●かんべえの不規則発言



2015年12月






<12月1日>(火)

○水木しげるさんが亡くなられたとのことで、ちょっとひとこと。

水木さんの教え、というものがありまして、その中には「怠け者になりなさい」という項目がある。若い頃は必死に努力しなきゃいけないけれども、中年を過ぎたら怠けることを覚えるべき、というんですね。下手な人が言うと説得力はゼロなんですが、水木サンが言うから重みがあるんです。

○ところがですな、以前に境港市の「水木しげる記念館」を訪ねた時に、晩年の水木サンが海外旅行をいっぱいしていることに驚きました。それこそもう、いろんな場所を訪ね歩いては、妖怪を探していたようなのでありました。とくに太平洋戦争で体験した島々には、足しげく通っていたようです。なかなか年を取ってからできることではありません。

○つまり「怠け者になりなさい」というのは、ただのんべんだらりと過ごしなさいということではなくて、人生は道草や回り道をした方がいいんだよ、せっかくの好奇心を眠らせちゃいけないよ、ということを言っているんだと思います。年を取ってからは、自覚的に浮世の義理を欠いて、自分の好きなことをしなきゃいけない。そうでないと、自分は何が好きだったかを忘れてしまうから。

○怠け者になり損ねると、つまらない老人になってしまうかもしれません。気をつけねばなりませぬぞ。


<12月2日>(水)

○昨日はアジア調査会の国際シンポジウムに出かけて、台湾の最新情勢について勉強してました。いろいろ収穫があったのですが、ちょっと驚いたのはこの話。


●台湾・馬総統、南沙諸島を視察計画か 実効支配する太平島

http://www.sankei.com/world/news/151125/wor1511250051-n1.html 

 【台北=田中靖人】複数の台湾メディアは25日までに、台湾の馬英九総統が12月、南シナ海のスプラトリー(台湾名・南沙)諸島で実効支配する太平島の視察する計画があると報じた。馬総統は24日、「可能性を排除したことはないが、確定前には意見は述べない」と語った。

 日程は、1946年に当時の中華民国が同島を接収した12月12日が有力。同島では現在、滑走路の改修や埠頭の拡張工事が来年1月を目標に行われており、一部が完工しているという。馬総統は、C130輸送機で訪問。南シナ海の島嶼に対する領有権の主張をアピールするとみられる。

 同じく同島の領有権を主張するベトナムやフィリピンが反発する可能性があるほか、一部報道では米国も難色を示しているという。2008年2月には陳水扁総統(当時)が視察に訪れている。


○12月12日ということは、来週の土曜日です。まあ、天候事情などもあるので、12日ジャストとはいかないかもしれない。1日遅れると、今度は南京大虐殺の記念日と重なりますな。向こう10日ほど、馬英九は行くのか行かないのと騒がしくなるんじゃないかと思います。

○なにしろ太平島は、台湾が実効支配して人を常駐させているとはいえ、中国とベトナムとフィリピンが領有権を主張している。昔は日本の領土であって、海軍が「長島」と命名して潜水艦基地まで作っていた。戦後は1952年の日華平和条約によって、日本が正式に放棄したことになっている。もちろん日本としては、いまさら領土的野心などないからどうでもいいんですが、こんな微妙なところへトップが足を踏み入れるとなると、東南アジア一帯に「李明博大統領の竹島上陸」みたいな反発が広がることになるんじゃないでしょうか。

○あらためて思い出すわけですが、もともと「九段線」ということを言い出したのは、中華民国だったわけであります。それを言ったら尖閣諸島もアレなんですけど、中国は「ひとつの中国」原則にのっかかって、領土や領海の主張をしておるわけです。南シナ海をめぐって米中の対立が先鋭化しているさなかに、馬英九総統がこういう挙に出ると、なんだか中台が協力し合っているようにも見えます。一方で台湾としては、「日米中の間で、バランスを保っていく努力の一環」という位置づけなのかもしれません。

○それにしても、陳水扁総統が2008年の任期切れ間近に、同じことをしていたというのには呆れるほかはない。今回の馬英九さんも、総統選の1カ月前に同じことをやろうとしているわけでして、一種の「センチメンタル・ジャーニー」なんでしょうかね。南シナ海へのこだわりは、台湾政治においては超党派のコンセンサスであるのかもしれません。とはいうものの、たぶん次期総統になるであろう蔡英文さんが、この件についてどういう態度をとるかは未知数であります。

○もうひとつ、総統選挙は年明けの1月16日ですが、次期総統が就任するのは5月20日。この間の約4か月間に、レイムダックの馬英九がどんなことを狙ってくるか。先の中台首脳会談で予定終了、ということではなくて、もうちょっとレガシーづくりを考えているように思われます。米中の狭間で、いろんな駆け引きがありそうです。


<12月3日>(木)

○この季節の定番ですが、日本貿易会の貿易動向調査が本日、発表になりました。来年の経済を予測するうえで、重要な材料を提供してくれると思います。お役立ていただければ幸いです。


●商品別貿易の見通し(通関ベース)

*2015年度 〜輸出は新興国の成長鈍化を受け微増、輸入は資源価格下落の影響で減少

輸出総額は2014年度比1.6%増の75兆8,610億円となる。輸出数量が同2.2%減、新興国の成長鈍化で減少。輸出価格は同3.9%上昇。米国向け輸出が円安ペースを上回って増加。米ドル以外の通貨に対し円高が進行、対米ドルでの円安効果を打ち消す。
輸入総額は2014年度比7.1%減の77兆8,550億円となる。輸入数量は同1.5%減、輸入価格は同5.7%下落。円安の進行を上回る資源価格下落の影響で輸入価格が下落するとともに、輸入数量が減少し、輸入総額の減少幅は拡大する。

* 2016年度 〜輸出は世界経済の成長ペースで増加、輸入は堅調な内需により増加に転じる

輸出総額は2015年度比2.0%増の77兆3,870億円となる。輸出数量は同0.5%増、輸出価格は同1.5%上昇。輸出の50%超を占めるアジア通貨に対する円高と数量の伸び悩みは続く。
輸入総額は2015年度比1.7%増の79兆1,500億円となる。エネルギー価格下落が実質所得を拡大し国内需要を押し上げるとともに、2017年4月の消費増税を控え、輸入数量は同0.9%増と微増に転じる。資源価格の下落は落ち着き、輸入価格は同0.8%上昇と持ち直す。


●経常収支の見通し

*2015年度 〜 貿易・サービス赤字縮小、第一次所得収支黒字拡大で経常収支は2年連続黒字拡大

経常収支は17兆3,720億円の黒字となる。2014年度の7兆9,309億円を大幅に上回り、2年連続で黒字が拡大する。輸入が減少に転じ貿易赤字が2,240億円まで縮小、サービス収支は特許等使用料の受取増、訪日外国人旅行者の大幅増加による旅行収支の黒字拡大により赤字が 1兆5,610億円に縮小し、第一次所得収支は海外直接投資先からの配当受取増により黒字が21兆1,240億円に拡大(過去最大を3年連続で更新)する。

* 2016年度 〜 貿易収支は黒字に転じ、経常収支は3年連続の黒字拡大

経常収支は18兆5,190億円の黒字となり、3年連続での黒字拡大となる。内訳は、輸入を上回る輸出の増加により貿易収支が6年ぶりに320億円の黒字に転じ、サービス収支は受取増が続き赤字が1兆620億円に縮小、第一次所得収支黒字は引き続き拡大し21兆5,690億円となる。



○経常収支の黒字が18.5兆円、というのは大きいですね。GDP比で言えば3%を超えてしまいます。日本の黒字がなくなる、という予想がされたのは、わずか4年ほど前だったのですが。この調子だと、米国の利上げはあっても、来年は円高じゃないですかね。それじゃあ困るという人はいっぱいいるかもしれませんが。


<12月4日>(金)

○本日は講演で埼玉県大宮市へ。

○埼玉県内の経済は、本田技研があるから自動車関連、それに大正製薬があるから医薬関連が中心かな、と思っておりましたところ、武蔵野銀行さんによれば、「ただいま急成長しているのが食品加工業なんです」とのこと。なんと生産額では、1位自動車、2位食品、3位医薬という順序になっているとのこと。

○理由は簡単で、全国のコンビニに配送される食品の多くは、埼玉県内で作られているのです。確かにサンドイッチなんかを見ると、そう書かれてますよね。何しろ大量に生産して、なおかつ頻度を多く配送しなければならないので、交通の便が死活的に重要であるわけです。そういう意味では、圏央道の開通はグッドニュースでありますな。

○もうひとつ、今年、最も喜ばしいニュースは、「県内から初のノーベル賞が出たこと」。そうなのです、梶田先生は東松山市出身、川越高校卒で埼玉大学なんです。「職場が市内にある」(東大柏の葉キャンパス)ということで、当柏市でも喜んでおりますけど、なるほどそっちの方が喜びは深いでしょう。

○そういえば今年はもう一人の大村智先生が山梨大学、昨年の中村修二さんが徳島大学だから、地方大学の受賞ラッシュなんですな。日本ならではのスゴイ現象だと思います。


<12月6日>(日)

○昨日、『OO7/スペクター』を見てきた。たぶんシリーズの中でも「当たり」の方だろう。前作の『スカイフォール』も良かったけど、ダニエル・クレイグが演じるボンドはやっぱりいいですな。ということで、ちょっとだけこの映画について語りたくなりました。

○『007』シリーズにおいては、ジェームズ・ボンドは絶対に死なない。そのことは、見るものは皆わかっている。なにしろ、次作を作ればかならず見る人がいるのだから、金の卵を産むめんどりみたいなものである。そしてソニー・ピクチャーズの収益は、今のソニーグループにとって非常に貴重である。

○かくして下手をすると、見る側の緊張感が薄れてしまう。ロジャー・ムーア主演の頃の『007』がそうだったけれども、安心できるジェットコースターみたいになっちゃうんですよね。そこでどうするかというと、怖い悪役を創造しなければならない。とてつもなく強くて、邪悪な意図を持ち、こんなのを敵に回したらやってられない、南無南無、と観客に思わせるような存在を編み出す必要がある。

○そこで本作では、昔のシリーズにも登場した「スペクター」という悪の秘密結社を登場させた。(ちなみに前作『スカイフォール』から、新しいM、新しいQ、新しいマネーペニーが登場している。3人とも本作でも非常によろしい)。この新しいスペクター、エンブレムはカッコいいし、親玉も悪役ぶりが板についているし、小道具類もいちいち気がきいている。問題はですな、この悪の組織の行動原理がよくわからないのである。

○その昔、悪の組織の目的はと言えば「世界征服」で良かった。今の世の中で、世界を征服したいと志すものはおらんだろう。なにしろ征服してしまったら最後、中東情勢やら南シナ海やらエボラ熱などの問題に対して責任を追わなきゃいかんのだから。いまどきマジメに世界征服を目指しているのは、「秘密結社鷹の爪団」くらいであろう。それじゃ怖くないわな。

○だったら「破壊」が目的なのか。それだったら、現実の世の中の方が映画よりもよっぽど怖い。かといって、ISILを敵役にした映画を作るのは、さすがにハリウッドも二の足を踏むだろう。

○それでは「カネ」が目的なのか。確かにスペクターは悪どい金儲けをやっている様子だが、その割には無駄なことにいっぱいカネを使っている。砂漠の中の秘密基地なんて、建設コストがかかってしょうがないぞ。保険も掛けられないし、どうやってメンテナンスするんだ。・・・・とまあ、スパイ映画を見るときに、こういうことを考えてはいかんのかもしれないが。

○考えれば考えるほど、「悪の組織」の行動原理は難しいのである。その一方で、世の中のために良かれと思って活動している団体が、むしろ害を為している(例:シーシェパード)なんてこともあるわけでして・・・。

○つくづく「リアルな悪」を造形することが難しい世の中になってしまいました。ジェームズ・ボンドの方は、幼少期のエピソードが語られたりして、どんどんリアルさを増しているというのに、悪役はだんだんマンガチックになってしまうのである。なおかつ、シリーズが進むにつれて、悪役は強さをインフレさせなければならないという十字架を背負っている。

○今年は『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E』など、スパイ映画がたくさん作られている。年明け早々には、『ブリッジ・オブ・スパイ』(トム・ハンクス主演、スティーブン・スピルバーグ監督)が封切りされる。この作品では、「冷戦時代を描く」という手を使っている。やっぱり「今の時代を舞台にした」スパイ映画は難しいのでありますよ。どうしたらいいんでしょうねえ。


<12月7日>(月)

○『ブレークアウトネーションズ』の翻訳者で、大学の同級生でもある鈴木立哉さんから献本。題して『金融英語の基礎と応用』。これがすごい本なんです。

○例えばですな、「株価が上がる」を英訳するときに、何通りの言い方を思いつきますか。あるいは「じり高」と「急騰」はどういう風に表現しますか。さらに"rise"と"increase"と"soar"と"gain"だと、どれがいちばん強い言い方なのか。本書によれば、「じりじりと上昇する」は"grind higher"で、「徐々に上昇する」は"creeping up"、さらに「強含み」「上昇する」「急騰する」「急伸する」などなど、30種類もの訳語を紹介している。さらに例文もついていて、これだけマスターしたら英作文能力が(少なくとも金融に関しては)、向上することは間違いないでしょう。

○「破綻処理」の英語表現も実に豊かです。ああ、なんだか2009年頃の世界経済を思い出すなあ。

●resolution(破綻処理)

●default (債務不履行)

●maturity extention(償還延長)

●restructuring(債務再編)

●rescheduling(リスケジューリング)

●haircut(ヘアカット)

●bail-out(ベイルアウト=緊急融資)

●bail-in(ベイルイン=債券保有者の損失負担による救済)

●write down(償却する)

●loss-absorbing(損失吸収)

○来年は、こういう単語が飛び交うような年にならければいいですけど。それはともかく、本書は3500円もしますけど、手元に置いておいて損はないと思いますぞ。


<12月8日>(火)


○本日は郡山市で講演会。福島市にはよく行くんですが(福島競馬の七夕賞のとき)、東北新幹線をここで降りるのは初めて。県内ではいわき市を抜いて第1位の人口なんだそうで、政治は福島市、経済は郡山市、という分担になっているようです。

○ロードサイド店で多い「幸楽苑」というラーメン屋さんは、会津若松市が発祥の地で、今はこの郡山市に本部があります。言われてみれば、幸楽苑のスープは喜多方ラーメンと似ている気がしますな。とんこつスープが首都圏で隆盛を極める昨今でありますが、醤油味あっさり系、懐かしの昭和の味、という路線であります。

○当方としましては、文字通りサッと行ってサッと帰るだけなんですが、帰りに新幹線を待つ時間が30分ほどある。するとまことに好都合なことに、郡山駅の構内に「もりっしゅ」という地酒バーがありまして、カウンターで地元のお酒をワイングラスでいただくことができる。まずは郡山の金寶、それから会津の末廣山廃。〆て800円。いやはや、結構であります。

○旅先で飲む地元の日本酒というのは、まことに楽しいものであります。年を取ると、しみじみと実感しますね。まして東北は格別であります。ホントだったら、温泉も行きたいんですけどねえ。

○実はこの1週間というもの、ピロリ菌治療のための薬を飲んでおりまして、ずっと禁酒状態だったのであります。こんなに長い期間、アルコールフリーだった状態は長らくありません。今日は朝から、今宵は久しぶりに何を呑もうか、と案じておったところでしたので、まことに結構なお酒解禁でありました。

○ちなみに郡山市の土産物は、薄皮まんじゅうとくるみゆべしであります。これは会津出身のナベさんのご推奨。今週末には、ご一緒に北京に行く予定であります。PM2.5が非常に濃厚で、しかも南京事件の記念日(12/13)にそんなところへ行っていいのか、という気もいたしますが、まあ、そこはなんとかなるでありましょう。中国経済を見てくるつもりでおります。


<12月10日>(水)

○今日は大阪へ。クラブ関西の午餐会で講師を務める。これで3年連続、テーマは「来年の日本経済展望」である。来年の経済展望を語るという作業は、どんどん難易度が挙がっているような気がする。特に来年は海外情勢が不穏なところがあって、なかなかに難しいですぞ。

○経済展望とは別に、「来年の政治状況」というテーマもあるらしい。こちらは「安倍一強は変わりません」というのが結論で、確かにほかに言いようがないですな。先日、某所で某政治記者が、「景気は不安だし、憲法問題にTPPもある。来年の参院選は、安倍政権にとっても容易なことではありません」と熱弁しているのを聞いた。思わず質問したくなったな。「あの〜来年になっても、民主党ってまだあるんでしょうか?」と。

○本日発売の『中央公論』2016年1月号では、「時評2015」執筆陣による座談会が掲載されています。「国際社会がテロに揺れる中、日本はシルバー民主主義をどう乗り越える?」という大層な表題がついておりまする。これも一種の来年の予測となっております。

○中央公論の「時評」執筆陣は、本号から新しくなっております。連載がひとつ終わるとホッとするけど、ちょっとさびしくもあります。まあ、これで遠慮なく軽減税率の問題で、読売新聞の悪口が言えるといういう気もするけどねえ。


<12月11日>(木)

○昨日寄稿した原稿が掲載されたのが東洋経済オンラインで、「今後の世界経済には産油国に用心が必要だ」

○続けて昨晩、入稿した原稿はウェブフォーサイトで、こちらは明日、掲載予定。テーマは「日米の映画産業について考えてみる」。

○そして今日の午前中には某雑誌の座談会を収録。お相手はぐっちーオバゼキ先生である。まことに楽しき放談会なるかな。

○夕方からは上杉隆さんの「ニューズオプエド」へ。放送開始時刻の16時になっても上杉アンカーは登場せず。といっても、皆慌てるわけでもなくごく自然に放送開始。

○夜は某商社のOさんを囲む会。昔の南アフリカ共和国はどんな感じだったか、日本の高度成長時代は、どういう雰囲気であったかという話など。

○これで明日は北京へ。全然準備をしていないのですが、果たして無事に着けるでしょうか。


<12月12日>(土)

○北京に到着。現地時間午後5時はもはや薄暗く、なるほど聞きしに勝るスモッグであります。19世紀末のロンドンもこんな感じだったのでしょうか。しばらくたつと、口の中がざらついてくる感じです。

○今回は中国社会科学院日本研究所のご招待なのですが、思えば2005年と2007年に岡崎研究所ご一行でここに来ている。ホテルも同じ。このホテル、もとは乾隆帝の娘さんの屋敷だったとかで、いかにも年季を経た建物なのだが、10年前に来たときと比べて、ずいぶん中身がきれいになっている。それどころか、入り口には「Merry Christmas!」と書いてあって、ツリーが飾ってある。思わず写真を撮ってしまったけど、だからといってフェイスブックに載せられるわけではないのである。

○中国の日本研究所は、研究員が約50人もいるという堂々たる大所帯で、アメリカ研究所に次ぐ規模なんだそうだ。政治経済はもとより、日本文学のことまで詳しいし、どうかするSAMPの歌まで知っているような人たちである。ここ数年、日中関係悪化で不遇の時代が続いていたようだが、今後はこんな日中対話も増えるのでありましょうか。とりあえず、どんな雰囲気であるのかは明日の会議で体感してまいりましょう。


<12月13日>(日)

○本日、12月13日は南京大虐殺の記念日なのであります。こういう日に北京で日中の対話を行うことには、果たしてどんな意図があるのかと、内心では戦々恐々、疑心暗鬼、面白半分で参ったわけですが、どうやら深い意味はなかったようです。年末を控えて急に決まって、昨日は国内の会議があって、今日は国際会議で、ああそういえば、今日はそうだったよね、といった感じであったようです。

○だったら歴史認識問題はどうでもいいのか、というともちろんそんなことはないのであります。日本側がちょっと地雷を踏みに行くような発言をしたら、案の定、逆鱗と弾劾のあらしが吹き荒れたのでした。中国社会科学院主催の本日の会議は、日中の記者がオブザーバーで来ておりましたので、そりゃあ見過ごせませんわね。やっぱり地雷は踏んでみなければなりませぬ。

○その一方で、本日の中国国内の「南京」に対する扱いはきわめて抑制的であったように思われます。CCTVではもちろん「抗日ドラマ」をやっておりましたが、7時のニュースの取り扱いは冒頭ではなくて2番目でありました。また、昨年は習近平総書記自らが南京に赴いたわけですが、今年は常務委員の出席はなかったのだそうです。

○政治や安全保障関係については、いつもと同じようなやりとりであったという印象です。強いて言えば、「GDPで世界第2位になった中国」「2030年代には米国を逆転する」といった言い方を何度も繰り返しているなあ、ということが印象に残りました。アメリカとは真面目に対抗する、日本は競争と協力の中間くらいで、といった感じでしょうか。

○経済面では「一帯一路」構想が中心議題でありました。中国国内的には大いに盛り上がっているのだけれども、中身はまだそれほど詰まってはいない感じですね。だから、外国人を呼んではいろいろと「瀬踏み」をしているらしく、今日の日本側の反応などもじっくりとみているのでありましょう。ちなみに当方からは、「一帯一路が”国際公共財”を提供するものであれば大いに結構、しかし中国の国益を追求するものであれば、うまくいかないのではないか」と申し上げておきました。

○夜は宴会。すわ乾杯の嵐か、と思ったら今宵はノンアルコールでした。さて、いったいどういう理由があったのでしょうか。

仮説その1:綱紀粛正により、シンクタンク会合ではお酒が出せなくなっている。

仮説その2:外国人接待のためならお酒を出してもいい決まりだが、今日は中国人の方が数が多かったので認められなかった。

仮説その3:健康志向になって、お酒を控えている。

仮説その4:日曜日の夜だから、今日くらいは早く帰りたかった。

○まじめな話、最近の中国では高いお酒が売れなくなっているんだそうです。終わってから、日本人だけでちょっくら外へ飲みに出かけました。乾杯攻勢は肉体的にきついのですが、なければないで変に寂しい気もいたしますなあ。


<12月14日>(月)

○今日は帰国。とはいえ、空は曇天、目先はスモッグ、空気は悪くて、人は多いし、クルマは渋滞している。なかなかに難行苦行なのである。

○北京空港でエアーチャイナの羽田行きの便はやけに不便なところにある。しかも出発は1時間遅れである。ストレス発散のために、ワシとしてはめずらしい行動だが、デューティーフリーへ行ってバランタインを購入する。だって中国出張のたびに人民元が増えるんだもの。ホントは白酒が良かったんだけど、どれがいいのかわからないから、分かりやすく高いお酒を選ぶ。

○ちなみに行きと帰りの飛行機の中では、池上彰&佐藤優『大世界史』、宮家邦彦『日本の敵』、そして遠藤誉『毛沢東』などをせっせと読みました。

○羽田空港についたら、なんとなく自分が殺気立っていて、前ゆく人を押しのけそうになっていることに気づく。慌てて軌道修正。チャイナモードはもうお終い。ちゃんと夜空が見える国に住んでいるワシらは幸いなり。


<12月15日>(火)

○本日発表された今年の漢字は、案の定「安」でありました。ちなみにトップテンはこんな感じ。


1位 「安」 (アン/やすい・やすんじる・いずくんぞ) 5,632票(4.34%)
2位 「爆」 (バク・ハク・ホウ/はぜる・さける) 4,929票(3.80%)
3位 「戦」 (セン/いくさ・たたかう・おののく・そよぐ) 4,556票(3.51%)
4位 「結」 (ケツ・ケチ・ケイ/むすぶ・ゆう・ゆわえる・すく)3,606票(2.78%)
5位 「五」 (ゴ/いつ・いつつ) 3,339票(2.58%)
6位 「賞」 (ショウ/ほめる・めでる) 2,083票(1.61%)
7位 「偽」 (ギ/いつわる・にせ) 1,893票(1.46%)
8位 「争」 (ソウ/あらそう・いさめる) 1,875票(1.45%)
9位 「変」 (ヘン/かわる・かえる) 1,819票(1.40%)
10位 「勝」 (ショウ/かつ・まさる・すぐれる・たえる) 1,735票(1.34%)


○「安」と「爆」と「結」は、当欄の11月30日で予測していた通りでありました。あんまり意外性がなかったですな。「憲」がまったく入っていないのは、そんなことでいいんでしょうかね。まあ、ワシが心配することではないですが。

○つくづくこういうものは事前に考えるうちが面白くて、答えが分かってしまうと「なーんだ」ですな。さて、今年も残り半月となりました。これから先はいよいよ押し迫ってまいります。


<12月16日>(水)

○熊本日日新聞さんの政経懇話会で、今日は熊本に来ております。前回は2010年9月に呼ばれて、1日に熊本市と八代市でダブルヘッダーを務めました。今日はそれ以来。まあ、5年もたつと世の中はいろんな点が変わります。5年前には、熊本市と八代市の往復は自動車でした。1時間以上かかって疲れた記憶があります。今は九州新幹線で、わずか11分で到着してしまいます。なるほど、これは便利。

○というか、つい先日、北京までの往復をした身にとっては、国内の移動はなんと楽ちんで心休まるものでありましょうか。北京では大気汚染がいちばんひどいのが朝方で、朝起きて窓の外を見ると真っ白で、その瞬間に気分がくらーくなったものです。朝起きてもPMとはこれいかに・・・。

○熊本での話題はといえば、来年3月に行われる県知事選挙。現職の蒲島知事が3選を目指す一方で、幸山前熊本市長が挑戦状をたたきつけ、県内を二分しかねない情勢となっている。地方の首長選挙がガチンコ勝負で盛り上がるというのも近年では珍しく、果たしてどういうことになりますか。来年3月27日の選挙日をチェックしておきましょう。

○ということで、熊本市と八代市を1日で駆け回ったわけですが、なんと5年前の当方の講演を覚えてくれている人がいるのに感動いたしました。あれは確か、民主党の菅政権下で尖閣諸島の問題が急浮上して、中国人船長を釈放するかどうかで大荒れになっていた時期だったと思います。あのときの解決策は、個人的には仕方がなかったと思いますけれども、思えば不評惨憺たるものがありましたなあ。特に海上保安庁職員が、問題のビデオを流出してしまった後は。

○それから5年がたち、いまじゃ中国社会科学研究院の人たちまでもが、「この問題は今は解決不能であるから将来の課題としよう」と言うようになっている。文字通り、5年なんてあっという間であります。次の5年では果たしてどんな変化があるものやら。

○明日の熊本市はとっても冷え込むという評判です。予想の最低気温が4度というから驚きます。九州は暖かいと思ったら大間違い。ちゃんとコートを着てきて大正解ということになります。


<12月17日>(木)

○FOMCがついに利上げを決めました。ということは、モーサテ・コメンテーター陣でただひとり「1月利上げ説」を唱えていたワシだけが外れて、他の人は皆当たったということである。いや、これはめでたい。

○なにはさておき、9年半ぶりの利上げ、7年ぶりのゼロ金利解除を素直に祝福いたしましょう。本日の株価の上昇は、目の前の不透明性が消えたことを歓迎しているのでしょう。為替の動きも小さく、FRBとしては「してやったり」の利上げとなったことになります。「年内には・・・」という過去の約束も果たすこととなり、市場とのコミュニケーションも結果オーライとなりました。

○ただし今週のエコノミスト誌は、「本紙であればまだ利上げはしない」と書いていました(After lift-off 12月12日号)。つまり「利上げはデータ次第であるべきで、日付次第であってはならない」(Data-dependent, not date-dependent)というわけ。雇用は確かに回復したが、インフレ率はまだ低い。確かにFRBとしては、あれだけ年内と言ったからには引っ込みがつかず、そこは少々「見切り発車」的な要素がなかったとは言えない。

○縁起でもない話をすれば、2000年8月に速水・日銀が行ったゼロ金利解除は、「ハイテクバブル崩壊」と重なって景気が腰折れし、再びゼロ金利に戻すことになっている。今回の利上げもまだそういうリスクが残っていて、新興国経済における資金流出、中国経済の減速、石油価格下落による産油国経済の苦境など、引き続き慎重に見ていく必要があるだろう。

○ここで余談ながら、このタイミングで米国が石油輸出の再開を決めたことは、ロシアやサウジから見れば「首吊りの足を引っ張る」行為に見えているはずである。プーチン大統領の腸は煮えくり返っているでしょうね。最近、イアン・ブレマー氏が「来年はサウジが危ない」と触れ回っているそうで、そうだとすると来年のTop 10 Risksの上位が垣間見える気がいたしますな。

○この後の市場の関心事は、「今後の利上げのペース」となります。イエレン議長は、記者会見で「gradualに」と言っていました。この言葉は、「1年に4回程度」を意味している。すなわち、年に8回行われるFOMCにおいて、「2回に1回ずつ0.25%ずつあげていく」というイメージで、ハッキリ言ってしまえば「3月、6月、9月、12月」ということになる。0.25x4=1.0となり、つまり1年かけて1%上げるという慎重な姿勢を意味している。

○ただし多くの市場関係者はこの発言を眉に唾していると思う。現に今朝のモーサテでは、来年は鈴木敏之さんが2回、伊藤隆敏先生でも3回の利上げを予想している。「いや、ひょっとするとゼロ金利への回帰もあるんじゃないか・・・?」くらいに受け止めていると思う。さらに言えば、FRBは3度にわたるQEで買い込んだ金融資産4.5兆ドルの売却も行わなければならず、出口政策(正常化)への道のりは果てしなく遠い。小さな一歩が始まったこと、それはやはりめでたいことだと思うのであります。


<12月20日>(日)

○「スターウォーズZ フォースの覚醒」を見てきた。さすがに封切りして間もないので、何を書いてもネタバレになりそうなので、なるべく余計なことは書くまい。

○その代わりに、ウェブフォーサイトで連載している「遊民経済学」シリーズで、つい先日書いた内容をご紹介しておこう(有料サイトです、すんません)。


 ところで映画興行収入の歴代ランキングを見ていて、10億ドル(今のレートで1200億円)以上の作品の中にディズニー映画がやたらと入っていることに気がついた。このラインナップを見ていると、思わず「それってどうよ」と突っ込みを入れたくなってしまう。

○ディズニー作品の上位興行収入

4 アベンジャーズ(2012年) 15.2億ドル
6 アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン (2015年)14.0億ドル
8 アナと雪の女王 (2013年) 12.8億ドル
9 アイアンマン3 (2013年) 12.2億ドル
16 パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト(2006年)10.7億ドル
17 トイ・ストーリー3 (2010年)10.6億ドル
18 パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 (2011年)10.4億ドル
21 アリス・イン・ワンダーランド (2010年)10.3億ドル

 ここ5年くらいのディズニーが、映画の世界でいかに快進撃を続けていたかがあらためて思い知らされる。しかし上の作品群、クオリティ的にはどうなんだろう。果たして時代を超えてファンに愛され、古典になるような作品が含まれているのだろうか。

 企業の論理としてはきわめてわかりやすい。映画産業は石油を掘るような仕事である。当たれば大きいが、外れればゼロになって何も残らない。だから映画製作会社はマーケティング手法を駆使して、確実にヒットするような作品を作ろうとする。一度当たったら、シリーズ化してとことん柳の下のドジョウを追う。まことに合理的な思考経路と言える。

 さらにヒット作が続いて手元資金が増えてくると、新たな大作映画を撮って次のヒットを目指さなければならない。アメリカのことであるから、映画を撮らないでカネを蓄えていると、株主から「だったら配当せよ」と口うるさく責められる。とはいうものの、いつもヒットが続くとは限らない。

 こうして考えてみると、今般、ディズニーがジョージ・ルーカス監督から、『スター・ウォーズ』シリーズ最後の3部作の製作権を買い取った理由が非常に良くわかる。確かにカネはかかるかもしれないが、それこそ『007』のように確実に稼げるシリーズであるからだ。


○つまりディズニーが「スターウォーズ」最後の3部作を製作するのは、徹頭徹尾、資本の論理に基づいているということである。ゆえに「いい映画を作ろう」ではなく、「確実にカネの取れる映画にしよう」という目的になる。ターゲットとなるのは、ワシのように若い頃に「エピソードW A New Hope」を見た世代であろう。

○で、そういう世代としては、ディズニーの狙い通りに楽しませてもらいました。なにより、ハン・ソロ(ハリソン・フォード)の今の表情に、この40年ほどの歳月を感じ入りましたな。その間、見ているワシらの側も年をとったのだ。まあ、9つの物語全部を見ることができるとは、正直、思ってはいなかった。後の2本もかならず見るだろう。

○これだけ言っておこうか。「親の銀河が子に報い」・・・って、それがネタバレですって?いや、そんなことないっしょ。スターウォーズは昔からずっと家族の物語ですよ。


<12月21日>(月)

○久しぶりに早起きして「モーサテ」に出動。本日のゲストは岡三証券チーフエコノミストで、つい先月までは日銀勤務であった愛宕伸康さんと一緒。佐々木キャスター、瀧口アナとの掛け合い「今日のオマケ」はここをご参照。愛宕さんからは、「テレビに出るのは今日が初めて」「日銀の中にいるのと、外にいるのでは金融政策決定会合の受け止め方はまるで違う」など、興味深い発言が相次ぎました。新たなモーサテファミリーとして、ご活躍を祈っておりますぞ。

○特集テーマとしては、来年の「絶妙な政治日程」を取り上げました。ダブル選挙はあるのか、ないのか。個人的にはない方に賭けますが、ダブル選挙はチラつかせることに意義があるわけで、野党の選挙協力の出鼻をくじくには格好の牽制となると思います。でも、意外と2016年は年末あたりに「ダブルじゃない解散・総選挙」があったりしてね。

○「今日の経済視点」は「財政規律」としました。安倍一強と言われる今の永田町ですが、それをいいことに「軽減税率の拡大」やら「定額給付3万円」とか、財政は緩みっぱなしです。それを野党が批判できればいいのですが、選挙を控えていてはやりにくいでしょうね。そういうところがちょっと嫌な感じです。今の日本国債は、中国や韓国よりも格付けが低くなってますので、2016年は財政規律の問題が避けて通れないと思います。


<12月22日>(火)

○今朝の文化放送「くにまるジャパン」。週末に見た『スターウォーズZフォースの覚醒』について大いに語ってやろうと思って勇んで出かけたところ、邦丸さんも鈴木ずん子さんも「スターウォーズは1作も見たことがない」人であることが判明。ええっ、そういうことってあり得るの?と驚くことしきり。まあ、でもまだ見てない人の手前、ネタバレになるような話はできないので、かえってよかったかも。

○本日の話のポイントは、ディズニーが2012年にルーカスフィルムを40億ドル(4800億円!)で買収していて、それでスターウォーズ最後の3部作を製作することになった、ということです。今の映画産業はとてつもないグローバル化が進んでいて、興行収入はアメリカ国内が3割で、海外で7割を稼ぐという構造になっている。だからいいコンテンツ(知的著作権)には、いくらカネをつぎ込んでも元が取れてしまう。つくづくすごい世の中になったものなのです。まして『スターウォーズ』のように古いファンがついているストーリーは、まことにテッパンのカネのなる木ということになります。

○そうしたら、今週のThe Economist誌が、"Star Wars, Disney and myth-making"というカバーストーリーを掲げていて、今世紀に入ってからのディズニーの快進撃はほとんどがM&Aのお蔭であるという分析をしている。すなわち2006年にジョブズからピクサー社を買収して『トイストーリー』シリーズを作り、2009年にマーベル社を買収して『アベンジャーズ』を作って一発当て、さらに今回は『スターウォーズ』で一儲けしようとしている。映画産業とは本来山師のようなものだったはずなのに、ほとんど不動産業のように手堅い手法でヒットを続けているわけであります。

○21世紀のストーリーテラーは、ずいぶんと不思議な進化を遂げたものであります。良いことなのか、悪いことなのかはわかりませぬが。


<12月23日>(水)

○今週の週刊ポスト(2016年1月1・8日号)に掲載された座談会(ぐっちーオバゼキ、かんべえ)の前半部分が、ヤフーニュースに転載されているのでリンクを張っておきます。(アベノミクス 手法は100%間違っているが結果は現時点ベスト)。

○というのも、久しぶりに週刊ポストの現物が会社に届いたんですが、これを持っているとちょっと恥ずかしい。表紙に名前が出ちゃっているのですが、大きな文字で書かれている見出しがすごいんです。「死ぬまでSEX」とか「超ゴージャスSEXY水着ヌード」とか。社内で他人に見られたら、もろにセクハラです。この雑誌、いつの間にこんな風になっちゃいましたかね。

○なおかつ、知人たちからは「電車の吊り宣伝広告で見ましたよ」などと言われるのでさらに焦る。「大場久美子55歳、グアムで見せた最新ビキニ」なんて、皆さん見たいんですかねえ。しかもこの雑誌、袋とじページがあったりして、これを開けたものかどうしたものか、ちょっと迷っています。はてさて。


<12月24日>(木)

○聖なる夜だというのに、明日朝が締め切りで明後日が掲載というウェブフォーサイトの原稿をせっせと書いている私。とほほほ。

○なおかつ仕事は終わらず、明日夜はこういう番組に出没する予定。


●NHK BS「国際報道2015」 午後10時〜10時50分

年末ハイライトA「『爆買い』中国と世界経済」

ギリシャの債務問題、TPP合意、フォルクスワーゲンのデータ偽装など今年も様々な経済ニュースが世界を駆け巡った。その中でもとりわけ大きな注目を集めたのが中国経済だ。今年の新語・流行語大賞にも選ばれた「爆買い」。さらに一帯一路構想、AIIB設立、人民元の世界通貨への仲間入りなど、世界経済への影響は強まるばかり。しかし一方で、今年夏には上海株価指数が暴落するなど不安定な動きもある。年末ハイライト2日目は、専門家とともに中国と世界経済の今年の出来事を振り返るとともに、その行方を展望する。
出演:吉崎達彦さん(双日総合研究所エコノミスト)


○なおかつ、明日は財務省の予算説明会やら何やらで、果たしてワシの来年の年賀状はどうなるのだろうか。


<12月25日>(金)

○財務省の予算説明会でもらった資料に、いろいろ面白いことが書いてある。以下は「軽減税率制度の導入(案)」に関するもの。


●対象品目@ 飲食料品

飲食料品=「食品表示法に規定する食品」から、酒類(酒税法に規定する酒類)と外食サービスを除いたもの。


――さらに「一体商品」(例えばオマケつきのお菓子)については、「一定金額以下の少額の資産であって、主たる部分が飲食料品から構成されているものに限り、全体を飲食料品として軽減税率の対象とする」のだそうだ。ああ、なんて馬鹿らしい。


●「外食」の定義

*牛丼屋やハンバーガー店でのテイクアウトは外食に当たらず、軽減税率の対象となるが、店内飲食は「外食」に当たるので標準税率となる。

*蕎麦屋の出前は外食に当たらず、軽減税率の対象となるが、蕎麦屋の店内飲食は「外食」に当たるので標準税率となる。

*ピザの宅配は外食に当たらず、軽減税率の対象となるが、ピザ屋の店内飲食は「外食」に当たるので標準税率となる。

*屋台での軽食は外食に当たらず、軽減税率の対象となるが、フードコートでの飲食は「外食」に当たるので標準税率となる。

*コンビニの弁当・総菜は、イートインコーナーがある場合であっても、持ち帰りが可能な状態で販売される場合は軽減税率の対象となるが、イートインコーナーでの飲食を前提に提供される飲食料品は「外食」に当たるので標準税率となる。


――どうです、この愚かな制度が導入されることが、だんだん呪わしくなってきたのではないでしょうか。


●新聞・書籍・雑誌について

*「新聞」については、週2回以上発行される「新聞」の定期購読料を軽減税率の対象とする。

*「書籍・雑誌」については、その日常生活における異議、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する。


――新聞はめでたく軽減税率の対象となるそうですが、そこはそう簡単ではないのです。なんとなれば・・・


*「新聞」・「書籍」・「雑誌」は社会通念上の呼称であって、依拠すべき客観的な規定は存在せず、印刷物の中での線引きはできない。例えば、カタログ、カレンダー、楽譜、設計図、切手集、時刻表、問題集、地図帳、写真集、美術作品集、電子書籍(インターネット配信やCD−ROM)等について、どのように考えるか。

*ただし「新聞」については、独占禁止法の告示に、「日刊新聞」との規定が存在。→「日刊新聞」とは、一定の題号を用い、時事に関する事項を日本語を用いて掲載し、日々発行するものをいう。


○いやあ、笑っちゃいますね。「新聞」はいかなる省庁の規制も受けていないために、法律上の定義が曖昧なのです。さあ、どうやって線引きするんでしょうか。仮に独占禁止法の「日刊新聞」の規定を援用するとしたら、これは「日本語を用いて」という規定があるので、例えばJapan Timesは軽減税率の対象にはならないことになります。これって差別ではないのでしょうか。

○さらに「不健全図書類の取り扱い」の項目になると、いよいよアホらしくて書いてられません。声を大にして申し上げますが、軽減税率の導入は天下の愚策です。なんでこんなことになっちゃうんでしょうね。


<12月28日>(月)

○ふーう、やっと仕事納めです。最後の日になっても、溜池通信ができていないで苦しむのはしんどかったです。それというのも、昨日、朝から中山競馬場に出かけて、夕方まで奮闘したのが悪いのでありますが。

○最後の出社日は夕方からは飲み会になってしまいます。これが楽しい。日本企業というのは、こういうところが良いわけでありまして。中国のお酒やらモンゴルのお酒やら、年末の商社にはいろんなお酒が隠れているのであります。

○ということで、明日の「くにまるジャパン」をもって、本年の業務は終了いたします。あ〜あ疲れた。


<12月31日>(木)

○今年最後の更新です。例によって富山に来ておるのですが、今年は暖冬であんまり寒くはありません。ブリは不漁のようです。でもあいかわらず鮨は旨いです。

○昨日はついついNHKで『マッサン』の再放送(総集編)を見てしまい、今日はまた『あさが来た』を見てしまいました。どちらも非常に面白い。

○『あさが来た』は特に玉木宏の新次郎がよろしい。白岡新次郎のモデルは広岡信五郎といいまして、双日の前身の一つである日本綿花の創立者の一人であります。その辺のお話はこちらをご参照。

○当社広報の立場としては、新次郎が遊び人として描かれるとちょっとマズイなあ〜という感じがあったわけですが、この描かれ方がまことに絶妙なわけであります。なかなか世の中にああいう男はおりませんぞ。

○つくづく朝ドラは大阪製作が良いのですな。こんな風に年末になると、いろいろと知らないことを教わるのであります。

○来年も多くのことが学べますように。どうぞよろしく。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki