●かんべえの不規則発言



2004年3月




<3月1日>(月)

〇円より子先生の研究会に顔を出す。講師は関志雄さん。テーマは人民元。どんな話かは分かっているし、異論もほとんどないんだけど、やっぱり話を聞きたいと思う相手はいるものです。

〇「台湾の件はどう見てますか?」と聞いてみました。そしたら関先生、つい最近、台湾でその手の議論をしたとのこと。その際、「今は中国は途上国だし、一党独裁だけど、今のペースで発展が続けばいずれは台湾に追いつくでしょうし、その頃には一党独裁体制もなくなっているでしょう。そのときに統一を考えればいいのでは?」と述べたのだそうです。すると台湾側からこんな返事が返ってきたとのこと。

「それは必要条件であって十分条件ではない。同じ文化を持ち、同じ経済水準にある国同士が、統一しなかった例はたくさんある。たとえばアメリカとカナダ、豪州とニュージーランド、ドイツとオーストリア」

〇この理屈は面白い。かんべえが知る限り、豪州とニュージーランドにおいては、統一だなんて夢にも考えたことはないはずです。ドイツとオーストリア、というのも面白い。ドイツに併合されていた時期は、オーストリアにとっては明らかに不幸だったように思われます。このコメントには、香港出身の関先生も思わず苦笑いされたのではないでしょうか。

〇もうひとつ、印象に残った発言を記録しておきます。

「私は20年も為替について研究してきましたが、為替にできることはそんなに多くない。せいぜい貿易不均衡を是正するくらいです」

〇たしかに為替については極端な意見が多い。円安にさえすれば、景気は良くなり、デフレはインフレになり、日本の国際競争力は回復し、株価も上昇し、ひいては不良債権問題も解決する、などという極端な論者が(誰とは言いませんが)おりますからね。本来、経済政策においては「一石X鳥」などということはあり得ないはずなのに、こと為替の話になると「ドル落城」論から「人民元切り上げ論」まで、極論が多くなるのはわが国経済論壇の悪しき風習ではないかと思います。


<3月2日>(火)

○ 政治家の妻もいろいろある。常に夫を立てるローラ・ブッシュ、わが道を行くヒラリー・クリントン、表には出てこないジュディス・スタインバーグ(ディーンの妻)など。ところがケリー夫人は、それらすべてと違う新しいタイプらしい。なにしろ、「自分の日程を持ち、ワシントンに自前のスタッフを持ち、必要とあれば自家用飛行機を使う」んだから普通じゃない。読者から、この人について知りたい、というお問い合わせがあったので、ちょちょいと調べてみた。ちなみに公式サイトは下記。

http://www.johnkerry.com/about_teresa/  

○ JFKことJohn Forbes Kerryの奥さんは、THKことTeresa Heinz Kerryという。テレサ、ではなくテレイザ、と発音するらしい。1938年10月5日生まれの天秤座、夫よりも5歳年上である。ご主人は1943年12月11日生まれの射手座。おやおや、ワシの家と逆のパターンではないか。念のために言っておくが、ウチはいざ知らず、星占いの世界においては、射手座と天秤座は相性がまぁまぁいいことになっている。

○仮にケリー夫人がファーストレディになるとすると、いろんなことで「史上初」が誕生する。

●テレイザはモザンビークで、ポルトガル人の医師の家庭に生まれている。第2次大戦後初の「外国生まれのファーストレディ」となる。

●夫婦揃って二度目の結婚、という大統領夫妻も初めてのケースとなる。

●来年1月にホワイトハウスに入るとしたら、彼女は66歳のファーストレディとなり、これは史上最高齢である。現ブッシュ大統領のお母様、バーバラ・ブッシュさんの印象が強いけど、彼女は見かけほど老けてはおらず(失礼)、1989年当時は64歳だった。

●ポルトガル語と英語は当然として、ほかにフランス語など、合計5ヶ国語を話せるファーストレディ、というのもおそらく史上初だろう。

○テレイザはスイスのジュネーブ大学に留学中に、ジョン・ハインツ氏(1938年10月23日生まれの天秤座)と知り合って、1966年にゴールインする。ハインツ氏は71年に下院議員、77年以後は上院議員となる。共和党の穏健派議員として活躍。彼女のワシントン暮らしも71年から足掛け30年以上の長きにわたる。

○銀婚式をあげた直後、ハインツ氏は1991年に飛行機事故で死亡してしまう。補欠選挙に指し、共和党は彼女に出馬を促した。亭主が死んだら弔い合戦、というのはわが国だけのことではないのである。しかし彼女は固辞。そして12億ドルの基金を持つハインツ財団の理事長として、慈善事業にいそしむことを選択する。余談ながら、共和党はこのときの補欠選挙に元司法長官のクリフォードを立てるが、これがウォフォードという無名の民主党候補者に敗れて大事件になる。これがブッシュ父の落選への伏線になるのだが、それは別のお話。

○その後、未亡人となったテレイザは、同じジョンという名の上院議員と出会う。そしてケリーと出会ったのは、1992年のリオの地球サミットだったという話が一般に流布している。これは出来すぎで、いかにも民主党支持層を狙ったストーリーという感じがする。と思ったら、早速誰かが茶々を入れたらしく、公式HPの紹介欄では「1990年のアースディに、初めて夫から紹介された」とある。あくまで「環境問題が二人を結びつけた」ことにしたいらしい。

○とはいうものの、だ。ケリーは1985年以来上院議員である。ハインツとは同じイェール大学卒で、同じ「スカル・アンド・ボーンズ」という学内組織のメンバーである。党は違うし、6年の年齢差があるとはいうものの、ハインツと交流がなかったはずがない。また、狭いワシントンのことだから、少なくともどっかのパーティーで挨拶くらいはしているはずである。察するに双方ともに2度目の結婚であり、「出会い」に関しては多少の美化は必要だったと見える。これを「経歴詐称」と突ついてみるのも一興だが、考えてみたら誰だって「奥さんとの馴れ初めは?」と聞かれたら多少の脚色はするものであろう。この辺は大目に見てあげよう。

○てなわけで、お二人は1995年、マサチューセッツ州のリゾート島で彼女が持つ別荘で挙式した。ジョンの2人の娘と、テレイザの3人の息子がその場に立ち会ったことは言うまでもない。

○ここで、彼女の猛語録をいくつかご紹介しよう。ネタ元は”Kerry's gold”という英国発の記事である。

http://observer.guardian.co.uk/comment/story/0,6903,1130604,00.html  

●In doing so, Mrs Heinz Kerry is not afraid to speak her mind. With the perspective of an admiring foreigner, she often speaks of the demise of America's reputation abroad. 'I understand why so many of our friends around the world are so mad at us,' she said at a recent event. 'We have let them down. In a democracy, the one thing that cannot be done is to destroy its trust, its hope, its idealism. This administration is the most cynical, the most venal, the most Machiavellian administration in my 32 years in Washington.'

〇なかなかに小気味のいいブッシュ批判である。この手の発言が、アドリブでぽんぽん飛び出してくるのが彼女の真骨頂である。ブッシュ政権を「マキャベリ的」とこき下ろすあたり、ちょっと欧州人的なセンスを感じます。

●And there were incidents that alarmed her husband's handlers. Asked if he still had nightmares of combat, Kerry, a decorated Vietnam veteran, said he hadn't. His wife said otherwise, and mimicked him having a flashback. 'Down, down, down!' she screamed. And there were minor breaches of Beltway etiquette. In an Elle magazine profile, she enthused about her Botox treatments, the benefits of green tea and her late husband, John Heinz III, to whom she was still referring as 'my husband'.

〇この話がスゴイ。「ベトナムの悪夢を見るか」と聞かれて、「いや全然」と答えている亭主の傍から、「あんた見てるじゃない。寝言で『伏せろ、伏せろ、伏せろ!』って言ってるわ」とやったのである。女性雑誌の取材に答えて、お肌のシワ取りにボトックス使ってますのよ、だなんて、これはもう中村うさぎ先生並み。ハインツ氏の事を、今でも「ウチの主人」と呼んでいるというのも痛快な話かもしれない。

●She was reported as fidgeting while Senator Kerry made speeches, of interrupting him, of failing to gaze at him adoringly in the accepted manner. On the subject of marital fidelity, she said: 'I used to say to my husband, my late husband, "If you ever get something, I'll maim you. I won't kill you. I'll maim you".' And asked whether she would take her husband's name, she shot back: 'Politically, it's going to be Teresa Heinz Kerry, but I don't give a shit, you know? There are other things to worry about.' And she added: 'Swearing is a good way to relieve tension'.

〇あたしね、主人に、といって死んだ方の主人になんですけどね、言ってやったんですの。「あんたが浮気か何かしたらね、不具にしてやるからね。殺しはしないわよ。でも不具にしてやるわ」――これも強烈。

●The joke in Republican circles goes that every time the couple, who are sometimes known as 'Cash and Kerry', retire to bed, Kerry is fundraising. In fact, under campaign finance law, individual donations are capped at $2,000. When the Kerry campaign was floundering last autumn. it was Kerry who mortgaged his Boston townhouse to raise money and has said he won't spend any Heinz money on a campaign - and she says she won't offer it - unless the Bush campaign engages in 'character assassination'.

〇えげつないジョークのネタにされているわけだが、問題は彼女の財産の行方である。選挙に際し、「ハインツのカネは使わない」とケリーは宣言しているし、彼女もそうはしないと言っている。ただし「ブッシュが個人攻撃をしないならね」と釘をさしている。これは賢明な態度というべきだろう。おそらく法律的にもハインツのカネは使えない。(でも、きっと抜け道を見つけ出すだろうけどね)。

〇民主党の選挙参謀たちは、彼女が「資産なのか負債なのか」判じかねているという。夫の堅苦しいイメージを和らげてくれるかもしれず、あまりにも現代的かつお上品で、「シャネルのヒールが高すぎて、中西部の専業主婦たちには受けない」恐れもある。それでも、アイオワ州党員集会での勝利には、彼女の活躍が大きかったと見られており、「教育や環境に関心の高い女性を動員できる要素」として、期待がかかっているという。

〇とまあ、こんな感じだね。思わず長くなってしまったぜ。


<3月3日>(水)

〇本日、さる筋からの依頼で、スーパーチューズデーの結果に対するコメントを書きました。以下のとおりです。

●ケリーの圧勝である。そもそもこれまでの戦いが19勝2敗(サウスカロライナとオクラホマ)であり、勝負はついていたのであるが、スーパーチューズデ―が9勝1敗(ヴァーモント)となれば、誰が見ても民主党にはケリー以外の候補者はいない。

●民主党予備選挙は、昨年5月のキックオフの時点では意気消沈していたが、序盤はディーン旋風が吹き荒れ、中盤ではケリー対エドワーズの論戦に見ごたえがあった。全体として成功といっていい。特に先月のエドワーズ候補の奮戦振りは、@予備選へのマスコミ報道を増やし、A政策論争を充実させ、Bケリー候補を鍛える機会を与えてきた。

●エドワーズは重点攻略州のジョージアで41%を獲得し、ケリーに6p差まで詰め寄った。しかるに3月2日に求められていたのは「奇跡的な勝利」であり、これは満足できる結果ではない。テキサス、フロリダなどが開く3月9日まで戦いを継続するかもしれないが、彼にとっての予備選は終わったと言ってよいだろう。
The Iowa Electronic Marketsでは、エドワーズ株が0.004ドルにまで暴落し、ケリー株が0.968ドルにまで上昇している。(日本時間3月3日午後4時現在)

追記:その後、正式に戦線離脱を宣言することが判明。

●3月2日の結果を一言であらわすならば、民主党員の「ABB」(Anybody But  Bush)感情が、ケリーに思いを託したといえるだろう。民主党にとって重要なオハイオ州で52%、メリーランド州で59%といった数字も、先行きに明るさを感じさせる。

●しかるに予備選挙というものは、本来がコアな党員が参加するものであり、この中で高い数字を取ったからといって「ケリーはブッシュの強敵」というのは早計である。たとえばNY州の予備選挙には65万7000人程度が参加しているが、2000年選挙を見ると同州の投票者は675万人である。すなわち、本選挙ではこの10倍の有権者が投票する。「反ブッシュ」感情を抱いている人だけでなく、政治に関心のない人たちをも味方につけなければならない。

●92年のクリントンは、まだ42歳と若かったこともあり、派手なスキャンダル報道やバスに乗った選挙運動、果ては「深夜放送でサックスを吹く」といったパフォーマンスなどで、普段は政治に関心のない層にまで幅広く浸透した。同様なことがケリーに期待できるかと言えば、それは難しそうだ。ケリーはすでに60歳であり、「東部の名門出身」「説教くさい演説」「フランス製のネクタイ」(ディーンのスーツよりも高そう!)などの条件を考えると、庶民的な人気が全米に浸透するとはとても思えない。

●投票率は共和党員の方が高いので、11月2日を民主党が制するためには相当な「風」を吹かさなければならない。資金面でも大差がついており、現職ブッシュの壁は厚い。現時点で「ケリー政権誕生」の確率は10〜20%程度であろうと考える次第である。

〇今宵は夕刊フジさんと飲んでおりましたが、今日の紙面の見出しは「ケリー候補に」。これじゃあ売れ残るかもしれないね、と言ったら笑ってました。日本風に言えば、ワイドショーと女性週刊誌とスポーツ新聞が取り上げるような人物でないと、勝利は覚束ない。そして残念ながら、ケリーさんはそういうタイプの人ではない。


<3月4日>(木)

〇みずほインベスターズ証券にて、米大統領選の近況に関して説明する。スーパーチューズデーの直後ということで、反響はよろしい。質問もたくさん頂戴したのでうれしい。終わってから、一尾さんや佐藤さんたちと軽く打ち上げ。思えばこれも、幻の名番組『ルック@マーケット』の取り持つご縁であったりして。そういえば内山さん、どうしているかなあ。

〇さて、最新号のForeign Affairs誌が読みどころ満載です。

〇まず、ロバート・ケーガンの"America's Crisis of Legitimacy"は、イラク戦争の大義についての論考。アメリカの正当性を決めるのは、国連でも国際社会でもなくて欧州である、という決め付けがすごい。たとえ中国やロシアが反対していても(日本などは言及もされない)、欧州がオッケーといえば正当性はできる。が、欧州はイラク戦争の大義を認めない。1999年のコソボでは、安保理決議なしの軍事介入を決めたくせに。

〇・・・・という論旨は、2002年の"Of Paradise and power"の続編といったところ。この議論は最終的に、「米国は正当性を必要としており、欧州はそれを与えることができる。だが、してくれない。フーンだ」で終わってしまう。どうしたケーガン。ブラッセルで暮らして欧州の悪口を言っているうちに、ネオコンの敗北を認めるに至ったのか。ちょっと心配になる。

〇それでもケーガンらしい論考は随所に見られる。今日の自由主義は、「国家主権の自由」を認めるか、それとも「個人の人権や自由」を認めるかで引き裂かれるという。前者を優先するならば、たとえフセインや金正日の体制であっても内政不干渉でなければならない。だが、後者も重く響く。両者が重なったときにどちらを選択するか。こういうとき、アメリカは遠慮なく後者を取る。「ウェストファリア体制がナンボのもんじゃい。民主主義を世界に広げるのだ」と迷いがない。しかるに欧州は悩まざるを得ない。彼らはカント的な永久平和を望んでおり、そのためにEUなどという「国家は国境を捨てられるか」という実験をしているのだから。なるほど。

〇欧州がアメリカに正当性を与えなくなったのは、ソ連の脅威がなくなったからであるとケーガンは指摘する。これと正反対の状況が生じているのが極東だ。北朝鮮の脅威は1990年代になって明確なものになった。つまり極東は今こそ冷戦真っ盛りなのである。だから日本政府が米国にべったりであっても、感情的な反発はさておいて、いざとなれば日本はアメリカに正当性を与えざるを得ない。この対比が面白いですな。

〇もうひとつ、読んでぶっ飛んだのが"Trouble in Taiwan"という論文だ。アメリカの親中派の学者が書いているらしいが、「台湾問題で中国を刺激するな。ブッシュよ、今の調子でちょうどいい。陳水扁に無茶するなと言え」というのである。何なんだこれは。

〇この論文によれば、「中国共産党は台湾を失うことを避けるためなら、西側との関係を犠牲にすることも辞さない」という。アメリカと事を構えて経済面の被害を受けることよりも、領土を失うことで政治と社会の安定を失う方が怖いのだとか。まったく、想像を絶する発想じゃのう。もちろんアメリカは、台湾を支援しないことで自らの評判を落としてはならないが、なにより台湾を巡る戦争を避けることが最重要課題であるという。こういう現実論もあるんでしょうかねえ。

〇ほかにもアイケンベリーによるさまざまな「帝国論」への書評など、面白そうな記事が詰まっている。時間をかけて楽しみたいものです。


<3月5日>(金)

〇昨日ご紹介した「フォーリン・アフェアーズ」の台湾論文は、最新号の『論座』に翻訳が出ておりますね。「台湾をめぐる米中衝突を避けるには」という邦題が付いています。読み返してみてあらためて感じるのは、「やっぱり倒錯した議論だな」ということです。邦訳についている「小見出し」を並べただけでも、だいたいの趣旨は読み取れると思う。

攻勢に打って出た台湾
中国にとってなぜ台湾は重要か
中台紛争のシナリオ
北京を安心させるとともに、抑止力の強化を
台湾の独立は非現実的だ
住民投票に込められた政治的思惑
アメリカの選択

〇この論文は、北京サイドによる「頼むから分かってくれ〜」という渾身の叫びなのかもしれません。つまり中国共産党が、親中派のアメリカ人に書かせたものであって、今年は軍事行動もしない、言葉の戦争もしない。でもいろんな手法で、自分たちの主張を通そうとする努力の一端なのかも。でも、こんな文章を読んだら、書いた人の意図はさておいて、ますます台湾びいきが増えてしまうんじゃないだろうか。

〇来週の3月8日(月)、外国人記者クラブで金美齢さんが台湾の現状について語ることになっています。不肖かんべえが介添え人を務めます。


<3月6〜7日>(土〜日)

〇本日、テレビ朝日の『サンデープロジェクト』に出てまいりました。ここでは番組の裏話などをご紹介してしまいましょう。

〇話が来たのは金曜日の夕方。でもって、土曜日の夕方に打ち合わせに出かけた。「六本木ヒルズに来てください」といわれて、よく確認もせずに森タワーの方に到着してしまう。馬鹿ですねえ。そこからテレビ朝日のスタジオに行こうと思うと、電話ではとても説明できないくらいに面倒くさいということで、結局、スタッフの人が救出に来てくれるまで「エイリアンの蜘蛛」の下で待つ。「これだから六本木ヒルズは・・・」などと言うなかれ。悪いのはワシの方である。

〇20分遅刻して、テレ朝の会議室に到着。制作スタッフ一同でVTRを見ながら、ああでもない、こうでもないという話を延々とやる。この日のテーマは「ブッシュ対反ブッシュ」で、下取材も受けているし、中身的にはほとんど異存なし。だったらすぐに終わりそうなものなのだけど、「ケリーは何年上院議員をやっているんだっけ?」などと、細かい点もチェックする。その上で、意外ときっちりと台本を作る。さすがは地上波の仕事だなあと変なところで感心する。

「サンプロ」は、前半の10時台が田原総一朗さんのコーナーで、後半の11時台が特集となっている。アメリカ風にいうと、前半は"Meet the Press"ないしは"This Week"で、後半は"60 Minutes"となる。申し訳ないことに、サンプロは前半しか見ないことが多い。だって将棋の時間を見てしまうんだもん。ちなみに番組の取材をしている高世仁氏も将棋ファンで、ビデオに撮って見ているとのこと。先日取材を受けている最中、「こないだの羽生対先崎戦、先崎は不出来でしたよねえ」てなことで盛り上がったことがある。

〇さて、本日は午前9時前にスタジオ入り。昨晩あらためて完成したVTRを見て、台本を最終チェックするのだが、これまた非常に細かい。10秒単位で話の組み立てを想定する。前半の田原さんの部分は時間が伸びたり縮んだりするので、裏方としては神経を使う。レギュラーメンバーから「不規則質問」が飛び出すと、一気に時間がなくなってしまう。とはいえ、それがこの番組の「らしい」ところなのだが。

〇10時50分頃になって、初めてスタジオ入り。ビックリしたことに、とても静かなのである。本当に収録中なのかと思うくらい。田原さんの声はかならずしも大きくはないし、本日のゲストの八城氏も声は穏やかである。カメラとマイクを通さずに見ていると、なんだかとても静かな「討論」である。たまに大きな声を出すのは金子勝先生くらい。これが番組を見ると、侃侃諤諤に映るのだろう。

〇11時10分になって後半の始まり。「よろしくお願いしま〜す」と声を上げて宮田さんの隣に座る。ふと見れば、目の前に居並ぶレギュラー陣は、紳助さんの向こうに田原、高野、財部、金子と、思い切り「濃い」メンツが揃っている。なおかつ、皆さん息が合っていて、空気がとても「練れて」いる感じ。大丈夫か、俺。

〇VTRが始まってケリー氏が登場すると、紳助さんと田原さんから、ほぼ同時に「この人は顔が悪いよねえ」という声がもれた。個人的にはとっても受けた。だって、それが先週号の結論なんだもん。さらに受けたのは、金子先生が「だいたいブッシュはねえ」と話し始めたところで、次のVTRが走り出してしまったこと。「いけね。俺、相手がブッシュだと我を忘れちゃうんだよ」と反省しておられたが、これは私が時間を10秒程度余したのが遠因。めずらしいことに、今日は前半が短めに終わっていたのだ。

〇VTRが流れている最中に、「佐藤観樹議員逮捕」のテロップが流れる。今日の前半のテーマである。思わず「来た〜」という声がもれる。先日の「自民党幹事長に安倍晋三氏」のときもそうだったが、「サンプロ」をやっている時間にこの手の政治ニュースを流すのはとっても効果的なのかもしれない。視聴率は10%くらいらしいけど、好きな人はみんな見ているからなあ。

〇てなことで、あっという間に終わってしまいました。お陰で本日、将棋トーナメントの羽生対丸山は見逃したが、スーパー競馬の弥生賞にはちゃんと間に合った。日曜日はやっぱりこうでなくては。


<3月8日>(月)

〇今日の緊張感に比べれば、サンプロ出演なんてどうってことはありませんでしたな。不肖かんべえ、本日は外国人記者クラブ(FCCJ)のスピーカーを務めました。以下はそのご案内。

What's Happening in Taiwan?
Mar 8  2004  12:00 pm

Professional Luncheon:
Alice Mei-ling King,
Taiwan National Policy Advisor;
Tatsuhiko Yoshizaki,
Vice President, Nissho Iwai Research Institute. Ltd.

(12:00-14:00 Monday, March 8, the speech and Q & A will be in English and Japanese with English interpretation)

In the wake of the Taiwanese Presidential election and referendum, both scheduled for March 20, we are holding a mini panel discussion from 12:00, Monday, March 8. Representing the pro-Taiwan camp, Ms. Alice Mei-ling King, who fled to Japan a long time ago from Nationalist rule (and is now a TV celebrity in Japan and Taiwan) will be attending. To examine the events from a Japanese perspective, Mr. Tatsuhiko Yoshizaki, analyst at Nissho Iwai's think tank, will also join us.

Fresh back from joining the "human chain" campaign involving some 1.5 million people that took place on 28 February, Ms. Kim will tell us why and how things are heated and what course Taiwan will take here after vis-a-vis the mainland, Japan and the U.S. Given that the election and the referendum will be a pivotal event in the East Asian security equation, the panel discussion will be a one-stop shop and a definite must for those covering anything related to the region.

〇上の紹介文を読んで、"Alice Mei-ling King"が金美齢さんだと一発で分かった人はあまりいなかったようだ。そりゃ確かに"TV celebrity in Japan and Taiwan"とは書いてあるけど、括弧して"Kin Bi-Rei"とでも書いておけば、もっと大勢来てくれたかもしれません。ちなみにこの名前は、ご本人が留学時代につけたもので、とても懐かしいそうだ。そしたらイタリア人記者が「アリーチェ」と呼びかけたりして、もう大受け状態。最後は「アリーチェ・イン・大和ランド」という新しい名前も呈せられました。

〇さて、本日の予定は金美齢さんのスピーチが30分、その後を私めが10分で"To examine the events from a Japanese perspective"という役回りになっている。とはいえ、脇役でもエライコトである。なにしろFCCJですから。たしか田中角栄は、この場所で首相の座を棒に振ったはず。最近はボブ・サップも出ているとか。しかもショッキングなことに、今日の昼食会をアレンジした谷口智彦さんが急用で来れなくなったという。うーむ、答えられない質問が出たら、全部、谷口さんに振るつもりだったのに。困ったこまった。

〇金美齢さんは、英語で公式のスピーチをするのは初めてだと言うのですが、なにしろ留学経験がある人なので、英語は日本語と遜色がないほどに流暢なのである。ホントに聞きほれてしまいました。しかも内容は、ここに書いてあるような話です。加えて話術がすごい。話が進むにつれて、聴衆が「うるうる状態」になっていくのが手にとるように分かりました。ああ、これでこの後、自分にマイクが回ってさえ来なければ・・・・と思う私を誰が責められよう。

〇むごいことに、会場の空気がほどよく湿った状態で、私に順番が回ってきた。こうなったら短く切り上げるしかありません。ということで、簡単にまとめたのが次の内容です。

(1)最近の日本では台湾へのシンパシーがとても強い。でも、そういう話はAliceは嫌いだろうから、リアルポリティークの話をする。
(2)台湾の人たちが望んでいるのは「現状維持」だ。だが、弱者による現状維持政策は現状を保障しない。強者である中国が現状の変更を望んでいるからだ。
(3)来たる台湾総統選挙は、台湾独立に向けてのラストチャンスであろう。陳水扁総統の再選なら、新憲法制定で独立に向かう。国民党政権誕生の場合は、いずれ大陸との統一に向かうことになるだろう。
(4)中台統一が行われた場合、@東アジアにあまりにも強力な国家が誕生する、A太平洋の軍事バランスが変わる、B世界のIT産業の重要な部分が北京のコントロール下に置かれる、などの事態が予想される。いずれも日本の国益にはならない。
(5)従って、自分は陳水扁総統の再選と台湾の独立を支持する。

〇われながら「応援演説」みたいでしたが、お陰さまで好評だったようです。質問もたくさん頂戴しました。考えてみたら、総統選の投票日まではもう2週間を切っている。関心もじょじょに高まってきているんじゃないだろうか。どうも2004年は、台湾とアメリカという2つのPresidential Raceをウォッチすることで終始しています。

〇スピーカーを務めたご褒美に、FCCJのHonorary Memberを期間限定で頂戴しました。これ、とっても嬉しい。実は前から欲しかったのだ。有楽町はお台場からでもわりと近いというのがありがたい。


<3月9日>(火)

〇思えば今年は、年頭からヤマを張ってしまっております。すなわち、2004年は経済の心配はいらないから、とにかく2つのPresidential Raceをみておけばいいと。すなわち台湾とアメリカであります。両方についての世論調査をちょっと見てみましょう。

〇まず台湾。らくちんさんが最新情勢を載せてくれています。これを見ると「2・28」に行った人間の鎖が功を奏したか、陳呂ペアが初めて支持率で連宋ペアを上回った。「2・28」が動員した人数に関しては、150万人と220万人の2つの報道があった。これは事前登録した人が150万人で、当日になったらとにかく人が押し寄せてきたので、それを大きく上回ったということらしい。もちろん多少の誇張は含まれているでしょうが。

〇これだけ盛り上がったら、選挙も勝てるに違いないという説と、選挙の前に達成感が出てしまったから危ないという説がある。いずれにせよ決定権を握っているのは、「まだ決めていない」約2割の有権者である。世界中、先進国はどこでもそうだが、無党派層は投票日の3日前くらいになってから、「さーて、誰にしようか」と考え始める。だから直前の動向がとても重要だということになる。

〇たとえば選挙の3日前に、ブッシュ対ケリーで台湾問題の論戦があったりすると、一気にどちらかに流れが傾くかもしれない。投票日まで残り10日だが、ここまで来ると「失言」や「不規則発言」が命取りになるかもしれません。

〇アメリカの方では、ギャラップ社最新データではブッシュ支持率が49%と再び低下した。この数字をどう見るかですが、不支持が5割を越えたことがまだ1度もないというのは、やはりブッシュ人気の底がたさを物語っているように思います。

もうひとつのデータが面白くて、こちらはブッシュ対ケリーだと45対50でケリーが5Pリードだけど、ネーダーを入れるとブッシュ45、ケリー47、ネーダー5となって、リードが縮まってしまう。ネーダーは本当にお邪魔虫ですな。

〇サンプロの打ち合わせの席で、「ネーダーは土井たか子ですよ。ブッシュ・小泉対ケリー・鳩山の対決を見ていられなくなったんでしょう」てな話をしていたら、スタッフの方が真面目な顔で、「そういう話は本番ではしないでくださいね。抗議の電話がすごいですから」と。やっぱり地上波はツライね。明日は朝日ニュースターの『ニュースの深層』に出て、アメリカ大統領選挙を語る予定です。さて、こちらはどんな感じでしょう。


<3月10日>(水)

〇今週のかんべえはとっても忙しい。今宵はこんなもので我慢してくれい。

●頑張れ、ジャパネットたかた http://japanet.lalaspa.net/index2.html 

〇手抜きモードにて御免。


<3月11日>(木)

「さあ、テレビの前の皆さん!本日ご紹介するのは、ジャパネットたかたの顧客名簿です!」

〇というネタの続きはどなたか考えてください。本日も手抜きモードの不規則発言である。

〇今週末の「マネー&ワールド」を収録。お相手は日経新聞社の滝田洋一さん。円高の反転はどうの、グリーンスパン発言の真意はどうの、過剰流動性が生じているんではないのか、てな話。本日受けた締めのセリフは、「実体経済に対して、為替にできることは少ない。でも、投資家の首を締めることはできる」。105円近辺に行ったとき、「ワタシのドル預金、どうしてくれるのよ!」という人がそこらじゅうにいたものね。そういえば、今夜は伊藤師匠と一緒だったし、なんだか一日中為替談義をしていたような。

〇あとひと頑張り、ということで「ユンケル黄帝ゴールド」というものを買ってみた。ドリンク剤を買うのって、なんか恥ずかしいなあ。自分がオヤジであることを自覚する一瞬である。あらためて効能書きを見ると、「イカリソウ流エキス」「ニンジン流エキス」などはさておき、「マムシの皮と内臓を取り除いたものを乾燥し、アルコールで有効成分を抽出したもの」などが入っている。急に気持ちが悪くなったりして。しかるにドリンク剤の本質とは、おそらく「無水カフェイン50mg」にあると見た。だったらコーヒー飲めば、という気もするのだが。

〇今週号の溜池通信がちゃんと仕上がっていたら、「ユンケルパワー」ということになります。さて、どうでしょう。


<3月12日>(金)

〇スペインでテロが発生して世界同時株安。韓国では大統領の弾劾訴追。いろんなことが起きますねえ。

〇某社の研究会に呼ばれて、アメリカ大統領選挙の話をしてきました。「溜池通信、いつも見ています」という人が多かったですね。こういう人たちが相手だと、話すのが楽です。国際情勢への関心は高いです。

〇夜はまた別筋の研究会。日本の石油安全保障を語るという趣旨だったんですが、そもそも今の日本には「山師もいなければ、国士もいない」。たとえばアザデガン油田、実績を作るために無理やり決めたんじゃないだろうか。産業再生機構とカネボウとの関係にちょっと似ているような。2時間議論して、いちばん共感したのは、「日の丸油田を確保するよりも、海軍力を強化した方がいいんじゃないか?」という意見でしたな。

〇それにしても長い1週間でした。どこへ行っても「サンプロ見ましたよ」と言われていたような。


<3月13〜14日>(土〜日)

〇土曜日、床屋に出かける。最後に行ったのが昨年末なので、非常に伸びてしまった。どのくらい伸びたかというと、月曜日に金美齢さんに会ったときに、こんなことを言われたのである。「昨日のサンプロ見たわよ。あなた、ハッキリものを言うから偉いわね。でも、髪形が変」

〇私には髪型などというものはない。ただ髪があるだけである。髪があるだけでも幸いなことで、周囲の同世代人の多くが薄くなったり白くなったりしている。その私も、配偶者に言わせると昔に比べるとはるかに寂しくなっているらしい。床屋のおばちゃんにさりげなく意見を求めると、まったくの同意見であり、整髪料を1度も使ったことがない私に向かって、少しは髪に栄養を与えろと言う。しかるに具体的な手入れの方法について、説明を聞いているうちに気持ちが萎えた。そんな面倒なことが、できますかいな。

〇夜、町内会の防犯部の打ち上げ会。ギャンブルの話で盛り上がっているうちに、電機屋店を経営するYさんが衝撃の告白をした。「ワシは昔、宝くじで100万円当てたことがある」。もちろんジャンボ宝くじなどはない時代で、当時のYさんの月給は7万円だったそうだ。今なら1000万円くらいの値打ちがあったかもしれない。そのお金が何に消えたかは気になるところだが、大方はYさんが独立するための軍資金になったそうだ。つまり、善用されたことになる。

〇Yさんは高らかに宣言する。「いまだにカミさんにはナイショなのだ」。非難の声と「時効だ」という声が交錯するが、すぐに「あんなこと言ってて、本当はバレてるに違いない」ということでコンセンサスが形成される。たしかに、飲んでて町内の人に話してしまうことを、奥様に隠しとおせるはずがない。

〇ところで、Yさんが日本勧業銀行(当時)に換金に行った際、その周囲には「宝くじ買うよ」という怪しげな男たちがたむろしていたという。たとえば100万円の当たり籤であれば、105万円出してもいいから買いたいという人がいるわけだ。理由は税金。たしか『マルサの女』でも使われていたエピソードである。しかし、誰と分からない人から105万円もらうよりは、日本勧業銀行に100万円もらう方が安心というものです。

〇そういえば確定申告、いよいよ明日が締め切りなので、日曜の午前中に計算する。簡単に終わったつもりでいたが、配偶者からの指摘でお馬鹿な間違いが判明する。今日がホワイトデーだったことをすっかり放念していたが、これでは家庭内の評判が低下するばかりである。

(追記:その後、完全に訂正してもらってしまった。このツケは高いと思われ)


<3月15日>(月)

〇そういえばちょうど1年前の今ごろは、"Beware the Ides of March!"なんてことを言っておりました。イラク戦争の開戦からそろそろ1年。月日がたつのは早いものです。

〇ところで皆様ご存知の上海馬券王先生が、会社の出張で今週末は台湾に行くとのこと。台湾在住のらくちんさんと合流して、何をしようかと二人で楽しげに相談している様子。ちょっと羨ましい。総統選挙の当日の台北はどんな様子でしょうか。お二人のレポートを期待すること切なるものがあります。

〇でもって、上海馬券王先生からは、『イノセンス』を見よとの熱いメッセージを頂戴しました。以下、オタクパワー全開でございます。

(前略)押井守の「イノセンス」を見に行ったのです。なにせあの「GHOST IN THE SHELL」というオタクアニメの続編である。10日も海外にいる間に上映打ち切りになるかもという不安が結構切実だったりしたわけなのであります。事実、桜木町のシネコンに行くと、「クイール」などという、あざとい臭いがする動物映画は満員札止め状態であるにもかかわらず、こちらの方は随分座席に余裕があったのであった。ううう、やっぱり。

で、見た結論から言うと。。。

凄い!凄いのだ!これは事件なのだ。革命なのだ!かんべえさん、「ANIMATRIX」なんぞで喜んでいる場合ではありませんぞ!あんたもすぐ映画館に走りなさい!ぼやぼやしてると終わっちゃうかもしれないぞ。指輪物語のときも同じような事言ったけど、あれは後回しでいい。こっちの方が凄いから!

とにかく、CG3D映像を使いまくりのアニメなのか特撮映画なのかよくわからない作りになっているんだけど、これが表現としてかつてなく凄まじいインパクトをもたらしているのだ。あたしゃのけぞったね。度肝を抜かれたね。特に近未来の中華街で行われる正月祭りのシーン等は、確実にその衝撃の度合いでブレードランナーを軽く上回っているのです。ブレードランナーが確立した方法論とか世界観の圧倒的影響下にあって、これまでいろいろな作品が作られてきたけど、どれもその衝撃、斬新さと言う意味で本家を上回ることが出来なかった。でも、この作品はそれをやっちゃってる。これがどんなに凄いことか。。。

恐らくこの作品は世界中のマニアどもに熱狂的に迎えられるでしょう。日本が唯一競争力を持つと言われるアニメとゲームのブランド力を恐らく一挙に高め確定的なものにするでしょう。でも、セールスでは、正直言ってメジャーにはなれないと思います。

@基本的に世界観とか人間関係とかは前作を見ていないと分かりづらい。
A仮に前作見てても、世界観がこてこてのサイバーパンクで、人間が体を機械に置き換えている近未来という前提は、一般大衆にはぶっ飛びすぎ。
B登場人物の台詞が饒舌で理屈っぽいのは押井作品の常だけど、今回特に哲学書からの引用が多く、これが一聴しただけでは分かりづらい。
C一般社会(特にキリスト教社会)の「良識」を無視するかのような背徳的な倫理観に満ち溢れていて、アカデミー賞アニメ部門の受賞と言うのは絶望的。(人間にも、動物にも、サイボーグにも、そして機械にも生命というものがあって、これには優劣とか優先順位なぞ無いのだというのが結局この作品のテーマなんだけど、これは受け入れられないだろうな)
D猟奇シーンとか暴力シーンとか、かなり抑制してるんだけど、表現が切れすぎていてそれでもショッキング。

うーん、要は「敷居が高い」と言うことなんだけど、これだけネガティヴな要素があるとなぁ。押井守にも、宮崎駿的ないい意味での俗っぽさがあればいいんだけど。全共闘出身の元インテリ左翼と、組合出身の元叩き上げ左翼の差なのかねえ。惜しいというか、名前の通り「押井」のだ。

でも、これは映画として、恐らく歴史に残るインパクトを持っていることは間違いなく、単なるマニアのフェイバリットアイテムにするのはあまりにもったいないのだ。コッポラの「地獄の黙示録」とか、キューブリックの「2001年」とか、一部の人から徹底的に嫌われたんだけど、その圧倒的な表現で、映画史上「不朽の名作」と扱われている作品はいくつかあって、この作品もそれに匹敵すると僕は思ってるんですが、残念ながら押井君はマスのレベルでの知名度が低く、このままでは、「隠れた名作」で終わっちゃう懸念が大。

〇実はかんべえ、先週、この映画を見ておるのです。ところがご指摘どおり、前作を見ていないために、いまひとつ乗り切れなかった。そして柏市でも映画館はガラガラでした。見終わった最初の感想は、すごいものを作ったようだが、これが受けるかなあ・・・・とりあえず近いうちに上海馬券王先生から、この映画に関する長文の批評が届くだろうけれども、それは極端な賛辞か、あるいは悪魔も落涙するような酷評か、そのいずれかであって、是々非々の議論ではあるまいということでした。

〇上のコメントにあるとおり、「イノセンス」というタイトルには、「人間にも、動物にも、サイボーグにも、そして機械にも生命というものがあって」という意味が込められています。手塚治虫の世界で育ったわれわれにとっては、この世界観は馴染み深いものですが、おそらく欧米的なヒューマニズムとはまったく相容れないものであろうと思います。アメリカ人がこの映画を見ると、「いったいどこがイノセンスなんだ?」と深く悩んでしまうのではないでしょうか。

〇ヴィスコンティの『イノセンス』は、愛に迷った大人がイノセントな子供を殺してしまう話でした。押井守の『イノセンス』は、ちょうどその逆の構造になっています。おそらくここに、欧米文化と日本文化の対照性がある。ではオタク文化はこういうギャップを乗り越えられるのだろうか。もし、この映画がアメリカのマニアたちを熱狂させるようであれば、これはすごいことであるといわざるを得ません。


<3月16日>(火)

というわけで、明日と言うかもう今日なんだけど、台湾・香港に逝って来ます。

今週は、ケンで済ますにはあまりに面白すぎるレースが多いので、出走メンバーが確定しないんですがまずは登録メンバーで予想をしておきます。

☆台湾プレジデントカップ

◎コンチネンタルラヴァー
○インディペンデンス
注コリアンロイヤー

上流階級の支持を得たウォーアドミラルと一般大衆の熱い支持を受けたシービスケットのマッチレースにも匹敵する全世界注目のこのレース。一般では草の根派ジョッキー陳水扁優位の予想もありますが、大陸系保守派ジョッキー連戦の手腕も侮りがたく、人気との度合いでこちらがお買い得と言う気もいたします。侮りがたいのは、先のコリアンカップで、政治的な裁定により出走停止処分を受けたコリアンロイヤー騎乗の盧武鉉がここ台湾で同情票を集め一気にブレークする気配を見せていることで。。。。

って、違うじゃん、これ!

〇と、いきなり上海馬券王先生のフライングで始まってしまった不規則発言である。今宵のかんべえは、「台頭する中国といかに共存すべきか」という議論を延々3時間半もやってきました。

〇台湾問題について、中国側の見方を聞いたのが勉強になりました。今回の総統選挙に際し、中国はアメリカや日本を利用することで、この問題を「国際化」しているわけで、その点では従来のラインから一歩退いている。これは江沢民時代には考えられなかったことで、胡錦濤政権の現実路線の表れとみることができる。逆に台湾側は公民投票をやるということで、すでに「現状維持」から一歩踏み出しているので、中国側は守勢に立っているのだと。(ホンマかいな?)

〇そのために中国は、六カ国協議をフルに利用した。2月末にセットしたのは、3月の総統選に焦点を合わせて、少しでもアメリカに恩を売ろうという作戦。この次はたぶん5月20日の台湾総統就任式に焦点をあわせ、その直前くらいにセットしてくるのであろう。昔から中国はアメリカに対峙するとき、朝鮮半島と台湾をセットで考える。かつて毛沢東がニクソンと会談したとき、「われわれが朝鮮戦争に参戦したのは、台湾を守るためだった」ともらしたそうだ。こういう発想は覚えておいて損はない。逆にいえば、中国はその時期を過ぎてしまえば、六カ国協議に対する意欲を失ってしまうのかも。

〇その他、中国経済の過熱や人民元問題、日中摩擦、米国の視点など、話し出すときりがないわけなのだけど、なんかこう最後にひとつ乗り切れないのは、「日本にとって望ましい日中関係」というものが、私的にはよく分からないのだ。望ましい日米関係や望ましい日韓関係は容易に想像がつくけれども、たとえば中国に新幹線を売ることは本当に日本の利益かどうか。あるいは中国がいう歴史問題が解決することは望ましいけれども、そのために日本としてはどんな妥協が必要なのか。・・・などと考え始めると収拾がつかなくなる。

〇重要なのは「国益」の定義。リアルポリティークで行くのか、それとも何らかの価値を反映させるのか。「ゲームのルール」を定めぬままに、個別の外交を論じることには限界があるなと感じました。つまり日本としてのドクトリンの不在。この議論をすっ飛ばしてしまうのは、いかにも間が抜けた感じがします。

〇ここで話は急に変わって、「エクスプロア中国」で連載中の谷口智彦さんのエッセイがそろそろ佳境に入っています。ちょうど完結したところの、「彼も相当村上だね」というお話は、現在の中国の状況を語るとっても「へえ〜」な内容です。

http://www.nicchu.com/feature/taniguchi/article.php3?rskai=71 

〇中国で大人気の「村上」って誰のことだと思います? きっと「へえ〜」と思われること間違いなしですぞ。


<3月17日>(水)

〇本日発売の週刊文春が発行差し止めになったそうです。読んでみましたが、どうってことのない記事ですけどね。これが「プライバシー侵害」で「出版禁止の仮処分」になるという地裁の決定は理解に苦しみます。おそらく裁判官は、ふだんから週刊誌を読まない人なのでしょう。

〇裁判官の常識が世間の常識からかけ離れていることは、「司法制度改革」が政治課題になることからも分かります。たとえば刑事事件には、民間人を「裁判員」にするという話があったりする。でも、あたしゃ裁判に参加したくはないし、司法制度改革なんぞしなくて済むならその方がいいと思う。だから裁判官よ、頼むからしっかりしてくれ、と言いたい。

〇かつてアメリカ人に、陪審員になったことがあるか、と聞いたことがある。そんなウザイこと、やりまへんがな、という返事でした。あれは地区の裁判所からアンケートが回ってくるらしいのだが、そこで、「感情的になりやすい」、「おしゃべりで口が軽い」、「日によって気分が変わりやすい」などの項目に印をつけておくと、そういう人は陪審員には不適格ということで、お呼びがかからない仕組みになっているのだと。

〇察するに、裁判員制度を導入すると、日本でも同様なノウハウはあっという間に普及するだろう。結果として裁判員になるのは、なりたくて仕方のない、変な人たちばかりになるだろう。それこそどこの裁判所も「怒れる男たち」であふれ返るのではあるまいか。結果として、ますます「普通の人」から司法が離れていきそうな気がする。

〇それにしても今朝の新聞には笑ってしまった。「関係者によると、週刊文春の同号には、長女の私生活にかかわる記事が掲載されていたという」(日経新聞)と書いてあるのだが、同じ紙面には週刊文春の半五段広告にデカデカと、「田中真紀子長女わずか一年で離婚」とある。変なの。


<3月18日>(木)

〇気がついてみたら、米民主党予備選挙は3月16日のイリノイ州予備選で、ケリー候補が過半数の代議員を確保していた。必要な代議員は2162人だが、すでに2250人。つまり「当確」から「当選」になった。それでも今週末は、ワイオミング州とアラスカ州で民主党コーカスがあったりして。盛り上がらないでしょうなあ。

〇このタイミングで、クリントンがケリーを支持した模様。要は2004年はあんまりやる気がしないってことでしょうか。前大統領がそれでは、お金の集まり方もちょっと心配ですぞ。久々に見ると、ハワード・ディーンもすっかり落ち着いた表情をしているし、しみじみ消化試合です。この先、7月の党大会まで、いったい何をして過ごすんでしょう。

〇逆に明後日に投票日を控えて、切羽詰っているのが台湾総統選挙。これはらくちんさんからの情報。

【政治】投票日迫る、各界大物が態度を告白

総統選投票日まであと48時間と迫り、各界の著名人が次々と自己の支持態度を表明している。4年前に陳水扁政権下で国政顧問団のメンバーとなった中央研究院の李遠哲院長と長栄グループ張栄発総裁の態度が最も注目を浴びている。李氏は変わらず陳氏支持を強調。張氏及び台塑グループの王永慶董事長は、最後の段階まで表明を保留すると述べた。[中国時報18日]

〇明日、誰の口からどんな発言が飛び出すかで、大勢が決するのかもしれません。


<3月19日>(金)

〇投票日の前日が鍵、などと言っていたら、陳水扁総統が銃撃されてしまいました。本当にビックリしました。

〇これが明日の投票にどう影響するかですが、普通に考えれば投票率が上がって、陳水扁有利になるでしょう。もうひとつ、現状維持派の有権者の間では、「総統選挙には投票するが、公民投票は棄権する」行動が多いと見られていたけれども、この分だと公民投票の投票率も上がるような気がします。中国にとってはうれしくないニュースでしょうが。

〇現地の映像を見ると、台南市は民進党が優勢な地域だけあって、沿道は文字通りグリーン一色に染まっています。あの熱狂の中で犯行に及ぶとは、狙撃犯はとてつもないリスクを冒したことになります。では、「ジャッカル」や「ゴルゴ13」のような凄腕の犯行かといえば、プロというものはそんな危ない橋は渡るものではないので、むしろ「オズワルド」タイプの犯人を想像します。やはり選挙を前にして、異常な緊張が流れていたのが導火線になったのではないでしょうか。

〇しかし、現地ではいろんな情報が錯綜しているでしょう。「中国主犯説」と「自作自演説」の両方が流れていておかしくはない。そして真相はなかなか表には出てこない。明日の選挙がどんな結果になるにせよ、その後の展開が悩ましいことになる。仮に連戦勝利になったとしても、これでは中台間の対話を再開することはためらわれるかもしれません。

〇中国側の出方がさらに難しい。さらにアメリカ政府がどんなコメントを出すか(あるいは黙殺するか)も。それから一応、小泉さんも同じ立場です。ここで何か言えば、確実に選挙の結果に影響する。そして台湾の人たちは、国際社会からはいつも冷たい扱いをされることに慣れてしまっている。でも本当ならここで、「台湾の民主主義を守るためにも、選挙の成功を祈る」というメッセージを伝えるべきだと思います。

〇ところでさすがは産経新聞。今宵はこのニュースの号外を出していましたね。もうひとつ、帰りの電車の中で夕刊フジを読んでたら、歳川隆雄さんが連載コラムで台湾問題を取り上げていた。はて、どっかで見たような文章、と思ったら、ちゃんとワシの名前がreferされていた。でも、「ブルー(連)がグリーン(陳)を破る」という最後の予言は、この事件がきっかけとなって外れるのではないでしょうか。


(追記)以下のニュースを聞いて、ちょっと安心しました。台湾の両党は健全です。

総統府は非常時の対応を討議する「国家安全会議」を招集、社会混乱を防ぐ対策を協議し始めた。全土で警備を強化し犯人逮捕を急ぐ。国家安全局は対立候補の連戦・国民党主席(67)の警備を強化した。

 19日夜、両陣営は全土で大規模な集会を計画していたが「社会の安全を保つため」(連氏)すべての選挙活動を中止した。民進党は「このような暴力を決して許さない」とのコメントを発表した。
2004/03/19, 21:59, 日経速報ニュース)


<3月20日>(土)

〇こんな日に限って、うちのスカパーの機械が壊れてしまい、CNNが見られないのである。台湾総統選の開票速報を見たいのに。結局、当てになるのはこれなのであった。

●2ちゃんねる台湾板 http://academy2.2ch.net/taiwan/ 

〇なんと夕方5時に始まったスレが、7時には1000に達してしまった。現地の参加者が多いので、新しい情報がドンドン入る。でもって、こんなのを見てしまうと興奮するではないか。

電視台 @陳呂 得票率 A連宋 得票率 (@−A) 開票総数
台視(TTV) 4,703,574 49.92% 4,718,913 50.08% -15,339 9,422,487
中視(CTV) 5,223,126 49.89% 5,246,972 50.11% -23,846 10,470,098
華視(CTS) 5,083,561 49.87% 5,110,497 50.13% -26,936 10,194,058
公視(PTS) 3,001,666 49.90% 3,013,929 50.10% -12,263 6,015,595
民視(FTV) 4,839,097 50.29% 4,783,397 49.71% 55,700 9,622,494
TVBS 4,747,784 49.91% 4,765,666 50.09% -17,882 9,513,450
ETTV 4,499,398 48.13% 4,849,833 51.87% -350,435 9,349,231
−−−−
平均 4,585,458 49.70% 4,641,315 50.30% -55,857 9,226,773

○2ちゃんねるの台湾板は、ふだんは参加者が少なくて、とってもマッタ〜リしたところなのだが、今夜の勢いはすごい。

○ということで、開票が気になってしょうがないぞ。最後の勝利は確信しているが、頑張れグリーン!あ、そうか今夜は公民投票の開票もあるんだな。とりあえずここまで。(7:30pm)


●ヤフー台湾総統選挙 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/taiwan_presidential_election/ 

○うひゃあ、3万票差ですか。本当に紙一重の勝利でした。とにかく陳水扁総統の再選、おめでとう。よかった、よかった。

○無効票が相当数あることを考えると、これはもう2000年のフロリダみたいな遺恨が残ることは確実ですね。CNNのニュースでは、"Call for recount in Taiwan vote"という懐かしい表現が使われていました。第2期の陳水扁政権は、弱い政権になるのかもしれません。少なくとも、「さあ、独立だ」とは言いにくいでしょう。ま、それも12月の立法院選挙の結果次第ですが。

○公民投票の投票率も5割前後で、成立するかどうかギリギリの水準らしい。本当にきわどい結果となりました。変な話ですが、昨日の銃弾がなければ、どうなっていたか。

○あんまり趣味のよくないジョークですが、「大統領」はよく銃弾に倒れるが、「総統」は強い。ヒトラーもデスラーも、暗殺は成功しませんでしたからね。(10:10pm)


<3月21日>(日)

○一夜明けた台湾は、まだまだ興奮と緊張が続いているようです。台湾つれづれでは、時々刻々とした状況を伝えてくれています。(そういえばらくちんさん、上海馬券王先生をアテンドしていただき、まことにありがとうございました)。

○台湾の選挙結果は絶妙なバランス感覚を示したような気がします。事前には「公民投票で賛成票を投じ、総統選挙で国民党を選ぶ」可能性が指摘されていましたが、ちょうどその正反対の結果。つまり公民投票は投票率45%で未成立とし、総統選挙は僅差で民進党を選びました。結果論ですが、逆の場合に比べるとはるかに良かったと思います。

○これだけ僅差だと、陳水扁政権としても「さあ独立だ」とは言えない。中国も連戦勝利の方が良かっただろうけれども、公民投票の不成立で一息つける。結果として「現状維持」になる。そして敗れた国民党では、確実に世代交代が起きる。連戦や宋楚瑜はこれで2回連続で負けたことになるので、さすがに引退でしょう。そうなると国民党は、馬英九台北市長などの若手の時代になる。逆に民進党は、陳水扁以外の顔ぶれが今ひとつなので、2008年の選挙はまたまたいい勝負になるでしょう。台湾の二大政党制の発展にとっては、悪くないシナリオだと思います。

○それでは台湾独立への道は断たれたのか。おそらく5月の就任演説では、陳水扁さんはどっちとも取れるような言い方をするのでしょう。その時期が近づく頃には、中国が全力で対米工作をして台湾に圧力をかけさせるのでしょう。第3回目の六カ国協議は、そのための絶好の足場だということになります(当欄の3月16日分参照)。しかし12月に行われる立法院選挙において、民進党が李登輝さん率いる台連と合わせて、過半数を取れれば話は変わってくる。グリーンチームとしては、独立へのゴーサインが出ることになる。

○陳水扁が独立を口にし出したのは、台湾人のアイデンティティに訴えて選挙戦を有利にするためだという見方があります。その見方はたぶん当たっていない。独立を目指す気持ちは本物だと思います。なぜなら「現状維持」はサステナブルではないから。強者である中国が現状の変化を望み、弱者である台湾が現状維持を目指すというのは明らかに無理がある。そしてまた、「中華民国」というフィクションは、ほとんど賞味期限が切れかけている。そのことは民主化が進むにつれて、どんどん明らかになっていくことだと思う。

○もっとも喜んでばかりはいられない。まずは騒ぎが月曜日には収まること、選挙が数え直しなどで泥沼化(フロリダ化?)しないこと、銃撃犯がちゃんと見つかること、などなど。「初期の民主主義は得てして失敗する」という法則が、台湾に当てはまらないことを祈りましょう。


<3月22日>(月)

○今回の台湾総統選挙、いろいろデータも充実してきたので、かんべえ流に分析してみたいと思います。

○まず、「験票」の騒ぎについて。これは1週間くらいで収まるだろうと思います。それで陳水扁総統の再選という現状を追認するでしょう。そのように考えるのは、以下の3つの理由からです。

○その1。台湾の命綱は「民主主義」であり、民主主義の混乱はそのまま台湾の安全保障を危うくします。仮に台湾で、2000年のフロリダ再集計のようなドタバタ騒ぎを1ヶ月も続ければ、それこそ何が起きるかわからない。今だって、国民党の支持者に混じって、中国の工作員が騒ぎを大きくしようとしているかもしれません。2000年のアメリカを反面教師として、「台湾の民主化はそこまで成熟したか」と周囲の国を唸らせるくらいでないと困ります。

○その2。上のような理屈を、台湾のマスコミはよくわきまえている。下のURLに台湾各紙の論調が記されていますが、実に賢明です。最も野党寄りといわれる聯合報でさえ、「新総統の2つの大きな課題は、社会の分裂を修復し、憲政の方向を確立することだ」と題する社説を掲載しています。同紙はまた、敗北した野党にも問題は多いと指摘しており、与野党双方の指導者に、協力して社会の融和を実現することを求めました。ともあれ、これだけの事態に際してマスコミが党派的になっていない、ということは高く評価することができるでしょう。

http://nna.asia.ne.jp.edgesuite.net/free/tokuhou/040211_tpe/01_10/c09.html 

○その3。これはやや酷な言い方になりますが、国民党支持者にとって連戦候補は「どうしても総統にしたい人」ではないということです。連戦は2000年選挙では、23.1%の得票で3位に終わっている。そして2004年も負けた。つまり、「連戦連敗」なのです。(彼には連勝という名の弟がいるというのは、ウソのような本当の話)。テレビで見ていても、今ひとつパッとしないし、話もそんなに上手ではない。台湾では、「李登輝は国民党をつぶすために、連戦を自分の後継者に選んだ」と勘ぐる向きもあるくらいで、それが当たらずと言えども遠からずではないかと思えてしまうほどである。支持者としては、ほかに国民党をまとめられる人がいないから担いでいるわけで、この点は2000年米大統領選のゴア候補とはちょっと事情が違う。

○といった事情を勘案すると、政情が安定化するまでにはそんなに時間はかからないと想像します。

○次に、開票結果を見てみます。案の定、今回の陳水扁の勝利は「疑惑の銃弾のお陰で得た、首の皮一枚の勝利」であることがよく分かります。地域別に見ると、陳呂ペアは銃撃事件があった台南市では57.8%、台南県では実に64.8%を獲得しています。もともと民進党の地盤であったとは言うものの、2000年選挙では台南市は46.1%、台南県では53.8%に過ぎなかったことを思えば、やはり同情票は無視できず、出来過ぎの結果といえるでしょう。両方合わせると陳呂ペア67万票対連宋ペア41万票なので、ここだけでも2万9000票の票差は稼いでしまったのではないでしょうか。

○それでは「疑惑の銃弾」の正体は何だったのか。もちろん「自作自演」説はあり得ない。(まさか陳水扁が「俺を撃て」と命じるとは思えない)。また十分に勝てると踏んでいた野党側が、投票日の前日に暗殺を目指すはずもない。いちばんありそうな筋書きは、総統選をネタにしたトトカルチョで、一発大番狂わせを起こしてやろうと目論んだヤクザが、本当に殺してしまわないように22口径で狙った、というものです。これはまったくの当て推量ですけど、おそらく選挙で大儲けした人はいるんじゃないでしょうか。

○さて、同情票による「追い風参考記録」であることは認めるにしても、民進党が全体で50.11%の得票を得たことは、かつてない大勝利でした。なにしろ民進党は、これまで4割の壁に苦しんできた。陳水扁が2000年選挙で獲得したのは39.3%で、2001年の立法院選挙でも民進党の得票は36.57%でした。加えて1994年に陳水扁が台北市長に当選したときも、得票は43.67%に過ぎず、保守分裂に乗じて勝ったようなものでした。

○ところが2004年総統選においては、全部の県市において民進党は2000年総統選の得票を上回りました。以前は南部でしか勝てなかったものが、中部でも勝ちを拾い、なおかつ北部における負けを最小限にとどめることができた。これは今後の選挙を考える上でも、心強いデータといえるでしょう。

○どうも今回の選挙は、民進党の奇跡的な勝利というよりも、歴史的な役割を終えた国民党が負けるべくして負けた、というように思えてなりません。それでは国民党に明日はないのかというと、もちろんそんなことはなくて、たとえば今回の選挙においては、台北市では89万票を取って民進党の69万票を大きくリードしている。やはり馬英九台北市長を中心に団結すれば、2008年選挙での国民党カムバックの可能性はけっして低くない。ただしそのためには、連戦、宋楚瑜のオールドコンビを追い出して、古い体質と訣別する必要がある。それは台湾の民主主義においては、悪くないシナリオではないかと思うのです。

○もっと言うと、かんべえは以前から、民進党の人たちが細川政権当時の日本新党と重なって仕方がないのである。日本の場合、1994年に自社さ連立が成立して自民党の復権を許してしまったが、あそこでもうしばらく自民党を野党にしておけば、いろんな改革が進んでいただろうし、自民党もその方が良くなったんじゃないかと思っている。台湾のグリーンチームには、もうちょっと頑張ってほしいと思うのだ。


<3月23日>(火)

○台湾の株価が気になる一日です。指数については下記をご参照。6000pを割り込むようなら警戒警報ですな。

http://finance.yahoo.com/q/bc?s=^TWII&t=5d 

○昨日の分を書いてから気づいたんですが、連戦と国民党はいいけれども、宋楚瑜と親民党にとっては、ここで逆転をあきらめた瞬間に政治生命が終わってしまうのですね。連戦の場合は、ここは「良き敗者」になることで、台湾の民主主義を救うというのはそれなりにカッコいいし、そういうヒロイズムがない人ではないでしょう。が、2000年には票数で連戦を圧倒しながら、敢えて副総統候補に回った宋楚瑜としては、それじゃあとても納得がいかないし、彼の個人政党である親民党の支持者たちも困ってしまう。仮に連戦が敗北宣言をしたいと思っても、すぐにはできないという構図があるような気がします。

○かんべえが勝手に「日本のエドワーズ」にしてしまった、民主党の樽床伸二衆議院議員と一緒に飲みましょうということになった。本当ならば個室のある店がいいんだろうなあ、などと思ったものの、最後は面倒くさくなっていつもの「和喜」へ。2つしかない座敷の卓の片方を占領していたら、カウンター席ではお馴染み日経新聞のT記者が、某要人をつかまえてインタビュー中であった。たちまち合流。20代の頃から通っている狭い店ですが、It's a small world.の典型でした。今宵はタケノコとアジの天ぷらが好評でしたな。


<3月24日>(水)

○パレスチナ情勢に鑑みて、『世界の紛争地ジョーク集』(早坂隆/中公新書ラクレ)からご紹介。

あるとき、ユダヤ人で満員のバスが崖から落ちて、乗客全員が死亡した。それを2人のパレスチナ人が見ていたが、そのうちの1人がやがて大粒の涙を流し始めた。その様子を見て、もう一人が聞いた。

「どうして泣いているんだい?乗客はユダヤ人だ。別にいいじゃないか」

涙をぬぐいながら、彼は言った。

「でも、俺は見たんだ」
「何を?」
「席に1つ、空きがあった」

○パレスチナ側だけでなく、ユダヤ側からも1題。

あるイスラエル兵たちの会話。

「アラブ人たちは俺たちが出身国に帰るまで、闘争を止めないと言っているぜ」
「それで世界中が俺たちを支持するわけか」


<3月25日>(木)

○今ごろになって『攻殻機動隊』(士郎正宗/講談社)を読んでいたりして。ふーん、『イノセンス』の元ネタはここにあったんだー。バトゥのキャラって、ずいぶん映画と違うじゃん。少佐って、素子っていったのかー、などと初歩的なことに感心する。やっぱりビデオも借りてこないと駄目かしらん。それとも、こういう絵に「萌え」ないワタシは縁なき衆生そのものかも。

○昨日紹介した『世界の紛争地ジョーク集』(早坂隆/中公新書ラクレ)は、ヤバイ地域ばかりを選んで取材しているジャーナリストが、足で稼いだジョーク集である。先進国とは違う暖かさやほのぼの感があるのだけれど、最後は「おもしろうて、やがて悲しき」世界が見えてくる。ちょっとお薦めかも。

○唐突ながら、『織田信長の経営塾』(北見昌朗/講談社)をご恵送いただく。コンサルタントが、織田信長をネタにしながら中小企業経営者に経営を説く、という趣向で、一昔前なら「プレジデント」誌が得意としていたであろう企画である。「やり手の営業部長が女子社員と不倫しまして」てな悩みに対して、信長殿がお答えくださるのだからありがたい。「信賞必罰というのは、上に厳しく、下に優しくなければいけない」のだそうだ。御意。

○信長殿は自らの周りを務める「母衣」衆を20人選ぶときに、わざと19人だけ選んで最後の1人は「該当者なし」にした。部下たちに、「そのうち俺も」と競わせるためだ。そうかと思うと、柴田勝家に越前を与えるときに「2、3の所領は空けておけ。忠節に励むものに恩賞として与える予定地だと宣伝せよ」と伝えているのだとか。ご褒美を与えるときは、おいしいところを残しておいて、部下の目に見えるようにしておく。こんな「小技」を使っていたのですね、信長殿は。


<3月26日>(金)

○むむむ、雑誌原稿の締め切りが1日過ぎてしまった。弱ったのう。仕方がない、仕事するか。

○というだけだと寂しいから、台湾から帰国した上海馬券王先生からの私信を公開しておくか。

追伸:胡宮博物館というのは凄いですな。展示しているものの質が上海博物館何ぞとは雲泥の差です。私のような素人にも明白であると言うことはこれは本当に凄い逸品の数々。あれが毛沢東の手に渡っていたら多分全部壊されていたはずで、それを考えるとやはり共産主義(というか教条的原理主義)というのは、本当にろくでもないものであることが分かります。

追伸:士朗正宗のあの原作はねぇ、あれはあたしゃつまらんと思うんです。人に理解してもらおうと言う努力があまりに足りんのです。映画の方をビデオかなんかで見てください。その後で「イノセンス」をどう感じるかもう一度聞いてみたいですな。


<3月27日>(土)

○昨晩、頑張ったので、いちおう某月刊誌の原稿は上がり。ついでに今朝は夕刊フジの書評も片付ける。ということで、今週末は心安らかになった。さあ、明日は高松宮記念だ!

○天気がよろしい。桜も日当たりがいいところでは三分咲きといったところ。昼過ぎに我孫子市のスーパーに出かけたところ、湯原昌幸が「歌とサイン会」をやっていた。このスーパー、かなり大きめなので、この手の歌手の「営業」をよく見かける。ここで頑張らないと、いよいよ後はテレビショッピングに出るしかない、てな風情の元有名人が多い。死ぬまで歌手とか芸人を続けるのは、こうしてみると辛いものである。ああ、サラリーマンで良かった。

○ビデオショップで『攻殻機動隊』を探すも見つからず。『8時だよ!全員集合!』のDVDが売り切れになっているので笑ってしまった。多くの人がいかりやさんの死を悼んでいるが、かんべえはこの話題に乗れないでいる。なんとなれば、その昔の富山県ではTBSが入らなかったのだ。だからドリフもレコード大賞も見る機会がなかった。TBS系列の「とやまチューリップテレビ」ができたのは、ごく最近のことである。

○「小さい頃、TBSが見られなかった」というのは、かんべえと同世代の富山県人(上海馬券王先生やこの人など)には共通の現象である。だからウルトラマンだって、再放送で見たのである。これを告白するのは、とっても恥ずかしい。地方出身者は、この手の悔いをいっぱい抱えているものなのだ。


<3月28日>(日)

○このホームページに、どんな人がリンクを張っているかはときどきチェックします。昔は伊藤師匠とか岡本さん、あるいはらくちんさんといった個人HPがほとんどだったのですが、最近はブログが増えましたねえ。ワシはブログを見ていると、「なんでこんな面倒なことをしてるんだろう?」と思ってしまうのだけど、これははっきり世代が古いんだろうと思う。そりゃそうだ。こちとら1999年からやっておるのだ。

○ホームページは一人で作れるが、ブログは読者の協力が必要になる。たとえばですな、ジョン・ケリーのブログとディーンのブログ(先日からDemocracy for Americaに改題)を比べると、いまだに後者の方が参加者が多くて盛り上がっているように見える。ディーンは熱狂的なファンが多いけど、ケリーの支持者は「反ブッシュ」による消去法の選択だからでしょう。

http://blog.johnkerry.com/ (ケリーのブログ)

http://www.blogforamerica.com/ (ディーンのブログ)

○日本の場合、政治家がHPを持つのがやっと当たり前になったけど、まだブログは見かけませんね。支持者の声を聞くためには優れたツールだと思いますが。ま、溜池通信がブログになる予定は当面ありませんけれども。


<3月29日>(月)

○本日は政治部記者やら、某議員やら、NYから戻ってきたばかりの角谷浩一さんやら、いろんな人の話を聞きましたが、もう書けないことが大杉。フラストレーションがたまっております。

○ということで、今宵は遠慮のない話題をば。なんですか日経新聞の一面は。昨日がデカデカと「日本経済水面上に」。そして今日から、魔のコーナーともいうべき左上のコラムで、「日本経済復活の序章」という連載が始まっている。察するに今週木曜日発表の日銀短観で、相当にいい結果が出そうだということを先取りしているのであろう。が、ちと傲慢ではないか。筆者の長年の経験則がこう告げています。「景気はそろそろ先が見えてきたぞ」

○少なくとも「復活の序章」はないでしょう。日本経済が「復活」というならば、まず金利が上昇するはずである。その場合、円高が進んだり、政府債務が膨れ上がったり、過剰債務企業が破綻したりするはずであって、その手の修羅場を見て初めて「復活の序章」といえる。それが起きていないということは、現状は単なる循環的な景気回復局面に過ぎないということだ。

○いえ、あくまでも「序章」なんです、というのであれば、それも異議ありである。2002年の初頭から始まった現在の景気回復局面は、すでに2年以上を経過している。その原動力は「デジタル家電」と「中国向け輸出」であった。溜池通信の古いファンの方はご記憶かもしれませんが、本誌の2002年7月12日号では「アジア向け輸出とITが景気を牽引するぞ」と言っております。2003年8月22日号でも、「デジタル機器とアジア向け」と繰り返しております。これらは古いテーマなのです。はっきり言って、この2つのファクターは、もはや賞味期限が切れつつあると思います。

○家電の量販店に行ってご覧なさい。もう大画面テレビの前から客足は遠のいておりますぞ。カメラつきケータイも、デジカメも、持つべき人はもう持ってしまっている。IT商品のヒットサイクルは「感動」が生み出すものだ。しかるに感動は長続きしない。2年か3年たったら飽きが来る。おそらくIT関連製品は、2005年は端境期になりますぞ。ご用心なされませ。

○中国についても、そろそろシートベルトの用意をした方がいいと思います。昨年は9%成長したものを、全人代では今年は7%成長にしようと言っている。時速80キロを60キロに落としましょうと言っているわけで、それはまごうことなく正しく、賢明な判断である。さすがは中国。だが、そういうときには乗っている人たちは、激しい減速感を覚えるものである。どんな副作用が生じるか。とくに対中ビジネスが伸びて、「3割、4割増は当たり前!」と言って喜んでいる日本企業にとって。

○余談ながら、サラリーマンというものは「前年比5%増」くらいの課題を与えられると、嬉々としてリスク・マネジメントを語りたがるもので、これは自己保身のことを考えれば当然といえる。が、「3割、4割増は当たり前」の世界にいたら、サラリーマンはまずリスクのことなど考えない。というよりも、そもそも考える理由がなくなるのである。「3割、4割増」の世界にいると、まずは日々の仕事をこなすだけで忙しい。余計なことを考える暇がない。そもそも十分に儲かっているのだから(リスク・プレミアムを取っているのだから)、まっいいか、という発想になる。そしてこういうとき、上司もうるさいことは言わないものなのだ。

○BNPパリバの島本幸治さんは、いつも意見が合うことが多いのだけど、本日分のWeekly Bond Strategyで「先行き不透明感が強まり、期待が失望に変わる」ことをメインシナリオに置いている。下記の部分は特に強く賛同。

何故、福井総裁は「長期金利にフタをする」と発言したのか。日銀マンである総裁の本意でないことは明らかだ。そういわざるを得ない状況に陥っていることこそが重要である。量的緩和も為替介入も出口政策どころか、袋小路に入り込んでいる。

2003年12月14日号でも書いたとおり、今の景気回復はいいとこ年内一杯と見るべきだ。そうなると景気のピークを先取りして株価は下落に転じるだろうから、今年は幸いにもなかった「3月危機」が、来年春には再燃する可能性が大。そしたら2005年4月のペイオフ解禁はどうなるのだろうか。おーい、日経新聞。ちゃんと分かってて書いてるんだろうな。


<3月30日>(火)

○おやおや、ブッシュが支持率でケリーを逆転。本日分のギャラップをご覧ください。

Bush Overtakes Kerry

A new CNN/USA Today/Gallup poll finds George W. Bush enjoying increased support in the race for president compared to a poll taken in early March. As a result, Bush now leads Massachusetts Sen. John Kerry among registered voters by a slim margin, 49% vs. 46%. Approval for Bush’s handling of his job is also up slightly, to 53%. Compared to February, the same poll finds Kerry’s favorable image slightly diminished and that Bush has maintained his favorable image.

○リチャード・クラーク氏の爆弾発言はあんまり影響はなく、むしろ同時期にブッシュ陣営が行ったケリー叩き攻勢の方が効果があったようです。このクラークさんのことを、安達さんがボロクソに書いていましたが、かんべえも同感。「俺だけは真実を知っていた」で天下が味方してくれると思うのはチト傲慢。今のところ、オニール二世になる公算大と見ます。

○ケリーが自爆している面もあるように思う。今月中旬に休暇を取って、アイダホ州の自前の別荘で家族と一緒にスキーをしたのは、あまり賢明なことではなかったと良かったと思う。ブッシュが先制攻撃を始めたときに後手を踏むことになったし、「その別荘ときたら19部屋もあるんだって」、なんてことが知れ渡ったのも明らかに得策ではなかった。彼の支援を表明した労働組合の人たちが聞いたら、どんな風に感じるか。育ちのいい政治家は、いまいちセンスが悪いですな。

○もっとも、「投票日が明日だとしたらどちらの候補者に投票しますか?」という設問はあんまり意味がない。有権者の大多数は、投票日の直前にならないと決めないんですから。それよりも今回、ブッシュの政権支持率が、またジワリと上がって53%になったという点に注目したい。政権発足時からいちばん低いときで49%。こんなに人気が底堅い大統領は稀有の存在です。でも、こういうことって報道されないんだよな。

○そうそう、台湾の株価が上昇していますね。混乱の収拾が近いことを祈ります。

http://finance.yahoo.com/q/bc?s=^TWII&t=5d 


<3月31日>(水)

各位

しょっちゅう会っている人も、
このところご無沙汰している人も、
皆様まとめてお世話になっております。
吉崎達彦でございます。

明日をもって私の職場である日商岩井総合研究所は
「双日総合研究所」(そうじつそうごうけんきゅうじょ)
に社名を変更いたします。

これに伴って、メールアドレスも下記のとおり変更になります。

(中略)


お手元のアドレスを変更いただきたく存じます。
それ以外の電話、FAXなどは現状どおりです。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。



○てなメールを今夜、非常に数多くのメールアドレス宛てにBCCで一斉送信いたしました。そうしたら案の定、「そういう人はおりません」と戻ってくるメールが結構多い。「そうか、XXさんは会社を変わったんだ」とか、「あれれ?どこへ行っちゃったんだろう」とか、「そもそもこの人はどういう人だったっけ?」などと悩んだりもする。そんなわけで、アドレスの整理に時間を費やした。今の時代、メールアドレスの管理は住所録以上に重要なので、ときどきこんな風に「虫干し」をした方がいいようだ。

○会社用のアドレスはまだいいのだけれど、この「溜池通信」用のアドレスは晒しっぱなしになっているせいか、ウイルスメールや売り込みメールが面白いほどにやってくる。自動的にネット上を巡回して、拾ったメルアドに広告メールを流す技術があるらしい。来るのはほとんどが英文である。以下は、典型的な売り込みメールの題名。

Purchase All Your Meds Now Online. No Prescription Needed. Overnight Delivery.(薬はオンラインで買いましょう、ってわけ)

OPEC Production Cuts (ガソリンが史上最高値になっているので、省エネ技術の売り込み)

Does somebody owe you money? (内容はソフトウェアの売り込み)

40,000 people make their living on ebay (ホンマかいな?でも、流行ってるみたいだね)

Cheapest VIAGRA!! 70% Discount! (9割引でもワシャ要らんぞ)

If you are paying more than 3.6% on your mortgage, we can slash your payment! (アメリカも低金利ですな。でも日本はもっとスゴイよ)

Glycemic Counter, to keep track of your sugar intake. (実態はどうも健康食品らしい)

Remarkable New Powerfull (これで内容は、「ここにアナタの負債を全部消す魔法のボタンがあります」と来る。誰が押すか、そんなもん)

Surprise Invitation (これで内容は、「だれかとのロマンチックな出会いを演出する」とある。ありがちだなあ)

Better s.e.x guar.antee.d (これで内容は、「あなたのペニスを3インチenlargeする」とある。3インチといえば7.5センチですぜ、旦那)

○こういうメールを見ていると、最近のアメリカ経済の動向がちょっとだけ分かる。かもしれない。











編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki