●かんべえの不規則発言



2019年4月







<4月1日>(月)

次の元号も「しばらく使われていない頻出漢字」+「初登場、もしくはそれに近い漢字」の組み合わせと予想するのが自然ではないかと考えます。


溜池通信の前号で書いた上記予測は、半分だけ当たってましたね。元号初登場の漢字は「令」でした。気がつきませんでしたねえ。Rの発音は新鮮な気がします。似たような漢字で「玲」とか「伶」とかもありますが、これがいちばんスッキリしておりますな。

○頻出漢字の方は意表をついて、「昭和」で使ったばかりの「和」でありました。まあ、「和をもって貴しとなす」というのはわが国の国是ですから、「和」に文句をつけたら叱られます。これで「和」は通算20回目の登場となりました。それよりも多い漢字は、「永」(29回)、「元」(27回)、「天」(27回)、「治」(21回)と4つもありますし、「応」も同点の20回。さらにこれらを「長」「文」「正」の19回が追う。

○とまあ、こんな話はこの後当分は出てこないでしょう。さしあたっては30年くらい。そのとき、ワシはまだ頭がしゃきっとしておるのだろうか。

○とりあえず、「抜かれる」ことがなくて良かったですな。発表前に「次の元号は令和」とツィッタ―で流れるようなことになると、「令」でも「和」でもなくなってしまいます。まあ、エイプリルフールでもいいですが。


<4月2日>(火)

○ふと気がついたが、昨日、会社に入ってきた新入社員たちは、おそらく「令和元年入社組」ということになるのであろう。入ったのは平成31年4月だけど、来年入ってくるのは「令和2年組」になる理屈なので。なんかもう、すっかり時代は変わってしまいますな。昭和は遠くなりにけり。

○今朝のワシは、火曜日朝の常として文化放送へ。本日をもって、「くにまるジャパン極」出演は丸10年目となる。平成21年から初めて、平成31年になってもまだ続いている。当初、前任コメンテーターの弘兼憲史さんが6年半務めたと聞いて、怖れおののいたものであったが、とうとうそれよりも長くなってしまった。ちなみに、10年間火曜日朝にお付き合いいただいた鈴木純子さんとは先月末でお別れで、本日からは西野文野(あやの)アナウンサーとご一緒である。

○それにしても偉いのはくにまるさんで、昨日の「新元号発表」の際には11時30分の発表予定が遅れて、その間を会話でつなぐのが大変だったそうである。しかもラジオの場合、元号を「絵」で見せることができない。「れいわ、命令の令に平和の和です」みたいに説明しなければならない。これはもう大ベテランの技としかいいようがない。

○それに比べれば、コメンテーター業というのはずっと楽である。毎週、キチンと同じ時間に来て、前の週と違う話をすればいいのである。今日は「新元号の経済効果」といういかにもなテーマでお話ししました。とりあえず昭和→平成の時の重苦しい雰囲気を思い出せば、平成→令和の世相は底抜けに明るくて、そのこと自体が景気にはプラスだと思います。

○どうやらワシの場合、性格的にダラダラと同じことを長期間にわたって続けるのが得意なようである。なにしろ町内会の防犯部長は15年、溜池通信だってもう20年も続いている。まして会社員生活はとなると、えーと、もう35年になる。とりあえず、「もう、アイツを辞めさせろ」とは言われていないようなので、まだズルズルと惰性で続ける所存であります。

○気がつけば1960年のねずみ年に生まれた同世代人は、もう一仕事終えていたり、これからは趣味の時間を増やしていきますという人が少しずつ増えている。ソニー会長の平井一夫さんは、社長時代に会社を完全復活させて、もう完全リタイアしてしまった。文句のつけようのない引き際である。あるいは元参議院議員の松井孝治さんは、現在は慶応SFC教授であるが、政界に戻るつもりはなさそうである。なかなか真似のできることではない。

○が、もっとすごい例がある。皇太子殿下は、来月からが本番なのである。これまでの人生がすべて助走期間であって、これから象徴としての務めを果たされることになる。私ごときが言ってもまったく意味ないですが、本当にお疲れ様です。頭が下がります。この年になると、新しいことに着手するのは大変ですよ。能のない身としては、せいぜい今できることをダラダラと続けるのみであります。


<4月4日>(木)

○今宵は歓送迎会。行く人来る人、いろいろあるけれども、まさかMy Big Appleさんがうちの職場に来るとは思いませんでしたな。がんばってね。

○今年は先週から桜がずっと咲いている。なかなか散らない。こういう年もめずらしいんじゃないか。まるで昭和の頃のように、入学式の頃になっても残っている。ありがたいね。

○でもねえ、忘れちゃいけないのがこの法則である。太古の昔から、ずっとそうだったんだよ。

散る桜、残る桜も 散る桜 (良寛和尚)


<4月6日>(土)

○天気のいい本日。ご近所の桜を見ながら歩いていたら、大堀川から柏公園まで抜けて、とっても長距離を歩いてしまった。満開もさすがにピークを越えて、川面に桜吹雪がチラホラしていてキレイでありました。これなら桜の名所までお出かけしなくても良いですな。

○問題は花粉を一杯吸い込んでしまったことで、帰って来てからが大変。鼻水は出るわ、眼は痛いわ。この時期はこれがありますからなあ。

○それにしても、1年のほんの一時期、花を咲かせるというだけで、他には何に役にも立たないソメイヨシノという樹木を、これだけたくさん植えていることは、この国の不思議のひとつでありましょう。みんな、ホントに好きなんですなあ。

○さて、明日の桜花賞の予測でも始めましょう。きっと今頃、馬券王先生もバンコクでご検討中でありましょうけれども。ちなみにオバゼキ先生はこの通り。まっ、予想通りですな。


<4月7日>(日)

○今日は統一地方選挙の第1陣。うちの選挙区は千葉県議会選挙などという眠くなるような選挙をやっている。気は進まないが、朝方、国民としての義理をはたしてきた。あれって投票整理券を持たずに行くと、結構手間がかかるのですな。もっとスイスイ行くものかと思ってました。

○で、今夜の開票速報はどうなるかというと、与野党対決になっているのは北海道知事選挙くらいであって、後は福井や福岡の保守分裂があるくらい。となると、やっぱり面白いのは大阪の「クロス・ダブル選挙」であります。何しろ本日の大阪市民は、「大阪府知事、大阪市長、大阪府議会議員、大阪市議会議員」という4つの投票をしているわけですから。いや、そりゃあ大変ですよ。「え?松井さんは知事じゃなくて市長なのか?」みたいなことはあるだろうし、何より4人分の名前を書かなきゃいけない。

○ワシは毎年、何度も大阪に通っている立場であるが、大阪の政治はサッパリ訳が分からない。維新が人気になる理由も不明なら、自民と公明と共産が束になって対抗している状況はさらに理解不能である。しかし、大阪の経済が良くなっていることは分かる。それはもう、橋下さんが初めて知事になった2008年頃とは大違いである。

○とにかく昔は、大阪の財界人に会うとすぐに愚痴が始まった。地盤沈下、東京一極集中という嘆きを聞かないことはなかった。それが最近は、「大阪は最近、景気がいいですから」などとサラリと口にする。そうそう、「万博が決まってしもうて、寄付金を集めにゃならん。厄介な話やで」という愚痴は聞いたことがある。でも、それって結構な話じゃありませんか。

○とにかく、以前のような危機感はなくなっている。お荷物だった関空は今では大賑わいとなり、しかもコンセッションが出来ちゃった。気のせいか、阪神タイガースの愚痴もあまり聞かなくなった。ワシ的には、矢野・タイガースの現状は、かなり深刻な事態だと思うのだが・・・。と思ったら、今日は広島を相手に9対0で勝っている。西投手が移籍後初勝利で完封ですと。パチパチパチ。

○大阪を良く訪ねる者同士の間で、「あの辺が分岐点だったんじゃないか」と言われているのが「2014年夏説」である。ちょうど、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)にハリーポッターのアトラクションが出来た頃である。別に大阪から本社を移した企業が戻ってきているわけではない。サンヨーやシャープが大復活したわけでもない。要するにインバウンドが増えた。それで景気が良くなった。別に政策が良かったからではないと思うのだよね。

○大阪の景気回復が維新のお蔭だということになれば、府知事も市長も維新が勝つのでしょう。でも、万一、「ねじれ」たときは大変ですよ。万博やIRの仕事がやりにくくなって、それこそ「府市あわせ」(不幸せ)になってしまいます。しかし、府議会や市議会選挙の両方で維新が過半数を取れるとも考えにくい。「大阪都構想」だなんて、いつまでも「東京都」を意識する必要はないと思うんだけどなあ。

○どんな結果になっているかわかりませんが、とにかく明日朝はモーサテに出演します。よろしく〜。


<4月8日>(月)

○「改元効果」は景気にプラスなんじゃないか、てなことを先日から言っていて、今日は内閣府が消費動向調査景気ウォッチャー調査を発表する日である。蓋を開けてみたら・・・・「3月消費者態度指数は6カ月連続の低下」で、「3月景気ウォッチャーは2カ月ぶりの悪化」であった。とほほほほ。まあ、月例経済報告の基調判断が下がった3月に、気分だけでも明るくなるという読みはやはり無理筋だっただろうか。

○と思ったら、本日発表の産経・FNN世論調査によれば、4月は内閣支持率が5ポイントも上がっている。新元号が景気浮揚に役だったかどうかはさておいて、安倍政権にとっては若干の「ご祝儀相場」になったようである。うーん、これはそうだろうな。もっとも、強く印象に残ったのは菅官房長官の方だけど。

○真面目な話、今週はIMFのWEO(世界経済見通し)も発表になる。こちらは貿易戦争あり、Brexitありで、今年1月発表分に引き続いて、さらなる下方修正といった感じではないだろうか。全世界の景況感を左右する重要な指標となるが、世の中の変化を先取りするというよりは、むしろ遅行指標となるではないかと思う。

○その点、今朝発表のモーサテサーベイでは、「モーサテ景気先行指数」が急によくなっていた。コメンテーター席で、お隣の広木さんと声を併せて「おっ!」と反応してしまった。どうやら2人とも強気で回答していたと見える。特にアメリカと中国が23.4という高さになっているのは驚き。これはマーケット関係者の超先読み指標というべきだろうか。

○ということで、景気の先行きは引き続き慎重に見て行かなければなりません。個人的には、「世界経済の景気後退は避けられる」と見ておりますが。

○近々、こんな場所で講演会をやります。まだ席はあるみたいですので、よろしければお申し込みください。「ポスト平成時代の日本経済」という演題を頂戴しておりますが、間に合っていれば当然、「令和時代の日本経済」に変えるところです。とはいえ、平成が令和になって突然、変わってしまうわけでもないんだよな。さて、そこをどう表現するか。もうちょっと悩んでみましょう。


<4月9日>(火)

○本日は第52回日本原産年次大会へ。

○昨年の会場はルポール麹町だったが、今年は東京国際フォーラムである。というと、贅沢になったような気もするが、この建物、東京都庁の跡地に出来ただけあって、しみじみバブル期仕様で使い勝手が悪そうである。そのうち、日本でIRが建設されて、安いコンベンションホールが供給されるようになったら、これらの施設はどうなるんだろう??

○とまあ、そんなことはどうでもいいのであるが、3/11から既に8年が過ぎた。明日には福島県大熊町の一部が避難解除になるのだそうだ。つくづく原子力産業は、時間軸が長い業界だと思う。普通の人間の感覚から行くと、ちょっと浮世離れしているくらいに。

○この世界には「40年ルール」というものがある。原子力発電所は40年まで、ということになっているのだが、それは耐用年数が40年だということではない。原子力規制委員会の認可を受ければ、20年を超えない範囲で延長ができることになっている。ただし実際問題として、40年もたってしまうと設計者も居なくなってしまうし、「これはどういうことでこうなっているんだっけ?」ということがどんどん分かりにくくなってしまう。だから40年を区切りとするのはザックリした話であるが、それなりの妥当性はあるのかな、とワシ的には受け止めている。

○それというのも、40年たつと本当にいろんなことが分からなくなってしまうのである。今から40年前というと1979年である。この年にはいろんなことがあった。


●米中国交正常化と台湾関係法

●英国におけるサッチャー政権の発足

●イラン・イスラム革命とアメリカ大使館人質事件


○これらの事件は今日の国際関係に影響を与えているのだが、「ひとつの中国原則って、そもそもなんだっけ?」とか、「アメリカはどうしてこんなにイランを憎んでいるのか」といったことが分からなくなってしまう。そりゃそうだ。40年も前のことなんだもの。そしてイギリスでは、40年前に誕生した初の女性首相が発揮した指導力のことも、今となっては完全に忘れられてしまっているのではないのだろうか。

○つくづく人間は忘れる動物である。忘れちゃいけないことも、やっぱり忘れる。ましてそれより古いこと、たとえば「イスラエルはなんでゴラン高原を占領しているのだっけ?」(1967年)とか、「日韓基本条約はどういう経緯で合意したのだっけ?」(1965年)などは、ますます分からなくなってしまう。だから揉める。いや、困ったことなのですが。

○日本という国は、他の国よりは時間軸が長い国なので、対ロ交渉で「樺太・千島交換条約」(1875年)の話を持ち出したりすることができるのだが、得てしてそういう議論は通らない。第2次世界大戦の結果だ(1945年)、と言われてしまうのである。

○とまあ、一方で1979年に起きたこんな事件は妙に愛おしく思えたりする。こういうことは、40年たっても覚えているものなのである。


●この年の野球界は、「江川卓空白の1日」「簑島対星陵、死闘18回」「日本シリーズ、近鉄対広島、江夏の21球」に沸いた。

●NECが「PC−8001」を発売し、ソニーが「ウォークマン」を発売した。

●「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)が名古屋テレビほかで放映された。

●ジュディ・オング「魅せられて」、西条秀樹「ヤングマン」、山口百恵「いい日旅立ち」、沢田研二「カサブランカ・ダンディ」、北島三郎「与作」、ショーケン「大阪で生まれた女」etc.


<4月11日>(木)

○昨日から入院中である。といっても、内視鏡で大腸のポリープを切るだけのことなので、明日には退院である。とりあえず3日間、確実に仕事がない時期、ということでかなり前から決めていたことである。昨日の手術もどうということはなく、経過も良好のようである。

○事前に「入院します」ということはあまり周囲には言ってなかったので、これを見て驚く人もいるかもしれない。とはいうものの、「入院するんですけど、実はたいしたことないんです〜」と自分で触れ歩くのは、いかにもある種のフラッグを立てまくっているようであって、それもいかがなものかなあと思っただけである。くれぐれもご心配はご無用に存じます。

○さて、ほんの2泊とはいえ、ワシ的には入院はほとんど人生初の体験である。わりと評判のいい病院であるし、滅多にないことなので個室料金を支払っているので、事前にはああ、これで暇な時間ができると喜んでいたのであるが、ベッドの上で一日過ごすというのは、けっして愉快なものではない。とりあえず点滴(これも人生初だ)していると左手が動かしにくいので厄介である。

○仕事をする気にもなれないので、ほったらかしにしておいた『ホモデウス』上巻を読み終え、将棋の名人戦第1局(まさか千日手になるとは思わなかった)を観戦し、流行りモノということで突然、万葉集(斎藤茂吉版)を読んでみたりしている。うーん、とりあえずこれまで病院とは無縁であった人生に感謝するほかはない。

○娑婆ではいろんなことが起きていて、EU首脳会議が英国のEU離脱を半年延期させるとか、ブラックホールの写真を撮ったとか、いろんなことを言っているようである。

○そういえば、明日は上杉隆氏が中央区長に出馬会見する日ではなかったか。最近は、「京都でAIの会社を作りました」とか、「得度して僧侶になりました」とか、今まで都違う方向を目指していたはずなのだが、またまた政治の世界に戻ってきたようである。つくづく長い付き合いになるが、しみじみ「首尾一貫していないことをもって首尾一貫している」男である。

○ちなみに入院前日の昼に一緒にランチしていて、「出馬会見、どこでやろうか」などと考えていた上杉氏に対し、「中央区だったら、築地本願寺がいいんじゃない?」とワシが言ったら、その場で本願寺に電話して決めてしまった。本当に面白いよねえ。中央区在住の皆さま、良かったら応援してあげてください。


<4月12日>(金)

○もう退院してしまった。もう少し長居をすれば、このところの生活を反省するきっかけにもなったのだろうが、仕事の電話やらメールやらも溜まっていて、あっという間に元の木阿弥となりそうである。術後の経過はもちろん良好でありまして、ただし1週間くらいは刺激物とお酒は自粛であります。

○先日来、いろんな人に「トランプ大統領が訪日する5月26日(日)は夏場所千秋楽ですよ〜。きっと相撲観戦に来ますよ〜」と言いふらしていたのだが、どうやら本当に検討されているらしい。アメリカ大統領が土俵に上がって、「ヒョウショウジョウ!」とかやったら、これは受けるに決まってますわな。こんな面白い「絵」は、アメリカのメディアも大喜びでしょう。

○さるテレビ関係者にこの話をしたところ、「待って!その話、まだ放送で言ってないですよね」と言われた。いや、放送はもちろんネットでも書いてないよ、と答えたら、「大騒ぎになる前に当日の席をとっておきましょう」などと言っていた。いやー、そんな日の相撲は、家でテレビで見るのがいちばんですよ。きっと恐ろしい警備になるから。360度の角度を警戒しなきゃいけない、なんて状況は、シークレットサービスにとっては悪夢でありましょう。

○当日の座布団をどうするかも難題です。当日のお客の中には、アメリカ大統領を狙って座布団を投げてみたい、という人はきっといるだろう。座布団が当たっても命に別状はないですけど、外交当局としては洒落になりませんわな。とはいうものの、ご本尊がそういうことが好きそうで、宙を舞う座布団の写真を撮ってツィートしてしまいそうなので、それも併せて悩ましいところでありましょう。


<4月13日>(土)

○今年も新宿御苑の「桜を見る会」へ。さすが「晴れ男」の安倍晋三総理、昨日までの寒さはどこへやら、本日はコート不要の暖かさでありました。

○昨年はもうほとんど桜が散っていて、それどころかこの時期が本番の八重桜も散っていて、ほとんど「つつじを見る会」だったのが、本日はまことに豪華絢爛でありました。いや、これぞ「桜を見る会」。そういえば当柏市選出の田議員は、直前に五輪担当大臣を解任されて散ってしまいましたが、そっちはあまり惜しむ人はいないものと思われます。

○今年はめずらしいことに、ずいぶん知り合いに会いました。社内のTさん、Uさん、議員秘書のKさん、フジテレビの某キャスター、めずらしいところではらくちんさんのお兄さんにもお会いしましたな。1万8000人も来ているので、ほとんど奇跡的な出会い確率といえましょう。そうそう、今年も陸上自衛隊中央音楽隊は良かったです。

○会場内では、菅義偉官房長官に挨拶をする人の長い行列ができていました。これも毎年の光景なんですが、「令和おじさん」はいよいよ人気沸騰という感じですね。麻生副総理・財務大臣はG20でワシントンに行っていると思いますが、福岡県知事選挙でミソをつけてしまいました。安倍政権を支える両巨頭のバランスはかなり崩れてきました。この先がどうなるのか、気になるところです。


<4月14日>(日)

○さて、明日になったら通商問題です。日米物品貿易交渉(TAG)が4月15〜16日、ワシントンで開催されます。われらが茂木大臣の抱負やいかに。先週、4月12日に行われた記者会見(と言っても、わずか7分間ですが)はこちらをご参照。


(答)テタテの交渉になると思いますので、本当にやってみないと分からない、これが率直なところでありますが、今回、初めての本格的な交渉ということでありまして、まずは昨年9月の共同声明に沿って交渉を進める方針でありまして、まずはスコーピングを決めていくと。物品貿易を中心に対象分野を決めるということから始めるんじゃないかと思います。物品貿易、そしてそれと同じタイミングに早期の成果が出せるものということでありますので、その中でスコーピングを決めるということであります。

1回目でありますから、まずライトハイザー通商代表と胸襟を開いて話し合い、お互いの意見を率直に交換することで双方の理解を深めたいと思います。物品貿易の中ではそれぞれが重視する項目というのはあるわけですから、そういった項目についても議論をすることになると思いますが、どこまで議論が進展するか、やってみないと分からないところであります。いずれにしても国益に沿ったいい成果が出せるようにしっかりと議論していきたいと思っております。


○普通に考えると、1度目の会合ではお互いに相手側の話を聞きおく、ということになるので、この2日間だけでいきなり話が進む、ということは考えにくい。ただしアメリカ側では、パーデュー農務長官が「早くしろ」とライトハイザー代表をせっついている様子。これは米国とそれ以外(豪州、カナダなどTPP参加国)との間で日本の牛肉関税の格差が広がりつつあるので、農業団体から突き上げをくらっているからでしょう。それにトランプ大統領の再選のためには、農業州の支持は非常に重要です。

○ここで重要になってくるのが、昨年9月の共同声明である。その全文はこちらをご参照。キモの部分はここですな。


5. 上記協定は、双方の利益となることを目的とし、米国と日本は、交渉を行なう際、相手国政府の立場を尊重する。

米国としては、自動車分野における市場アクセスの結果は、米国自動車産業の製造および雇用の増加につながることを目指すものとする。

日本としては、農林水産品について、日本の過去の経済連携協定に反映されている市場アクセスの譲許内容を最大限とする。


○つまり日本側は「TPPの範囲内であれば、関税下げてもいいですよ」と言っている。米農務省は「もう一声」(つまりアメリカを他国より優遇しろ)というだろうが、それを言い出すと交渉は長期化する。逆に日米首脳は上記で妥結済みなので、ここまでならサッと決まる。

○それでは自動車は、と言えば、トヨタ自動車がこの3月、対米投資計画を30億ドル上乗せして130億ドルとすることを発表した。上記の文章を楯にして、「これで勘弁してね」ということなのではないか。もっともトランプさんのことなので、「自動車輸入関税25%だあっ!」と言い出すかもしれない。が、その場合は長期化する。日本側としては、「早く決めたいんじゃないですか?」と誘いをかけているわけ。

○そうだとすると、まるで八百長のように日米協議が前進することもあり得るのではないか。何しろこれから4月(ワシントン――安倍首相の訪米)、5月(東京――トランプ大統領の国賓待遇訪日)、6月(大阪――G20に伴う訪日)と、3カ月連続で日米首脳会談が行われる。これが出来たらマジックですな。さて、どうなりますか。


<4月15日>(月)

○仕事で渋谷へ。銀座線で降りて、ヒカリエ方面に進み、そこから明治通りを恵比寿方面へ・・・と、もうわからなくなった。しかも妙な形の歩道橋を登らねばならない。何なんだ、この街は。

○詳しい人でも、「半年来ないとわからなくなる」と言われる渋谷。今もひっきりなしに工事が行われ、渋谷駅の最終形がどうなるのかは見当もつかない。JRと地下鉄はそれぞれ何本は知っているのだろう。

○この町の住民たちは、よくこんな乱開発を認めているな、と思ったら、渋谷区議会選挙候補者の宣伝カーが通った。「4期目のお願いです」と言っていたが、駅周辺開発って問題になっていないのだろうか。

○まあいいや、また当分近寄らないようにしよう。スクランブル交差点からセンター街辺りはまだわかるんだけどねえ。


<4月17日>(水)

○先週の内視鏡手術からめでたく1週間。喪が明けた今日はビールが旨い。いやはや、酒を飲まないと夜が長くてかなわん。仕方がないから早めに寝るのだが、すると夜中に目が覚めてしまうのである。

○とはいうものの、不肖かんべえの日常はすっかり元に戻ってしまい、先週2泊3日の入院生活は急速に遠いものとなりつつある。

○本日は平成国際大学の浅野和生教授が来訪。台湾の政局について伺う。本当であれば、今日4月17日で民進党の候補者選びは決まっていたはずである。すなわち蔡英文総統が再選を目指すか、いっそのこと頼清徳に差し替えるかを決定するはずであった。それが延期となってしまった。与党なんだから、こういうことではいかんですよね。

○その間に国民党は、テリー・ゴーこと郭台銘・鴻海精密工業(ホンハイ)会長が国民党からの総統選出馬を検討中とのニュースである。てっきり韓国瑜で決まりかと思っていたら、財界人の登場である。シャープの親会社のトップが挑戦するわけですから、すごいことであります。おそらく国民党の出方を見た上で、民進党も候補者を決めることでしょう。

○なおかつ、第三勢力である柯文哲台北市長も虎視眈々と機会をうかがっている。いやもう、アメリカ大統領選挙で起きるようなことは、全部、台湾総統選でも起きるということでしょう。これは面白過ぎです。選挙におけるSNSの利用なんぞは、わが国をはるかに超えておりますからな。

○そういえば今週は、産経新聞で連載中の「李登輝秘録」の第1部が終わったところである。ちゃんと通して読まなければ。つくづく台湾政治の話は一筋縄ではいきません。


<4月18日>(木)

○本日は慶応大学へ。経済学部の授業「野村証券寄付講座 金融資産市場論」なる授業の講師を仰せつかる。

○学期が始まったばかりの大学は何だかとても明るいのである。これが間もなくゴールデンウィークを迎え、そうなると5月以降は出席が減ったりするのであろうが、とりあえず今はキャンパスに学生が溢れている感じである。

○とはいうものの、「地政学リスク時代の世界経済」というテーマは、なかなか説明が難しかったような。なにしろ2000年前後に生まれた世代である。「同時多発テロ事件が・・・」と言っても、「ポスト冷戦時代においては・・・」と言っても、どこまで通じているのか要領を得ない。

○とりあえず近現代史の勉強は重要ですよ、なんてことを言ったりするのだが、そもそも近現代史なんて教えてくれないよな。高校でも大学でも。とまあ、大学の気分に触れて少し若返った気もするのだが、ちょっぴり世代間ギャップも感じたのであった。


<4月19日>(金)

○本日昼は松尾文夫さん主催「アメリカ会」の最終回。主の居ない会合に、30人近くが集まって故人をしのびました。いやもう、いろんな秘話が飛び出しまして、ええっ、そんなこともあったのですか、てな驚きが尽きませんでした。あの世代の方は、つくづくいろんなことをやっているものですね。表向きの業績の裏には、かならず水面下の努力が隠れている。それがあるからこそ、水面に浮かんだ花が美しく見えるわけでして。

○夜はとっても久しぶりに勉強会「ロビンソンクラブ」へ。皆さんお元気かな〜とおそるおそる出てみると、もちろんお元気なわけですが、そういえばあの人は最近こんなことで・・・・てな事情も伺う。年をとればいろいろあるわけで、自分も人知れず心配されていたりするのでありましょう。

○てなことで、人の情けが沁みる一日でありました。それにしても会社のPCで「溜池通信」を書いている最中に、WORDが凍結して途中から書き直しになってしまうのはなんとかならんのか。先月、PCが更新されて2度目の事件である。


<4月20日>(土)

○昨晩は丸の内の地下街で飲んだのだが、午後9時台とあって7人で入れる店はあまりなく、しばらく探した挙句に入ったのは「プロント(PRONTO)」でした。サントリーがやっている店ですよね。なかなか実験的な店で面白かったので、以下は備忘録として。

「ワイン飲み放題、30分540円」とある。これではまるで「サイゼリア」の値段ではありませんか。これは注文するしかないですよね。するとチリワインが赤白3本ずつやってくる。合計6本を、ちょっとずつ試飲みしてみる。これはなかなかに贅沢な感じがしてよろしい。

○でも、考えてみれば、チリワインは小売り価格で1本800円くらいだろうから、6本全部開けたところで合計でも5000円以下である。なおかつ、6本全部あけるとなると、さすがに1時間はかかるので、店の側としてはたぶん元が取れる。生ビールの飲み放題に比べると、きっとコストが安いのでしょう。しかも1時間ではなく30分で計算するというのは賢いですな。

○もうひとつ、この店の売りは「現金は使えません」。カードでも電子マネーでもいいですから、とにかくキャッシュレスでお願いします、とある。

○ところがそのためにこの店が掲げている看板は、"We are CASHLESS"である。あたしゃそれを見た瞬間、「わしらは文無し」と脳内変換してしまった。だってそうでしょ。「キャッシュがない」んですから。この英語はちょっと変ですぜ。

○皆さん、キャッシュレスでお願いしますよ〜日本人は現金志向が強過ぎますから〜という昨今の掛け声はわからんではないですが、こういう「キャッシュレス至上主義」もちょっと変。まあ、7人でちゃんと割り勘して、代表者がカードで支払いましたけど。


<4月21日>(日)

○年に1度の町内会総会。例年は皐月賞と重なっていたのだけれども、今年は1週間ずれて、G1レースの谷間になってくれたので、内心では「しめしめ」と思っている。これがあるから、毎年、皐月賞には行けなかったのだ。これから先も、ずっとこのパターンになりますように。

○で、いつの日かやってくると思われていたことだが、とうとうわが町内の親子会が解散してしまった。まあ、少子化だし、最近は親も子供も忙しいし、仕方がないのかねえ。自分たちが小さな子の親だった頃とは、つくづく時代が違っているのだと思う。もっとも最近では、「友の会」と呼ばれる老人会の解散もあるのだそうで、いよいよあちこちでご近所コミュニティの崩壊が始まっているのかもしれない。

○ご近所づきあいに比べると、ネット上の付き合いというのは、つながりが薄い分だけ気が楽である。Facebookなんぞは、自分と近しい考えの方ばかりが「お友達」になるので、そういうのを「フィルター・バブル」と呼ぶのだそうだ。つまりフィルターがかかった「泡」の中に居るようなもので、自分と違う世界観の人とあまり接しなくて済む。もっとも、実際には会ったこともない人が「いいね!」してくれたりするのだが。

○その点、ご近所にはもちろん「困ったさん」も居る。総会の時なんぞは、そのことを思い出す。でもワシなんぞは、リアルの付き合いの方をヴァーチャルよりも大事にしたいと思っているので、町内会のおつきあいは大事にしたいです。とりあえず防犯部長は今年で15年目に入ります。


<4月22日>(月)

○気がついたら、統一地方選挙の第2陣が終わっていた。ウチの選挙区は投票がなかったので、ほとんど忘れておりましたがな。

○それでも、統一補欠選挙で自民党が2連敗というのはいつ以来でしょうか。おそらく官邸としては、「沖縄ではどうせ勝てないし、大阪は勝っても負けても(維新が勝つなら)まあいいか」くらいにゆるーく考えていたのであろう。そうしたら、「そんなことでは大阪で頑張っている同志たちに示しが尽きません!」と言われたのか、安倍首相がちゃんと前日に現地入りしましたな。それで負けるのはカッコ悪いですが、いってみれば「落とし前」って感じですかね。

○ともかく、これが野党の勝利というわけではないようなので、立憲民主党などはあんまり喜んではいけないと思いますぞ。もっとも今年は亥年選挙ですから、本番は7月の参議院選挙である。これを大負けしたからと言って、安倍内閣が退陣するとは思えないのですが、その後の内閣改造は難しくなるだろう。安倍内閣を支えてきた「3A+1S」の骨格が変わってしまいますからね。気づいてみたら、「安倍一強」が「菅一強」になってしまうのかも。

○この週末、某H議員が「消費税の先送りとダブル選挙があるぞ!」と発言したことが波紋を呼んでいます。あたしゃ、どっちもないと思いますけどねえ。与党としては、「ダブルはあるぞ!」と脅しをかけることは野党をビビらせるうえで合理的なのですが、3月の納税シーズンを終えた中小・零細事業者としては、さすがに軽減税率対応などに着手しているはずなので、「アホッ、今頃言われても遅いわい!」という感じでありましょう。不動産取引だって、8%で買える特例は4月1日までですからね。今から言われても、増税延期はツーレイトなのであります。

○まさか今日は会わない(会えない)だろう、と思っていたのに、中央区長を落選した上杉隆氏がアポに義理堅くやってきました。朝からずっと「敗戦処理」をやっているようなのですが、もとより事務所を構えたり街宣車を用意したりしていないので、そこはいま一つ悲壮な感じではない。さて、次はどんなことをやってくれるのか。引き続き、生ぬる〜く見守っていきたいと存じます。

○そういえば、マック赤坂氏が港区区議に当選されたそうです。まあ、コメディアンが大統領になってしまうウクライナに比べれば、可愛いものですな。個人的には、台湾総統選挙にホンハイの郭台銘(テリー・ゴウ)会長が出馬するというのは、まことに面白い動きだと思っております。


<4月23日>(火)

○本日は「林よしまさ君を励ます会」へ。例年とは違い、「平成デモクラシーセミナー」はないし、「G i ! n z」(ギインズ)のコンサートもない。政治家の挨拶が淡々と続く、ごく普通の政治パーティーである。そりゃそうだ、林先生、今年は改選で、7月には選挙を控えているのだから。

○いろんな人が壇上に上がるのだが、「もう4つも大臣をやっている」「国会答弁の安定度は抜群」「予算書を読める数少ない国会議員」「何をやってもソツなくこなす」などとお褒めの言葉が続く。そのうちに、「とても選挙を控えているとは思えない安定度」とか、「全身に無風感が漂っている」などと、いささかオフサイド気味の発言も飛び出すように。おそらく参院山口全県区は、和歌山県の世耕大臣とともにもっとも安泰の選挙区なのではないか。

○林先生、なにしろこれが5期目の挑戦になる。1995年に旧ワシントン組で、「当選おめでとうの会」をやったのはもう6×4=24年前のことなのだ。そりゃあ月日も流れますわな。年もとりますわな。現に平成も、あと1週間で終わってしまうのである。もちろん令和になっても、仕事の方で大挙して林さんの下に押し寄せてくるであろうことは想像に難くないのですが。

○家に帰ってみれば、『現代アメリカ政治とメディア』(前嶋和弘、山脇岳志、津山恵子/東洋経済新報社)が届いていた。昨日、東京財団政策研究所のシンポジウムで紹介されていたけれども、これはまた連休中の課題が1冊増えましたな。楽しみであります。


<4月24日>(水)

○ここに、ある論文のコピーがある。中央公論の1971年5月号に掲載された「ニクソンのアメリカと中国〜そのしたたかなアプローチ〜」という13ページものである。著者は2月26日に逝去した松尾文夫氏。松尾さんがこれを執筆した時は、すでにワシントン特派員を終えて帰国し、当時は共同通信社外信部所属であったようだ。

○この論文は、その後のキッシンジャー訪中から米中国交正常化に至る電撃的な米中和解を正確に予言したもの、として名高い。名高いけれども、読んだことはなかった。だってこれが書かれたときのワシは小学校4年生なんですもん。昭和ひとケタ世代(1933年生)の松尾文夫さんは、ワシにとってはほとんど父親の世代である。

○で、いま読み返してみると、なるほどなあ、見えている人には見えていたんだなあ、と思う。日本人の悪い癖として、「起きてほしくないことは、なるべく考えない」ところがある。誰かが起きてほしくないことを言い出すと、「空気読め」とばかりに沈黙を強いる。で、結果的にみんなで一緒に間違えてしまう。

○特に米中関係は難しい。中国の内部はもとよりわからない。ブラックボックスであるといっても過言ではない。そしてアメリカの内部については、情報は溢れているけれども、ときどき大きく間違える。まさかドナルド・トランプが当選するわけないでしょう、などとやらかしてしまう。すんません、ワシも同罪です。

○米中関係の深さを見誤り、取り返しのつかない失敗をやらかした典型が太平洋戦争であって、そのことは大きな犠牲をもたらした。そこで亡き高坂正堯京大教授は、日本外交の要諦を、「アメリカと仲良く、中国と喧嘩せず」とわかりやすく説いた。ちょうどこの週末、安倍首相はワシントンを訪ねてトランプ大統領と会い、一方で「第2回一帯一路フォーラム」では二階幹事長を北京に派遣する。まさしく教えを実践しているようなものである。

○で、この1971年の松尾論文を読み返してみると、心に残るキーワードは「ニクソン大統領のエゴイズム」である。ニクソンはリアリストであったが、エゴイストでもあった。そして当時のアメリカは、まさしくリアリズムとエゴイズムを必要としていた。だってベトナム戦争を終わらせられなかったのだもの。

○ニクソンは不思議な大統領で、「反共の闘士」と呼ばれていたけれども、内政面では意外とリベラルで、たとえば今も続くフードスタンプという制度を始めたのはニクソン政権である。あるいは今日に至る共和党の南部戦略を始めたキーパーソンでもある。当時、田中角栄通産相との間で日米繊維交渉をまとめたのも南部諸州対策であった。このことを日本では、「糸を売って縄を買う」(繊維交渉で譲って、沖縄を返還してもらう)などと称したものである。

○当時の日本では、「まさかアメリカは台湾を見放さないだろう」という見方が支配的であった。ところが「ニクソンのエゴイズム」は違っていた。アジアにおけるフリーハンドを握っていると思っていた。でないとベトナム戦争は終わらせられないし。ニクソン大統領は「アメリカ・ファースト」のDNAを体現する人物であった。

○生前の松尾さんは、「トランプはニクソンにつながるものがある」とよく言っていた。ニクソンのような戦略性、カリフォルニア州知事や副大統領としての長い政治経験は、トランプさんには望むべくもない。ただしまあ、トランプとニクソンは共和党内のある種のDNAを共有しているようにみえる。そしてワシらは、アメリカの出方をときどき間違えてひどい目に遭うのである。

○松尾論文は以下のように締めくくられている。


歴史的にみれば、米中関係の「落とし子」あるいは「対抗関係」としてとらえることもできる日米関係の中で、日本が「ニクソンのアメリカ」のエゴイズムを正確にとらえねばならないときが、ここにも来ているようである。


○さて、ワシらは「トランプのエゴイズム」をちゃんと把握できているだろうか。「起きてほしくないことは考えない」ようにしていないか。米中の間で生きていくというのは、これがあるから難しいのであります。


<4月25日>(木)

○間もなく皇位継承に伴う10連休中が始まりますが、この間の海外におけるイベントリスクについて。以下の通りご紹介しておきます。


*米1−3月期GDP速報値(4/26)
――ビックリするくらい高いかも。アトランタ連銀による「GDP Now」は、2.8%成長を予測している。どっひゃー。

*日米首脳会談、財務相会談(ワシントン、4/26-27)
――日米間で何が飛び出すか。「ドナルド、僕は選挙があるだよ。お手柔らかにね」「シンゾー、俺も選挙があるんだよ。お互い様だな。悪く思うなよ」(←きっと空耳に違いない)

*スペイン総選挙(4/28)
――世論調査は大事ないと言ってますが、与党が極右もしくは極左政党と連立しなきゃいけない、なんてことも考えられます。

*FOMC(4/30-5/1)
――世界経済の底入れシナリオが現実味を帯びてきましたが、パウエルFRBはいつまで「ハト派モード」を続けられるのか。

*英国地方選挙(5/2)
――保守党はきっと負けるだろうなあ。5月になったらメイ降ろしかも。こういうのを「メイストーム」というんでしょうか。

*米雇用統計(5/3)
――米国経済はますます好調で、NFPは20万人くらい行くんじゃないかなあ。

*中国の五・四運動100周年(5/4)
――すいません、どんなことが起きるのやら見当もつきません。


○5月7日に出社する頃には、世の中がすっかり変わっているかもしれません。お気をつけ遊ばせ。


<4月26〜27日>(金〜土)

○平成の仕事もどんどん片付いて、いよいよ世の中は連休に突入である。ワシの場合は「くにまるジャパン極」の出番が4月30日に残っているので、その日は浜松町に出勤しなければならない。たぶんそれがホントの平成最後の仕事となる予定。

○会社の方の仕事は昨日で一段落したので、午後から池袋演芸場の「三遊亭歌之介 改め 四代目三遊亭圓歌 襲名披露興行」に出かける。圓歌師匠の話は、これまでずいぶん「高齢化社会」ということでネタにさせてもらった。いや、だってほんとに好きだったんだもの。あの「中沢家の人々」を、浅草演芸ホールで2度も聞けたことは、とてもラッキーなことだったと思う。

○その圓歌師匠は2年前の4月23日に亡くなり、今月で三回忌になる。それが圓歌の愛弟子で、これまた以前からの贔屓である歌之介が襲名するいうからちょっと嬉しい。噺家としては、とにかく全力で客を笑わせるというタイプである。あたしゃ、「爆笑竜馬伝」と「B型人間」のCDを買いましたですよ。

○ということで、四代目圓歌の「母ちゃんのアンカ」を聞いて涙を流して笑いました。これ、自伝的な新作落語なんですが、ホントよく出来てるわ。国立演芸場も行ってみようかしらん。それにしても改元にあわせて襲名、というのは良い企画ですな。

○さて、土曜日になって京都に移動しました。東京駅の新幹線は偉い混雑でしたぞ。当方としては、なにしろ平成最後のアレを見なきゃいけませんので。ほれ、アレですがな。


<4月28日>(日)

○ということで、土曜日は清水五条の民泊で、日曜日は祇園四条のホテルで泊まったのですが、えらい違いでありました。結論、鴨川の向こう側は別世界。民家が連なる中を人通りも少なく、ときどき舞妓さんが傘を差して歩いているような昔ながらの空間が広がっています。「いちげんさんお断り」と言わんばかりの店が並ぶ中、エイヤッと飛び込みで入ったフレンチはなかなかの実力者でありました。

○これに対し、鴨川の手前側は恐怖の人混みでありました。これだけ大勢、観光客が歩いていると、真面目な話、日曜日の竹下通りのような感じであります。ホテルを探し当てること自体が一苦労。いやもう、これは地元の人にとってはかなわないでしょう。こういうのを「オーバー・ツーリズム」というのだそうです。

○夜は共同通信K氏とともに鴨川を見下ろしつつ「すき焼き」。お店は「いずもや」さん。屋外席で、鴨川を見下ろしつつの宴会で、これはまた贅沢な空間でありました。懐石料理ばかりじゃなくて、こういうのもいいですな。お値段は浅草今半よりもはるかにリーズナブルであったことを申し添えておきましょう。

○それにしてもタクシーの運転手さん曰く。「京都はもう、『わびさび』を感じるところじゃなくなりました」。人口150万人の都市に、膨大な観光客が日々押し寄せてくる。「遊民経済学」は新しい次元に突入しつつあるようです。


<4月29日>(月)

○春の天皇賞を現地で見ていて、軽い衝撃を受けたのはその授賞式の際でした。「天皇賞」という名の楯が贈られるとき、アナウンサーは「天皇賞が下賜されます」と言うのであります。「授与されます」じゃないんですよね。いや、もちろんその場に天皇陛下がいらっしゃるわけではなくて、そこは女王陛下のご臨席をいただく英国のロイヤルアスコットとは違うのですが、天皇賞は「下賜されます」でなければなりませぬ。それが正しい日本語でありますから。

○とはいうものの、この感覚は果たしてどれだけ理解されるのでしょうか。あるいは支持されるのでしょうか。現実が変わる前には、かならず言葉が先に変わるものです。今年の秋の天皇賞でも、言葉は「下賜されます」のままでしょうか。平成も残るところあと1日と少々。ちょっとずつ変わっていく世の中を、ほのかに感じているような気がいたします。

○「平成の楯男」(平成元年から4年まで、春天を連覇した)こと武豊騎手は、今年の春天には登場せず、香港シャンティン競馬場で迎えました。ところがチェアマンズSPで騎乗したナックビーナスは9頭中6着、クイーンエリザベス2世杯で騎乗したディアドラは13頭中6着でした。これも時勢というものでしょうか。

○クイーンエリザベス2世杯で見事、レコードタイムで勝利を収めたのは松岡正海騎手でありました。ウインブライトはこれがG1初制覇。香港で初のG1を手にしたことは父、ステイゴールドと同じでありますな(そのときの鞍上は武豊騎手であった)。物語はかくして次の時代に引き継がれるのであります。幸いなるかな。


<4月30日>(火)

○朝、雨の中を文化放送まで出かけて、「くにまるジャパン極」に。これが平成最後の仕事。と言って、9時半には終わってしまう。せっかくなので、浜松町から山手線を逆回りして帰ってみましたが、どうということはありませんでしたな。

○「現代アメリカ政治とメディア」を読み始めるも、ついつい寝てしまう。まあ、いいではないか。10連休はまだ4日目である。令和最初の仕事には、当分、近づかないようにしたいものである。













編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki