●かんべえの不規則発言



2004年4月





<4月1〜2日>(木〜金)

○うーむ、昨日のお昼から、半日ほどくたばっておりました。めずらしくお腹に来る風邪でした。次女Tが同じ症状だったので、同じ場所で拾ってきたみたいです。それでもちゃんと今週号は書いたぞ。えへん。でも滞っている仕事はいっぱいあったりして。返事をネグっているメールもたくさんあったような。ということで、今宵は短めに。

○今宵の開幕戦、巨人X阪神を見ました。食後にテレビをつけたらちょうど8回表。阪神打線が、まるで去年と同じような攻撃パターンで大量点。堪えられない勝ち方。岡田監督はこれが緒戦とは思えないほど板についた感じでした。


<4月3日>(土)

○自己宣伝です。今度、参議院議員の林芳正さんのセミナーでパネリストを務めます。概要は下記のとおり。

●第8回 平成デモクラシーセミナー・懇親会

日時:平成16年4月14日(水)
    セミナー:午後5:00〜/懇親会:午後6:15〜/ミニライブ:午後7:45〜

場所:虎ノ門パストラル新館「鳳凰の間」

セミナーテーマ:日本の安全保障

パネリスト:衆議院議員、防衛庁副長官 浜田靖一/参議院議員 林芳正/吉崎達彦

会費:2万円

○ご記憶の方もいるでしょうが、「不規則発言」の2月24日分で、林さんの議論の一端を紹介しております。とっても鋭い議論をしているので、当日が楽しみです。

○手元にご招待チケットが3枚あるので、行ってみたいという人は、住所と氏名を書いてメールでお知らせください。ただし応募者多数の場合は、恐縮ながらかんべえの独断で適当に選ばせていただきますので、その辺はよろしくね。


<4月4日>(日)

○The Economist誌を年間購読すると、"Pocket World in Figures"という小冊子をくれる。これをパラパラと見ていると、なかなかに楽しめる。「へぇ〜」がいっぱいあるので、クイズ番組のネタにはいいかもしれません。

○たとえば、「世界で一番のんべえの国はどこか?」――Alcoholic drinksという項目を見ると、人口一人あたりの酒類売上高で世界第1位はアイルランドである。1335.5ドル。イメージ通りとはいえ、そんなに飲んで大丈夫か。2位は英国で901.8ドルで、この両国は他を圧倒しています。以下、3位フィンランド458.7ドル、4位ノルウェー402.0ドルと北欧勢が並ぶ。日本は世界第20位で173.0ドルである。日本の酒税の高さを考えると、ヨーロッパ人は本当によく酒を飲むのですなあ。ちなみにビール消費量はチェコ(日本は20位)、ワイン消費量はイタリア(日本は21位)がトップになります。

○「本の売上高」を見ると、1位がアメリカで280億ドル、2位が日本で201億ドル、3位がドイツで89億ドル、4位英国43億ドルと続く。これは人口比で考えると、日本は文句なしに世界最大の出版大国ということになる。「新聞の発行部数」でも1位は日本で、人口1000人当たり563部である。(2位はノルウェーで562部、3位スウェーデン471部)。日本人は世界に冠たる活字中毒ということです。

○「犯罪と刑罰」を見ると、イメージとは全然違う結果が出ている。人口10万人あたりの凶悪犯罪の発生件数で、世界第1位は豪州で2位はスウェーデン。南ア(4位)やボツワナ(9位)は違和感なしなのですが。ひょっとすると豪州やスウェーデンでは、「凶悪犯罪」の定義が厳しいのかと思ったら、窃盗事件の件数でも1位スウェーデン、2位ニュージーランド、3位豪州、4位英国、5位オランダなどと並ぶ。もちろんどちらの部でも、日本は上位20位内には入っていない。

○「出生率」の部がまた面白い。例の合成特殊出生率(女性1人あたりの子供の数)で、世界最小は香港の1.0人。日本の1.32人は世界第22位である。目立つところでいうと、ロシア1.14(5位)、イタリア1.23(15位)、ドイツ1.35(24位)、シンガポール1.36(25位)、韓国1.41(28位)、台湾1.60(35位)など。「日本の出生率は低すぎる」とよく言われますが、アジアNIESも揃って少子化現象が起きているのですな。

○出生率が高い方のランキングを見ると、ニジェール8.0、ソマリア7.25、アンゴラ7.2などとすごい数字が並ぶ。ニジェールという国は、15〜19歳の女性1000人当たり233人が子供を有している。以下アフリカ勢がずらずらと並ぶ。逆にティーン層の出産が少ないのは、北朝鮮2人(1位)、韓国3人(2位)、日本4人(3位)、中国5人(5位)と並ぶ。アフリカとアジアはかくも違うのである。

○日本は本当に高齢化が進んだなあ、と感心するデータもある。人口のメディアン(全体のちょうど中間になる部分)を取ると、日本は世界第1位の41.3歳。ちなみにいちばん低いニジェールは15.3歳だ。60歳以上の人口の比率では、日本は23.3歳で世界第3位(1位はイタリアで24.1%)。ここまで来るともう「高齢化」ではなく、そのものずばり「高齢社会」と呼んだ方がよさそうです。

○などなど、ごろ寝しながらしばし時間を忘れました。まあ、統計というのはいくらでも人を騙せるもので、"Figures never lie, while liars always figure."「数字はうそをつかないが、嘘つきはいつも数字を使う」てなことを言ったりもする。その辺を割り切った上で楽しめばよいのかと。


<4月5日>(月)

○このところほとんど政局漫談師と化しているかんべえである。本日は財団法人 統計研究会にて講師を務める。伝統のある研究会に乗り込んでいって、いつもの調子で馬鹿話をする。すると畏れ多くも、座長である篠原三代平先生からご質問を頂戴する。

「共和党の通貨政策は、『なんちゃって強いドル政策』、とあるのはどういう意味ですか?」

○ええ、それはその、ルービン財務長官がやってたようなのを本当の「強いドル政策」であるとすれば、口先だけでは「強いドルは国益」とはいうものの、財政赤字は増やしっぱなし、経常赤字も全然気にかけない、要するに口は動かすけど体を動かすつもりはないという、今のブッシュ政権の通貨政策のことを、私が「なんちゃって強いドル政策」と勝手に呼んでおるわけでして・・・・一部ではとっても好評なんですが・・・・

○しどろもどろの説明をしておりますと、篠原先生はこんな一言。瞬間、眼から鱗が落ちました。

「そうだなあ、1971年のニクソンショックもそうだったし、1985年のプラザ合意もそうだった。昔からドルを大幅に減価するのは共和党政権のときだものなあ」。

○最近、あちこちでする話の中で、比較的関心を持ってもらえる話題のひとつに「FTAブームって、もう終わりましたよね」がある。簡単な理屈で、OutsourcingとOffshoringが悪役になっている今の米国では、貿易自由化は雇用を奪う悪の権化である。これでは来年1月に始まるのがブッシュ第2期政権であれ、ケリー新政権であれ、ドーハラウンドも米州経済圏も政策課題にはなり得ない。むしろNAFTAを見直しましょうか、てな感じになるだろう。

○中国でも全人代でまったく「FTA」という言葉が消えた。もともとFTAは、WTO加盟後の改革推進の武器として、朱鎔基前首相のお声がかりで始まった政策課題だ。それが胡錦濤―温家宝体制のもと、改革開放よりも格差是正が重要だということになったら、FTAという課題が消えるのも当然の理屈である。なんでアセアンに大盤振る舞いせにゃならんのだ、ということになってしまう。

○FTA先進国といえばメキシコである。つい先日、日本とのFTAを締結したので打ち止めで、韓国との交渉にはもう乗らないという。これも当たり前の話で、アメリカ、EU、日本と結んでしまったら、後はもう「お腹一杯」。日本はまだしも、自動車会社がやってきて部品工場を作ってくれるだろうからFTAを結ぶ価値があるが、投資をしてくれなさそうな国と結んだところで意味はないのである。

○ということで、世界はもうFTAに対する関心を失いつつある。ところが今ごろになって、FTAに熱を上げている変な国があるわけです。はい、われらが日本なんですね。不器用というか、のろまな亀というか、こういう「一周遅れのランナー」というのは、この国が昔から得意とするところです。

○それではそれがお馬鹿なことかというと、かならずしもそうではないかもしれない。日本が交渉しているタイやフィリピン、マレーシアにとっては、「今時、FTAの話に乗ってくれる奇特な国」がわが国なわけであって、こんなにありがたい話はない。まあ、FTA交渉、真面目にやればいいと思います。いかにも日本らしいやり方で行けばいい。こういう愚直さを失ったらこの国はダメです。


<4月6日>(火)

○この本は便利です。『教科書・日本の安全保障』(田村重信、杉之尾宜生/芙蓉書房出版)。とりあえず安全保障問題の基本的な枠組みを知りたいというニーズに対し、ほぼ必要にして十分な内容を網羅しています。教科書の名に恥じません。

○たまたま今日、「ブッシュ・ドクトリン」が米国内でどういう位置付けにあるのかを探していたのです。そしたら、この本の中でコンパクトな形で紹介してあった。「ブッシュ・ドクトリン」というのは、2002年9月17日に発表された、「国家安全保障戦略」のことを指す。「テロに対する先制行動」を訴えたということで有名。

○要はこういうことなのですね。とってもクリアになりました。

●大統領→国家安全保障戦略
  ↓
●国防長官→QDR(4年ごとの国家防衛計画見直し)→国防報告
  ↓
●統合参謀本部部長→国家軍事戦略

○米国ではゴールドウォーター・ニコルス法によって、ときの政権は安全保障戦略を発表することになっている。「米国国益から導かれる国家目標体現のための政策文書として、政治・外交、経済および軍事の各分野に関する政策を包括的に示している」とある。この文書から発展して、国防計画や軍事戦略が定まっていく。

○という話の続きは、今週号で読んでいただくことにして、この本のいい点を宣伝しておきます。教科書、と銘打っているだけに、本書は自衛隊の位置付けや法体系に力点がおかれている。その一方で、「第1章 第7節 情報と保全」の中では、「情報とは何か」という定義から始まり、インテリジェンスの歴史、各国の情報機関の比較などが、紹介されている。「第5章 軍事古典としての『孫子』と『戦争論』」も、話し出すと無限に長くなりそうなところ、抑制の効いた文章で的確にまとめてある。まさに教科書。ね、ちょっと読んでみたいでしょ?

○いちおう書評欄を持っているとはいうものの、夕刊フジのは「経済の本」、という枠なもので、本書を取り上げられないのがちょっと残念。


<4月7日>(水)

○イラク情勢がいよいよ抜き差しならなくなってきました。3月31日のファルージャでのアメリカ民間人虐殺が大きな転機だったと思いますが、この点であまり話題になっていないポイントがある。そのことについてちょっと触れてみたい。

○この事件、たとえばニューズウィーク日本版(4月14日号 P18)では、こんな風に表現されている。


事件の当日、ファルージャ市内には米兵がいなかった。犠牲になったのは、警備会社ブラックウォーター・セキュリティー・コンサルティングに雇われた4人の元軍人。彼らがなぜ、とくに反米感情が強いファルージャ市内を通ったのかは不明だ。


○この書き方、ちょっとトボケていると思う。このブラックウォーター・セキュリティー・コンサルティングは、PMC(Private Military Company)と呼ばれる軍隊の下請け会社である。PMCについては、ジャーナリストである畏友、菅原出氏が東京財団のプロジェクトで研究していて、先日来、「ふーん、そんなものがあるのかあ」と感心していたのだけれど、図らずもファルージャの件で浮上してきた。

○PMCは単なる傭兵ではない。現在の国際法は「傭兵」を禁止している。PMCは近代的な企業形態をとり、国内外の政府や官庁、企業に対して軍事関連サービスを提供している。イラクにおいては、米軍の後方支援(基地の設営から兵士向けの郵便配達など)を請け負っているのは、ケロッグ・ブラウン・アンド・ルート社である。イラク人警察官に訓練を施しているのはダイン・コープ社、そして新生イラク軍の訓練を請け負っているのはヴィネル社という。「現在、イラク内で活動する外国人兵士たちの10人に1人が、これら民間企業に所属する契約戦士たち」だという。(出典はここのP4〜5を参照)

○要するに、いま流行りのアウトソーシングである。軍隊もアウトソーシングの時代。「効率性」を重んじるラムズフェルド国防長官が好きそうなアイデアだ。そう考えれば、犠牲になった4人がなぜ米軍のいない場所にいたか、おおよその見当がつく。そこが危険なところだから、彼らが送り込まれたのであろう。兵士に死なれると一大事だが、民間企業の社員が死ぬ分には「戦死」には当たらない。「これで米軍の死者はXXX人になりました」という報道も避けられるという算段だ。

○このPMC問題について、ちゃんと突っ込んだ記事を見つけたので紹介しておきましょう。読売新聞です。偉い、と誉めておこう。


◆民間軍事会社に秘密のベール…ファルージャ襲撃で注目(読売新聞、4月5日)

 イラク中部ファルージャで3月31日に殺害され、遺体を傷つけられた4人の米国人は民間軍事会社で働いていたことが分かった。

 この事件は、米国の占領当局がイラクで最も危険な地域でも民間委託を進めている実情を浮き彫りにした。しかし、要人警備や軍事訓練を請け負うこうした企業の実態はなお秘密のベールに包まれている。

 米メディアの報道によると、4人は食料搬送の車列を警護する任務の途上で襲撃を受けた。全員が米国の軍事会社「ブラックウオーター・セキュリティー・コンサルティング」に雇われた元米兵で、そのうち2人は海軍の最精鋭特殊部隊SEALSの元隊員だった。

 同社は1996年に元SEALS隊員が設立した。米ノースカロライナ州に広大な敷地と施設を持ち、そこで軍や警察の特殊部隊に対ゲリラ戦術などの訓練を施すのが主な業務という。

 同社の名は一般にはほとんど知られておらず、その活動は謎めいている。殺された4人の氏名も公表していない。イラクに何人派遣しているかも不明だ。

 米国務省のウェブサイトは、イラクで活動する警備会社を22社挙げているが、その中にブラックウオーターの名はなかった。

 しかし、複数のメディアは同社が連合国暫定当局(CPA)のブレマー行政官の身辺警護を請け負っていると報じており、イラク統治に深く関与していることが推察される。英タイムズ紙は米国防総省が2002年以降、同社に業務委託料として5700万ドル(約60億円)支払ったと伝えた。

 実態がつかめないのは同社に限ったことではない。現在イラクで占領当局のために働いている民間軍事会社の要員は非戦闘分野も含めると1万人とも2万人ともいわれる。イラク戦争開戦以降、数十人が武装勢力の襲撃などで死亡しているが、正確な数は不明だ。「国防総省が企業を口止めしている」(米CNNテレビ)との指摘もあり、米メディアは批判を強めている。

 しかし、軍事会社の勢いは止まりそうにない。イラクでの武装警護要員の報酬は元SEALS隊員ともなれば日給1000ドル(約10万5000円)にも上り、世界中から求職の問い合わせが殺到しているという。

 また、英BBCテレビは、英国の軍事会社全体の稼ぎが開戦前の5倍にあたる20億ドル(約2100億円)に跳ね上がったと報じた。ファルージャの事件後も、軍事会社の間に撤退の気配は出ていない。


○察するに相当な報道管制が敷かれている模様。しかしPMCの問題を勘案すると、イラク問題については次のような論点が新たに浮上することになると思う。

(1)上述の4人は民間人とはいえ、事実上米軍と一体化して活動していたのであろう。そのように考えると、表面に出てこないPMCの犠牲者がほかにもいるのではないかという疑問が頭をもたげてくる。イラクにおける「米兵の死者」は、本当はいったい何人なのか?

(2)PMCの犠牲者は、たとえばアーリントンセメタリーに埋葬されることはない。恩給が出るわけでもないし、遺族に弔慰金が払われることもないだろう。それこそ「自己責任」である。会社はそれなりに手厚い処遇をするだろう。が、米国政府は彼らに対して何もしなくていいのか?

(3)イラクにおけるPMCの活用は、「なるべく少ない兵力で効率的に勝つ」というラムズフェルド・ドクトリンの反映であろう。要するにカネで命を買っているわけである。これは軍隊の堕落ではないのか?

(4)危険な業務をアウトソーシングするのはいいとして、本当にアメリカ人がやっているのだろうか。実際は外国人の比率が高いのではないか? つまり、オフショアリングをやっているのでは?

(5)後方支援をPMCに任せること自体には、異論は少ないだろう。そうだとしたら、サマーワで給水業務をやるような仕事は、まさにPMCにやらせるべきではないのか?

○断っておきますが、私は別に「米軍はけしからん」と言っているわけではありません。それからもちろん、日本の自衛隊がイラク復興に参加することにも賛成である。(ちなみにラムズフェルド・ドクトリンに対しては昔から懐疑的である。古い読者はご存知でしょうが)。

○PMCは冷戦の終了や紛争・テロの激増、経済のグローバル化と効率性重視、先進国における軍人のリストラなど、さまざまな要因が重なって急成長した「産業」である。彼らに対する社会的ニーズは確実に存在する。いずれ国連のPKOを民間企業が請け負う時代だって来るかもしれない。不謹慎かもしれないが、個人的に興味深く感じているのは、イラクで死んだ4人のアメリカ人が、民間人なのか軍人なのかが分からなくなっていることだ。「軍隊って、何だ?」という問題に対し、ペンタゴンもアメリカのメディアも答えを出せないでいるのではないだろうか。

○間もなくバグダッド陥落から1周年。RMAからPMCまで、軍隊というものが変わりつつあることを痛感します。


<4月8日>(木)

○イラク情勢が悪化すると、急にあっちこっちから声がかかる私は呪われた人間なんでしょうか。明日はNHKラジオ「NHKジャーナル」(午後10時から)と、テレビ東京の「WBS」(午後11時から)用に取材を受ける予定。

○日本人は人質になっちゃうし。明日はコンドリーザ・ライス補佐官の議会証言もあるし。アタマが痛いっす。


<4月9日>(金)

○何ともはや、長い1日でした。昨晩遅くに自宅にかかってきた電話で、今日は午前11時からテレビ東京の「ニュース・マーケット・イレブン」という番組に出ることに。さらに早朝に会社に来た電話で、今夜の「WBS」は生出演にしてくださいという。かくして世にもめずらしい「午前11時と午後11時に同じ局の番組に出る」という現象が確定してしまった。その一方で、昨日依頼されていた「NHKジャーナル」では、今さらライス補佐官の証言などという企画をする状態ではなくなったので、こちらはキャンセルに。(ほっとした)。すべては日本人人質事件のなせる業である。

○といっても、何も語るべきことなどないのである。現時点の材料はアルジャジーラに届けられたというビデオと手紙だけ。これだけの事実関係で、「どうする、どうする」と言っても、所詮は当て推量の範囲を越えられるものではない。「2ちゃんねる」などは、右と左で賑やかにやっていることだろうけれども、結局は限られた情報がぐるぐる回転するだけ。ちなみにビデオの中には、各局が放映を自粛しているようなシーンもあるとかで、一部にいわれている「自作自演説」は的外れであるらしい。

○今日の株式市場はもちろん下げたわけだが、興味深い現象として、今朝は外人買いが2000万株の買い越しであった由。どうやら「日本はダッカ事件を繰り返す様子ではない」という妙な安心感が出たのではないか。とりあえず日本経済に対しては、この事件はニュートラルであろう。事件が契機になって、景気回復が崩れるという道筋は考えにくい。最大のリスクは、日本政府が狼狽してダッチロール状態になることだが、昨晩の小泉政権の対応は至って国際標準的なものであり、「日本売り」を招くような感じではなかった。アメリカ政府はほっとしただろう。

○昔の知人で、現在は専業主婦になっているOさんから、「お昼の番組見たよ」のメールが入ってました。「でも何で吉崎さんが出るの?」と聞かれてしまったが、そういえば自分でもよく分からない。選挙のように生臭い話と、安全保障に関するきな臭い話が好きな企業エコノミスト、という路線は、こうしてみると因果な感じもする。


<4月10〜11日>(土〜日)

○人質事件は急転直下、終息に向かっているようで何よりです。とはいえ、無事に戻ってくるまでは安心できませんけれども。

○一点だけ、気になることを書きます。ちょっとしたギャップを感じています。アルジャジーラが10日伝えた全文は次の通り。

●「サラヤ・アル・ムジャヒディン(戦士旅団)」の声明文 http://www.sankei.co.jp/news/040411/kok051.htm 

○理性的なことを言っているようではあるが、彼らは以下のような蛮行に及んだ犯罪者集団でもある。

●「日本で放映されなかった地獄絵図」 http://www.zakzak.co.jp/top/2004_04/t2004041036.html 

○言ってることと、やってることが違いすぎる。どうもこの犯罪者集団には、連合赤軍の生き残りか何かがアドバイザーについているような気がする。まあ、真相はじょじょに明らかになるでしょう。とりあえず私的には、まったくぶれなかった小泉さんと福田さんを称えたいと思います。

○ところで、今日のスポーツ新聞の一面はきれいに分かれました。「愛ちゃんの最年少五輪出場」を持ってきたのが2紙、「荒れる桜花賞」を持ってきたのが1紙。「巨人のサヨナラ勝ち」が1紙(もちろん報知)、そして「小泉首相が泣き言」が1紙。これは案の定、朝日系列の日刊スポーツ。とにかくこの事件、語る側の価値観を問いかける「踏絵」のような性質がある。

○今日は桜花賞。1年前の桜花賞では、こんな佳作が誕生したのでした。いま読み返してみると何とも懐かしい。

●VIPたちの桜花賞展望 http://tameike.net/jokes/sakura.htm 


<4月12日>(月)

○滅多なことでは鳴らない携帯が、今日は鳴るなる。どんな急ぎの用件かと思いきや、「あの植草一秀さんが・・・・」。会社に戻ると、同じ用件のメールも一杯来ている。「WBSは今ごろ大変だ」とか、「都の性欲、早稲田の終わり」など、同工異曲多数。

○地味な人の多いエコノミスト業界では、植草さんは花形満みたいな存在です。だから最初に聞いたときに、将棋界における「中原誠、突撃事件」を思い出しましたな。格好のワイドショーネタにされてしまいそうです。お気の毒。

○いや、そんなことはいいんです。私はただ、なんで皆さんが、この件を私に教えたがるのかが引っかかっているだけなんです。なかにはニコニコしながら、「吉崎さんも気をつけてくださいよ」なんて人までいるではないか。気をつけるって、どう気をつければいいんでしょう? 別に自分が品行方正な人間だとはいいませんが・・・・(そういえば最初の電話は、よりによって配偶者からであった)。


<4月13日>(火)

○今度はイタリア人が人質に取られて、イタリア軍の撤退を求める動きがあるようです。こんな「新戦法」が成果を上げるとなっては天下の一大事なので、日本政府がびくともしなかったのは正解だったといえるでしょう。それでも、日本国民が一丸となって政府を支持しているわけではなく、「あと一押し」で思い通りになりそうだと彼らの目に映っているとしたら、まことに残念なことだと思います。

○その一方、事件発生からこれだけ日にちがたつと、当初、マスコミを覆っていた強迫観念が薄れてきたように見える。13日付の朝刊では、読売新聞の社説が厳しい指摘をしている。「人質の家族の言動にも、いささか疑問がある」。さらに、「三人は事件に巻き込まれたのではなく、自ら危険な地域に飛び込み、今回の事件を招いたのである」とも。そして産経新聞では、今回の事件に「日本人の影」があるとの指摘を行っている。一昨日の当欄でも書いたとおり、「聖戦士旅団」の声明文の文体が過激派チックで、いかにも日本人が関与していそうに見えるのだ。

○イラク戦争を契機に、世界の反戦運動や過激派の間に「ネットワーク」ができたようだ。そうした動きがイラクの反米勢力と結びつき、一連の外国人誘拐事件を引き起こしているのかもしれない。その中には日本人の過激派もアドバイザー的な立場で参加していて、「自衛隊を撤退させるための日本人誘拐事件」を企画した、と考えてみてはどうだろう。声明文の文章のぎこちなさなど、いろんなことの辻褄が合ってくる。

○しかるに当初の予定はどんどん狂い始め、この事件は今や誰にとっても「シナリオなき展開」になってしまったようだ。12カ国の40人が武装勢力の人質になっているというのでは、秩序も何もあったものではない。おそらくは事件のプランナーも、今ごろは茫然自失の体で事態を見守っているのではないだろうか。

○あいにく日本政府としても、ここは「忍の一字」で事態を静観するしかない。こういうときに、細かな情報を求めて右往左往しても、大勢に影響はないし、いたずらに疲弊するだけである。新たな事態が始まるときに備えて、今のうちに休んでおくのも重要な仕事だと思う。現在、訪日中のチェイニー副大統領は、かつてお父さんブッシュ政権の国防長官だったとき、米軍が出動して現地に到着するまでの間、長官室に寝袋を持ち込んで仮眠を取っていたという。いよいよ決戦というときに、少しでも冴えた頭で事態に対応できるように、という心がけである。

○小泉首相が大きな動きを見せないのは、賢明なことだと思う。余計なパフォーマンスのために体力を消耗するのは愚の骨頂だ。まして周囲が、「首相は事態解決への熱意がない」などと論評するのは愚かしいことだ。危機的な状況におけるトップの絶望的な孤独、なんてことが想像できないのだろうけれども。


<4月14日>(水)

長島昭久衆議院議員と、谷口智彦日経BP編集委員と3人で昼食。しょっちゅう当欄で登場のお二人だが、実は今日が初対面だったというから驚きである。昨今の情勢について放談会。長島さんが、今日のご自分のHPで人質問題に対する複雑な心境を吐露していますので、ご参考まで。民主党の「人質問題を政局にせず」という対応は非常に立派なもので、日本政治の成熟を表すものだと思う。今週に入ってからの株高も、こういうことと無関係ではないだろう。とはいえ、民主党の内部は複雑かもしれない。

林芳正参議院議員の「平成デモクラシーセミナー」で、安全保障問題をテーマにパネルディスカッション。防衛副長官の浜田靖一氏がご一緒。目前の問題から憲法改正への視野など、主に中長期の話を討議しました。あっという間の1時間でしたな。

○林さんのパーティーは毎年、だいたい出ているのだけど、「セミナー」「懇親会」「ギインズのライブ」という3部構成になっている。最後の部分がちょっと変わっている。なにしろ現職の自民党若手議員によるバンドが、自作の歌を自分で弾いて歌っちゃうのだから。例年はこのライブの部分で失礼しているのだけれど、今年はついつい最後まで聞いてしまった。本当に政治家のイメージも変わったものだと思う。

○閑話休題。一昨日、あのように書いたにもかかわらず、「品川駅のミラーマン」に関する情報が続々と寄せられてくる。まったく知らない相手ではないので、ギャグにしたくはないのだけれど、この作品だけはあんまり受けたから紹介しておこう。

> かんべえ様
>
> このフレーズはいかがでしょうか???
>
> 女子高生のパンツ 3000円
> 覗いた手鏡 300円
> 失った経歴 priceless
> お金で買えない価値がある


<4月15日>(木)

○どうしてこう名作が続くんだ!これでは載せないわけにはいかないじゃないかあっ!


植草逮捕に一言

木村「倫理観がキャピタルフライトを起こしたようだ」
竹中「猥褻行為におけるリスクマネージメントがなっていない」
金子「セイフティーネットを張ってからやらないとダメだとあれほど」
クー「わわわ、わたしはそんなものに興味ありません」
海津「起こるべくして起きた」
武者「ムシャクシャしてやったのでは」
草野「ひとつお聞きしたい、実際のところ中身の様子はいかがでしたか」
財部「いやー彼が本当に間違ったのはね、IT時代に携帯で撮影しなかったことなんですよ」
田原「いやいや僕だってパンツくらい見たいですよ、それをがまんしてるの!どう、うじきさん」
うじき「帰ったらぶん殴ってやりたいですね」
酒鬼薔薇「ぎゃっはっはっは!ひゃーっはっはっ!笑いがとまらな・ぎゃーっはっひー」
小倉「まーでもねー、男性だってさ、髪を整えたり鏡を見たりすることだって、ありません?」
デーブ「いまネバーランドでも問題になってるのはね地域社会がペドフィリアから子供たちをどう守るかなんですよ」
室井「でも、パンツを見ていただけるのは若いうちだけだとおもうの」
前忠「気持ちはわかりますけど
笑い)」
テリー「僕の場合は横目使います」
たけし「まーしょーがないねまったく」
ハマコー「なんで触らない!」
大竹「おっさんたちいいかげんにしろよ」
阿川「わたしの見たい方いらっしゃいます?」
西村「強姦されとっても助けたらんぞ」
有田「魔が差すときにカルトに入りやすいものなんですよ」
久米「ぼく生放送でやってましたからねー」
真理「ひとりよがりですね」
古館「古館伊知郎と書いてこかんいぢろうと申します」
小谷「著名エコノミストの醜態。大人の女性には興味がなかったようです」
塩田「今思えば視線が少し・・」
槇「ガードルですから大丈夫です」

自らの株を暴落させてしまったわけだ

植草は悪くない!
手鏡が悪い!


○やっぱりハマコー先生かな。それにしても、コメンテーターって何のためにあるんでしょうね?


○と、このまま寝てしまおうと思ったところでニュースが流れました。事件発生からちょうどすでに1週間で人質は解放されました。何はともあれ、無事で良かった。以下、とりあえずの印象を記します。

1.「自衛隊は撤退せず」という小泉政権の初動は正しかった。こういった事件が生じたときに、「犯罪者の要求を受け入れない」ことが確認できたことは、「ダッカの亡霊」を断ち切ることであり、日本の安全保障政策の上で大きな一歩。たとえば事件発生の翌9日、外国人投資家が株式市場で2000万株を買い越したのは、「テロ事件に対し、普通の対応をするようになった日本」を評価してのことではないか。

2.日本政府の態度が、1週間にわたってブレなかったことも評価したい。民主党が「政局にしない」としたことも、日本政治の成熟を示している。もっともこちらはブレた政治家(党首も?)も少なくなかったようだが。小泉政権はまたも危機を脱しつつある。「困ったときはハンドルを右に切る」手法は、今回も有効だったといえよう。

3.ぎこちない声明文などを読んでいると、犯人グループの中に日本人が入っていたような形跡がある。そうだとすると、実行犯は現地のイラク反体制派であっても、この事件には最初から、日本の世論を動かすための情報戦という狙いがあったと見るべきだろう。この手口は、後にイタリアに対しても応用されている。残念なことに、こちらでは死者が出た。

4.イラク戦争を契機に、世界の反戦運動や過激派の間に緩やかな連携ができた。そうした国際的なネットワークがイラクの反米勢力と結びつき、一連の外国人誘拐事件を引き起こしているのではないか。その中には日本人の過激派もアドバイザー的な立場で参加していて、計画に加わったと考えれば、いろんなことの辻褄が合ってくる。

5.しかるにファルージャをめぐる米軍の掃討戦の激化に伴い、当初の予定はどんどん狂い始めた。途中からは、誰にとっても「シナリオなき展開」になってしまったようだ。12カ国の40人が武装勢力の人質になったというのでは、秩序も何もあったものではない。これでは外国人はイラクに立ち入らなくなるだろう。このことはイラク復興を困難にする。「外国人無差別誘拐」作戦の副作用は大きいといえよう。

6.マスコミ報道が、人質の家族への評価をめぐってきれいに二分されたのも興味深い。この事件は、語る者の主義主張を明らかにする「踏み絵」的な側面があった。たとえば筆者の場合は、日本政府よりもイラクの犯罪者を信頼するといわんばかりの彼らの発言に、何度も腹を立てた口である。米国社会のような「党派色の強まり」は、日本でも始まりつつあるのかもしれない。

 後は、この事件の真相が明らかになるのを待ちたいと思います。それでは、また。


<4月16日>(金)

○三原淳雄さんからのお誘いで、明日放映予定の日経CNBC「マーケットトーク」の収録へ。三原御大いわく、「昨日の不規則発言も笑っちゃったなあ。槇さんに電話して、読めと言っといたよ」・・・・やめてくれえー!少なくとも、あれはワシが考えたんじゃないぞー。・・・・と、これでしばらく、テレビ東京方面へは足を向けられませぬ。

○今宵のテーマは「見落としないか?日本株強気論」。景気の足取りは確かに強いし、しばらくは続きそうなんだけど、これが80年代のような本格的な自立的回復であるという気はまったくしない。ご関心のある方は、明日の午後9時からの放映予定です。

○三原御大いわく、今の景気には以下のようなリスクがあると。これがなるほどよくできている。括弧内はかんべえのコメントです。

A:America:米国経済 (これはまあ、そんなに心配はいらないでしょう)
B:Bond:債券 (金利の上昇を懸念する向きがある一方、「日本国債10年もの金利1.5%は押し目買い」という世界も健在です)
C:China:中国 (1―3月期はまだ9%台の成長が続いている。ソフトランディングできるのか?)
D:Deflation:デフレ (確かに本当に終わったかどうか。私ならここは"Digital"=デジタル機器を入れてもいいな)
E:Energy:エネルギー価格 (確かに不安はありますが、90年代以降、日本経済は石油価格高騰に強いのも事実です)
F:Foreigner:外人買い (いつ止まるかという心配あり。円高が止まったときは要注意かも)
G:Geopolitical Risk:地政学的リスク (イラクの影響は限定的でしょうが、ほかにも一杯ありますからねえ)

○つまり、AとDとEとGはあんまり気にしなくてもいいけど、BとCとFはリスクなんじゃないかと考える次第。この辺の再検証は一度、やっておく必要がありそうです。


<4月17〜18日>(土〜日)

○いい天気ですが、今週末も原稿書きやら、競馬やら、町内会やら、何やかやと。

○でもって、自宅で長らく「積ん読」状態の本がある。"Rise of the Vulcans --The history of Bush's War Cabinet"(James Mann)という。この本、表紙だけで30秒は笑える。チェイニー、ラムズフェルド、パウエル、ライス、ウォルフォビッツ、アーミテージの6人の似顔絵が描かれていて、なかなかに似ているのだ。6人の若い頃の写真も載っていて、これまた3分以上は笑える。海軍でレスリングをしていたラムズフェルド、女子大生姿のライス、海軍兵学校時代のアーミテージ、ニクソン大統領と握手しているパウエル大尉などの写真は、これらを見るだけで本代くらいは回収できるというものだ。

○本書は、ブッシュの「戦争内閣」を支える上記6人の戦略家たちを描いた本である。アメリカ外交を担ったグループというと、アチソンやケナンのような"Wise Men"や、マクナマラやバンディのような"Best and Brightest"が有名である。現在のブッシュ・チームは、それらに匹敵する有力グループだといっていいだろう。全員が軍に関係が深いことが特色であり、彼らが自分たちのことをローマの軍神である「バルカン」と呼んでいるのはまさにピッタリといえる。こういう強力チームがジョージ・ブッシュと出会い、彼を教育し、現在のブッシュ外交を支えている。

○通説では、「ハト派のパウエル&アーミテージが、タカ派のチェイニー&ラムズフェルド&ウォルフォビッツにおされて孤立している」ということになっている。でもそうではなくて、これらの6人は元から仲良しなんですよ、というのが本書のポイント。彼らは"a long history, a collective memory"を共有している。つまり「仲間」ということだ。たとえばアーミテージは浪人中に、自分が経営するコンサルティング会社でチェイニーの娘を雇用していたという。これ、ちょっとした「へえ〜」でしょ?

○「昔から仲良し」といったところで、偉い人たちというものは立場が変わると、大久保と西郷のように仲違いしてしまうのはよくある話である。だからパウエルとラムズフェルドの路線が対立しても、少しも不思議なことではない。それでも、「バルカン」チームはお互いに気心が知れているという指摘は重要だと思う。「あいつのことは昔から知っている」というだけで、無駄な時間を大幅に短縮できるという経験は誰もが持っているはずである。

○あるとき、共和党のスタッフ連中の酒の席につきあったことがある。話の大部分が「誰それは最近、女に振られた」という類の明るいもので、このムード、まるで体育会系だなあと変に感心した。きっとバルカン・チームにも、似たようなノリがあるんじゃないかと勝手に想像してしまった次第。


<4月19日>(月)

○今週の"The Economist"誌の名物コラム"Lexington"が、"The Vietnam Syndrome"という題でイラク戦争とベトナム戦争の比較論を展開している。この中で、昨日の当欄で書いたジェームズ・マン著「バルカン」が紹介されている。ペンタゴンと副大統領府はタカ派、国務省はハト派という色分けはあるものの、「タカ派もハト派も同じ共和党の夢を共有している。それはアメリカの軍事力をベトナム戦争前に戻すことだ」と。・・・・この文章の最終部分が鋭い。というか、痛い。

●おそらく歴史的類似の最たるものは人材であろう。マン氏は、ブッシュのバルカンたちが、JFKをベトナム戦争に駆り立てた『ベスト・アンド・ブライテスト』たちに似ていると論じている。バルカンたちは、先駆者たちと同様、アメリカの力に限りない楽観を有し、自らの理想に限りない信念を持った。彼らもまた、地上の現実よりも優雅な理論を重視したとの批判に晒される。ドナルド・ラムズフェルドは、ベトナム戦争時の国防長官であるロバート・マクナマラに重なって見える。当面、ベトナムの幻影はバルカンたちを脅かしつづけるだろう。

○全文の要約は、今週号の溜池通信で掲載しましょうね。

○本日、某紙の記者と雑談。「小泉政権はもう3年になるのに、効果的な批評が見当たらない。誰ならできると思いますか?」と聞かれて、はたと悩んでしまった。確かにその通り。小渕さんや森さんを評する場合は、面白い文章がたくさんあった。ところが小泉さんに関して、面白い記事を読んだ記憶がない。小泉さんは誉めるのも、批判するのも難しい。

○なぜだろう。以下はすべて仮説段階なので、皆さまのご意見をいただければ歓迎します。

○仮説その1。小泉さんに関する情報が少ないから。お友だちも少ないし、滅多にホンネを語らないので、何を考えているのか分からない。基本的に薄情な人なので、普通の政治家が持っているような人間味ゆたかなエピソードを描くことができない。

○仮説その2。永田町政治の構造が変わってしまったから。「XX氏がXX氏に会った」などというニュースが意味を持たなくなり、従来の手法が通じなくなっている。にもかかわらず、政治部記者たちは旧態依然の手法で小泉政権を描こうとしている。

○仮説その3。小泉さんはブッシュさんと似て、好き嫌いがはっきりする人だから、批判する人は「党派色の罠」に落ちてしまう。ブッシュを批判するときのクルーグマンのように、叩けば叩くほど自分が小さく見えてしまう。党派色のついた議論は、論じるものを思考停止させてしまうし、いくら積み重ねても不毛である。

○思い余って、「いっそのこと西原理恵子に描かせるのはどうでしょう?」と進言したけれども、まさか本気にはしてないだろうな。あはは。

○ところでお知らせです。かんべえのかつての同僚、Hさんによるページを公開します。「退職のち放浪」という元商社マンの世界放浪記です。Hさんは退職以来、世界各地を貧乏旅行していますが、ときおり寄せてくれるレポートがなかなかにおもしろいので、従来から溜池通信のドメイン内で掲示しておりました。ただし本人は「人に読ませるほどのものじゃない」というので、原則非公開として、ごくわずかな知り合いにだけ教えることにしておりました。このたび、本人に心境の変化があったそうで、公開に踏み切ることになりました。

○世界放浪の旅をしている人は大勢いるでしょう。旅の記録をHPで公開することも、別段めずらしいことではないと思います。とはいえ、H氏からのレポートは最初の頃に比べると文章も格段に上達し、テーマも絞られてきたようです。多くの人の目に触れることで、H氏の放浪記がより鍛えられることを編集者としては祈っております。


<4月21日>(水)

○米国金利が上がるかもしれない、というグリーンスパン議長のご託宣に、市場は大荒れの一日だったようです。ここ数週間、米国経済の強さを示す指標が続いていただけに、利上げが急に現実的なものになってきたということでしょう。ほんの少し前まで、「大統領選挙の年だから、年内一杯は利上げはない」みたいな予想が少なくなかったものね。でも、米国政治オタクの視点から言わせてもらえば、「グリーンスパンはたとえ0.25%であっても、選挙の前に金利を上げて、みずからの中立性を示そうと思うだろう」という方がプロっぽい読み筋だと思う。

○米国で金利が上がる、というのはうらやましいお話であって、こちら日本では景気は強いぞ、強いぞといいつつ、金利が上がると本気で予測している人は少ない。かんべえなどは、「金利が上昇して、なおかつ来年4月のペイオフ全面解禁もクリアしたら、景気が強いことを信じてやっても良い」と思っている。言い換えれば、今の輸出と設備投資主導の景気回復は確かに強いけど、日本経済を過去10年の停滞から再生させ、市場メカニズムを取り戻すほどのものではないと見ている。

○さて、金利上昇について、ポール・クルーグマンがコラムを書いている。この人、最近はブッシュ叩きばかりやっていて、ほとんど政治評論家状態だが、4月20日分で「政治の問題はちょっと休戦」して金利について述べている。(ちなみにIHTでは4月21日分に載ってました)。

○クルーグマン教授、「金利は上がるぞ。僕の計算ではまあ、10年もの国債は7%(現在は4.3%)、モーゲージレートは8.5%(同5.8%)ってところかな」と恐怖の予言をしている。もちろんそうなったら、米国の家計も企業も耐えられない。なぜそこまで金利が上がるかというと、財政赤字がヒドイことになっているからで、と、結局はブッシュ政権たたきになってしまうところが最近のクルーグマン先生である。

○かんべえは1996年頃の日本経済との類推から、当面の米国経済は「高失業と低金利の景気回復」になると見ている。長期金利が7%だなんて、「狼が来る」もいいところだと思う。最近のクルーグマン先生、いささか反ブッシュ感情がほとばしってしまって、ほとんど金子勝先生状態である。こんな風になってしまうと、何を言われても信用する気がなくなってしまう。いちばん極端な例を上げると、小泉政権が憎くて憎くて、雨の日も風の日も「公共事業は悪くない」と言い続けている最近のこの人みたいである。(おや、4月13日で更新が途絶えているのはどうしたことか?)

○レトリック主体のネオコンの議論はもとより不毛だが、この手のリベラル派の議論も「相手方に対する寛容さのなさ」においては大同小異である。こういう党派色の強い文章は、身内を喜ばせることはできるが、違う考え方の人たちを説得したり同意させることはできない。こんな風になってしまうと、右も左もやたらと尖鋭になるばかりで、自分が思考停止していることへの自覚がないから困ったものである。

○かんべえは保守派なので、「今の日本は右傾化が進みすぎた」と言い続けるような人を見るとウンザリするのだが、その一方で、息の根が止まるまで左派を叩かねば止まず、みたいな人も付き合いきれないと思う。端的に言うと、イラクの人質さんたちに自己責任を求めるのは当然だと思うけど、「カネ払え」とまで言うのはどうかと思う。真の保守派というものは、後味が悪くならない程度で引き下がるような節度を持つべきだ。くれぐれも、「党派色のわな」に陥らないようにしたいものです。


<4月22日>(木)

○台湾から出張でらくちんさんが来ているので、お昼に長島昭久氏を(ご多忙のところをちょっと強引に)呼び出す。3人で台湾談義。一連の騒動はほぼ峠を越した模様で、あとは5月20日の総統就任式に向けて粛々と進みそう。国民党は分裂含み、親民党も後がない状態で、早くも焦点は12月の立法院選挙に移っているらしい。民進党側としては、できればこの状態がずっと続いて、連戦代表がそのまま残ってほしい。そうすれば「連戦連敗」してくれるんじゃないか、などと。

○今回の騒動で、李登輝前総統の発言が少ない。というか、目立たない。意図的に前に出ないようにしていて、何か仕掛けを考えているんじゃないかという見方もあるらしい。たとえば、国民党を二つに割るための工作をしているとか。李登輝さんは文句なしのグレートマンだと思うが、あまりに水際立った手腕を見せることが多いので、現地ではトリッキーな政治家だという見方もあるという。確かに、「2・28人間の鎖」などというパフォーマンスは、今から考えるとお見事というほかはない。

○それにしてもお二人とも、あの総統選挙の現場にいたというのが羨ましい。そういえば上海馬券王先生までもが、あのときは台湾にいたのであった。かんべえ不覚なり。

○なぜか夜も民主党の若手議員の会合に潜り込む。4月25日の補欠選挙が近いので、「今日は所沢に行ってきました」「XXさんは今、所沢です」という人が多い。自民党が3勝0敗なら行け行け、2勝1敗ならちょぼちょぼ、1勝2敗なら年金法案はお流れ、だとか。皆さん同世代で、あんまり普通の人ばかりなので、果たして今日会ったのは本当に議員のセンセイだったのかどうか、後で不思議に思えるほどであった。


<4月23日>(金)

○その昔、「日本ニュージーランド経済人会議」でお世話になったSさんのお声がかりで渋谷で集合。お台場の職場に通っていると、東京には新宿や渋谷があるということをつい忘れてしまうのだが、ひえ〜、渋谷って最近はこんな感じなの?と驚く。なんとまあ、若い人たちが大勢集まっているんでしょうね。しかも夜遅くまで。今宵集まったお店は、朝5時までの営業でした。

○世間的には、今日はお給料日で花の金曜日。これはまあ、賑わうのも無理はない。景気はやっぱり良くなっているのでしょう。夜遅くの電車も混んでましたな。


<4月24日>(土)

○北朝鮮の事故は何がなんだかわかりません。当初の報道では天然ガスが爆発、とか言ってたので、「あの国にそんなモンがあるのか。核なら分かるが」と思ってしまいましたな。どうやらダイナマイトだそうですが。

○先日、脱北を手伝っている人から聞いた話ですが、今の北朝鮮を脱出するのはとっても簡単なんだそうです。日本からじかに国際電話をかけて、「XX日にXXへ出ろ」などという指示を送るだけ。それで堂々と脱出できる。軍も警察も今は見て見ぬふり。「国民が減って、食い扶持が減るならその方がいい」という理屈。「先軍政治」とは恐ろしいものですな。

○もっとも、亡命者がやってくると困るのが中国で、「ちゃんと取り締まれ」と文句をつけているらしい。ほとんど末期症状といえましょう。「生かさぬように、殺さぬように」ってことでしょうか。


<4月25日>(日)

○今日は統一衆院補欠選挙の日。結果が出る前に、最近の政治情勢について振り返っておきましょう。

○以下が本日発表の「報道2001」の世論調査結果。

(4月22日調査・4月25日放送/フジテレビ)

【問】あなたは次に行われる衆議院選挙では、どの党の候補者に投票したいですか。
自民党 28.6%(↑)  無所属の会 0.0%(―)
民主党 16.8%(↓)  自由連合 0.2%(↑)
公明党 3.6%(↓)  無所属・その他 0.8%
共産党 2.4%(↑)  棄権する 3.6%
社民党 0.8%(↑)  まだきめていない 43.2%


○民主党支持が久しぶりに2割を割り込んでいる。2週間前には22.4%あったのだから、実に5.6Pダウン。イラク人質事件への対応が原因で、この分が共産党と社民党支持に回ったかと思ったが、よくよく見ると共産党は2.6%→2.4%、社民党は1.0%→0.8%と大差がない。というか、ほとんど誤差の範囲内である。「共産、社民は、イラク人質事件でほとんどメリットを受けていない」というのは発見ですな。

○では、自民党支持が増えたかというと、こちらは2週間前と比べて27.4%→28.6%だから微増といったところ。今年に入ってからの自民党支持は、平均で26.6%であり、最高で30.6%、最低で22.0%という狭いレンジで動いている。現状は「やや上向き」といったところだが、「勝ち組」というほどのこともない。「小泉さんの支持率は上下するが、自民党の支持率は動かない」という経験則は健在である。

○結局、この2週間における最大のウィナーは、「まだきめていない」であった。34.0%→43.2%と実に9.2Pも増加している。察するに「民主党支持」と「まだきめていない」を併せると、だいたいが6割程度で安定している。ここ2週間、すなわちイラク人質事件と年金法案をめぐるやり取りの結果、「民主党支持者が少しだけ無党派層に戻った」ということでしょう。

○さて、その結果が補選にどう反映されるか。無党派層は何だかんだいって、選挙になれば民主党に入れる傾向があるので、上記の変化がかならずしもマイナスであるとは限らない。しかるに目下のところ3箇所とも投票率は低いそうで、これは自民党に有利な条件でしょう。さて、どうなるのかな?


<4月26日>(月)

○北朝鮮の列車爆発事故、あれは何ですかね。やはり金正日を狙ったテロだと考えるのが常識的な線だと思いますが。この点、日本のメディアは皆さん、奥歯にモノが挟まったような報道が多く、隔靴掻痒という感じです。こういうときに役に立つのが以下のサイトです。

●朝鮮日報 http://japanese.chosun.com/ 

●北朝鮮の列車爆発事故 http://japanese.chosun.com/site/data/category/nk_train/nk_train-0.html 

○それにしても、以下のような記事と写真を見ていると、この爆発はいったいなんだろうと不思議でなりません。

●現場写真に疑問 http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/23/20040423000072.html 

●爆発による巨大な穴 http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/26/20040426000010.html  

●廃墟となった龍川駅周辺 http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/25/20040425000025.html 

○そして北朝鮮側は、最初から事件の真相を隠す意図が明白です。下の記事もちょっと驚きです。

●救援要員ら「死傷者見当たらず」 http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/25/20040425000045.html 

○ところで皆さまに業務連絡です。このHP用のメールアドレスは、猛烈なスパムとウイルスメール攻撃にあっております。つい先ほど、空けようとしたらなんと599本!途中でギブアップしました。ネット上でさらしておくと、ろくなことはありませんな。そんなわけで、しばらくはこのアドレスにメールを送っても、読めない公算が大です。かんべえに所用の方は、しばらくは会社の方にお送りください。


<4月27日>(火)

○今日はとっても風が強い日でした。飛行機が飛ばなかったり、傘の骨がひん曲がったり。その一方で、ゴールデンウィークを控えて、テロ対策がさりげなく強化されているという、名状しがたい一日。かんべえは「経済産業省の懇談会」「民主党の研究会」「経済同友会の通常総会」をハシゴして、最後は和喜で飲んだくれるという、なかなか面白い日でした。

○そこで本日、いちばん面白かった話をご紹介しましょう。

問い:いつになったらイラク情勢は安定するのか?

答え:11月2日。その日を過ぎると、一気に平和が訪れる。

証明:

(A)反米勢力といえども人間。明日なき戦いを続けているとは考えにくい。彼らとて理性もあれば目的もあるはずだ。では、現時点における彼らの目的とは何か。それは、「ブッシュ大統領を落選させること」である。イラク情勢を混沌とさせることによって、アメリカ国民の厭戦意識を誘い、「もうブッシュは嫌だ」と思わせれば、彼らにとっての勝利なのである。

(B)仮に11月2日の米大統領選挙において、ケリー候補が勝利したとしよう。その瞬間に、イラクの反米勢力は以下のような理由で凱歌を上げることができる。

(1)ケリーはブッシュよりはマシであろう。
(2)少なくとも、チェイニーだのラムズフェルドだのウォルフォビッツだのといった確信犯の「バルカン」連中は政権から一掃される。
(3)ブッシュに対して一泡吹かせることができて、「お前の父ちゃんデーベーソ」と罵ることができる。
(4)そしてここがいちばん重要なところで、以後の歴代アメリカ大統領に対し、「中東に軍隊を送り込むと碌なことがない」という貴重な教訓を与えることができる。

(C)というわけで、ケリー大統領が選出された瞬間に、一種の「達成感」と「満足感」が生じるので、それから先はテロ攻勢も止むだろう。逆にその後も反米活動を続けると、ケリー政権もブッシュのようになってしまうかもしれないし、いよいよアメリカ国民を本気にさせてしまう恐れがある。本気の軍事攻勢が始まったら、反米勢力はひとたまりもない。ゆえにアメリカをそこまで追い込むことは得策ではない。

(D)それでは、ブッシュが再選された場合はどうなるか。反米勢力がアメリカの政治システムを知悉していると仮定すれば、「およそ民主的な手段でブッシュを引き摺り下ろすことは、向こう4年間は不可能である」ことは自明になる。つまり、その後は大統領暗殺などの非常にハードルの高い手段に訴えないことには、自分たちの意図を達成することはできないというわけ。従い、ブッシュが再選された瞬間に、一種の「絶望感」と「徒労感」が生じるので、やはりそれから先のテロ攻勢は下火になることが予想される。

証明終わり。

○そもそも、なぜ4月に入ってから反米活動が盛り上がってきたかといえば、6月30日の政権移譲期限が近づいてきたからである。では、なぜブッシュ政権が6月30日という期限を切ったかというと、それは7月にはいると民主党の党大会が行われるからである。だからその前に、何が何でもイラク問題に決着をつけておかなければならないのである。

○要するにアメリカ側も、反米勢力の側も、「11月2日の大統領選挙」という日程から逆算して行動している。だからその日を迎えるまでは、ありとあらゆる手段を尽くした真剣勝負が繰り広げられるであろうが、それを過ぎてしまえば、両者ともに力が抜けて、ほっと一安心するような空白が生じるのではないか。ともあれ、イラク情勢が永遠に混乱を続けるということは考えにくいというのが本日の結論です。


<4月28日>(水)

○このHPのアドレスに届いたウイルス&SPAMメールが600本以上。昨晩、「プールの水をお猪口で汲み出す」ような情けない思いをしながら、2時間弱をかけて全部を削除しました。腹が立ったので、フロントページなどの目立つ場所に書いてあったアドレスを全部消しました。これで少しはマシになっただろう、と思って今宵メールを開けてみたところ、またまた49本あるではないか。うーむ。

○ちなみに消した600本以上のメールのうち、ちゃんとした用件があったものが1本だけありました。Shinobyさんから、HPをリンクしましたよという礼儀正しい内容でした。でもShinobyさん、そんな他人行儀なことはしなくても・・・・

○ところで読者の皆さまにお願いです。最近のどこかの新聞に、「円高論者の吉崎氏も、最近の為替介入は支持している」といった記事が出ていたらしく、何人かの方からお聞きしたのですが、そこは新聞を読まない人間の悲しさ、現物を見たことがありません。何日のどの新聞(日経ではないらしい)のどういうページなのか、ご存知の方がいらっしゃったらお知らせいただけませんでしょうか。その場合のメールアドレスは、@tameike.netのアタマにkanとつけてくださいませ。


<4月29日>(木)

○一夜明けたら、昨日の疑問にちゃんと答えてくれるメールが来ていました。読者のSさんに深謝。その一方で、夜と朝の間でウイルス&SPAMも19本。頭が痛い・・・・。

○該当ページは以下のとおりだったようです。経済論壇で引用されるとは、ワシも偉くなったものよのう。

産経新聞 平成 16年 (2004) 4月25日[日] 東京版朝刊読書欄(12ページ)
◆【論壇時評】5月号 論説副委員長・岩崎慶市 死角ないか中国分業論

(前略)

 自らを円高論者と称し、大量のドル買いに批判的な吉崎達彦(双日総合研究所副所長)の「為替介入八〇兆円、日米通貨政策の出口はどこだ」(中央公論)も、「今回だけは別かもしれない」とする。今度こそ景気を安定軌道に乗せなければならないからだ。

 政府・日銀の大量介入には、多額の含み損覚悟の米財政赤字ファイナンスとの批判が強い。その構図は確かだが、道半ばのデフレ脱却と一年後のペイオフ全面解禁などを考えれば、説得力を持つのは吉崎のような現実論だろう。

(後略)

○ところで、今朝のニュースは議員の年金不払い問題一色ですな。議員がケシカランというのは誰でも言えますが、まあ、これが現在の年金制度の偽らざる姿ということでしょう。むしろ、議員でさえ理解できないほど複雑なルールを放置していることの方が問題なんじゃないでしょうか。

○年金制度への不満は、「不公平だ」「心配だ」「よく分からない」の3種類に集約できると思う。うち前2者は簡単には解消できないので、年金改革はまずは「簡素化」から始めるべきじゃないかと思う。ちなみに「(世代間で)不公平だ」という怒りに対しては、「大丈夫、高齢者の金融資産は、かならず相続という形で若い世代にtransferされるから」と答えることができるし、「(制度の持続性が)心配だ」という懸念に対しては、「それでも民間の保険よりは安全性が高いし、利回りもお得だよ」と答えればいい。今の年金制度がご立派とはいえないが、高齢化と低金利下での改革が難しいのは当然なんだから、ちょっと叩かれすぎと思う。

○それでも、「年金改革をすすめる議員たち自身の年金不払いは許せない」という異議申し立ては、100%正当なものといえましょう。例によって、この手のギャグを流行らせてウサを晴らすといたしますか。では、後に続くを信ず。

http://violet.homeip.net/upload/img-box/img20040428203948.jpg 


http://tameike.net/odaiba/nenkinkan.gif


<4月30日>(金)

○米国務省のテロ白書に、初めて北朝鮮の拉致問題が出た、という話を書こうと思っていたが、面倒くさくなってしまったので明日以降に延期。世間は連休だというのに、ワシは宿題とウイルスメールばっかし。ぶつぶつ。とりあえず、明日は仕事はしないでおこう。と、黒くなることの多い最近のかんべえである。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki