●かんべえの不規則発言



2024年2月






<2月1日>(木)

〇いろんな人の口から、「もしトラ」とか、「もうトラ」とか、「ほぼトラ」などという声を聞く昨今である。そうやって今年はワシの仕事が増えていくのかと思うと、ありがたくもあるけれども、困ったことでもある。だって分からんことが多いから。

〇金融関係などからは、「もしトラの時の経済政策について教えてほしい」みたいなことを聞かれたりする。いや、そもそもトランプさんは「予見不可能性」(Unpredictable)を最大の武器にしているような人だから、こちらが先読みしてそれに備えようとすれば、当然、違う手を打ってくる。天邪鬼な恐怖の大王のような人なのである。

〇そもそも今の世の中には、頭が良くて抜け目がなくて、いつもすばしこく先回りをして、おいしい思いをしている人たちがいる。それに対して、普通の人たちは腹ふくるる思いがしている。だって彼らは、なかなか浮かび上がれないから。そして、「自分たちは見下されている」と感じている。そんな人たちがトランプ支持者になる。

〇いわば頭のいい人たちに天罰を下すために、天から使わされてきたのがトランプさんなのではないか。だったら、彼らが「もしトラ」の可能性に苦しむこと自体が、トランプ支持者たちから見れば「天罰テキメン」だし、「いい気味だ」ということになる。

〇かつてオバマ前大統領はこんな風に評したものだ。


"Trump is a symptom, not a cause." (トランプは症状であって、原因ではない)


〇アメリカ社会のエリートたちは、まだまだ苦しみ方が足りないのではないかなあ。知らんけど。


<2月2日>(金)

〇今年のトランプ現象について、ひとつだけ「いい傾向」だなあ、と思うのは、彼の周りにメガドナーたちが集結しつつあることだ。投資家やらホテルオーナーやら石油王やらといった人たちが、このところトランプ氏とせっせと会っている。デサンティスを支持していたドナーたちも、「勝ち馬に乗るべし」とトランプ支持に切り換えているらしい。

〇トランプ政権第1期の時は、カジノ王であるシェルドン・アデルソンが有名で、「トランプはアデルソンの電話だけはすぐに出る」と言われたものだ。アデルソンはシオニストであり、実際にトランプ政権の対イスラエル政策で影響力を発揮した。ただしトランプ氏は、それ以外の大富豪とはそれほど縁が深くなかった。

〇そもそも2016年選挙の際に、トランプ氏はそれほどおカネを使っていない。広告費を使わずとも、ドナルド・トランプのことは誰もが知っていたし、本人が自家用ジェットで選挙活動に出かければ、地元メディアは喜んで取り上げてくれた。だから安上がりな選挙戦を戦うことができたし、人気があって小口の献金も薄く広く集まったからだ。

〇政治家として、小口献金だけで十分に資金が集まるのであれば、本来はその方が望ましい。メガドナーは、もちろん何か思惑があっておカネを出す。当選した後には当然、見返りを求めてくるからだ。しかしトランプ氏の場合、むしろそういう「しがらみ」がある方が、トランプ第2期政権が誕生した時に穏健化するだろうから、その方が望ましいのではないかと思う。

〇トランプ氏としては、2024年選挙は2016年や2020年と同様、本来そんなにカネは必要ではない。今さら知名度を上げる必要はなく、テレビCMだって作る必要などないくらいだ。それでも裁判費用にいくらかかるかわからないから、ここは少しでもおカネはもらっておきたいという事情がある。だからメガドナーご一行様は大歓迎なのである。

〇それは大いに望ましいことで、できればトランプさんはメガドナーたちの奴隷になっていただきたい。お金持ちが政治に対して期待することは、せいぜい減税や規制緩和程度で、そんなに国益を害することではないからだ。これが小口献金だけで戦っていると、「当選後は見事、ディープステーツを解体してみせます」みたいなことになりかねないから困るのである。

〇似たような話で、The New York Times紙の例がある。昨年末、英エコノミスト誌が詳しく取り上げている(2023年12月14日号)。以下にリンクを貼っておくので、お暇な方はどうぞ。大統領選挙を報じるにあたって、今のアメリカのメディアは大丈夫なのか、という一連の報道である。


●Can you have a healthy democracy without a common set of facts? (カバーストーリー)

●How American journalism lets down readers and voters (NYTなどメディアの党派色について)

●When the New York Times lost its way by James Bennet (NYT紙を辞めてエコノミスト誌に移ったジェームズ・ベネット氏が古巣の問題点を明かす)


〇現在のマスメディアは、広告モデルからサブスクリプションモデルへの移行期にある。NYT紙はその世界的な成功例であると目されている。広告主の影響を脱して、読者からのネット購読料だけで経営ができれば、その方がずっといいに違いない。

〇ところが実際に起きたことは、新聞が読者に阿るために、記者たちがどんどん左傾化してしまった。2020年の「ブラックライブズマター」の騒動の中で、NYT紙のジェームズ・ベネット編集長は、そのために社外に放り出されてしまう。なんと現在はThe Economist紙でLexingtonのページ担当コラムニストになっているとのこと。その彼がこういうのである。


「タイムズ紙はアメリカの進歩的エリートが、実際には存在しないアメリカについて、ひとりごとを言うための出版物になりつつある」

"The reality is that the Times is becoming the publicaiton through which America's progressive elite talks to itself about an America that does not really exist."


〇つまり、ごく少数の「広告主のご意向」を忖度していた時の方が、はるかに新聞は健全であった。それが今では、「無数の進歩的な読者」の部数を増やそうとするために、どんどん記事は偏向してしまう。結果として、ベネット氏のような中立公正な編集長は追い出されてしまうのだ。ネット時代って、こういうところがホントに怖いと思う。

〇本論に戻りますが、トランプさんも「トランプ支持者」に囲まれていると危険だけれども、一部の大金持ちに囲われてしまえば、意外に安泰な大統領になってくれるかもしれない。「カネ持ち喧嘩せず」といいますけど、大きな財産を持つ者はかならず現状維持派になるのです。いや、メガドナーご一行様、悪くないのではないでしょうか。


<2月3日>(土)

〇本日は京都市に来ております。明日は市長選挙なので、古い友人であるところの松井こうじ氏の応援ということで。

〇きっと楽勝なのであろう、とタカをくくってやってきたところ、意外にも接戦であるとのこと。京都市はもともと共産党が強いところなので、保守が分裂すると結構ヤバいのだと。そんなこと言って、京都市で共産党市政が復活したらどうなるのか。「鬼は外!」と声をからして叫びたいところです。

〇さっそく、松井さんの街頭演説を観に行きました。三条と四条で聞きましたが、京都はとっても奥が深いです。泉健太さんと福山さんとバッタリ会って、堅い握手をいたしました。幸いにも京都で学生時代を過ごした平井文夫さんと一緒に来ているので、現地案内があるのでありがたいです。

〇ということで、明日は京都見物をしながら、夜は開票速報に付き合います。現地マスコミの方からは、「結果がわかるのは深夜になりますよ」と脅されておりますが、どうせもう一泊するので関係ないです。京都市民の皆様、松井こうじ、松井こうじをどうぞよろしくお願い申し上げます。


<2月4日>(日)

〇朝食は京都の老舗、イノダコーヒーにて。朝7時開店だが、すぐに行列ができるという超人気店である。常連席にて、柳居士徒然氏からいろいろお話しを伺う。候補者、松井こうじさんも当店の常連である。いやもう、京都はホントに奥が深いどすえ。

〇誰に聞いても、今日の市長選は激戦で、たぶん数百票差になるのではないかとのこと。何しろ現在の市長さんは16年前に900票差で勝っている。従って午後8時当確などは夢のまた夢で、11時すぎないと結果はわからないであろうと。某関係者いわく「NHKだったら『光る君へ』ではなく、『サンデースポーツ』あたりから見るのが良い」と。ははあ。

〇仕方がないから、ゆるい市内観光などして時間をつぶす。上賀茂神社にて必勝を祈願すると、空に龍のような飛行機雲が浮かび、これは勝てたかな、などと妄想する。そうこうするうちに、昨年末に開いた「松井孝治さんを京都に送り出す会」の幹事4人が、根城とするあやめ庵に集結。ああでもない、こうでもないと共通の友人の心配をする。

〇いろんな方向から情報が入ってくるのだが、NHKの出口調査は「福山和人候補が5pリード」という。他方で毎日新聞は「松井40、福山32」とのこと。いったいどっちを信じればいいのか。これは要するに「わからん」ということであろう。出口調査、京都人が素直にホンネを語ってくれるとは思えないし。

〇夕食を済ませてから、二条城近くのANAクラウンロイヤルホテルに行ってみる。松井陣営の方々が選挙速報を見ているが、まだ宵の口にて、これはもう外で時間をつぶすしかない。カウンター席だけのバーにて一杯ひっかける。その間にも「負けそうだなあ」という嫌な予感がしてくる。2006年、千葉7区の補欠選挙で齋藤健氏の敗戦に付き合った記憶が蘇る。ああ、ろくなもんじゃない。

〇10時半に再び会場に戻ると、自民、公明、立民、有志の会とお歴々が揃っている。皆さんが壇上でせっせとスマホをいじっている図は、あんまり見た目が良いものではない。なんとも険悪な空気が漂っている。負けたら各政党にとって大ショックは間違いない。明日はいったいどうなるのだろうか。

〇11時を過ぎたころになって、急に歓声が上がるようになる。そしてとうとう待ちに待った「当確」が出る。とたんに空気が変わり、与野党の各氏も急に和気あいあいとなる。勝ちは全てを癒してくれるのだ。11時12分、候補者・松井こうじ氏が会場に登場。握手と万歳。そして記者会見と祝辞と万歳。ああ、よかった。ホッとした。とにかく京都のために良かった。

〇不肖かんべえとおなじ1960年のネズミ年生まれの松井氏は、これから京都市長としての職務に就く。こんな大変な思いをして、大いなるギャンブルをして、なおかつ今後も山あり谷ありの人生となろう。同世代人としては、よくまあやるわと感心するほかはない。ただまあ、少々励まされる思いもする。もっとも今日のところは見ているだけで疲れ果てた、というのが正直なところである。


<2月5日>(月)

〇ということで、上機嫌で京都から帰ってきた不肖かんべえである。「あー、面白かった」などと言っているけれども、これは応援していた松井さんが勝ったからであって、負けていたら目も当てられなかった。そうでなくとも、今年は元日に山崎元さんが死んじゃったというショックがあって、松井さんも落選だったら、「もう自分の世代の仕事は終わり」という気分になって落ち込んでいただろう。

(ちなみに一昨日、東洋経済オンラインに寄稿した山崎さんへの追悼記事はこちらをご参照。→「再び『ヤバい日本経済』になるかもしれない」

〇あらためて結果を振り返ると、1万6000票差(3.5%)は紙一重ともいえるが、意外と差がついたという見方もできる。ひとつには前回、2020年選挙でも福山候補は16万票で、この辺が京都市における共産党候補の天井なのかもしれない。

〇前回は現・市長の門川氏が21万票を取って再選されている。今回はこの21万票が、松井陣営と二之湯陣営に分散してしまった。やっぱり京都の選挙においては、「保守分裂」は高くつくのである。

〇だったら二之湯氏は何のために出たんだ、という話になる。ご当人は来年の参院選を狙っているとの観測があり、今回も「新幹線ルート問題」(北陸新幹線の延伸ルートが福井県小浜市から京都市の地下を通ること)を強く訴えていたとのこと。

〇村山候補は前回9万票だった。それが7万に減っているのだから、直前に政治資金問題のスキャンダルがあったことが響いている様子。ただし京都でも、維新の会の支持勢力は着実に増えているので、自民・公明・立民などが「相乗り」に走ったのは、そのことが背景にあったんじゃないだろうか。


●各候補の得票(敬称略)  

松井 孝治 177,454  

福山 和人 161,203  

村山 祥栄  72,613  

二之湯真士  54,430  

高家  悠   2,316


〇今回の選挙では、「出口調査で福山候補リード」という情報が流れて、松井陣営も不穏なムードが流れたものである。それが3.5%差で勝てたということは、期日前投票で松井票が多かったということになる。おそらくは公明票(もしくは反共産票)が大規模に動いたんでしょうね。あるいは共産党市政のコワさを覚えている人は少なくなかったというべきか。

〇とまあ、京都市長選挙はいいとして、同じ日に行われた前橋市長選挙は洒落にならなくて、これで与党内の雰囲気はかなり引き締まったのではないか。端的に言えば、「とても選挙ができるような情勢ではない」。「政治とカネ」問題で有権者は怒っている。この蓄えられたマグマはどこで破裂するのか。次の焦点は、やはり4月28日の統一補欠選挙でしょうかねえ。


<2月6日>(火)

〇今日になって1月の月例経済報告を読んでみたら、関係閣僚会議資料に「令和6年能登半島地震の経済的影響」が載っている。まことに興味深い。


*被害の大きかった石川県は、人口約112万人、県内総生産約4.5兆円(日本全体に占めるシェアは約0.8%)。

* この地域には電子部品や半導体メーカー等の工場が多く立地しており、大部分は生産再開又は再開の目途が立っているものの、
一部は現在も生産を停止している。一方、外食等では、震災直後の落ち込みから経済活動がもとに戻る動きもみられる。


〇こんな風に言ってしまっては申し訳ないのだが、石川県経済が占めるシェアは限定的なので、日本経済にとって何か致命的なことが起きるという感じではない。農業出荷額を見ても480億円で全国第43位に過ぎない。むしろ観光が大事で、延べ宿泊者数655万人は全国21位だが、人口比で見たらかなり大きいと言える。「能登を助けるために金沢に行きましょう」というのは、理に適っているのである。

〇問題はむしろこっちの方だ。地震によるストック面(住宅・道路・港湾など)への被害を内閣府が試算しているのだが、こんな感じである。


●石川、富山、新潟県の毀損額(推計) 約1.1兆円〜2.6兆円

石川県 0.9〜1.3兆円、富山県 0.1〜0.5兆円、新潟県 0.1〜0.9兆円


〇ちなみに過去の地震はこんな感じであった。


*阪神淡路大震災 9.6〜9.9兆円(1995年)

*新潟中越地震 1.7〜3.0兆円(2004年)

*東日本大震災 16.9兆円(2011年)

*熊本地震 2.4〜4.6兆円(2016年)


〇死者数で行くと阪神大震災の5000人、東日本大震災の2万人+行方不明2000人が圧倒的であって、能登半島地震は新潟中越地震や熊本地震よりちょっと小さいくらいの位置づけとなる。とりあえず「大地震」と命名するほどではない。

〇問題は震災発生時の高齢化率(65歳以上の割合)である。石川県は30.2%もあり、これに比べると2016年当時の熊本県は28.1%、東日本大震災の時の東北3県の平均が24.5%、2004年の新潟中越地震は23.4%であった。さらに阪神淡路大震災の際の兵庫県では、高齢化率は14.5%に過ぎなかった。なにしろ29年前のことだけあって、当時の日本はまだまだ若かったのである。

〇今みたいに高齢化率が上がってしまうと、復興も並大抵のことではあるまい。「住宅ローンを借りて家を再建」したくても、ハードルは高くなってしまう。海底が隆起してしまった漁港を直したくても、あと何年使えるのか、みたいな話になってしまう。

〇石川県の30.2%という高齢化率は、全国平均の29.0%と大して変わらない。これから先の日本列島においては、どこで地震が起きても、そこから先の復興はかなり大変な作業になるだろう。こういう「不都合な真実」は、ちゃんと直視しておく必要がある。


<2月7日>(水)

テイラー・スウィフトさんの東京ドーム公演が今日から始まりました。いや、まことに結構なことでありまして、善男善女が東京ドームに集う。コロナが収束して良かったねえ、と思える瞬間である。コンサートは4日連続で、2月10日(土)まで行われます。

〇ところが翌11日(日)には、ラスヴェガスでスーパーボウルが行われる。そこには彼女が交際中のカンザスシティ・チーフス所属、トラビス・ケルシー選手が出場する。果たして彼女は応援に駆けつけることができるだろうか? このことが一時、全米の関心事となりました。

〇そんなもん、出来るに決まっとるだろう。東京とラスヴェガスの時差は17時間。どうせ自家用ジェット機で来とるんだから、10日の公演が終わってすぐに出発すれば、フライトが12時間としても余裕で間に合うわ、というのは太平洋を何度も行き来している人ならば自明の話である。が、平均的なアメリカ人にはまったく理解不能であろう。

〇そこでワシントンDCの日本大使館が、わざわざ「テイラー・スウィフトさんはスーパーボウルの観戦には間に合いますから!」という声明を発出した。まあ、話題作りにはよろしいかと。なにしろ1億人が視聴するスーパーボウルですから。全米の視線が注がれるその瞬間に、ケルシー選手が彼女にプロポーズするんじゃないか、などと考えると、これはもう盛り上がるに決まっている。

〇他方、トランプ支持者の間では、「彼女はこの機会にスーパーボウルのハーフタイムショーに登場して、バイデン支持を訴えるのではないか?」などという陰謀説が流れている。そのためにNFLは、チーフスをわざと勝たせたのではないか、などとも。あんたらアホちゃうか。

〇ちなみに彼女は、今回の選挙では政治的な立場を表明していない。2018年の中間選挙において、地元テネシー州の上院議員/知事選挙で民主党支持を表明したことはある。が、いずれも候補者は負けちゃったので、「テイラー・スウィフト効果はなかった」という話は、以前の溜池通信でも紹介したことがある(2018年中間選挙の出口調査を読む)

〇それにしても、民主党支持者が「彼女がバイデンを支持を表明してくれないだろうか?」と考え、共和党支持者が「そういう陰謀が行われているのではないか?」と危惧するのは、いかに両者が切羽詰まっていて、病的になっているかの証左でありましょう。あんまり近寄りたくはないです。ハイ。


<2月9日>(金)

〇先日、昔の後輩と久しぶりに会った際にしみじみ言われてしまったのだが、「お酒が強くなりましたね」。

〇自慢にも何にもならんのだけれども、20代の頃はビール1本とか水割り3倍くらいが限界であった。それが今では、注がれた酒は全部飲み、自分で勝手に注文しては手酌でも飲み、家でも休刊日ナシが普通の日常になっている。還暦を過ぎて、ワインや日本酒を買ってきてはひとりで嗜む、なんて状態は若い頃には思ってもみなかった。

〇なんで酒量が増えたかというと、「酒付きの勉強会」に出まくってきたからである。いや、別にノンアルコールでもいいのだけれども、相手に気分よく語ってもらうためには、やっぱりこちらも少しは付き合った方が良い。そんな日々を30代、40代と繰り返して来たら、いつの間にかナンボでも飲める体質になっていた。

〇コロナの最中はそれでも控え気味にしていたのだが、コロナ明けになるとそういう会合がどっと押し寄せてくる。義理もあるし、楽しいし、やっぱり勉強にもなるし、自分でも企画したりするから、ますます酒量が増えてしまう。今宵もいっぱい勉強させていただいた。しかも先方のオゴリである。ああ、申し訳ない。

〇今のところ肝臓などの数値は正常なんだけれども、早世した同世代人であるぐっちーさんや山崎元さんのことを考えると、「こんなことでいいのだろうか?」と不安を感じることもある。とりあえず検査の予約を入れておきましたけど、どうか来週も飲めますように。


<2月11日>(日)

〇先週、京都市で2泊した時に感じたのですが、「オーバーツーリズム」というヤツ、あれは本当に大変ですな。観光シーズンじゃないというのに、アッと驚くことがいっぱいでありました。


(1)昼時になると、どうということのなさそうな店にまで、観光客で長蛇の行列ができる。

――ラッキーなことに、地元のYさんが連れて行ってくれた権太呂では、ほとんど待たずに美味しい「鳥なんばうどん」にありつけました。

(2)タクシーをつかまえるときには、性根を入れて四方を睨んで探さなければならない。

――同行した平井文夫さんがスマホに「GO!」を入れていたので、ずいぶん助けれらました。

(3)四条通りの歩道はとっても広いけど、それでも観光客でごった返していて、向こうから来る人とぶつかりそうになる。

――前の門川市政が、「脱クルマ社会」ということで4車線を2車線に減らしたんだそうですが、それがケシカランと怒っていたタクシー運転手さんが2日間で2人いました。

(4)とっても久しぶりに清水寺を観ようと思ったけど、参道があまりにもごった返していたので思わず日和った。

――その代わりに遠征した上賀茂神社は結構良かったです。ここでもYさんに感謝。

(5)京都錦市場の人通りの多さに驚愕。いやもう、焼き鳥からウナギにカニまで何でも立ち食い状態。ここでも外国人が多いっす。

――今度暇なときに小銭を一杯用意して、「旅の恥はかき捨て」感覚でワシも思い切り立ち食いがしてみたい。

(6)和服を着たカップルの観光客が多いこと。京都はレンタル和服屋さんが大繁盛だそうです。

――浅草も全く同じ状況です。似合ってない人が多いけど、もちろん気にする必要はないですよね。


〇まあ、いろいろと得難い経験でありました。しみじみ思うのは、「この状況がこれから改善される」目途が全くないことを、京都市民の方々はどんなふうに捉えているのか。この後、桜の季節にはどうなるのか、さらには修学旅行が大勢やってくる季節も来る。いや、それ以前に昨日から始まった春節はどうなのか。

〇浅草に住んでいる人たちは、オーバーツーリズムになんとか納得されていると思うのですが、京都市150万人はいろいろ複雑なんじゃないでしょうか。他所者の眼にも、なかなか大変そうに見えました。


<2月13日>(火)

〇今日は日経平均が思い切り上げました。1日で1066円も上げるって、どういうことよ。終値は3万7963円也。どうでもいいことだが、本日は都内某所で武者さんとお会いしたのだが、当然ながら上機嫌であったようです。

〇こうなると1989年12月29日の最高値、3万8915円が嫌でも気になります。「過去最高値は時間の問題」って、そりゃあ誰でもそう思いますわな。でもね、日経平均にはいろいろと問題点もあるのです。

〇特に2000年4月の銘柄入れ替えは痛かった。あそこで10%くらい下げてしまったので、それ以前とそれ以降では指数としての連続性が壊れているのです。だから今はもうすでに史上最高値になっている、といっていいかもしれない。今日の終値に10%を足せば4万円を楽に超えますからね。

〇この間の理屈を詳しく説明しているのが、2017年10月14日の山崎元さんの寄稿だ(もちろん東洋経済オンライン「競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」である)。


●「日経平均21年ぶり高値」を素直に喜べない〜2000年4月に何があったか知っていますか


日経平均の銘柄入れ替えが発表されたのは、2000年4月14日(金)の引け後で、翌週末に30銘柄を入れ替えるとされた。4月14日の日経平均終値は2万0434円68銭と、2万円台に乗っていた。しかし、1週間後の銘柄入れ替え日である4月21日の終値は1万8252円68銭であり、10.68%もの下落だ。

一方、同じ期間のTOPIX(東証株価指数)は1.18%しか下落していない。ほかの株価指数で見てもおおむね同様であり、日経平均はこのときの銘柄入れ替えの影響で10%前後、市場全体の株価水準に関係なく下ズレしたのだ。だから、現在の日経平均は、かつての同数値の日経平均よりも実質的に高いのだ、と解釈することもできる。ともかく、2000年4月をまたいで、市場の動向を表す指標としての日経平均には不連続性がある。



〇普通のエコノミストはこんなことは書かない。天下の日本経済新聞社に喧嘩を売る、もしくは古傷に塩を擦り込むような作業だからだ。絶対に得をしない。まあ、それを敢えてやってしまうのが山崎さんだったので、こういう貴重な記録が残っている。拳拳服膺すべし。

〇今週中にも最高値を超えるかもしれないが、そしたらどこかの炬燵ライターが、「平成バブルを超えた令和バブル!」みたいな浅はかな記事を書くかもしれないが、最低限、これくらいは読んでおけよと言っておきたい。

〇生前の山崎さんがあるとき、「吉崎さんは日経系のメディアによく出られていいですねえ」とボソッと言っておられたのを思い出す。そらそうだ。私もいくらなんでも「モーサテ」でこんな話はしない。でも、明日の朝はニッポン放送の「OK! Cozy up!」に出演なので、そっちで話題を振られたら語ってしまうだろうな。わかりませんけどね。


<2月14日>(水)

〇バレンタインデーに女性が男性にチョコを贈るのは日本だけ、それはチョコレート業界のマーケティング(陰謀?)の成果である、という事実がじょじょにバレ始めた昨今、この行事もどんどん世知辛いものになりつつある。

〇例えば父親が娘に向かって、「お前は今日、チョコを贈るような彼氏はおらんのか?」などと尋ねるのは、ミレニアム世代まではかろうじて相手してくれそうだが、Z世代になると冷たくスルーされるか、あるいはこんこんと説教されるのが落ちであろう。いやもう、令和の時代においては、それは限りなくPolitically Incorrectである。

〇そういう地合いではあるのだが、本日、義理チョコよりは限りなく人情チョコのようなものを複数、頂戴できたのは望外の幸いとするものであります。ありがとうございました。こういうものに反応してしまうオヤジ世代であることをみずから確認する行為でありました。

〇思えばバブルの頃には、この手の虚礼がいっぱいあったのです。ホワイトデーのお返しをどうするかとか、今から思えばのどかな時代でありましたなあ。さらに昭和に遡ると、会社の中に保険屋のおばちゃんが闊歩していて、そういう人たちが盛大にチョコをばらまいてくれていた。今から思えばまことに不思議な時代でありました。

〇さて、明日は山口県に参ります。内外情勢調査会の周南支部と岩国支部にお邪魔いたします。


<2月15〜16日>(木〜金)

〇内外情勢調査会の仕事で周南市と岩国市へ。いずれも山口県東部に位置しており、この2都市はいつもセットになっている。今回は2003年、2013年に続いてなんと3回目である。

〇周南市はトクヤマと東ソー、2つの化学会社がある工業都市である。徳山駅の南側はすぐ海が見えて、工場地帯になっている。この景色、見方によっては「庵野秀明ワールド」である。まあ、宇部市もUBE(旧宇部興産)の工場があって、似たような感じですからな。

〇ところで宇部市のANAクラウンホテルが、今年3月で廃業になるらしい。一昨年の内外情勢調査会の際に泊ったけれども、少々ショッキングなニュースである。さらに山口市湯田温泉のホテルニュータナカも、今月末で閉館して建て替えになるのだとか。うーむ、コロナが地方経済に残した爪痕が・・・。

〇徳山駅は、新幹線の「のぞみ」が止まる。これはもう画期的なことであって、山口県内には新幹線が止まる駅が5つもある。東側から順に「新岩国〜徳山〜新山口〜厚狭(あさ)〜新下関」である。「新」がつく駅は、だいたいが街の中心部から外れたところにある。その点、徳山駅は在来線と同じところを通っているので、「のぞみ」と「ひかり」と「こだま」と「さくら」が止まるという栄誉を博している。

〇それはいいのだが、徳山駅のすぐ近くにあるアーケード街が見事なくらいのシャッター通りなのである。今回来てみたら、周南市が街おこしに繰り出したのがエキナカの「市立徳山駅前図書館」であった。蔦屋書店がプロデュースしたらしく、中にはスタバも入っている。本好きには堪えられない空間になっている。ええのう。

〇金曜日は岩国市へ。ここは米海兵隊の岩国基地がある。今は軍民共用の岩国錦帯橋空港ができていて、羽田との間を1日5便も飛んでいる。さらに沖縄へも毎日飛んでいる。「基地関係の需要があるんですか?」と尋ねてみたら、「いや、単に広島市民が沖縄に遊びに行くんです」とのこと。そらそうじゃ。広島空港は不便じゃけんのう。ちなみに岩国空港から宮島へはクルマで30分だそうだ。

〇会場は岩国国際観光ホテルである。ここは有名な錦帯橋までわずかに徒歩3分の立地である。それで思い出したのだが、2003年に当地を訪れたときには、錦帯橋は建て直しの最中で、向こう岸までたどり着けなかった(そのくせ、入場料は取られた)。それが今になったら、ちゃんと向こう岸まで着けるのみならず、その向こう側には吉香公園などの観光施設がセットになっている。

〇帰りのフライトが夕方なので、仕事の後に錦帯橋を渡って、ロープ―ウェイに乗って岩国城まで登ってみた。実際に行ってみるとよくわかる。錦帯橋の手前は町人たちの街で、川の向こう側が武家屋敷なのである。岩国城を築いたのは吉川広家。関ヶ原の決戦で、徳川方に内通して毛利家をギリギリ守った武将である。

〇とはいえ、広家の個人プレイは毛利家全体の中では顰蹙を買ったらしい。岩国藩3万石は支藩であり、吉川家はあくまでも毛利家の家臣として扱われた。逆に徳川家の覚えはめでたいので、岩国藩吉川家はれっきとした外様大名として扱われたのだそうだ。なんとも悩ましいポジションである。

岩国城まで登ってみると、眼下には錦帯橋から瀬戸内海全体が見渡すことができる。今日は天気が良かったので、観光にはもってこいでした。なるほどねえ。山口県のことがちょっとだけ深くわかったような気がしましたな。


<2月18日>(日)

〇先週、周南市に向かう新幹線車中と、宿泊したサンルートホテルでせっせと書いた仕事が下記であります。


●日経平均が最高値の1989年はどんな年だったか〜「喪が明けた感覚」など2024年と「3つの共通点」


○これで金曜日に日経平均が史上最高値をつけていれば、とってもタイムリーな記事となっていたはずだが、終値は3万8487円でした。あと500円くらい届きませんでしたなあ。まあ、この騒動は来週も続くはず。でも、日経平均という指標にはいろいろ問題点があるんですよ、というのは知っておいて損のない話だと思います。

○ここまで来ると、「4万円」というものをひと目見てみたい。そのくらいは行くでしょう。ただし新高値を達成した後に、調整するんじゃないでしょうかね。現在の上昇は、半導体関連の値嵩株に支えられているという点に若干の不安ありと見ます。

○今は年4%以上の高配当株がいっぱいありますんで、そういうのを買ってインフレによる金融資産の目減りに備えつつ、株価が上がればそれはラッキー、というスタンスで臨むのがいいのではないかと思います。それであれば、日経平均なんていちいち見なくてもいいわけですから。

○ちなみに上記記事の競馬予想は無残にも外れております。いや、上海馬券王先生とおなじ読み筋だったのですが、「こりゃないよ」てな感じでした。株式市場で言えば、「リーマン級」でしたな。それでも株に比べれば、馬券の負けは可愛いもんです。


<2月19日>(月)

○若い頃からずっと思ってきたこと。それは「仕事のご褒美は、新しい仕事」ということである。

○「そんなことを言っていたら、永遠に仕事が絶えなくてツラいのではないか」、と思われるかもしれない。いやいや、ご同輩。仕事がなくなる辛さに比べれば、少しくらい忙しいのはどうってこたぁないっす。むしろ若い時分には、新しい仕事を任せられることが嬉しくてしょうがなかったものではありませぬか。

○この年になりますと、そうそう新しくて、大きくて、晴れがましい仕事はやってまいりませぬ。むしろ長くやっている仕事の発注先から、「来年度もよろしくお願いします」とか、「今回の原稿、身につまされますねえ」などと言ってもらえることだけで十分に満足であります。誰も何も言ってくれなくなったら、後は朽ち果てるだけではありませぬか。

○今宵も過去に何度も登場した舞台で一席ぶたせていただき、たくさんご質問をいただいたことでささやかな幸福感を感じたところです。いや、自分的には、準備不足やらマンネリやら未熟さに気づくことができたので、またこれを次回以降に活かしたいと思うところであります。

○で、以下は大阪におけるお馴染みのお仕事のご案内。主催者側は、まだまだ会場参加もZoom参加も余力ありますと言っておりました。下記のリンクからお申し込み可能ですので、よろしければ覗いてやってくださいまし。


**第13回中小研セミナー**

●日 時:2024年3月1日(金)
16時00分〜17時30分(質疑30分)

●会 場:大阪経済大学 (大隅校舎) D館4階 D41教室


●講 師:吉崎 達彦 氏

(大阪経済大学 中小企業・経営研究所 企業支援担当特別研究所員、株式会社 双日総研 チーフエコノミスト)

●テーマ: 2024年米大統領選挙と政治経済情勢 〜スーパーチューズデー後の展望を読む〜


<2月20日>(火)

○そうなのだ。アメリカにおける2月第3週の月曜日は「プレジデンツデー」である。昨年のこの日には、バイデンさんが「キーウ電撃訪問」を行った。「いよっ!大統領!」てな感じであった。その翌月に岸田さんがキーウに行ったので、急に値打ちのないことのように思われてしまったけれども、老体に鞭打つバイデンさんは素敵だったのである。

○ということで、今週いっぱいはプレジデンツデー休暇で連邦議会がお休みである。ウクライナ情勢がいくら切羽詰まっていても、ウクライナ支援予算が未成立であっても、そんなことは知らんのだ。議員さんたちは地元に帰るのである。

○そして今週末、2月24日にはサウスカロライナ州予備選挙がある。ここでまたまたトランプさんがボロ勝ちすると、ますます彼の発言力が強化されてしまう。従って、ウクライナ支援予算の実現が遠のいてしまう。これというのも、1月のアイオワ州とニューハンプシャー州でトランプさんが勝ち過ぎたからだ。そして共和党下院議員たちが、揃いも揃ってトランプさんに逆らえなくなっているからだ。

○実を言えば、マイク・ジョンソン下院議長も事の重大さはちゃんと理解している。上院を通った支援法案を下院にかければ、民主党議員の全員と心ある一部の共和党議員が賛成に回るので、法案はほぼ確実に通る。さすればウクライナに支援が届く。ただし一部の保守派議員たちは恨みに思うので、ジョンソン議長の地位は風前の灯となる。昨年9月のケビン・マッカーシー議長と同様、引きずり降ろされてしまうかもしれないのだ。

○ジョンソン氏は政治家として正しいことをすべきなのか。それとも自分の地位を守るべきなのか。悪いけどマイク・ジョンソンは小物である。今の地位を守るのが精いっぱいであろう。彼にステーツマンシップを求めるのは、木に縁りて魚を求むるの類であろう。人は自分の器を超えて行動すべきではないのである。

○それでは来週の議会はどうなるのか。3月1日になるとCR(暫定予算)の一部が切れてしまうので、政府閉鎖を避けるためにはまずはそっちから取り組まなければならない。ということは、ウクライナ支援予算はますます遅延することになる。おそらく3月7日のバイデン大統領一般教書演説では、「議会はウクライナ支援予算を通してくれ!」というメッセージを皆が下院本会議場で聞くことになるのであろう。

○可哀そうなのはウクライナである。この間、一切、アメリカからのおカネや防衛装備品は届かない。そして3月17日にはロシア大統領選挙が行われる。プーチンはめでたく再選され、トランプ前大統領がそれを祝うのであろう。獄中のアレクセイ・ナワリヌイを殺してしまうような小心者のプーチンが、笑顔になってしまうのである。

○考えれば考えるほど、トランプ氏の存在は罪深い。ゆえに2月19日に発表された「歴代アメリカ大統領ランキング」は下記のような結果となった。トランプ氏はブービーメイカー(45人中45人目)である。


Rank President 2024 Rating
1 Abraham Lincoln 93.87
2 Franklin D. Roosevelt 90.83
3 George Washington 90.32
4 Theodore Roosevelt 78.58
5 Thomas Jefferson 77.53
6 Harry S. Truman 75.34
7 Barack Obama 73.80
8 Dwight D. Eisenhower 73.73
9 Lyndon B. Johnson 72.86
10 John F. Kennedy 68.37
11 James Madison 67.16
12 Bill Clinton 66.42
13 John Adams 62.66
14 Joe Biden 62.66
15 Woodrow Wilson 61.80
16 Ronald Reagan 61.62
17 Ulysses S. Grant 60.93
18 James Monroe 60.15
19 George H.W. Bush 58.54
20 John Quincy Adams 55.41
21 Andrew Jackson 54.70
22 Jimmy Carter 54.26
23 William Howard Taft 51.67
24 William McKinley 51.23
25 James K. Polk 49.83
26 Grover Cleveland 48.31
27 Gerald Ford 46.09
28 Martin Van Buren 45.46
29 Rutherford Hayes 41.15
30 James Garfield 40.98
31 Benjamin Harrison 40.64
32 George W. Bush 40.43
33 Chester Arthur 39.61
34 Calvin Coolidge 39.38
35 Richard Nixon 36.41
36 Herbert Hoover 34.08
37 John Tyler 32.99
38 Zachary Taylor 32.97
39 Millard Fillmore 30.33
40 Warren Harding 27.76
41 William Henry Harrison 26.01
42 Franklin Pierce 24.60
43 Andrew Johnson 21.56
44 James Buchanan 16.71
45 Donald Trump 10.92


○オバマが7位でクリントンが12位でバイデンが14位というと、この調査に参加した525人の学者たちはかなり民主党びいきということになる。ただしトランプ氏の45位は同感ですな。こんな大統領が選ばれてしまった自体が百年の不作ながら、もう1回選ばれかねないのですから。アメリカ政治、いったいどうなっているのやら。


<2月21日>(水)

○内外情勢調査会の仕事で本日は岡崎市へ。

○本来は昼食時に行われることが多い会合であるのだが、豊田市や岡崎市などでは17時半からの会合となることが多い。職務時間中に講演会などをやるべきではない、というのも一種の「トヨタ流儀」なのであろうか。

○会場は岡崎ニューグランドホテルである。入ってみたら、あった!ゆるキャラ会の異端児、「オカザえもん」が!ひと目見たら、けっして忘れられないこのフォルム。以下はウィキによる説明から。


●作者とコンセプト

オカザえもんは、2012年11月1日から12月2日まで岡崎市で開催された現代美術展「岡崎アート&ジャズ 2012」に現代美術作家の斉と公平太(愛知県日進市出身)が出展した作品。もともとはイラストだったが同美術展を機に絵から抜け出し、岡崎市内外のイベントやライブに出没し始めた。

イラスト、着ぐるみのキャラクター、共に斉と公平太の作品である。考案から完成するまでに約8ヶ月かかったという。製作をするにあたり、「岡崎市のことを知らなかったので、地元の人に話を聞き、ショッピングセンターの地下も含め歩き回った」と述べている。2014年7月1日、岡崎市から産業功績者に表彰された。

作者によれば、オカザえもんは古いパプアニューギニアのお面に着想を得て生まれたものだという。美術作品としてのオカザえもんのコンセプトについて、「情報社会に生きる我々が、蓄積された自身の記憶を一瞬忘れるようなビジュアルにしたかった。原始のパプアニューギニアで生まれたお面には、その力があると思った」と述べている。


〇いや、そんなゆるキャラなんて作らなくても、岡崎市はこの近隣の都市(豊田、安城、刈谷、西尾、碧南など)と同様に、日本でも最も恵まれた地方都市なのである。そもそも地方交付税なんてもらってないですし。岡崎信用金庫(おかしん)さんに至っては、総資産4兆円である。とてもではないが、信金さんじゃなくて地銀クラスです。いや、このあたり一帯が全部そんな感じなんですけど。

〇それはトヨタ自動車さんのお陰でしょう、とは誰もが突っ込むところではあるが、実は岡崎市にはトヨタの工場はないのです。あるのは三菱自動車さんの工場である。でも、奥田さんをはじめとする多くのトヨタ役員が、この岡崎市に居を構えている。そしてデンソーやアイシンを含めた多くのトヨタ系企業が、この辺にネットワークを張り巡らせているのである。

〇ところが地元経済界は、けっして現状に満足してはおられないのです。「最近は岡崎市の工業高校が定員割れしている。東三河の豊橋市を見習わねばならぬ」というお話しを伺いました。こういうところもトヨタ流儀ですね。なかなか真似のできることではありませぬ。


<2月22日>(木)

〇パチパチパチ。本日は歴史に残る日となりました。日経平均が最高値を付けた日。2024年2月22日の終値は3万9098円でした。さあ、目指せ4万円、そして5万円。「だんだん良くなるホッケの太鼓」という古いフレーズを思い出しました。読売新聞の陣太鼓さん、と言っても覚えている人は少ないだろうなあ。

〇だが、ちょっと待て。昨日発表の月例経済報告は基調判断を下方修正したのではなかったか。そして23年10−12月期GDP速報値は2四半期連続のマイナス成長であった。日本の実体経済はあまり良くないのである。なぜ株価だけが上がるのだ。

〇そもそもコロナ下の強制貯蓄があるにもかかわらず、個人消費がずっと冴えない状態で、インバウンドだけが好調で、一般庶民は「ニセコバブル」や「熊本バブル」を、「下から目線」で仰ぎ見ている感じである。7000円の海鮮丼だとか、大卒初任給28万円だとか、おかしいと思わないのか、諸君。

〇さらに言えば、足下の24年1−3月期GDPも、ダイハツ問題による生産の下振れや、外需の前期比減などの悪材料が予想される。こんな状態で日銀が金融正常化に動いたとしても、先行きがあんまり明るいとは思えない。さあ、いったいどうなっておるのか。

〇現下の日本株高の理由をあげるならば、以下のようなことが考えられましょう。


(1)日本株なんて、所詮は米国株に引っ張られるだけの存在なんです。そして米国株は今や絶好調。ああ、エヌビディア様、ありがたや、ありがたや。

(2)主要な日本企業は海外で稼いでいる。トヨタ自動車もソニーも三菱商事もソフトバンクも以下同文。国内市場が悪くても企業決算は関係ないんです。

(3)実質GDPが伸びなくても、名目GDPが伸びている。家計部門にとって物価高は重荷だが、企業部門は商品価格を上げられるのだから大助かりだ。

(4)加えて円安の追い風がやってきた。今年は皆が円高予想で130円台を想定していたところ、あにはからんや150円。今は追い風参考記録みたいなもの。

(5)「中国経済の軟調」にも助けられている。中国市場を見放した投資家が日本にやってくる。いや、中国人自体が日本株を買い漁っている。いやあ、悪いなあ。

(6)皆が半信半疑であった東証改革も、日本の経営者がちゃんとROEやPBRを意識するようになりつつある。増配や自社株買いも増えているじゃあないですか。

(7)3月の春闘は昨年を超える賃上げとなろう。正直、来年の日本経済がどうかはわからんが、だからこそ今は「期待」ができる。情があるなら今月今夜、一夜明けたら誰も来る。


〇とりあえず「バブル」ではないと思います。上記の材料のうち、「円安」効果はいずれ消えるでしょうから、その分はたぶん株価は下げる。しかるにほかの材料はわりに堅いので、この先に急激な下げが来る感じではなさそうだ。

〇もうひとつ、ここでも書いたことですが、日経平均という指標にはいろいろ限界や問題点があるのです。だから「34年ぶりの高値」などと考えるよりは、2003年くらいから始まった新しい指数だと受け止める方がいいんじゃないでしょうか。

〇21世紀になってから株式投資を始めた若い人たちは、「時間はかかったけど、投資は報われる」と実感していることと拝察いたします。とはいうものの、ここで利益確定で売りに出そうかと思うと、2割の税金が急に惜しく思えたりもする。こういうときが悩ましいところなんですよね。投資は難しい。


<2月24日>(土)

〇自宅の階段についているLED電球が、昨年暮れぐらいから点いたり消えたりしている。気になってはいたのだが、「腰痛が消えてから」「暖かくなってから」などとついつい先送りしていた。しかるについ先ほど、決心してホームセンターに行き、新しいLED電球を買ってきた。脚立を持ち出してきて、電球を換えてみた。

〇ところがケシカランことに、LED電球が点かないのである。初期不良ではないか。パナソニックともあろうものが、なんたることぞ。すかさずゴミ箱からレシートと保証書を拾い上げ、ホームセンターに取って返した。ああ、オヤジ世代、下手をするとモンスタークレーマーになってしまいかねない。とはいえ、いちおう1000円超えてますからね。この電球。

〇ところがさすがはホームセンターである。無人の返品カウンターに行くと、電光石火で店員が現れ、「あっ、初期不良ですね。すぐに確認します」などと言いつつ、いろいろ機材を取り出すのである。さすがはパナソニック、そういう際の段取りは万全であった。そして試してみると、ちゃんとLED電球は点いたのである。むむむむむ。

〇これはどうやら我が家の配線に問題があるらしい。とはいえ、築30年なので、そんなに簡単に替えられるものではない。そこでハッと気がついて、「LEDではない、普通の電球は売ってますか?」ときいてみると、ハイハイと売り場まで案内してくれた。こちらは安い。2個で262円也。

〇普通の電球に取り替えてみたら、案の定、ちゃんと点いた。きっと1年くらいで切れてしまうだろうが、そんなのは構わん。どうせ古い家に住んでいる古い人間なのだし、電気代を気にするほどのこともないのである。普通の電球、ありがたし。


<2月25日>(日)

〇注目のサウスカロライナ州予備選挙は、開票率98.8%現在でトランプ氏59.8%、ヘイリー氏39.5%と約20p差。大差といえば大差だが、20%差なら上出来とみることもできる。とりあえずトランプさんが6割にかすかに届かなくて良かったというところかな。

〇ワシントンポスト紙が出口調査を紹介している。いろいろ面白い。


●How different groups voted in the South Carolina primary, according to exit polls


*共和党予備選に投票した92%が白人。ちなみに同州の白人比率は64%で黒人が28%。

*4大卒以上が43%でそれ以下が57%。前者ではヘイリーに投票した人が53%で、後者ではトランプに投票した人が73%。

*「無党派」の有権者22%のうち、60%がヘイリーに投票。SC州はオープン・プライマリーなり。

*重要な政策を尋ねると、「移民」(37%)、「経済」(33%)、「外交」(13%)、「中絶」(10%)。移民を選んだ人はトランプが81%、外交を選んだ人の74%がヘイリー。

*「2020年、バイデンは正当に勝ったか?」と尋ねると、「イエス」は36%でうち81%がヘイリーに投票。「ノー」が61%でうち87%がトランプに投票

*「有罪判決でもトランプは大統領にふさわしいか?」と尋ねると、「イエス」が61%でうち90%がトランプに投票。「ノー」が36%で87%がヘイリーに投票。


〇この最後のところが大事でありまして、2016年や2020年選挙で「鼻をつまんで」トランプに投票した共和党員は少なくなかったが、有罪判決が出たらそこまで付き合う義理はない、と考える共和党員も3分の1程度は居る、ということになる。

〇予備選段階ではとにかくトランプ支持者が熱いことがよくわかった。ただしそれは本選挙になると、かえって伸びを欠く原因となるのではないか。ヘイリーさんは「ここでは降りない」と言っている。それは正解だと思います。


<2月26日>(月)

〇元日にこの世を去った山崎元氏の四十九日が先週で過ぎて、今宵は競馬関係の友人が集まって偲ぶ会を実施。

〇皆で故人を語っていると、褒める言葉が6割あると、けなす言葉も4割くらいは出てくる。あんなこと、こんなことを語っているうちに、「えっ、そんなの知らなかったぞ」「聞いてないぞ」ということがいっぱい飛び出して、一同で「答え合わせ」をしているようである。

〇気がつくと山崎さんはおろか、ぐっちーさんまでもがこの世に降りてきて、その場に一緒に居るように思えてくる。ポルターガイスト現象も降臨したような。いやはや。死者の存在感を間近に感じるような夜でありました。どうか成仏してくださいまし。

〇ところで今宵、ご一緒した競馬評論家のTAROさんは、このところ確変状態なのである。先週のフェブラリーステークス(G1)では、11番人気のペプチドナイルを本命に指名。これがアッと驚く勝利で、馬券王先生も驚く大穴馬券だったのであります。

〇そして昨日の中山記念(G2)では、マテンロウスカイ(7番人気)を本命にして見事1着。阪急杯(G3)ではアサカラキングを本命にしてこれが2着。小倉の下関ステークスではカンチェンジュンガの本命がこれも1着。とにかく、とてつもない的中率なのである。

〇ワシも半信半疑で予想に乗っていた結果、阪急杯はお陰で取れたけど、中山記念はタッチの差で三連複7万2980円の馬券を取り逃したのである。ああ、なんてもったいない。フォーメーションはつくづく難しい。来週の弥生賞ディープインパクト記念(G2)は、TAROさんの買い目にご注目あれ、と申し上げたい。


<2月27日>(火)

〇今朝は二日酔い。朝からヘパリーゼが必要である。昼も夜もメシあり会合なるも、今日は一滴も飲まず。こんなこと、今年初めてかもしれない。

〇午前2時就寝、午前5時起床。それで出社して、仕事でボロが出ないようにハラハラしながら一日過ごす。何をやっとるんだワシは。もう若くはないというのに。

〇今日は風が強くて、とっても寒かった。こんなことで体調を崩してはいけませぬ。とりあえず今日のところは下戸ノミクスで一日を過ごすのであった。


<2月28日>(水)

〇内閣府による2月の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」のP5に、「日本とドイツの比較」について書かれている。2023暦年ベースの名目GDPが、日独で逆転したことを分析している。ちなみにドイツは4.5兆ドル、日本は4.2兆ドルであった。

〇名目GDPの比較は、物価や為替に左右されるものだが、ドイツが「@3分の2の人口、A6割の就業者数、B8割の労働時間」で、年間で日本よりも大きな付加価値を生み出している事実は重いと言えよう。日本人たるもの、こんなことでは「ご先祖様に対して申し訳が立たない」と受け止めるべきである。

〇現在のドイツ経済は、かならずしも好調ではない。何しろ「ロシアからエネルギーを安く買って、中国にクルマを高く売る」というビジネス・モデルが往復ビンタで否定されている。自動車生産を急いでEVに転換しようとしたのも失敗だったようだ。メルセデスグループは、2030年までに新車販売をすべてEVに切り替える計画を撤回した。ほーら、やっぱりね。正しかったのはトヨタ自動車だったということになる。

〇ドイツは、統一通貨ユーロのお陰で得をしてきた面もある。南の弱い国々があるから、ユーロはどうしても他国通貨に対して弱含む。その分、ドイツ経済の輸出競争力が強化されてきた。しかるに今では、南の国々が観光需要で潤う一方で、ユーロの高金利がドイツの輸出産業の足を引っ張っている。インフレ率も高いし、エネルギー政策も無理をしちゃっているので、ドイツ経済の前途は楽観を許さない。ある意味日本以上に。

〇ところが、どこで日独経済の差がついたかと言うと、2002年からの「シュレーダー改革」はもっと評価されるべきであろう。労働市場にメスを入れる改革が、左派政党であるSPDの内閣で実施されたという意義は大きい。お陰でシュレーダー政権は7年間と、「ドイツにしては短命政権」に終わってしまう。その恩恵を受けたのが、長期政権となったメルケル首相である。

〇首相退任後のゲアハルト・シュレーダーは、ロシアの国有会社であるガスプロムやロスネフチの取締役になったりした。しかもウクライナ戦争勃発後も、親ロ姿勢を悔い改める様子がないようなので、非難されることが多くなっている。親露と言っても、ムネオさんあたりとはまるで格が違うので、それはもう罪もはるかに深いのである。

〇それでも今から思えば、シュレーダー改革は同じ時期の「小泉改革」とは本気度がまるで違っていたと言わざるを得ない。やっぱり「劇場型」政治はダメなんですよ。やるべきことは粛々とやらなきゃいけない。その辺が日独の政治力の差でしょうかね。「劇場型」を囃す心に悪魔が宿る。そういうポピュリズムにはくれぐれも気を付けたいものです。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki