●かんべえの不規則発言



2022年1月 





<1月1日>(土)

〇あけましておめでとうございます。以下は新年の年賀状からもたらされた2022年の傾向。

〇「賀状の交換は今年限りといたします」との通告が2件。これが高齢の方からだと「すわ、大丈夫か」と身構えねばならないが、いずれも同世代人であるという点に安堵感がある。その気持ち、よくわかります。でもまあ、今しばらくはこの習慣を続けたいと思っております。

〇そうかと思うと、2年くらい「喪中欠礼」が続いていて、こちらから出すかどうか迷っていた人から届いていてホッとしたりもする。意地で続けている年賀状。だからこそ維持。田原総一朗さんは今年で88歳だとか。4月には米寿のお祝いですな。

〇「J-WAVEで吉崎の声を聴いたぞ」との連絡が2件あり。「くにまるジャパン」については1件、「NHKマイあさ!」に対する言及はナシ。ほんの数回しか出ていないのに、やっぱり別所哲也さんの威力は絶大なり。そういえば明後日の朝は「マイあさ!」の出番である。電話出演を忘れてしまいそうなので、ここで書いておく。登場は午前6時45分ごろです。

〇いろいろあった中で、これが一番受けたのはNさんの賀状にあった川柳。


●食卓に俺の席だけアクリル板

●お辞儀して共によろけるクラス会

●自己紹介 趣味と病気を一つずつ


〇思わず情景が目に浮かぶ。団塊世代のNさん、上手過ぎます。私ども還暦世代のクラス会も似たようなものですから。


<1月2日>(日)

〇まもなく「1月6日」がやってくる。ちょうど1年前に、ワシントンDCで起きた連邦議会議事堂乱入事件のことである。

〇ときのトランプ大統領がみずからの支持者を扇動し、数万人が首都に集結して、死者まで出した事件である。あれがテロだったのかクーデターだったのか、今も議論は尽きない。「1周年記念」で新たな暴動が起きなければいいけれども、「1・6」が近づくとまたまたいろんな形で蒸し返されることだろう。

〇コロナによるアメリカの新規感染者数は、去年はちょうどその「1・6」くらいがピークであって、1日30万件くらいだった。ところが現在は、オミクロン株の急拡大で1日50万件程度に達しているらしい。グラフの形を見ると呆然としてしまいます。アメリカは大丈夫なのか。すでにコロナによる死者数は82万人。南北戦争の死者数を超えてしまい、歴史上最大の災厄となってしまっている。

〇アメリカにおける「陰の極」は、去年の1月だったと思っていたのだが、まだまだ終わっていないのかもしれない。うーむ、アメリカが当てにできない2022年、大変な年になるのかもしれません。


<1月3日>(月)

〇毎年恒例、FT(英フィナンシャルタイムズ紙)執筆陣による2022年大予測、今年はJBPressさんの訳からご紹介します。(以下は私的な備忘録ですので、引用したい方はなるべく原文に当たってください)。なお、( )内は不肖かんべえの妄言です。


@デルタ株やオミクロン株よりも感染力の強い変異種は誕生するか?

→Yes:感染者は2022年に数十億人増える。ただしその被害がどれだけ深刻かは、ワクチン接種やソーシャルディスタンス如何である。

(ギリシャ文字でオミクロンの次はパイ=πですからねえ。割り切れない思いがいたします)


A米国のインフレはFedが目指す年2%の水準に戻るか?

→No:労働市場は過熱しており、実質金利のマイナス幅は拡大している。2022年のコアインフレ率は上昇するだろう。

(Fedの利上げはまるで追いつかない、ということのようです。だったら案外、株高継続かもしれませぬ)


B大離職時代(The Great Resignation)は終わるか?

→終わる。ただし高齢化と移民減少により、労働市場は引き締まった状態が続くだろう。

(ここから得られる教訓としては、賃上げを目指すためにはまず失業率を挙げねばならない、ということのようです)


CCOP27(エジプト)開催までに発表される各国の気候変動対策計画は、気温上昇を1.5℃に抑えるものになるか?

→No:米欧を合わせたよりも排出量が大きい中国(27%)が減らさねばならないが、その兆しはない。

(今年は昨年に比べて、新興国の意向が強く示されるCOPになると思います)


Dボリス・ジョンソン英首相は与党内から不信任案を突き付けられるか?

→Maybe:5月の地方選挙で負けたらいよいよ危ない。まあ、乗り切ってしまうかもしれないが。

(ボリスの「許されキャラ」はどこまで通るのか。しかし英国は次のタマが居るのかね?)


Eフランスで極右の大統領は誕生するか?

→No:決選投票にはゼムールかルペンが進出するが、マクロンが勝つだろう。でも2017年ほどの大差ではなくなる。

(4月の大統領選挙の後には、6月に議会選挙もあるんですよね。どう考えても今までよりも政治力は低下するでしょう)


Fロシアはウクライナに侵攻するか?

→No::侵攻せずとも多くの目的を達成できる。

(米欧のヘタレぶりを、ヤンキーはせせら笑うことでしょう。大人の怖さを教えてあげられれば良いのですが)


G米民主党は11月の中間選挙で下院の多数を維持できるか?

→No:上下両院を共和党に支配されるだろう。2010年のオバマ型の「完敗」になる。

(バイデン政権の低支持率に秘術、ゲリマンダーもついているから共和党は鬼に金棒、ということのようです)


H米連邦最高裁は州政府の妊娠中絶禁止を容認するか?

→Yes:6月末には最終判断が下され、Roe v Wade判決が覆される。このことは2022年中間選挙最大の争点となるだろう。

(壮絶なインパクトがありそうです。併せてリベラル派の83歳、スティーブン・ブライヤー判事の去就も気になるところ)


I中国は台湾に侵攻するか?

→No:少なくとも今年は。

(誰に聞いてもそう言うよねえ。だからと言って、ちっとも安心できるわけじゃないんですけど)


(以下略)


<1月4日>(火)

〇ユーラシアグループの「Top Risks 2022」が公表されました。イアン・ブレマー氏はあいかわらずの商売上手で、今年も気の利いたフレーズや美しい図表が満載です。

〇長らく見ている者としては、誰もが重視する「米中新冷戦」(Cold War 2.0)をリスクにあらず(Red Herrings)、と断じている点に「らしさ」を感じました。他人がリスクだと言っているものは、その時点で既に予想に折り込まれているからリスクではない。他人が気づいてないものこそが「リスク」となるのです。

〇これもこの時期の定番、「バイロン・ウィークのビックリ10大予想」は、こちらのサイトでお読みいただくのが親切設計で便利です。インフレ継続で高金利、株安、資源高、そんな中で原子力開発が再ブーム、と聞くとそれほどビックリでもないですな。とはいえ、いちおうチェックしないと年初のルーティーンが完了しません。多謝。

〇この手の予想は最近では世の中にあまねく出回っておりますが、本家本元のオリジナリティを超えることは難しいです。ごく普通に専門家を集めて、ああでもないこうでもないと衆知を集めたところで、出てくるのはごく平均的な話になってしまいがちです。

〇そもそも「逆説」でないものは、他人の関心を集められないし、お金をつけて売ることができない。この当たり前の理屈がわかっていない人が世間的に大杉なので、辟易させられることが多いです。長い寿命を保っているものは、この辺をしっかり押さえていますよねえ。

〇ところで本日の「ニュース・オプエド」では、最新版の「2022年カレンダー」をご紹介しました。せっかくだから、ここでもアップしておきましょう。サービス、サービスゥ。


<1月5日>(水)

〇今日が締め切りの原稿が2本。昨年からわかっているのだから、年末年始の間に仕事をすればいいのに、なぜかそれができない。パソコンを開けつつ、さて、何を書こうかと考えつつ、延々と駅伝を見てしまったりする。しょうがないよね、書きたくないものは書けないのだ。

〇たまたま昨日、編集者からのリマインドメールがあり、それを見て瞬間ムカついたときに心が定まった。不思議なことに、それから3時間後には完成しているのである。すぐに送付したら、先方は面白がっているようなので、少しいい気分になる。すると夜になって、ちゃんと2本目も書けてしまうのである。これまでの苦労は何だったのだ。

〇まあね、たいしたものを書いているわけではないのである。それでも義務を果たすというのはいい気分である。振り返ってみると、自分はどう考えても刻苦勉励型のタイプではない。アイデアが降りてくるのを待っているような人間である。まあ、いいではないか。

〇これというのも締め切りがあるお陰。それがなかったら何も書けないだろう。そういうものだ。


<1月6〜7日>(木〜金)

〇「今日は雪が降るらしい」と聞いていたので、せいぜい粉雪が舞うくらいかと思っていたところ、午後になったら会社の外の日比谷公園が一面の銀世界となっている。これは困った。ワシは金曜日に広島で講演会の仕事があって、翌日になったら首都圏は電車が麻痺しているかもしれない。いや、新幹線だって止まるかもしれない。なにしろ関東地方は雪に弱いのである。

〇雪による混乱はどうやら関東地方だけのことらしい。ここはとにかく帰宅しちゃいけなくて、着た切りスズメでいいから都内を離れてしまうのが上策というものであろう。広島銀行さんの新春経済講演会は、去年はコロナで中止になっている。今年は雪で中止なんてことになったら、まことに申し訳なさ過ぎる。ワシは責任重大なのである。

〇そこで木曜日の夜に新幹線の切符を替えてもらって、新大阪まで移動してしまう。駅のホームでエクスペディアを使って、「新大阪、1人、今晩」という条件で検索すると、「レム新大阪」というのが良さげである。一泊8000円ちょっと。それを予約しておいて、東海道新幹線に乗ってみると、特に問題なく運航しておりました。

〇新大阪の駅に到着して、セブンイレブンで「ワイシャツ、下着、マスク」などを購入する。失敗したのは携帯の充電器を持ってこなかったことで、会社のデスクに予備があったではないか。ああ、なんてもったいない。2500円なり。

〇レム新大阪は新大阪駅の3階から直結している。ほとんど歩かなくていいから助かる。つくづく便利な世の中になったものである。湯舟がなくてシャワーのみなのは致し方なし。素泊まりのニーズには、まことに有力なチョイスといえましょう。

〇朝食は新大阪駅のベトナム料理屋にて、フォーとカレーを頂戴する。九州新幹線さくらに乗って広島駅へゴー。あっという間に到着した広島駅は、大改装工事の最中であった。まるで渋谷のような工事をやっている。はて、完成するのは何年後なのか。

〇ふと気が付いたのだが、日本国内の100万人以上の都市、札幌、仙台、横浜、京都、大阪、神戸、福岡などにあって、広島市にないものが「地下鉄」である。考えてみれば、三角州を埋め立てて造った町である。さすがに工事が難しいのであろう。三角州に広島城を築いたのは毛利輝元であるが、その構想は毛利元就の代からあったのだそうだ。

〇地下鉄がなくても、そもそも市電が走っているということもある。それから道路が広くて、広島城の近くは片側4車線もある。走っているクルマは、2台に1台がマツダ車といったところか。それから経験的に言って、広島市のタクシーの運転手さんにはノリのいい人が多い。今日はカープの話抜きでちゃんと盛り上がった。

〇今日の講演会の主催者である広銀さんは、新しいビルが完成したところである。市内で一番の高層ビルかと思ったら、実は広島市内にはタワーマンションが2棟できていて、そっちの方が高いらしい。これもつくづく時代でありますな。

〇ということで、1日過ごしただけなんだけれども、広島市で感じたことは「キッシーが愛されている」ということ。何しろ岸田首相の「瓦版煎餅」なんてお土産が売られているんだもの。講演会も、「岸田首相が・・・」というたびに、聞いている人たちが文字通り身構える感じである。

〇おらが町の総理に対する期待度はまことに大らしい。ところが広島県は9日から「まん防」になってしまう。近々、総理のお国入り歓迎会も予定されているらしいのだが、果たしてどうなってしまうのか。ちょっと気になるぞ。


<1月9日>(日)

〇今年の干支は寅。というからでもないのだが、家族内で「虎」が話題となって、食事どきに中島敦の『山月記』の話になる。「隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自みずから恃むところ頗厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった」という書き出しで始まるおなじみの短編小説である。

〇今でも高校の教科書には『山月記』が載っているとのことで、ウチの娘が「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」という物語のキモになるフレーズを思い出してしまう。そこで、ついつい記憶がフラッシュバックするのであるが、このフレーズはしみじみ強烈なパンチラインである。自尊心と羞恥心にさいなまれる日々とは、まさに青春そのものではないか。

〇ワシ自身は、どう考えても李徴よりは袁惨(正しくは参の左側はにんべん)のタイプである。虎にはなりそうにないし、なれなくて勿怪の幸いである。それを棚に上げたうえで、李徴の人生の過酷さについ思いを馳せることになる。

〇思うに、「みずからは凡人ではない」と思っている間が青春であり、「ああ、やっぱワシは凡人だわ」と頓悟した時点で大人の人生が始まる。羞恥心に振り回されている間はコドモで、羞恥心を抑え込めるようになってからがオトナの日々となる。

〇さらに人は還暦を超えると、「自尊心」などというものがどこかに消え失せてしまう。これまでに過ごした歳月において、自分よりも優れた才能を山ほど見てきたから。その彼らですら、かならずしも大成するとは限らない。ゆえに凡人は、地道に努力するしかないのである。凡人でなかったら、中島敦やアルチュール・ランボオのように夭折していたかもしれないし。

〇さらにこの年になると、羞恥心もあらかた消え失せている。60年余りの月日は、今さら消せない過去ばかりであるから。せめてみずからを、堂々と肯定していきたいものである。逆に言えば、尊大な羞恥心を持ち続けることが、青春を長引かせて若さを保つ秘訣であるのかもしれない。

〇ということで、今日はめずらしく週末の競馬を絶って、この三連休が締め切りとなる原稿に精を出すのである。しかるに自己評価的には、70点くらいの出来栄えに終わりそうである。せめて「このままでは、第一流の作品となるのには、何処どこか(非常に微妙な点に於おいて)欠けるところがあるのではないか」という水準まで持ち上げたいものなのだが。

〇仕方がないから、もう1日、粘ってみることにしよう。こういう諦めの悪さこそが、われら凡人の美徳というものである。


<1月10日>(月)

〇久しぶりに競馬をやらない週末であったが、仕事の合間にALSOK杯王将戦の渡辺名人・王将―藤井竜王の第1局は気になっているのである。昨日の1日目は互いに決戦を避けて、おとなしい感じであった。

〇今日の2日目の夕刻になっても、渡辺名人が珍しく五分の戦いをしていた。ところが午後7時を過ぎてから、急におかしくなった。やはり1分将棋となると、藤井四冠の正確さの前に轟沈してしまうのである。

〇たぶん明日になったら、渡辺明ブログでどれが敗着だったかを教えてくれるのであろう。しかるに棋界最高峰の2人の勝負がこれだけワンサイドゲームになってしまうようでは、日本将棋連盟は興行として限界に達してしまうのではないか。先生、藤井君が強過ぎて見ていても面白くありません!てなことになるのではないかと。

〇渡辺名人も勝負師タイプなので、第2局の先手番ではもう少し見どころを作ってくれるものと信じたい。このままでは棋界が危機に瀕してしまいます。ところで王将戦の差し込み規定というのは、今でも残っているのだろうか?

〇と、ここで終わってしまうとググレカス、と言われてしまいそうなので、以下、ウィキの王将戦の記述から、「指し込み制」の記述を貼り付けておこう。時の名人が差し込まれる心配はないようです。


●指し込み制

創設当初の七番勝負では「三番手直り」の指し込み制を採用した。これは、3勝差がついた時点で王将戦の勝負が決定し、次の対局から香落ちと平手戦で交互に指し(半香落ちの手合割)、必ず第7局まで実施するシステムである。当時、将棋連盟内では升田幸三を筆頭に、名人が指し込まれる可能性があると慎重論があったが、最終的に主催側の提案通りに施行する事となった。これは、「名人が指し込まれることはあり得ない」と当時の名人である木村義雄自身が発言したことによるものであったとされる。

皮肉なことに、1951年度の第1期王将戦で、升田八段(当時)が木村王将・名人を4勝1敗で指し込むこととなった。升田は香落ち戦となる第6局の対局を拒否し、事態を重く見た連盟から一時は1年間の対局禁止の裁定も下された(直後に取り消される)。この「陣屋事件」は将棋界のみならず、世間の大きな注目を浴びた。さらに1955年度の第5期王将戦では升田が大山康晴王将・名人に対し3勝0敗で指し込みを果たすと、1956年1月19日・20日の第4局で香落ちの升田が大山名人に勝ち、「名人が香を引かれて負ける」事態が起こった。なお、升田は続く第5局(平手番)でも勝ち、対戦成績を5勝0敗とするが、体調を崩し対局に耐えられなくなったとして第6・7局は中止となった。

また、実際に起こることはなかったものの、一方の棋士が最初に3連勝した後に4連敗した場合でも最初に3連勝した段階で勝負が決定しているため、4連敗の中に香落ち戦が含まれるとはいえ、負け越した棋士が七番勝負の勝者となる可能性があった。

指し込み制は、1959年度の第9期から香落ち戦を1局だけ指すようになった。1965年度の第15期からは四番手直りに改められ、またどちらかが4勝した時点で対戦が終了することになったため、香落ち戦が指されることはなくなった。しかし、死文化しているものの、王将戦の指し込み制そのものは現在も規則に残っている。つまり、王将戦で4勝差がつく(七番勝負のため、4勝0敗のストレート勝ちでしか起こりえないことになっている)と実際に香落ち戦が指されることはないものの、「指し込み」は記録される。なお、四番手直り以降で名人在位者に「指し込み」が記録されたのは、第49期(1999年度)の佐藤康光(挑戦者)と第54期(2004年度)の森内俊之(王将保持者)で、いずれも羽生善治に0勝4敗でストレート負けしている。


<1月11日>(火)

〇本日発表のNHKの世論調査結果。全国的にオミクロン株感染が広がる中で、これはちょっとすごいわなあ。キッシーの人気は広島だけに限ったものではないようです。


内閣支持57%(+7p)、不支持20%(-6p)


〇もっとすごいのはこっちのデータかもしれない。青木レシオ(政権支持率+与党第1党の支持率)が100%近いではないか。こんなのいつ以来のことだろう?

自民党 41.1 +6.2p
立憲民主党 5.4 -3.3p
公明党 2.8 -0.3p
日本維新の会 5.8 -1.5p
国民民主党 1.0 -0.7p
共産党 2.6 -0.3p
れいわ新選組 0.3 -0.2p
社民党 0.2 -0.6p
その他の政治団体 0.3 -
特に支持している政党はない 34.0 +1.7p
わからない、無回答 6.3 -



〇これではまるで民意が、「自民党が不人気な総理をちゃんと辞めさせて取り替えることができるのなら、野党なんて要らないじゃん!」と言っているようにみえてしまう。いやまあ、ワシもれいわ新選組と社民党は要らないと思うけど、それでもやっぱり野党には政権担当能力を持つように努力してもらいたい、と考えるものであります。


<1月12日>(水)

〇1月11日の夜に岸田首相が安倍元首相と会食して、何か教えを乞うたらしい。ネタはコロナなのか、改憲なのか、参院選なのか、と観測が飛び交っているけれども、今のタイミングで急がなきゃいけないのは外交、特に対ロシア政策ではないかと思う。

〇なにしろロシアは、ウクライナ国境に兵力を集結させていて、カザフスタンの国内混乱にも力を貸したりしている。はてさて、プーチンは何を考えているのか。安倍さんほど何回もプーチン大統領と会った人は居ないのだから、現職総理がアドバイスを求めるのは、不自然な発想ではないと思います。

〇その一方で、安倍さんが目指していた対ロ外交は、この辺でいったんリセットする方がいいんじゃないでしょうか。日ロ間に平和条約がないということは、日本側として別段、痛痒を感じるようなことではない。岸田さんは安倍さんに対して「聞く力」を発揮した上で、ロシアに対しては知らんぷりをするというのが合理的な選択になるだろう。

〇それでは領土問題はどうなるのか。どうにもなりません。元より帰ってくる当てはなかったので、安倍内閣はいわば「やってみなはれ」でトライしたようなものだ。4島を2島に値下げすれば、それで交渉が動くような気配があったのでしょう。が、今となってはそれは錯覚だったようだ。だったら、ここは仕切り直しにするのがよい。つまり対ロ平和交渉は、「もうやめなはれ」ということになる。

〇実際問題として、日ロ間で協力できるようなことってあんまりないんですよねえ。エネルギーは火力に限られて当世風ではないし、水産とか観光は規模が小さ過ぎて話にならないし。そのうち、極東ロシアの人口が北海道を下回る時が来ますから、その頃にあらためて交渉すればいいと思います。

〇まして一部で言われていた、「ロシアは対中カードとして使える」などというは、大いなる幻想でありましょう。ロシアの主敵はアメリカなんだから、「敵の敵は味方」で中国と与するのはごく自然な選択になる。アメリカは1991年に戻りたい、ロシアは1945年に戻りたい。そんな両国が、互いに仲良くなれるはずがないのであります。

〇え?今日はムネオさんが官邸に駆け込んだって? いかにもありそうなことであります。とにかくロシアに対しては、興味があるようなふりをしないのが上策だと思います。


<1月14日>(金)

〇今週はいっぱい仕事をしたぞ。新潮ウェブフォーサイトに寄稿したのは下記の原稿。有料サイトですが、いちおうのご紹介。


●「米国政治日程」で占うバイデン政権「中間選挙イヤー」の読み方

ヤフーからですと330円で読めるようになっております)


〇それから電気新聞「時評ウェーブ」の原稿も入稿。こちらはジョー・マンチン上院議員を取り上げました。掲載は21日。

〇そして今日は溜池通信も今年最初の号をちゃんと出しました。今年はまだ始まって2週間ですが、去年と違ってちゃんと仕事ができるのがありがたい。オミクロン株なにするものぞ、と言ってやりたい。


<1月16日>(日)

〇オミクロン株が急速に拡散する一方で、トンガ沖では「1000年に1度」の海底噴火ですか。いろいろありますなあ。とりあえず津波がこなくて幸いでした。

〇そうでなくとも、2年近くも「コロナで我慢」の生活が続くと、皆さん心がささくれだってしまい、妙なことに走る人が出てきても不思議はないところ。ほかのことはいいとして、こういうときは自分のメンタルを大事にしなければなりません。

〇まずは「天罰」だと思わないこと。自分が何か悪いことをしたからじゃないですからね。まじめな人ほどこのトラップに陥りやすい。古来、天変地異や疫病は、新興宗教がはびこる絶好の条件なのですが幸いなことに、コロナは宗教ととっても相性が悪いのです。なにせ人が集まると碌なことがないですから。

〇ということで、ワシ的にはこの週末はせっせと税金対策。領収書の整理などに精を出す。人は忙しくしておけば、余計なことを考えなくて済むのである。

〇ところが困ったことに、PCの修理費(正しくはデータの復旧費)の5万円+αの領収書が見当たらないのである。ああ、こんなことならカードで払っておけばよかった。クロネコヤマトのコレクト便の人が「現金の方がいい」といったから、つい現金で払ってしまったのであった。悔しすぎるから、何とか見つけ出してやるぞと心に誓うのであった。


<1月17日>(月)

〇明日は1月の月例経済報告が出る日ですが、果たして基調判断はどういうことになるのか。前回の昨年12月分は上方修正で、こんな感じの文言でした。


11月:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和される中で、引き続き持ち直しの動きに弱さがみられる。

12月:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和される中で、このところ持ち直しの動きがみられる(↑)。


〇景気が拡大傾向にあるときに、内閣府が基調判断に使う典型的な文言は下記のようなパターンです。

「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」
 ↓
(3か月くらい続けた後に)
 ↓
「景気は、緩やかに持ち直しの動きがみられる」
 ↓
「景気は、着実に持ち直している」
 ↓
「景気は、緩やかに回復しつつある」


〇つまり「持ち直し」→「回復」に至るまでがなかなかに難しい。その点、コロナ下においては、2020年7月に「このところ持ち直すの動きがみられる」を使った後に、年後半からコロナが再拡大して、翌1月からは再び下方修正に至って経緯がある。景気はコロナ次第なのです。今回は2度目の挑戦となるのだが、果たして明日発表の1月分はどうなるか。

〇正直なところ、上方修正であっても不思議はないところだと思います。ただしオミクロン株を考えると、先行きは明るいとは思えない。今日の夕方になって、明後日には「マンボウ」出動という報もある。それでは政府として、意地でも景況判断を上げてはいけないということになってしまいます。

〇うーん、ホントかなあ。この国の人たちはそんなに命が大事なんだろうか。「経済は命よりも大切」という人が、もっと多くてもいいような気がするのだが。とりあえずマーケット関係者が何を言っても、岸田内閣は関心を持ってくれなくて、鎖国政策を続ける方が支持率は高くなる。

〇マーケットで嫌われて国民に愛される岸田内閣。いやマーケットで嫌われるからこそ、岸田内閣は愛されているのかもしれない。明日朝はモーサテ出演なので、ちょっとこの点は悩ましく感じるところです。


<1月18日>(火)

〇結局、1月の月例経済報告は現状維持ですした。まあ、それが妥当でしょうね。ところがこれから一都十県は「まんぼう」まっしぐらですから、この先の景気はしんどいですぞ。今朝の「くにまるジャパン」で、あれこれと申し上げた記録はこちらをご参照

〇今朝のモーサテ、豊島キャスターが昨日の施政方針演説についてコメントを振ってきたから、「新しい資本主義というのは、祝詞(のりと)みたいなもの」とお答えする。うむ、いいではないですか。モーサテファミリーを代表して申し上げたい。岸田さんが神主さんだと思えば腹も立たない。いや、むしろ良い神主さんに思えてくる。

〇午後は都内の電気倶楽部というところで講演会。この後も講演会で、20日は岡山、21日は福岡、24日は富士吉田に参ります。幸いなことにマンボウでないところばかり。26日の石巻市は中止になっていて、やっぱり東北はガードが堅い。日本の国は東西でかなり違います。面白いね。


<1月19日>(水)

〇いよいよオミクロン株が大爆発という感じになっております。厳しい水際政策を採ってきたおかげで、ここまでの時間は稼げたわけであって、放っておけば昨年末ぐらいからこういう事態になっていたことでしょう。

〇おそらく4週間くらいの時間を稼げたお陰で、年末年始はわりとゆっくりと過ごせました。忘年会もやりました。新春のセールで、2年ぶりの買い物を楽しんだ人もいたことでしょう。箱根駅伝も今年は面白かったしね。こういうことは珠玉の経験というべきでありまして、大学共通試験も、ぎりぎりセーフという感じでした。まことにありがたいことです。

〇その一方で、稼いだ時間で何かコロナ対策で前向きな手を打てたかといえば、そんなに大したことはできていないようです。ブースター接種は来月以降のようですし、病床の確保などはやっぱり大変な苦労をされている様子。献身的な努力をされている現場の方々に、あらためて感謝を申し上げる次第です。

〇わが国の厚労行政とか医療体制とかがどんなものであるかは、この2年間でかなり学習が進んだと思います。立派なところもあるけれども、不合理なことも多々ありますわなあ。ここへきて突然、改善されたりはしないでしょう。まあ、ないものねだりをしても仕方がありませぬ。

〇もうひとつ、時間を稼いだお陰で良かったのは、先行する他国の様子が窺い知れたことです。オミクロン株は拡散が早いけど、重症化は少ないし収束も早そうだ。希望的観測かもしれませんが、あと2週間くらいの辛抱ではないですかね。

〇とまあ、先行事例が見えているだけでも心理的な救いにはなるわけでして、「時間を稼いだのが無駄になった」などとは言いたくないと思うものであります。地球上でこの国だけが無事に済む、なんてことだけはあり得ないのでありますから。

〇逆に言いますと、令和の鎖国政策はそろそろ解除してもいいんじゃないでしょうか。外国人の入国拒否措置は、国内的には支持されていますけど、海外からの評判は非常に良くないですから。そしてそのことは、日本経済のダメージにもつながってまいります。コスト&ベネフィットを考えると、この辺が頃合いではないでしょうか。2月になったらさりげなく外すのが良策かと存じます。


<1月21日>(金)

〇岡山市と福岡市に行ってまいりました。例によって感動することはいっぱいあるのですが、ここではひとつだけご紹介。

〇九州新幹線さくらで岡山駅から博多駅へ移動中、山口県宇部市に差し掛かったところで、左手に見えてきたのは『シン・エヴァ』のラストに出てきた工業地帯でした。ああ、もっとゆっくり見たかったなあ。

〇オミクロン株の広がりに連れて、いろんなイベントが中止になっております。とりあえず今年はここまで3週間、予定通りに物事が運んだことに感謝あるのみです。


<1月22日>(土)

〇ということで、これは一昨日、新幹線の中で書いた原稿。


●国民に「愛される」岸田首相が市場に嫌われるワケ


〇火曜日のモーサテ発言を発展させたもの。ただし木曜日時点で書いているので、競馬予想はあんまり自信なし。枠順も決まったようなので、これからじっくり考えようかなあ、というところである。

〇AJCCはとにかく荒れそう。まあ、この時期の中山ですし、記事に書いた通りルメール騎手が不調ですので。福岡で会った馬券王先生は「三連複で、人気2頭軸の総流しでどうだ」と言ってましたが、意外といい作戦かもしれません。


<1月23日>(日)

〇平日にいろんな場所に行っているので、休みの日にはなるべく外出しないようにしている。

〇まずは競馬。AJCCは「オーソクレースは来ない」(鞍上のルメールが不調過ぎるから)という予測だけは当たったが、軸にしたポタジェは5着。ヒモ候補のマイネルファンロンはしっかり2着になっているというのに。ああ、せめて複勝を買っておけ。

〇ちなみにクリストフ・ルメール騎手は2か月近く重賞の勝ちがないけれども、普通のレースでは今日は3勝している。昨日も3勝。おそらく来週から府中競馬場に移ると、重賞でもバンバン勝ち始めるのではないか。

〇それから将棋。王将戦第2局は初日の渡辺王将の▲3四角が疑問であったか、封じ手の時点で自陣に馬を作られ、素人目にも危なっかしい局面になっている。今日はせめて昼前に終わらなければいいがと思ったら、藤井竜王が午前に長考し、渡辺王将も長考に入って結局、午後4時15分に終了。これで挑戦者の藤井竜王が2勝0敗。うーむ。

〇あ、それから今日はNHK将棋トーナメントの羽生善治九段対斎藤明日斗五段も面白かったです。先週の佐藤康光九段対佐々木大地五段戦が地震で中継されなかったのはまことに遺憾であります。

〇うむ、われながら趣味が狭くて地味である。そして午後6時を過ぎたらビールを開ける。これで夜が更けると、ユーチューブやアマプラに逃避するのである。かくして休日が終わるのである。


<1月24日>(月)

〇内外情勢調査会の講師で山梨県富士吉田市へ。

〇新宿駅から1時間で大月駅へ。そこからクルマで30分程度で富士急ハイランドに到着する。ここから見る富士山は、間近であるだけにド迫力である。そしてこの季節だけあって、裾野の方まで見事に白い。見ていると、吸い込まれてしまいそうに感じる。東海道新幹線の中から、小さく高いところに見える青い富士山とはえらい違いである。

〇で、「コロナ下の世界と経済の行方」を演題に1時間半お話しする。

〇本日の収穫は、この社長さんとお会いしたことかな。同じネズミ年生まれの方でした。ちなみにリンク先の映像は「絶叫は心の中で」と呼ばれるもので、富士急ハイランドの公式映像なんだそうです。

〇まじめな話、こういうご時勢でございますので、出されたお弁当を食べる間は完全に黙食。で、食事が終わった方からマスクをつけて、それからやっと雑談が始まるという世界であります。感染対策をしたうえで、なるべく普段と変わらない日常を、という日々がしばし続きます。

〇ところで以下はまったく本題とは違うのですが、「The Economist誌が選んだ2021年の新語・流行語大賞」のご紹介がありまして、これ、本誌ご愛読者の方々にはツボに入るのではないでしょうか。かな〜り使えるネタでございます。


●“What is The Economist’s word of the year for 2021?”


<1月25日>(火)

〇郵便局へ行って、お年玉年賀はがきの当選分(といっても、もちろん3等の切手だけだけど)を取り替えてきた。今年の「当たり」は5枚であった。

〇ついでに使い残りの年賀状(書き損じを含む)を持って行って、これは何かに交換できるのかと聞いてみると、手数料は取られるけれども、切手に換えてくれるという。金額と組み合わせは、自分で好きに選ぶことができる。84円の切手を買えるだけ買って、残りは2円切手にしてもらった。

〇いや、単に知らなかっただけのことなんだけど、毎年、印刷済みの年賀状を余したままで放置していたのは、我ながら不作為の罪というべきである。面倒がらずにちゃんと交換すべきだなあ、と思い当たった次第。


<1月26日>(水)

〇今日はWEOの最新版が公表されました。ホントは1月19日の予定だったのですが、オミクロン株の拡散があまりにすごいもので、1週間延期になったものです。


●Rising Caseloads, A Disrupted Recovery, and Higher Inflation (増える感染者、妨げられる回復、そして高インフレ)


〇表題が「まんま」ですな。コロナとともにあったこの3年分のWEO表題を並べてみると、悲観と楽観の間を揺れ動いてきたことがしみじみと思い出されます。

2020年
 1月 Tentative Stabilization Sluggish Recovery?
 4月 The Great Lockdown
 6月 A Crisis Like No Other, An Uncertain Recovery
10 月 A Long and Difficult Ascent

2021年
 1月 Policy Support and Vaccines Expected to Lift Activity
 4月 Managing Divergent Recovery
 7月 Fault Lines Widen in the Global Economy
10 月 Recovery During a Pandemic

2022年
 1月 Rising Caseloads, A Disrupted Recovery, and Higher Inflation

〇「ウィズコロナで行くしかない」と言う人は多いですし、確かにそれ以外はないのでありますが、それはこんな風に「ぬか喜び」と「恐怖の復活」の間を、何度も行き来する日々のことを意味するのでありましょう。

〇予測の中身について言うならば、米中二大経済大国の下方修正が大きいですな。もっともその辺の話は、今週の溜池通信でお話ししましょう。そういえば明日はFOMCですか。ちゃんと寝坊しないようにして、モーサテを見なければなりませぬな。


<1月27日>(木)

〇今日は盛大に株価が下げましたねえ。日経平均だけじゃなく、アジア全域で下げた様子。それくらい今朝のFOMCで激震が走ったということでしょう。


*「3月利上げ確定」は覚悟していたし、

*「テーパリングは3月初めに終了」というのもわかっていたけれども、

*「利上げは3回じゃ済まなくて年内4〜5回か」というのは心の準備がなかった。利上げは「FOMC2回につき1回ずつ」というのがこれまでの吉例だったのだけど、どうやら3月に続いて5月と6月も、ということがあるかもしれない。FOMCは年内に8回あるから、いちばん多い場合には7回ということも。ひえ〜っ!

*「QTも思ったより早いぞ」というのもサプライズで、どうやら「6月決定の7月開始」くらいのノリらしい。あ、QTというのはQuantitative Tightening(量的引き締め)のことね。QE(Quantitative Easing=量的緩和)の正反対のことです。


〇前回は「2014年テーパリング、2015年末利上げ開始、2017年QT開始」というくらいのゆったりとしたスケジュールだったので、今回は引き締めがあまりに早いので市場がビックリしています。それもそのはず、何しろ今は「雇用よりも物価」。米国経済において12月の失業率は3.9%で、CPIは7.0%でしたからね。どっちが問題かは一目瞭然です。

〇ところでここまでインフレが加速したということは、ちょうど1年前くらいに言っていた「高圧経済」が実現したということではないのでしょうか。当溜池通信では昨年春に、「高圧経済の米国でインフレは起きないか?」てなことを書いている。そしたらホントにそうなったのではないでしょうか。以下は1年前の拙稿より。


今日のエコノミストの中でも、ローレンス・サマーズ教授のような「インフレあり得る派」は少数派のようだ。物価が上昇するとしてもそれは一時的な現象である、むしろ景気の腰折れを心配すべきだ、実際に上がったとしても米連銀が手を打てばよい(つまり起きてから考えればいい)、という論者の方が多い。もっとも本当に金融引き締めが行われる場合には、マーケットは混乱するだろうし、それが上手くゆく保証もないのであるが。


〇たまたま今日になって気づいたのですが、「高圧経済」論の言い出しっぺであるところのイエレン財務長官が、1月21日にこんなことを言っていたのですね。


●「バイデン氏の政策は『現代のサプライサイド経済学』=イエレン氏」

 イエレン氏は世界経済フォーラム(WEF)の講演で、バイデン政権の取り組みは減税や規制緩和を通じて成長促進を図る伝統的なサプライサイド経済学とは一線を画していると指摘。昨年11月に超党派の支持で成立したインフラ法案や、バイデン氏が提案する社会保障制度改革、気候変動対策などを例に挙げた。

 イエレン氏は「われわれの新たなアプローチは、古いサプライサイド経済学よりはるかに有望だ。(古いサプライサイド経済学は)成長を促す戦略としては失敗したと思う」と述べた。


〇ちょっとご都合主義過ぎるのではないでしょうか。まじめな話、これで米国経済がおかしくなるかといえば、おそらくそんなことはなく、むしろドル建ての債務を一杯抱えている新興国経済の方がきりきり舞いさせられることになるのではないか。1年前の拙稿ではこんなことも書いている。


最後に米国で「高圧経済」の実験が行われた場合、日本など他国の経済にはどんな影響があるのだろうか。

普通に考えれば、対米輸出の増加などを通してプラス効果があるはずだ。実際に最近は、米国で長期金利が上昇して為替もドル高円安に向かっている。

それと同時に、一部の新興国は自国通貨を守るために利上げを余儀なくされている。ドル高が対外債務を重くしてしまう、というおなじみの展開である。つまり米国で貧困をなくすための努力が、新興国の経済状況を悪化させる、という皮肉な展開の可能性もある。


〇かつてのレーガノミクスがそうだったように、米国経済の大実験はほかの国に飛び火するのでありまするよ。いつものことなんですけどねえ。


<1月28日>(金)

〇木村幹著『韓国愛憎 激変する隣国と私の30年』(中公新書)を読了。ツイッター界ではおなじみのキムカン先生が、敢えて自分史を重ね合わせつつ、韓国現代史と日韓関係を描いたものです。

〇アカデミックに時系列で淡々と語られるよりも、この方がすっと頭に入ります。同じ中公新書でいえば、佐橋亮教授の『米中対立――アメリカの戦略転換と分断される世界』はいい本だと思うけど、変に禁欲的に書かれているだけに読んでいて面白くはないんだよなあ。

〇例えばキムカン先生が2014年に高麗大学に赴任した際に、「韓国の学生たちが、先生が保守派か進歩派か知りたがっている。説明してやってほしい」と言われるくだりは興味深く感じました(P211)。韓国の若い学生たちの間では、イデオロギー的に分類ができない先生は「気持ち悪い」と思われるらしい。ヤバいっすね。ある意味、アメリカ社会以上に社会の分断が進んでいるのかもしれません。

〇ただしそんな風になったのはごく近年のことであるらしく、韓国社会はこの先もどんどん変化していくのでありましょう。ごくゆっくりとしか物事が変化しない日本社会から見ていると、その辺のスピード感についていけなかったり、いらだちを感じたりすることが多くなるのでありましょう。

〇朝鮮半島の研究者は個人的に結構、存じ上げている方だと思うのですが、ストレスを感じることが多い仕事であることは容易に推察ができます。日本国内の「嫌韓派」の標的になるだけでも、おそらく大変なことでありましょう。まことに因果な世の中であります。

〇本日も佐渡金山を世界遺産に推薦へ、というニュースが駆け巡っている。筋ワルだと思うけどなあ。石見銀山が登録されたのは、あそこで採れた銀が世界に流通していたからこそ実現したわけで、国際的な評価がモノを言うような仕組みになっている。どこかの国が抗議しているというのは、それだけで不味いっす。

〇ところが世の中には、韓国にケンカを売りたいとか、岸田内閣を困らせてやりたいという動機を持つ人たちが少なくないようで。これぞ韓国愛憎。ワシ的には関わり合いにはなりたくありませぬ。


<1月30日>(日)

〇うーむ、終盤の棋力が違い過ぎるのだろうか。

〇藤井竜王(四冠王)がまたしても渡辺王将(名人)を破りました。

〇第三局はわりといい勝負かと思ってみていたのですが、一瞬のスキを見逃しませんでした。駒がほとんど余らない詰み手順、いったいいつから読んでいたのでしょうか。藤井竜王、強過ぎます。第4局は2月11、12日だそうです。


<1月31日>(月)

〇今週の金曜、2月4日には北京五輪が開催となる。

〇このご時勢に「ゼロ・コロナ政策」は無理があるのでは?、とユーラシアグループは言っていたけれども、そこはさすがの中国で、なんとか五輪開催にこぎつけた。海外からの取材陣に対しては徹底した「バブル方式」を採っており、「これに比べれば昨年の東京大会は天国だった!」という声が漏れているとか、いないとか。

〇開会式に招待された海外からの賓客も予想以上に多い。サウジのMbS王子、とはおいしいところを持ってきましたね。韓国も結局、国会議長を送り込みました。アルゼンチンの大統領も入っていますから、G20でいえば5か国をカバーしたことになりますね。

〇中でも最大の賓客はロシアのプーチン大統領でしょう。中ロ連携の象徴的人物ですし。それに何より、今はアレがあるじゃないですか。ウクライナ問題が。

〇常識的には、2月20日までの五輪開催期間中にウクライナ侵攻はないと考えるべきでしょう。しかし2008年夏のロシア軍による南オセチア侵攻は、まさに北京夏季五輪の開催中の事件であったのです。プーチン首相は開会式に招待されて北京にいた。当時はメドベージェフ大統領だったんですよねえ。これ、いかにもテストのひっかけ問題になりそうです。

〇さらに2014年のクリミア併合は、ソチ五輪大会の直後でありました。「五輪は平和の祭典」という常識は、ロシアには通用しないと考えておくべきでしょう。いやあ、物騒な世の中であります。









編集者敬白




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by Tatsuhiko Yoshizaki