<4月1日>(水)
○今日から新年度でございます。いくつかご案内を。
○一身上のことでありますが、会社(双日総合研究所)での役職名から「副所長」がとれます。「チーフエコノミスト」の方はそのままです。なんと12年もやってましたんで、たぶんしばらくは間違いが続くかと思いますが、お気に止めていただければ幸いです。
○と思ったら、今日掲載されたこの原稿が「副所長」の肩書で出ていた。orz。昨日の最終ゲラチェックで見逃していた。これは100%自分が悪い。なんとなく、4月1日じゃないと思ってた。
○それから今月末にはこんなWebセミナーをやるんですが、ここも肩書に「副所長」が残っていた。うあああああ。それは別にして、ご関心のある方はお申し込みをどうぞよろしく。
●M2J プレミアムナイツ
4月28日(火)18:30〜20:30 PC、スマートフォン、タブレット
「4月は外交の季節」 外交面の重要材料と相場への影響
――外交政策とパワーバランスの変化はマーケットを左右するのか?徹底解説!
○最後に一つ、放言を。
「私もね、以前、テレビ朝日の他の番組でコメンテーターをやってましたけど、あれは契約書一枚ない不安定な仕事ですよ。それが新年度で打ち切りになったからと言って、『官邸の圧力だ』なんて、どんだけ自信過剰な人なんでしょ」
○つくづく心がけたいものであります。いつまでも、あると思うな運とレギュラー。
<4月2日>(木)
○先週の溜池通信ではAIIB参加問題を取り上げ、それから産経新聞にはエネルギー問題を寄稿して、東洋経済オンラインでは異次元緩和の2周年について論じ、今日はまた別の媒体向けに地方創生について書いておる。我ながら実に支離滅裂な感じである。
○ということで、当不規則発言には他愛のない話を書くしかない。以下は先日、「くにまるジャパン」でひょこっと話したところ、わりと好評をいただいたらしい小ネタである。題して、「イラッとしたときの心構え」。不肖かんべえが普段から心がけていることのひとつです。
○非常に単純な話です。嫌なことって、ありますよね。そういうときに、まず、嫌な相手が自分のところへ謝罪に来ることを想定する。もちろん、そういうことは現実にはけっして起きないのだけれど、耳元でこっそり「さっきはゴメンな」みたいなことを囁かれたものと仮定しよう。
○そこで自分は、「ん?何のこと?」と一瞬わからないふりをして、次の瞬間に「なーんだ、アレかあ。・・・そんなこと、俺が気にしていると思うかあ?」と鷹揚に反応している自分を想像する。That's
All. それだけです。
○現実は何も変えられませんけど、ちょっとだけ自分が偉くなったように思えて、次から嫌な相手に対して心理的に優位に立てるような錯覚が生じます。あるいは同工異曲のハラスメントに対して、少しだけ耐性が強まります。理想とするのは、本当に嫌なことが気にならなくなることですけれども。
○つまり鈍感力をつけるためには、まずは鈍感のふりから始めるというわけ。お前は元から鈍感じゃないか、なんて言わないでね。こう見えても、少しは努力が入っているんだから。
<4月3日>(金)
○いかにも荒れそうな感じだった米雇用統計、案の定、荒れましたね。失業率の5.5%は先月と同じでしたが、非農業部門雇用者増減数(NFP)は12.6万人増。市場予想の約半分の水準にとどまりました。念のために確認したところ、今宵の金曜ロードショーはジブリの映画ではなくて、「MIB2」をやってましたな。
○少し大胆に言わせてもらうとこんな感じなんじゃないかと思います。
(1)アメリカの雇用は強い。ベビーブーマー世代の引退は、それなりに大きな事件だと思います。時給もそこそこ上がるでしょう。
(2)ところがGDPは2%台。日本の感覚から行くと、これでも十分じゃないかと思うのですが、アメリカではそれが不満の種となる。成長は3%ないと足りないっ!という感じ。
(3)他方、日本経済は皆が思っているよりは強い。とりあえず貿易統計は、年内にも月次で黒字に戻るかもしれない。
○ということで、しばし円高じゃないのかなあ、とワシは思っております。
<4月4日>(土)
○本日から新連載開始。題して「遊民経済学への招待」。その第1回は北陸新幹線を取り上げました。結構、長文になってしまいました。
○媒体はウェブ・フォーサイトです。会員制の有料媒体で恐縮ですが、これから隔週刊で書いてゆく予定です。お付き合いをいただければ幸いであります。有益なページがほかにも多数ありますので、月額800円はけっしてお高くはないと存じます。
○フォーサイト連載中の記事では、会田弘継さんの「国際論壇レビュー」はご存知の方が多いと思いますが、個人的に注目しているのは「専門家の部屋」で、足立正彦さんによるワシントン政治のリポートです。このマニアックな深さが癖になります。
○ところで、なんなんだワシのこの写真は。懐かしい、『1985年』を出版した時に撮ってもらったやつじゃないか。もう10年前のことになります。今はこんなに若くないです。われながら詐欺もいいところだなあ。
(後記:どうも初回につき無料公開であったらしく、ブロゴスやらハフィントンポストやらに派手に転載されているようです。光栄なことですけど、次回からプレッシャーがかかりますなあ)
<4月6日>(月)
○このところ遊んで楽しかったこと。
(1)浅草演芸ホール。新山真理という漫談士がおるのだが、彼女の「高齢師匠おちょくりネタ」がすばらしい。以前聴いた「刑務所内の血液型」というネタも大笑いした。世の中がどんどん管理社会になっていき、「言葉狩り」が至る所で幅を利かせるようになっても、寄席だけは最後まで「言っちゃいけないことを言ってしまう自由」が許される場所であることを望みたい。戦時中もそうであったそうだが。
(2)東京ドーム。伝統の巨人阪神戦、土曜日に見に行ったら、6回表にマートン様の打棒開眼で同点に追いつき、さあこれからと思った裏の回に投手陣総崩れ。さすがは阪神タイガース。日曜日も連敗して、もう首位から滑り落ちてしまった。それにしてもドームの巨人ファンは大人だ。阪神ファンのように増長せず、ヤクルトファンのように卑屈にならず、不利な時にはおとなしく、点が入るとオレンジのタオルを振る。寛容とはこういうものであろうか。
(3)中山競馬場。昨日の大阪杯では、牝馬ラキシスが一番人気キズナを大きく引き離して勝利。ここで予言したとおりの結果となったので、まことに気分がよろしい。出走直前になって臆病風に吹かれ、単勝4000円の当初予算を2000円に減らした、というのは反省材料ですがねえ。ともあれ、クリストフ・ルメール騎手が勝ってくれたことがうれしい。なにしろ母国フランスの騎手免許を捨てて、JRAで勝負しようっていうんですから。いつまでも、日本に賭ける外国人が出るような国であってほしいものです。
<4月8日>(水)
○午前中、自民党のAIIB勉強会に呼ばれました。既に3月31日の締め切りは過ぎているので、AIIBに賛成であれ反対であれ、これから先の議論は日本がどうするかということ。次の締め切りは、日中財務会合が行われる6月ということになる。自民党はそれまでに意見を固めるとのこと。仮にAIIB入るのだとしたら、どれくらいの金額を拠出するのか。入らないとしたら、AIIBができることによって起きるさまざまな問題(例えばOECDのDACは有名無実化するのではないか?など)に、どのように対応するかという問題が生じる。
○ご一緒に参考人になった津上俊哉さんによれば、中国ではAIIB(財政部が主管)は2月までは旗色が悪く、むしろシルクロード基金(人民銀行が主管)の方が脚光を浴びていた。ところが3月に入って、英国が参加表明をしたことで地滑り現象が生じ、50か国以上が参加表明をしたということは「想定外」の成功であったようだ。かくなるうえは、中国としても真面目に国際金融機関を目指すしかない、退路は断たれた、という意見もあるのだそうだ。
○いずれにせよ、中国のこのスピード感は日本としてもついていくのに骨が折れる。「ガバナンスはどうなるのだ?」みたいな質問を投げても、中国からの返事はない。だって走りながら考えているんだもの。そんなに気になるなら、お前もここへ来て一緒に考えろ、てな感じであろう。この辺が、経済成長7%の国のせっかちさというものである。
○もっとも、中国が打ち出す新しいアイデアやコンセプトは、これまで片っ端からつぶれているではないか、と達観することもできる。まあ、朝令暮改が多いソフトバンクみたいなもんですかね。日本の基準で論じていると、どんどん周回遅れになってしまうのかもしれない。
○夜は岡崎久彦氏を偲ぶ会。千客万来、まことに盛況でありました。そして安倍首相が心のこもった挨拶をされていました。本来であれば、今日が85歳のお誕生日であった。ご存命であれば、AIIBの問題について果たしてどんな国際情勢判断を下されたことか。たぶん、「あんなものはね、ときどき片目で見ていればいいんですよ」みたいにおっしゃったのではないかという気がする。もちろん、確かめるすべはないのでありますが。
<4月10日>(金)
○ふと気が付くと、今週末は統一地方選挙の第一陣であるが、ホントに選挙をやっているのだろうか。本当に存在感がない。
○いちおうウチでも「千葉県議会選挙」の投票用紙引換券が来ているのだが、これまた実感のない選挙である。誰に入れたらいいのか。とりあえず、先日午後8時直前になって、ウチの近所で「よろしくお願いします」を連呼していた某候補だけは絶対に入れないようにしよう。
<4月13日>(月)
○それにしても、この週末の統一地方選挙の盛り下がりぶりは何だったのか。関心は低く、投票率も低く、ワシなどは当日朝になってから、「さあ〜て、誰に入れようかな〜、千葉県議会議員選なんて、ホントのところどうでもいいんだけどな〜」と悩んだ挙句にテキトーに候補者を決めたものである。
○そもそも統一地方選挙というものは、戦後になって投票率を上げるために、4月の日曜日に日程を合わせましょう、ということで形成されてきた習慣である。ところが長いことやっていると、現職の突然の退任とか死亡とかリコールとかが起きうるので、選挙日程はどんどん別建てになっていく。今では全体の3割を下回るくらいしかないのだそうである。だったら「統一」と銘打つこと自体がミスリーディングであって、もう1回日程を寄せるなりなんなりして、地方選挙が盛り上がるような工夫が必要なのかもしれません。
○なかんずく影響が大きかったのは、わが国最大の選挙にしてエンターテインメントというべき東京都知事選挙が、このサイクルから外れてしまったことであろう。その点で、石原慎太郎元都知事の責任は大きくて、なんだかんだいって慎太郎という千両役者を欠いてしまうと、統一地方選挙はキラーコンテンツなき投票日となってしまう。午後8時の開票速報で、即座に流れるのが高橋はるみ北海道知事の映像では、「あー、そうなんだ、世の中はこともなしだねえ」と思ってしまいますわなあ。はるみさん、どうもすいません。
○それでは2015年統一地方選挙前半戦の結論とはなんだったのか。それは「通常国会後半戦のカギを握るのは大阪」ということだと思うんですよね。
○かねてご案内の通り、来る5月17日(日)には「大阪都構想をめぐる住民投票」が行われます。都構想を支持する人と反対する人の比率はほぼ五分と五分。はっきり言って、丁半博打みたいな世界です。そして参加者250万人は、わが国における住民投票の歴史の中でも空前絶後の規模と言えましょう。ところが都構想が成立するのとしないのでは、その後の展開で天と地ほどの差が出てくる。
○仮に都構想が成立したとしましょう。これは維新の会にとってはめでたい大勝利。とにかく地方自治体で目に見える変革を興し得たのだから、橋下市長は威張ってよろしい。ついでにもって、国政に参加されても文句は言えません。例えば、橋下さんが来年の参院選全国区に出られれば、単独で相当な票を集めるでしょうから、維新の会の躍進が可能になります。
○ということで、5月17日以降の維新の会は勢いを取り戻しますので、それは自民党の右側に新たな求心力が誕生することを意味します。自民党と組めば、今国会の安全保障法制などは楽勝で通るでしょう。さらに言えば、憲法改正への道筋も見えてくる。かような次第で、自民党大阪府連が「都構想」に反対している一方で、官邸は「橋下っちゃん」に秋波を送るわけであります。そりゃもう、夢洲のカジノくらいは余裕のよっちゃんで作って差し上げることでしょう。
○ところが都構想が不成立になったら目も当てられない。橋下市長はいじけちゃって政界引退まであり得るでしょう。それはそれで、彼らしいと言えなくもない。ところがその場合、維新の会はどうなってしまうのか。求心力を失って、かなりの部分が民主党に合流するかもしれない。この場合、左の勢力が肥大化するので、通常国会後半戦は一気に視界不良となってしまいます。安倍首相もそれでは困ってしまう。ここは是非、5月17日に「大阪都構想」が勝ってくれないと困るのであります。
○その点で昨日の統一地方選挙では、大阪のビミョーな民意が示されました。大阪府議会は定数88人のところ、維新の会は改選前の45議席から3つ減らして42議席となり、過半数を割ってしまった。そして大阪市議会は、維新の会は7議席増やして36人にしたとはいえ、定数86議席のところの過半数には程遠く、勝ったのやら負けたのやらが良くわからない。
○さらによくわからないのは、5月17日の住民投票には「公職選挙法は適用されるのか。つまり自民党総裁選みたいに、「買収でも饗応でもなんでもあり」になってしまうと、これはすごいことになってしまいそう。いずれにせよ、今の国内政局のカギを握っているのは、間違いなく大阪の民意であります。でも、大阪人の気持ちは分かりにくいんだよなあ・・・。
<4月16日>(木)
○中部経済倶楽部の講演会で名古屋へ。毎年2〜3回は訪れる名古屋駅ですが、大名古屋ビルヂング、かなりできてきましたねえ。今の季節は大通りの八重桜が咲いていてキレイでした。
○一仕事終えてから、最近になって愛知県庁に転じた古い友人を訪ねました。名古屋城の近くにあって、名古屋市役所と仲良く並んでいる。どちらも戦前の建造物で、洋風建築で屋根は日本風の城郭、という風変わりな意匠になっている。「帝冠様式」というんだそうです。瓦の先っぽが、「金のしゃちほこ」を髣髴とさせるフォルムであることはご愛嬌。県庁と市役所は、いずれも名古屋城の内堀と外堀の間に建っていて、途方もなく広い城であったことが窺い知れる。尾張徳川家はどえりゃー繁栄を謳歌しておったんでしょうなあ。
○ちなみに県知事には大村さん、市長には河村さんというキャラの立ったお二人がそびえ立っている。うまく行っているはずがないと思うのであるが、大阪で問題になっているような「二重行政」ということはないらしい。あれはつくづく大阪特有の現象ではないのだろうか。
○帰りの新幹線で、さあこれから仕事をしようと思った瞬間に、経済ジャーナリストの荻原博子さんが同じ車両に乗り込んできた。「おーい」と手を振ったら、「お隣いいですか」ということになって、そのまま帰りはずっとおしゃべり。意見の合わないご同業者のように見えますけれど、実は昔から仲がいいのである。
○経済情勢やら、愛川さん大丈夫かしらとか、いろんな話をした中で、これは面白いと思ったな。
「地方創生の仕事をしている人は、なぜサクセスストーリーを探すんでしょう。むしろ失敗談を探すべきじゃないのかしら」
○まことにごもっとも。そもそも地方経済が成功談に満ち満ちているのなら、地方創生という事業そのものが不要になってしまう。そうじゃないから問題なのである。成功ケースと思われている名古屋でも、ちょっと外れに行くとシャッター通りがある。うまく行っているように見えるのは、名古屋が「コンパクト・メガシティ」であるからだ。簡単に真似できるものじゃございません。
○さらに言えば、他所の成功談を真似た場合、非常に高い確率で失敗するのではないだろうか。むしろ失敗談を探す方が有益ではないのか。でも、こういう話って、ほかでもよくあるよね。
<4月17日>(金)
○当溜池通信をご愛顧いただいている方ならば、ルチル・シャルマ著『ブレイクアウト
ネーションズ』のことはご記憶かと存じます。このたび、早川書房から文庫版が出ております。お代は1000円+税でありますが、このバージョンは2013年4月に刊行されたペーパーバック版が元になっています。ここには新しい情報を取り入れた「エピローグ」がついておりまして、既に単行本を読まれた方にもプラスアルファがあると思います。や
○解説を不肖かんべえが書いておりますので、身びいきを承知で申し上げますが、シャルマの見立ては今回のエピローグも含めて一貫しております。やはり新興国経済の今を読み解くうえで当代随一の書物というべきでありましょう。
○他方、帯の推薦文は山本一郎さんが書いていて、そうかあの人も新興国経済(ロシアとか)に投資しているんだった、ということを思い出しました。ちょっと宣伝まで。
<4月18日>(土)
○今月からフォーサイトで書き始めた「遊民経済学への招待」シリーズ。その2回目をアップしました。「フェイスブックで旅は道連れ」。我ながらなんとも締まりのない書き方なんですが、そもそもが「遊び」の話なんで、変に有用な情報であったり、論理的な文章であるのもつまらんと思うんですよね。この調子で、毎回切り口を変えてダラダラと続けていこうと思っております。
○この連載、もちろん新潮社さんと打ち合わせたうえで始めておるのですが、結構、わがまま勝手に書かせてもらっています。読者がついてきてくれるかちょっと不安ですけど、「いま、自分は全く新しいことをやっている」という感覚が楽しい。新聞や雑誌のコラムとは違って、フォーマットが決まっていない仕事って、とっても面白い。
○とはいえ、書いているうちにいろんな決まりごとができてきます。「写真を載せること」がそのひとつで、この調子で行くと話のネタはしばらく続くけれども、写真のネタが切れるかもしれない。どうやってつなげていきましょうかねえ。とりあえず3作目の仕込みを始めましょう。
<4月20日>(月)
○とっても久しぶりに風邪をひいてしまった。いつ以来でしょうねえ。今朝のモーサテはちゃんとこなしましたけど、会社は昼前に引き上げて家でおとなしくしております。
○ちなみにモーサテの「今日の特集」(安倍総理訪米の注目点)と「今日のオマケ」にリンクを張っておきましょう。それから今日の経済視点は「外交日程」といたしました。これから先はいろいろ組み合わさって面白いですよ。
○当面の主要政治日程を下記しておきます。いろんな読み方ができるところです。
4月22日
バンドン会議で安倍首相演説(ジャカルタ)
4月26日
安倍首相訪米(ボストン〜ワシントン〜サンフランシスコ〜ロサンゼルス)
4月28日 日米首脳会談
4月29日 米議会合同演説
4月30日
日銀金融政策決定会合、物価展望レポート
5月初旬 安全保障法制関連の審議始まる
5月 7日 英国総選挙
5月 9日 ロシアが対独戦勝利70周年記念式典
5月17日
大阪都構想の住民投票→その後の国会審議に大きな影響
5月21-22日
日経「アジアの未来」〜安倍首相出席?
5月22-23日 太平洋島サミット(いわき市)
5月末
温暖化ガス削減目標、最終提出期限→年末のCOP21(パリ)へ
6月7〜8日 G7サミット(ドイツ・エルマウ城)→2016年は日本が議長国
6月上旬 日中財務対話(AIIB参加のラストチャンス)
6月16-17日 米FOMC→利上げの可能性も
6月18日 日韓基本条約締結50周年
6月末 AIIBの定款決定期限
7月8-9日 BRICS首脳会議(ロシア・ウファ)
7月10日
上海協力機構会議(ロシア・ウファ)
7月中 米中戦略・経済対話(米)
8月15日 戦後70年(安倍談話)
8月中
自衛隊法などの改正が成立(国会会期は大幅延長)
9月3日 中国が抗日戦争勝利70周年記念式典
9月15日〜 国連総会、習近平国家主席が訪米
9月中 自民党総裁選(→安倍総裁再選へ)
<4月21日>(火)
○本日発売の「週刊SPA!」で、これまでずーっと連載陣に加わってきた「ニュースディープスロート」で、卒業宣言をいたしました。白黒ページの地味な企画なんですが、連載は2010年からやっていて、6人の書き手が2人ずつ3週間交代で書いてきました。それ以前の「ニュースコンビニエンス」時代には、5人の書き手で毎週交代で書いておりまして、最初にメンバーに加わったのが2004年10月12日発売号でしたから、なんと10年以上も続けてきたことになる。
○当初の「ニュースコンビニ」では、金子勝先生のような恐れ多い方もご一緒でした。ところが、気が付けばどんどん書き手は入れ替わっていって、その中で自分はどんどん古株になっていき、今の「ニュースディープスロート」ではもちろん最古参となっている。で、いろいろ思うところあって、「そろそろ降ろさせてください」と編集部に申し入れました。慣れ親しんだ仕事ではあるのですが、自分はもう50代半ばになって、どう考えても「週刊SPA!」が対象とする世代からは遠ざかっているように思えたものですから。
○かといって、後継者を指名したわけでもないので、次から誰が代わってくれるのかは存じません。これでまた、この雑誌を踏み台にして新たな若い書き手が育ってくれればいいなと思います。ちなみに、「ニュースコンビニエンス」に不肖かんべえを指名してくれたのは、前任者の宮崎哲弥さんでした。思えばミヤテツさんには、いろんな恩義があったのだなあ。返していないけど。
○それにしても、まさか10年以上も続けるとは思わなかったですな。「週刊SPA!」はもともと好きな雑誌で、とくにカルチャー系の記事の深みは、他の追従を許さないものがあると思います。特集記事の立て方もユニークで、どこから見つけてくるのか、あっと驚くような多彩な「証言」を集める手法はこの雑誌ならではのものがありました。なおかつ、ここで連載した女性漫画家は西原理恵子から倉田真由美までかならずブレイクする、というのも魅力の一つでした。それから、オバゼキ先生、ぐっちーさんとの有馬記念対決だとか、変な企画を認めてくれたことも本当にありがたかったです。
○雑誌の連載の終わり方には、いろんなパターンがあります。「このコーナーは人気がないもので・・・」と言われる場合。「来年から新しいメンバーでやりますから・・・」と言われる場合。そして「雑誌が丸ごとなくなっちゃいまして・・・」という場合(近年では決して少なくない)。いろんな終わり方がある中で、何も自分から辞める必要はなかったかな、とも思うのですが、この年になりますと、何か捨てないと新しいものが入ってこない。大好きな雑誌にエイヤッとお別れを告げて、またなにか違うことを始めてみましょう。(などと言いつつ、また舞い戻ってくるかもしれませんけれども)。
<4月23日>(木)
○内外情勢調査会の仕事で金沢へ。もちろん北陸新幹線で日帰り出張である。前回は「上野―富山」間で乗ったから、ちょうど両端を切り落としたような乗車区間だった。今回は、ちゃんと「東京―金沢」間で乗ることができた。つまり始発から終着までである。ちなみに今朝乗った「かがやき」は、ちゃんと新高岡駅で止まる号でありました。
○平日朝の北陸新幹線は、外国人比率が非常に高い。それもアジア系よりも欧米系の外国人が多い。修学旅行も少しばかり見かけましたな。観光客のほとんどは、長野や富山では降りずに金沢駅まで直行した模様。今の金沢市は観光客が激増して、ホテルが足りないくらいになっているとのこと。ちなみに外国人に好まれるのは、いろんな芸事を体験できる「体験型」観光なんだそうです。単に金沢城や兼六園を見るだけではない、というのは納得ですね。
○新幹線が通ってから変化したこと。それはエスカレーターの並び方、なんだそうです。東京ではエスカレーターは右側を空ける。大阪では左側を空ける。金沢はその中間ということで、以前は右左の混在型だったのだそうです。それが新幹線開通後は、はっきりと東京型になったとのこと。やっぱり東側から来る客が増えたということでしょう。そういえば富山市は、もとから東京型だったような気がするなあ。
○本当であれば、ワシも少しは金沢観光をしたかったのだが、田原さんに「7時から収録だから」と言われているので、仕事を終えたらすぐにまた新幹線で東京に戻らなければならない。悔しいことに、楽勝で午後6時45分にテレビ朝日スタジオに間に合ってしまうのである(しかも途中で会社に立ち寄る余裕さえあった)。
○ということで、本日収録したのはBS朝日「激論!クロスファイア」。明後日、土曜の午前10時からです。この仕事さえなければ、金沢でゆっくり晩御飯食べてからでも、ちゃんと帰ってこれたのにねえ。新幹線も善し悪しですなあ。
<4月25日>(土)
○今日は岡崎研究所で中国のシンクタンクと日中対話。時節柄、いろんな話が出る。
○こちらから聞いてみて、ひとつ学習したこと。「小組って、なぜ小組っていうの?」
○中国共産党の内部には、無数の「小組」がある。例えば胡錦濤時代には、「対日協調工作小組」という組織があった。外交を担当する国務委員を軸に、共産党、政府、軍、政府系研究機関など日本と関係するすべての部門が参加していたらしい。日本でも「関係閣僚連絡会議」というのがあるが、あんな感じである。
○で、これが重要な政策決定機能を有しているらしいのだが、なぜ「小組」なんて名前なのか、というのが以前からのワシの疑問であった。なんだか「WG」(ワーキンググループ)みたいに軽い語感じゃないですか。その割に、重要なことが「小組」で決まるらしい。
○その答えは、「複数の役所にまたがる問題が増えたために、調整機能を持つ組織として作られた」のだが、新しい組織を「××委員会」などと言う名前で、法律で決めて作ってしまうと、それはまた七面倒なことになる。それよりも、アドホックな機関を作って、用済みになったらすぐにつぶせるようにしておく良くて、そういう意味も込めて「小組」になっているらしい。
○ちなみに、「小組」にはかならず事務局(弁公室)がついていて、それはいちばん権限の強い役所に付属するらしい。つまり弁公室を握っている役所が、「小組」全体を仕切るという位置づけになっている。この辺り、いかにも中国の官僚機構の雰囲気が伝わってきますけど、そういうことがスッと理解できる程度には、わが国も官僚主義がはびこる社会なんですよねえ。
<4月27日>(月)
○久々にギリシャ問題について。先週24日のユーロ財務相会合が空振りに終わったので、いよいよGrexit(ギリシャのユーロ離脱)がリアルになってきたように見える。次回のユーロ財務相会合が5月11日で、その直前にはギリシャ政府の給与や年金の支払日があるとかで、果たしてキャッシュが続くのかどうか、際どい綱渡りが続くのだろう。チプラス政権側も、地方にあるキャッシュをせっせと中央に集めるとか、公務員給与は借用証書を代わりに渡す、などといった手法で延命を図るのだろう。まあ、うまくいくといいですけどねえ。
○武運つたなくギリシャのキャッシュがショートした場合には、デフォルトすることになるでしょう。そうなりゃいよいよGrexitです。しかるに2010年頃と比べて、ギリシャがデフォルトしても周りには影響が出なさそうである。論より証拠で、10年物金利を比較すると、独0.17%、伊1.40%、西1.47%、ギリシャ12.70%となっている。すなわちギリシャ以外の経済には危機が広がっていない。もはや「PIIGS」などと言われた状態ではなく、単に「G」だけの問題になっているのである。カネの切れ目が縁の切れ目、逝ってください、さよ〜なら〜、と言えてしまうのである。
○だいたい、いくらなんでもギリシャは度が過ぎてますよね。ドイツに向かって第二次世界大戦の償いをしろとか、モスクワに行ってプーチンと思わせぶりな会談をしてみたり。「このまま冷たくするのなら、俺にだって考えがあるぞ!」と言いたいのでしょうけれども、ドイツがそんなこと認めるはずもなく、プーチンには逆さに振ってもギリシャを助けるお金などない。弱者の恫喝は、それが見え透いているときにはまことに惨めなものになります。
○ということで、Grexitになる確率は上昇している。チプラス政権が血迷ってデフォルトに走ったら、「どーぞどーぞ」とお引き取りいただくことになるのでしょう。でもギリシャの世論は、大勢ではユーロ圏残留を望んでいるはずなので、最後の最後の瞬間に、チプラス首相が七重の膝を八重に折って、「これから心を入れ替えますから許してください〜っ」と折れて来れば、それはそれでOK、という計算なのでありましょう。
○それにしても、これだけ長い時間をかけて我慢ができるというところがヨーロッパの流儀というものなんでしょうね。つくづく感心いたします。以前のギリシャ危機の際には、「あいつらなんであんなに悠長で居られるんだろう?」と疑問に感じたものでしたが、これだけ時間をかけた後だと、他のユーロ圏経済への影響は小さくなっているし、なによりギリシャに対して同情の余地がなくなっている。「プラトンの国」への敬意なんてものは、さすがにもう残ってはおりませんよね。
○つくづく欧州の流儀というものは、京都のお公家さんたちの世界のような独特の世界なのでありましょう。周りから見ていると、なんともまだるっこしくてついていけない。でも、彼らなりの秩序はちゃんと維持されている。この辺が長い歴史の産物というものなのかもしれません。
<4月28日>(火)
○安倍首相の訪米第一日目はボストン。ケネディー・ライブラリーを訪問した後で、ジョン・ケリー国務長官(JFKと同じ元マサチューセッツ州選出上院議員)の自宅に招かれました。二日目はハーバード大学のケネディスクールで講演。しかもキャロライン・ケネディ大使が挨拶をしている。まことにもってケネディ尽くしの日程でありましたな。
○講演の全容はこのページで見ることができます。「私の閣僚2人、塩崎恭久厚生労働大臣と林芳正農水大臣はケネディスクール出身です」というのは上手いつかみですね。ところで安倍首相の英語通訳をやっているこの声には聴き覚えがあります。たぶんこの原稿を作ったあの人ですねえ。見事な仕事だと思いました。
○スピーチ自体は短くて、その後はQAセッションとなります。韓国人、もしくは韓国系アメリカ人の学生が例の慰安婦質問をしているシーンも出てきます。どうやら事前に文章を書いてきて、それを読み上げている感じですね。でも、それを紙に書いたのではなくて、スマホに書いてきたというのがいかにも今風です。
○公人に対して一般人が質問をする、そして質問に対して公人が答える、というのは双方が周囲に試される瞬間です。大勢の人が聴いているだけに、お互いが緊張しますからね。そういうことの繰り返しが、アメリカにおけるタフな政治家や、厳しい質問をするジャーナリストを育てているわけであります。こういうの、もっと日本もやらなきゃいかんですねえ。
<4月29日>(水)
○アマゾンで注文したのだけれど、届くのがまだかまだかと待ち遠しい。そんな本に久しぶりに出会った。
○などと、まだ自分が読んでもいない本を宣伝するのは気が引けるのだが、ホントにそうなんだから仕方がない。この本の筆者は、ワシが20代で日商岩井の広報マンだったころに、貿易記者会所属の朝日新聞記者だった人だ。文章が上手くて、ハードボイルドで、とにかくカッコいい記者だった。その当時、いろんな記者の方とお付き合いしたけれども、永栄潔さんこそが「ザ・新聞記者」だった。ほかの人には申し訳ないですけど、ホントにそうなんだから仕方がない。
○永栄さんはその後、週刊朝日編集部に移って、司馬遼太郎の『街道をゆく』の担当をしてる、へー、すごいですねー、なんて話を聞いてたんだけれども、いつしか年賀状のやり取りも途絶え、全く存在を忘れていた。あれから約25年。永栄さんはいろんな部署を経て、2007年に定年になったらしいのだが、このたび回顧録を出版した。そのことを産経新聞社『正論』で知ったというのも変な話なのだが、タイトルと表紙だけでしびれてしまった。
『ブンヤ暮らし三十六年〜回想の朝日新聞』 草思社
○これは読まなきゃいかんでしょう。もちろんすぐに注文しましたよ。でも、アマゾンを今見たら案の定、「在庫切れ」になっている。カスタマーレビューは全員5つ星だ。そりゃそうだろう。あの永栄さんが書いてるんだから。
○いや、「天下の朝日新聞がどこを間違ったのか」なんてことは、少なくともワシにとってはどうでもいいのである。単に長い時間の空白を埋めたいだけなのだ。そしてまあ、本が届けばその空白は埋まる。が、それは時間がかかるかもしれない。いやあ、気になる。早く届け、と念じる次第である。
<4月30日>(木)
○議会合同演説の動画はこちらをご参照。昨晩は数えながら見ておりましたが、スタンディングオベーションによる中断は13回に及びました。ここが重要なところでありまして、それが足りないと「失敗だったね」と言われてしまいます。拍手してもらう、できれば立り上がってもらう、というのが米国議会における基本的なお作法というものでございます。
○演説の全文はこちらをご参照。ここにはいろんな仕掛けがしてあって、例えばキャロライン・ケネディ大使を紹介する場面や、昭恵夫人を紹介する場面では、これは議員さんたちも礼儀として立たなければなりません。もちろんローレンス・スノーデン海兵隊中将をその場に呼んだのもヒットでありました。さらに、その隣に硫黄島の戦いを指揮した栗林大将の孫である新藤前総務大臣を配置した、というのも心憎い配慮でした。この辺の手法は、一般教書演説ではしょっちゅう使われている手口でありまして、シャーロック・ホームズ氏がその場にいたら、"It's
an elementary, Dr.Watson."と評したことでしょう。
○さらに上院議員と下院議員たちを前に、演説の冒頭部分で以下のような「ヨイショ」するのは、ありふれた手法ではありますけれども、確実に好感度を上げたことでしょう。なにしろ議員さんたちは相身互いの身分。仲間をよく言ってもらえることで、万に一つも心証を損ねることはありません。つかみはバッチリ、というやつです。
皆様を前にして胸中を去来しますのは、日本が大使としてお迎えした偉大な議会人のお名前です。マイク・マンスフィールド、ウォルター・モンデール、トム・フォーリー、そしてハワード・ベイカー。民主主義の輝くチャンピオンを大使として送って下さいましたことを、日本国民を代表して、感謝申し上げます。
○ほかにもいろんな点を指摘できるのですが、日本外交はこんな風にえげつないくらいに人心掌握術を使えるようになったのか、と思うと感慨深いものがあります。今回の米国への公式訪問では、外務省は全力投球していましたからね。「8日間で4都市を回る」という日程を立てられた時点で、外交当局の士気は大いに上がったことでしょう。
○つくづく思うのは、「外遊」とはなんと含蓄のある日本語なのか、ということであります。首脳が海外で遊んでいるように見えることが、実はとっても大事な仕事なのであります。政策や首脳だけが大事なのではない。草の根レベルで「日本」をアピールすることが重要なのです。この後、安倍首相はサンフランシスコとロサンゼルスに滞在します。まだまだサプライズは用意されているでしょうし、ハプニングだって起こり得る。そこが「外遊」という仕事の真剣勝負なところなのであります。
○果たして2015年の訪米において、10年後に思い起こされるのはどのシーンなのか。まだまだ目が離せない訪米の後半戦であります。
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki