●かんべえの不規則発言



2013年4月







<4月1日>(月)

○昨日あんなことを書いたら、案の定、本日発表の3月日銀短観は今一つの内容である。もちろん新聞の見出し的には「製造業景況感が改善」「大企業3四半期ぶり」「円高修正・株高で」(以上、日経新聞夕刊から)ということになる。でも、@業況判断の数値は市場コンセンサスよりも低く、A中堅・中小の製造業にいたっては前回調査よりも悪化しており、B設備投資計画は全産業で前年比マイナスである。あんまり大喜びできるような内容ではありません。

○そんな中で、大企業・製造業の想定為替レートが85.22円になっているというのが面白い。かなり保守的な見通しになっているけれども、今の90円台は容易に信じがたいという気分なのでしょう。それでも経常利益予想はかなり高いので、このまま円安が定着すれば上方修正もあり得る。実体経済は思ったほどよくはなく、企業マインドもまだおっかなびっくりではあるのだけれど、それでも利益的には高いということになります。

○これから先も重要な経済指標が続きます。

4月3-4日:日銀金融政策決定会合〜黒田新総裁の下でどんな新機軸が打ち出されるか。

4月5日:米国雇用統計〜NFPは今月も20万人台増で行けるか?

4月8日:3月景気ウォッチャー調査〜このところ好調過ぎたので、そろそろ一服しても不思議はない。

4月8日:2月国際収支〜2月は中国の春節を含んでいた点に要注意。

○4-6月期の景気については、慎重な楽観論を続けたいところです。


<4月2日>(火)

○今日は朝から雨で、これで今年の桜も散ってしまうことでしょう。とはいえ、3月下旬からずいぶん楽しませてもらったので、これも毎年のことと納得するほかはありません。散らない桜は桜じゃないものね。それにしても、日本中が「1年に1週間しか咲いてくれない木」を競って植えているのは面白い現象だと思います。桜の名所って、昔は今ほどにはなかったはずなんですよねえ。そのくらい、みんな大好き。不思議だねえ。

○さて、今年度から、文化放送「くにまるジャパン」の放送時間が変わって、午前8時30分から30分繰り下がって午前9時からになりました。「くにまるジャパン」の前にやっていた「ソコトコ」の吉田照美長老が夕方の時間帯にお引越しになり(飛べ!サルバドール:15:30〜17:50)、そのあとに元フジテレビアナの「福井謙二グッモニ」(7:00〜9:00)が入ったので、「くにまるジャパン」が後ろにずれたというわけ。

○ほんの30分とはいえ、これでもう4年も続けている番組ですので、出演者としては朝の習慣がずいぶん変わります。今までは午前8時に浜松町到着を目指して家を出ていたのですが、それが8時半でよくなる。朝ゆっくりしていられるのはありがたいことなんですが、午前8時前後の上野駅の混雑はそりゃあもう大変なものでありまして、あの時間帯を潜り抜けるのは結構難事であるかもしれません。まあ、何事も慣れでありますが。

○その「くにまるジャパン」によるタイアップ企画で、今日から関東地区のローソンで「スタミナ豚まる丼」を発売しています。今朝、早速いただきましたけれども、懐かしや国立市の「スタミナどんぶり」が原型で、それに卵を載せたりキャベツを加えたり、さらには胡椒を工夫するなどして誕生した「豚丼」です。ニンニクの香りも強烈で、並みのコンビニ弁当ではありませんぞ。よろしければぜひお試しを。

○もうひとつ、4年間続いているのはテレビ東京の「モーニングサテライト」。こちらもスタジオが新しくなったり、NY特派員が末武さんから大江麻理子アナに代わるとか、4月からいろいろ様変わりします。不肖かんべえの登場は来週月曜日の8日になります。さて、何のネタにしましょうかねえ。

○とまあ、こんな風に諸事4月に区切りが来るのが日本社会であります。国の予算も会社の決算も学校の新学期も全部4月に始まる。それというのも、桜の季節だから。「秋入学」というのは、きっと難しいと思うのですよ。思えば平安時代の歌人から兼好法師など、この国の風流人たちはずっと春が来るたびに桜を気にしてきたんです。グローバル化だからと言って、簡単に変えちゃいけないDNAなんじゃないかと思う次第です。


<4月3日>(水)

○最近のニュースで感じたこと。

○東京ディズニーリゾートの入場者数が、年間3000万人に届かんとする勢いだとか。こういう経営努力があった、とか、このアトラクションが受けた、てな話が飛び交っている。でも、それって単に地方から東京へやってきたスカイツリー見物客が、「ついで」にディズニーランドを訪れた効果に過ぎないんじゃないだろうか。「今年は開園30周年でますます人気」とか言ってるけど、スカイツリー人気が一巡したら来客も減っちゃうんじゃないのかなあ。

○テレビ朝日の視聴率が第1位になっているとか。「相棒」が人気だからとか、「報道ステーション」からドラマに視聴者が流れているとか、いろんな説明がされている。でも、それって単に地上波デジタルが始まって、10チャンネルが5チャンネル(つまりリモコンのど真ん中のキー)になったからじゃないだろうか。逆にフジテレビが不調に陥っているのは、8チャンネルが「端っこ」になってしまったからではないのか。いつもリモコンを使うときにそれを感じてるんですけど。とりあえずテレビ東京は、12から7に「出世」して喜んでるみたいです。

○以上、へそ曲がりのかんべえさんらしい見解でした。

○最後におまけです。渡辺先生ったら、またこんなことを言って・・・。本誌がお役にたっているのでしょうか。


<4月5日>(金)

中央電気倶楽部の午餐会講師で大阪へ。とっても古い建物で、改装される前の日本工業倶楽部とよく似た造りである。懐かしい。こういう由緒ある建築物は、どんどんなくなっていく世の中でありますが、大阪ではしぶとく生き残っている。なんだかちょっと頼もしく感じました。

○聞けば、この建物は昭和5年(1930年)竣工なのだそうだ。世界大恐慌が1929年で、満州事変が1931年で、その年の暮れに民政党から政友会への政権交代が行われ、犬養内閣が誕生して「高橋財政」が始まったのである。まさにその時期に誕生した建物である。ここ、テストに出るからね。高橋財政における「三本の矢」とは何か、なんていい問題なんじゃないでしょうか。

○松下幸之助翁が、名高い「水道哲学」を初めて語ったのが、この中央電気倶楽部においてであった。1932年5月5日のことである。松下電器製作所の第1回創業記念式の席上であった。パナソニックはそれから91年を経過したことになる。関係ないけれども、今年の5月5日には長嶋茂雄と松井秀喜の国民栄誉賞授賞式が行われる。そうか、松井の背番号が55だから5月5日なのか。それとも単に東京ドームの賑やかしなのか。ま、どっちでもいいけどね。

○東京では散ってしまった桜が、大阪ではまだ咲いている。と言っても、明後日の阪神競馬場の桜花賞まではもつかどうか。ここへきて、急に鼻水と目の痛みが生じたのは、ひょっとして桜の花粉が飛んでいるせいじゃないだろうか。今年は1月からずっと薬(アレグラ)を飲んでいるので、大丈夫だと思っていたのだけれども、これから5月の大型連休までが最後の試練です。


<4月7日>(日)

○低気圧一過で予定のない日曜日、配偶者と一緒に映画『ヒッチコック』へ。サスペンスの巨匠と呼ばれていた天才は、世間の評判や自分の懐具合や年齢による衰えを心配しながら、あれだけの仕事をこなしておりましたとさ、というお話。そうか、あれは手塚治虫みたいなものなのか、と妙に納得。

○そのヒッチコックを支えていたのは、有能な脚本家であり、映画産業で生き抜いてきた同僚であり、遠慮のない助言者でもあった妻であった。二人の関係は、ちょうどビル・クリントン大統領(1993〜2000)とヒラリーみたいなものであろうか。それでもあの世代の夫婦であるから、夫がかなーり威張っている感じなんで、その辺はクリントン夫妻とはやや違うかもしれない。もちろん拙宅とも。

○ヒッチコックが『サイコ』を撮るときのお話である。『サイコ』という映画は、昔、レーザーディスクというものを保有していた頃に、『2001年宇宙の旅』と『愛と悲しみのボレロ』と並んで、繰り返し何度も見た。ヒッチコック作品としては、『めまい』と並ぶ名作だと思う。『北北西』は、それよりは少し落ちる。とにかく出だしから幕切れまで、隙がない。作り手の狙い通りにハラハラ、ドキドキさせられ、シャワーのシーンでは白黒映画なのに赤い血が見えたような気がして、最後の謎解きのシーンで一気に腹落ちする。

○完璧と思われる作品だが、製作過程は難物であった。映画の題材は、当時いろいろ物議をかもしたものだから、映画会社がお金を出してくれずに、自己費用で作らねばならなかった。しかも奥さんとの間柄も、いろいろ波風が立っていた。さらに興味深いのは、当時のアメリカにおける映倫のチェックのうるささである。アメリカのピューリタニズムというのは、面白いものですな。今なら「何でもアリ」なんで、いくら巨匠でもあのように抑制された表現による恐怖は演出できなかったことだろう。

○ベイツ・モーテルの姿が出てこないところがちと不満である。あれはユニバーサルスタジオに、ちゃんとそっくりさんがあるはずなのだが。それから、主演のアンソニー・ホプキンスはいくらなんでも太り過ぎだろう。巨匠に似せようと頑張ったのだろうが、そのせいで本人の「らしさ」が失われてしまったのではないか。余計なことながら、アンソニー・パーキンス役が、あまりにも本物そっくりなんで笑ってしまったぞ。それにしても、あの映画を知らない人が見ても、面白いんだろうか。ワシは楽しめたんですけどね。

○ところで明日朝は久々に『モーニングサテライト』に出演します。なんとNYから大江麻理子アナ初登場の日でありますぞ。見逃してはなりませぬ。




<4月10日>(水)

○ランチの席、いずれ劣らぬ顔ぶれが集まって、今日は飛びませんねー。ホントにいつになったらミサイルが飛ぶんですかねえ。・・・・てな話をしていたら、いやいやあれは国内引き締めのための強硬姿勢で、金正恩の体制は実は揺らいでいるんじゃないですか、との声。ほほう、弱い犬ほどよく吠えるというあれか、と感心して聞いていたら、元ネタは夕刊フジであったらしい。ううむ。

○少し前のFinancial Times紙で、中国のケ聿文なる人物が"China should abandon North Korea "なる論説を寄稿し、「中国は現政権を交代させよ」と説いた。中国共産党もずいぶん変わったなあ、と感じていたら、その後のNYT紙では、"Chinese Editor Suspended for Article on North Korea"という記事があった。どうやら中国外交部が(北朝鮮政府からねじ込まれて)、ケ聿文の所属組織に抗議をしたために、対外的に干されてしまったようである。それでも月給は支払われているということなので、深刻なお咎めを受けたというほどではないらしい。とりあえず生暖かく見守られている、という感じだろうか。

○明日は山口県に出張の予定である。あそこまで行くと、少しは朝鮮半島の脅威を感じるだろうか。まあ、気分はどんと来いという感じである。


<4月11日>(木)

○内外情勢調査会の講師で山口県周南市へ。10年前の2003年3月に、この仕事を始めたばかりのころにやってきた場所である。ちょうど大合併が行われる直前で、当時はまだ徳山市と呼んでいた。ここと岩国市がセットになっていて、当時は岩国→徳山の順に回ったが、今回は周南→岩国の順になっていて、明日は岩国に参ります。

○それにしても時事通信さんは、どこの馬の骨ともわからぬーーもちろん今だってそうだがーーワシを、よくまあ講師に登用してくれたものである。それから10年、多い年は10回以上、少ない年でも5〜6回は使ってもらっている。去年の秋で合計100回を超えて、現在は3ケタで推移している。お蔭で日本中のいろんな場所に行けたし、最近では「二回り目」のところもでてきた。新幹線にマイレージ制度があれば、相当たまっていることだろう。

○思い起こせば2003年3月といえば、イラク戦争が勃発間近であった頃だ。小泉首相がエイやっとアメリカを支持して、代わりに円安介入を行っていた。日本銀行では、速水総裁→福井総裁の交代があった頃である。確か六本木ヒルズがオープンしたのもこの頃ではなかったか。この10年の変化たるやまことに大変なもので、強いて言えば、北朝鮮だけが同じことをやっている。代替わりはしたけどね。

○そして皆が10歳分年を取った。ついつい42歳だったころに思いを馳せてしまうではないか。うーむ。

○で、山口県は今日が4月28日の統一補欠選挙の公示日で、あんな話、こんな話を拝聴する。なにしろ安倍首相の地元ですので、結果は見えているという気がするのだが、そこはそれ、7月の参院選に向けて、なにがしかのメッセージが発せられるはずである。よく見ておきたいところです。


<4月12日>(金)

○徳山駅周辺のアーケード街を歩いてみると、これがものの見事なシャッター通りである。企業城下町にありがちなことではあるが、ちょっと寒々しい光景。はて、どうしたらいいものか。町興しと言えば、実はこの町は藻谷浩介さんの出身地であったりする。最近会ってないけど、ご意見伺いたし、と言っておこう。

○新幹線こだま号で岩国市へ移動。駅前にどーんと出ているのが、(株)おいでませ山口県の看板である。代表取締役である島耕作氏がどどーんと出ている。岩国市は、弘兼憲史氏の出身地なんですねえ。岩国市は、岩国錦帯橋空港ができたおかげで、人の移動が盛んになっているようです。広島出張に広島空港ではなく、岩国空港を使うという動きもあるんだそうです。広島空港は遠いからなあ。それから宮島観光には、岩国が圧倒的に近いです。

○帰り道、その岩国空港の土産物屋で、「あたらしい晋ちゃんまんじゅう」を発見。いやあ、このパッケージのイラストはすごいです。三本の矢を手にした安倍さんを先頭に、ご機嫌な麻生さんに小泉進次郎さん、なぜかロボット姿になっている石破さん。「参議院選まであと○○日」などと書いてある。いやあ、このノリは山口県ならではでありましょう。でも、議員会館や靖国神社でも売っているみたいです。

○この饅頭、別名をアベノミックス饅頭といって、ミルク餡とチョコレート餡のミックスになっている。しかも「当社比2%増量」になっているという。ダメです。2%増量ということは、物価で言うと2%下落しちゃうじゃないですか。消費者物価を2%上げるのは大変なんですよ。こればっかりは企業努力の逆でありますからねえ。


<4月14日>(日)

TKPシアター柏にて、今頃になって「ゼロ・ダーク・サーティー」を鑑賞。何ほどのことやあらんと思って気軽に見始めたら、2時間半もある大作であった。

○かな〜り事実に正確な映画であると思います。天下のCIAといっても、やってることはこんな感じ。役人根性もあるし、性根の入ったヤツもいるし、そうでないヤツもいる。やってるうちに大統領が変わってしまって、「拷問はダメよ」になってしまったりする。そして性根の入った主演の女性マヤにも、ちゃんとしたモデルがおるのです。

○実際のCIA長官はレオン・パネッタでしたが、この映画の中の長官もスーパー・マリオ似のそっくりさんでした。彼とオバマ大統領とゲーツ国防長官との葛藤なんかも面白いんですけど、大統領を出してしまうと、この映画が「大統領選挙の応援映画」になってしまいかねないという事情があって、そこは描かれなかったようであります。全体に「正義が行われたぞ」というよりは、コソコソと悪いことをやっているような感じでビンラディン暗殺が行われている。インテリジェンスとは本質的にそういう仕事なのでしょう。

○その一方で、この映画をイスラム教徒が見たら怒るだろうなあ、という気もする。なにしろ10億人以上いるから、本気で怒る人がたとえ1%でも全体では結構な数になってしまいます。アカデミー賞がもらえなかったのは、その辺のことも影響していたのかもしれません。

○それにしてシアター柏はガラガラだった。土曜日でこんなことでは、またまたつぶれてしまうんじゃないだろうか。心配です。


<4月15日>(月)

○座談会の収録で毎日新聞社に行ったら、学芸部はバタバタしていて、「三國連太郎さんが亡くなって、朝から大変なんです」とのこと。年に不足はなし、予定稿もあるだろうに、と思ったのだが、まだ夕刊に間に合う時間だというのと、反響が意外に大きいらしい。そういや息子さんの佐藤浩市はワシと同じ年だが、親父さんは90歳でしたか。合掌。

○反射的に、代表作が『釣りバカ日記』じゃ気の毒だがなあ、と思ったけれども、そういえば『飢餓海峡』も見ていない。どっちかというと、バイプレイヤーでしたね。明日の新聞には、昭和を代表する名優の一人、と書かれるのだろうけれども、敢えて「怪優」と呼びたい。だってホントに怖い人だったんだもの。

○『復讐するは我にあり』の主人公の父が印象に残っている。凶悪犯を演じた緒形拳が、最後に「あんたを殺せばよかったんじゃ」と言う。それから主人公の妻役の倍賞美津子が、「わたし、お父さんのそういうずるいところが好きです」と言う。どちらもぞくっとするセリフでした。本人が言うのではなくて、そういうことを言われるのがサマになる。不思議な存在感。

(あ、記憶違いがあったらごめんなさい。柏シアターで上映してくれないかな)。

○『マルサの女2』の新興宗教の教団長という役柄もよかったなあ。底知れないワルで、狂気があって、なおかつ最後は使い捨てにされてしまう。父親の借金のかたに愛人にした少女が、マジで惚れてしまう。あんな役、ほかのだれがやってもリアリティゼロだろう。

○考えてみれば、世の中が明るく、優しくなるにつれて、そしてタブーがたくさん増えるようになって、三國連太郎が出るにふさわしい映画は作れなくなってしまったのである。だからスーさんをやるしかなかったのだ。西田敏行のハマちゃんとコンビを組んで、いつの間にか「いい人」になってしまった。それはそれで役者としては正解であったような気もする。でも、怪優時代を知るものとしては、「なんか変」に見えて仕方がなかった。

○つくづく思うんですが、日本映画は1980年代前半くらいまでは、ホントにすごい世界を描いていたんですよお。まあ、日本人や日本社会自体も、今と違って迫力がありましたし。だから最近の日本映画は、あんまり見る気にはならんです。この国が長期低落傾向になったのは、やっぱりB29を見た世代が居なくなりつつあるからじゃないですかねえ。

○あの世代といえば、今日は某テレビ朝日方面で「御大」と呼ばれているあのお方のお誕生日。金日成と同じですから、やっぱり偉大なる領袖なんでしょう。田原総一朗さん、たしか79歳だと思うけど、こっちの怪優はまだまだお元気です。


<4月16日>(火)

○バブルに関するいくつかの法則。

<証券会社編>

@トップ20%の社員だけが目標を達成するのが、普通の状態である。
Aミドル60%の社員が目標を達成するようになったら、おそらくバブルが始まっている。
Bボトム20%の社員までもが目標を達成するようになったら、それはもうバブル崩壊は間近である。

<出版社編>

@経済誌以外は、株価について何も書かないのが普通の状態である。
A男性向け週刊誌が、「ボーナスはこの株で増やせ」という特集を組んだら、おそらくバブルが始まっている。
B女性向け週刊誌が、株の連載ページを作ったら、それはもうバブル崩壊は間近である。

<不動産編>

@イギリス人がスペインの不動産を買うのは、普通の状態である。
Aロシア人が南仏の不動産を買うのは、おそらくバブルである。
Bギリシャ人がドイツの不動産を買うのは、それはもう悪魔の所業である。

○バブルに関する箴言。

「値段が上がったことをバブルだと言う人は、バブルのなんたるかを分かっていない。ド派手なビルが建つとか、新富裕層がどんちゃん騒ぎを始めるとか、リアルな経済が動いてこそ初めてバブルと言える」


<4月17日>(水)

○為替について少し述べてみたい。

○円安が進んでいることについて、「輸出企業はいいけど輸入企業は・・・」式の発言をよく聞く。確かに自動車産業は1円につき××億円儲かるとか、電力会社は泣いているという事実はある。ただし日本は既に貿易立国から投資立国に移行しつつあって、貿易収支は赤字で、所得収支の黒字で経常収支を支えているのだという認識が欠けている気がする。

○例えば典型的な輸入企業であるはずの食品産業は、本当に円安で泣いているだろうか。食品大手であるところのキリンや味の素やサントリーは、ここ数年の円高時代に海外企業のM&Aをたくさん手がけていた。何しろ彼らはキャッシュリッチだし、国内の人口減少の影響をモロに受ける業種であるから、海外投資には積極的にならざるを得ないのだ。そのことでもたらされる毎年の海外子会社配当金は、当然ドル建てや現地通貨建てで計算されていよう。円換算評価額が自動的に増えるのは、彼らにはおいしい話であるはずだ。

○逆に円安になったことで、本当に輸出が伸びるかどうかはよく分からない。既に国内の製造基盤はリストラしてしまい、新たに輸出に回す供給余力が失われていた、というのもありそうな話である。あるいは円安になって、製造業の国内回帰が進むかどうかも不透明である。こんなに法人税が高くて、電気料金が高くて、規制がうるさくて、若者の人口が少ないところで、あたらしく工場作っても仕方ないじゃん、と思われてしまう恐れも否定できない。

○むしろ円安になって効果がテキメンに表れるのは、所得収支黒字の方だろう。こちらは簡単に評価額が変わるので、仮に2013年が通年で前年比2割の円安になるとしたら、年間14兆円程度の所得収支は17兆円くらいに水膨れすることになる。所得収支3兆円増はGDPには反映されなくても、GNI(=GDP+所得収支)には自動的に反映される。何だか不労所得みたいで、うれしくなるではないか。

○おそらく重要なのは、日本企業が海外で稼いだお金を、ちゃんと国内に持ち帰って使ってもらうことである。円高が続く限りにおいて、企業にとっては「海外で稼いだ金を、わざわざ円転するのがあほらしい」という状況が続く。ましてや、国内に居る社員に還元してあげよう、なんて動機も乏しいことになる。それが円安になったら、「今のうちに少し換えておくか」という発想も出てくるだろう。後はいかにそれを国内の雇用に結びつけるかである。

○株価的に言えば、「ここ2〜3年に大型企業買収をした会社」が面白いのではないかと思う。そういう会社、いっぱいありますよね。輸出企業が買いで輸入企業が売り、というのは一周遅れの議論であるように思われます。


<4月18日>(木)

○先週の山口県に続いて、今日は青森市で内外情勢調査会講師。今日の東京は5月の気候だったそうだが、青森では皆さんまだコートを着ている。東京から来た出張者はみな軽装で、外の空気の寒さにちょっと戸惑っている感じ。いや、もちろん3月に体験したモスクワの寒さに比べれば、たいしたことはないんですけどね。

○偶然ながら、ここも2003年11月に訪れたことがある。10年ぶりに訪れてみて、何が変わっていたかと言うと、新幹線が新青森駅まで延びていて、乗り換えなしで行けるということでありましょうか。2003年の時は新幹線で八戸まで行って、そこから在来線に乗り換えて1時間以上かかった覚えがある。先週、山口県に行った時も、広島駅で新幹線を乗り換えるときに「ああ、九州新幹線ができたんだなあ」ということを感じたものである。

○良くも悪くもいろんな変化があったはずの10年間。でもまあ、日本社会はそれほど本質的な変化は起きてなくて、どっちかというと海外の方が大きく変わっているんじゃないかと思う。例えば中国やロシアでは、一人当たりGDPが5〜6倍になっているんだものね。問題は、日本にいるとそういう変化にまったく気づかないということ。むしろ変化を嫌う心情が、年々歳々強くなっているような気がする。そんなことでは、いけないと思うんだけどなあ。

○講演の中でTPPについて少しだけ触れたら、やっぱりその部分に関心が高かった。終わってから、やはりコメだけは聖域にしないと、などといったご指摘を拝聴する。なるほど、リンゴには国際競争力がありそうだ。もっとも、日本の農産物はけっして国際的に弱いとは思えないのだけれど・・・。


<4月19日>(金)

吉野家史上最高のうまさへ、ということで、昨日は牛丼の聖地、新橋で号外が出たのだそうだ。よくよく見ると、「朝日新聞号外(広告)」と書いてあるのだが、これは嘉すべきことであろう。黒田日銀何するものぞ。消費者が待ち望んでいたのは、やはり月齢30か月のアメリカ牛で作った並盛280円の牛丼なのだ。ということで、とっても久しぶりに吉野家に行ってきますた!

○店内に入ってすぐに分かった。昔の吉野家のにおいが流れているのである。今の吉野家には、豚丼だのカレーだの焼き鳥つくね丼などといった、本当は売りたくなかったメニューが入っていない。(注:メニュー限定は4月24日午後3時までの措置みたいです。その他メニューファンの皆さん、失望しないでください)。店内は牛丼のピュアなにおいであふれている。にもかかわらず、ワシが店内にいる間にも、「ええっ、今日はカレーがないんですかあ?」などという客がいた。愚か者め。吉野家は本来、牛丼を食するところぞ。

○そうかと思うと、店内のあちらこちらから「並、つゆだくで」という声が聞こえてくる。思わず声のする方をにらんで、ああ問い詰めたい、小一時間問い詰めてやりたいと思うのだが、そんなこと、今では覚えている人の方が少なくなっているに違いない。並盛到着。つい、半熟卵とキムチも付けてしまう。軽く七味を振って牛丼を食い始める。ああ、この脂身ののりかた、そして大き目に切った玉ねぎが吉野家の味である。あんまり絶賛すると、森永卓郎に間違えられるかもしれないので遠慮するが、いやここはむしろオバゼキ先生のコメントを聞きたくなるところである。

○あっという間に終わってしまう至福の瞬間。それにしても、BSE騒動っていったいなんだったのか。不思議だ。


<4月20日>(土)

○ご招待されたんで、新宿御苑の「桜を見る会」へ。ソメイヨシノはもちろん散っているが、新宿御苑は八重桜が中心なので、4月の第3土曜ということが多い。総理大臣主催で、自衛隊の音楽隊の演奏があったり、芸能人やスポーツ選手が来たりするので、なかなかににぎやかな集まりである。

○この集まり、昨年は北朝鮮のミサイル発射で、その前の年は震災で中止になった。その前の年は鳩山さん主催だった。いちおうその年も呼ばれていたんだけど、ひどい雨だったんで出かけなかった。夕方になってテレビを見たら、鳩山首相が、「こういう日に来てくれるのが雨天の友だ」とあいさつしていた。危ないところで、鳩山さんの友達になってしまうところであった。

○今日は曇天。「安倍首相の曇天の友」というのは、ちょうど頃合いで良いのではないかなどと考えつつ、ゆるゆると出かけて、丸の内線新宿御苑前で下車。8時半の開門から大幅に遅れて、大木戸門から参上する。それでも人ごみの中から、ちゃんと「ナマ安倍さん」を発見いたしました。いつもド派手な麻生さんも見たかったけど、G20に行ってるんですよね。残念。(その代わりと言ってはなんですが、「純正野球ファン」氏に会いましたぞ)。

○さすがに今年の場合、八重桜もほとんど葉桜になっておりました。だからといって、「いやあ、景気が良くなってよかった。これも安倍さんのお蔭」などと大声で言っていたら、これは桜ならぬ「サクラ」になってしまいます。後で聞いたら、今日は「ももクロ」や前田敦子が来ていたんだそうで、そっちの方が華やかだったかもしれません。

○それにしても新宿御苑というのは、東京が誇るに足る立派な空間だと思います。また別の季節に来てみたいですね。


<4月21日>(日)

○朝から雨で寒い一日。あんまり天気が悪いんで、外出の予定を取りやめる。何しろ今日の福島競馬場は、雪で開催中止になったくらいですから。東北では桜が咲いたのに雪、という大変な気候です。

○で、家でDVDになった『黒部の太陽』を見る。石原プロモーションの50周年記念で、この春に初めてBD/DVD化された。なにしろ196分もあるので、家の外に出たくない日にはまことに都合がよい。

○この映画、「大きなスクリーンで見てほしい」という裕次郎の遺言で、今まではソフト化されなかった。ゆえに「幻の作品」となっていたところを、特別に熊谷組で上映会をやった際に見せてもらったことがある。ただし音が悪くて、一部、セリフが聞き取れないところがあった。DVDではノイズがきれいに除去されていて、以前に見た時には気がつかなかった点もよく分かった。たとえば、宇野重吉と寺尾聡は作中でも親子を演じていたんですねえ。

○モデルになった黒部ダムの工事は、もちろん世紀の難事業であったが、映画を撮る方も半端じゃなかった。出水シーンの撮影では、トンネルの中で420トンの水を放出した。このとき、石原裕次郎は気絶して、目が覚めたら大けがをしていた。スタッフに死者がなかったのは奇跡的なことであったという。

○ワシが生まれる前にできたダムのことを描いて、ワシが小学生の頃にできた映画である。なんというか、今更論評してどうなるものでもない。ただ、日本経済の疾風怒濤の日々を描いた作品である。たとえ大スクリーンでなくても、少しでも多くの人に見てもらうべき映画だと思う。そしてこの国に、こういう時代があったということを知ってもらいたい。


<4月22日>(月)

○そういえば先週はこんな原稿も書いていたのだ。道理で忙しかったはずだ。

●TPP交渉 目指すは貿易自由化の促進

Nippon.comへの初めての寄稿となります。拙稿もそのうち翻訳されることになります。だもんで、いつもとはちょっと文体が違ってます。自分でもちょっと違和感ありです。そこんとこよろしく。

○あらためて見回すと、Nippon.comには良質な記事が多いと思います。最近ご無沙汰の細谷先生深川先生も寄稿しているし。ちょくちょく覗いてみることといたしましょう。


<4月23日>(火)

○例の替え歌、今朝の文化放送で紹介しようと思ったら、替え歌ってラジオで流すと著作権の問題があるのだそうです(テレビは割と平気みたいですが)。考えてみればJASRACってのもあるし、そりゃあそうかもしれない。ただしネット上は野放しでありまして、替え歌専門サイトだってありますものね。

○ユーチューブでは早速こんなものができているようです。

●「甘利越え」 http://www.youtube.com/watch?v=SCyxI-icweM 

○なんとEURO SELLERさんの労作でありましたか。この映像がまた、良くできている。お疲れ様であります。

後記:ユーチューブ上では、実際に唄ったものもアップされています。とくにこの人のはお上手。どうか消されませんように)

○今日も一日、弊社の会長さんから「あれはホントにお前が作ったのか」というメールが入ったり、某副大臣殿から「笑いました。サイコ―です」という電話がかかってきたりしておりました。本当は詠み人知らずで流行してくれればよかったのですが、これはどう考えても自業自得ですね。ハイ。

○実際のマーケットの方はというと、円安は100円手前で一服。意外と大台は壁が厚いです。アメリカの指標が意外と弱いですからね。株価もこれからが決算シーズンで、そろそろ気分だけじゃなくて、日本企業の実力が問われる時期かと思います。


<4月24日>(水)


先生お久しゅうございます。わたくしエアグルーヴでございますことよ。

え、『お前は誰だ』ですって?きぃいいい!これだからパンピーは!よろしいこと?我が祖父は日本競馬の大立者ノーザンテースト公爵、母は樫 の木の女王ダイナカール、父は凱旋門の英雄トニービン子爵と言う、まさに名門中の名門、華族の中の華族、本来ならあなたのような、なけなしの お金をどぶに捨てまくってる三流馬券士なんか口も聞いてもらえないような貴い血族ですのよ、我がグルーヴ一族は。


○このフレーズで毎度おなじみの、「平成の女帝」エアグルーヴ女史が亡くなりました。合掌。以下は本日のJRA発表です。


第116回天皇賞(秋)(GI)(1997年)を優勝するなどGIを2勝し、現役引退後はノーザンファームにおいて繁殖牝馬として供用されていたエアグルーヴ号(牝・20歳)は、4月23日(火)午後11時にノーザンファーム早来牧場(北海道勇払郡安平町)で病気(出産後の内出血)のため、死亡したとの連絡がありましたので、お知らせいたします。

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◆ノーザンファーム 吉田勝己氏コメント
「この2年間は産駒に恵まれなかったのですが、昨晩8時にキングカメハメハの素晴らしい牡駒を出産いたしました。そして母子ともに元気な姿を確認して間もなくの訃報に声も出ませんでした。現役時の活躍をはじめ繁殖牝馬として、まさに当牧場で一番の実績をあげた名馬で、まさにノーザンファームの歴史の中心にいた馬でした。改めましてこれまでファンの皆さまからい ただきました数々のご声援に、牧場を代表し心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。」

◆ 生年月日 : 1993年4月6日

◆ 毛 色 : 鹿毛
◆ 産 地 : 北海道早来町
◆ 血 統 :
父 トニービン
母 ダイナカール
母父 ノーザンテースト
母母 シヤダイフェザー


◆ 競走成績 : 19戦9勝

◆ 主な勝鞍 :
1996年 優駿牝馬(GI)
1997年 天皇賞(秋)(GI)札幌記念(GII)
1998年 産経大阪杯(GII)札幌記念(GII)


◆ 総獲得賞金 : 821,966,000円(付加賞含む)

◆ 馬 主 : (株)ラッキーフィールド
◆ 調教師 : 伊藤 雄二

◆ JRA賞受賞履歴 :
1997年 年度代表馬、最優秀4歳牝馬

◆ 主な産駒 :
アドマイヤグルーヴ(重賞5勝)(2003、04年エリザベス女王杯(GI))
フォゲッタブル(重賞2勝)(2009年ステイヤーズステークス(GII))
ルーラーシップ(重賞5勝)(2012年香港クイーンエリザベス2世カップ(G1))
グルヴェイグ(重賞1勝)(2012年マーメイドステークス(GIII))



○こうなると、今週末の春の天皇賞の判断にも影響が出そうです。とりあえず、不肖の息子であるフォゲッタブルを少しだけ買っておこうか、などという気になる。「母よ見よ、歴史に深く名を刻む、フォゲッタブル渾身の勝利です!」というアナウンサーの絶叫が今聞こえたような気がしたぞ。普通に考えれば、ゴールドシップとフェノーメノの「ステゴ丼」で決まりなんですけどね。

○もうひとつ、文字通りの忘れ形見となった最後の子どもの成長も気になります。3年後には、ちゃんとクラシックレースに出てきてくれるでしょうか。そしてまたあの世から、「きぃいいいいい」という声が聞こえてくるのでしょうか。

○でも、彼女の声が聞き取れるのは、上海馬券王先生だけなんです。先生、今週末はどないしましょ。実は私も、東洋経済ONLINEの締め切りがあるんですぅううう。ああ、悩ましい。


<4月25日>(木)

○今宵は信じられないような出会いが何発も。

○その1。経済同友会の年次総会に出かける。あまたいるVIPの中に、甘利明大臣を発見。つい近づいてご挨拶し、「替え歌の作者でございます」と自己紹介する。「おお、あなたか。いろいろ聞いてるよ」「いえいえ、お騒がせして申し訳ございません」。深追いせずに退場。こういう場所では、VIPを長時間独占しないのが礼儀というものである。

○その2。たまたま今朝、「フォーサイト電子版」「異次元の人、『黒田日銀総裁』が考えていること」という論考を読んだのだが、これがすばらしく深くて知的な議論である。そしたら同友会のパーティーに、著者の田中直毅氏を発見したので、近寄っていろいろとお話しする。

○黒田氏の哲学の基本をなすのはカール・ポパー。その主張とは、「社会科学の命題は、反証可能性(リフュータビリティ)がなければならない、どんな証拠を突きつけてもその命題が間違っていることを証明できないなどという命題は、経験に基づく社会科学の命題たりえない」こと。例えば「セントラルバンカーは××でなければならない」といった信念は、反証可能性がないから金融政策の方針にしてはいけないということになる。

○久しぶりに腹にこたえるような文章を読んだと思う。しかも幕切れが素晴らしい。


黒田 日銀が反証可能性のある命題の提示という責任をまず明らかにした。政府は規制撤廃などを含め、同様の視点から命題の提示を行なうべきであろう。「開かれた社会」を維持し続けるためには、相応の責任遂行が、あらゆる部門で行なわれねばならない。

――黒田日銀によって「開かれた社会」に向けての水門が開かれたというわけか。

黒田 そうした受け止め方が広がれば、私はうれしい。


○その3。その後、都内某所のパーティーに出かけたら、お隣の席がかつて自分がファンであった女性アナウンサーであった。あー、驚いた。こういう日もあるもんですねえ。


<4月26日>(金)

○お昼に都内某所で「アベノミクスとは何たるか」みたいな話をしていたら、携帯の留守電にメッセージが入っていた。毎日新聞論説委員の福本容子さんからで、「甘利越え、感動しました」とのこと。はて、どこで見たのやら、と思ったら、今日のTBSの「ひるおび」で取り上げていたんですねえ。そうでしたか、金曜日のコメンテーターは福本さんにミヤテツさんでしたか。昨晩、取材を受けたのにコロッと忘れてましたがな。どうもすいません。

○どんなやりとりがあったのか、テレビを見ていない者としてはちょっと不安である。でも、今はこういうページを見ると、おおよそのところはわかっちゃうんですよねえ。


●斎藤哲也のひるトク!

○ヒット曲「天城越え」が円安株高の歌に!?
景気回復の合言葉アベノミクスにより、日本経済は円安株高へと推移している。兜町ではヒット曲「天城越え」の替え歌に注目が集まっている。

○ヒット曲「天城越え」が円安株高の歌に!
アベノミクス効果で日経平均株価が13926円にまで回復している。海外ジャーナリストの村田氏はこのGWに海外から国内へ旅行先がシフトされるという。成田空港では明日が出国のピークとなっており、新幹線の予約席数は去年と比べて7%増えるとみられているが、円安や日並びの悪さから海外よりも国内に人気が集まっている。そんな中双日総合研究所の吉崎達彦がある歌で替え歌を作ったという。

○ヒット曲「天城越え」が”甘利越え”に!
日経平均株価が、4年10ヶ月ぶりに1万3900円台を回復した。日本経済新聞のコラムに、「天城越え」の替え歌が兜町で流行っていると書かれている。

○円安株高の歌”甘利越え” どんな歌詞?
石川さゆリのヒット曲「天城越え」を、甘利経済産業大臣や黒田日銀総裁の経済政策にひっかけた替え歌「甘利越え」の歌詞を紹介。

「天城越え」の替え歌では、日経平均株価の推移のグラフが上下する様子を坂に例えている。「天城越え」の替え歌では、「くらくら燃える火をくぐり あなたと超えたい天城越え」という歌詞を、「黒田と燃える火をくぐり あなたと超えたい甘利越え」と変えている。

永濱利廣エコノミストが、「天城越え」の替え歌の中でお気に入りのフレーズを紹介。永濱氏は、物価上昇率2パーセントの目標の期待値を上げれば、先は明るいと解釈している。


○いやあ、昨晩、TBSで取材を受けた時は「じゃあ、ちょっと歌ってくださいよ」と言われて、「勘弁してよ」と逃げたのであります。大正解でした。あそこで歌っていたら、きっと放送されてしまったに違いない。不肖かんべえ、危ないところでした。

○あ、そうそう。本日は東洋経済オンラインにも寄稿してますので、そっちの方もよろしくお願いします。こんな内容です。

国債急落「Xデー」研究、自民報告書の中身 〜吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット with甘利越え


<4月28日>(日)

○連休中は最近読んだ本をご紹介します。まずは第1号。『経営センスの論理』(楠木健/新潮新書)

○「スト競」はとにかく面白かった。でも長くて高い本だったので、人に勧めるにはちょっとためらわれるところがあった。これは新書なんで、遠慮なく推奨できます(740円)。大好きな部分をいくつかかいつまんでご紹介。

●最近、「・・・せざるを得ない」という経営者が多い。とっても脱力する。グローバル化せざるを得ないとか、ビジネスモデルを転換せざるを得ないとか、だって誰もアナタに頼んではいないでしょ。ビジネスの根本原理は「自由意思」。商売は自分の意思でやるものでしょ。例えば資生堂。アジアで堂々と商売をしている。「アジアの女性の美しさについてはうちがなんたって一番ですよ!」というシンプルな意志がある。堂々と提供できる価値について確信のないまま、「日本のマーケットが縮小したから、海外進出せざるを得ない」って、そりゃ無理でしょ。

――きっと「こんな不運な時代に、社長になんかならなきゃよかった」と思いながら経営しているんでしょう。やっぱり順送り人事で社長を決めちゃダメですよね。

●アップルはIT業界の中ではずば抜けて保守的な会社だ。「これまでと違う新種のユーザー」には全く期待していない。顧客がその気になって必ず「する」という確信が持てる機能に絞り込む。このストイシズムが製品をシンプルにする。人間や社会のニーズというものは、その本質部分では相当に連続的なものなのだ

――「10年後を見越して、今までにない新しいものをつくろう」式のアプローチは、得てして泥沼へのご招待となります。

●よく「離婚は癖になる」というけど、会社にとっての経営破綻もそれと同じだ。アメリカの航空会社なんか、しょっちゅう「チャプター11」を使って復活している。この点、倒産ズレしていない日本はちょっとウブ。日本航空の再生はめでたいことでもなんでもない。3500億円の出資に5000億円の債権放棄はやり過ぎ。お蔭で減価償却費が大幅に削減され、今じゃ保有航空機の簿価はANAの7500億円に対してJALは3700億円。これは日本政府当局の失策であろう。要は「素人があわてて慣れないことに手を出した挙句の大盤振る舞い」であったということ。

――あのマエハラが手がけたことにしては、めずらしくうまく行ったもんだと思っていたが、やっぱり勘違いであったか。納得。

●国難だとか未曽有の危機だとかいうけれど、この世の中は「問題解決の自転車操業」。問題のない国なんていないのだ。日本の将来については、「複雑性」は高いが、「不確実性」はそれほど高くない。問題の正体は大体わかっているし、なにをやればいいのかもわかっている。あとは政治家が強いストーリーを示すことだ。政治家が国民と一緒になって文句を言ってちゃいけない。今は悪い意味で「生活者の視点」に立っているのではないか。

――そういう名前の政党が確かありましたね。今は何をやっているのか存じませんが。

●投資が空軍による空爆だとしたら、事業は陸軍による地上戦である。日本は事業は得意だが、投資が苦手である。そもそも日本人には、ポートフォリオの概念がない。ポートフォリオ経営の本質は過去を忘れる力にある。過去をなかったことにして、スパッと気持ちを入れ替えるという変わり身の早さが求められるのだ。

――確かにそうなんです。われわれは記憶容量が長過ぎるんでしょう。昔を引きずって忘れないことは得意なんですが。

●ウォレン・バフェットは「資本主義の寅さん」である。寅さんが日本的な義理人情の世界を代表しているように、バフェットは資本主義の理想を具象化している。「買うのは企業、株ではない」とか、「時代遅れになる原則は原則ではない」だなんて、それを言っちゃあおしまいよ!

――寅さんもバフェットも、あまりに理想的過ぎて後継者が見つからないところも似ているような・・・。

○大事なことはスキルじゃなくてセンスだよ。スキルは学べるけど、センスは自分で身につけていくしかない。それにしても楠木先生のセンスって、好きだなあ。


<4月29日>(月)

○あれは確か北京五輪の直前で、「オリンピックは本来いかにあるべきか」みたいな話が流行っていた頃のことだったと思う。谷口智彦さんが、「僕は東京五輪のことなら、いくらでも話せるんですよね」と言っていた。ワシは1960年生まれなので、残念ながら東京五輪の記憶が少ない。3つ年上の谷口兄は、その点、よく覚えているらしい。それじゃあ、東京五輪を語る機会を作りましょう、なんて調子のいいことを言って、それらしい場を作ってはみたのですが、それは吹浦忠正さんのお話を皆で拝聴する会となったのでありました。それはそれで面白い話だったのだが、谷口さんの東京五輪論を聞く機会を逃してしまった。あれからもう5年もたつ。

『明日を拓く現代史』(谷口智彦/ウェッジ)を読んでいて、あーあ、これがそれだったのか、と納得した。本書の第2章「若かった日本の勢いを知る」がまさにそれである。1964年の東京五輪とはどんな瞬間であったのか。これは是非、日本人として知っておきたいことである。ある世代以上の人にとっては自明のことであっても、若い人には何の事だかさっぱり分からなかったりする。本書に登場するブルーインパルスの演技や嘉納昌吉の「花」が誕生した経緯などは、ワシも知らんかった。

(そういえば当欄の2008年5月5日には、聖火ランナー、坂井義則氏に関するエピソードを紹介してあるので、良かったら後で読んでくれたまえ)。

○ということで、GW企画、最近読んだ本の紹介第2弾は、不肖かんべえの兄貴分として当欄でもよく登場する谷口智彦氏の新著である。本書は、普通の学校での歴史教育では完全に抜け落ちているのだが、常識として知っておきたい現代史をカバーしている。著者・谷口氏が、「海上自衛隊士官候補生たちにこれを伝えたい」と思った内容を、慶応大学大学院SDM研究科で授業として教えるために、教材として書き下ろしたもの。現代史というよりも「当用史」なんだそうだ。

○こんな授業を受けた学生はラッキーだと思う。戦後日本経済の目覚ましい成功や、ニクソンショックなどの経緯は、学校では教えてくれないけれども、世の中に出ると一応知っておかなきゃいけないことである。米英関係を一枚岩と思っちゃいけない、スエズ危機の時は大変だったんだよ、なんて話も、少しでも戦後の国際関係史をかじった人には自明のことなんだけど、そういうことを知る機会はあまりない。この辺をキチンと勉強してない人が、得てして陰謀論に嵌ったりする。

○などと、つい偉そうに言ってしまったが、本書に出てくる中印戦争の経緯や、大躍進に対する評価などはワシも初耳であった。それからマンガなどの「クール・ジャパン」は、部活動の自由さから生まれている、という指摘も新鮮だ。日本の子どもたちは、とっても安全で自由な環境に置かれている、というのはなるほどその通りかもしれない。

○ところが世の中はわからないもので、本書がゲラ段階になったところで、谷口さんは安倍政権のスタッフとなって官邸勤めの人となった。今はきっとモスクワに行っているはず。お蔭で気易く会える人ではなくなったけど、安倍首相の演説のそこここに「谷口節」を読み取ることができる。ま、それはそれとして、本書は読んでおいて損はないですよ。


<4月30日>(火)

○中学高校の同級生が3人で集まって飲み会。いろんな話が飛び交った中で、これはちょっとすごいんじゃないかと思ったのがボウリングの話であった。

○ボウリングは誰でもお付き合いで1度くらいはやるスポーツだが、ゲームを究めようとしている人はそれほど多くない。だからボウリング上級者の境地というのは、なかなか想像しがたいところがある。ボウリングに凝って、毎週のように大会に通い、マイボール、マイシューズは当然で、いよいよアベレージが200を超えてくるとどんな景色が見えてくるか。

○まず1ゲームあたり、ストライクを4〜5個は取らなければならない。それ以外はできれば全部スペアを目指す。その域に達すると、残り1本ならば9割の確率で倒すことができる。と言っても、F―Iみたいなスプリットができてしまうと、いかなプロでも滅多に取れるものではないので、とにかくスプリットを作らないように投げる。行先はボールに聞いてくれ、などというのは論外である。

○ボウリングというゲームは、とにかくストライクを取ると有利にできている。それもできれば連続して取りたい。ごく単純な順列組合せの原理により、ストライクの数が5個以上になると、ほっといてもダブル、ターキーの確率が上がるので、それだけ高得点になる。だからゲーム開始時点では、とにかくパーフェクトを狙うつもりで投げる。おそらくは野球のピッチャーも、「パーフェクト→ノーヒッター→完封→完投→せめて勝ち投手」みたいな心境をたどるはずである。なおかつ、調子が悪くて崩れそうになったときも、じっと我慢して投げる、という心がけが重要である。

○ちなみにボウリングのパーフェクトゲームは、思ったより簡単にできてしまうものらしい。ゴルフのホールインワンや、麻雀の九蓮宝燈は、いかなプロであっても運がなければ実現できない。その点、ボウリングは普段の努力の延長線上にパーフェクトがある。少なくとも「保険」は売ってないようだ。

○さらにハイレベルになってくると、その日の好調、不調を分けるのは「レーンのコンディション」であったりする。今日のレーンはどれくらいアブラが引いてあるか、滑り具合はどうか、というのを早めに見抜いて、レーンの状況にあった投げ方をしなければならない。だからプロと言えども、慣れないボウリング場でプレイする時は苦労する。トップクラスになると、慣れないレーンでいかに癖を見抜いてペースをつかむか、というテクニックが勝敗を分けるのだそうだ。

○つまり、どこでも通用する絶対的な強さというものは存在しない。ゴルフで言えば芝目を読む、ビリヤードで言えばその日の湿度を読む、競馬で言えば馬場状況を読む、といった配慮が必要になる。今日の京都競馬場は好天でカンカンの良馬場だから、先行馬が有利だろうなあ、と思っていたら天下のゴールドシップが負けてしまった、てなことがある(とほほほ・・・)。いかな上級者と言えど、勝負ごとに絶対はない。

○ボウリング場のレーンは、どこでも横に39本の木目が走っているのだそうだ。その上で、目印である7個のスパットを目指して投げるのだが、その時点でどうしても3つくらいは狙いからズレることがある。そうなると、ピンの手前ではもっと大きくズレてしまう。アベレージ200でもガーターはあり得る、というのを聞くと、なるほどそういうものかと深く納得するよりほかはない。

○たとえそれが山の中腹に過ぎないにしても、裾野の方から仰ぎ見るその景色はまったく隔絶して見える。なおかつ、山の中腹から見た山頂ははるか彼方に切り立って見えるのだろう。・・・・などと、つい自分好みに大袈裟なまとめ方をしてしまったけど、芸事の話というのは面白いものである。特に自分に縁のない世界の話は。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki