<5月1日>(火)
○今朝の天気図は日本中が「晴れマーク」でありました。今年初めて半そでワイシャツで出勤しましたが、そのこと自体に若干の開放感がありますな。いちおう今日から会社はクールビズだったりするのだし。
○思えば5月の初旬とは、北海道では花見の季節であり、沖縄は間もなく梅雨入りしてしまう。つまり今週は、日本全国がそれぞれに「いい天気」を堪能できる滅多にないシーズンということになる。わが国におけるこんなに良い季節は、あとは10月くらいでありましょう。もっとも外国人観光客の訪問数で行くと、1位が7月で2位が10月で3位が4月となっていて、5月はなんと第9位なんですね。国内の観光客が多いので、宿が取れないのかもしれません。
○この時期にゴールデンウィークという習慣ができたのは、わが国における先人たちの知恵というものでしょう。なにしろ1948年に祝日法ができたとき、日本の祝日は元日に春分、秋分の日など全部で9つしかなかった。そのうちの3つ、天皇誕生日(現昭和の日)、憲法記念日、子どもの日を1週間に集めてしまったのだから。
○それから幾星霜。祝日はずいぶん増えましたし、振り替え休日やらハッピーマンデーやら、いろんなルールが加わってお休みは増える一方です。来年は5月1日が改元となるので、実に10連休になるのだとか。そんなこと言っても、サービス業や観光産業などでは「俺たちは休めない」という人たちも居るわけですが。
○ちなみに明日からは天気は崩れるそうですな。連休後半はちょっと違った雰囲気になりそうです。
<5月2日>(水)
○連休の間の仕事は進まない。特にモノを書く仕事は。締め切りはいっぱい抱えているんだけどなあ。と言いつつ、昨日は文化放送「くにまるジャパン極」に出て、今日はテレ朝CH2「津田大介日本にプラス」の収録があったりするので、さすがにこの手の仕事は手を抜けないのである。
○で、収録が終わったら、突然、TOKIOの記者会見が始まった。山口達也メンバーが辞表を提出って、あれは辞表を出すものなのだろうか。出すのだったら、相手はTOKIOのリーダーではなくて、給料を払っているジャニーズの社長ではないのか、などというツッコミはここではおいておこう。なにしろ23年間も一緒にやってきたのだから。
○面白いから、共演していた小西克哉さんと一緒についつい見てしまう。松岡君って、結構厳しいこと言うね。長瀬は思い切りタメるけど、待たせた挙句の話は意外とつまらん。城島は辛そうだ。ところで俺たち、なんでテレ朝に居るのに日テレの「ミヤネ屋」を見ているんだろう。
○ワシはよー知らんので所詮は他人事モードなのだが、芸能人スキャンダルはやっぱり重い。少なくとも、皆が財務次官のセクハラ問題を忘れてしまうくらいには。あれはやっぱり、連休に入る直前で南北首脳会談が行われた4月27日に謝罪会見をぶつけた財務省の技能賞ということになるのだろうか。
○とまあ、こんなことに熱中していられる日本は平和だというありがちな結論に到達してしまう。TOKIOが参考にすべきはとりあえずTPPでしょうな。つまり1人減らしてTOKIO4で活動する。そのうち誰かさんが戻ってくるかもしれない。まあ、待ってられなくなったら、タイみたいな違うメンバーを入れてもいいんだし。ああ、明日からまたお休みだ。
<5月3日>(木)
○カレンダー通りの日程なので、今日から大型連休の後半戦である。朝になって気づいたが、今日は憲法記念日なのであった。うん、そうなのか。これだけ祝日がインフレしてくると、もともとの意味など忘れてしまうものでありますな。
○この日は改憲と護憲をめぐって全国でいろんなイベントがあったり、NHKが渾身のドキュメンタリー番組をつくったりする日である。とりあえず今宵の「憲法と日本人〜1949-1964 知られざる攻防」は面白かったな。それでも明日になったら皆、どうでもよくなっている、というところが日本国民の健全性ではないかと思う。
○世界中が豊かになってくると、ついつい「政治」みたいなことに熱意を燃やす人が増えるようになる。結果的に「改憲だ」「護憲だ」などと党派色が強くなる。現実よりもイデオロギーが重要な人が増えてしまう。昨今の欧米社会はどんどんそっちの方向に流れていて、いかにも危うく思えてならない。その点、「どちらともいえない」という意見がいちばん多くなるわが国の現状は嘉すべきことではありますまいか。
○本当に憲法改正を行う日が来るとしたら、なるべくビジネスライクに行うことが望ましいと思う。「安倍内閣での憲法改正に反対」などという意見が大真面目に出てくるのは、どう考えても冷静さを欠いているとしか思えない(あんたら、枝野内閣だったら認めるのか?)。
○ということで、連休後半は富山の実家に来てしまった。案の定、仕事が進まない。北陸新幹線の車中で、『シャルマの未来予測』(ルチル・シャルマ/東洋経済新報社)を読み始めた。"The
Rise and Fall of Nations"の邦訳である。予想通り面白い。前半部分で個人的に受けてしまった部分を下記しておこう(第3章 「良い億万長者、悪い億万長者」から)。
最後に日本のような変り種について触れておこう。日本ではGDPに占める億万長者の比率が2%となっている。先進国にしては異常に低い。これは、富の創造という点で、日本が慢性的な機能不全に陥っている兆候ではないかと疑わざるを得ない。ある大学の研究者によれば、不平等の程度が高過ぎても低過ぎても、経済の成長率が低下する傾向がある。国への貢献となる億万長者が少な過ぎると言ったらおかしいと思われるだろうが、でも日本では本当のことだ。
○ちなみに億万長者の富がGDPに占める比率は、新興国、先進国共に平均10%だそうだ。この平均値を5%上回っているのは、ロシア、台湾、マレーシア、チリなど。インドの14%も危機的だが、改善に向かっているとのこと。億万長者にも良いものと悪いものがあり、相続による比率が高かったり、資源開発などレントシーキング産業に関するものが多いのは悪い傾向。逆に技術革新による億万長者が出て、新陳代謝が活発なのは良い傾向であるとのこと。シャルマらしいプラグマティックな見方だと思う。
<5月4日>(金)
○新幹線に乗って富山から金沢へ小旅行。なに、片道20分なのだから、通勤よりも短いくらいである。「つるぎ」の車内はゴールデンウィークでもガラガラであった。でも新幹線なので、往復7000円くらいかかってしまう。
○昭和ひとケタ世代で旧制富山高校出身の父が一緒なので、石川四高記念館に案内する。ここは当時の赤レンガの校舎がそのまま残っている。戦災に遭っていない街は幸いなるかな。その勢いで金沢21世紀美術館に回ったら、これが途方もない混雑であった。いや、連休中の金沢はほんとうにすごい。文字通り観光客が溢れている感じ。
○タクシーの運転手さん曰く。新幹線開通から3年目。日本人客はさすがに減ってきたが、外国人客が増えているのでいつも混んでいる。最近は他県からのクルマが多いから、道路はいつも大変。たいしたことのない鮨屋にいつも行列ができている。魚なんてホントは、富山の方が旨いのにね(実は富山出身の運転手さんであった)。
○富山市内に戻って来てから、いつもの粋鮨に行ったら、これまた途方もない混雑であった。早い時間なのにノドグロとホタルイカは売り切れである。まあ、こういう時期なのだから、大いに稼いでいただかないといかんですな。開通から3年たったが、北陸新幹線の効果はしっかり残っているようである。
<5月5日>(土)
○帰り際、新幹線の時間待ちで富山駅周辺をぐるっと回ってみた。
○新幹線開通から3年目にして、ようやく再開発が終わった区画がある。昔はエッチな映画館の横丁があったような場所なので、たぶん権利関係の調整がいちばん難しかったのであろう。そこに今は東横INNができた。APAホテルを覆い隠すように建っている点が妙に好感が持てる。吉野家など都会にありがちな店舗が入った商業棟もできていて、安いだけに活況を呈していた。こんな風に駅前の消費が良くなるのは「コンパクトシティ」の目指すところではあるのだが、一方では繁華街にある地元資本の小さな店の需要を食っちゃうだろうなあ、と余計なことが気になるところである。
○駅前の回転寿司に行列ができている。半分くらいは観光客であるらしい。それと言うのも、周囲にはキャリーバッグを引っ張って歩いている人が多いのだ。気が付いてみたら、ワシもその1人である。家族連れも多いが、外国人も結構な数である。そして観光客の常として、彼らは財布のひもが緩い。ワシもついつい、行列を並んで白エビかき揚げ丼を食べ、ます寿司を買い、日本酒まで買ってしまった。まあ、連休ですからねえ。これくらいはいいかと。
○ともあれ、富山駅周辺がちょっとずつ「遊民経済学」的に進化しているのは結構なことであります。地方都市の生き残り策にとって、駅前はとっても大事です。
<5月7日>(月)
○連休明けは「モーサテ」出演から。おお、なんと過酷な出だしでありましょうや。ただしこれは番組全体が試練なわけでして、こういう厄介な日に呼ばれるというのは、それはそれで光栄なことなのであります。
○といいつつ、4月からの改編でコメンテーター陣はちょい楽になった気がします。やはり大浜平太郎キャスターの加入は心強いわけでして、そういえば大浜さんは昨日が50歳のお誕生日でした。おめでとうございます。
○「プロの眼マンデー」のテーマは、5月9日に都内の迎賓館で開催される日中韓サミットについて。朝鮮半島情勢を受けて、突然決まったかのように勘違いしている人が居ますが、ホントはずいぶん待たされたんです。
○それにしても首脳外交って、最近は大変ですなあ。昔は紙を読んでいれば良くて、後は晩餐会のメニューやお土産やジョークの勝負だったのですけれども。トランプさんや金正恩が相手だと、アドリブも大事になりますからね。
○ところでWBSは30周年で、モーサテは20周年なのだそうです。実はWBSはプチ・リッチ層が見ていて、モーサテは真の重要人物が見ている、てな分析もあるのだそうでして、両番組へのますますのご支援をいただきたく存じます。
○それとは別に、不肖かんべえは明日は「日経プラス10」に出没します。テーマは「強権体制」。本日はプーチン大統領の就任式ですからねえ。
<5月8日>(火)
○タクシーに乗ったら、運転手さんが「今日は赤坂方面は勘弁してほしいですね・・・」。お気持ちは分かります。明日の日中韓首脳会議は迎賓館で行われるんです。既に相当な警戒態勢が始まっている模様。明日、赤坂・四谷方面にお出かけの皆さまはご注意ください。
○日中韓サミットというものは、互いに二国間だと碌なことにならない「日中」「日韓」「中韓」という3つの辺が、三角形になるとなぜか突然、一致できることが出てくるというのが面白いところである。日中韓の意見が一致することは、よっぽどのことがない限り正しいに違いない、ということでアジアではそれなりに重きをなすのであります。
○李克強首相は本日インドネシアから到着し、明日の会議の後は都内で講演し、天皇陛下にも面談し、北海道にも行くんだそうだ。11日には札幌で行われる日中省長・知事フォーラムにも出席する。文在寅大統領の方は、明後日が就任1周年だからということで日帰りツァーであるらしい。ずいぶん温度差があるわけで、中国は対日接近モード、韓国はあたしゃ今はそれどころじゃないモード。つくづく3か国の一致は難しい。
○ところで米朝首脳会談の開催場所について、ここへきてシンガポール説が急浮上しているとのこと。トランプ政権、シンガポール、そしてエルサレム。この3つをつなぐのは「カジノ」であると・・・・。さて、エルサレムもさることながら、イラン核合意も気になる今宵。トランプ大統領の発表まではあと数時間であります。
<5月10日>(木)
○トランプ大統領の新たな暴挙、「イラン核合意(JCPOA)からの離脱」に対し、非難の大合唱が巻き起こっています。いや、これでちゃぶ台返しの3点セットができましたね。@TPP、Aパリ協定、BJCPOA。
○3つとも、オバマ大統領の野心の成果です。2014年の中間選挙でボロ負けした時点で、残り2年をおとなしくレイムダックで過ごしてもよかったのです。ところがオバマさんは、そこから驚異の粘り腰を発揮しました。そして自由貿易(TPP)、温暖化対策(パリ協定)、核不拡散(JCPOA)という3つの事業を達成したのです。残念なことに全部、トランプさんがチャラにしてしまいましたけど。
○もっともこの3つの政策のうち、共和党議会の賛同を得ていたのはTPPだけで、後の2つは普通に条約として提出したら、間違いなく議会で否決されるようなものでした。そういう意味では、オバマさんは理想主義者に過ぎたのかもしれません。大方のアメリカ人はそれほど環境問題には関心を持ってないし、イランのことは単純にとにかく悪い国だと思っているようなので。
○JCPOAについては、「イラン側が有利で、良くない合意だった」との声もあります。しかしこの問題の場合、相手は核開発をしているかもしれないのですから、どれだけ「悪い合意」であっても、「合意がまったくない状態」よりはマシでありましょう。しかもせっかくできた合意を、わざわざ放棄してしまう場合のコストはまことに大であります。
○他人が苦労してまとめあげたものを、後から難癖をつけるのは簡単なのです。そりゃま戦争して勝った後であれば、自分の好きな条件を相手に呑ませることができるでしょう。でも、イランはそうではないのです。そしてP5+ドイツの6カ国は、「きれいな戦争」よりも「きたない平和」を選択して、イランとの合意をまとめたわけですから。あ〜あ、もったいない、としか言いようがありません。
○核軍縮というのは、とにかく面倒くさい作業なのです。昔の米ソ冷戦時代などは、大勢のプロフェッショナルがこの辛気臭い作業に耐えていたのです。ところがそういう時代の知恵はあらかたどこかに消えてしまったようで、現政権ではむしろネオコン流の原理原則論の方が幅を利かせやすくなっている。専門家を大事にしない国は危なっかしいです。
○つくづくアメリカが抜けた後で、せめて欧州とイランだけでも合意を続けてくれればいいのですけどね。イラン国内では保守派が荒れるでしょうから、穏健派のロウハニ大統領は当分、針のむしろで大変でしょう。TPPの場合は、「アメリカさんがあんなことになってしまったけど、われわれがしっかりしなければ」ということでTPP11ができなしたけど、同じようなことができますかどうか。
○もっともここまで来ると、トランプさんがひっくり返すべきちゃぶ台はもうあまり残っておりません。あとはこのJCPOA打っちゃりが、北朝鮮にどんなメッセージを送っているかが気になります。
<5月11日>(金)
○今朝、今年最後の花粉症の薬を飲み切りました。今年は冬が厳しく、春の到来が早く、しかも寒の戻りもあるという波乱気味の気候が続いておりますが、その分だけ花粉症は早く終わった感があります。それは大いに結構なこと。2月にアレグラを飲み始めてから3か月、あたしゃ、これ以外に飲んでる薬がないんです〜。
○ということで、花粉症の季節と5月の連休の後遺症が終わりつつあります。ああ、俺もそろそろ本気出さなきゃ。今日だって苦労して溜池通信書いたし。原稿の締め切りも前方にはいっぱいあるし。それでもその前に、今週末のヴィクトリアマイルは欠かせないのでありました。
<5月13日>(日)
○本日は浅草ウィンズへ行って、B2Fのエクセルフロアで奮戦。浅草ウィンズというと、昼間から飲んだくれて勝負しているオジサンがいたり、階段に座り込んで競馬新聞を読んでいるオバサンがいたりして、とってもやさぐれた感じが良い感じなのですが、1500円払って自分の座席を買っている人たちはさすがに真剣勝負でありましたな。しかも、映像を見ながら飛び交う批評が半端なく「通」なものだったりして、聞いているだけで勉強になるのであります。いわばギャンブラーのエリート集団でありますな。
○どんなことであってもエリート集団と接する、というのは重要なことであります。そうすることによって、いい影響を受けることができるのですから。不肖かんべえなども、いつも賢い人たち(エコノミスト、ジャーナリスト、大学教授等々)と仲良くすることによって、耳学問で勝負しているようなものです。もっとも昨今の北朝鮮問題などは、並み居る専門家も皆さんお手上げモードなようであんまり役に立ちません。もちろんトランプ・ウォッチャーも以下同文なので、全然お役に立てないのでありますが。
○ところがこういうエリート・ギャンブラーたちに対しても、昨今は馬券を買う機械の前にはこんな標語が貼られているのであります。
「競馬は20歳になってから ほどよく楽しむ大人の遊び」
○ああ、なんて嫌な世の中になってしまったのだろう。こういう発言をすること自体が「オトナ」じゃない、ということがなぜわからんのか。なにしろIR法案よりも、依存症対策法案が優先されてしまう世の中だから仕方がないのかもしれませんが。カッコいい大人が少なくなっただけじゃなくて、数少ない大人を引き摺り下ろそうとする輩が後を絶たない、という点に頭を抱えてしまう昨今なのであります。
<5月14日>(月)
○共同通信とNHKの世論調査が出ましたが、どうやら内閣支持率が下げ止まったように見えます。
●共同通信 37.0%(4/14-15)→38.9%(5/12-13)
●NHK 38.0%(4/6-8)→38.0%(5/11-13)
○連休前と連休後では、雰囲気がすっかり変わってしまったような気がします。4月27日というのが鍵でしたな。ひとつは海外で、南北首脳会談があったこと。もうひとつは国内で、財務省の福田次官の処分が決まったこと。後者はあからさまな「連休前の幕引き」でありましたが、その後、「TOKIOの山口事件」という爆弾が破裂しました。世間の関心は、「官僚<政治家<芸能人」ですから、完全にそっちの方に注目が向かいましたな。
○今頃になって、麻生大臣が「セクハラ罪というものはない」などと燃料を投下しているのですが、世間的には「この昭和なおっさんは何を言っても無駄」的なあきらめが強いようです。それにしても、『泣いて馬謖を斬る』の思いで福田次官を更迭したはずの大臣が、後から「馬謖は本当はいいヤツだった」と愚痴るようでは、斬られた馬謖が浮かばれないと思うのはワシくらいだろうか。
○さて、国会の方は悪名高き「18連休」があったもので、完全に仕事が遅れております。衆目の一致するところ、急がなきゃいけないのは@TPP関連法案、A働き方法案、BIR実施法案、の3本。そして通常国会の会期が6月20日で閉じると考えたら、3本全部は無理だよねえ、と思われていたわけです。
○ところがここへきて、「会期を延長して3つとも通そう」という動きが出てきたんだとか。確かにその方が片付きがいいのは当然なんだけれども、9月に控えている自民党総裁選を無難に乗り切るためにも、議員さんたちには夏場も働いてもらった方がいい、という計算があるらしい。うーん、そっちかあ。
○さらに余計なことながら、IR法案を秋の臨時国会に先送りした場合、来春の統一地方選挙に影響するから、公明党が「今国会で片づけてほしい」といっているとのこと。ここへきて急にIR関連の動きが活発になってきたように思えるのは、そういうことなんですか。さても政治は不思議なり。
<5月16日>(水)
○今さらですが、この溜池通信はとっても古いです。2002年くらいにレンタルサーバーと契約して、その当時のまんまのやり方で続けております。気がついてみたら、ディスクの使用状況がいっぱいになっておりました。全体で200MBなんですが、既に94%くらい使ってしまっています。このままいくと、近い将来に当サイトは継続不可能になってしまいます。
○そこで重い腰を上げて、いろいろ調べ始めてみたところ、ちょこっとプランを変更するだけで、容量無制限になることが判明しました。もちろん料金は少し上がるんですが、まあ、痛いというほどではありません。本日、プランの変更を注文しました。経過措置がどうなるか、よくわかっておりませんので、後日、当サイトに不都合が出たら「ははーん」と思ってくださいまし。
○それにしても、ここにアップした200MB弱の容量は、ほとんどがPDFファイルやhtmlなどの文字情報です。われながらよく書いたわなあ。とにかくほとんど毎日のように何かを書き続けておるわけでして、ワシが生きたあかし、などというと大げさになりますが、とりあえず「何年に何があったか、自分が何をしたか」を確認する便利な道具となっております。
○最初に書き始めた頃はまだ30代だったのですよ。まさかこれだけ長く、同じスタイルのまんまで書き続けることになるとは思ってもみませんでした。こんなSNS時代になっても、この古くさいサイトには1日8000〜9000件の訪問者があって、何がしかの影響力を有しているようであります。ありがたいことであります。
○そういえば先日、久しぶりに伊藤師匠にお会いました。こちらは伊藤さんの真似をして始めたサイトですが、週刊の為替ニュースは最新号が2407号ですって(ちなみに溜池通信は現在640号)。これはやはり、サーバーの容量を無制限にして、とことん後を追わねばなりますまい。
<5月17日>(木)
○わが国を代表する製鉄会社、新日鉄住金さんが来年4月から社名を変更して「日本製鉄」になるとのこと。戦前の翼賛体制を思い起こさせる名称ということで、戦後はずっと避けてきた名前が復活することになるのでありましょう。例えば、戦前の電力会社は「日本発送電」と言いました。もっともこの会社、典型的な「親方日の丸」体質で、戦時中にはしょっちゅう停電が起きていた。国策企業は碌なもんじゃない、という典型であったようであります。
○ところで今回の日本製鉄は、「ニホンかニッポンか」という古いテーマを呼び起こした感があります。実は企業名としては、「日本銀行」(お札には"Nippon
Ginko"と書いてあるし、電話をかけるとちゃんと「ニッポン銀行です」と返事をする)、「日本郵船」(これもニッポンユーセンが正しい)など、ニッポンが優勢です。ところが全般で言うと、ニホンが圧倒的に多数なんだそうで、それも時代が下るとともにニホン>ニッポンになっているというから驚きです。
○少し前に出た記事ですが、これは「ニホン経済新聞」の記事から。
*話し言葉では98%が「ニホン」
*1963年調査では「ニホン45.5%」「ニッポン41.8%」と差がなかったが、1993年調査では「ニホン58%」「ニッポン39%」となり、2003年調査では「ニホン61%」「ニッポン37%」と差が開きつつあり。
*日銀が「ニッポンギンコー」になった理由は、創生期の通貨当局には「ニホン」よりも「ニッポン」を愛する薩摩人が多かったから。
*政府見解としては、2009年の麻生内閣が「どっちでもいい」と決めた。ただしどちらかといえば、自民党は力強い「ニッポン」を愛好し、民主党系は柔らかい「ニホン」を好むようである。
*スポーツの世界では、「ニッポン」が優勢で、そりゃあそうですわな。「ガンバレ・ニホン」じゃ力が入りませんもの。ここはやっぱり「ニッポン・チャチャチャ」でなきゃいけません。
○言われてみれば、「日本共産党」「日本社会党」など、左派系、リベラル系は「ニホン」を使いますね。逆に右派系、保守系は「ニッポン」。そのように考えれば、「鉄は国家なり」の日本製鉄は、ぜひとも「ニッポン」でなければなりません。よかったね、ニッポンセイテツ。
○ちなみに政府が判断を逃げてしまったために、「ニホンかニッポンか」の判定を押し付けられているのがNHKであります。そのNHKの判定はこちらをご参照。そのNHKの正式名称は、柔らかくニホン放送協会、ですよね。こういうのも日本の知恵というものでしょうか。
<5月18〜19日>(金〜土)
○金曜日はきらやか銀行さんの講演会講師で山形市へ。山形には2010年、2014年にも来ているので、不思議と4年おきにお呼びがかかるようである。いつも日帰りなので、今回は宿泊させてもらうことに。山形駅西口のワシントンホテルに泊まると、これがとっても高層であって眺めがよろしい。山形盆地が一望に見渡せる。ちょっと福島市に似た感じかな。
○一夜明けて土曜日は、山形新幹線で新庄まで行って、そこから酒田市に出るつもりであった。そして庄内空港から羽田経由で帰るという予定だったのだが、なんと昨日の雨で陸羽西線が不通だという。山形駅で、昼には復旧するかもしれないと言われたけれども、これでは本日中に庄内空港にたどり着けないかもしれない。即座にANAに電話して航空便をキャンセルしました。
○ホントはですねえ、酒田市で本間宗久の跡をたどるつもりだったんです。「本間さまには及びもせぬが、せめてなりたや殿さまに」の本間家である。そのために「本間宗久相場三昧伝―相場道の極意」なんて本も買ってあったんですよ。電車の中で読もうと思って。まあ、天候には勝てません。ここは「見切り千両」ということで酒田市を断念。
○しょうがないので、山形駅から手近の観光へ。まずは霞城公園(かじょうこうえん)へ向かう。山形城の跡地って、とっても大きかったのですね。全然知りませんでした。平城で天守閣もなかったけれども、堀は3層になっていてとてつもない広さだったようである。現在発掘作業中とのこと。敷地内には、山形県立博物館、山形市郷土館、県体育館などが並んでいる。
○出羽山形藩は、最盛期の最上義光(もがみ・よしあき)の頃には57万石だったそうである。それって伊達藩とほとんど変わらない規模じゃないですか。しかるに最上藩は、お家騒動でお取り潰しになってしまう。義光が11代だったので、最上家は13代で終焉する。山形の名酒「十四代」という名前は、きっとこのことに関係しているのでありましょう。山形藩は江戸末期には5万石まで減らされたそうなので、その悔しさが残っているんじゃないかなあ。
○それから上山市(かみのやまし)へ移動して、斎藤茂吉記念館へ。リニューアル直後とのことで、なるほど立派であった。茂吉は歌もさることながら、絵心のある人だったというのには驚きました。そのうえ医者なんですから、とてつもない才能ですな。敷地内には強羅にあった斎藤家の「勉強部屋」が移設してあって、なるほど晩年の茂吉と次男宗吉(北杜夫)が夏を過ごしたのはこんな家だったのか、と勝手に納得しました。
○ついでに天童にも足を延ばす。これはまあ、将棋ファンとして一度は行っておかなきゃいかんだろ、ということで。昨日は藤井七段が誕生し、本日は名人戦の第4局が行われている。ということで、将棋資料館へ。そのお隣には「天童将棋交流室」がある。要は将棋道場なのだが、ここには「将棋のまち天童からプロ棋士を」という標語があった。『3月のライオン』を読んでいる人なら、ここは笑うところですよ。
○ということで、締め切りをいっぱい抱えている身であるものの、山形で遊んでしまった一日であった。この後ろめたさによって、この後は仕事にエンジンがかかる、はずである。きっとだよ。
<5月20日>(日)
○以下は「本間宗久相場三昧伝―相場道の極意」からの抜き書き。
●米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。又商い進み急ぐべからず。急ぐ時は踏み出し悪しきと同じ。
――何事もスタート時点が大事です。
●米の高下は天声自然の理にて高下するものなれば、極めて上がる下がると定め難きものなり。この道不案内の人は迂闊にこの商いすべからず。
――株でも競馬でもまったく同じですなあ。
●米買うべしと見込み候時、二俵方も引きあがる時は、買いおくれじと心得、かえって売り方になることあり。はなはだ誤りなり。買いおくるる時は唯買い場を待つべし。
――ちょこまか動いちゃいけません。初志貫徹でなきゃいけません。
●商い利運仕当たる時、先ず大概に致し、取り留むるものなり。その節一両日休むべし。この休むことを忘るる時は、何程利運に向きても、商い仕舞の節は決して損出すべし。
――儲かった時は、感謝していったんブレイクを入れること。
●底狙い、天井狙い、売買すること。専ら心掛くべし。
――中途半端なことは考えちゃいけません。
●十人が十人片寄る時は決してその裏来るものなり。
――「ある、ある!」
●思い入れ違いは早仕舞い、行き付きを見るべし。
――ナンピン買い(売り)は悪手、相場に逆らっちゃいけません。
●天井を買わず、底を売らず。但し、第一の心得なり。
――「天井売らず、底買わず」という格言もあります。
●足らぬものは余る、余るものは足らぬと申すことあり。
――豊作の年は贅沢に使うので米が足りなくなり、不作の年は大切に使うので余るんだそうです。
●腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず、大いに慎むべし
――競馬場でこれをやったら確実に負けます。
●米商いは軍術と同じ。
――軍事でも投資でも、戦略を自在に使いこなす人は実はとっても少ないのです。
●もうはまだなり。まだはもうなり、ということあり。
――基本です。
●すべて、相場高下の論致すまじきなり。この道を心得る人は、わが了見を立てず、人の了見にて商いする人はなきはずなり。
――プロは寡黙であるべし。
●新米出始め候ては、前年の心さっぱりと離れ、その年の作の様子、物の多少、人気の次第を考うること第一なり。
――去年のことはリセットしましょう。
●一年中、商い手の内にある時は利運遠し。折々仕舞い候て、休み見合わせ申すべきこと第一なり。
――休むも相場。
○以上、すべて自分用のメモでありますから、「あれはいったい何のことだ?」などと聞かれても困ります。なにしろ最終章では、本間宗久は「この書、懇意の間柄にても、必ず必ず、見せ申すまじきなり。大切に心得、秘蔵すべし、慎むべし。秘すべし」と言っているくらいなんですから。
<5月21日>(月)
○最近の仕事のご紹介。
●ウェッジ 「地政学リスクと日本のエネルギー」
――先日、訪れた磯子の石炭火力発電所の報告編です。クリーンコール発電に関するJ-Powerさんの記事広告から。エネルギーの世界は昔から地政学なんです。
●東洋経済オンライン 「アルゼンチン通貨急落は『何かの前兆』なのか」
――アルゼンチンタンゴの次はトルコ行進曲が聞こえてくる、てな話を書こうかと思いましたが、不謹慎かな〜と思いとどまりました。いやもちろん、イタリアン・ワルツとかメキシカン・テキーラ音頭でもなんでもいいんですけれども。
○本日、韓国の外交官とお話しする機会があって、かの国はとっても今、歴史的高揚感があるのだということに気がつきました。そりゃあ、そうだよね。あの北朝鮮が変わるかもしれないのだから。去年までは確率ゼロだったものが、今年はゼロではなくなっているのだから。日本国内の期待値の低さは、ちょっと異様なくらいかもしれません。
<5月22日>(火)
○今月は16日に発表された1-3月期GDP速報値が思ったよりも悪かった。足元の景気は良いとばかり思っていたのに、これは大丈夫かな、と思ったところ、昨日出た貿易統計では、4月の輸出は前年同期比+7.8%と意外とよかった。これくらいであれば、来週31日に発表される4月の鉱工業生産も悪くはないだろう。
○なぜなら日本のモノづくりは輸出次第。貿易依存度は低いのに、昔からずっとそうなの。鉱工業生産は、輸出の実額とそっくりなグラフを描く。輸出と鉱工業生産が4月以降にちゃんと伸びるなら、1-3月期のマイナス成長は天候などの特殊要因、と位置付けることができる。
○こんな風にして、景気への認識はちょっとずつ変わっていくわけだが、しみじみ「日本経済は受け身だな」と感じる。内需主導で伸びる、ということはほとんど考えにくい。つまりは外需次第。海外の景気が良ければ、輸出主導型で景気が良くなる。しかし輸出の上位10品目は、2005年当時と2017年を比較するとほとんど変わっていない。わずかに「半導体等製造装置」が新たに加わっただけである。
○どうも日本発の画期的な新製品、新技術が出てきて、一気に新しい需要を開拓するという感じではない。ただし一定のクオリティの製品をきっちり作る能力はあるし、適度な改良もあるから一気にずり落ちるという感じではない。日本の輸出の6割は機械機器で、そこは何とか踏みとどまっている。
○なかでも自動車の占める比率は高い。自動車と自動車部品を足すとそれだけで輸出全体の2割になる。しかも巨大な裾野産業を抱えている。この自動車がダメになったらどうするのか。そして自動車をめぐる環境は、自動運転やらEVやら急速に転換しつつある。そして日本の輸出品目第1位は、1980年頃からずっと自動車が第1位。かれこれもう40年になる。それでも「ポスト自動車」はなかなか見えてこない。
○もうひとつのリスクはアメリカ主導の貿易戦争。中国製のハイテク製品には、大量の日本製部品が使われているので、中国製品への制裁措置は日本を直撃することになるだろう。それに比べると、鉄鋼アルミへの制裁関税などちっともこわくない。だって4月の対米鉄鋼輸出は増えているんですぜ。25%も関税かけられているのに!
○などと、貿易をめぐる話は尽きない。今どき貿易赤字を敵視するトランプ大統領の時代においては、こちらも少し古い発想をした方がいいのかもしれない。通関統計を見ながら、地道にモノの動きをチェックする、という作業は退屈しないものがある。
<5月23日>(水)
○岡崎研究所の理事会へ。考えてみたら、岡崎久彦氏が亡くなられてもう3年半になる。幸いなことに、研究所の方は茂田宏所長・理事長の下でつつがなく続いております。
○今回の特記事項はこういう本が刊行されたこと。『陸奥宗光とその時代』の英訳であります。
Mutsu Munemitsu and His Time
Okazaki Hisahiko
Translated by Noda Makito
Published by JPIC | Hardcover | ISBN 978-4-86658-025-8 | 352
pages | 220mm (h) x 148mm (w) | March 2018
○日本外交史シリーズは、これから順々に英訳されていく予定です。
『陸奥宗光とその時代』(PHP研究所 1999年)「外交官とその時代」シリーズ第1巻
『小村寿太郎とその時代』(PHP研究所 1998年)「外交官とその時代」シリーズ第2巻
『幣原喜重郎とその時代』(PHP研究所 2000年)「外交官とその時代」シリーズ第3巻
『重光・東郷とその時代』(PHP研究所 2001年)「外交官とその時代」シリーズ第4巻
『吉田茂とその時代』(PHP研究所 2002年)「外交官とその時代」シリーズ最終巻
○ちょっとだけ悩ましい点がある。岡崎作品は塩野七生作品などと一緒で、フットノートがついていない。アカデミズムは別にして、日本におけるノンフィクション作品はもともとそういうものだったのです。ところが「歴史もの」として英訳されると、海外の読者にはその点に違和感があるかもしれない。
○昔はねえ、そんなこと誰も気にしなかったんだよねえ。てなことが気になるということは、ワシも古い人間になりつつある、ということですな。まあ、お蔭で岡崎大使に出会えて、いろいろ教わることができたわけなのでありますが。
<5月24日>(木)
○ある私大関係者の述懐。
「日大はねえ、あそこは日本最大の学生数だけれども、大半は下から上がってくる(日大×高など)子供たちだからねえ。学校のイメージが悪化すると、受験者数が減ってたちどころに収益を直撃する、という恐怖感がないんだろうなあ」
○なるほど、納得であります。緊張感のない組織は、ときどきこういうことが起きてしまいます。
○会社生活における20代のほとんどを「広報室」で過ごしたワシとしては、「広報の最大の敵は愛社精神である」と思っている。会社がぶっ叩かれたりすると、「うちは間違っちゃいない。悪いのはメディアだ」みたいなことを言い出す変に愛社精神の強い人が出てくるんですよねえ。それで簡単に終わる話がかえって長引いてしまう、みたいなことがよくあるわけでして。
○これ、同じことが愛国心にも言えます。是枝監督のパルムドール作品、『万引き家族』という映画、たぶん私は見ないと思いますが、「なんでそんなに日本の評判が落ちるような映画を撮るんだ!」と言って怒るような人って、いますよね。でも、この手のエンタメの世界では、自国の悪いことをとことん抉り出せる国の方が尊敬されるものです。ハリウッドも最近は地に墜ちた、と言われつつ、ときどき『デトロイト』みたいな映画を作りますからねえ。
○大事なことは自分が所属する組織を客観化できるかどうかでありまして、今の日大さんは「変な愛校心」が邪魔をしているように思います。
<5月25日>(金)
○今日はテレビ東京「ゆうがたサテライト」へ出陣。こういう日に限って、「米朝首脳会談中止」「日大の学長が記者会見」「籠池被告が保釈」など、耳目を集めるようなネタが満載である。池谷キャスターからは、「あいかわらず、もってますねえ」と、褒めるような、半分あきれたような声が。
○北朝鮮ウォッチャーを急きょ呼びます、というから、誰だろうと思っていたら伊豆見元先生でありました。「米朝首脳会談の復活、ありますか?」と聞かれて、私は「中国による仲介?」(があれば、何とか実現できるかもしれない)と書いたのですが、伊豆見先生は「今夜にでも再開可能」というお答えでした。そりゃそうだ、何しろトランプさんと金正恩さんなんだもの。
○思えば伊豆見先生と始めで出会ったのは26年前のボストンでありました。近年では毎年、日韓対話でご一緒する機会があります。不思議なご縁でありますが、会うたびにいつも刺激を受けております。
<5月27日>(日)
○渡辺努教授が『公研』のコラムで書いておられたので初めて知ったのですが、ツィッターの世界で「くいもんみんな小さくなってませんか日本」というハッシュタグができているんですね。なるほど、コンビニおにぎりからカントリーマアムなど、ちょっとずつ食品のサイズが小さくなっている。実質的な値上げでありますな。
○考えてみれば、外食産業は人件費が上がっているので堂々と値上げをしている。今日なんて、モスバーガーの「よくばり天 海老とかきあげ」(期間限定)がどうしても食べたくて、480円にサイドメニュー(オニポテセット)をつけたら1000円札を出してお釣りは100円以下でしたからね。もちろんモスバーガーでそんな文句は言っちゃいけません。それに天麩羅モスは旨いっす。
○逆に店舗で売る大量消費の食品類は、値上げをしないために秘かにサイズダウンをやっているらしい。最近、明治の「おいしい牛乳」のパッケージが変わって、「趣味悪いな〜」と思っていたのだが、なんとあれは1リットルからさりげなく900mlに減らしていたのですね。お店なんかで大量に使うときには、サイズが変わると不便でしょうに。
○物価問題の大家である渡辺先生は、「なにもここまでしなくとも」と言っている。そして「国民のデフレ意識がいかに強いか」とも。いずれの感想にも同意せざるを得ない。こういう爪に火をともすような努力をやってると、どんどんイノベーションからは遠ざかっていくんじゃないかなあ。こういうところも含めて、最近の日本経済は「受け身」であるように思えてなりません。
<5月28日>(月)
○上海の経済シンクタンクさまご一行が来訪。慌てて準備して応援を呼んだり、会議室を手配したりして大わらわである。その代わり、いろいろ学ぶ点がある。いかに日中双方に誤解が多いかということを。
○最近の中国では、李克強首相の訪日後に「沈黙を選んだ隣国――恐ろしい日本」という言説が流れているのだそうです。ということは、たかだかこの2週間くらいのことですけれども、「日本はもう没落した国だと思っていたらさにあらず、実は底知れない技術力を持ち、海外には膨大な資産を持つ国なのだ、あなどるなかれ」といった認識なのだそうです。そんな極端から極端に走らなくとも・・・・。
○原子炉の圧力容器も日本でなければ作れないのではないか、などとおっしゃるので、ハイハイ、その会社は北海道の室蘭市にありますけど、とっても古い工場なんですよねえ。ちなみに日本製鋼所の時価総額を確認したら、2355億円くらいでありました。今の中国だったら、余裕で買えちゃいますよ。そのときは経済産業省が大騒ぎして止めに入るでしょうが。
○「東アジアの雁行形態論はどうなったんだ?」という問いにも肝をつぶしましたな。2005年くらいまではそういうモデルで東アジア経済の説明が可能だったかもしれませんが、日中のGDPが逆転した今となってはとても恥ずかしくて口には出せません。先方側としては、「もっと日本が新しい技術を提供してくれないと困るじゃないか」という思いがあるのかもしれません。
○こちらからも、「デジタルエコノミーと今後の中国経済について」などというお題をお尋ねすると、最近はあまりの発展ぶりに政府が恐怖を感じ始めて、いろいろ規制を強化しているというご説明であった。アリババやテンセントが国有の銀行業になり替わってしまうと、さすがにマズイということで。
○なるほど、日中がお互いを等身大で認識するということは容易なことではない。実態よりも大きく見えてしまったり、無理して相手を小さく見ようとしたりする。そういう誤りを訂正する手段は唯一つ、互いにコミュニケーションを図ることのみであります。今日はいい機会をいただきました。
<5月29日>(火)
○お昼に某バイオベンチャーの方々から話を聞く。バイオベンチャーというのは、要するに創薬の仕事である。だから売り上げは基本的にゼロ。資金を調達して開発作業を行い、経費は何十億円も使い、画期的な新薬ができたら後は青天井。それがダメだったら、できるまで辛抱強く続ける。いわば狩猟民族型の仕事である。
○ところが日本でマザーズに上場していると、「売り上げは最低1億円」などという変なルールがあるのだそうだ。創薬の仕事で、どうやって売り上げを上げればいいのか。つくづくこの国には変なルールがいっぱいある。そしてそれをかたくなに守らなければいけないと考える人たちが多過ぎる。
○アメリカのFDAに新薬開発の話を持っていくと、親身になってアドバイスしてくれるんだそうだ。新しい薬ができることは世のため人のためであるし、そのためには我々も一肌脱ぎますよ、という理屈である。同じことを日本のお役所に持っていくとどうなるか。それこそ木で鼻をくくったような対応になることは想像に難くない。
○気づいてみたら、世界の医薬品メーカーのTop10に日本勢は1社も居ない。そして医薬品は昨年の輸入額が2.6兆円で、6番目に多い輸入品目である。なおかつ、輸出は5592億円しかない。そして財務省が必死になって薬価を下げようとしているこの国で、画期的な新薬が誕生する確率はとっても低いだろう。
○夜は援助関係者の会合。昨年後半から急速に状況が悪化しているとのこと。このままいくと、既に2国間で決まっている援助も実施できなくなるんじゃないかとか、円借は大丈夫だろうかとか、肌に粟を有するような情報が飛び交う。。
○原因はJICAの機能不全。巨大組織がいろいろと問題を抱えているらしい。河野太郎外務大臣のボルテージがいきなり上がりそうな予感。
○国会も「もりかけ」なんかやってないで、そっちを叩いた方がいいんじゃないだろうか。援助の世界にも「総理案件」は少なくないぞ、きっと。
<5月30日>(水)
○今日は名古屋で講演。新幹線の車中にて『経営者』(永野健二/新潮社)を読む。中山素平や豊田英二から、中内功、藤田田、出井伸之などが次々に登場する。著者はこれを「日本経済新聞証券部」の視点でバッサバッサと斬る。いや、面白い。時間を忘れてしまう。
○とはいうものの、前作の『バブル』ほどはのめり込むことができない。さて、どこが違うんだろう。雨の中、傘を差して家に帰る途中でふと気がついたんだが、「著者の視点がぶれていない」という点が気に入らないのだ。いや、それはむしろ普通は褒められるべきことなんだが、ちょっと嘘くさくも思える。
○ここに登場する経営者のうち何人かは、ワシも見てきたし、知っている。では、そういう人たちをどう評価するかといえば、80年代ならば80年代の、90年代ならば90年代のモノサシをあてはめるのが誠実な態度ではないかと思う。2018年の今の尺度で物事を判断し、「時代を先取りしていた」とか、「分かっていなかった」というのは気の毒ではないか。だって自分自身のモノサシが、どんどん変化しているのだもの。それはきっと、日本中がそうだったと思うのだ。
○資本主義に正しいも間違っているもないだろう。今、正しいとされていることも、2030年になったら非常識になっているかもしれない。そういう世界でわれわれは生きている。本書にたびたび登場する「渋沢資本主義」なるものも、そんなに素晴らしいものだったかといえばそこは疑問もある。皆、それぞれの時代に限られた情報、限られた世界観の中で必死に経営者たらんとしてベストを尽くしていただけなはずだ。
○もちろん過去の経営者(一部は現役の経営者)を描くためには、ある程度、自分が神様の視点になるしかない部分はある。それにたぶん著者が書いてくれなかったら、知られないままに終わったであろうファクトもたくさん盛り込まれている。その点は感謝するけれども、何か所か「ちょっとなあ・・・」と感じた部分があった。
○端的に言えば、「東芝は昔からダメな会社だった」と今、言うのは簡単だ。だったら、西田社長や佐々木社長の時代にそう書けばいい。ところが経営というものは、常に「結果オーライ」の世界である。正しい手法で成果が出ない人も居れば、間違った手法で成果を出す人も居る。経営者は常に結果で評価される。
○ちなみにワシ的には、1990年代の東芝がそんなに悪い会社だったとは思わない。東芝製のエアコンや冷蔵庫も買ったしね。青井舒一さんが早死にしなかったら、どうなっていたんでしょうか。
○本書にはところどころ、「今という答えを知って書いている」部分がある。でも日経新聞とか日経ビジネスって媒体は、もっと日々の事情に流されながら書かれているものじゃありませんか。「日本の資本主義とは!」なんて大きく構えないで、もっと普通に印象論を語ってくれれば、その方がもっと楽しめたかなという気がしています。
<5月31日>(木)
○久しぶりに福岡市へ。久しぶりと言っても、去年は来なかったというくらいの頻度である。できれば毎年来たいところであります。
○あいかわらず元気な街であって、それでも来年のG20サミットの開催地を大阪に取られてしまったという点はちょっと残念である。ホテルが足りない点と警備が難しい点がネックになったそうであるが、確かに福岡市には高いホテルがない。フォーシーズンズかリッツカールトンかペニンシュラかコンラッドか、その手の箱が欲しいところです。ちなみに宿泊場所は西鉄グランドホテル。近々、改築だか改装だかをするとの噂あり。
○その代わりと言っては何だが、G20の財務相・中央銀行総裁会議の開催地となった。そりゃあそうだろう。麻生財務大臣は地元だし、黒田日銀総裁も福岡県の出身である(大牟田市)。2019年6月8−9日だそうだ。普通は2月くらいに行われることが多いのだが、この日程はやはり改元が影響しているのだろうか。
○九州新幹線が開通し、博多駅が全面改装になった2011年には、「福岡の中心地は天神から博多に移る」といわれたものである。ところが、なんだかんだで天神の繁栄は特筆大書すべきものがある。特に感心するのが西鉄の福岡(天神)駅から西鉄グランドホテルまでにつながっている新天町という商店街である。昔風の地場のアーケード街が、昔ながらの繁栄を続けている。全国の地方都市からみれば垂涎の光景ではないかと思う。
○午後に仕事を済ませてから割烹よし田へ。以前にも来たことがあるのだが、ここの透明なイカの刺身は絶品。というか、魚は何を食べてもおいしい。締めの鯛茶もすばらしい。9時にホテルに到着し、そのまま爆睡する。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki