●かんべえの不規則発言



2001年11月


<11月1日>(木)

○月代わり。日経新聞の「私の履歴書」が、ジャック・ウェルチから桂米朝になった。

○ジャック・ウェルチは、@会社を成功させて、Aそれを長く続けて、Bなおかつ「お邪魔虫」にならず、Cきちんと後継者を指名して、Dきれいに身を引いた、という希有の成功者である。普通はこんなことはできない。だからウェルチさんが今後の人生で晩節を汚したとか、身内が暴露本を書いて評判が落ちたとしても、ちっとも驚くべき事ではないと思う。読み終えて感じるのが、「参謀役」や「腹心の部下」の話が全然出てこなかったということ。難しい問題でも、自分ひとりで決めるということに徹底していたのでしょうね。

○ウェルチには『GE革命』という本がある。もう5年以上前から本棚にあるのだが、一度も開けたことがない。というのは、この本の原題名が"Control Your Destiny or Someone Else Will"(運命を支配せよ。さもなくば誰かに支配される)であると気づいた瞬間に、なんとなくウェルチの世界観が見えたような気がしたのである。ゆえに本の中味は読んでない。こういう「積ん読」もある、というお話。

○今月から始まった桂米朝についても思い出がある。何でそんな経緯になったのか分からないのだが、小学校のときに桂米朝の本を読書感想文に書いた。その中で唯一覚えているのが、「芸人というのは、釘一本作らないのに酒がうまい、まずいといっている職業なんだから、末路哀れは覚悟の上やで」というセリフである。これが本日の紙面に出ている。なんだかうれしい。

○芸人の「末路哀れ」がどんなことか、当時の小学生にはピンと来なかったけど、なんとなく心に残った。大学を出て、商社に職を得てから、この言葉が不意に蘇った。そこで、「商社マンというのは、釘一本作らないのに、メーカーさんより給料がよかったりするんだから、末路哀れは覚悟の上やで」と自分に言い聞かせた。「商社マンは男芸者」という言葉があるが、たしかに芸人さんたちと似ていないこともないと思う。

○90年代後半になって、総合商社は大リストラ時代を迎え、このセリフが現実味を帯びてきた。諸先輩や同僚たちが、いろんな世界に旅立っていくのを見てきた。もちろんうまく行く人ばかりではないけれども、不思議と悲壮感がない。万年強気なのやら、鈍感なのやら、とにかく「末路哀れ」という感じではない。イラクで人質になっても、インドネシアの暴動に巻き込まれても、すぐに笑い話にされてしまい、「これで10年使えるセールス・トークができたな」などと励まされる変な集団なのである。

○今夜は同業者の集まりに出席。やっぱりいましたね。9月11日にワールド・トレード・センターに居たという人が。普通なら「危なかったですね、お気の毒に」となるのだろうが、ほとんど「やりましたね。いやあ、うらやましいなあ」的な反応になってしまうからスゴイ。たまたま会場が浜松町の貿易センタービルだったから、「そういや、ここもWTCですなあ」。わが国の貿易は、こういう人たちが担っていたりする。


<11月2日>(金)

○コンサートに行ったり、優雅にランチしたり、暇そうに見えるかもしれませんが、実はこれで忙しかったりするんですよ。ということで今週号はお休みさせていただいております。

○溜まった仕事を片付けるには「手抜き」が必要。ということで不規則発言も手抜きで失礼します。ああ、そういえばこの人の『慮る力』もまだ読んでいない。どうしよう、今週末は。


<11月3日>(土)

○10月10日と並び、今日は晴れの特異日。ところが今年はこのジンクスが当たりませんな。先週日曜日に予定されていたバザーが雨天順延になって今日開催に。空を心配しながら労働奉仕していたら、午後2時にバザーが終わると同時に降雨。かろうじて間に合いました。

○長女Kが通っていた保育園が主催するバザーである。長女はもう中学生だから、かれこれ10年以上のつきあい。無認可の共同保育所なので、このバザーが重要な収益源だったりする。実際、過去には100万円以上の売上を計上したこともある。売り物は雑貨、衣類、家具、子供用品、古本、それに軽食類。春と秋の年2回開催。地元では結構有名で、楽しみにしている人もいると聞く。

○このバザーでは、ずっと家具コーナーを担当している。持ち込まれる使用済みのソファーだの箪笥だの家電製品だのを、いかに3時間で売り切って、その日のうちに家まで届けるかというのが勝負。売れ残ると悲惨だが、うまく売れば値幅が取れる商売だ。商品の「値付け」に始まって、価格交渉のコツとか、荷物の配送の段取りまで、無数のノウハウがある。ところがこの仕事、今年は大幅縮小を余儀なくされた。今年の商品はわずかな籐製品とゴルフクラブが少々。

○なんとなれば柏市では、昨年から粗大ごみの引取りが有料化され、バザー主催者としてはベッドなどの大きな家具類を引き取ることができなくなった。加えて今年からは家電リサイクル法が施行され、テレビなども売り物にはしにくくなった。なにしろ、売れ残ったらコストを払って処理しなければならない。いずれも正しいことだとは思うが、結果としてバザーというリサイクルの機会が失われることになった。もっともこの数年で「フリマ」などという商売敵が現れたり、衣類の値段が下がって古着が売れなくなったり、バザー全体がやりにくくなっていることは否めない。

○とはいえ、今年の家具売り場は実に閑散。いわば自分の仕事が構造不況業種になってしまったようなもので、家具のエキスパートとしては実にものさびしい。かつては家具だけで10万円以上売り上げたこともあったというのに、今日は1万円にもならない。自分がこれまでに積み上げてきたノウハウは無用の長物である。「なるほど、リストラされるというのは、こういう気分になるものか」と思いましたな。自分は何も悪いことをしたわけではないのに、居場所をなくしてしまうわけですから。

○思えばバザーの風景もこの10年でずいぶん変わった。バブルの余波が会った頃には、びっくりするような高級品が出たこともあった。フランスベッドや、新品の大型テレビを売ったこともある。昔はよく出たミシンやエレクトーンはめっきり見かけなくなり、代わってパソコンの周辺部品が出たりするようになった。客の顔ぶれも変わって、90年代半ばからは少しずつ外国人の客が増えるようになった。彼らを相手にしているうちに、中国人研修生は価格交渉がきびしいとか、イラン人はちゃんとした英語を話すとか、フィリピン人は大勢集まると無防備にモノを買ってくれるとか、いろんなクセを覚えた。

○「バザーで家具を売る」という個々のノウハウは無駄になりましたが、思えば「モノを売る」という体験を年に2度ずつしてきたというのは、自分にとってはいいことだったかもしれません。一応は商社マンなんですが、仕事でモノを売ったことは全然ないものですから。


<11月4日>(日)

○日本の失業率は9月末に前月の5.0%から5.3%に急増。普通、雇用統計はこんなに大きく動くことはないんで、これだけでも驚いたのですが、10月の米国の失業率が5.4%になったのはもっと驚きました。前月比で実に0.5%増。テロ事件の効果がいかに大きかったかということでしょう。ちょうど1年前の失業率は3.9%だったので、「わずか1年で1.5%増」である。

○これで久しぶりに失業率で日米が再逆転した。手もとの資料では、日本の失業率は年度平均で98年4.3%、99年4.7%、00年4.7%である。米国は暦年ベースとなるが、98年4.5%、99年4.2%、00年4.0%である。悩ましいのは、「これをもって日本の方が良くなった」などとはゆめゆめ考えてはならないところである。

○日本では「失業は景気の遅行指数」であるといわれる。なぜなら、景気が悪くなるときは経営者はいろんな努力をした末に、最後に雇用に手をつけるからだ。ところが米国の場合、景気が悪くなると見ると真っ先に雇用をカットする。つまり米国では「雇用は景気の先行指数」なのである。米国式にバンバン雇用を切ると、すぐに個人消費に影響が出るので、ますます景気に響くという問題点がある。その反面、経営の健全性は保たれるので、いざとなればV字型の回復が望めるというメリットがある。どっちがいいかは議論の分かれるところだろうが、米国経済はテロという眼前の敵に対してファイティングポーズをとっているように思える。

○そういえば、NYに留学中のSさんからこんなメールが来ていた。

実はNYでのバイト先が経営の危機ということで,仕事を解雇になちゃったんです。
で,すごーく困っているので,もしNYで仕事の情報などがあったら教えてください。

○個人のレベルで考えれば、やっぱり困った事態ではある。


<11月5日>(月)

○今週金曜日にCSISというワシントンのシンクタンクの人が来るので、HPを見ていたら「ダーク・ウィンター」という言葉が眼に止まった。何だと思います? 詳しくはここを参照。実は「暗い冬」というのは、バイオテロリズムに対するシミュレーション・ゲームの名前なんです。

○この実験が行われたのは6月22〜23日。複数のシンクタンクが共同で実施した。「台湾海峡の緊張から東南アジアで危機が発生し、米国本土のオクラホマシティで天然痘が発生。13日間で病気は25州、他の15カ国に蔓延する」という設定。アメリカではよくこういったシミュレーション・ゲームが行われる。参加者は政治家や研究者やジャーナリストなど。それぞれ大統領、安全保障担当補佐官、CIA長官、国防長官、国務長官、オクラホマ州知事、NBCやニューヨークタイムズの記者、といった役割を割り振られ、新しい事態が進展するに従って議論したり、行動を決定したりする。白熱した実験になったそうだ。

○「暗い冬」実験の結果、バイオテロが行われた場合に重大な脅威が発生することが判明した。大量の犠牲者、主要な機関の麻痺、社会不安、政府の信用失墜などがもたらされる。米国内にある天然痘ワクチンは、推定で700万から1200万単位程度。ワクチン生産は1980年以来行われておらず、生産を再開しようとすれば24〜36ヶ月を必要とする・・・・。

○といった「暗い冬」の研究成果は、今回のテロ事件があってから急激に注目を集めている。10月25日には上院の公聴会で研究成果が報告された。米国厚生省が天然痘ワクチンの生産を急いでいるのは、こういう研究があったからなんですね。

○この手のアメリカの用意周到さはいつも感心させられます。「暗い冬」の研究資金は、オクラホマのテロ防止国立記念研究所というところが出している。1995年のオクラホマ連邦ビル爆破事件の後に、そのような研究所ができたらしい。ちゃんと教訓が生きているのだ。われわれは同じ年のオウム事件から、何を得たのでしょうね。

○バイオテロに使われる生物兵器には、それほどたくさんの種類はないらしい。たとえばペスト菌は感染力が強い菌だが、寿命が短いから早めに死滅してしまうし、作り手が自分の感染を防ぐ手間を考えると、あまり使い勝手がいいとはいえない。かつてオウムが使ったボツリヌス菌は、空気に触れると死んでしまう。天然痘やエボラウイルスも、人為的に流行らせるのは簡単ではない。そうなると残るのは、感染力や致死率は低いけど、寿命が長くて扱いやすい炭疽菌ということになる。

○小松左京の『復活の日』のようなイメージがあると、ついつい過剰反応してしまうが、生物兵器は核兵器や化学兵器と違い、それだけで相手を殲滅できるほどのものではない。むしろ「足手まとい」を作って、嫌気を起こさせるために使う戦術兵器という面がある。あまり怯えていてはいかんのですね。


<11月6日>(火)

○アクセス件数が今日で16万件。増えたなあ、と実感。今日は4年ぶりに会った人に、「かんべえさん、見ましたよ」と言われてしまった。こちらは相手のことを知らないのに、向こうはこっち知っている。こういうのも「非対称形の脅威」というんでしょうか。ところでBさん、今日は急いでいたので名刺交換するのを忘れてました。これを見たら私にメールをください!

○さて、この季節、またもやってきたのが日本ニュージーランド経済人会議。昨年はこの仕事でニュージーランド出張しました。今年は来週、京都で開催されるので行ってきます。テロ事件と国際情勢とか、土壇場の日本経済とか、2002年度の貿易見通しとか、いろいろテーマがある中をぬって京都会議の準備をしております。

○昨年秋に行ったときの感じでは、ニュージーランド経済はかなり沈滞気味だった。ところが今年になってからはかなり好転したらしい。通貨安の効果が浸透して輸出が伸び、貿易赤字が急減。やっぱり深刻な構造問題がない国はいいですね。観光需要も貢献したようだ。この点で年間15万人が訪れる日本人観光客の存在は小さくない。数としては米国に次いで第2位だが、「ほかの国からの観光客に比べて4倍使ってくれる」(JTB)ありがたい客なので。

○景気が好転したので、「鉄の女」ヘレン・クラーク首相の労働党政権は磐石の態勢に入ってきた。このままなら来年の選挙も楽勝の勢い。不利を自覚した国民党は弱冠39歳のビル・イングリッシュを党首に担ぎ、懸命に人気浮揚を図っている。クラーク首相は当初、雇用関係法を組合に有利に改正するなど、「改革を逆行させる」動きが目立ち、現地の経済界も冷ややかに対応しているように見えた。ところが最近の彼女の政治的手腕への評価はなかなかのもの。風向きは変わったようだ。

○クラーク首相が打ち出したユニークな政策のひとつに、「空軍攻撃部隊の廃止」がある。もともとニュージーランドは外敵の脅威がほとんどなく、非核、平和主義の国。軍隊を使うのはPKOのときくらいである。そこでこの際、空軍と海軍は輸送や巡視といった非戦闘機能を重視しようと割り切ってしまった。ところがこういう国が、米国の同時多発テロに関してSAS(特殊部隊)の派遣を決定した。クラーク政権は緑の党の閣外協力を得て成立しており、緑の党はもちろん戦争反対。それでも国民の多数は、「こんなことは許されない」と戦闘行為を支持。単なる平和愛好国ではないのである。

○ここでふと思い出すのは、そんなものがあるのかどうか定かではない上に、効果はどうやら見掛け倒しの「エシュロン」である。噂によれば、米、英、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国は、全世界を網羅する盗聴網を作っているという。おそらくニュージーランドにも情報機関があり、かなり高度な情報交換を行っているのではないだろうか。軍事行動への参加にしても、単なる「アングロサクソンのよしみ」で付き合っているわけではないのであろう。

○お隣りの豪州などは、最初から「米国とともに戦う」姿勢を明確にしている。ところがこういう話があるんですね。つまり、米国では「俺たちと一緒に戦ってくれるのはイギリスだけだ」という思い込みがあって、ついついそれが態度や言葉のはしばしに出てしまう。そこで豪州人は「おいおい、忘れてもらっちゃ困りますよ」と怒ったり、拗ねたりしている。当然だよね。南半球の人たちは、北半球に対する一種の「片思い」がある。「南の友人たち」を、ちゃんと視界に入れておかないといかんです。


<11月7日>(水)

○言うまいと思えど今日の多忙かな。テロ問題、日本経済、ニュージーランド、貿易見通しの4大テーマに追われつつ、今日は「中国〜アセアン論議」と「日米安保論議」に顔を出してきました。もー、頭のなかは混乱のきわみ。

○中国ひとり勝ち、ASEAN低迷の状態が続いている。これはもう仕方が無くて、昨日までブルネイでやっていたASEAN+3でも、そういう図式が鮮明になったようだ。日本も対中ODAは減額するけど、ASEANへの分は据え置くということになるのではないだろうか。これから先、しばらくはASEANにとってはつらい時期が続きそうだ。

○もっとも、こういう流れは一方的に見えることはあっても、かならず揺り戻しがあるはずだ。ほんの5年前には、中国よりもASEANの方が魅力的だった。5年後にどうなっているかは分からない。だからやっぱり企業としても、中国とASEANはバランスをとって置いたほうがいい、というのが本日の結論。おそらく日本の対アジア政策というのは、「中国と喧嘩をしないこと」と「ASEANを大事にすること」を2つの柱にすべきではないだろうか。

○最近は中国の脅威、ということが盛んに語られている。だが、ほとんどは裏を返せば日本の問題、という気がする。中国のコストの安さが怖いのではなく、日本のコストの高さが問題なのである。中国の貿易のうち、輸出の47.9%、輸入の52.1%は外資系企業によるものだという(2000年)。このうちかなりの部分を日本企業が占めていると思う。ネギやシイタケも日本の企業が生産指導して作っている。そういえば、明日は暫定セーフガードを切り替える締切日。さすがにやらないでしょうな。なにせ明後日には、カタールでWTO閣僚会議が始まりますからね。

○午後から憲政記念館で日米安保50周年フォーラムへ。立派なパンフレットの中に、参考文献としてアーミテージ・レポートが紹介されていて、当溜池通信の訳文が全文掲載されている。印刷されていると、自分の文章がなんだか立派に見えてしまう。それにしても、拙訳がデファクト・スタンダードになってしまうというのは、ちょっと怖いような・・・・。


<11月8日>(木)

○今日も4大テーマに追われる一日。ニュージーランド会議や明日のCSISとの面談の打ち合わせの合間に、船舶輸出について話を聞きに行く。ここはいまどき、「2年半先までの受注残がある」という景気のいい世界。輸出全体の2〜3%に過ぎませんが、あるんですな、そういうセクターも。この世界も韓国や中国勢の追い上げという現実があり、受注面ではこれから苦しくなるといわれているが、今の1ドル120円の水準が続けばなんとかなるらしい。日本の造船業は健在なり。

○週刊文春が気になってます。不肖・宮嶋は「シャレにならんくらいひどい行程」をかき分け、アフガンで「覚悟の戦場撮影記」を連載中。先週号なんぞ、写真が届かずに原稿だけだった。戦場カメラマンがそれではマズイではないか。今週号はちゃんと写真もついている。「戦争は撃つ方から取材するのは心強いが、撃たれる方にいると、それはタマらんものがある」とのこと。戦車の上で笑うアフガンの子供の写真が秀逸。かの国の子供は、「カラシニコフは全部でいくつでしょう」で足し算を覚えるとのことだが、無邪気に遊んでいる子供の顔は万国共通。

○他方、そういう子供の上にも米英軍の空爆は降り注ぐ。しかも戦況ははかばかしくない。9月11日直後から主戦論を続けている"The Economist"誌は、今週号は表紙にアフガンの子供の写真を載せて、"A heart-rending but necessary war"(心痛む、しかしそれでも必要な戦争)との論陣を張っている。結論は「地上軍の投入を」だ。なぜ、そこまでしなければならないのか。読むとなるほどと思う。でも痛い。要約は明日の溜池通信に掲載予定。

○ノルウェー在住のAさんも、そういう痛みを感じておられる様子。同国の世論調査では、36%が攻撃続行で、58%が中止とのこと。それでも「政府が数百人の特殊部隊と戦闘機や哨戒機を参加させる意思を早くから発表し、先週末にアメリカから要請があった」よし。欧州全体では、「イタリア2700人、ドイツが3900人の派兵を閣議決定し、トルコ、スペイン、次の北欧軍をいれると、イギリスを合わせて2万人規模」が参加するとのこと。文字通りの苦渋の決断。

○こういう「痛さ」はちゃんと伝わっているのだろうか。


<11月9日>(金)

CSISの首脳が来社。話を聞いてみると、びっくりするほど悲観的な見方をしていました。アフガン戦線を年内に終わらせることはとても無理、あんな道路もない国で軍事行動をしても成果は覚束ない。空爆を続けている間に、米国への支持は低下していく。しかもタリバンを無力化したところでテロとの戦いは終わらない。こりゃもう20年くらいかかるかもしれないぞ、とのこと。

○面白かったのは、「ゴアが大統領になっていたとしたら、どういう結果になったか」という仮定の質問に対し、「今は議会民主党がブッシュ政権に協力しているからいいけれども、ゴア政権だったら議会共和党が協力しないだろう。だからブッシュ政権の方が良かった」とのこと。なるほどそういうものですかね。

○夜はパキスタン政府の関係者を招いての勉強会。パキスタン人の受け止め方、というのが分かって非常に面白かった。アフガニスタンは兄弟国という位置付けなのですね。たとえばパキスタン人は若いうちにカブールへの旅行をするのだそうです。民族的にも近いし、同じイスラム国でもある。つまり「身内」という感覚。加えて戦略的な重要性がある。パキスタンの最大の敵は東側に接するインド。そして西側に接しているイランとは、先方がシーア派で当方がスンニ派であるから関係は微妙。したがって北側のアフガンは味方にしておく必要がある。

○民衆の反米デモは相当にひどいのか、と聞くと、不平分子はせいぜい人口の5%くらいでしょう。でも1億3000万人の5%だから、結構多いですよとのお返事。かといって、アメリカを強く信頼しているわけでもないらしい。なにしろ冷戦が終わったら、すぐに見離されてしまったという記憶が残っている。ゆえにアメリカとの軍事協力にはあんまり乗り気ではない。この辺の「間合い」が独特で、いかにもアジアという気がする。

○「イスラム国が経済発展を目指す場合、政教分離をして世俗主義でいくトルコのタイプと、外国から資本や技術を目一杯引っ張ってくるマレーシアのタイプがあるが、パキスタンが目指すのはどういうモデルか」と聞いてみた。そうしたら答えがふるっていて、「韓国のモデルがいい」とのこと。察するに「クリーンな軍事独裁政権によって、なるべく社会の仕組みを変えないままで経済発展を実現したい」ということらしい。金利の概念を否定したり、女性は働いちゃいけないなどのルールは、経済にとっては不利なルールだが、そこを変えるのはやっぱりひと苦労なのだろう。

○パキスタンは親日国なのだが、「日本兵が銃を持ってわが国に来るなんて信じられない」と言う。「日本外交が積極的になるのはいいことだと思うけど、平和愛好のイメージが定着しているからビックリしてしまう。後方支援は海上だけにしておいた方がいいんじゃないの?」などと言われて、あごが外れそうになってしまった。ひょっとして、民主党が言ってたことが正しかったのだろうか。


<11月10〜11日>(土〜日)

○いやあ、昨日はよく寝てしまった。スーパーで1000円の枕というのを買ってきたら、いきなり昼寝を3時間。夜は10時には寝てしまい、そのまま朝は8時まで。新しい枕の効果は絶大なようだが、頭の高さが変わったためか、どうも体が痛いような気がする。ほんとオジン体質である。

○ところで9日分の不規則発言に対し、愛読者の方から釘を刺されてしまいましたぞ。

かんべえさんもタリバン生みの親たるパキスタン人のスタンスを心得て、冷静に、なびかないようお願いします。

○なんの、私もやせてもかれても好戦派。武力行動支持は変えませんし、日本の協力も断固必要だと思う。あのテロ事件から今日でちょうど2ヶ月。戦争開始からまだ1ヶ月と少し。戦況が悪いから様子を見ましょう、なんてことでどうするのか。金曜夜に話を聞いたパキスタン人はグローバル・スタンダードの人物でしたが、よその国の軍隊が武装して自分の国にやってくるのをウェルカム、なんて言うわけがない。先方も愛国者であることはきっちり割り引いて聞いておくべきだと思う。

○アメリカが反省すべき点があるとしたら、それは「地域研究の弱さ」だと思う。たとえばパシュトゥン語のできるCIA職員は皆無らしい。「アジア2025」の中には、「米軍の兵士で外国語を学ぶものは、85%までが欧州系の言葉を選ぶ」と嘆いている記述がある。要するにアジア研究は手薄だった。おかげでビンラディンの居場所も分からないし、ポスト・タリバンの政権構想もなかなか描けない。逆にいえばこれは、冷戦終了後のアメリカが、いかに軍縮と行革をやったかということの証左でもある。

○日本の某情報機関は、ベトナム戦争の頃に大量採用したベトナム語要員をいまだに抱えている、という話を聞いたことがある。それもさすがにいかがなものかと思うが、情報の仕事というのはいったん休むと取り戻すのに時間がかかる。パシュトゥン語の勉強を今から初めて何年、現地に人脈をつくって何年、影響力を行使できるようになるまで何年、といった息の長い仕事になる。おそらくかつてのCIAならば、そういう人材を抱えていたのだろう。でも90年代にばっさりリストラしてしまった。たぶんアフガンについても、タリバンが出てくる以前(1996年)のことはある程度把握していたのだと思う。

○地域研究というのは、総合力を問われる学問である。現地の言語ができて、政治を学んで、経済が分かって、社会や風俗や宗教を理解して、やっとその地域のことが語れるようになる。日本でも外務省の地域担当官、ジェトロ(アジア経済研究所)などにユニークな人材の集積がある。終身雇用になっているので、アメリカに比べてもけっしてレベルは低くないと思う。ところが彼らの知識を活かすような仕組みは弱い。この辺はスペシャリストを優遇しない日本社会の弱点といえる。

○アフガン北部の要衝、マザリシャリフが北部同盟の支配下になった。どうもこの、ガンダム世代としては「ザヒル・シャー」とか、「ドスタム将軍」とか、「マザリシャリフ」といった固有名詞を聞くと、妙に懐かしい感じがするのはどういうことか。ひょっとしたら「ア・バオア・クー」なんて地名もあったりして。

お知らせ:月曜日の朝、8時半くらいのFM横浜でかんべえが登場する予定です。電話取材で「中国のWTO加盟について」お話しすることになっています。神奈川県方面の方、よかったら聞いてください。


<11月12日>(月)

○訃報。岡崎研究所の主任研究員、小川彰さんは11月11日23時20分、上行直腸ガンのために逝去されました。享年47歳。合掌。


<11月13日>(火)朝

○・・・・と、いうことについて、深夜にひとりで飲んだくれながら、いろいろ書こうとしているうちに、PCの調子がおかしくなってしまった。ということで上の1行だけを更新しておきました。今朝はなんともないみたい。不思議だな。

○昨夜はまた飛行機が落ちました。諸行無常。今回のかんべえはめずらしく起きていました。テロではない、というが、疑えば疑える状況。アフガン戦線は前進したようですが。

○今日から京都へ行ってきます。PCがちゃんと使えないと困るなあ。


<11月13日>(火)夜 in 京都

○小川彰さんは博報堂の社員である。ワシントン駐在7年というところがちょっとユニークではあるが、とにもかくにも広告代理店勤務のサラリーマンであった。政府関係者ではなく、アカデミズムの人間でもない民間人が、岡崎研究所の事務局長になったことで、この5〜6年にわが国外交と安全保障政策の世界で比類なき足跡を残してきた。テロリストのネットワークの中心にウサマ・ビンラディンがいるように、日米同盟マフィアの中心には小川さんがいた。韓国や台湾の安保関係者とのダイアローグの場を作り、中国とも意見交換のチャネルを作った。小川さんが呼びかける岡崎研究所のパーティーは千客万来だった。偉大なるネットワーカーだった。

○偶然ながら、岡崎研究所の発足から今日に至る道筋を、私は至近距離から見てきた。小川さんはふんだんにただ酒を飲ませてくれる先輩であり、得難い勉強の機会を与えてくれる幹事役であり、個人的な相談に乗ってもらえる兄貴分でもあった。だから小川さんがどんなすごい仕事をしていたかということを、自分が書き残す義務があるように感じている。あいにく気持ちの整理もつかない上に、出張で京都なんぞに来てしまった。おかげで明日、明後日に行われる通夜と告別式にも出られない。とはいえ、今夜のところは時間がある。ということで、支離滅裂になることを覚悟の上で、弔辞のつもりで以下の話を書き続けてみる。

○小川さんが入院したのは9月下旬だった。ちょうどテロ事件後に、日本の貢献策が動き始めた頃だ。「検査だから」と聞いて、鈍い私はその通り素直に信じていた。そのうち「早期発見されたが、癌らしい」という話を聞いて、ようやくお見舞いに行った。新浦安の順天堂病院は、私の通勤経路にあった。夕方に病室を訪れると、小川さんは比較的元気で、一緒に1階の待合室に行ってよもやま話をした。テロ事件、小泉政権、マスコミ報道、といった話。ちょうど検査が終わり、いよいよ手術が近い、という頃だった。

○癌になったときの心構えの本、を小川さんは大量に読んでいたらしい。なかでも出色は梅原猛氏のもので、梅原氏は2度目の癌が発見されたときに、即座に外務省に電話をかけて、すでに決まっていたシラク大統領とのアポイントをキャンセルしたという。そしてその足で病院に行って入院した。優先順位とはそういうものだ、と小川さんは言った。たしかに逆のケースはいくらでもありそうだ。義理に縛られちゃいけない、息抜きしなきゃ駄目だよ、と言った。入院したての頃、小川さんはテロ事件に関するメールを、それこそ1日に10本程度も送ってきた。じきにそれは途絶えて、治療に専念したようだった。

○しかし状況はすでに、手術が不可能なくらいになっていた。治療は対症療法に移り、見舞いに行くとはっきりと疲れているときもあった。「せっかく来てくれて悪いけど、今日は寝る」ということもあった。3度目に見舞いに行ったときは、比較的元気で1時間以上も長居をした。もうテロの話はほとんど出ず、NHKの朝ドラを見ているとか、歌謡番組が楽しみなんだと言った。病室ではシャンソンが流れていた。

○それから昔話に花が咲いた。岡崎研究所が発足した直後、小川さんは米日財団の支援を得て、「アジアの国の小さな研究会」を組織した。カンボジアやミャンマーなど、地域研究の対象から抜け落ちがちな国に焦点を当てた研究会である。司会も案内も人集めもボランティアで、「小さな研究会」には毎回大勢の参加者が集まった。「あんときは面白かったですねえ」。

○博報堂の会議室では、ワインとチーズを並べたサロンがしばしば行われた。当初は外交関係の論文を読む会だったのに、いつしか原子力とか教育問題を語る談論風発の場となった。「岡崎研究所のサロンに来ると、ワインに詳しくなれます」と小川さんは言っていた。あいにく私の場合は、全然進歩のないままで終わった。話が面白くて、ワインどころではなかったからである。また、「あけぼの」という神田の料理屋では、安保の専門家を集めた飲み会がよく行われた。これもすごく勉強になった。とにかく行って、遠慮のない質問をすれば、次も呼んでもらえた。われながらすごい受益者だったと思う。

○日米同盟プロジェクト、KJシャトル、シーレーン研究、といった硬派の研究が始まるまで、岡崎研究所はこの手の会合をたくさん開いて、仲間を増やしていった。病室の小川さんは、そういった助走期間の頃をしきりに懐かしがっていた。「また、あけぼのに集まった方がいいね」。そういう小川さん自身は、もう1ヶ月以上も点滴だけで、食事とは無縁な生活を送っていた。そしてまた、小川さんが呼びかけない限り、その手の会合が開催できるはずがないのである。

○あるとき行われた国際シンポジウムの閉会挨拶で、岡崎久彦氏がこう言っていたのを覚えている。「今日は実にうまくいきました。なぜうまくいくかというと、小川君が上手にやってくれるからで、なぜ小川君が上手にやれるかというと、僕に相談しないからじゃないかと思う。今日だって、このあとどこへ行くかは僕は全然知らないんですよ」。あの人が居ないと始まらない、あの人に任せておけば大丈夫。小川さんを通じて人に会い、小川さんを通じて意見交換ができる。それが現実の政策を動かす。いわば国際公共財のような人だった。

○私が病院を訪れるのは不思議と火曜日の夕方が多かった。11月6日の火曜日に、外出先の携帯に「小川は熱が出たから、来てくれても会えません」という連絡が入った。その日は見舞いに行く予定はなかったのだけど、無駄足を運ばせないように、と気遣ってくれたのだと思う。知らせを受けて「そんなに早いのか」とさすがに悄然としてしまった。亡くなられたのはその5日後の夜だった。


<11月14日>(水)

○京都に赴任して1年半のT氏いわく、「最近はかなり慣れてきました。京都も、これで京都人さえいなければ面白い町ですからね」。かんべえ爆。

○昨晩、新幹線で京都駅に到着し、市営地下鉄で京都国際会館までやってきた。ところが宝ヶ池プリンスホテルの入り口が分からない。重い荷物を担いで、いっぱい迷ってからチェックイン。察するにタクシーで着く人には親切だが、地下鉄でくる人はぐるりと歩かされることになっているのである。部屋は立派。ところがデスクの上にコンセントがない。部屋の隅っこにあるけど、もちろんコードは届かない。すぐにフロントに電話して、延長コードを持ってこさせる。それはいいとして、電話がベッドの脇にしかない。インターネットなんぞ考えてない、ということらしい。まあ、自分はモバイルだからいいようなものと思いなおし、PHSを見ると電波が届いてない。ぎゃあ。

○京都国際会議場の隣にあるホテルがこの調子である。これでハイテクやITの話をしたら笑われますな。ガハハ。実は今回の宿泊費は、「ナイショですよ」といわれるくらい安い。テロ事件という「神風」が吹いたため、今年の秋の京都は満員御礼状態だが、それまでの観光地・京都は長期低落傾向にあえいでいて、「日本ニュージーランド経済人会議」ご一行様にも結構なレートを適用していただいている。文句を言ったら罰が当たるのである。

○JTBさんの言によれば、旅行会社にとって修学旅行ほど結構なものはない。大量に受注できるし、キャンセルはないし、お客のケアを学校の先生がやってくれる。その修学旅行が京都を見離し始めている。そりゃそうだろう。京都なんて、子供が見て楽しいところじゃない。小中学生に寺を見て感心しろというのがそもそもの間違いだ。大人にとっても、京都という観光地は高いし、道は狭いし、道路は混むし、悪名高き京都人がいる。顧客満足度、などという概念があるとは思えない。それでも客が集まる、というところが京都である。

○会議のイベントに産業ツァーがある。本日、訪れたのは川島織物と京セラ。前者はマニアックな職人気質と美意識をせんじ詰めたような企業。「技を守る」ための努力がとにかくすごい。劇場の緞帳からクルマのシートまで、仕事ぶりを見ていてアシュケナージの演奏を思い出してしまった。「見てみて、俺ってここまでできるのよ」と無言のうちに誇っているような気がする。こんなパラノイア集団を、この国はいつまで維持できるのか。今日見たところでは、若い職人さんも少なくはないようだ。

○京セラは万人が言うように「変な会社」である。とはいえ、偉大な会社であることは間違いない。戦後、急成長を遂げた会社はダイエーをはじめとしてナンボでもあるが、ずぅーっと儲け続けている会社はそう多くはない。今度のIT不況が、この会社にとっては初めての試練かもしれない。京セラはいまどきめずらしいコングロマリット経営。あんまり商品の数が多すぎて、全部でいくつあるかわからないと言う。セラミックスからソーラー発電までなんでもやるし、全世界のそこらじゅうに工場を作っている。京セラが今度の不況を乗り越えられるかどうかは、日本経済にとってのリトマス試験紙になるのではないか。

○紅葉はあと少しで本番という感じ。京都嫌いのかんべえさんも、齢四十を越えると変にお寺が見たいなどという心境になり、ライトアップをやっている寺の名前などを密かにチェックしていた。ところが前夜祭のレセプションのあとに緊急打ち合わせが始まり、それが終わったのが10時半。勘弁してよで夜がふける。

○日本貿易会の仕事のマクロデータ編は、明日が締め切りなのにやってない。でも明日が早いからもう寝ちゃおう。


<11月15日>(木)

○朝6時半に起き出して臨戦体制。それが深更まで続くというのが国際会議の第1日目。この緊張感がこの仕事の面白さである。

○今年の会議がITをテーマにしているため、「なぜ京都はIT産業が繁栄しているのか」という話が多い。京セラ8126億円、任天堂5728億円、オムロン5553億円、村田製作所4591億円、ローム3600億円、島津製作所1962億円、大日本スクリーン製造1748億円、ワコール1320億円、そして無数にあるベンチャー企業。(以上、すべて数字は売上高)。うわぁ、すげえ、である。

○いろんな説がある。たとえば「戦後すぐの弱電産業の成長」「1200年の歴史が生んだ文化と職人技術の蓄積」「大学や研究機関の存在」「京都人特有の精神構造」(模倣を嫌う、など)。上にあげた京都企業の多くは、1950年代に創設され、意思決定の早いオーナー企業であり、ハイテクベンチャーとして急成長し、海外展開に成功し、ニッチ分野で競争力を誇るが、途中で第2世代の製品への事業転換に成功する、というあたりに共通点がある。「京都は日本版のシリコンバレー」と言いたくなる気持ちは分かる。

○今日聞いた話の中では、スタンフォード大学日本センターの今井賢一先生の基調講演が収穫。ここでは深追いしないが、「ニューエコノミーの本質はAbundanceとScarcityの組み合わせ」という話が面白いと思った。80年代後半の「ネットワーキングの理論」以来、かんべえはこの人のファンである。

○夕方から分科会。ここが私の仕事。仕切りがうまくいったので上機嫌で一日が終わる。晩餐会では舞妓さんの京舞いが披露される。「舞い」はクラシックで「踊り」はポピュラーなんだそうだ。が、どうにも関心が沸かない。昔から女性の和服姿がありがたいとは思えないのである。要するに縁なき衆生。「うちが出している帯は40万円くらいのが中心です。いちばん高いのは3000万円ですが、10万円くらいの安いのもやってます」という昨日の川島織物の説明を聞いたあとは特にその感が強い。

○酔いを覚ましつつ、分科会のサマリーを作って、英訳して12時。こんな私のところへ貿易会の仕事の催促メールが来ている。とりあえずHPの更新を優先する。あとはどうなることやら。


<11月16日>(金)

○京都の悪口を書くと、山根君のような京都ファンは心を痛めるようだが、読者からは「面白いからもっとやれ」という声もある。似たようなことを感じていた人は結構多いのね。

○世の中にはどんなにヒドイ悪口を言っても差し支えなく、周囲から反論が出てくる気遣いもなく、言われた方も鷹揚に気にしない存在というものがある。「朝日新聞」「NHK」「東京大学」「霞が関の官僚機構」などである。少し前までは「岩波書店」もこの範疇にあったらしいが、今では悪く言うのが気の毒な存在になってしまった。最近は「朝日新聞」も自信を失ってオロオロしていることが多く、だんだんイジメ甲斐のない存在に成り下がりつつある。まあ、これら世に言う権威というヤツは、叩かれることを当然と心得ていることが多く、その辺に端倪すべからざるものがある。

○「京都」というのもこれに似たところがあり、悪口を言ってる方が人間が小さく見えてしまうところがクセモノである。なにしろ会議の2日目になると、明らかに1日目よりも人数が少ない。これは参加者が会議を抜け出して市内観光に行っていることを意味する。機を見るに敏なタリバンの兵士が脱走するように、今日のような晴天の京都を見過ごすのは惜しいという判断が働いているのではないか。実際、京都国際会館から見える紅葉は美しい。

○ということで、京都出張を終えて帰ってまいりました。帰りの新幹線からは、見事な富士山が見えましたぞ。なんというか長い1週間でした。来週はちゃんと溜池通信も書くとしよう。

○そうそう、すっかり忘れていたけど、最新号の「SAPIO」に私めの小文が載っておりまする。読んでほしいどすえ。


<11月17日>(土)

○こないだ、こんなビデオを買ったのである。だって懐かしい上に安かったんだもの。1000円。そしたら長女Kと次女Tがすっかり気に入ってしまった。「これ面白い」と言うのである。やっぱりそうか。『チキチキマシン猛レース』の魅力は時代を超えるのである。

○ブラック魔王と言ってもピンと来ない人でも、ケンケンという犬の名前を出して「イシシシシ・・・・」という乾いた笑い声の真似をすれば、当HPの主な読者層であれば、大多数は「あぁあれか」ということになると思う。このアニメ、今見返すと声優陣がものすごい豪華版である。ナレーターは野沢那智、ブラック魔王は大塚周夫、ミルクちゃんが小原乃梨子、キザトトくんが広川太一郎。おそらくこのアニメ、英語版を見てもちっとも面白くないと思う。やっぱり野沢那智のナレーションと、「イシシシシ・・・・」を聞かないと物足りない。

○物語はきわめて単純。11台のマシンが毎回優勝を競うのだが、どうみてもいちばん性能が良くて早そうなマシンに乗っているブラック魔王が、卑怯な手段で他のクルマを落とし入れようとする。それが裏目に出て勝手に自滅するのだけど、懲りずに同じことを繰り返す。相棒のケンケンはそれを冷ややかにあざ笑うのである。日本の『ヤッターマン』シリーズはおそらくここから学んだのだのであろう。毎回同じ設定、憎めない悪役、マンネリの美学という黄金パターンを。

○あらためてこの11台のマシンが個性ゆたかである。キャラクターをごろうじろ。これだけのクセモノが揃っていたら、どう作っても面白いストーリーができてしまうではないか。しかもこのキャラクターたちは、英語版のキャラクターと比べると実に翻訳がよくできている。ブラック魔王は"Dick Dastardly"、ケンケンの本名は"Muttley"なんだって。とくに"Creepy Coupe"を「ヒュードロクーペ」などという訳し方はセンスがいいですね。

Car No. Name Drivers
00 The Mean Machine(ゼロゼロマシン) Dastardly and Muttley(ブラック魔王とケンケン)
01 The Bouldermobile(ガンセキオープン) The Slag Brothers(タメゴローとトンチキ)
02 The Creepy Coupe(ヒュードロクーペ) The Gruesome Twosome(モンスターとドラチビ)
03 Convert-A-Car(マジックスリー) Professor Pat Pending(ドクターH)
04 The Crimson Haybailer(クロイツェルスポーツ) The Red Max(コウモリボス)
05 The Compact Pussycat(プシーキャット) Penelope Pitstop(ミルクちゃん)
06 The Army Surplus Special(タンクGT) Meekley and Sarge(軍曹と新兵)
07 The Bullet Proof Bomb(ギャングセブン) The Ant Hill Mob(トラヒゲ親分)
08 Arkansas Chug-a-Bug(ポッポSL) Luke and Blubber Bear(ヨタローとクマッパチ)
09 The Turbo Terrific(ハンサムV9) Peter Perfect(キザトト君)
10 The Buzzwagon(トロッコスペシャル) Rufus Ruffcut and Sawtooth(ドン・カッペと甚平)


○そもそもがこのアニメの原題は"Wacky Race"である。"Wacky"とは「風変わりな/突飛な/気違いじみた/ばかげた/いかれた/狂った/最高の」という形容詞。「イカれたレース」を、『チキチキマシン猛レース』にしてしまった発想もスゴイ。テレビの黎明時代には、この手の柔軟性がゆたかにあったのです。"Wacky Race"の製作者は『トムとジェリー』などを作ったベテランだが、そのまま日本で紹介しても人気は出なかっただろう。翻訳や声優の力で、今日でも記憶に残る名作アニメになったのである。

○私の記憶が確かならば、たしか住友信託銀行がこの"Wacky Race"のキャラクターを使っていたことがある。すぐに終わってしまったのは、受けなかったからだろう。やっぱり「イシシシシ・・・・」というケンケンの声が欲しかったですな。


<11月18日>(日)

この地図を見ると唖然とします。ロイターが伝えるところの11月14日時点のアフガニスタンの勢力図ですが、北部同盟はもうカンダハル周辺を除くほとんど全土を掌握している。これを見る限り、もう「北部」ではありませんね。逆にタリバンにとっては「四面楚歌」。これでビンラディンが、「虞や虞や汝をいかんせん」と歌っているかどうかは知りませんが、情勢の転換は思ったより早い。

○昨日届いた『フォーサイト』には、「当てにならない北部同盟、手ごわいタリバン」という記事が載っている。武士の情けで、著者の名前はここでは伏せておこう。まあ、似たようなことを言っていた人は多いのだから恥ではあるまい。軍事評論家とか、中東専門家の方が物事の見方が慎重になるのは当然だ。それにまぁ、所詮は途中経過なんだから、今の時点であんまり楽観的になるのも考えものである。

○元国連政務官の田中浩一郎氏は、早い時期から「タリバンは割れる」と断言していた。田中氏がまだ中東経済研究所にいた頃に、岡崎研究所のサロンで何度か会ったことがあるので、この発言は印象に残っている。アフガンは群雄割拠の戦国時代なのだから、兵士は勝ち目がないと思えば負けるいくさはしない。そういうことだとしたら、掃討戦はかなり早く済むのかもしれない。問題はビンラディンの首が取れるかどうかですが。

○先週亡くなった小川さんも、病床で「田中君がテレビに出ているねえ」と言っていた。長島昭久さんも11月16日付けで書いているけど、小川さんのおかげで、岡崎スクールには本当にいろんな人が集まってきたんだなあ、としみじみと思い出す。今日は初七日。


<11月19日>(月)

○会社に出てみたらメールが無慮87本。ギャア!中には「明日が締め切りなんですが・・・」などというものもチラホラ。知らんぞ、ワシは。

○こころ温まるメールもあった。こんなHPを教わりました。題して「山手線占い」。一時期、「動物占い」というのが流行ったけど、あれの同工異曲と考えていいだろう。これはこれで、なかなか楽しくできていると思う。

http://web1week.com/tokyo/uranai/

○かんべえは「代々木駅」という結果になった。これはマズイ。「かんべえは実は代々木系らしい」という噂が広がったら、SAPIOのようなタカ派雑誌からは2度とお声がかからなくなるかもしれぬ。ちなみにかんべえは駿台予備校に通ったことはあるが、代ゼミは行ったことがない。代々木とは無縁だぞ!と声を大にして言っておこう。


<11月20日>(火)

○山手線占いで、さっそく四酔人の田中さんが「僕は原宿です」だって。代々木とひとつしか違わないのに、ずいぶんイメージが違うなあ。なんか悔しい感じ。まあ、新大久保や鶯谷よりはマシか・・・・。ところで田中さんのサイトで連載していた韓国訪問ツァーは面白かった。あれは写真を見るだけでも価値ありというものです。

○クレームも頂戴しました。「ケンケンをキャラに使っていたのは、東洋信託銀行です。 住友信託銀行は、しんたクンという最低のオリジナルキャラ です」。あはは、この2つの会社、本社ビルが大手町で並んでいるんですよ。つい記憶がごっちゃになって・・・・それにしてもケンケンを会社の顔に使うというのは相当な経営判断ですよね。

○閑話休題。ジョークには落語型、掛け合い漫才型、あるいはヒトコマ漫画型とか、いろんなジャンルがあるものですが、最近は「通信社式」という新手のパターンがあるんですね。テロ事件と狂牛病でそれぞれひとつずつ紹介しておきましょう。


【速報】=米軍がカンダハルを攻撃(AFP発共同)

米国ラムズフェルド国防長官は本日未明、タリバンの本拠地カンダハルと間違えて
神田ハルさん(89)=神奈川県在住・要介護5=宅を攻撃したと発表した。神田さ
んは突入してきた米軍兵士に対して竹やりで応戦し、米国側に6人の死者を出した。
政府は「要介護5でこれほど動けるのはおかしい。認定取り消しの方向で検討してい
る。」とコメントしている。


[ ロンドン 2001年10月25日 ロイター発]

 イギリスの権威ある科学誌『ネイチャー』最新号が、狂牛病発病メカニズムに関す
る日系研究者の論文を掲載することが、25日までに明らかになった。狂牛病の原因
となる異常プリオンが、口から摂取された後どのように脳に到達するかは、これまで
明らかになっていなかったが、中州産業大学のマック吉野教授らは、発病しないよう
にコントロールした異常プリオンを含む牛肉を被験者らに与えた後、さまざまな姿勢
をとらせた。その結果、身体を横にした者は、立っていた者より多くのプリオンを、
脳に蓄積させたことが判明した。この実験を受けて、吉野教授らは、異常プリオンは
液体と同じように、重力によって拡散するので、食後も直立姿勢を保てば、安全であ
るという結論に達した。

 吉野教授の談話:「要するに、食べてすぐ横になると牛になるということわざの正
しさが立証されたわけです。今後は、焼肉店などは立食式にし、食後は5分間程度
ジャンプして、プリオンが十分落下するよう法制化すべきです」。

○通信社らしい独特の言葉使いがいいですね。「25日までに明らかになった」なんて、小技が冴えている。「中州産業大学」という懐かしいフレーズが入っているところを見ると、作者はかんべえと同じ年代で、受験勉強のさなかにタモリのオールナイトニッポンを聞いていたんでしょう。この手の秀作がありましたらぜひお寄せください。


<11月21日>(水)

○皆さん、本当にこういうの好きね、ってワシが好きなだけなんだけど、昨日のジョークについて、いろいろご感想をいただいております。こっちの方が面白かったりして。

○昨日のカンダハル編を教えてくれた人から。

今、溜池通信見たら載ってた〜!
・・・・絶対「神田ハル」さんていますよね。

○ワシもそう思う。そのうちレポーターが押しかけていって「今のお気持ちは」などとインタビューしたりして。

○次に昨日のマック吉野編を教えてくれた人から。

介護保険の問題と無理やり結びつけて、「政府の対応は」としているところが通信社電らしくてまた良い。
ただ、個人的には米兵6人死亡、とするよりも、負傷くらいにしておいてくれた方が更に罪が無くて良かったとは思うのですが。

○なるほど。「政府」を「厚生労働省」にして、「死亡」を「負傷」に直した方がもっともらしいかも。ジョークというのは人の手を渡ることで、どんどん洗練されていくものですから、この次に引用される方は工夫してみてください。

○さて、これは某大新聞の科学部記者の方からのご指摘。

ネイチャーは、事前に内容がマスコミに公開され、embargo がかかるので、この特ダネ調の書き方はありえません。
掲載される研究者は、マスコミに話していけないことになっていますし、さらに、マスコミも勇み足をすると、次回からペナルティーとして事前公開の資料を入手できなくなります。
ロイターがそんなことをすることはありえないということですね。

逆にいえば、よっぽどの科学ものの特ダネは、ネイチャーという言葉を外して書いちゃうことになります。

○恐れ入りました。皆さん、通信社形式のジョークを創作するときは、結構ハードルが高いということをお忘れなく。


<11月22日>(木)

○今日は韓国文化放送の取材を受けました。テーマは「世界の40歳のビジネスマン」。ひるがえってわが国の40歳はいかに、という、まぁありがちな企画ですな。韓国文化放送はかの国の民放の雄で、東京の事務所はフジテレビの中にある。そのご縁で、お隣にある当社に取材要請が来て、広報はよりによって私めのところに振ってきた。ということで、日本人の40歳ビジネスマンの代表にされてしまったわけだ。怖いぞ、ちょっと。

○実際に番組で取り上げられるのはほんの1〜2分らしいのだが、職場風景からお昼の時間まで延々とカメラに撮られてしまう。ず〜っと肩に力が入った状態で半日を過ごした感じ。インタビューはお台場の砂浜に座って撮影した。今日は天気が良かったから、被写体はさておいて、少なくとも背景はきれいな絵になったはずである。

○韓国の特派員は、日本語でインタビューしてくれる。会話の途中で「ケンチャンナヨ!」と言ってみたら、「いい発音ですね。ひょっとして韓国語を勉強されましたか?」と来た。いえいえとんでもない。これは知っているほとんど唯一の韓国語で、なんで知っているかといえば、元ソウル駐在員から「韓国人のケンチャンナヨは、アラブ人のインシャラーのように当てにならない」と聞いたからである。ケンチャンナヨは「たいしたことない、気にするな」であり、インシャラーは「神の御心のままに」である。商談の最中に相手がこんなことを言い出したら、ごまかされないように身構えなきゃ駄目よ、というのが先輩の教えである。

○この手の話は、いわゆる異文化論になりやすい。でもアメリカ人の「ノー・プロブレム」や、日本人の「大丈夫です」にも、同じようなニュアンスがないとはいえない。とくに「大丈夫です」という日本語は、ずいぶん値打ちが下がった感がある。狂牛病の安全宣言、金融の不良債権問題など、「大丈夫」を宣言するタイミングが早すぎるから、ちっとも説得力がない。とくにエライ人が言うときは眉に唾して聞いておいた方がいい。

○日本の40歳がいろんな意味で「こんなはずじゃなかった」という思いを持っているように、韓国の40歳にも同様な思いがあるらしい。アジア通貨危機が残した痛みは、日本の「空白の10年」よりも切実なものだったはずである。取材を受けていて、なんだか「お互い辛いよね」みたいな感じがしましたな。どんな番組になるのか分かりませんが、ちょっとしたペーソスを漂わせるものになるのでしょう。「世界の40歳」という企画には、それが当然の帰結なのかもしれません。


<11月23〜24日>(金〜土)

○『諸君』という雑誌はあんまり読まないんですが、阿川尚之さんと福田和也さんの対談というのが気になって、そこだけ立ち読みしてみました。これがめっぽう面白い。国際派の保守主義者である阿川さんが、国内派の保守主義者である福田さんを、見事な弁論術で完封している。のみならず、適度に先方の薀蓄を引き出しつつ、談論風発の趣きを引き出している。ディベートとしてもお座敷芸としても楽しめる対談です。

○この中で「保守主義というのは裏通りの蕎麦屋のことだ」という、なんだかよく分からないんだけど、名言っぽいセリフが飛び出す。裏通りの蕎麦屋は、すばらしく魅力的だったり、びっくりするような美味が出てくることはないけども、そこへ行けば少なくともひどくまずかったり、法外な値段を要求されたりすることはない、ということではないかと思う。

○なんでそんな話を思い出したかというと、昨日初めて入った蕎麦屋に騙されたからである。店内はこざっぱりとしているし、石臼を置いた仕事場も覗けるようになっている。ひとりで食べに来ているような馴染み客もいる。原料の蕎麦を作っている村についての説明も置いている。いかにも名店という感じだったのである。でも注文してから40分も待たすか、普通。蕎麦を食べ終わった後に天ぷらが来るし。蕎麦の味もさしたることなし。支払いのあとに駐車券を出したら、「駐車1時間サービス券」をくれた。これがかえって怒りに火を注いだな。おめえの店は1時間じゃ足りないだろうが。ぷんぷん。

○こんな蕎麦屋に客が来るのが間違いなのである。店を甘やかす常連客がいるから、店の側が勘違いしてしまうのだ。まあ、2度と行かないからいいんですけど、どうも蕎麦屋さんにはときどきこの手の「勘違い野郎」がいるような気がする。たとえば蕎麦について書かれた本には、非常に高い確率で柏市の「T」という店のことが書いてあるのだけど、ワシが知る限りここは高いだけです。ちーとも感心しません。

○その昔、「自分のうちは蕎麦屋をやってます」という人と話をしたことがある。「蕎麦屋にとっていちばん大切なことは何ですか?」と聞いたら、「つゆですね」という。蕎麦の味が本当に分かる人はほんの一握りだけだが、つゆの味は誰でもすぐに分かる。だからいちばん心血を注ぐのはつゆなのだという。

○蕎麦よりもつゆに気を使うということは、おそらく裏通りの蕎麦屋さんだったのだと思う。そういうお店は、いつまでもつぶれずに繁栄して欲しいと思う。なにしろワシも、いっぱしの保守主義者であるからな。

(今日で17万件、ご愛読に深謝)。


<11月25日>(日)

○三連休の予定が歯医者だけ、というのは寂しいので、今日くらいどこかへ行こうかと思っていたら、昨日から咽喉が痛い。夕方になって熱も出てきた。もうあかん。花粉症と歯周病と風邪の三重殺。急に気弱になったりして。

○悪いときには重なるもので、今週末は「W32.Aliz.Worm」というウイルスが何度も送られてきて往生しました。配偶者に言わせると、「Internet ExplorerとOutlook Expressを使っている人は、ウイルスに来てくださいと言っているようなもの」なんだそうで、そんなこといったら大多数が当てはまってしまうと思うのだが、親切なメールを頂戴したのでここに書いておきます。

●親切な人その1

Outlookの古いバージョンを使用している人がこれをプレビューするだけで、
ウイルスに感染して、アドレス帳に記録されているアドレスに対して自分を送信するそうです。

それ以外には実害はないようですが、本メールはプレビューせず、また添付ファイルは開かずにメール全体を削除してください。

なお、詳しい情報についてはトレンドマイクロ社のホームページ
http://www.trendmicro.co.jp/virusinfo/default3.asp?VName=WORM_ALIZ.A
に掲載されています。

●親切な人その2

このウイルスに感染することを防ぐ方法をお知らせします。
※お持ちのすべてのPCで、実行されてください。(ウインドウズ)

1.インターネットエクスプローラーをご使用の方は、バージョンをお調べ下さい。
ホームページを見る画面の右上 ヘルプ → バージョン情報 で確認できます。

2.Microsoft Internet Explorer 5.01
  Microsoft Internet Explorer 5.5
これらの方は、感染します。サービスパック2へのバージョンアップをして下さい。
サービスパック2の表示がある方、6.0以上の方はこのウイルスは感染しません。

3。サービスパック2のダウンロードはこちら
http://www.microsoft.com/japan/technet/security/prekb.asp?sec_cd=MS01-020

ダウンロードした後に、案内に沿ってインストールをおこないます。
かなり時間がかかります。20〜40分見てください。
常時接続ではない方は辛いですが、被害を防ぐにはやむを得ないと思います。

これで、W32.Aliz.Wormの感染は防ぐ事が出来ます。
(すで感染している人も今後の対策の為に、必ず行なってください)

続いて、ウイルス対策ソフトを常駐させている方、更新はされていますでしょうか?
現在、毎日のように新たなウィルスが発見されている為、アップデート(更新)は、毎日行なってください。
アップデートした上で、ウイルススキャンなどでウイルス感染が無いか至急お調べ下さい。

ウイルス対策ソフトを常駐させていない方は、こういうご時世ですので、ご使用になる事をお勧めします。
とりあえず、W32.Aliz.Wormに感染していないか調べる方法は以下の通りです。

■PCの中に、whatever.exeというファイルが生成されていれば感染しています。
チェックの仕方(WINの場合)
スタートボタン→検索→ファイルやフォルダ→ファイルまたはフォルダの名前欄に「whatever」と入力 →検索開始
これで、whatever が含まれるファイルを検索可能です。
ファイル名は、多少バリエーションがあるかもしれません。
ex)whatever1.exe 等々

これが見つかれば、感染しているということです。

ウイルス対策ソフトを常駐させていない方は、感染している方もしていない方も、体験版をインストールしてください。

トレンドマイクロ社
http://www.trendmicro.co.jp/trial/index.htm

シマンテック
http://www.symantec.com/region/jp/trial/trial.html

感染内容によっては、上記サイトにアクセス出来ない場合もあります。
でも、ソフトを売ってるお店に行けばいっぱい売ってますので買って下さい。
ウイルススキャンをかけた上で、ウイルス削除を行なってください。
これで削除出来ない方は、専門店などのご相談下さい。

体験版は30日間の限定ですが、とりあえず使えます。
その間に正規購入してください。クレジットカードでwebで申し込めます。

○とりあえず怪しいメールをその前後と一緒くたにして、まとめて捨てる。次に上の通りやってみたら、案の定Tempファイルの中に憎っくき"whatever.exe"なるプログラムを発見。これを除去。さらに、1時間かけてトレンドマイクロの「ウイルスバスター2002」をダウンロードしました。

○風邪は自然に治癒しますけど、コンピュータウイルスは増殖しますからね。みなさんもご注意ください。


<11月26日>(月)

○風邪で会社を休んでいたら、自宅に電話が1本。先日から「皇室のお世継ぎは男子」と堂々と報道している某週刊誌から。「ロイヤル・ベビーの誕生で、経済効果はいかほどでしょうかね」と聞かれる。そういえばそういう時期になってるんですね。

○有田芳生氏のサイト「酔醒漫録」の11月22日記述によれば、「雅子さんの出産予定日は12月第1週某日。あれこれと憶測が流れるマスコミはテレビも新聞も、そして週刊誌もすべてスタンバイ」とのこと。それってつまり来週のことではないか。出産時期が1〜2週間ずれるのはよくあることなので、今日来ても不思議ではないし、来月中旬になってもおかしくはない。発表当日は全マスコミはご慶祝モードになるだろう。願わくば、「ウサマ・ビンラディンを捕獲!」などというニュースと重なりませんように。

○さて、経済効果である。電通総研によれば、「皇太子さまがお生まれになった1960年には、GDPが13・3%上昇した。これは戦後最大の数字。これほどの上昇はないと思うが、“お世継ぎ誕生”という点で見ると期待は大きい」とのこと。ホウホウ、私の生まれた年はそんな高度成長だったのですか。

○思うに1960年の日本経済といえば、まだ戦後15年で国全体が貧乏だったから、企業は借金だらけ、家計も貯金などは全然なく、でも明日は今日よりも明るいとみんなが思っていた。そういうなかで国中でご慶祝を祝ったのだろう。今は1400兆円の金融資産があっても、将来が不安で金を使わない。「景気が良くなればいいなあ」と他人任せで考えている。これで同じような効果を期待するのは難しそうだ。「生活者のお祝い気分で消費マインドが上がる」という「ハピネス効果」を期待する電通総研は、ちょっと甘いんじゃないか。というより、あんまりそういう視点で考えない方がいいような気がするぞ。

○考えてみれば、われわれは「崩御」(1989年)、「ご成婚」(1993年)を体験済みである。今度の「お世継誕生」も、時代を彩る大きな出来事になるのだろう。「よその家の冠婚葬祭」などというなかれ。なにしろ日本国民の象徴、天皇家のお家の大事である。ご安産をお祈りしましょう。


<11月27日>(火)

○今日は午前中に英語のプレゼンがあるので必死こいて出社。1時間15分くらい粘ろうと思っていたのに、40分で話が終わってしまい、質疑応答も15分で尽きた。要するに不出来でございました。午後もバタバタと過ぎて、一日過ぎて見ると、まあ風邪はなんとかなったのかなという感じ。お見舞いメールを下さった皆様に深謝いたします。

○アフガン情勢で新たな展開がありました。カンダハルに海兵隊出動。"Tell it to the Marines."(海兵隊に告げよ)というやつです。この指令を下すときは、「よくぞ大統領になりにけり」という高揚した気分になるものかもしれません。

○海兵隊には、カッコイイ言葉がたくさんあります。以下はすべて野中郁次郎『アメリカ海兵隊』(中公新書)からの引用。

"First to Fight"(真っ先に戦うのが彼らの任務。海軍や陸軍は、海兵隊の後をついて行く)

"Send in the Marines"(海兵隊を送れ。海兵隊が行けば何とかしてくれる、という期待が込められている)

"The Marines are looking for a few good men."(海兵隊は少数精鋭主義。映画の題名にもなりました)

"Every Marine a rifleman"(海兵隊員は皆ライフルの名手)

○要するに装備も士気も高い、戦闘のプロ集団。市街戦であれば、タリバンといえど勝ち目はないでしょうな。山岳地帯にこもってのゲリラ戦になればわかりませんが、ともかく北部同盟軍とは桁違いの戦闘力を持っていることは間違いありません。

○海兵隊というのは不思議な組織で、もともとの役割が不明確だったために、いつリストラされるか分からなかった。そこで組織が自己革新を続け、ついには「海から上陸して陸上の敵を討つ」という独自の役割をあみ出すに至った。その効果が遺憾なく発揮されたのが太平洋戦争で、日本海軍を相手に大きな成果を挙げた。その後の朝鮮戦争やベトナム戦争でも、常に新しい役割を見出そうとしてきたところに、この組織のユニークさがある。

○海兵隊は、沖縄に駐留して訓練をしていることからも分かるように、主に亜熱帯地方での活動を想定している節がある。その点、海兵隊が海のない山岳地帯の戦場に出動するのは、おそらく今回が初めての経験でしょう。これでビンラディンの捕獲に成功すれば、その歴史に新たな1頁を加えることになる。さて、どうなるか。

○チェックしてみたら、かんべえが昔、海兵隊について書いた文章がこんな所の5番目に残っていました。ちょっと懐かしい。


<11月28日>(水)

○昨日分を書いてから思い出したのですが、"Tell it to the Marines."にはまったく別な用法もあったのでした。それは誰かが信じられないような話をしたときに、「テメエ、冗談こくじゃねえ」というとき。つまり、「そういう話は海兵隊にでも言ってやりな」(あいつらはアタマの中も筋肉みたいなヤツらだから、信じてくれるかも知れないよ)。これはこれで、海兵隊の何たるかを伝えるようなエピソードになっている。読者からツッコミのメールが来る前に自分で書いておこう。

○本日午前は日本貿易会の月例会合へ。米国経済に関する楽観論が増えてきた。自動車のゼロ金利セールは好評、感謝祭セールスの出足がいい、オンラインショッピングが好調だ、DVDが売れている、などなど。さもありなんと思う。これから来年にかけて、「住宅ローンの借り換え」という特需も発生する。なんだかんだいって、個人消費を支える材料は多いのである。

○お昼に日本国際フォーラムの会合へ。後ろの方で聞いていればいいのかと思ったら、政策委員にされてしまっていた。いいのかね、こんなことで。田中明彦氏のプレゼンテーションを拝聴。「9月11日」を契機に世界的な大連合ができて、外交が瞬時に単純化した。とはいえ、そのような中でいかにして東アジアの安全保障協力をやっていくのか、という話。会場から「テロ事件後にロシアの地位が向上した点に注意を要する」との指摘。なるほど。

○会社に戻ったら、BSジャパンの『ルック@マーケット』から電話。明後日の金曜日に出てくださいとのこと。ホイホイと引き受ける。お題は何かといえば、こんなのがテーマ。よろしかったら金曜午後4時から見てやってください。といいつつ、BSデジタルを見ている人は少ないんだよなあ。


<11月29日>(木)

○昼間は会社で遊んでいて、夜は自宅で仕事している、変な私。今夜は執筆がはかどりすぎて、妙にハイになって眠れない。困ったもんだ。

○本日、さるところで聞いたんですが、とあるイスラム圏の国に、IMFが行って経済政策を指導したときの話。

IMF「貴国では国債を発行されてはどうですか」

政府「金利を取ることはイスラムの教えに反している」

IMF「そんなことを言って、本当はお金がなくて困っているんでしょう」

政府「本音を言えば、イスラム聖職者団体に叱られるのが怖い」

IMF「金利が金利でなくなるようなスキームを作れば、その問題はクリアできますよ」

政府「だが、イスラムの教えに背いてまでお金は求めてはいけない」

IMF「いいですか、政府がお金を得るためには、税収を得るか、国債を出すか、2つに1つしか方法はないのですよ。気の毒だが、貴国では税収は期待できない。だったら国債を出す以外に方法はないではありませんか」

政府「いや、それは違う。たとえばわが国では、学校を作ろうと思ったら、政府は3割のお金を出すだけでいい。そうすれば、あとの7割は人々の喜捨でまかなうことができる。お金がすべてではない。インシアラー」

○このときIMF氏の心に去来したこと。「経済学の歴史はせいぜい100年。それに比べてこの国は、イスラムの教えに沿って過去数世紀もやってきた。長い歴史を乗り越えてきたシステムには、かならずやそれなりの合理性があるはず。そんなこの国に、経済学という新たな宗教を押し付ける行為にいかなる意味があるのだらうか・・・・」

○経済学が宗教、というのはいいですね。教祖はいっぱいいるし、教義はややこいしいし、宗門論争は多いし、でも本当のところはよく分からない、というのがいかにも宗教。しかし、イスラム教のようなまっとうな宗教に比べると、歴史が浅い分だけ、ありがたみは少ない。むべなるかな。


<11月30日>(金)

○朝からもー大変。昨晩遅くまでかかって仕上げたはずの今週号の溜池通信が、会社で開くとワードファイルが壊れてしまってた。原因はフロッピーディスクの異常。こりゃもうアカンとあきらめかけたけど、根性で修復したら午前中で回復。よかったよかった。

○午後はBSジャパンの『ルック@マーケット』に出演。この番組の先輩、伊藤洋一さんにいわせれば、そんなもん準備なんか全然せんでよろし、ということになるのだが、まだまだその境地には程遠いワタシ。今日の話のネタは、「ヒトコマ漫画に見る、テロ事件に対するアメリカ人の意識の変化」。ジョーク・コレクターという役回りで、「面白いからまたやって」と言われてしまった。またせっせとネタを仕込まねばならぬ。読者の皆様のご支援を賜りたく。

○今日の番組で最大の関心事は、電通株上場と、寄り付きで発生した注文ミス事件。「61万円で16株の売り」のはずが、「16円で61万株の売り」と間違えて注文されてしまい、なんと売買が成立しちゃったというオソマツ。こんなミスを許しちゃうような東証って、いったい何をやってんの?という声しきり。世界でもめずらしいハプニングでしょうな。でもまあ、天下の電通さんに降りかかった事件ですから、マスコミ報道は控え目になるんでしょう。

○番組終了後に軽く打ち上げ。番組の出演者一同で盛りあがるが、話のネタはなぜか株よりも歴史問題だったりする。天皇家の祖先やら、中国の正史やら。なんとBSデジタル放送は昨年12月1日に発足したので、今日はちょうど丸1年とのこと。このあとどんな風に発展していくんでしょうか。

○夜はサピオ編集部と沖縄料理。野中さんは落ち目だ、民主党はむちゃくちゃだ、などと久しぶりの政治談義。そういえば加藤政局から丸一年、最近は永田町のドロドロみたいな話を全然取り上げていませんな。






編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki