●かんべえの不規則発言



2024年1月






<1月1日>(月)

〇皆さま、明けましておめでとうございます。あらためまして今年はこんな感じで考えております。


十干の【甲】(きのえ)は先頭に位置する。「甲乙丙丁」の序列ではもっとも高い評価となる。陰陽五行では「木」性の「兄」に当たる。

【甲】の形は、新芽が固い殻(甲羅)を押し破って萌え出してくる状態で、成長過程では最初の段階である。「旧体制が破れて革新が始まる」様子を意味する。2023年は日本銀行の非伝統的な金融緩和政策が一段落した。2024年は「十年一昔」の新しいサイクルが始まるだろう。

十二支の【辰】(たつ)は陰陽五行では「土」性の「陽」に当たる。「振るう」の意味で、陽気が動き草木が伸長する状態を表す。動物は「龍」(竜)が当てられる。「雲をおこし、雨を降らせ、春分には天に昇り、秋分には淵に隠れる」。十二支で唯一想像上の動物である。

過去の辰年を振り返ると、「辰巳天井」という相場格言通り、善し悪しが極端に分かれる。2012年は第2次安倍内閣発足で年末高、2000年はハイテクバブルの頂点。1964年は証券不況の年であった。「昇竜」もあれば「竜頭蛇尾」もある。ボラティリティの高さにご注意を。

なぜか大型疑獄事件が多く、1988年はリクルート事件、1976年はロッキード事件が起きている。2024年は政治資金パーティー裏金問題で、以下同文となりそうだ。

木の陽である【甲】と土の陽である【辰】の組み合わせは、ド派手な年の到来を予感させる。まっすぐ堂々とそそりたつ大木に、天に昇る龍を重ねて仰ぎ見るイメージか。物価も上がるが賃金も上がる。女性が活躍して若返りも進む。これまでに蓄えた内部留保を投資に回し、日本経済がダイナミズムを取り戻す年としたいものである。

先の【甲辰】(きのえ・たつ)は1964年である。アジアで初となる東京夏季五輪大会が開催され、これに合わせて東海道新幹線が開通し、東京―新大阪間を4時間で結んだ。日本はIMF8条国に移行し、OECDにも加盟した。「敗戦」という原罪を抱えていた日本が、とうとう先進民主主義国に迎え入れられた年と言える。

ちなみにその前の【甲辰】である1904年は、日露戦争開戦の年であり、日本軍が旅順203高地を占領している。この国には、まだ世界を驚かせる力が残っているのだろうか。そのことが試されそうな2024年である。


<1月2日>(火)

〇昨日の地震にはビックリしました。富山市内のウチの家族などは無事でしたが、実家の本棚がぶっ倒れていたりして、やっぱり思い切り揺れたようです。

〇隣の石川県、特に能登半島の被害が半端ないようです。余震もけっこう、あるみたいです。と、言っている間に、震度5の地震があったとのこと(1月2日、17:13PM)。まだまだ警戒モードが必要ですね。

〇北陸の地震といいますと、2004年10月の中越地震、2007年3月の能登半島地震が思い浮かびます。加えてこの3年くらい、能登の珠洲市周辺は群発地震のようになっています。去年の5月にも地震がありましたからね。

〇2024年は始まったばかりですが、「ふふふ、この程度はほんの小手先」と誰かに言われているような不気味さを感じます。実は年明けから以下のような資料を作りながら、あーでもない、こーでもないと考えていたのですが、あくまでも「予定は未定」。どうなるかわかったものではない。

〇内外ともに、そして政経ともに盛りだくさんの予定が詰まった2024年です。とりあえず最初の3か月分だけ公開しておきます。


1月1日(月)  新NISAがスタート
1月1日(月)  ベルギーがEU議長国に(6月末まで)
1月4日(木)  大発会
1月4日(木)  首相、伊勢神宮を参拝。年頭記者会見
1月7日(日)  バングラデシュ総選挙
1月13日(土) 台湾総統・立法院選挙
1月13-14日  大学入学共通テスト
1月15日(月) アイオワ州党員集会(共和党)
1月15〜19日 ワールドエコノミックフォーラム(スイス・ダボス)
1月19日(金) 米議会でCR(つなぎ予算:国防・交通関連)の期限
1月22-23日  日銀金融政策決定会合(*展望リポート有)
1月23日(火) ニューハンプシャー州予備選挙(共和党)
1月24日(水) 経団連労使フォーラム(春闘交渉がスタート)
1月25日(木) この日までに東京地検特捜部が「パーティー券疑惑」捜査を終了
1月26日(金) 通常国会召集?(会期150日〜6月23日まで)
1月下旬    米バイデン大統領が一般教書演説
1月30-31日  米FOMC

2月2日(金)  米議会でCR(つなぎ予算:その他)の期限
2月3日(土)  サウスカロライナ州予備選挙(民主党)
2月4日(日)  京都市長選投開票
2月4日(日)  立憲民主党大会
2月8日(木)  パキスタン総選挙、ネバダ州党員集会(共和党)
2月10日(土) 中国などで春節(〜17日まで)
2月14日(水) インドネシア大統領選挙
2月15日(木) 23年10-12月期GDP速報値→プラス成長を確認?
2月19日(月) ウクライナ復興会議(都内、ゼレンスキー大統領来日)
2月21-22日  G20外相会合(伯・リオデジャネイロ)
2月下旬    岸田首相、国賓待遇で訪米?〜日米首脳会談
2月24日(土) ロシアのウクライナ侵攻2周年
2月24日(土) サウスカロライナ州予備選挙(共和党)
2月26〜29日 WTO閣僚会合(UAE・アブダビ)
2月28-29日  G20財務相・中央銀行総裁会合(伯・サンパウロ)
月内      GX経済移行債を発行

3月1日(金)  イラン議会選挙
3月3日(日)  東京マラソン
3月4日(月)  ワシントン連邦地裁で「1月6日事件」初公判(トランプ裁判@)
3月5日(火)  スーパーチューズデー(この日で35%の代議員が決定)
3月6〜10日  米州開銀年次総会(ドミニカ共和国・プンタカナ)
3月10日(日) アカデミー賞授賞式(ロサンゼルス)
3月上旬    中国全人代(北京)
3月上旬    イスラム圏でラマダン入り
3月12日(火) 共和党予備選挙(WA/MS/MO/WA)
3月中旬    春闘集中回答日
3月16日(土) 北陸新幹線が敦賀まで延伸
3月17日(日) 自民党大会
3月17日(日) ロシア大統領選挙
3月18-19日  日銀金融政策決定会合
3月19日(火) 共和党予備選挙(AZ/FL/IL/OH)
3月19-20日  米FOMC
3月24日(日) 熊本県知事選挙投開票
3月25日(月) ニューヨーク地裁で「口止め料事件」初公判(トランプ裁判A)
 月末     令和6年度予算が成立


<1月3日>(水)

〇北陸でどんなことが起きているか。これはもう地方紙のサイトを見るのが手っ取り早い。わが郷里、富山県の北日本新聞社が元日に出した号外は以下の通り。


●県内震度5強。けが人多数 自衛隊要請 能登でM7・6 震度7


〇いや、それはもう能登の方がよっぽど大変なんですけど、写真を見ると富山県内も結構ヤバいです。だいたいが災害が少ない県なので。自衛隊の出動を要請したなんて、そんな前例はあったかなあ(豪雪の年にあったかもしれない)。そんな中でも、「朝乃山、正念場の1年」などという記事もあるところが、いかにもわが富山県です。

〇問題はお隣り、石川県の北國新聞さんです。こちらはデジタル面を無料で公開中。無意味にトラフィックを増やしてしまっては申し訳ないですが、写真を軽く見るだけでも事態の深刻さが窺えますので、一読推奨です。

〇こうしてみると、地方紙の存在って重要ですね。今回の能登地震は「過疎地の災害」ですから、被害の状況を把握すること自体が簡単ではない。まして復興をどうするかというと、複雑な方程式を解くような問題になってしまう。地元のメディアがないと、その辺の意思形成が難航しそうです。

〇地方紙ってどれくらい読まれているのだろう?と思ってぐぐってみたところ、こんなデータにぶち当たりました。石川、富山はいずれも地方紙が頑張っている県なんですね。地方紙の世帯普及率が半分を超えている県は全国に9つありますが、3位の徳島県と8位の長野県以外は全部、日本海側です。

〇もっとも「紙は読まれない」という時代になって久しく、全国紙もいかに利益モデルを作り直すかで苦悩している。まして地方紙はどうするのか。考えさせられる事態であります。


<1月4日>(木)

〇年明けに送るべき原稿2本と来週の講演会資料を完成させ、あーやれやれ、ホッとした。どれ、少しはのんびりしようかの、と思ったとたんに腰に来てしまった。いたたたたたた。

〇油断大敵。だが、こうなってしまったら致し方なし。今までの経験から言って、腰痛はすぐには収まらない。痛みは、消えたり治ったりすることはない。ある程度の時が流れてから、自然と忘れるものである。あいたたたたた。

〇まあね、腰痛はあっても、メシを食えば旨いし、カード会社のポイントで仕入れたタダのワインだって飲める。文句を言ったら罰が当たるのである。そんなことより、明日は新年会の立食パーティーがダブルヘッダーである。笑顔ではせ参じなければなるまいて。


<1月5日>(金)

〇会社で席を立って、コピー機やカフェテリアやトイレなどに移動するたびに、「いてててててて」と腰に痛みが走る。ああ、なんて日々であろうか。うっかり早めに義理を果たしたばっかりに、気が緩んでこんな苦労をしょい込んでしまうとは。それともやはり日頃の不摂生がいかんのだろうか。

〇それはさておいて、夕方から時事通信新年互例会へ。今年は会場いっぱいに遠慮なくお客を呼んでいる上に、帝国ホテルがちゃんと料理をサーブしている。そういえば昨年はまだまだ警戒モードだったんだよな。

〇岸田総理が来場。防災服でお出ましである。瞬間、菅直人首相の記憶が蘇り、この人やっぱりダメなのかも、という思いが走る。なおかつ、昨年と同じ黒いバインダーをご持参されている。ああ、この人、総理になって3年目なのに、まだ紙を読むというのか。来年はかならずや違う人であろうな、と確信するものである。

〇そこから今度はホテルニューオータニに転じて、日本貿易会の新春懇親会へ。こちらもとっても久しぶりである。とはいえ、行ってみれば昔懐かしい人たちと再会するころができる。丸紅の今村さんと会ったら、モーサテの出番は当方が1月22日、先方が1月26日であるとのこと。良かった。これが逆であったらネタが被らないようにと悩ましいところであった。

〇こんな風に立食パーティーが普通に開業できると、ホテル業にとってもホッとひといきでありましょう。ワシのような情報稼業にとってもまことにありがたい。本日、各方面の方々から仕入れたネタは、原形をとどめないポタージュのようにして、いずれ当欄などにて公開していく所存であります。

〇こうなると現金なもので、夜になると腰痛のこともかなり忘れている。仕事さえ楽しければ、大概のことはどうだっていいのです。

〇さて、本日の哀しいニュースはこちら。山崎元さんが元日にこの世を去っておられました。今週分の東洋経済オンラインの原稿は、昨日の早めの時間に送ったところが、夕方になってご家族から連絡が届いていたという次第。寂しいです。ぐっちーさんに続いて山崎さんまでも。まあ、連載も10年以上続いているとはいえ、同世代人に先立たれるのか辛いものがありまする。


<1月6日>(土)

〇山崎元さんが亡くなったことは、今朝の朝刊にも出ているし、X(旧ツイッター)のニューストレンドにも入っている。やっぱり大きな事件だったのだ、とあらためて教えられる。

〇当溜池通信としては、こういうときは弔辞みたいなものを書くのが通例であるのだが、昨晩、帰りの電車の中でポツポツとツィートしていたら、なんかもう「出がらし」になってしまった感がある。東洋経済オンラインの本日公開分にも、後から書き足したオバゼキ先生とかんべえの追悼文がついているので、これ以上、重ねることは多くはない。

〇そこで「東洋経済オンライン」の連載のために、山崎氏、オバゼキ先生、編集F氏、かんべえの4人がずっと続けてきたメールのやり取りを、過去にさかのぼって読み返してみた。これは懐かしい。4人は原稿のやり取りやゲラチェックをするかたわら、他人の原稿にツッコミを入れたり、競馬の結果や折々の事件(ウクライナ戦争や日銀人事など)、将棋界の出来事(藤井八冠やAIに関するもの)について語りあっている。

〇いろんなやり取りを読み返しているうちに、そうか、自分たちはコロナ下で自由に会えなかったのだ、ということを思い出した。競馬場にも行けなかったし、一緒に飲む機会も少なかったし、山崎さんを病院にお見舞いすることさえできなかった。それどころか、手術の前にコロナに感染したらマズいから、ということで山崎さんは家族とも離れてひとりで暮らしていたのだった。

〇まあ、そんな風に過ごしてきたのだ、この3年間のわれわれは。本当に大変だったのだが、のど元過ぎればなんとやらで、速やかにそのことを忘れられつつある。とりあえず自分はスカッと忘れかけていた。

〇生きるか死ぬか、というのは誰にとっても重い問題である。そのことはこの3年間、特に重かった。ぐっちーさんを見送った2019年には、まだそんなことはなかったのであるが。

〇ぐっちーさんも山崎さんも、死因は食道癌でした。そこでいろんな人から、「かんべえさんもお気を付けください」と言われています。でも、ワシはあの二人に比べるとはるかに小市民的なので、たぶん大丈夫なんじゃないかなあと。

〇それよりも問題は今日の腰痛。今年初めての「火の用心」はちゃんとやりました。


<1月7日>(日)

〇能登の地震が起きたのは元日だったから、今日でちょうど1週間ということになる。被災された方々は大変なご苦労だと思います。しかも、これから天候が悪化するとか。この時期、雪が降るときには雷鳴を伴って、「ブリおこし」というんですよね。言葉はめでたく聞こえますけど、実際に聞くとしみじみ不気味なものなんですよ。アレは。

〇ニュースの報道などでは、ワシの耳にはとってもよく聞きなれたイントネーションとアクセントが聞こえくる。しみじみ富山と石川は言葉が近いなあ、と感じる。あれを聞くと、もう全然他人事とは思えない。

〇富山県内は、中央の呉羽山を挟んで「呉東と呉西」に分かれていて、「富山と高岡は仲が悪い」と言われる。が、全国レベルで見たらたいしたことはない(少なくとも南部と津軽ほどではない)。これが石川県に行くと、加賀と能登は南北でまったく別世界である。しかも少なからぬ人たちが、「金沢>石川」だと思っている(金沢市の人口は県内の4割を占める)。隣から見ていると、「能登はちょっとお気の毒」なのである。

〇ちなみにワシが小さかった頃から、富山の誰かが「能登へ行ってきた」という話には、かならず「道路が混んで大変だった」というオマケがついていた。ボランティアに行きたい人も、ただのやじ馬も、名前を売りたい政治家も、そこだけは気を付けてください。先日お会いした福島の方によれば、「今こそ恩返しを!と思っている県民は少なくない」そうですが、まずは地理的に近い新潟県あたりから始められるのがよろしいかと思います。

〇さて、以前のお正月に「グルーポンのおせち事件」というものがありました。ネットで注文したおせち料理が、届いてみたらとってもしょぼかった、という他愛のない話で、それでもネット上では非難轟々であったものである。そのすぐ後に「3/11」東日本大震災が起きて、「それどころじゃない!」という話になった。本物の悲劇が訪れる前には、くだらないことが深刻に思えたりするものです。

〇去年の暮れに、「高島屋のクリスマスケーキ事件」があったときにも、同様の匂いを感じたものである。そんなさあ、ネット販売で買ったケーキが崩れていたからといって、社長に謝罪会見させる社会はどこかおかしいと思うぞ。ネット社会というものは、本質的にヒステリックな性質を帯びやすいので、そういう点は気を付けた方がいいと思います。

〇そうそう、志賀原発は私も視察に行ったことがありますが、あそこのユニークな点は裏山の上に、わざわざ非常用の溜池が作ってあること。あんな原発はめずらしいですよ。北陸電力という会社は、基本的に富山と石川と福井の3県の田舎者ばっかりでやっている会社ですから、そういう点は念が入っているのです。記者会見などでは、たぶん気が利かないことが多いと思いますけどね。


<1月8日>(月)

〇今日はシンザン記念(京都競馬場、11R、芝1600m)である。土曜日に載ったワシの予想記事が、はからずも「山崎さん追悼号」になってしまったので、こうなると出来れば当たってほしい。ということで、本日はおうちで競馬。


筆者の狙いはノーブルロジャー。いまだ1戦1勝の戦績に過ぎないが、2歳新馬戦をノーステッキで快勝している。父はアメリカの競走馬パレスマリスで、今年から日本で種牡馬となる。先に朝日杯FS(フューチュリティステークス)を制したジャンタルマンタルと同じで、今年注目の血筋ということになる。

鞍上の川田将雅騎手は、2023年リーディングジョッキーの第2位に輝いた 。昨年はクリストフ・ルメール騎手ばかりが目立った印象があるけれども、川田騎手の「勝率0.305」(3割5厘)は驚異的な成績である。騎乗回数495回のうち151勝し、連対率(2着内率)は0.477、3着内率が0.600というのだから、この堅実さは勝率0.248のルメール騎手を大きく凌ぐ。
ご同輩、今年は「迷ったら川田」でいくのも一案ですぞ。


〇いや、ホントに来てくれましたよ、ノーブルロジャーが。それもとっても強い勝ち方でした。今日は川田騎手の調子がいまひとつで、9R蹴上特別では1番人気で4着になったり、ワシに損害を与えるくらいだったので、少々心配だったのだが。単勝と馬単ゲット。パチパチパチ。

〇編集F氏が教えてくれたのだが、ノーブルロジャーは山崎さんと誕生日が同じ(5月8日)なんだそうで、これは応援しなきゃいかんですな。パレスマリスはひょっとしたらすごい種牡馬かもしれません。ジャンタルマンタルも含めて、その産駒は今年は大注目ですな。


<1月9日>(火)

〇今年最初の講演会の仕事は、国土交通省のマネジメント研修にて、「2024年の日本経済展望」をお話しする。完全リモート方式だったのだが、本日は機材トラブルもあり、ちょっと申し訳なかったかなあ、との感あり。

〇ところが国交省側では、本日の参加者は半分近くが「辞退」(ドタキャン)である。いや、それは無理もないんです。年初からの能登地震に航空機事故に、海保に至っては死者まで出ている。まさに役所として非常事態の真っただ中なのである。

〇国交省の仕事は2017年から連続してお引き受けしていて(21年はコロナにより中止)、昨年暮れの時点では、「そうか、年明けは国交省か。政策ネタではライドシェアとリニアとダイハツと、後は万博くらいかあ〜」などと軽く考えていたのであった。それが年明けからの緊急事態で、この1週間のご苦労はいかばかりであったか。どう考えても、研修どころではない。

〇ということで、まことにお気の毒であるのだが、国交省の仕事は国民の側から「ちゃんと見えている」点がお値打ちなのかもしれない。これが厚労省ともなると、コロナ対策でも高齢化でも年金問題でも、あまりにも専門性が高くて、「お前たち、国民の側を向いていないだろう!」(自分たちの利権を守ってるだけだろう)と見えてしまう。本当のところは知らんけど。

〇その点、地震対策や交通事故対応は、何しろ起きたらすぐに動かねばならず、やっていることは素人でも理解しやすい。なおかつ、能登半島でも羽田空港でも、今何が起きているかはすぐに映像で届けれらてしまう。とりあえずサボってはいられない。

〇つくづく行政の仕事もさまざまなのである。財政政策とか産業政策とか外交政策みたいに、いつも議論を戦わせている世界がある一方で、「理屈は後だ、まずは現場に急行しろ!」みたいな世界もある。いやはや、お疲れさまです。


<1月10日>(水)

〇今週発表されたユーラシアグループの「Top 10 Risks」では、第3位に認定された「ウクライナ分割」(Partitioned Ukraine)が、もっとも重く感じられました。1位の「米国の敵は米国」とか、2位の「瀬戸際に立つ中東」は、それほど意外性がないですからね。

〇あらためて、この部分の日本語版冒頭部分をご紹介しておきましょう。


ウクライナは今年、事実上分割される。ウクライナと西側諸国にとっては受け入れがたい
結果だが、現実となるだろう。少なくとも、ロシアは現在占領しているクリミア半島、ド
ネツク、ルガンスク、ザポロジエ、ヘルソンの各州(ウクライナ領土の約 18%)の支配権
を維持し、支配領域が変わらないまま防衛戦になっていくだろう。しかし、ロシアは現
在、戦場での主導権を握っており、物的にも優位に立っている。今年さらに土地を獲得す
るかもしれない。2024 年は戦争の転換点となる。ウクライナが人員の問題を解決し、兵器
生産を増やし、現実的な軍事戦略を早急に立てなければ、早ければ来年にも戦争に「敗
北」する可能性がある。


〇まことにイヤ〜な感じがしますが、欧米の指導者層の間では、既にこういう気分が支配的になっているのでありましょう。だってアメリカの次期大統領はトランプかもしれないんだし。最悪、ゼレンスキー大統領が放り出される、なんてこともあるかもしれません。

〇他方では、クリミアやドネツクのようにロシア人の多い地方を切り離してしまえば、安心してウクライナをEUやNATOに入れることができるようになる、てな現実論もあるのかもしれません。今年のNATO首脳会議は7月にワシントンで行われる予定ですが、果たしてその頃はどんな風になっているのやら。

〇それでもウクライナ戦争が停戦になるとしたら、それはけっしてネガティブに受け止めるべきではないと思います。「ここで和平を持ち出すようでは、21世紀版の『ミュンヘン協定』になってしまう!」という批判が出ることは容易に想像がつく。つまりプーチン大統領に「ご褒美」を与えるべきではない、という理屈です。

〇しかし20世紀に上り調子であったナチス・ドイツと、21世紀にどう見ても下り坂の「プーチンのロシア」を、同列に論じるのはやや無理があるのではないか。こんなことを言っている間にも、来週から共和党の予備選挙は始まってしまうし、そこではかなり「内向き」で「アメリカファースト」な議論が展開される可能性が大である。

〇ユーラシアグループは、「ウクライナが分割されれば、国際舞台における米国の信頼も損なわれる」と懸念しているけれども、それはもうとっくに信頼は地に落ちていると考えるべきではないのか。だって、現時点ではどう見てもトランプさんの方が優勢なんだもん。

〇それにしても今週のThe Economist誌の表紙には驚いたな。1942年生まれのビンテージカー(バイデンはこの年に生まれた)は、2024年になってもちゃんと走れるのか、というのである。「世界で最も難しい仕事を、向こう4年間も80代にやらせるべきではない」などと、強烈なことを書いている。まあ、いちいち賛同してしまうのですけれども。


<1月12日>(金)

〇本日発表の景気ウォッチャー調査12月分は、少しビミョーな結果になりましたね。


12月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差1.2ポイント上昇の50.7となった。

家計動向関連DIは、サービス関連等が上昇したことから上昇した。企業動向関連DIは、非製造業等が上昇したことから上昇した。雇用関連DIについては、上昇した。

12月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差0.3ポイント低下の49.1となった。

企業動向関連DI及び雇用関連DIが上昇したものの、家計動向関連DIが低下した。

なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差1.1ポイント上昇の50.9となり、先行き判断DIは前月差0.8ポイント低下の48.6となった。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている。」とまとめられる。



〇年末の人の動きや歳末商戦を見ていると、「あ、これは景気が戻ってきている」と思ったので、現状判断DIが50を超えたのは「なるほどね」。ただし、先行き判断はあいかわらず50を割ったまま。飲食関係はいいけれども、住宅関係なんかが良くないですね。コメント欄を見ると、以下のような指摘に「なるほどなあ」と感じるところである。


(◎)「忘年会シーズンの繁忙期ということもあり、予約でほぼ毎日満席状態である。1品料理を注文する客の客単価が上がっている」(北関東=一般レストラン[居酒屋])。

(〇)「冬のシーズンはこれまでもインバウンドが後押ししていた面があるが、今年はその動きが特に顕著である。アジアや欧米、オーストラリアなど、いずれの国からも予約がみられ、高単価、高稼働が見込めるため、今後の景気はやや良くなる(北海道=観光型ホテル)

(□)「年明けも物価高騰の影響で食料品の苦戦は継続するとみている。しかし、全体的に人流が活発になっており、春に賃金が上昇することへの期待もあって、外出関連アイテムなどは好調に動くとみている」(東北=百貨店)。

(▲)「受注量が減少している。また、資材高騰の影響を受けて住宅価格が大幅に上昇している。その結果、住宅着工件数が減少し、分譲住宅にも影響が出ている(四国=木材木製品製造業)。


〇要するに景気はまだら模様。いいところもあるし、悪いところもある。ただし上記は12月末の「街角景気」です。これに1月1日の能登震災の影響をどう読み込むか。年明け後の消費も、なんとも悩ましい感じだなあ。


<1月14日>(日)

〇台湾総統選挙の結果はこんな風になりました。


01 柯文哲 369萬0466票

02 頼清徳 558萬6019票=当選!

03 候友宜 467萬1021票


〇1位と2位の差は100万票以内だが、とにかく「柯文哲がよく取ったなあ」の感がある。これなら彼は4年後もワンチャンスありそうです。逆に候友宜さんに4年後はないでしょうな。というより、国民党はこれで総統選3連敗ですから「負け癖」がついてしまった。4年後は誰を出せばいいのか。相当な若返りが必要になるのではないかなあ。

〇立法院選挙(113議席)はこんな図式に。


国民党 52議席

民進党 51議席

台湾民衆党 8議席

その他 2議席


〇民進党が過半数割れしたので、この先、キャスティングボートを握るのは台湾民衆党ということになる。国民党と民進党の両方から秋波が寄せられることになりそう。頼清徳氏の側からは、「柯文哲氏に重要ポストを渡すから、立法院では協力しましょう」みたいな呼びかけがありそうです。まあ、そこは柯文哲氏ですので、簡単には乗ってこないでしょう。水面下のやり取りが当面は続きそうです。

〇台湾の選挙制度では、新しい総統の就任式は5月20日です。なぜ4か月も間が空いているかというと、ここはアメリカのシステムに似ていて、「政権交代に備えて時間に余裕を持たせている」のだと思います。今回の場合は、台湾の歴史上はじめての「同一政党の3連勝」ですから、そこがちょっと微妙な感じになります。民進党内の派閥継承トラブル、みたいなことも起きるかもしれません。

〇特に興味深いのが蔡英文氏の今後の処遇です。今まで2期8年を務めあげた総統は、次は野党政権下ですることがなかったけど、今度は与党のままである。何か名誉職を差し上げたいところですが、頼清徳さんとしてはやりにくいことでしょう。蔡英文さんは年も若いし、英語が得意でPhDもある人なので、どこか国際機関の長のポストに就けるといいのですが、中国は反対するでしょうね。彼女の次のキャリアをどうするか、というのも注目点の1つになりそうです。

〇この選挙結果が中国にどう影響するか、というのはよくわかりません。台湾の選挙に関する中国の介入は失敗の連続であり、今回もまた恥ずべき歴史を新たに上書きしたことになる。ただし全体主義社会においては、「大き過ぎる失敗は罰せられない」ので、まあ、不問に付されるのでしょうね。長らく福建省で下済み機関を過ごしてきた今の某最高権力者殿は、自己批判すべきではないかと思いますけれども。

〇次なる問題は、5月20日の頼清徳新総統の就任式に海外から誰が出席するかということ。日本から誰が行くのか、という問題もありますが、アメリカのマイク・ジョンソン下院議長あたりは当然、そういう話が出るでしょうね。いろいろありそうです。


<1月15日>(月)

〇いよいよ本日はアイオワ州党員集会。共和党の党員集会の様子はこちらの写真をご参照。

〇逆に今年は党員集会を開けない民主党としては、とっても残念モードでありましょう。確かに4年前の落ち度(正確な開票ができなかった)はあるとはいえ、昔はパープルステーツであったアイオワ州が、今では歴然としたレッドステーツになってしまった、というのが背景にある。今となっては、宗教的右派の影響が強過ぎるし、トランプさんが掘り起こした支持者も多い州なんです。

〇以下は当溜池通信流の勝手な予測であります。ちなみに2020年、4年前のアイオワ州党員集会の前夜はどんな感じだったのかは、これ(溜池通信Vol.683号)を読むといろんなことが思い出せます(と言うより、ワシ自身が忘れておった)。

〇まずトランプ前大統領の得票率が5割を超えるかどうか。RCPのデータ(1月5〜13日)によれば、アイオワ州党員集会における世論調査は「トランプ52.5%、ヘイリー18.7%、デサンティス15.5%、ラマスワミ6.5%」です。トランプ氏としては、確実に緒戦で5割以上を得票して、それ以降の予備選を一気に消化試合にしてしまいたい。ところが現地の天候が悪いそうなので、これはどうなるかわからない。この季節のアイオワ州は寒いのです。

〇過去にもそうだったように、予備選プロセスには独自の効果があって、始まった瞬間にそれまでとは違う物語が始まることがある。2008年の民主党予備選挙で、アイオワ州党員集会の前日までは誰もがヒラリー・クリントンが「不可避な候補者」であると思っていた。バラク・オバマの奇跡の物語は、アイオワ州から始まるのである。

〇次なる焦点は「誰が2位になるか」であって、どうもニッキー・ヘイリーが取りそうである。これはロン・デサンティスにとっては一大事であって、彼はアイオワ州に賭けていて、これまで膨大な資金をつぎ込んでいる。ここで3位になるようならば、以後の資金集めにも支障をきたす。いきなりゲームセットとなっても不思議ではない。

〇今から言っても詮無い話であるが、1年前の今の時期にはデサンティス知事こそが共和党のフロントランナーであった。トランプ氏は中間選挙でミソをつけてしまい、元気がなかったのである。ところが「州議会があるから」などとカッコをつけて、5月まで選挙活動を封印している間に、トランプ旋風が吹き荒れてしまった。その理由は「刑事被告人になったから」である。3月30日の「口止め料事件」なんぞは公判としても筋ワルで、あんなくだらない提訴はやめときゃよかったのに、と思われて仕方がない。後知恵ですけど。

〇ともあれ、デサンティス氏にとっては、選挙戦は明日にも終わってしまうかもしれない。ああ、なんて残酷な。こんな風に「サドンデス」が頻発するのが米大統領選挙予備選プロセスの醍醐味であります。ああ、もったいない。でも、面白い。いつの時代も、他人が真剣にやっていることは見ていて面白い。だから選挙は楽しい。

〇逆にヘイリー氏は、ニューハンプシャー州に賭けている。アイオワ州は「3位でオッケー」なのである。それがアイオワ州で2位になり、ニューハンプシャー州でトランプ氏にいいところまで追いつければ、格好のストーリーができあがる。RCPのデータ(1月3〜10日)によれば、NH州は「トランプ43.5%、ヘイリー29.3%、クリスティー11.3%、デサンティス6.5%、ラマスワミ5.0%」である。そしてクリスティーは先週末で撤退した。彼は「トランプを倒すためなら何でもする」男である。

〇NH州予備選挙は、「オープン・プライマリー」で行われる。つまり共和党員でなくても、誰でも予備選に参加できてしまう。そこで無党派層が大挙して流入するので、意外な結果が出やすい。ここでヘイリー氏がトランプ氏に肉薄するようだと、共和党内は一気に緊張感を増すだろう。もっともこの日に民主党員が、「トランプを勝たせてやれ」みたいな愉快犯的な投票行動をする可能性もある。まあ、その辺は分からない。

〇その次の勝負所は2月24日のサウスカロライナ州予備選挙で、ここはヘイリー氏の地元。これが将棋であれば、AIの評価値は今も「トランプ氏が勝率85%」くらいを示しているのだが、「ヘイリー氏の勝ち筋」がうっすらと見えてきた。それは1週間前まではまったく見えていなかったストーリーである。いやもう、ゾクゾクするじゃないですか。

〇まあ、明日になればわかる話であり、そして明日にならないとわからないことなんですが、だからこそ選挙は面白い。すいませんね、オタクで。


<1月16日>(火)

〇本日の結果はこんな感じ。

Candidate Votes Percentage Delegates
Donald Trump 56,260 51.0% 20
Ron DeSantis 23,420 21.2% 8
Nikki Haley 21,085 19.1% 7
Vivek Ramaswamy 8,449 7.7% 3
Ryan Binkley 774 0.7% 0
Asa Hutchinson 191 0.2% 0
Chris Christie 35 0.0% 0
Other 84 0.1% 0


〇選挙人(Delegates)の数からいったら、緒戦のアイオワ州党員集会の結果は「九牛の一毛」です。大事なのは緒戦を勝ったことから得られる「勢い」(Big mo)でありまして、得票率で5割を超えたトランプ氏は十分に勢いを見せつけました。今の共和党においては、ヘイリー氏のような「レーガン流」は古く感じられて、「アメリカ・ファースト」こそが主流派を形成しているのかなあ、と感じさせられるところです。

〇デサンティス氏もしぶとく2位につけました。もっとも彼の場合、次の仕込みがあまりできていない。宗教的右派が強いアイオワ州で2割が限界であれば、なかなか伸び代は乏しいように見える。1年前には、彼こそが共和党のフロントランナーにみえたのですが。

〇ということで、来週のニューハンプシャー州は見どころ十分です。昔からNH州は、アイオワと違う結果を出すことで有名ですから。昨日書いたようなOpen Primaryのようなギミックもある。引き続き、NH州の世論調査には注目していきたいと思います。

〇これは一般論として、シェアで2倍以上の差をつけられている場合、逆転は容易なことではありません。先頭ランナーに「エラー」がないと苦しいですね。とはいえ、これは将棋でも駅伝でもなんでもそうですが、真剣勝負をやっている人たちの間ではときどき信じられないことが起きる。選挙もそれがあるから面白い。

〇それとはまったく別に、明日は岡山県に出没いたします。


<1月17日>(水)

〇中国銀行と岡山経済研究所さん企画の新春経済講演会で、本日は岡山県笠岡市へ。ここは6人の講師が岡山市、倉敷市、津山市、笠岡市、福山市、高松市の6か所を順繰りに回っている。不肖かんべえはコロナによる中断を挟んで、昨年は倉敷市、一昨年は岡山市。ローテーションは既に2周目に突入している。

〇本日の会場である笠岡グランドホテルは、前回は2016年1月に訪れている。ホテル内のそこかしこに美術品が飾ってある面白い場所である。だが、それって既に8年も前のことであるし、それってあのトランプさんがアメリカ大統領選挙に勝利した年である。

〇あれから世界は「トランプ政権」を体験し、それからコロナによる混乱期があり、バイデン政権が誕生し、2つの戦争が勃発し、そしてとうとう今日に至っている。で、トランプさんが当選しちゃったらどうしよう、と「もしトラ」の心配をしている。いや、真面目な話、心配じゃないですか。

〇ということで、通例であれば日本経済を中心に語るべきところを、本日は地政学リスクに重点を置いてお話しさせていただく。昨日のアイオワ州党員集会の分析はもちろん、「GDP世界4分の計」もご紹介いたしましたですぞ。

〇行きは新幹線で、帰りは岡山空港からJAL便で。考えてみたら、到着するのは羽田空港のC滑走路である。あはははは、新年早々、縁起がいいじゃないですか。もちろん、何事もなくランディングしましたぞ。

〇ワシは飛行機に乗るときは、いつもちゃんと上着を着て、ポケットには財布と携帯電話と家のカギと手帳を入れ、それから国際便の時は必ずパスポートも入れている。いざというときは身一つで逃げられるように、という心がけである。キャビンアテンダントさんに上着を預ける、なんて人の気が知れない。

〇それってやっぱり正しいことだったんだ!と先般、羽田空港で発生した事故が教えてくれた。問題は愛用のiPad miniでありまして、これだけは有事の際にも手に持って脱出するかもしれません。まあ、それくらいは許してもらえるよね。基本がテキトーな人間なんですが、実は心配性なところもあったりして。


<1月18日>(木)

〇あらためてアイオワ州党員集会の「教訓」を考えると、その最たるものは「今回は世論調査通りの結果になった」ことではないだろうか。

〇事前のトランプ支持率が52%。そして実際の得票が51%だった。つまり「事前の予想通り」。これが2016年選挙では、トランプ氏の得票は一貫して世論調査を上回り、「トランプ支持者は正直に答えてくれない」と言われたものである。ところが、2024年にもなると、トランプ支持者はいまさら後ろめたく感じたり、隠し立てする必要を感じていないようだ。まあ、いちおうは前職大統領ですし。

〇その2の教訓は、緒戦の予備選挙で「5割越え」はトンデモナイ数字だということである。2016年選挙におけるアイオワ州党員集会では、@テッド・クルーズ27.7%、Aドナルド・トランプ24.3%、Bマルコ・ルビオ23.1%という接戦だった。これが普通の予備選挙の結果である。5割越えということは、やっぱり「トランプ氏は事実上の現職候補」なのではないか。

〇その3の教訓は、やっぱりデサンティスはもう終わっとるな、ということ。事実上、共和党は3人の争いに絞られているのだが、一強一弱一番外地。仮に将棋中継のように「AI評価値」が映し出されたら、「トランプ85%、ヘイリー15%、デサンティス0%」みたいな残酷な数値が出るだろう。

〇それではトランプの勝ちは動かないのか、と言えばもちろんそんなことはない。将棋中継のAI評価値がしょっちゅう動くように、たった一手の疑問手で情勢がガラリと変わることがある。勝負事なんだから、そこは当然ですよね。来週行われるニューハンプシャー州曜日選挙、8年前のトランプ氏は35.2%で首位の座を得た。

〇それが現在の数値は、トランプ46.3%、ヘイリー33.5%とほぼ13ポイント差まで追い上げられている。本番までにこの数値がどう動くか。いや、やっぱり面白いね。選挙はホント面白い。


<1月19日>(金)

〇最近の政局をこんな風にいうんだそうです。「安倍一強から岸田一狂へ」

〇いやはや恐ろしい。あれだけ「宏池会LOVE」であった岸田さんが、あんな風にアッサリと派閥の解散に言及するとは。しかも平井文夫さんによれば、「岸田さんはニコニコしているように見えた」。そして岸田さんの一手はドミノ倒しのように、他の派閥に波及しつつある。清和会(安倍派)も志帥会(二階派)も、今日になって解散方針を表明した。

〇岸田さんは宏池会の解散について、古賀誠さんに相談はしたのだろうか。あるいは政権を共に背負ってくれている麻生さんや茂木さんに、事前に一言告げていたのだろうか。どう見てもそんな感じじゃないですな。岸田さんは怖いもの知らず。既に「無敵の人」になっているのかもしれない。

〇おそらく宏池会が他の派閥と違うのは、歴史が古くて考え方も近い人たちなので、「解散してしまっても、他の派閥に引き抜かれたりしない」という点にあるのだろう。この点は、ほとんど流れ解散に近い状態であった清和会や、二階さんがひとりで支えてきた志帥会との大きな違いである。「うふふふ、ウチは大丈夫だもんね〜」と思っているとしたら、やっぱり岸田さんは端倪すべからざるお方である。

〇自前で手勢を養って派閥を拡大してきた麻生さんや、名門派閥の長になってもどこか場違いな感じが抜けない茂木さんにとっては、「困る、困るよそれは。ワシらはどうすればいいんだよ!」というところであろう。知るか、そんなの。

〇しかるに自民党という政党は、もともとが派閥の緩い連合体という性質を備えている。派閥がなかったらガバナンスが機能するのか、という問題がある。例えば自民党には「副幹事長」が大勢いるけれども、あれは各派閥から若手を一人ずつ出すことになっていて、党中枢は彼らに対して「今国会はこんな風にやりますから」と説明したり、「次の人事では誰か各派閥から推薦してください」みたいに伝達しているんだそうだ。いきなりそれをなくしてしまって、本当に大丈夫なのかね。

〇とはいうものの、これはもう時勢みたいなものである。ジタバタしても始まらない。そしていざとなったら、スッと大勢に従うという融通無碍な集団が自民党である。何より、あと1週間で通常国会が始まるというタイミングで、われらが首相はこんな「指導力」を発揮できてしまうのだ。これで支持率が何ポイント上がるか、みたいなしょぼい話ではない。

〇事前の相談抜きに派閥の解散が決められる人は、国会の解散だって朝飯前なのではないか。いやもう恐ろしい。やっぱり「6月解散」はあり得ますぞ。なにしろ「一狂」体制ですから。そのときになって「一驚」しても始まらない。いや、達観してしまえば、そういう政治体制も「一興」ではあるのですが。とりあえず野党の出番はなさそうでありますな。


<1月20日>(土)

ゴールデンカムイの実写版、封切りと同時に見てきましたですぞ。当方は土曜日の朝9時スタートの会を予約したんですが、上海馬券王先生は既に昨晩のうちに見ておられたようで、いや、畏れ入りましてござりまする。

〇原作に非常に忠実に作られている映画です。俳優さんたちも大変努力されておる。特に玉木宏演じる鶴見中尉と、舘ひろし演じる土方歳三は眼福である。不死身の杉元とアシリパさんは、まあ、努力賞といったところかな。双子の二階堂一等兵は、いったいどうやったらあんなに原作に似せることができるんだ。実写がアニメを超えたかと思ったぞ。

〇しかしまあ、映画を観終わった後になって、しきりにアニメ版を観たくなるものである。ということで、アマプラで一気に初回からエピソード8までを振り返る。ここまで原作に忠実に作ってあるのは、要はこの後の続編を作るためもあって、ファンに怒られたくなかったのであろう。

〇いや、一ファンとしては怒りはしませぬぞ。なぜならこの映画には、北海道の大自然が映し出されているのだから。これだけは原作もアニメも表現できない、そのままの冬の北海道が描かれている。しみじみ思うぞ。冬の北海道で月を見上げてみたい。チタタプを食うとかいった贅沢は望まないので、せめてそのくらいは果たしたいものである。


<1月21日>(日)

〇今回の「パー券裏金問題」について、個人的に初めて気づいたことがある。それはあまりにも当たり前のことで、何をいまさらと言われてしまいそうなのだが、「政治資金パーティーって、消費税が入ってないんだ!」ということである。

〇おそらくはこういう理屈なのであろう。政治資金というのは、特定の政党や政治家を支えるための一種の「浄財」である。世間一般の経済活動とは切り離して考えるべきであり、だから無税。その代わり、受け取った側はかならず政治資金収支報告書に記載して、外から見えるようにしておかねばならない。出入りを透明にしておけば、いくら金額が大きくとも法的には問題にはならない。だって「浄財」なんだから。

〇それでは誰かが政治資金を収支報告書に載せず、ほかの使途に流用していたらどうなるのか。一度は「浄財」となったおカネが、普通の経済活動に使われることになる。それは「脱税」であろう。とりあえず、彼らは消費税分をごまかしたことになる。このように考えると、「記載漏れ」は単なる事務的な誤りなどではなく、重罪と見なすべきである。

〇政治資金規正法は、「規制法」ではなくて「規正法」と書く。つまり「おカネを正す」法律である。「厳格化すべきだ」「会計責任者の処罰では手ぬるい」といった意見が出るのはもっともなるも、それ以前にザル法はザル法なりに守らねばならない。とりあえず今回のようなケースは、きっちり締めあげるべきであろう。

〇民間企業の中でのおカネの扱いは、この20年くらいで強烈に厳しくなった。昭和の時代の大手商社の内部を記憶する者の一人としては、「何もそこまでしなくても・・・」と思うこともしばしばではあるが、とにかく今では「社内に裏金がある」などとは全く考えられなくなった。そういう世の中になったのに、政治の世界の旧態依然ぶり(もちろん、以前に比べればはるかにマシになっているのだろうが)は、さすがに問題ですわな。

〇さて、今週26日には通常国会が召集される。その前日までには、東京地検の捜査も終わる。一部メディアに盛んにリークして盛り上げた割りには、「竜頭蛇尾」もいいところで、検察の期待値コントロールはあんまり上手じゃないですな。果たして、どんなことになりますのやら。


<1月22日>(月)

〇毎度のことではあるが、「モーサテ」の朝は早い。午前4時にはお迎えのクルマに乗って、午前5時にはテレ東で打ち合わせをしている。片渕さんと本日の「プロの眼」の準備をしていたら、そこへ飛び込んできたのが5時8分発の時事通信速報である。「デサンティスが撤退宣言」ですって。早い、早過ぎるよ!

Axiosを見ても、ほんの数分前に出たほやほやのニュースであった。ついでにトランプ支持の表明だなんて、デサンティスのやつ、自分を高く売ろうとしているな。ネバダ州とサウスカロライナ州では、既に選挙資金1100万ドルを投入していたらしいが。ああ、なんてもったいない。

〇ということで、「さらばデサンティス」についてコメントし、「共和党予備選挙、序盤戦の展望」についてお話しする。あー、やれやれ。明日のニューハンプシャー州予備選挙、ニッキー・ヘイリーがなるべく粘ってくれたらなあ、と思うところです。

〇昼も午後もいろいろ用があって、夜は町内会の大先輩、たいへんお世話になったY氏のお通夜に出席である。めずらしいことに神式で、葬儀は柏市の諏訪神社の神主さんが執り行う。そういえばYさんは、長野出身だったのではなかったか。いや、ワシなんぞはどうにもお数珠を持たないと、お葬式という調子がでないのだけれども。

〇町内会の主だった面々がほとんど集まっていた。「こんなに大勢集まるのは、夏祭り以来ですねえ」などといっても、夏祭りはコロナ以降はやっておらんのである。Yさんは町内きっての人徳者であり、インテリであり、お酒と煙草をこよなく愛する人であった。人が集まるのも当然である。その上、Yさんはなぜか「かんべえファン」でもあった。

〇それをいいことに、既に70代であったYさんを競馬という悪の道に引きずり込んでしまったのである。確かサトノダイヤモンドが勝った年だから、あれは2016年の有馬記念であったと思う。初心者のYさんを町内の競馬ファン一同で中山競馬場に連れて行って、着いた途端に皆が自分の馬券に熱中してしまったので、Yさんにとっては試練のときだったかもしれない。

〇ところがそれからYさんは、突如として競馬に開眼し、ほぼ丸1年というもの勝ちまくったのであった。とにかく「単勝と馬単」という男らしい買い方で当てまくり、お孫さんたちにはいつもフルサービスであったという。その後はさすがに「憑き物」が落ちて、「俺もうやめた」になったようであったが、きっと楽しい思い出になってくれたんじゃないかと思う。

〇哀しいかな、もうYさんを中山競馬場に連れ出すことはできない。人が死ぬというのは、そういうことである。だからこそ「一期一会」であり、後悔のない人生を送るべきなのであり、「サヨナラだけが人生さ」なのである。Yさんに合掌。これまで、どうもありがとうございました。

〇先日、元日にこの世を去った山崎元氏のカラオケ持ち歌は、椎名林檎の『歌舞伎町の女王』であったと聞いて死ぬほど驚いた。思えば故人とは連載やセミナーや酒や競馬の付き合いはあったけど、一緒にカラオケに行ったことは一度もない。山崎さんの「歌舞伎町の女王」、一度聞いてみたかったけど、もうそれはかなわない。この世の中は、概ねそんな風にできている。


<1月23〜24日>(火〜水)

〇ニューハンプシャー州の結果は、トランプさんが54.5%、ヘイリーさんが43.2%、二桁の差がついてしまいました。アイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙の両方で5割を超える候補が出るとは、現職大統領以外では歴史上はじめてのケースでしょう。ということは、トランプさんは「事実上の現職候補」と言っていいんじゃないかと思う。

〇ただしニッキー・ヘイリーはここで撤退することを潔しとせず、予備選を戦い続けることを宣言しました。この敗北宣言、まことにカッコいいのである。


「ニューハンプシャー州は全米で最初の州であって、最後の州ではない。この戦いは終わるどころではない。まだまだ何ダースもの州が控えている。そして次の戦場は、わが愛しのサウスカロライナなのだから」


〇これはアッパレな態度というべきで、「地元で負ける」というのは政治家にとって屈辱的なことです。最悪、そこで政治生命が終わってしまうかもしれない。2016年の共和党予備選挙では、フロリダ州でジェブ・ブッシュとマルコ・ルビオがドナルド・トランプにぶっ飛ばされてしまった。まともな政治家がトランプさんと戦うと、得てして碌でもないことになってしまうのである。

〇正直な話、共和党予備選挙を彼女が勝ち抜ける確率は限りなくゼロに近い。なんとなれば、共和党内で彼女の置かれたポジションは、「次の首相候補としていつも名前が上がるけれども、自民党内では嫌われている石破茂」みたいなところがある。ニューハンプシャー州は「オープン・プライマリー」なので、無党派層も共和党予備選に投票することができる。その分も含めての43%ですから、やっぱり純粋な共和党員は今年は「トランプ推し」になっていて、この差はなかなか逆転できそうにない。

〇とはいうものの、トランプ氏にはいくつもの問題がある。裁判がたくさん控えていること、バイデンと4つしか違わないほど高齢であること、精神的に不安定なところがあること、太っていること、中間選挙などで負け続けてきたこと、そして共和党の大統領候補討論会を全部欠席してきたことなどである。

この映像なんかもかなりヤバい。ここでトランプ氏は、「ニッキー・ヘイリーが、ニッキー・ヘイリーが・・・」と繰り返してはいるけれども、実は「ナンシー・ペローシ」という固有名詞が出てこなくて、つい違う名前を連呼してしまった、というシーンである。ジョー・バイデンの老化は確かに酷いが、ドナルド・トランプもまた少し違った形で「老い」が押し寄せているのである。

〇この後、裁判への巨額支出が避けられないトランプ氏としては、なるべく早く予備選を終わらせて選挙資金を残したいところだろうが、それは少々ケチ臭いというか、虫が良い話である。ヘイリー氏としては、「自分が不利なときは、相手がいちばん嫌がる手を指す」という大山康晴流の勝負術で粘っていただきたい。「バイデン対トランプ」の戦いは、誰だって観たくないんだから。


<1月25日>(木)

〇今朝はニッポン放送『飯田浩司のOK!Cozy up!』へ。本日のネタは「ニューハンプシャー州予備選」とか「日銀・金融政策決定会合」とか、比較的、得意のネタが多かったので、遠慮なくずぶずぶにオタクな話を展開する。

〇どうやらこの番組のリスナーは、通り一遍の説明に飽き足らずに、深堀り情報を求めているようなので、この作戦でよいのではないか、と感じるところである。この点、以前にやっていた文化放送の番組とは勝手が違う。野村邦丸さんは「誰にでもわかるように」優しく聞いていたのだが、飯田さんは遠慮なく突っ込んでくる。これはこれで正しい作戦なのであろう。

〇「明日のコメンテーターは宮家邦彦さんです」というから、「それじゃあ、よろしくお伝えください」と言って局を離れたのであるが、本日お昼の会合で宮家さんと一緒になってしまう。何なんだ、この展開は。場所は原宿の南国酒家であり、この有名な店を初めて訪れた。どういう会合であったかは内緒である。

〇夜はとってもお久しぶりの日本貿易会の会合で浜松町へ。唐文記というよく通ったお店で、昼夜続けて中華になってしまうけれども、四川料理なので全くの別物ということでウェルカムなのである。そういえば昔は日本貿易会と文化放送で、毎週のように浜松町に通っていたものであったなあ。

〇各商社の懐かしい面々と再会して、話は各方面にわたる。そうかそうか、ワシはこういう世界に居たのであった、と思い出す。いろいろあったんだよなあ。貿易動向調査会、運営委員会、特別研究プロジェクト、そして「アウティング」と称する小旅行など。似たような活動は今も続いていて、世代も交代している。商社も昔とはどんどん変わっているのである。

〇なんだか今と昔が交錯するような不思議な一日でした。


<1月26日>(金)

〇今週はいろいろ多忙でありまして、実は大阪にも行ってたんですよね。お泊りは何と!ザ・リッツ・カールトン大阪でありました。

〇リッツに泊まるなんて滅多にないことなんで、当方としては盛り上がっている。ところが周囲の皆様は、「大阪のリッツは、経営は阪神・阪急さんですから〜」などと言って、一生懸命「落として」くれる。こういうところが大阪の流儀である。

〇部屋に入ってパソコンを立ち上げてみると、なんとっ!「sojitz wifi」がつながりそうでつながらない。お隣の「ダイビル」に、弊社の大阪支社が入っているからである。ううむ、大阪の仲間たちは、このことを知っているのかなあ。

〇夜になって、せっかくだからと「ザ・バー」に繰り出してみる。寝酒の一杯を楽しむにしては、とってもゴージャスな空間である。カウンター席にひとりで座ってみると、いかにもプロフェッショナルなバーテンダーさんがスッと寄ってきて、「何にいたしましょう?」

〇こんなところでシングルモルトを注文する手はない。おなじカネを払うのであれば、仕事ぶりに払いたい。そこで「ドライ・マティーニを」と頼んでみる。バーテンダーさん、これ以上ないというくらい美しい動作をひとしきり魅せて、絵に描いたようなマティーニが差し出される。

〇ひと口飲むと、案の定、沁みとおるように旨い。おお、ジンベースのお酒ってこんな感じであったか、長らく忘れておった、と感動するのであるが、ここでバーテンダーさんがよくしゃべるのである。


「ジンというのは仰山、種類がありましてなあ〜」

「ウオッカとの違いは、かくかくしかじかでありまして〜」

「サントリーさんも、最近はいろいろあるようでして・・・」


〇いちいち面白いんだけれども、関東の流儀から行くとなんかちょっと違う。バーテンダーさんは寡黙であってほしい。こっちから話しかけたときだけ、ぶっきらぼうに返事してほしい。「××なんじゃないですか、よく知りませんけど・・・」みたいな感じで。

〇でも、そこは郷に入れば郷に従えで、大阪の夜を楽しんだのでありました。スポンサーである岡三証券さんに、心から感謝申し上げます。


<1月29日>(月)

〇台湾についてひとこと。こんな古いジョークがあります。


問い:「中華民国(ROC)と中華人民共和国(PRC)の違いは何か?」

答え:「中華民国(ROC)とは"Republic of China Without People"である」


〇たぶん次期総統に内定した頼清徳さんにとっては、「中華民国」なんてどうでもいい存在なのだと思います。そんなものは架空の存在で、「台湾」さえあればいい。そして台湾は既に存在している。たとえナウルなどの外国が承認を取り消しても、そんなこたあ関係ない。

〇これまで8年間、民進党の蔡英文総統は、「中華民国≒台湾」だとうまく誤魔化しながらやってきた。頼清徳さんは副総統として4年間それを見てきたから、ちゃんとその辺が分かっているはずだ。アメリカのプレッシャーもあるし。

〇とはいえ、彼のホンネは「中華民国≠台湾」である。それはコアな民進党支持者もちゃんとわきまえている。でも、それを表立って披瀝されたら、北京は黙ってはいられなくなる。だから当面は誤魔化しながらやっていく。それでも総統としての任期を消化していくうちに、いろんなことがあるだろう。

〇つまり台湾側は、いつでも自分が好きな時にカードを切ることができる。逆に中国側は、そう簡単には「台湾有事」というカードは切れない。あまりにもリスクが高いからね。この対立は、しみじみ台湾側に有利にできていると思う。そもそも世界の中で台湾人ほど、「チャイナ・リタラシー」が高い人たちはいませんから。


<1月30日>(火)

〇自民党から派閥がなくなった時にどんな影響が出るか。以下の項目の中から正しいと思われるものを選べ(複数回答可)。


*党幹事長の責任がいきなり重くなる。

*副大臣や政務官の人事は、各大臣の指名による争奪戦となる。

*人事やカネや情報に関して党内の不平分子が増える。

*「国対族」など不人気な仕事の引き受け手がいなくなる。

*選挙のときの応援を、誰に頼めばいいのかわからなくなる。

*それ以前に誰を応援すべきで、誰は不要なのかもわからなくなる。

*木曜日のお昼に暇な議員が増える。

*浅草「今半」や赤坂「ざくろ」、亀戸「升本」などの名物弁当の売り上げが減少する


〇うーむ、総じていいことはなさそうな予感が。強いて言えば、無能だけれども派閥に忠誠を尽くしたおかげで当選×回で大臣、みたいな人は減るかもしれません。

〇果てさて、自民党はこれからどんな形で党内のガバナンスを行っていくのか。それとも遠からず派閥が復活するのか。じぇんじぇん見えません。今日の施政方針演説では、岸田首相はその辺のことはあまり考えてはおられない様子でしたね。

〇ところで解散した派閥事務所に残っている残金は、どういう形で処理されるんでしょう。どうかすると億単位ですけどねえ。


<1月31日>(水)

〇2024年が始まってからもう1か月が過ぎました。日経新聞では、武藤敏郎氏の「私の履歴書」が今朝でちょうど終わりました。「私の履歴書は、本来、こんな風にあるべき」というお手本のような感じで、1か月間、楽しく読ませてもらいました。

〇昔話はどんなものであっても、「自慢話」の色彩を帯びるもの。まして「半生記」ともなると、どうしたって「そこで俺はこう言ってやったんだよ」みたいに「偉そう」感が漂ってしまう。その点、武藤さんのお話しは最後まで「無糖」でしたな。あの人だったらこんな風に言うんだろうな、というトーンのままでありました。

〇武藤氏の肩書は「元財務次官」。もうちょっと言えば、「ミスター大蔵省」。ところが武藤氏の官僚人生には、「大蔵省接待不祥事」とか、「幻の日銀総裁任命」とか、最後は「東京五輪の事務総長」という苦難がつきまとう。特に最後のヤツはお気の毒でした。コロナあり、不祥事あり、会長の交代あり。ほかの人だったら逃げ出していたかもしれません。

〇武藤さんは、現在からさかのぼって17代前の財務事務次官でした。うーむ、もうあんな人は出ないのかもしれませんね。政治家も経営者も小粒になる時代、霞が関もそりゃあ仕方がないだろう。せめて「こういう人が居た」ことは覚えておきたい。いや、ホントお疲れさまでした。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki