<12月1日>(土)
○歯医者でしばし苦痛に満ちた時間を過ごし、外に出てみたら駅前の「柏そごう」に、「新宮様ご誕生」の垂れ幕。おやまあ、早かったですね。とにかくおめでとうございます。
○皇太子は41歳でパパですね。不肖かんべえはもう14年もパパをやっておりますので、そうでなかった時代のことは忘却の彼方ですが、とにかく子供ができるというのは、大きな事件だったと思います。やっぱり自分でお風呂に入れたりするんでしょうか。子育て、頑張ってほしいですねえ。
○昨日のBSジャパン『ルック@マーケット』で紹介したヒトコマ漫画などの元ネタを、「テロ事件リンク集」に加えておきました。読者のAさんが見ていてくれたようで、どうもありがとうございます。
<12月2日>(日)
○野口悠紀雄『ホームページにオフィスを作る』(光文社新書)を読みました。あの『超・整理法』の先生は、ホームページを作って仕事に役立てている。「野口悠紀雄Online」は、おそるべし1日4〜5万アクセスというお化けサイト。自分でサーバーをレンタルし、学生などのサポーターを動員しているというから本格的だ。
○こちらも自分でHPを作っているので、この本には思い当たる点が多い。以下は思わず「そうそう」と同感した部分。とっても多いのが感動的なほど。
・ホームページは自分だけが使うつもりで作ると良い。(38p)
・自分が使って便利なホームページは、他の人が使っても便利。(39p)
・時間がないときは、「詳しいことはホームページを見てください」と言える。(53p)
・ホームページでは制約なしに発言できる。(63p)
・ホームページの運営法は、試行錯誤の中からしか生まれない。(129p)
・対象サイトの評価を行っていないリンク集は使いにくい。(132p)
・自分のホームページでフォーラムを運営している人は、それぞれ苦労している。(158p)
・読者とのインタラクションは、私にとってきわめて重要なものだ。(161p)
・アクセスを増やし、リピーターを確保するための方法は、「一に更新、二に更新、三に更新」。(172p)
・「更新した個所を分かりやすく表示する」というのも、重要な点だ。(同)
・ページがブラウザに完全に表示されるまでの時間は、一般的には8秒でなくてはならない。それ以上待たされると、「重いサイト」と評価され、ユーザーは2度と利用しなくなる。(173p)
・3秒以内にページの特徴や目的が伝わらなくては駄目。サイトの特徴を示す簡潔なキャッチフレーズ、主要なコンテンツへのリンクなどを、ページの前半部分に見やすく配置しなければならない。(174p)
・ウェブからはほとんど収入が得られない反面で、サーバ代や人件費は確実にかかる。(185p)
・私はIT革命に関する限り、「傍観者」の立場にはいたくないのである。(186p)
・インターネットにせよ何にせよ、使いこなしていない人ほど、新しい技術の潜在力を過大評価しがちである。(206p)
・携帯電話は基本的にITシステムの外にある。(209p)
・日本でIT革命を実現するための第一歩は、政府のデータ公開である。(221p)
○なんだか野口先生が「四酔人」に思えるような本でした。自分もホームページを作ってみようかと思っている人、読んでおいて損はないですぞ。
<12月3日>(月)
○臨時国会は今週金曜で閉幕です。いろんな法律が成立した中で、商法の改正もあったんですね。商法は春の通常国会でも、監査役制度の活用など、コーポレートガバナンスに関する改正が行われたばかりなのですが、今度の改正は無議決権株式など、株式発行を規制緩和することで、新規事業の育成を有利にしようとするもの。衆議院のHPの中に、その概要をまとめたページがあります。URLは以下の通り。
●商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第6号)概要
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/rchome/@Ugoki/houmui/153shouhou.htm
○ところで上の文章の中にこんなくだりがある。なんじゃこれは。
5 会社は、その作成すべき会社関係書類を電磁的方法により作成することができるものとするとともに、会社又は株主等から行う商法上の通知、請求等について、電磁的方法によることができるものとすること。
6 会社は、貸借対照表又はその要旨の公告に代えて、その情報を、5年間、電磁的方法により開示する措置をとることができるものとすること。
○商法改正により、来年4月1日から企業は、書類を書面ではなく電子ファイルで保存しておいて良いことになる。株主総会の案内状を電子メールで送ってもいいし、会社の決算書類は新聞に広告費を払って掲載するのではなく、ホームページ上にPDFファイルでどーんとのっけておけばいい、ということになる。でもさぁ、電磁的方法はないよね。カッコ悪ィ。なんでインターネットと書かないのよ。
○ちなみにこの商法改正は、共産党以外のすべての会派の賛成をもって、粛々と成立した。誰もなんとも言わなかったのかなあ。片方で政府は「e-Japan計画」だなどと言っているし、言葉の使い方からしてちぐはぐなのが日本版IT革命ですな。
<12月4日>(火)
○今宵はちょっと他言をはばかるような話題を行っちゃいましょう。ハッキリ言いますが、先週月曜日に週刊新潮編集部から電話取材を受けた時点では、「ロイヤルベビーは男子だそうですよ」というのが前提でした。実は不肖かんべえは、今年の夏頃の時点でさる筋から同様の話を聞いたことがあります。そしてまた国会内でも、「今国会で皇室典範改正の議論がなくなったということは、そういうことなんでしょうな」という声がちらほらと聞こえてきたのであります。たしかに先週までは。
○実はこの勘違い、そこらじゅうであったらしいんです。伝えられるところによれば、伊勢神宮が用意していた儀礼用の衣服は男子用だったとか、某自民党首脳が口を尖らせて「男だ男だ」と言っていたとか、極めつけは福田官房長官が、出産前に記者団に皇室典範改正の可能性について聞かれ、「その必要はない」と言ったとか。とにかく同じ情報がぐるぐる回っていたとしか考えられない。
○まあ、これは今となっては笑い話です。勘違いがあったからといって、めでたさに文句がつくはずもありません。そもそも男女の生前識別というものは、超音波診断で「ついている」のが見えれば男、そうでなければ女というアナログなやり方に過ぎません。間違うのはよくある話。むしろこういう意外性があること自体、生命の問題の玄妙さでもいえる。試験管ベビーで男女の産み分けなんてのは悪い冗談で、かんべえの2人の娘にしても、産まれてくる直前まで周囲はいろんな理由をこじつけて、「男だ男だ」と言っていたのですから。
○皇室典範(第一条【資格】
皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する)は、今後スムーズに改正されるでしょう。なにしろ日本国憲法の精神に反するばかりか、このルール自体が明治維新のどさくさで決まったようなものですから。「女帝を認めた場合、その配偶者が民間から見つかるのか」などの問題は確かにある。でもまあ、そこは民族の知恵で解決していけばいい話。融通無碍な柔軟性こそ、わが国の歴史と伝統が誇るところではありませんか。
<12月5日>(水)
○昨晩はニューヨークに赴任する先輩の送別会で、かんべえは10時半くらいに失礼して、家に帰って昨日のHPの更新をしました。今日になって分かったんですが、主賓はそのあと悠々と2次会に出かけ、最後はラーメンで締め、おそらくはタクシーでご帰還。朝は5時に起きてそのまま出張に出かけた由。中年の商社マンは元気だなあ。ワシは真似できんとです。
○とはいえ12月のカレンダーを見ると、夜の日程がかなり埋まっている。忘年会シーズンですから。しっかりダブルブッキングも作っている。自分が幹事をやっている会合だけでいくつあるんだ?かんべえさんの場合、夜は執筆作業にも充てなきゃいけないので、飲み会が連日になると仕事の条件がどんどんキツくなってしまうのだ。だから先崎君の忘年会申し入れは翌年回しとなってしまった。ゴメンネ。義理は適当に欠かないと、自分が苦労しますので。
○この時期になると、よく胃腸薬のCMが流れますな。あれを見るたびに、「そうまでして飲まなきゃいいのに」と思ってしまう。幸いなことに、当方はよく飲み、よく食べの薬いらずです。
<12月6日>(木)
○先日来、何度か触れておりました、日本貿易会の貿易見通しが12月5日に発表されました。今朝の朝刊各紙に掲載されています。ネット上で取り上げられている例を2件紹介しておきます。
*朝日新聞「輸出入とも前年割れ 01年度、日本貿易会見通し」
http://www.asahi.com/business/update/1205/015.html
*毎日新聞「米経済低迷で黒字は3年連続減 日本貿易会」
http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/839670/93fa967b96f88d589ef-0-1.html
○貿易のデータはあまり注目を集める機会がないのですが、足元の2001年度の貿易黒字が前年比でほぼ4割減、というのは多少は関心を持ってもらえたかと思います。他方、日経新聞は「来年度5.4%増」を見出しにして、2002年度が回復すると見込んだ点に注視。その心は、「来年度後半からの米国景気回復を受けて輸出が伸びる一方、国内景気の低迷で輸入が伸び悩む」ということになっている。もっともこれは、「担当者の期待も込めて」(共同通信)であることも否定できない。
○ご関心をもっていただけた方は、原文をご参照いただければ幸いです。
*日本貿易会「貿易に関する調査統計」
http://www.jftc.or.jp/research/statistics/statistics.htm
○念のために白状しておきます。不肖かんべえは、この仕事に参加してはおりましたが、ほかの仕事に追い回されて欠席が多く、良心的な委員ではありませんでした。なにしろ出張先の京都から、マクロの予想意見を送ったりしてましたから。(しかも「不規則発言」を更新した後に!)かえりみて内心忸怩たる思いはありますが、せめて成果の宣伝には協力しようとこの場を使ってご報告する次第。
○さて、本日の話題は青木建設が吹っ飛んだことと、サッチーの逮捕。どちらも「ご慶祝」と重ならないように、息を殺して待っていたような性質の出来事ですな。「めでたい、めでたい」が一段落したので、「もういいや」とばかりに動きが始まったんでしょう。似たような話がほかにもあるかもしれませんな。
○情けないのは、この後に及んで野村監督の後任を決めていなかった我が阪神タイガース球団である。そんなもん、「サッチー逮捕→野村監督辞任」は最初からわかっとっただろうが。岡田でいかんかい!見せ場の少ない来年のセ・リーグで、「原監督対岡田監督」はちょっとした絵になるで。なに、仰木さんの目があると?悪いけど、阪神にイチローのような素材はおらへんぞ。まぁ、それでもこの際、野村でなきゃなんでもええわい。来年はちょっとはプロ野球を見ようかと思う今宵のかんべえであった。
<12月7日>(金)
○今日思いついた、新年用のジョーク。
2002年の日本経済には、グッドニュースが1つ、バッドニュースが1つあります。
悪い方から先にもうしあげます。
バッドニュースは、2002年の日本経済は2001年よりもさらに悪くなるということです。
次にグッドニュースは何かといいますと、ここにいる全員が、そのことはもう知っているということです。
○ぜんぜん洒落になってない? ワシもそう思うのだ。
<12月8日>(土)
○そういえば、真珠湾攻撃60周年。今年は『パールハーバー』などという映画もできていて、最近になってDVDも売り出しているらしい。この映画、おそろしく評判が悪かった。かんべえも見ていない。ところが「今見ると面白い」という説がある。「9・11」の悲劇を目の当たりにした後に見なおすと、あらためて衝撃が伝わってくるのだという。そういうもんですかね。
○真珠湾といえば、『トラ・トラ・トラ』という日米共同製作の映画があった。この映画、かんべえは日本とアメリカの両方で見たことがある。この映画、日本側は日本語で、アメリカ側は英語で描かれている。アメリカ版だと、日本語のシーンには英語の字幕が出る。この字幕がむちゃくちゃなのである。というより、かなり苦しい翻訳をしている。
○連合艦隊に運命の電報が届くシーン。「ニイタカヤマノボレ、ヒトフタマルハチ」と告げる声に、兵士たちは緊張する。観ている側も、「お、いよいよ来たぞ」とうなる見せ場である。と、ところがだ。日本人以外の観客にとっては、「ニイタカヤマノボレ」が何のことだか分からない。かといって、この言葉の意味を字幕で翻訳するわけにもいかない。
○そこで奇妙な仕掛けが行われるのである。映画の冒頭近く、山本五十六司令官が着任するシーン。兵士たちに訓示が行われているシーンで、なぜか英語の字幕では長官は、「攻撃の指令が下ったら、“ニイタカヤマノボレ”の暗号電文が来るぞ」などと妙なことを口走っている。そうやって説明しておかないと、ニイタカヤマノボレのシーンが生きてこないのだ。
○日米が一緒に何かをやるとなると、ついついこの手のギャップが生じてしまう。暗号にある「ヒトフタマルハチ」はもちろん「12月8日」を意味しているのだが、これもアメリカ人には通じない。彼らは真珠湾攻撃は12月7日だと思っているから、そんなことを字幕にいれると混乱する。かくして映画の中では、「12月8日」はすべて「December
7th」と翻訳されている。
○これって日米関係の縮図のような話だなあ。誰かが巧妙な「翻訳」をしてくれるからなんとかもっているけど、ギャップは意外と大きいのである。その陰で、日本の親米派やアメリカの親日派は、肩身の狭い思いをしていたりする。つらいね。
<12月9日>(日)
○今日でウチのカムリは7年目車検を通してしまった。正規ディーラーでやってもらうので安くない。諸経費混みで10万円を超える。待ってる間に備え付けのガズーの画面で下取り価格を調べてみたら、なんとウチのクルマは7万円であることが判明。7万円のクルマに10万円以上の経費を注ぎ込むのは、なんというか釈然としないではないか。
○新車で買ったときの値段がトータルで200万円。それが7年後に7万円になるということは、年間で27万6000円、月間で2万3000円の減価償却が行われていたことになる。う〜む、もったいない。このまま行くと、あと3ヶ月で無価値になる計算ではないか。とはいうものの、実際には均等に減価償却するのではなく、最初の5年間でほとんど無価値になり、その後は横ばいに推移するのだと思う。なるべく早く新車を買い換えてもらうために、中古車価格が早く減価するような価格形成がされているのだと思う。
○それでも7年乗って走行距離が2万5000キロ足らずで、ディーラーさんも「どこも悪い点はありませんでした」というんだから、買いかえる理由がない。年の瀬に出費をしたせいか、ついつい貧乏くさい計算をしてしまったぞ。やれやれ。
<12月10日>(月)
○昨日の話について、愛読者から教えていただきました。アメリカにはKelley Blue BookというHPがあって、クルマの売買の指標価格を教えてくれるんです。噂には聞いてましたが、試して見るのはこれが初めて。日本とアメリカではカムリはちょっと車種が違うらしいのですが、1994年のLEセダン、走行距離16000マイル、状態は良好(excellent)という条件を入力して見ると、下取り価格(Trade-in)で5800ドル、市場価格(Private
Party)で7500ドルという結果になりました。ずいぶん違うもんですね。
○さて、今日は大変な一日でした。4大銀行グループの株価が揃って安値を更新。終値は、みずほが251,000円、UFJが297,000円というからエライコッチャです。
○たまたまこんな日に、都内某所で日経の滝田洋一氏、東京三菱証券の北野一氏と意見交換の機会に恵まれました。北野氏は相場は転換点から強気に向かうという読み。銀行が自己資本を毀損するためには、日経平均で7〜8000円まで下げることが条件となり、それはちょっと考えにくい、という。滝田氏はやや悲観的で、不良債権問題は根が深く、過去に92年、95年、98年と3回も繰り返した「危機→反省→改善→慢心」というサイクルを、今度も繰り返してしまう恐れがある。相場が底打ちするためには、もっと質的な変化が必要なんじゃないか、と言う。
○私はかねがね、北野さんの方向感覚の正しさには信頼を置いているので、「ここが転換点」という見方には感心しました。普通はなかなかそこまでは言い切れない。他方、滝田さんが言う「質的な変化」が必要というのもうなづける意見です。では、その変化がどのタイミングで来るのかというと、意外と近いのかもしれません。たとえば、過剰債務企業に対する大胆な減資とDebt
Equity Swap、てなことができるのか、どうか。金融機関にとっては、相当タフな決断となるでしょうが。
○こういう金融不安の瀬戸際になると、「さあ、政府は」ということになるのだけれど、小泉首相は欧州に外遊中。過去の危機は、92年は大型景気対策で、95年は「榊原マジック」による円高是正で、98年はオブチノミクスによる大盤振る舞いで切り抜けてきた。2001年の危機は「政府主導」は当てにできないようだ。それがいいことなのか、悪いことなのかは分からないのだけれど、こういう点でも「民間ができる事は民間で」というのが小泉政権らしい。
<12月11日>(火)
○来年はどんな年になるのでしょうか。日本古来の知恵に聞いてみましょう。たまにはこういうアプローチも悪くないと思います。
2002年の干支は壬午(みずのえ・うま)である。
十干のうちの【壬】は、「ハラ(妊)む」の意味で、草木の種子の内部に更に新しいものが妊れることを指す。経済企画庁(当時)は、先の壬の年であった1992年に、もう一つ前の壬の年であった1982年の12月から始まった大型景気が「調整局面」に入ったとして、事実上大型景気が終わり、後退期に入っている、との見方を同年度の経済白書のなかで示していた。すなわち、後にバブルと呼ばれた大型景気が始まったのが壬の年であり、それが終わって低成長の時代が始まったのも壬の年であった。さらに10年後の2002年が、再び経済の転換点となることが期待される。
また、米国でクリントン氏が前大統領に選出されたのも1992年であった。冒頭の「新しいものが妊れる」点では、こちらの方があてはまりそうである。
十二支のうちの【午】は、万物にはじめて衰微の傾向がおこりはじめた様を表す。先の午の年であった1990年にはペルシャ湾岸危機が発生した。炭疽菌テロのイラク関与は明らかにされていないが、このことが、その後の米・イスラム社会間の関係に少なからず影響を及ぼしているはずだ。
また、世界銀行の90年度年次報告は、それまで急成長を続けてきたアジアの輸出に鈍化がみられることから、アジアの奇跡は終わった、と報告している。
それでは、先の【壬午】はどんな年であったのだろうか。60年前の1942年7月には、連合艦隊がミッドウェー海戦で決定的敗北を喫し、内地では、大東亜戦争一周年を記念する国民の標語を公募した結果、有名な「欲しがりません勝つまでは」が採用された。この年の12月には、米シカゴ大学の実験原子炉で、ウラン核分裂の連鎖反応テストが成功した。この成功が、のちに広島・長崎へ原爆を投下したマンハッタン計画と、戦後の原子力平和利用の両方を可能にした。
○1942年の11月15日、大政翼賛会と新聞社共催で、「大東亜戦争1周年、国民決意の標語」が募集されました。わずか4日後の締め切りまでに、実に32万点の応募があり、「欲しがりません勝つまでは」は入選10点の10番目でした。ちなみに賞品は賞状と副賞100円の公債。では、このときの他の9点はというと、以下のような作品でした。
「さあ2年目も勝ちぬくぞ」
「たった今!笑って散った友もある」
「ここも戦場だ」
「頑張れ!敵も必死だ」
「すべてを戦争へ」
「その手ゆるめば戦力にぶる」
「今日も決戦明日も決戦」
「理屈言ふ間に一仕事」
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
○こうして見ると、「欲しがりません勝つまでは」がダントツに出来が良いように思える。なぜこれが10番目だったかは謎ですね。ことによると、2002年の日本も、こういう言葉が似合うような厳しい時代になるのかもしれません。
○1942年を代表する名文句がもうひとつあります。それはコレヒドールの戦いに破れたダグラス・マッカーサー将軍が吐いた「アイ・シャル・リターン」。どちらかといえば、こっちで行きたいもんですね。2002年は。
<12月12日>(水)
○昨日の日経新聞の一面「官業を斬る」は傑作でした。11月7日、こういう会話があったのだそうで。
橋本元首相「一体、あなたは結局、何をしたいんだ」
小泉首相「廃止・民営化。それに尽きる」
橋本元首相「あのねえ、改革の将来像がないとダメなんだよ。廃止・民営化後のビジョンを示さないと意味がない」
小泉首相「まさにそこなんだよ、龍ちゃん」
○ハシリュウ、この「龍ちゃん」の一言に切れちゃって、以後は特殊法人改革をめぐって小泉VS橋本の対立は決定的になり、「抵抗勢力といいたければ言えばいい」と開き直っちゃった。かくして小泉首相と橋本派は全面対決になったのだという。ハシリュウの場合、以前にも似たようなことを繰り返しているので、この記述はおそらく本当なんでしょう。人間、瞬間湯沸し機になってしまえば、政策も改革の将来像も消し飛んでしまう理屈で、まあ、どっちもどっちみたいなもんですが、このやり取りは面白い。いかにも政治が政治らしい瞬間といえましょう。
○橋本改革のときは、行革会議などではかなり高度な政策論議が展開された。当時はニフティで公開されていた議事録を熱心に読んだことを思い出します。小泉改革はそれに比べれば、スローガンはあるけれども政策論議はない。そのために特殊法人改革においても、「改革応援団」が出て来ない。この辺が見ていて危なっかしい。
○とはいうものの、橋本流で議論を尽くす手法だと、結局は官僚にとり込まれてしまうという面は否めない。その点、小泉さんは人の言うことを聞かない。改革というものは本来、不連続なものであるから、小泉流で問答無用でやっちゃった方が進みやすい、という面もある。小泉さんの場合、「敵を作った方が構造改革はやりやすい」という思惑があって、わざと「龍ちゃん」呼ばわりして、ハシリュウに喧嘩を売ったのかもしれない。
○思うに小泉さんが目指しているのは、日本経済の再建とか構造改革ではない。田中角栄を源流とする経世会=橋本派をつぶしたい。そのためには郵政民営化だ。だから特殊法人改革だ、となる。そして田中派と対峙するためには、旧福田派=清和会の伝統にのっとって、大蔵省=財務省寄りの路線を取ることが条件となる。そのように考えると、不良債権処理を無視してでも「国債発行30兆円枠」にこだわる理屈が理解しやすい。
○それにしても「龍ちゃん」発言には、政治とは感情なり、を地で行くような面白さがある。少し古い話になるが、加藤紘一氏が対テロ特別措置法の委員長になり、野中元幹事長に筆頭理事をお願いしたことがあった。野中氏、これを断って、後から「加藤政局に対するお詫びがなかった」と愚痴ったそうだ。それももっともな話だが、それだけじゃないと思う。お願いの会合は赤坂プリンスで行われ、山崎幹事長と古賀前幹事長が同席したらしい。かんべえの邪推だが、おそらくこのときに加藤=山崎コンビは自分たちが上座に座っちゃったんじゃないかと思う。自分たちの方が当選回数も上だから。でも、それじゃあ、ダメだよね。
○こういう話は、一概に「永田町の論理」と決めつけちゃいけないと思う。むしろ、こういうことこそが政治の本質だもの。
○アクセス数が今朝で18万件になりました。最近は「1ヶ月2万件」ペースで安定してきたようです。年初には1日50件くらいだったんですけど、こういうのも「ブレイク」というんでしょうか。ともあれご愛読に深謝。
<12月13日>(木)
○昨夜は2つの会合を断り、今夜は身近な会合を失礼してもうひとつの会合へ。締めて1勝3敗。まったく、なんちゅう生活でしょうね。昼間はそれほどアポイントは多くないんですが。
○今宵のゲストは阿川尚之氏。テロ事件と日米関係について。今回の日本の対応は「よくやった」と言っていい。とにかくインド洋に船を出した。「仕事もないのに」というのはためにする議論で、海上では給油ひとつとっても簡単なことではなく、訓練が行き届いた日本の海上自衛隊が近くにいることは、米軍にとって大きなメリット。「米国はオールマイティー」だなどと考えるのは大きな間違いで、NATOなり日本なりがテロとの戦いに協力する意義は計り知れない、という。
○日米安保協力は、新ガイドラインから一歩踏み出すべき状態にあった。そこで浮上していたのがペルシャ湾岸に至るシーレーン問題。今度の特別措置法で、日本はいろいろアクロバットを演じて、インド洋に海上自衛隊を出した。結果的にシーレーン協力への一歩を踏み出したことは間違いない。イージス艦を出さなかったのは「画竜点睛を欠く」きらいがあるが、とにかく重要な一歩を踏み出した。というより、防空能力の高いイージス艦を出せば、文字通り集団的自衛権の行使になったかもしれない。
○などとまあ、いろいろ。興味深いオフレコ話も飛び交う。でも疲れているので、この辺でやめておく。代わりにスゴイ傑作を紹介しておこう。例の「タリバンのバナナボート」に匹敵する日本製ギャグ。テレビ局関係者が作ったのかもしれませんな。ぜひ音を大きくして聞いてください。
http://members.jcom.home.ne.jp/sarasiru/X02.swf
<12月14日>(金)
○ビンラディンのビデオ、さわりはここで見ることができます。また、記事はここをご参照。かんべえとしては、イメージ通りだなあ、という印象です。かなり前のNewsweek誌だったと思いますが、筆跡診断によるとビンラディンは「享楽的な個人主義者」であるという説がありました。テロ事件を楽しんでいるような感じが、「ああ、やっぱりな」と思いました。
○もうひとつ、思いだしたのが10月冒頭頃に読んだNew
York Timesの記事。ハイジャック犯のムハンマド・アタ容疑者がいかに大きな働きをしていたかという内容でした。エジプト人の彼が、ハンブルグで生活するようになってイスラム教に目覚めていく。仲間を集め、アルカイダに接触し、ついには犯行に及ぶ。犯行前夜にアタが書いた遺書も掲載されていたが、本気で苦しんでいる様子が伝わってくるような内容でした。ビンラディンにとっては、文字通り「ういヤツ」だったんでしょう。馬鹿なことをしたもんです。
○オウム真理教事件のとき、麻原逮捕の瞬間はほんとうにゾクゾクしました。永遠に見つからないような感覚さえありました。でもこれだけの警戒を逃げおおせるものでしょうか。最後の瞬間が迫っていることを祈ります。
<12月15日>(土)
○ゴルフは紳士のスポーツといわれます。ルールやマナーがこれほど厳しいスポーツはないでしょう。以下はその一例ですが、ちょっと変わっているのは「屋内用」のルールだということです。
●ゴルフのルール(紳士用)
(1)
プレーヤーはプレイに際し、自前の「器具」を使用する。通常1本のクラブと2個のボールとする。
(2)
コースでのプレイはホールの所有者の許可を得るものとする。
(3)
屋外競技とは異なり、目的はクラブをホールに入れ、且つボールはホールの外に保つ。
(4)
効果的な競技をするためには、クラブ・シャフトは硬度の高いものが望ましい。コースの所有者は競技の開始前にシャフトの硬さを調べることが許可されている。
(5)
コースの所有者は、ホールの損傷を避けるため、クラブの長さを規制する権利を保有する。
(6)
競技の目的は、コースの所有者が競技は完璧であると満足するまで、必要なだけ、打数を重ねることである。この目的を達成できない競技者は2度とコースでの競技は許可されない。
(7)
コースに到着してすぐに競技を開始すると、マナー知らずとみなされる。ベテランのプレーヤーはまずコース全体を見回し、特に見事に形どられたバンカーなどを注意深く眺めながら、賞賛することを忘れない。
(8)
競技者は過去のプレイ経験や他のコースの状況を、現在プレイ中のコースの所有者に言わないこと。コースの所有者が逆上し、競技者のクラブを破損する事故がしばしば発生している。
(9)
競技者は自己の防御のために、適当な「雨具」を用意することが望ましい。
(10)
初めてのコースでプレイする際には、競技者は適切な競技進行を心掛けるべきである。先行のプレイヤーがプライベートコースと思っていたところへ、他人が勝手に入り込んでいたことが判った場合には、先行のプレイヤーが怒り狂うのは目に見えている。
(11)
競技者は、コースが何時でもプレイ出来ると考えてはならない。コースが一時的に工事中ということもある。競技者は臨機応変に対処されたし。上級者はこのような場合、他の競技方法を考えている。
(12) 競技者は、後半の9ホールを回る場合には、コースの所有者の許可を得るものとする。
(13)
ゆっくりとしたプレーは歓迎される。但し、コースの所有者の要求に従い、少なくとも一時的に早いペースで競技を進める構えも必要である。
(14)
時間が許す場合、一競技で同じホールに幾度もプレイすることは大変元気な行為であると賞賛されている。
(15) コースの所有者のみが優勝者を決める。
○これだけ厳しい世界だというのに、ゴルフが好きな人は多いんだよなあ。
<12月16日>(日)
○愛読者であるノルウェーの賢人、Aさんに聞いた話です。アルフレッド・ノーベルはスウェーデン人なのに、なぜノーベル平和賞の授賞式はストックホルムではなくて、オスロで行われるのか。前から不思議に思ってたんですが、ちゃんと理由があるんですね。この話、あちこちで紹介すると、みなさん「へえ〜」と驚きます。
●アルフレッド・ノーベルの命日12月10日に毎年行われる授賞式は、化学、物理、生理・医学、文学、経済の5つが祖国ストックホルムで、平和賞だけ遺言によりオスロでおこなう。各賞の選考機関も遺言にあり、平和賞はノルウェー国会が選出する5人の委員会があたることになっている。ムンクの明るい壁画があるオスロ大学講堂が式場でしたが、手狭になったので10年前から市庁舎にかわった。
(中略)
●ではなぜ平和賞だけオスロなのか、遺言に説明なし。あたりまえか。
通説は:
1) 当時は同君連合、併呑されたノルウェー国民のあいだにスウェーデンからの分離・独立の気運がたかまっていたため、紛争回避の一助にしようとした。
2) スウェーデンとデンマークにやられっぱなしの歴史を背負い、平和思考の強い国民性が政治的でない平和賞決定に都合がよかろうとかんがえた。
自説は:
スウェーデンの政治家が嫌いで選考委員にしたくなかった。
○おそらくAさんの「自説」が正しいんでしょう。かんべえが何に感心したかというと、ノルウェーという国は「毎年、ノーベル平和賞を誰に与えるかを決める」という重要な仕事を、なんと100年も担っているということ。これでは嫌でも平和主義になるし、全世界に目を向けざるを得ません。つまり、「誰が、どこで、どうすれば世界は平和になるか」を、嫌でも考えなければならないようになっているんです。
○1993年に世界を驚かせた「オスロ合意」は、こういう伝統の上に成り立っているんでしょうね。ラビン首相とアラファト議長を、ノルウェーの外相が結びつけた。イスラエルがパレスチナを交渉相手と認め、「領土と平和の交換」というスキームを作った。この枠組みはつい先日崩れましたが、「パレスチナ問題を8年間も食い止めた」と考えればやっぱりスゴイ業績といえる。
○ひるがえって日本。日本がみずからを「平和国家」と自称するときの胡散臭さは、「とにかく自分が戦争に手を染めない」ことを理由にしていること。ではなぜ戦争しなかったかといえば、米国の核の傘の下という絶対安全地帯にいたお陰であって、憲法9条があったことと特段の関係はない。パレスチナもイラクもカシミールも対岸の火事。大事なのは自分の平和だけ。
○アフガン復興会議。めずらしくそれっぽいことに手を上げてはみたものの、東京で実施する際の議長を緒方貞子さんでいくか、田中真紀子さんでいくかが話題になっている。真面目にやれと言いたい。もう「平和国家」のふりなんて、止めにしませんか。
<12月17日>(月)
○いつも貴重なコメントをいただく官僚A氏から、先週号について、「小泉改革に対して、抵抗勢力と呼ばれる政治家と、一部のエコノミストの意見が一致することの不思議」についてご指摘をいただきました。なるほど、亀井静香先生と植草一秀氏が、「構造改革を急ぐな、景気対策を」と言っているのは、少なくとも表面的には同じように聞こえる。
○A氏の鋭いのは、「こういう人たちは、政府は暮らしをよくすることができる、と考えている。でも小泉首相を支持する国民は、もう政府はたいしたことはできない、と考えている。だから、景気が悪くなっても政権支持率は下がらない」としているところです。偶然ながら、つい先日、小泉支持者の山根君が、「どの道、景気対策をしようがしまいが景気は悪くなるのだから、この際、思い切ったことをやったほうがいいんじゃないか」という意見を寄せてくれていた。本人は「乱暴な意見」と言っていたけど、意外とそれが大多数の国民の直感なのかもしれない。
○実際のところ、筆者も「国債発行30兆円枠」などにこだわるのは意味がないと思う。この点に関する亀井氏の批判は正当です。とはいえ、30兆円枠をはずして財政を出動させるにしても、たいした金額は使えない。地方財政も悪化しているしね。雇用対策にしても、今さら画期的なアイデアが出てくるとは思われない。
○政府が何もできないのなら、せめてムダな道路を作らないとか、金食い虫の特殊法人をつぶすとか、財政赤字を減らすとか、今あるマイナスを減らして欲しい。これは非常に納得の行く考え方です。拡大均衡で物事を解決できる時期は遠い昔に過ぎ去ってしまい、今となっては後ろ向きの決断をたくさんしていかなければならない。「経済オンチ」といわれる小泉首相だが、「政府は何もできない」を前提にすれば、「二兎を追わない」という姿勢は正しいのではないだろうか。
<12月18日>(火)
○ワシントンの住人、G氏が来社。ちょっと怪しげな説が多いのだが、いつも刺激的な会話が弾む相手である。今日もいきなり、「ハマスというのは、イスラエルの機関が育てたようなものだからね」。自爆テロはシャロン首相の思う壺なんだと言う。ふーむ、真偽の程は定かではないが、そういう補助線もあるのですな。
○G氏は日本企業にこの手の分析を売り込み中。プレゼン資料をチラッと見せてもらったら、「9月11日を過ぎて、世界の状況はまったく変わった」ことを強調しているのに気がついた。でも日本企業にはそういう意識は希薄だから、ちょっと苦戦するんじゃないだろうか。逆にいえば、アメリカ人にとっては9月11日を境に、世界が真っ二つに分かれているのだと思う。
○アメリカ経済の先行きには悲観的だという。「でもさ、これって第2の真珠湾攻撃だよ。真珠湾がアメリカの歴史において意味するのは、『新たなサクセスストーリーの始まり』でしょ」と言ったら笑ってた。最近のかんべえはこんなシンプルな受け止め方をしています。
○ところでまた風邪をひいてしまっています。30代前半まではほとんど風邪を引かない人だったんですが、ある時期から急にかかりやすくなった。なぜなんだろう。
@年をとって抵抗力が落ちた。
A自分のペースで仕事ができるようになったから、つい油断をする。
B下の子供がしょっちゅう風邪をひいてくるので、それがうつる。
○社内の診療室でもらう薬は、昔はとってもよく効いたのに、最近は飲んでもすぐには治らない。悲しいかな、@が濃厚だな。
<12月19日>(水)
○今宵も忘年会でした。「よいお年を」などと言いながら、本当に2001年も押し迫ってきたなあ、と感じています。
○年末の行事といえば年末ジャンボ、もさることながら、「10大ニュース」が気になります。
●朝日新聞 2001年トップ10ニュースはhttp://www.asahi.com/01-02/top10/index.html
●集計結果 http://www.asahi.com/01-02/top10/result.html
○案の定、「同時多発テロ」がダントツ第1位。これはまあ当然ですな。
○年末の行事で、もうひとつ気になるのは、
●"TIME"誌の"Person of the Year"。 http://www.time.com/time/poy2001/
○今年は投票できるようになっています。かんべえもさっそく投票。2001年は、おそらくウサマ・ビンラディン氏になるのではありますまいか。過去の歴史をひもとくと、1979年にホメイニ師が選ばれたことがある。イスラム圏からは久々の"Person
of the Year"になりますね。
○ビンラディンといえば、2ちゃんねるの「タリ板」で、こんな奇妙なスレッドができている。
●「こんなウサマ・ビン・ラディンは嫌だ」http://news.2ch.net/test/read.cgi/news5/1003247775
○抱腹絶倒です。たとえばこれ。
●ボロボロに負けて国外脱出のとき「今日はこのくらいにしといたる!」と捨て台詞を吐くラディン。
○実際のUBLは、すばやく逃げてしまったようですが、この先の米国の出方が難しい。「イラクまで行く」という説もあるが、かんべえは前から書いているとおり、それには懐疑的です。おそらくブッシュ政権は、こんなふうに考えているのではないか。
(1)幸運にもアフガン戦線で勝てた。
しかし「勝った」あとは、すぐに「兵士を母の元へ」となるのが、アメリカのならい。
あらためてイラク攻撃となると、再び開戦準備に手順を踏まねばならず、とっても面倒。このままいっぺんにイラク戦に突入できるのなら、その辺の手間が省けるのでたいへん好都合。
(2)しかし対イラク戦となるとこれはギャンブルだ。最悪負けるかもしれないし、ロシアやフランス、中東諸国などが離反するかもしれない。来年は中間選挙を控えていることだし、ここは対アフガン戦の勝利を「お土産」にした方が、政治的には賢明といえる。
(3)さりとて、「対テロ戦は長くかかる」と宣言した手前、
「クリスマス前に終わって万事OK」とも言いにくい。国内には炭疽菌問題もある。できれば確実に勝てそうなところ、ソマリアかミンダナオ当たりにアルカイダの残党が居るということにして、もうちょっと海外の戦争を続けたい。そうやって古い兵器の在庫処分をする。
○極論すれば、UBLが逃げ続けてくれた方が、ブッシュ政権にとっては都合がいい。「まだまだ安心はできない」と言い続けることができるからね。
<12月20日>(木)
○Newsweek誌がSpecial Davos Editionを出しています。これの巻頭に、サミュエル・ハンチントン教授が「The
Age of Muslim Wars」というエッセイを寄稿している。これは目をひん剥いて読むべき内容ですぞ。『文明の衝突』の著者は、「9・11」をどう解釈したか。例によって親切なかんべえ氏が抄訳を作ったのでここに載せておく。感謝は不要じゃぞ。
今日の国際政治はイスラム戦争の時代である。他の文明に比べ、イスラム教徒ははるかに頻繁に、互いに、あるいは異教徒と戦う。国際紛争の主要な形式は、冷戦からイスラム戦争に移った。この中にはテロやゲリラ、内戦も含まれる。イスラム教徒による暴力は、イスラム対西欧(orその他)の文明の衝突という形で凍結できるかもしれない。だがそれは必然的ではなく、むしろイスラムが関与する暴力は、さらに拡散したり頻発することになりそうだ。
イスラム戦争の時代は冷戦が終わり始めた80年代に始まる。80年にはイランイラク戦争が始まり、少なくとも50万人が死んだ。同時期のソ連によるアフガン侵攻は強力な抵抗を招き、89年には退却を余儀なくさる。この勝利は米国の技術、サウジと米国の資金、パキスタンの支援と訓練、そしてイスラム教徒の兵士たちの参加によってもたらされた。1990年にフセインがクウェートを侵略すると、米国はイスラム国を含む多国籍軍を結成してこれを破った。
90年代にはイスラム教徒と異教徒の間で暴力が発生する。ボスニア、コソボ、マケドニア、チェチェン、タジク、カシミール、フィリピン、インドネシア、中東、スーダン、ナイジェリアなど。アフガニスタンのムジャヒディン戦士がその中核となった。The
Economist誌によれば、1983〜2000年の16の主要テロ事件において、11〜12件がイスラム教徒の手によるという。部国がテロ支援国家とする7カ国のうち5カ国がイスラム教国。80〜95年の間に、米軍はイスラム教国に対して17件の軍事行動を実施した。またIISSによれば、2000年に起きた32の紛争中、2/3がイスラム圏がらみである。だが彼らは世界の人口の1/5を占めているに過ぎない。
9月11日は「新しい戦争」を意味しない。イスラム教徒を巻き込む暴力が継続され、過激化したに過ぎない。初期のうち、イスラム教徒によるテロは散発的だった。ところが93年には米国人と米国施設が攻撃の目標となった。9月11日には、オサマ・ビン・ラディンの世界的なテロネットワークが40カ国に広がっており、周到に準備された同時攻撃が可能であることが判明した。そして史上初、米国内で化学生物兵器にも匹敵する破壊効果を得た。イスラム戦争の時代は米国本土にもやってきたのである。
個々の戦争に対する責任の所在はそれぞれに異なる。とはいえ、イスラム戦争の時代には一般的な原因がある。イスラム教の教義や信仰ではなく、真の原因は政治にある。
@
過去数十年の世界の発展が、イスラム教徒のイスラム意識を勃興させている。近代化とグローバル化は多くの面で建設的な効果をもたらした。イスラム団体は社会支援、道徳的指導、福祉、医療、教育といった、得てしてイスラム政府が与えないサービスを提供している。抑圧的な政府への反対勢力になったり、ときには過激分子を撒き散らすこともある。
A
とくにアラブ諸国の間には、西側に対する不満、怒り、嫉妬、敵意が存在する。これは20世紀の帝国主義のせいであり、米国の対イラク政策とイスラエルとの関係のせいでもある。加えて腐敗した非効率な彼らの政府を、西側が支援しているとこともある。
B
イスラム世界内部の民族、宗教、政治、文化の亀裂が、内部の暴力を刺激している。サウジとイランのように、非イスラム世界への影響力を競っている例もある。オットーマン帝国の末期以来、イスラム世界が多くの国に分かれていることが原因。
C イスラム社会の高い出生率により、16〜30歳の若い層に団塊ができている。この年代の男性は、得てして高い教育を受けても職に就けず、西側に移住して、原理主義団体やゲリラやテロ集団に身を投じる。イスラム社会にはそういう若い男性が余っている。
これらの要素が、イスラム社会を巻き込んだ暴力の拡散の原因となっている。ではこれがイスラムと西側の文明間の戦争に発展するだろうか。これこそがビンラディンの目的であり、彼は米国に対する聖戦を宣言した。イスラム内部に無数の分派があるせいもあって、この試みは成功していない。片や米国は、テロリズムに対する世界戦争を宣言したが、無数のテロ集団に直面する無数の政府があるのが現実である。
文明の衝突の萌芽は存在する。9月11日に対する米国人の反応がそうだ。西側の政府や人々は、米国に同情と支援を寄せた。英、加、豪などアングロ文化を共有する国は特に顕著だった。独仏など欧州の人々も、米国への攻撃は自分たちへの攻撃と見なし、ルモンドは「我等は米国人だ」と謳い、ベルリンでは「我等はニューヨーカーだ」の声が上がった。非西側、非イスラムの文明、ロシア、中国、インド、日本は調整された同情と支援を寄せた。ほとんどすべてのイスラム政府はテロ攻撃を非難し、自分たちの体制に向けられた原理主義の脅威を懸念した。ウズベク、パキスタン、トルコだけが直接的な支援を行い、アラブ主要国ではヨルダンとエジプトだけが反撃を支持した。ほとんどのイスラム国では、多数がテロを非難し、少数が賛同し、かなりの人数が米国の反撃をののしった。軍事行動が長く、過激になるほど、イスラム教徒の反応も強くなる。9月11日は西側を団結させたが、長すぎる反撃はイスラムの団結を招く。
イスラム戦争の時代はその原因とともに終わるだろう。イラン革命のように、世代交代とともに熱気は失せる。米国の対イスラエル政策が変われば、イスラムの西側への敵意も減少しよう。だが長期的には、イスラム世界の社会、経済、政治の改善は必要である。人々の要請に応えられず、自由を抑圧するような政府は暴力的な反発を増すばかり。イスラム人口を管理しようとするロシア、インド、イスラエルなど非イスラム諸国も同様だ。向こう数年は、イスラム圏内の不統一が和らぐ公算は低いだろう。明るい材料は、彼らの出生率が低下していること。2020年までにはイスラムの若き団塊は縮小する。おそらくイスラム戦争の時代は歴史の中に消えてゆき、他の暴力に支配される新たな時代にとって変わられることだろう。
○こういう見方はイスラム教徒への差別に通じる、という批判がすぐに飛んできそうだが、実に骨太な論考というべきで、かんべえは感じ入りました。とにかく、論議を招くこと間違いなし。日本版は出るのかしらん?
<12月21日>(金)
○【ロイター、12月20日】英国科学振興協会(British
Association for the Advancement of Science)は12月20日,インターネット上で3カ月間募集した人気投票で決まった「世界で最も面白いジョーク」を発表した。そのジョークは次のようなものだ。
●推理小説で有名な名探偵シャーロック・ホームズと無愛想な助手のワトソン博士が調査旅行に出かけ,テントを張って一夜を過ごすことになった。だが深夜になって,ホームズがワトソンを揺り起こし,質問を始めた。
ホームズ「ワトソン君,空を見上げてごらん。そして君の推理を聞かせてくれ」
ワトソン「数えきれないくらいの星が見える。こんなにたくさんの星を見ると,中には地球のような惑星を持つ星もあるはずだと思うよ。そしてその惑星には,生命体が存在するかもしれない」
ホームズ「ワトソン君,君はなんて間抜けなんだ! われわれのテントが盗まれたんだよ!」
○英国科学振興協会によると,このジョークは投稿された1万のジョークの中で最も人気が高く,得票率は47%だったという。この人気投票には世界70カ国以上から10万人が参加した。なおこの試みは現在も続けられており,www.laughlab.co.ukで,ジョークの閲覧,投稿,投票を行うことができる。
○・・・・・溜池通信がこんな話を書くと、「かんべえが作ったネタじゃないか?」と思われる向きがあるかもしれません。言っときますが、私が作ったんじゃありませんよ。ソースは↓です。
http://www.zdnet.co.jp/news/reuters/011221/e_joke.html
○今宵も忘年会。「いい年を迎えられそうにないなあ」と言いつつ、「よいお年を」と言って解散。こんなときこそユーモアを。明日から3連休。読者の皆様もメリー・クリスマス。
<12月22日>(土)
○風邪薬を飲んでいるので一日中ボケ〜ッとしている。苦労して歯医者に出かけるも、そろそろ今日で終わりかと思ったら越年になってしまった。やあねえ、もう。
○今日、思い悩んでいるのは、明日の有馬記念である。長年ご愛読の方にはバレバレなんですが、毎年このレースは買っている。去年も一昨年もいいレースでした。ところが今年はつまんないのである。強いといわれる三歳馬が軒並み出走回避。クロフネもアグネスデジタルもジャングルポケットもいない。それよりも老雄、ステイゴールドがいない。これは先週、香港に行って念願のG1初制覇を成し遂げ、その名の通り「ゴールド」になったからで、めでたいことこの上ないのだが、それでも有馬記念でステイゴールドを買えないのは物足りない。
○この時期になるといつも相談するのは長年の競馬ファンであるパープルさん。そういや、今年は一度も会いませんでしたな。パープルさんのメッセージは下記のとおり。
●オペラオー、ドトウの一騎打ちではないような気がします。
●マンハッタンとトウカイオーザがどこまで迫るか、楽しみです。
●最後の最後なので、引退するメンバーには、精一杯がんばっていいとこ見せてもらいたいです。
○引退するKテイエムオペラオー、Lメイショウドトウの一騎打ちになればJRAは大喜びだろうが、果たしてそうなるか。かんべえの悪い癖として、この外枠2頭を排除して考えたくなる。菊花賞をとらせてもらったCマンハッタンカフェは、立場上欠かすわけにはいかないと思うのだが、有馬記念を勝つような馬かどうかはよく分からない。Dナリタトップロードは去年騙されたので、今年も騙されて年を越すのは嫌だ。するともう買い目がない。Iトウカイオーザでトウカイテイオーと兄弟制覇、というのもピンと来ないし。Hシンコウカリド、というのがちょっと気になる。が、考えすぎかもしらん。
○恐らく今年の有馬、去年や一昨年のようなドラマチックなレースにはならないような気がする。そこそこ意外な結果が出て、釈然としない感じで年を越すんじゃないか。ということは高配当だな。持ち時間は残り一晩と半日。
<12月23日>(日)
○まだ風邪で熱っぽいけど、午後から銀座のウィンズへ。今年の有馬記念は、「敬宮愛子内親王殿下御誕生慶祝」という冠つき。昨日も長考したけど、結論は出ず。でもウィンズで今日のパドックの映像を見たらすぐに決まった。Cマンハッタンカフェの馬体がとにかくいいのである。菊花賞から2ヶ月放牧で体重は10キロ増。3歳馬なれど貫禄十分。これに比べれば、後ろのDナリタトップロードなどは落ち着きがなくて、ちっとも来そうにない。KテイエムオペラオーとLメイショウドトウはもとより眼中になし。しかも今日の蛯名騎手は好調の様子。迷うことなし、Cで勝負である。
○銀座のウィンズは手狭で混んでいる。馬券を買ったら早々に引き上げ、さてどこで観戦しようかと考える。カフェというくらいだからとこじつけて近所の喫茶店へ。2台のテレビが競馬番組を放映中だ。店内の客が全員、競馬新聞を広げている。オヤジとオバンばかりで紫煙がもうもう。ただひとつ空いている席に座って、注文したアイスコーヒーが750円なり。とんでもない店である。スターバックスの看板が増える銀座であるが、まだまだこんな喫茶店が残っているものだ。
○レースはAトゥザヴィクトリーが先行。4コーナーを回ってCマンハッタンカフェがスゴイ勢いで駆け込んで来た。ふふふ、単勝7.1倍はいただきである。でも私が震えたのは、A―Cを1000円買っていたから。店内が「あ〜あ」という声で満たされる中で、こりゃ最低でも50倍は行ったかも、と心はすでにドロボーの気分。スローモーションでもう一度。あれれ、ゴール直前で@アメリカンボスなんていう無印が、Aトゥザヴィクトリーを僅差でかわしている。@―Cなどという特大の万馬券が出てしまったじゃないか。こりゃ、武豊、もちょっと粘らんかい。A―Cが来てたら、心から今年はいい年でしたと言えたのに。
○家に帰ってから配偶者が言われて気がついた。このレース、「Cマンハッタンで悲劇があって、@アメリカの大親分が本気になって、A勝利に向かってまっしぐら」という2001年を端的にあらわすような着順であると。なるほど、そういうことならテイエムオペラ―の出番はない。
○ともかく、当てて文句を言うたらあかん。銀座のカフェも、当てた人はほとんどいなかった様子。今年はG1を2回も取れていい年でした。JRAよ、来年もよろしくね。
<12月24日>(月)
○TIMEのPerson
of the Yearは結局、ジュリアーニ市長でした。かんべえはウサマ・ビンラディン氏に投票したんですがね。田代まさし氏に投票した人も少なからずいたそうですが、こういった一般投票はないことにして、編集部が当り障りのない人を選んだということでしょう。そりゃそうだ。UBLを表紙にして、ニューヨークでTIME誌の不買運動が起こっても困るだろうし。
○過去のPOYの歴史を振り返ると、スターリンやヒトラーのような人たちが受賞している。79年にはホメイニ師が選ばれている。こういう選択には苦情もあるらしい。その後は無難な人選を心がけるようになったのか、たとえば90年代に入ってもサダム・フセインは選ばれていない。94年のヨハネパウロ2世とか、96年のデイビッド・ホー(こんな人いたっけ?)など、苦しい選び方をしている。こうしてみると、だいたいが皆さん、10年もたつと何をしてたんだか分からなくなっている。ギングリッジ元下院議長(95年)は、今頃どこで何をしてるんでしょう?ジェフ・ベゾス(99年)はほとんど破綻しているし。どうも最近のPOYの人選は冴えが感じられない。1988年に「危機に瀕する地球」を選んだときは、「ほほう」と思ったのですが。
○さて、この間にUBLはどこへ行ったか。ここへ来て「もう死んじゃった」説が浮上。なにせ、あのザイーフ大使が亡命しちゃうんだから、そんな気もする。問題はどうやって確認するか、ですな。
○末筆ながら、皆様、いいクリスマスをお迎えください。
<12月25日>(火)
○電車の窓から新浦安や舞浜辺りの住宅街を見ていると、庭やベランダにイルミネーションをつけている家が少なくない。中には凝った作りのものもあるようだ。クリスマスの飾りは年々派手になっていくもので、昔はそんなことに電気代を払うなんて考えられなかったものですが。ま、これは東京ディズニーランドが近いという特殊要因もあるのでしょう。
○アメリカではクリスマスの飾りは、大晦日あたりまでつけっぱなしだったと思うが、日本だと25日を過ぎるとさっさと片付けられてしまう。大掃除やら年賀状書きやら、新年を迎える準備が忙しいものね。それにしても24日がクリスマスイブで、その1週間後は大晦日という日程は強行軍そのものです。この間に挨拶回りがあって、仕事納めがあって、どうかすると帰省したりもする。今年は手抜きして少しのんびりしよう。とりあえずクリスマスツリーはまだ仕舞わないでおくとするか。
<12月26日>(水)
○今年も残るところあと5日。かんべえの厄年がもうちょっとで終わります。とはいえ、まだまだ気を抜けないきびしい年の瀬。それでも今夜の六本木は大変な人出でした。本当に不況なのかなあ。
○さて、今年はこの「溜池通信」にとってもいろんなことがありました。今日から当HPにとっての2001年を振り返ってみたいと思います。最初に思い出すのが、「四酔人問答」のこと。3回実施して、うち2回はネット上で公開した。これは今読み返しても面白いと思う。
第1回
爆笑! 四酔人サイト問答 (1月10日)
第2回
四酔人メディアの逆襲(6月15日)
第3回 テロ事件、オフレコ・オフ会(10月11日)*非公開
○昨年の暮れの忘年会で、別れ際に岡本氏に、「伊藤師匠を呼んで、ネットの未来を語る、って座談会はどう?」と声をかけたのが、第1回のきっかけだった。それまでは4人だけで集まるということは、一度もなかった。読者の中には、まるでこの4人がしょっちゅう会っているように思っている人もいるらしいけど、実態はかくのごとし。たぶん4人が顔を揃えたのは、今年1年を通じても5回以下だと思う。もっとも互いのHPを読んでいれば、いつも会ってるような気にはなるのですが。
○これは田中さんも岡本さんも言ってることだけど、伊藤洋一師匠のサイトで自分の書いたものを紹介されると、いきなりアクセス件数が増えるのである。なにしろ先方は1日1000件超というお化けサイト。要するに他の3人はHPを作って日が浅いこともあって、四酔人の企画はycasterにパラサイトするという思惑もあったわけだ。現在の溜池通信の固定読者の中にも、「ycasterで知った」という人は少なくないと思う。つまり、この作戦は成功したわけである。
○インターネットの誕生によって、個人が情報発信の可能性は大きく高まったと思います。それもどうせなら、いろんな個性がぶつかり合うように展開した方が、読者にとっては面白いはず。複数のHPが連動してひとつのテーマを追いかける、というのは意義あるチャレンジだと思う。来年、どんなことをやるかは全然決まっていませんが、「四酔人問答」の実験をいろいろ発展させることができればいいな、と思っています。
<12月27日>(木)
○溜池通信読者の中には、山根君のように岡崎研究所のHPのリンクからやってきたグループがある。かんべえは一応、岡崎研究所の「門前の小僧」ということになっているので、相互リンクになっている。以下は事務局長の小川さんから、今年の4月29日にもらったメール。
吉崎さん、
宝珠山さんがHPをつくられました。
あとでくわしくおしらせします。
岡崎研究所 92287
かんべえ 66510
日本戦略研究所 21869
だいぶ迫ってきましたね。
○これを見ると、両方とも1年でずいぶんアクセスが増えたことが分かる。今年は安全保障問題がらみの事件が多かった。えひめ丸、米偵察機の海南島不時着、ミサイル防衛、李登輝訪日、「遊び人の金さん」入国、靖国神社参拝論争、そして同時多発テロとアフガン戦線。この間、小川さんからは膨大な量のメールを頂戴したものです。その小川さんが11月に亡くなられたことは、つくづく今年最大の痛恨事でした。
○2月に「アーミテージ・レポート」の翻訳を掲載したが、あれを探してこのHPにたどり着いた人もいるらしい。某日、会社の代表番号にかかってきた電話が回ってきて、大学生と名乗る相手から「アーミテージ・レポートの全訳があると聞いたのですが、御社のHPの中を探しても見つかりません。どこを見ればいいのですか」と聞かれたことがある。そんなもん、検索をかければ一発なのにね。とはいえ、当HPが日本におけるあの文書の普及にいくばくか貢献できたことは収穫だったと思う。
○秋にテロ事件が起きてから、いろんな専門家が急に出てきていろんなことを言っていた。アメリカは勝てないとか、アラブ世界が蜂起するとか、今から思えばとんでもない話が多かった。9月11日以降、当HPでもいろんなことを書いてきたが、さまざまな言説の中では、まだしもマシな方だったんじゃないかと思う。テレビの中で語られたことはすぐに忘れられるが、HPの場合はトラックが残る。「お前はあのとき、こんなことを書いてたじゃないか」という証拠が残ってしまうのである。もちろん溜池通信がはずした予想はあるけれども、1年を通じてそう悪くはなかったな、と思い返してちょっと安心している。
<12月28日>(金)
○今年の前半は政界ネタが非常に豊富でした。森首相が辞任して、自民党総裁選挙で小泉さんが選出される過程は、めったにない政治のダイナミズムを感じさせるものでした。この間の「不規則発言」は、自分でいま読み返してみても面白い。とくに4月5日「野党トンカツ会談」の話が発展して、4月7日「自民党食堂」のギャグが出てくるあたり。この「自民党食堂」は、のちに渡辺喜美衆議院議員の「持ちネタ」となり、いろんな場所で披露されたらしい。なお、渡辺先生からはきっちりと仁義を切られたことを申し添えておきます。
○もうひとつ、反響が大きかったのが本誌6月29日号の「近未来架空小説・小泉政権」。これはいろんな人が読んでたようですね。参議院選挙を控えたシミュレーションで、こういうものはまた書いてみたいところ。小説ブッシュ政権も考えてはみたんですけどね。
○永田町がいちばん熱気を帯びていたのは、去年の加藤政局から今年春の自民党総裁選に至る過程だったような気がします。小泉政権が誕生してからは、逆にそれほど面白いとは感じない。強いて言えば、田中真紀子対外務官僚の戦いくらいでしょうか。変な話ですが、首相の支持率が低くて、闇将軍といわれるような人が権勢を振るっているときの方が、永田町ウォッチングは熱が入ります。
○今朝でアクセスが19万件になりました。「政局に強い溜池通信」を来年も続けていきたいなと思っています。
<12月29日>(土)
○この「不規則発言」では、まったく私的な話やエッセイもあるのですが、その中で今年、とくに個人的に記憶に残っているものや感想のメールが多かったものを書きとめておきます。よかったら下のバックナンバーから訪ねてみてください。
百人一首パロディ(1月13日)
カレー屋さんの話(2月12日)
立山登山編(8月15日)
アニメ主題歌の法則(9月2日)
○それから「翻訳もの」というジャンルもあって、中でも以下の3点はちょっと懐かしい。翻訳を訂正していただいた方々に深謝。
パウエル長官の訓示(1月31日)
起業家の嘘(2月10日)
インド洋からのメール(10月17日)
○それから「ビンラディン・バナナボート編」のようなギャグの紹介も、当不規則発言が心がけてきたところであります。年の瀬を飾る秀逸なギャグを紹介しておきましょう。大音響で聞いてくださいね。
http://homepage2.nifty.com/madhatter/katayoku.swf
<12月30日>(日)
○もうとっくにお忘れかも知れませんが、昨年末に「2001年大予測」を募集しました。今年の12月28日までに世の中はどうなっているか、という設問が12問。赤字にしたものが正解です。
(1)1年前に比べて円ドルレートは、(円高方向へ、円安方向へ)
*2000/12/28時点で114円43銭が年末には130円を突破。
(2)年内に失業率の5%突破は、(ある、ない)
*昨年末時点では4%台だったが、今年は戦後最悪の5.5%に。
(3)年末のNYダウ30種平均は、(1万ドル以上、1万ドル未満)
*途中で大台を割ったものの、年末時点では大台キープ。
(4)内閣総理大臣は、(森政権継続、森以外の自民党政権、それ以外)
*4月に小泉政権が誕生。
(5)英国政府はユーロ圏への参加手続きを、(開始する、開始しない)
*国民投票の実施時期は未定。
(6)金正日総書記の韓国初訪問は、(実現する、しない)
*南北首脳会談では「年内訪問」を約束するも、実現せず。
(7)Microsoftの次世代ゲーム機「X box」は日本で、(発売される、間に合わず)
*2001年10月に完成予定が2002年2月に延期。
(8)経団連と日経連が統合されてできる新団体の初代会長は、(今井新日鉄会長、奥田トヨタ会長、その他+未定)
*2002年5月に奥田会長で発足の予定。
(9)大リーグでのイチローは初年度、シーズンフル出場を、(達成する、できない)
*厳密にはフル出場ではありませんが、MVPと新人王受賞は期待を超える成功と認め、「達成する」を正解にします。
(10)7月のIOC総会で決定する2008年五輪開催地は、(大阪、北京、それ以外)
*予想通りの展開。大阪は最下位でした。
(11)キムタクと工藤静香の子供は、(男の子、女の子、それ以外)
*5月に心美ちゃんが誕生。確率2分の1なのに、なぜか正解者が多かったのが不思議。
(12)旧日商岩井赤坂本社ビルは、(他の会社が入居、空きビルに、改装中or取壊し)
*NTTドコモさんが入居しています。
○驚くべきことに、12問中11問を正解させた方がいらっしゃいます。それは当HP古くからの愛読者で、ベルリン在住の杉岡さん。はずしたのは第12問の「旧日商岩井赤坂本社ビルがどうなっているか」だけでした。このクイズ、当然ながら社内でもやっているのですが、社内の最高点は9問正解でしたから、杉岡さんの記録は圧倒的です。お見事!
○2002年大予測も作ってありますので、よかったらトライしてみてください。回答はメールでかんべえ当てにお願いします。
<12月31日>(月)
○紅白歌合戦を見ながらこれを書いています。毎年文句を言いながら見てるんですけど、しみじみ紅白も落ちぶれましたな。宇多田ヒカルやサザンが出ないのは毎度のことですが、中島みゆきに『地上の星』を歌わせれば、『プロジェクトX』ファンの中年男はみんな泣くと思うんだがな。わかってて出来ないということは、NHKの威力が通じない人が増えたということでしょう。
○審査員もたいした顔ぶれがいない。察するにイチローと高橋尚子には頼んだけど断られたんでしょうな。これも当然で、審査員なんぞ引きうけた日には、演歌歌手も含めて紅白歌合戦のつまらない部分を全部、しかも着席の状態で聞かなければならない。これは拷問ですぞ。われわれはテレビの前で見ているから、途中でみかんを食べたり、風呂に入ったり、チャンネルを変えて他局の様子を窺ったりできる。かんべえのように、パソコンをいじりながら見ている者もいるわけだ。
○それにしても、これだけお金と労力をかけたテレビ番組というのは、たぶん海外も含めて絶無だろう。日本文化の総力を結集すると、政治や妥協や自己宣伝がからんでこういうエンタテイメントができる。あんまり芸能番組を見ないかんべえとしては、毎年「紅白」を見ながら、「ふーん、今年はこういう歌があったのか」などという感慨にふける。定点観測みたいなものですな。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki