●かんべえの不規則発言



2017年4月






<4月2日>(日)

○新年度入りである。サラリーマンはよく「年度末は多忙だ」とか、「4月は行事が多い」ということになるのだが、ワシの場合はあんまりそういうことがない。とりあえず年初から続いた講演会ラッシュも3月半ばで峠を過ぎるので、3月後半から4月前半はむしろ余裕があったりする。こういうときこそ書類を捨てたり、積ん読状態の本を減らしたり、各方面への不義理を思い出したりしなければならない。とはいえ、思い出したけれどもそのまま放置することもあり得るので、油断がならぬのである。

○とりあえずこの週末からはプロ野球が始まった。するとタイガースがサヨナラ負けしたり、大敗したりするので気になるではないか。広島に負け越しである。せっかくオリックスから糸井を取ったりして補強しているのに、こういうところがタイガースだわなあ。

○今週の注目はやはり米中首脳会談ということになる。4月6−7日ということは今週後半ですな。日米首脳会談と同じフロリダ州マー・ア・ラゴだそうだが、ゴルフをしない習近平さんはどうやって時間をつぶすんだろう。安倍さんとトランプさんは5回も一緒にメシをくっているが、2日間でそれを超えるというのもなかなかに難しそう。かの国の「メンツ」というものは、つくづく御しがたいものであります。

○それよりも動向が読みにくいのは北朝鮮情勢。5月9日が韓国大統領選挙なので、アメリカが何か物騒なこと(例:外科手術的攻撃など)を仕掛けるとしたら、それより前でしょう。とはいえ、オバマ大統領が「戦略的忍耐」を続けてきた間に、北朝鮮の態勢はどんどん整ってしまった。今から手を出すと、「本降りに なって出ていく 雨宿り」みたいなことになる。

○今週は7日の米雇用統計も注目点。NFPでいい数字が出れば、6月利上げ説が濃厚になってくる。でも、4月15日の米財務省為替報告書も気になるところ。流れとしてはドル高だと思うけどね。


<4月3日>(月)

○今まではお迎えは午前4時20分だったのですが、今日の「モーサテ」は午前4時に自宅を出発。それというのも、打ち合わせの時間が必要だから。

○なにしろこれまでは5:45〜6:40amの1時間弱の番組だったのですが、それが5:45〜7:05amに伸びることになった。ほぼ番組2つ分と言ってもいい。以前であれば、午前6時半になったら「どれ、今日もそろそろ締めか」とCM中に「今日の経済視点」を書いたりしていたのですが、今回は「何とまだ30分以上ある!」。これはもう大変であります。

○コーナーの数も増えてしまったので、「えーっと、次のコメントはいったい何だったっけ?」と分からなくなってしまう。まあ、キャスターの佐々木さんは覚えているから大丈夫だろう、とタカをくくっておるのですが、これが月曜から金曜まで毎日続くのですから、いくら人数が増えたからと言って、レギュラー陣は大変ですぞ。

○ゲストも2人に増えました。初日の今日は、マーケット関係者が広木さん(マネックス証券)、エコノミストが当方、という分担。察するに両方とも、当番組における「安全パイ」と見なされているのではないかと。この組み合わせも、考え始めると切りがないところで、今後、どんなペアが誕生するか、興味深いです。

○ということで、明日以降も新しい陣容での「モーサテ」が続きます。朝の視聴習慣が変わるかもしれませんな。それはともかく、朝が早いと今日はつくづく1日が長いです。


<4月4日>(火)

○外出のついでに日枝神社に立ち寄ってお花見がてらに参拝。まことに綺麗でありましたな。

○ついでにおみくじを引いてみました。運勢は「吉」なんですが、「旅行 利なし 行かぬが吉」とか、「商売 物価上下定まらず」とか、各論部分になるとホントにいいのかどうなのかわからない。なんだか月例経済報告の基調判断みたいであります。

○せっかくなので、おみくじの和歌をメモしておきましょう。


見る人の こころこころに まかせおきて 木末にすめる 月の影かな


○はて、わかったような、わからないような。まあ、これが占いというもの。あんまりクリアカットに言っちゃうと、すぐに「外れた」ってことになるかもしれず、ありがたみも失せてしまう。これはエコノミストも似たようなものかしら。


<4月5日>(水)

○国際情勢について、最近学習したことのメモをいくつか。

○既成政党は現状維持を目指すだけだが、ポピュリスト政党は夢を語る。どちらが魅力的か、よく考えてみよう。特に「忘れられた人々」の立場になって。

○スティーブ・バノンの世界観を知るためには、「バチカン・スピーチ」を読め。イスラム文明への警戒感と、プーチン大統領への賛美を語っている。

○韓国の政治情勢に関する疑問、その1。「チェスンシル容疑者が、ソウル大卒で美人だったなら、パククネ大統領はあそこまでひどい反発を受けただろうか?」。

○韓国の政治情勢に関する疑問、その2。「韓国経済が絶好調だったなら、あそこまでロウソクデモが続いただろうか?」

○G7などでトランプ大統領のシェルパを務めるのはケネス・ジャスター大統領経済補佐官。ゲーリー・コーン率いるNECの一員。「まともな人で良かった」との声も。

○どうも最近は集中力が続かない。いかんねえ。こうやって書いておかないと、どんどん忘れちゃうだよなあ、最近は。


<4月6日>(木)

○スティーブ・バノン首席戦略官が、NSCメンバーから外された。表向きの理由は「仕事が済んだから」ということになっている。こういう話の情報源は、ブライトバードニュースに限ります。いわば「大本営発表」ですからね。

○トランプ政権におけるバノンの位置づけは、今までちょっと過大評価されていたと思います。彼は確かに面白いイデオローグで、既存の政治体制を破壊したいという願望を持っている。ただしワシントン政治に慣れているわけではない。だからオバマケア撤廃法案だって通せない。政治のプロとしては未熟者ということになる。そもそもイデオローグには不遇な最後がよく似合う。まあ、吉田松陰みたいなものですな。

○トランプ大統領との関係も、そんなに深いわけではない。そしてまた、トランプさんという人は、あれだけ長く経営をやってきて、「股肱の臣」みたいな人が見当たらないというめずらしい人である。信用しているのは家族だけですからね。そしてジャレッド・クシュナーとイヴァンカ夫妻など「ニューヨーク人脈」は、トランプ政権をなるべく穏当な方向に持っていきたいと考えている。どっちが有利かは考えるまでもないですよね。

○さらに言えば、このところ「バノン恐るべし」という世論が掻き立てられたことが、トランプさんの眼にどんな風に映っていたかということを考えなければならない。独裁者というものは、得てして有能な部下に嫉妬するものです。まして周囲がその部下を褒め称えたりするときはね。その辺の機微がわからなかったとしたら、バノンは所詮、そこまでの男だったということになります。

○逆に言えば、その辺のメカニズムをよく承知しているのがマイク・ペンス副大統領でありましょう。現政権内部において、ただ一人"You're Fired!"を言われなくて済む絶好のポジションに居る。そのことが、どれだけ危険なことかをよくわきまえている。だから頭を下げて目立たないようにしている。最後に笑うのは、得てしてこういうタイプです。

○ワシントン政治はこういうことの連続です。ビル・クリントン当選の立役者、ジェームズ・カービルは生粋のポピュリストでしたが、クリントン政権が「まっとうな」方向に向かったためにあっという間に放り出されました。ジョージ・W・ブッシュの参謀、カール・ローブは忠誠心を貫いたために最後まで生き残った。幸いなことに彼はイデオローグではなく、オタク的な選挙の職人だったから。バラク・オバマに勝利をもたらしたデイビッド・アクセルロッドは、重用されてNSCメンバーにも取り立てられたんだが、いつしか政権から遠ざかって行った。マスコミが注目するような側近は、だいたい碌な目に合わんのです。

○アウトサイダーがワシントン政治をひっくり返そうという試みは、だいたいが失敗に終わります。そんなのは当たり前のことで、彼らが賢ければ体制に取り込まれてしまうし、賢くなければ体制を変えられない。バノンやピーター・ナヴァロのような「過激派」は、いずれ政権を去るでしょう。その分を「ニューヨーク人脈」が埋めることになるだろう。だからと言って、ニューヨーク人脈がうまく物事を運べるとは限らない。個人的には彼らに期待してますけどね。

○人生には2つか3つの物語しかない。しかしそれらは繰り返されるのだ。初めての時と同じような残酷さで。(映画「愛と悲しみのボレロ」から)


<4月7日>(金)

○トランプ大統領がシリアに対するミサイル攻撃に踏み切りました。今週行われた自国民に対する化学兵器使用が、政策変更の原因であるとのこと。他国に介入するのは「アメリカ・ファースト」ではないし、「理念よりも損得勘定」のトランプ外交らしくないし、シリア国民に同情して人道目的の武力行使というのも、いかにも不思議な感じがします。

○トランプ外交に決定的に欠けているもの、それは「論理性」もしくは「首尾一貫性」でしょう。先週までは「テロとの戦いのためには、プーチンやアサドはお友達」と言っていた。それが今週になったら、「やっぱり許せない」ということになった。まるでフィーリングだけで決断しているように見える。果たしてプーチン大統領の心中はいかに。たぶん「やっぱり信用しなくてよかったなあ〜」くらいじゃないかと思いますが。

○それでは今回の行動にはどんな原理があったのか。考えられる原則その@は「反オバマ」でしょう。2013年夏に化学兵器が使用されたときに、オバマは事前に「レッドラインだ」ど警告を発していたにもかかわらず、対シリア懲罰攻撃の可否を議会に丸投げした。当時もそれはあんまりでしょ、と思ったけれども、そのときの不作為が帳消しになった。すなわち中東諸国に対し、「アメリカという国は、やっぱり怖い」ということを知らしめることになった。

○さらに言えば、マティス国防長官やマクマスター安保担当補佐官が現役軍人(中央軍司令部)であった時代に、「攻撃せず」という決定を下したオバマ大統領を恨んだことは想像に難くない。「大統領!やっちゃってください!」という事務方の説得にトランプ氏が乗った、ということも考えられます。ちょうどNSCからバノンも居なくなった時期でもあるしね。

○考えられる原則そのAは、「ジャクソニアン」でしょう。基本、彼らは海外のことに関心は薄いのだが、軍事行動に対する閾値は低い。そして行動に出るときは、「鶏を割くに牛刀をもってす」という過激さが彼らの真骨頂である。もちろん国連安保理に訴えるとか、化学兵器が使われたという証拠を示すといった手続きは踏まない。たぶんコアなトランプ支持者たちは、この手の単独行動主義を好感するんじゃないかと思います。明日以降の政権支持率が見ものです。

○この場合、「ガツンとやってやったぜ!」というメッセージを国内的に発することが主目的でありますから、本気でアサド政権を倒しに行こうとか、反政府勢力を助けてあげようといった深情けは発揮しないでしょう。だいたい単なる空爆だけなら、クリントン政権もやっているんですよねえ。それさえやらなかったオバマ政権がめずらしかったわけで。

○後はタイミングの問題があります。つまり原則そのBは「究極のご都合主義」でしょう。米中首脳会談の最中にミサイル攻撃に踏み切った行為は、習近平と金正恩の心胆を寒からしめたことでしょう。また、こうやって対ロ関係を悪化させてしまえば、ロシアゲートでうるさく言われることも減るだろう。(追記:この日は最高裁判事承認のために、上院のフィリバスターを過半数で停止するNuclear Optionを初めて実施した日でもあったが、そこから目をそらさせる効果もあった)。つまり一石何鳥にもなる、という計算が働いていたのではないでしょうか。

○ところで日本国内では、「中東でドンパチが始まってしまうと、アメリカは北朝鮮や南シナ海の問題をやってくれなくなる」とご不満な向きがおられるようです。ただしこれはバランス感覚を欠いた議論であって、そもそも北朝鮮の核実験とミサイル発射、中国による南シナ海の埋め立て行為などでは、誰も人が死んでいないのです。それに引き換え、シリアで起きていることは途方もない殺戮です。その上、テロ事件と難民問題がある。東アジアで起きている事態とは、まるで「烈度」が違うのです。

○さて、習近平氏はどんな態度に出るのでしょうか。下手をすると、フロリダでなすすべもなくメンツ丸つぶれ、となってしまう。米中首脳会談2日目はどうなるのか。待て、しばし。


<4月8日>(土)

○習近平さんは、マー・ア・ラゴで食事中に「先ほどシリアを攻撃した」と米大統領から知らされて、「教えてくれてありがとう。その気持ちはよくわかる」と答えたようです。これってどうなんでしょう。中国に帰ってから、非難されたりしないんでしょうか。今の中国は、全てにおいて「秋の党大会」が優先される事情ですから、とにかくここは無難にスルーしたい。元よりあんまりアドリブが効くタイプでもないらしいので、致し方なしといったところでしょうか。

○トランプ大統領はなぜ今回の攻撃を決断したのか。この記事を読むと、化学兵器による残虐な写真に心を動かされて、ということのようです。確かハリソン・フォード主演の『エアフォースワン』という映画で、米大統領を演じるハリソン君が、あまりに残虐なシーンを見てしまって、「アメリカの政策を変更する」と言い出したことがあったけれども、そんなことは映画の中だけだと思ってました。

○ただしコアなトランプ支持者たちから見れば、「俺たちのトランプが、他所の国への人道的支援だなんてとんでもねえ」という思いもあるんじゃないか。「アメリカ・ファースト」原則への裏切りと見られかねない。もっとも、いわゆる「西側世論」は大挙してこの攻撃を称賛するだろう。米議会もごく一部の平和主義者を覗いて賛同するでしょう。アサド大統領はケシカラン!というのは、ある意味でグローバル・スタンダードですし。それこそ反対するのは朝日、毎日、東京新聞あたりの社説くらいではないかと思う。

○とりあえず今回の攻撃によって、「オバマ・ドクトリン」は過去のものになったと思います。超人的に自制心があり過ぎる大統領の決断は、凡人的に自制心が乏しい次期大統領によって否定されました。やっぱり何事も無理をしちゃいかんです。無理をすると、反動が出る。今、われわれが目的しているのはそういう事態なんじゃないかと思われてきました。やっぱりトランプ大統領は、オバマ大統領の陰なんだよな。


<4月10日>(月)

○トランプ政権のシリア空爆によって、いわゆる「地政学リスク」は一気に高まりましたが、特に北東アジアにおいてはそれが痛切に感じられます。米海軍の原子力空母なんて、そこら中にいて不思議はないものですけれども、「カール・ビンソンがシンガポールを出て朝鮮半島に向けて航行中」などと聞くと、こりゃあドンパチ始まるのかな、という気分になってくるものです。

○ただしここは2通りの考え方があるところです。

(1)シリア空爆に手を出してしまった米軍は、当面は中東にかかりきりにならざるを得ず、北朝鮮との二正面作戦は取りにくくなった。

(2)シリア空爆を実施したからこそ、北朝鮮に対する米軍の圧力は効果が増すわけなので、ここは何が起きても不思議ではない。

○普通に考えれば(1)なんですが、日本から見ているとついつい希望的観測が加わって、(2)を期待しちゃいがちですね。が、それはご用心。対北朝鮮の軍事行動は、実戦面でも国際法上でもハードルはかなり高いです。

○とはいえ、北朝鮮の側から手を出してくれれば、話はかなりてっとり早くなる。金正日のような周到な独裁者であれば、そういう軽挙妄動はけっしてしなかっただろうし、米軍側でも「敵は計算できる相手」と見ることができた。今回の金正恩は、そこがあんまり計算できない。で、変な動きをしてくれるかもしれず、その場合はいろいろ手掛かりが出てくる。

○ということで、しばらくは物騒な日々が続くのではないでしょうか。そんなことより、気になるのは米国内の世論調査の動きでありまして、とりあえず本日発表分のラスムッセンでは、小動きということでしたね。やっぱり海外における軍事行動では、コアなトランプ支持者は喜んでくれないんじゃないかなあ。やっぱり「アメリカ・ファースト」じゃないと。それに彼らは、地球儀の上で朝鮮半島がどこにあるか?と聞いても、答えられない人が多いだろうし。


<4月11日>(火)

○「トランプ支持者の実態、アメリカ分断の深層を描いた」ということで評判になった『ヒルビリー・エレジー〜アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の邦訳が出ました(J.D.ヴァンス/光文社)。

○いろいろ言いたいことはあるのですが、とりあえず下記の部分を抜き書きしておきましょう(P300)。


・・・ミドルタウンの住人がオバマを受け入れない理由は、肌の色とは全く関係がない。

私の高校時代の同級生には、アイビー・リーグの大学に進学した者がひとりもいないことを思い出してほしい。オバマはアイビー・リーグのふたつの大学を、優秀な成績で卒業した。聡明で、裕福で、口調はまるで法学の先生のようだ(実際にオバマは大学で合衆国憲法を教えていた)。

私が大人になるまでに尊敬してきた人たちと、オバマのあいだには、共通点が全くない。ニュートラルでなまりのない美しいアクセントは聞き慣れないもので、完璧すぎる学歴は恐怖さえ感じさせる。大都会のシカゴに住み、現代のアメリカにおける能力主義は、自分のためにあるという自信をもとに、立身出世をはたしてきた。もちろんオバマの人生にも、私たちと同じような逆境は存在し、それをみずから乗り越えてきたのだろう。しかしそれは、私たちが彼を知るはるか前の話だ。

オバマ大統領が現れたのは、私が育った地域の住民の多くが、アメリカの能力主義は自分たちのためにあるのではないと思い始めたころだった。自分たちの生活がうまくいっていないことには誰もが気づいていた。死因が伏せられた十代の若者の死亡記事が、連日、新聞に掲載され(要するに薬物の過剰摂取が原因だった)、自分の娘は、無一文の怠け者と無駄に過ごしている。バラク・オバマは、ミドルタウンの住民の心の奥底にある不安を刺激した。オバマはよい父親だが、私たちはちがう。オバマはスーツを着て仕事をするが、私たちが着るのはオーバーオールだ(それも、運よく仕事にありつけたとしての話だ)。

オバマの妻は、子どもたちに与えてはいけない食べものについて、注意を呼びかける。彼女の主張はまちがっていない。正しいと知っているからなおのこと、私たちは彼女を嫌うのだ。


○著者のJ.D.ヴァンスはミドルタウンの絶望的な少年期から抜け出し、海兵隊、イエール大ロースクールを経て弁護士となり、本書がベストセラーになって「ときのひと」になった。今はシリコンバレーで投資会社を経営している。いつの日か、共和党から出馬するんじゃないかなあ。


<4月12日>(水)

○いろんな人から、「もうすぐ北朝鮮でドンパチ始まるんでしょ?アメリカは必ずやりますよね?」といった声を聴く。んなわけないっしょー。そんなことがあるのなら、とっくの昔に在韓アメリカ人の本国退去が始まってますよ。もっとも米軍家族の退去訓練は、7年ぶりに昨年11月にやってるんですけどね。

○本気で心配であったら、こういうページを参照するといいと思いますよ。本日時点ではまだ平和モードです。

○ちなみに日本政府は、昨日時点でこんなことを発表しています。含蓄のある文章ですから、味わって読みましょうね。


韓国:韓国に滞在・渡航される方へのお知らせ〜情報への注意と「たびレジ」・在留届についてのお願い〜

2017年04月11日


【ポイント】

●朝鮮半島情勢に関する情報に注意するとともに,在留届又は「たびレジ」により,連絡先の登録をお願いします。

【本文】

1 現在,韓国については,直ちに邦人の皆様の安全に影響がある状況ではなく,危険情報は出ておりません。他方,北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返していることから,今回改めてお知らせを出させていただきました。朝鮮半島情勢に関する情報には,引き続き注意してください。

2 つきましては,韓国への滞在・渡航を予定している方,また,すでに滞在中の方は,最新の情報に注意してください。

3 また,従来からお願いしているとおり,韓国への滞在が3ヶ月未満の方は外務省海外旅行登録「たびレジ」への登録,また,3ヶ月以上の方は「在留届」の提出により,連絡先を外務省に登録することを改めてお願いいたします。
 「たびレジ」の登録は,以下のサイトから行えます。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/ )
 在留届については,在留届電子届出システム(ORRネット,https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet )の利用をお勧めしますが,郵送又はファックスによる届出も可能ですので,最寄りの在外公館まで送付してください。


○ちなみに今、外務省の海外安全ホームページを見ると、ゴルゴ13が中小企業向けの海外安全アドバイスをしてくれています。現在はシリーズ第3話ですが、第13話まで予定されています。絵柄が大真面目で(ってゆうか、ホンモノだから当たり前なんですけど)、ついつい読まされてしまいます。

○ところでここに出てくる中小企業の部長さん、現役の領事局長さんの名前を使ってますねえ(・・・と、つい楽屋落ちを紹介してしまいました)。


<4月13日>(木)

○過日、先輩のベテラン駐在員と飲んだときに聴いた話。

「いろんなことがあったけれども、今となっては若いときのひどい体験ほど、いい思い出」

○駐在地はアフリカ、欧州、アメリカ、アジアと文字通り全世界にまたがる。肝心なことは夫婦仲であったようだ。

「1人で見た面白い映画の話は1回しかできないが、2人で見たつまらない映画の話は何度でもできる」

○何か大事なものを得たような気がしたので、ここに記してメモ。拳拳服膺すべし。


<4月14日>(金)

○昨日はテレビ朝日「朝まで生テレビ」30周年のパーティーがありました。1987年4月からちょうど30年。番組開始時にはワシはまだ20代で、入社4年目で新婚であった。フジテレビが女子大生を使って「オールナイトフジ」を成功させたので、テレ朝でも深夜に何かやろうという話になった。でも、深夜だから有名タレントは呼べないし、ギャラも安いから「ゲストが終電でやってきて、始発で帰る」ようなものをやろう。それが討論番組を始めるきっかけだったとか。

○番組開始当時から司会を務め、今はスーパーJチャンネルもやっている渡辺キャスターの言によれば、「激論」「徹底討論」「ドーする、○○」といった言葉は、すべて朝生の発明なんだそうだ。そりゃまあ、30年前からやってるわけですものね。しかるに、朝生は何と言っても田原さんの番組だ。御年83歳。「朝生の放送中に、ハッと気がついたら田原が逝っていた、というのが理想の死に方」などと不穏なことをおっしゃる。

○実際に番組初期の常連であった大島渚や野坂昭如は、とっくにあの世に行っている。いわば「猛獣は死に絶えたが、猛獣使いはまだ生きている」状態。そうかと思うと、会場には西部邁さんがいらしていました。お元気そうでした。でも、番組最多出演の舛添さんは見かけませんでした。高野孟さんはいらしてました。

○はて、ワシは今までにこの番組に何回出たんだろう、と一生懸命思い出そうとしたのだが、5回分までは思い出せたけど、その先が出てこない。きちんと調べてみたら、8回出ていた。最初に出たのが2005年2月26日であった。ずいぶん古くなったものである。

○山本一太さんに教えられて初めて知ったのだが、30年間変わらないあの番組のオープニングテーマは、"Positive Force"という名前なんだそうだ。30年使われて飽きられない、というのもすごい。確かにあれを聞くと、気分が戦闘モードになるよなあ。長寿番組の秘訣は、やっぱり田原さんと音楽でしょうか。


<4月15日>(土)

○内閣総理大臣主催、「桜を見る会」のご招待を受けて新宿御苑へ。心がけが悪いものだから寝坊して、到着した時には既に散会モードでありました。まあ、いいのであります。この時期の新宿御苑は65種、1100本の桜が咲き乱れております。こんなものが都心のど真ん中にあって、入場料200円というのは安過ぎです。特に今日みたいに天気のいい日はね。

○本日の安倍首相は上機嫌で、「風雪に耐えて五年の八重桜」と一句読まれたそうです。アッキー夫人もご一緒だったようですな。年に1度のこの行事、1万人前後のお客さんを招くだけあって、「よくぞ総理になりにけり」の感慨が深いことでしょう。安倍首相は5年連続皆勤賞。しかも全部が晴天でありました。

○ちなみにそれ以前はどうだったかというと、野田佳彦首相はその直前に、「弾道ミサイル破壊命令」を出したためにこの催しを急きょ中止にしている。菅直人首相の時は震災で中止。鳩山由紀夫首相のときは悪魔も落涙するような大雨で、「今日来て下さった方は『雨天の友』」との名文句を吐いたのですが、それから日ならずして退陣なさいました。やっぱりお天気が味方するくらいじゃないと、長期政権にはなりませんなあ。

○本日は「午前中に北朝鮮の核実験が行われる」とか、「いよいよ米軍が総攻撃かも」などと変な噂が飛び交った日でもありました。こういうときは変にバタバタすることなく、平常心で過ごすのが正しいのではないかと。ソメイヨシノは都内ではほぼ葉桜ですが、新宿御苑にはいろんな種類の桜がございます。きっと明日も良いお天気ですよ。

○下記は今週の仕事です。溜池通信と同時進行になったので往生しましたがな。ああ、腰が痛い。

●「ホワイトハウスの暗闘」で生き残るのは誰か


<4月17日>(月)

○韓国大統領選挙が今日からスタートです。朝鮮半島情勢が緊張しているこんな時期に、そんな呑気なことやってていいのか、と言いたくなりますが、5月9日の投票日までは3週間もあるんですね。まあ、この間に何が起きても不思議はないでしょう。

○左派系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジュイン)候補(64)を、中道左派の第2野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)候補(55)が僅差で追う情勢なんだそうです。二強対決の詳細はこちらをご参照。事情通に聞いた話では、左派政党である民主党内では、盧武鉉の後継者がムンジュインで、金大中の後継者がアンチョルスなんだそうです。だから全羅南道ではムンジュインは票が取れない、なんて話もあります。やっぱりどこの国でも、政治は人とローカルのつながりなんですなあ。

○それでは保守系はどうしているかというと、パククネさんがあんなことになったので、今は沈黙せざるを得ない。「積弊=旧勢力」などと呼ばれて肩身が狭いんだそうです。われわれから見ると「なんであそこまで叩かれなければならないのか、見当もつかない」というのが正直なところなんですが、かの国の感覚から行くと、「あんな大統領を選んでいたことが恥ずかしくて仕方がない!」という感じなんだそうです。しかも当人が謝らってくれないものだから、彼女を推してきた人たちはますます立つ瀬がない。

○それでも保守派も投票には行くでしょうから、そりゃあムンジュインじゃなくてアンチョルスの方が有利になりますわなあ。彼ならば対北朝鮮制裁だし、THAAD配備も賛成だし。逆にムンジュインが勝った日には、北朝鮮は全力で抱き込みに来るでしょう。これはもう、内外のいろんな思惑が絡んでくる。外国からの影響力やら、フェイクニュースやら、サイバー攻撃やら、いろんなことが起きそうです。

○ということで、韓国では左派候補同士の間で、しっかりとした「分断選挙」が行われることになるのでしょう。昨日のトルコの憲法改正をめぐる国民投票もそうでしたが、「国中が真っ二つに割れる」のが最近の国際標準です。去年のBrexitもトランプ現象も、最後はホントに紙一重の差でしたからね。

○まあ、日本はそういうこととは無縁で良かったなあ、と思います。これって不甲斐ない野党に感謝すべきなんでしょうか。個人的には長島昭久さんに「がんばれ!」と伝えたいところです。


<4月18日>(火)

BSフジ「プライムニュース」をめずらしく最初から最後まで全部見た。なるほど、この番組は深い。本日の日米経済協議、いろんな角度から掘り起こしておりましたね。

○で、明日は不肖かんべえが参戦いたしまする。日米経済対話をさらに深読みする予定。

○ところがここへ、突然のメイ英首相の解散表明が飛び込んできました。Brexit前に国民の信を問うのは、そりゃあいいことだと思うけれども、逆に自信のなさの表明のようにも見受けられる。この議論、とっても楽しみです。


<4月19日>(水)

○本日学習した「メイ首相が解散を決断した理由」について。

○今年3月末に「リスボン条約」によるEU離脱を表明し、「交渉期間2年間」のストップウォッチを押した後になって、貴重な2か月間を選挙のために使うのは普通に考えれば勿体ない。ただしそれに見合う合理性があるのも事実。

○メイ首相としては、当初は「"Soft Brexit"でいいや」と思っていたのだが、EU側は「そんなことを認めてしまったら、他の国に対して示しがつかない。英国に甘い顔はできない」ということになり、心ならずも"Hard Brexit"に向かいつつある。これではEU諸国との共同市場まで失うこととなり、全体の4割を占める対EU貿易で関税が発生するかもしれない。だとしたら、今後の経済状況には腹をくくらなければならない。

○とうことで、気持ちが引き締まったにもかかわらず、野党・労働党の人気がなさ過ぎる。党全体はEU残留派なのに、党首コービンは離脱派。だからこの議論をすると党が割れてしまう(どこかの国にも、そういう野党第一党が居るなあ・・・)。野党としては、「解散は受けて立つぞ(キリッ!)」と言わざるを得ないが、ホンネを言えば「解散なんて止めて・・・」。たぶん選挙になれば議席を減らす。

○与党側としては、ここで議席が増えるならありがたい(現在の議席数は与野党で僅差)。「まだ選挙の洗礼を受けていない」というメイ首相への批判も消えてくれるし、党内のEU残留派を黙らせることもできる。そして総選挙で勝って民意を得た、という事情を背負えば、対EU交渉にも迫力が出るというもの。

○さらにややこしい計算がある。リスボン条約の規定に基づくと、2年後の2019年3月末に交渉期限が来るが、それまでにEU離脱交渉+新しい対EU交渉+それまでの経過措置交渉、を3つまとめて仕上げることは絶望的に不可能であろう。たぶん離脱交渉をまとめるのが関の山。ところが今のままだと、次の選挙は2020年である。つまり非常に経済的にヤバい状況で選挙を迎えることになる公算が高い。

○だったら今ここで選挙をしておけば、次の選挙は2023年ということになる。どっちが有利かは、誰の目にも明らかだよね。今ここで選挙をやっておけば、メイ首相は「任期5年」をゲットすることができる。対EU交渉期間も5年がかりでやれるようになるというわけ。

○ちなみに今、英国民に対して世論調査をすると、(1)離脱に賛成44%、(2)離脱は不本意だが致し方なし25%、(3)残留に賛成21%なんだそうだ。だから本来の離脱か残留かと言う話にすると、44%対46%と僅差になるのだが、実質的に離脱か残留かと問うと、69%対21%で大差で離脱と言うことになる。

○それだけ昨年6月の国民投票の結果は重かったということになる。あれは実はナイジェル・ファラージなどの独立派に騙されていた、という説もあるのだが、あれだけ大々的にBrexitを表明したからには後には引けない。この辺り、"My word is my bond."という英国紳士の伝統が生きていると言うべきか、それとも「痩せ我慢が大好き」な国民性と言うべきか。「止めてくれるなおっかさん、背中のライオンハートが泣いている」てな心境であるとお察し申す。

○ということで、本日、「プライムニュース」でお話を伺った細谷雄一慶応大学教授は、英国政治の先行きに非常に悲観的だったのだけど、ワシ的にはそれ以上にEU統合の未来に悲観的なので、「がんがれ!英国!」と申し上げたい。メイ首相の幸運を祈る。


<4月21日>(金)

○ちょっと仕事が増え過ぎたので、今日はお休み。一日ゴロゴロ。

○これがとっても面白かった。


●藤井聡太四段 炎の七番勝負 対永世棋聖 佐藤康光九段


○14歳の中学生プロ棋士がとにかく強い。あの佐藤九段が作戦負けでした。このところ絶好調だったんですけどねえ。こりゃあ、リアル版「三月のライオン」ですな。

○AIの進歩に戦々恐々の将棋界ですが、新しい才能も誕生している。面白いですなあ。


<4月22日>(土)

○昨年からとっても評判になっている『この世界の片隅に』、映画を見ようと思っていたのだが、なかなか時間が合わずに果たせず、ふと思いついて漫画の原作(上・中・下)を買ってきた。休日の読書には好適でした。

○ご案内の通り、太平洋戦争中の呉市と広島市を舞台としている。とってもフツーな日常が描かれていて、たぶんこの通りだったんだろうな、と感じさせるものがある。これに比べれば、NHKの朝ドラなどで描かれている「あの戦争」の描写が、とっても嘘くさく思えてしまう。良貨の前には、悪貨は輝きを失うものである。

○われわれの日常には、皆が「そういうものだ」と感じている決まりごとがたくさん存在する。そういうことは、いちいち書きとめられることがないので資料として残らない。それとは別に、美化やデフォルメが加わった「次世代に語り伝えたい歴史」が幅を利かせる。日本を肯定したり、批判したりするために、過去を捻じ曲げる手合いも居る。まあ、そういうものは得てして嘘くさく聞こえるし、時間がたつとボロが出てくることが多いよね。敢えて誰が、とは言いませんが。

○この漫画が描かれた時代の「そういうものだ」は、今ではかなり分かりにくくなっているものが含まれている。家族の在り方、結婚の在り方などは、これが同じ国かと思えるほど変わっている。失われて久しい習慣もある。だから、「子どもでも、売られてもそれなりに生きとる」というセリフにドキッととしたりする。そしてその後に続く、「誰でも何かがたらんくらいで、この世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ」というメッセージが重く心に響く。

○かくして時代の変化とともに、「そういうものだ」はどんどん変わってしまうのだが、ここに描かれているのは間違いなく日本の社会である。いいところも、嫌なところも、実はそんなに変わってはいない。だから今読んでも非常によく理解できる。自分の父母など、上の世代から聞かされてきた数々の「戦争の頃の話」が、あらためて違った形で思い起こされる。

○実はつい先日、慶応大学の3〜4年生を相手に1コマだけ講義する機会があった。「こいつらは90年代後半の生まれか」と思うと、つい変なところに力が入り、「1980年代の商社マンは、平均寿命が短かったものだ」みたいな余計な昔話に力が入ってしまった。自分なりにあの時代の「そういうものだ」を伝えたいと思うのだが、これはなかなかに難しい気がしている。昭和は遠くなりにけり。なにせ来年には天皇陛下が退位して、翌年からは新年号だからなあ。

○それにしても、2006年から2009年にかけて「漫画アクション」に連載されたこの漫画が、とうとう映画化されて社会現象にまでなったのは、一種の快挙ではないかと思う。この国の漫画・アニメカルチャーを支えているのは、確かな眼を持つ膨大な数のファンたちでありましょう。だからこそ、描き手も育つわけでして。毎年生み出される膨大な出版物の中から、かかる良貨を見出してくれた先達の方々に感謝申し上げたい。


<4月23日>(日)

○このところ金曜、土曜、日曜と3日も遊びほうけておる。これがいちばん腰痛にはよろしい。針治療なんてアナタ、痛いだけですがな。

○本日は久々に中山競馬場に出動。フローラステークスは大荒れでかすりもしなかったが、マイラーズカップではめでたくイスラボニータの単勝をゲット。そのまま12Rは福島で単勝、京都で3連単、東京で3連複と3連勝で締める。ああ、気分がよろしい。競馬でちゃんと浮いて帰るのは、今年初めてではないだろうか。

○阪神タイガースも巨人相手にちゃんと勝ち越し、ますます上機嫌なのであったが、問題はアベマTVで放送していた藤井聡太四段の炎の七番勝負最終戦、羽生善治三冠戦である。7時の開局から見始めて、とうとう11時の投了局面まで見てしまったが、羽生さん、最後になってようやく見せ場はつくったものの、まことに不本意な一戦と言うべき。あれでは9五桂が泣いている。中学生の藤井四段、強いことはよくわかったが、これで七番勝負を6勝1敗とは勝ち過ぎではあるまいか。「3月のライオン」、いや、「4月のタイガー」と呼んであげよう。

○かつて羽生さんも中学生プロ棋士であった。それが当時の大山康晴15世名人(将棋連盟会長)と闘ったときは、お得意の番外戦術をかけられて苦しんだと聞く。ところが羽生少年は重圧をはねのけて、「6六銀」という妙手を放ち、そのときさすがの大山十五世も首筋が赤くなった、と当時の観戦記は伝えていた。さらにその銀が「7五銀」と進んだところで、大山の肩がガックリ落ちたとも(そんなことを書くのは、きっと河口俊彦八段であったに違いない)

○世代交代というものは、そんな風に力づくで行われるのが正しい姿であろう。ところが今回の七番勝負は、上位陣がまことにあっけなく斬られ役を演じているように見える。最近の大人は妙に物わかりが良いものだから、ついついそんなことになってしまう。でも、新しい世代が駆け上がってくるときに、ベテラン勢がそんなことでいいものだろうか。いくらAIの進化に揺れる将棋界とはいえ、若い者に対してはもっと辛酸をなめさせないと。

○とまあ、こんな風に感じるのも、ワシが年を取ったということかもしれんのだが。お蔭さまで腰痛は少しマシになりました。よっこらしょ。


<4月24日>(月)

○以下は若干のお知らせであります。よろしくね。

●明日は超・生産性会議なるイベントに登場します。実はぐっちーさんの代打ちなんですが、ぐっちーさんが今、アメリカで何をしているのかはよく知りません。実は危険なテロリストと認定されて、国土安全保障省から呼び出しをくらった、というのはここでワシが作った風説ですから、信じちゃダメですよ。「日本の成長にはいま、何が必要ですか?」てなお話をする予定です。

●週末土曜日には、NHKラジオ第一で「池上彰2017年世界を読む」なる番組に登場します。出番は4月29日(土)、17:05PM−18:55PMとなります。この日は「トランプ政権100日」ということになりますので、おそらく世界中で似たような企画をやっていることでしょう。


<4月25日>(火)

○何だか日本中が北朝鮮の動向で大騒ぎしているようですが、当方はずーっと「そんなことないっしょ」モードであります。ジャンケン後出しでない証拠に、先週受けた外為どっとコムの取材にリンクを貼っておきましょう(4月17日)。

○金正恩さんの立場になって考えれば、ごく簡単なことです。皆が注目しているときに、核実験や弾道ミサイルを試して、失敗したら目も当てられない。しかも祖父の誕生日である4月15日にも失敗している。今日のところは黙っているのが吉です。通常兵器の訓練をしたという話もありますが、それならばあり得る。彼らは「ソウルを火の海にする」ことだけは確実にできる。だからこそ、アメリカも手出しができないわけでありまして。

○金一家にとって、いちばん大事なことはみずからの体制の安定です。そのためには、常に国内を緊張状態に置かなければならない。「天下のアメリカさまと対等に戦っている」というポーズが必要なので、コストを度外視してせっせと核兵器や弾道ミサイルを開発している。そのことによって、守りたいのは自分たちの政権の正統性なんです。

○それで経済制裁を受けて、国民が飢えても全然オッケー。だって自分たちの豪勢な暮らしがなくなるわけじゃなし。「核開発を止めれば許してやる」みたいな取引を持ちかけても、彼らはたぶんリビアのカダフィがどんなことになったかをよく覚えている。だから虎の子の兵器は渡さない。

○その核兵器や弾道ミサイルが、だんだん本物っぽくなってきたからややこしい。この点、かの国は端倪すべからざるものがある。あれだけ少ない予算でやっているわけですからね。だからと言って、虎の子の武器を本当に使ってしまったら拙いわけです。仮にもアラスカやハワイに落ちようものなら、確実にボコボコにされてしまうでしょう。ここにパラドックスがある。

○サスペンス映画で音楽が派手に盛り上がっているときは、決定的なことは起きません。むしろ観客が油断しているときに、出し抜けに何かを見せて驚かす。スピルバーグ監督が得意とする手法ですよねえ。


<4月26日>(水)

○そういえば3日前に三遊亭圓歌師匠が亡くなった。まあ、お年ではあったから仕方がないのだけれども、もう二度とライブで聞けないのはしみじみ寂しいことである。ワシはときどき、ぶらりと浅草演芸ホールに入ることがあるので、圓歌師匠の「中沢家の人々」を何度か聞いた。確か昨年の今頃も聞いた。調べてみたら、ちゃんとこの不規則発言にも書いてあった(5月1日分)

○あらためて、ユーチューブで「中沢家」を聞いてみる。この圓歌師匠は、たぶん10年くらい前のものであろう。ネタは全部知っているのに、涙が出るほど笑えてしまう。それくらいすごい芸である。

○高齢化社会を語るときに、この噺はまことに豊富な材料を提供してくれる。「年寄りが佃煮にするほどいる」とか、「遠くから見るとまるで恐山だよ」というフレーズ、怖いけど一度、どこかで使ってみたい。実は拙著『気づいたら・・・』の中でも、「中沢家」を紹介していたのであった(第6章)。こんなことを書いている。


 今の寄席は、お客の大多数が高齢者である。圓歌師匠が年寄りイジメのようなネタを振ると、客席の高齢者が大笑いする。これが何ともいい味を出している。ドナルド・トランプ氏ならばともかく、普通の人なら公共の電波では怖くてとても言えないような言辞が飛び交っている。ありがたいことに寄席は閉ざされた空間であって、ここには本物の言論の自由が存在している。


○最近になって、ジェロントロジーという言葉があることを教わった。要は「老年学」ということで、長寿化、高齢化が進むと社会経済にはどんなことが必要になるかを研究するものだとか。何と慶応大学には、「フィナンシャル・ジェロントロジー研究センター」なるものもできている。つまりその金融版というわけ。今後、非常に重要性を増す研究分野だと思う。

○例えば今は「高齢者の金融資産」というと、オレオレ詐欺からどうやって守るか、遺産相続で揉めないためにどうするか、といった後ろ向きの話が多くなる。が、1700兆円もの金融資産のうち、3分の2は高齢者が保有しているといわれる。そのほとんどが銀行預金になっていることは想像に難くない。これをどうやって日本経済を成長させる投資分野に振り向けるか、といえばたちまち一大テーマができあがる。

○先日、同センター長の駒村康平教授から聞いたところでは、日本人の平均寿命は今後さらに伸びるらしい。それこそ日本中が、「中沢家の人々」になってしまうかもしれない。経済はもちろん、医療福祉介護から年金制度まで、今からやらなきゃいけないことがいっぱいありますぞ。

○とまあ、それはさておいて、「中沢家の人々」はこんな狂歌が下げになっている。


年老いて 万事枯れゆく 昨日きょう むさくるしさに なるまいぞゆめ


○昭和4年生まれの圓歌師匠は、むさくるしいどころかたくさんの思い出を残して惜しまれつつこの世を去った。あいにく歌奴時代の「山のアナアナ〜」には世代的に間に合わなかったけれども、晩年の「中沢家」を何度もリアルで聞けたワシは幸運であった。合掌。


<4月28日>(金)

○毎年、この季節にやって来るはずの自動車保険の証書が届かない。はて、どうしたのだろう。数日待った挙句、意を決して代理店に電話してみる。

「すいません、保険の証書が届かないんですが」

「はい、今年から電子版になりました」

「は?」

「説明のお手紙はご覧になっていませんでしょうか?」

○そんなもん、保険会社から来る手紙なんて、読むわけないでしょうが・・・・と絶句していたら、相手方曰く。

「それではあらためて紙の証書をお送りいたします」

○うんうん、最初からそうしてくれよ。電子版の保険証書なんて気持ち悪いじゃないですか。いや、その方が会社としてはコストは下がるんでしょうけれども。

○続きまして別の話題。いつも使っているiPadが突然、スイッチが入らなくなった。どうにもこうにも動かない。丸3年使っているから、そういうこともあるかなとは思う。しょうがないから、時間を見つけて銀座のアップルショップを訪ねてみた。

「すいません、電源が入らなくなったのですが」

「ご予約はおありでしょうか」

「は?」

「ご予約の方のみ対応しております」

○なんと予約を入れてから出直して来いという。しかもゴールデンウィークは混んでいるなどとぬかしやがる。温厚なかんべえさんもいささかムッとする。目の前には大勢社員が居るというのに、皆知らんぷりをしている。

○ということで、着々と世の中から遅れつつある。こんな風にして、日本経済の生産性は向上しているのであろうか。嫌な渡世だなあ。


<4月29日>(土)

○夕刻、JR原宿駅で降りようとして驚いた。駅の構内が人であふれている。いやもう、渋谷駅よりも混んでいる。何があったんだ。ちょっとそこどいてよ。あたしゃNHK放送センターに行って、5時から「池上彰2017年世界を読む」に出なきゃいけないのに。と、焦っても人があふれていて動かない。なんなんだこれは。

○どうにもよくわからない。@普段から休日の原宿はこんなものだ。知らないお前の方が悪い。A今日はメーデー関連のイベントをやっているから、そうでなくとも人出が多いのだ。ほれ見ろ、機動隊がいっぱい出ているだろう。B今日は「昭和の日」ということで、明治神宮に参拝する人が多いんじゃないのか。Cそもそもゴールデンウィークの都内をなめちゃいかん。・・・結局、原因はよくわからなかったのですが、ワシだって仕事がなかったら、こんなとこへは来ませんがな。

○やっとの思いでNHK放送センターに到着。池上彰さんといえば、近年は「テレビ東京御用達」の印象が強い。特に選挙特番では、政治家に対する鋭い切込みで知られ、「池上無双」などと呼ばれている。また、米大統領選挙の季節には、かならず「モーサテ」でアメリカ取材をするのが吉例となっていて、昨年秋には番組上でご一緒したこともある。最近の池上さんはじょじょにNHKにも復帰しつつあって、ラジオはもちろん、最近は「クロ現」などにも出演されているとのこと。今日も勝手知ったる社内なのですが、スタジオ内の機器を見て、「ええっ、最近はこんなことになっているの?」などと感動しておられました。

○それにしても、番組に出た池上さんが「ジャーナリストの池上彰です」と名乗るのは、側にいて異和感が大ありでした。とはいえ、ほかの肩書も難しい。「元NHKの・・・」と言うのも変だしね。いっそのこと「以前、『週刊こどもニュース』でお父さん役をやっていた池上です」というのはどうだろうか。いや、すいません、ただの妄言です。「イケガミアキラ」と言えば皆が知っている、というのがいちばんの肩書でありましょう。

○ということで、2時間ほどNHK第一放送のスタジオからご一緒いたしました。テーマはもちろん「トランプ政権100日」。当方が、『ヒルビリー・エレジー』の話を持ち出すと、「今お話があった本は、こんな内容でありまして・・・」などとちゃんとフォローしてくださるのがありがたかったです。











編集者敬白



不規則発言のバックナンバー

***2017年5月へ進む

***2017年3月へ戻る

***最新日記へ


溜池通信トップページへ


by Tatsuhiko Yoshizaki