<11月1日>(金)
〇米大統領選挙がどうもきな臭い。当たり前か、もうあと数日で決まるのだから。両者、ファイナルメッセージの段階に入っている。
*10月27日、トランプ氏はなぜか激戦州ではなく、ニューヨークで大イベントを開く。そこに呼ばれたコメディアンが、「プエルトリコはゴミの島!」とやらかしてしまう。
*10月29日、バイデン大統領が、「トランプ支持者こそゴミ!」と言ってしまい、それが失言だということになって動揺が広がる。
*10月30日、前回はマクドナルド店員に扮したトランプさんが、今度はウィスコンシン州でゴミ収集車の運転手に扮してみせた。いわく「ゴミ収集の価格は、バイデン=ハリス政権で18.5%も上昇した」。
〇ううむ、この期に及んで何をやっておるのか。まるで木村十四世名人と升田実力制第四代名人の「ゴミハエ問答」みたいである(「名人なんてゴミみたいなものだ」「名人がゴミならお前は何だ」「ゴミにたかるハエみたいなもんだ」)。しかるにこの勝負、トランプさんの勝ちであろう。ここへ来てリベラル派は、「負けたときの犯人捜し」を始めているようにも見える。
〇そうかと思うと、市場の「トランプトレード」も週後半になって水を差されている。株安ドル安が進み、TMTG社の株価も35.34ドルに下落している。為替も1ドル153円から152円に戻している。いや、それは本来、日米金利差の問題なのだ、と言われれば、もちろんそっちが正しい。しかるに「トランプトレード」がまったくない、というのも無理のある説明であろう。
〇はてさて、いったいどう見たらいいのか。そういえば明日は午後1時から、ユーチューブ上でこんなイベントがありますぞ。事前申し込みは不要です。よろしければ覗いてやってくださいまし。
●【WEB】米国大統領選挙
投開票日直前スペシャル『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』
<11月3日>(日)
〇多くの人がやっている作業だと思うが、筆者はほとんど日課のようにRCPのデータをチェックしている。トランプさんとハリスさんの差は本日は0.3pに縮まっている。これに伴ってベッティングオッズも、一時はトランプ63.9%対ハリス35.0%まで拡大していたものが、現在は54.7%対44.1%まで接近している。まだまだわかりませぬぞ。
〇7つの激戦州の様子はと言えば、サンベルトの4州(ネバダ、アリゾナ、ジョージア、ノースカロライナ)はいずれも1.7%以上の差をつけてトランプさんがリード。ラストベルトの3州は、ウィスコンシンとミシガンでハリスさんが若干のリード。天下分け目のペンシルベニア州はトランプさんが0.4p差でリードである。
〇サンベルト4州をトランプさんが押さえると、選挙人の数は268となる。過半数は270なので、それだけではまだ勝ちとはならない。ハリスさんがウィスコンシンとミシガンを取ると251である。結局はペンシルベニア州の19人を取った方が勝ち、ということになる。ちなみにラストベルト3州は、過去30年にわたっていつも同じ側を勝たせている。いやもう、痺れるような僅差の戦いではありませぬか。
〇とはいうものの、皆が当たり前に使っているこのRCPの信頼度はいったいどうなのか。各種世論調査の平均値を取れば、それが信頼に足る数字なのかというと、いまひとつ自信がない。統計の達人、ネイト・シルバー氏によれば、最近の世論調査はSNSなどでの炎上を恐れ、「アウトライアー」(異常値)を削除してしまう傾向にあるという。それでは平均した際に正しい結果がでなくなるかもしれないのだが、まあ、いろんな邪念が入るのが統計というものである。
〇場合によっては来週、かな〜り意外な結末が出て、「RCPっていったい何なんだったんだ!」と世間の怒りを買っているかもしれぬ。いや、そういうことも十分にあり得るのがこの世界。Never
Say Never。勝負は蓋を開けてみないとわからない。
〇さて、今さら心配しても始まらぬ。どれ、ビールを飲みながら日本シリーズでも見るか。ここまで来ると1998年以来のベイスターズ優勝というものを見てみたい。不思議な「外弁慶」シリーズですなあ。
<11月4日>(月)
〇明日の選挙(日本時間では明後日)では、上下両院の議員選挙も行われる。さて、上院はどんな塩梅じゃ、ということで天気のいい日に外出もせずに、家でせっせと予習をいたすのである。
●Senate
Race 2024(ElectoralVote)
●Battle
for the Senate 2024(RCP)
●2024
CPR Senate Race Rating(Cook)
〇それぞれに分析が違うので、一概には言えないけれども、とにかく面白い選挙区が少なくないのである。
*WV(ウェストヴァージニア州)は極度のレッドステーツ。そんな中で頑張ってきた民主党現職、ジョー・マンチンが引退を決めたので、共和党は置いてある饅頭を拾ってくるような楽な戦い。もうね、世論調査さえ行われていない。
*MT(モンタナ州)もレッドステーツ。そんな中で3期目を迎える民主党のジョン・テスター(D)はしぶとい現職だが、さすがに今年は苦しそう。挑戦者、共和党の実業家ティム・シーヒーがリードしていると伝えられるが、彼はメディアの取材を逃げまくっているとの噂もあって死角なしとせず。
*OH(オハイオ州)は急速に保守化しつつあるラストベルトの州。2年前には、あのJ.D.ヴァンスが現職ティム・ライアンを破って上院議員に当選している。今年、選挙を迎える民主党現職シャロッド・ブラウン(D)は州知事2期、上院3期のベテラン候補。共和党はここにトランプさんお気に入りの候補、元メルセデス・ベンツのディーラー、バーニー・モレノを投入する。接戦は必至。
*大統領選挙の主戦場となっているラストベルト3州は、いずれも上院選においても激戦区であり、民主党にとって守りの選挙となっている。WI(ウィスコンシン州)では現職タミー・ボールドウィンが3期目を目指すが、共和党は銀行家エリック・ホブデを投入する。MI(ミシガン州)では民主党現職が3期目72歳で引退し、民主党はエリッサ・スロットキン下院議員、共和党はマイク・ロジャーズ元下院議員を擁立している。そしてPA(ペンシルベニア州)は穏健派の民主党現職ボブ・ケーシーに対して、共和党が2年前には予備選でメフメト・オズ(懐かしい!)に敗れたデビッド・マコーミックをぶつける。3つともいい勝負になりそうだ。
*有名どころでは、MA(マサチューセッツ州)の現職、エリザベス・ウォーレン(75歳)やVT(ヴァーモント州)の現職、バーニー・サンダースお爺ちゃん(83歳)が再選出馬する。左派を代表する巨頭だから、選挙はテッパンでしょうな。しかし任期はあと6年ですぞ。こんな調子だから、上院議員はついつい高齢議員が多くなってしまうのです。
*それ以外の有名どころでは、MN(ミネソタ州)のエイミー・クロブチャ―(2020年の大統領選候補)、VA(ヴァージニア州)のティム・ケイン(2016年のヒラリーの副大統領候補)、NY(ニューヨーク州)のカーステン・ジリブランドなどが再選を目指しています。いずれも難なく選挙は通るでしょう。
*AZ(アリゾナ州)は、ジョー・マンチンと並ぶ「困ったちゃん」現職議員のキルステン・キネマが今年限りで引退する。空いたところへ、民主党からはルーベン・ガレゴ下院議員が手を挙げて、共和党からはトランプ信者のカリ・レイクが挑戦する。ここは民主党がやや優勢か。
*NV(ネバダ州)は1期目の現職、民主党ジャッキー・ローゼンが楽勝で再選されるかと思ったら、ここへきて期日前投票は意外と共和党の出足が良い、てな報道があって冷や汗たらり。共和党の挑戦者は退役軍人のサム・ブラウンである。
*共和党の現職は、皆さんレッドステーツで安泰な選挙かと思ったら、TX(テキサス州)のテッド・クルーズ、FL(フロリダ州)のリック・スコットは意外な接戦となるかもしれない。いずれもキャラの立ったセネターですから、負けたら「いい気味」と言われてしまいそう。
*その他、NE(ネブラスカ州)では2つの選挙が行われる。いずれも現職は共和党で、補欠選挙のピート・リケッツ上院議員(知事による指名)はほぼ当確だが、本選挙のデブ・フィッシャーには若干のリスクがある模様。
*そうそう、CA(カリフォルニア州)では、生きていたら91歳という民主党現職の大物ダイアン・フェインスタインが死去した空席を誰が埋めるかという選挙で、アダム・シフ下院議員が昇格する見込み。これは同州では稀有のことでありまして、白人で男性であることは、かの州においてはハンディキャップ以外の何ものでもありませぬので。
〇今年の上院の改選議席は34ですので、上記で紹介した17議席のほかにさらに半分ある、ということです。とりあえず上の半分を押さえておけば、選挙速報を楽しむには不自由しないことでありましょう。どれ、お疲れさまである。
<11月5日>(火)
〇米東海岸では既に朝。州によっては投票が始まっていることでしょう。これから先が長い一日の始まりです。
〇明日はこんな番組に登場いたします。
●ニコニコ生放送 https://live.nicovideo.jp/watch/lv346182237
【アメリカ大統領選】トランプかハリスか、解説付きで見守るニコニコ開票特番【通訳字幕付】
▼2024年11月6日(水) 午前10時〜
【出演】
神保哲生(ジャーナリスト、ビデオニュース・ドットコム代表)
@tjimbo
前嶋和弘(上智大学総合グローバル学部教授) @kmaeshima
吉崎達彦(双日総合研究所
情報調査室調査グループ
チーフエコノミスト) @tameikekanbei
西山隆行(成蹊大学法学部政治学科教授 [比較政治・アメリカ政治])
〇先発が前嶋先生でクローザーが西山先生。不肖かんべえは中継ぎ投手となります。たぶん午前11時から午後2時くらいにご覧いただくと、出演しているのではないかと存じます。
<11月6日>(水)
〇開票速報を見ていて拍子抜けいたしました。「データを素直に読めばトランプさんの勝ち」。そしてデータは大筋で有効でした。まだ当確は出ておりませんが、現時点でほとんど決定的。このままいくと、7つの激戦州はすべてトランプさんが取ることになりそうです。すべての州で有意な差がついておりますので、票の数え直しを迫るまでもない。これでは「シビルウォー」にもなりそうにない。
〇特にラストベルト3州は意外なくらいに差がつきました。典型的なブルーステーツであり、今回は副大統領候補のティム・ウォルズを輩出したミネソタ州において、トランプさんがわずか5p差に迫っていたのが印象的でした。直前の調査で民主党勝ちと出て、関係者一同が大慌てとなったアイオワ州は14p差、オハイオ州は11p差でトランプ勝利です。中西部は限りなく赤く染まってしまった感あり。
〇おそらくハリス陣営は、ラストベルト3州に途方もない選挙費用をつぎ込んでいる。たぶんトランプ陣営の3倍くらい。それでこの結果なのだから、これは大敗というべきです。ハリスさん、とりあえずその日のうちの敗北宣言は避けましたが、翌6日朝はなるべく早い時間にそうした方がいいと思います。2028年に本人が再チャレンジを望むかどうかはわかりませんけど。
〇とりあえずは敗因探し。そこで有効なのが出口調査です。CNNのものを見てみましょう。なぜCNNかというと、当溜池通信には2004年以降のCNNデータの蓄積があるからであります。
https://edition.cnn.com/election/2024/exit-polls/national-results/general/president/0
〇これをみると、アッと驚いた点は2つだけでした。ひとつはラティーノ票(全体の12%)でハリス56%対トランプ38%となっていて、前回のバイデン65%対トランプ32%から大きく差が縮まっていること。これは例の「不法移民問題」が原因でしょうね。つまり既にアメリカ国内に定着しているヒスパニック系の人々からすれば、不法移民は「招かれざる客」である。そんなのを大勢入国させて、治安を悪化させた民主党政権は評判が悪かった、ということだと思います。
〇本来、ラティーノ票は民主党にとって「お客さん」のはずです。過去の出口調査を見ると、2020年は65%、2016年は65%、2012年は71%、2008年は66%を獲得しています。ところが2004年はそれが53%になって、ときのジョン・ケリー候補の決定的敗因となりました。ブッシュ再選戦略を担ったカール・ローブが「同性婚反対」を上手にイシューにして、カトリックの多い彼らを味方につけたといわれています。
〇もうひとつ、これも象徴的なことかと思いますが。年収5万ドル以下の人たち(28%)でハリス48%対トランプ49%となっていて、おそらくは史上初めて「貧困層は共和党」という評価になったこと。逆に年収10万ドル以上(40%)の世帯では、ハリス53%対トランプ45%になっていますから、お金持ちはやっぱり民主党なんです。うーむ。
〇おそらくは中西部の貧困層にとっては、「DEI」だの「脱・炭素」だのといった民主党の主張は、「金持ちの道楽」に見えているのでしょう。ということは、この選挙結果は「意識高い系」(Woke)な人たちにとって決定的な敗北ということになります。
〇ということで、われわれは再び「トランプ占い」(トランプさんは一体何をするんだろう?)に戦々恐々としなければならない、ということになります。まあ、たぶん次の中間選挙(2026年)までの2年間の辛抱ですけどね。なんというか、以上はあまり深みのない「謎解き」ということになります。
<11月7日>(木)
〇米大統領選が片付いてようやく2日目。情報はまだ決定的に足りないのであるが、だんだん先のことも見えてくる。こういうのは誰かに質問してもらわないと、アイデアが出てこない。ということで、なるべくいろんな番組に呼んでもらえるのがありがたい。
〇今宵はWBSに出演。テレ東に行ったら、「次回は12月のこの日、その次は1月のこの日とこの日」などとアポが入ってしまう。察するに「トランプ占い」の需要があるらしい。ワシは「トランプ占い」の達人というわけではないが、たぶん他の人よりは慣れている。とりあえず「トランプさんの身になって考える」ことがそんなに苦痛ではない。もちろん当てる自信はないのだが。
〇ドナルド・トランプ氏の行動原理を読み解くポイントは、「実は先のことをまったく決めてない」点にあると思う。つまり「長期戦略」がなくて、「出たとこ勝負」である。交渉事が大好きだが、「ネゴシエーション」ではなくて、「ディール」と呼ぶ。「アイツは何をするかわからない」と相手を怯えさせておいて、時が来たらひらめきでパパっと決めるのが快感であるらしい。
〇とまあ、そんな人が世界最強国の指導者に就いてしまうのだから、周りが振り回されるのは当たり前である。石破さん、くれぐれも「安倍さんの真似をしよう」などと思わない方がよろし。あれは空前絶後のプレーであって、余人がどうこうできるものではない。期待値を下げて、目立たぬやり方で行く方が良いと思う。
〇ちなみに明日はラジオ日経、明後日はBSテレ東「ニュースの疑問」である。
<11月8日>(金)
〇「トランプが勝った!」ということで、さっそくお嘆きの方々が大勢いらっしゃるようです。そうなると別段、ワシもトランプ勝利がうれしいわけではないのだが、ついついこんなことを教えて傷口に塩を塗り込んでみたくなる(われながら悪い性格だ)。
〇今回、まだ数字は確定していないのだが、一般投票数(PV=Popular
Vote)で共和党が民主党を上回った様子である。これは2004年以来の椿事となる。2000年以降では選挙人数(EV=Electoral
Vote)では共和党の4勝3敗、PVでは共和党の2勝5敗ということになる。
共和党 | 民主党 | |
2000年 | ジョージ・W・ブッシュ知事 EV271、PV50.4MIL |
アル・ゴア副大統領 EV266 PV50.9MIL |
2004年 | ジョージ・W・ブッシュ大統領 EV286、PV62.0MIL |
ジョン・ケリー上院議員 EV251、PV59.0MIL |
2008年 | ジョン・マッケイン上院議員 EV173、PV59.5MIL |
バラク・オバマ上院議員 EV365、PV69.5MIL |
2012年 | ミット・ロムニー元知事 EV206、PV60.9MIL |
バラク・オバマ大統領 EV332、PV65.9MIL |
2016年 | ドナルド・トランプ氏 EV306、PV62.9MIL |
ヒラリー・クリントン元国務長官 EV232、PV65.8MIL |
2020年 | ドナルド・トランプ大統領 EV232、PV74.2MIL |
ジョー・バイデン元副大統領 EV306、PV81.3MIL |
2024年 | ドナルド・トランプ前大統領 EV312、PV74MIL? |
カマラ・ハリス副大統領 EV226、PV68MIL? |
〇しかもですな、過去3回の共和党は連続してトランプさんを党の指名候補にしているのだが、回を重ねるたびにPVは着実に伸びているのである。おそらくは得票比率で行くと、2016年よりも2020年、そして2024年はたぶん総投票数の過半数を超えている。すごいではないですか。
〇カマラ・ハリスは、4年前のバイデンに比べてPVを1300万票くらい減らしている。こんなに減らすと、2020年のバイデン票が嘘くさく思えてくるではないですか(郵便投票にイカサマがあったんじゃないのか?)。しかも彼女は、トランプ陣営の3倍近い選挙資金を集めていたというのに。
〇今ごろ民主党内部は大荒れですな。「やっぱりバイデンが悪かった」だけでは済まされそうにない。「硝子の天井論」でも誤魔化しきれない。「やっぱりタマが悪かった」というハリスさんへの非難も避けられないだろう。それだけではなくて、選挙戦略そのものを見直す必要があるのではないか。2024年選挙は、歴史に残る決定的な選挙であったように思われます。
<11月9日>(土)
〇中一日で今朝はまたまたテレビ東京へ。今度はBSテレ東で日経サタデー「ニュースの疑問」。ご一緒するのは細川昌彦先生と小谷哲男先生。トランプ政権復活でこれからどうなるかという話になるのだが、通商政策と安全保障政策で悩みは尽きないのである。
〇お昼からは大手町三井ホールに移動して、楽天証券のセミナーへ。こっちでご一緒するのは愛宕伸康さんと加藤出さん。こちらでは主に日米経済や金融政策について議論するのであるが、またまた違う形で心配事がある。面白いねえ。
〇休み時間に岡崎良介さんとダベる。このところご無沙汰しておりましたが、4年に1度のこの季節になるとお目にかかりますなあ。考えてみたら、お互いによくまあ元気にやっているものであります。さて、4年後はどうなっていることやら。
〇今週の米大統領選挙について、取り急ぎ東洋経済オンラインに寄稿。おっ、今のところランキング上位でありますぞ。
●「選挙圧勝」でも次期トランプ政権は簡単じゃない
<11月10日>(日)
〇4年に1度の季節労働はどうやら峠を越しつつある。いや、この後は「新政権の閣僚人事は?」など、お馴染みの問題が殺到してくるのだが、いちばんのキモである「どっちが勝つか」をいちおう当てて、「なぜこうなったのか」もだいたい見えているので、自分的には「2024年選挙は何とか乗り越えられた」という感触になっている。
〇その一方で、4年に1度の「またかよ!」という現象もある。アメリカの選挙結果はなかなか出ないので、なかなかデータが確定しない。ポピュラーボートの数はやっと落ち着いたようだが、明日の朝になったらまた変わっているかもしれない。上院の議席はまだひとつが未定である。下院議員の数が決まるのはいつになるのだろう?
〇細かい話をすると、CNNの出口調査のデータは後から数字が変わるのである。これ、昔、単行本を出したときにデータを使ったら、新潮社の校閲が発見してくれた。今回もやっぱりそうだった。東洋経済オンラインで引用した元データがもう変化している。大勢には影響がないけど、もう油断も隙もならない。
〇でも大丈夫、ワシは慣れておるのだ。こんなことは過去に何度も経験しているのである。とりあえず来週は、いろんな場所でこの選挙結果をご説明することになっておるので、手元のデータだけは神経質に修正しておく必要がある。
〇一方で嫌な予感もしている。4年に1度のこの季節には、得てして腰痛が発生するのである。上手に息抜きして自分を甘やかさないと、後で肉体的に苦しむことになる。いや、もう若くないんだし、そこまでは分かっておるのですが・・・。
<11月11日>(月)
〇トランプ政権のリスク・カレンダーというものを思いつきました。たぶん様々な「トランプリスク」は波状攻撃でやってくる。以下のような整理をするとわかりやすいのではないでしょうか。
(1)気候変動対策リスク(年内)→年明け後にアメリカがパリ協定を抜けることは必定。だったら今週からアゼルバイジャンで始まるCOP29において、各国が「CO2の削減目標」をコミットするのってあほらしくないですか?ということで、「脱・炭素」への取り組みが全世界的に遅れ始める。EVだって売れないし。ああ、あほらしい。
(2)地政学リスク(来年1月)→正式な大統領就任を待たずして、トランプ氏の「勝手外交」が始まる。狙いはウクライナ戦争と中東情勢だ。「この喧嘩、私が買い取った!」と大見えを切って決まればカッコいいが、かえって地政学リスクを高めてしまう可能性もある。まあ、ハリス政権誕生の場合よりはマシなはずですから、ここはお手並み拝見と参りましょう。
(3)アメリカ内政リスク(2025年1月20日以降)→政権発足後、すぐに手を付けるのはジャック・スミス特別検察官の解任や、「1月6日事件」の逮捕者に対する恩赦、あるいは「スケジュールF」を復活させて連邦政府の公務員を首切りできるようにするかもしれない。いずれにせよ、荒療治になるはず。議会では年明けとともに「債務上限問題」が復活しますから、下院では「フリーダム・コーカス」との不毛な戦いが再燃する恐れも。まあ、日本からは生暖かく見守っておけばよろしいかと。
(4)不法移民強制送還リスク(2025年春)→「最初の100日」の間に、トランプ大統領が「何か目立つ成果」を目指すとしたら、それは今回の選挙で示された民意、「不法移民問題」でありましょう。4月末までに大量の不法移民をメキシコ国境の向こう側に追い出す、ということで、何か派手な演出を仕掛けるかもしれません(お得意の「プロレス」かもしれないが)。
(5)通商問題リスク(2025年夏)→関税引き上げにはいろいろと手続きが必要なので、政権発足後にいきなり上げることは考えにくい。そしてトランプさんのことですから、関税引き上げを準備しながら、「やるぞ、やるぞ」と海外を脅して、米中首脳会談で何か「お土産」を迫るようなことをやるのではないか。いや、なにしろトランプさんは「決めてない」人ですから。
(6)財政リスク(2025年秋)→2026年度予算の審議が始まると共に、「トランプ減税」の恒久化とさらなる法人減税が議会の俎上に上がってくる。共和党が上下両院で多数を握っているので、リコンシリエーションプロセスを使えば確実に通るのですが、一方で財政赤字拡大を懸念してドル金利上昇も気になるところ。ああ、来年もやっぱり円安かなあ。
〇こうしてみると、2025年は文字通りの「トランプイヤー」となりそうですな。「あれもこれも心配!」などという前に、上記のように「どういう順序でリスクが訪れるか」を整理するだけで、ずいぶん印象は変わってくると思います。来年はいっそ、いろんなリスクを楽しんでみたいものです。
〇シェイクスピアの箴言にもいわく。「これが最悪だ!」などと言っていられる間は、まだ最悪ではない。(The worst is not, So long as you
can say "This is the worst".)
<11月12日>(火)
〇先週の大統領選挙からこれで1週間。だんだんデータも揃ってきたので、「反省会」が始まっている。とりあえず民主党内は大変だ。なんでこんなに負けてしまったのか。「責任者出てこい!」ということになってしまう。何しろ負け方が悪過ぎる。
(1)今回は7つの激戦州全てをトランプに取られてしまった。選挙人数では312人対226人という大敗だった。2028年はどう戦ったらいいのだろう。
(2)一般投票数でも負けている。こんなことは2004年以来の椿事である。しかもハリスは2020年のバイデン票8130万票から7156万票と1000万票も減らしている。
(3)投票率は65%と、史上最高だった2020年の66%並みに高かった。普通は投票率が高いと民主党が有利なはずなのに、それでも負けてしまった。言い訳できない。
(4)なおかつ選挙資金はハリス10.0億ドル、トランプ3.8億ドルと3倍近くも集めていた(これはバイデン氏が集めてくれた分を引き継いだお陰でもある)。
(5)上院は共和党が4議席増で多数を奪還。下院もおそらく共和党多数となる見込み。三権分立の行政も立法も司法も共和党に取られている。
〇犯人探しということになると、気の毒ながらバイデンさんやハリスさん自身が最有力候補となる。これから当分の間、思い切り叩かれ続けることでしょう。敗軍の将というのはそういうものであって、同情する必要はないのである。
〇とはいえ、細かくデータを見るとやはり2024年選挙は僅差の戦いと言うべきだったのではないかと思われてくる。仮に投票日が11月5日ではなくて10月5日であれば、ことによるとハリス氏が勝っていた戦いだったかもしれませぬ。
〇親の顔より良く見たRCPのこのグラフをもう一度御覧じろ。ハリスさんの支持率ピークは、テレビ討論会があった9月10日前後である。それからしばらくは水準を維持したけど、10月下旬になって失速した。逆にトランプさんの支持率が上昇し、10月末には横一線となっている。ワシが10月23日に思い立って宗旨替えをしたのは、たぶんそんなに間違ってはいなかったのであろう。
〇もうひとつ、CNNの出口調査が証拠物件である。
●投票行動をいつ決めましたか?
トランプ支持 | ハリス支持 | ||
3日以内 | 4% | 47% | 41% |
先週 | 3% | 54% | 42% |
10月中 | 6% | 40% | 47% |
9月中 | 7% | 42% | 54% |
9月以前に | 79% | 50% | 49% |
〇政治的分断化が行きつくところまで行ってしまった今のアメリカでは、「直前まで決めていない」(Undecided)有権者は貴重な存在です。昔は1割くらいはいたんですけどねえ。逆に固定票はほぼ半々に割れていて、最後の瞬間に雪崩をうった人たちがトランプさんに動いた。その理由はどこにあったのか。
〇逆に言えば、なぜハリスさんは最後の1週間に見放されたのか。それはビヨンセとかレディガガとか、いわゆる「セレブ」を選挙戦に呼んでコンサートさせたことがマイナスだったんじゃないかと思います。トランプ支持に靡くような白人ブルーカラー層は、ああいうの好きじゃないでしょう。むしろ「ああ、この人は自分のような人間とは無縁の存在なんだ」と思わせてしまう効果の方が大きかったと思います。トランプ支持者の絶望感の深さを、彼女はたぶん最後まで理解できなかったのでしょう。
〇さらには、「ああいうのは逆効果になるから、止めた方がいいですよ」と言ってくれるようなスタッフが、たぶん彼女の周囲にはいなかった。高学歴の民主党支持者たちは、ビックリするほど多様性のない思考法をするものです。「テイラー・スウィフトが支持してくれれば民主党は勝てる」みたいなこと言って、お前ら本気かと。セレブなんて、崇め奉っているのはごく一部の人たちのはずなのに。
〇ということで、勝負は最後の1週間でした。しかるに今回の大敗は、アメリカ政治の行方を決定づけるだろうし、民主党はこのマイナスを取り戻すのに何年かかるかわからない。特に司法の問題を考えるとね。2024年選挙は歴史的な「僅差」であり、同時に「大差」でもあった。投票日から1週間を経て、こんな逆説を噛み締めるところであります。
<11月13日>(水)
〇朝はニッポン放送へ。『モーサテ』の日に比べればお迎えは1時間遅いので、はるかに楽である。午前6時半から「飯田浩司のOK!
Cozy up!」に出演し、午後8時まで。
〇それから長い一日を過ごす。あっという間である。家に帰ってから、ふとこんなものを聞いてみる。
●ポッドキャスト:2024年11月13日(水)コメンテーター:
吉崎達彦
〇ふむふむ、俺はこんなことを話していたのかと、ほとんど忘れているのが自分でも呆れるくらいである。本当に今朝のことだったんだろうか。
<11月14日>(木)
〇本日は神戸商工会議所さんのお招きで神戸へ。テーマはもちろんトランプ新政権で、地元経済人の関心はまことに高い。こんな風にして、今日も4年に1度の繁忙期を楽しませていただいております。
〇某自動車部品会社さんいわく。イリノイ州に工場を作ったときに、メキシコに進出すべきかどうか正直迷った。何しろコストが全然違うから。今は行かなかったおかげでホッとしています、と。そりゃあそうだろう。
〇今から思えば、NAFTAは北米市場を鍛え上げる戦略だった。特にすそ野の広い自動車産業を育成する効果があり、日本企業を含む多くの外資が参入した。それが今では、「メキシコ製のクルマに100%の関税をかける」とトランプさんが言っている。今ではNAFTAが米国労働者のジョブを奪った、とみられていて、その後継バージョンであるUSMCAは2026年に改定される。これは大変です。
〇トランプ第2期政権にとって、一丁目一番地は不法移民問題でありましょう。ということは、年明け早々からこの問題はさく裂するはず。次期政権は「最初の100日」以内に、「不法移民の大量強制送還」みたいな形で成果を上げようとするでしょう。メキシコ政府とは年明け早々からバトルになるのではないか。
〇それから来年の日米関係ということでは、おそらくトランプさんは大阪・関西万博を見に来るだろう。これはひとつの材料となります。せいぜい神戸ビーフの旨いのを食べてもらって、ゴルフもやってもらったらいい。石破さんは「ええとこのボンボン」だったから、慶応大学ではゴルフ部に所属していたとか。実は安倍さんよりも上手だったんですって。
〇神戸で聞いた話。現在、兵庫県知事選挙が行われていて、この週末が投票日である。このままいくと、兵庫県庁にあの人が戻ってくるかもしれないんだそうだ。それって不味いんじゃないのか。東京じゃ石丸現象はとっくに過去のことになっているけど、まだまだ騙され足りない人たちがいるんでしょうかねえ。
<11月15日>(金)
〇QEが発表されました。7‐9月期の実質GDPは年率0.9%増。名目GDPは年率換算で610.9兆円。「個人消費が堅調」と言われるけれども、そんな気配は全然感じませんけどねえ。
〇今年の夏は自動車の品質不正問題が解消したことで、やっと納車がされたという分が増えたということと、「南海トラフ」で大騒ぎになったんで、防災グッズが売れたことが大きいらしい。景気良くカネを使っているのはインバウンドだけで、それもちょっとずつ見かけなくなりつつある。心なしか、タクシーもつかまりやすくなったような気がするな。
〇先日乗ったタクシー運転手さんは、「もう去年とは全然違います」と嘆いていた。去年はまだ「脱コロナ」があったから、無理してでも出かけようとしていたけれども、今年は忘年会もそんなに多くならないんじゃないか。盛り上がりに欠けますなあ、ご同輩。
〇消費の不振は内閣府でもいろいろ調べているらしいのだが、「年寄りがカネを使わない」(長生きリスクを恐れて貯金を減らさない)というのが大きいらしい。いやね、ワシも本来は「溜池通信800号記念」で、今宵はパーッとお祝いをしなきゃ、などと考えていたのだが、もう先月くらいから忙しくて全然そんな気になれなかったのである。
〇ということで、今宵はおうちでご飯と缶ビール2本で幸せになったのである。文句を言ってたら罰が当たります。
<11月16日>(土)
〇トランプ2期政権の人選が早い。財務長官や商務長官、USTRなど経済系はまだだけれども、選挙期間中からある程度構想を練っていた様子。以下は11月14日時点で、ソースはポール室山氏の"Washington
Political Report"から。
<WHITE HOUSE>
Vice President J.D. Vance Senator (OH), US
Marine Corp., age 40.
Chief of Staff Suzie Wiles Co-Chair of the
Trump campaign, 67
Dept. Chief of Staff Steve Miller Senior
Advisor & chief speech writer, 39.
National Security Advisor Mike Waltz House
Representative (FL-6), US Army, 50.
Border Czar Tom Homan Acting Director of
ICE, 62.
White House Counsel William McGinley Cabinet
Secretary, Holtzman Vogel.
Director of CIA John Ratcliffe DNI, former
House Representative (TX-4), 59.
Dr, National Intelligence Tulsi Gabbard former
House Representative (HI-2), 43.
<CABINET>
Secretary of State Marco Rubio Senator
(FL), Fl House Speaker, 53.
Secretary of Defense Pete Hegseth FNC
host, Army National Guard Officer, 44.
Attorney General Matt Gaetz House
Representative (FL-1), 42.
Deputy Attorney General Todd Blanche Defense
attorney, NY prosecutor, 50.
Secretary of HHS Robert Kennedy Jr Environmental
Lawyer, Presidential Candi., 70.
Secretary of the Interior Doug Burgum former
Governor of North Dakota, 68.
Secretary of DHS Christi Noem Governor of
South Dakota, House Rep., 52.
Government Efficiency Vivek Ramaswamy Presidential
candidate, entrepreneur, 39.
Co-chair Elon Musk CEO of Space-X, Tesla,
and X, 53.
Director of EPA Lee Zeldin former House
Representative (NY-1), 44.
Ambassador to the UN Elise Stefanik House
Representative (NY-21), 40.
<OTHER NOTABLE APPOINTMENT>
Ambassador to Israel Mike Huckabee former
Governor of Arkansas, 67.
Envoy to Middle East Steve Witkoffe Witkoffe
Group, real estate investor, 67.
〇いやもう、真面目なのだか不真面目なのだか、といういつものトランプ流である。国務長官や内務長官は「まあ、そう来ますよね」という感じなのですが、国防長官!司法長官!!厚生長官!!!とどんどん掛け金が積みあがっていく感じ。「政府効率化委員会」のヴィヴィック・ラマスワミとイーロン・マスクなんかはスルーされてしまいそうです。
〇この人事を見て、今ごろイヤ〜な気分になっているのは、今週、新たな共和党上院院内総務に選出されたジョン・スーン氏でしょう。年明け早々、このメンバーの承認をしなければならないけれども、上院は共和党53対民主党47ですから、身内から4人の造反者が出ればアウトである。ワシ的には遠慮なくアウトにすべし、と思いますが、果たしてその時に次期大統領がどういう反応を示すのか。
〇しかるにアメリカ政治のシステムはよくできていて、上院議員の任期は6年間、大統領は4年間である。しかもトランプ氏は2年後の中間選挙後は、確実にレイムダック化が進む。憲法上の規定により、再選はできませんからね。
〇とりあえず厚生長官はリジェクトされるでしょう。でないとアメリカの公衆衛生はエライことになりますぞ。こんな風にいつもバトルが生じるのがトランプ劇場。当溜池通信としても、お付き合いしなければなりませぬ。
<11月17日>(日)
〇昨日の続き。「トランプは憲法を改正して、4年を過ぎても大統領に居座るのではないか?」というご質問が良くあります。それでは合衆国憲法修正22条をご覧いただきましょう(第2節の批准手続きは1951年に終わっております)。
修正第22条
第1節 何人も、2回を超えて大統領の職に選出されてはならない。他の者が大統領として選出された場合、その任期内に2年以上にわたって大統領の職にあった者又は大統領の職務を行った者は、何人であれ1回を超えて大統領の職に選任されてはならない。ただし、本条の規定は、本条が連邦議会によって発議された時に大統領の職にある者に対しては適用されない。また、本条の規定は、それが効力を生ずる時に任期中の大統領の職にある者又はその大統領の職務を行う者が、その任期の残余期間中大統領の職にあり、又は大統領の職務を行うことを妨げるものではない。
第2節 本条は、連邦議会がこれを各州に提出した日から7年以内に、全州の4分の3の議会によって憲法の修正として承認されない場合は、その効力を生じない。
〇合衆国憲法を改正する手続きはとても煩雑で時間がかかるので、任期中にこの条項を変えるのはほぼ不可能でしょう。となったら、解釈でゴネる手が考えられますね。「2回を超えて選出されてはならない」とは書いてあるけれども、「これは連続任期のことを言っているのだ」と言い張って、最高裁に判断を求めてみるのはどうか。
〇うーん、いくら保守派判事が9人中6人もいるからと言って、ちょっと無理筋であるような気がします。最高裁判事も、自分の評判を考えますからね。大統領任期は4年だが、最高裁判事は終身である。理屈の立たない判断を残して後世の批判を浴びることは、彼らは嫌うと思います。
〇それではこれはどうか。2028年に「ヴァンス大統領、トランプ副大統領」というチケットで出馬してみる。その上で当選したら、すぐにヴァンスに辞任してもらう。これはプーチン大統領が、メドベージェフ首相を使って2008年から12年にかけて使ったトリックと似ています。でもねえ、こんな無茶をしたら、普通に民主党の候補者に負けるでしょう。
〇アメリカの大統領は、2度目の当選を果たした直後が権力の頂点なんです。つまり今がそうだということ。そして時間の経過とともに彼の権力と権威は減衰していく。もちろん加齢も深まっていく。既に78歳ですからね。そういうことだと考えるのがいいと思います。
〇ということで、明日朝は「モーサテ」に出演です。うむ、ちょっと久しぶり。10月9日以来ですな。良かったら見てやってくださいまし。
<11月18日>(月)
〇今朝はえらい目に遭いました。
〇午前4時、いつも通りテレ東差し回しのタクシーに乗って、常磐道柏インターに乗ったのです。そしたら流山インターの手前で、車列がピタッと止まってしまった。高速入り口に何もサインがなかったので、どうやらたった今起きた事故による渋滞に突入した模様。前後左右をクルマに挟まれて、動きが取れない状態で時間だけが過ぎていく。
〇だんだん不安になってきたのでテレ東さんに電話を入れて、「ひょっとしたらモーサテの番組開始時間(05:45AM)に間に合わないかもしれません」と告げる。これって結構な一大事でありまして、コメンテーターの到着が遅れると、番組の中身を差し替えなければいけなくなる。
〇クルマが停止したのは流山市内のトンネルの中。路肩を消防車が駆け抜けていくところを見ると、どうやら先方でトラックの炎上事故があるらしい。しかるに事態はさっぱりわからない。ネットの接続状況もよろしくない。見ていたら、クルマを降りてケータイを手に電波の入る場所を探して歩き出す人も居る。危ないなあ。そうでなくても排気ガスも溜まっているはずだが。
〇停止してからほぼ1時間たったところで、片渕茜キャスターから電話あり。とりあえず今日の番組の打ち合わせを、と言われるのだが、そもそもスタジオにたどり着けないのでは打ち合わせても意味がない。と思っている間に、タクシーがそろそろと動き出した。おお、やっと事故の片付けが終わったか。
〇事故現場を横目に見たら、案の定、トラックの横転事故であった。どういう状況だったか、乗っていた人が無事だったかなどは一切不明。なおかつ路上には積み荷が散乱していて、察するにその片付けに時間を要した模様。とはいえ、早朝の常磐道はトラックだらけであるから、いつこういう状況に出くわしても不思議はないのである。
〇幸いなことに、そこから先の高速は一瀉千里でありました。箱崎を渋滞なしで抜けたところでテレ東さんに電話を入れて、午前6時くらいには着けそうですと連絡を入れる。この間、運転手さんはまことにお疲れさまでした。
〇結局、テレビ東京に到着したのは05:55AM。タクシーに約2時間乗車していたことになる。既に番組は始まっていて、ワシの出番はうまいこと後ろに繰り下げられている。いやあ、長いことやっていると、めずらしいこともありますなあ。とりあえず番組は結果オーライということで。
〇「なんで今日の『プロの眼』コーナーは6時40分台だったの?」と思われた方、上記のような次第でありました。ちなみに本日のお題は「トランプリスクはカレンダーで読め」でした。
<11月19日>(火)
〇本日は講演会で郡山市へ。そういえば去年も来ましたな。この時期に「2025年の日本経済」をテーマに語るというのは、いささか時期尚早であるのだが、世の中的には「またトラ」リスクにも関心が高いところであるので、いちおうの需要はあるらしいのである。
〇とはいえ、本日はようやく「今年の紅白歌合戦のメンバー」が公表された程度で(案の定、新人歌手は知らんのばっかりじゃ)、流行語大賞も「今年の漢字」も定まっては居ない。そういうネタが揃わないと、年末の気分は高まってこないし、「さあ、来年の日本経済は・・・?」という
〇それでも7‐9月期GDP速報値は先週金曜日に出ているので、いちおうはパワポ資料も作るのである。ああ、思えば何度こういう作業を繰り返したことか。これから先はエコノミストの繁忙期でありまして、注文があるのはありがたきことである。そうでないと自分が勉強しなくなりますので。
〇「いつまでやってるんだ、この仕事」と自問自答しながら郡山駅で下車すると、ああ、やっぱり空気が冷たい。首都圏とかなり違う。いや、これが東北の空気というものでありまして。去年と同じ会場で勤めを終えて、郡山駅に戻って「もりっしゅ」で福島の地酒を一杯賞味する。すると美味いんだよなあ、これが。
〇郡山駅で小さな「くるみゆべし」を自分用に買う。好きなんですよねえ、これ。もともとは会津出身の渡部恒雄さんのご推奨なんです。
<11月20日>(水)
〇トランプ政権の経済スタッフ人事が難航している、というのは経済界から見て「いいニュース」と言っていい。つまりトランプさんの周囲には「まともな人たち」と「MAGAな人たち」がいるけれども、とりあえず経済・金融に関しては議論が行われていて、それなりに筋の通った意見が通っていることを意味するのだろう。
〇焦点となる財務長官については、「関税上げるべし派」のハワード・ラトニック氏が商務長官に指名され、「関税上げちゃいけない派」のスコット・ベッセント氏がNEC(国家経済会議担当補佐官)に回る模様。おそらくこの二人が衝突して、代わりに浮上しているのが元駐日大使のビル・ハガティ氏であるらしい。こういうのを「漁夫の利」というわけですよね。
〇まだロバート・ライトハイザー氏が残っている。「1期目と同じUSTRを打診された」との噂も聞こえてくるが、これはご本人的にはちと不満であろう。とまあ、こんな風に、どこの国でも人事というのは似たような理屈で動いている。面白いねえ。知らんけど。
<11月21日>(木)
〇本日は原稿を2本、納入する。なるべく来週の予定を楽にしておきたいのである。
〇それというのも来週は沖縄出張が控えておる。最後に行ったのは、もう10年以上前のこと。となれば来週の自分を楽にするために、今週はせっせと仕事をするのである。当たり前のことではないか。
〇原稿というものは、できれば締め切りギリギリに入稿する方がクオリティは高くなるものだが、贅沢は言っていられない。沖縄の方が大事である。そんな私を誰が責められよう。
<11月23日>(土)
〇ということで、今週の拙稿のご紹介。
●「またトラ」リスクは「トランプ四季報」で準備せよ
〇トランプリスクは、「冬」=気候変動問題、「春」=不法移民問題、「夏」=通商問題、「秋」=財政・税制問題、と四季の到来に沿って変化する、というもので、これは以前から当欄でもご紹介したし、モーサテなどでもお話しした通り。
〇ところがこれを東洋経済さんに寄稿すると、「トランプ四季報」になってしまうのだ。面白いねえ。と、自分で言ってどうする。
〇しかるに、この「市場深読み劇場」、マーケットアクセスランキングを見ると、あたしゃ全然オバゼキ先生にはかなわないのである。向こうの方がよっぽど読者を持っている。どうも悲観論の方が、世の中的には好まれるようである。
〇しかも競馬の予想の方も、このところワシはひどい外し方ばかりであり、明日のジャパンカップも全然自信がない。ちなみにオバゼキ先生は、「らしくない理由」で予想はドウデュースだそうである。でも、人気になると来ない馬なんで、ワシ的には買いたくないなあ。
〇読者諸兄におかれましては、明日は是非、上海馬券王先生を参考にしてくださいまし。それからジャパンカップの後はこんな番組もございます。テレ朝からBS朝日に移って新装開店、「朝まで」でなくなった朝生です。久しぶりに田原さんに会ってきます。
●BS朝日「激論!“トランプ復活”ド〜する?!日本」 2024年11月24日(日)よる7:00〜8:54
<11月24日>(日)
〇ということで、行ってきましたですよ。テレビ朝日はずいぶんお久しぶりである。そうそう、初めて『サンデープロジェクト』に出た2006年頃は、六本木ヒルズはまだできて間もなくて、テレ朝の新社屋もピカピカしてました。当時はまだまだテレビ業界も景気が良くて、いろんな意味で牧歌的な時代でありました。今はねえ、そうも言ってられませんけれども。
〇「朝生」はBS朝日に移って今回が2回目。時間帯が午後7時から9時までになって、パネリストの数が約半分になって、それ以外のフォーマットはあんまり変わっていない。強いて言えば、深夜の時間帯特有の孤立感、みたいなものがない。何しろ午前12時半にテレ朝に集合!という時点で堅気の仕事ではありませんでしたからなあ。
〇それに比べれば、今回は時間帯が楽でありがたい。出演者同士で話が弾む。「以前は大変でしたよねえ」「次の土曜日は丸々、使いものにならなくて・・・」。いや、ホントありがたい。なにしろWBSより2時間も早く終わってくれるのだ。
〇時間も短縮されている。「2時間なんてアッという間」と言っていたけれども、その割には結構、話せた気がする。まあ、「今日はこれだけは言おう」と思ったネタが出せずに終わる、てなところはいつも通りでしたが。
〇内輪ネタを一つ。トランプさんの当選にかこつけて、「こないだの兵庫県知事選挙みたいなことが、アメリカではずっと前から起きている」という話で切れて、いったんCMに入った際に、お隣の吉田はるみさんが、「名古屋市長選挙、8時当確で大塚耕平さんが負けちゃった」と教えてくれて、全員が「ええええっ?」。大塚さんは、この番組にはよく出ていたのですけどねえ。
〇なんかこう「テレビの時代の終わり」みたいなものを感じさせられる1日でした。田原さんは相変わらずの怪気炎なんですけどねえ。
<11月25日>(月)
〇今日は信濃毎日新聞社さんの「信毎セミナー」で長野市へ。
〇まずビックリしたのは、北陸新幹線「かがやき」号敦賀行きが完全に満席であること。グランクラスまで一杯ということは、やはり福井県への延伸効果が効いているのでしょう。もちろん外国人客も多い。長野駅で降りる人はほんの少しだけで、やっぱり北陸新幹線は賑わっている。この次、富山に帰るときは早めに切符を取らねばなるまいて。
〇長野市内は紅葉が見事である。今年は11月になって急に寒くなり、それで色合いが良くなったとのことだが、今日はそんなに寒くないのがありがたい。店先で見かけた「シャインマスカット2100円」とあったのは、柏高島屋で買ったら5000円くらいしそうな立派なものであった。さすがは地元。買って帰れば良かったかなあ。
〇信毎セミナーに呼ばれるのはこれで5〜6回目である。信州全域で読まれている強力な県紙なるも、実は長野県内には新聞協会に所属する新聞が全部で4紙あると聞いて驚いた。県紙が2つある県と言えば、福島民報社と福島民友社の福島県、そして沖縄タイムスと琉球新報がある沖縄県と相場が決まっておる。さすが多様性の長野県。
〇余計な話だが、先日、社内の一橋大学の後輩たちと話す機会があったのだが、若い人は田中康夫先輩のことをご存じない。さすがに長野県内は違うだろう(県知事時代の喧噪の記憶がある)が、去る者は日々に疎く(と言ったら本人が無茶苦茶怒りそうである)、まあワシが1年生だったときの5年生なんだからもって瞑すべしといったところか。
〇お昼には長野名物の蕎麦をご馳走になる。まことにありがたし。当地では蕎麦に七味唐辛子を振る。これがなかなかに刺激的なのである。ただし関東の蕎麦屋で、テーブルに七味を置いてくれているところはあんまりないのではないかなあ。
〇そして長野県内の講演会ではいつものように笑いが少なく、それでも寝ちゃう人はまったくおらず、最後は質問の手がスッと上がるのである。今日もトランプ新政権の一席を漫談調で行なったのである。実は今週金曜日は「沖タイ」さんに呼ばれて那覇に行くのであるが、そっちではどんな風に語ればいいのか、これから考えねばなりませぬ。
〇地元の方に「なぜ長野県は長距離ランナーが育つのですか?」と尋ねてみた。答えがふるっていて、「そりゃあ全国からいい選手が集まってきますから」。言われてみれば、箱根駅伝など見ていると、佐久長聖高校出身者がいっぱいいるものねえ。要するに指導者がいいと選手が伸びて、いい選手が出ると後はほっといても逸材が集まってくる。産業と同じ集積効果ですな。
〇「ベイスターズの牧秀悟も長野県出身なんです」とのこと。いやあ、それを言ったら昨日の台湾戦は惜しかったですなあ。侍ジャパンのキャプテン、恐怖の6番打者は昨日はいいところを見せたそうです。ああいうところも、実に長野県民らしいです。
<11月27日>(水)
〇今日はとっても久しぶりに霞山会館に行って、東亜フォーラムの講師を務める。
〇本日の演題は、「米新政権と今後の米中関係の展望」。霞山会だから米中関係は必須だろ、と思って無理してつけたタイトルであったが、あらためて考えてみたら今の状況で米中関係について語るのは難しい。情報がなさ過ぎるのだ。しょうがないないから、米中経済の分析(GDPの米中逆転は当分ありませ〜ん!)という話にこじつけてみた。
〇ところが会場を見回すと、ああっ、あの人もこの人も古い知り合い、いや先輩ばかり。どの面下げて、こんなお歴々の前で講釈しろというのか。まあ、仕方がないからいつもやっているような話をする。するとまことに鋭いご質問を頂戴するので、ありがたいことでありまする。
〇講演会の後で、主だった方々と30分ぐらいコーヒーブレイクをする。折り紙付きのチャイナやロシアや台湾のウォッチャーがいらっしゃるので、世界が広がって面白い。いや、まさに『東亜』らしい世界である。
〇夜はワシントンからご来訪のポール室山さんを囲み、トランプ政権誕生の意義をあれこれと語る。これもまたかつてよく知る者同士なので、コミュニケーションの質が極めて高い。「そうそう、それが言いたかった」みたいなことがたくさん見つかってしまう。
〇思うに、人間こそが最高のメディアなのである。苦労して分厚い本を一冊読み通すよりも、その本の著者と一晩飲み明かす方が、よっぽど深く本質に迫れることがある。リアルで人と会う、ということの価値は何事にも換えがたい。ネット社会に生きる者こそ、その値打ちを知らなければなりませぬ。
<11月28日>(木)
〇ということで、ワシは那覇に来ておるのである。夕方から羽田を旅立って3時間。沖縄って、こんなに遠かったっけ? 3時間あったら、上海にだって到着できるのではなかったか。どうもこの時期は逆風で、フライトに時間がかかるらしいのだ。帰りはきっと早いと思う。
〇それにしても本日は溜池通信を出さねばならず、社内のプレゼンもあったために変な時間帯のフライトとなり、ソラシドエアの狭い座席になってしまったことが惜しまれる。あー、辛かった。
〇ということで当地に着いたらもう午後11時近く。還暦世代としては、さすがにこれから飲みに行く元気はないので、コンビニで買ってきたファミチキ(意外と旨い)とバーボンで寝酒をするのである。明日は「沖縄タイムス」さんの講演会があるのだが、まあ、起きてから考えるとしよう。おやすみなさい。
<11月29日>(金)
〇本日の那覇市の天候は、「今期一番の寒さです」とのこと。でも日中は普通に気温が20度Cはあります。かりゆしを着ていると、朝夕はちょっと寒いかもねえ。
〇ホテルの部屋で「沖縄タイムス」を読んでいると、不動産情報が面白いのである。どうやら沖縄は不動産取引が活発なようである。普通の住居はもちろんのこと、軍用地の売買が行われているところがいかにも沖縄らしい。お値段は少々高め。なにしろ全国でも出生率が高く、若年人口が多い場所でもある。
〇沖タイさんに話を伺うと、「外からどんどん投資マネーが入ってくるので、地元の若者が困っています」とのこと。3000万円台のマンションなんてもうなくなった、などと。おそらくはチャイナマネーも入っているのかも。オーバーツーリズムの問題もちゃんとあるようです。
〇ということで、本日は沖タイさんの政経懇話会講師をお勤めする。あいもかわらぬ、いや日々刻々と変わるトランプ漫談の一席をご披露するのである。「当地は質問があまり出ませんから・・・・」と言われていたのに、ちゃんと2問、頂戴いたしましたですぞ。
〇メインテーブルには日本銀行沖縄支店長さんがいらっしゃったので、「当地の景気はいかがですか?」とお尋ねしてみる。「いいです。観光客がいっぱい来てます」とのこと。円安のお陰でインバウンドが増えているのはもちろんのこと、ハワイに行けなくなった日本人もいっぱい沖縄に来てくれる。この季節は修学旅行客も来ているみたいですねえ。インバウンドで多いのは台湾人。それからこの季節はゴルフが目当ての韓国人。中国人は以前よりも減っているそうです。
〇その後は首里城へ。今から5年前に炎上して、現在は再建作業中である。これがとっても面白い。オールジャパンで宮大工さんたちをかき集めて、令和の大改修が進行中である。なにしろ復元現場を、屋根と同じ高さで見られるのである。こんなの今のうちだけですぞ。
〇ワシは沖縄に来るのは4度目である。最初に来た時は感動して、ひとりで沖縄モノレール「ゆいレール」に乗って首里城を見てきたのだが、今から考えるとどうやってあの坂道を登れたのか不思議である。そのときは案内してくれる人もなく、当時はまだスマホの地図もなかったはずで、ひとりでテクテクと登ったのであろう。ワシもまだ若かったのであろうか。
〇とにかく沖縄に来るのが久しぶりなのである。従って「ナハテラスから国際通りに出るのはどうしたらいいのか?」が思い出せない。そこはテキトーな人間なので、スマホの地図を見るよりも、「まあ、歩いていけば出るだろう」と考えるのだが、これが正解であって、ちゃんとたどり着けるのである。
〇そのまま国際通りを歩いてみる。最後に当地を訪ねたのは2011年のことゆえ、かな〜り久しぶりである。ハッと気がつくのが土産物売り場の中身が進化していること。いやねえ、昔の国際通りって、買いたいものなんて何もなかったんですよねえ。それこそお義理で買う「ちんすこう」くらいで。
〇それが今行くと、なんだか変に魅力的なのだ。ジュエリーのお店の前を通ると、「沖縄の海を持って帰りたい」という看板がついていたりする。お前ら、いつの間にこんなに観光客相手がうまくなったのか。ずるいぞ沖縄。
〇この雰囲気、どこかで見覚えがある。そうだ。浅草に似ているのだ。おそらく10年ぶりで浅草を訪ねた人が居たら、似たようなことを感じるだろう。「観光立国」とはそういうことであって、騙されたくて来ている観光客の皆さまを、上手に騙してあげることが功徳を積むということなのである。
〇そこから県庁前に移動して、晩飯はオバゼキ先生ご推奨のO’sハウスへ。10オンス(250グラム)のサーロインステーキを注文したのだが、これは12オンス(300グラム)でも行けましたかな。ワインも含めてまことに結構でございました。こんな風にして、久々の那覇市の夜は更けていくのである。
<11月30日>(土)
〇フライトまでの時間つぶしに寄ってみた「沖縄県立博物館・美術館」(おきみゅー)が意外な拾いものであった。この春に見聞した「ウポポイ」の沖縄版を見ているような感じである。歴史や自然や文化など、いろんな角度から「オキナワ」を紹介している。
〇沖縄列島は時代と共に浮いたり沈んだりしてきたのだそうだ。大陸と地続きだった時期もあれば、海底深くに沈んでいた時期もある。スギ花粉の化石が発見されるところを見ると、昔は台湾や屋久島のように1000mを超える高い山もあったようである。今は500mまでだけどね。
〇そこにいろんな人たちが行き来した。台湾なんて、昔は完全に同じ交易・文化圏だったのでしょうな。そういう東シナ海ネットワークの全体像の歴史を知りたいものである。歴史研究はどうしても国単位で進むものだから、多国籍の歴史はなかなかにわかりにくい。
〇沖縄には謝花雲石という能書家が居た。おきみゅーではその没後50年展をやっていた。「沖縄県庁」という表札を書いた人である。1883年生まれ、1975年没というから、「沖縄県」にはいろんな思いがほとばしったことだろう。沖縄返還は1972年5月。ワシが小学6年生だったときである。
〇沖縄に来るたびに、「どこに行ったら旨いソーキそばが食べられるのか」というのが長年の疑問であった。ところが驚くべし。那覇空港で入ったお店が当たりであった。ついついオリオンビールも注文する。たっすいビールであるが、当地の気候にはこれがよろしい。ちなみに土佐人は「たっすいがは、いかん!」と言う。まあ、飲食は場所によるのだ。
〇那覇空港はごった返している。明日はNAHAマラソンが行われるので、2万人がやってくるのだそうだ。帰りのANA便も遅れそうである。修学旅行生でごった返す空港からとりあえずの更新を済ませるのである。
(後記:ANAが国内便で1時間半遅れるというのはかな〜りめずらしい。が、とにかく帰ってきました。やれやれどっこいしょ)
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki