●かんべえの不規則発言



2014年6月







<6月1日>(日)

○どんなに準備をしていても、どんなに環境に恵まれていても、あと一歩がどうしても届かない、ということがある。今日のダービーでいえば、蛯名騎手がそうであった。皐月賞馬のイスラボニータは一番人気。「優馬」の『オノ友取材メモ』には、「スタッフがやれるだけのことはやってくれた。あとは俺の仕事」との本人コメントが載っている。小野智美記者は、「それも簡単に勝てると言えるレースではないことをよく知っているからこそ・・・」と続けているが、まさに人事を尽くして天命を待つ、の心境であったものと拝察する。

○それでもイスラボニータは、横山典弘騎手騎乗のワンアンドオンリーに4分の3馬身差届かなかった。「ダービージョッキー」の称号は、またも彼の横をすり抜けていった。「枠順が逆だったら・・・」とこぼしたそうである。A番とL番。ダービーは内枠が有利なんだよなあ。「ダービージョッキーの横山騎手へのインタビューです!」というアナウンサーの声を、会場内でどんな気持ちで聞いていたのか。

○失意の蛯名騎手は、続く11Rの富嶽賞では2番人気のノウレッジに騎乗し、ゲートの中で馬が飛び跳ねて大幅に出遅れてしまう。競馬ファンの間では、「蛯名のヤツ、しゃーねーなー」という声があちこちで漏れたはずである(中山競馬場に居たワシの周囲でもそうであった)。結果は7着の凡走。まあ、仕方ありませんわなあ。

○ところが蛯名騎手、この日の最終12レース、目黒記念(G2)ではいい仕事を見せてくれた。8番人気のMマイネルメダリストで、見事に勝ってしまったのである。なんと単勝1620円である。「このまま手ぶらでは帰れない」といった心意気だろうか。ちなみにこの日は、第1レースと第5レースも勝っていて、実に3勝を挙げている。調子は良かったんですよねえ(後記=2年前にも、ダービー2位で目黒記念を勝っていたんだねえ。蛯名騎手)。

○やはり人生、こんな風でなければなりません。あきらめてしまえば、その時点ですべてが終わってしまう。あきらめなければ、最後までわからない。人生は浮いたり沈んだり。今年がダメなら来年があるさ。そして来年を待つためには、今のこの瞬間を無駄にしてはいけないのであります。蛯名騎手、きっといいことがありますよ。

○かく言う不肖かんべえも、本日はボロボロに負けていて、ひょっとしたらと思って目黒記念をマイネルメダリストから流し(たまたまステゴ産駒だったから買ったんですけどね)、それがラブイズブーシェというド薄目に引っかかってくれたんで、万馬券となって一気にプラスゾーンに戻ってくれたのであります。いやはや、最後まであきらめてはいけないのであります。蛯名騎手、どうもありがとう!

○そういえばたぶん今宵の「軍師官兵衛」も、有岡城が陥落して、そろそろ官兵衛どのが救出されるはず。人生、くさったら負けでござる。


<6月3日>(火)

○最近耳にした、裏の取れない怪しげな噂のご紹介。

●とうとう法人減税を認めた麻生財務相、最近のお気に入りのネタは、「所得税なんてねえ、高額納税者は2億円で頭打ちにすりゃあいいのさ。そうすりゃあ、世界中の金持ちが日本に集まってくる」――心意気は大いに壮とするも、周囲の財務官僚たちが「それだけは止めてください〜」と必死で止めている。が、しかし。2億円以上の所得税を納めているのは、この国にはわずか130人程度しかいないので、実はやっぱりいい案なのかもしれない。

――願いあげましてはゴーンさんなり、柳井さんなり、三木谷さんなり・・・てなことで、思ったよりも少ないのかもしれません。でも、自分がそんな高額納税者になったら、そうならないようにあらゆる手段を尽くすだろうから、結果的にそうなるのかもね。

●北朝鮮の体制はトップが孤独である。金正恩第一書記も、父の金正日がそうだったように、だれにも相談せずに日本との拉致問題再調査を決めた。もちろん、周囲にいる知日派の側近たちの意見は聞いたものと思われる。少なくともパククネ大統領よりは、周囲の意見をちゃんと聞く指導者であるらしい。

――パククネ大統領の反日は、「屈折した愛情表現」などではなく筋金入りなのであって、青瓦台では日本専門家など全く用無しなのだそうです。明日の統一地方選挙で与党がボロ負けして、早くレイムダックになってくれ〜と切に祈りたくなります。ちなみに明日は、沈没船の事故からちょうど7週間目で49日です。合掌。

●6月6日のノルマンディ上陸作戦の70周年記念式典では、誰がプーチン大統領の隣に座るかが早くも問題になっている。決めるのはホストであるフランス政府だが、オバマ米大統領、エリザベス英女王ってわけにはいかんですよねえ。やっぱりここは、メルケル独首相にお願いするしかありますまい。

――それにしても、ドイツの指導者がなぜおめおめとノルマンディ上陸作戦の記念式典に出て来られるのか不思議です。もちろん日本の安倍首相は呼ばれてませんよ。6月4 〜5日がブラッセルでのG7サミットなんですが、その直後にロシアを招いたG7+1が成立するというのも面白いものだと思います。つくづくヨーロッパは深い。

●ここへきて急速に進んでいるJA改革について。TPP交渉のせいかと思ったら、実は石破農水大臣の時代に、「JA改革はもう先送りできない」ことが既に歴代大臣の申し送り事項になっていた。それが今日まで伸びてしまったのは、途中で政権交代があったからでありました。

――やっぱり諸悪の根源は小沢一郎だと・・・・(以下同文)。


<6月4日>(水)

○昨日の「裏の取れない話」シリーズが好評だったようなので、もうちょっと続けてみます。天安門事件25周年を記念して、中国特集で行きましょう。


●中国の権力者には、どの程度真実の情報が上がっているのか。例えば2005年の反日デモの実態は、胡錦濤総書記の元へは届いていなかった。だってテレビでもやってなかったし。

――官僚機構というものは、いつしか上の気に入るような情報だけを上げるようになっていくものです。ところで日本政府はどうなんでしょう?

●24日夜に東シナ海の公海上で、自衛隊機と中国軍機が30メートル地点まで接近した事件。お蔭で自衛隊は中国軍の性能の察しがついて、ホクホク顔になっているとのこと。

――「ここはわが国の防空識別圏ぞ!」と言いたくて近寄ってきたらしいのですが、その辺の察知能力こそが互いに秘する根幹であるわけでして。

●シャングリラ会議に出てきた人民解放軍の参謀副総長、予定原稿を読んでいるうちはよかったが、アドリブで日米を批判し始めたら途端に支離滅裂になってしまい、大いに評判を下げたとのこと。

――そもそもディベートやプレゼンで物事を決めようという文化が、中国共産党には決定的に欠けているのですから、そりゃあ仕方がない。

●習近平はどの程度、権力を掌握しているかという評価になると、欧米の専門家はポジティブであるけれども、日本ではネガティブな意見が優勢である。

――結局は、直接的な危機感を感じる度合いで答えが決まってくるのかもしれません。


<6月5日>(木)

○今宵、東京富山県人連合会(ニューオータニ)に出てみたら、ビックリするようなド派手なパーティーであった。富山の人がやることだけに、土産物も大きくて重い。が、この機会に、高校サッカー決勝戦、富山第一高校の優勝シーンを見られたのは儲けものであった。文字通り、2−0からの大逆転劇であった。ついでに大塚監督と名刺交換。「今年はそんなに期待しないでください」と言っていたのが、ますます富山県人らしくて好感度大であった。

○ところがその場を早々に抜け出してNHKへ。最近お呼びが多いNHKジャーナルに出演。ブリュッセルからの安倍首相の記者会見が延びて、少し遅れて番組開始である。本日のテーマはもちろんG7サミットについて。

○外務省のHPでは、既に首脳宣言の仮訳がもうアップされている。当然のことながら、こういう文章は各国の思惑が入り乱れて作られている。全部で19のパラグラフがあって、ウクライナ〜シリア〜リビア〜マリ及び中央アフリカ、〜イラン〜北朝鮮〜中東和平〜アフガニスタンと並び、16番目に問題の「海洋航行及び飛行」部分が入っている。これは外務省グッジョブ!だと思います。


16.我々は,普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認する。我々は,国際法及び国際水域における管轄権に関して国際的に認められた原則と整合する形で,海賊,その他の海上犯罪に立ち向かうための国際的な協力に引き続き関与する。我々は,東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念している。我々は,威嚇,強制又は力により領土又は海洋に関する権利を主張するためのいかなる者によるいかなる一方的な試みにも反対する。我々は,全ての当事者に対し,領土又は海洋に関する権利を国際法に従って明確にし,また主張することを求める。我々は,法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含め,国際法に従って,紛争の平和的解決を追求する紛争当事者の権利を支持する。我々はまた,信頼醸成措置を支持する。我々は,国際法並びに国際民間航空機関(ICAO)の基準及び慣行に基づく,航行及び上空飛行の自由と併せ民間航空交通の効果的な管理の重要性についても強調する。


○練りに練った文章なのでありましょう。中国とは一言も入っていないけど、だれが読んでも中国に対する警告である。そして「ウクライナで起きたことは、世界のどの地域でも起きてはいけない」という正論を援用しつつ、「国際法に従うこと」の重要性を強調している。ついでに、「紛争の平和的解決を追求する紛争当事者の権利を支持する」というのは、フィリピン政府に対するエール交換でありましょう。

○他方、明日にはプーチン大統領がフランスへやってきて、「ノルマンディ上陸作戦70周年記念式典」に参加。なんのことはない、6月4〜6日の間に「G7+1」の形ができるという算段である。ヨーロッパのやることはしみじみ深い。各国がロシア批判を展開する中で、日本が「まあまあ、ここはもう少し落ち着いて」とやったのは、時宜を得た役回りだったのではないでしょうか。ウクライナ移民が大勢いるアメリカ、カナダ、イギリスあたりは、とりあえず口先だけでも厳しいことを言わなきゃいけませんものね。

○G7としては、ロシアにはイラン核開発やシリア問題などで汗をかいてもらわないと困るのです。だから「二度とウチ(G7)の敷居はまたがせない」などと言ってはいかんのです。しばらくは、G7なんだかG8なんだかわからないような状態が続くのではないでしょうか。ちなみにサミットは来年はドイツ、再来年は日本が議長国となります。


<6月6日>(金)

○大阪に行ったら晴れていた。が、外へ出ると空気が「もわ〜っ」。日本列島は既に梅雨入りモードである。案の定、仕事を済ませて新幹線で帰る途中、静岡県から雨に突入する。東京駅についたら、やっぱり大雨。しょうがないねえ。

○新幹線車中で気づいたが、今週書いた原稿がもうアップされていた。「水面下で大詰めを迎えたTPP交渉」。これがバレると、さる筋から、「nippon.comじゃなくて、Discuss.Japanで書いてくださいよ!」と怒られそうである。すんません。

○が、その前に原稿を滞納しているところがもう1か所あったことを思い出した。ああっ、今週末もまた宿題が・・・。

○このところずっとこんな調子で、忙しいと言えば忙しいのだけど、こんなにマイペースで仕事をしているのですから、文句を言ったら罰が当たります。とりあえず今週末は、大阪駅で買ってきた蓬莱の豚まんが楽しみであります。


<6月8日>(日)

○内閣府が毎週発表している「消費税率引き上げ後の消費動向等について」で、先週金曜日に「5月第5週」版が出ている。ちょうど増税から2か月後にあたることもあって、概要をメモしておこう。


自動車販売は、5月は前年比で約1%減となり、4月からマイナス幅縮小。ただし、足下の受注は弱いので、先行きは慎重にみる必要がある。

(反動減による4月の落ち込みは、3月までの受注残でカバーしてきたのだが、それはさすがに使い切った模様。ただし6月以降は新車の投入もあり、ボーナスにも期待という構えである)


●主要5品目の家電販売は、5月第5週では、気温上昇を背景にエアコンなどの売れ行きが好調だったこともあり、前年比1%程度増と、前年比プラスに転じた。

(いちばん駆け込み需要が大きそうだった家電販売で、5月に前年比プラスとは早い。ただしお天気要因があるらしく、6月に入ってからの天候不良が心配。ちなみに主要5品目とは、テレビ、白物、エアコン、PC、携帯電話であります。


飲食料品は、5月第5週では、前年比約4%減と先週とほぼ変わらず。一部には、反動減から反転した様子がみてとれる、との声も聞かれる。

(人間、「食い溜め」はできませんから、ここはもっとも反動減が出にくい。たばこやビールを買いだめした人も、さすがに使い切ったというところではないでしょうか)


サービス消費は、旅行は、5月以降は堅調に推移するものとみられる。外食は、5月第5週も底堅く推移している。

(旅行で5月が悪かったのは、大型連休の曜日の配列が悪かったから。夏場の旅行の問い合わせは多いようです。外食は値上げしたにもかかわらず、どこもにぎわっているように見えます)


百貨店販売は高額品中心に前年比減少。百貨店の4月の売上高は、既存店ベースで前年比12%の減少となり、前回97年4月の前年比14%よりも減少幅はわずかながら小さくなった。

(「売上全体の回復ペースは、当初想定していたよりも早い印象がある」「駆け込み需要が大きかったラグジュアリー品も回復傾向にある」など、百貨店業界から強気のコメントが寄せられています)


○さらに家計調査からはこんなデータが紹介されている。


●反動減の想定と実際の大きさの比較

想定より大きい    24%
想定内/想定どおり 18%
想定より小さい    58%


○確かにちょっと拍子抜けするくらいの感じではないかと思います。


<6月9日>(月)

○某所で飲み会。時節柄、今週から始まるワールドカップに関する話題が多くなった。

○「どこが勝つか?」という問いについては、ブラジルとスペインが人気を二分していた。ブラジルは開催国だから順当だし、スペインは昨日のNHK番組が取り上げていた。私はドイツが面白いんじゃないかと思っているけどね。ちなみにFIFAの最新ランキングはこちらをご参照。TOP10は以下のようになっている。

1 Spain 1485
2 Germany 1300
3 Brazil 1242
4 Portugal 1189
5 Argentina 1175
6 Switzerland 1149
7 Uruguay 1147
8 Colombia 1137
9 Italy 1104
10 England 1090

○フランス(17位)やオランダ(15位)が10以内に居ないとか、(日本と同じリーグの)コロンビアが意外と強いとか、アフリカ勢が入っていないとか、ちょっと意外な感じがあります。わがザックジャパンは46位と、あんまり威張れたものではござりませぬ。まあ、アジア枠ははっきり言って甘いよね。

○サッカー通のH氏が嘆いて曰く。ザックジャパンのメンバーは怪我人だらけではないか。実績重視で選ぶとどうしてもそうなってしまう。でも、実戦になれば怪我もあるし、不調もあるし、イエローカードももらっちゃう。「ブラジルは最初から7試合戦うつもりで準備している。日本はせいぜい4試合までしか考えていないのではないか」とのこと。ぎくっ。言われてみれば、確かに守備陣が手薄かなあ。

○てな具合に、今週になったら、急にサッカーの話題が増えてきた。今週のThe Economist誌が全力でW杯を取り上げている。カバーストーリーは"Beautiful game, ugly business"とあって、結構思い切ったことを書いている。ひとつは、2022年の開催地をカタールに決めたのは裏金が動いていたからで、「そもそも真夏のアラブでW杯を開催するなんて、誰が言い出したんだ」とお怒りである。FIFAも無能な幹部が動かしているし、腐敗しているし、時代遅れでどうにもならん、とのこと。

○そもそもサッカーは、言われているほどグローバル化されていない。そもそも米、中、印という3大国を制覇できていないではないか。アメリカはサッカーをプレーするが、誰も見ていない。米印はサッカーを見てはいるが、プレーしていない。中印はブラジル大会には出場しない。

○なんでもFIFAというのはスイスのNPOというステータスなんだそうで、ガバナンスが効いていない(つまり、怖いものがないもない)。こりゃもう、スイス政府が税の優遇措置を取り消すぞと脅して、改革を迫るくらいしかないのではないか。例えば開催場所の決定方式も、「優勝国に、8年後の自国開催の権利を与える。その権利は他国に競売しても可」としてはどうか。なるほど、面白いかもね。

○サッカーを通して世界経済を考える、なんてのも当溜池通信的にはツボでありまする。当分、そういう話題が多くなることと思います。


<6月10日>(火)

○こういうものは、きっとどこかに書いてあるんでしょうけど、自分用にメモしておきます。

●6月15日(日) 午前10:00〜 コートジボワール対日本 NHK総合

●6月20日(金) 午前7:00〜 日本対ギリシャ 日本テレビ系&NHK BS1

●6月25日(水) 午前5:00〜 日本対コロンビア テレビ朝日系

○来週の日曜は町内会のドブさらいがあるんですけどねえ。弱ったなあ。

○で、この3か国に関する理屈付けです。

●コートジボワールは、アフリカにおける敗者復活組。トラブルは内戦。昔はねえ、アビジャンには必ず商社の事務所があったものです。今は3社だけですって?

●ギリシャは、ヨーロッパにおける敗者復活組。トラブルは財政問題。昔はねえ、ピレウスには必ず商社の事務所があったものです。あのころは海運大国だったんですよね。

●コロンビアは、南米における敗者復活組。トラブルは麻薬とマフィアとの戦い。昔はねえ、ボゴタには必ず商社の事務所があったものです。今はかなり良くなって、怖がっていると怒られます。

○それを言ったら、日本もまたアジアにおける敗者復活組かもしれません。トラブルはデフレと震災。最近になってようやく出口が見えてきました。グループCというのは、そういう国の組み合わせなんですね。さて、どことどこが勝ち抜くことができるんでしょうか。がんばりましょう。


<6月11日>(水)

○最近、巷で良く繰り返される会話。

「しかしよく降りますな。明日も雨なんですか。こんなに水分が余っているというのは、何か使い道はないんですかねえ。エルニーニョ現象の年は、梅雨入りが早くて明けるのも遅いんだとか。それでもって冷夏になると。電力会社はその方がいいかもしれませんが、景気には今ひとつですなあ。ところで、エルニーニョと言えば、○○さんの得意ネタですから、ひとつご高説をうかがわねばなりませんな。というより早く、そろそろテレビでやってくれませんかなあ」

「今日で虎ノ門ヒルズが開業ですか。あそこの東京アンダーズってホテルは、初めて聞く名前ですが、ハイアットの新しいブランドなんだそうで。えらく高いらしいですな。1泊最低5万円で、スイートは20万円とか。賃貸マンションもあるんですって。2DKで月に150万円だとか。いったい誰がそんなところを使うんでしょうなあ。外資系のトップくらいですかねえ」

「今週末からW杯ですよねえ。まあ、今の時点はどうだっていいんですけれども、これで日曜日の午前にザック・ジャパンがコートジボワールに勝とうものなら、一気に世の中の雰囲気が変わっちゃうんでしょうなあ。もっとも負けた日には、目も当てられませんけど。コートジボワールには負けたけど、ギリシャとコロンビアには勝てる、ってなことはないでしょうからねえ」

「第2試合のギリシャ戦は金曜日の午前7時からなんでしょう? 今から金曜の午前は半休をくれっていう部下が多くて困ってますよ。4年前の南ア大会や、8年前のドイツ大会ではむちゃくちゃ朝が早かったから、午前3時に起きて試合を見て、それから会社に来て仕事ができたんですよねえ。辛かったけど。え?伊藤忠さんは朝が早いから、金曜日は朝7時に会社に集まって皆でテレビを見るんですって?結構ですなあ」(←嘘です)

「それにしても、ブラジルはW杯の準備は間に合ったんですかねえ。金曜日の午前5時にはブラジル対クロアチア戦が始まるそうですが、それでブラジルが負けたらどうなるんでしょ。あそこ、よく初戦は落としますものね。なにせ、最初から7試合戦うつもりでいる人たちですから。クロアチアが勝ったりしたら、その場で暴動が起きるんじゃないですか。え?審判は3人とも日本人ですって?そりゃあ現地の日系人がどうなるかが心配だ」

○こんな風に、今週になって急にW杯ネタが増えておりますが、不肖かんべえは普段はサッカーに詳しいわけじゃないんです。4年に1度、この時期になると突発的に気になって仕方がなくなるんです。ということで、先週末から急にそわそわし始めまして、とりあえず産経の「正論」に寄稿してみたりしております。乞うご参照


<6月13日>(金)

○とうとう始まっちゃいました。今朝のブラジル対クロアチア戦、ブラジルとしては「逆転」で「ネイマールが2発」で「得失点差で+2」ですから、こんなにいい勝ち方はない、というくらいでありましょう。ただしこれから先の長い戦いを考えると、「良過ぎる出だし」がかならずしも有利とは限らない。「七番勝負は2局目がカギ」との金言もある。最初から7試合を戦う(決勝戦まで行く)つもりのブラジルですから、その辺は百も承知のことだとは思いますが。

○3人の日本人審判は、いい仕事をしていたと思います。西村主審がPKを与えたシーンでは、「あれはブラジル側のシミュレーションではないか」との指摘があり、ネット上では祭りになっているようですが、そりゃまあのシーンに限って言えば、そうであったかもしれません。人間がやることですから、誤審はいつだってあり得ます。だが西村主審は、試合全体を通しでどちらの側にも肩入れしていなかったと思います。大事なのはそこですよね。

○「日本人アスリートは薬物を使わない」というのが、無理のない定評であるように、「日本人審判は買収できない」というのも、ごく自然な評価であると思います。あくまで一般論ですが、日本人は義理人情で転ぶことはあっても、現ナマで転んだりはしないわけであります。そこんとこよろしく。


<6月14日>(土)

○いよいよ明日は大事な決戦。FIFA公式サイトで、日本のページを開けてみたところ、そこには全世界のサッカーファンから寄せられた以下のような暖かいメッセージがありました。


●14/06/2014 at 12:21 rainingbow (AUT)

Good luck Japan, I hope you can win against Cote d 'Ivore but that'll be tough. I think you can beat Greece I think you can finish 2nd in Group C good luck!

●13/06/2014 at 09:33 X-hypno (GRE)

Good luck Japan for your first match

●13/06/2014 at 05:20 iran1352 (ARM)

Japan and iran brother

●12/06/2014 at 19:24 muthu.r (USA)

Samurais!!! Make us happy and proud on July 13, 2014.

●11/06/2014 at 11:21 Yesith_Devon (SRI)

Go For The Gold <3The Hope of Asia

●11/06/2014 at 08:35 Dehkord (IRN)

go japan

●11/06/2014 at 07:22 Treeforest (NZL)

Go Shinji KAGAWA and Yoichiro KAKITANI!

●11/06/2014 at 02:58 Japan6561 (USA)

Japan!

●10/06/2014 at 14:02 madtuna (JPN)

The world cup is head hunting games. The game started with Hasebe in Spain. Protect Honda @ 1st game and protect Kagawa @ 2nd game. They do not like Ookubo and Okazai either.

●07/06/2014 at 07:59 ATA.UNITED (IRN)

the hope of Asia in this world cup...japan is the only Asian team in the world cup can go to next stage...go japan...go...

●06/06/2014 at 08:05 SatanClark (CHN)

Samurai Blue Fightting! Glory of Asia!

●06/06/2014 at 02:36 Ziyos_Altea (JPN)

go japan!

●05/06/2014 at 16:58 deporcali17 (COL)

Love the way Japan plays, Lets hope Colombia and Japan make it out of the group :)

●05/06/2014 at 14:26 Arvin.mn (IRN)

Come on Japan ! Make Asia proud ;) <3

●05/06/2014 at 09:50 Irwan90 (IDN)

go go japan, go go honda!!!

●04/06/2014 at 12:32 eklipser (PHI)

wow what a game against CR.

●03/06/2014 at 22:53 Hammerfan81 (GBR)

Good luck Japan. Ive always enjoyed your enthusiastic passing game and positive attitude. The problem will be leaving yourselves open at the back against counter attacking teams and a weakness at set pieces. But still in with a chance of the knockouts at least.

●02/06/2014 at 15:34 cool.dude143 (NEP)

i want japan to enter from this group.. go go japan... samurai on the way :) :)


○特にアジアで出場してない国(含む中国)の人たちからの応援のありがたさが身に沁みます。われわれは5大会連続で、自国チームを応援できる幸せな国民なのですね。さあ、明日は打倒、コートジボワール!


<6月15日>(日)

○ううむ、これでは勝てない。前半はともかく、後半はまるで圧倒されていたように感じましたが、数字にもハッキリと表れております。

  得点 支配率 シュート 枠内 CK ファール PK
コートジボワール 58% 19 12
日本 42% 13



○やはり暑さと湿気で体力が失われていたのでしょうか。体格で劣る日本勢は、スピードでも負けていたような気がします。特に後半、1点リードされてからの動きが急に鈍くなったように見えたのが残念でした。ああいうときに、仲間に檄を飛ばしてくれる中山ゴンみたいな選手が、今はおらんのですなあ。

○ボー然としながら、柏駅南口のボンベイへ行って、汗をかきながら激辛のカシミールカレーを食べました。どこかでパブリック・ビューイングがあったと見えて、店内はサムライブルーの応援団がいっぱい来てました。なんとなく、全員が「ああ〜負けちゃった〜」という意識を共有していたんじゃないでしょうか。今日は好天、空は抜けるように青かったです。


<6月16日>(月)

○今日は一日、どこへ行っても「負けちゃったねえええええ」で会話が始まってしまう。昨日の敗北感はまだ消え失せてはいない。小さい頃から親や教師に言われまくった自分の弱点がさらけ出されてしまい、自分でも「こんなことではイケナイ。何とかしなければ」と思いつつ、最も望んでいない結果を得てしまったようなものなので、限りなく気分は自己否定である。この敗戦は尾を引きますなあ。

○そんな中で、せめてもの気休めを言うとしたらどんな言葉があるのだろうか。以下、思いつくままに列記してみます。


●コートジボワールの方が、背負っているものが重かった。

――なにしろ、少し前まで国土の南と北で内戦をやっていた国ですから。そんな中で、若くしてフランスに移住したドログバは、フランス代表になる機会もあったのに、敢えてナショナルチームとして出ることを望んで幾星霜。サッカーチームは、国家統合の象徴なんです。

せめて1点取っただけでも良かった。ゼロと1点は大違いである。

――本田のゴールで一時的にぬか喜びしたことは間違いありませんが、仮にこれが「1対ゼロ」の敗戦であれば、そっちの方がはるかに手傷が深かったはず。「初得点」はいいものであります。

ギリシャは情実が通じる相手であると考えられる。

――日銀にギリシャ国債を100億ドルくらい買ってもらうからさあ、少しお手柔らかにやってくれないかなあ・・・・。いかん、人はあまりに不遇な状態に陥ると、「取引」をしたくなるらしいです。

阪神タイガースはここへきて勝っている。

――確かにいつもは弱い交流戦で、わがタイガースが健闘していることは間違いない。保険がかかっていてよかった。でも、カープファンの皆さん、ごめんなさい。


○やはり何を言ってもダメみたいです。勝利がすべてを癒してくれるはずですが、それもかな〜り難しいことではないかと思います。対ギリシャ戦が行われる金曜日の朝までが長いなあ。


<6月17日>(火)

○昨日の続きです。日本がギリシャに勝てるかもしれない7つの理由を考えてみました。


@過去に1回だけ対戦しており(2005年のコンフェデレーションズカップ)、そのときは日本が1−0で勝った。

A向こうは3−0でコロンビアに負け、こちらは2−1でコートジボワールに負けた。点差からいえば、日本に分がある。

B少なくとも1点は取った、という事実は大きい。

C海外のブックメーカーも日本が有利だと言っている。

Dわざわざブラジルまで出かけていく応援団の数はたぶん日本の方が多い。しかもお掃除までしてくれる。

EスペインとポルトガルはFIFAランキング1位と4位なのに、ともに大差で負けている。やはり債務国のPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)に明日はない。

F財政赤字の絶対額はギリシャよりも日本の方が多いけれども、スペインとポルトガルに勝ったのは、それぞれオランダとドイツという債権国である。世界最大の債権国である日本は、W杯では無敵であるはずだ?


○自分でも書きながら、ちょっと虚しくなるところがあります。先日、スーパーのW杯応援グッズが完全に売れ残りモードになっているのを見て、ちょっと寒々しいものを感じました。あれが全部無駄になると考えると、とっても切ないものがありますねえ。ああ、情けない。

○ここでふと、『オールザットジャズ』という古い映画を思い出しました。この映画の中には、同じボブ・フォッシー監督の『レニー・ブルース』という劇中映画が登場し、ここで「嘆きの5段階」というものが登場します。すなわち、人間はとても不都合な真実(例えば、自分はもうじき死ぬ、ということ)に直面すると、以下の5つの段階を経て最後は「受容」に至るのだそうです。


@否認(Denaial & Isolation):日本がコートジボワールに負けるなんて!そんなことあるはずがない!悪い夢を見ているのかもしれない。誰か、これは嘘だと言ってくれ。

A怒り(Anger):香川はいったい何をしてたんだ? 本田も後半はほとんどボールに触れていないぞ! 長友はどこを走ってたんだ? いや、これはやはりザッケローニ監督の作戦ミスだ。そうだ、そうに違いない!

B取引(Bargenning):待てまて、落ち着け。次はギリシャ戦だ。ギリシャに勝って、コロンビアと引き分ければ1勝1敗1分けで可能性が出てくる。そうすれば2位通過で6月30日にD組1位と対戦か。相手はイタリアかもしれないぞ。

C鬱状態(Depression):ああっ、でもそんなの無理な相談だよな。たとえギリシャに勝てたにしても、コロンビアには負けちゃうだろうな。そもそも、あんな負け方をしてしまってから、いくら考えても手遅れなんだ。

D受容(Acceptance):考えてみれば、日本がそんなに強いはずがないんだ。アジア枠はやっぱり緩いんだ。日本は初出場から5回連続で出場しているけど、ああ、日本チームがW杯に出て応援できることに感謝しよう!


○阪神ファンとして、あるいは競馬ファンとして、上記のような心理の変化は非常に慣れ親しんだものがあります。なにしろ、しょっちゅうだからなあ。つくづく心静かに、金曜日の朝を待ちたいものであります。


<6月18日>(水)

○今日は信濃毎日セミナーの講師で長野市へ。長野新幹線で東京駅から1時間半である。この長野新幹線が、来春からは「北陸新幹線(長野経由)」となり、金沢まで延伸することになる。おそらく長野市からは、富山市までが40分、金沢市までが1時間といったところだろう。これは結構、大変な変化であるかもしれない。

○長野の皆さん、その節はぜひ、富山へ行って回転寿司をお試しください。恐ろしくレベルが高くて、しかも安いです、などと宣伝する。何しろ富山というのは、魚と米と水にはまことに贅沢な県でありまして、その日の朝に水揚げした「朝とれ」じゃないとイヤ、みたいなところがありますので。

○もっともその節は、富山県民も善光寺にお参りする必要があるだろう。うーん、ただしどっちも、泊まってもらえないような気がする。富山市の客は金沢市へ、長野市の客は軽井沢あたりへ流れてしまいそうだ。観光産業というのは難しいものなのです。


<6月19日>(木)

○明日の午前7時になれば、とうとう「負けられない戦い」が始まることになる。「負けられない戦い」ではあるけれども、負けてしまうかもしれない。勝利と敗北、成功と失敗の差は紙一重なのだ。そのことは、今朝のスペイン対チリ戦を見ていてもよくわかる。

○前半にあれよあれよという間にチリが2点取ってしまい、前回王者のスペインは哀れ予選落ちがほぼ決定である。まるで2002年大会のフランスのようだ。そうなると後半戦は、「せめてスペインが一太刀は浴びせるだろう」と思ってみているのだが、呆れるくらいに点が入らない。何かに魅入られてしまったかのように、ことごとくシュートが外れてしまうのだ。

昨日のブラジル対メキシコ戦もそうだった。天下のブラジル様の猛攻を、メキシコのキーパーが鬼神のごとくすべて叩き落としてしまうのだ。するとブラジル様は、ますます本気になって多彩な攻めを繰り出していく。それでも点が入らない。0−0の試合がこんなに面白いとは。

○などと、毎朝早起きして素晴らしく面白い真剣なゲームを見させてもらっている。日本は5大会連続で出場している「W杯ファミリー」の一員である。多くの選手が欧州リーグに所属していて、「お馴染みの顔ぶれ」になっている。しみじみ、えらくなったものだ。だからといって、「今年は勝てる」とは限らない。そんな生易しい戦いではないのである。

○それにしてもアジア枠(日・韓・豪・イラン)は、まだ1勝もしていない。明日の日本対ギリシャ戦は、アジア初の1勝をもぎ取りたいものである。


<6月20日>(金)

○今朝の「負けられない戦い」は、確かに負けなかったけれども、その次に残ったのは「勝たねばならない戦い」である。そして、来週25日に予定されているコロンビアとの「勝たねばならない戦い」においては、勝つのは至難の業となる。日本がコロンビアに勝って、ギリシャがコートジボワールに勝ってくれて、なおかつ日本が得失点差で頭ハネして2位につける、という紙のように薄い確率に賭けるしかない。

○仮にその薄い賭けに成功した場合、トーナメント初戦で当たる相手はグループDの首位であるから、非常に高い確率でイタリアであろう。ザッケローニ監督にとっては、万感胸に迫る戦いとなるだろうが、果たして・・・。

○全く話は変わるのだが、日本のODAについて、意外と知られていない事実をご紹介しておこう。

○「日本のODAはピーク時の半額以下になった」とはよく言われるところである。事実、政府全体のODA予算は、1997年度の1兆1687億円が最高で、2014年度は5502億円と半減している。ところがこれは、一般会計当初予算の話であって、事業予算の全体額ということになると全く違った景色が見えてくる。

○すなわち、2013年度のODA事業予算総額には、一般会計5573億円と特別会計293億円が拠出されている。この範囲内から、無償協力1642億円、技術協力3259億円といった「あげちゃう」お金が支出されることになる。ところがですな、日本の援助の中心となっているのは「円借款」(9236億円)でありまして、これらは財政投融資資金などでファイナンスされている。結果として、ODAの事業予算の全体額は1兆6902億円にも達するのです。すなわち、「貸してあげる」お金を合わせると、結構巨大な金額になるのです。

○しかも最近では、「昔貸してあげたお金が返ってくる分」がなんと年間6400億円もあるんだとか。最近の途上国は、中国を筆頭に意外と真面目に返済してくれるし、貸し倒れの比率も以前に比べれば下がっているようなのです。

○そうだとすると気になるのは、「対中円借款(総額約3兆円と言われる)のうち、どの程度が返済済みなのか」「金利を付けたトータルの返済額はどれくらいになるのか」「残っているのはいくらぐらいなのか」といったところです。日中関係を考える上で、非常に重要なファクターだと思うのですが、これらのデータは簡単には見当たらないのですねえ。

○ODA白書を隅から隅まで読むとか、毎年のデータを突き合わせるなどすればわかるのかもしれません。ちょっと不思議な感じがします。


<6月21日>(土)

○昨日の疑問につき、親切な読者から下記のご指摘がありました。


お役に立つかどうかわかりませんが、JICAの年次報告書資料編に国別の円借款残高が掲載されています。中国の残高は2012年度末は16,280億円となっています(2008年度末は18,602億円ありました)。

因みに、この残高は累積実行額と累積回収額の差であり、会計上、JICAのバランスシートにのってくる数字とは異なるそうです(同じ資料には累計承諾額は載っていますが、累計実行額や累積回収額は記載されていません)。

広く知られています通り、中国への円借款の新規案件承諾は2007年度までで終了しましたが、今回の資料をみると2012年度にも過去承諾案件の実行はまだなされているようです。


○筆者の疑問に対する答えは、「中国に対する累積承諾額は約3.3兆円。残高は約1.6兆円」ということになります。ざっくり半分は返し終わっている計算になりますね。年間の回収額は1000億円くらいなので、完済は相当先になるでしょうけれども。ご指摘、どうもありがとうございました。


<6月22日>(日)

○日本サッカーが苦戦するにしたがって、この国全体が阪神ファン化しているのではないだろうか。すなわち、「コロンビアに勝って決勝トーナメント進出だ!」というのは、「9回裏に打者一巡の猛攻でサヨナラ勝ちだ!」「残り試合を全部勝って優勝や!」と叫んでいる阪神応援団と限りなく重なって見えるのである。

○実際に今も楽天相手の不甲斐ない戦い(能見が打たれて4対ゼロ)を見ているのだが、わがタイガースはどう見てもそんなに強いチームだとは思えない。それでも負けるかと他人に聞かれれば、きっと強気な返事をしてしまうだろう。しかも過去に何度もツライ思いをしているから、ザックジャパンの苦境などは全然屁でもない。とまでは言わないまでも、もう少し苦しめてもらっても全然OK、くらいの感じである。

○などと書いているうちに、だんだんザッケローニ監督が和田監督に思えてきた。本田圭祐は新井貴浩だろうか。しかるに阪神ファンというものは、長い年月をかけて「あの境地」に達するものであって、普通の人にはお勧めしたくない。日本国民全体が阪神ファンの耐性を身につけるということは、あまり望ましいことではないような気がするぞ。

○と、ここまで書いたところでとうとう5点目を取られてしまった。もういいっ、フジテレビで競馬を見ることにする。こりゃ今年もあかんな・・・。


<6月24日>(火)

○今朝の日経新聞を見てぶっ飛びました。そうですかあ、新浪さんはサントリーへ行くのかあ。今年3月にローソンの跡取り(玉塚さん)を決めた時から、次を探しているんだろうなとは思っておりましたが、なるほどいいポストがあったものです。ローソンの社長も12年目だそうなので、しかも11年連続増益だそうなので、普通だったらとっくに飽きてますよね。上を目指す人は、昨日の自分に飽きなきゃいけません。

○サントリーというのは、非公開同族企業である強みを活かした冒険をしてみせてくれる、最近の日本ではめずらしい存在です。銀行借り入れでジム・ビーム社を買ってしまうなんて、お行儀のいい公開企業にはできませんわなあ。言い訳やら建前ばかりが横行している最近の日本企業の中では、とっても愉快で目立つ存在で、私は好きです。

○たまたま今日は、大阪に日帰り出張していたんですが、サントリーホールディングスは今でも堂島の本社にあるんですよね。大阪が新浪さんをゲットした、と考えるとこれも愉快なことだと思います。まあ、大阪特有の足の引っ張り合いみたいなことに遭遇されるかもしれませんが、それも一興だと思いますよ。

○もうひとつ、「日本にもプロの経営者の市場が育ちつつある」というのも良いことだと思います。社長というものは、ちゃんと他人の眼で自社を見ることができなければいけません。社内の事情だけ見て決断を下すようでは、いい社長さんとは言えないわけです。コーポレートガバナンスというのは、要するに会社を内向きの論理で固めないことですから。

○ということで、日本経済にとって励まされる話だと思います。とりあえず、成長戦略がどうのこうの、という官主導の話よりも大切なことではないでしょうか。


<6月25日>(水)

○ザック・ジャパンの3試合の中でも、今朝のが一番納得感がありましたな。ちゃんと戦って、敗れたわけでして。キタナイ表現で恐縮ですが、今日の試合は残尿感がありませんでした。まあ、仮にこれで引き分けてでもいようものなら、「浅田真央ちゃんのフリースタイル」みたいなもので、最後の最後に自分たちらしいプレーができてよかったね、と言えたわけですが。日本チームがW杯で4点取られたのって、たぶん初めてだよね。しばらく香川と本田が出てくるCMは見たくありません。

(→後記:2006年のドイツ大会予選で、ブラジルに1-4で負けてました。失礼しました)

○欧州南欧で債務問題を起こしたPIIGS諸国は、サッカーが強いところ揃いなのでありますが、決勝トーナメント進出はスペインがダメ、イタリアもダメ、ポルトガルもかなり苦しいという状況です。ところがユーロ債務危機問題、諸悪の根源ともいうべきギリシャさんが紙一重で上がってくれました。文字通り、南欧の希望の星ですね。なにしろクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナもダメでしたから。

○それにしてもラテンアメリカ勢が強いです。開催国ブラジルを筆頭に、メキシコ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ウルグアイ、アルゼンチン、さらにエクアドルも可能性を残している。アジア勢が未勝利であるのは言うまでもありませんが、アフリカ勢でさえ苦戦してますな。カメルーンとコートジボワールが落っこちて、後はナイジェリア、ガーナ、アルジェリアが当落線上。厳しい戦いです。

○こんな厳しい一次予選の戦いも残すはあと2日。来週からは決勝トーナメントが始まります。日本勢が居なくなっても、これはこれで面白い。W杯はありがたきかな。


<6月26日>(木)

○サッカー狂いを続けている昨今の不規則発言ですが、たまには政治についての短いコメントを書いてみましょう。

(A)「集団的自衛権の解釈変更は認めるべきではない。公明党の良識に期待する」(朝日新聞)

(B)「集団的自衛権の解釈変更はどうしても必要だ。公明党の良識に期待する」(自民党)

○どっちの見識が勝っていたかは、言うまでもありませんね。やっぱり(A)はよこしまな主観が入った希望的観測というものですよ。「おそれがある」を「危険が明白である場合」に書き換えればそれで済んじゃうんだもん。(B)のしたたかさが上でした。あるいは高村さんの人格的迫力の勝利というべきなのかもしれません。

○かくいう不肖かんべえは、「潮」の7月号で「集団的自衛権に反対」という佐藤優&木村草太対談が掲載されたのを見たときは、こりゃあマジかと思って一瞬焦ったものです。でも、やっぱり公明党はリアリズムの政党でした。そりゃそうですよね。与党なんだから。

○ところで閣議決定のタイミングが微妙です。来週7月4日には習近平国家主席が訪韓するらしいのですが、どうもその近辺の日程になっちゃう気がします。そうなると、中韓が揃って「日本の暴挙に反対!」と言ってくれるんで、国内的には「やっぱりこの決断は正しいことなんだ」という認識が強まってますます結構であります。海江田さんがその尻馬に乗ってくれると、さらにありがたい。

○うむ、やっぱりこの手の意地の悪い言説を書くのは楽しいな。とっても久しぶりの政治ネタでした。


<6月27日>(金)

○いつもの東洋経済オンライン、ワールドカップで日本が一次予選で敗退したことを記念して、少しやけくそ気味に書いてみました。

W杯から透けて見える欧州の南北問題〜ギリシャ残るが、スペイン、ポルトガル、イタリア敗退


○そうかと思ったら、当欄の一部が産経新聞の「ネットろんだん」に引用されてました。

サッカーW杯敗退 日本代表チームと阪神は似ていた!?


○この記事、最後の以下の部分がちょっといいですね。


高い期待がもたらした反動ゆえか、今も日本代表への罵倒はネット上で絶えない。そんな中で相次いだのが、やはり阪神ファンからの同情だった。「われこそはサッカー日本代表サポーターと自負する諸君には、阪神ファンが持つ『無償の愛』に裏打ちされた“忍耐”が必要になってくる」

今回の日本代表の試合内容を見る限り、今後もサポーターが歯がゆい思いをする事態が続く可能性は高そうだ。だが、対象への揺るぎない「無償の愛」を根底に置き、期待を低く保てば、負け続けてもそうそう動じず、たまに勝つと飛び上がるほどうれしい。そんな阪神ファンの「成熟」から、日本代表サポーターが学ぶことは多い…かもしれない。


○阪神ファンの同志諸君に告ぐ。われわれだけでも、彼らを温かく迎えてやりましょうや。本田をはじめ、メンバーには関西人が多かったしね。


<6月29日>(日)

○今週のThe Economist誌の表紙が安倍さんになってます。リード文はShinzo Abe has the best chanve in decades of changing Japan for the better. He seems poised to take it.とあるくらいですから、先週決まった「第2次成長戦略」を前向きに評価した内容です。たぶん2〜3日中に、JBPESSさんが全訳をのっけてくれることでしょう。(だからウチではやりません。すいませんね)

○正確にはこれはアジア版の表紙で、国際版の表紙はCreative Destructionという記事です。それでも、日本が表紙になるのはだいたい年に1回くらいのことですから、こんな風にポジティブな内容であるのは結構なことだと思います。ただしこれを見ると、嫌でも1年前のアレを思い出しますな。安倍さんがスーパーマンになっていたやつ。懐かしいね。

○まあ、2011年の2月3日号では、あの菅直人が「過去数十年で最も大胆な改革を目指している」と評した前科があるThe Economist誌ですので、あんまり真に受けてはいけません。昔からこの雑誌の日本への評価は、結構ぶれるんですよ。今はちょっと上ぶれしているということなのだと思います。

○ただしThe Economist誌としてはあんまりヨイショばかりはできないので、小さなコラムで「河野談話」のことを取り上げてバランスを取っていますね。でも、なかなかよくわかっていらっしゃるご様子。それが大事なことでありまして。


<6月30日>(月)

○あまり新聞を読まない不肖かんべえであるが、最近のこれだけは面白いのでちゃんと読んでいる。読売新聞の「時代の証言者」である。

○確か博報堂の中に岡崎研究所ができたのが1995年くらいのことである。その当時から入り浸っていたので、岡崎久彦氏の話は相当な回数聞いたことになる。ビールやワインをご馳走になりながら、いろんな話を数えきれないくらい伺った。今から思うと、何と贅沢な経験であったことか。そういうことなので、たぶんお得意の話はほとんど聞いているだろうと思っていたら、この連載には初耳の話がとっても多い。ということで、ちょっとだけ不明を恥じている。

○その岡崎研究所の長年の悲願は、「集団的自衛権を認めること」である。明日はいよいよ、解釈変更の閣議決定があるかと思うと、岡崎スクールの末席を汚すものとしてはいささか感慨深い。しみじみ世の中は変われば変わるもののである。

○もちろん「変えちゃいけない」というご意見があることは百も承知である。それでも世の中に変えなきゃいけないことがあるとしたら、そのためには誰かが飽きずに、懲りずに、弛まずに同じ話を何度でも言い続けなければならない。「とても無理だ」と諦めてしまったら、物事は変えられない。

○言論とは、ただのおしゃべりに過ぎないことが多いものだけれども、ちゃんと世の中を変える例もあるのだな、としみじみ感じている閣議決定の前夜である。








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by Tatsuhiko Yoshizaki