●かんべえの不規則発言



2008年6月







<6月2日>(月)

○中国でこんな噂が飛び交っているんだそうです。

●2007年10月16日:上海総合株価の最高値(1+0+1+6=8)

●2008年1月25日:南部で大雪による被害発生(1+2+5=8)

●2008年3月14日:チベット動乱(3+1+4=8)

●2008年5月12日:四川大震災(5+1+2=8)

○ということで、足して8になる日は危ない。そういう意味では、今日は危険日であったことになります(6+2=8)。もっとも、足して8になる日と言えば、この後は6月11日と6月20日があるくらいで、あとは7月1日と7月10日を越えれば当分はありません。(次は10月7日?) つまらんジンクスですが、これだけトラブルが続くと、ついついそんな心理状況になってしまうのも無理からぬことなのでしょう。

○日本でも、1995年の阪神大震災とオウム真理教事件が続いた後では、世の中の景色が文字通り変わって見えたという経験がありました。同じことが中国で起きたとしても、まったく不思議ではないでしょう。例えば日本人が自衛隊を見直したのは、阪神大震災での活躍ぶりが大きな契機でありました。当時の神戸では、被災した学校のグラウンドに自衛隊機が着陸することに、日教組が反対したということさえありました。今となっては笑い話ですが、それ以前の日本には根強い自衛隊アレルギーがあったのです。あいにく、われわれ自身が忘れてしまっていますが、それまでの自衛隊は叩かれまくりの歴史だったのであります。

○ほんの少し前まで、われわれ自身が自衛隊に偏見を持っていたくらいなのですから、まして中国人が「自衛隊による援助に反対」となるのは、ちっとも不思議なことではありません。特に重慶といえば、日本軍の評判がとっても悪かった場所です。とはいうものの、こういう変化の時には人々の意識は大きく変わるものです。今回、日中間で、「自衛隊による援助」が実際に検討されたということ自体が、大きな前進と言っていいのだと思います。

○四川大震災に対し、中国国内ではボランティアによる救助や募金活動など、同胞愛や国家的連帯の発露が見られるとのことです。ちょうど日本において、阪神大震災がボランティアやNPO組織の誕生を加速したのと同じような現象なのでしょう。先の聖火リレーで中国人が世界に見せつけたものは、まことに見苦しいNationalismでありましたが、今回の地震ではそれとは違うPatriotismが発揮されているように感じます。前者は他国に警戒感を与えますが、後者はふるさとを大切にするという人類の普遍的な心理です。大震災の被害はまことに目を覆わんばかりのものがありますが、そのことによって生まれた新しい動きに注目したいと思います。

○こうしたPatriotismの誕生は、中国4000年の歴史の中でも初めてのことであるかもしれません。これまで「中国人民」はあっても、「中国国民」というものは存在しなかった。歴代の皇帝たちや現在の中国共産党は、中国国民の負託を得たものではありませんでした。それでも、彼らは中国を代表するものとして、常に人民の意向を汲むことを心がけてきた。なんとなれば、民意が離れることは、すなわち政権の崩壊につながったからです。(特に天変地異が加わったときは要注意!)

○ところが四川大震災に対しては、共産党の指導のよろしきをもってしても、万全の対応が出来ているとはいいがたい。それこそ、ボランティアや海外の援助、果ては宗教団体の協力も借りなければならない。中国では、営利企業を含めたあらゆる組織に共産党員が入っていて、党による支配の原則が徹底していますが、復興のために新たに誕生した市民団体やNPOはおそらく「共産党フリー」でできている。みずからがコントロールできない部分が拡大することに対し、おそらく共産党が焦りを感じていることでしょう。

○日本の近代史の中において、1995年は名状しがたいある種の屈折点でした。それと同じようなことが中国で現在進行中なのではないか。漠然と、そんなことを感じております。


<6月3日>(火)

○今日こそが本当のスーパーチューズデー、なのだと思います。1月3日に始まった史上最長の予備選挙。今日は最後のモンタナ州、サウスダコダ州が開票になります。「おそらく今日(日本時間では水曜日)、ヒラリー・クリントンは撤退宣言をするでしょう」と、先ほど放映された朝日ニュースター「ニュースの深層」で予想してきました。

○かんべえの記憶が確かならば、彼女はこれまで「最後まで戦う」「過去には6月までもつれ込んだこともある」といった言い方はしてきましたが、「党大会当日まで戦う」とは言っていないはずです。6月3日以降の日程は白紙のはず。だとしたら、すべての州での戦いを終える今日こそが、兵を止める最良のタイミングとなります。溜池通信の最新号でも書きましたとおり、彼女には選挙資金面での限界もある(手つかずの2200万ドル)。「5ヶ月間、よく頑張った」ということが、戦いを止める大義名分となるでしょう。

○で、気になるのは撤退宣言後の反響です。民主党にとって望ましいのは、これが「ご祝儀相場」となってオバマ期待論が高まることでしょう。例えば「オバマ対マッケイン」世論調査で、ぽーんと5ポイントほどオバマ人気が上がるようなら、「あの厳しい戦いは無駄ではなかった」ということになります。めでたし、めでたし。

○でも、むしろ「ヒラリー、あんたは偉い!」になってしまうのかもしれない。この辺は奇妙な心理ですが、われわれの身の回りでも、どうしようもないくらいに頑固な人が折れてくれた瞬間には、とてもいい人に見えたりするものです。かんべえは昔、自動車会社の人にこんなことを教わりました。「クルマを買うときは、思い切りワガママを言え。ディーラーに嫌われるくらいになれ。そういう客がクルマを買ってくれた瞬間、『とてもよいお客さん』になる」――つまり、ここまで引っ張ったからこそ、ヒラリーがいい人に見えるという理屈です。

○とはいえ、そもそも彼女がもっと早く撤退していれば、民主党内の亀裂はここまで深くならなかったはず。議会選挙では圧勝が予想されながら、大統領選挙ではほとんど互角、という現状は、民主党がいかにもったいない戦い方をしているかということです。その責任は、もちろんヒラリー・クリントンにあると思うのですが、ここまで来るとオバマ陣営としても、ヒラリーとヒラリー支持者たちには気持ちよく降りてもらう必要がある。でないと今後の本選挙で苦労するし、下手をすれば次期オバマ政権の運営にも差し支える。クリントン上院議員の任期は2012年までですからね。

○などとつい余計な心配をしてしまうのですが、これで明日になっても彼女が降りなかったら、そのときこそ本物の「KYヒラリー」となるでしょうね。さて、明日の報道を待ちましょう。


<6月4日>(水)

○選対スタッフには仕事はもうないと通告し、お給料の支払いもストップしてしまった。それでも、ヒラリー・クリントンの宣言は、「今夜は何の決断も下さない」でした。まーったく、食えないオバハンやのう。でも、Super delegatsの雪崩現象が始まり、オバマの獲得代議員数はマジックナンバーの2118を超えました。もう「当確」ではなくて「当選」です。バラク・フセイン・オバマは黒人として、初の合衆国大統領候補になりました。Congraturations!!

○ヒラリーは副大統領ポストの獲得に積極的だそうですが、これはちょっと疑問。ドリーム・チケットは望ましくないと思います。理由はたくさんあるんですけれども、いちばん分かりやすいのを挙げると、正副大統領が夫婦で揃って写真を撮るときに、ビル・クリントン元大統領がとっても邪魔になると思うんです。誰があの人をコントロールできるというのでしょう。きっと民主党のスタッフは頭を抱えていると思いますぞ。

○ヒラリーに対する処遇論では、すでにいろんなオプションが検討されていて、なかでも渋いのが「最高裁判事に任命」というもの。なにしろこの仕事は終身であるし、リベラル派が少ないという問題もあるし、三権の長だからステータスも高い。そうでなければ、上院にとどまって院内総務(Majority Leader)を目指すのが、彼女にとっても民主党にとってもベストだと思いますけれども。

○今日のお昼、赤坂の某韓国料理店(混むと嫌なので、特に名を秘す)に行ったら、店のおばちゃんが「とうとうアメリカで黒人初の大統領が誕生するのねえ」と言っている。いやー、そうじゃないんですよ、今度は本選挙というものがあって、と言い掛けて、でも似たような誤解をしている人は多いだろうなあ、と思う。だって、こんなに長い選挙って、普通の国では考えられないもの。


<6月5日>(木)

○中央大学総合政策学部にて、米国大統領選挙に関する講義を担当する。100人くらいの学生を前に、いつものような話をする。考えてみれば、レーガン政権の末期に生まれて、物心ついたころから、アメリカ大統領と言えばブッシュークリントンーブッシュしか知らない世代である。こうなると時間軸も相当に違う。「マッケインはベトナム戦争で捕虜になって・・・」などという話は、ちゃんと通じていたんだろうか。

○最近、「日本はアメリカと戦った」ことを知らない若者が増えているそうだが、同じことがアメリカでも起きているらしい。日独伊三国同盟なんて、リアリティが皆無であるとのこと。考えてみれば、平和な時代になったもので、われわれの世代が子供の頃は、SF小説には「米ソ核戦争で人類絶滅」というジャンルが定番であった。今ではもっぱら恐怖の対象はテロリストと大量破壊兵器である。このギャップは大きい。

○ということで、面白い経験でしたが、いかんせん多摩キャンパスは遠かったぞ。うむ。


<6月7日>(土)

○どうも疲れておる。8時間寝たのにスッキリしない。土曜日は午後にも昼寝をして、それでやっと帳尻が合うような感じである。

○朝、地元野菜の直売所である「かしわで」に行く。別に地産地消運動に賛同しているわけでもないのだが、とれたての野菜というのは確かに普通のスーパーのものとは違って味がよいように思う。このところ評判になっていると見えて、いつも結構な混雑振りである。ふと気がつくと、レジで後ろについた女性に会釈をされたのだが、誰だったか思い出せない。適当に笑顔で返してから、はて、どなただったか、と考えるも出てこない。最近はこういうことが多いので困る。

○その後はクリーニング屋へ。土曜の朝ごとに通っているのだが、隣にはケンタッキーフライドチキンがある。もちろん、土曜の朝のケンタに客が居るとは思えないのだが、店は一応開いていて、しょぼくれた顔のオヤジが一人で店番をしている。察するに「名ばかり管理職」と呼ばれるタイプなのではないか。見るからに暇そうなので、なるほどワシのように心の狭い人間が経営者であれば、残業費を払うことをためらうかもしれぬ。おそらく、ショッピングモールのそこだけシャッターを降ろしているわけには行かず、しぶしぶ店を空けているのではないか。だとすれば、まことに気の毒である。

○などと余計なことを考えていたせいか、クルマの後部を駐車場の車止めに、ご丁寧にも2度もぶつけてしまう。後でバンパーを見たら、きれいに4箇所の傷が増えていた。まあ、14年目のクルマだし、すでにバンパーは傷だらけなので、今さら慌てる必要もない。乗るのも週末だけにつき、3月末に入れたガソリンがまだ残っているくらいである。こういうドライバーが多いから、クルマが売れないのだろうなあ。

○お昼は久々にイタリアンに行こう、ということになり、店の扉を開けたらさっき「かしわで」で会った女性が、「今朝はどうも」と挨拶するから驚いた。そうか、やっと思い出した。クアトロの奥さんであった。おそらく先方は、今朝会ったからわざわざ来てくれた、と勘違いをしているのだろう。もちろん、そういう善意の間違いを解消する必要はなく、いやいやどうも、などと適当にごまかして席に着く。世の中にはこんな風に偶然が多いものだから、何となくつじつまが合ってくれるのである。


<6月8日>(日)

○ここへ来て町内会の仕事が多い。昨晩、恒例の夏祭りの打ち合わせに行ったところ、街路灯の調子の悪いのが2〜3本あるという話を聞く。防犯部としては、電信柱に登って蛍光灯を取り替えなければならない。この仕事、ちょっと怖い。でも、先週の大掃除の日を、さる仕事のせいでサボっている手前もあり、腹をくくって日曜午前に梯子を上ることにする。1回目は怖かったが、2回目以降は平気であった。まあ、世の中、そんなもんである。

○日曜の朝の町内を歩き回っていると、いろんな人にすれ違うことになる。家の外に出てタバコを吸っているお父さんを3人見かけた。のどかな景色というか、禁煙ファシズムが家庭内にも及んでいるというべきか。ほんの1時間くらいの作業の間に、ずいぶん大勢の人と挨拶したような気がする。しみじみ古い下町ノリの町内である。とはいえ、先日は夜中にひったくり事件も起きたらしい。世の中はどんどん物騒になっている。

○などと思っていたら、それどころではない事件が秋葉原で発生。こういう事件を聞くと、まことに憂鬱になりますな。

○仕事がはかどらず、先週に引き続いて司馬遼太郎の忍者モノに逃避する。今週は『風神の門』。面白い。忍者モノというのは、数十年おきに流行るものらしく、前回のブームからはずいぶん時間がたっている。最近は『蟹工船』が大ヒットで、新潮社大喜びらしいのだが、忍者モノももう一回仕掛けてみていいのではないでしょうか。これはこれで、現代人の生き方に重なるものがあると思いますぞ。

○ヒラリー・クリントンがやっと撤退宣言。こんなことなら6月3日夜の時点でやっておけば拍手喝采だったのに、無意味な時間を過ごしたような気がする。練りに練った演説であったようだが、しみじみ彼女は完ぺき主義の人で、そういうところが大統領を目指すには及ばない点だったのではないか。バラク・オバマの参戦は、1992年のビル・クリントンと同様に向こう見ずな戦いであったけれども、得てしてそういう人物がモメンタムを得るものだ。


<6月9日>(月)

○今日は5月の景気ウオッチャー調査の5月分の発表がありました。景気が下降局面に差し掛かっていることもあって、コメント欄がむちゃくちゃ面白い。本来、あんまり喜ぶべき話ではないんですが、「そうそう、最近はこういう話をよく聞くよね!」というネタが多いので、以下、メモしておきましょう。(ちなみに先月分については、当欄の5月12日付の記事をご参照のこと)


●店に来る子供が、親の財布を心配しているような状況である。(東北、一般小売店=スポーツ用品店)

――いきなり痛い。


●近所に千円カットの店が軒並み増えており、カットをそこで済ませ、残りを一般の美容院でするという状態である。女性客にも床屋に行くような傾向が見られる。(北関東、美容院)

――察するにカラーリングだけ、美容院でお願いするのでしょうか。この現象は、高齢化も手伝っているような気がします。


●賞味期限はよく見る、中身の添加物を気にする客も増えている。中国産は絶対駄目だという客も多い。客との会話で老人医療の話題ものぼる。各種値上がりを懸念する声もよく聞かれる。客は商品にかなり敏感になっており、景気はますます悪くなる。(北関東、百貨店)

――全国的にこの手の指摘が目立ちます。


●家で入れたお茶をペットボトルに入れて、子供に持たせるといった節倹家庭が増加している。(東海、コンビニ)

――タスポカード導入のお陰で、コンビニへの来客数は増えているそうですが、お客の動きはよくないようです。


●洞爺湖サミット期間中は警察が忙しくなるため、取引先のパチンコ業界では遊技機入れ替えの許可が取りにくくなる。(近畿、電気機械器具製造業)

――橋下知事は、やっぱり大阪府警の予算もバッサリ削ったほうがいいんじゃないでしょうか。


●ゴールデンウィークと母の日が近かったこともあり、あまり需要がなかった。(四国、一般小売店=生花)

――これは目からウロコの指摘。花屋さんにとっての花の日は、チョコレート業界にとってのバレンタインデー、ネクタイ業界にとっての父の日のようなものでありましょう。


●今月はゴールデンウィークがあったため営業日数が短い上に、来客数も過去最低であった。当店のような料亭は会社接待がメインであるため、会社の経費節減、原油高も影響している。また、有名料亭の問題等も何らかの関わりがある。(九州、高級レストラン)

――要は船場吉兆のことでありますな。全国の心ある料亭が迷惑しているようです。


○四国のスーパーの指摘で「4月から潮目が変わった」とあります。やはり物価高が響いているのでしょう。しばらくこの調査には要注意です。

○ところで本日、経済羅針盤にこんな文章を寄稿しました。題して「石油価格はどうやって決まるのか」。よろしければ下記をクリックしてください。

http://markets.nikkei.co.jp:80/column/rashin/article.aspx?site=MARKET&genre=i2 


<6月10日>(火)

○昨日、所用があって西新宿に出かけました。久しぶりに出かけてみると、通行人は相変わらず多いのですが、一時は名物とまで言われたホームレスもいないし、拍子抜けしてしまいました。何と言うか、昔はもっと緊張感のある街だったと思うのです。そういえばここでは、その昔、バス放火事件という惨事がありました。最近は新宿を舞台とする凶悪事件は減っているんじゃないでしょうか。それはもちろん結構なことですけれども、新宿という街が持つパワーはなだらかに低下しているような気がします。

○2日前、歴史に残るような凶悪通り魔事件が発生しました。場所は秋葉原。おそらく、今、日本でもっとも話題の多い街。オタクの聖地、メイドカフェ、中国人観光客、そして麻生閣下。ところが街が磁力を有するようになると、凶悪事件まで招き寄せてしまうようです。平和な日曜日に、犯罪者と被害者たちが招き寄せられるかのように1箇所に集まったかと考えると、まことにやり切れない思いがします。そして世界的に有名な“AKIHABARA”発の事件であっただけに、AP電などはこのニュースを繰り返し世界に配信したそうです。

○秋葉原について、以前、こんな文章を書いたことがあります(溜池通信、2004年12月24日号)


●秋葉原精神に学ぼう

 それにしても秋葉原という街は、なんというフレクシビリティを有していることだろう。かつてこの街は「白物家電のメッカ」であった。それが90年代になってから、「パソコンの街」に変貌を遂げる。21世紀の現在は、「アニメ・オタクの聖地」という役割が加わった。さらに最近では、「中国人観光客の巡礼地」という性格も加わった。メインストリートにも中国語の看板や呼び込みの声が増え、免税店に行くと中国人の店員が声をかけてくる。

 ほんの20年ばかりのうちに、これだけ何度も変身に成功している街は世界的にも類例がないはずだ。本来であれば、地域振興のモデルとして研究対象にすべき存在であろう。いや、それ以前に、「アキバ」は今や世界中の人々が訪れるグローバル・ブランドであり、「電子立国・日本のポータル」ともいうべき場所である。これだけの成功の陰には、どんなリーダーがいて、どんなビジョンがあり、行政による支援があったのだろう?

 答えは「何もない」である。

 秋葉原が何度も変身に成功してきたのは、長期戦略があってのことではない。特別にリーダー的な存在がいたわけではなく、まして行政の役割などはゼロに近い。秋葉原は中小・零細企業の集積地であって、彼らはメダカの群れがある時点で一斉に向きを変えるように、何度も変化を繰り返してきた。興味深いことに、秋葉原の歴史を振り返ってみても、個人の名前はほとんど出てこない。秋葉原を支えているのは、「明日はどうなるか分からない」という緊張感を共有する無名の人々なのであろう。

 考えてみれば、これぞ日本経済のサクセスストーリーの最たるものである。メダカの群れが向きを変えるとき、後ろのメダカは先頭のメダカを追って曲がるのではなく、全員が同時に動きを変える。メダカたちの間に、どんなコミュニケーションがあるのかは外からは分からない。が、そうやってメダカたちは難を逃れつつ泳いでいる。おそらく他国から見た場合、日本人の行動パターンはそんな風に見えていることだろう。

 官庁や大企業の間で「変われない日本」という評価が定着する中で、秋葉原は中小・零細企業が緊張感を持ち続け、柔軟な変化を遂げつづけてきた。2005年は是非、秋葉原が持つスピリッツを再評価したいものである。


○今回の事件はまことに残念でしたが、本当に、ここは日本が誇るべき場所だと思うのです。あんまり役にはたちませんけど、「ガンバレ、秋葉原!」と申し上げたいと思います。


<6月11日>(水)

○某所で講演会。テーマは毎度おなじみ、「新・貿易立国をめざして」。マネーを通してみる日本は暗いけど、貿易を通して見る日本経済の未来は明るいという話です。このストーリー自体は有効だと思いますけれども、最近は資源高やら金融不安やらで、世界経済の先行きがどんどん暗くなってきた。このままでは、外需主導で成長持続という筋書きが怪しくなってしまう。

○先日も、米国大統領と財務長官とFed議長が口をそろえて「強いドル」などと言うから、悪いものでも食べたんじゃないかと心配になってしまいました。こんな口先介入で円安ドル高になるというのも変な話で、こういう地雷は踏みたくなるのが市場心理というものではないかと思います。その心は「産油国の皆さん、ドルペッグを止めないでくださいね」ではないかとお察ししますが、このインフレ下で利下げをさせられる彼らとしては、なんともやりきれないところがあるのではないでしょうか。

○他方、新興国経済はやっぱり強いですぜ、というデカップリング的な状況も続いており、そこはまだ信じていいと思うのです。たまたま今週号のThe Economistに、"Building BRICs of growth”という経済分析コラムがあって、これがなかなかに面白い。一言でいってしまうと「インフラ投資が強いから、BRICsのブームはまだまだ続きますよ」ということになる。注目点をまとめておきます。


●史上最大の投資ブームが進行中だ。世界のインフラ投資の半分以上が新興国で行われており、2000年以来その規模は5倍になっている。今年、新興国での道路、鉄道、電気、通信などでの支出は経済全体の6%に当たる1.2兆ドルになりそうだ。米国経済が停滞する中でも、かかる投資が経済成長を向こう数年間は下支えするだろう。

●推計によれば、向こう10年間の投資総額は現在価値で22兆ドル。その43%を中国が占めており、対GDP比では12%にのぼる。ブラジル政府は昨年、3000億ドルの近代化4カ年計画に着手し、インド政府の5カ年計画には5000億ドル近いインフラ投資が含まれている。ロシアや湾岸産油国も、旺盛な石油歳入を投資に注ぎ込んでいる。

●ゴールドマンサックス社は、「収入」「都市化」「人口」の伸びの予想を使って、インフラ需要を予測するモデルを開発した。都市人口が1%増えるごとに、電力供給量は1.8%の伸びが必要になる。一人当たり収入が1%上がるごとに、0.5%の需要が伸びる。となると、今後10年間に中国では140%、インドでは80%の電力供給を伸ばす必要がある。空輸(空港も含む)はさらに需要の伸びが大きく、旅行客は次の10年で中国では350%、インドでは200%増えるだろう。

●ほとんどの新興国は、インドが赤字を抱える以外は均衡財政に近い。そしてより巨額の民間資金が必要である。そのためには投資家への十分なリターンの提供と、規制システムの改革が求められる。


○インフレ気味の世界において、インフラ投資はどうなっていくのか。ここが今後の注目点ではないかと思います。

○講演会の後で、聴衆の中から「お久しぶり」という声があって、見たら大学時代の同級生であるSであった。互いに別々の演劇サークルに所属していたという、とっても恥ずかしい間柄である。この年になって顔を突き合わせると、ますます照れくさい。名刺を見ると、先方はとても堅い職場で働いていて、しかも順調に出世を遂げている様子。ううむ、彼よりもワシの方がヤクザな人生を送っているとは意外、心外、予想外である。困ったものだ。


<6月12日>(木)

○いろんな人に会った一日でした。

○ケネディ・ニュージーランド大使。先月14〜15日の「パートナーシップ・フォーラム」は大成功でした。あの企画をゼロから立ち上げたのだから、外交官ここにあり、という感じですね。

青木由香さん。日本に来て、台湾のアーチスト、スミンさんとのライブをあっちこっちで共演中。最近はANAの機内誌にも寄稿していて絶好調。当方からも「お仕事」の話を持ちかける。

○福田和也さん。バブルの時代はどんなだったか、てな話をする。「含み益」という未実現利益を当てに、みんながお金持ちになった気分をエンジョイできた。あの頃、僕らは若かった。

○川村純彦提督。日中安保対話の後始末と、日米台三極対話の打ち合わせなどなど。お疲れ様でした。そういえば、佐藤空将も大変だったようです。

○夜は怪しげな会合へ。自民党はとってもピンチなのだそうです。と言われても、それはそうでしょうね、としか言いようがない。「やっぱり解散は出来ないね」ということになるのだけれども、永遠に回避するわけにもいかない。なおかつ、有権者が今の怒りを忘れる瞬間が来るとも考えにくい。今年の夏も政治は荒れそうだな。


<6月13日>(金)

○忘れないように、今週出会ったよい言葉を書き留めておきましょう。

●「デフレは年寄りの時代だったが、インフレは若者の時代である」(福田和也氏)

――貯金よりも借金が有利になる時代がやってくるのでしょうか?

●「利益分配に理屈はいらない。ボスが居ればそれでいい。しかし負担の分配は理由を説明しなければならない。そのためには真のリーダーが必要になる」(斉藤健氏)

――逃げずに10分間説明すれば、後期高齢者医療制度も納得してもらえるそうです。最近の自民党上層部は、それをしていないように思えるのですが。

●「アメリカは産油国に向かってはドルペッグの維持をお願いし、中国に向かっては人民元の切り上げを要求している。どこがどう違うのか」(滝田洋一氏)

――いつものことですが、「良い問いは答えよりも重要」であります。

●「最近の新宿は人が減っています。新幹線の『のぞみ』が通ったために、人の流れが東京駅や品川駅方面に向かっています」(藻谷浩介氏)

――秋葉原が通り魔犯を呼び寄せてしまった背景には、こんな事情もあったのかもしれません。

●「11月4日にマッケイン政権が誕生したとして、翌年1月にインド洋給油法案が失効したら何と言われるか」(秋田浩之氏)

――どんな形にせよ、アメリカ大統領選挙は日本政治にダイレクトな影響を与えます。鉄則です。

○もっとほかにも一杯あったはずなのになあ。そのうち思い出すことにしましょう。


<6月15日>(日)

○インディアナ・ジョーンズ「クリスタル・スカルの王国」を見てきました。いやあ、いいですなあ。おなじみの音楽に、ちょっと年をとったハリソン・フォード。悪役のパターンも従来の路線を踏襲。脇役陣や新顔も想定の範囲内である。でもって、展開される冒険活劇や笑いのネタも、昔とあんまり変わっていない。ああ、なんて懐かしい。これはもう、いいとか悪いとかいう映画ではない。1980年代にたくさん映画を見たワシのようなものにとっては、同窓会に出ているようなものである。新しいことは何もないけど、とにかく楽しい。個人的な事情を申し上げると、上海馬券王先生と一緒に飲んでいるときは得てしてこんな感じなんだよな。

○このシリーズ、古代文明が出てくる。第1作はエジプト、第2作はインド、第3作は中近東、そして今回は南米である。ネタ元としてはまだ中国が残っているが、果たして第5作はできるかどうか。まあ、この辺で止めておくのがよさそうな気がします。ルーカス&スピルバーグとしては、『ロッキー』と『ランボー』シリーズの復活に何がしかの影響を受けたのかもしれませんけれども、同窓会は時々やるから値打ちがあるのであって、過ぎ去った日々は二度と帰らない。映画が終われば、観客には今という現実が待っている。若い頃を思い出すのも、ときどきにしておいた方がいいです。


<6月16日>(月)

○朝日放送『ムーブ!』のために大阪へ。月に一度の武者修行のつもり。いやあ、ホント、大阪の番組はおもろいでっせ。

○例えば本日、2本目のニュースによると、西成の労働者が警察に猛抗議。それが何と3日連続であるという。逮捕者はすでに15人に達しているとのこと。こんなの東京のメディアは全然伝えてませんがな。西成地区の労働者は数が減り、高齢化も進み、しかも近頃は建築工事が減るなど、いろんな事情が重なっているのだそうだ。それに若い世代はケータイで仕事を探したりするので、あいりん地区で職探しをしているのは文字通り高齢者ばかりになっているとのこと。

○西成署への不信感は、半世紀前から続いていること。それでも暴動という形になったのは1990年以来のことなのだそうだ。世の中がデフレからインフレに変わってくると、世の中全体が低血圧から高血圧に変わってしまい、暴動の発火点が下がってくるのかもしれません。ちなみに今日のコメンテーター陣は、勝谷誠彦さんに鈴木邦男さんですから、「困ったことですねえ」ではなく、「もっとガンバレ」みたいなコメントになる。いやあ、すごいです。勉強になります。

○番組終了後、中央官庁から当地の某大学教授に転じたTさんとその仲間と飲み会。T教授、初日の授業で「大阪万博」の話がまったく通じず、愕然としてしまったとのこと。まあ確かに、1970年のことといったら、1980年代後半生まれの学生にとってはあまりにも遠い昔。かんべえも、先日の中央大学での一こまだけの講義で、「今の学生さんたちにとっては、レーガン大統領がアイゼンハワーのようなもの」であることを学習したところである。例えば為替のことを教えるときに、「プラザ合意なんて知らないよ」という世代に何を言えばいいのか、などと考えると相当に悩ましい。およそ社会科学系の学問においては、近現代史が非常に重要なのですが、「物心がついたときには21世紀」という世代に、どうやって教えていけばいいんでしょうか。


<6月17日>(火)

○内外情勢調査会の仕事で川口市へ。人口50万人、埼玉県第2位の堂々たる首都圏中核都市。でも、あんまり用事のない場所なので、ワシ的にはこの駅に降りるのは初めてである。10時50分に赤坂駅を出ると、11時半には着いてしまう。とっても近いのである。

○川口市といえば、キューポラのある街、ということになっている。かつては町全体に鋳物の独特のにおいがしていたのだそうだ。が、今ではそんな雰囲気は微塵もなくて、駅前から見渡す限り高層マンションが林立している。どうやら工場が移転するたびに、その跡地にマンションが建ったと見える。「元が工業都市」であったために、ユニークな発展を遂げたようだ。55階建てのエルザタワーとか、外国人人口がめっぽう多いとか、いろいろに話題が豊富である。信用金庫が2つある、というのも相当にめずらしいのではないか。

○ちなみに「アド街」の川口市のランキング(3月8日放送)はこちらをご参照。「オートレース」とか「たたら祭り」なんてのもあります。なかなかに楽しそうです。

○東京近郊の都市というと、どこでも似たり寄ったりと見られがちであるけれども、実はひとつひとつまったく違う。特に埼玉や千葉は、県としてのまとまりがない一方で、それぞれの市の個性が強い。端的にいうと、隣同士の市は仲が悪かったりする。毎度のことながら、こういう多様性こそが、この国の財産であり強みであると思うのだが、そもそもそういうことはあまり自覚さることも少ないようだ。いろんな場所を訪れてみる、というのは、それだけで値打ちのあることなんじゃないかと思います。


<6月18日>(水)

○尖閣諸島周辺で起きた船舶の接触事故が原因で、日台関係が緊張していた件は、急転直下で収束に向かいつつあるようです。両国間の非公式折衝があり、そこで台湾側が矛を収めた模様。何はともあれ、ホッとしました。

○尖閣諸島は日台間のトゲであります。領土問題という面子だけでなく、漁業という実利もからんでいる。台湾漁船はたびたび海上保安庁に拿捕されて罰金を取られるものの、それでも操業は日常的に行われている。しかもコスト面から、実際に漁を行っているのは雇われの中国人である、というややこしい事情がこれに加わる。さらにいえば、尖閣問題は中国側が台湾との関係を改善し、日本との離反を促すために使う「カード」でもある。また、馬英九新総統にとっては、尖閣問題は彼が政治活動を始めた原点なので、容易に妥協できないという事情がこれに加わる。

○それでもちゃんと問題を収拾できてしまうところが、いつもながらの台湾の柔軟さです。およそ現実主義外交というものは、譲歩するときの足並みの綺麗さで真価が問われるものですが、おそらく後腐れなく処理してしまうんじゃないでしょうか。でないと、「親中になった日本は、台湾と距離を置き始めた」という評判が立ってしまいます。

○で、かんべえにとって他人事ではないのは、この件で許世楷大使(正確には駐日代表だが、実質的には特命全権大使)が本国に戻され、しかも辞意表明されてしまったことです。日台次世代対話など、たくさんお世話になっている恩人でありますので、まことに残念であります。(この方も嘆いておられます)


●許世楷代表の辞任認める 台湾・馬英九総統(産経:2008.6.17 22:33)

 【台北=長谷川周人】台湾の馬英九総統は17日、台北駐日経済文化代表処の許世楷駐日代表が表明した辞意を認める考えを表明した。総統は「過去数年来、台日関係に一定の貢献をした」と許代表の功績を評価しながらも、劉兆玄行政院長(首相)と欧鴻錬外交部長(外相)から意見聴取し、判断した。

 15日に召還された許代表は、尖閣沖で起きた衝突事故で台湾側の冷静な対応も重要としたのに対し、与党・中国国民党の立法委員(国会議員)が「台奸(台湾の売国奴)」などと批判。許代表はこれに抗議し、立法院(国会)での事故に関する説明を拒み、辞意を表明した。

 馬総統は、衝突事故が未解決の上、立法院への説明義務を屈辱を受けたという理由で怠り、辞意を表明したのは「遺憾だ」とした。外交部(外務省)によると、許氏の後任が決定するまで代表ポストは空席とし、羅坤燦副代表が代行するという。


○もっとも許世楷大使は、すでに6月1日にホテルオークラで「辞令なき送別会」を済まされていたようです。安倍前首相など800人以上が集まり、4年間にわたる日台関係における功績をたたえていたとのこと。もとより独立派の闘士であった許世楷さんが、国民党政権下で任期が延長されるとは考えにくく、お別れの挨拶はすでにされていたのですね。察するに覚悟の上の帰国であり、腹をくくった上での辞任であったものと思われます。

○ところが各種報道をみると、許世楷さんが台湾に戻って「事件について立法院で説明せよ」という要請は、国民党によるイジメにほかならないことが分かります。「反日」が主眼ではなく、「反独立派」が目的なんですね。さらにいうと、本件は国民党内の守旧派が、若い馬英九新総統に対して揺さぶりをかけているという図式も見えてくる。つまり「反日」に名を借りた「党内闘争」なんです。いやあ、奥が深い。

○この手の「指桑罵塊」方式は、中国政治ではよく見られる現象です。批林批孔運動の例が有名で、歴史上の人物を罵るふりをして、四人組が叩いていたのは周恩来でした。こういう調子ですから、つくづく中国人の言うことは素直に受け止めちゃいけません。日本などはしょっちゅう叩かれていますが、本当に非難されているのは別の人、てなこともよくあるらしいのです。でも、日本側は真に受けてしまうので、本気で怒ってしまう。日中間のコミュニケーションは、これでどれだけ損をしていることか。

○それにしても、国民党が政権をとると、台湾政治も急に中国っぽくなってしまった、という点がまことに面白い。内心、あまり歓迎したくはない事態ではありますけど。


<6月19日>(木)

○防衛大の神谷教授&ナベさんの3人でオタク話。国家戦略やら安全保障やら米大統領選挙やら。用件はすぐに済んでしまうのだが、ついつい話は尾を引いて、各方面に脱線する。

○アメリカのTVでは、まだ"Wheel of Fortune"をやってるぞ、という話で盛り上がる。司会者はもちろんだが、アシスタントの女性も化け物じゃないかと思うくらい、昔から変わっていない。要はゲストにバンバン賞品を配ってしまうクイズ番組の元祖であるが、番組の中身を全く変えずに今日に至っている。おそるべきマンネリズムである。だってこれ、週5回放送の30分帯番組ですぜ。察するに視聴率競争は日本と同様に厳しいはずなので、視聴者が「いつもと変わらぬ味わい」を求めているのであろう。

○似たようなところでいうと、"Jeopardy"(日本では『クイズグランプリ』)や"Family Feud"(日本では『クイズ百人に聞きました』)なども続いているらしい。信じられないくらいの長寿番組である。日本ではそれらを真似して誕生した番組は、とっくの昔に打ち切られている。どうでもいいことだが、"Family Feud"は司会者が女性ゲストに対してやたらと馴れ馴れしいとか、カウンターに肘をついて話をするとか、関口宏はまんま真似していたのです。今日の「東京フレンドパーク」は、日本オリジナルの番組のようでありますけれども。

○実はアメリカ人は、毎日の食事もテレビ番組もライフスタイルも、全然変わらないままに過ごしているように見える。そこへ行くと日本人は飽きっぽいので、春はタケノコ、秋にはキノコ、最近のみのさんはちょっとくどいよね、月九も次はキムタクから変えましょうか、などと細かな変化を求めて止まない。実はこの部分の日米の差異は、ほとんど自覚されていないんじゃないだろうか。保守的に見える日本人は実は飽きっぽくて、いつも変化を求めているように見えるアメリカ人は物事を変えたがらない。とりあえずテレビ番組には、そんな傾向があるらしい。

○つい先日、"Meet the Press"のキャスター、ティム・ラッサートが急死したけれども、ああいうことでもない限り、アメリカの番組のレギュラーは変わらない。さもなくばダン・ラザーのように、事件で追われてしまうとか。「そろそろ視聴者が飽きてきたたから、ラリー・キングさんには降りてもらいましょう」みたいな発想はまず出てこない。”The Oprah Winfrey Show"は、日本で言えば『徹子の部屋』だが、3000回を越えて続けられている。黒柳徹子は見かけなくなったけれども、オプラはオバマ応援団としても大活躍である。キャスターが偉過ぎるのか、それともオリジナリティを尊重する精神からか、それともやはりアメリカ人はマンネリが好きなのか。

○そこへ行くと日本の番組は人がよく変わる。『報道2001』は、とうとうあの竹村健一さんを降板させちゃったし、日経CNBCも長く続いた三原淳雄さんの番組をとうとうやめちゃいました。(三原御大といえば、今週のこの記事「ひっくり返る世界」は感動ものでした。ご一読をお勧めします)。似たようなところでいうと、「タハラが嫌いだからサンプロは見ない」てなことをおっしゃる方によく会うのですが、くれぐれもワシをメッセンジャーにしようとするのはご勘弁ください。

○で、そもそものオタク話に戻って、「ネオコンの挑戦と挫折」という形で、アメリカにおける国家戦略のケーススタディにしてはどうかという話が出た。後で、「そういえばPNACのホームページはどうなったのか」と思って開いてみたところ、なんとなくなっていました。ガーン!

http://www.newamericancentury.org/

○ウィキペディアによれば、5月20日になくなった模様。

The Project for the New American Century (PNAC) was an American neoconservative think tank based in Washington, D.C., co-founded as "a non-profit educational organization" by William Kristol and Robert Kagan in early 1997. The PNAC's stated goal is "to promote American global leadership."[1] Fundamental to the PNAC are the views that "American leadership is both good for America and good for the world" and support for "a Reaganite policy of military strength and moral clarity."[2] It has exerted strong influence on high-level U.S. government officials in the administration of U.S President George W. Bush and strongly affected the George Bush administration's development of military and foreign policies, especially involving national security and the Iraq War.[3][4][5]

As of May 20, 2008, The Project for the New American Century website was inoperable. A message saying that the account has been suspended and to contact the billing department was put on the site's page.

○PNACはつぶれてしまったんでしょうか。ワシントンの事務所も訪ねたものですが。元「本邦初のネオコンウォッチャー」としては、チト寂しい思いを禁じえません。


<6月21日>(土)

○ガソリンスタンドに行く。50リッター弱で8000円を超えた。どっひゃー、である。リッター166円。いつもならかならず言われる「洗車はいかがですか?」というセリフが、今日は出なかったのも無理はあるまい。しかし考えてみれば、前回行ったのは3月末であり、今年に入ってからわずかに3度目の給油である。週末しかクルマを使わないドライバーだし、行き先もスーパーとか外食とか図書館くらいなので、こんなので大騒ぎしていてはバチが当たるというものであろう。

○で、あまりパッとしないカーライフなんですが、最近、ひとつだけ変化が生じました。これまで、ラジオのチューナーはJ-WAVE(81.3)に合わせっぱなしだったのですが、最近はNACK5(79.5)に変えたんですよ。おしゃれなJ-WAVEに比べると、旧エフエム埼玉の番組には独特な魅力があるのです。

(1)まずCMがしょぼい。「蕨市のパチンコ屋」さんや「埼玉県の不動産屋」さんなどがスポンサーになっている。やはりFM放送は、これくらい地域密着でなければ。

(2)野球中継の西武ライオンズびいきがあからさまで、いっそすがすがしい。

――アナウンサーが、「いやー、今のがファールですかねえ」「不本意ながら、ライオンズ5回の攻撃は零点に終わりました」などと言う。これに比べれば、昔の中村鋭一の放送などは可愛いものであった。そうかと思うと、「最近はGG佐藤が全国区になって、うれしいですねえ」などと殊勝なことを言っていたりする。確かにGG佐藤は、星野ジャパンの4番の座を新井と争うことになるだろうなあ。

(3)土曜の午後に登場するバカボン鬼塚の語り口がとってもテンションが高い。よくあの状態を何時間も続けていられるものだといつも感心する。同じ土曜日の午後でも、クリス・ペプラーさんの声を聞いているのとはえらい違いである。

(4)ノリのいいリスナーが多く、レスポンスがよく練れている。先日、「お一人様」というお題がかかっていたときに、「私はよくひとりで鍋物の店に出かけます」というお便りがあったのでぶっ飛んでしまった。

○ラジオは温かみのあるメディアだと思います。とくにクルマを運転しているときは、そういう暖かさがグッと来ることがありますね。


<6月23日>(月)

○今日は会社をお休み。本来は完全OFF日にしようかと思っていたところ、こういう日に限って娘が授業参観日の代休だということで家に居る。しょーがねえ、ということで配偶者の提案により、大宮にある「鉄道博物館」へ。天気はいまいちだが、鉄博に行くのにクルマでというわけにもいかんので、東武野田線で柏→流山→野田→春日部→大宮と1時間ちょっと揺られてみる。この路線、車窓の風景がとっても地味でいい感じである。

○入場料をSUICAで払う、というところが面白い。大人1000円はまあ妥当な線だと思います。平日だというのに、家族連れが多い(ウチもそうだが)。運転シミュレータなどを体験したい人たちは、それこそ開館から待っている模様。こっちはそこまで筋金入りではないので、展示物を見るだけで十分に満足でありましたな。国鉄時代からの歴代の車両がずらりと揃っている光景はまことに壮観。これは見ているうちにどんどん鉄オタになってしまいます。

○個人的にはブルートレインが懐かしかったですね。昔はよく「北陸」で上野と富山を行き来したものです。若い頃には、夜行列車のひとり旅がいかにも「大人になった」という感じで楽しかったものです。一度、初めて「いしいひさいち」の漫画本を買って寝台車に乗り込み、深夜に笑いが止まらなくて困ったことがある。あれは周囲の人は迷惑だっただろうなあ。今では移動と言えば飛行機と新幹線ばかりになってしまいましたが、無意味な電車の旅をしてみたいものです。

○それにしてもわが国の鉄道好きと言うのは、いささか度が過ぎたほどであるかもしれません。時刻表マニアがいたり、それをネタにした推理小説のジャンルがあったり、むちゃくちゃ精巧な模型を売っていたり、やたらと写真を撮る人がいたり。そもそも日本人がこれだけ時間に正確になったのは、おそらくは鉄道の運行が時間通りに行われているからではないかと思います。だって明治時代以前は、「分刻み」の時間の単位なんてなかったわけですから。われらが鉄道遺伝子というものは、端倪すべらからざるものがあると思います。


<6月24日>(火)

○コメントの掲載誌が2誌届いた。週刊現代と週刊朝日である。この2誌は、あんまり読んだことがない。

○前者は福田和也氏の「平成フラッシュバック」の記事で、先日、取材を受けたもの。テーマはバブル経済の前後。団塊世代向けの雑誌らしく、「バブル経済は、団塊世代が引き起こしたのではないか」という筋書きになっている。ここで引用されている「昼間のオレたちが、夜のオレたちを苦しめる」というセリフは、バブルの頃に金融関係の人がよく言っていたこと。あの頃は、「♪今日もお酒が飲めるのは、地上げ屋さんのお陰です〜」なんて宴会芸もあったなあ。

○後者は「黒いケネディ」と題するバラク・オバマ候補のグラビア記事。最近になって思うんですが、改革者と呼ばれるような人は、ケネディのように僅差で当選していることが多い。あるいは大向こうの予想を裏切ってその地位に着く。逆に悠々逃げ切りで大楽勝、なんて指導者はあんまりその後がよろしくない。小泉さんと安倍さんは、つまるところその辺の違いが大きかったんじゃないか。「フロリダ再集計」という薄氷を踏んで当選したブッシュ大統領は、そういう意味ではまことに画期的な指導者だったわけですが、試みた大実験はことごとく失敗であったようです。

○ともあれ、オバマとマッケインはどっちが勝つにしろ僅差になるんじゃないだろうか。なにしろ次期大統領は、思い切った改革者になってもらわないと困るので、悠々セーフでは困るのです。最近の世論調査では「オバマが大きくリード」になっていますが、それはあくまでも「ご祝儀相場」なんだろうと思います。そういえば、こんなジョークを見かけました。「マッケインに勝って欲しいんだが、だからと言ってヒラリーが喜ぶところは見たくないんだよな」。――共和党支持者の間では、こういう気持ちがあるんじゃないでしょうか。

○ということで、帰りの電車の中でいつもは読まない週刊誌を読んでしまう。そしたら『週刊現代』は「アキバ通り魔の弟 独占手記 衝撃の第2弾」だし、『週刊朝日』は「無差別殺人犯の系譜と親との関係 若者に気をつけろ」である。読んでいるだけで、カルマが溜まりそうな記事である。でも、ついつい読んでしまうので、しみじみ気分が滅入る。そこで口直しにと今週の『SPA!』を開いてみたところ、こちらは「自称・アキバ通り魔予備軍たちの告白」てな記事がある。うーん、週刊誌とは、つくづく業の深い世界よの。そしてその読者も。

○今日の明るいニュースは、歯医者さん通いがとうとう終わったこと。なにしろ5箇所も直したから、全部で3ヶ月もかかってしまった。金属部分がまたまた増えた。でもこれから先の人生も、モノを食べなければ生きていけないので、まだ残ってくれている歯に感謝。大事にしましょう。


<6月26日>(木)

○午後4時15分に飛行機が空港に着陸すると、4時30分にはホテルにチェックインできてしまう。さすがは福岡。これでもう3年連続になるのですが、6月25日に日経新聞西部支社主催、前田証券協賛のMYマネースタイルセミナーの講師を務めました。毎回、好評のこのシリーズ、今年はお天気が今ひとつのなかで、ホテルニューオータニ福岡の会場400人分の席が埋まりました。感謝であります。

○今回のセミナーの後半戦は、BNPパリバ証券の島本幸治さんとのディスカッションでした。けっこう古い勉強会仲間なので、リズムの良いやり取りになったかと思います。今回のテーマは、ずばりインフレ。今の世界経済は完全にインフレモードです。この夏には、全人口の3分の2が二桁インフレに苦しむという見通しもある。そんな中で、日本でも物価上昇→金利上昇となるかもしれない。島本さんの見解では、「このあと2010年に向けて、10年もの国債の利回りが2.5%を超えてくるようだと、日本経済は黄色信号」とのことでした。本当はこういうことこそ、政治が議論すべきなのでありますが。

○ところで、藻谷浩介さんの『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社)によれば、「日本一元気な大都市地域は、やはり福岡都市圏」とのこと。藻谷さんの分析によれば、「平地や水資源に乏しく、工業が発展しなかった」お陰で福岡市は出遅れたのだが、そのお陰で「福岡への若者流入は、経済のサービス化が進んだ70年代になってから」。つまり、他の都市に比べて人口ピラミッドが若いことが、元気の理由であるという。少子高齢化の日本にとって、これは何ものにも勝る財産というものです。

○考えてみれば、プロ野球交流戦もわがタイガースを僅差でかわし、地元ソフトバンクホークスが優勝しました。王監督もほっと一息というところでしょう。そして福岡は間もなく「山笠」の季節。お神輿を担ぐ祭りはどこにでもありますが、700年以上の歴史を持ち、7月1日から15日までという長期戦で、しかもタイムトライアルをやるというから半端ではありません。この上、ゴールデンウィークには「どんたく」があるわけですから、本当に「とてつもない」(C:地元の閣下)街であります。

○で、ワシとしては、「魏志倭人伝にいう奴の国に始まる2000年の歴史」についてもっと知りたいので、本当は今日は観光したかったのであります。でも、まことに残念なことに、午前10時に社内の会合予定を入れられてしまった。でも、7時の飛行機(JALとANAの両方がある)に乗れば、余裕で間に合ってしまう。これはもう、日本中でここ以外にはあり得ない離れ業だと思うのですが、6時前にホテルをチェックアウトすれば、楽勝なのです。しかも午前6時台の空港では、レストランはもちろん、土産物屋も空いている! 信じられませ〜ん。くれぐれもこの街が、新空港建設などという誘惑に駆られないように切に祈ります。


<6月27日>(金)

○このところ経済がらみの仕事が続いているのですが、昨晩と今日のお昼は久々に安保関係の顔ぶれの会合でした。例によって谷口さんやらナベさんやら、共通する顔ぶれも居たりします。ハッと気がつくと、こっちの世界も経済に負けず劣らず大荒れなのでありますな。アメリカはとうとう北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除しちゃうし、中国の国内情勢は混沌としているし、韓国と台湾の両新政権はいずれも非常に頼りないし。世界中が「スモール・ポリティクス」になっているような気がします。

○そんな中で、洞爺湖サミットも近づいています。今回のG8サミットでは、もちろん福田首相に頑張ってもらう必要がありますけど、密かにキーマンになるんじゃないかと思っているのが、このたび復権を果たしたイタリアのベルルスコーニ首相です。というのは、以下のような条件を備えているのです。

(1)G8サミットに過去6回出場経験あり。ブッシュ大統領(7回)に次ぐベテランである。来年になれば、もちろん第1位に昇格する。

(2)初体験の1994年はナポリサミット。会議中に金日成が死去して大騒ぎ。2001年はジェノバ・サミット。反グローバル派のデモを受け、「荒れるイタリア場所」のジンクスを地で行った。

(3)洞爺湖の次、2009年はイタリア開催。つまり3度目の議長に当確。ポスト京都議定書の締め切りに当たる会議を主催することになる。

○今回、日本が狙っているセクター別アプローチの提案は、EUから見れば甘過ぎるし、途上国から見ればキツイ。そして米国は「選挙が終わるまで待って」のモード。どう考えても、洞爺湖では決まらないでしょう。福田さんも、あんまり無理しない方がいいんじゃないでしょうか。ちょっと気が早いですけど、「荒れるイタリア場所」が楽しみだと思います。


<6月29日>(日)

○近頃、変なことにはまっています。今年1月にPCをXPに変えたことで、ゲームに「スパイダーソリテア」が加わったのです。これの中級編(赤と黒の2種類)が面白い。ほかのことをしながら、ついつい「新規ゲーム」をスタートさせてしまう。現にこうしている間も・・・。ああ、煮詰まってしまった。

○現時点で82勝140敗の勝率36%でハイスコアが1173点。うまくいかないと、「元に戻す」を使ったりするので、勝率的にはわりと高いです。こだわりは「連勝」で、今のところ4回が最高。5連勝は難しいです。まあ、3割打者でもなかなか「5打席連続ヒット」は出ないのと同じ理屈です。ほとんど中毒しているので、煮詰まってしまうとすぐニューゲームが始まります。

○別に遊んでいるわけではないのです。雨に降り込められた週末、「SPA!」の連載やら、「外交フォーラム」の原稿やら、来週の講演の準備やら、溜池通信の更新やら(宝塚記念だって買ってないんです!)、とっても地味にPCの前に座っているものだから。と、言ってる間に2連敗。くやしい。


<6月30日>(月)

○岡崎研究所が定期的に行っている「日米台三極対話」の2006年東京会議の席上で、アメリカ側参加者のランディ・シュライバーが「2008年はパーフェクトストームになるかもしれない」と言っていたことをふと思い出しました。このシュライバー氏、アーミテージ一家の若頭みたいな存在で、見かけは優男だがノリは体育会系、というナイスガイを絵にかいたような人物ですが、それ以前には「米中関係は相互確証破壊(MAD)の経済版」という名セリフも残していて、こちらは溜池通信などで何度も紹介した記憶があります。

○さて、「パーフェクトストーム」というと、2000年ごろにそういうハリウッド映画があったので、単純に「2008年は大嵐の年だ」と解していたのですが、もうちょっと深い意味があるらしいのですね。ウィキペディアを引くと、"Perfect storm"はこんな風に説明してある。

The phrase perfect storm originates from the 1997 book The Perfect Storm which refers to the simultaneous occurrence of weather events which, taken individually, would be far less powerful than the storm resulting of their chance combination. Such occurrences are rare by their very nature, so that even a slight change in any one event contributing to the perfect storm would lessen its overall impact.


○つまり、同時発生的に数箇所で起きた天候の変化が、相互作用を起こして巨大な災害をもたらすというのが「パーフェクトストーム」であって、「バタフライ効果」や「シナジー」に近い意味を持つらしい。2008年という年は、米大統領選、北京五輪、台湾総統選など、いくつものイベントが重なるので、思いもかけぬ方向に物事が発展していくかもしれない、ということを言っているわけです。

○その2008年は、まさに今日、その前半戦を終了したわけですが、経済と安全保障の両面で嵐が発生してしまい、なるほどこれはただ事ならぬ状態に進みつつあるという感があります。特に経済面はひどいことになっている。昨年夏に発生したサブプライム危機という台風は、2つの方向に広がって惨事を拡大している。ひとつは米国経済の内部であり、住宅市場の下落および金融機関の経営悪化という問題を引き起こしている。そしてもうひとつは全世界的なインフレであり、米欧当局が踏み切った大規模な金融緩和が資源バブルをもたらしている。

○ここでまことに悩ましいことがある。つまり米国内の住宅&金融問題には金融緩和が必要であり、それは日本の前例を見ても自明のことである。ところがグローバルインフレの治療では金融の引き締めが必要である。そしておそらく、7月3日になればECBは利上げを行うだろう。Fedがそれに追随するかどうかはかなり悩ましく、「国内の住宅&金融問題とグローバルインフレ」のどちらを優先するか、腹をくくらなければならない。その場合、「不況で国はつぶれないが、悪性インフレでつぶれた政権はナンボでもある」という故事に学び、秋から利上げに踏み切るのではないか、というのが現時点のワシの読み筋である。

○となると、この間の為替の動きなどはかなり危なっかしい。教科書的には、「米ドルが利上げに向かうからドル高」となるけれども、大統領と財務長官と連銀議長の3人が勢ぞろいして「口先介入」を行うという辺りからしてかなり心もとない。為替市場というものは、この手の地雷があれば、誰かがかならず踏みに来るものではなかったか。92年のイギリス、94年のメキシコ、97年のタイ、98年のロシアなど、「わが国の通貨は大丈夫」と言うそばから狙い撃ちされていったものである。2008年のアメリカだけは例外になると誰がいえようか。

○こういう経済面の不安に加えて、安全保障面でも不穏な空気が流れているような気がする。例えば中東。米大統領選挙はオバマ候補優勢になっており、オバマの外交方針は「話し合い路線」である。では、次期大統領は「悪の枢軸」とでも話し合うのか、ということになったとき、イスラエルは果たして黙っているだろうか。イランの核施設攻撃、みたいな挙に出るのではないか。

○上記はかなり極端なケースだが、北京五輪が大荒れになってしまう、という可能性だってなくはない。吹浦忠正さんが指摘している「北京五輪10の杞憂」をご覧ください。東京五輪の実務を体験されているだけあって、以下のような懸念が単なる「杞憂」とは思われません。

@ 大会期間中に地震、テロ、国内での暴動、新型ウィルスによる感染症が発生すること。

A 中国と台湾が統一チームとなること。

B 星条旗、英国国旗など主要国の国旗が逆掲揚されること。

C 開会式のさなかに、選手・役員または観客席でチベットの“国旗”が振られること。

D 中国の偏狭な愛国主義が昂揚して、反日的な観衆がいたりして、応援がアンフェアになること。

E 競技施設工事が間に合わなかったり、手抜き工事で競技施設が崩壊すること。

F 器具に不具合が生じ、競技が中断したり、選手が怪我をしたり、情報機能が混乱すること。

G 新たな国が核実験をすること。

H 競技中にものが投げ入れられたりして、競技の継続に支障がおきること。

I 台湾の選手が入賞した際に、表彰式が混乱すること。


○ほかにも「開会式に金正日が出席して、ブッシュ大統領と鉢合わせする」など、いくらでもトラブルの種はある。こんな風に、経済面と安全保障面の両方の嵐が重なって、予想もつかない騒ぎに発展してしまうんじゃないか。ということで、この夏は「パーフェクトストーム」にご用心。――ちなみに「7月1日」は、例の「足して8になる危険日」に当たりますぞ。(当不規則発言の6月2日分をご参照)







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by Tatsuhiko Yoshizaki