●かんべえの不規則発言



2017年10月







<10月1日>(日)

○フジテレビの『報道2001』、NHKの『日曜討論』を見ていたら、民進党の前原代表が出ていない。そりゃそうだよね、「希望の党」に合流するつもりなのだから。その代わりに希望の党を代表して出ているのが若狭さん。でも、いかにもパシリ感が否めず。なにしろ小池都知事の最側近と言われつつ、一瞬でハシゴを外されてしまう人ですから。つくづく小池さんは昔の小沢さんと同じ独裁者。側近と言えどもその心中は分からない。小池さんは人当たりのいい小沢さん、といったところか。

○ワシ的にはまったく分からない。党が丸ごと希望の党に移れるなんて絵空事を、なぜ民進党の皆さんは信じたんでしょう。小池さんはハッキリ選別すると言っていたじゃないですか。あの人から見たら、「リベラル」=「えんがちょ」なのだと思うのです。安保法制は憲法違反だと言ってるような人を、彼女が受け入れるはずがないと思うのです。

○ところが民進党は希望の党への合流を正式に議決してしまった。前原代表はどう言って説得に成功したのやら。意図的に騙したとは思わないのですが、騙された側の心理の方が興味深い。自分のことになると、人はついつい甘い判断をしてしまうものなのでしょうか。

○ところでふと気がついたのだが、今回、話題になっている議員さんはなぜか「4区」が多い。


●「このハゲー」で離党した豊田真由子さんは埼玉4区。

●不倫問題で出馬辞退の中川俊直さんは広島4区。

●スキャンダルで自民党を離党した武藤貴也氏は滋賀4区で再挑戦。


○そうかと思うと、神奈川4区は浅尾慶一郎さんだし、群馬4区は福田達夫さんだし、まともな人だっているのです。それに山口4区は安倍晋三さんだったりして・・・。ちなみに小沢一郎さんの選挙区だった岩手4区は、今回廃止されて3区に統合されたのだとか。日本全国、4区もいろいろであります。


<10月2日>(月)

11月5日、××カントリークラブは絶好の好天に恵まれていた。

「どうです、トランプ大統領。この季節の日本はすばらしいでしょう」

「まったくだ、シンゾウ。今日はすごくいいスコアが出るような予感がするぞ」

「いっそのこと3年後の東京五輪も、この季節に開催できるといいのですけれども・・・」

「あははは、そりゃあダメだ。3年後のこの時期は、俺は大統領選挙のまっ最中だよ」

そういうと、トランプ大統領は大笑いして見せた。安倍首相は少しだけ付き合い笑いをして、そこで後ろを振り返って目配せをした。

「ところで大統領、ご紹介したい人が居ます。ミズ・小池。東京都知事です。わが国最大野党の「希望の党」党首でもあります。私にとっては実に手強いライバルです。ただしこのたび発足した第4次安倍内閣では、五輪担当大臣を兼務してもらうことにしました。なにしろ国難のさなかですからね。野党といえども閣僚の1人というわけです」

トランプ大統領は、大きな身体を折りたたむようにして小池都知事と握手をした。

「マダム・コイケ、お噂は聞いていますよ。先月の選挙ではシンゾウをきりきり舞いさせたとか。日本初の女性首相を目指しておられるとのことですが、もう少しだけ待ってもいいですよね。私の友人であるシンゾウに、時間を与えていただきたい。とりあえずあのリトル・ロケットマンを退治するまではね」

「聞き捨てならないことをおっしゃいますわね。ミスター・プレジデント」

小池都知事が優雅に笑いかけた。

「Xデーは、いつになさるおつもりかしら」

「うーん、マダム、それはまだ決めていないのだ。この後、私はソウルに行ってあのムーン何とか大統領に会って、それから北京で習近平に会って、ついでにベトナムのAPECとフィリピンの何とか会議に出なきゃいけないんだが、その間にマクマスターとマティスがプランをまとめてくれることになっている。何より地上軍を出すのは中国側だから、人民解放軍の準備が整わないことにはゴーサインは出せないのだよ。ところが中国の内部は誰と話せばいいのか、サッパリわからんのだ」

横から安倍首相が口を挟んだ。

「確かに先月の党大会も波乱だらけだったからね。いろんな情報が挙がって来ていたけれども、李克強が閑職に飛ばされて、汪洋が総理になったのにはちょっと驚いた」

小池都知事がトランプ大統領を正面から見据えて発言した。

「大統領にお願いがあるのですけれども、軍事オプションはなるべく寒い季節にやっていただけないかしら。できれば12月から2月の間に」

「ほほう、それはなぜ?」

「ボートピープルが大勢やって来ると困りますもの」

小池の発言に2人は思わず顔を見合わせた。トランプ大統領がまたも大声で笑いだした。

「わはははは。マダム・コイケは実にチャーミングなレディだ。いや、おっしゃる通り。ジャパン・ファーストで考えればまさにそうあるべきだ。シンゾウ、君も同じ意見だな?」

「・・・実はこの件については、かなり前から彼女とは話し合っているのです。朝鮮半島有事がこれだけ目の前に迫っているというのに、平和安保法制は憲法違反だ、などという野党が大勢居るのでは困ってしまう。いや、彼らだって引っ込みがつかなくなっているだけで、現実的にならなきゃいけないことは分かっているとは思うんですけどね。そこで小池さんに一芝居打ってもらったんです。私が国会を解散し、彼女が新党を立ち上げる。お蔭で民進党はバラバラになり、今の日本は保守二大政党。リベラル派の議員はごく少数派になってくれました。わが国の政治的安定度は格段に改善しました」

「ふうむ、面白い。アメリカもそんな風にならないものかなあ」

「大統領、ここだけの話、私はこの北朝鮮の問題が一段落したら、適当な理由をつけて総辞職するつもりでいます。そうなると憲政の常道として、野党第一党の党首である小池さんが組閣をします。自民党が野党になって、閣外協力をしながら憲法改正に取り組みます。いや、結局のところ、わが国で憲法を改正しようと思ったら、野党第一党がその気にならなきゃどうにもならんのです。そのことにやっと気がつきました。だから自民党は下野するしかない。もちろん、ひと仕事が終わった後は、また政権を返してもらいますけどね」

「うーん、何だか君たちがうらやましくなったよ。俺とヒラリーの間じゃ、そんな会話はまったく不可能だものなあ」

「大統領、野暮な話はこの辺にしておきましょう。実は彼女のゴルフの腕前は相当なものですよ。後はビル・ハガティ駐日大使が今日のメンバーです。さあ、今日は思いっきり楽しみましょう」


<10月3日>(火)

○日本はとうとう、「自民党対希望の党」という保守二大政党の時代に入ったのか、と思ったら、結局は「立憲民主党」という左派政党が復活し、天下三分の計と相成りました。確かにこの方がスッキリとはする。ただし安倍内閣を打倒する確率はぐぐぐっと下がった。票が割れますからね。ついでにいうならば、立憲民主党はたぶんそんなには議席を取れないと思います。まあ、朝日新聞や毎日新聞は応援してくれるでしょうが、票にはつながらないでしょうなあ。

○ここに至る過程で、なぜ保守の野党に期待が集まったかというと、いつまでたっても自民党内から安倍さんを引き摺り下ろそうという勢力が現れなかったからでしょう。でもそれは当たり前の話で、今の選挙制度の下で、国政選挙で4連勝もした党首に、党内から挑戦する人が出てくるはずがない。かつての自民党ではないのです。そこで外から挑戦してくれる小池さんが変に魅力的に見えた。でも、冷静になってみたら無理筋であった。そりゃそうだよ。早く気付けよ、てな思いがいたします。

○もともと「政権交代可能な二大政党制」を作るために、今の小選挙区制を導入したのです。だから安倍内閣を倒すためには、野党第一党に頑張ってもらうべきなのです。ところが民進党がどうにも衰退著しくて、政権を取るどころではなかった。このままだとなくなりそうだというので、最後は藁をもつかむ思いで小池さんの蜘蛛の糸にしがみついてしまった。そこでハシゴを外されて、ガラパゴス左派政党たる「立憲民主党」ができるわけですが、だったら最初からそうすればよかったのに。変な話です。

○もう過去形で語ってもいいと思いますが、1996年に結党した民主党は一度は政権奪取に成功したものの、その後はいいことがなかったですね。所詮は、自民党という太陽の光を浴びて輝いている月のような存在であった。有権者としては「一度で懲りた」。5年たっても、まだ民主党政権当時の怒りを覚えていて許してくれないのだから。失敗の原因を、「バカ」と「ズル」と「ワル」という個人の属性に帰してもいいのですが、やっぱり日本では本質的に「リベラル左派政党」は無理なんじゃないか、という気がしてなりません。

○この国でリベラル左派政党が成立するためには、@まず共産党と社民党が穏健化して合流してくれないと難しい。A安全保障で、ある程度現実的な政策を採らなければならない。B経済、金融、エネルギー政策などでも専門家を育てなければならない。C海外の首脳とちゃんと渡り合えるような党首を育てなければならない。ただし全部だめでしたな。子育てや年金や環境問題に一家言ある政治家は出てくるけれども、財政や安全保障問題を見据える人が居ない。強いて言えば野田佳彦首相は立派だったと思いますが、コアな民主党支持者は彼のことがどうもお嫌いなようです。それじゃダメだと思うんですよねえ。

○いつの日か日本でもトニー・ブレアのような首相が誕生して、ちゃんとした中道左派政権をつくる日が来ないとは限らない。ただし、支持者がもっと大人にならない限り、そういうチャンスはめぐってこないんじゃないかなあ。政治家を責めるのは簡単ですが、答えはそこにはないような気がします。


<10月4日>(水)

○西日本経済協議会の総会で金沢へ。せっかくなので、ちょっと早めに行ってまずは「回る富山湾 すし玉 金沢駅店」でランチ。ブリもノドグロも美味である。ただし最近、どうやら水温が少しだけ上がって、富山湾などではブリが不漁になっていると聞いた。言われてみれば、最近は北海道産のブリをよく見かけるのである。

○さらに以前から宿題になっていた「金沢21世紀美術館」へ。金沢市役所の隣で、兼六園に隣接したロケーションに、現代アートの美術館をつくっているところがさすが文化都市である。ゆったりとした周囲の景観と円形のファサードがうまく溶け合っている。平日でも客の入りが多く、学生や外国人観光客も多く見かけた。収蔵品としては、レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」が有名だ。一見の価値ありと言っておこう。

○ただし館内が複雑なつくりになっていることと、係員が多くて妙に口うるさいのは何とかならんのか。割りと美術館は数を見ている方だと思うけど、ここは「ガードの堅さ」が気になった。まあ、それだけ混んでいるということなのかもしれないが。

○併設されている茶室でやっていた「波津彬子が描く泉鏡花の世界」に感心した。金沢出身の泉鏡花の作品を、金沢出身の漫画家が描いている。こういう企画は、他所の都市にはなかなか真似できないよね。誰もやってこない和室を独り占めして、しみじみと原画に見入ってしまいました。

○仕事が始まる前にもう少しだけ、ということで、美術館の向かい側にある「石川四高記念文化交流館」を覗いてみる。こっちはガラガラなんだけれども、ワシ的にはその方が好ましい。旧制高校の建物がそのまま残っていて、往時の記録が展示してある。

○しかもこの建物の中には石川近代文学館が入っている。ちなみに「三文豪」というのがあって、泉鏡花と室生犀星はすぐにわかるが、あと一人は誰かと思ったら徳田秋声という小説家なんだそうだ。御免、知らんわ。そういえば忘れられた作家、シマセイこと島田清次郎も石川県なんだよな。今じゃ青空文庫で読めるらしい。いつの日か、暇になったら読もう。

○ところで旧制高校のいわゆるナンバースクールというやつ、こういうラインナップだったんですな。


(1)一高 東京都→東京大学

(2)二高 仙台市→東北大学

(3)三高 京都市→京都大学

(4)四高 金沢市→金沢大学

(5)五高 熊本市→熊本大学

(6)六高 岡山市→岡山大学

(7)七高 鹿児島市→鹿児島大学

(8)八高 名古屋市→名古屋大学


○こうしてみると、大きな藩があった都市が多いことに気がつく。仙台は伊達藩だし、金沢は前田藩だし、熊本は細川藩で、鹿児島は島津藩である。当時も大都市であったはずの大阪には、ナンバースクールは作られなかった。やはり商人の街だったからだろうか。

○てなことで、わずかな時間の散策であったのだが、やっぱり歴史のある町はいいもんだなあ、としみじみ感じたのであった。その後の仕事の方はつつがなく、ということで。


<10月6日>(金)

○このところ、「リベラルとは何ぞや」てな議論が増えている。民進党の分裂に伴って、いわゆる「左派リベラル」がピンチになっている。保守はカッコいいけど、リベラルはイケてない。そのことに対して、朝日新聞的な「識者」が異論を唱え、世間一般的には「そもそもLiberalとかLiberalismってどういう意味だっけ」と思い悩んでいる。

○当たり前の話をすると、Liberalという言葉はLiberty(自由)から来ている。もともと「自由主義」のことである。左派や社会主義という価値観とは本来、無関係である。「あの人はオールド・リベラリストだ」などと言うときは、この意味でよろしい。権力や大勢に逆らってでも、みずからの信じるがままに自由に生きる。わが国でも大正生まれの世代などには、ときどきこういうカッコいい紳士が居たものである。

○一方でアメリカにおけるLiberalには、「大きな政府」という意味合いがついてしまい、ある時期からカッコ悪い言葉になった。1988年選挙で民主党のデュカキス候補が、「そうだ、俺はリベラルだ、文句あっか」と居直ったら、ブッシュお父さんに負けてしまった。今でも「私はLiberalだ」と言いたかったら、代わりにProgressive(進歩的)という言葉を使うことが政治的なお作法になっている。

○法哲学者の井上達夫先生によれば、リベラルという価値観の基本は「自由」ではなくて「正義」である。「正義」に立脚して世の中を見渡すと、今日の「リベラル派」は欺瞞と偽善とエリート意識に陥っている。朝日新聞も護憲派も平和主義者も呪われてしかるべきである。ということで、リベラルを語るときには『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』(毎日新聞社)は必読書と考えるべきである。

○わが国におけるリベラル没落の端緒となったのは、1996年の民主党旗揚げであろう。初代党首となった鳩山由紀夫は、立党に当たって「リベラルとは愛である」という小冊子を配ったものである。こういうことを赤面せずに言えてしまう人物を、後年、首相にしてしまったことは、わが国政治史における痛恨の極みと言わなければならない。

○それではお前はどう考えるのか、と問われたら、リベラルに対する溜池通信的定義をご披露すべきであろう。どの本であったかは忘れたが、宮崎市定が書いていたのだけれども、「中国の古典に出てくる『仁』とは、『自由』のこと」なのだそうだ。それで蒙が啓けたのであるが、「リベラル≒自由≒仁」なのではないか。「あの人は仁なるかな」と言われたら、その人は自由人であり、リベラリストである。こういうときのリベラルは、掛け値なしにカッコいい。

○逆に言うならば、会社の経費を使うような「社畜」は、「仁」でもなければ「リベラル」でもない。「仁」になるためには、ちゃんと身銭を切れるようにならなければならず、そういう経済的基盤を持ってはじめて自由人=仁者と呼ぶことが許される。つまりは「仁」や「リベラル」は誰でも簡単になれるものではない。意識が高ければいい、なんてものではない。

○これを政治の世界に置き換えれば、空気を読んだり、「寄らば大樹」と考えるような政治家はリベラルではない。「俺はリベラルだ」などと言いつつ、勝てそうな政党に駆け込もうとする政治家は嘲笑されてしかるべきである。少なくともそれらは「仁者」ではない。だってカッコ悪いんだもの。そういう手合いがあまりにも多くて、ゲップが出そうなんだもの。


<10月7日>(土)

○第8回中部アカデミアのシンポジウムで名古屋へ。「グローバリズムとナショナリズム」という硬派なテーマであり、ご一緒するのが一橋大学の先生方で、文字通りアカデミックだというので、少々アウェイ感あり。と言っても当方としては、いつもと同じように、トランプ政権がああでもない、こうでもないという話をするしかないのである。

○このイベント、中部地区における一橋大学のPRという目的がある。といっても、ワシなどは大学時代にじぇんじぇん勉強しなかった者なので、そんなことでいいのか、という気もする。強いて言えば、卒業してから多少は勉強するようになって、その時点で如水会などの一橋ネットワークにはずいぶん助けていただいた。そういう意味では「学恩」を感じている。諸君、大学出たら勉強しよう(大田弘子教授)。

○一方で、パネルディスカッションの部分で、森千香子准教授の「難民・移民危機とEU都市」という話を聞いているうちに、学生時代に阿部謹也先生の西洋中世史の授業で教わった「都市の空気は自由にする」という言葉を思い出した。と言ってもほとんど中身は再現できないのだが。それでも教壇に立った阿部先生の堂々とした姿は今も印象に残っている。教育とはそういうものでよいのではないか。

○個人的にショックだったのは、ご一緒した一橋大学副学長の中野聡教授が、卒業年次で言うと1年先輩で、ほとんど同世代人であったということ。うーん、そうか、ワシもとうとうそんな年代になったということか。そういえば明日でまたひとつ年を取ってしまうのだなあ。


<10月8日>(日)

○忘れないように書いておこう。昨日一番驚いた話。一橋大学は商学部と経済学部で第2外国語を止めちゃうのだそうだ。法学部と社会学部は従来通り。なぜそういうことになるかというと、「だって英語で全部用事が済んじゃうから」。すでに学内で英語の授業も増えているし、今じゃフランスの大学に留学しても、授業はフランス語なしでOKなんですって。うーん、これでは第2外国語を勉強する気にはならなくなりますわな。

○そもそも世界中の大学と交換留学を増やしているので、もう学生の10%くらいは外国人なのだとか。それもすごいよねえ。つい先日、弊社の若い社員同士がカフェテリアでネイティブ英語でひそひそ話をしているのを耳にして、ここはいったいどこじゃらほい、と焦ってしまったワシは、確実に世の中から遅れつつあるらしい。

○「最近の学生はちゃんと授業に出る」とか、「20歳までは、と言って酒を断る学生が居る」とか、その程度はまあ承知しておるのですが、なるほど世の中は変わりつつある。まあ、ワシが大学に居たのは30年以上前のことなので、この程度で驚いてはいかんのだろうな。


<10月9日>(月)

○三連休は仕事が山積み。今日は中国関連の原稿書き。ということで、なかなか選挙ムードに浸れない昨今なのであるが、明日はもう衆院選の公示日である。平成に入ってから10回目、そしておそらく平成で最後の選挙となる。平均すれば3年に1度ということですな。

○ざっくり見て、「天下三分の計」になったからには、面白い選挙区が増えるので、たぶん投票率は上がるでしょう。とくに希望の党はどこまで行けるのか、それとも失速してしまうのか。「選挙のための一夜城」ですから、ボラティリティが高いので関心を集めますよね。小池さんはそろそろサプライズがネタ切れのようなので、これから先は苦しくなるかもしれません。

○「東京から日本を変える」ということは、小池さんも言ってるし、石原さんも言っていた。以前から引っかかっていたことなのだが、国と自治体には大きな違いがある。国家は閉鎖系であり、都市は開放系である。仮に東京都の政策が嫌な人は、他の道府県に引っ越しするという権利がある。逆に東京都の側としては、開き直って「ついて来れない人は置いていくよ〜」と言えてしまう。だけど国家にはそれができない。日本人を辞めるのは大変なのです。

○海外の事例で言えば、パリやニューヨークが地球環境問題で積極的な役割を果たしたり、難民の受け入れで踏み込んだ対応をしている。要するに、「ウチはこういう方針でやらせてもらいます。文句がある人は出て行っていただいても結構です」と言えてしまうのが、都市の強みなのである。それが国家の場合、「だったらお前、日本人辞めろ」とはなかなか言えない。だから閉鎖系の運営は辛い。難民だって、数が増えれば必ず文句は政府に来る。パリやニューヨークの市長のところへは来ない。

○この開放系と閉鎖系の違い、気づいていない人が多いです。企業のトップの人が、「俺に日本国総理をやらせてくれれば・・・」みたいなことを考えるのも同様で、企業なんて所詮は開放系の組織なんですから、経営者として成功している人でも、閉鎖系の難しさがまるでわかっていないことがある。その典型がトランプ大統領で、国家を統合するという仕事を放棄してしまっている。やっぱりアメリカ大統領ともあろうお方が、「ついて来れない人は置いていくよ〜」では拙いんだよな。

○全体が向かうべきベクトルに合わせて、都市がその方向に先導するのが理想だと思います。でも、単に政府に文句を言うためだけに、都市が「ええかっこしい」をしていることもある。野心家が自治体のトップになった時は、特にありがちですな。小池さんが東京都でやってきたことは、たぶんにそういうところが多かったのではないだろうか。

○もっとも今回は安倍政治を信認するかどうか、という選挙であります。小池さんが目立ち過ぎるのは、それはそれで困ったものであります。


<10月10日>(火)

○本日、衆院選が公示になりました。とりあえず現時点の予想を書いておきましょう。

自民党 260
公明党 35
希望の党 75
立憲民主党 30
維新の会 15
共産党 20
社民党
新党大地
諸派・無所属 27
合計 465


○さて、どんな結果になりますか。投票率は6割前後を想定しております。


<10月11日>(水)

○突然ではございますが、本日から選挙モードの日本を離れ、モスクワに参ります。と言っても、昨日までは選挙予測や中国関連の書き物ばかりしていたので、ロシアの勉強と準備は機内が勝負です。こうやって一夜漬けの連続で日々が過ぎて行く。まあ、たまには映画でも見たいところなんだけど。

○天気予報は晴れだったけど、今日の成田空港は霧が立ち込めています。ちゃんと飛んでくれるといいけどねえ。ちなみにモスクワの気温は6度くらいですって。ぷるるるる。では行ってきます。(9:31am)

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○10時間かけて、やってまいりましたモスクワへ。日ロ専門家会議に出るのは今回が3回目。2013年、2015年と出ているのだが、秋の季節のモスクワは初めて。さすがにまだ雪は降っておりませぬ。紅葉の季節のモスクワです。

○午前10時台に日本を離れて、午後3時頃に到着する、というのは、海外出張としては破格に楽な形です。しかるにモスクワまでは名物の渋滞が待ち受けておりまして、やっぱり2時間はかかりましたなあ。平日の夕方は仕方ないのかなと思ったら、地元に詳しい人の解説によれば、「これはVIPのために通行規制をやっているせいじゃないか」と。

○街の景色は過去2回に比べると良くなっているような気がします。まあ、経済制裁には慣れっこになっているし、石油価格の底入れがありますからね。それから空港では入国カードが不要になっていました。IT化が進んでいるのでしょう。と言いつつ、しっかり入国審査では待たされたのですが。

○時差はこちらが6時間遅れなので、肉体的にはわりと楽です。とにかく酒飲んで寝ちまえばいいのですから。とりあえずホテルで食べたビーフストロガノフは美味でありました。さあ、明日のために今日は寝よう。


<10月12日>(木)

○今朝のモスクワは雨である。雪のモスクワは覚えがあるが、雨は初めてである。何のこれしき、とは思うけれども、ロシア人も皆傘をさして歩いている。ということで、ワシも折りたたみの傘を使って出動する。

○日ロ専門家会議、第1日目。カーネギーセンターに到着してみると、会議室は2年前と同じなのだが、同時通訳の設備が使えなかったりして、どうも話が違う。ロシア側、あんまりやる気がないように見える。それでも北朝鮮問題や中ロ関係をめぐって討議していると、双方からどぎつい発言が飛び交う。いいですねえ。この感じ。

○ロシアの会議では、パワポとかレジュメといったものが出てこない。ただただ口頭のプレゼンテーションが続く。しかも皆さん発言が長めである。資料の準備に時間のかかる会議が多い昨今、これもいっそすがすがしい気がする。本来、国際会議というものはこんな風であるべきではないのか。

○日本にはときどき、講演会の2週間前にパワポの資料を送れというクライアントがおる。理由を聞いたら印刷のためだなどとぬかす。いまどき、どういう印刷会社を使っておるのか。当方、政治経済というナマモノを扱う寿司職人のようなものなので、これを言われるとテキメンにモチベーションが低下する。ほんの2〜3日で世の中変わるんですよ。

○とまあ、遠慮のない応酬があって、夜はノミニュケーションがあって、一日が終わる。時差があるので、午後6時を過ぎると眠くなる。ああ、今は午後9時を過ぎたところだが、体内時計は午前3時である。これで休むと、また早朝に目が覚めてしまう。仕方がないのう。


<10月13日>(金)

○今日のモスクワは曇天。時折小雨。日ロ専門家会議の2日目。今日のテーマは日ロ協力で、発表者はワシ。日ロは共に貿易立国で、自由貿易に利益があるのだから、ご一緒に経済ナショナリズムに反撃しましょう、てなことを申し上げる。反応は鈍かったような気がするなあ。

○昨日、新聞各社が一斉に総選挙の予想を発表し、「与党300議席の勢い」という知らせが入ったら、当地の日ロ関係者の間には安堵感のようなものが流れている。だって安倍さんが下野してしまったら、プーチン大統領と積み上げてきた関係がいきなり吹っ飛んでしまう。ご両人の首脳会談は先月の東方経済フォーラムで19回目、来月はAPECか東アジアサミットで20回目が行われる見込みである。

○ただしこの関係、日本側は政治的な過剰期待があり(領土が返って来るんじゃないか)、ロシア側には経済的な過剰期待がある(日本が大型投資をしてくれるんじゃないか)。どちらも現実的ではない。去年の山口での会談以降、日ロ関係には一種の閉塞感が漂い始めている。両首脳にとっては、果たして日露関係はアセットなのか、ライアビリティなのか。

○日本側には「2018年3月にプーチンが再選されたら、すぐにでも領土問題で柔軟姿勢を見せてくれるんじゃないか」という期待感がある。が、そもそもプーチンは立候補宣言さえしていない。再選されたら好きなことができる、というのはアメリカ大統領の話で、ロシアに通じるかどうかはわからない。極端な話、レイムダック化するかもしれない。

○他方、ロシア側には「サハリンと北海道を橋で結ぼう」みたいな法螺話があるとのこと。そんなこと言ったって、サハリンは人口49万人と言うから、採算がとれるとはとても思われない。対ロ支援8項目が、医療とか都市づくりとか生活重視になっているのは、人口減少に直面する日ロ両国にとって、正しい方向であると言えよう。サハリンとの橋なんて、「一帯一路」でやってくれませんかね。

○私見ながら、安倍さんの対ロ外交はいわば「道楽」みたいなものだ。領土が戻る確率はもとより低い。そして対ロ支援と言っても、今のところたいしたコストをかけているわけでもない。だったら、「やってみなはれ」でいいではないか。安倍=プーチン関係は、日本外交としてもめずらしいケースである。もう少しくらい様子を見ても悪くはないだろう。

○日本にとっては対米、対中関係の方が重要であるし、今は北朝鮮問題もある。ロシアは必要欠くべからざるカードというわけではない。が、「選択肢があることはそれだけで望ましい」(ロバート・ルービン)。特に今のように先行きが不透明なときはね。


<10月14日>(土)

○モスクワ3日目。今日も雨である。

○今回宿泊しているマリオットホテルは、インド人のお客さんが大勢宿泊している。午前8時を過ぎると、朝食会場のカフェは見渡す限りインド人ばかりとなる。ということで、少数派の日本人としては早めにカフェに行って、そそくさと食事を終わらせる。街へ出かければ中国人観光客が多いので、当地の日本人は「中国からか?」と声をかけられることが多いのだそうだ。はからずもモスクワ市内で、BRICSパワーを見せつけられることになる。われわれがいかに先進国中心で世界を見ているか、を痛感する。

○会議終了後に市内の中心部を散歩する。ボリショイバレエ劇場はどえらい建物である。「ボリショイ」とは「大きい」の意味なんだそうだ。100ルーブル紙幣にも使われている建物だが、最近、改装工事が終わったとのことで、見た目も非常に新しい。はて、経済制裁中のロシアは、そんなことをする余裕があったのだろうか。というか、街の景色は明らかに2年前に訪れた時に比べて明るくなっている。景気は最悪期を脱している、というのは今週発表されたIMFのWEO(世界経済見通し)にも出ていた通りである。

○赤の広場に出る。レーニン廟、ワシリイ寺院など、いつもの光景。以前に来たときは雪景色であったが、今日は雨の中である。ここにクレムリン宮殿が接している、というのはつくづく不思議な光景で、プーチン大統領はこの観光地のすぐ隣で執務していることになる。考えてみれば、ソ連以来の歴代の指導者がそうだったわけで、1985年に西独青年のルフトくんがセスナ機でここに着陸したとき、ゴルバチョフ書記長はおったまげたことだろう。青年のいたずら心がペレストロイカを後押しした。しかるにその時、ソ連帝国は「陽だまりの樹」のような状態にあったのだ。

○帰りは地下鉄に乗ってみる。するとこの地下鉄がまことに深い。国会議事堂前駅よりも深くて錯綜している。車両は古めだが、構内は思ってよりも綺麗であり、庶民の足として使われているようだ。でも、やっぱり核シェルターを兼ねているんだろうねえ、などと言いつつ、2駅だけ乗ってホテルへ帰る。

○そうそう、昨晩はグルジア料理の店へ行って、グルジアワインを堪能した。確かロシアはグルジアを制裁していて、ワインも禁輸になっていたはずなのだが、大手を振って営業している。つくづく経済制裁というものはしり抜けになってしまうものらしい。ところでこの国名、本当はジョージアと呼ばなければらない。でもジョージアなんていうと、コカコーラ社のブランドみたいである。つい最近、ジョージアを取材した記者によると、メシもワインも現地の方がはるかに旨いのだそうだ。

○さて、本日はこれからモスクワの日本大使公邸にお伺いする。これが今回の出張で最後の日程である。そろそろ頭の中の整理をしなければならないのだが、帰りの飛行機の中ででも考えることにしよう。


<10月15日>(日)

○先ほど出張の全行程を終えて、またまた交通渋滞の中を2時間揺られて(ワシは爆睡していたが)、まるで新興国としか思えないようなドモジェドボ空港の喧騒をすり抜けて、現在JAL機上の人となっております。

○そこで先ほど機内Wi-Fiにつないで、上海馬券王先生の原稿を更新したところ。いやあ、不思議な時代ですなあ。本日の京都競馬場の予想を、バンコクに居る馬券王先生が書いて、メールで受け取ってロシア上空で更新してしまうとは。それぞれ時差もあるというのに。いまどき普通のことなのかもしれませんが、ちょっと感動しています。

○ということで、あと10時間弱で日本に戻ります。このところANAの旅が続いていたけれども、JALもなかなか良いですな。あ、ビールが来た。しばしネットは中断である。(0:16)

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○ということで、無事に帰ってまいりました。成田空港に着いてみたら、こちらも雨ですなあ。日曜日の朝だけあって、着陸からゲートをくぐるまではあっという間でした。どこへ行っても時間がかかるロシア式を味わった後では、これがなかなかにホッとするものがあります。ああ、やっと先進国に帰ってきた、との感あり。

○つくづくロシアは不思議な国であります。けっして快適ではないのだけれども、われわれとは違う価値観の下で運営されている。経済性よりも安全保障重視。調子は狂うけれども、どこか気づかされるところがある。さて、明日からは普通に仕事に戻ります。


<10月16日>(月)

○日本に帰ってきたら、モスクワの続きのような雨と寒さである。が、所詮寒さはモスクワ程ではない。こんな日に講演の予定がダブルヘッダーで入っていて、本日は内外情勢調査会の仕事で栃木県足利市と佐野市へ。2004年5月に行って以来である。

○前回行った際には、「あしかがフラワーパーク」に連れて行ってもらい、ちょうど藤の花が満開であったことを覚えている。今はイルミネーションが評判になっているのだとか。当地もご多分に漏れず、インバウンドが活況を呈していて、今度、JRりょうもう線に新しい駅ができるというから驚きである。フラワーパークの社長さんが来ていたので、いろいろ話を伺う。

○観光地にとって昨今のような雨は天敵である。今年は特に8月の長雨が痛かった。ところが「あしかがフラワーパーク」みたいに評判になると、それが目的で外国から来たお客さんなどは、雨が降っても「せっかくここまで来たからには」と予定通り来てくれる。そりゃそうですわな。ワシも石見銀山に行ったけど、「雨だから」といって帰りはしなかったもの。ブランド価値ができるということは、雨でも来てくれるお客さんを作るということ、なんだそうだ。ちょっといい話である。

○佐野市は「さのまる」というゆるキャラが評判をいただいている。佐野市教育長さんの名刺にも刷られているのがちょっとかわいい。うーん、都内でどこか佐野ラーメンが食べられるところはないかしらん。


<10月17日>(火)

○日本に帰ってきたら、自宅でビール、自宅でワインが最高のぜいたくというもの。ところがですな、家で見るテレビの野球中継が哀しいことになっている。

○日曜日に甲子園の「泥試合」を見た瞬間に、今日はこんな風になるだろうなあ〜と思っておりました。2005年の日本シリーズ、ロッテと対戦したタイガースは初戦を10対1で落とし(エース井川が滅多打ちだった)、そのまま第2試合は10対0、第3試合は10対1、第4試合は3対2で、なすすべもなくズルズルと土俵を割ったのである。案の定、阪神はクライマックスシリーズでDeNAに敗れ去りました。あ〜あ。

○どうしてこう、阪神タイガースはシーズン終了後に崩れるという悪しきDNAがあるんですかねえ。今回は雨天に対する金本監督の対応(雨天コールドを予測して早めに動いた)ことが裏目に出たわけです。指揮官のミスが流れを変える。まあ、あんまり責められませんけど。つくづく短期決戦は難しい。ちょっとしたボタンのかけ違いが命取りになったりするのです。

○なんかこう、「希望の党」のあまりにも早い失速を見ているような思いもいたします。小池さんを責めるのは簡単だけど、こうなるのは必然だったような気もする。重なって見えるのはなぜだろう。

○それにしても甲子園は偉大な球場だと思います。日曜日に田んぼみたいになったグラウンドが、ちゃんと普通に戻るのですから。ああ、永遠なれ阪神タイガースと甲子園球場。


<10月18日>(水)

●首相、トランプ氏とゴルフも 来月5日、翌日に首脳会談(朝日新聞デジタル)

2017年10月18日05時30分

 トランプ米大統領が11月5日に来日した際、安倍晋三首相と「霞ケ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)でゴルフをする方向で調整していることがわかった。プロゴルフ選手も同席する見通しだ。6日には首脳会談を行う予定。

 複数の日本政府関係者が明らかにした。プレー後の5日夜には非公式の夕食会を開き、首脳間の信頼を深める機会とする考えだ。同ゴルフ場は1929年開場で政財界に多くの会員を持ち、2020年東京五輪のゴルフ会場になっている。

 安倍首相は昨年11月、大統領就任前のトランプ氏と会談した際、ゴルフクラブを贈呈。今年2月の訪米時にはトランプ氏所有のコースで、計約5時間にわたり共にプレーした。この時に世界情勢についてトランプ氏と長時間語り合ったことが、現在の首脳間の親密な関係につながったとの思いがあり、今回も「ゴルフ外交」を重視している。

 日米首脳同士のゴルフは、安倍首相の祖父・岸信介元首相がアイゼンハワー大統領と1957年にプレーした例がある。

 これに関連し、野上浩太郎官房副長官は17日の会見で、トランプ氏が来月5〜7日に来日すると発表した。首脳会談や北朝鮮による拉致被害者の家族との面会などが予定されている。(小野甲太郎)



○あーら、やっぱりやるんだ、日米ゴルフ。それにしても霞ヶ関カンツリーって、女人禁制じゃなかったかしらん。オリンピックに合わせてルールを変更すると言ってたけど、それじゃあ小池百合子さんを呼べないじゃないですか。プロゴルファーと言うのは、松山英樹さんですかね。都内から川越までの導線とセキュリティはどうするのかな、などと疑問は絶えず。

○今週末の総選挙では、希望の党と立憲民主党のどちらが野党第一党になるかが注目点だと思います。@前者の場合、与党が財政規律を意識するようになる。なにしろ「ワイズスペンディング」ですから。他方、安倍首相は憲法改正に傾斜してしまうかもしれない。A後者の場合、与党が「とりあえず補正予算でもやっとくか」てなことになる一方、憲法改正へのハードルはちょっとだけ上がる。さて、マーケット的にはどちらがいいのか。

○もっとも希望の党は、選挙後に「学級崩壊」になっちゃうかもしれません。小池さんのリーダーシップも、元民進党議員たちのフォロワーシップも両方とも怪しいですからね。さらに無所属からの当選組が2つの党のどちらに向かうのか、てなことも不確定要素です。個人的には、野田佳彦さんや岡田克也さんは「栄光ある孤立」を選んでほしいと思いますけどね。

○世間は「思い切り持ち上げた後は落とす」もの。小池さんはまさにそうでした。そうなると次は枝野さんの番ですからね。選挙まではまだ三日もある。ご用心なさいませ。


<10月19日>(木)

○今日は「四国政経懇話会」の講師で香川県高松市へ。

○悪天候によりANA機が高松上空で旋回するも、濃霧のためになかなか空港に降りられない。そういえば昔、経済同友会の職員だったころに、速水代表幹事と一緒に高松に向かっていて、とうとう着陸できずに伊丹空港に降りられたことがあった。秘書としては大慌てであったが、何とか新大阪に向かい、新幹線に乗って、岡山で乗り換えて高松に向かったものである。香川経済同友会のイベントには無事に間に合ったのだが、あれが人生初の四国行きであった。たぶん1995年3月であった。

○などと懐旧の念に浸っているうちに、なんとかANA機は着陸。講演会には余裕で間に合いました。四国新聞さんは毎月、政経懇話会をやっていて、2015年10月、2013年10月と、なぜか2年おきにワシを呼んでくれている。本日のお題は「地政学リスクの時代と日本経済」。ちなみに来月の講師は香田提督であるとのこと。

○高松市は選挙戦の真っ最中。いや、選挙は全国どこでもやっているのだが、特に香川1区は大激戦なのである。安倍総理がやって来たし、昨日は林芳正文科大臣が訪れ、今日は午後3時に麻生太郎副総理がやってくるというので、雨の中を会場近くが渋滞していた。希望の党の側では、大塚耕平参議院議員が今晩来訪とか。

○仕事が終わった後に、4年前の選挙で安倍首相が立ち寄ったという「ぶっかけうどん」の「大円」にて「3時のうどん」をいただく。ちなみに今年の安倍さんは、10月14日の首相動静によれば、「いしうす庵 レインボー店」に立ち寄った模様。しかしまあ、滞在時間17分とはねえ。選挙戦とはまことに因果な稼業である。


<10月20日>(金)

○当柏市においては、市長選挙が総選挙と同日に行われる。ということで、柏駅で現職に挑戦している2候補が辻説法をしておりました。聞いている人は少ないし、ビラを受け取ってくれる人も少ないので、ちょっとさびしい感じでありましたが、そんなことで心が折れるようでは政治なんてやってられません。理念に殉じるとはそういうことです。独自の戦いには特有の美しさがある。

○それはさておいて、日曜日の投票所を想像すると、@衆議院小選挙区、A衆議院比例区、B最高裁判事国民審査、C市長選挙、という4つの選挙箱が並ぶことになる。これって限界でしょうねえ。18歳から100歳超までが投票する今日の選挙においては、4つの投票を滞りなく実施することへのハードルは限りなく高いと思います。

○先日、小生の知人である官僚が昇進をして、研修機会として「山谷地区におけるハローワーク」で終日の業務を担当したのだそうです。山谷のハローワークに行列を作っているのは70歳超の老人ばかりであり、そういう人たちにルールを説明するのは至難の業であったそうです。「高齢化社会におけるルールは、シンプルでなければならない!」と痛感したそうです。そりゃあそうですよねえ。

○こんな世の中になってしまうと、選挙に抱き合わせにして「憲法改正のための国民投票」とか「参議院とのダブル選挙」だなんて、限りなく不可能に近いと思うんですよね。最寄りの小学校に人々が集まってくるとして、いくつも投票箱を並べて、ちゃんとした手続きができるものかどうなのか。さらには開票手続きもできるのか。

○日本の現場が揺らいでいるのは、神戸製鋼や日産自動車だけではないと思うのですよね。いつまでも、あると思うな、現場力。


<10月21日>(土)

○今日は大阪へ。大阪経済大学の講義を引き受けているので。場所は北浜証券所の3階。地下鉄御堂筋線で淀屋橋の駅で降りて、地下街を歩いて行こうと思ったのだが大阪の地下街がよくわからず、仕方がないので地上に出て雨の中を歩く。

○講義は午後1時から4時まで。「現代日本経済特論」という講座で、ワシのテーマは「貿易」。通関統計のデータや日本貿易会の貿易動向調査を使ってご説明する。考えてみれば、明日は選挙だというのにわれながら変なことをしている。でも、前々からの約束だったので。

○終わってから、川を挟んですぐ近くの大阪市立東洋陶磁美術館へ。伊勢コレクションの「世界を魅了した中国陶磁」展をやっているので、実はこれが楽しみだったりする。伊勢彦信氏は富山県出身の経営者で、今も高岡市在住の世界的な鶏卵王。スーパーで売っている「森のたまご」、あれがイセ食品の商品なのである。印象派の絵とともに中国陶磁の世界的なコレクターとして知られている。

○中国陶磁は昔から日本国内にファンが居たので、それこそ大阪の財界人などがいっぱい持っていたのですな。それが代替わりなどで散逸しそうになるのを買い集めて、一大コレクションにまとめたようである。この内容を今から集めようと思ったら、どんなにおカネがあっても不可能であろう。「いい人に買われて良かったねえ」と言いたくなるような品物ぞろいである。

○せっかくなので、大阪の候補者たちの「最後のお願い」を聞きに行こうかと思ったけれども、この雨ではさすがに疲れそうなので、とっとと新大阪駅に移動して「ぼてじゅう」でビールとお好み焼き。ついでにチルドの「Horai551」を買ってご帰還。ああ、モスクワから帰って来たばかりなのに、今週もたいへんよく働きました。


<10月22日>(日)

○朝、雨の中を家族で投票に出撃。午前中の投票所は、思ったよりは人が多かった。町内会の会長さんが立会人をやっているかな〜、と思ったら、前副会長さんがやっていた。お疲れ様です。柏市長選挙を含めて、4つの箱に投票を実施する。

○それにしてもひどい雨ですな。投票率は午後になって前回を下回った様子。そりゃあそうでしょう。私だって午後から菊花賞に出かけるのを諦めましたもの。期日前投票は多かったようですが、最終的にどの程度になるのか気になるところです。とにかく投票日にこれだけハードな天気であったことは記憶にありません。

○夜になって開票速報を見ているところですが、まあ、そんなに意外感はありませんな。安倍内閣が信認される、ってそりゃあそうでしょう。今回は野党の分裂選挙ですから。候補者を235人も立てた希望の党が失速して、候補者を78人しか立てていない立憲民主党に勢いが出ることは、自民党から見たら笑いをこらえるのに苦労するような展開であったことと思います。

○なぜそうなったかというと、「希望の党バブル」が崩壊して、「立憲民主党バブル」に移行したからでしょう。2つの政党を合計すると、元の民進党を若干上回りそうである。その分、維新や共産の議席を食ったわけで、そういう意味では悪いことばかりではなかった。ただし、「立憲民主党」バブルもいずれ崩壊するだろう。だってこのあと、希望の党と立憲民主党と無所属議員と民進党参議院が、4つどもえの遺産相続バトルを始めるわけだから。

○詳しいことはまた明日考えましょう。とりあえず雨風がますます強くなってきている。明日朝はちゃんと電車が動いてくれればいいんだけど。


<10月23日>(月)

○国政選挙後における溜池通信の定番、「比例の得票数一覧」を掲げておきましょう。これで見ると、党勢が一発で分かります。

  2017年
衆院選
2014年
衆院選
2012年
衆院選
2009年
衆院選
2005年
衆院選
2003年
衆院選
 
自民党 18,555,717 33.28 17,658,916 33.11 16,623,542 27.62 18,810,217 26.73 25,887,798 38.18 20,660,185 34.96 自民党
公明党 6,977,712 12.51 7,314,236 13.71 7,116,265 11.82 8,054,007 11.45 8,987,620 13.25 8,733,444 14.78 公明党
希望の党 9,677,524 17.36 9,775,991 18.33 9,628,483 16.00 29,844,799 42.41 21,036,425 31.02 22,095,636 37.39 民主党
立憲民主党 11,084,890 19.88                      
共産党 4,404,081 7.90 6,062,962 11.37 3,689,988 6.13 4,943,886 7.03 4,919,187 7.25 4,586,172 7.76 共産党
社民党 940,823 1.69 1,314,441 2.46 1,420,928 2.36 3,006,160 4.27 3,719,522 5.49 3,027,390 5.12 社民党
      5,245,586 8.72 3,005,199 4.27     みんなの党
維新の会 3,387,597 6.08 8,382,699 15.72 12,262,144 20.38        
その他 729,207 1.31 2,825,182 5.30 4,192,952 6.97 2,705,987 3.85 3,260,517 4.81   その他
合計 55,757,551 100.00 53,334,427 100.00 60,179,888 100.00 70,370,255 100.00 67,811,069 100.00 59,102,827 100.00 合計
投票率 53.68   52.66   59.22   69.28   67.51   59.86    



○前回とほぼ同じ投票率、というのが出発点です。ただし18歳投票権のお蔭で、ちょっとだけ母数が増えていますね。その分、「若者に強い自民党」が前回に比べて100万票くらい上乗せしていることが読み取れます。議席数は改選前と同じ284議席。全体で10議席減っていますから、これは実質的には大勝利と言えます。

○他方、公明党は700万票の大台を割りました。これは大いにショックを受けているはずです。議席も34から29に5議席減りました。自民党が応援で手抜きをしたのか、それとも組織が緩んでいるのか。党内は荒れるでしょうね。

○次に希望の党と立憲民主党は、なんと合わせて2000万票でした。民主党が2000万票以上を稼いだのは2009年以前のことで、2012年、14年は1000万にも届かなかったわけですから、党を分裂させたのは大成功と見ることもできます。真面目な話、自公で2553万、希立共で2516万、ほぼイーブンじゃないか、ということに気付くわけです。

○まあ、実際にはこれから、@両院協議会で全会一致で合流を決めたはずの「希望の党」、A我こそは正統な後継者を自認する「立憲民主党」、B参院にそのまま残っている「民進党」、それにC無所属で勝ち上がってきた野田佳彦元総理など、の四つどもえの「跡目争い」(遺産相続)が始まるわけで、どんなに見苦しいことになるか、ちょっとワクワクしますね。

○希望と立民の2000万票はどこから奪ったか、というとひとつは維新の会が500万票も減らしています。これは希望の党に流れたんでしょうね。それから共産党も150万票くらい減らしています。これは立憲民主党への選挙協力の結果ですから、いわば「輸血」みたいなものですね。そうそう、前回はあった生活の党(現・自由党)の100万票も流入したことでしょう。

○当初の読みとしては、「2005年に小泉首相を支持し、2009年に民主党に入れて、2012年と14年は家で寝ていた」無党派層(おそらく1000万票くらいある)は、どっと小池支持に動くんじゃないかと思われました。しかし彼らは今回も家で寝ていたようです。いや、台風で選挙どころではなかった人も少なくなかったことでしょうけれども。期日前投票をフルに使ったとはいえ、投票率53.68%はやや残念な結果であったと思われます。

○てなことで、やっぱり野党分裂の効果は大きかった。自公で併せて313議席。3分の2ルールを使って衆院再可決もできてしまう。いや、参院も自公で6割の議席を持っているんだから、その必要もないんですけど。それにしても昨今、「与党が勝って結果は現状維持」という選挙は世界的に見て希少です。すごいですなあ。


<10月24日>(火)

○総選挙の後の定番、新聞各紙の座談会。今日出た分はこんな顔ぶれでありました。


●日本経済新聞 「熱狂なき自民圧勝なぜ」

御厨貴・東大名誉教授X中西寛・京大教授X土居丈朗・慶大教授


●朝日新聞 「憲法、安保、この先は」

野中尚人・学習院大学教授X植木千可子・早稲田大学教授X南野森・九州大学教授


●読売新聞 「経済政策一定の評価 憲法改正議論深化へ」

竹中治堅・政策研究大学院大学教授X三浦瑠璃・国際政治学者X吉崎達彦・双日総研チーフエコノミストX(司会)橋本五郎・特別編集委員


○読売新聞の人選がとっても異彩を放っているではありませんか。われながら場違いな気はしましたが、昨日昼に読売新聞本社で楽しく語り合ってまいりました。あいにくネット版には記事が出ていないようなので、残念ながらリンクは貼れません。その辺はどうかご容赦を。

○ところで上に登場した7人の教授が所属する大学が、ものの見事に重なっていない。不思議ですねえ。まさか新聞3紙が談合したとは思えないのだが・・・。


<10月25日>(水)

○第19回中国共産党大会が昨日で終わり、今日は第19期中央委員会第1回全体会議(1中全会)。新しい常務委員(いわゆるチャイナ・セブン→こんな呼び方をするのは日本だけですからね。そこんとこ気をつけてね)が発表されました。覚えるためには、ここに書いておくのが手っ取り早い。


@習近平(シーチンピン)総書記(64)

A李克強(リーコーチアン)首相(62)

B栗戦書(リーチャンシュー)・党中央弁公庁主任(67)

C汪洋(ワンヤン)・副首相(62)

D王滬寧(ワンフーニン)・党中央政策研究室主任(62)

E趙楽際(チャオローチー)・党組織部長(60)

F韓正(ハンチョン)・上海市党委書記(63)


○なんと全員が60代となりました。下馬評に上がっていた胡春華(フーチュンホワ)・広東省党委書記(54)や陳敏爾(チェンミンアル)・重慶市党委書記(57)にはお呼びがかかりませんでした。現在の「67歳なら残れるが、68歳だとアウト」という年齢制限ルールに従うと、5年後には総書記を誰が渡すのかが悩ましくなります。これをもって、「やはり習近平が3期続けてやるつもりなのか」てな反応がありそうです。

○しかし考えてみれば、今は高齢化時代ですから、政治家は70代でも元気(例:ドナルド・トランプ氏)なので、昔ほど年齢にこだわる必要はないわけです。江沢民だって、元気で共産党大会に出てきて大あくびをしてましたものねえ。そもそも今の「67歳IN、68歳OUT」のルールは、年寄りを遠ざけるというよりは、役職のローテーションを進めることが目的で導入されたんだそうです。しかも内規なわけだから、習近平くらいの力があればその気になればいつでも破ることができるはず。

○そういえば今回の日本の総選挙でも、高齢議員が結構再選されています。二階俊博幹事長(78)、麻生太郎財務相(77)、伊吹文明元衆院議長(79)、野田毅前自民党税調会長(76)など、後期高齢者がいっぱいです。でも、あの世代は馬力がありますぞ。それに伊吹さん、野田さんなんて、すごいインテリですからね。

○権力の座を争うというのは、アンチエイジング効果があるのかもしれませぬ。真似したいとは思いませぬが。


<10月26日>(木)

○本日は日本貿易会70周年のシンポジウムに登壇。こんなプログラムである。


14:00〜14:10 開催挨拶
       一般社団法人日本貿易会 会長
       (伊藤忠商事株式会社 会長)
       小林 栄三
          
14:10〜15:00

第一部 「『内なるグローバル化』による新成長戦略と商社」出版記念
(一社)日本貿易会 「内なるグローバル化と商社の役割」特別研究会 
日本経済研究センター/伊藤忠商事/住友商事/双日/豊田通商/丸紅/三井物産/三菱商事/
ジェトロ(日本貿易振興機構)

     [モデレーター] 
       「内なるグローバル化と商社の役割」特別研究会座長
       伊藤忠商事株式会社 伊藤忠経済研究所長
       秋山 勇氏
           
     [パネリスト] 
       「内なるグローバル化と商社の役割」特別研究会主査
       公益社団法人日本経済研究センター 首席研究員
       猿山 純夫氏

       独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 副理事長
       赤星 康氏

       株式会社双日総合研究所 チーフエコノミスト
       吉崎 達彦氏
       
 15:00〜15:15 休憩



 15:15〜16:30

第二部 商社の過去・現在・未来−商社の目指す“未来像”
(一社)日本貿易会 広報委員会 
伊藤忠商事/稲畑産業/岩谷産業/兼松/興和/CBC/JFE商事/住友商事/双日/蝶理/豊田通商/
長瀬産業/日鉄住金物産/阪和興業/日立ハイテクノロジーズ/丸紅/三井物産/三菱商事/

     [モデレーター] 
       経済キャスター・常葉大学非常勤講師
       榎戸 教子氏

     [パネリスト]  
       株式会社双日総合研究所 チーフエコノミスト
       吉崎 達彦氏

       三菱商事株式会社 経営企画部 コーポレート部門担当部長
       平栗 拓也氏

       SMBC日興証券株式会社 株式調査部 シニアアナリスト
       森本 晃氏

       国際大学学長 
       伊丹 敬之氏
  
 16:30 閉会

日時
2017年10月26日(木)14:00〜16:30 (13:30開場)  

会場
日経ホール 東京都 千代田区大手町1-3-7 日経ビル 3階


○第1部と第2部に分かれていて、なぜかワシだけがその両方に出ることになっている。これではまるでワシが「出たがり」であるみたいだが、なぜか結果的にそんなことになってしまった。日本貿易会と言えば、50周年の時は下働きしたし、60周年の時は運営委員だったし、さすがに80周年には関係しないだろうから、まあ、「毒皿」の気分である。

○プログラムが第1部と第2部になっていて、1人だけ両方とも出る、というと、中高生の頃に聞いていた深夜放送「オールナイトニッポン」の笑福亭鶴光を思い出してしまった。土曜の夜だけは彼が通して出ていたんだよなあ。時は流れ、ときどきワシが浅草演芸ホールに足を運ぶと、落語芸術協会担当の際には唯一の上方落語の鶴光さんが出ていたりする。高座は3回くらい聞いたことがある。あの頃の鶴光さんは、まだ30歳くらいだったのだろうなあ。

○「内なるグローバル化」と「商社の過去・現在・未来」という2つのテーマの両方に出たお蔭で、いろいろ話題が広がった気がする。特に後半で出た「市場の声は、聞けども聴かず」というのは至言だなと思った。ちなみに第2部でプレゼンした内容は、らくちんさんとの対話から生まれたアイデアである。ということで、この記事と本はたいへんお役立ちでありました。


<10月27日>(金)

○総選挙が終わってから5日目。メディアは野党のことを追うのに忙しくて、与党のことはほとんどニュースにならない。だって野党が面白過ぎるんだもの。とくに希望の党は烏合の衆もいいところ。みっともないと言ったらありゃしない。勝ち目が無いと思って小池さんに擦り寄って行った人たちが、負けたら小池さんを罵っている。たぶん小池さんはこんな風に思っている。

「頼んで来てもらったわけじゃないわよ」

○しかもその途中で踏み絵を踏まされて、政治的信念を変えたはずの人たちが、やっぱり安保法制は反対だなどとおっしゃる。こんなに意見がコロコロ変わる人たちが、地元の有権者に信用されるだろうか。有権者というものは、自分の選挙区の候補者が一定の信念の持ち主であると知っていたら、多少、それが変なものであっても許容してくれます。逆に風向き次第で意見が変わる人を、どうやって信じろというのだろう。

○また聞きですけれども、さる自民党の幹部がこんなことを言っていたそうです。

「地元のために働きたいから、政治家になりたい」という人はともかく、「政治家になれるのなら、選挙区はどこでもいいです」と言った人は、だいたいが碌でもない連中だったねえ」

○真面目な話、人生の一発逆転を託して政治の世界に打って出るような野心家は少なからずいます。そういう人たちに、供託金をなんとかしてあげよう、てな人もどこかから湧いて出ます。今回の総選挙で、そういう候補者がいく分かでも淘汰されたとしたら、それは大いに結構なことだと思います。

○この週末のテレビも、不甲斐ない野党叩きに終始するでしょう。水に落ちた犬を叩くのは楽しいものねえ。来週水曜日には特別国会が開かれるというのに、野党の会派がどうなるのかさえ見えてこない。しかしこの間に、与党は左うちわで高みの見物をしているわけです。内輪もめしている場合じゃないでしょう。こんな箴言があるじゃないですか。

「不平不満を述べる人が得るものは、得てして同情ではなくて軽蔑である」


<10月29日>(日)

○今月訪れたところ。

金沢、名古屋、モスクワ、足利、佐野、高松、大阪、岐阜、大阪。

○うーん、新幹線にはたくさん乗ったなあ。それにしても最近の新幹線は混んでいると思う。外国人もあいかわらず多いが、小さな子供をつれた若い家族も増えたと思う。人の移動が増えることは、非常に分かりやすい景気回復です。

○ただしこれだけバタバタ移動していると、国内都市は全部日帰りになってしまう。結果として、「岐阜城に登る」とか「USJに行く」とか「司馬遼太郎記念館を訪れる」といった宿題がどんどん先送りになってしまう。思うようにはならんものです。

○とりあえず今月は、仕事でボロが出なかったことをもって良しとしましょう。と思ったら、あと2日残っていて、安心するにはまだ早い。さて、今から明日の準備をするとしよう。


<10月30日>(月)

○あらためて先週の総選挙について、以下は若干の加筆まで。

○自民党が284議席と改選前議席と同じであった。全体の議席数が10議席減っている中で増減なしということは、実質的な大勝利と言っていい。特に全国289の小選挙区で218議席を押さえている。実に75%のシェアである。今回の選挙では、野党が分裂したことばかりに注目が集まっているが、小池新党に強い危機感を持った自民党の組織がフル回転したことも大きな勝因であろう。

○2012年、14年、17年と自民党は衆院選で3連勝している。それ以外に2013年と16年の参院選もある。いずれも投票率は低かったが、そういう選挙であれば自民党は強い。組織が働くからである。これに対し、野党は無力感を覚えているのではないか。彼らは風が吹かないと勝てない。そうなると自前の組織を作るなどという、手間のかかる、まだるっこしいことはしたくなくなる。風が吹いたらそれに乗る。そればかり考えている。とはいえ、風はいつ吹くか分からない。

○かくして野党は「風頼み」となり、ついには「風任せ」となり、小池都知事の「希望の党」に飛びついてしまった。そして小池さんがこけたら、皆こけた。1000万票程度あるはずの無党派層は今回も家で寝ていた。しかるに誰を恨む必要はもない。悪いのは「風」を頼った自分たちの希望的観測である。

○野党が信頼できる組織は労組であった。今回の選挙ではその労組も分裂した。今後は連合の中でも、自治労や日教組は共産・社民を支援するだろうし、電力総連は自民党になびくだろう。残った労組は立憲民主党を支持するのかもしれない。が、ともあれ労組がまとまりを作って、「反自民」を目指すという枠組みは壊れてしまった。連合もまた、今回の敗者である。

○それでは野党はどうしたらいいのか。風頼りの挙句が「風前の灯」とは悪いジョークである。民進党は、希望の党と立憲民主党に分裂した。しかし両者を足すと議席数は55+50=105と、改選前の勢力を上回っている。その分、維新の会や共産党が議席を減らしている。仮に今後、希望の党と立憲民主党が円満に再合流できれば、「焼け太り」ということになるだろう。

○実際には、両党の間には相当な怨恨が残ってしまった。しかも参院の民進党45人がいて、野田佳彦元総理などの無所属で当選した議員が居て、なおかつ地方組織と140億円の「遺産相続」問題もある。当面は「野党政局」が注目されることになるが、この間、与党に対するチェックは手薄になる。罪は重いねえ。

○迂遠なように思えても、野党には自前の組織づくりをやってもらうほかはない。選挙に楽な勝ち方はないのだし、くれぐれも2009年の再来を期待してほしくはない。それがなされない場合、困るのは有権者全体である。弱い野党はかならずや与党を堕落させるのだから。













編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki