使うべきでしょう。間違っても公共投資なんぞをやっちゃいけません。族議員は殺到するでしょうが、それでは貴重な資金が泣く。ここで思い出すべきは「米百俵の精神」。明日の日本を担う若者の教育のために使わねばならない。今月、司法制度審議会が打ち出した「日本版ロースクール」構想に予算をつけてはどうでしょう。このくらい頑張らないと、「痛みに耐えて、よく頑張った、感動したッ」と誉めてはもらえない。先は長いのだ。


<6月23日>(土)

○ちょうど1年前の6月最終週といえば、衆議院選挙で盛りあがっていた頃ですな。今年の場合は都議会選挙が待っています。1年前の当不規則発言を読み返してみるといろいろ懐かしくて面白い。明日は選挙速報を見るから、きっと夜更かししてしまうだろうな。

○ところで両方に通じるのは、宝塚記念(GT)の日だということ。グランプリレースはやっぱりいいですね。去年はテイエムオペラオーが堂々の勝利。でもって今年も連覇しそうな勢いだ。またしても単勝が1倍台だろう。これに挑むはいつもの斬られ役メイショウドトウ、海外で「金」を取った老雄ステイゴールド、去年の二冠馬エアシャカールなど。外国人ジョッキー、デザーモが騎乗するアドマイヤボスもちょっとそそられる。

○東京都議会選挙に参加できないかんべえさんとしては、宝塚記念で勝負してみたくなるところである。といって、またもテイエムはずして買ってやられちゃうんだろうな。昨年のジャパンカップ、有馬記念、今年の春の天皇賞と、全部この欄で「テイエムは来ない」と書いて負け続けてきております。はっきり言いますが、かんべえの競馬予想は当たりません。

○でも読み返してみると、今年4月1日の産経大阪杯ではちゃんとテイエムが負けたときに取っているではないか。あのときの順位は、@トーホウドリーム、Aエアシャカール、Bアドマイヤボス、Cテイエムオペラオーだった。テイエムに勝った3頭を軸に、明日も挑戦してみたくなる。繰り返しますが、かんべえの競馬予想は当たりません。くれぐれも真似をしないように。


<6月24日>(日)

○朝からなぜか体調不良。おかげで家でゴロゴロしながら宝塚記念を観戦する。フジテレビのスーパー競馬をスイッチオン。「アナタの夢、ワタシの夢が走ります」。おお、これは杉本アナウンサーの名調子。G1レースはやっぱりこの声で聞きたいものだ。「ワタシの夢は迷った挙句、ステイゴールドです」。おお、あんたもか。だがそりゃいかん、当たらんわ。でもいいよね。ワシも今日、出かけていればきっとステイゴールドの単勝を買っている。加えてアドマイヤボス、エアシャカールと併せ、サンデーサイレンスの子供3頭をワイドにして注ぎ込んでいただろう。ふん、損しなくて済んで良かったね。

○レースは、メイショウドトウがテイエムオペラオーを制して「6度目の正直」を果たした。今日の単勝Bの3.1倍を取った人はうれしさひとしおでしょう。一方、今日の馬連B−Cは2.1倍という低さ。これは取ってもうれしくないパターンですね。その一方、過去5回のG1レースを「テイエム−メイショウ」で買い続けた人は、配当は少なくてもこれまでに相当儲けた計算になる。それはそれで夢というものかしら。

○でもって、夜はご想像通り都議会選挙の開票速報を見ております。予想は6月18日の当欄にも書いたとおり、自民党が善戦しても数字に表れない構造になっている。結局は2位以下の戦いが面白くて、共産党が激減して、その分を民主党が吸収し、公明党はなんとか維持する形になりそうだ。つまり9割近い支持率を持つ小泉首相に反対すると、ろくなことはないというのが都議会選挙の結論になるのではないか。ま、午後10時時点の情勢ゆえ、まだまだどうなるか分かりませんがね。

○このところ外出しないで、家でゴロゴロの休日が続いています。テレビとネットで一日過ごすのはやっぱりよろしくないですね。


<6月25日>(月)

○都議会選挙の結果をしみじみ見ていると、やはり「自民復調」を感じます。議席数よりも得票数に表れている。この点で秀逸だったのが下記の記事。(読売新聞)

◆自民復調くっきり、35選挙区でトップ当選

24日投開票の都議選で、自民は候補を立てた41選挙区中35区で候補者がトップで当選した。森政権下で行われ、閣僚経験者らが相次いで民主に敗れた昨年の衆院選・小選挙区の得票率と今回の実績を比べると、優劣が逆転したことがくっきりと浮かび上がってくる。

衆院選で現職だった深谷隆司・通産相(当時)が民主に敗れた東京2区(中央、文京、台東)。都議選では自民の得票率は51・5%で、衆院選の小選挙区38・6%、比例22・2%の数字をともに大きく上回った。

粕谷茂・元北海道沖縄開発庁長官が惜敗した東京7区(渋谷、中野)でも、自民の得票率は40・6%と、衆院選の小選挙区33・5%、比例19・2%をともに大幅に上回った。7区の民主の衆院選得票率は小選挙区35・7%、比例30・0%だったが、27・3%に落ちている。

小杉隆・元文相と越智通雄・元金融担当相が民主の新人に敗れた東京5区と6区に相当する都議選の世田谷、目黒区でも、得票率は大幅に衆院選を上回った。特に、無党派層が多いとみられる世田谷では、昨年の衆院選比例で、民主は31・7%と自民の2倍近く得票していたが、今回の都議選では完全に逆転。自民の31・9%に対し、民主は10・7%となっている。

○自民党が台東区でも世田谷区でも勝つ、というシンプルな事実が小泉旋風のすごさを物語っていると思う。来月の参議院選でも、この勢いは続くだろう。ただしそれは都市部に限っての話。今年の自民党は、地方がついてきてくれるかどうかを心配しなければならない。昨年の衆議院選挙とはエライ違いである。

○ただし東京も東と西ではまるで違うらしく、山崎幹事長の言によれば「東のほうが戦いやすかった」とのこと。下町はまだしも「小泉さんに賭けてみるか」といった地合いがあるけど、山の手は自民党には冷淡だという。つまり東でも西でも「小泉首相来たる!」というと人は大勢集まるが、西ではかならずしも投票行動につながるわけではない。東と西の違いは自民党以外の政党を見るともっと明確だ。公明党と共産党は東に強く、民主党と地域政党・生活者ネットワークは西に強い。やっぱり下町と山の手では違うんですね。

○それにしても、獲得議席ゼロに終わった社民党と自由党はショックが大きいだろう。土井たか子と小沢一郎のカリスマが通じなくなったということだから。それではどちらも単なるミニ政党に過ぎないではないか。これもまた、1年前とは大変な違いである。つまらんことを気にするようだけど、社民党は三宅坂にある旧日本社会党が使っていたビルに入っている。野党第一党だった時代はともかく、どう考えても今の社民党には贅沢過ぎる。あのビルはたしか国有地だったはず。取り上げてしまえ、といったら可哀相かな。

○野党四党の選挙協力、というのは非常に難しくなった。これも参議院選に向けて自民党にとっては有利な材料といえよう。実際、今の野党は非常に戦いにくい。一方の小泉首相としても勝ち方が難しい。馬鹿勝ちしたら最後、自民党はだらけてしまう。改革を持続するためには、勝ち方が問題になる。

○ひとつ提案したいのは、小泉首相がどうしても必要だと考える改革の項目を十個くらい並べ、参院選の公示日に候補者に向かい、「これに賛成かどうか」を迫ってはどうか。これは1994年の中間選挙で米国共和党がやった「コントラクト・ウィズ・アメリカ」と同じ手法である。全部の項目にマルをつける候補者は、「コントラクト・ウィズ・コイズミ」の一員として認め、小泉氏自身や田中外相が応援に駆けつける。各候補者がどの項目に賛成か反対かを、すべて公開するというのがミソだ。これをやれば、誰が守旧派かが一発で分かるし、民主党の候補者の中にも手を上げる人間が出てくるだろう。なかなかいい手だと思うのですが。


<6月26日>(火)

○米国では今日から2日がかりでFOMCが実施される。こういうとき、1日目に経済の現状について討議をし、2日目に金利を動かすかどうかといった話をするものらしい。でないと1日目の晩に「米連銀が利下げ!」などというニュースが流れてしまうからね。ということで、利下げがあるとしたら27日(日本時間28日)に発表となる。今年になってから連銀は、0.5%ずつ5回も利下げしている。年初にはFFレートが6.5%、公定歩合が6.0%だったが、現在は4.0%と3.5%である。で、問題なのが今日から始まるFOMCだ。

伊藤師匠の「住信為替ニュース」の6月25日号の予想では、利下げはほぼ確実だけど、幅が0.5%か0.25%かは分からないとのこと。ゴールドマンサックスの山川氏は「50bpの追加緩和」という予想。今度のFOMCでもう一度0.5%下げると、FFレートが3.5%で公定歩合が3.0%になる。公定歩合が半年で半分!というのはちょっとスゴイではないか。日本でいえば93〜95年頃の感覚だ。米国経済はかなり危なっかしい状態になっている。

○その直後の6月28日には、日銀の金融政策決定会合がある。ここでアメリカにお付き合いして、「量的緩和の追加策が発表される」という観測が多い。「骨太の方針」が閣議決定されれば、以前から日銀が主張していた構造改革が担保されるので、もういっちょ金融面でサービスしてもいいだろうという理屈。そうなりゃ日米首脳会談の「手土産」にもなるし、というわけだ。たいした根拠はないけど、筆者は「何もなし」だという気がしている。日銀が動くとしたら、むしろ7月2日の短観発表後ではないか。

○ここで話は全然変わるのだが、田中さんのHPの6月24日分でこんな一節があった。

ノンフィクション作家の後藤正治さんに、若いノンフィクション作家にどんなアドバイスをしたらいいか聞いたことがあります。
すると、食べていくための仕事と、お金が儲からなくてもいいから自分のテーマになる仕事とをハッキリわけて、両方やることだとおっしゃいました。

○田中さんは大手出版社の広告部にいるので、「メディアは経済的に成り立つかどうかが大切」と言っている。これは正しい態度だと思う。恒産なきものは恒心なし、というか、私は貧乏なジャーナリズムというのをあんまり信用したくない。『噂の真相』は読むけどね。一方で、先輩たちが残した不動産収入があるから、利益を度外視して正論を張っていける、などという伝統ある大マスコミも胡散臭いと思う。逆に「会社四季報で儲けた分を、良質な単行本を出版することで吐き出す」という東洋経済新報社はエライと思う。最近は大変らしいが。

○ふとわが身を振りかえると、筆者の場合は会社で糊口をしのぐ仕事をして、一方で金にならないサイトの運営をやっている。人間の心情として、ついつい金にならないことのほうに真剣になりますけど、大事なのは両方やることですな。なんとなく、励まされるような思いがしました。

○せっかくだから「四酔人」全員を取り上げることにして、もう一人は岡本さん。彼のHPでは、今更ですが、「ジャーナリズムとは一体何なのか」 というすごく面白いインタビューをやっている。応えているのは神保哲生さん。かんべえは彼がAP通信にいた頃(1980年代)から知ってますが、いつも教わることの多い相手です。小気味のいい正論を聞いていると、ついついチャチャを入れたくなるのですが、できれば最初から通して読んでください。


<6月27日>(水)

○今日でアクセス9万件。6月3日で8万件だったので、今度の1万は1か月かからなかった。加速しているなあ。

○今朝、出社したらなんだか様子が変。警備員の数が多くて、入館の際に「社員はこっちから」などと言われる。ハッと気がついたけど、今日って株主総会だったのね。すっかり忘れてた。「金になる仕事をしっかりやらなきゃいかん」などと書いているわりには、あいかわらずのんびりしている。明日が夏期賞与支給日であることは、ちゃんと覚えているのだが。こういうのを月給泥棒という。

○国際収支に関する懇談会に出席。4月、5月も輸出が減って輸入が増えている。結果として貿易黒字は急減。景気が悪くなると、経費を削減しなきゃならないので、その分輸入が伸びるという理屈らしい。一方で輸出の減り方は劇的である。唯一堅調なのが中国向けなんだが、セーフガードを契機にした貿易紛争が勃発。どうなるんでしょうね。

○帰りの電車から、藤巻健史『外資の常識』(日経BP社)を読み始める。痛快である。外資がどうのこうのというのではなく、とてつもなくユニークな伝説的ディーラーのお話。JPモルガンの東京支店長まで勤めた人なのだが、「プロパガンダ」という手書きのマーケットコメントを毎日流していて、それをまとめたのが本書である。毎日ものを書いて人に読ませようというのは、ワシも人のことは言えないのだが、やっぱりちょっと変わったところがあるのだと思う。それにしても、同じ内容をぜひ「手書きで」読んでみたかったものだ。

○さて、今週号の「溜池通信」は難航。ハッキリした失敗作になるか、思いきり後悔するような号になりそう。でもまあ、「今週は書けませんでした!」をやらないで続けていることを、信用してくれている人もいるだろうから、あと2日頑張ってみよう。では。


<6月28日>(木)

○今夜は道路特定財源についての勉強会。驚くべし。一般に言われている話と全然違う。つまり一般財源化しても、あんまりいいことはないのである。

○なぜ道路特定財源の一般財源化が望ましいのか。よく言われていることは、@予算の硬直化の原因になっている、A予算があるから無駄な道路を作る、B利権の巣窟である、などだ。しかしそれぞれの指摘には疑義がある。

@予算の硬直化については、「だったら一般財源でやっている農業関連の公共事業はどうなんだ」という話になる。公共事業のシェアの硬直化は、あらゆる項目にわたって発生している。たとえば空港の整備費が港湾の整備費より少ないという図式が、何年も放置されている。それは特定財源とはなんの関係もない。

A「道路は必要か、無駄か」という議論は簡単ではない。都市部の人は「地方の方が道路がいい」と思っているし、地方の人は「自分たちの周辺は遅れている」と思っている。重要なのは、「どれだけの道路が必要なのか」という問題に答えを出すことだ。また道路という概念は、街路樹や夜間照明などの存在も含まれている。メンテナンスだけでも結構、お金がかかるのである。それに対して特定財源をつけるということは、「受益者負担主義」という観点からみれば筋が通っている。

B道路には利権がつく、というのは、ある面では真実なのだろう。ただし一般財源化すれば利権がなくなるかといえば、やはり疑問である。

○要するに、国民の多くは身近で頻繁に行われている道路工事に対して不信感を持っている。「無駄なことをやっているなあ」と感じている。それが「特定財源のせいだ」と言われれば、非常に納得する。いかにも巨悪にメスを入れているような快感がある。だが本当の問題点は別のところにある。それは縦割り行政であったり、族議員の存在であったり、要するにおなじみの日本的な組織上の問題なのである。財源の性質は本質的な問題ではない。

○敢えて道路特定財源を一般財源化したとしよう。どういう結果が生じるか。5兆8547億円(平成13年度)の税収を他に転用することができるので、財政再建には役立つかもしれない。その代わり、受益者負担の原則は崩れるし、予算の透明性はかえって低下する。支出を決定する裁量権が、国土交通省から財務省に移動することは、プラスとマイナスの両面がありそうだ。いずれにせよ、「本当に道路が余っているのなら、その分を減税すべき」「税を負担しているユーザーの理解を得ることが先決」というのはまったくの正論だ。

○だったらこの問題の落としどころはどこか。結局は道路特定財源の使途を拡大しよう、ということに尽きる。環境で使う(たとえば低公害車の開発)、生活道路に使う、といった工夫をしていけば、結局はその分一般財源を節約することにもつながる。こういう話を聞いてみると、民主党が言っているように「とりあえず向こう2年間、一般財源化してみる」などというソリューションは、まったく問題の本質を理解していないということになる。困ったもんですな。


<6月29日>(金)

○昨日の道路特定財源の問題につき、読者からレベルの高い指摘を3通いただきました。ご紹介します。

●「受益者負担主義」という方向は間違っていないと思いますが、この原則をもっと徹底すべきです。現在の道路財源は、簡単に言えば、東名高速の収入を北海道ハイウェイに使おう、ということです。これでは、本当に必要な道路が受益者負担主義で整備されるのではなく、むしろ逆の方向になってしまいます。本当は、道路毎にコストベネフィット計算して、税(地方税)と利用者負担を提示し、建設するかどうかを決めるというのが筋だと思います。ただ、これを現実の行政に適用するとなると、様々な仮定のもとでしか計算できず、複雑になってしまうことが問題になるでしょう。(F氏、在ワシントン)

○「受益者負担主義」を撤回するのではなく、徹底することで解決を図ろうという視点は鋭いと思います。ただし、国土交通省の計算によれば、「東京人の割り勘負け」はそれほど大きなものではないそうですよ。

●一般財源化を論じる前に、政策評価を行い、当該道路事業がコストを正当化できるかを先ずチェック、数値化して公表し、政治的判断で断行するのならその理由も説明させる、といった手順が必要ではないでしょうか。
中間案的に道路事業以外に広げる場合でも、その新規事業の評価を先に行い、どちらが経済論理的には望ましいかを数値で示し、政治的変更は理由を説明させる方が透明性が高く、Tax Payerに資すると思うのですが。(N氏、在東京)

○これも同様な指摘ですが、「まず、道路を評価する方法を決めましょう」ということですね。ここが難しいところだと思います。万人が納得できるようなコストベネフィット計算を打ちたてることができるかどうか。

●一般財源にしても権益も固定化もそれほど変わらない、というのはそうかもしれませんが、まだ一般財源にしたほうがましなように思います。例えば、中曽根臨調のときには一般財源はゼロシーリング、マイナスシーリングの対象になりましたが、特定財源だとそれから外れていたでしょう。減税をするのに所得税や法人だけにせず、自動車重量税やガソリン税も減らしていって、本当に必要な道路だけ作るようにしたら、と思うのですが。(S氏、在新潟)

○う〜ん、道路特定財源がこのままでいいとは言いませんが、これを一般財源にすることが「道路」に対するさまざまな問題のソリューションになるかどうかは、きっちり見極める必要があると思います。筆者はやはり、受益者負担主義を明確にして、自動車重量税などを減税する方が正しい解決策だと感じています。

○それにしても、こんな七面倒な話を、皆さんよく読んでますね。「道路」はやはり関心が高いテーマなのでしょう。ご意見をどうもありがとうございました。


<6月30日>(土)

○結婚式に行ってきました。新婦はもと職場の同僚。最近の結婚式は、いろいろ様変わりだと聞きましたが、今日の式は「ご媒酌人あり」「双方の主賓は職場の上司」「ケーキカット、お色直し、キャンドルサービスあり」というきわめてオーソドックスなもの。なんというか、安心して見ていられるパターンでした。

○最初は「妹を送り出す兄」という心境でしたが、ふと式場で花嫁の父を見たら急に感情移入してしまった。ワシも年ですかね。以前は、結婚式に出るときは、どうやって馬鹿騒ぎするかばかり考えていたものですが。いずれにせよ、ジューンブライドの将来に幸多かれと祈りたいと思います。明日からは月変わりですな。






編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki