●かんべえの不規則発言



2008年12月






<12月1日>(月)

○久々ですが、日経ネットの「経済羅針盤」に寄稿しました。題して「ビッグスリー救済問題から見えてくるもの」。なんと今現在、「見られたニュースランキング」の第1位になっています。さすがは旬の話題でありますな。(溜池通信愛読者の皆様におかれましては、下記をクリックしてご協力していただけると、ますますありがたく存じます)。

http://markets.nikkei.co.jp/column/rashin/article.aspx?site=MARKET&genre=i2&id=MMMAi2000001122008 

○で、問題はビッグスリーの行方です。明日、12月2日(日本時間では12月3日未明)に、3社の再建案が議会に報告されます。そして4日、5日に議会の公聴会が開かれるという日程になっています。そこで議員の皆さんの救済策発動への承認を得られなければ、いよいよチャプターイレブンの可能性が高まります。CEOたちとしては、「だって、政治家が僕らを救ってくれないから、僕らも社員を助けることができないんです」という言い訳ができますからね。

○チャプターイレブンを発動すれば、退職者向け医療などのレガシーコストもチャラになります。ついでに、どう考えても非効率で多過ぎるディーラー網も、リストラすることができるでしょう。そうなれば、会社の再建にも可能性が出てくる。逆に優しい支援をしてしまうと、そういう可能性が消えてしまう。もっとも日本の自動車会社を含めて、そういうハードランディングを期待する業界関係者はきわめて少数派でありましょう。

○かつて日本が金融危機に陥っていたときに、アメリカは「日本は痛みに耐えられないからダメなんだ」と言っていました。同じ状況に彼らが置かれている現在、どんな判断が下されるのか興味深いところです。オバマ次期大統領の次の一手は、果たしてハードランディングがソフトランディングか。後者であれば、それは常識的な決断だと思います。仮に前者であるとしたら、アメリカってやっぱりすげえよな、と心底から思います。

○ところで今回、ビッグスリー首脳はワシントン入りする際に、またもプライベートジェット機を使うのでしょうか。それともアムトラックか何かを使って、議会と世論に対して恭順の意を示すのでしょうか。くだらないと言ってしまえばそれまでの話ですが、意外とそういうところで物事は決まって行くのだろうと思います。


<12月2日>(火)

○オバマ新政権の人事における最大のサプライズはヒラリー・クリントン国務長官です。なぜ、そういうことになったのか正直なところよく分かりません。その辺の事情は、じきに報道されることと思いますが、状況証拠から考えると3通りの可能性があるでしょう。

(1)論功行賞人事:今回の選挙結果を虚心坦懐に振り返ってみると、最大の功労者は彼女だということになる。オバマは女性票の56%を得たし、苦手としていた白人Working Class票も手に入れた。ペンシルバニア、オハイオ、ミシガンなど、白人人口が8割を超える激戦州で勝てたのは、おそらく彼女の協力のお陰である。あるいは、今回「ブラッドレー効果」がほとんどなかったのは、民主党予備選挙でオバマがヒラリーと激戦を演じたために、「女性か黒人の大統領」に対する心理的抵抗が消えていたからではないか。などと考えると、彼女には足を向けて寝られないという事情がある。

(2)強敵は封じ込めよ:オバマは強い勝ち方を示したものの、諸般の状況はけっして明るくない。ひょっとすると、アメリカの経済も外交もガタガタで、2012年には彼の政権はヨレヨレになっているかもしれない。となると、身内からの造反に備える必要がある。(おそらく、共和党の反撃は4年後もかなり苦しいので、むしろ党内に気をつけた方がいい)。党内最強のライバルは、自分の政権に取り入れて逆らえないようにしておきたい。

(3)リンカーンの故事:政敵を大胆に登用する、というのはオバマのヒーローであるところのリンカーン大統領が実践したこと。いっそのことマッケインを登用するという手もあるが、あいにくマッケインは40人しかいない貴重な共和党上院議員のひとりとなってしまった。となれば、やはりヒラリーを取り込むことで、「私は敵を味方につける指導者である」ことを表明したい。

○いずれも、分からないわけではないのですが、デメリットもかなりありますわなあ。

(1)ヒラリーの外交能力は未知数である。そりゃま、確かにファーストレディとして世界中の指導者と会ってはいますけど、それと国務長官とは別でしょう。選挙戦の期間中も、彼女の陣営は有能な人物を集めたものの、トラブルが続出。管理能力も疑問符がつく。果たして大丈夫か。

(2)ヒラリーは民主党内ではタカ派のイメージがある。イラクからの撤退についても、オバマとの意見はかなり違う。(そもそも二人で大論争を展開していた)。古くからのオバマ支持者にとって見れば、これは裏切りもいいところである。そうでなくても経済スタッフで中道派ばかりを選んでおいて、外交スタッフもタカ派では、反戦左派たちの立つ瀬がない。

(3)共和党が喜ぶ。野党の立場に立ってみると、人気の高いオバマ政権は攻めにくいが、「ヒラリー国務長官に物申す」(あるいはその夫の所業に対して異議あり)というのは、非常に分かりやすい攻撃目標となる。

○これだけのマイナスが見えていて選んだということは、リスクを承知の上での決断ということになる。果たしてどんなものでしょうか。他の人事が妥当に見えるだけに、この点が気になります。まあ、そのうちニューズウィークあたりで、裏の事情を報道してくれることでしょう。

○そこでこんなジョークはどうでしょう。

「オバマはなぜヒラリーを国務長官にしたか知ってるかい?午前3時にホワイトハウスに電話が鳴ったときに、代わりにとってもらいたいからさ」


<12月3日>(水)

○今朝ほど、NHKBSの「おはよう世界〜世界の扉」のコーナーで、ビッグスリー救済問題についてお話しする機会がありました。朝4時起きはちょっと辛かったですけど、そこは天下のNHKで、刻一刻と最新情勢が入ってくる様子を楽しむことができました。

○アメリカ時間の12月2日が、3社が議会に対して再建策を通告する締め切りでしたから、早ければ午前3時くらいから報道がはじまると言うのが事前の読みでした。午前4時、自宅でネットをチェックした時点では、フォードの再建案のみが発表済み。それからNHKのスタジオに入り、午前6時ごろにGMの再建案が発表に。クライスラーの分は番組が始まる直前でしたが、「これはどう考えても、3社合計で250億ドルでは収まりませんなあ」てなことが判明するという感じでした。

○ところで再建策のうち、もっとも注目を集めたであろう部分は多分これです。


●社用機、使用せず=経営危機のビッグスリー

【ニューヨーク2 日時事】社用機使用、やめます―。米ビッグスリー(3 大自動車メーカー)各社の広報担当者は1 日、今週開かれる米議会公聴会に出席する各社首脳が社用機使用を取りやめる方針を明らかにした。

米メディアが報じた。

先月の公聴会で、政府に救済を求めていながら各首脳は社用機でワシントン入りしたとして、議員らから厳しい批判を浴びていた。

フォードのムラーリー社長兼最高経営責任者(CEO)は本社のあるミシガン州ディアボーンから車で約10時間かけワシントン入りする。距離は約832 キロで、東京―広島間の車での移動に匹敵する。

また、ゼネラル・モーターズ(GM)のワゴナー会長兼CEOも自社のハイブリッド車で首都に向かうことを検討中。クライスラーのナルデリ会長兼CEO も社用ジェット機は使用しない方針。


○CEOの年収を1ドルにするとか、自家用ジェット機を売り飛ばすというのは、要は「公的資金投入を迫るなら、まず誠意を見せろ」という議論であって、それが再建の本質ではありません。言ってみれば「アメリカ版・みのもんた」的世論というやつで、われらが愛する民主主義社会においてはけっして避けては通れない部分です。

○再建策というからには、「お金のリストラ」(Financial Turnaround)と「仕事のリストラ」(Business Turnaround)の両方が必要です。前者はポンティアック・ブランドをあきらめますとか、社員をX万人減らしますといった話で、要は会社のバランスシートを調整するということです。世間的には、これだけをもって「リストラをやった」ということになりがちなのですが、こういう守りの再建策だけをやって攻めをやらないと、往々にして会社は腐っていきます。

○そこで後者が必要になってきます。たとえハッタリでもいいから、「2年以内に電気自動車を作って見せます」てなことを言わないと、社員は元気が出ないし、消費者は忘れてしまうし、投資家にも見離される。前向きの明るいプランを描いて、「そうか、これならクルマが売れるよな」という夢を与えないことには会社の再生は困難です。

○こういう議論は、産業再生機構ができた頃に散々やりました。要はまたまた「デジャブ」があるわけで、しみじみ日本の経験が役に立つのであります。


<12月4日>(木)

○最近、いろいろと話題になっている人のホームページをご紹介します。

○それにしても、総理秘書官が自前のサイトを持っているというのは、ちょっとした驚きですね。いちおう、最近の更新は止まっているようですけれども、麻生さんは何も言わないのでしょうか。いまどきブログをやっている官僚は少なくないでしょうが、これだけ堂々と実名でやっている方はめずらしいと思います。良くも悪くも、官僚としては型破りな方のようです。

○その一方で、このサイトの作りの単純さは、わが溜池通信にちょっと似ているような。発足が2002年ということは、ひょっとするとご自分でHTMLを学んで始められたのかもしれません。そういう世代のものとしては、今さらブログに移行するのは面倒だし、Mixiなんぞはどこがいいのか分からない。ついつい今までのやり方を踏襲してしまい、気がついたらずいぶん古臭くなってしまいました。まあ、自分でなんとか管理ができるという点が、いちばん大切なのだと思います。

○それにしても麻生政権、どうにかなりませんかねえ。景気対策もさることながら、もうちょっとシャキッとして、野党やマスコミや党内の逆風を乗り切ってほしいものです。


<12月6日>(土)

○ちょこっと富山に行ってきました。いやー、寒かった。今日の昼から雪が本格化して、帰りの飛行機はあわや飛ばないかと思いましたな。

○で、諸般の事情で昼と夜と2回、連続で鱒寿司を食べました。昼は「せきの屋」、夜は「高田屋」でした。どちらも美味かったです。ちなみにこの2店は富山市内にあって、向かいあって立っています。両方とも富山では「ブランドもの」でありまして、ほかにも「青山」「川上」「高芳」などが有名です。(詳しく知りたい方は、富山ます寿し協同組合のHPをご参照のこと)

○駅弁やデパートなど、全国的に普及しているのは「源」という大手の会社のものです。県外では、「鱒寿司」とは「源の登録商標:ますのすし」のことだと思っている人が少なくないようです。ところが富山の人は、家ごとに贔屓の鱒寿司屋があったりするので、「な〜んだ、源のか」などと言ってありがたがらないことが多いです。「いやいや、源の特選はなかなかだぞ」という人もいるのですが、こちらはまだ試しておりません。

○で、あらためて考えてみると、鱒寿司というのは明らかに駅弁としては欠点が多い。

(1)割高である。1段ものでも1000円を超えてしまう。

(2)笹の葉などのゴミがたくさん出る

(3)肉も野菜もついていない

(4)味に変化がない

(5)重い

○こんなに不便なものが、なぜ「駅弁コンクール」などがあるといつも上位に来るのか。要するに単純だけど、飽きが来ないようにできているわけで、駅弁としてはつくづくキャラが立っていると思います。

○誰が言っていたのか忘れたけれど、「心に残る幕の内弁当はない」。これはモノを作る仕事をしている人には、格好の教えだと思います。あれもこれも、と彩を添えたりすると、結局は個性のないものとなってしまい、印象が薄れてしまう。足し算の発想ではダメで、引き算をやらないと「時代を超えて愛される」ということには至らない。

○ということで、今日食べたのは果たして人生で何個目の鱒寿司だったのか。電車の中で食べたことは、ほんの1回くらいしかないというのが、この駅弁のユニークなところです。


<12月8日>(月)

○今さらながら、「今年の流行語大賞」を見ていて、いくつか気がついたことがあります。歴代の受賞パターンを見ていると、「政治家部門」「スポーツ感動部門」「お笑い芸人部門」という3つが強いのですね。

(1)政治家部門:

過去には、「ブッチホン」(小渕恵三、1999年)、「米百票、聖域なき改革、その他」(小泉純一郎、2001年)、「毒まんじゅう」(野中広務、2003年)、「クールビズ」(小池百合子、2005年)、「どげんかせんといかん」(東国原英夫、2007年)など、インパクトの強い言葉を量産しています。さすが、政治家は言葉に生きる職業ですからね。

ところが、2008年は「居酒屋タクシー」(長妻昭)と「埋蔵金」(中川秀直)。いささか力不足の感があります。もう少し、破壊力を持っていたのは「あなたとは違うんです」でしたが、残念ながら受賞者が登場しませんでした。どうも政治家部門は「奇数年が面白い」というジンクスがあるようです。来年に期待しましょう。

(2)スポーツ感動部門:

過去を遡ると、とにかくオリンピックのときに名作が集中している。「自分で自分をほめたい」(有森裕子、1996年)、「最高で金、最低でも金」(田村亮子、2000年)、「チョー気持ちいい」(北島康介、2004年)、「イナバウアー」(荒川静香、2006年)など、いずれも懐かしいですね。その点、今年は「上野の413球」でした。もしも「何もいえねえ」(北島康介)が受賞していれば、2大会連続金メダルに続く快挙でありました。

その一方で、1998年、2002年、2006年とワールドカップ関連の言葉がほとんど見当たらない。唯一の例外が2002年の「W杯」(中津江村)と「ベッカム様」ではちと寂しいのではないか。サッカー関係者の奮起を促したいところです。最近、落ち目のプロ野球ですが、「シンジラレナ〜イ」(ヒルマン監督、2006年)や「ボビーマジック」(2005年)などを輩出しています。

(3)お笑い芸人部門:

問題はこれです。栄光の軌跡を振り返ってみましょう。

2003年:「なんでだろう〜」(テツand トモ)*年間大賞

2004年:「残念!」(波田陽区)

2005年:「フォー!」(レイザーラモンHG)

2006年:該当作なし

2007年:「そんなの関係ねえ」(小島よしお)

2008年:「グー!」(エド・はるみ)*年間大賞


○いやー、懐かしいですね。でも皆さんよくご存知の通り、お笑い芸人の一発芸が「流行語」になり、その年の紅白歌合戦に出ると、翌年には消えてしまうんですよね。その点、エド・はるみは今年の初めから出てきていること、ドラマにも出演して「脱・お笑い」を図っているところなど、この先人たちの後を追うものか、という強い決意が感じられます。

○私自身は「世界のナベアツ」の方が好きなんで、彼女の受賞にはちょっと違和感があります。でも、世間的にエド・はるみが愛されている理由は、「40歳を過ぎてから、お笑い芸人として花が咲いた」という点にあるようですな。それまでの人生が鳴かず飛ばずで、40歳過ぎて初めて頭角を現すというのは、サラリーマン社会などでも大いに共感を呼ぶパターンです。

○まあ、戦国大名でいえば蜂須賀小六みたいなものですかな。彼は織田家でも豊臣家でも脇役でしたが、最後はしっかり「阿波二十万石」でした。人生が遅咲きの人は、その辺がしっかりしていなきゃいけない。


<12月9日>(火)

○今日、聞いた面白い話。

●自衛隊OBから

「日本人は、自衛隊のことを普通の軍隊だと思っているでしょう。外国人も、普通の軍隊だと思っているようです。でも、本当は違うんです。自衛隊には、軍警察も軍法廷も営倉もないんです。仮に戦闘中に兵士が敵前逃亡したとします。普通の軍隊であればこれは重罪です。ところが自衛隊員の場合、戦闘中に逃げ出しても罰金30万円なんです。要するに法体系が警察予備隊のままなんです。これで普通の軍隊と思われてしまうのは、実は非常に困ったことなのではないかと心配です」

●某エコノミスト(景気循環重視派)から

「今は全員が弱気です。でも、これだけ下げが急速だからこそ、底を打った後の上昇は早いかもしれません。今は確かに景気指標は0勝10敗のペースですけれども、0勝10敗の次はかならず1勝9敗になるはずです」

●某中国人エコノミストから

「2009年は10月1日に中国の建国60周年があります。オリンピックや万博よりも、そっちの方がよっぽど重要なんですよ。なんで皆、気がつかないんでしょうねえ」

「アメリカが社会主義に走ってしまったから、中国では改革が止まってしまいました。今では『アメリカみたいになっちゃいけないから』といって、政治改革も停止です。逆に『社会主義体制の正しさが証明された』などと、間違った教訓を得てしまった。つくづくアメリカの罪は重いですよ」

○今日は年末恒例エコノミスト懇親会でした。吉例の「為替と日経平均予測」では、為替のピタリ賞は、石油問題専門家の十市勉さんでした。日経平均はさすがに8000円台を予測した人は皆無で、1万円前後を予測した神門先生がニアピンで一等でした。この人は食糧問題の専門家で、当溜池通信の11月27日にご紹介した「農林水産省に噛み付いた有識者」なんですよね。うーん、これから神門先生の時代がやってくるのかも。


<12月10日>(水)

○いよいよ本格的な忘年会シーズン。本日はまず電子薬品工業会で講演会の後、懇親会。そこから日本貿易会の忘年会。そこからさらに金融関係者の集まりへ。3軒ハシゴ。どの業界も、「こんなすごい不況は見たことがない」と、厳しいというよりは、ほとんど呆れているといった状態。タクシーの運転手さんからも、「100年に1度というのは本当なんですかね」などと声をかけられる。とんでもない年の瀬である。

○他方、政治の世界はとっても不毛な迷走ぶりで、ちょっと脱力モードです。そんな中で、久しぶりに笑ってしまったのが昨日の産経新聞の記事。


■新党結成に言及…自民・渡辺喜美氏“単騎駈け”

 「政界再編」援軍来るか

 麻生内閣の支持率急落を尻目に、自民党の渡辺喜美元行政改革担当相のボルテージは上がる一方だ。公務員制度改革から始まった麻生太郎首相への批判は平成20年度第2次補正予算編成、倒閣発言と続き、ここにきて新党結成にも言及、軸足が「反麻生」から「政界再編」に移りつつある。ただ、過激な発言に距離を置く議員も少なくなく、「単騎」でひたすら走り続けるのか。行革相では「突破力」が期待されたが、この政局で力量が試されている。

□シミュレーション

 8日夕、都内で開いた自らのパーティーで渡辺氏は、「頭の体操」と断った上で、新党結成について(1)持ち株会社型(2)協議離婚型(3)裸一貫型−の3通りのシミュレーションを示すと、最後には「自身の姿」のようにこう力説した。

 「(個々に党を飛び出した議員が集まり新党を作る)裸一貫型はインパクトはあるし、大きく化ける可能性がある。覚悟だけでできる」

 また、渡辺氏は首相を退陣に追い込む方法として「総裁リコール規定」「内閣不信任案」「総理・総裁分離案」を示した。


渡辺喜美先生、またまたとんでもないことを言っておられます。その後、ご本人に伺ったところ、新党結成の3類形は、「持ち株会社型、協議離婚型、裸単騎型」に微修正されたようです。なるほど、裸一貫とは違って、裸単騎は怖さが違う。オープンリーチをかけられたらどうしましょ。

○それでも時代は「100年に1度」モードです。この期に及んで、持ち株会社や協議離婚を画策している余裕はないでしょう。桶狭間の戦いの信長よろしく、単騎で突き進む覚悟が必要なのかもしれません。海の向こうのオバマだって、凶弾に身をさらすことを覚悟で政治をやっているわけですから。人生五十年、「100年に1度」にめぐり合ったは幸運であるかもしれませぬ。


<12月11日>(木)

○今宵の田原総一朗氏は、中川秀直氏のパーティーで壇上に立ち、「政界はいまや幕末。中川さんは坂本竜馬になれ!」と言ったそうです。要するに「脱藩せよ!」とけしかけているわけですが、果たしてどうなるのでしょう。おそらく、こちらは裸単騎ではなく、持ち株会社形式で分離独立し、あわよくばM&Aしてもらおうというのが読み筋なのでしょう。ところで中川氏の公式サイトが、なぜかつながらなくなっているのは気のせいでしょうか。

○政権交代か、あるいはその前に政界再編か。どっちにしろ、日本政治の画期的瞬間が近づいているらしいのに、サッパリ世の中が盛り上がっておりませんな。最近、政治がらみで耳にする議論は、以下のようなネガティブなトーンのものばかり。

「民主党は頼りないが、自民党はダメだ」

「麻生さんにはガッカリした」

「小沢さんは首相にはならないだろう」(で、誰に首相を押し付けるかというと・・・以下略)

○永田町で滑っただの転んだだのという話は、本来はとても人間くさくて楽しいものであります。それが最近はとっても低調。経済は百年に一度の津波、政治も歴史的瞬間が近づいておるようなのに、テンション上がりませんなあ。これは余計なことに気を紛らわすことなく、お前は地道に仕事をしておれ、ということでしょうか。

○そういえば忘れておった。『Yen SPA!』の1月4日号で、「ぐっちー&かんべえ対談」が出ております。なかなか軽やかで楽しい内容となっておりますぞ。できればこれ、連載企画になりませんかねえ。「福田vs坪内対談」や「インテリジェンス人生相談」ほどではないと思いますけど、「ペログリ日記リターンズ」よりはお役に立つと思いますぞ。


<12月12日>(金)

○あ〜あ、やっぱりね。アメリカ議会はビッグスリー救済法案を断念しましたな。これは誰かが悪い、てな話ではない。単に世論の支持がない、ということであると思います。

○だって考えてもご覧あれ。GMとクライスラーは、10月上旬には合併交渉をしていたのですぞ。それを白紙にしたのはなぜか。大統領選挙でオバマが勝ちそうだから、きっと自分たちは民主党政権に助けてもらえると思ったからではないか。ラッキー、これで3社が3社とも生き残れるぞ、なんて経営陣が甘いことを考えているのはバレバレである。さらにこの期に及んで、UAWは条件面の切り下げを拒んだという。労使双方に対して、アメリカ国民の視線は冷たいと思うぞ。

○来年1月には新しい議会が発足する。民主党の議席が増える。上院は民主党58対共和党41、1議席が未定。では、その条件なら救済法案が通るかというと、やっぱり分からない。おそらく外国の自動車工場が多い南部の州では、民主党議員といえど「救済反対」が多いのではないか。それは、日本車叩きがまったく起きていないことでも分かる。

○それでは、本当にビッグスリーがツーやワンになるのがいいのか。経済の運営策として考えたら、やはりつぶさない方が賢いと思う。オバマは「政府の投資により250万人の雇用を創造する」と言っている。ただし、新たな雇用創造は歩留まりが悪い。それよりも、ビッグスリーを延命させて、今ある300万人の雇用を守るほうが安上がりである。もちろん先の見通しは明るくないから、単なる時間稼ぎに過ぎないが、それは公共投資も同じこと。政府の投資で生み出された雇用は、政府のお金が尽きた瞬間に失業者になる。だったら、安い方がマシだ。

○とにかく景気の底割れを防ぐことだけを考えて、GMとクライスラーに140億ドル貸してやる(金利は結構高い)というのは、けっして損な政策ではない。しかし決定的に不人気な政策である。以前から何度も指摘しておりますとおり、オバマの民主党が勝ったとはいえ、アメリカの有権者の意識は依然として保守優位なのです。「大きな政府」はやはり評判が悪いのだ。「新ニューディール」は難しいと思います。


<12月14日>(日)

○これは12月12日の読売新聞から。


◆伊吹元幹事長 麻生さん向けに失言しないコツ「6つのT」

 自民党の伊吹文明・元幹事長は11日の同党伊吹派総会で、麻生首相らの相次ぐ失言を受けて、「失言しないコツ」を披露した。

 避けるべき六つの「T」として、

〈1〉「正しい」と思い込んで不要な発言をする
〈2〉「立場」をわきまえず、言ってはいけないことを言う
〈3〉人を見下すような「態度」を取る
〈4〉話す「タイミング」を間違える
〈5〉「旅先」で気がゆるむ
〈6〉笑いを取ろうと「例え話」をする

――を挙げ、「ポストにいる人は注意してもらいたい」と戒めた。


○これは大変に有益な教えだと思います。いくらでも例が思い浮かびますよねえ。


(1)「原爆投下はしょうがない」(久間防衛大臣)
(2)「アメリカは黒人がいるから知的水準が低い」(中曽根大勲位)
(3)「無党派層は選挙の日に寝ていてくれればいい」(森首相)
(4)「集団レイプをする人は元気がある」(太田誠一元総務庁長官)
(5)「(集中豪雨が)安城か岡崎だったからよかったが、名古屋で同じことが起きたらこの辺全部洪水よ」(麻生首相)
(6)「女性は産む機械」(柳沢厚生労働相)


○考えてみれば、麻生首相はこれらを全部ひとりでやってしまいかねない破壊力がありますな。「アルツハイマーでも分かる」「医師には社会常識が欠落している人が多い」「創氏改名は朝鮮人が望んだ」「たらたら飲んで食って何もしない人の分まで、何で私が医療費を払うんだ」・・・・まさに失言の集中豪雨。どうもサービス精神が裏目に出ていることが多いようであります。

○もっともこういう教えは政治家に限ったことではなく、ブログの炎上などもほとんどが上記のどれかに該当することが多いですな。先日、毎日新聞で定額給付金のことを「たかが1万2千円」と書いた記者がいて、たちどころに炎上したそうであります。いけませんねえ。「たかが」という言葉は、読み手に「上から目線」を感じさせるので要注意であります。「たかだか1万2千円」と書いておけばスルーできたかもしれません。

○で、定額給付金なのですが、年明け早々の通常国会で法案がかかる予定です。しかしあれだけ評判が悪いとなると、「自民党内で造反が相次いで、年明け早々から麻生内閣は立ち往生するのではないか」という観測もあるようです(Source:星浩・朝日新聞編集委員、今日のサンプロより)。なるほどと思う一方で、議員さんの立場になってみると、「この程度のことで、いちいち党と喧嘩していられるか」とためらうような気もします。

○なにしろ、「たかが1万2000円」で「裸単騎」になってしまうのでは、やり切れませんからなあ。

(追記:誤解なきように付け加えますが、最後の一文は筆者の想像力の産物であり、某W議員の発言などではありません。ちなみに某W議員はお父上に似ず、大変に失言の少ない方であります)。


<12月15日>(月)

○2009年にはどんなことが予定されているのでしょう。ボチボチ調べておきたいと思います。とりあえず、こういうことを発見しました。

●1月31日、ウィンドウズがXPを発売終了

――大変だ、今のうちにXP搭載機を買っておかなければ!ちなみにPCを買うときは、大晦日のビックカメラがねらい目だそうですよ。

●ワールドベースボールクラシック(3月5日、東京ドームで第1ラウンド開催、3月23日、ドジャーススタジアムで決勝戦)

――原監督では不安だけど、日本のためだと思って応援いたしましょう。

●5月21日、裁判員制度スタート

――なんでこんな変な日に始まるのでしょうか。とりあえず、ウチには来なくてよかった。

●9月21日〜23日、三連休

――9月19日(土)、9月20日(日)、9月21日(敬老の日)、9月22日(国民の休日)、9月23日(秋分の日)、ということで見事に5連休です。

●10月2日、国際オリンピック委員会総会で、2016年夏季オリンピック開催都市が決定。

―ー東京の招致、決まるでしょうか。私はオバマ人気のせいで、シカゴに取られるような気がして仕方ありません。

●10月1日、中国建国60周年

――中華人民共和国が何と還暦です。五輪よりも万博よりも、ある意味では重要な年といえます。ちなみに2009年は、チベット蜂起50周年と天安門事件20周年でもあります。

●12月7日〜12月18日、COP15(コペンハーゲン)

――ポスト京都議定書の締め切りです。

○年末には、毎度こういう作業が欠かせません。


<12月16日>(火)

○今年最後の「ムーブ!」のために大阪へ。今日は平松市政1周年と言うことで、平松市長が生出演。といっても、大阪の政治事情に詳しくない身としては、何を言えばいいのか、今日はおっかなびっくりモードでありました。

○派手な橋下大阪府知事が、「くそ教育委員会」などと敵を作って改革をアピールしているのとは対照的に、平松市長はほんわかと大阪市役所に乗り込んで、少しずつ手を打っているようです。だから、橋下さんは「好き嫌い」がハッキリするのに対し、平松さんは「どちらかというと支持」が多くなる。前任の関市長が厳しいリストラ策を打ち出していたのに比べると、「そんなペースで大丈夫か」という気もするのですが、「初の民間からの市長」という強みを生かして、マイペースで取り組んでおられるようです。

○岡目八目的に言えば、橋下流と平松流のうち、どちらかは成功するでしょう。少なくとも両方が失敗と言うことはない。もっとも大阪府も大阪市も、すごい負債を抱えていて、この先の景気悪化を考えると、ちょっと心配になりますな。大阪人は現実的で、しっかりしていて、振り込め詐欺にも引っかからないのに、政治の問題になると「あいつ、面白いやないか」みたいな軽いノリで決めてしまう。その辺のギャップは、依然として当方には謎であります。


<12月17日>(水)

○アメリカがゼロ金利へ。1月にはそうなるかなと思ってましたが、年内に行ってしまいましたか。これで日銀もゼロ金利になると、市中レートは日米でどっちが高くなるんでしょう。それから、為替レートはどんな風にして決まることになるんでしょう。為替予約のプレミアムとディスカウントは、どうやって計算するんでしょう。うーむ、世の中には分からんことが多い。

○バーナンキさんの心情については、当欄の11月30日に掲載した「エド・ハイマンさんの見立て」が有益ではないかと思います。人を呪わば穴二つといいますが、こんな風になることは以前から運命付けられていたのではないか、などという妙な気がしてしまいますな。仮にこれで米国経済が復活するとしても、その先にはFedが大量に抱えてしまった米国債をどうやって片付けるかという問題が生じる。つまりはExitが見えないということです。こういう議論、前にも随分しましたなあ。

○あらためて、「バブルはなぜ起きたのか」といえば、「先進国全体で高齢化が進み、マネーの余剰が発生する一方で、投資先としてのフロンティアが消滅したから」ではないかと思います。そんな「百年に一度」クラスのバブルが崩壊したからには、世界経済全体がデフレの罠に落ちたとしてもあんまり不思議ではないような。いずれにせよ、虚しいものよのう。


<12月18日>(木)

○今日は日本商工会議所の会合に参加する機会がありました。今日の議題の一つに「2016年五輪誘致」が入っていて、これが来年10月2日に決まるとのこと。今のところ残っている有力候補は、東京、シカゴ、リオデジャネイロ、マドリッドだそうです。さて、どうなるでしょうか。

○リオは治安に難あり、マドリッドは92年にバルセロナがあるだろう、ということで、おそらく東京とシカゴの一騎打ちではないかと思うのですが、先方には「オバマ人気」という強い武器がある。「シカゴは甲斐の武田信玄、ここに居たんじゃ天下は盗れねえ」という鷲尾理論はすでに破れ、オバマはシカゴ発で立派に天下を取りました。オバマ人気は欧州でもアフリカでも絶大ですから、彼が何か言った瞬間に、ほとんど決まってしまうんじゃないでしょうか。

○ところがここへ来て、イリノイ州知事のスキャンダルが飛び出した。オバマが大統領になることで、上院議員には空席ができる。こういうとき、アメリカでは補欠選挙をやるのではなく、州知事が指名するのが慣例になっている。ここでその権利を持つブラコジェビッチ州知事が、「議席を売ろう」とした疑惑が持ち上がった。「タダで決めてやるつもりはない」などという電話がFBIに盗聴されていたとのことで、売ろうとした相手はジェシー・ジャクソンJr.であったとか。かなり恥ずかしいニュースである。

○こういうのを聞くと、「シカゴって、やっぱりアル・カポネの頃から変わってないんじゃないか?」てな話になる。もっとも、「悪名は無名に勝る」の法則からいけば、こういうのも存在感の向上につながるかもしれません。最近は、東京発の国際的なニュースがあんまりありませんからね。それに、そもそも誘致に向けての国内の支持が弱いのではないかという気もする。

○それにしても2016年とはまことに遠い先のこと。ところで2012年のロンドン大会までに、イギリスは金融危機から脱していることでしょうか?


<12月19日>(金)

○今日は陸上自衛隊の方々とお話しする機会がありました。話していてハッと気がついたんですが、この人たちって来年には「アフガニスタンに派遣されるかもしれない」のですね。しかも下手をすると、小沢民主党の政権下で。ちょっと可哀想過ぎやしないか。

○オバマ氏は、「イラク戦争は失敗だった。その代わり、アフガンはしっかりやらなければならない」と言い続けて来た。実際に、パキスタンがおかしくなりかけているから、アフガニスタンはいよいよ危なっかしい。オバマが大統領になったら、すぐに同盟国に対して協力を求めて来るだろう。欧州の出方が興味深いですな。彼らは「オバマが大好き」だけど、あんな筋ワルなところへ行くのは真っ平ごめんだと思っている。さて、何といって断るんだろう。

○でも、それって他人事ではない。日本の出方もとっても悩ましい。インド洋の給油活動はやっているけれども、「テロとの戦いのためにもう一声」と言われると、果たして何を出せばいいのか。「文民を出せばいい」という声もあるが、玄人が怖がるところへ素人を出せるのか。アフガンでは先日もNGOの人が殺されている(真面目そうな人だった)。そして自衛隊を出すとなれば、憲法の問題をクリアしなければならない。

○とにかく引き受けるにせよ、断るにせよ、理由付けが難しい。この議論の王道は、「先進国の一員として、アフガンは放っておけない」である。が、計算高い日本国民が、そういう真面目な理屈を飲んでくれるだろうか。「自由と繁栄の弧」という価値外交も、あっという間に消えてしまったことだし。かといって、実利だけを考えたら、アフガン派兵はけっして見合わないミッションである。

○イラクに派兵するときは、「そうしないと北朝鮮があるからね」という暗黙の了解があったから、国内の合意取り付けが楽だった。今はそんなカードは使えない。「アメリカに言われたから仕方なく行くんです」という理由も、昔なら通じたかもしれないが、今だと「そんなもの、断ればいいじゃないか」で済まされてしまいそうだ。

○逆に断るときも難しい。いつも通りに「ウチはあれもできません、これもできません」方式で行くと、いきなり米民主党政権との意思疎通が悪くなりそうだ。「お前は、頭越し外交が怖いと言いつつ、本当は頭越ししてもらいたいんだろう」くらいの嫌味は覚悟した方がいい。とにかく、日本の政治が主体性を持たなきゃいけないのだけれど、その時点で全部の議論が終わってしまう。うーむ情けない。


<12月21日>(日)

○町内会防犯部で、昨晩は今年初めての「火の用心」へ。またそんな季節が始まってしまいました。防犯活動を終えてから、集会所でビールを一杯。

「景気がすごいことになってるねえ」

「やっぱりあのリーマンって銀行がつぶれてからだよなあ」

「派遣切りとか、内定切りとか、ひでえことするよ」

てな話が出た上で、聞かれてしまった。

「ところで吉崎さんは、こうなることを予想していたの?」

orz.

○毎日、そういう仕事ばかりしているんですけどねえ。この週末だって、ずっとPCの画面をにらんでいるんですが。トホホ・・・。


<12月22日>(月)

○オバマ政権の閣僚人事があらかた片付きました。最後の方はいささか「やっつけ仕事」っぽくなりましたな。正直に申しますと、この辺は「伴食大臣」のポストでありまして、「俺はもうハワイの休暇に出かけるから、早いとこ決めてしまえ」という感じだったのかもしれません。

通商代表部(USTR)代表にロン・カーク元テキサス州ダラス市長 54歳 *アフリカ系

労働長官にヒルダ・ソリス下院議員(民主、カリフォルニア州) 51歳 *ヒスパニック系

運輸長官にレイ・ラフッド下院議員(共和、イリノイ州) 63歳 *レバノン系

○ただしUSTRが伴食大臣では困るのですね。ロン・カーク氏は「NAFTAを支持していた」ことが売りで、「自由貿易論者」ということになっていますが、テキサス州の市長さんがNAFTAに反対するわけがないんで、正直、どの程度の人かはよく分かりません。オバマ選対で南部の資金集めを担当したという触れ込みなので、論功行賞人事としても中くらい、といった感じではないでしょうか。

○当初、このポストに擬せられていたのは、カリフォルニア州選出のべセラ下院議員でした。ペローシ下院議長の腹心で、出世の階段を順調に昇っていたところで、「果たしてUSTR代表ポストを受けたものかどうか」で悩んだらしい。その結果、「オバマ政権における通商政策の優先順位は低そうだ」し、「ドーハラウンドなどの国際交渉もあまり期待できない」と思ったらしく、最後は辞退した。まあ、確かに「米韓自由貿易協定」の批准のために汗をかく、なんてのはあまり楽しそうな仕事ではない。

○実はここまで、オバマ政権の人事はかなり順調で、「ひとつのポストについて、一人の名前だけが浮かぶ」という原則が貫かれてきた。しかも、それがことごとく当たったのですよね。これは見事なことであって、ひとつのポストに複数の名前が挙がると、かならず誰かは外れになります。当て馬にされた人はいい気分はしない。まして、新聞人事で「本命」とされた人が来なかった日には、当人はしばらく外を歩けない、みたいなことになります。

○ですから、閣僚人事というものはあだやおろそかにやってはいけません。永田町あたりでは、「内閣改造をやると敵を作る」と言うくらいです。そういえば、麻生内閣の閣僚人事などは、ひとつのポストに3人以上の名前が乱れ飛んだりして、あれはみっともなかったですな。

○で、非常に堅実な方法で指名を行い、手際よく15の閣僚ポストを固めたオバマ政権ですが、USTR人事だけは例外となりました。しかし、このポストが軽いというのは困ったものですな。国際金融危機の最中に、保護主義圧力が高まるとエライことになるというのは、大恐慌時代の歴史が教えるところです。現にロシアやインドは、自国産業保護のために関税引き上げを始めてますので、「歴史は繰り返す」恐れは十分にありますぞ。

○その一方で、オバマは国連大使のポストは重視しているようである。腹心のスーザン・ライスを送り込むことにして、しかも早めに決めている。これは「国連重視」というメッセージなのでしょう。しみじみ人事というものは、政治そのものでありますね。


<12月24日>(水)

○クリスマスイブに飛び交うのはこんなメールだったりして。


Latest Christmas carol for 2008..

You'd better watch out
You'd better not cry
You'd better keep cash
I'm telling you why:
Recession is coming to town.

It's hitting you once,
It's hitting you twice
It doesn't care if you've been careful and wise Recession is coming to town

It's worthless if you've got shares
It's worthless if you've got bonds
It's safe when you've got cash in hand
So keep cash for goodness sake, HEY

You'd better watch out
You'd better not cry
You'd better keep cash
I'm telling you why:
Recession is coming to town!

Finance products are confusing
Finance products are so vague
The banks make you bear the cost of risk So keep out for goodness sake, OH

You'd better watch out
You'd better not cry
You'd better keep cash
I'm telling you why:
Recession is coming to town.


○ホントの曲を聞きたい方はこちらへどうぞ。今宵、サンタさんがあなたの元を訪れますように。


<12月27日>(土)

○どうも2晩ほど続けて更新できませんでした。疲れておりますなあ。日中はいろいろ興味深い話を聞いているので、以下は散発的なメモ。

●「オバマ政権の外交課題は、中東とロシアとヨーロッパです。アジアにそれほど重要な課題はありません。中国はもはや現状維持勢力ですし」(藤原帰一東大教授、INES朝食会において)

――「中国は現状維持勢力」という指摘に意表をつかれました。そうか、これから空母を作るにせよ、米国債を買い続けるしかない今の中国は、アメリカにとって怖い存在ではなくなっているのか。とりあえず向こう10年ほどはそういうことになるのでしょう。だとすると、「純正・現状維持勢力」の日本の値打ちはますます低いですな。


●「以前であれば景気対策ということになると、業者を呼んでお金を渡していた。そこに腐敗が生じることもあったし、公共投資が環境破壊につながったりもした。今はむしろ、失業者に直接お金を渡すという形になりつつある」(恒例の財務省・予算説明会にて、香西先生からのご指摘)

――乗数効果は下がるかもしれないが、その方が「公正」であることは間違いないだろう。できればそれに職業訓練を組み合わせるなどして、労働力市場を改善していくことが望ましい。


●「今の世界でもっとも安全な運用先は、日本の普通預金ではないか」(経済オタク話の結論)

――とりあえず普通預金であれば、確実に減らない上に、銀行がつぶれたときには保証がある。おそらく当面の趨勢は円高なので、為替でやられる怖れも少ない。外国人から見ても、これは魅力的な選択肢なのではないか。

――ところで預金を預けられた日本の銀行は、運用先がないから、そのお金で国債をせっせと買っている。だったら、最初から国債を売ればいい話である。金利が安いとはいえ、これから先の先進国の国債はどこも似たようなものである。JGBをもっと外国で売らんといかんですなあ。


○もうひとつ、これは11月20日に行なわれた経済広報センターのシンポジウムの要旨が掲載されています。ご参考まで。

http://www.kkc.or.jp/global/usa/081120.html 


<12月28日>(日)

○わが国金融関係者の中で囁かれている2009年恐怖のシナリオは、「トリプル・ファイブ」なんだそうです。何のことかと言うと、下記の3つの数字が実現するのではないかとのこと。

「日経平均5000円」

「1ドル50円」

「ガソリン1リッター50円」


○これらは確かに恐怖のシナリオかもしれませんが、だからといって特別に驚くほどのことはありませんな。衝撃の2008年を体験した後では、「ま、想定の範囲内だね」ということになると思います。もちろん、起きないことを祈りますけれども。

○昨日も年賀状を書きながら、「ついでに一言」のメッセージを考えてみたら、あまり明るいことは思いつきませんでしたなあ。ついでもって言うと、この季節にありがちな「良いお年を」という挨拶をするたびに、「うーん、ホントに良い年が来るだろうか」などと考えてしまいます。こういう暗い考え方は、われながらいかんですなあ。

○そういえば、面白い話を聞きました。2008年は消費者物価が上昇したので、「年金のマクロスライド制があるから、2009年は支給額が上がるのではないか」と期待している高齢者がいるのだそうです。これは2004年の年金大改正で導入された制度ですが、本当に物価が上がったのは今年が初めてでしたからね。ただし残念ながら、物価が下落している間に年金支給額を据え置いた「溜まり」が1.7%あるので、それを埋めてしまわないことには引き上げはできないのだそうです。なかなか「いい話」は転がっていないのです。

○わずか1万2000円の定額給付金も、本当に給付されるのかどうか。真面目に法案を通そうとすれば自民党が割れてしまいかねない。年明け早々から、この件をめぐっての与野党の駆け引きが繰り返されるでしょう。ホントにあほらしい。

○ということで、2009年はいい話が向こうからやってくるような状態ではないらしい。自分から動いていかなければならないようです。百年に一度の危機は、見方を変えれば百年に一度のチャンスでもあるはず。積極的に行きたいものです。


<12月30日>(火)

○いよいよ今年も押し迫りましたな。2008年という年について、いろんなことが言われていますし、いろんなことを書いてきたつもりですが、これはひょっとすると盲点かもしれない、というのが「平成20年の終わり」という点です。

○「20年」というのは、ひとつの単位ではないかと思います。以前に2005年に『1985年』という本を書いたときにそう感じました。10年前(Decade)と30年前(Generation)の間というのは、歴史になるにはまだ早く、現在と地続きというにはやや古い。「あのとき、こうしておけば」とは思わなくなった過去、というのが20年という時間の間合いではないかと思います。

○平成20年が終わるということは、「昭和は遠くなりにけり」ということではないかと思います。ま、実際に遠くなったんだから、しょうがないですな。先日、テレビで昭和天皇の映像を見かけたときに、しみじみそう感じました。平成元年には昭和天皇だけではなくて、松下幸之助、手塚治虫、美空ひばり、というそれぞれ昭和を代表するような人物が逝去しています。今年はこれらの人の没後20年でもあります。

○松下翁死して20年、松下電器はパナソニックになった、というのは、もっとも分かりやすい時代の変化ではないかと思います。手塚治虫死して20年後には、「ときわ荘」の後輩・赤塚不二夫が死んで、その葬儀でタモリが「私もあなたの数多くの作品のひとつです」と弔辞を述べて評判になりました。美空ひばりについては、NHKで特集をやっておりますな。どんな分野でもそうですが、20年後に影響力を残せる人は滅多に居るものではありません。

○おそらく松下翁や手塚治虫クラスの人物は、平成ではもう出ないでしょう。何しろ彼らに薫陶を受けた人たちを、後に残されたわれわれが仰ぎ見ているくらいですから。もっとも今年は、阿佐田哲也(色川武大)、松田優作、開高健、なんていう人たちの没後20年でもあります。このクラスであれば、まだまだチャンスは残されているでしょう。

○平成20年の終わり、という視点で考えてみると、この年の瀬にはまた別の種類の感慨が沸いてくるのではないかと思います。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki