●かんべえの不規則発言



2007年7月




<7月1日>(日)

〇昨日のクイズについて、朝日新聞の星編集委員から貴重なご示唆をいただきました。

「会期の延長期間が長いと、牛歩戦術などを使っても法案が成立することは避け難いので、野党としてあきらめがつく。従って、のりしろを長くすることが与党側の戦略となる」

〇なーるほど。つまり7月5日までの会期は、のりしろであったわけです。そこをさりげなく飲み込むことで、野党は「与党は数の横暴」と非難しつつ、矛を収めることが出来る。与党も心置きなく選挙に集中することが出来る。これって与野党の八百長とまではいわないまでも、「札束が飛び交うことのない55年体制」なんじゃないでしょうか。「表は表、裏は裏」。これも永田町の知恵というものでありましょうか。

〇午後3時から町内会の友の会、飲み会に顔を出したら、ついつい長居をしてしまう。久間発言について、「しょうがないというのは、しょうがないだろ」みたいなご意見を拝聴する。そりゃま、その通りであって「原爆投下はしょうがない」ってのは、草の根のコンセンサスというものであって、「日本は被爆国として、あくまで核廃絶を目指せ」ということの方が、タテマエ論というものでありましょう。

〇原爆投下という暴挙に対し、どこかの国であればトルーマン大統領の銅像を作り、みんなで唾を吐きかけたりするかもしれません。でも、それをしないのが日本人のメンタリティというものであって、主語をぼかして「あやまちは繰り返しません」とごまかす。なぜって「しょうがないものは、しょうがない」から。そういう日本人のホンネを、否定しなければならないというのは、ちょっぴり辛いものがあります。ま、これで自民党は長崎の1議席を失うかもしれませんけれども。


<7月2日>(月)

〇先日、某所で遭遇したジョン・ホー氏からメールが届いていた。「私儀、このたびの提案は図らずも否決されましたが・・・」「皆様におかれましては、今後ともよろしくご指導ご鞭撻を」てな内容。弱冠30歳くらいで、とっちゃん坊やのような顔をした香港人で、英国ファンドTCIのアジア代表である。ワシ的にはちょっと好感を持ちましたな。

〇そのジョン・ホー氏が先頭に立って、TCIが大口投資先であるJパワーこと電源開発に対して、配当金の増加を要求したのはまことにもっともな提案ではないかと思う。だいたい電力各社は日銭商売を良いことに、デフレ時代に労せずして儲けている。株主がうるさく言わないと、彼らはその分を吐き出そうとしない。とりあえず、負けるなジョン・ホー、と応援しておこう。

〇先週は株主総会集中週であった。日本企業の中には、「外資による乗っ取り防止」のために、かなり見苦しい防衛手段に走る企業が少なくなかったと思う。そこで外資系ファンド諸君、かんべえさんがいい事を教えてあげよう。皆さんがまだ試していない面白い手口があるのだよ。

〇それはですな、「委任状を送らない」という手法である。個人投資家の中には、メンドーだから会社から送られてきた議決権を送ったりせずにクズかごにポイ、という人がかなりの比率で存在する。外人持ち株比率が4割以上、なんて会社で、外資が結託して委任状の送付を一斉に止めてみてご覧なさい。議決権が過半数に届かなくて、株主総会が成立しないという事態が生じるかもしれない。これは面白いですぞ。

〇かんべえが知る限り、日本の公開企業は株主総会のためにはありとあらゆる準備をするけれども、「総会が成立しない」という事態は想定していない。総会が成立しなかったら、決算もできなきゃ、役員賞与の支払いはもちろん、役員人事もストップしてしまう。文字通り会社が麻痺してしまうのだ。株主としては、配当が受け取れなくなるので、痛し痒しではあるのだが、こういう事態になれば確実に会社側はファンドに対して交渉を持ちかけてくる。そうなりゃ総会屋よろしく、思い切り要求事項を突きつけてやればよい。どうでしょう、これ。

〇思うに企業経営には、「うるさい御目付け役」が必要なのであります。日本の株主は、概して経営者に対して理解があり過ぎるので、ややもすれば経営者を甘やかしてしまう。経済産業省や経団連が、率先してそのお手伝いをするという妙な習慣もあったりする。そういう点で、外資系ファンドには、これからもいろんな形で日本企業にプレッシャーをかけてほしいと思うものであります。

〇一例をあげれば、民間の保険会社は、「未払いがあった」と金融庁に怒られてヒーヒー言っています。ところが誰も怒ってくれなかった社保庁は、未払いも何も誰からいくら預かっているかが分からないという事態に陥っています。両者の違いは明らかでありましょう。社保庁の今度の事件は、「経営にブラックボックスを作ってはならない」ことを教えてくれます。「うるさ型」を嫌う組織はダメになるのです。


<7月3日>(火)

〇先日から考えているのですが、なんで政情不安にもかかわらず株価が上昇しているのかと。まあ、もともと政治と株価はそれほど関係がないものだし、自民党が参院選で大敗した1989年も、株価は史上最高値を目指してまっしぐらだったことだし。今年も、「自民党は参院選大敗だけど、秋には日経平均2万円」てなことは十分あるだろうと思うのです。

〇実はこれには合理的な説明があるのです。5月中旬までの予想では、自民党が50議席以上取れそうだという感触であった。青木さんも陰では、「大丈夫、勝てる」などと言っていた。その場合、今年の秋にはほぼ確実に消費税増税の議論が始まっていただろう。「上げ潮戦略」の中川幹事長はどっちにしろ外されそうだし、次の内閣改造では堅実財政主義の与謝野さんが入ってきそうだし、いかにも増税路線復活という感じになりそうだ。

〇ところが今の情勢では、自民党は45議席が勝敗ラインといったところである。これでは増税などとんでもない、ということになる。安倍政権が続投であれ、それとも別の政権が登板するにせよ、経済政策の大きな変更はあり得ない。小沢・民主党も、消費税は据え置きと言っているし。これって、マーケット的には悪くない話である。すなわち、「政情不安」→「弱い財政再建路線が続く」という読みで、株価が上がっているのではないか。

〇実際のところ、足元から秋にかけての消費と物価はまことに悩ましい感じである。いわゆる「二極化現象」があるので、一部の高級品が売れたところで、全体を平均してしまうとパッとしない印象になる。こんな局面で消費税増税ということになれば、確実に個人消費には悪い影響があるだろう。自民党政権がレイムダック化するのは大いに結構、ということになる。(ううう、なんだか亀井静香理論を応援しているようで、ちょっとヤな感じである)。

〇物価も同様で、どこかで「閾値」を越えて上昇が始まりそうに見える。「川上インフレ」が少しずつ「川下デフレ」に浸透し始めているし、円安などによる「買い負け」現象が食品価格などを上昇させ始めている。流通業としてはコストを転嫁したいのだが、消費者の反応が怖くて値上げが出来ないでいる。スーパーなどにとっては、近年始まった「ポイント制」のお陰で、ただでなくても少ない利益率がさらに低下し、「本当はこの秋くらいには値上げをしたいのだけど・・・」と思っているらしいのだが。

〇そうなると、日銀による利上げも現実味を帯び始める。おそらく、この秋は「利上げ優先、消費税後回し」ということになるのではないか。・・・・てなことを、ほとんど考えていないように見える安倍政権って、やっぱりユニークかもしれない。


<7月4日>(水)

〇久間防衛相が辞任して、いよいよ安倍政権が明日をも知れない感じになってきました。夕刊フジや『諸君!』が安倍政権批判を始めている、という点も、ある種の風の変わり目を感じさせます。

『諸君!』についていえば、編集長が代わったことも関係しているのだと思いますが、今月は「安倍政権、墜落す!」特集号になっています。中でも出色なのが、草野厚先生による「安倍晋三を操る岸信介=強行突破のDNA」論文。サヨクによる「安倍なんて大っ嫌い論」や、ウヨクによる「お前を見損なったぞ論」は、これまでも山ほど見ましたけど、是々非々の立場からの本格的な安倍首相批判ということになると、これが一番じゃないかと思います。

〇この手の安倍批判が続くかどうか、という点も注目したいところです。つまり、今までは「憤兵負けるの法則」で、反安倍陣営が勝手に墓穴を掘っている感があった。ところが国民全体の怒りが高まって、サヨクの怒りが表面的に見えなくなると、これはいよいよ安倍さん危うしということになるでしょう。

〇さて、それじゃ安倍さんはこのまま参院選大敗、総辞職コースをたどるのかというと、そうと決まったわけでもないと思います。今日が投票日であれば舛添氏が言っていたように、「一人区は4勝25敗」ということになるでしょうが、ここでいう4勝とは林芳正、世耕弘成、山本一太+あと1人(たぶん富山県)を指すのでありましょう。さすがに自民党がその4議席を失うとは思われず、ということは情勢はボトムに近いということになる。

〇この後の25日間の間に、どんな事件が起きるかで、選挙結果はいかようにでもなりうる。というか、投票日3日前の気分で決まる。その辺の成り行きについては、政党にもマスメディアにもコントロール能力がない。誰が勝手に自滅するか、誰がラッキー・パーソンになるか、思いもかけぬ浮き沈みが当分は続くのだと思います。


<7月5日>(木)

〇先日、83歳の某財界人から伺った話。

「80歳を過ぎてから、人間ドックなんてやめにしたよ。日野原さんもそうしているらしいし。今さら、体のどこが悪いなんて、知ったところでしょうがないものね」

〇てなことを、煙草をスパスパやりながらおっしゃるのである。中華のコースは、もちろん紹興酒とともに、残さず召し上がられました。体調は特段に悪いところはなく、強いて言えば、若い頃に中国戦線で受けた銃弾が足に残っているとのこと。何といいますか、やっぱり宮沢さんの世代にはかないません。

〇教訓として、無欲と無為自然がいちばんの健康法であるようです。かんべえの37年後は、果たしてどんな老人になっておりますでしょうか。


<7月6日>(金)

三原淳雄御大が、わざわざ電話をかけてきて、「僕なんか70代だけど、人間ドックには行ってないからね」

〇――ダメですってば。70代まで行っていた人が、80歳過ぎて止めちゃうというところに、昨日の話の美しさがあるんですから。それに、三原先生の場合は、人の悪口をいっぱい言ってますから、ストレスが解消されて、きっと長生きされることと思います。死んでから後がどうなるかは知りませんけども。あ、そういえば田原総一朗さんも、たしか人間ドックに行かない70代であったような・・・。

〇さて、ここでどういう頭の働きか、かんべえは昔々に映画で見たボッカチオの『デカメロン』のエピソードを思い出してしまった。死後の世界はどうなるか、という話である。


ある日、主人公の友人がポックリ逝ってしまった。ややあって、友人は幽霊になって主人公のところへやって来る。主人公は、死後の世界について興味津々で、友人にあれこれと尋ねる。二人の会話。

「お前、死んでからどうなってるんだ」

「今、裁判にかけられていてなあ、なかなか大変なんだ。生きている間にやったことは、神様には全部バレてるし」

「悪いことをすると地獄に落とされるんだろう? どういうことが悪いことなんだ?」

「ああ、それがな、俺は生きてる間に隣の家のカミさんと出来てたんだ。それで恐る恐る神様に聞いたんだ。『これって高くつくんでしょうね』。そしたらさ、神様が言うには、『種まきは男の仕事だ。どこの畑だって構うものか』って」

これを聞いた主人公は、「ラッキー」とばかりに、いそいそと自分も不倫に出かけていく・・・・。



〇すごいでしょ、この話。さすがはイタリア、って感じだよね。それでも一応、不倫に対する罪の意識はあるというところが変に面白かったりして。『デカメロン』は大人のための艶笑集ですから、全編こんなのばっぱりですけれども。

〇世の中が変にピューリタン的になって、ギスギスした話が続いています。そういうときは、イタリア風の猥雑な世界がちょっと懐かしい感じです。江戸の小噺なんて、そりゃもうこの手の話が一杯あるんですから。肩の力を抜いて、リラックスして行きたいものであります。


<7月8日>(日)

〇インテルのCMで登場する黒人のバレリーナ、「目が醒めたらこうなってて・・・」というやつ、むちゃくちゃインパクトがありますな。週刊文春の記事によれば、この人はディヴィッド・矢野さんという26歳のミュージシャンで、日本人の父と、ガーナ人の母を持つハーフ。5歳でガーナから日本に来たのだそうです。オーディションで受かった理由は、「外見と話す日本語の流暢さのギャップでしょうね」とのこと。ネイティブなんだから、日本語が上手いのは当然であります。下記のコメントが変に日本人感覚でおかしい。

「でも、衣装合わせで、バレエの衣装を着たときは泣きましたよ。『お母さん、ごめんね。せっかく産んでもらったのに、世間に恥さらしちゃって』と(笑い)」

〇でもって、彼のお母さんは今、ガーナでクイーン・マザーをやっている。言ってみれば、部族の首長みたいな存在であるらしく、彼が後を継ぐ可能性もあるんだそうだ。ということで、文春の記事は「インテルCM黒人バレリーナはガーナの王子さま!」となる。

〇ところでこの「ハーフ」という言い方、われわれは無意識に使ってますけど、日本暮らしの長いアメリカ人に聞くと、「とっても違和感がある」のだそうだ。「半人前」と言っているみたいで、否定的評価であると。ところが日本語的には、「ハーフ」にはカッコいいという語感がある。「ハーフがダメなら何と呼べばいいのか」と聞いてみたところ、「Mixedならいい」とのこと。それだと日本語的には「あいのこ」という表現があって、これは差別的な表現ということになり、最近では使わなくなっている。和製英語の語感は、ホントの英語とはかなり違うという好例であります。

〇そこで気付いたのだけれども、われわれが「ハーフ」と呼んでいるのは、要するに「ハーフ・アンド・ハーフ」を省略して使っているわけなのですな。そっちであれば、差別表現にはならないのでしょうし、「ミックス」よりは肯定的な感じがすると思う。ともあれ、グローバル化とともに、いろんな日本人が増えているというお話であります。


<7月9日>(月)

〇今日は民主党のマニフェストが公表されました。PDFファイルをダウンロードしたのだけれど、なぜか印刷できず。ウチだけでしょうか。まあ、それは許すとして、「年金、子育て、農業」を三本柱にしたところが鋭いと思います。以下はかんべえ流の解釈です。

@年金は言うまでもなし。自民党にダメージ100である。

A子育ては、ホントは公明党がやりたいところを、財源の目処がつかないから断念した経緯あり。与党はツライよね。民主党は、「補助金廃止などで15兆3000億円」という、ちょっと無理目の削減案でこの問題をクリアしている。

B農業は一人区狙い。「バラマキ」大いに結構。自民支持をひっくり返せれば、一粒で二度オイシイ。特に東北と九州・四国が狙い目ですからね。

〇要するに3つとも与党の痛いところをついているわけ。しかし考えてみると、安倍戦略というのもなかなかにキツイものであったのだ。すなわち、安倍首相が目指している「戦後レジームからの脱却」という路線には、以下のような「裏の狙い」があったのである。

@教育再生(日教組潰し)

A社保庁解体(自治労の最強部隊潰し)

B公務員制度改革(これも自治労にダメージ)

C憲法改正(民主党を股割きに)

〇つまり全部が全部、民主党に打撃を与えるように計算されていた。なにしろ自民党は、小泉時代に「ゼネコン」(公共事業の削減)、「地方議員」(市町村合併)、「郵便局」(郵政民営化)と、次々とみずからの支持母体を破壊し続けてきた。そうなると、民主党の支持基盤が相対的にモノをいうようになる。組合叩きは、自民党にとって必要不可欠な作戦だったのだ。ところが計算外だったのは、社保庁が「自爆テロ」に出てしまったことである。その威力はまことにすさまじく、自民党は返り討ちにあってしまったというからお立会い。

〇ところでこの社保庁問題、かんべえはそろそろバッシングに飽きてきた。というか、この集団ヒステリーが、以前に見たような気がして仕方がない。今日、ハッと思い出した。そう、これは住専問題と似ているのである。

  住専問題(1996年) 社保庁問題(2007年)
どういう組織か 普通の人は知らない 年金を申請するとき以外に用がない
経営トップ 大蔵省の天下り 厚生労働省の天下り
末端職員 無責任体質 無責任体質
仕事ぶり 不良債権をたくさん作る 年金番号の未統合、紛失が出る
結果 公的資金投入が必要に 年金がもらえない人が出た
世間の評価 乱脈経営、モラルハザード 消えた年金
当時の野党 新進党(小沢党首) 民主党(小沢代表)


〇1996年当時、ワープロに「じゅうせん」と入力しても「住専」という漢字は出なかった。それくらい、「住宅金融専門会社」ことジューセンは、耳慣れない組織であったのだ。そんな組織が不良債権をいっぱいこさえて、国民一人あたり5000円(忘れもしない6850億円)の公的資金投入が必要なので、皆さんお許しくださいというのが1996年の住専国会だ。その後は「公的資金を使うのはこれが最後」ということになり、その後の金融機関に対する資本注入が遅れに遅れた。これが結果として「日本経済の空白の10年」を生むのであるが、発端となったのは国民の怒りであったということは覚えておいた方がいい。

〇要するに「怒りに任せて物事を決めると、あとあと後悔するようなことになりますよ」というのが住専問題の教訓である。で、今回も国民は怒っており、社保庁許すまじというモードになっている。あいつらの退職金もボーナスも召し上げろ、と本気で怒っている人がいる。それでどんなことになるのかといえば、きっとポピュリズム的な弊害をもたらすんじゃないのかなあ、と思う。

〇安倍首相は、「国民に損はさせません」と言っている。では、これから必要になる年金番号の照合にかかるコストは、誰が払うのだろうか。税金の投入は出来ない、年金財源を使うのも論外となると、後は社保庁の経費を削るしかない。そんなことにしたら、職員は全員辞めちゃいますがな。そうなったときに、困るのはやはり国民である。なにしろ年金番号を整理するプロは、彼らしかいないのだ。

〇あるいは、「年金の申請主義はケシカラン」という声がある。お説ごもっとも。強制加入のくせに、もらいに来いとは何事ぞというわけだ。しかしですな、社保庁という組織は、お世辞にも仕事の能率が高くはなさそうだ。それに5000万件の照合といえば、韓国の人口より多いのですぞ。誰が、どうやってやるんですか。こうなったら、リナックスのOSかウィキペディア方式よろしく、全年金加入者が協力して自分の年金番号をチェックするしかないのではないか。

〇腹は立つかもしれませんけれど、ここはちょっと落ち着いて考えた方がいいと思います。これで得をするのが小沢さん、というところが特にアブナイ気がするぞ。


<7月10日>(火)

〇「事務所経費問題」が世間を騒がせておりますが、報道する媒体によって「領収書」だったり「領収証」だったりする、という話を昨日、角谷浩一さんに聞きました。共同通信は領収書(レシートでも良し)、時事通信は領収証(ちゃんとハンコをついてないとダメ。一定額を超えたら印紙もね)なんだそうだ。こういう小ネタ、かんべえは好きです。

〇E-mobileのデータカードを買いました。携帯電話の回線で、ブロードバンドが使えます。なかなか快適。ただしCD-ROMでダウンロードしたユーティリティはうまく使えない。どうやらそっちは使わない方が賢明なようです。こちらのアドバイスが有益でありました。

〇今なら、機器が1円のお買い得。つなぎっぱなしで月5980円は値ごろ感があります。かんべえが今まで使っていたドコモのPHS回線、@FreeDは、来年1月にサービスが終わってしまうので、ちょうど良いタイミングでした。ビックカメラで購入した結果、「1円」の「領収証」をもらいました。


<7月11日>(水)

〇今日は晩飯を2回食ってしまった。どうせなら2回目の宴席では遠慮すればいいものを、ついつい食べてしまう自分が浅ましい。それを予測して、お昼をスタバのサンドイッチだけで済ませてしまうのも見苦しい。とはいえ、明日は参院選の公示である。ついついネタを仕込みに行ってしまうのが情けない。ゆえに選挙は太る。気をつけよう。以下、昨日に引き続いて小ネタだけ。

〇メジャーのオールスターでランニングホームランとは、イチローは偉いなあ。その昔、阪神の遠井吾郎がオールスターゲームでランニングホームランを打ったものだが、それとはまったく別種の偉さである。そういや、けっしてあり得ないような話を指して、「タブラン」(田淵のランニングホームラン)なんて言葉もあったっけ。

〇パキスタンの強制突入。モスクに篭城していた「武装した神学生たち」ってのは、いったいどういうものなのか。延暦寺の僧兵みたいなものか。だったら撃って良し、だよなあ。よく分からん。

〇参院選後のシナリオとして、「惜敗麻生、大敗谷垣、中間福田」なんて説があるらしい。ふーん、なるほど、と思うけど、そもそも次の参院選で負けた瞬間に、自民党の全衆議院議員は、確実に2年以内に訪れる総選挙に恐れおののくはずである。谷垣さんや福田さんで選挙が戦えますか。ここは閣下の人気と明るさに賭ける一択でしょう。ピンチのときは、党内融和よりも選挙事情が優先するのが自民党の伝統です。

〇小沢さんの「背水の陣」発言。あれは美談でも計算でもなんでもなくて、民主党内若手に対する「だから本気で一緒に戦ってくれよ」というメッセージなんじゃないだろうか。まあ、これで勝てないようではいよいよ大変、という見方もありますが。


<7月12日>(木)

〇いよいよ参院選が公示されました。いっちょ現時点の情勢で、票読みをやってみましょうか。ん、これは選挙違反になるのかな? まあ、今後の動向次第でどんどん変わるだろうし、あんまり本気にしちゃダメっす。

●比例代表(48議席)

民主党 2000万票、19議席
自民党 1500万票、14議席
公明党  850万票、7議席
共産党  430万票、4議席
社民党  300万票、2議席
国民新党 180万票、1議席
新党日本 120万票、1議席
その他   170万票、0議席
合計   5550万票(投票率53.7%)

●複数区(44議席)

民主党 20議席
自民党 18議席
公明党 5議席
共産党 1議席

●一人区(29議席)

Solid LDP  群馬、富山、石川、福井、和歌山、山口
Likely LDP 岡山、島根、大分、香川
Toss up   青森、秋田、栃木、鳥取、愛媛、徳島、高知、熊本、鹿児島
Likely DPJ 滋賀、佐賀、長崎、宮崎、山梨、沖縄
Solid DPJ  岩手、山形、三重、奈良

自民党:10議席〜19議席
民主党:10議席〜19議席

●総計

民主党:49〜58
自民党:42〜51
公明党:12
共産党:5
社民党:2
国民新党:1
新党日本:1

〇やはり勝敗の帰趨を決するのは一人区ですね。特に四国や東北、九州が重要、というのが現時点での見立てです。


<7月13日>(金)

〇先日、雪斎どのが今月号の中央公論「拉致敗戦」という記事についてエントリーをまとめておられました。この記事は、レオン・シーガルという学者に対するインタビューであって、聞き手となったのは松尾文夫さんである。今日はその松尾さんを囲む会であったので、この問題について少々コメントを。

〇北朝鮮に対するブッシュ政権の姿勢が変わったのではないか、という観測は以前からあった。イラク情勢悪化、中間選挙の敗北などの事情を考えると、宥和政策に出てしまうのも仕方がない、てなことは、かんべえも本誌4月20日号あたりで書いている。松尾さんはもっとストレートに、ご自身のブログでこんな風にコメントしている。


しかし、いま安倍外交につきつけられているのは、最後は「アメリカ頼み」となるこうした北朝鮮強硬路線が、どこまでうまく機能するのかどうかという課題である。ライス国務長官―ヒル次官補のコンビによって、アメリカの対北朝鮮外交の現実主義路線への切り替えが実行に移される中で、当面はともかく最後には、北朝鮮とアメリカの取引のなかで日本が取り残され、裏切られるような結果になる可能性がないとはいえないのではないか・・・といった不安が付きまとうぎりぎりの状況である。3月19日、事前の予想に反して、ヒル次官補が総額24億ドルにのぼるBDA 資金全額の全額凍結解除という北朝鮮の要求に実質的に応じる発表を行った夜、先に触れたアメリカの友人に電話を入れてみると、「ベルリン会談で合意済みだったようだ」とこともなげだった。


〇レオン・シーガル氏はインタビューの中で、昨年秋にキッシンジャーが特使として北京に赴き、ブッシュ大統領の真意を胡錦濤に伝えたと述べている。要はこの時点で、「米中が握った」というのである。その結果として日本の拉致問題は宙に浮くぞ、お前ら大丈夫か、という警告を発してくれている。

〇この通りになるとしたら、次のステップは(1)北朝鮮によるよど号ハイジャック犯の開放、(2)米国による北朝鮮のテロ支援国家指定の解除、ということになる。これが参院選投票日の直前に来るようであれば、安倍政権にとっては「ラクダの背に乗った最後のわらしべ」になってしまうかもしれない。

〇その一方で、「仮にそうするとしても、ブッシュはせめて参院選の後までは待ってくれるだろう」と思う。ブッシュの性格上、安倍さんに対してその程度の信義は持っているあるはずであるし、ましてや安倍政権の退陣を望んでいるとは思えないからだ。これで自民党が大敗してしまうと、「またも親米政権が選挙で負けた」ということになってしまう。なにしろ安倍政権は、豪州ハワード政権と並ぶ世界で唯二のバリバリ親米・親ブッシュ政権である。ブレアの退陣を惜しんだアメリカは、安倍政権の崩壊をも怖れるはずである。

〇とはいうものの、拉致問題でハシゴが外れたときに、日本がどう対応すべきかを、キチンと考えておく必要があるだろう。こんなことを今さら言うのも変な話であるが、「主張する外交」を展開するからには、みずからの主張が入れられなかったときに、どのように撤回するかを、あらかじめ決めておく必要があるのである。「主張する」ということは、常にそういうリスクを孕んでいるものなのだ。そんな恥ずかしい事態はまっぴらだというのであれば、最初から自己主張などしなければいい。そして、主張が退けられたときに、ヒステリックになるような見苦しいことは厳に避けなければならない。

〇では、米中はどういうことを「握った」のか。てなことを、しばらく書いてみたいと思うのですが、今週末は母親の四十九日もあるものですから、続くかどうかは分かりません。

〇ところで中央公論新社は、松尾氏が行ったシーガル氏へのインタビューを、インドに送って「テープ起こし」をさせたんだそうです。なにせ英語であるだけに、それがいちばん「安くて早い」のだとか。そりゃそうでしょうな。日本語のテープ起こしよりも、英語の方が簡単だ、なんて世の中が到来しつつある。グローバル化、おそるべしであります。


<7月16日>(月)

〇富山で四十九日の法要を終えてきました。そしたら案の定、米中関係について何を書こうとしていたか忘れてしまいました。まあ、思い出したら続きを書くことにいたします。

〇本日午前10時15分頃、新潟県で大きな地震があったようですが、その時刻は富山市営霊園で納骨をしておりました。まったく気がつきませんでした。その後、富山空港に着いたところでニュースを見てビックリしました。隣の県だというのに、糸魚川あたりを走っているフォッサマグナを越えると、まるっきり別の世界なのであります。首都圏は結構、揺れたようですね。

〇今週末は台風に地震という天災続きでありました。同じ日に重ならなくてまだしも良かった。せめて明日以降の被災地の天気がよければと思いますが・・・。梅雨時の天災は困ったものです。


<7月17日>(火)

〇同年代のスーパー官僚、Kさんとランチ。ヒソヒソ話の内容は、参院選と政局の行方ではなくて、互いの"Mid-Life Crisis"について。まあ、この年になると、いろいろあるわけでございますですよ、健康とか仕事とか家庭とか、あれこれと思い悩むことが。

〇ところで、この"Mid-Life Crisis"について、Wikipediaが行っている解説が実に的確である。ちょっとこれを読んでみてくださいまし。かんべえ(46歳)と同世代の方であれば、とっても身につまされるんじゃないでしょうか。


A mid-life crisis is an emotional state of doubt and anxiety in which a person becomes uncomfortable with the realization that life is halfway over. It commonly involves reflection on what the individual has done with his or her life up to that point, often with feelings that not enough was accomplished. The individuals experiencing such may feel boredom with their lives, jobs, or their partners, and may feel a strong desire to make changes in these areas. The condition is most common ranging from the ages of 35-50 (a large study in the 1990s [1] found that the average age at onset of a self-described "mid-life crisis" was 46). Mid life crises last about 3-10 years in men and 2-5 years in women, but length may vary in some people.

[1] http://lifetwo.com/production/node/20060710_more_on_the_midlife_crisis_you_may_never_have


〇「人生も半分を過ぎたと実感して落ち着かなくなる人間が、陥る懐疑と不安の感情的な状態」(ぎくっ!)、「えてして、今までの人生で十分なことを果たしていないという反省」(ドキッ!)、「生活や仕事や伴侶に退屈さを覚え、何かを変えたいと切望する」(わわわわわ・・・・)とある。しかも46歳が危ないとのこと。それではワシも困るではないか。

〇その一方で、これだけ普遍的な説明を読んでしまうと、「これは誰もが通る道なのであるな」と嫌でも思わざるを得ない。「四十にして迷わず」とは、「もう迷っても遅いから、あきらめて今の仕事を続けなさい」との意であると、かつて塩野七生さんに教わった。とはいえ、人間はそんなに簡単に割り切れるものではないので、あれこれジタバタするのである。であれば、中年男同士が、「あーでもない、こーでもない」と愚痴りあうことこそが、最大の処方箋であるのかもしれない。

〇これまた同世代の友人である角谷浩一さんは、先般、「声が出なくなるという喉の病気」で仕事を降板し、それこそ「人生半ばの危機」そのものであった。1ヵ月半の休養後、元気に復帰してくれたので安心したけれど、こちらは友人のピンチに際してなす術もなく、まことに隔靴掻痒であった。そんな中年男同士の会話が、裏JAMのポッドキャストにアップされておりますのでご案内まで。内容は、映画「バベル」についてのよもやま話であります。(第2部もありますよ)


<7月18日>(水)

〇週明け後の選挙情勢を見ると、先週とはかなり景色が違ってきたようであります。端的に言えば、一人区はやはり自民党にとって厳しい。先週、7月12日の情勢判断は下記の通りでありました。

Solid LDP  群馬、富山、石川、福井、和歌山、山口
Likely LDP 岡山、島根、大分、香川
Toss up   青森、秋田、栃木、鳥取、愛媛、徳島、高知、熊本、鹿児島
Likely DPJ 滋賀、佐賀、長崎、宮崎、山梨、沖縄
Solid DPJ  岩手、山形、三重、奈良

自民党:10議席〜19議席
民主党:10議席〜19議席


〇今週はこんな風に修正しなければならないようです。

Solid LDP  群馬、和歌山、山口
Likely LDP 富山、石川、福井、島根
Toss up   青森、秋田、栃木、鳥取、岡山、香川、愛媛、大分、熊本、鹿児島
Likely DPJ 高知、佐賀、長崎、宮崎
Solid DPJ  岩手、山形、山梨、三重、滋賀、奈良、徳島、沖縄

自民党:7議席〜17議席
民主党:12議席〜22議席


〇今宵、会った某氏は現状を分析して、ズバリ「自民党41議席」と言っておられましたな。なかなかにスリリングな数字です。とはいえ、これもあくまで途中経過ですから、あと1週間で新たな動きがあるかもしれない。投票日3日前くらいにならないと、本当の動向は見えてこないと思います。

〇そういえば、明日は村上ファンドの判決が出る日です。これもまた、いろんな形で影響を及ぼしそうな気がします。


<7月19日>(木)

〇UBS証券のセミナーにて、金融界の方々を相手に、参議院選挙の見通しを語るという仕事をする。今度の選挙は、つくづく市場に対する影響力がなく、外国人投資家も「ポスト安倍なんてどうだっていいから、ポスト福井を教えて欲しい」てな感じではないかと思う。つまり、日本の政局よりも金融政策の方が気にかかる。そんなムードなんじゃないかという気がする。

〇確かに2005年の郵政解散では、外国人投資家が「これで日本の改革は不可逆的になった」ということを評価して、株価が右肩上がりになったものである。それでは今度の参院選で、安倍政権が大敗して退陣するとして、そこで株価が大きく調整するかといえば、そういう地合いではないと思う。2年前と今とでは、日本経済に対する外部の見方は相当に違っている。2年前は、まだまだ日本経済は危ういと思われていたし、そうなったら困ると思われていた。ところが今日になってみると、そもそも日本経済は大丈夫に決まっているし、中国やインドなどほかに気になる市場がいっぱいあるので、たとえ日本が変なことになっても全然オッケー、と思われている。問題は、こういう外部の眼の変化に対して、日本国内がまったく無自覚であることだ。日本人は随分と夜郎自大になってしまった。

〇それはそれとして、仮に参院選が与党に戸ってヒドイ結果になったとしても、安倍政権の生存可能性は6割程度はあると思う。後の2割は麻生閣下の政権発足。そして最後の2割は「わけのわかんない政局に突入」シナリオといったところだろうか。それ以外のシミュレーションは、正直なところイメージが浮かばない。

〇夕方、日本財団で行われた岡崎久彦氏の出版記念パーティーに顔を出す。まことにもって多士済々。谷内外務次官から田原総一朗さんまで、刺激的な顔ぶれが揃っている。とっても久々に、金美齢さんにお目にかかる。日本テレビの「波乱万丈伝」に出演されたと聞いてとっても驚いた。かんべえが、なぜそれに気づかなかったかといえば、放映された7月1日は裏番組のサンデープロジェクトに出ていたからであった。何とも惜しい。どなたか、録画されていた方はいらっしゃいませんでしょうか。

〇パーティーが引けてから、四谷三丁目でぐっちーさんと合流。穴場の寿司屋で痛飲。ひかりモノ、穴子、マグロに琵琶湖の鱒など、どれをとっても珠玉の出来栄えでありました。やんややんや。

〇ということで、とっても多くの方に遭遇した一日でありました。気のせいかもしれませんが、夕刻に赤坂から虎の門に向かう途中、「切込隊長」とすれ違ったと思う。週刊SPA!でお見かけした通りのいでたちでありましたが、あれは果たしてモノホンだったのでしょうか。


<7月20日>(金)

〇今回の参院選、東京選挙区でマック赤坂という候補がいるのですが、先日来、赤坂でよく見かけます。日本スマイル党、という名前を聞いただけで頭が痛くなりますけど、この人が路上で演説したり、踊ったりしておるのです。その周囲を、誰も関心を持たずに通り過ぎていくのが、また不気味であります。

〇経歴を見ると、この人は伊藤忠商事のOBなんだそうです。だったらマック青山になりそうなものですけど、なんで赤坂になったんでしょう。うーん、それにしても外山恒一を超える衝撃度の候補者というものは、なかなかいそうにないですな。


<7月21日>(土)

〇明日は町内会のお祭り。今日は朝から役員その他が総出で「山車」を作る。

〇この「山車」は、御囃子陣が5人くらい乗れるという堂々たるシロモノなのだが、今から25年くらい前に、お祭りが大好きな人が日曜大工で作ってしまったという労作である。しかも材料になったのは、その当時、近所で建設中であったマンションの廃材であったという。しかも、木材を締めるボルトやナットの類は、マンション業者から「ご祝儀」でもらったお金で買ったというから、文字通り予算ゼロの町内会の資産である。普段はバラして倉庫にしまってあり、お祭りの前日に組み立てることになっている。

〇ところが組み立て作業が簡単ではない。毎年、同じ作業をしているのだが、「えーと、この柱は右とかいてあるけど、後ろから見て右か、それとも向かって右か?」などと、分からなくなってしまう。今年はめずらしくすんなり出来たのだが、今度は最後の飾りつけ方法が分からない。何となれば、最後の仕上げはいつも最初の制作者が担当しており、その方が先般、亡くなられてしまったのである。知識やノウハウは属人的なものであって、組織が共有することは難しいという好例のような話である。

〇山車とは別に、御神輿もお手製である。ふと、中身を覗いてみたら、「赤城神社」のお札が張ってあった。これは妙な話であって、いつも宵宮に呼んでいるのは、ご近所の諏訪神社の神主さんである。町内の古い人たちに聞くと、ウチの町内はもともと赤城神社の氏子であるのだが、それが諏訪神社に包摂されるのは、何だかよく分からないけれども、ちゃんと理屈が通っているのだという。

〇要は古い住宅街で、伝統もないところでお祭りを演出しているのである。そこはそれ、神主さんのお清めやら御神酒やら、御神輿やら山車やらがないことには、お祭りはお祭りらしくならない。そのために、いろんな努力があるということであります。ということで、明日も朝早くから出動です。


<7月22日>(日)

〇わが町内会のお祭りは、滅多に雨が降らないというジンクスがある。今朝も役員が集合した午前8時半時点では雨が降っていたが、神輿が集会所をスタートする午前10時にはしっかり晴れた。さすがである。これとは対照的に、翌週に行われる柏祭りは雨が降るのが「お約束」となっている。ということで、当初7月22日に予定されていた投票日が1週間延びて29日になったために、選挙の投票日は雨になるかもしれない。

〇実はこの柏市では、市議会選挙が7月29日公示、8月5日投票ということになっている。これが沼南町と合併して初の市議会選挙であり、議席数も現状から減るので、現職の議員さんたちにとっては真剣勝負の夏である。お祭りの準備をしている間に、「報告会」と称して演説に回ってくる人や、打ち上げをやっているところへ「ご挨拶」にみえて、ビールを注いでいく人がいる。まさにドブ板、田舎政治を地で行くような世界である。

〇そんなわけで、町内会は年間最大のイベントを終えてホット一息。子供たちはいよいよ夏休みの始まり。そして、政治の世界はこれからが暑い夏。それにつけても、早く梅雨が明けませんかねえ。


<7月23日>(月)

内外情勢調査会の全国大会で、今日の講師は渡辺喜美さんであったので、冷やかし半分に聞きにいく。本日のテーマは「今日できることを明日に延ばすな」。主催者の時事通信社としては、本当は選挙投票日の翌日に、今後の政局について語ってもらおうとしていたのだと思うけど、投票日が来週に延びてしまったために、今日は公務員制度改革に関する話題が中心となりました。

〇誰かをあからさまに非難するときに、「ご親戚の方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんが」と断りを入れるのは、渡辺先生の得意技のひとつである。今日の場合は、メインテーブルに鎮座ましましているのが、元次官やら元内閣官房副長官やらのお歴々なので、「皆さまを前に申し上げにくいのですが」と何度も繰り返しつつ、今回の公務員制度改革の意義をPRする。過去に3回挑戦したものの、閣議決定すら出来ず、昨年末に行革担当大臣を拝命した時点でも、重要度は「Cランク」法案だったものが、今回、奇跡的に実現したのであると。話の中盤、石原信雄氏がふと席を立って、二度と戻らなかった。ちと大人気ない態度に見える。隣の会場でやっていた「平岩外四さんのお別れの会」に向かったのだと信じたいところである。

〇政局がらみでの重要発言はこれ。(細かい部分は違っているかもしれませんが、大意は以下の通りです)

「選挙結果にかかわらず、安倍内閣の退陣はないと思う。衆議院選挙は総理大臣を決める選挙だが、参議院選挙のあとに首班指名は行われない。参院選の後で首相が退陣するというのは、中選挙区制時代の発想だ。こう言うと、橋龍はどうなんだという声が出るだろうが、あれは竹下登さんが健在だった頃で、経世会内部の談合で小渕さんの指名が決まった。『参院選敗北の責任をとって安倍さんは辞めるだろう』というのは、中選挙区パラダイムに戻りたい人たちの願望に過ぎない」

〇言われてみれば、なるほどなぁ、であります。イギリスにおける下院選挙は4〜5年に1度しかありませんが、それに比べて日本は選挙が多過ぎる。平均で2年半から3年に1度、衆議院選挙があることに加え、3年に1度、参議院選挙がめぐってくる。どちらもない年というのがめずらしいくらいである(今世紀に入ってからは、2002年と2006年だけ)。選挙のたびに、首相が辞める辞めないと言っていたら、短期政権になってしまうのは当たり前というもの。どの道、次の衆議院選挙は2年以内に来るのですし、変な政権のたらいまわしをするより、その方がスッキリするかもしれません。


<7月24日>(火)

〇今月号の『月刊自由民主』が届きました。「安倍政権に期待する」という特集で、かんべえと八木秀次氏と村田晃嗣さんが寄稿しています。現時点では、この3人は「負け戦」に荷担してしまった感がありますが、「モノ書く人々」としては逃げも隠れもできませんから、内容で評価を受けるほかはありません。

〇以下は拙稿の一部のご紹介。


 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」という大きなテーマを掲げている。世論調査などを見る限り、国民の多数はそのことに対して一定の支持を与えているように見える。

 その反面、国民の間には「認知的不協和」も生じているようでもある。これは社会心理学の用語であるが、大きな決断をした後に生じる居心地の悪い気分、とでもいえば分かりやすいだろうか。

 例えば消費者が高級車を買ったとする。大きな買い物であるだけに、嬉しくないはずがない。とは言うものの、どこか落ち着かない気分となる。そういうとき、消費者はパンフレットを読み返したりして、「うん、やっぱり良いクルマだ」と再確認する。あるいは、「いいクルマを買ったね」と誰かに言われることが、妙に嬉しかったりする。
 
 重要なことは、高い商品を購入してもらったときは、どんなに顧客の満足度が高くても、細かなアフターケアが必要だということだ。腕のいいセールスマンは、「売りっぱなし」にせず、「おクルマの調子はいかがですか?」と声をかけたりする。値のかさばる商品であればあるほど、それは重要なことである。

 思うに、安倍内閣は大きな政治課題を次々に手がける一方で、そうした細かな配慮に欠けていなかっただろうか。「政策は正しいのだから、きっと満足してもらえるに違いない」といった驕りはなかったか。しかし国民は正しい政策が行われていると考えていても、心の底から納得しているとは限らないのである。

 そういった心の隙間をつくようにして、突如として浮上したのが年金問題であった。というより、正確には「年金番号記録問題」と呼ぶべきであろう。俗に「消えた年金」などといわれているけれども、「宙に浮いた年金番号」が問題なのであって、年金がなくなっているわけではない。社会保険庁という組織において、不適切な仕事が行われていたことが問題の本質である。

 しかし真面目に掛け金を払ってきた側としては、「自分はちゃんと年金をもらえるのか」は非常に切実な問題である。そういうときに、首相の関心事が「戦後レジーム」や「美しい国づくり」といった抽象的な課題であると分かれば、国民の気持ちは急速に離れていく。「次の課題は公務員制度改革だ」と大きな目標に向かっていくのではなく、国民の視点に立ち返る必要があったのではないか。

 安倍政権の課題はコミュニケーション能力の不足にある。「何を」という目的が正しくとも「いかに」という手段が間違っていた場合、良い結果が出るとは限らない。発足から10ヶ月を経て、その点が反省材料として浮かんできたといえるのではないだろうか。


〇ホンネを言えば、1ヶ月前にゲラの状態で、上記を安倍さんに読んで欲しかったですけどね。これからも、多くの「安倍宰相論」が登場することでしょう。


<7月25日>(水)

〇今日、ユーラシア21研究所の吹浦さんとお話していたら、こんなアイデアを披露いただいた。とっても創作意欲を刺激される話です。つまり、選挙後の民主党には、とっておきの秘策があるのです。


第21回参院選の投開票日から一夜明けた7月30日、民主党の両院議員総会は明るいムードであった。前夜の開票結果は、参院における第一党の座を確約していた。ところがその席上、小沢一郎代表は爆弾発言を行ったのである。

「諸君、お疲れ様。わが党の前途はいよいよ明るい。まことに記念すべき勝利ではあるが、私は一身上の理由により、代表の座を降りたいと思う」

どよめきが生じた。反主流派の若手議員、長島昭久は内心でこう叫んでいた。

『こ、これは・・・・。小沢さんは、加藤の乱を収めた後の野中幹事長と同じ荒業をやろうというのか!』

「なぜかっちゅーとだが」、小沢は続けた。「正直なところ、体が言うことをきかんのだ。以前に申し上げた通り、今回の参院選は、負ければ引退という覚悟で臨んだ戦いだった。幸いなことに、われわれは勝った。しかし申し訳ないが、私の心臓はそろそろ限界だ。この後の戦いはもっと若い人たちに指揮を執っていただきたい。どうか、年寄りのワガママを許してほしい」

再び長島は唸った。

『そうか、2003年の阪神タイガース優勝後の星野監督と同じだ。体調が悪いというのは、単なる言い訳だ。ここで身を引けば、小沢さんは民主党という枠を越えて、国民的なヒーローになる。伝説の誕生だ・・・・・』

「そこで次の代表だが・・・・」小沢が言いかけると、そこで菅と鳩山の二人が思い切り前に乗り出した。

「是非、岡田君にお願いしたいと思う」。小沢の一言に、菅と鳩山はきれいにずっこけた。

「いいか諸君、今度の敗戦でも安倍晋三は首相の座を降りないだろう。政権を獲るには、2年以内にかならずやってくる衆議院選挙で勝たなければならない。それは2005年の郵政解散のリベンジだ。わが党にとっては、本当の再チャレンジだ。その際のリーダーには、岡田君こそが適任だ。皆、賛成してくれるか?」

万雷の拍手が巻き起こった。当の岡田は、意外な展開に、顔面蒼白で立ち尽くすばかりである。こうなると、民主党若手の反主流派といえど、誰もが小沢には逆らえなかった。次に壇上に上がったのは、長老の渡部恒三であった。

「小沢さんは本当にご苦労だったと思う。今回の勝利の直接の原因は、小沢さんの地方行脚にあった。次の衆議院選も、地方行脚が必要だ。ただし小沢さんにはもう休んでもらおう。これからはワシと菅さん、鳩山さんが地方行脚を続ける。な、いいな?」

そう言われて力なくうなづく菅と鳩山は、まるでご老公の前の格さん助さんのようであった。

「そうだ、参院議長のことだが」小沢がふと思い出したように言った。「ここはひとつ、れんほうさんにお願いしてはどうかと思うのだが」

かなり意外な人事ではあったが、これも勢いで拍手で承認されてしまった。気がつくと、今度は隅っこの方で江田五月がずっこけていた。いささか気の毒ではあった。さらによくよく見ると、石井一も倒れ伏しているが、こちらは軽く無視されてしまった。(注:個人的には、円より子さんもいいと思う)。

ようやく気を取り直した岡田が壇上に上がった。

「皆さん、さらなる勝利に向けて前進しましょう。次の衆議院選挙はきっと勝てる。明日の新聞はこのように書くでしょう。『勝って辞める指導者がいる一方で、負けても辞めない指導者がいる』と・・・・」。


〇あまりにも妙手過ぎて、実現は困難でしょうけれども、面白い補助線ではないかと思います。


<7月26日>(木)

〇ちょいと番宣です。

●TXN参院選スペシャル ザ・決断! 国民の審判 真夏のビッグウェーブ

2007年7月29日(日)夜9時30分〜11時

参院選での「政治家と有権者の決断」を大胆に映像化▽「政局ドラマ」で参院選後を大胆予測!▽タクシードライバーと農家の決断に注目▽徳光和夫がニュースを引き出す!
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番組内容
TXN選挙報道の目玉企画・政治決断ドラマは「政界シミュレーションドラマ」と「実録・細川政権!小沢一郎の仕掛け」を放送。司会者徳光も憤る「年金記録漏れ」「経済格差」で有権者の決断は、どこへ向かうのか?番組ではタクシードライバーと農村の投票行動をドキュメントし「有権者の決断」を追跡する。当日候補者との対面は、この番組ならではの独自企画。「政治家と有権者の決断」を大胆に映像化する!!
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出演者
【司会】 徳光和夫、小池栄子、大浜平太郎キャスター、大江麻理子アナウンサー【コメンテーター“平成三賢人”】 宮崎哲弥(評論家)、吉崎達彦(双日総研)、上杉隆(政治ジャーナリスト)【スタジオゲスト】 渡部恒三(民主党衆院議員)、塩川正十郎(元財務相)ほか、多数議員

http://www.tv-tokyo.co.jp/program/detail/13791_200707292130.html 


〇「開票速報はNHKに限る!」という主義のかんべえですが、日曜夜は民放の特番にゲスト出演いたします。皆様、ときどきチャンネルを12にしてみてくださいな。

〇と、自分のところだけ宣伝するのもナニですから、他局もついでにご紹介。

●NHK総合テレビ「参院選2007開票速報」

20:00-20:50、21:00-21:50、22:00-22:50、23:00-23:55、24:00-24:40、25:00-25:30、26:00-28:30

司会:畠山智之

http://www.nhk.or.jp/kouho/ 

●日テレ「ZERO×選挙2007」

 第1部・19:58-23:30

  司会:島田紳助、村尾信尚、小林麻央、鈴江奈々

 第2部・23:45-26:00 NEXT GENERATION

  司会:笛吹雅子 ・ 出演:櫻井翔 ・ ゲスト:えなりかずき ほか

 http://www.ntv.co.jp/election2007/ 

●TBSテレビ「乱!参院選総選挙2007」

 第1部・19:58-22:00、第2部・22:00-23:20、第3部・23:20-24:10、第4部・24:30-26:00

  司会:鳥越俊太郎、杉尾秀哉、三雲孝江、田丸美寿々、膳場貴子 ・ 出演:岸井成格 ほか

 http://www.tbs.co.jp/senkyo2007/preelection/ 

●フジテレビジョン「FNNスーパー選挙王」

 開票速報・20:00頃、以降随時続報

 第1部・21:15-22:58、第2部・22:58-24:15

  司会:安藤優子、渡辺和洋

  出演:伊藤利尋、滝川クリステル、石原良純、三宅久之、櫻井よしこ、

      木村太郎、須田哲夫、奥寺健、森下知哉、中野美奈子、佐々木恭子 ほか

 第3部・24:30-26:00

  出演:黒岩祐治、島田彩香、長野翼 ほか

 http://www.fujitv.jp/fujitv/news/pub_2007/07-199.html 


●テレビ朝日「選挙ステーション2007」

 第1部・19:57-21:22

  司会:古舘伊知郎、河野明子 ・ 出演:山口豊、武内絵美、富川悠太、平石直之、小久保知之進、市川寛子 ほか

 AFCアジアカップ2007決勝・21:22-23:30 (日本決勝進出時、最大延長24:44まで)

 第1部・23:30-24:30

 第2部・24:30-26:30

  出演:田原総一朗、長野智子、渡辺宜嗣 ほか

 http://www.tv-asahi.co.jp/senkyo/index_top.html 


〇ちなみに明日夜は、日経CNBC「マーケットトーク」(午後9時から)で、「どうなる参院選、マーケットへの影響は?」てな話を、三原淳雄御大と繰り広げる予定であります。いよいよあと3日。


<7月28日>(土)

〇昨晩は日経CNBC『マーケットトーク』に出演したのですが、「かんべえがマーケット番組に呼ばれると市場が荒れる」ジンクスは健在でありました。

〇昨晩の三原淳雄さんは、「ゴルディロックス経済の終わり」という言い方で、相場の変調を説明されていました。「底堅い経済」「低インフレ」「カネ余り」という、投資にはまことに恵まれた状態が続いていたわけですが、いろんな意味で状況が変わりつつある。先日来、相場はメッセージを発しているのだけれど、まだその中身が伝わっていないということかと勝手に理解しました。

〇焦点のサブプライム問題については、ぐっちーさんの以前からの警告がズバッと決まったような感じです。これまでは、「サブプライムは量が少ないし、ちゃんと証券化されてリスク分散されているから大丈夫」という説明がされてきました。(かんべえも、どこかで言ったような気がする)。しかし、売り手側が「リスク分散している」ということは、買い手側からすれば「どこにサブプライムが入っているか分からない」ことになる。これじゃ何を買ったらいいか分からない、いや私の投資信託は大丈夫なの?という騒ぎになる。ぐっちーさんいわく、

従ってくどいようですが、ここから先の問題の本質は信用問題であり、もはやサブプライム、であるとかモーゲージマーケットとかいう一部の市場機能を分析しても仕方ない。

〇ということで、クレジットシステムの危機でありますから、「世界同時」になるのもやむなしでありましょう。

〇変なたとえでいいますと、最初は「北京の肉まんには段ボールが入っている」という話が流れて、「まあ、北京は例外だよ」と笑っていられたのが、世界中どこでも、「肉まんはナニが入っているか分からない」、「昨日食べた肉まんは大丈夫か」などというレベルに達してしまった。安心して肉まんが食べられるようになるには、少々お時間がかかるのかもしれません。


<7月29日>(日)

〇テレビ東京の選挙特番「ザ・決断!国民の審判 真夏のビッグウェーブ」に出演してきました。いやはや、すごい結果でありました。その一方で「やっぱりね」という気もする。このところ、多かったですからね、「やっぱりね」という事件が。柏崎原発はやっぱり万全じゃなかったとか、村上ファンドはやっぱり有罪だったとか、サッカーのアジア杯はやっぱり負けちゃったとか・・・。

〇今回の「一人区ドミノ現象」は、今後の政策に大きく響きそうです。6年前の参院選で、有権者は小泉さんに期待をかけたから、自民党は64議席を得た。ところがその後、地方経済は「成長を実感へ」どころではなかった。小泉改革が進む中にあって、従来、地方の自民党を支えてきた組織は次々と弱体化していった。

●ゼネコン→公共投資削減のあおりを食らって衰弱した。

●地方議員→市町村合併のために絶対数自体が減った。

●郵便局→郵政民営化で敵に回してしまった。

●農業団体→衰退にますます拍車がかかった。

〇ゆえに今回の選挙選における自民党最大の敗因は、「小泉さんが やっぱり壊した 自民党」ということになるのだと思います。もちろん小泉さんは、いい意味でも自民党を「壊した」。自民党が改革政党として、無党派の支持を得て生き残るという新しいビジネスモデルを示した。2005年の郵政選挙では、その破壊力をまざまざと見せつけた。しかし、それは天才・小泉でなければできないようなNarrow Pathであって、安倍さんは復党問題あたりでその道を踏み外してしまった。もともと自民党は嫌われていたのだ、ということを、自民党自体がどこかで忘れてしまったのかもしれません。

〇自民党の敗因その2は、当不規則発言の7月24日に書いたことの繰り返しとなります。アメリカの選挙では、よく"People like us"という言葉が使われる。有権者の投票行動には、「自分のような人のことを考えてくれる候補者かどうか」という判断が大きな意味を持ちます。「美しい国」や「戦後レジームからの脱却」を標榜する安倍さんは、果たして庶民感情を理解できる人だと思われたかどうか。

〇人は怒りを忘れることはあっても、恨みを忘れることは滅多にないものです。そして人間がもっとも恨みを持つのは、「馬鹿にされた」「無視された」という感情です。今回の選挙結果を見ると、「ベテランより若手」「男性より女性」という傾向がはっきりと読み取れる。「所詮、あの人たちには分かってもらえない」という思いが、有権者を反自民、反ベテラン政治家という投票行動に駆り立てた。民主党はその受け皿となった。しかし、民主党が積極的に選ばれたかどうかといえば、そこはちょっと留保すべきであって、それは次の衆議院選挙を待たなければならないでしょう。

〇強いて3番目の理由を挙げるならば、通常国会の最終盤で、自民党がずいぶん「無茶」をやってしまったことも尾を引いた。強行採決を多用したことは、政権の正統性を大きく傷つけてしまったと思います。それだけではなく、今後の民主党との妥協を難しくしてしまった。民主党も「馬鹿にされた」という恨みを持ってしまいましたから。今後は与野党が衆参で妥協をしなければならない機会が増えるでしょうが、それはちょっとやりにくくなったかもしれません。

〇投票日を1週間、延期したことも、国民生活に与えた影響は大きかった。例えばですな、わが柏市においては、投票日が柏祭りと重なってしまった。しかも当柏市では、8月5日が市議選の投票日なのです。ということで、本日は早速、市議候補者たちが選挙活動をやっております。宣伝カーもちゃんと回ってきます。しかし、「選挙の投票日に選挙活動が行われている」なんて、そんな馬鹿な話がありますか。これもひとえに、日程変更が響いている。

〇さて、それでも安倍晋三さんは辞めないでしょう。今週後半に内閣改造。週末には世論調査が厳しく安倍内閣を叩くでしょう。それから先は茨の道でしょうが、どうせなら「参院選で首相は辞めない」という前例を作ってもらいたい。勝負は次の衆院選。どうせ2年以内に来るんだから。もっともそれまで、自民党内がもつか、という点もありますけどね。経済や市場への影響はそれほど大きくないだろう、というのは、いろんなところで書いてきたので、ここでは繰り返しません。

〇それではまた後日、続きを。


<7月31日>(火)

〇先週、子供と一緒に柏駅前を歩いていたら、後ろから「吉崎さんでしょ」と声をかけられた。振り向くと、名前は思い出せないのだけれど、確かに見たことのある顔が手を振っている。

「XXですよ、長島事務所にいた」と言う。

「今、何をしてるの?」と聞くと、

「僕、選挙に出てるんですよ。比例区で」

見ると彼の後ろには、民主党の宣伝カーが駅前に止っている。なんと選挙運動の途中なのであった。久しぶりの出会いとしては、なかなかにシュールレアリスティックな光景である。瞬間、当方の耳には「僕はこれから火星に行くのでロケットを作っているんです」と言っているように聞こえてしまったが、それはごく普通の反応ではないかと思う。仕方がないから、軽く、「じゃあ、頑張ってね」と声をかけて、子供と一緒にその場を立ち去ったのであった。

〇今日、そのことをふと思い出して、新聞を開いてみた。そしたらなんと、当選しているじゃないか、風間なおき氏は。それも16万9723票を集めて、堂々の当選である。どっひゃー。

〇そこでやっと思い出した。彼と最初に会ったのは、15年前に行われた、さる勉強会の席上であった。日経BP社のビルのしょぼい会議室で、しょぼい弁当が出て、会費を千円取り、スピーカーは当時、NHK会長の座を放逐されたばかりのシマゲジこと島桂次氏であった。日経ビジネスで「敗軍の将、兵を語る」の取材の席上、「若い者を相手に話がしたい」と言ったとかのことで、S記者が声をかけて30歳前後の10人弱が集まった。なぜかその中にワシ(当時:日商岩井調査部)が入っていたのである。

〇意外なことに、話はつまらなかった。政界の裏話とメディアの悪口ばかりであった。「細川は日本新党なんか作って、どうするつもりだ」などと言っていたが、それ以外はほとんど覚えていない。それから3年ほど後にシマゲジさんは他界してしまうのだが、恐縮ながらさほどの感慨は沸かなかった。そのわりに、その夜のことを詳しく覚えているのは、その席上で初めて、角谷浩一氏(当時:テレビ朝日社員)と長島昭久氏(当時:衆議院議員政策秘書)と会ったからである。で、その中に風間直樹氏(当時:三井物産)もいた。

〇さらに思い出すと、その場には今をときめく長妻昭氏(当時:日経BP記者)もいた。つまり、その日の10人弱のメンバーの中から、3人の民主党議員が誕生したことになる。なんだったんでしょうね、あの会合は。不肖かんべえは、若い頃から数え切れないほど、この手の「勉強会」に顔を出してきたものだけど、こういう経験もめずらしい。ちなみにこのシマゲジ勉強会は、その夜1回だけで2度と開かれなかった。シマゲジさんは、あの世で何と思っていることでしょう。







編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki