●かんべえの不規則発言



2006年11月






<11月1日>(水)

〇先々週は「豪州会議の次にニュージーランド会議」だったのですが、今週は「中国対話の次に台湾対話」です。ホントに国際会議続きです。こうしてみると、「大陸と島国は違う」ことがよく分かりますね。ニュージーランド人や台湾人は、日本人と気質が近いと思います。豪州人と中国人は大陸的です。もっとも、豪州人は同文同種だからといって、「ニュージーランドを統一する」などとはいいません。そっちの方が当たり前だと思いますけれども。

〇今回の日台次世代対話は、「日台交流に若手を巻き込む」ことを目的としています。政治家で参加をお願いしたのは、林芳正さん、それにれんほうさんです。その一方で、この手の対話はまったく初めて、という人を多く加えています。コーディネーターかんべえとしては、以下のブロガーお三方をお招きしました。

●らくちんさん 「らくちんのつれづれ暮らし」

●さくらさん 「さくらの永田町通信」

●ちだまきさん 「味な日々」

〇これらの方々が、ネット上で「日台次世代対話」をどんな風に書いてくれるか、てなことが実はひそかな楽しみであったりする。

〇今日は早速、いろんな話題が飛び交って面白かったのですが、まとめるのは明日にいたしましょう。とりあえず、開会挨拶ではこんな話をしてみました。

●日本と台湾の共通点

1. 日本と台湾は、ともにアジアにおける島国であります。

2. 政治は複数政党による民主主義体制です。

3. 経済は市場主義を旨としています。

4. 先進国であり、他国に対する援助も行っています。

5. 特にIT分野を得意とする工業国です。

6. 諸外国と比較すると、中小企業の競争力に比較優位があります。

7. 国内の資源に乏しいので、人材だけが頼りであり、教育に熱心です。

8. 社会的には中間層が多く、世界的に見ると失業率や所得格差は小さい方です。

9. 経済の構造は加工貿易を得意としており、ともに貿易立国です。

10. ともにWTOのメンバーであり、自由貿易を標榜しております。

11. しかし内心では、国内の農業を保護したいと思っています。

12. おそらくそれは、食べ物に非常に強いこだわりがありからです。私の限られた経験から言っても、日本人と台湾人の味覚の傾向はかなり近いと思います。

13. 両国が共有している特色ある趣味としては、温泉と野球があります。

14. 活字が大好きな出版大国であり、海外の有名な書籍は何でも翻訳しようとします。

15. 漢字文化を共有しておりますが、英語も(不得手なわりには)使うのが好きなようです。

16. 結果として、中国とアメリカの両方から強い文化的な影響を受けています。

17. 外交関係では、世界的に少なくなりつつある親米国です。

18. 中国との経済関係も、近年、つながりを深めておりますが、政治的にはいろいろ複雑な事情があります。

(追加:19. 地震と台風の被害が多いけれども、人々は慣れっこになってしまっています)

〇会議の感想は、あらためて明日にでも。


<11月2日>(木)

〇全く初めての国際会議で、ホスト側のコーディネーターを務めるというのは、なかなかに面白い体験でした。一昨日の夜に日台双方のメンバーが東京財団に集まった時点では、全く白紙の状態なわけですが、本日、無事に会議が終了した時点では「第1回の日台次世代対話」の記憶が参加者全員に残っている。なおかつ、いろんな人的なつながりができている。これがあれば、2回目からはすごくやりやすい。どんなものでもそうですが、「初物」は面白いし、ワクワクします。

〇それにしても、数多くの話題が飛び交った対話でした。日台の対話というと、従来は政治と安全保障がほとんどであって、しかもメンバー的にも固定化していたと思うのです。言い方は悪いですが、「中国はケシカラン」と言ってればそれでよし、みたいなところがありました。そういう本格的な安全保障論議は、「日米台三極対話」当たりでやればいいのであって、もうちょっとポジティブに日台関係を盛り上げるようなことができればいいなと思っています。

〇今回のダイアローグではニューフェイスを増やし、女性比率も思い切り上げましたので、テーマが実に広範に広がりました。もちろん日米同盟、中国の脅威、北朝鮮問題、尖閣諸島、核武装などの「定番メニュー」も出るわけですけれども、それに止まらず経済や金融をはじめ、沖縄、歴史認識、ツーリズム、ポップカルチャー、原住民、少子化など、従来の日台交流にはない発想が加わったと思います。

〇日中安保対話も同様でしたが、やはりこの1〜2ヶ月の北東アジア情勢の変化は急激なものがあり、従来、呪文のように唱えてきた論理が急速に陳腐化している。安倍政権の発足、日中首脳会談、北朝鮮核実験、イラク情勢の急速な悪化、六カ国協議再開への交渉進展、そして来週には米中間選挙の結果が出て、新たな不安定材料が増えるのだと思います。おそらく2〜3ヵ月後になると、「あれっ?状況が全然違っているじゃない?」ということになって、論理の再構築が必要になってくるのだと思います。

〇そうそう、個人的に興味深く感じているのは、北朝鮮が「金融制裁の解除」を望んで六カ国協議に復帰したと報道されていることです。おそらく金正日が完全に見落としている点がある。先週、中国工商銀行が上海と香港市場に上場して、これが98年のNTTドコモを超える史上最大の増資となったことです。こんな風にして、中国の四大銀行が外資を受け入れるようになると、次第に先進国のディスクロージャールールに従わなければならなくなる。コンプライアンスもじょじょに厳しくなりますから、「北朝鮮との取引なんて怖くてできない」という状況になっていくと思います。

〇すでにスイス銀行などは北朝鮮との取引を停止している。これに中国の銀行が追従すると、いよいよ経済は麻痺してくる。銀行が使えないのでは、貿易の決済もできません。つまりカネが止まればモノも止まるのです。(中朝国境沿いの現金決済の商取引は可能でしょうけれども)。だから北朝鮮経済は、将棋でいえばもう詰んでいる。米国がたとえバンコデルタアジア銀行の預金封鎖を解除したところで、北朝鮮の慢性的な金詰り状態は改善しないと思います。

〇さて、日台会議を終えて会社に戻ると、かんべえの職場は引越しの真っ最中である。社内の再編により、来週から1つ上の階に移動するのですが、これがひと騒動。かんべえのオフィスを訪ねてこられる方、今後は3階ではなくて4階になりますので、お間違えなきようお願いいたします。


<11月3〜5日>(金〜日)

〇思うところあって、脱力して過ごした週末でありました。以下、いくつか八つ当たり気味のコメントを。

〇ソフトバンクのトラブル。「予想外」だったけど、トラブルが起きることは「想定内」。ボーダフォンを買うための1兆数千億円のブリッジファイナンス、この後どうするのかしら。担保のヤフー株はどんどん値下がりしておりますぞ。「孫氏の兵法」は行き詰まっていると見たが、いかがなものでしょうか。

〇思うに通信の世界というのは、ITの世界とはルールが違う。孫さんが育ったITの世界は、夢が大化けする無法地帯。ところが、通信の世界は規制業種であり、インフラ産業なのです。そんなに美味しい世界じゃありませんてば。ヤフーBBで懲りなかったのかな。

〇高校の選択科目の問題。進学校というよりも、準進学校で起きている問題ではないのかしらん。大騒ぎすることはないと思うけどな。かつて5教科7科目をキチンとやらされた共通一次試験第一世代としては、制度があんまり頻繁に変わっていることに驚きを禁じ得ません。おそらく文部官僚が、自分の出世のために制度をいじりたがるのでしょう。

〇ところで、世界史を選択しないで経済学部に入ってくる学生って、どうするつもりなのかしら。そういえば、その昔の一橋大学でも、「おい、ブルジョアジーって、何のことだあ?」などと言っている先輩がいた。世界史選択しないのはともかく、「ベルサイユのばら」くらい読んでおけよ、と思ったものである。

〇核保有論議について。10月15日のサンプロでも発言したことですが、日本が核を持つことを決意したとして、いったいどういう手順で、どのくらいのコストがかかり、どういうタイムスパンで可能になるのか、実はそんな単純なことさえ誰も知らないでいる。下北半島のプルトニウムはいつでも核兵器に化けるし、種子島のロケットに載せればいつでもICBMになると考えているオメデタイ人たちを黙らせるためにも、とりあえず「核保有の論議を」始めてはどうだろうか。

〇「日本は唯一の被爆国であり・・・・」というお馴染みのフレーズは、おそらく日本以外ではあまり通用しない。むしろ核保有のメリット、デメリットを明確化した上で、「日本は核をもちません」と明言する方が、諸外国の信頼も得られるというものです。核の「曖昧戦略」はいただけません。

〇フセイン大統領に死刑判決。これで7日の中間選挙を勝つというのは、ちと無理でしょうなあ。ここを見ると、11月4日時点でとうとう上院も民主党が逆転しちゃっているぞ。


<11月6日>(月)

〇いよいよ明日は米中間選挙の日。大勢が判明するのは、日本時間では8日水曜日の昼ぐらいになるでしょう。でも、アメリカ政治オタクとしては今から興味津々でありまして、本日も某所で予想を一席ブツ機会がありました。この後、かんべえは11月9日朝の「モーサテ」、および11月10日夜の「三原・生島のマーケットトーク」で、中間選挙について語る予定です。

〇さて、今日時点でいつも当てにしているこのページを見ると、こんな予想が書かれている。

Politics

The table below contains the final predictions of the top political analysts in the country, as well as Electoral-vote.com. The order of the numbers is: Democrats-Republicans-Tossups. As you can see, some analysts are bold and brave and give actual predictions, while others try to weasel out of making tough choices. Clearly a Senate prediction of 27-40-33 can't be wrong, but it isn't very ambitious. Final results will come in the next few days, or after the Supreme Court meets, whichever comes first. The electoral-vote.com entry is based on the polls. The Votemaster entry is my personal intuition.

Guru Senate House
Congressional Quarterly 48-48-4 212-199-24
Charlie Cook 49-49-2 223-197-15
Stu Rothenberg 51-49 237-192-6
Larry Sabato 51-49 230-205
Chuck Todd (Note 1) (Note 2)
Electoral-vote.com 49-49-2 241-193-1
Votemaster 49-49-2 235-200
Election 2006 ? ?


〇これらの予想を総合すると、下院では共和党が200議席を割り込む大敗となり、上院は紙一重の勝負に持ち込まれるということになる。かんべえとしては、後者がどっちに転ぶかがとても気になる。上院における多数は大きな分かれ目になるからだ。

〇上院の勢力分布を詳しく見ると、本誌の10月27日号でも指摘した通り、民主党はロードアイランド州、ペンシルバニア州、オハイオ州、モンタナ州の4箇所で共和党の議席を奪い、激戦区となるバージニア州、テネシー州、ミズーリ州の3州で共和党の議席を脅かしている。ここで民主党が2勝1敗なら、上院でも与野党逆転が生じる。11月6日現在の世論調査を見ると、民主党はミズーリで勝利し、テネシーで敗北し、バージニア州は同点となっている。文字通り紙一重である。

〇さらに気がつくと、典型的なSwing Statesであり、選挙人の数も多く、2004年大統領選挙の主戦場となったフロリダ、ペンシルバニア、オハイオの3州で民主党の勝利が決定的となっている。このことは、2008年の大統領選挙を戦う上でも民主党が有利となることを意味する。共和党、かなりマズイといえましょう。

〇こういう状況で、米国政治の明日を予測せよといわれると、正直なところあまり楽しい話にはなりません。それを象徴しているのが、今週号のThe Economist誌カバーストーリーではないかと思う。キャピタル・ヒル(米議会)の周囲に、ハゲタカが集っているこの表紙の、なんと禍々しいことよ。"The vultures gather"(ハゲタカが集う)と題するこの巻頭コラムでは、ハゲタカとは何のことなのかが説明されていない。まさか民主党議員のことを指しているわけではないのだろうが、とにかく「あ〜あ、えらいことになっちまうぜ」という書き手のため息が聞こえてくるような、妙に「らしくない」筆致なのである。

〇同コラムはまず、“YOU have been sat here too long for any good you have been doing,”(あなた方がどんな良き事をしてきたかはさておき、長く止まりすぎたのだ)というクロムウェルのセリフを引用し、中間選挙は共和党の負けであろうと断じる。そして共和党が負けるべき理由として、(1)イラク戦争や財政赤字などの失政、(2)共和党議員による金銭腐敗から、果ては「少年愛」に至るスキャンダル、(3)地方への利益誘導の激しさを挙げている。ゆえに有権者がお灸を据えるのは当然、ということになる。

〇とはいえ、12年ぶりに誕生する見込みの「議会の民主党支配」は、保護主義傾向やブッシュ政権との対決姿勢など、あまり良い結果をもたらしそうにない。かかる評価は、常識の範囲内というものである。とはいえ、普通、この手の記事を書く場合には、最後は「そうは言っても、良い面もある」という結論になるのが、英国インテリの良心たる同誌の「お約束」である。本稿も、共和党はここで負けた方が好都合である、”Divided government” (行政府と議会を別々の政党が支配する状態)の方がいい仕事をする、といった指摘がされている。

〇ところがこのコラムは、最後はどこか投げやりなトーンで結ばれている。すなわち、足並みの乱れた民主党を応援する気にもなれず、穏健中道派が少なくなっている共和党には、党派的対立を超えるような仕事は期待しにくい。そして、「ここを去れ、そして我らに任せよ、とクロムウェルは議会に告げたが、来週の共和党は同じ運命が待ち受けているだろう」と再び英国政治史のひとコマを引用して終わっている。

〇この雑誌とは長い付き合いになるけれども、こんなに切れ味の悪い論旨を読むのも久しぶりである。とはいえ正直なところ、ほかになんとも説明のしようがないのも理解できる。ともあれ、ブッシュ大統領の最後の任期となる向こう2年間を、米国政治は非常に煮詰まった状態で迎えることになるのだろう。

〇経験的にいって、米国外交に大きな「ブレ」が生じるのは、こういうときである。日本としてアメリカがどうなって欲しいかは別として、「あーっ」と全世界が驚愕するようなドンデン返しをやりかねない。それこそ、ブッシュ政権の発足と9/11が「起」で、イラク戦争が「承」であるとしたら、「転」に当たるような変化が起きるかもしれない。そんな大きな物語のクライマックスシーンが近づいているのではないだろうか。

〇そうであるとしたら、これこそアメリカ・ウォッチャーが性根を入れなければならない勝負どころといえる。楽しいといったら、バチが当たりますが、ちょっとした緊張感を覚える開戦前夜であります。


<11月7日>(火)

〇中間選挙の予想はいいのであります。問題は、「それが経済や市場にどんな影響を及ぼすか」であります。これに答えを用意しないと、かんべえさんの仕事は終わりません。

〇まず為替についてでありますが、日経新聞的には、「民主党の勝利が通商摩擦再燃につながると見れば円高ドル安、Divided Govenmentが財政状況の改善につながると見れば円安ドル高」という解釈になります。で、どっちなのよ、と聞いても教えてはくれません。こんな風に言っておけば、どっちに転んでも、賢そうに見てもらえるでしょうけれども。こういう予想ってあんまり意味ないですよね。

〇思うに、民主党の勝利はかなり前から予測できていたことなのですから、ドル安ドル高、どっちのシナリオを優先するにせよ、投票日のはるか手前から変化が生じていなければおかしい。実際、過去の選挙においてはそういう事例が少なくありません。ところが今回の為替市場は、10月下旬からの動きに乏しい。ということは、今回、為替はあんまり動かないと見るのが正しいのだと思います。つまり政治は材料にならないのではないか。

〇次に株価。NY株価はとっても強いです。これは素直に経済の実態を反映していると見るのが正しい。日本のエコノミストは「成長速度が減速した。住宅投資が減っている。いよいよバブル崩壊だ」というところばかり主張しますけど、好調な企業業績、雇用の強い伸び、ガソリン価格の下落、そしてインフレの安定などの好材料には目をつぶりがちです。

〇でも、成長速度が3%台から2%台に減速して、なおかつ経済全体に大きなトラブルが生じておらず、結果として利上げも起きないというのであれば、こんなに結構な話はありません。つまり2002年以来の景気拡大局面が、上手にソフトランディングできるというわけですから、これは素直に「買い」。政治のファクターなんてお呼びじゃないよ、ということになる。

〇かくして「為替も株も、あんまり選挙結果には反応しないんじゃない?」という脱力モードの答えとなります。まあ、与野党逆転が起きたとして、今すぐ大きな政策の変更が生じるとは思われません。新議会が発足するのは来年の年明けからですし。

〇むしろ注目すべきは、これから誕生するであろう民主党議会が、政治的にどんな態度を取るかでありまして、これは年末に向けて期待が形成されていくでしょう。ここから先がリスクであって、「心配してたけど、意外とうまくやってるじゃん」となるか、それとも「あちゃー、やっぱりそう来るか」となるか、それによって為替や株価が決まってくるのではないかと。つまり、単なるイベントリスクではないと考えた方がいいと思うのです。

〇例えば、ナンシー・ペローシ下院議長の誕生が有力視されています。彼女はこれまで、「何でも反対」路線で民主党を引っ張ってきて、ここへ来て、それが正解であったということになっている。では、議会で与党となったときに、どんな指導力を発揮するか。1994年のギングリッチさんのように「ブイブイ言わせるか」(←死語)、それとも安倍政権のように意外な老獪さを発揮するのか。この辺をじっくり見極めたいというのが、市場のホンネではないかと思うのです。


<11月8日>(水)

〇こりゃもう、出来過ぎですね。中間選挙の開票結果は、ものすごく劇的な「民意」を示しつつあります。

〇現時点のCNN情報を見ると、上院は49対49。なおかつバージニア州とモンタナ州が残っている。おそらくモンタナは民主党が勝って、バージニアは再集計になるんじゃないでしょうか。つまり民主党50対共和党49、未定1。未定がどっちに行くかが大きい。なにせ50対50と51対49では天と地ほどの違いがありますから。その最後を決するのが、「アメリカの石原慎太郎」ことジョージ・アレン上院議員であるというところが出来過ぎ。こんな苦戦になるなんて、事前に誰が予測したでしょうか。

〇もしアメリカ大統領を共和党員だけで決めるのであれば、2008年はアレンが最有力候補ということになるだろう。つまり保守派でタカ派。ところがこの人、失言が多い。今回の失言は、選挙運動中にインド系の民主党運動員が偵察に来ているのを見つけて、「おいおい、マカカだ。マカカが来ているよ」とやらかした。これが差別用語だという話になり、その映像がyoutubeに乗っかってしまった。インターネット時代は、この手の失言が命取りになるという好例でありましょう。

〇でもって、バージニア州再集計の結果は民主党の勝ちとなり、上院も民主党が多数派になる。・・・・というのが、もっともありそうな筋書きだと思う。でも、あんまり意外感はない。なーんか、そんな気がしていたよ、ということになる。先月、ここで書いた通りであります。後は下院における共和党の議席が200の大台に乗るかどうかが気になりますね。届かなかったら、いかにも負けたという感じになるでしょう。

〇そうなると民主党は、勝てる最大限まで勝ったということになる。では、勝因はいずこにありやといえば、おそらくそんなものは存在しない。共和党とブッシュ政権の側に敗因を求めることは容易でありますけど。

〇ところでこういうときになると、「同好の士」からのメールが増えます。以下はワシントン在住の方から教えていただいたもの。これ、いいっすねえ。


> さて、アメリカでは中間選挙が盛り上がっていますが、興奮気味の開票速報の合間におもしろいコマーシャルを見つけました。全米退職者協会(AARP)が運営しているDon't Vote.comのCMです。もうご存知かもしれませんが、このコマーシャルを見るにはこちら(音が出ます)です。

>
http://www.dontvote.com/ARPCOR6033_spot1_songanddance.html 
>
> Google Videoはこちら(音が出ます)です。
>
http://video.google.com/videoplay?docid=5593531632379139313 
>
>
> ------------------
> ご参考までに、歌詞は以下のとおり(だと思います)。
>
> I'm handsome.  僕はハンサム。
> I'm funny.   僕は楽しいよ。
> I tell a good joke. ジョークもいけてる。
>
> I'll hug you.    僕はハグもするし、
> I'll kiss you.    キスもするよ。
> I don't even smoke. もちろん、タバコは吸わないよ。
>
> My wife is impeccable.  僕の妻は申し分ないし、
> My past (is) quite respectable. 僕の経歴は完璧だ。
>
> Vote for me, in shortly.
>   つまり、僕に投票してください、ということ。
> But don't ask about social security.
>   でも、社会保障問題については聞かないでね。
>
> Come (and) have some pie with me!
>   さあ、一緒にパイを食べようよ!
>
> (ナレーション)
> Don't vote for the song and dance.
>   歌や踊りに乗せられて投票してはいけません。
> Vote for the issues, not just the personality.
>   人間性にではなく、政策に投票しましょう。
> See where the candidate stands.
>   候補者が、どのような意見を持っているかを確かめましょう。
> (Don'tVote.com) ドント・ボート ドットコム
>
>

〇こういう現実は、以前であれば遠い国の出来事に思えたのですが、最近では日本でも上記のようなタイプの政治家が増えていて、全然他人事ではありませんな。


<11月9日>(木)

〇テレビ東京の「モーニングサテライト」に出演したものだから、朝4時起きして、5時15分にスタジオ入りして、6時24分に出演して、終わってから7時に朝マックしている。こんなに早い時間に出社するのもなんなので、ついでに不規則発言を更新。ああ、今日はとっても長い一日になりそう。それにしてもマックって、今はベーグル置いているのね。知らなかったわん。

〇ラムズフェルド国防長官のクビを取ったのは、抜く手も見せぬ早業というべきで、こういうところがブッシュ政権のダメージコントロールの上手さであります。ブレない政治家であるブッシュ大統領は、勝負どころになると意外な柔軟さを発揮し、したたかで現実的な政治家であるところを見せる。就任早々、日中首脳会談に打って出た安倍首相も、それと近いところがあると思う。後はブッシュのような非情さを真似られるかどうか、ですな。

〇昨日からの映像を見ていると、民主党の勝利を象徴する映像は、上院ではヒラリー・クリントン、下院ではナンシー・ペローシ。上院も下院も、キーパーソンは女性であって、女性のツートップで共和党を攻めるわけですが、ほとんど男性政治家の姿が見えないところが面白い。そのヒラリーとナンシーが昨晩から繰り返しているのは、「国民の統合」「超党派」など。もちろん、ここで「過去6年間の共和党政治への恨み晴らさずにおくものかは」などと言われては困るわけですが、この中間選挙を契機にいい加減、党派的対立の時代を終わらせたいという気持ちがあるのでしょう。これは正しいことであると思います。

〇よく言われることですが、ブッシュ大統領はテキサス州知事時代には、民主党優位の州議会と上手に妥協しながら指導力を発揮していた。ホワイトハウスに入ってからは、むしろ民主党を容赦なく叩くことで支持を固めてきた。それを6年もやった後で、「さあ、一緒にやりましょう」といって手を差し伸べても、果たして民主党側がついてきてくれるかどうか。とはいえ、さらなる与野党の対立劇を向こう2年間見せられることに比べれば、たとえ表面的でも合意と妥協を目指してくれる方がずっとずっとマシです。

〇これから数週間は、来年年明けからの「民主党議会」の誕生と、それに対するブッシュ政権の対応を見極める時期となるでしょう。為替や株価が反応するとしたら、それ以後のことになると思います。もしも「低姿勢のブッシュ」と「話のわかる民主党議会」という組み合わせが成立するとすれば、思いがけずポジティブな反応があるかもしれません。ちょっと希望を持ちましたな、ワシは。(7:25am)



〇PCを持ち歩いていると、ついつい書き加えたくなりますな。よくよく考えてみると、ブッシュ大統領には「ウルトラC」があったのですね。つまりバージニア州の再集計で時間を稼ぎ、「民主50:共和49:未定1」の状態を続けておき、この間に「無所属のジョー・リーバーマン議員を口説く」という手が。

〇ご案内の通り、リーバーマンはコネチカット州予備選でラモント候補に敗北し、いわば石もて党を追われた立場。それが無所属議員として堂々の勝利を収め、さあこれから「復党問題」というところである。この間、彼は一貫して「民主党とともに働く」ことを明らかにしてきたが、かといって党に対する不満がないはずでもないだろう。条件さえつければ、共和党に寝返りさせることは不可能ではなかったはず。

〇かくして、バージニア州の再集計が落着し、「民主党51対共和党49議席」が確定した瞬間に、リーバーマンの造反が発表される。その瞬間に議席は「民主党50対共和党50」となり、さあ大逆転・・・・・。これ、すっごく面白いではないか。

〇ところがブッシュ大統領は、「中間選挙は民主党の勝利であり、これを祝したい」「ペローシ新下院議長も協力を申し出ている」と、先手を打ってベタ降りしてきた。「国民の声はちゃんと聞こえている」という姿勢を示したわけですね。しかもラムズフェルドのクビを添えて謙虚さをアピールしている。上手い! もちろん、心の底から反省しているわけじゃなくて、手練手管と魑魅魍魎の世界の出来事に決まっていますが、かんべえ大絶賛手筋と申し上げておきましょう。(17:39)


<11月10日>(金)

〇記録用にひとこと。今日、韓国の某商社の調査担当者が来社して、「お宅はどんな風に仕事してますか?」という取材を受けました。こっちも向こう側の事情を聞くと、双方驚くほど似たような形態で、同じような仕事をしていて、大差のない悩みを抱えていることが判明。韓国の商社は日本の商社を真似して作ったのだそうですが、なるほど似ている。その一方で、この商社という企業形態、日韓以外、世界中のどこにも存在しないというのがまことに不思議である。

〇ただし1998年の「IMF不況」と財閥の「ビッグディール」期に、韓国の商社は相当なリストラを余儀なくされて、それ以前とはかなり変わったそうです。まあ、当方も似たような事情があるので、しみじみ変な兄弟分であります。

〇その一方、「商社」という事業形態のことを、アカデミックに研究している人は、日韓のいずれにもほとんど存在しないわけでありまして、この辺は一体どうしたものでしょう。それなりに面白い研究対象であると思うのですけれども。


<11月11〜12日>(土〜日)

〇ただ今、話題になっているタウンミーティングでの「やらせ」(かんべえは「サクラ」と呼ぶのが適当だと思いますが)問題について、面白いことに気がつきました。

〇今日のサンプロに出演された河村健夫自民党政調会長代理が、文部科学大臣であった当時、「教育改革タウンミーティング」に3回出席されています。その3回分の議事要旨が、内閣府のホームページに残っています。

2003年12月13日:岐阜

2004年4月3日:山形

2004年5月15日:愛媛

〇この3つを読み比べてみれば、違いは一目瞭然。岐阜と愛媛ではバランス良くいろんな質問が出ているが、山形では冒頭から「教育基本法ハンターイ!」という意見ばかりが続く。これはですね、山形では「仕込み」がなかったけど、岐阜と愛媛では行われていたということを意味するのでありますね。ちなみにここを見ると、本当にその通りであることが分かります。

〇正直、この議事要旨を読み比べると、河村元大臣が「やらせ」の存在に気づかなかったというのは、ちょっと無理がある説明だと思います。終わってから、「今日はいったい、どーゆー人たちを集めたんだ?」と事務方に嫌味の一つも言ったかもしれません。

〇その一方で、山形のタウン・ミーティングには、教育改革に対する特殊利益を代表する人たち、ないしは強い反対意見を持つ人たちが動員されたということも、ごく自然に想像がつくわけであります。そりゃフツーの人は出席しませんよ、教育改革のタウンミーティングなんて。「お願いだから出て頂戴」と頼み込まないと、貴重な土曜日にわざわざ時間を割いたりしませんて。

〇せめてテーマが「ゆとり教育の功罪を問う」であったら、もうちょっと幅広い人が集まったかもしれません。かんべえだって、「一言いってやろう」と思って出かけるかもしれません。でも、それが教育基本法でしょ? あんな「祝詞」(のりと)のことなんて、フツーの人は関心ないですって。そりゃもう、特殊な方々だけが吸い寄せられるわけでありまして。

〇仮に、自分がこの状況下で責任者の立場であったなら、質問のサクラを手配するくらいのことはするだろうなあ、と正直なところ思います。さらに決定的なことを申しますと、内閣府は上記の3回のミーティングのうち、岐阜ではノーベル賞の小柴先生、愛媛では元宇宙飛行士の毛利衛さんという、「けっして汚してはいけないゲスト」を呼んでいたのですね。そんなタウンミーティングで、日教組の息のかかった質問が次々と続くという状況は、関係者としては頭を抱えたくなるような事態でありましょう。その点、山形のゲストは(ご本人には申し訳ないですが)、あんまり知られていない人でありました。その差が「やらせ」の有無につながったというのは、けっして闇夜の鉄砲ではないと思うのです。

〇結論として、「民主主義の偽装だ!」などと騒ぎ立てるほどのこともないと思います。要はタウンミーティングなんて、そうそう頻繁にやるもんじゃないということです。


<11月13日>(月)

〇日経センターの朝食会に出かけて、ビル・エモット氏の講演を聞く。ご存知、"The Economist"誌の前編集長である。かんべえは過去13年間あの雑誌を購読しているけれども、これはそのまんま彼が編集長を務めていた時期(1993,3〜2006.3)と重なっている。したがって、彼の文章はいっぱい読んでいるし、思考法にも馴染んでいる。が、実物を見るのはこれが初めて。まあ、写真などで見た通りの人であった。テーマは「日本の復活は本物か」であり、結論はもちろん「本物だ」となる。

〇エモット氏の語り口は、経済統計を多用する点が「ほほー」という感じであった。"The Economist"のコラムには、数字はあんまり出てきませんからね。英語はきわめて聞き取りやすい。こんな平易な話し方をする人が、"The Economist"に書くとなると、あんなに晦渋な文章になってしまうのだから不思議なものである。もっとも彼の著作は、フツーの文章でありますが。

〇質疑応答の時間になったら、案の定、大勢いるお客さんの誰も手を挙げようとしない。かんべえが挙手して、ほのぼの系のコメントをしてみたら、あとは次々と手が挙がるようになった。つまり、ワシは良い仕事をしたのである。これがサンプロでは、「荒らしに燃料を投下する」ような質問が評価されるので、最近のワシはどんどん性格が悪くなっていくような気がするのだが、できればこの手の講演会の席上では、場がなごむような質問をしたいものである。

〇さて、エモット氏は昨年秋、"The sun also rises."(日はまた昇る)というカバーストーリーで、「日本経済の正常化が始まった」と宣告した。2005年に長期低迷期が終わり、悲観ムードがリセットされたという認識は、かんべえもまったく共有するところである。まあ、その辺の話は、散々書いたことなのでここでは繰り返さない。

〇それでも1年後の現在になって思うのは、長期低迷期の負の遺産というものは相当に大きく、これを解決しながら成長を持続していくことは結構、しんどいのではないかということだ。この1年の間に、耐震偽装事件(建築現場で手抜き工事が横行していた)、ライブドア事件(証券市場がベンチャー企業を見る目は節穴だった)、いじめ&履修問題(教育現場では荒廃が進んでいる)、地方の汚職、財政破綻(地方自治体のディシプリンは緩んでいる)などがあった。すべて指し示していることは同じではないかと思う。

〇もっとも、だから正常化のプロセスが挫折するかというと、そういうことにはならないと思う。9月の機械受注など、ちょいヤバめのデータが散見される昨今ではあるが、景気の腰折れに至るようなものではないと見る。ちょうど90年代の中盤に、「こんなことをしていたら、日本経済は衰退するぞ」などと言われつつ、本当に悪くなったのはかなり後であったというプロセスの逆のことが進行中なのではないか。つまり「日本経済はもっと良くなるはずなのだけどなあ」と言いつつ、本当に良くなるまでには結構、時間がかかるのではないかと・・・・。

〇どうでもいいことだが、今日は朝食会と昼食会と夕食会がある一日であった。ちょっと疲れた。でも、朝食会で隣に座った某紙の政治部長さんは、「1日に4回メシ食うこともめずらしくないですよ」とのことであった。いかんです。そんなことしてたら、太ってしょうがない。豪州、ニュージー出張以降、なんとか2キロほど減らしたところなのに。


<11月14日>(火)

〇ある場所で聞いた話。都内の某大手タクシー会社では、カーナビが標準装備になっているのだが、それには客席への監視カメラとマイクがついているのだそうです。つまり客の顔や、行き先や、後部座席でしている会話などが、タクシー会社に記録されていることになる。会社としては、運転手と客の間のトラブル防止のためにつけているのであって、確かに「タクシー強盗」や「言った言わないのトラブル」を避けるには、有効な手法といえるでしょう。でも、ちょっと怖い話じゃないでしょうか。

〇タクシーに乗るときは普通、客はリラックスしております。自分が乗ったクルマの運転手とは、どうせ1回限りの出会いだと思っているので、つい余計なことまで話してしまうことがある。一緒に乗っている客同士で、「どうせ誰も聞いてない」とばかりに、会社の機微にわたる内容を語ることだってあるでしょう。極端な話、恋人同士が後部座席であられもない振る舞いに及ぶことだって考えられます。そういうのが全部、記録されているとしたら、ちょっとギョッとするじゃありませんか。

〇電車などの公共交通機関は、所詮、ひとの目があるものと思っているから、皆さん警戒していますけど、タクシーという個室の中も安心はできませんぞ。ご用心。


<11月15日>(水)

〇昨日に引き続き、最近聞いた面白い話。

〇某社にKO大学卒の優秀な新入社員が入った。ある日、上司は彼に向かって、「これから大事なお客さんが来るからな。その人というのは、かくかくしかじかで・・・・」と克明な説明を行った。しかるに新人君はメモも取らずに平然と聞き流している。案の定、後でお客さんに対して不始末をしでかした。上司は怒っていわく。「せめてちゃんとメモくらい取れ!」。すると新人君曰く。「あとでググればいいと思ってました」

――このネタは「上司と部下特集」を得意とする某誌の編集者から。あまりにも痛過ぎる・・・・。

〇学生のレポートの大半はネット上からの盗作、剽窃である、というこの時代。審査する側の防衛策としては、「ワードで原稿を提出させて、プロパティをチェックする」ことがある。中には「作成者」の欄に別人の名前が入っていたり、「詳細情報」の中の「作成日時」と「更新日時」がわずか30分しか違わない(つまりペーストして貼り付けたから、あっという間に完成している)ものがあるという。もちろん、学生の側も、「わざわざプリントアウトして、スキャナーで原稿を取り込む」「作成日時をずらして時間がかかったように偽装する」などの工夫で対抗する。

――こういう話を聞くと、しみじみ大学の先生だけはやりたくないと思いますな。

〇かんべえもネットで情報を発信している側ですので、こういう世の中に荷担している一人であるわけですが、敢えて申し上げたいですな。ネットなんてあんまり信用するなと。安いコストで入手した情報というのは、所詮、その程度の価値しかないことが多いですから。


<11月16日>(木)

〇闘い済んで、日が暮れて。アメリカ中間選挙は、最終的な結果がどうなったかがよく分からないのですが、とりあえず先週末時点ではこんな感じらしい。(ワシントンウォッチ、11月13日を参照)

●上院 民主党が6議席増やす 民主党51議席対共和党49議席

●下院 民主党が29議席増やす 民主党230議席対共和党196議席(9議席が未確定)→最終的には232対203?

●知事 民主党が6州で新たな知事を獲得 民主党28州対共和党22州。

〇こうなると、共和党の政治家で失職する人がいっぱい出てくるわけで、まさに「政治家は使い捨て」(C:小泉首相)を地で行く世界です。それ以上に、議員1人につき20人以上はいるはずの「議員スタッフ」はどうなっちゃうんだろ、ということが気になるわけであります。民主党が議席を増やした分だけ、共和党の議員は仕事を失い、それとともに共和党系のスタッフが大量にあふれ出ることになる。

〇ワシントンの共和党系シンクタンクなどは、もう一杯一杯でありましょうし、ロビイスト事務所も最近は政治倫理がうるさくなっている手前もあり、なかなか就職は難しいでしょう。となると、今頃は数千人の元共和党系スタッフが(共和党は州議会でも負けているので、全米ではすごい数になってしまう)就職活動で頭を悩ませているはず。とはいえ、「2008年には復帰するぞ!」と内心期している人たちですから、彼らを雇う側としてもなかなかに悩ましい。

〇日本のシンクタンクなどでは、彼らを短期間雇って恩を売る絶好の機会ということになります。なに、別に3カ月程度でもいいのです。どうせ仕事がないのですし、お給料が出て、めずらしい経験ができて、多少は人脈もできて、履歴書に新しい項目を追加することもできる。彼らにとって、日本滞在は悪くないチョイスでしょう。

〇その上で2008年がどうなるかは分かりませんが、今日の政治スタッフは将来の万馬券になる可能性があるわけで、面白い投資であることは間違いありません。辛いときほど、他人の情けは身に沁みるもの。どうです、真面目に考えてみる気はありませんか?


<11月17日>(金)

〇この1週間に耳にした賢人たちの言葉を、忘れないように書き留めておきます。

●才能は補える、性格は変えられる、でも癖は治らない。(三原淳雄さん。日経CNBCの打ち合わせ中に)

――誰のことを言っていたかはナイショにしておきます。

●最近のイジメ問題は騒ぎすぎだよね。だいたいマスコミが一番のいじめっ子なんだから。(田原総一朗さん。サンプロの後の控え室で)

――田原さんがそれを言うと、ちょっとシャレにならないという気もする。

●心配はいらない。人間はお金を使うことの天才だから。(ビル・エモット氏。日経センターの講演会で「日本経済は需要が伸びない」という質問を受けて)

――「日本は豊かになったので、お金があっても使い道がない」てな言葉をよく聞きますが、エモット氏の方がずっと正直だと思います。

●今回の中間選挙では、銃の乱射事件があった直後でも、民主党は銃規制問題を言い出さなかった。共和党関係者にとっては、それがやりにくかったらしい。(久保文明東大教授。某研究会にて)

――米民主党は、「憤兵は敗る」の原則に気がついたのかもしれない。

●It's a joke. (チェイニー副大統領の元スタッフ、Steve Yates氏。日本版NSCの可能性について問われて)

――組織を作って、法律を作って、すごい苦労をして、でも経験がないから大きな判断が下せない。そんなことよりも、もっとほかにやるべきことがあるでしょ、って、まったくその通りでございます。

●家で飲むビールがおいしかったら、自分の人生に文句を言ってはいけない。(かんべえ)

――念のために言っておくと、今週末は「夕刊フジ」と「SPA!」と「論座」と「Quickエコノミスト情報」の締め切りが重なるので、あんまり幸せな気分ではありません。


<11月18日>(土)

〇突然ではございまするが、ケータイを購入いたしました。これまでNTTパーソナルの時代から、10年近くPHSを使っておりましたが、ドコモはもうPHSから撤退するようですので、しょーがないのであります。で、FOMAに乗り換えると値引きしてくれるのですが、さすがにナンバーポータビリティというわけにはいきません。(PHSのMNPをやってくれればウィルコムに乗り換えるのですが、あまりにもマイナーな存在であるために、相手にされていない様子です)。

〇今使っているPHSは、確実にあと半年以内に壊れるな、という感触があります。そうなったら手の打ちようがないので、今のうちにFOMAを買うのは安全保障上、やむを得ない処置という感じです。あんまりケータイを使う方ではないのですが、それでもPHSの番号をご存知の方は少なくないはずですし、こちらから全員に連絡する術もないので、しばらくは2つを持ち歩く必要がありそうです。とりあえず年内くらいは、PHSも維持するつもりであります。もったいないけどね。

〇新しく買ったFOMAは、「SIMPURE L1」という新機種です。余計な機能は要らないので、よっぽど「らくらくホン」にしようかと思いましたけど、コンパクトで軽いことと、海外で使えるというのに惹かれて、こちらにしました。ついつい写真を撮ってみたり、その写真をメールで転送してみたり、遊んでしまいますな。とはいえ、取扱説明書を読むのはやっぱり苦痛であります。かんべえは基本的にモノグサな人間です。

〇同報メールで早速新しい番号を知らせたところ、いきなり十数本が「あて先不明」で戻ってきてしまいました。アドレスの整理ができていないのである。というか、数が多過ぎるのが問題なのですよね。そうかと思うと、「了解」というメールがもう2本戻ってきました。早くFOMAに慣れないといけませんね。


<11月19日>(日)

〇かんべえの知り合いがブログを始めていました。あんまり面白いのでご紹介。

●こじか日記 http://blogs.yahoo.co.jp/kog12gnyan  

〇なんなんでしょう、この4コママンガの暖かさは。

〇コジカさんとヒツジさんのご夫婦は、お互いを「だんなさん」「おくさん」と呼び合っています。ご夫婦の日常ネタ、という意味では「あたしんち」のような世界なんですが、単純な身内の恥バクロ型ではなく、不思議と品が良い世界なんですね。なによりコジカさんの可愛いキャラは、まるで「こげぱん」のような癒し系の味わいです。

〇始まってまだ3ヶ月くらいなので、皆さんやさしく見守ってあげてください。でもって、特に編集者の皆さま、このブログ、化けるかもしれませんぞ。


<11月20日>(月)

〇ケータイ変更のお知らせに反響相次ぐ。ぐっちーさんからは、「私の交友関係でPHSをお使いの最後の一人だったのですが、そうですか、ついに・・・ですか」。逆にPHS陣営からは、「残り少ない同士を失って寂しい」という声も3〜4件ありました。とはいえ、皆さんウィルコムなのですよね。ドコモのPHSはほとんど絶滅の危機に瀕しております。ちなみに、「メルアドも教えてください」という問い合わせが2件あったが、恥ずかしながら、よーわからんのである。ま、そのうちちゃんと設定しますから。

〇以下、最近のニュースに関する若干の印象。

〇沖縄県知事選。先週のサンプロに出ていた田中康夫氏が、直前まで糸数候補の応援に現地入りしていたが、「選挙を共産党が仕切っているから全然ダメ」と言っていた。案の定、野党連合が負けた。カネだけ出した民主党はいい面の皮である。だいたい沖縄に反戦知事を担ぐということは、民主党が本気で政権を取れると思っていないことの証左ではないか。早く間違いに気づいてほしい。その点、本日の長島昭久さんの言やよし。「方向転換する勇気」を持っていただきたい。

〇松坂大輔投手に60億円の値がついた話。生身の人間につく金額としては、これを超える例はほとんどないでしょうね。このカネが、西武ライオンズの経営を潤すのは結構なことで、来期は小笠原でも何でも取り放題になりそうなものですが、現実には、大部分は親会社の不良債権の穴埋めに使われるとの話で、なんとも嘆かわしい。できれば野球で儲けたカネは野球で使うこととし、球場に「松坂大輔」の名を残すモニュメントを作ってはどうでしょうか。

〇藤原紀香がお笑いタレントと結婚するという話。日韓親善大使をやって、国連でアフガンの写真展をやって、こりゃもう来年は参院選でしょうなあ、と思っていたところ、なぜか「だめんずウォーカー」に出演。変だなと思ったら、そういうことでしたか。「無理目のオンナ」という役どころが似合ってたのに、やっぱり彼女も関西人でありましたか。なんか醒めた気分になりました。


<11月21日>(火)

〇小さい頃に、母親から一番きびしく言われたことは、「人さまの前で自慢話をするな」ということであった。たぶん親の目から見ても心配になるくらい、自己顕示欲の強いヤな性格の子供であったのだと思う。こういう親の叱責の記憶というものは、わりとしっかりと心の中に残っているもので、ふとしたときに顔を出してくる。言った側は確実に忘れていると思うのだけど。

〇もっとも、多少の親のしつけくらいで、もって生まれた性格が変わるはずはないのであって、そもそもこんなサイトを何年も欠かさず続けていること自体が、自己顕示欲が強いことの何よりの証拠でありましょう。世間に激増しているブロガー諸氏も、胸に手を当てて考えてみれば、思い当たる節があるのではないですか。物書き、パフォーマー、クリエイター、なんと呼んでも構いませんが、だいたい表現することにこだわるのは、性格の悪い人が多いですわなあ。

〇「かんべえさん、よく毎日続きますねえ。私なんてネタが続きませんよ」みたいなことを言う人がたまに居ますけど、そういう人は自己顕示欲がマイルドな方なのでしょう。少なくとも私よりは。逆に雪斎どのなどは、たまたま今夜もご一緒してましたけど、自分と似た資質を感じますな。同類には同類が分かるのである。

〇そんなわけで、今宵も寝る前に酔っ払い、駄弁を弄しつつ、ネット空間に何がしかの文章を発散するわけでありますが、ああ、ワシって抑圧された自慢話を毎晩、昇華しているのか、とふと思ったりもする。そういえば、ウチの母は今でも読んでるのかしら。この文章。


<11月22〜23日>(水〜木)

〇久しぶりに「石頭楼」に行きました。あいからわず他人の家にあがり込んでいるようなきまり悪さがありますが、鍋はおいしいし、懐かしい顔ぶれが集まったこともあって、楽しかったですな。そこで小耳に挟んだ話題を少し。怪しげな話もあるのですが、そこはそれ、酒の上ということで。

●宮崎哲弥氏が参議院選出馬を決意。自民党から。

――個人的には結構、驚きましたな。訂正→その後、本人から速攻で否定の電話あり。そりゃそうか)

●西武ライオンズ球団は、今でも堤義明氏が100%の株を保有している。

――ということは、松坂をポスティングで放出することで得られる60億円は、堤さんのものになっちゃうかもしれない?!

●NYでは、「他人の家を水着で掃除するサービス」というものが存在するらしい。もちろん女性が、ですよ。

――残念ながら、時給がいくらかは分からないとのこと。どんな人が発注するのか、ちょっと怖い気がする。


<11月24日>(金)

〇今日のお昼に行った「東京 芝 とうふ屋 うかい」はすごいところでした。場所は東京タワーの真下。かつて「ルック@マーケット」の撮影現場であった芝公園スタジオから、やや坂を下ったところに旗指物が立っている。1年半前まではボウリング場があったりした場所です。以前は「ルック」の常連たちが、花見酒などをやっていました。そこに忽然として江戸風のお屋敷ができている。お店のコピーに曰く、

約2000坪の敷地に、樹齢100年以上の古木と日本庭園。
山形より築200年の造り酒屋を移築し、飛騨高山の匠たちにより造りあげられました。

〇個室からは外の景色が良く見えるように設計されていて、今のような紅葉の季節には実に風流です。しかし何よりすごいのは、この大料亭のバックには東京タワーが聳え立っていること。何というミスマッチな光景。でも、これぞ東京、というべきど迫力です。外国人の接待に使えば馬鹿受け間違いナシ、でありますな。

〇あらためて東京タワーの威容を見ていて感じたのですが、東京タワーのあの赤色は平安神宮などで見られるような、古式ゆかしい朱色と似ているのですね。「日本の美」というものは、妙なところで発見できるものです。

〇かつて、「ルック@マーケット」の放映終了後に、毎度毎度、打ち上げが行われていた東京タワー内のスナックは、今日行ってみたら改装されていて、妙にオサレなコーヒー店になっていました。ちょっと寂しいけど、こういう変化の早さも東京の一部というものでしょう。そういえば、「東京タワー」という本が売れているそうですけど、どんな内容なんでしょうな?


<11月25〜26日>(土〜日)

〇久々に中山競馬場のスタンドに行きました。今日は東京開催につき、人はそんなに多くないのであるが、それでもジャパンカップのファンファーレとともに声援の輪ができる。

〇みんな、ディープインパクトを見に来ている。ディープが「翔ぶ」のを見たいのだ。凱旋門賞でケチがついてしまった名馬の復活を祈っている。かんべえも、今日、ディープが勝てないようだと、変な話、日本経済も腰折れしちゃうんじゃないかみたいな嫌な予感がしている。できれば九州場所の朝青龍のように、圧倒的な強さで勝ちを決めてほしい。

〇その反面、競馬ファンとしては、こういうときは馬券が買いにくい。なにせ単勝1.4倍だもんな。ついついディープを外した2〜5番人気のボックス買いなどを考えたくもなるのだが、いかんいかん、ここでディープを応援せずしてなんの競馬ぞ。なんの三連単ぞ。ディープからコスモバルクとメイショウサムソンをからめて、あれこれと買ってみる。もちろん外れてしまうのであるが。

〇案の定、第4コーナーを抜けたところでディープの快進撃が始まる。が、こんなに激しく鞭を入れる武豊は初めて見る。鞭なんぞ入れなくても、勝手に走って勝つのがこれまでのディープであったのに。しかし今日の武は真剣に勝ちに行っている。武豊、実は1999年のスペシャルウィーク以来、ジャパンカップでは勝っていないのだ。そうでなくても、あまりにも多い声援、そして重い勝利へのプレッシャー。最近、とみに涙腺の弱くなっている中年男は、ここでついホロリと来てしまう。

〇今日のディープは「翔ぶ」には程遠い。それでもさすがにほかの馬とは地力が違うので、ドリームパスポートをはなしてゴールインする。が、もうちょっと距離があったらウィジャボードに差されていたかもしれない。それくらい今日はきわどい勝ちであった。皐月賞で見せた衝撃的な末足。ダービーで見せたぶっち切り。スパートのタイミングを間違えても勝ってしまった菊花賞。向こう上面で「翔んで」しまって、そのまま勝ちきった春の天皇賞。誰も負けると思っていなかった宝塚記念。そのたびにディープインパクトは、閉塞感を打ち破る時代のヒーローであった。

〇ジャパンカップは7つ目のG1をディープにもたらした。二馬身差で勝って文句を言うのも変ですが、これは断じてディープの勝ち方ではない。早くも力の限界にぶち当たっているのか。時代のヒーローは、普通の強い馬になりつつあるのだろうか。ディープインパクトの疾走はあと1回、有馬記念を残すのみ。明日は是非、指定席券の抽選はがきを出さなければ。

〇ん、今日の不規則発言は単なる競馬オタの独り言になっているような。まあ、よいか。たまには。


<11月27日>(月)

〇今日の日経の社説が痛ましいほどに面白い。下記の表題を見てワシは悶絶してしまった。


社説 賃金出し惜しみの構造どう脱するか(11/27)


〇ホントにこれが日経の社説かよ、と思うような文章で、論説委員の皆様方もかなり苦しんでおられるようである。悪いものでも食べて、おかしくなったんじゃないといいのですが。まず出だしはこう。

 「いざなぎ景気」を超えて4年10カ月続いた景気拡大をこのまま持続できるかどうか。米国経済の減速などで輸出環境の先行きが怪しくなる中で、個人消費の動向が注目されている。しかし一向に火がつく気配がない。マクロ的に見て企業業績が好調な割に、賃金があまり上がらない点に基本的な問題がありそうだ。

〇企業部門から家計部門にカネが回ってないじゃないか。と、ここまではよくある話で、誰もが言っていることである。

企業は危機的な状況を乗り切るために、様々な方策によって賃金を抑え込んできた。当然の対応だったわけだが、結果的に、賃金を出し惜しむ構造が根付いたようにみえる。

〇おいおい、労働分配率を下げないと、国際競争力が回復しないと言ってたのは、日経さんじゃありませんか。

労働分配率は景気に遅れて上がる傾向があるので、これから振り子が戻るように雇用者への分配が高まってもおかしくないが、そうは簡単にいかない理由がある。まず「春闘」崩壊後、それに代わる賃金決定の方式が確立していないことだ。

〇たしか、「春闘無用論」も日経はサポートしてたんじゃなかったでしょうか。

02年春、業績好調のトヨタ自動車が国際競争をにらんで、労働組合のベースアップ1000円の要求をゼロに抑えたのが決定打となった。追随する動きが相次ぎ、主要企業が横並びで賃上げして中小企業に波及させる春闘方式は事実上消滅した。

〇トヨタの堅実経営を礼賛する記事も、たくさん読まされたような気がしますなあ。

経営者の姿勢もかつてとは一変した。従業員共同体のトップという性格がまだ強かった90年代前半には、旧日経連が「ベアゼロ」方針を掲げると、反発する経営者がいたほどである。現在は存在感を増した株主、投資家に顔を向け、株主への利益配分を重視するように変わった。

〇これも笑止千番でございます。株主重視経営をやれと、日頃から口をすっぱくして言っておられるのはどこの誰ざんしょ。

しかし国際的な大競争の中で、個々の企業にとっては合理的であっても、それが全体となると構造的に過少賃上げになりかねない。好業績の主要企業の経営者は現状に安住せず、自社および産業全体の賃上げのあり方を見直すべきである。

〇正論かもしれないけど、アンタにだけは言われたくないなあ。先週の「月例経済報告」が出てから、一気にこの手の議論が噴出してきた感がありますが、ちょっと軌道修正が見苦しくないですか? 

〇今見たら、500万アクセスになっておりました。ご愛読に深謝でございます。


<11月28日>(火)

〇復党問題。見るからに、「あ〜あ、やっちゃった」という感じなのですが、その一方、古くからの政治オタとしては、「これで安倍内閣の支持率が20%くらい落ちる。で、So what?」という気もするのである。

〇安倍首相が小泉さんと決定的に違う点は、党内をガチガチに固めて選ばれた総裁であるという点である。つまり国民の支持率が低くたって、あんまり気にすることはない。だって党内から引き摺り下ろされる心配がないんだもの。もちろん、復党反対という声はあるけれども、誰が倒閣に動くというのでしょう。山本一太氏は悩んでいるばっかりだし、河野太郎氏じゃほかの人がついてこないし。そうそう、世耕さんは和歌山県知事選で忙しいみたいだね。

〇支持率が悪いと、選挙に負けるかもしれない。でも、来年行われる統一地方選挙や参院選は、そもそも投票率が高くならないだろう。組織力の選挙になるとしたら、ここで復党を認めておいたほうが得だという計算が成り立つ。つまり内閣支持率なんて、別にどうだっていいじゃん、という時代に後戻りしてしまったのでしょう。それだけ野党や有権者がなめられている、ってことですな。腹は立ちますが。

〇こうしてみると、つくづく政治は本当に昔に戻ったなという気がします。小泉政権は国民の支持が命綱だったから、名演技もやってみせたし、「ネオとクラシック」の構図を作り上げたりもした。だから政治が面白かった。その一方で、「小泉劇場」に立たされていた人たちはヘトヘトになっていたらしい。だから小泉さんが退場したら、皆さんは元に戻りたくて仕方がない。かくして見苦しい場面を見せ付けられているわけです。これじゃ国民の関心は、確実に政治から離れていきますね。

〇来年の参院選に出馬を考えているタレント候補の皆さんも、考え直した方がいいかもしれません。小泉時代であれば、政治家になって改革の広告塔になるのもカッコよかったけど、安倍政権のために働いても、あんまり注目してはもらえないでしょう。藤原紀香があっさり「だめんず」に乗り換えちゃったのは、やっぱり機を見るに敏ということなのかもしれません。新庄クンも、そこんとこ、よく考えた方がいいですよ。


<11月29日>(水)

〇某経済誌から「来年はどんな年になるか」という取材を受ける。気がつけば今年ももうそんな時期がきている。現時点ではさしたるアイデアもないので、行き当たりバッタリの話をする。それを記者の方にまとめてもらっているうちに、なんとなくアイデアが固まってくる。ここ数年、そういうことの繰り返しである。ということで、今後はちょっとずつ、来年の予測を作っていかなければならない。

〇そこで重要になってくるのが、昨日に引き続いて安倍政権に対する評価ということになる。かんべえは9月27日(つまり政権発足の翌日)に「財界フォーラム」という場所で講師を務めました。そこでは「総裁選の総括と新総裁の課題」について述べているのですが、講演録の最後の部分を読み返してみると、われながら意味深長なことを言っている。


私は安倍さんのことを直接、そんなに存じ上げているわけではありませんが、私は岡崎久彦さんがやっておられる岡崎研究所というところで特別研究員みたいな扱いにしてもらっていまして、そこに出入りしています。岡崎研究所でうろうろしておりますと、よく安倍さんがやって来られて、パーティの挨拶なんかをされるわけです。

(中略)

岡崎スクールの中で私がよく聞くほめ言葉が三つあります。仲間内で「あの人はいい」とかと言うときに、まず一番のほめ言葉は、「あの人はブレない」。ブレないということは、非常に高い値打ちのあるほめ言葉です。安倍さんはこれにピッタリ当てはまる。

二番目は、「あの人は愛国者だ」。これはべつに天皇陛下に対する何とかとかという部分じゃなくて、安全保障を語るときに、みんなが愛国者でないと議論をしても意味がないでしょう、という意味での「愛国者」です。愛国者でないと安全保障論を語っても意味がない。これも、そういう意味でのほめ言葉です。

三つ目のほめ言葉は「現実的だ」。あの人は現実的だということでして、ぜひ、安倍さんは現実的であってほしい。

今のブッシュ大統領のいちばん出だしの頃のスタイルがピッタリなんですけれども、口ではいろいろ大きなことを言っておきながら、いざ、政治の妥協段階になると、意外と柔軟に落とす。もし、このスタイルができるようになると、安倍政権というのは長持ちするのかなと思っておるところでございます。

以上、約一時間、お話をさせていただきました。


〇政権発足からちょうど3カ月。安倍政権、まさに「ブレない」「愛国者」だけど「現実的」という路線で歩んでいる。ちなみに「岡崎研究所の3つの褒め言葉」の話を、先日、アメリカ人に説明する機会があったのですが、そうするとこれが"Principled" "Patriot" "Pragmatic"となって、きれいにPが3つ揃うのですね。後から気がついて、「これは使えるじゃないか」と、急にうれしくなったりして。

〇さて、この3つの言葉には矛盾があります。そりゃそうですよね、「ブレないけど現実主義者」ということは、どっかで上手に妥協をしてるってことです。つまり安倍さんは、発言やポーズにおいては"Principled"で"Patriot"であるけれども、自分が手を下すときは意外と "Pragmatic"というわけ。これが上手にできるということは、政権は長持ちするはずであります。

〇ハッキリ言って、こういう政治はつまらない。手口が割れるに従って、安倍内閣の支持率も低下するでしょう。しかしながら、これは政治における安全運転のようなもの。要は「老獪な手法」ということです。復党問題もその典型でありますな。ということで、2007年の国内政治もこの調子でダラダラ続く、ということをとりあえずの展望としておきたいと思います。

〇今宵は長島昭久さんのパーティーへ。文字通り千客万来で、民主党の議員も大勢来てましたな。困ったことに、かんべえは最近、「民主党に対して厳し過ぎるんじゃない?」と言われることが多い。(案の定、今日も蓮舫さんに言われてしまった)。ということで、先日の「サンプロ」で噛み付いてしまった松本剛明さんに、おそるおそる挨拶してみたりする(テレビのスタジオ以外では初めて会いました)。

〇なぜか自民党からはこの人がきていましたな。思わず「元気出してくださいよ」と声をかけてしまう。それにしても民主党の政治パーティーというのは、どことなく学園祭的なノリがありますな。

〇ふと気がつくと、今日の主役の長島氏も、岡崎スクールの門下生で、「3つのP」を実践している政治家である。このまま安倍政権が2期6年くらい続いてしまうと、いよいよ次は長島さん、てなこともあったりして。(うーむ、自腹で2万円払った割りには、これはちょっとヨイショが過ぎるかな?)


<11月30日>(木)

〇ただ今、大鹿靖明『ヒルズ黙示録・最終章』(朝日新書)を読んでいるところ。世間では村上ファンドの初公判のニュースが賑やかですが、これを読む限り、検察の主張はかなりの無理筋であるような・・・。

〇前作の『ヒルズ黙示録』も非常に面白かった。溜池通信本誌の中でそれに触れたのは、探してみたら6月9日号であったということに、軽いショックを受けました。まだ半年も経っていないのですね。そもそもライブドア事件が今年の出来事ですから、当たり前なんですけれども、なんとも遠い昔のことのように思われてしまいます。

〇ホリえもんの裁判は結審が近いとか。この問題、去るもの日々に疎しといった感じですが、この先、どうなるのよ、てな点も、2007年を考えていく上では見逃せないことではないかと思います。







編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki