●かんべえの不規則発言



2012年5月







<5月1日>(火)

○今年の連休は、冒頭に悲惨なバスの事故があったために、やや出鼻をくじかれた感じがありますね。今回、事故があった関越道についてですが、富山の実家との間を、クルマで何度も往復したことのある者として、ひとこと申し上げておきたいことがあります。

○今回のバスは、上信越道を通る予定であったが、運転手は関越道を通った。そっちの方が30キロくらい長いので、それがそもそもの間違いだったのではないか、居眠り運転の原因だったのでは、てな報道を見かけます。これはたぶん誤解でありまして、私の経験から言うと、関越道の方が早く通れるし、運転していて疲れません。どちらを通っても高速料金は同じですが、私なら10回中8回は関越道を選びます。

○まず上信越道はボトルネックが多く、道が曲がりくねっていて、高低差も多く、景色もそれほど面白くない(長野県の皆さま、御免なさい)。唯一の長所は、横川のサービスエリアで炊き立ての「峠の釜飯」を食べられることですかね。特に夜走る場合は、あんまりお奨めではありません。

○それに比べて関越道は直線が長く、景観も変化に富んでいます。特に柏崎の直前にある米山サービスエリアから見る日本海は絶景です。長岡ジャンクションから先の越後平野も、道路が広くて緩やかな上り坂なのでそれほど疲れません。関越トンネルが20キロもあるのがちょっと大変ですが、それは抜けたところの赤城高原のサービスエリアで休憩するのが定跡というものです。

○そもそも関越は、1970年代に田中角栄さんが目白の自宅と新潟県西山町の実家を結ぶために作った、と称される道路です。なにせ高度成長期ですから、カネがかけてあります。古くから通っているだけに、運転手としても慣れがある。それに引き換え上信越は、1990年代に長野五輪に合わせて、ケチケチ作った道路です。その後も、いつまでたっても片側一車線の部分が残っていて、「これはコンクリートが大嫌いなT知事の不作為のせいではないか」などと、あんまりいい印象がありません。

○不幸な事故があった際に、犯人探しが行なわれるのはよくあることです。ただし今回の事故の場合は、インパール作戦における牟田口中将の如き悪人がいる、というわけでもない。とりあえずルートの選定は、責めるべきポイントではないような気がします。


<5月2日>(水)

○これでまた明日から4連休ですが、国際的にはいろいろと賑やかなことになりそうです。「GWは円高株安」という定番も、世界が忙しいときに遊んでいるからかもしれませんぞ。せめて今後の日程表をまとめておきましょう。いやあ、美しきかな地雷原。


5月3日〜4日:米中戦略・経済対話(北京)、クリントン国務長官、ガイトナー財務長官が訪中

5月3日〜5日:日中友好議員連盟が訪中(北京)

――米中と日中の重要日程が北京で重なります。胡錦濤が顔を出すのは意外と日中の方だけだったりして。

5月4日(金):米雇用統計発表

――市場予想は、Nonfarm Payrollが12万人増程度ですが、これが8万人だったりしたら目も当てられません。

5月5日(土):北海道泊原発の3号機が定期検査入り。

――これで全国の原発が全て停止に。「とまり」とはよくぞ言ったものです。

5月6日(日):フランス大統領選挙決選投票、ギリシャ総選挙

――どちらも市場が嫌うような結果が出るのではないかというのがもっぱらの評判。

5月7日(月):プーチン・ロシア大統領の就任式。

――ちゃんと6年間の任期一杯務められますかどうか。

5月8日(火):衆議院本会議で社会保障と税の一体改革関連法案の審議入り

――法案の行方は神のみぞ知る。

5月8日(火):ノースカロライナ州、インディアナ州、ウェストバージニア州で予備選挙

――こっちは消化試合です。ご安心を。

5月9日(水):欧州議会本会議(ブラッセル)

――果たしてどんな雰囲気になっていることやら。

5月10日(木):小沢元代表の控訴期限。

――親分が無罪で子分が有罪。普通だったら控訴も大有りなんですが。

5月11日(金):溜池通信の次号締切日。


○今月は、ほかにもこんな日程がありますぞ。ご用心召されよ。


●5月13日(日):日中韓首脳会議(北京)

●5月17日(木):内閣府が1−3月期GDP速報値

●5月18日〜19日:G8サミット(米キャンプデービッド)

●5月21日(月):金環日食(東京では午前7時半頃)

●5月22日(火):東京スカイツリー開業

●5月23日(水):P5+1とイランの協議(バグダッド)

●5月23日〜24日:エジプト大統領選挙


<5月3日>(水)

○雨の日の連休初日。こういう日こそ、懸案事項を片付けなければならぬ。ということで、E-Mobile柏店へ。今まで使ってきたG4に代えて、このたび新たに誕生したLTEなる新製品を導入しようというのである。ただ今乗り換えキャンペーン実施中なのだ。

○あの千本倖生会長が、「これぞ次世代モバイルの究極系」と豪語している。そんなこと言ってアンタ、これで会員増やした後に、会社ごとドコモかAUに売り飛ばすんじゃないのか、てな疑問も少しはあるのだが、今までより容量増えるし、月々の契約料金も安くなることだし、とりあえず代えといて損はあるまい。技術的なことにはまったく自信がないので、ちゃんとPC持参で店に出かけて、店員さんにつないでもらって、それを確認してから契約完了。新しい機体の代金は1円也。めでたし、めでたし。

○ところがところが。自宅で使っているXP機がつながるのだから、出張のときなどに持ち歩くWin7機は当然OKだろうと思ったところ、こっちはつながらないではないか。雨の中を今度は別のPCを持って、再びE-Mobile柏店を訪問。先ほどの店員さんに見てもらう。こんな金にならないことをさせては申し訳ないのだが、雨のせいもあって店内は激暇状態。そこで時間をかけて見てもらうも、結局つながらず。「たぶんアダプターをつければ何とか・・・」と言われたので、そのままビックカメラに転進する。

○ビックカメラで相談すると、こちらの店員さんもまことに親切で、「Win7機でWi-Fiが入らないなんて・・・」とぶつぶつ言いながらあれこれ試してくれる。でも、やはりダメなのである。店員さん、しばし奥に引っ込んで何やら相談した上で、今度は別の店員さんを連れてくる。顔を見た瞬間に、オタク度が一気に上昇したことが分かる。一目見るなり、こりゃアダプターつけなきゃダメで、しかもCD-ROMでインストールしなきゃいけないから、外付けが必要だから持って来ますわ、と無表情に診断される。すばらしい。アダプターの代金は1080円也。

○かくして半日かかったけれども、快適なPC環境が手に入りました。店員さんは3人とも、まことに親切で士気が高く有能な方たちでした。日本のIT産業は、こういう人たちが支えておるのである。無能きわまるユーザーたるワシとしては、三拝九拝しなければならない。にもかかわらず、払った金額はあまりにも少ない。それどころか、今後の月々の支払いは確実に減ってしまうのである。

○うーん、これではなかなかCPIの1%上昇は難しいですぞ。


<5月5日>(土)

さる場所で、コーヒー豆のフェアトレードが話題になっているようです。

○フェアトレードというのは、私はある意味、宗教みたいなものだと思ってます。貿易業界人としても、エコノミストとしても、市場を歪める行為に賛同するつもりはありませんが、他人の信仰にイチャモンをつける行為は生産的ではないと心得ております。どこの国に行っても、市場メカニズムに後ろめたさを感じる人は一定数は居るものですから、やりたい人はどうぞおやりください、ということでいいのではないかと。ねえ、やまもとさん

○それとは別に、私が愛好するコーヒーについて少々。もう20年以上もこの店で買ってるんですが、ブラジルのカルモシモサカという銘柄を、毎朝自分で挽いて飲んでおります。それがですな、こういう事情で、「これまでの農場は売却し、新たな農場を探すという方針をたてておりましたが昨今のコーヒー相場の高騰、ブラジル国内需要の増加の影響もあり、去る2011年2月、ついに農場の売却が完了致しました」とのことなんです。

○つまり経済成長著しいブラジルでは、国内でのコーヒー消費量が増えたんで、今までのように気安く農園を買ったり、経営したりしにくくなっている。かつての「モノカルチャー経済」よさようなら。売るものならほかにいくらでもある(と言っても、鉄鉱石や大豆だったりするので、まだまだ一次産品が主力なのだが)。とりあえずブラジルは、コーヒー輸出に国運を賭けるような状態ではなくなった。

○かくして、わが愛するカルモシモサカは今ある在庫限りになってしまったというわけだ。(ちなみに今飲んでいるのはエスペシャルという銘柄である。美味だ)。察するに今後のコーヒー豆は、輸出余力のあるベトナム産あたりに期待した方がいいのではないかと思う。個人的には残念なことだが、ブラジル経済はそういう時期を脱しつつあって、これは慶賀の至りということではないだろうか。

○思えば幾星霜。冷戦時代には、「途上国が赤化すると困るから、コーヒー豆は敢えて高く買おう」てな動きもあったんですよ。いろんな思惑が働くので、この手の一次産品においては、「純粋な市場価格」というのはなかなかに難しいものなのです。

○ところで、「格安料金の深夜バス」に対するフェアトレード運動って、ないんですかね。いえ、もちろん牛丼でもいいんですが。


<5月6日>(日)

○文化放送「くにまるジャパン」でお世話になっていたYディレクター、現在はパリに在住されています。で、こんなブログをやっているのです。

今日もパリで困っています!

○フランス大統領選挙に関するネタはないのか、と覗いてみると、こんなエントリーがありました。これを見ると、フランスのテレビ公開討論ってむちゃくちゃ時間が長いのでありますな。サルコジとオランドが、なんと2時間半も議論するのです。なおかつ、司会者はほとんど口を挟まないし、フリップを用意したりもしない。延々と二人が議論するだけ。これは見ていてツライかも。

○ユーチューブを探したら、ちゃんとアップされてました。もちろん全部聞くような根性はありませんけど、双方がしゃべった時間がカウントされるというのが、なんだかサッカーのボール支配率みたいで面白いです。でも、こんな風に候補者同士が2時間半も討論すると、どっちが有利かは一目瞭然になるでしょう。日本でも、このくらいやったらいいんじゃないでしょうか。要は視聴率さえ気にしなければいい話なんで。

○なんというか、日本の政治討論番組はテレビ局が気を使いすぎるんですよ。テーマごとにVTRを作ったり、世論調査のデータを揃えたり、詳しい台本を作ってくれたりします。でも、それで時間がなくなって、ゲストが「ああ、今日は思ったことの半分も話せなかった」みたいな悔いを残すということがめずらしくありません。まあ、私なんぞはそれが当たり前と思って適応しているわけですが、政治家の討論会なんかはもっと加工度を下げたほうがいいような気がします。

○で、フランス大統領選ですが、やっぱりサルコジさんが負けるんでしょうなあ。で、ギリシャの総選挙は、どういう組み合わせで与党が出来るのかよくわかんないような結果になるんでしょうなあ。ということで、週明けは波乱模様ということになるのだと思います。米雇用統計は11.5万人というビミョーな線だったし。まあ、この辺は想定の範囲内。明日からがんばりましょう。

○連休中の世界の動きで、ここだけはうまく落着したのは米中戦略経済対話でした。陳光誠氏の処遇問題があったので、いったいどう処理するのかと思ったら、米中間で阿吽の呼吸があったようです。考えてみたら、米大使館に駆け込んだのは先の王立軍氏もあったことだし、双方の貸し借りが積もりに積もっているんでしょう。これはもう「米中融合」のままでありますな。

○ちなみに薄煕来氏の失脚については、このブログの説明が非常に行き届いております。

大陸浪人のススメ


<5月7日>(月)

○筆者の職場には、小さな「図書室」がついている。新聞・雑誌に白書や辞書・事典の類まで揃っていて、総研業としてはありがたいものだと思っている。ところがこのたび、7月に会社が引っ越す(霞ヶ関の飯野ビル)ことになったので、規模を縮小しなければならなくなった。こういうご時勢なのでやむを得ぬことではあるのだが、それにしても「千代田区霞ヶ関」に本社を置く総合商社って、ちょっと変じゃないですかねえ。

○ふと気がつくと長年の総研暮らしの結果、図書室に置きっぱなしにしていた私物の書籍が、膨大な量になってしまっている。資料として買ったものが多いのだが、近頃は献本も増えていて、まことに雑多なジャンルにわたっている。加えて昨今は一部の出版社に、「溜池通信が取り上げるとアマゾンで売れる」伝説があるらしく、縁もゆかりもない筋からも本が送られてくることがある。もちろんありがたく頂戴しておりますが、この機会に全部まとめてみたら段ボール箱4個分になってしまった。

○これをどう処理するか。最善手は捨てることなんでしょうな。いわゆる「断捨離」ということで。ほとんどの本は、2度読むことはないでしょう。加えて昨今は、「置き場のない本は一冊100円で“自炊”してあげます」などという不埒なサービスもあるらしい。とはいえ電子書籍に背を向け、いまだにスマホもi-padも持たない身としては、出来るところまで紙媒体を捨てないでおきたいと思うのである。

○そこで段ボール箱4個を、自宅に持ち帰ることにしました。今宵は赤坂まで自家用車を走らせて、全部引き取ってまいりましたがな。(実は連休中にも出かけたのだが、ビルごと閉鎖されていて無駄足を運んでしまったのだ。イントラネットの案内を見てなかった自分が悪いのだが、ああ、往復分の高速料金が惜しい・・・・)。

○今週末には、新しい本棚が届くことになっている。考えてみれば、このご時世に本に手間とお金をかけるというのは、とてつもない贅沢ではあるまいか。「書斎を持つ」という身分には程遠いのだけど、インテリの振りをしなければならない職業上、自分が線を引いたり、折り目をつけたりした本を並べておくのは、いわば設備投資みたいなものではないか、とみずからに言い聞かせているところである。

○ところでたまたま今日、衝動買いした本が息を呑むほど面白い。服部龍二『日中国交正常化』(中公新書)である。こんな真面目な研究が、こんなに面白くてよいのだろうか。これはお奨めですよ。


<5月9日>(水)

○お昼に大谷信盛議員のセミナーがあったので出かけてみる。なんと講師は寺島実郎さんである。商社業界からは既に引退されているので、このところあまりお目にかかる機会がなかった(テレビなんぞで見かけるのは、もちろん別モノと心得るべきである)。「最近はどうされているのかな〜?」と興味津々であったが、じかに話してみたら、私なんぞよりはるかにお元気なので参ってしまった。

○今日の講演の前半部分は「ユーラシアダイナミズム」で、これは過去に何度も聞いている話の最新バージョンであった。そして後半は、3/11以降の原子力政策であった。いちいち納得するところが多いのだが、一方でこの議論は「理性と感情」が交錯するところが大であるから、時節柄、あられもない批難を受けることも多いだろうと拝察する。エネルギー問題に対する見識と、言論人としての勇気に心から脱帽。

○九段にあるという寺島文庫には、まだ一度も行ったことがないのだけれど、しみじみすごいものを作られたものである。比較するのもおこがましいが、一昨日、会社の図書室から持ち帰った本は、近所で借りている1Kのアパートの「本置き場」に収納している。自分としてはこれでも身の程を過ぎた贅沢だと思っているんだけど、向こうはビルを買っちゃってるんだもの。すごいよねえ。

○それにしても、団塊世代の方にネジを巻かれているようではいけませんな。このところ、年長者の元気に圧倒されることが多いです。


<5月10日>(木)

○ふと思いついてしまった。三原淳雄先生が、あの世で怒っているのではないかと(年中怒ってる人でしたけど)。「小沢政局」で政治が止まるとか、消費税もTPPも議論が始まらないとか、原発問題から皆が逃げ回っているとか、若者が公務員志望になっているとか、そういう最近の「この国の不甲斐なさ」に対して、三原さんだったらどんな毒舌を浴びせかけてくれただろうかと。そういえば、「毒」のある批評をこのところ耳にしなくなりましたなあ。

○最近のテレビドラマでは、「犯人が盗んだバイクで逃走する際にも、きちんとヘルメットをかぶっている」のだそうだ(出典:『テレビは余命7年』指南役・大和書房)。なんとなれば、視聴者は抗議の電話をかけてくるかもしれず、あるいはスポンサーが苦情をいうかもしれず、だったら当たり障りのないように、事前にカドを取っておこうとするのであろう。しかるに、その手の予定調和を増やせば増やすほど、番組はつまらなくなっていく。

○要は自浄作用ならぬ自縄作用が起きていて、勝手に自分の未来を閉ざしている。言い尽くされたことではあるが、リスク回避ほどのリスクはない。「とにかく無難に」と安全なルートばかりを選んでいると、サプライズがないから面白くないし、もちろん当人の能力は伸びないし、将来への期待値も低下していく。デフレ期待がデフレを招くように、「悲観主義の自己実現」が起きているのではないか。

○例えば、就活中の不安そうな若者に対して、「30年後も通用する職を探せ」などというムチャなお説教をしたりする。アホか。30年後の花形産業は、きっと今は陰も形もないはずである。今ある職業の中から未来の花形を選ぼうとしたら、不毛な選択になるのは当たり前ではないか。でも、「将来の仕事」が何かは今は分からない。そこで安全策を採って、今ある選択肢の中から無理に選ぼうとする。これは精神的退嬰ではないのか。

○なぜこんな風になってしまったのか。われわれは「3/11」のような大きな不条理に対して無力である。そのことを痛感したからこそ、安全策に逃げようとしている。あるいは小さな不条理に対して不寛容になっている。高速バスの居眠り事故やら、芸能人の二股やら、猫ひろしの五輪出場やら、いろんなものが叩かれている。だが、これが1年前であったら、ニュースにもならなかったようなネタばかりではないだろうか。

○では、どうやってこの自縄自縛、自信喪失状態から抜けられるのか。これはもう、「言っちゃいけないことを言う」三原精神を発露する以外にない。特にマーケットというものは、自由な言論がなかったらいくらでも腐ってしまう。出でよ毒舌。出でよ三原二世。「そこで僕はぶち切れたわけですよ」というお得意の文句が不意に懐かしくなりました。

○その意味で、コンプガチャ問題に関する昨今のこの人の貢献度は高いのではないか。さすがは三原先生の弟子!と称えておこう。


<5月11日>(金)

○証券界では「ジブリの法則」というものがあるんだそうです。これはテレビでジブリの映画が放映されると、翌営業日には市場が大荒れになるという経験則です。そして今宵は、午後9時から日本テレビで『風の谷のナウシカ』が放映されるではありませんか。今日はとうとう日経平均が9000円を割ったというのに、これでは週明けの東京市場はどうなってしまうのか?

○しかるによくよく考えてみると、ジブリの映画を取り上げるのはほとんどが日本テレビ系列の「金曜ロードショー」なんですな。そして金曜日とは、米雇用統計などのお騒がせ指標が集中する時間帯である。あるいは週末の政治イベントが、週明けの市場を揺さぶったりもする。なんのことはない、ジブリの法則の正体は、「風が吹けば桶屋が儲かる」式のアノマリーなんじゃないのか。

○以上、経済界のジンクスはこの人に訊け、と言われる宅森昭吉さんから教えてもらったネタであります。「ジブリの法則」でこれですから、平清盛や朝ドラに至っては、ほとんど無限のデータがほとばしる感じでありましたな。

○「ナウシカ」はさておいて、おそらくは今週末もギリシャの政局をにらんで神経質な展開が続くのでしょう。その一方で、FTの社説なんかが「もうギリシャはイラネ」とはっきり宣言してもいる。ギリシャ有権者の7割が緊縮政策に反対しているんだそうで、こんなのを助けるのはさすがにアホらしい。逆に言うと、「ギリシャが離脱しても、EUなんとかなりそう」という見立てがつきつつあるのかもしれません。それはそれで、結構なことなんじゃないでしょうか。


<5月12日>(土)

○今週は時間に余裕があったはずなのに、行けなかったなあ。ちょっと残念。


●駐日代表処芸文サロンで「八田與一展〜台湾を愛した日本人〜」開催(5/9〜5/24)

【会期】2012年5月9日(水)〜5月24日(木)

【開館時間】10:00〜16:00(入場は15:30まで)
土・日休館/入場無料

10日(木)と15日(火)の11:30〜14:00は臨時休館させていただきます。

【会場】台北駐日経済文化代表処公邸1階「芸文サロン」

    東京都港区白金台5−20−2

(地下鉄南北線・三田線「白金台駅」1番出口より徒歩5分、JR山手線「目黒駅」東口より徒歩10分、バス「白金台5丁目」下車徒歩1分)

【主催】台北駐日経済文化代表処 (TEL:03-3280-9717,
http://www.roc-taiwan.org/JP/

【協力】金沢市、北國新聞、八田成子、八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会、八田技師生家、八田章子、株式会社ムラヤマ

【後援】金沢ふるさと偉人館、金沢市花園公民館、花園小学校


○ちょうど始まる前日の5月8日に「くにまるジャパン」で、台湾における八田與一氏の功績、そして日台関係の40年前のドラマについてお話しました。どなたかがユーチューブにアップしてくれたようなので、ご紹介しておきます。


●くにまるジャパン5月8日放送分 八田與一 その1 (八田與一編)

http://www.youtube.com/watch?v=MmoDQ3PyhWc&feature=relmfu 


●くにまるジャパン5月8日放送分 八田與一 その2 (台湾断交編)

http://www.youtube.com/watch?v=DfPPGn7ai0g 


<5月13日>(日)

○家族の白い目を気にせず、孤立しながら愛好しているNHK『平清盛』が、とうとう保元の乱の直前まで来た。これでいよいよ、皇室と源氏と平家と摂関家が真っ二つになり、それぞれが入り乱れての大混乱が始まる。いやー、たまりませんなあ。今日のラスト、松山ケンイチは鬼の顔をしてましたなあ。世間的には評判が悪くて、視聴率低迷にあえぐ『平清盛』ですが、ワシは少数派として支持いたしまするぞ。

○今から40年前、NHK大河ドラマは吉川英治原作の『新平家物語』であった。ワシは小学校6年生であった。ちょうど保元の乱のあたりから記憶がある。このドラマ、印象に残っているセリフが二つある。

○ひとつは信西のセリフ。さあ、これから戦争だという謀議の席で、その場の全員に酒が入っている。

信西 「なぜ戦(いくさ)は勝たねばならないのか、お分かりですかな」
貴族 「そ、それは国を治め、万民を安らぐために・・・」
信西 「はははは。そんなことより、戦に負ければ、このクビが吹っ飛びますわ」

――このときに信西入道を演じたのは小沢栄太郎でした。とっても憎憎しげで、凶悪でありましたなあ。それに比べると、今回の阿部サダヲ君は好青年に見えてしまいます。

○もうひとつは京の商人、伴朴のセリフ。平治の乱の途中経過、源氏が圧勝で平家が惨敗と見えた瞬間、伴朴の部下たちは急いで源氏側へ祝いの品を届けようとする。伴朴がそれを制してこんなことを言う。

伴朴 「待て。その前に六波羅に寄ってくれ」
部下 「え?なぜですか」
伴朴 「いいか、商人というものはな。どちらに転んでもいいようにしておくものだ」

――演じたのは藤田まことでした。いい役者さんでしたね。それにしても、今でも元気な仲代達也(当時の清盛役)はバケモノかもしれません。

○こういうセリフを覚えている小学生って、つくづく嫌な子供ですなあ。上記は多少の記憶違いがあるかもしれませんが、ワシの後年の人生に影響を与えたと思われるセリフなので、敢えて記しておきたいと思います。いや、今宵の『平清盛』を見ていて、40年前の記憶が復活してしまったもので。

○考えてみれば、『新平家物語』だけでなく、今年はいろんなことで1972年とシンクロしていますね。明後日が沖縄返還40周年で、9月には日中国交回復40周年がある。しみじみ40年というのは、大変な年月であります。今宵は40年前の記憶が妙に生々しい。


<5月14日>(月)

○いろんな話が交錯しているので、ちょこっとメモ。相互の関係はまるでなし。

●シェールガス革命がもたらす変化の中で最速のものは、アメリカの化学産業のコストが劇的に下がること。果たしてどんなイノベーションが起きるのか。LNGにして、日本に持ってくるなんてのは、かな〜り先の話。

●東京電力が公的管理下に入り、関西電力が電力供給力の大幅不足で手も足も出ないとなると、この国の電力業界は誰が仕切るのだろう。誰もそんなこと、考えていないか。

●朝鮮半島は、平安時代の摂関政治がずぅ〜っと続いたような歴史。封建時代を経験していない。武士の歴史を経た日本人の目から見ると、お公家さんたちがやることにはついていけない!

●5月も半ばに来たというのに、月例経済報告の公表予定日が決まらない。ということは、悩んでおられる様子。17日発表の1-3月GDP速報値は、そこそこいい数字が出そうだけど、ギリシャに株安に電力不足と、悩みは尽きませんからなあ。

●中国共産党大会に遅延説。普通は9月か10月なんですが、これが12月になろうものなら、「秋の共産党大会」ではなくなってしまいますな。重慶事件といい、陳光誠氏事件といい、闇は深いです。

●外務省のアジア大洋州局長はかなりの激務だが、米国務省のアジア担当次官補も大変なホットコーナーですな。これで来年、カート・キャンベルがクリントン国務長官とともに去ってしまったら、その穴は大きいぞ。「日本よ、しっかりしてくれえ」という声が聞こえたような気が。

●党員資格停止処分を解いた後に、控訴されてしまった小沢さん。党員に戻ったということは、党議拘束もかかるんですよね。消費税法案が出たら、反対票を投じることになるのかな。まさかそのために、処分解除を急いだというのは・・・・考え過ぎ?


<5月15日>(火)

○うーん、金曜からは米キャンプデービッドでG8サミットが行なわれるのですが、こんなに影の薄いサミットってあったかなあ・・・。そもそも堂々と「欠席します」(プーチン)なんて前代未聞ですよ。2000年の沖縄サミットで、クリントンが中東和平交渉のために中座したことはあったけど、最初から堂々の欠席というのは記憶にありませんなあ。「だったら次からロシアを外してG7に戻します」くらいのことを言って、一瞬ヒヤリとさせてみるのはいかがでしょうか。

○逆にオバマ大統領は、ウラジオストックのAPECを欠席するとのこと。こちらは参加人数が多いし、アメリカは選挙期間中であるし、まあ仕方のないところでしょう。以前にもクリントンが欠席して、ゴアに任せたこともあったはず。

○G8の値打ちがこんなに下がってしまうと、オリジナルメンバーであるところの日本のプレゼンスまで下がったような気がしてしまいますね。でも、G8メンバーが今、集まったとしても、ギリシャ問題にはほとんど無力であるし、中国はいないし、問題を解決するには力不足なんですよね。せいぜいオランド新大統領の登場が新鮮なくらいなんですが、メルケル首相との顔合わせは済ませた上での合流となるし。

○われらが野田さんも、言ったところであまり目立つようなこともないし、いやはや、寂しいものでありますな。


<5月16日>(水)

○産経新聞の「正論懇話会」の仕事で奈良市に来ています。奈良は中学生の時に来て以来、ですね。大仏さんも法隆寺も酒船石も見たことがあるけれども、仕事で来るのはこれが初めてです。

○で、宿泊しているのが奈良ホテルなのである。こんな場所があるなんて、全然知りませんでしたがな。皇室御用達で、歴史が古くて、由緒正しくて、自然が美しくて、柱は木目が美しくてとてつもなくぶっとく、ついでに季節もサイコー、というホテルであります。なんでこんな場所が知られずにいるのか。さすが、昔は都が置かれていただけのことはある。

○歴史が古く、自然も豊かなので、奈良は観光資源に恵まれている。しかるに、「奈良にうまいものなし」(@志賀直哉)という通説が広く伝播していて、夜の繁華街もわりあいに地味なものだから、泊まってくれる人がいまひとつ少ないようですね。昼間に奈良を見物して、夜は京都で一献、とか大阪で宿泊、てなパターンが多いのではないのかと思います。観光業振興のためには、奈良の旨いものの開発が急務でありますな。

○夜は、若いころにお世話になった地元・奈良のK社長に市内ご案内いただく。古い家並みは金沢のようであり、名店が並ぶ様子は神楽坂のようであり、細い石畳の道は長崎のようであり、えもいわれぬ情緒に満ちた街であります。日本のもっともディープな部分を満喫できる場所ではないでしょうか。


<5月17日>(木)

○奈良に泊まったので、念願かなって興福寺国宝館の阿修羅像を見てまいりました。今の奈良は最高の季節でありますから、修学旅行がどどどっと押し寄せてきていて、市内はどこもかしこも小中学生が群れをなしている。でも、興福寺は午前10時までに入れば楽勝です。行列もなく、せかされることもなく、ゆっくりと阿修羅像を見学することができましたぞ。ふっふっふ。

○この阿修羅像、私なんぞには光瀬龍が書き、萩尾望都が描いた古いSF、『百億の昼と千億の夜』に出てくる阿修羅の原型という印象が強い。帝釈天と終わりなき戦いを続ける悪の化身なのだが、萩尾望都の絵はこの仏像の印象通り、両性具有のヒーローとして描いている。これが無茶苦茶にカッコいいのである。小説の漫画化としては、類まれな成功例であると言っていいと思う。

○二人の作家にそんなインスピレーションをもたらした興福寺の阿修羅像は、八部衆立像と呼ばれる8体のなかの一つであります。ちなみに1体は破損していて一部だけが残っていて、7体は国宝館に収められています。おそらくは、全部同じ作者が作ったものなのでしょう。ただし、その完成度の高さからいっても、あるいは三面六臂の造形の難易度から考えても、この阿修羅像が本命作品だったことは想像に難くありません。

○なるほどこの阿修羅像、間近で見ると「萌え〜」なフォルムをしている。インドで生まれ、中国で育った仏像が、日本に入ってくると独自の進化を遂げて、妙に人間くさくなったり、エロチックであったりする。中華料理やイタリアンが、いつしか日本風にアレンジされてしまうのと似ている。この阿修羅像も、もともとの阿修羅のイメージからはずいぶんとぶっ飛んだ解釈であって、そういう意味ではインド人もびっくりなわけだが、それにしてもこの芸術的完成度は誰もが認めざるを得ないだろう。

○これらの仏像が作られたのは、平城京に都があった734年。天変地異の続く不安な時代に、光明皇后がなき母の供養のために作らせたという。つまり阿修羅像の作者にとっては、時代環境とスポンサーとモチーフにまとめて恵まれる、という幸運が重なったことになる。名作が誕生する陰には、そんな偶然が必要なのかもしれない。

○強大な権力者でもあった興福寺は、歴史上、何度か焼かれている。八部衆立像のうち7体が無事に残ってくれたのは、まことにめでたいことといえよう。その一方、平氏に焼かれた後の再建では、鎌倉時代に運慶が腕を振るったりしたのだそうだ。運慶はまた別途、そういう偶然を活かして芸術家として立身したことになる。

○おそらく偉大な才能はいつの世にも存在するのだが、生まれた時代に恵まれたごく一部の者だけが偉大な作品を残すことができるのであろう。今日、生きている我々は、その成果だけを見ることができる。さて、阿修羅像を生み出したのは、どんな個性であったことやら。


<5月18日>(金)

○またまた講演の仕事で、今日は新潟県の上越市へ。上越新幹線で越後湯沢まで行き、ほくほく線で乗り換えて直江津駅下車。富山と東京を行き来するために、今までに何回通ったか数えきれないルートだが、この駅で降りることは滅多にない。たしか学生時代に、スキー合宿に来たような記憶がうっすらとある。そのときは妙高高原で泊まったのかなあ。だとしたら、生涯で2度目の直江津駅下車である。

○上越市は、以前の直江津市と高田市が合併してできた街であって、いわば日本海側における交通の要衝である。鉄道では、直江津駅がJR東日本と西日本の接点となっている。高速道路では、上越ジャンクションがあって、北陸自動車道が上信越自動車道と交差する。富山から東京に向かうときは、まっすぐ進んで関越道で行くか、右に曲がって上信越道で行くか、少し迷うところである(ワシは関越道びいき、という話は5月1日に書いた)。でも、ここで高速を降りることは滅多にない。鉄道でもクルマでも、ついつい通過点になってしまうのが上越市なのである。

○で、2015年にはここに北陸新幹線の駅ができることになる。そうなると「上越駅」(仮称)が誕生するわけだが、ここにまことに不思議な現象が発生する。「上越駅があるのは、上越新幹線ではなくて、北陸新幹線である」。さあ、訳が分からない。それどころか、「北陸新幹線が通ったら、客は長野経由で富山金沢方面に流れるので、上越新幹線は寂れてしまうんじゃないか」という懸念さえあるらしい。

○もともと広い新潟県は、京都に近い方から順に「上越」「中越」「下越」と3つの地域に分かれている。直江津と高田が合併して上越市という呼び名になったのは、さほど不思議なことではなかった。ところがですな、新幹線ができる前には、新潟と東京の間には「上越本線」(上州と越後を結ぶ)と、「信越本線」(信州と越後を結ぶ)という2つの在来線が走っていた。この上越本線ルートにできた新幹線が「上越新幹線」であった。「上越市」と「上越新幹線」は、それぞれ語源が違うのである。

○こうなると必然的に地元では論議が生じる。「本当に上越駅でいいのか?」。だからと言って、「新直江津駅」にするといかにも失敗しそうだし、今さら「高田駅」にするのもなんだし、地元の観光資源を取り込んで「上越妙高」はどうかという声が出て、いっそこのこと郷里のスーパースターにちなんで「謙信駅」はどうか、などという声もあるらしい。

○いっそのこと、ネーミングライツを売りに出せばいい、というのは、今ここでワシが考えた駄法螺であります。信じちゃダメよ。

○という冗談はさておいて、せっかくの機会なのだから慎重に考えるべきだろう。通過される駅から、降りてもらえる駅に。そのためには、全国の人に関心を持ってもらわなければいけない。名前(ブランド)は大切である。合併のときには、得てして新社名は妥協の産物となりがちで、あとで後悔することがあります。え?おたくの「双日」ってのはありゃなんだ、って? それを言われると、ワシらもちと辛いのよ。


<5月19日>(土)

○クルマの調子が悪くて、バッテリー交換のために南柏のディーラーに立ち寄った昼下がり。こんなことを言われて驚いてしまう。

「断水していますので、あいにく洗車ができません」

「へ?」

「この一帯が断水しているんです。柏市全域もそろそろ危ないらしいです」

○なんでも野田市から順に断水していて、復旧には時間がかかるかもしれないとのこと。直ったばかりのクルマでそのままスーパーに急行するも、既にミネラルウォーターの類は売り切れであった。なんと恐るべし。「3/11」以降の関東住民は反応が素早いのである。が、そんなことで慌てていては情けない。家に帰って風呂桶一杯に水をため、ついでにバケツとお鍋とやかんを順じ満たし、さあ、来るなら来てみろと。

○案の定、夕方から断水。こうなるともう、トイレの水も出ません。貯め込んだバケツの水で流すしかありません。とりあえずビールとワインで水分を補給しながら、今宵限りで終わってくれないかなあ、と願っている次第。でも、この程度で済むのであれば、1年前の苦労に比べればどうってことはありません。


<5月20日>(日)

○一夜明けたら、水道は元に戻ってました。助かりました。水が使える生活は、ありがたいものです。ひねれば水が出る、「湯水のごとく」使える、なんて中世の王侯貴族だってできなかった贅沢でありますぞ。贅沢は素敵だ。

○明日の朝が早い(モーサテ)なので、夕方から風呂に入って、扇風機の風で涼んでおる。明日は消費税政局の話などをする予定。

○そういえば明日は金環日食ではないか。朝の天気が気になります。そういえばワシ、まだ日食グラスを買ってないんだよね。


<5月21日>(月)

○これは気がつきませんでした。世界経済のGDPランキングって、今はこんな景色になっているんですね。これ、PPPじゃなくてドルベースですよ(IMFから)。

順位 国名 GDP(2011年)
アメリカ 15兆0940億
中国 7兆2982億
日本 5兆8695億
ドイツ 3兆5770億
フランス 2兆7763億
ブラジル 2兆4929億
イギリス 2兆4176億
イタリア 2兆1987億
ロシア 1兆8504億
10 カナダ 1兆7369億
11 インド 1兆6761億
12 スペイン 1兆4935億
13 オーストラリア 1兆4882億
14 メキシコ 1兆1548億
15 韓国 1兆1163億
参考 世界全体 69兆6597億


○黄色がG7で青色がBRICsです。ブラジルの6位は驚いちゃいますね。イタリアとイギリスを抜き去って、おそらくフランスの5位も風前の灯でしょう。今は11位のインドも、じきにトップ10入りしそうです。

○ちなみに2008年のランキングは以下の通りでした。@アメリカ、A日本、B中国、Cドイツ、Dフランス、Eイギリス、Fイタリア、Gロシア、Hスペイン、Iブラジル、Jカナダ、Kインド、Lメキシコ、M豪州、N韓国。2位と3位が入れ替わったことは有名ですが、BRICs勢の快進撃はすさまじいですな。

○こうやって見ると、G8の地位が相対的に低下したことがしみじみ感じ取れます。もうG20でないと、世界経済の現実には合わないよねえ。特に欧州経済は、これから先が大変なことになりそうですし。


<5月22日>(火)

○今日はスカイツリーの開業日。筑波山ほど高くはないけれども、高尾山よりは高いという634メートルの鉄塔が誕生しました。ただし高いのは電波塔だけではありません。電気を送る送電塔は、全国いたるところにあるけれども、滅多に人目を引くことはありません。でも、そこには日本ならではの匠の技が働いている。以下は本日、送電線の業界研究会で拝聴した話から。


●全国の送電塔は24万基。送電線網は3800キロに及ぶ。これらを修繕し、古いものや災害で傷んだものを更新していくだけでも大変な労力となる。ところが、鉄塔の上で仕事をできる職人は全国で3000人しかいない。この技能をどうやって次の世代に継承していくかが業界の課題である。

●地形が複雑な日本では、鉄塔を作る工事は手の込んだ作業になる。まっすぐに電線を引ける場所は少ないし、傾いた場所に建てることだってある。危険を伴う上に、けっして実入りのいい仕事ではないが、それでも「地図に残る仕事」であり、「これは自分がやった」と胸を張ることができる。福島原発事故の電気復旧の際には、職員が率先して現場に入った。士気はきわめて高い。

●かつて電力会社が鷹揚に送電網に投資してくれた時代があった。ところが電力会社にも「株主重視経営」が普及するにつれて、インフラ投資にかけられる費用は削減されるようになる。送電線業界にとっては、悩み多き時代の始まりである。

●「3・11」以降はさらに悩みは深まった。電力会社は軒並み赤字になり、なおかつ原発再稼働もめどが立たない。「発送電分離」などという議論も飛び出している。送電部門を分離したら、いったい誰がこの地味な分野に投資するというのか。戦時中に日本発送電という国営企業が、各地域の配電会社に電気を卸していた時代が、いかに非効率であったか。その反省に立つのが、今日の発送配電一体経営であったのだが。

●送電線の職人を維持していくためには、ある程度の仕事量を長期間にわたって保持していくことが望ましい。ちょうど伊勢神宮が20年ごとに遷宮され、そのたびに宮大工たちが仕事の機会を得て、20代〜40代〜60代と立場を変えて仕事を覚えていくように。


○どこの業界でも、似たようなことで悩んでおられることを痛感しました。電力システム改革の議論は、ちゃんとこういう面をフォローしているんでしょうか。ちょっと心配です。


<5月23日>(水)

○5月6日のフランス大統領選、およびギリシャ総選挙以来、世の中の空気が大きく動き始めたような気がします。

○まずはギリシャについて。今まではもっぱら、「ユーロ離脱はあり得ない」「そもそも離脱の手続き手段がない」「残ることが最善の道なのだ」といった建て前論が語られていたのですが、一気に"GREXIT"(ギリシャ切り)なんて言葉が語られるようになった。「そうだね、仕方がないね」「ドラクマに戻ったほうが幸せかもね」「欧州中央銀行の決済システムから、ギリシャだけ外しちゃえばいいんだよ」などという恐ろしくホンネが飛び交うようになった。

○6月17日の再選挙を控えて、ギリシャの有権者が変な期待を持ってもらっては困るので、Financial Times紙やThe Economist誌がキツイことを言うのは、これは当然でしょう。とはいえ、市場でも「確率は五分五分」といった観測が語られるようになっている。空気が凍ってしまったのではないか。

○先週のG8サミットでは、「われわれはギリシャが公約を守りながらユーロ圏に残ることへの関心を確認する」"We affirm our interest in Greece remaining in the euro zone, while respecting its commitments." という、恐ろしく突き放した首脳宣言が採択されている。「ユーロ圏に残ることを支持する」とは言えないまでも、せめて「残留の重要性を理解する」とか、「問題を認識する」とか、言えなかったものか。おそらくは、「付き合いきれないね」という感じになったのではないか。

○その一方で、オランド大統領の登場ともに、「緊縮策から成長重視へ」とバランスが傾いてきた。これを歓迎して後押ししているのがオバマ大統領で、こちらはみずからの大統領選挙において、「雇用か、財政か」という二者択一を迫られている。共和党はベイナー下院議長を中心に「歳出の削減」を求めているが、民主党は支出を減らすくらいなら増税、と対立の図式が先鋭化している。そこで「ほら、欧州も成長重視と言ってるよ」と言いたいわけである。つまりは「国際会議の政治利用」であって、あんまり褒められたことではありませんな。

○で、問題は日本であります。「日本も緊縮から成長重視へ」とか、誰かが言い出すんじゃないでしょうか。あたしゃ感心しないけどね。だってそういうのは、今までに何度もやったじゃありませんか。橋本→小渕とか、小泉vs亀井とか。ついでに言うと、「緊縮から成長重視へ。でもギリシャは別だ」というのでは、ギリシャが浮かばれないじゃありませんか。


<5月25日>(金)

○いくつか宣伝です。まず、今朝の産経新聞「正論」に寄稿しました。

●極端なリスク回避は停滞への道

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120525/trd12052503230005-n1.htm 

○それから明日放送のBS朝日「激論!クロスファイア」に出演します。例の田原総一朗さんの番組で、時間帯は午前10時から。テーマは、「再燃…欧州債務不安 どうするユーロ圏、そして日本」です。

○クレディスイス証券の白川浩道さんとご一緒しました。CMの時間帯に、ふとこんな雑談が飛び出しました。

「日銀出身のエコノミストは、元NHKのアナウンサーのようなものだ。組織の重圧を離れた瞬間に、大化けしたり弾けたりする」

○ほらクマノさんとか、カンノさんとか、アダチさんとか、面白い人が一杯いるじゃありませんか。


<5月26日>(土)

○本日、告別式に出かけた際に、こんなサービスが誕生していることを知りました。

●自然散骨 カズラ島

○隠岐諸島の無人島で、今後もけっして開発されることのない自然のままの島を、散骨の場にするという構想です。そうだったのか、散骨はもう日本でも合法だし、そういうサービスを提供する業者も出来ているのですな。

○隠岐の国と言えば、その昔は後鳥羽上皇や後醍醐天皇が配流された場所であります(後醍醐天皇は脱出して、後に南朝を開く)。今は過疎化しているみたいですが、「余生は隠岐で過ごして最後は散骨」なんてライフスタイルも、今後はアリかもしれませんな。


<5月27日>(日)

○先週、さる場所で聞かれて、思わず唸ってしまった話。「成長戦略って、何のためにやってるんでしょうか」。

○言われてみればその通りなのです。日本のような先進国で、「五カ年計画」みたいなものを作っても意味はありません。アメリカのフェイスブックだって、別に国家戦略があって生み出されたものじゃありませんしね。何でも「政治主導」がいいわけじゃありません。

○そもそも「成長戦略」という言葉は、経団連が民主党政権を教育するために、意図的に言い始めたところがある。そうしたらインフラ輸出をやりたい経済産業省が乗ってきて、それで一気に広がったのではないか。もっとも最近の民主党内部には、自分たちが計画を立てさえすれば、何でも出来ると勘違いしている議員さんもいるみたいで、そういうのがコワいんだけど・・・。

○過去に遡って考えてみたら、1999年ごろのIT戦略会議はちゃんと役に立っている。森首相は「イット」と読んだそうですが、今の日本がブロードバンドで世界最先端にあるのは、この会議が暴走してくれたお陰でありましょう。そういう例もあるので、政治の役割はもちろん大切なんですが、本来、経済成長は「民間主導」であるべきでしょう。

○ところが民間企業が動きにくくなっているようなところもあって、医療や教育や農業なんかが典型です。それは規制緩和を通して振興を、ということになる。つまりは一利を興すは一害を除くに如かず。今の世の中、鉦や太鼓で宣伝するような「戦略」は、あんまり筋のいいものじゃない気がしますなあ。

○それとは別に、以下はベテラン政治記者の解説から。

○今週予定されている野田vs.小沢会談は、小沢側の申し入れで日程が一日延期されるだろう。北朝鮮みたいな手口だけど、それが常套手段なんですと。その上で第1回会合は決裂。次週にやり直しするも、結局まとまらず。そこで野田首相は6月中旬に、自民党と増税法案成立で合意。野田さんも谷垣さんも、党内の立場は強くないけれども、本人が捨て身になりさえすれば後は一瀉千里。でもアイツら馬鹿だからなあ・・・とのこと。やはり足りないのは昭和の知恵でしょうか。


<5月29日>(火)

@昨日昼は金融機関の方々を相手に、大統領選と米国情勢についてプレゼン。いつもながらのオタクの世界にずぶずぶ。我ながら仕事なのだか、道楽なのだか。

A午後は某所で外交安保政策の研究会。しみじみこの世界は用語が難しくて、一歩外へ出ると通じない。例えば"Shape とHedge"という言葉は、2006年のQDRで初登場したのだけれども、意味合いの微妙なところを解説してもらって感動する。霞ヶ関文学もそうですけど、言葉ってつくづく難しい。

B夜はラジオNikkeiでFXの話。米雇用統計とギリシャ問題。しばらくは不穏な感じが続きますよね。

C今朝はくにまるジャパンへ。2月から産休に入った鈴木純子アナの代理を務めてくれた「お魚アイドル」こと安西真美さん、今日がとうとう最終日。このケーキ、ちょっと感動モノでしたね。本日の「深読みジャパン」のネタは「シェールガス革命」。

Dお昼は久しぶりにこの人とランチ。マスコミ業界四方山話とともに、何か仕事ができませんかねえ、面白いネタはないですかねえ、という密談。

E夕方に今年で4年目を迎えたミレニアム・プロミス・ジャパンの総会。5月から6月は、財団法人、社団法人やNPO法人の理事会・総会の季節なんですよね。前者は「公益か、一般か」という分かれ道があるし、後者もNPO法の改正でいろいろとややこしいのです。

F夜は経済の研究会で、テーマは最近の経常収支について。時節柄、関心が高い。赤字にはならないと思うんですけどねえ。

○こうやって振り返ってみると、この2日間、やってることがあまりにもレインボーである。三々五々で四分五烈、十人十色で十三不塔である。明日もいろいろありますように。


<5月30日>(水)

○今日は野田=小沢会談が行なわれた・・・・と言っても、いったい二人は何を話したんでしょうね。話題もそんなにはないはずなのに。まさか通訳が必要だったわけでもないだろうし・・・。そして内容が決裂に終わることも事前の予想通りでした。

○いろいろ見た中では、この人の解説がいちばん腑に落ちました。なるほど、これは1983年の中曽根首相と田中角栄氏の会談に似ているのだと。普通、内閣総理大臣が与党の一議員と会うのであれば、「いついつの時間に官邸に来てください」と連絡すれば済む話です。ところが「野田君が僕に会いに来ない」などと言われてしまったりする。両者の力関係には、それくらいの差がある。中曽根=野田、田中=小沢と考えれば、その辺が分かりやすい。自民党・経世会の伝統を汲むのは今の民主党、ということになります。

○それではこの先がどうなるかというと、おそらくは歴史は繰り返す。中曽根の天下が来て、田中角栄は憤死するのでありましょう。小沢サイドからは、「来週、あらためて再会談を求める」などと、サラミを少しずつ薄く切ってくる北朝鮮みたいな交渉術が展開されるかもしれません。でも、とりあえず1回やってしまえば2度目は要らないでしょう。後は自民党との協議の行方と、解散の時期などが注目点。

○どこをどうすれば自民党が乗ってくるか、という話は、先週の「モーサテ」や「激論!クロスファイア」などでも語ったのでここでは繰り返しません。消費税増税へのハードルはそんなには高くない、というのが実感です。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki