●かんべえの不規則発言



1999年11月





<11月1日>(月)

○というわけで、明日から東南アジアに出かけるかんべえさんです。溜池通信の今週号はお休み。不規則発言も、ベトナムからの接続が可能なら考えますけど、おそらく更新はできないと思います。帰ってきたら、また続けますので、次の更新は11月10日頃になると思います。

○そうなる前に、と思ってフロントページを一新してみました。前からこんな風にしてみたかったのですが、たしかに愛想はありませんな。非常に不完全な形ではありますが、リンク集のページも作りました。うまくつながらないページもあるかもしれませんが、ま、それもそのうちに。

○と思って昨晩は頑張ったのですが、今日からニフティがinfowebと統合されるというドタバタがあったせいか、まったくつながらず。困ったもんです。@ニフティに移行したものかどうか、ちょっと考えもの。こういうとき、かんべえは他人の後から行動しようと考えるタイプなので、しばらくはこのまま動かないつもりですが。


<11月2日>(火)

○バンコクのホテルから、ローミングによるアクセスを目指すも駄目。これはやはり帰国してからアップするしかないようですな。ともあれ、かんべえはバンコクに来ました。

○いきなり交通渋滞に遭遇。アジア危機以後、名物の渋滞がなくなったと聞いていたので、「いやぁ景気回復ですな」と言ったら、現地の人は「なぁに、雨のせいですよ」。景気ではなく、天気が問題らしい。だが、道を行くクルマはみな新しく見える。ベンツやBMWも多い。クルマはたしかによく売れているそうで、この国の内需はけっこう強いのではないか。

○で、バンコクではスコタイ・ホテルに泊まっているのですが、これが豪華絢爛。オリエンタルよりもすごいかもしれない。部屋も無茶苦茶広い。こんないい部屋が1泊158ドルとはすごい。こんないい部屋に泊まっているのに、夜11時に仕事から帰ってきて、翌朝7時20分にはチェックアウトというのが悲しい。


<11月3日>(水)

○バンコクでいくつも面会をこなして、夕方にハノイ着。今回はタイ料理もタニヤ街もタイ式マッサージ(真面目なやつ。ヨガの一種だという説あり)もすべてパス。惜しいなぁ、いい街なのに。

○ベトナムは初めて。うっひゃあ、すごいところ。入国管理官なんてまるで軍人。パスポートのチェックが終わると、旅行者に返すのではなく、テーブルの上にメンコのように叩き付けてくれる。態度悪いことこの上なし。さすがは社会主義国だ。

○ハノイの街は噂通りのバイクの群れ。町並みはまことに貧相。バンコクに比べれば月とスッポン。ハノイはみんな若くて活気がある。昔のカブみたいなバイクに、抱き合うようにして乗っているカップル多し。電力供給に限界があるのか、ネオンは少な目。そのなかでも目立つ色とりどりの「Karaoke」の文字。深夜、宿泊のホテル、ニッコーハノイから国際電話によるアクセスを目指すも駄目。ますますインターネットは遠い。


<11月4日>(木)

○ニッコーハノイの14階から窓の外を見ると、赤茶けた瓦の貧相な住居が並んでいる。洗濯物が干してあったり、下着姿のベトナム人が涼んでいたりする。こんな下町にどーんと16階建ての、日本人向けホテルが建っている。下に住んでいる人には日照権もへったくれもない。道路では、相変わらずバイクの群れが東西南北に向かって走っている。ホテルの中にいても、外のブーブーという音が途切れることはない。

○突然、疑問が氷解して、国際電話によるインターネットへのアクセスが可能であることに気がつく。メールも届いていた。「ハノイ通信」などという題名で、調子に乗ってあちこちへメールを出す。さすがに電話料金が恐いのでネットサーフィンは自粛。でもHPの更新なら1分で済むから、ま、いいか。

○仕事ばかりでホテルから全然外に出ず、食べるものは毎回日本食。日本にいるときでさえ、あんまり和食党ではないかんべえさんとしては、早くベトナム料理にチャレンジしたいのですが・・・・


<11月5日>(金)

○ベトナムに来てしまったがために、人生が変わってしまった人は多い。元朝日新聞の本多勝一は、ベトナムにハマル前は『極限の民族』シリーズの名物記者だった。石原慎太郎は、ベトナムで肝炎に罹って治療中に、思うところあって政治家を志した、と『国家なる幻影』で書いている。でもまぁ日本人の多くはお気楽な立場だったわけで、本当にベトナムで人生狂っちゃったのは、オリバー・ストーンのような多くのアメリカ人兵士たちだろう。

○今でもベトナムには、訪れる人を変えてしまうような魔力があるのだろうか。中学生のときにベトナム戦争が終わってしまったかんべえさんには、あまりそうした思い入れがないので、「なんてビンボーくさい国」という印象で終わってしまうかも。今のところ、ホテルから全然出てない(出られない)から、なんともいえませんが。

○たしか25年前までは、ベトナムと戦争してたはずなのに、今ではこの国は米ドルが流通している。「祖国か死か」と叫んだホー・チ・ミンの肖像入り通貨は全然信用がなく、1ドルあたりなんと約14,000ドンだという。一人当たりGDPは320ドル(97年)。立派なHIPC(最貧国=Highly Indebted Poor Country)のひとつである。その割りに購買力があるのは、米国移民が里帰りのたびに持ち込む、大量のドル紙幣のおかげだという。地下経済が大きいから、数字以上に人々は豊かだそうだ。

○ちなみに現地の人の話によれば、ホー・チ・ミンという人は英雄でも何でもなくて、この国ではよくある根回し気配り型の政治家だったのだという。日本と同じでなんでも合議制できめようとするので、そういう人が上に立っていた方がうまくことが運ぶのだそうだ。

○ルームサービスで、コーヒーをポットで注文したら3ドル以下だった。味はまあ、許容範囲である。仕事をする環境としては、あまり悪くなさそうだ。


<11月6日>(土)

○この国では今、中部一帯が大洪水でえらいことになっているらしい。しかしハノイは今日も好天。雨の気配さえない。ホテルでは洪水救済のための募金箱を用意した。なにせ1ドル=14,000ドンですから、ドル紙幣を寄附すれば威力はあるわけで。カメラの調子が悪いので、ホテルの売店で8ドル60セントのデュラセル乾電池を買い、10ドル札を出したら20,000ドン札一枚が帰ってきた。だいたい正確なようだ。

○かんべえさんの仕事は大詰めを迎えつつある。12時間後にはかなり気楽な立場になっているはず。で、いったい何をしてるのかというと、国際会議に出ているわけでして、なんの会議をしているかということについては、おいおい差し障りのない範囲で書きましょう。あーいそがし。


<11月7日>(日)

○今日のハノイは朝から雨。見る見るうちに路上には水が溜まって、あちこちで池のごとき様相を呈し始める。中部地域の洪水救済用募金箱に5ドル入れておいた。気は心、てな感じだが、しつこく書いているようにこの5ドルには値打ちがあるのだ。

○ハノイ近郊にある某日本企業の工場を見学した。300人の工員を雇用しているが、ほとんどは若い女性で、朝8時から夕方5時まで、午前に10分、昼に50分、午後に10分の休憩時間以外は、寡黙に工程に取り組んでいる。ご想像通り、神経を使う細かい手仕事で、思い切り消耗しそう。見ていて思わず、女工哀史なんて言葉が脳裏を走る。

○この国では、外国企業は月45ドルが法定最低賃金になっているとのこと。日本企業が払う給料は、だいたい55ドルから70ドルが相場といったところらしい。「おいおい、これで月5000円かよ」と思ったら、国営企業の場合は最低が月16ドルなんだそうで、ここで働いている彼女らは恵まれているのである。「月16ドルで生活できるのか?」と思ったら、やっぱりそれではたいへんらしく、大多数の人たちはアルバイトをして生計を立てているらしい。ハノイでは、午後4時半に帰りのラッシュアワー(もちろんバイクと自転車だ)になる。「帰りが早いね」なんて思っちゃいけない。彼らの多くは、副業へと急いでいるのである。

○たしかにこの国の人たちからは、貧しいがゆえの閉塞状況みたいなものはあまり感じられません。だからといって、「暮らしは貧しくとも、彼らの眼は輝いていた」(わぁ、朝日新聞みたい)みたいなことを言うのは嫌ですね。かんべえさんは、およそヒューマニストとは対極にあるような人間ですが、たとえば他所の家の貧しい食卓を見たりすると、胸がしめつけられる程度の感受性はまだ残っていて、こんな工場を見てしまうといつまでも忘れられなくなりそうです。この国の若い世代がよく働くのは、小さい頃に戦争があって、食うものも食えなかった体験があるからだという説があります。いわれてみれば、あんまり太った人や体格のいい人は見かけません。貧乏はやっぱり良くない。いつも思うんですが、「彼らは貧しいけど幸せそうだ」とか、「日本人は物質的には豊かになったけど、精神面では貧しい」なんて、非常に偽善的な物言いだと思います。

○お金というものは難しいもので、月5000円で真面目に働く人がいる一方、この国にはODAや新宮沢構想などで年間1000億円を超える金額が投入されていたりもする。何に使われているんでしょう。

○今日はついにひとつだけベトナム語を覚えた。「ありがとう」のことを「シン・カモン」という。シンが"very much"でカモンが"Thank you"だ。だから「カモン」だけでもよろしい。この言葉を一発で覚える方法がある。「シン・カモン」は、漢字で書けば「深・感恩」なんだそうだ。納得、でしょ? 長い時代、中国の支配を受けていたこの国は、中国文化最南端の国でもあるのです。


<11月8日>(月)

○朝4時半に起きてニッコーハノイをチェックアウト。7時20分発の飛行機に乗ってホーチミンへ。北の政治都市から南の経済都市へと移動する。飛行機だと2時間の距離だが、汽車だと3日かかる由。この2つの都市は全然違う。たとえばハノイには四季があるが、ホーチミンは雨季と乾季だけ。ハノイは昔から社会主義国で戦勝国、ホーチミンは元資本主義国で敗戦国。北と南の人々はたいへん仲が悪いのだそうだ。

○地理的に見て、南北の関係はだいたいにおいて仲が悪い。北朝鮮と韓国、スコットランドとイングランド、北イタリアと南イタリアなど。とくに中国大陸を舞台にした、北方騎馬民族と中国農耕民族の抗争の歴史は、その過酷さにおいて比類がない。逆に東西の関係は、シルクロードの交流のように、共存共栄の関係であることが多い。日本でも、関西人や九州人が上京するドラマは、得てして周囲の笑いを誘うが、東北人が出てくるといきなり演歌になってしまう。東西は相互補完的だが、南北は支配と被支配、憎悪と軽蔑といった感じになりやすい。そうそう薩摩と沖縄、なんてのも南北関係ですね。

○ということで、一夜明けて北から南に来たかんべえさんは、すっかりご機嫌になってしまいました。イエーィ、サイゴンは明るいぜ。天気はいいし、空は広いし、樹木は南洋風だ。相変わらず路上はバイクの群れで、クラクションの音は絶えないが、人々は明るいしファッションも開放的だ。なによりお昼に食べたベトナム風うどんが最高!米で作った麺を、鶏がらのだしのスープに入れ、野菜と香草と唐辛子をしこたまかけて食べる。これで100円程度だ。むふふ。

○それに今日は日曜だ。仕事なんかしてたまるかい。他の皆さんはゴルフへ。当地の駐在員は、そろって左手以外は見事に日焼けしていることに気がつく。かんべえさん、もとよりゴルフはしない。初めて来た街では、まず博物館を探すのが習性である。いろいろ行ったのですが、ここは戦争証跡博物館のことを書いておきましょう。

○予想通り、ベトナム戦争中の米軍の残虐行為を並べている。きわめつけは、枯れ葉剤の影響で生まれた奇形児をホルマリン漬けにして展示している。こういう記念館の常として、たぶんに誇張して描かれているのだろうけど、なるほどこれはひどい。周囲には米国人と思しき観光客が神妙に展示を見ている。しかし説明がベトナム語とフランス語でしか書かれていないので、皆目不案内である。ところどころ中国語の説明があるので、漢字でかろうじて意味を察することができる程度。ちゃんと英語で書いとけよな。

○元国防長官マクナマラは懺悔をしている。「私たちは過ちを犯してしまった」と。個人としてけじめをつけているわけで、それを立派だという人もいる。でも、それじゃ死んだ兵士たちは浮かばれませんがな。それに『ベスト・アンド・ブライテスト』を読み返せば、「やっぱりお前なんて許してやらない」という気になってしまうだろう。一方、キッシンジャーは大著『外交』の中で、「ベトナムへの介入はドミノ理論によって正当化された」などとしらじらしく書いている。かんべえはむしろ後者に好感を覚えるな。

○屋外では、戦争に使われた戦車や戦闘機が無造作に並べられている。ベトナム人の女の子達がその回りでふざけながら記念写真を撮っている。日本人観光客の方がまだしも真面目だぞ。戦争が終わったのが1975年。その年に生まれた子供はもう24歳。人口の若いこの国においては、「戦争を知らない子供たち」が増えているのだ。

○日が暮れてからもバイクの群れは途切れない。大きな荷物を運ぶバイクがいる。デートに出かけるカップルを乗せたバイクがいる。一家4人を乗せた夕涼みのバイクがいる。新車のバイクは1000ドルもするのだそうだ。月給50ドルで2年分近く。それでも人々はバイクを手に入れる。ふと、ホーチミン市民が、ある日念願かなってバイクを購入する瞬間のことを思い浮かべてみる。生活の足と自由とプライドとを同時に手に入れる瞬間である。うれしいだろうなぁ。

○てなことを考えているかんべえさんが乗ったクルマは、クラクションを鳴らしてこれらのバイクをかき分けつつ、オムニサイゴンホテルに着いた。「キミはなんにでも感動するなぁ」などと周囲からあきれられつつ、今日もたくさん感動してしまった。


<11月9日>(火)

○ホーチミン市を埋め尽くすバイクの群れを見ながら、だれもが同じ思いを禁じ得ないらしい。それは「これだけ大勢の人がいったいどこへ行くのか」ということだ。(1)仕事に急いでいる、(2)デートしている、(3)とにかく走っていれば涼しいから、などなど、いくつもの理由が重なっているのだろう。

○ベトナム人がバイクを求める理由のひとつに、動産としての価値があるらしい。この国の人々は政府や銀行を信じていない。戦争のせいだけではない。過去に2回、抜打ち的なデノミを実施し、その際に預金封鎖を行ったのだそうだ。日本でも戦後の新円切り買えの際の預金封鎖をいつまでも覚えていて、「だから私は銀行なんて信じない」という人がいるが、あれをもっと壮大な規模でやったと考えればいい。勢い、人々が信じるのは預金より現金、現金より外貨、あるいはモノ、ということになる。バイクは中古車市場が形成されているので、「ホンダの何CC、何年型はいくら」といった相場がある。だから事故さえ起こさなければ、バイクへの投資は資産形成の手段にもなるわけである。

○一方で、銀行を信じないという商慣習は、この国の経済をいちじるしく非効率なものにしている。たとえば商品を売る場合、ベトナムには約束手形はないし、小切手もあまり普及していない。すべてが現金決済である。ところが現地通貨ドンの最高額紙幣は5万ドン(=3.6ドル)である。真面目な話、集金に行くと現金の重さで腰が抜けるという。現金を計算するのもたいへんな重労働だ。偽札も少なくない。おまけに銀行も受け取らないほど古いお札が少なくない。こういうお札は中央銀行も交換してくれない。この国で商売をするのはかくも大変だ。

○商社マンの世界だけで通じるギャグにこんなのがある。「この国のLCはLetter of Committment、LGはLetter of Goodwill」。LCがあるから金は入ると思っちゃいけない。政府だってLGの何たるか分かっちゃいない。国際的な商習慣が普及するのは当分先のことになるでしょう。こういう場所で、汗をかきながら仕事をしている人たちがいるんです。

○などといろいろと書き連ねてまいりましたが、かんべえは11月9日夜には成田空港に着いている予定です。ベトナム体験はわずか1週間。ここで書いたことは、いわば「誤読」の積み重ねです。これで何かが分かったような気になるのは傲慢というものでしょう。それでも、来なかったら知らないままで済ませていたはずのことはたくさんある。新しい場所に出かけることは、かならず報われるとあらためて思います。この国で出会った多くの人々に感謝。さよなら、ベトナム。


<11月10日>(水)

○日本行きの飛行機の中でこれを書いています。昨晩チェックしたら、『溜池通信』本誌をお休みしている割りには、アクセス件数が1日50件近くあったようで、この「不規則発言」のベトナム紀行編が読まれているのかな、と思います。あらためて読み返してみると、つまんないこともいっぱい書いてますが、「誤読」の跡を残すためにこのままにしておきます。全部読んでくださった奇特な方に深謝申し上げます。

○ひとつ報告しておきましょう。ホーチミンの出国管理官は、ハノイの入国管理官のようにパスポートを叩き付けたりせず、ちゃんと手渡してくれました。やっぱり南と北は違う国みたいですね。

○もうひとつ蛇足ながら報告を。帰りの全日空で見た『ノッティングヒルの恋人』はいい映画でした。このところ作品に恵まれなかったジュリア・ロバーツと、LAでの買春報道で雌伏していたヒュー・グラント、ともに復活となるでしょうか。無駄なギャグが多すぎるような気もしますが、脇役がしっかりしています。

○これでベトナム紀行編は一巻の終り。明日からは平常モードとなります。


<11月12日>(金)

○東京は寒い。出張報告と旅費清算がややこしい。2日仕事に出たら疲れてしまったので今日は休んでしまった。『溜池通信』はそのうち書くからね。

○『ノッティングヒルの恋人』の中でこんなシーンがある。小人数のパーティーの終り近く、ひとつだけ残った「遠慮の固まり」みたいなデザートを、だれが食べるかという話になる。そこで「この中でいちばんミジメなやつにあげよう」ということになり、そろって「自分がいちばんミジメだ」と口々に主張し始める。なかには、シャレになんないほど悲惨な話をするツワモノもいるが、そこは気のおけない同士だから笑って済ませてしまう。

○映画の中では、このグループ(主人公ヒュー・グラントの友人たち)が、うだつの上がらない連中であることをさりげなく紹介し、そこに突然入ってきた大スターのジュリア・ロバーツが、「あたしだってつらいのヨ」という告白をする重要なシーンである。これがなかなかに良い。さして魅力的でない賞品を争って、「だれがいちばんミジメか」を大真面目で競うというのは、舞台が英国であることも手伝って、おしゃれな会話に仕上がっている。

○で、こんなのはどうだろう。今年の忘年会で、「今年はこんなにひどい目にあった」という告白ゲームをする。最初に司会が自分のミジメな経験を披露する。挑戦者は、それよりもミジメな経験を告白し、その他全員が「よりミジメな方」を選ぶ。これを勝ち抜き戦方式で延々と続ける。敗退しても、何度でも挑戦できる。これ、盛り上がると、参加者の意外な告白が聞けて面白いかも。

○日記の順序を、時系列で上から下に並べることにしました。ほかの日記を見るとその方が大勢のようなので。下から上に並べているのは、かんべえが知っているサイトでは『ボージャック夫人』くらいでしょうか。この日記は、その名の通り「傍若無人」でお下劣なんですが、非常に練れたいい文章を書く方なんで、かんべえはちょいちょい見ています。どこにあるかって?日記猿人で調べれば、上位の方でたぶん見つかるはずです。


<11月13日>(土)

○サントリーのマグナムドライが売れているらしい。かんべえは一度も飲んだことがないのだけれど、そりゃそうだろうなあ、と思う。だってCMがすごくよくできているもの。サントリーのCMというと、缶コーヒー「BOSS」シリーズみたいに、エンターテイメントとして面白いものに目を奪われ勝ちですが、マグナムドライはしっかりと銭を取りに行っているCMです。

○まず、山本リンダの「どうにも止まらない」という、35歳以上ならほとんどが覚えている歌を替え歌にしたところが鋭い。これで賞品のターゲットは、中年以上の男性ということがはっきりします。次に歌の中で「ドライが145円で飲める」と明言し、わざわざ旗をひるがえして視覚にも訴える。つまりこの商品の売りは値段であることを訴える。さらに映像の中の中年男性は、山のような缶ビールを抱えて走っている。要するに大量に飲んでくれ、ということです。

○ここから読み取れるメッセージは明快です。会社ではリストラに脅え、家では家族に遠慮して、晩酌のビールも本当はエビスにしたいところを、安いモルツで我慢している男たちよ、遠慮せずにマグナムドライを買いたまえ。安いからもっといっぱい飲めるよ、となります。うーん、いい仕事してますね。

○ところで本当はエビスが好きなかんべえさんは、近頃はちょくちょく箱売りのモルツを買います。両方とも100%モルトビールですが、方やちょっと高め、方やちょっと安めです。モルツはちょっと可哀相なビールでして、筒井康隆裁判長が出てくるCMがそれを盛んに訴えています。


<11月14日>(日)

○めずらしく静かな日曜の午前中です。こういうときはつい、ダラダラとテレビを見てしまいますが、かんべえの黄金パターンはこんな感じです。

○起きたらまず、フジテレビの『報道2001』を途中から→9時からNHKの『日曜討論』、これが面白くない場合はあきらめてTBSの『サンデーモーニング』をチラチラと→10時からテレビ朝日の『サンデープロジェクト』を冒頭の5分だけ→10時5分からはNHKの『こどもニュース』→それが終わったら『将棋の時間』→気がついたら12時。皆さんは何を見ていますか?

○これを全部通して見ることはめったにありません。当然ながら。今日の場合は、国会初のクエスチョン・タイムがさかんに取り上げられています。概して評判は良くないようで。でもまあ、学校の学級会でさえまともな討論をしたことのない国で、与野党対立のディベートをやろうとしているわけですから、初めのうちは大目に見てあげないと。なにせ今までが今までだったのですから。

○国会議事堂の作りを見れば、この国の政治の仕組みが良く分かります。国会の主役である議員さんたちは、コンクリートの床に立って「質問」を行います。壁際の高い席には大臣や政府委員たちが座っていて、かわるがわる壇上に立って質問に答えます。大臣たちのさらに上には、天皇陛下の席があります。どっちが偉いかは一目で分かりますよね。この国のご政道は内閣が定め、国民の代表たる議員はお伺いを立てるような形で物申すわけ。

○与野党の党首が対等の立場で議論するのは、こうした体制を変える第一歩。ピザの話はいかがなものか、なんて議論はあまりにも近視眼といえましょう。


<11月15日>(月)

○フジテレビがバレーボールのワールドカップをやっています。今夜は日本が中国に勝ちましたね。ところが『アタックNo1』の頃とはルールがずいぶん変化しています。なかでもサイドアウトがなくなったのは、見ていて小気味良くていいですね。バサロとかいう守備専用要員がいるのも面白い。こういうルール変更はいいですね。その昔は9人制が主だったのですから、時代につれてどんどん変化していくのでしょう。

○サッカーのルールなどもよく変化します。オフサイドの定義なんて、しょっちゅう変わっているような気がします。ルールはしょせん決め事ですから、多数派が納得しさえすれば、どんどん変えてしまえばいいようなものですが、そうもいかないことも多々ございます。

○柔道のルールなぞはかなり揉めているようで。カラーの柔道着が認められたのは、日本では不評のようです。そんなのが嫌なら、最初から国際化などしなければいいので、日本の国技だから日本の言い分を通せなどというのは無理筋な話。そんなこと言い出したら、「世上いわれているイタリアンピザというのはイタリア製ではない」みたいな声が方々から聞こえてくるはずです。(イタリアン・ピザは、イタリア移民の手でニューヨークで誕生したらしい)

○ルールがよく変わるのは麻雀もそう。割れ目、焼き鳥、飛ばしなんて昔はなかった。もっと昔は、いわゆるアルシャルルールで、点数計算における「バンバン」がなかった。太平天国の乱の頃に出来たゲームが、なぜか西回りで日本に到達した。アガサ・クリスティーの『アクロイド殺人事件』では、イギリス国民が麻雀に興じるシーンが描かれている。アメリカを経由した時点で、七対子なんて役が加わった。ルールとは、過去の人々の知恵の集大成でもあるわけです。


<11月17日>(水)

○中国のWTO加盟問題で、米中合意が成立したことに正直驚いています。これまで「うまくいくはずがない」と言い続けてきましたので。この問題について、アメリカ・ウォッチャーは総じて悲観的、チャイナ・ウォッチャーは楽観的でした。前者を自認するかんべえもご多分にもれず、悲観派でした。

○しかし、実はここから先が問題なんでして、米議会の反対からジュネーブでの複雑な手続きまで、中国のWTO加盟を阻む要素は事欠きません。そもそもWTOの前進たるGATTは、条約ではなくてGeneral Agreement、すなわち一般協定でした。なぜかといえば、米国議会の承認が得られなかったからです。このへんが一筋縄ではいかないところでして、歩いて10分ほどの距離にあるホワイトハウス(行政府)とキャピタルヒル(議会)は、非常に遠いんですね。

○中国の貿易慣行は、まだまだ国際標準から見れば理不尽なことが多い世界です。中国が本当にWTOの一員になったら、さっそくパネルへの提訴が相次いで、収拾のつかないことになりかねません。そんな国の発言が重きをなすとは思えませんから、一部の新聞などが書いているように、「WTO加盟で対中ビジネスは発展のチャンス」とか、「中国が加盟すると、途上国の声が強くなる」っていうのはうそ臭いように感じます。国際機関というものは、なんだかんだいって欧州中心の世界で、新参者にはけっこう厳しい世界なのではないでしょうか。日本だって、国連やGATTやIMFやOECDに入れてもらうときは苦労したんだから。


<11月18日>(木)

○すごいホームページを教えてもらいました。名づけてケイタイ着メロ大全集。1500曲以上のメロディーが登録されています。携帯電話は世界中で使われていますが、着メロにこれだけ凝るのは日本だけでしょうね。アクセス件数が320万件と、溜池通信の1000倍もあるのには恐れ入りました。ご覧になりたい方はここをクリック。


<11月19日>(金)

○このたびプレジデント社を退社した、岡本さんのパーティーに行ってきました。いつも感心するほどゆたかな人脈を持っている方ですが、今夜も多士済々。おかげでいろんな人に会えました。そんな岡本さんも、「大学に入るために四国から出てきたときは、友達がひとりもいませんでした」とのこと。そうかぁ、岡本さんも地方出身だったのね。それでお互い、似たようなことしてるのかなぁ。

○会社を辞めて、何を始めるかといったら、「とりあえず働くとは何かを考えたい」と迂遠なお言葉。うーん、キミはどうしたらそんなに勇敢になれるんだ。年はそんなに変わらないのに。「ウェッブを作りたい」とも言ってたけど、そんなの簡単。この程度ならすぐにできるからね。


<11月21日>(日)

○500円玉の偽造が問題になっております。500円玉とよく似た海外の硬貨を持ってきて、自動販売機をごまかすっていう手口です。あまり指摘されないことですが、500円玉は世界的に見た場合、硬貨にしては値打ちがあり過ぎるんですね。だって米ドルで見た場合、5ドルはお札だし、1ドルもお札でしょ。日本でも500円という単位はお札であっても少しは不思議ではありません。

○硬貨というものは本来補助貨幣。500円玉のような高額補助貨幣が愛用されるのは、自動販売機がたくさんあるお国柄のせいもあるでしょうが、一説によれば大蔵省の思惑があるんだそうで。お札は大蔵省印刷局が印刷したものを、日本銀行が実費(1万円札は数十円)で買い取り、日銀の窓口から世の中に流通します。大蔵省としては、儲けのない仕事です。しかし硬貨は大蔵省造幣局が作り、額面で市中に出すことができる。実費との差額は国庫に入る。だから大蔵省としては、硬貨を高額にしたいのだそうです。いわれてみれば、お札は「日本銀行券」と書いてあるが、硬貨は「日本国」とだけ書いてありますな。正確なところは分かりませんが、いかにもありそうな話です。

○それはさておき、かんべえさんは500円玉を集めるという癖があり、常時数万円分を貯えております。最近気づいたのですが、これってY2K対策になるのかも。実はあと、5000円札が好き、という趣味もあるのですが、そっちの話はまた別の機会にでも。


<11月22日>(月)

○今日は試練の日でした。実は大腸レントゲン検査を受けたんです。これをやるときは、前日から箱入りのおかゆ以外は食べられなくなり、夜には下剤を飲みます。そうやって腹の中をきれいにした上で、当日は朝から飲まず食わず。空腹をかかえて病院に行くと、そこで受ける仕打ちときたら筆舌に尽くし難い拷問です。だってお尻からバリウムと空気を入れるんですぜ。これでよーく分かったが、わたしゃオカマにはなれませんな。(←こらこら、誰がなれといった)

○検査の後、「とにかく何か食べよう」と思って病院のすぐ下にあるアンナミラーズへ。パンプキンパイとコーヒーを注文。うーん、アンミラに立ち寄るなんて何年ぶりでしょう。久しぶりに行くと、高いけどいいですね。そういえば今週木曜日はサンクスギビングだ。七面鳥とパンプキンパイの日だ。七面鳥は七面倒くさいけど、パンプキンパイはアンミラですぐ買える。また近いうちにアンミラへ行くぞ。待ってろよ、かぼちゃ大王。


<11月23日>(火)

○テレビではラグビーの早慶戦をやっています。どっちが勝ってもいいようなもんですが、かんべえの配偶者はこういう瞬間だけ早稲田OBになるので、お付き合いして応援しました。そしたら絵に描いたような逆転負け。地力で慶応が勝っていたようですね。

○先週、慶応OBで、神戸製鋼チームでキャプテンを務めたH氏から、いろいろラグビーの話を聞く機会がありました。
Q「ワールドカップは残念でしたね。後輩の平尾さんに何か注文は?」
A「実力的にはあんなもんでしょう。南半球のチームは、本当にラグビーがやりたいやつが集まっているんです。日本チームが外国人を多く入れたのは、あの精神を学ばせるという意図があるのだと思います」
Q「神戸製鋼は最近は優勝しませんけど」
A「神戸製鋼が監督を廃止して、選手の自主性を引き出すようなラグビーを始めてしばらくして、連覇が始まったんです。ほかのチームがそれを研究し、追いついてきたということでしょう」
Q「いつも学生より社会人が強いのはなぜですか」
A「たしかに社会人は練習時間は短い。でもラグビー選手は経験がモノをいうんです。選手の力がピークになるのは25〜6歳だと思います」
Q「ラグビーは外国はクラブチームが中心、日本は学校や企業が中心ですが、その違いはどんなところに出てきますか」
A「クラブチームでは、どんなラグビーをやるかという伝統ができています。だから少年から社会人まで、一貫した方針で育てることができる。ところが日本では、学校が変わると選手の育て方が違う。結果として回り道になることもあるでしょう」

○おかげでいくつかの疑問が氷解しました。やっぱりその道の大家の話を聞くのはいいものです。ラグビーのことが少し分かったような気がします。


<11月24日>(水)

○いやー、腰が抜けるほど安心しました。一昨日の検査の結果が出て、医者に「がんもポリープもありませんでした」と言ってもらいましたんで。先月の成人病検診でひっかかり、「精密検査を」といわれて内心ギクリ。2年前に中学・高校時代の友人Mが、腸のがんが発見されてからわずか半年でいってしまったのを思い出し、検査の当日は、いよいよとなったら「かんべえの闘病日記」でも書くかぁ、などと考えておりました。今日になって医者は、「あの便血潜はなんだったんでしょうねぇ」などととぼけたことを言ってましたが、もちろん当方に文句のあろうはずがございません。

○その前に受けた、血清反応の再検査も「異常無し」でした。なーんだ問題はコレステロール値だけじゃないか、んなもん全然オッケー、と明るくなるワタシ。それにしても、成人病検診でこれだけチェックを受けたのははじめてです。来年は大台に乗るわけですから、いろいろ出てくるのは仕方がないのかも。できれば体重3キロ減を目指したいところですが、ダイエットもスポーツも嫌いだからなぁ。

○今日は会社の営業の客先を相手に、「日本経済の行方」と題した講演をやりました。内容は先週号の「溜池通信」を敷延したもの。「日経新聞や何とか総研が言うことを、素直に信じちゃいけませんよー」てな話を1時間ばかり。頭のいい人たちは得てしてプライドが高い。そういう人たちは、自分の間違いを認めたがらない。神奈川県警と一緒ですな。

○友人のAさんから本をもらいました。中谷彰宏著の『デジタルマナーの達人』。Aさんの字で、「けっこうタメになる本なので、ぜひお読みください」とある。読みましたよ。本当にためになりました。推薦しちゃいます。中谷を「面達」でもう終わった人だと思ってる人はいませんか?


<11月25日>(木)

○で、昨日書いた『デジタルマナーの達人』にはいろいろためになることが書いてあります。とくにメールの書き方について。「内容をひとことで言いきるタイトルをつけよう」は本当にそうですね。おしゃれなタイトルのメールは、忙しくても真っ先に明けますから。また、もらったメールのタイトルに、「長文注意」「返事不要」といった但し書きがついていると、送った人の心がけがしのばれることもあります。

○「手紙のマナーを押し付けない」という教えも共感しました。1行目に相手の名前を書かなくてもいいじゃないか。メールで大事なのは何よりも速度。ビル・ゲイツのメールは「OK」と「NO」のどちらかで始まるんだそうです。考えてみれば、これからはケイタイあてへのメールも多くなるから、余計な文字数を増やさない方がいいかもしれません。かんべえはメールの冒頭に、相手の肩書きなどを入れたりはしませんが、「ご無沙汰しております」「お寒うございます」みたいな文句を入れたくなる人なんですが、ちょっと考え直した方がいいでしょうかね。

○それはそれとして、当ページにもちょくちょくメールを頂戴します。この前はあるジャーナリストの方から、先週号でマスコミ批判をしていることへのレスポンスをもらいました。反論のようでもあり、言い訳のようでもあり、ちょっとだけ笑わせてくれるようなメール。こういうのはうれしいですね。アクセス件数は増えていますが、幸いなことに腹が立つようなメールにはまだ一度も当たったことがありません。


<11月26日>(金)

○今日は外資系投資銀行のK氏と昼食。いつも新鮮なアイデアでいっぱいの人ですが、最近の関心事はベンチャーキャピタルだそうだ。なにしろ未公開株に投資することほど、ロマンと金儲けを同時に満たしてくれることはありませんからね。タイ風野菜カレーに汗をかきながら、お話も結構刺激的でした。

○K氏いわく、政府のベンチャー支援策により、投資家から集めた資金と同額を、政府が拠出してくれることになった。つまり10億円を集めると、20億円の投資ができるようになる。ベンチャーキャピタルの手数料は3%ととして、20億円X3%=年間6000万円の経費が使えるようになる。こいつはうまい話じゃないか。

○Kさんの頭の中には、すでに有望な投資先も浮かんでいるようです。10億円はともかく、それなりの金額で勝負してみたいお金持ちがいらっしゃいましたら、かんべえまでメールをください。


<11月27日>(土)

○今日は円高が進んだようです。26日(金)のNY市場は、一気に1ドル101円台をつけました。この日のNY市場は感謝祭の休日と週末に挟まれた平日で、しかも東京市場はすでに休みに入っている。必然的に参加者が少なく、出来高も小さい。大きく相場を動かすにはうってつけの日です。おそらくは投機筋が狙い済まして仕掛けた円高なのでしょう。

○問題は、なぜ彼らが円高になると読んだか、です。タイミングから考えて、おそらく先の18兆円の経済再生対策が引き金ではないでしょうか。2通りの可能性があります。
(1)18兆円の経済対策が出た→これで日本の景気回復は本物だ→円を買え!
(2)18兆円の経済対策が出た→財政赤字の拡大は必至→日本の長期金利は上がる→円を買え!

○(1)のケースであればあまり心配は要りません。もしも円高の結果、企業業績が悪化して景気が冷え込むようなことがあれば、その場合、投資家は円を買う理由自体がなくなってしまいます。ゆえに円高が進むとしても、景気を冷やさない程度でとどまるはずです。(2)のケースが問題です。昨年末に、大蔵省が資金運用部による国債買い入れの中止を宣言したとき、長期金利は一気に2%を超え、円高も進みました。今年も同じようなことが起きると読まれているのかもしれません。

○どっちもありそうな感じですが、(2)ではないことを祈りましょう。


<11月29日>(月)

○本日発売の週刊朝日を購入。目指す記事は、「マスコミ一番乗り、全選挙区当落予想、西日本編」だ。開けてみると、おお、やるじゃないか。かんべえの畏友、大谷信盛くん(大阪9区・民主党・新人・36歳)には、6人もいる候補者の中でただひとり丸印がついていた。

○そのまますぐ大谷君の携帯に電話。
「週刊朝日見たよ。すごいすごい」
「どうなってます? 大阪は明日発売なんですよ」
「森田実が丸印をつけてるよ。福岡政行は白三角だけど」
「西田さん(大阪9区の現職)はどうなってます?」
「黒三角。西村(大阪17区)発言のあおりで、大阪の自由党議員は不利になるらしい」
(注:◎有利、○やや有利、△当落線上、▲不利だが当選の可能性も)

○大谷君は半信半疑のようだ。無理もない。1996年前の選挙で、彼は高槻市から出馬する準備をしていた。選挙の1ヶ月前、民主党内の候補者調整の余波を受け、隣の茨木市へお国替えを余儀なくされた。結果、3万数千票を獲得したが、小選挙区でも惜敗率でも届かなかった。あれからもう3年。地盤も看板もカバンもない彼は、ひたすら辻説法とボランティア活動の日々だった。若い頃から少なかった髪の毛は、ほとんどなくなってしまった。

○大谷君のような候補者は、週刊誌の選挙予想で「独自の戦い」と書かれてしまったら、その瞬間に選挙戦は終わってしまう。負けると分かっている候補者に、肩入れする物好きはいないからだ。逆に丸印がつけば、全然知らない人でも名前を覚えてくれる。どこの選挙区にも、選挙になると血が騒ぐお祭り好きな人たちがいて、この手の予測記事はしっかりチェックしているものだ。組織のない候補者には、そういう野次馬的な応援が欠かせない。ちょうど1993年の選挙のときの日本新党のように。

○永田町では解散風が吹いている。思ったより自自公連立政権は人気がなく、民主党には有利な風が吹いているようだ。小選挙区制では、予想以上にドラスチックな結果が出る。この予測記事を見たら、小渕さんも解散・総選挙に打って出ることをためらうのではないだろうか。うーん、それにしてもこの記事は衝撃的だ。かんべえ、驚いています。







編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki