●かんべえの不規則発言



2014年8月






<7月31日〜8月2日>(木〜土)

○二泊三日の旅行に出て高知県に行ってました。

○今は「高知家」なんてキャンペーンが行われています。県の観光PRも、「うどん県」と「おしい広島県」あたりから、なんでもアリになってきた感がありますけど、県内出身者の広末涼子を使ってまとめています。でも、高知県の場合はまだまだキャラが立つ人がいるでしょ。個人的には、西原理恵子と吉田類の呑んだくれ対談なんかを希望。

○さて、この間に見聞した高知の名物についてご紹介。

●坂本龍馬:土佐と言ったら、やはりこれは欠かせません。何はさておいて桂浜の銅像に行きますと、「龍馬に会いに来た!」という感じがしますもん。ただし坂を登ったところにある坂本龍馬記念館は、ちょっとお客が少なかったような。考えてみたら、福山雅治の『龍馬伝』も終わって久しいし。でも、NHK大河はまたすぐに幕末を取り上げるでしょうし、そうなりゃかならず「次のカッコいい龍馬」が出てきますから!

●明神丸:カツオのたたきはなんといってもココで。塩でよし、たれでよし。トマトも絶品。それから清水サバの押しずしも。ところで高知市内の酒場では、「たっすいがは、いかん!」というキリンビールの広告が至る所で目に入ります。この意味、いろいろ考えたのですが、たぶん富山弁に翻訳すると、「あいそむないがは、だちかんちゃ」になるのではないかと思う。意味はまあ、適当に察してください。

●タクシーの名言集:レンタカーを借りるかどうか迷ったのですが、「ま、最終的には同じくらいだろ」と割り切って、観光にはタクシーを多用しました。そしたら運転手さんが軒並みに話好き。高知に関するいろんな話を伺いました。いや、これはタクシーが大正解ですよ。いろいろ貴重なことをうかがいました。

「四国の南半分が高知。その85%は山です」――東西に移動してみるとこれ、実感です。

はりまや橋が『日本三大ガッカリ名所』と言われるもんだから、3億円かけてわざわざ人工水路を作ったんです。でも、『札幌時計台』には勝てませんなあ」――そんな身も蓋もないことを・・・。

「龍馬がどこで生まれたかは、わからんのです。まあ、この辺だろう、というところで作ったのが、『龍馬が生まれた町記念館』」。――ちゃんと行きましたですよ。

「高知は銅像が多いですが、吉田茂のはありませんなあ。まあ、あん人は地元にはなにもしてくれませんでしたから」――あれはどう見ても土佐の「いごっそう」なんですけど。

●高知城:土佐24万石の天守閣は、まったく無事に残っています。山内一豊公の銅像もありますが、なぜか板垣退助もここに立ってます。みなさん、板垣退助の名言の英訳、何ていうか知ってましたか? "Itagaki may die, but liberty never !" ・・・そう言われると、カッコいいじゃありませんか。

絵金蔵:絵師金蔵、略して絵金。元は土佐藩家老の御用絵師だったが、贋作事件に巻き込まれて城下追放となった不遇の絵師。狩野派の腕前で、酒蔵をアトリエにして描き続けたのが極彩色の芝居絵。言ってみれば、芥川賞受賞の元純文学作家が、お色気もありのエンターテイメント作品で人気を呼んだようなものか。今も残る芝居絵から、土佐人のパワーを堪能できます。

県立文学館:土佐派文学者の宝庫であります。個の強い人が多いからでしょうか。特に女流文学者の強さは目を引くものがあります。ところで、来て初めて知ったのですが、「はちきん」という言葉の意味。「土佐の女は男4人を手玉に取る」→「玉2×4人分=8個のXX」ということなんだそうです。あの皿鉢料理というのも、女性が酒盛りの途中で台所に立たなくて済むような配慮なのかもしれませんね。

○まだまだほかにもいろんな発見があったのですが、とりあえず今日のところはこの辺で。最終日は台風が来ていたもんですから、慌てて飛行機の便を速めて帰ってきた次第です。台風は高知では久しぶりだったようですが、大事ないことを祈りたいと思います。

○ところで今回の旅行では、パソコンを持参せずにi-pad miniだけでありました。お蔭で荷物が軽くて良かったのですが、仕事の面では各方面にご迷惑をおかけしたようであります。来週の仕事再開まで暫時お待ちください。


<8月3日>(日)

○昨日に引き続いて、高知よもやま話。

○高知駅の南口には、「とさてらす」という観光案内所がある。単に物販や情報照会にとどまらず、いかにもライブな空間になっているのだが、ここに出没しているのが「土佐おもてなし勤皇党」である。ワシが見たのは、長身、イケメン、さわやか系の岡田以蔵クンだけであったが、ほかにもメンバーが居て、全員で6人のユニットになっているらしい。土日にはステージショーも行われるとのこと。AKBみたいな「地元のアイドル」でありますね。

○しかしまあ、こんな風に「歌って踊れる幕末志士アイドル」が出てきてしまうというのも、いかにも土佐人らしいノリの良さであります。地域振興のためのPRというと、「ご当地戦隊モノ」とか「ゆるキャラ」とかいろいろありますが、どうも「地元のために無理してやってる感」が否めなかったりします。その点、この「もて勤」グループはとっても自然で、当人たちが楽しそうにやっている点がいい感じです。

○それから、寺田寅彦記念館のことも印象に残っています。高知城のすぐ近くに、寺田寅彦が幼年期を過ごした武家屋敷がまんま残っていて、そこが記念館になっているのですが、管理者の方は早朝にもかかわらず、しかも入場料無料にもかかわらず、長い時間、丁寧にお相手してくれました。どう考えても、仕事でやっているという感じではない。「これも、あれも見てってくださいね」と熱心に言ってもらいました。

○高知市内を歩いていて感じたのは、自転車と喫茶店が多い街ということでした。市電は割とすいていましたね。1回200円の運賃は「ちょっと高い」という感覚なのかもしれません。喫茶店はたくさんあって、それも「ブラームス」みたいにベタな名前が目立ちます。要するに昭和の香りが残る喫茶店です。しかもモーニングセットの種類が豊富。宿を朝食付きにしたのは失敗だったかな、と思うほどのバリエーションでした。逆にスタバは見かけません。少し前の名古屋市みたいですね。

○旧所名跡を訪ねるというのもいいのですが、高知の良さは何より人の好さでありますね。台風の影響が気になりますが、どうか来週の「よさこい」に影響が出ませんように。


<8月4日>(月)

○あいかわらず四国は雨が続いているようで、高知の様子が気になります。それにしても、韓国に行ったはずの台風12号のせいで、四国が被害を受けるとはいかなることぞ。どうも釈然としません。

○さて、ワシが夏休みで心ここに非ずと言う間に、ロシアに対しては追加制裁策が出て、中国では最後の巨魁・周永康が取り調べを受け、NYでは株価が下げていた。3日居ぬ間の何とやら、である。

○ロシアについては、こんなページを発見しました。ロシア版の世論調査サイトであります。「プーチン人気」はウクライナ問題をきっかけに高騰しているが、「国の方向性」はここへ来て下げ始めている。正常な感覚だと思います。なんだかんだ言って、ロシアが全世界を相手に戦えるわけないじゃないですか。ロシアの銀行が西側からファイナンス出来なくなるわけですから、国内はカネ詰まりになって景気はますます悪化しますぞ。どうします?中国からカネ借りる?

○周永康については、「これでもか!」というくらいの罪状が出ている。腐敗とか職権乱用とかはまだ可愛い方で、薄煕来と組んでクーデターを企てたとか、前の奥さんを事故死させて女子アナと結婚したとか。さらに軍事委員会副主席で先に拘束された徐才厚とは、3人とも遼寧を結ぶ地縁があったとか、軍所属の美人歌手を共通の愛人にしていたとか、こりゃもう面白過ぎです。

○これで習近平は権力基盤を強化したのかもしれませんが、毛沢東やケ小平の時代とは違って、今じゃ最高権力者といえども毎朝毎晩、ネット世論の動向にビクビクしなきゃいけない。そこで「法の支配」と言い出したわけでしょうが、あんまりいい手ではないような気がするな。法家の商鞅が最後にどんなことになったか、知らないわけじゃないでしょうに。

○最後にアメリカの株価については、まだまだ崩れないような気がしてます。NFPはフェアウェイど真ん中みたいな数値だったし、ハイマン師匠はあいかわらず強気だし、イエレン議長は頑固にハト派だし。ということで、簡単に休みを取り戻したつもりになっていいのかな?


<8月5日>(火)

○どうにもこうにも、関心のもてないニュースばかりが並んでいる。

●16歳の少女が16歳の少女を殺した話。

●理研の何とかさんが自殺した話。

○誰も当事者じゃないんだから、今さら何を言ってもしょうがないでしょ。誰だって過ちはあるし、気弱になる時もある。「社会が悪い」とか「メディアが悪い」って、そりゃ昔からずっとそうでしょ。

●朝日新聞が従軍慰安婦に関する過去の取材の誤りを認めた話。

○神戸の鈴木商店焼き討ち事件の頃から、「強いものを叩くときには、証拠は不完全でも構わない」と思っていたらしい新聞なので(城山三郎『鼠』)、まあそういうこともあろうかと。

●妖怪ウォッチが超人気で品薄。鞘取りする人もいて、子どもたちがかわいそう。

○たまごっちの頃から繰り返されてきたこと。下手に増産を急いで、在庫の山を作られませんように。

○ということで、ちと腹ふくるる思いなれど、このニュースはいいね。

阪神20点!で2連勝、ヤクルト5連勝逃す

○20対11とは、いったいどういう試合かね。スポーツ欄だけはいつも、人間の偉大さを伝えてくれる。


<8月7日>(木)

○全国の新幹線に関する様々な噂話のご紹介。

●来年になると東北新幹線が新函館駅まで届くので、青森市でねぷた祭りを見た人は、終電で函館市に移動して泊まることができる。翌朝はもちろん朝市に行って、帰りは函館飛行場が使えるぞ。

――たちまち青森市内のホテル料金が暴落しそうな予感。

●立川志の輔が演じる『牡丹燈籠』は、円朝の遺作を復刻した3時間近くかかる大ネタで、それはそれはすごいらしい。都内ではチケットが入手困難とか。

――来年から富山市内のてるてる亭で、北陸新幹線の往復切符と一緒に売り出してはどうか。長野と金沢ばっかり強調されていて、このままでは新潟や富山を通ることが気づかれない恐れがあります。

●JR東海という会社は、名古屋本社は名古屋駅の上に、東京本社は品川駅の上にある。つまり東海道新幹線とは、JR東海という会社の長い廊下であると見つけたり。

――東京本社からは真下に新幹線を見下ろせます。鉄オタには堪えられない光景でありましょう。

●九州新幹線の熊本県新玉名駅では、窓から田んぼの中のくまもんが見えるんだそうだ。

――どういう仕掛けでそうなっているのか、ホレ、ここをご覧あれ。

●この夏から山形新幹線では、土日に「足湯付きお座敷列車」が走り始めた。斬新なデザインのE3系です。

――そうでなくとも土日は自由席では座れないとされる山形新幹線、上り列車では「福島ダッシュ」なる珍現象もあると聞くが、足湯なんかしてて大丈夫なのか?

○結論として、新幹線は簡単じゃございません。


<8月8日>(金)

○たまたま誘ってくれる人が居たので、今宵は谷中のとある臨済宗のお寺で人生初の座禅を体験してきました。どんなことでも、「人生初」というのは良いものであります。

○いちおう不肖かんべえは、富山の浄土真宗のお寺の末裔でありますので、正座してお経を聞くのはそんなに苦になりません。たぶん30分くらいなら全然オッケー。が、座禅となると完全にアウェイである。正式な足の組み方もできません。それを20分×2本。おそらく相当に手加減していただいたのではないかと思います。

○敢えて備忘録として書いておくと、@姿勢が大事、A丁寧に呼吸を数える、B視線は1メートルくらい先の床に落とす、C余計なことは一切考えない、という辺りがポイントであるようです。もっとも、同じことを自宅でやってみろ、と言われたらできませんわなあ。お寺という非日常空間だからこそ、緊張が維持できるわけでありまして。

○それでも終わってみれば、「まあ、こんなもんかな」という感じでありました。おそらく念仏宗が「集団」でやるところを、禅宗では「個」で立ち向かうというあたりの違いかなと。後で住職さんに聞きましたら、「山の頂点に到達してしまえば、どっちの側から登っても同じこと」との説明でありました。

○これで故き米長邦雄さんであれば、「香車一枚強くなった」というところかもしれません。そんな風にはとても思えないのだけど、なんにしろ経験しておいて損することはない。貴重な経験値をひとつ稼いだ夜でありました。


<8月10日>(日)

○台風はどうやら日本海側に抜けてくれたようであります。それにしても西日本はすごい雨でしたね。全国でほとんど雨が降らなかったのは、わが千葉県くらいなんじゃないでしょうか(柏では、午後に少しだけ降った)。東京湾大花火も中止になったとのこと。花火は準備が大変ですから、まことにもったいない話でありますが、まあ、お祭りと花火はもともとお天気商売ですから、こういうこともあり、ということです。

○台風が抜けてくれたので、高知ではよさこい祭りが開催されました。1万9000人が参加とのこと。前夜祭は中止になりましたけど、とにかく始まってよかった。考えてみれば、これだけ全国に高知のことが喧伝されたのは、先週と今週の台風二連発のお蔭かもしれません。きっと来年の人出は多いと思いますよ。

○ところで高知では、至る所で「津波」を警戒する掲示を見かけました。昨今はそれだけ「南海トラフ地震」への警戒感が強いということでしょう。でも、台風が来ちゃうんですねえ。「災害は忘れたころに来る」(by寺田寅彦)はまことに至言というべきですが、もうちょっと本音ベースでいうと、「災害は忘れている人のところに来る」のかもしれません。

○たまたま今日は町内会の集会があって、先月行われた夏祭りの反省会でした。今までは「降らない」という鉄壁のジンクスに守られてきたのですが、今年はめずらしいことに宵宮の時に大雨にぶち当たった。まさしく夏祭りの歴史始まって以来の事態だったのですが、終わってみれば「あんときはひどかったねえ」と笑い話になっている。あんまり反省になってない。まあ、とりあえずは大事にならなくて感謝。明日はまた暑くなるらしいですよ。


<8月11日>(月)

○とっても久しぶりに政局について。今日のお題は「石破さんゲーム」。自分が石破幹事長になったとして、次の内閣改造でどういうポジションを目指すのが最適であるかを考えてみましょう。

○最善策は、「無役になること」でしょう。不肖かんべえが軍師であれば、そのように進言します。

○幹事長経験者は、普通なら次は財務大臣か外務大臣、大物のポストが回ってきます。でも、そこで敢えて「私は結構です」と引き下がる。その場合、次のようなメリットがある。(1)身ぎれいに見えるので、幹事長時代の失点(例えば沖縄県知事選挙がややこしいことになった)が消えてくれる。(2)次の総裁選で「ポスト安倍」を目指すことが鮮明になるので、党内の反安倍派が集まってくる。(3)安倍さんが勝手にこけてくれた場合、自動的に次のお鉢が回ってくるかもしれない。(4)とりあえず、ゆっくり手勢を養うことができる。

○逆にデメリットとしては、ポストを離れると同時に党内で孤立してしまうかもしれず、それもちょっと怖い。が、下手なポストにありつくくらいなら、無役の方がカッコいい。前例を求めるならば、2004年に年金問題でスパッと官房長官を辞めてしまい、その後はポストから遠ざかった福田康夫さんのケースがありますね。

○次善策は、意外に聞こえるかもしれませんが、安倍首相から打診されたという「安保担当相」をうけてしまうこと。「それじゃ安倍さんの狙い通りでつまらない」と思うけど、敢えて軍門に下ってしまう。石破さんは安保のスペシャリスト、という定評があるから、「この仕事は私にしかできません」とばかりに、黙々と安保法制の再構築に取り組む。つまり仕事に殉じる姿勢を見せることで、「ああ、やっぱり政策の人なんだ」という評価につながる。

○もちろん、その仕事でしくじったら元も子もないわけで、そこは賭けですね。前例としては、鈴木善幸内閣において、中曽根康弘を閣内にとどめておくために、「行政管理庁長官」というしょぼいポストにつけたところ、その後に行革が大テーマになったという故事があります。狙うはあの路線ですね。

○さらに安保担当相だと軽量級の大臣になってしまうので、「外務か防衛との兼務にしてもらう」というバリエーションもあります。が、これは悪手でしょう。そうでなくても、「大臣待ち」議員が50人くらいもいるというのが今の自民党。汗は自分がかきましょう、ポストは他人に進呈しましょう、というのがカッコいいわけです。また、安倍路線と齟齬が出るかもしれず、ここはむしろ軽量級の仕事に甘んじる方がベターだと思います。

○最後に幹事長留任という選択肢もあり得るところです。これはあんまり良くないでしょう。安倍内閣は典型的な官邸主導型ですから、そうでなくても党の存在感は薄い。それに、今後の福島・沖縄県知事選や来年の統一地方選挙を戦うのは、結構しんどいのではないでしょうか。

○もう一つ考えられるのは、新設の地方創生相をやらせろ、とねじ込む手ですね。「地方に強い石破」を売り込むわけです。もっともこのポストは、競争率が高くなりそうな気がします。

○などと、当方は無責任な立場なので好き勝手が言えますが、ご本人にとっては悩ましいところでありましょう。いやはや、やっぱり人事というのは面白いもので。


<8月12日>(火)

○以下は、とある会社で発生した企業不祥事のケーススタディである。思うところを述べよ。(20点)


A社は30年前に欠陥商品を販売していた。そのことは社内でも薄々感づいてはいたけれども、取り消しができないままに今日に至り、調査の結果、以下の通りを発表した。


「欠陥商品を取り消す」

「当時の技術水準では仕方がなかった」

「他社も同様な商品を販売していた」

「欠陥品よりも大きな問題があり、そのことは社会全体が反省すべきである」

「関係者の処罰は行わない」

「会社として謝罪はしない」


○・・・・どう考えても、企業広報としては下の下でありますなあ。

○ちなみにA社は、A社をもっとも目の敵とする週刊B春や週刊S潮の発売日前日で、来週はお盆で休刊になるという8月5日を狙って上記を発表した。なおかつ、当日はR研の某S氏が自殺をするというハプニングがあり、世間の逆風はかなり減じた模様である。悪運が強いですなあ。

○それでも天網恢恢疎にして漏らさずと申します。おそらくブランドイメージの毀損とか、売上高の減少といった形で相応の報いを受けるものと思われます。そういう事態を避けるために、企業広報とかリスクマネジメントってものがあるんですけどねえ。


<8月13日>(水)

○今朝は注目のQE発表。たまたま発表の2時間前、NHK第一の「ビジネス展望」の出番だったので、「マーケットコンセンサスは▲7%ですが、経験的に言って▲10%でも驚かないし、逆に▲3%でも不思議はない」てな風にお答えしました。そしたら正解は、▲6.8%でありました。こんな風に、4−6のGDPが予想通りになる、というのも逆に珍しい。なるほど、そのせいか株は下がりませんでしたな。

○ただし中身はよろしくないです。1−3月期に派手に伸びた輸入が、ガクッと落ちたおかげで純輸出が増えた、というのが最大のプラス要因。後は個人消費も設備投資も大マイナスでした。在庫投資が増えているのも気になるところ。政府の月例経済報告は7月に上方修正でしたが、8月はどうするんだろう。ちょっと嫌な感じです。

○ここでひとつ、GDPに関する豆知識のご紹介。GDPは普通、前期比で表すわけですが、この場合、「駆け込み需要と反動減」が出たときは、変化率がマイナスで強めになるんです。

○仮に日本経済が0%成長で、GDPが実額ベースで100億円だと仮定しましょう。この場合、変化率は以下のように推移する。


  T U V W
GDP実額 100億円 100億円 100億円 100億円
変化率 0% 0% 0% 0%



○次に第3四半期から消費増税が行われて、需要が20億円分、前期にずれ込んだと仮定しましょう。第3四半期はGDPが80億円に減るが、第4四半期には元通り100億円に戻ると考える。この場合、実額ベースのGDPは下記のようになる。


  T U V W
GDP実額 100億円 120億円 80億円 100億円
変化率 0% +20% ▲33.3% +25%



○この▲33.3%を見て、「すわ、何事ぞ!」と思うかもしれませんが、第4四半期になってみるとちゃんと元のさやに戻っていることになります。需要の先食いをやってしまったときは、プラスよりもマイナスの方が強く出る、というのは覚えておいて損はありません。なお、中国などの国はGDPを前年比で発表しますので、それであれば上記は0%、+20%、▲20%、+0%となって、それほどドラマチックな変化には見えません。

○ちなみに実際の日本経済は、第1四半期が+6.1%(今回の発表以前は+6.7%だった)で、第2四半期が▲6.8%である。つまり消費増税の前と後で「行って来い」になったというわけ。大事なのは第3四半期、すなわち足元の7‐9月期です。そこをどう考えるべきか、というのは現在、某所で執筆中でありますので、また別の機会に。


<8月14日>(木)

○告白いたしますが、明日の夜、こーゆー番組に出演します。うーん、つくづくアウェイな世界だ。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0815/ 


●シリーズ日本新生

戦後69年 いま"ニッポンの平和"を考える

総合2014年8月15日(金)
午後7時30分〜8時43分


8月15日終戦の日、戦争の惨禍を経験した日本が守るべき平和主義とは何か、改めて考える。
軍事力の強化をすすめる中国など、日本を取りまく安全保障環境が激変している。
戦後69年の今年7月、政府は集団的自衛権の行使容認を閣議決定。「積極的平和主義」のもと、日本の安全保障の新たな枠組みの構築をめざしている。
2度と戦争の悲劇を繰り返さないと誓った戦後日本。21世紀に入り、世界の枠組みが大きく変貌する中で、日本の平和をどう守っていくべきなのか。日本が掲げるべき平和主義のあり方を生放送で徹底討論する。


○白状しますが、この手の番組、ワシは視聴者としてまったく見たことがない。ということで、冒険しに参ります。よろしくね。


<8月15日>(金)

○ということで、NHKの討論番組に出演をしてきました。なんだか民放みたいなノリでありましたな。途中、三宅アナが頭を抱えていたように見えたのは、気のせいだったのか・・・・。でも鳥越さんが、なきレーガン大統領のように見えたのは、きっと私の錯覚であるに違いない。それはさておいて、市民参加者の方々の真面目な論議に対し、深く敬意を表したいと思うものであります。

○突然に話を戻して、GDPについて。本日付で、東洋経済オンラインでこんなことを書きました。

●「ヤバい日本経済」、本当はイケてない?

○で、8月13日に書いたような話をしているのですが、念のために実質GDP(季節調整値)が、前期比と前年比でどんなふうになるかというのを計算してみました。

  実質GDP(十億円) 前期比 前期比年率 前年比
2008/ 1- 3. 529,757.2 0.7 2.7 1.3
4- 6. 523,416.2 -1.2 -4.8 0.0
7- 9. 517,919.1 -1.1 -4.2 -0.7
10- 12. 500,913.5 -3.3 -13.1 -4.8
2009/ 1- 3. 480,970.2 -4.0 -15.9 -9.2
4- 6. 489,217.4 1.7 6.9 -6.5
7- 9. 489,464.3 0.1 0.2 -5.5
10- 12. 497,920.0 1.7 6.9 -0.6
2010/ 1- 3. 505,308.9 1.5 5.9 5.1
4- 6. 510,686.6 1.1 4.3 4.4
7- 9. 517,949.8 1.4 5.7 5.8
10- 12. 515,200.9 -0.5 -2.1 3.5
2011/1-3. 506,061.3 -1.8 -7.1 0.1
4-6. 502,573.4 -0.7 -2.8 -1.6
7-9. 515,542.0 2.6 10.3 -0.5
10-12. 516,466.2 0.2 0.7 0.2
2012/1-3. 521,690.8 1.0 4.0 3.1
4-6. 518,823.7 -0.5 -2.2 3.2
7-9. 515,094.1 -0.7 -2.9 -0.1
10-12. 514,694.2 -0.1 -0.3 -0.3
2013/1-3. 521,217.1 1.3 5.1 -0.1
4-6. 525,648.3 0.9 3.4 1.3
7- 9. 527,513.7 0.4 1.4 2.4
10-12. 527,254.4 0.0 -0.2 2.4
2014/1-3. 535,106.6 1.5 6.0 2.7
4-6. 525,801.7 -1.7 -7.0 0.0


○4-6月期のGDPは前年比だと±0%になる、というのが面白いですね。だからといって、この1年が無駄であったわけではもちろんない。つくづく、足元の数値だけを見て大騒ぎしてはなりません。

(ちなみに前期比年率は、前期比を単純に4倍しているだけなので、正確な数値とはなっておりません。ご注意を)


<8月17日>(日)

○この週末は主にボーっとしながら甲子園を見ている。地上波がプロ野球を放送しなくなった今でも、NHKはフルに甲子園を放送してくれる。ありがたいですねえ。

○子どものころから見てきた高校野球は、今では自分の子供の世代がプレイしているのだけれど、やっていることは昔とほぼ同じである。1回戦はときどきひどい試合があるが、2回戦になると格段にレベルが上がる。特にバントやその処理のプレーは見事なものがある。そして応援団のブラスバンドは、今でも「サウスポー」や「狙い撃ち」や「海のトリトン」などという1970年代の定番を演奏してくれている。まあ、最近は「あまちゃん」のテーマが加わったりしているので、ちゃんと進化はしているようである。

○見ているうちに、ふと「星稜対箕島延長18回」のことを思い出す。あれはすごい試合だったなあ。Wikiに詳しい説明が出ている。


この試合は高校野球史上最高の試合とされる。

その理由として、箕島が失点した回の裏(12回、16回)、共に二死無走者という土壇場から本塁打により同点としたことなどが挙げられる。

12回のケースでは、打席に向かう前に監督に対して「ホームランを打っていいですか?」と発言した後に本塁打を放っている事。16回裏2死後に打席に入った打者の場合、一旦は完全に打ち取られた打球を放ってしまい、試合終了かと思われたときに星稜の一塁手がつまずき転倒したため命拾いをした直後に飛び出したものである事。しかも一塁手転倒の原因となった人工芝がこの年から敷設されたものであった(前年までなら星稜の勝利で終わっていたかもしれない)という劇的さ。

さらに引き分け寸前の延長18回にサヨナラゲームで決着がついたこと(この試合以外の延長18回は全て引き分け再試合が適用されている)、さらに星稜も12回表の攻撃でスクイズを失敗した若狭が14回裏の守備で借りを返す隠し球を成功させるなど、数多くの劇的な要素を含んでいた事による。

作詞家で作家の阿久悠はこの試合に感銘を受け、「最高試合」という詩をスポーツ紙に投稿した。同じく作家の山際淳司は、「八月のカクテル光線」という短篇(『スローカーブを、もう一球』に収録)を書き上げている。他にも、『一生分の夏 いつも胸に甲子園があった』(作家・山岡淳一郎の短編「黄金のスコアブック」を収録)、松下茂典(星稜高校出身)『神様が創った試合―山下・星稜VS尾藤・箕島延長18回の真実』など、この試合に関する書籍がある。


○1979年8月16日の試合であった。同じ年のプロ野球では広島と近鉄が優勝し、日本シリーズではいわゆる「江夏の21球」があった。所沢で西武ライオンズが発足し、江川事件により小林繁が巨人から阪神にトレードされた年でもある。まだ、スポーツといえばイコール野球の時代であった。マンガでは『ドカベン』(少年チャンピオン)や『がんばれタブチ君』(漫画アクション)が連載中であった。野球はとっても熱かったのである。

○今では他のスポーツが台頭するとともに、野球の地位は相対的に低下してしまった。それでも高校野球は変わらないねえ。星陵高校は今大会、県大会の決勝戦で8-0で負けていたのを9回裏にひっくり返して勝ち上がった来たそうである。今でも「筋書きのないドラマ」なんですねえ。いろんな試合を見て、大概のことには驚かなくなっているおじさん世代ではあるのですが、ついつい見てしまいます。ありがたいことです。


<8月18日>(月)

○今年の甲子園は西よりも東、南よりも北が強いという変な傾向があるようで、なんと北陸4県が全部、3回戦進出です。すごいね。

○そういえば高校サッカーでは、決勝戦が富山第一(富山)対星稜高校(石川)だった。サッカーが強いとなると、これは野球少年たちも一念発起しなければなりません。あるいは、「あいつらが勝てるんなら、俺たちも勝てるはず」と思う。若い時は、そういうことが意外と効くんですよね。

○確か星稜と福井商業は、過去に準優勝があったはずですが、北陸勢の優勝はまだないと思います。まあ、優勝まではともかく、上位に行ってほしいですね。あいにく、富山商業(富山)と日本文理(新潟)が次でぶつかってしまうので、どちらかが敗退してしまいますけど。

○そもそも富山県代表は、だいたい1回戦で姿を消します。過去最高は、1986年に新湊高校によるベストフォーまで。私が子供の頃は、1958年の魚津高校による「蜃気楼旋風」の話をよく聞かされたものですが、それだってベストエイト止まりだったわけですから、かな〜り弱い県なのです。でも今大会の富山商業は、いいピッチャーを擁しているし、どこまで行けますか。

○さて、7月15日に「きさらぎ会」というところで行った講演録が、今日になって共同通信社のサイトで公開されています。ご紹介まで。


<8月19日>(火)

○今頃になって初めて虎ノ門ヒルズへ。噂のアンダーズ東京(AndAZ)ホテルを覗きましたが、なるほどこりゃすごい。ハイアットの系列だが、グランドやらリージェンシーやらの序列には入らず、プライベート感を重視した作りで、アーチストのような人たちを顧客に想定したホテルなんだそうだ。サービス業というのも、ここまで来ておるのか、と「遊民経済学」の最前線を見る思いである。

○虎ノ門ヒルズ51階に入口があって、部屋はそこから下のフロア数階に広がっている。いわゆるフロントというものはない。チェックインはi-Padを使って、それぞれのお部屋の中でできてしまう。最上階の52階には、パーティースペース(チャペルも含む)やバーなどがある。目下のところ千客万来であるとのこと。

○ふとそこから下界を見下ろすと、環状2号線こと通称マッカーサー道路が足元の虎の門から、新橋さらに築地方面に伸びている。やはりこの道路、上から見ないとピンとこない。虎ノ門と新橋をつなぐということで、「新虎通り」(Shintora)というのだそうだ。東京五輪の頃には、これが会場の幹線道路ということになるのだろう。さて、その頃にはどんな街が出来上がっていることか。表参道みたいになるのだろうか。

○ふと思ったのだが、「ここを東京のシャンゼリゼに」(舛添知事)というのは、いまどき「おフランス」をありがたがるレトロな感覚で、ふと『おそ松くん』のイヤミを思い出してしまう(シェー!)。いっそのこと、ダグラス・マッカーサー将軍の銅像でも建てて、その名を東京に刻むというのはどうだろう。アメリカ人がさぞかし驚くだろうなあ。

○気がつかない間にちょっとずつ変わっていく東京。でも、それは森ビルなり東京都庁なり、いろんな人が計画したうえで変わっているのでありますな。誰が最初にロマンを抱くか、という点に街の発展のカギがある。ロマンのない街づくりをしちゃいけません。


<8月20日>(水)

○ふと気になって、お昼どきの炎天下に虎ノ門ヒルズから汐留まで歩いてみた。ほんの10分ほどでしたな。いい汗かきました。

○しかるに「新虎通り」は変に歩道が広いだけで、さほど目立つ店があるわけではない(せいぜいタミヤの新橋店があるくらい)。しかも歩道には木陰があるわけでもなく、そもそも地面が全部アスファルトというのではいかんだろう。これではシャンゼリゼには程遠い。まずは並木を植えるところから始めねばなりませんな。どうでもいいことですが、「新虎通り」(Shintora)というのは、「慎太郎」のアナグラムになっているではありませんか。そこまで考えていたのか、どうなのか。

○もっとも新虎通りがつまらないのは当たり前である。そもそもこの通りができる前は、関係者の利害が複雑に絡み合い、地権者としては開発も制限されていた。長い長い歳月を経て合意ができて、ようやくめでたく道路が出来て、さて、これからどうしようかという感じなのであろう。

○こんなに面倒な場所の土地を、たまたま保有しているという人たちもいい迷惑かもしれない。手離すのは惜しいが、かといって持っているだけではキャッシュを生まず、固定資産税もかかる。相続対策はもちろん大変だ。その一方で、うまくやれば東京新名所となって、巨万の富を生むはずであって、その期待があるばかりに人生を縛られてしまうかもしれない。

○およそ人生、企業でも土地でも株式でもクルマでも競走馬でも、オーナーになるのは素晴らしいことである。オーナーシップを発揮することで、人生には真剣みが生まれる。その一方で、どんな素晴らしい資産もあの世にまでは持っていけない。だから望んでもいないオーナーになってしまうのはご苦労様である。特に二世に生まれてしまったばかりに、自分の力で得たわけでもない資産を引き継がさせられるのは、相当なプレッシャーというものであろう。

○筆者の古い知り合いは、若くして憧れだったベンツを購入したが、高速を走ったらあっという間に故障してしまった。怒り心頭でベンツ専門店に持っていくと、「オーナー、これは故障しています」、「オーナー、部品の取り寄せに3カ月かかります」、「オーナー、修理の総額にはたぶん5〜60万円かかります」などと矢継ぎ早に言われて、ますます頭に血が上り、その挙句、「オーナーと呼ばれることは、『ポチ』と呼ばれているのとほとんど変わらない」という人生上の貴重な経験を得た由である。

○限りある人生、意図せざるものを保有してしまうことで、貴重な労力と時間を浪費するのは馬鹿らしい。その一方で、「ニュージーランドのワイナリーのオーナーになる」なんてのも、老後の楽しみとしては悪くないかもしれません。自分は何のオーナーになりたいか。これはじっくり考えるべきテーマと言えるでしょう。


<8月21日>(木)

○今宵は恵比寿にて飲み会。午後7時に全員集合、のはずがぐっちーさんが来ない。なんと新幹線で名古屋から戻る途中に、新横浜の手前で止まってしまったとのこと。めずらしいこともあるものだが、しょうがないので勝手に乾杯して先にスタートする。

○ややあって、「新横浜から動いたけど、今度は『山手線内で線路内に人が立ち入り』があったとかで、品川駅手前で停車」との報あり。こりゃなんだろうねと言ってたら、さらにずいぶんたってからぐっちーさん到着。品川駅に着いたけれども、電車が全く動いていないし、タクシーもつかまらなくて・・・という聴くも涙の物語。

○で、その正体がこれでありました。なんという迷惑な・・・。

●山手線 恵比寿駅で裸の男が柵を飛び越え線路を逃走中。運転見合わせ8月21日

○ちなみに同席していた某新聞記者氏によれば、「線路内人立ち入りというのは、痴漢行為容疑者が逃走中の隠語」というのは全くの都市伝説であって、そういうときは正直に「電車内迷惑行為により」とお知らせするのがJRの方針であるとのこと。そうだとしたら、このケースは特大の迷惑行為でありますな。

○ということで、お疲れ様でありましたが、来週木曜日の夜はこういうイベントがございます。

●『ヤバい日本経済』刊行記念 山口正洋さん、山崎元さん、吉崎達彦さん、トークイベント 

丸善 丸の内本店
開催日時:2014年08月28日(木)19:00 〜
丸善・丸の内本店 3F日経セミナールーム
定員100名様
要整理券(電話予約可)

○著者三人が雁首を揃えて、何を話すかは全く未定なるも、まあ、お楽しみいただけるのではないかと。まだ若干お席に余裕はあると聞いておりますので、御用とお急ぎでない方はどうぞお立ち寄りください。


<8月22日>(金)

○今日は田原総一朗さんのBS朝日「激論!クロスファイア」を収録しました。放送は明日の午前10時から。当方はいつも通りの介添え役なので、あんまり話してはおりませんが、ゲストの冨山和彦さんは面白いです。新著の『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)で書かれている話がネタ元です。

○Gの世界(グローバル)とLの世界(ローカル)の違い、というのがテーマです。この気持ち、とてもよくわかります。というのも、地方に出張して講演する際に、「アベノミクスの成長戦略とは」みたいな話をしていると、それは「Gの世界」の話なので、「Lの世界」の住人たる地元の人から見れば、「所詮は他所の世界のこと」になってしまう。ところが、「観光立国とツーリズム戦略」みたいな話になると、急に身近なことになったりする。この辺のズレは、しばしば感じるところであります。

○さらに日本経済にとって、どちらが大事かと言えば、GDPでも雇用でも「G<L」である。人口減少で大変だ、と言っているLの世界こそを、われわれは大切にしなければならない。実際にLの世界の企業再生で汗を流している冨山さんだからこそ、そこの理屈には説得力があります。


<8月25日>(月)

○例年から1週間遅れて、富山に帰省してみて発見したこと。

○その1。富山県立近代美術館が今までに見たことがないような活況を呈している。それというのも、「成田亨 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点」という企画展があるから。ワシのような世代にとっては、どストライクの企画である。ウルトラマンという名作を生み出したのは、昭和ひとけた世代の熱い情念であったことを再認識。お暇な方は、Wikiで「成田亨」を引いてみてくださいまし。

○その2。母校、富山中部高校の新校舎が立派だとかねがね聞いていたので、わざわざ見に行ったところ、ちょうど旧校舎を取り壊しているところであった。あああーっ、見るも無残な姿。ワシが入学した年に、新しくできた校舎だったんだけどねえ。ちなみに新校舎では、早くも補習授業をやっていたようでありました。そういう点は、ワシが通っていたころからまるで変わっていない。

○その3。定番の回転寿司、粋鮨へ。この季節は、がんどと、サンマですねえ。ちなみに北陸では、「こずくら→ふくらぎ→がんど→ぶり」と称しております。6人でお皿48枚で締めて1万5000円。これが首都圏だったら、つくづくドロボー価格ですなあ。


<8月26日>(火)

○以下は細かく話すときりがないネタなので、ごく簡単に述べます。細部は適当にご想像ください。

○石破さん。8月11日にも書いた通り、無役になるのが上策、安保担当相を引き受けるのが中策。どっちでもいいんですけど、幹事長に留任したいそぶりを見せたらいかんでしょう。それでは「物欲しげ」に見えてしまいます。人事の要諦は「恬淡」もしくは「愚直」、そして「スパッと一発で」。本件、時間が長引くほど安倍さん有利に展開するものと思料します。ご用心召されよ。

○代ゼミ。練りに練った大リストラ策というべきか。少子化現象は以前から分かっていたことなので、かなり前から準備をしていたのでしょう。いい場所に土地持ってるし、業態を変えて生き残るのでしょう。こういう点は、Lの世界の強みですね。Gの世界のソニーには、こんな真似はできませんわなあ。

○月例経済報告。ようやく26日になって発表。基調判断は据え置きながら、各論を見ると「住宅建設」が上方修正される一方、「生産」と「企業収益」が下方修正されている。いかにも危ない感じである。まあ、先月上げたばっかりにつき、翌月に下げるってわけにもいきません。

○軍師官兵衛。あいかわらず語気が激しくなると、役者としての底の浅さを露呈してしまう岡田准一君なるも、前々回の荒木村重を許すシーンはカッコよかったなあ。そのうえで、官兵衛はキリシタンになってしまう。たぶんそれに近いことが、現実にあったのではないかと思わせる。この後は、九州・豊前における「官兵衛の汚点」も丁寧に描かれそうです。前回などは、すでにその伏線が張られているもんなあ。ときどき参った、と感じながら見ております。


<8月28日>(木)

○今宵は丸善本店で行われました、『ヤバい日本経済』刊行記念トークイベントに多数のご来場をいただきありがとうございました。お集まりいただいた方々は、皆様、あの本をお買い上げいただいたわけでありまして、深くふかく御礼を申し上げる次第であります。

○オヤジ3人のよもやま談義、みたいな本でありますから、正直なところさほど労力をかけた気がいたしません。それが丸善本店の売上10位(本日分)だそうですので、申し訳ないくらいです。たぶん若い世代の読者からすると、ああいう議論を聞く機会が少なくなっているのだと思います。そりゃあ、そうですよね。昔であれば、夜は先輩社員に付き合うのが当たり前で、2時間呑んでウンチクを聞かされて、そのうち面白いのは15分くらい、というのが常でありました。それも先輩の奢りであればいいですけど、最近はしっかり割り勘だったりしますので、そりゃあ若手社員がついてくるはずもない。

○それでも、オヤジの能書きの中には、ときどきためになる部分もある。飲み会に付き合うのは体力を消耗しますので、書籍という形でお付き合いいただいて、その中から自分のためになる一行を見つけていただければ、1500円プラスの税のお代金は一応元が取れるのではないかと思います。

○本日のトークショーは、「活字にできない話、公共の電波で言えない話」を中心にする放談会でした。結構、シャレにならない話も飛び出した感がありますので、お聞きになった皆様方はくれぐれもお取り扱いにご注意ください。他所でご披露される際には、「こういう話があるらしいよ」と出所をぼかしていただけるとありがたく存じます。では。


<8月29日>(金)

○BSトゥエルビの『岡崎・鈴木のマーケットアナライズ』を収録。放送は明日の午前6時15分からですって。うーん、起きられないな。

○岡崎良介さんも鈴木一之さんもとっても久しぶり。マーケット情報番組も久しぶり。なんと今週は、都内の代々木公園でデング熱が発見されたので、フマキラー株が買われたんだそうです。蚊が媒介するらしい、てなことで。面白いねえ、株式市場って。

○一発ギャグみたいな話をもう一つ。最近の商社の駐在員は「MBA」が多いんだそうだ。といっても、もちろん経営学修士のことではない。これは"Married But Alone"の略で、要するに単身赴任のこと。今じゃ赴任地がニューヨークでも北京でも、家族はなかなかついてきてくれないんですよねえ。

○そこで現地のMBA同士がしょっちゅうつるむことになる。休日の夕方に会ったりすると、互いに「ええっ?もう帰っちゃうの?」などとけん制しあうんだそうだ。ううむ、楽しいんだか、さびしいんだか。さらに、「所帯持ち」であることを忘れて良からぬ遊びに精を出す人のことを、"Married But Available"と呼ぶらしい。ろくなもんじゃないですねえ。

○オヤジらしい話をもうひとつ。酒が入ってご機嫌になってしまい、あ、マズイ、ここはちょっとシャキッとしなきゃいけない、となったときに、CMでやってる「ヘパリーゼ」はとてもよく効きます。コンビニで売っている、というのがありがたい。先日はこの手で危ないところを乗り切りました。ところで、これを教えてくれたのは某外資系の女性なのであった。「オヤジギャル」(←死語)なんですかねえ。


<8月30日>(土)

○インドのモディ首相が訪日しています。今宵は京都の夜を安倍首相とともに過ごされたようです。

○The Economist誌が、「これはインドのルック・イースト政策」と評している("Modi looks east"Aug 28th 2014)。記事の中で、ちょっと驚いた部分を以下の通りメモしておきます。


●モディ首相は安倍首相と気が合い、グジャラート州知事時代から2007年と2012年に会っている。

●SNSでもつながりがあって、安倍さんがフォローしているわずか3人のツィッターの1人がモディ首相である。

●首脳会談では、日印原子力協定が俎上に上がる。でも、インドはNPTに入っていないので、この点は国会で問題になるだろう。

●豪州のアボット首相も合わせて、対中警戒感の強い指導者がアジアに揃いつつある。豪州は対印ウラン輸出を再開するだろう。

●モディは首相就任式の際に、亡命チベット政府の指導者を招待した。さすがにダライラマは呼ばなかったが。

●ベトナムとは合同海軍演習を中国近海で今月実施する。ベトナムの外交官曰く、インドは"All-weather friend"であると。


○インドから見た「イースト」の中には、日本と東南アジアと豪州は入っているものの、中国は入っていない模様ですね。かくしてアジアでは、どんどん反中政権が増えているようであります。


<8月31日>(日)

○今年もちょうど3分の2を過ぎるところです。ふと気になって、最近からいろんな人に聞いているのですが、「今年の流行語って何?」

○昨年は流行語が豊作で、「じぇじぇじぇ」とか「今でしょ」「おもてなし」「倍返し」から「アベノミクス」まで、それはそれはいっぱいあったものです。が、今年はいかがなものか。なーんにも思いつかないのである。唯一の候補は「STAP細胞」だが、どうやら実在しないらしい。それではさすがに「流行語大賞」にはできないではないか。

○ニュースが少ないわけではないのである。今年はホントに変な人が、次から次に登場している。佐村河内さんに小保方さんに野々村さんに・・・・。ああ、そう、野々村県議はあの号泣記者会見ですごいインパクトを残したけれども、あまり意味のあることを言っていないのですね。あそこで何か、人口に膾炙するようなフレーズがあれば、有力候補になっていただろうに・・・・。惜しまれます。っていうか、これって惜しむべきことなのだろうか。

○今年は冬季五輪にW杯もあったというのに、スポーツ選手たちも印象に残るような発言を残していない。せいぜい浅田真央ちゃんの「ハーフ・ハーフ」くらいである。これではあまり励まされませんなあ。ああ、そうだスキージャンプの葛西選手が「レジェンド」と呼ばれていた。願わくば誰しも、ただの「ベテラン」ではなく、「レジェンド」と呼ばれたいものだ。例えばテレビ東京のウィニング競馬では、原良馬さんが毎週のようにズバズバと予想を的中させて「レジェンド」と呼ばれている。

○去年は不作だったお笑い系の中に、今年は未亡人あけみちゃんの「ダメよ〜ダメダメ」がある、というのは、先日、バカなテレビ番組を見ていて学習した。あのコンビ、「日本エレキテル連合」というんだそうですが、どう考えても長持ちしそうにありませんなあ。とりあえず今年の紅白に出せるかどうか、NHK的には迷うところでしょうな。抗議の電話がいっぱいかかってきそうだし。

○さて、今年、流行ったものと言えば、「アナ雪」「妖怪ウオッチ」である。どちらも見てないので、他人の批評を受け売りするしかありません。

○「アナ雪」は、最近のディズニー映画の傾向として「男が役に立たない」。王子様が出てきても全然救いにはならなくて、最後まで女が頑張るしかない、というのが隠れたメッセージなんだそうです。そうですねえ、確かに2008年にはオバマじゃなくてヒラリーを選んでおくべきでしたかねえ、アメリカは。

○「妖怪ウォッチ」は、久々の子供向けアニメのヒット作で、またもテレ東発です。それというのも「ポケモン世代」がとうとう親になり始めている。「親の方が詳しい」のでは、子供がいくらキャラを覚えても面白くない。親が知らないことだからこそ、子どもは真剣になるのです。ということで子供向けアニメシリーズは、クズネッツサイクルみたいに20年ごとに新しいシリーズが登場するという理屈です。

○うーん、このままいくと、「GPIF」とか、「集団的自衛権」とか、その道の人ならば誰でも知っているけれども、普通の健全な人はぜんぜん知らなかったよ、みたいな言葉がずらずらと並ぶだけで終わってしまう。せめて9月3日の内閣改造では、現役政治家による気の利いた一言を期待したいものです。

○ここまで書いて、ようやくひとつ思いついたのが「コピペ」。博士論文から首相の挨拶まで、今年はいろんなところで幅を利かせている。でも、流行語大賞が「コピペ」では、オリジナリティがまったくないじゃないか!ということでこの話は落ちになります。お後がよろしいようでございます。

(→後記:まだあった。「脱法ハーブ」改め「危険ドラッグ」がありましたな)。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki