●かんべえの不規則発言



2020年12月







<12月1日>(火)

〇師走である。2021年の予測を考えなければならない。いくつかの"if"を考えてみよう。今の時点では、以下はあくまでも思考実験と言うことで。


(1)東京五輪(オリパラ)は開催されるのか?

――イエス。案ずるより産むがやすし。極端な話、参加国が20か国程度(ただし米中を必ず含む)で、ほとんどが無観客試合であっても構わない。ここでやらなかったら、二度と世界で五輪大会は開かれなくなる公算が大である。それではIOCもNBCも困ってしまう。だから、やりましょうよ。こういうやせ我慢、日本人はきっと好きなはずです。


(2)コロナワクチンは完成するか。そして役に立つのか?

――たぶんノー。ワクチンはできるだろうが、効果は未知数であるし、そもそも実用のためには千万、億単位で生産しなければならない。これは笑い話だが、ワクチンを輸出したくてうずうずしているロシアは、国内の生産能力が足りないそうである。日本の製薬会社が代わりに作ってあげてもいいが、その代わり全量ロシア引き取りでお願いしますよ。日本が買うなんて冗談じゃありません。


(3)前大統領となったドナルド・トランプ氏は訴追を受けるのか?

――イエス。脱税からスパイ容疑まで、あらゆる種類の裁判を起こされそうだが、たぶん致命傷にはならないでしょう。新設される「トランプ・チャンネル」が、バイデン政権の悪口を言うとともに、トランプ裁判の不当性を訴えることでしょう。なにしろ7400万票の民意が後ろについている。「ウィズ・トランプ時代」を甘く見ちゃいかんです。


(4)中国共産党は無事に共産党結党100週年を迎えられるのか?

――生ぬるくイエス。来年7月、上海市で中国共産党が結党されてから100周年を迎えます。彼らは厚顔無恥に祝うことでしょうが、習近平の求心力は下がる一方でありましょう。再来年に、無事に党書記の3期目を迎えられるかどうかはわかりませぬ。とりあえず株価を下げないようにするだけで苦労しますわな。


(5)日本で解散・総選挙は行われるか?

――ノー。たぶん任期満了解散でありましょう。このままコロナ感染者は増えたり減ったりを続けながら、ずるずると秋まで続くはず。なにしろ「第×波」が終わるのを待っている間に、次の「第×+1波」がやってきますから。だからと言って、菅政権は安泰です。今の野党は、政権を獲る気なんてこれっぽっちもないのですから。


(6)ジョー・バイデン氏は、米大統領としての務めを無事に果たせるのか?

――たぶんYes。犬と戯れていて足を骨折してしまうような老人に、多くを期待することは普通は難しい。それでも「わらしべ長者」の強運は続いていて、議会の共和党多数が続く限り、民主党左派は彼を担ぎ続けるしかない。そして議会共和党は、ときどきは彼に妥協しなければならない。でないと2022年中間選挙に負けてしまうから。気候変動問題は断固無視しても、コロナ対策をやらないわけにはいかんでしょ。


(7)アンゲラ・メルケル独首相は任期満了とともに政界を去るのか?

――イエス。2018年の地方選大敗でそのように宣言しました。こういうことで食言するような方ではありません。あとは野となれ、山となれ。新型コロナは世界の指導者の新陳代謝を促します。最初が安倍さん、次がトランプさん。この調子でどんどん変わっていくと思いますよ。え?来年が任期最後の年となる文在寅とマクロンはどうなるかって? そんなの知ったこっちゃありません。


(8)中東情勢は大丈夫か? イランといい、イスラエルといい、トルコといい、まことに物騒に見えるのだが?

――たぶん大丈夫。トランプさんが4年間、無茶苦茶をやった(シリア向けミサイル発射、米大使館をエルサレムに、イラン核合意破棄、イスラエルのゴラン高原の主権承認、スレイマーニ司令官爆殺など)けれども、その割に中東は平穏無事である。しかもイスラエルはUAEやスーダンとの国交正常化を果たしている。こんなこと、中東専門家は誰も予想していなかった。つくづく怖いもの知らずの素人外交は怖いです。とはいえ、これはこれで認めるべき成果なのではないでしょうか。


(9)英国は本当にブレグジットしてしまうのか?

――ノー。2021年の英国はG7の議長国ですし、COP26(グラスゴー)の開催国でもあります。そして米国ではアイリッシュの大統領が誕生する。ちっとはいいところを見せたいじゃないですか。そして通商交渉というものは、領土交渉や神学論争ではなくて、互いの利益を競うという不純な交渉です。落としどころはきっと見つかる。その程度には賢明な人たちだと思います。


(10)日経平均は3万円台まで上がるか?

――たぶんイエス。そこまでいかないとバブルとは言えないし、今やあらゆる前提がバブルの到来を示しています。この人がたいへんお怒りになるかもしれませんが、そんな状況を一目見てみたいという気がしております。


〇最後は「朝乃山は年内に横綱になれるか?」「イエス。本当は2020年中になってほしかった」で締めくくろうと思っていたのですが、10項目もそろったのでこの辺で手じまいといたしましょう。こんな風にして、来年の予測を作っていきたいと思います。


<12月2日>(水)

〇今日の午前は年に1度の産経新聞紙面検証委員会へ。マジメな話はそのうち紙面に出るので、ここでは雑談で仕込んだネタのご紹介。

〇春先、阪神タイガースの藤波晋太郎投手がコロナに感染した。それと同時に、サンケイスポーツ大阪班の阪神取材記者の大部分が「濃厚接触者」となり、自宅待機となってしまった。「これでどうやって明日からの紙面を埋めるんだ!」と現場から悲鳴が上がったが、ベテラン記者とはおそろしいもので、在宅勤務のままでちゃ〜んと日々の記事は出来上がっていったのであった。

〇産経新聞社内によれば、「コロナのお陰で記者の評価は一変。聞いたままを書いていた記者と、ちゃんと自分で考えて記事を作っていた記者の差がはっきり出た」のだとか。うーむ、エコノミストの世界でも、在宅勤務になって急に切れ味が鈍った人と、そうでなかった人があったような。不肖かんべえがどちらであったかは、ここでは問うまい。

〇夜はRIPSのウェビナーへ。西原正理事長の司会で、森本敏元防衛相と不肖かんべえが「米中『新冷戦』と日本の対中外交」をテーマにお話ししました。いやはや、いつもながら勉強になりました。

〇ところがZoomの聴衆から当方に寄せられた質問の中に、「今の株価をどう見ていますか?」とのものあり。これって安全保障セミナーなんですけど・・・。とはいえ、参加者の皆様からは金2000円也をお支払いいただいておりますので、ちゃんとお答えいたしましたですよ。不意打ちだからと言って、逃げるわけにはいきませぬものね。

〇本チャンの部分よりも、こういうことが記憶に残るのは、世の中は得てしてそういうものだということでありましょう。


<12月3日>(木)

〇来年の政治日程カレンダーを作ろうと、あれこれ情報を集め始めました。


●2021年のイメージ

1月

米上院ジョージア州決選投票(1/5)
大学入試共通テスト(1/16-17)
通常国会が召集(1/18)
バイデン新政権が発足(1/20)
第3次補正予算が成立(月末)

2月

米予算教書(上旬)

3月

東日本大震災から10年(3/11)

令和3年度予算が成立(月末)

5月

G7サミット(英国)→韓国も招待?

6月

イラン大統領選

7月

中国共産党結党100周年(7/23)

東京五輪(7/23-8/8)

8月

パラリンピック(8/24-9/5)

9月

→解散・総選挙?

自民党総裁選挙(9/30まで)

10月

衆議院議員の任期満了(10/21)

G20サミット(伊・ローマ、10/30-31)

11月

COP26(英・グラスゴー、11/1〜11)

APEC首脳会議(ニュージーランド)→オンライン会合で

12月

新語・流行語大賞(12/1)

今年の漢字(12/13)



〇こういう仕事はとにかく始めることが大事で、後からどんどん思いついたことを付け加えていけばいい、というのが長年の経験則です。2021年は改元もなければ米大統領選もない。でも、1年遅れのオリパラが予定されていて、総選挙はその直後でしょうな。与党が勝てば、自民党総裁選挙はないことになる。いや、もちろんコロナの感染次第では、オリパラ自体が中止になるかもしれませんが。


<12月4日>(金)

〇今朝の新聞報道によれば、日中韓首脳会談が年内見送りになるとのこと。議長国の韓国は、ここへきて必死になって日本に秋波を送っているが、悪いけどこっちにその気はないのである。なにしろ在文寅大統領の任期は残り14カ月となった。あとは、レイムダック化するのを生ぬるく見守ってあげればよいだけの話である。

〇いちばん困っているのは金正恩なのである。トランプさんが選挙で負けちゃったので、北朝鮮としてはこれから先、打つ手がない。そこで南に指令を送り、「来年の東京五輪の開会式に俺を出席させろ。そこで朝鮮半島平和プロセスを延長させよう」と言いたいのであろう。日本側としてはそんなの知ったことか、と申し上げたい。

〇菅義偉首相という人は、自分がキッチリ約束を守る人だけに、守らない人が大嫌いである。だからこの件に関する韓国の要請には耳を貸さないだろう。ああ、何とスガスガしい。徴用工問題と拉致問題を片づけてから、一昨日来やがれ!という心情であると拝察する。いくら「二階建て政権」であっても、そこは曲げられませんわな。

〇もちろん日本政府としては、中国の李克強首相ともそれほど親密に対話したいわけではない。来年の中国共産党設立100周年は、東京五輪の開会式と重なることになっている(7月23日)。その日に世界各国の首脳はどっちを見るのだろうか。答えは言うまでもないよねえ。


<12月6日>(日)

〇ハッと気が付いたら、来週は講演会が4つに締め切りが4本。しょうがないからせっせと仕事に精を出す。もちろん腰痛が再発しない程度に、だが。

〇思えば毎年、この時期は似たようなものではなかったか。「土日はいつも競馬」というのは、コロナになってから始まった習慣である。それに今週はG1レースとはいえ、先週のジャパンカップで何だか燃え尽き感がある。

〇ところが今日はNHK杯将棋トーナメントが羽生九段対渡辺名人なのである。3回戦屈指の好カード。古式ゆかしい矢倉戦となり、羽生九段が棒銀から端を狙うというこれまた昭和の頃の戦法。駒損をしながら突き進むのだが、なんだか切れ気味。ああ、またこれで敗れてしまうのではないかと心配していたら、途中で打った4五角が妙手だったのか、はっきり一手勝ちであった。両者力を出し切っての名局。いやー、面白かった。

〇そうなのだ。羽生将棋は派手だから、見ていて面白い。これが藤井二冠となると、序盤から小さなリードを着実に広げていくという「安全勝ち」が多いので、見ていてハラハラするということが少ない。

〇となると、本日行われている竜王戦の七番勝負第5局2日目も気になってくる。ここで負けると豊島竜王の防衛確定だが、羽生九段が勝てば「同じ日に名人と竜王に勝つ」(NHK杯はもちろん別の日に収録している)が成立する。ついつい仕事をしながら局面が気になるのである。

〇困ったもので、競馬に熱中しない週末は将棋が面白かったりする。現在、78手目で局面は豊島竜王が優勢に見えるが、うーん、ここから逆転しないかなあ。


<12月7日>(月)

今年の経済財政白書は11月に公表されたのですね。その昔、「経済白書」といえば夏の季語として歳時記に登録されたそうですが。今年の場合は春先がコロナで大騒ぎだったので、「せめて4-6月期のGDPを見てから書きたい」ということで、大幅に遅れて誕生したそうです。

〇ということで、7-9月期GDPは反映されていないわけですが、特に第1章「感染症流行下の我が国経済の動向」は値打ちがあると思います。コロナに対するわが国初の官庁エコノミストによる分析なわけですからね。

〇ところで白書を書く人たちは、「本当に言いたいことは本文ではなく、囲み記事(コラム)で書く」「特に神経を使うことはフットノートで書く」という習性があります。覚えておいて損はないですよ。そういう意味では、この第1章のコラム「感染症対策と経済活動の両立」は興味深いものがあります。


緊急事態宣言期には、経済社会活動が大幅に制限されて外出者数は減少し、感染者数は減少した。ただ、
外出の抑制によって感染者数が減少したかどうかは検証が必要である。そこで、2020年2月15日から9月
1日のデータを5月31日までの期間とその後の期間における、外出の程度を示すGoogle mobility index(小
売・娯楽施設)と新規感染者数の関係について、グレンジャーの因果性検定を行った。統計的に有意だと確
認できるのは、2月15日から5月31日の間において、新規感染者数の増加/減少は、外出率を低下/上昇
させるという点だけである(10)。

確かに、流行の初期には、強制的な感染予防策を講じなければ死亡者数が急増するとの見方が専門家から示
されたこともあり、諸外国のような強制力はないものの、緊急事態宣言もあり、多くの者が外出を控える選択
をした(11)。結果的には、これまでのところ、年初来の人口10万人対比でみた死亡率は1.2%程度と、欧米諸国
の数十分の1に抑えられている(12)(コラム図1−1)。なお、海外の研究では、移動制限やロックダウンといっ
た公衆衛生政策が死亡率で測った感染症拡大を防ぐのに効果的だったという分析がある一方、感染症の自律的
な収束パターンがみられることから、ロックダウンの効果は過大評価されているという分析もある(13)。

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(10) 全国の新規感染者数(10万人比)とGoogleのモビリティインデックス(1月3日〜2月6日の小売・娯楽施
設における外出者数を基準とした変化率、%)を用いた。期間は2月15日から9月1日の日次データで、第1期(2
月15日から5月31日)と第2期(6月1日から9月1日)に分けて使用した。また、分析においては、緊急事態宣
言下であるかどうかを示すダミー変数と、休祝日を示すダミー変数も用いた。因果関係(グレンジャー検定)の
結果は、第1期では、新規感染者数からモビリティインデックスに向けた関係だけが有意となったが、第2期では
両者に関係性は見られなかった。VAR分析によると、新規感染者数の変化からモビリティインデックスの変化に
向けた関係は、第1期では有意となった。つまり、第1期では、新規感染者数が増加すると、外出率が低下してい
たということになる(付注1-1)。

(11) 令和2年4月15日に、厚生労働省新型コロナクラスター対策班の西浦博教授らの記者会見において、「人と
人の接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナウイルスで死亡」と発表している。この発表は、政
府による公式見解ではないものの、専門知を有する者によって示されたものである。

(12) WHO ”Coronavirus Disease(COVID-2019)Situation Reports”より作成。令和2年8月27日時点。

(13) 移動規制に効果があったとする指摘は、Korevaar, et. al.(2020)や Glaeser, Gorback, and Redding(2020)を参
照。他方、公衆衛生政策を過大評価しているのではないかという指摘は、Atkeson, Kopecky, and Zha(2020)を参照。


〇わざと難しい言い方をしていますが、要するに「統計的に見ると、外出を減らしたから感染者数が減ったというエビデンスはない」と言っておるのです。しかも脚注の(11)では、さりげなく「8割おじさん」がディスられていたりして面白いでしょ? 政府が出す文書って、こういう見方をすると意外と楽しめるという好例です。

〇このコラムはさらにこんなことを言って締めている。


さきの緊急事態宣言は、実施された4、5月を含む四半期データが示唆するところによると、消費だけで、約7.6
兆円(第1−1−11図、年額換算で31兆円、平年対比で10%程度)に上るコストを伴っている。欧米諸国では、
厳しい活動制限を導入しても、感染症による死亡者数が年間死亡者数の1割近くに達してしまった国もある。
元々、我々は新型コロナウイルス感染症のリスクだけでなく、様々な死亡リスクに直面している。例えば、
インフルエンザは例年約1,000万人前後の患者が発生しており、1日当たりの死亡者数は、感染者数がピー
クとなる1、2月には47人程度、年間の死亡率(人口10万対)は2.9程度である(14)。新型コロナウイルス感
染症については、日常の感染症対策(手洗い・マスク・うがい等の実践や三密を避ける行動)を徹底するこ
とで感染拡大の防止を図ることが可能であることを踏まえると、過度に経済活動を規制することなく、流行
を防止できるのではないかとも考えられる。

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(14) さらに、厚生労働省(2020)によると、2019年の死因別死亡率(人口10万対)は、交通事故が3.5、溺死
が6.2、窒息が6.5、転倒・転落・墜落が7.7、自殺が15.7である。


〇経済の専門家が、医療の専門家をどんなふうに見ていたかがご理解いただけるんじゃないかと思います。


<12月8日>(火)

〇珍しい媒体が長文のインタビュー記事を取り上げてくれたのでご紹介まで。


【ジョー・バイデン】吉崎達彦氏が占うバイデン新政権の舵取りと日米関係の今後|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)


〇「注目の人、直撃インタビュー」と題されています。なんでワシが「注目の人」なんだろう。まあ、悪い気はしませんが。

〇今日はセーフハーバーの日。12月14日の選挙人投票日に向けて、各州の選挙人が確定します。この日を過ぎればトランプさんの逆転可能性は消える。それと同時に、アメリカ政治への関心は確実に薄れていくでしょう。

〇だってバイデンさんはそんなに面白い人じゃないんだもん。「わらしべ長者」で「国対族」、などというおなじみの説明はそれなりに受けるのですが、トランプさんのように「何をしでかすかわからない」という緊迫感はありませんからねえ。

〇世界各国にとってはいいことであります。それでもって、ワシの仕事が減るのも良いことだと思います。


<12月9日>(水)

〇本日は東商江戸川支部にて講演会。完全リアルの講演会は、最近では希少価値である。都営新宿線に乗って船堀駅までお出かけ、というのも久しぶりである。

〇タウンホール船堀の会場は、ソーシャルディスタンスに配慮した配置になっていて、だだっ広いところへマスクをされた聴衆が100人弱もご参集いただきました。こんな風に呼んでもらえて、話を聴いてもらえるのだから、ありがたいことであります。エコノミスト冥利につきます。商工会議所主催につき、経済の現場を実感できるのもありがたい。

〇夜は米中関係の研究会へ。こちらも座席はリモート、アクリル板完備、完全換気という今風の研究会なのである。

〇バイデン政権になっても対中強硬姿勢は変わらない、と言ってきたけれども、今週発表の人事を見ているとやっぱダメかなあ、という感じがしてきた。民主党政権になると人権問題にうるさくなる、というのは昔のことであって、今の民主党支持者は関心が気候変動問題に向いている。「リベラル・ホーク」なんてのは昔話になっていて、香港やウイグルなどの人権問題は看過されちゃうのかもしれない。

〇かくしてミシェル・フローノイは危険な介入主義者として国防長官ポストから退けられ、シリアは空爆でOK、と言ってた中央軍司令官が代わりに選ばれた。そもそも他国に介入なんかしているから、民主党はミドルクラスから見放されたのだ、という変な反省をしているらしい。あのトランプさんに圧勝できなかった、ということがトラウマになっている可能性もある。アメリカの孤立主義傾向は、簡単には収まらないと見た方が良さそうだ。

〇ああ忙しい、とボヤいていたら、タクシーの運転手さんに「結構なことではないですか」と言われてしまった。まことに面目なく、返す言葉もない。でも、明日は大阪行きなんですよねえ。しかもダブルヘッダーでありまして。これも冥利に尽きることであります。


<12月10日>(木)

〇どんな仕事でも同じことだと思うが、リピートオーダーをいただけるのは嬉しいものであります。大阪市のクラブ関西さんは、10年くらい連続で「今年最後の午餐会」の講師に不肖かんべえを呼んでくれる。ありがたいことであります。

〇会員制クラブというのも、ご多分に漏れずコロナ下で苦労しておられるようなのだが、考えてみればお客さんが全員「どこのだれ」かがわかっているのだから、万一、クラスターが発生してもちゃんと追跡できる。普通のお店に比べれば、ずっと恵まれた条件といえましょう。逆に言うと、全国の飲食業界の苦しみはいかばかりか。

〇ここのランチは本当においしいのです。2020年はまことにひどい年でありましたが、今年も最後にクラブ関西の午餐会に出られたと思えば、まあ、よかったなあと思えるところである。

〇クラブ関西が終わってから大阪経済大学の北浜キャンパスに移動して、こちらはZoom講演会。大経大の客員教授の仕事は任期4年目なので、今年が最終年度となります。まだレポートの採点が終わっていないのですが、何度も通ったことを懐かしく思い出します。

〇しかしまあ、コロナ下の大学も大変なことになっていて、関係者のご苦労を見ているだけで頭が下がります。いや、学生さんはもっと大変ですよね。こちらはパワポを使いながらお話しする。

〇せっかく大阪に来ているのだから、お久しぶりの友人に会ったりいろいろしたいところながら、ここはじっと我慢でサッサと帰る。新大阪駅の「ぼてじゅう」でビールと豚玉。やっぱお好み焼きは、広島よりも関西ですわな。ガラ空きの新幹線で帰る。


<12月11日>(金)

〇本日は終日在宅勤務。うむ、やはりこれはよろしい。

@通勤しなくていい。

A会社に出かけると、一日中マスクをしてなきゃいかんが、わがオフィスは自分1人だけだから誰に気兼ねすることもない。

Bお昼にクリーニング屋と買い物に行ってきた。

C午後6時にはビールを飲んでいる。

〇しかも今週号の溜池通信がちゃんと出せました。良かった、よかった。今日のは労作だと思います。


<12月14日>(月)

〇本日発表の今年の漢字は「密」でありました。本命が「禍」、対抗が「疫」、穴馬が「密」、大穴が「鬼」なんてふうに事前に予想していましたが、穴馬でありました。というか、「禍」や「疫」はあんまり字ずらを見たくないですよね。「密」はその意味では、書家の書きたい気持ちを誘うような字であったのかもしれません。

〇昨日が締め切りであったはずの英EU交渉は、結局仕切り直しの延長となりました。そりゃあ、そうでしょう。通商交渉は命まで取るようなものじゃないんです。所詮は銭カネの問題でありまして、漁業権に政治生命を懸ける必要はありません。きっと落としどころが見つかるはず。そのために必要なのは冷却期間です。

〇本日発表の日銀短観。結構よい内容なので、拍子抜けいたしました。DIがマイナス圏なのは当然ですが、大企業製造業が前回から+17pとは恐れ入りました。やはり貿易が回復すると、製造業の景況感はてきめんに良くなるのですな。製造装置はコロナで傷ついたわけではなく、人が戻ってくれば生産は再開される。2020年度の想定為替レートは106円79銭。通年だとこのくらいでよいのかなあ。

〇非製造業では「宿泊・飲食サービス」が大マイナスなのですが、通信、情報サービス、小売、建設などがしっぱりプラスなんですね。ただし先行きを楽観しているわけではないので、そこは要注意。それに身近なお店がどんどん閉店になっていくという寂しさは、景況感にかなり影響していると思いますぞ。

〇12月14日はアメリカでは選挙人の投票日。いよいよトランプさんが負けを認めなければならなくなる日となる予定です。とりあえず「下院の決選投票」みたいなことにならなくてよかったと思います。それにしてもアメリカの選挙制度は2世紀以上にわたる歴史の試練を耐えてきているだけあって、意外と強靭なものであります。いろんなことが確認できる日でありました。


<12月15日>(火)

〇このたび渡部恒雄氏が新潮新書から新刊本を出す。『2021年以後の世界秩序』という本です。本日はそのPR用の対談を収録。実は今日はお昼もナベさんと一緒だったのだが、そのまま連れだって神楽坂の新潮社へ。

〇新宿区矢来町の新潮社本社近くには、その昔、大家と呼ばれる作家先生方をカンヅメにしたゲストハウスがあって、古風な和室にこじゃれた庭園でついている。ときどき開高健の霊が出る、という噂もあるのだそうだ。そこで掘りごたつに向かって2人で対談。といっても、いつものようなお話をするばかりなのだが。

〇アメリカウォッチャー業界では、2016年から大異変が起きている。それまでの常識が突如として通用しなくなり、トランプ大統領の誕生とともに皆が右往左往した。それから深く反省し、学習をし直し、難儀を重ねてきたのが業界の今日の姿である。もう昔には戻れないよね、ということでは意見の一致を見ている。

〇本日は選挙人投票の結果も出て、さすがにこれで大統領選挙も終わりだよね、と一同は思っているのだが、世間には「トランプは負けてない」という人たちがいっぱい居るようで、大真面目な抗議を受けたりもする。何よりトランプさん自身もあきらめていない。はてさてどうするのか。

〇これと同じようなことは、たぶん他の世界でも起きているのだろうと思う。チャイナウォッチャーもおそらく同じ。中国共産党の行動原理は、この10年ほどですっかり変わってしまったようだ。なにしろ「韜光養晦」と言っていた人たちが、「戦狼外交」になってしまった。同じ四文字熟語でもえらい違いである。

〇中東も不可思議なことが多過ぎる。アメリカが大使館をエルサレムに移転したのに、それでもイスラエルとUAEやスーダンとの国交正常化が進むとか、年初に国民的英雄のスレイマーニ司令官を爆殺され、年末には核技術者ファクリザデ氏を暗殺され、それでもイランが暴発しないとか。中東専門家たちの常識はどんどん通じなくなっているようなのだが、この分野はまだ変化を認めていないように見える。

〇ということで、2021年以後の世界は今までとはかなり変わったものになりそうだ。年明けになると、きっとまたイアン・ブレマーが「2021年のTop10リスク」を発表するだろうが、ナベさんが書いた「国際情勢を読む20のアングル」は、それよりももちょっと深く切り込んでいると思いますぞ。


<12月16日>(水)

〇某大学教授と某ジャーナリストと3者で密談会合。国家機密が飛び交ったりするので、それはもう大変に重要な会合なのであります。とはいえ、時節柄ランチは気を使わねばならぬということで、六本木某店のテラス席をセットしたのであります。

〇こんな冷え込む日にテラス席で大丈夫だろうか、と心配していたら、そこは資本主義の世の中であるから、暖房器具がそこかしこに用意されているのである。従ってテラス席は人気で、満席なのである。それでは屋内席はどうかというと、そちらも千客万来であって、いささか「密」ではないかという気がする。とはいえ、そこは資本主義の世の中であるから、席数を減らすようなことはしないのである。

〇そういう目で世の中を見回すと、都内の人出はやはり多いのである。地下鉄の駅の中で、お年寄りが杖を突いて難儀しておられるのを見かけて、「おばあちゃん、何もこんな日に出かけなくとも・・・」と思ったのだが、そんなことは他人が知ったこっちゃありませんわな。寒かろうが、感染者数が最高を更新しようが、人にはそれぞれに事情がある。出かけなきゃいけない人は出かけるのである。

〇マスメディアは「自分だけはいい子でありたい!」と思っているようで、ニュース番組の中ではやれ用心しろだの、「勝負の3週間が」だの、5人以上の会合がどうだのと説教くさいことを言う。それって春ごろに出回っていた「自粛警察」とどこが違うのか。できもしないことを言い続けていると、どんどん人心は離れていきますぞ。

〇つまり「短期決戦」のマインドセットはもう通用しなくなっている。これから先のコロナ対策は、それこそ社会全体に「縦深性」を持たせなきゃいけなくて、完全主義や同調圧力はかえって邪魔になる。むしろ手抜きやユーモアの有用性が高まってくる。太平洋戦争の最中も、「うちてしやまん」などと言っていたのは最初の頃だけで、後半になるとどんどん民草は「ダレ」ていた、てな情景は『この世界の片隅で』にも出てくるところである。

〇コロナ危機は長期戦なのだから、無理をしちゃいけません。無理のない程度に我慢をいたしましょう。所詮は自己責任の世の中なのですから。


<12月17日>(木)

〇本日は県立富山中部高校の創設100周年記念があったので、日帰りで富山へ。

〇時節柄、ソーシャルディスタンスはもちろんのこと、君が代も校歌も歌わない式典である。ところが県知事、県議会議長、県教育委員長、富山市長と来賓が4人も祝辞を述べる。ああ、やっぱり富山は諸事、大時代的だなあ、と感じたところで、その後に登場した現役の生徒会長(女性、2年生)の答辞がとてもフレッシュでよかった。未来は明るいのだ、ということを確信する。

〇さらに、本校大先輩である谷内正太郎氏の記念講演が行われる。演題は「コロナ下の国際情勢と日本の進路」。日本外交について触れた後半部分は、実はほかでも聞く機会がある。高校生に向けた前半のメッセージ部分が、とっても直球でお値打ち感あり。果たして彼らにはどんな風に伝わったことか。

〇コロナ下ということで、会場は少人数しか入れず、全校生徒は教室でビデオを通じて聴いている。ちゃんと質問コーナーもあって、高校生たちがそれぞれに今風の問題意識で質問するので、それも大変に興味深いところでありました。

〇考えてみたら、高校3年生は共通テストまであとわずかである。しかも今年の体育大会はコロナ下につき、競技数を減らして工夫して実行したとのこと。いやあ、教育現場は大変だなあ。それでも高校生たちがいそいそと式典のお手伝いをしているのを見たら、やっぱり未来は明るいのではないかと思えてきた。

〇彼らはちっとも悪くはないのに、大変な時代を生かされている。そのことを、意外とあっけらかんと受け止めているように見えた(気のせいかもしれないが)。嘆いたり恨んだり罵りあったりするのは大人たちに任せて、素直な気持ちで明日に向かってほしいと思いました。


<12月20日>(金)

〇最近、ふと覚えた疑問。

〇中国が米国に対して「新型大国関係」を提唱し、「相互に核心的利益を尊重すべき」と申し出たとき、その場合に米国が「人権は我が国にとって核心的利益だ!」と言ったらどうするつもりだったんだろう。おそらく中国は、そんなことを露ほどにも考えずに、主張していたんだろうなあ。

――そもそも自国の「核心的利益」を定義できるという国が、例外的なケースなんじゃないかと思う。ワシは日本の核心的利益は自由貿易だと考えるものであるが、そのことに対する国民的コンセンサスが得られるとはとても思えない。

〇最近はとかく「政策はエビデンスをベースに」なんて賢そうなことを言うけれども、過去に成功した政策はほとんどが提唱者の個性とリンクしていた。政策って、やっぱり人間次第なんじゃないだろうか。個性とか人格の方が、理屈よりもよっぽど大事なことのような気がする。

――「小泉さんの聖域なき構造改革」は、言っていることはファジーだったけど、目指すべき方向ははっきりしていた。だって小泉さんなんだもん。ちょうどウィンストン・チャーチルがそうだったように。

〇ドナルド・トランプさんの能力の最たるものは、「他人を怒らせること」だったのではないだろうか。頭のいい人たちはこぞって彼を嫌う。それを見たトランプ支持層は、ますます彼を応援する。そのことを称して、「トランプは分断を加速した」などとメディアは言うけれども、自分たちの役割に対しては無自覚なようだ。

――「嫌われ上手」というのは、現代における新たな才能であるのかもしれない。わが国においても、そのことを得意とする炎上商法の方が増えているような(例:DHCとか)。

〇依存症になる、というのは当人たちにとって幸せなことなんじゃないだろうか。とりあえず何かに依存している間は、ほかのことを忘れていられる。それをまるで悪いことのように言うのは、楽園追放のような行為ではないだろうか。

――今日も一日、仕事に依存してましたが、週末は競馬です。依存するものがたくさんあるので、ストレスを感じることが少ないです。とりあえずワシの場合は。(その代わり、やるべきことをどんどん後回しにしてしまうけど)


<12月20日>(日)

〇バタバタと届くいろんな仕事の成果物。


●衆議院調査局 Research Bureau 論究 第17号


〇思えばこれに寄稿するのに気を張って、腰痛になってしまったのであった。しかるに重い雑誌なので、持ち歩くのもひと騒動なのである。

〇それ以外にはこんなのもあります。


●経団連タイムズ 講演録「米国大統領選挙の結果と今後の日米関係」


〇この辺はいつもの連載記事


●日刊工業新聞 グローバルの眼「三冠王、イエレン氏のキャリアが語るもの」

●東洋経済オンライン 市場深読み劇場「2021年東京五輪開会式の日が中国に超重要な訳」


〇それから明日の朝は、「モーサテ」に出演します。年内の仕事がちょっとずつ終わりが見えてきた。2020年も残り10日あまり。やり残したことはあと何があったっけ?


<12月21日>(月)

〇年末恒例、財務省の予算説明会に参加する。例年、予算が閣議決定されるその日に、学識者向けとか市場関係者向けとか、いくつかのグループに分けて行われている。とはいえ、今年はご多分に漏れず「コロナ回避」のためにリモート方式で実施。外務省もそうですが、財務省もZoomではなくてTeamsなんですな。

〇財務省の説明はいつも通りなのですが、大きな違いは例年の分厚い資料が印刷されていないこと。そんなもの、このページからダウンロードすればいいわけでありまして、令和3年度予算案の概要税制改正大綱国債発行計画財政投融資計画など、全部誰でも入手できるわけです。紙の無駄を省くという意味では、リモート会議は大いに効果をあげていたようです。

〇もっともリモートで参加していると、「おいおい、今説明しているのはどの資料の何ページなのか?」がときどきわからなくなる。リアルの会合であれば、隣の人の手元を覗けばいいんですけどねえ。そういう点では、リモート会議は隔靴掻痒という点がなくもない。

〇それでも恒例の質疑応答となれば、例年通り活発な議論の応酬となる。いくつか興味深い論点がありました。以下はあくまでも備忘録として。


*当局は、国民に対して財政健全化の必要性をいかにすれば説明できるのか。

*外国人投資家の日本国債の保有率(現在約13%)は高いか、低いか。もっと増やすべきか、それとも低くとどめるべきなのか。

*コロナ対策予算をどのように位置づけるべきか。いずれは元に戻るから一般会計でよいのか、それとも特別会計にすべきなのか。

*国民一人当たり10万円の給付金は貯蓄に回ったのではないか。景気下支えになっていないのではないか。

*「2050年のカーボンニュートラル」という目標に対して、財政はいかにあるべきか。炭素税の可能性はいかに。

*「予備費5兆円」が使い残しとなったときの会計上の処理はどうなるのか。

*国債の増発に伴って短期国債の比率が増えたが、これらはどうやって処理されるのか。


〇他方、不肖かんべえが予算案を見て一番驚いたことは、今年度予算の歳入が当初予想からわずか1割減にとどまっていたこと(前年比▲6.0兆円の57.5兆円)。てっきり3割程度は落ち込むものと思ってました。ところがそうならなかったのは、我が国の歳入に占める消費税の比率が上昇しているから。所得税や法人税が下がっても、消費税は税収が安定しているのです。

〇これは財政の健全性という意味では立派なことだし、昨年の10%への増税の効果が表れているともいえる。とはいえ、逆に財政が持つビルト・イン・スタビライザーの効果は薄れていることになる。困っている人の手におカネはちゃんと届いているのだろうか。この辺はしみじみ難しいところであります。


<12月22日>(火)

〇あらためて最終結果をメモしておきましょう。

●大統領選挙

ジョー・バイデン氏 81,268,867票(51.3%)  ドナルド・トランプ氏 74,216,747票(46.9%) その差4.4%

●上院

民主党48議席、共和党50議席、残り2議席→ジョージア州決選投票で決定(2021/1/5)

●下院

民主党220議席、共和党215議席、その差10議席(後記→5議席の間違い。ああ恥ずかし)

〇下院の結果が大きいですね。民主党から5人(同上→3人)が造反すれば与野党がひっくり返る。こんなに下院の議席差が接近したことは記憶にありません。共和党が二桁議席増になるなんて、まったく想定の範囲外でした。

〇これは第一義的にはトランプさんのお陰なんですが、それでも共和党としてはどこかの時点で「脱・トランプ」を図りたいところではある。「トランプ効果」が、果たして2022年の中間選挙でも威力を発揮するかどうかは、その時になってみなければわからない。人気というのは、移ろいやすいものですから。そして2年は政治の世界ではとてつもなく長い期間である。

〇2020年選挙については、これからもいろんな分析が登場するでしょう。引き続き注意深く見ていくほかはありません。


<12月24日>(木)

〇今宵は家族で地味に過ごすクリスマスイブなのであるが、これはまあ毎年のことである。というか、この時期は例年、仕事に追われていることが多い。その点、今年は比較的、早い時間に締め切りを一本片付けたので気分がよろしい。

〇ということで余裕があるので、年賀状を書いたりする。こんなに早い時期に年賀状を書いたことが近年あっただろうか(いや、ない=反語表現)。書いていて唖然とするのだが、今年はこの人にも、あの人にも会ってない。賀状のみの付き合いになっている人も少なくないのであるが、それにしてもリアルの接触がこんなに減っているとは驚きである。

〇そんなことで、「人に会ってはいけない!」という異例の年が過ぎようとしている。それでも自分や家族がコロナに罹らずに済んだ1年なので、これはもう素直に感謝するほかはない。比較的、アクティブに出歩いている方だと思うのだが、なかなかにワシは悪運強いようである。願わくばこのペースが来年も続いてくれますように。

〇そんなことより、今宵は有馬記念の出馬表が確定となった。今宵はかなり酔っ払っているのであるが、これから検討せねばならない。ああ、なんという至福の時であろうか。読者の皆様もメリークリスマス!


<12月25日>(金)

〇ということで、昨晩から今朝にかけて検討した結果、ラジオ日経のブログに乗った有馬記念の予想はこちらをご参照。不肖かんべえの予測はラッキーライラック。だってF番ですぜ。ラッキーセブンですもん、これは外せないでしょ!

〇ちなみに山崎元さんはラブズオンリーユー、オバゼキ先生はキセキ、編集F氏がクロノジェネシス。適当に散らばっているところが面白い。上海馬券王先生の予想も追って到着するものと思われます。いやあ、楽しみですなあ・・・・と思ったら、その前に明日土曜日のホープフル・ステークス(G1)の予想が載っております。ご参照ください。

〇さる人から、「来年の干支の話をまったく聞かないのだが、どうなっているのだ?」とのご下問アリ。ご心配なく、週明けに出る予定の溜池通信にバッチリ出る予定なのですが、どうにも「大凶」のお御籤みたいな内容なので、世間全般でも取り上げることを躊躇っている様子。まあ、今年があまりにもひどい年だったので、来年に不吉な予想があっても今さら気にするまでもない、という意見もあるのですけれども。

〇今宵はNHKラジオの「ニュースで読み解く2020年」に登場。ところが午後6時から菅義偉首相の記者会見が入ってしまい、そうなるとNHKニュースはそちらを流すことになる。その間、田中均さん、吉見先生と3人で控室で雑談することとあいなったのだが、これが一番の収穫でありましたな。(御厨先生、水無田先生はリモート参加でした)。

〇などなど、年内の義理は義理堅く果たしつつあるのだが、年明けの締め切りラッシュもこれまた壮絶なことになりそうである。まあ、いいか。


<12月27日>(日)

〇有馬記念につき、競馬に専念したい週末なのである。ところが、今年最後の「溜池通信」が明日締め切りなので、仕事が気になって集中できない。われながら本末転倒も甚だしいが、在宅ワークが当たり前になってからというもの、土日のON/OFFが難しくなっているような気がする。

〇さらに困ったことは、会社にいる時間が短くなったことで、最近はついついスケジュール間違いをやらかしてしまう。会合のダブルブッキングとか、「あっ、今日は××があるの忘れてた」とか、今までならけっしてやらなかったようなミスが出るようになった。それで各方面にご迷惑をおかけしております。

〇今まではなるべく、日程関係の資料はなるべくプリントアウトして、順番にファイルしておくことでトラブルを避けていた。ところがそのファイルは会社のデスクに置いてあるわけで、家にいると分からなくなってしまう。リモートワークが多くなったら、自分のスケジュール管理の方法も変えなきゃいけないのだが、30数年間にわたる習性というものはなかなか換えがたく、ついやらかしてしまうのである。

〇仕事の仕方をどんな風に変えていくか、が来年の課題であります。


<12月28日>(月)

〇今年最後の出社で、今年最後の溜池通信を仕上げる。後は過去の書類の整理など。バッサバッサと捨てる。あとは年明けの番組に関するZoom打ち合わせが1件。

〇英国のボリス・ジョンソン首相が急転直下、EUと妥協してFTAを結び、米国のドナルド・トランプ大統領が土壇場で緊急予算にサインする。どちらもサプライズということになっている。ワシ的に言わせてもらえば、どちらも当たり前のことではないか。

〇ジョンソンが本気で「合意なきBrexit」をするはずがなく、トランプが本当に政府閉鎖を許すはずがない。ところが世の中には、本気でハラハラした人が少なくないらしい。彼らのプロレスがまったく理解できていない、ということになる。

〇おそらくジョンソン首相やトランプ大統領のことを、心の底から馬鹿にしているからそういう錯覚をするのであろう。だったら世の中の半数近い人たちが、彼らを支持するはずがないじゃないですか。まあ、そんな風に誤解してくれる人たちがいるから、彼らのギミックはなおも有効ということになるのだろう。

〇ちょっとだけ憎まれ口を叩いてみました。明日はまだ文化放送の出番がございます。


<12月29日>(火)

〇今朝の「くにまる」出演と夕方のTeams会議を終えて、これで本年の仕事は完了である。あとは「静かな年末年始」を迎えるだけである。

〇そのために以下のものを用意してある。


*プレミアムモルツ 6パック

*赤ワイン1本、白ワイン2本 (そんなに高くないやつ)

*大吟醸 双鶴 (広島のお酒。これは期待度大)

*クラウンローヤルリザーブ 1本


〇どこへも出かけないから、飲んだくれの正月になってしまいそうだが、それはそれでよろしいのではないかと。家で飲んでいる分には健康なんで。


<12月30日>(水)

〇静かなお正月の味方はテレビ東京である。まずは孤独のグルメ再放送を見る。前に見たことがあるエピソードも多いのだが、井之頭五郎さんを見るとついチャンネルを変えられなくなる。

〇これで明日は大みそかバージョン。「俺の食事に密はない」のだそうだ。そりゃそうだ。孤独のグルメなんだから。全国の外食産業を盛り上げるために、大いに頑張ってほしい。

〇午後6時からは路線バス対鉄道旅のバージョン7である。頑張れ太川さん。なんでこんなゲームに熱がこもるのであろうか。

〇と思ったら軍曹村井の勝ち。うーん、残念。こんな風にして、一日が過ぎるというのも贅沢な感じである。ありがとうテレ東。


<12月31日>(木)

〇特に名を秘しておきますが、以前にさる大学教授が仲間内の雑談でこんなことを言っていた。

「日本の歴史学者は通史を書いてくれないねえ。ちゃんとした人が書かないから、怪しい人が書く。すると需要があるから、売れてしまう。困ったものだ」

〇ヒャクタさんとかイザワさんとかが書く日本の通史が売れるくらいなら、ちゃんとした学者が書いてくれればいいのに・・・とはワシも賛同するところであるが、中世史の人は中世しか書かないし、近代外交史の人は近代外交史しか書かない。要はタコつぼなんですよ。専門外のことを書くと「オフサイド」にされてしまう。アカデミズムというのは世知辛いところです。

〇その点、磯田道史さんとか呉座勇一さんあたりは、敢えてご自身の専門を越えて書いてくれるところがあって、そういうところが読み物として面白い。業界内ではいろいろ言われているのかもしれないけれども、大いにオフサイドしていただきたいものである。

〇で、なんでそんなことを思い出したかというと、現在『明治維新の意味』(北岡伸一/新潮選書)を読んでおるのです。いや、面白いです。なにしろ幕末を北岡流に読み解いてくれていたりする。さすがに北岡先生に向かって「それ、オフサイドです!」と言う人は居ないのではないか。正月の読書にはたいへんよろしいです。











編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki