<2月1〜2日>(水〜木)
○開けても暮れてもトランプ話ばかりである。
○某自動車部品会社の方曰く。アメリカ市場に投資して、雇用もして、良い製品を作り、よき企業市民となり、これでバッシングされたんじゃたまったものではない。この不条理をいったい何とすべきか。嘆いてはいるけれども、眼は笑っている。こういう人たちを苛めちゃいけませんよね。
○某コンサルティングファームの方曰く。今後はメキシコの工場をアメリカに戻す、みたいな事例が増えるだろう。その際に「コスト増えちゃいました」では企業として×なので、敢えてコストを減らす工夫が必要になる。AIやらロボットやらを総動員して、雇用を合理化することになるのだろう。それではトランプ政権の思惑は外れてしまうが、上に政策あれば下に対策あり。民間企業というのは本来、そういうもの。
○アメリカから戻ったばかりの某教授曰く。ニューヨークはお通夜のようだったし、ワシントンも真っ二つで雰囲気が悪かった。敢えて刺激的に、「アメリカが間違った選択をするから、世界中が迷惑しているではないか」と煽ってみたら、驚くべし、まったく反論が出なかったとのこと。
○宴会での馬鹿話。オバマ大統領はマルクス・アウレリウスに似ている。格調高く尊敬すべき人物であったが、やったことすべてが正しかったわけではなく、本人もそれを自覚していたように見える。そうだとすると、五賢帝時代はすでに終わり、これからアメリカはローマ帝国のように傾いていく。が、ローマもそうだったが、巨大帝国は傾き始めてからが実に長いのだ。たとえ指導者の出来が悪くても。
○宴会での馬鹿話続き。アメリカがローマ帝国のようになるのであれば、次は東西分裂ですな。いや、東部&西部対南部&中西部かも。いやいや、赤青分裂でしょう。この場合、民主党支持州は貿易黒字国になって、共和党支持州が赤字国になるんじゃないか。今度、塩野七生さんの話を聞いてみたいものだ。
○不肖かんべえ曰く。どんなにひどいことであっても、人間は必ず慣れるし、いつかは飽きる。あの3/11のときだって、そうだったじゃないですか。そのうち、トランプ大統領が何を言っても、市場が反応しない時がやって来る。政治家の口先介入よりも、経済のファンダメンタルズを信じましょう。
<2月3日>(金)
○昨日、慶応大学で行われた日韓対話に出た際に、次期大統領選挙について聞き及んだ話。まあ、そういうことなんでしょうなあ。
「潘基文(パンキブン)・元国連事務総長が大統領選不出馬を宣言した話ですが、深い意味はありません。単に10年ぶりに戻った韓国政治についていけなかったというだけの話です。帰国した瞬間から、心もとない感じだった。金浦空港から地下鉄に乗るところを、わざわざテレビに撮らせたんだけれども、チケットを買う自動販売機の使い方でしくじった。あれを見た人は、ああこの人、ズレてるな、と思ったことでしょう」
(偉い人なんだから、普通にクルマを呼べばよかったんですよねえ。ベテラン政治家が慣れない庶民派を気取ると、だいたい碌なことがありません)
「だったら大統領選挙は文在寅(ムンジェイン)・「共に民主党」元代表で決まりか、みたいなことが言われています。でもねえ、韓国政治は本当に最後の最後まで分かりませんから。日本政治が5年くらいかけて変わることが、韓国では5週間くらいで起きてしまいますから。予想なんてつきませんよ」
(韓国の選挙は、本番直前のどんでん返しが多いですよねえ。離合集散、二位三位連合、噛みつき引っ掻き何でもあり、って感じです)
○ほかにも以下のような候補者がいる模様です。政党についてはこちらをご参照。
<与党陣営>(セヌリ党、正しい正党)
*黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相
*劉承ミン(ユ・スンミン)元セヌリ党院内代表
*南景弼(ナム・ギョンピル)京畿道知事
<野党陣営>(共に民主党、国民の党)
*安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事
*李在明(イ・ジェミョン)城南市長
*安哲秀(アン・チョルス)元大学教授、実業家
○パククネ大統領の代行を務めている黄教安代行首相の評判がいいようです。でも、代行が選挙に出てしまうと、「代行の代行」を代わりに決めねばならず、それはそれで大変でしょうね。しかし北朝鮮といい、トランプ大統領といい、国家の一大事に政争がエスカレートするというのも困ったものです。
○などと韓国大統領選挙(5月頃?)に口を挟みたくなるのは、やっぱりトランプ氏から逃げたいからなのかもしれません。
<2月4日>(土)
○最近の本は長いタイトルが売れるんでしょうかね。『そこ、ハッキリ答えてください!「お金」の考え方 このままでいいのか心配です』(山崎元/岩城みずほ)日本経済新聞出版社。
○対談形式で書かれた本である。FPである岩城さんが、おカネのプロである山崎さんに持ちかける相談がいちいち面白い。なるほど、人生いろいろである。「年の差婚夫婦のお金の考え方」なんて、あたしゃまったく考えたことがなかったな。
○気に入ったところをメモしておきましょう。
●お金は「自由を拡大する手段」です。「お金だけで幸せになれるわけではないが、お金で避けられる苦労は、世の中には多い」
●独身でずっと働いている女性にとって、見栄えのいいタワーマンションは、ある意味で夫の代替物なのです。
●借金と一緒で、保険も友人や親戚を絡ませない方がいいですね。
●ドル・コスト平均法は、気分的には納得できるけれども、損得で考えると合理的ではない。いわば根拠のない民間療法のようなものだと思います。
●プロの投資家が社債にも投資できるのは、分析能力が素晴らしいからではなくて、大きな運用資産を持っていて、分散投資ができるからなのです。
●塩漬けファンドは売るべきです。お金が牢屋に入れられて、どんどんやせ細っているのと同じ状態です。
○おっしゃる通り、おカネはあくまでも手段である。本業で儲かっていない会社が、いくらファイナンスの技術をよくしたところで、会社が良くならないのと同じである。ところが人はついついお金のことで悩み、人生のことでは深く悩まないものである。そして銀行通帳の預金残高が、一定残高を超えたり割ったりした瞬間に、世の中の景色が変わって見えるということもままあるものである。
○要は人生は人それぞれなので、ときには愚行もあってよろしい。それでもおカネは、なるべく合理的であった方がいい。てなところが、本書のメッセージだろうか。とりあえず本日は昨年の領収書を整理して、来月に来たるべき税金の申告に備えたのであった。
○ちなみに本書は献本ではなくて、ちゃんと自分で買って読みました。そういう点、山崎さんならきっちりチェックするだろうと思うので、ここに申し添えておきます。
<2月6日>(月)
○本日は公益社団法人日本将棋連盟にとって乾坤一擲の臨時総会の日。三浦九段に対する冤罪事件で棋界は大荒れ。しかも発端は「プロ棋士よりも強くなったかもしれないAI将棋」というところにあるわけで、対応をひとつ間違えば秩序崩壊、価値紊乱、ファンが散ってしまう恐れなしとしないのです。
○事情をご存知ない方のために申し添えますと、将棋ソフトが長足の進歩を遂げてしまったために、プロ棋士同士の対局においてさえ、「あいつはズルをしてるんじゃないか」てな疑心暗鬼がはびこってしまった。それを天下の竜王戦でやってしまったために、一同困り果ててしまったのです。敢えて言えば、渡辺竜王に咎が及ぶわけですが、それをやってしまうと現下の将棋連盟最大のスポンサーたる読売新聞社様の看板に泥を塗りかねない。さてもさても悩ましいことになってしまっている。
○この状況に耐えかねたのか、谷川浩司会長は先週になって体調不良で入院してしまい、臨時総会には出られないという始末。こんな中で、敢えて火中の栗を拾ってあげようという人を待つしかなかったわけですが、とどのつまり佐藤康光九段・永世棋聖が犠牲的精神を発揮し、本日、会長に就任したそうです。名人と竜王を両方取ったことがある人は、他にはあんまりいらっしゃいませんし。
○かつては「緻密流」と呼ばれた佐藤九段も、30代から棋風が変化して、今は「一筆お願いします」と頼まれると『天衣無縫』と揮毫するそうです。来るなら来いの無手勝流。中飛車相手は5七玉。今の将棋界の難局を収めるためには、これしかないのです。だってコンピュータには、「天衣無縫」は理解できないでしょ。神様を生み出したのは人間の知恵というものであります。それは到底、コンピュータが及ぶところではない。
○ということで、佐藤新会長下の日本将棋連盟に心からエールを送るものであります。AIよりも人間の知恵を。だからといって、「シリコンバレーよりも中西部の製造業」というトランプ新政権に賛同するわけじゃございませんけれども。
<2月7日>(火)
○2016年の米大統領選挙で散々お世話になった英ブックメーカーサイト、「パディパワー」では、最近はこんなことが賭けの対象になっている。
●Year that Trump is Impeached :Applies to the year in which
it is impeachment proceedings against Donald Trump are brought to
the House of Representatives. (ドナルド・トランプに対して下院で弾劾手続きが始まるのはいつか?)
2017 4/1 (5倍)
2018 9/1 (10倍)
2019 16/1 (17倍)
2020 20/1 (21倍)
●Will Trump Resign?:Applies to whether or not Dnald Trump
resigns as President during his first term of office. (ドナルド・トランプは1期目の途中で退陣するか?)
No 4/11 (1.36倍)
Yes 15/8 (2.87倍)
●When will Sean Spicer leave/get sacked as White House Press
Secretary (スパイサー報道官はいつクビOR辞任になるか)
2018 or later 4/7 (1.57倍)
Q2 2017 10/3 (4.3倍)
Q1 2017 4/1 (5倍)
Q3 2017 9/1 (10倍)
Q4 2017 12/1 (13倍)
●Donald Trump Specials
Golden Shower footage to appear on RedTube 4/1 (5倍) (モスクワのホテルにおける「ゴールデンシャワー」事件がユーチューブに登場する確率)
Trump to be impeached in first 6 months of Presidency 4/1
(5倍) (トランプが最初の6カ月以内に弾劾される確率)
To replace the gold lift in Trump Tower 14/1 (15倍) (トランプタワーの金色のエレベーターが好感される確率)
To Split from Melania in 2017 16/1 (17倍) (メラニア夫人と離婚する確率)
●Will Trump be Impeached in his First Term? (トランプは1期目の途中で弾劾されるか?)
Yes 2/1 (3倍)
●What year will Trump cease to be President? (トランプは何年に大統領を辞めるか)
2020 or later 4/9 (1.4倍)
2017 4/1 (5倍)
2018 6/1 (7倍)
2019 9/1 (10倍)
●Will Trump complete his 1st term in office? (トランプは1期目を満了するか?)
Yes 1/2 (1.5倍)
No 6/4 (2.5倍)
○つくづく英国紳士は賭け事がお好きですよねえ。とまあ、こんなオッズが登場すること自体、「あのおっさん、あんまり長くは続かんぞ」と見られているということでしょう。やっぱり田中真紀子外相みたいになるんでしょうか?
<2月8日>(水)
○先日、某信用調査会社さんで聞いた話。
○日本企業の倒産件数が減っている。金利が低下しているし、景気もそんなに悪くないから、業績の悪い会社でも何とか生き残れてしまうのだ、てな説明がされている。だが、実態はちょっと違うのではないか。
○最近、増えているのは小さな会社に対するM&Aだ。相続税対策などで経営者層に呼びかけて、「ところでオタクの会社、売りませんか?」というセールスが増えているのだそうだ。後継者難の中小・零細企業としては、願ってもないお申し出ということになる。
○考えてみれば、これは結構なことである。日本企業の大多数はファミリー・ビジネスだ。それでも息子や娘が、かならずしも家業を継いでくれるわけではない。そもそも、実家から遠く離れたところで生活していたりする。家業を第三者に売れるのなら儲けもの。それで従業員も救われるのなら、さらに結構ということになる。
○この国は老舗企業が多い。が、それも善し悪しで、何とか維持できる範囲に絞って持続可能性を追求する必要がある。細く長く、というやつであります。
<2月9日>(木)
○本日は愛知県刈谷市のアイシン精機さんを訪問して、社内研究会の講師を務める。
○「今週末の日米首脳会談において、マイク・ペンス副大統領の存在は大きい」ということを述べたら、同社の役員さんから「ああ、そういえばここへもいらっしゃいました」との声あり。
○要するにですなあ、インディアナ州というのは日本の自動車産業の金城湯池なのでありますよ。それはインディアナ州政府駐日代表所のHPをご覧いただくとよくわかります。州知事メッセージは、まだマイク・ペンスさんのまんまです。全部日本語でありますぞ。そして日系進出企業の一覧はこちらをご参照。Aのアイシン精機からYのヤマト運輸まで、いったいいくつあるのだ。
○インディアナ州は中西部のラストベルトにあるのですが、「労働人口のうち5人に1人が製造業で働いている」(ペンス知事)ところです。全米平均だと1割以下なんですけどね。つまりこの州は、製造業重視の「トランプモデル」の優等生ということになる。
○ということで、日米で「新閣僚協議」を作り、日本側は麻生副総理、アメリカ側はペンス副大統領がトップを務めるというのは、なかなかの妙手ではないかと思料いたします。早い話が「トランプ外し」なんですけど、上手くいくといいですなあ。
<2月10日>(金)
○日米首脳会談を控えて、この週末はいろいろ立て込んでおります。
●2月11日(土)午前10:00〜10:55 BS朝日 激論!クロスファイア 「緊急分析!主要テーマは経済か・・・安倍・トランプ会談で進展は?」
吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト) 小西克哉(国際教養大学大学院客員教授) 千々岩森生(テレビ朝日政治部デスク)
●2月12日(日)午前9:00〜10:00 NHK 日曜討論 「徹底分析 日米首脳会談」
薮中三十二, 飯田泰之, 中山俊宏, 三浦瑠麗, 水野和夫, 吉崎達彦, 【司会】太田真嗣, 中川緑
●2月13日(月)午前5:45〜6:40 テレビ東京 モーサテ
○さて、どんなことをお話しすればいいのやら。とりあえず今日は早く寝よっと。
<2月11日>(土)
○日米首脳会談のポイント(メモ)
*総論
事前には極度に不透明だった首脳会談。
安保と経済で不明朗な「取引」が行われる怖れもあった。(例:尖閣を守ってほしければカネを払え)。
ところが終わってみれば、日本側の「満額回答」。
安保は安保、経済は経済で議論がかみ合っていた。
これで次からは普通に日米首脳会議ができる。
*安全保障
「日米同盟はアジア太平洋地域のコーナーストーン」(礎)という決まり文句が使われている。
(トランプ大統領が、めずらしく記者会見で紙を読んでいた)
これは日米のNSCがちゃんと機能している証拠。
「尖閣は日米安保第5条の適用範囲」ということも、具体的に示せてよかった。
トランプ氏の不規則発言で、予見可能性が低下していたから。
記者会見で、「米軍駐留への感謝」の言葉が飛び出したのは素直に驚き。
直前に米中が電話会談し、「ひとつの中国」原則を確認。
これは「アジアでは事を荒立てない」ということ。あるいは北朝鮮を警戒しているからか。
*経済
全体の時間を短めに制限し、閣僚を同席させたのは技能賞(トランプ封じ)。
二国間で「麻生副総理=ペンス副大統領」をトップとする新しい協議の枠組みを作る。
ペンス氏は、かつてのインディアナ州知事として日本企業の貢献を熟知。
新経済協議は新たな構造協議か。
@
マクロ、Aインフラ、エネルギー、サイバー、B貿易
首脳宣言の中に、「日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進する」との文言。
これはTPP敗者復活への道筋を首の皮一枚で残したもの。
*その他
イスラム圏7カ国からの入国制限問題について、日本はうるいことを言わない。
(そもそも日本の国内世論がこの件について関心が薄い〜「自分たちにはその資格がない」という自覚)
トランプ大統領にとって、安倍さんは心強い応援団になり得る(例、5月のイタリアG7サミット)。
ゴルフ。個人的な人間関係構築の重要性。
安倍首相にとっては3人目の米大統領で、初めてのゴルフとなる。60年前のアイク―岸ゴルフの故事あり。
●日米共同宣言の要旨
【日米同盟】
*日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎(Cornerstone)
*日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に適用される
*関係国に対し、南シナ海における緊張を高め得る行動を避け、国際法に従って行動することを求める
*北朝鮮に対し、核や弾道ミサイル計画を放棄し、挑発行動を行わないよう強く求める
*外務・防衛担当閣僚に対し、日米安全保障協議委員会を開催するよう指示
【日米経済関係】
*総理及び大統領は、相互補完的な財政、金融、構造政策という3本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認
*自由で公正な貿易のルールに基づき、日米間や地域の経済関係を強化する
*日米間の貿易・投資関係の深化と、アジア太平洋地域における貿易、経済成長、高い基準の促進に向けた両国の継続的努力の重要性を確認
*米国がTPPから離脱した点に留意し、最善の方法を探求。日米で二国間の枠組みに関する議論を行うことや、日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む
【訪日の招待】
*安倍首相はトランプ大統領を本年中に日本を公式訪問するよう招待し、ペンス副大統領の早期の東京訪問を歓迎した。トランプ大統領はこれらの招待を受け入れた
<2月12日>(日)
○今朝、NHKの日曜討論が始まるちょっと前に、北朝鮮がミサイルを発射しました。いやあ、やってくれますねえ。番組の最中に菅官房長官の記者会見が始まってしまい、そうなると局としても放っておくわけにもいかず、ニュース映像に切り替えようとするのですが、これがなかなかに上手く行かず、ちょっとした放送事故みたいに見えたかもしれません。
○とはいえ、こういう事態になると視聴者がチャンネルを替えて、NHKの視聴率が上がるというのが常ですから、スタジオ内では秘かに「ガンバレ!北朝鮮!!」と応援しておったのであります。まあ、大勢に影響はなかったと思いますけれどもね。
○仮にミサイル発射が先週であった場合、「果たしてアメリカはどんなふうに反応するのだろう」「安全保障で対応してほしければ、日本はアメリカ車をもっと買え、みたいなことを言われるんじゃないか」などと日本側は心配で仕方がなかっただろうと思います。ところがですな、安倍さんと一緒に共同記者会見に立ったトランプ大統領は、「アメリカは偉大な同盟国、日本の側に100%立つ」と言ってくれたのでした。いやあ、すごいです。日米同盟は鉄壁です。
○「北朝鮮は、いつも安倍さんにとって最高のタイミングで悪さ(核実験、ミサイル発射など)をする」という経験則は、今回も生きていました。ここまで来ると、何か違う目的があるんじゃないかと思われるくらいです。安倍さんに対するストーカーなんでしょうかねえ。
○少し前から、「北朝鮮はそろそろ動くかもね」というのは、安全保障関係者の間でささやかれていたことです。3月からは史上最大規模の米韓軍事演習があるし、韓国政治は現在、脳死状態であるし、これで日米首脳が和やかにゴルフをしていたりすると、「俺を無視するな!」という反応が出るのも不思議はないところです。
○もっともそれが見えていたからこそ、マチス国防長官は議会承認が終わるや否や韓国と日本に飛んだわけでして、この「マチス効果」は大きかったですね。今日はトランプ大統領も、いろいろ学ぶところが多かったかもしれません。
<2月13日>(月)
○朝はテレビ東京「モーサテ」へ。いつも通り午前5時にスタジオ入り。
○本日は、佐々木あっこさんが冬休み中。これはテレ東版「働き方改革」である、てな説もある。ということで、本日は2010年入社の森田京之介アナが中央に陣取る。応援に駆け付けたのは、2013年入社の野沢春日アナ。2009年からこの仕事をやっている当方としては、ご両人の若さがまぶしいぞ。しかるに「男性3人」という布陣は最近の当番組としてはめずらしく、天気予報になって瀧口ゆりなさんの声を聴くとホッとする、てな感がありました。
○ということで、本日は特集で、「日米経済対話、カギを握る人物は」というネタをやりました。ついでに「今日のオマケ」もリンクを張っておきましょう。ちなみに本日の経済視点は「日米ゴルフ」といたしました。なにしろ岸―アイクのゴルフ対決から今年で60年目。日米関係の記念すべき1ページと申せましょう。
○番組が終わってから、出演者一同で朝食。話はついつい競馬のことに。『ウィニング競馬』のキャプテン渡辺さんの噂話など。いつも競馬では外してばかりいるけれども、お笑い芸人としてのネタである「クズの格言」は実は面白いぞ!というのが本日の発見でした。
○会社に立ち寄って一仕事してから、新幹線に乗って仙台に行き、七十七銀行さんの講演会。「しちじゅうしち」ですから、「ななじゅうなな」と呼んではいけません。久しぶりに訪れた仙台の街は、相変わらずの大都会で活気があるのだけれど、ときどき視察に来た政治家が、「これでどこが復興なんだ!」と言って怒り出すことがあるとのこと。「東の方へ数キロ行くと、まったく別の景色が広がっているんですが・・・」と地元の人が済まなそうに言ってました。
○講演会が済んでから、慌てて駅に戻る途中で、仙台には不義理をしている人がいっぱいいることを思い出す。すいません、この次は必ず立ち寄りますから。と心の中で謝りながら、新幹線車中では爆睡。しょうがないよね、今日は一日が長いのだ。
○夜は今度はテレビ朝日「報道ステーション」へ。いや、出番はほんの4分程度なんですけどね。2007年入社の小川彩佳アナとはお久しぶりでした。「サンプロ」でご一緒でした。てなことで、とっても長い一日だったのであります。
<2月14日>(火)
○ホワイトハウスのウェストウイングはこうなっている、というお話は、溜池通信でも書いた詩、モーサテでもお話しした。講演で語っても評判がよろしい。ところが、もっと正確な図面があることに気がついた。下記の記事では、2階の地図も入っている。これは役立ちますぞ。
●West Wing real estate: Who has proximity to Trump?
(ウェストウイングの不動産:トランプ氏に近いのは誰?)
http://edition.cnn.com/2017/02/03/politics/west-wing-office-map-oval-office-real-estate/
○2階にはNTCのピーター・ナバロ議長とNECのゲーリー・コーン議長の部屋がある。東南角部屋のいい場所を得ているのはナバロの方で、コーンの部屋はそれよりも狭い。ただし両者が縄張り争いをすると、最終的な勝利者になるのはコーンの方であろう、とワシは勝手にそう決めている。
○東北角部屋のいい場所を得ているのはスティーブン・ミラーである。ジェフ・セッションズ司法長官(前上院議員)のスタッフを務めていた31歳の若手だが、スティーブ・バノンと併せて「二人のスティーブ」と呼ばれている。幾多の大統領令を実際に書いているのがこのミラーであると見られている。
○ヒラリー・クリントン(クリントン政権)〜カール・ローブ(ブッシュ政権)〜バレリー・ジャレット(オバマ政権)と3代にわたって「参謀」の指定席となった2階の部屋は、現在の住人はケリーアン・コンウェイ。「イヴァンカ擁護演説」で顰蹙を買ったが、トランプ大統領の覚えはめでたい。プリーバス首席補佐官がクビになったら、その後釜を狙おうと虎視眈々と伝えられている。
○こうしてみると、やはり「どの部屋を与えられるか」は非常に重要ですね。部屋の位置が権力への道なのだ。そしてトランプさんは、こういうことに敏感であるはず。なにしろ不動産屋さんですからな。
<2月15日>(水)
○昨日はバレンタインデーの惨劇がありました。都合、三重殺。@フリン、A東芝、Bまさお。
@マイケル・フリンNSC担当補佐官が失脚したら、日本でも株価が下げた。こういうのを「フリンの代償」というんでしょうか。「トランプ相場」で買い進まれた市場だけに、こういうところは正直であります。
――後任はペトレイアスを希望。アメリカのNSCがちゃんとしてないと、日本のNSCも困るんです。
Aホントはこれがいちばん重要なんですが、いまひとつ扱いが軽いような。東芝という会社は、福島の廃炉や汚染水処理のためにも必要な会社なんです。
――正直なところ、かんべえのように昔日の財界を知る者にとっては、東京電力といい、「旧・経団連銘柄」の迷走を見るのは辛いものがあります。
B父の後を継いで城主になった弟が、下手人を送ってただの遊び人になっている兄貴を殺させる・・・。なんて戦国時代チックな話なんでしょ。いちおう21世紀なんですけれども。
――アメリカでさえ、大統領の暗殺が起きなくなって久しいのでありますよ。まあ、トランプさんの場合は、狙った側の名折れになってしまうかもしれませんけれども。
○まさおさんも、中国国内に居れば守ってもらえたんでしょうけれども。こんなことなら、ディズニーランドに行かせてあげればよかったですな。ついでにUSJあたりも。
<2月16日>(木)
○先日、とあるジャーナリストから聞いた話で、「おお、これはその通り!」と同感したことがある。忘れないようにここで書いておこう。
○それは「論説を書くときは、形容詞に頼らない」ということ。もちろん文章を書くときに、形容詞をまったく使わないわけにはいかない。ここでいうのは、「ロジックの弱さを形容詞で補うな」ということでありましょう。悪い例はいっぱい思いつきますな。ほら、「毅然とした外交」とか、「凛とした政治」とか、「しなやかな民主主義」とか、「対等な日米関係」とか。
○こういう「いかにも印象の良さそうな形容詞」が使われるのは、だいたいがロジックに自信がないときですな。いかにもふわっとした言葉なので、具体的にどういうものであるか定義ができないし、そもそも「××が毅然としているかどうか」は人によって受け止め方が違う。コピーとしてはいいけれども、それでロジックを生み出したつもりになってはならない。
○例えば、トランプ大統領のMake America Great Again.というキャッチフレーズは、何が「グレート」であるかがよくわからない。たぶん、「古き良き時代」のことを言っているのだろうけども、そのグレートさを実現するためにどんな道筋があるか、という点はまったく見えない。ただし聞けば一発で覚えてしまうし、ドナルド・トランプという個性とぴったり重なっているという点が、コピーとしては優れているのでしょう。
○ということで、旨そうな形容詞がついている言葉を見かけたら、気をつけなければなりません。そういうのが得意な知識人は少なくないのですけれども。
<2月18日>(土)
○本日のBS-TBS『Biz
Street』の特集は「どうなる東芝 深刻危機!」でした。これってしみじみ悩ましい問題でして、19万人の巨大企業の浮沈が懸っている。
○とにかくウェスチングハウスという子会社が闇鍋みたいな存在になっていて、どれだけ損が拡大するかわからない。しかも東芝は親会社として、とことん面倒を見なければならない立場である。どうも騙されていたんじゃないかという気がするし、そもそもこれがあったから、不正会計問題が起きたのではないかと思えてくる。
○この問題をゲストとして解説してくれたのが、経済ジャーナリストの「いそやん」こと磯山友幸氏。解説はこちらにもありますが、つくづく名門企業地に墜ちたりの感が否めない。この期に及んで、経営陣が会社をどうしようとしているのかがサッパリ見えない。
○とりあえず過去は不問に付すとして、これからどうするのというと、磯山氏いわく。「法的整理がいちばんだが、それには銀行が反対するだろう」とのこと。なるほど、過去に何度も繰り返されてきたパターンである。
○原子力事業の問題ということになると、日米間の政治問題にもなりかねない。ひょっとすると、4月にペンス副大統領がやってきて、日米の新経済協議をする時に目玉案件がこれになったりするのかも。トランプ大統領が何と言うことやら。日米原子力協定は来年、改訂を迎えるのだが。
<2月20日>(月)
○トランプ政権発足から今日でちょうど1か月。本人が「大人になる」ことはなく、「さすがに大統領になれば現実的になるだろう」という周囲の期待も外れ、あいかわらずの「天然ぶり」を発揮しています。「アメリカで新大統領が誕生しても、日本人が関心を持ってくれるのはいいとこ1か月くらい」(オバマの時はホントにそうだった)という不肖かんべえの読みは大外れとなり、トランプ尽くしの日々が今日も続いています。
○トランプ政権の最初の3週間はまさに絶好調。24本もの大統領令を発出し、つまり「1日1本」以上のペースで世間を賑わせておりました。それが先週は1本もなし。この間に「イスラム圏7カ国からの入国禁止措置」は司法に否定され、マイケル・フリンNSC担当補佐官は辞任を余儀なくされ、その後任候補者にも振られ、閣僚人事は遅々として進まず、メディアからは「ロシアゲート」で叩かれています。「いよいよ潮目が変わった」と見えるかもしれません。
○ところがそれは希望的観測でしょう、ご本人はこの週末、フロリダ州に出かけて選挙戦もどきの演説をやってきました。これこそ元気の素というべきで、政治経験もなければワシントンに足場もないドナルド・トランプ御大にとっては、「選挙で勝った」ことが唯一の資産なのです。そして選挙に勝てたのは、「ワシントンに居るエリートどもには、けっして聞くことができない『忘れられた人々』が何を望んでいるか、自分には分かる」からなのです。
○リアリティTV司会者として成功を重ねてきたトランプ氏には、庶民の本当の気持ちがわかる。それを口にしたら、普通の政治家だったらアウトになるということもわかっている。ところが彼は政治家としての欲がないものだから、勝ち負けを度外視して言いたいことが言える。だからこそ、草の根の人気が続く。きわめてシンプルな話です。
○ところが既存のメディアどもは、相変わらず自分たちのどこが間違っているかが分かっていない。「トランプさえ追い落とせば、昔のまともな政治が帰ってくる」「成果を挙げられなければ、トランプ人気も失速するだろう」などという救い難い勘違いをしている。トランプ支持者たちは、エリートたちが右往左往しているのを見て喜んでいるのです。気の毒なことに彼らは、これが復讐劇であることに気づいていない。それではまだ罰ゲームが済んでいないというものです
○今現在の世論調査のデータを見てみると、支持率は平均で45%程度だからお世辞にも高くはない。ところがよくよく見ると、それはCNNのように今の政権と対立しているメディアが平均値を下げている。トランプ支持者のところにCNNが電話をかけてきたら、それは用件を聞かずにガチャンと切るのが当たり前ですから、そりゃあ数字は低くなりますわな。逆にラスムッセンのように、電話とネットの両方で世論調査をやっている会社では、トランプ支持が高めに出る。つまり「トランプ支持」は表立っては言いにくい、という状況が続いているようである。
○だったらトランプ氏が意気軒昂となるのも無理はない話で、今週は反撃の1週間となるのではないかと思います。来週28日は議会合同演説もある。まだまだぬかるみは続くと思いますぞ。こうなると、マイケル・フリンが健在な間に日米首脳会談を終わらせた(しかも最終日には北朝鮮のミサイル発射があり、それを処理した翌日に辞表を提出した)ことは、信じられないほどの幸運だったと言わざるを得ません。
<2月21日>(火)
○さるテレビ局関係者曰く。いま視聴率が取れるネタは、@まさお、Aゆりこ、Bトランプ、そして東芝は圏外と。うーん、そんなことでいいんですかねえ。
@叔父を殺害し、多くの部下を粛清し、ついには兄にも刺客を放った弟が、今やいかなる心境に至っているかは想像に難くない。いわば猜疑心に駆られた戦国武将のようなもの。危なっかしいなあ。
――この戦国武将は核兵器とミサイルを持っている。はて迷惑な。これではやはり策源地攻撃能力程度は、わが国として必須条件でありましょうや。
Aゆりこは既に「うちだ」を成敗し、次には百条委員会に「いしはら」を呼びつけ、さらには五輪開催で恨み重なる「もり」を討ち果たす。3つの「ドン」を退治した後は、いよいよ狙いはポスト安倍か。
――昨日、フジサンケイグループの「正論大賞授賞式」に行ったんですが、今年はめずらしくも安倍首相が来賓で来られなかったのですよ。なにしろ今年の大賞受賞者は木村汎北海道大学名誉教授。木村先生、思い切り安倍政権の対ロ外交を批判していましたから。そしたら代わりに壇上に立ったのが小池都知事。「あなたが来ないんなら、私がやるわよ〜」と言っているようでしたが、それって深読みし過ぎ?
B本日は「プレジデンツデー」。2月22日生まれだったジョージ・ワシントンを記念して、アメリカでは2月の第3月曜日は祝日になるのですよ。そこでこの日にこんなデータをご紹介。歴史家が判定する偉大な歴代大統領のランキングです。
――今回初登場のバラク・オバマ第44代大統領は歴代12位と好位置につけました。現在のドナルド・トランプ第45代大統領はどの辺になるんでしょうか。あんまり上にはいかないでしょうねえ。
<2月22日>(水)
○昨日、ご紹介したC−SPANによる歴代大統領のランキングですが、よくよく見るといろんな発見があります。以下は上半分だけのご紹介。
President's Name | Order | Party | Score | 2017 | 2009 | 2000 | |
1 | Abraham Lincoln | 16 | Republican | 906 | 1 | 1 | 1 |
2 | George Washington | 1 | No Party | 867 | 2 | 2 | 3 |
3 | Franklin D. Roosevelt | 32 | Democrat | 854 | 3 | 3 | 2 |
4 | Theodore Roosevelt | 26 | Republican | 807 | 4 | 4 | 4 |
5 | Dwight D. Eisenhower | 34 | Republican | 744 | 5 | 8 | 9 |
6 | Harry S. Truman | 36 | Democrat | 737 | 6 | 5 | 5 |
7 | Thomas Jefferson | 3 | Dem/Rep | 727 | 7 | 7 | 7 |
8 | John F. Kennedy | 35 | Democrat | 722 | 8 | 6 | 8 |
9 | Ronald Reagan | 40 | Republican | 691 | 9 | 10 | 11 |
10 | Lyndon Baines Johnson | 36 | Democrat | 686 | 10 | 11 | 10 |
11 | Woodrow Wilson | 28 | Democrat | 683 | 11 | 9 | 6 |
12 | Barack Obama | 44 | Democrat | 668 | 12 | NA | NA |
13 | James Monroe | 5 | Dem/Rep | 645 | 13 | 14 | 14 |
14 | James K. Polk | 11 | Democrat | 637 | 14 | 12 | 12 |
15 | Bill Clinton | 42 | Democrat | 633 | 15 | 15 | 21 |
16 | William McKinley Jr. | 25 | Republican | 626 | 16 | 16 | 15 |
17 | James Madison | 4 | Dem/Rep | 610 | 17 | 20 | 18 |
18 | Andrew Jackson | 7 | Democrat | 609 | 18 | 13 | 13 |
19 | John Adams | 2 | federalist | 603 | 19 | 17 | 16 |
20 | George H. W. Bush | 41 | Republican | 596 | 20 | 18 | 20 |
○思うままにいくつか感想を。
*リンカーン、ワシントン、2人のルーズベルト、という上位陣は納得だが、定番のジェファーソン(7位)はやや低い気がする。
*アイゼンハワーの5位にはビックリ。ランキング赤丸急上昇中。アメリカ政治の分極化が進むにつれて、1950年代の中道政治が評価されている模様。
*ウッドロー・ウィルソン(11位)やアンドリュー・ジャクソン(18位)は近年下がっている。どうも戦争に勝った人の評価が落ちているような。
*今回初登場、オバマの12位はちょっと高過ぎでしょう。確かにスキャンダルはなかったけど、外交政策はひどかったと思うぞ。そもそも、彼がそんなに偉大であったなら、トランプ政権はできていないはず。
*32代のFDRから36代のLBJまで、5人全員が連続してトップテン入りはすごい。アメリカが世界の覇権国となった時期は、やはり指導者も優秀だったのか。
*逆にレーガン(9位)が冷戦を終わらせてからは、クリントン(15位)、ブッシュ子(33位)、オバマ(12位)と一桁台は出ていない。やっぱり覇権国ではなくなっているのかも。
*民主党と共和党はほぼ半々。ただし4人だけいるウィッグ党の大統領は全員順位が低い。ザッカリー・タイラー(31位)、ミラード・フィルモア(37位)、ベンジャミン・ハリソン(38位)、ジョン・タイラー(39位)。
*16代リンカーンがぶっちぎりしている一方で、その前後の大統領は惨憺たる成績。14代ピアスが41位、15代ブキャナンが43位=ブービーメーカー、17代ジャクソンが42位=ブービー。南北戦争で国が割れそうになった時期に、リンカーンが救世主になったということですな。
○こうしてみると大統領もさまざまでして、45代ドナルド・トランプ大統領にはどんな評価が下されるのでしょうか。・・・・きっと下の方でしょうなあ。
<2月23日>(木)
○豊川商工会議所の講演会で豊川市へ。当地へ来るのは2度目で、そのときは豊川稲荷の壮大な敷地を見て一種のカルチャーショックを受けたものである。で、それはいつのことだったかというと、2009年7月のことであった。いやはや8年というと、いろんなことが変わっておりますな。
○8年前はオバマ政権が発足した年である。当初はすごい人気であった。しかしすぐに関心が薄れた。ワシは『オバマは世界を救えるか』という本を出したばかりだったので、売れるんじゃないかな〜と思っていたが、3月過ぎたら火が消えたようになった。うんうん、日本人は他所の国の大統領なんて、どうだっていいんだよなあ、と貴重なことを学習した。果たして今のトランプ騒動はどれだけ続くのか。日米首脳会談が終わったら、急速にボルテージが下がった感あり。
○あの頃、講演会でオバマ政権の話をしているとお客さんが寝てしまうので、「ところで皆さん、定額給付金のことですが・・・」と話題を変えると、寝かかっていた人が急に起き上った、てなことがあった。当時はリーマンショックの直後だったから、当時の麻生政権が「お年寄りに2万円配る」という阿呆な政策をやったのである。そんなこと、覚えていませんよね。人は自分があげたお金のことは忘れませんが、人からもらったお金のことは速やかに忘却するものです。
○8年前のG7サミット(当時はG8)はイタリアのラクイラでした。「荒れるイタリア場所」のジンクスは健在で、招待されていた胡錦濤国家主席が「ウイグル暴動発生」で途中で帰国する、てなハプニングがありました。今年は5月にシチリア島で実施されますが、いかにも荒れそうですよね。
2001年のジェノバサミットでは13万人規模の反グローバルデモが発生、1994年のナポリサミットでは金日成主席が死去、1980年のベネチアサミットでは直前に大平首相が急死しています。
○8年前にも東京都議会選挙がありました。ここで自民党が大崩れしたことが、2か月後の「政権交代選挙」への導火線となりました。都議会選挙がある年は、得てして政治が大荒れになったりするんですよね。1993年の都議会選挙では日本新党が大躍進し、細川政権誕生と55年体制崩壊への先触れとなりました。小池百合子さんは、当然、そのことを覚えているでしょうね。もっとも今年は、あんまり国内政治が荒れないような気がするのですが。
○そういえば本日は皇太子殿下が57歳の誕生日。再来年には、これが天皇誕生日になっているかもしれません。そんな時期に政争なんてやってられませんがな。と考える私は甘いんでしょうか。
<2月24日>(金)
○本日はプレミアムフライデー。「遊民経済学」を標榜する当溜池通信としては、こういう試みは応援しなければいけないと思うんですが、なんで「月の最後の金曜日」なんて変なことを決めたんでしょう。だって来月は3月31日ですよ。そんなの、駄目に決まっているでしょうが!
○おそらくは「休みが増えても、カネが増えないなら遊べない」などという卑しい批判を恐れて、「だったら給料日の直後を休みにしましょう」みたいなことを考えたのでしょう。でも、それなら「第1金曜日」でも良かったはず。いったいぜんたい、何を考えていたんでしょうねえ。
○そもそも最近の日本企業はフレックス制を入れているところが多いから、急に「今日は早く帰って良し」などと言われても、コアタイムの扱いをどうするかなど、微妙な論点がいっぱい出てくるんです。そういう点はちゃんとチェックしたんでしょうか。最近の霞が関は、政策立案能力が低下しているような気がして心配です。
○それに当溜池通信も各週金曜日の夕方が締め切りですから、早く終われと言われても困るんです。本日だって、6時半からの飲み会に間に合わせるのがギリギリ精一杯だったんですから・・・。
<2月26日>(日)
○先日、不肖かんべえが登場したNHK「視点・論点」の内容がネットに出ています。よく似た名前に「時論・公論」という番組もありまして、こちらはNHK解説委員が出番となります。いずれも便利ならざる時間帯にやっているので、番組を見るよりもインターネットで読む方が便利、という不思議な番組です。
○というより、番組を見られるのはあまりうれしいことではありません。カメラの正面にドンと座らされて、睨まれながら自分で書いた原稿を読む、というのは結構な難行苦行でありまして、しかも時間が切られているから逃げ道がない。あれに出てから、「キャスターというのは大変な仕事なんだ」ということを学習した次第です。
○その点、コメンテーターは楽です。斜めに撮影されながら、タイムキーピングはキャスターさんにお任せなんですから。そこはやっぱり餅は餅屋という世界があるのです。
<2月27日>(月)
○今週のマーケットの焦点は、2月28日に行われるトランプ大統領の議会合同演説(普通の年であれば「一般教書演説」=The
States of the Union"と呼ばれるが、大統領の就任初年度は違う呼び名になる)です。
○その中でも最大の焦点は、「国境税」についてどんな発言が飛び出すかということ。普通に考えればBorder
Taxは実質的に関税と同じことになり、「メキシコは35%で中国は45%」などとなれば、明々白々なWTO違反となります。ところがこれを「国境調整税」(Border
Tax Adjustment)と言えば、少しグレーになる。国境調整税とは、法人税を使って「輸入は課税、輸出は非課税」という仕組みを使い、結果的に輸出促進にする、という手口です。
○これもWTOルールから行くと怪しいわけですが、でも日本や欧州は消費税(欧州は付加価値税)を使って、「輸出は非課税、輸入は課税」にしているわけです。そっちは良くて、国境調整税はなぜいけないのか、と言われるとあんまり理屈はない。また国境調整税は事実上、消費者に対する増税となりますので、経済全体への影響度は比較的小さくて済む。そもそも国境調整税が実現するようなら、それはアメリカの貿易赤字縮小を意味するからドル高になるでしょう。だったら輸入物価は下がるので、国境調整税の分くらいは吹きとぶかもしれず、アメリカの消費者もそんなに打撃を受けないというシナリオもあるわけでありまして。
○さらに言えば、国境調整税で実質増税になる分は、法人減税の原資とすることができる。これが導入されるようならば、トランプ大統領が言っている「法人減税15%」はさすがに無理かもしれないが、20%前半くらいには下げられるかもしれない。となれば、企業業績は上がるので、株は買いであろうし、ドルは上昇するのでありましょう。
○他方、トランプ大統領がいくら言ったところで、税制を決めるのはつまるところ議会であるから、国境調整税が本当に実現するかどうかは分からない。現時点では下院共和党は乗り気になっているようだけど、上院を通るかどうかはよくわからない。泰山騒動して鼠一匹、となってもおかしくはないわけで、「トランプさんが何を言っても、所詮たいしたことはできないよ」と冷たく見る向きもあるわけです。
○肝心なことは、かかる重要イベントである議会合同演説が、日本時間では3月1日(水)の午前11時からとなることです。そう、為替が動くにせよ、株価が動くにせよ、最初に試されるのは日本市場ということになります。いやあ、まったくかないませんなあ。思えばBrexitもトランプ当選も同じでありました。まあ、達観して言えば、これで日本株が1日に大幅に下げるようなことになれば、それこそ絶好の押し目買いのチャンスかもしれないわけです。
○結論として、くれぐれも売買は自己責任でお願い申し上げますよ。当方は「見る阿呆」でまいる所存であります。
<2月28日>(火)
○明日の議会合同演説がどんな内容になるか。なんとブライトバートニュースがトランプ大統領に独占インタビューを行っている。大統領いちばんの「お気に入り」メディアだけあって、記者がオーバルルームに入ってサシで独占インタビューを行っている。こりゃあ特ダネですな。
http://www.breitbart.com/big-government/2017/02/27/exclusive-president-trump-previews-congressional-address-pathway-obamacare-repeal-tax-cuts-border-wall/
○うれしそうにこんなことを書いているが、これはちょっと拙いんじゃないか。
President Trump’s interview with
Breitbart News came moments before his meeting with House Speaker
Paul Ryan and Senate Majority Leader Mitch McConnell, both of
whom were outside the Oval Office as Breitbart News was leaving.
White House chief of staff Reince Priebus and chief strategist
Stephen K. Bannon-the former executive chairman of Breitbart
News-both popped into the Oval Office during the interview. Vice
President Mike Pence, a former leader in Congress of the House
GOP conference before his election to the governorship of
Indiana, also came into the Oval Office, just before the
president.
○独占インタビューの間、上下両院の共和党指導者を外で待たせてた、ってのは顰蹙ものでしょう。プリバス首席補佐官とバノン首席戦略官――前本誌会長――も顔をのぞかせた、ってのは贔屓の引き倒しもいいところ。これではまるで「政府広報」に使われているようなもの。
○とはいえ、これでニューヨークタイムズやCNNが地団駄を踏むかと思うと、トランプ支持者は喜ぶのかもしれません。ともあれ、明日の材料が見つかってよかった。
○ちなみに不肖かんべえは明日夜、BSフジ「プライムニュース」に登場して、「検証トランプ議会演説」を語る予定です。
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by Tatsuhiko Yoshizaki