●かんべえの不規則発言



2014年10月






<10月1日>(水)

○今日は早起きして鹿児島まで日帰り出張。目指すは薩摩川内市。九州電力さんのご厚意で、話題の川内原発を視察してまいりました。

○なんだかんだで、原発を見せてもらうのは、女川(東北)、浜岡(中部)、志賀(北陸)に次いでこれが4つ目(建設中であった大間原発はいちおう除きます)。前の3つはすべてBWR(沸騰水型)で、PWR(加圧水型)の原発を見るのはこれが初めてでした。再稼働のトップランナー、と目されていることもあって、中は多くの社員が忙しそうに働いていました。

○そもそも基本的な問題として、なぜ川内がトップランナーになったのか。福島原発がBWR型だったので、再稼働はPWR型からだろう、というのは誰でも考えることです。一般論としても、BWRは効率性に優れ、PWRは安全性に優れているとされている。だとしたら、最初は関西電力の大飯と高浜あたりか、ということになる。ところが活断層を巡って、規制委員会と見解の不一致があったりしたものだから、関電さんは身動きが取れなくなった。後に続く電力会社(北海道電力と四国電力と九州電力がPWR型)のことを考えて、やや強気の態度に出たのが裏目に出たのかもしれない。

○そこで九州電力が急浮上したわけなのだが、同じ九州でもなぜ玄海ではなくて川内だったのか。4つ目の視察を終えてつくづく思ったのは、「原発は地形によってひとつひとつ、全然違う」ということである。当たり前の話なのだが、どこに原子炉を置き、どこから水を取り、どこに非常用電源を置き、といった諸条件は全部地形によって違ってくる。だとしたら、これを規制する側も「マニュアル方式」で投網をかけるようなやり方は通用しない。ひとつひとつ、それぞれの事情に沿った形で審査しなければならない。その点で、耐震や津波対策で独自の対応策を取っていた川内原発が、モデルケースとして急浮上したのであろう。

○地形が違うというのは、それくらい重要なことである。例えば非常用電源をどこに置くか。災害対策を考える場合、なるべく種類の違うものを分散して配置する、というのが常識であろう。ところが場所によっては、電源の置き場所に苦労するような原発もあったりする。これだけ特殊なケースばかりだと、規制委員会による上位下達方式の安全指導などと言うものは成立しない。だからいま行われているのは、安全を目指すための原発ごとの競争、といった事態である。たまたま今は、川内原発がその先頭にいるということになる。

(それだったら、もっと頻繁に規制委員会が原発を視察すればいいようなものであるが、川内原発に規制委員が来たのは過去2回だけだそうである。ほとんどの検討作業は、膨大な資料を持ち込んで東京で行われているという。が、現場を訪ねてみないとわからないことはいくらでもある。今日の筆者は管理区域まで入れてもらったので、線量計を持ったり、服や靴下を替えたりといった細かな作業があったが、そのお蔭で実感できたことはたくさんあった。願わくば、小渕大臣が視察に訪れられる際にも、なるべくそういう風であってほしいと思う)。

○面白いことに、川内原発が最高の条件を満たしているかというと、かならずしもそうではない。例えば重要免震棟はまだできていないし、フィルター付きベントの検討もこれからである。もっともこの手の「ハードウェア至上主義」は弊害もあって、昨年夏に訪問した北陸電力さんでは、「フィルター付きベントなんて要らない。今ある設備で同じことができるのだから、付けるとかえってややこしくなる」という話を聞いた。別にカネを惜しんで言っているわけではなくて、いざというときに現場の人間が迷わなくて済むようにするのも、ひとつの安全対策だというのである。

○川内原発で印象的だったのは、「竜巻対策」をやっていたことである。竜巻がくると、いろんなものが空に飛ばされるかもしれない。だから、設備の上に重いネットを載せたり、側溝の蓋のようなものまで、いちいちボルトで飛ばないようにしてある。ということは、蓋を開けるときにはいちいちボルトを開けなきゃいけないわけで、さぞかし面倒なことだとは思う。あるいは、防水扉を重い水密性のものに替えることで、作業はそれだけ重労働になってしまう。けれども、今後はこういうことが、新しいスタンダードになるのかもしれない。

○現在、川内原発には他の電力会社も含めて多くの人が視察にやってくる。フロントランナーならではのプレッシャーがかかることになる。かといって、他の原発が単純に川内を真似すればいい、というものでもない。だって条件はひとつひとつ違うのだから。それぞれの原発ごとに、安全に向けた独自の工夫を重ねていくほかはない。

○「なぜ川内がフロントランナーになれたと思うか?」と尋ねたところ、「チームワークが良かったからでしょうか・・・」というお手本のような答えが帰ってきた。震災から3年も停止していると、現場の九電社員と協力会社社員が考えることは、「何とかしてもう一度動かしたい!」ということに尽きるのだそうだ。もちろん、1基動くと年間で1000億円違う、という会社の事情もあるだろうけど、そこにはいかにも日本的な「努力と友情と勝利」という現場の思いもあるのではないか。どんなに巨大な機械であっても、動かすのは所詮は人なのであります。


<10月3日>(金)

○本日発行の溜池通信で、米中間選挙について取り上げました。しかるにこのネタ、今年はとっても影が薄いんです。どれくらいかというと、かく言う筆者でさえ、関心が湧かないくらい。それではちょっとさびしいので、少しは盛り上げたいと思います。だって投票日まで、残り1か月なんだもの。

○ということで、以下はリンク集です。(ハッキリ言って、自分用です)


東京財団「現代アメリカ研究」のページ

みずほ総合研究所「2014米中間選挙」に関する最新情報

SABATO'S CRYATAL BALL

Electoral Vote.COM

The Cook Political Report

Real Clea Politics "Election 2014"


○これだけ争点が乏しいと、「イスラム国」との戦争が勃発しようと、人種差別殺人事件が発生しようと、富の不平等が拡大しようと、あんまり選挙戦には結びつかないような気がします。まあ、それでも少しは気にしてないと、アメリカウォッチャー業界のためになりません。少しはがんばるぞ、と言っておこう。


<10月5日>(日)

○香港でのデモについての会話。


●香港からは税金も取ってないし、いくつも特権を認めてやってきたのに、なぜあんな文句を言われるのか心外である。

(たぶんチベットやウイグルと似たような構造があるんじゃないでしょうかねえ)

●1997年の返還の際には、本土側も香港側も互いに心から喜んだものである。

(そういえばわが国も、ヤマトンチューは沖縄の「県民感情」が理解できてないと言って最近はよく怒られます)

●そもそも植民地時代だって、民主的な選挙をやっていたわけではなかった。だのに英国人が偉そうなことを言う。我慢がならん。

(それはおっしゃる通り。でも当時は言論の自由がありましたからねえ)

●台湾の「ひまわり運動」を真似ているのもケシカラン。台湾の民主主義は自前だが、香港の民主主義は借り物である。

(それは確かにその通り。でも台湾人の我慢強いところは、香港人は上手に真似ているようですよ)

●デモ隊は香港のごく一部で、普通の人の関心事にはなっていない。我々が手荒なことをしなくても、やがて収束する。

(丸の内ではデモをしているが、新宿や渋谷では普通の日常が続いている、てな指摘も確かにありますね)

●それを西側のメディアやスパイが煽って一大事にしようとしているのが許せない。

(デモにはいろんな人が寄ってきて力を貸すものですよ。それは「アラブの春」でもウクライナでも、同じことじゃないですかねえ)

●結論として、APEC首脳会議までには余裕で解決する。

(いやあ、そうなるといいですね。本当に、心からそう思います)


○そこまで言ったところで、目が覚めました。今回の香港の事態は、平和なデモの力を世界に対して見せつけているようなところがあります。たぶん中南海も相当に焦っていることでしょうね。なにしろ夢の中に出るくらいですから。

○ところで筆者の職場は、今の霞ヶ関に引っ越してきてから2年ちょっとたつのですが、あの界隈で日常的にやっているデモというのは、全く無意味というか、ほとんど有害な存在でありますな。労働組合でも平和団体でも反原発団体でも、デモをやればやるほど普通の人の反感を増幅させているだけではないかと思います。どうやったら世界の共感を集めるデモができるか、ちょっと香港に行って勉強してきてはいかがでしょうか。


<10月6日>(月)

○今日は京都で講演会のはずが、大型台風18号のせいで新幹線ストップ。なにしろ浜松に上陸というではないか。東京駅の新幹線改札口で、7時45分から10時まで待ったけど、結局動かず。当然、お昼からの開会に間に合うはずもなく、講演会は中止ということに。そういえば3年前の秋にも、台風で新幹線が止まってしまい、やむなく熱海で泊まったことがあったが、あのときも目的地は京都であった。ひょっとしたら、嫌われているのかなあ。

○12時を過ぎたら、都内は拍子抜けするほどの晴天になった。新幹線も動き出したことだろう。午前中の豪雨はいったいなんだったのか。もちろん京都は朝から晴れているわけで、ご予定いただいていた方々にはまことに申し訳なし。昨晩のうちに移動しておければよかったのだが・・・・。台風はほんの数時間の出来事であった。

○ところで、東京駅で待っている間にずっと読んでいた『肌色の憂鬱』(眞嶋亜有・中公叢書)が面白い。近代日本がずっと抱えてきた西洋人に対する肉体的コンプレックス、というテーマを取り上げたもの。昔の日本人は、今よりもずっと背が低かったし、白人ばかりの中でとっても肩身が狭かったのだ。それが西洋文明への反発とか、同じアジア人に対する蔑視につながったわけだが、今となってはワシらはそういうことを都合よく忘れている。古い傷口を抉り出すのはツライことなるも、忘れているのはもっとマズイです。

○夜はお通夜へ。亡くなったのは23歳の若者で、しかも死因は交通事故だった。人生これからというときに、ご家族の思いは察するに余りある。こういう日に言葉は無力である。献花を済ませて、逃げるように帰ってくる。

○この世に生きている限り、いつか死がやってくることを忘れてはならない。だから笑えるときに笑い、遊べるときに遊び、楽しめるときに楽しんでおこう。そして今日が良い日であったことを、たくさん感謝しておこう。何もいいことがない日であっても、この世に生かされていることだけで儲けものである。

○などと柄にもないことを考えつつ夜が更ける。明日にはまた漫談士に戻ります。


<10月7日>(火)

○自分が生まれた季節だからというのもあるんだけれども、ワシは10月上旬の今が、この国では一番良い季節だと思っている。まあ、台風さえなければの話でありますが(来るなよ、19号。しっしっ!)

○その証拠に、今を去ること50年前、日本が初めてオリンピック開催の名誉を得た時に、開会式は10月10日に設定している。晴れの特異日だったから、と説明されているが、何よりこの季節の日本を外国の人に見てもらいたい、と当時の人たちが考えたのであろう。1964年頃はまだ、外国の事情を勘案せずに五輪の日程を決めることができた。今だとアメリカの事情(大統領選挙がある、他のスポーツシーズンと重なっちゃいけない、など)が優先されるので、真夏の開催になっちゃうんだよなあ、2020年は。

○もともとこの国では、いろんな日程が秋をピークとするように設計されている。学校の行事なんかは典型的で、運動会も文化祭も秋に予定されている。だからこの時期の先生やPTAは大忙しで、土曜も日曜もあったものではない。あらためて、なぜ秋でなければいけないのか、と聞かれると答えに窮するところである。「秋こそ本チャン」という感覚は、日本人のDNAに刷り込まれている発想なんじゃないだろうか。

○スポーツの日程も秋に集中する。プロ野球もこの時期に佳境を迎え、そろそろクライマックスシリーズ、そして日本シリーズとなる。それにしても、広島が最終戦で巨人に負けてくれたので、阪神が自動的に2位に浮上したのは儲けものであった。これで甲子園で戦えるうえに、マエケンの登板がなくなってくれた。たぶん巨人としては、CSで広島と競るよりは阪神を相手にする方が楽だ、だから全力で広島を倒しに行こう、との計算が働いたに違いない。まあ、期待しないで生ぬるくタイガースを応援するとしよう。

○競馬においても、一昨日が秋のG1シリーズの初戦であった。この先、秋華賞、菊花賞、天皇賞、エリザベス女王杯、ジャパンカップと重要レースが続く。天高く馬肥ゆる秋こそ、充実の戦いぶりがみられるはずである。差し当たって、今週末の毎日王冠と京都大賞典こそが、例年、ワシにとって競馬シーズン本格化の狼煙をあげる重賞レースである。

○ところがですな、10月最初の週にフランスの凱旋門賞があって、最近はそちらに有力馬を取られてしまうのである。これではゴールドシップやジャスタウェイは疲弊してしまい、年末の有馬記念にはたぶん出てこれなくなってしまうだろう。つくづくグローバル化というものは、既存の国内秩序を乱してしまうのである。せめて国際舞台で見せ場を作ってくれればいいものを、あんな風に惨敗されたのではかける言葉もない。どうも今年の日本馬の挑戦は、関係者一同が本気になっていなかったような気がして仕方がない。

○そういえばこの季節、ノーベル賞の発表もあるのですな。今日は物理学賞で日本人3人が受賞しました。おめでとうございます。青色発光ダイオードは、いずれ必ず来るネタでありましたから、驚くというよりは「意外と早かったね」といったところです。こうなると、文学賞のハルキさんも気になりますな。まあ、文学賞は「各大陸持ち回りローテーション」という説もあるくらいだし、あの人は生きてりゃいつか回ってくる人ですから、のんびりと待ってりゃいいんじゃないかと思います。

○あ、それから平和賞は近年は駄作が多いので、気にしない方がいいと思います。今となっては、なんでオバマさんやEUがもらったんでしょうねえ。まあ、佐藤栄作がもらっているくらいなので、本来はもっと「該当者なし」を増やすべきじゃないかと考えるものであります。

○春の桜はいつ散ってしまうかと気ぜわしいものですが、秋の紅葉を楽しむのに慌てることはない。秋の夜長も良いものであります。どれ、少し長湯をしてくるとするか。


<10月9日>(木)

○ワシがまだ大学生だった頃は、まだ世の中には学生運動時代の残滓が残っていた。当時の大学でサヨクの先輩は、酒の席で眉間にしわを寄せてこんなことを言っていたものだ。

「吉祥寺のウニタに行くと、公安の尾行が付くんだよな」

○まだ若くて、いたいけな青年であったワシは、「公安」が何を意味することかも知らず、ふんふんと真面目な顔をして聞いていたものである。ワシは他人の幻想を打ち砕くのが大好き、という悪い趣味を有しているけれども、身近な人間関係をなるべく悪化させないという処世術も実践しているので、そのときも「へーえ、そうなんですかあ」などと適当に相槌を打っていたはずである。

○今般、北海道大学の26歳の学生が、イスラム国への渡航を企てたことが未然にバレて、報道沙汰になっている。今回のニュースを聞いた瞬間に思ったのは、「公安、ぐっじょぶ!」でありましたな。こういうのを水際で止められないようでは、真面目な市民が税金を払っている甲斐がないというもの。当の若者だって、若気の至りでやっていることなんだから、きっと一定の歳月を経た後では「あのときは、国家権力が俺を止めてくれてよかった!」と感謝することであろう。

○かといって、どっかの阿呆な新聞が社説で書くように、「こういう若者が出ないような社会を作らねばならない」などという綺麗ごとになびいてはいけない。そりゃあこの国には1億人以上が住んでいるんだもの。社会が清潔であろうが美しかろうが高邁であろうが、どうしたってテロリスト予備軍は出てしまいますよ。オウム真理教の信者だって大勢居たんですから。自分探しの旅を続けているうちに、つい間違った方向に向かってしまう若者が出るのは、いわば仕方がないことです。そういう人を取り締まっていたら、ベンチャー企業を起こしてやろうなんて若者まで減ってしまうかもしれない。

○今回、中村修二教授がノーベル物理学賞をとって、その国籍が日本かアメリカか、てなことが話題になっている。そりゃあアメリカ国籍をとったかもしれないけど、ありゃあ古式ゆかしい日本人ですよ。普通のアメリカ人だったら、「スレイブ・ナカムラ」の境遇には耐えられない。とっくの昔に努力を辞めている。ところが昔からこの国には、ああいうタイプが一定の割合で出るんです。寝食を忘れて一つのことに熱中できる人がいるんです。だからこそ、偉大な発見や発明がぞろぞろと出てくるわけで、青色発光ダイオードは近年の日本発のヒット作ということになる。

○ところがこの国には、そういう才能を押しつぶそうという社畜タイプも大勢いるわけです。中村教授は怒り心頭で日亜化学を訴え、裁判を戦って日本社会の保守性に驚きあきれ、ついにはアメリカの人になってしまった。昔から何度も繰り返されてきたパターンです。野口英世だってそうですよ。日本社会では受け入れられず、アメリカで世界的なビッグマンになったけど、最後まで日本に対して複雑な心情を持ち続けていた。彼を駆り立てたモチベーションとは、いつか日本を見返してやろうという心意気だったことと想像します。

○確かに日本社会には、多様性を押しつぶす性向がある。ところが、それを上回る多様性を持つ社会でもある。だからいつの時代を探しても、中村教授のような奇人・変人・才人・偉人が見つかってしまう。彼らは日本社会のメインストリームに反発しながら、そのことに対する怒りをも武器にして、前人未到の境地に達してしまう。なんと幸福なことでありましょうや。願わくば、中村教授はアメリカのパスポートを手に、故郷に錦を飾ってもらいたい。そして言ってほしい。「若い連中は俺に続け」と。

○日本社会は、そこに住む人たちが思ってもみないほど、実は自由な社会なんだと思う。ところが大部分の日本人は、その自由を捨てて社畜としての幸福を選択してしまう。でも、その気になれば、誰でも中村教授のような生き方を選ぶことができる。要は周囲から変人と見られることを恐れさえしなければ。「四国から一歩も出たことがなかった」という人が、LEDという発明を世に送り出し、世界中の生活様式を変え、エネルギーの消費量を減らし、ノーベル賞まで取れてしまう。こんな国、ほかにはありませんぜ。自由こそが日本社会のキモの部分であると、ワシは信じるものであります。


<10月10日>(金)

○東洋経済オンラインに寄稿。毎度のご紹介です。

外交の秋、11月の国際会議で何かが起こる 安倍首相は3連荘会議で勝てるのか?

○これは言っても詮無いことながら、最近は「3レンチャン」とか「カンチャンずっぽし」などという麻雀用語が、若い人にはしばしば理解してもらえないのである。先日、とある若い編集者から「すいません、カンチャンって、どういう字を書くのですか?」と聞かれて困ってしまった。正式には「嵌張待ち」だと思うのだが、われわれ中国人じゃないんだから、その辺は適当でいいと思うんだけどね。

○とはいえ、上記の話をするときには、「三連荘」と「嵌張ずっぽし」という語感がないと、いささか不満が残ってしまうのである。まあ、わかる人だけわかってくれればいいんですけど。


<10月11日>(土)

○今日は「女性活躍社会」をテーマにしたテレビ番組の収録をやっておりました。一通りの論点は出尽くしたと思うのですが、「女性が仕事をする時に、周囲に目標となるようなロールモデルがいない」という話がありました。これは特に、地方都市の場合は切実なテーマなんじゃないかと思います。

○ロールモデルというのは、単に「バリキャリ」であるというだけじゃダメで、「ああいう人に私もなりたい」とか「この人についていけばいい」と同性に思わせるような魅力がなきゃいけない。ちゃんと身近な存在でありながら、でもとてもこの人には敵わないという感じが必要なんで、そういう目標がある組織は幸福でありますね。

○ちょうど澤穂希という選手が登場したことで、「なでしこジャパン」が一気に開花したのはそのいい例ではないかと思います。もっともどんな組織、どんなチームでも、「最初の澤」を生み出すまでが大変なわけであります。他のことにも通じる話ですが、ゼロとイチとは大違いなんです。でも、最初にイチがあれば、2や3は比較的簡単にあとに続くことができる。

○ということで、女性活躍社会を作るために必要なのは、いろんな組織で「最初のイチ」を生み出す努力であるのかもしれない。もっともこの点で、現在の5人の女性大臣は、あんまりすぐれたロールモデルとは言えませんな。真似できなかったり、真似したくなかったり、そもそも永田町全体で・・・いえ、こっちのことです。ご放念ください。


<10月13日>(月)

○台風が来るぞ、ということで昨日からいろんなことがバタバタとしている。

○阪神タイガースは広島相手に貧打同士の戦い。打てないままに引き分けでファーストステージを突破。そうか、阪神はこれが初の最終ステージであったか。広島さん、どうもすいません。これというのも、巨人が精魂を傾けて最終戦でマエケンを打ち込んで、広島を3位にしてくれたから。きっと巨人からすれば、「阪神の方が楽な相手」と判断したからであろう。では、東京ドームへ行ってまいります。

○他方、パ・リーグはオリックスが土壇場で意地を見せて第三戦へ。まあ、京セラドームなので、台風は心配いらないけど、お客は来てくれるかどうか。なにしろ午後4時以降はJR西日本が止まるという話である。日ハムは昨日のうちに決めたかっただろうなあ。

○競馬は京都開催がお休み。確かに今日、競馬をやったら、馬も騎手もお客さんもかわいそうなことになりそうだ。でも東京開催はある、という変なことに。京都大賞典は明日、開催だそうです。これって、テレビ東京は中継するんだろうか。ちなみに昨日の毎日王冠は、もちろん玉砕したのである。

○明日は文化放送の出番があるので、下手をすると朝が間に合わないかもしれない。ということで、昨日の夜になって前泊できるホテルをネットで探し始めたら、浜松町界隈はほとんど満室になっていた。泣く泣く高くて不便なホテルを予約するも、果たして明日の都内はどんなことになっているのやら。お互いに気を付けましょう。


<10月14日>(火)

○男性社員の褒め方を、年代別に考えてみる。


20代:「若くて元気がいい」「きちんと挨拶ができる」「感じがいい」

30代:「よく勉強している」「熱心だ」「フットワークが軽い」

40代:「仕事ができる」「切れ者だ」「遊びの方もたいしたものだ」

50代:「まっとうな判断をする」「バランスが取れている」「人脈が広い」

60代:「人柄がいい」「落ち着いている」「奥さんも優しい人だ」

70代:「いつまでたっても元気」「殺されても死なない」「よく食べる」


○上記は一種のステロタイプですが、まあ、年代による価値観変遷の体系みたいなものが、既にできているわけです。男の職場では。

○では、「女性活躍社会」ではどうなのか。まず女性に対する褒め言葉を考える時点で、「これはセクハラになるんじゃないか」「パワハラだと言われたらどうしよう」みたいな減点法の桎梏があって、とっても語彙が少なくなってしまうんじゃないかと思う。というか、実際にとても難しいと思うぞ。

○褒める、というのはマネジメント上、非常に重要な要素ですので、今後はそういうことも考えていかねばなりません。女性を褒めるのが上手な人は、それだけで大きなアドバンテージになりますね。これからは。


<10月15日>(水)

○今月に入ってから、急速に世界各地で株価が下げていることに対して、こんな意見があるんだそうですね。

「まだ“戒名”がついていないから、市場が落ち着かない」

○戒名とは言い得て妙ですね。「リーマンショック」みたいな命名があれば、「ああ、今株が下がっているのはそういうことなのか」と市場参加者が安心する、というのである。確かに今回の株安は、何が原因だかよくわかっていない。強いて理由を探すと、「先行き不透明感」みたいな話になってしまう。

○もう少し具体的に、下げの犯人とおぼしきものを順不同で並べると以下の通りとなる。


*「ユーロ圏の景気下振れ」〜特にドイツ経済への悲観論浮上はサプライズです。

*「QE3の終了が間近」〜次のFOMCは10/28-29で、いよいよFedによる資産買い入れは終了します。

*「エボラ熱感染の拡大」〜アメリカで罹患者発生。どうも封じ込めに失敗したかもしれない。

*「イスラム国との戦闘拡大」〜バグダッド陥落、なんて怖い話も。菅原さんに聞いてみよ。

*「中国経済の減速」〜最近の資源価格低下、世界貿易量の伸び悩みは、これが一番の原因でありましょう。

*「BRICsブーム終焉」〜中国はともかく、ブラジルとロシアは全く洒落になりません。

*「日本経済の消費税ショック」〜今週のThe Economistには、「日本は増税を延期せよ」と書かれています。うーん、来月のG20で世界各国からそう言われたら、安倍首相はどうしたらいいんですかね。


The prescription for the weaklings is simple: heal thyself. Rather than waiting for America to solve their problems, the laggards should treat the recent spate of bad news as a wake-up call. The ECB should start bond-buying forthwith. The Japanese government should delay the rise in the consumption tax until the economy recovers. Countries that can afford it, notably Germany, should invest in infrastructure. And even America and Britain should be wary, especially over tightening monetary policy too quickly. There is a lot that can go wrong?and they don’t want to be dragged back into those woods again.


○なんとなく、「逆資源価格ショック」ってことかなあ、などと考えています。最近の石油安、資源価格低下は、もちろん日本のような国にとっては良いことなんですが、資源価格が下がって困る国はいっぱいあるわけで、そういう国のお蔭で世界経済が回ってきた。特にドイツなんかは、中国などの新興国向け輸出で大いに稼いでいたわけで、だから鉱工業生産が急激に低下しているんじゃないかなあ。

○それはともかく、気の利いた戒名が欲しいところですね。いいアイデアを思い付いた方はお知らせください。


<10月16日>(木)

○昨日、「戒名」を募集したところ、こんなのがあるそうです。「4Eショック」ですって。(=End, Euro, Energy, Ebola)

http://kikinzoku.tr.mufg.jp/blog/2014/post-626.html 


○なるほど、とは思いますが、これが決定打だという気もしない。4つのファクター、というところに今一つ、焦点を絞り切れていない不透明感があるんでしょうな。

○さて、福井県に来ております。本日は鯖江市と越前市(いつの間にか武生市の名前が変わっていた)で、メガネメーカーのシャルマンさん、それに龍泉刃物さんを訪問しました。福井というのは、長い伝統を有する技術オリエンテッドなモノづくり企業が多いのですが、これをどうやって世界に知らしめるか、という点が課題になっている。似たようなところは全国でも多いんじゃないでしょうか。

○生涯に買ったメガネは1500円の老眼鏡一つだけ、というワシはまったく不案内であったのだが、シャルマンはつくづくすごい会社ですね。メガネづくりには全部で200もの工程があるんだそうですが、地場にはそれを分業でやってきたという150年間の歴史がある。それをシャルマンは部品メーカーから出発して、メガネフレーム一貫生産の体制を作り上げた。さらにはチタン加工の強みを生かして、最近では医療器具の生産にも打って出ている。

○国内のメガネ市場は縮小しているのだそうだ。しかも海外では強いブランドを持った企業がひしめいていて、ラグジュアリー化の波を考えると日本勢の不利は否めない。「匠の技」はあるけれども、それをどうやって高い利益につなげていけばいいのか。ただし会長さんは意気軒高としていて、職人芸の世界にデジタル化も加えて、「6000億円もある日本の医療器の貿易赤字を解消する」との心意気でした。

○さて、明日も福井県視察を続けます。


<10月17日>(金)

○福井市は城跡の中に県庁があるという、旧城下町にありがちなたたずまいをしている。その周囲は中央公園になっている。朝に後援を少し歩いてみたところ、岡倉天心と岡田啓介の銅像があった。両方とも福井県人である。

○岡田啓介は二二六事件に遭遇したことで知られるが、その時に身代わりとなったのは、海軍大佐で当時は首相秘書官を務めていた松尾伝蔵であった。姿かたちがよく似ていたために、陸軍の青年将校たちは「岡田殺害に成功した」と勘違いし、これで岡田首相は難を逃れた。伝蔵も福井県人であり、岡田の義弟であった。その伝蔵の孫にあたるのが、不肖かんべえがアメリカ研究で日頃からご指導を仰いでいるジャーナリストの松尾文夫氏である。

○もう一人、福井県出身者で忘れてならないのは、国際政治学者の若泉敬氏である。鯖江市にご自宅があった由。佐藤栄作首相の密使として、沖縄返還交渉に奔走したことで知られる。学生時代に、その若泉氏の書生をしていたのが、元外務次官で現在は初代の安全保障担当補佐官としてご活躍中の谷内正太郎氏である。こちらは不肖かんべえにとっては、県立富山中部高校の先輩に当たる。余談ながら谷内氏のご出身は石川県なのだそうで、谷内と書いて「やち」と呼ぶのは能登地方によくある苗字である。

○と、かように少ないサンプルで物事を断じるのは危険なのであるが、ワシの中にある福井県人のイメージは「理念型」なのである。松平春嶽とか橋本佐内とか、いかにもそんな感じじゃありませんか。福井県というのは、気候風土が最も富山に近い(社長の数が多い、夫婦共働きが多い、「住みやすさ?」ランキングが高い、その他)と思うのだが、この辺がちょこっと違うかなと思う。富山県はむしろ「実務型」が多いと思う。谷内さんがその典型ですね。

○で、今日も福井県内の工場を2件見学したのでありますが、電池材料メーカーさんと繊維メーカーさんであります。いい技術を持っているのだが、どうやって製品化して世界に向けて売っていくかが課題、という最近の日本にありがちなパターンである。この問題、結構難しい。

○電池の世界も今では日本勢の旗色が悪く、@サムソン、ALG、Bパナソニック、という順位なんだそうだ。従って、正極を作って売る商売も顧客の6割が韓国、なんて聞くとガックリ来ますな。いろいろ話を聞くと、やはり3年くらい続いた超円高局面が決定的であったということである。確かに、あの辺から貿易収支も赤字になっている。果たしてメイド・イン・ジャパンに未来はあるのか。これだけモノ作りが好きな国なんだから、きっと活路はあるんだと思うけど、今は「ベテラン世代の引退」があっちこっちで響いているようです。

○ところで福井県の名所といえば東尋坊。よく低予算2時間ドラマに出てくる断崖絶壁であります。俳優の船越英一郎なんぞは、いったい何回くらい来ているんでありましょうか。実際に行ってみるとなるほど絶景で、手すりもないから迫力満点です。ただし「自殺の名所」というのは考えもので、今では観光名所として知れ渡っているために、人目は多いし土産物屋はあるわで、とても自殺には向いてません。あれじゃ謀殺も難しいでしょうな。

○この東尋坊から少し北へ行くと、石川県との県境の手前に吉崎御坊という浄土真宗の史跡がありまして、たぶんウチの先祖なのであります。いずれ立ち寄ってみたいものであります。


<10月18日>(土)

○クライマックスシリーズ、とうとう阪神が敵地ドームで巨人を4タテし、日本シリーズ進出を決めてしまいました。いやー、申し訳ないなあー。そんなに強いチームではないはずなんですが、ここへ来て勢いに乗ってしまいました。レギュラーシーズン中の巨人には、全然歯が立たなかったのに。クリーンナップも、4本柱も、抑え投手もよかった。あるいはファーストステージの広島との戦いで、良い刺激を受けたのかもしれません。

○こうなると目指すは日本一。日本シリーズ出場は2005年以来。しかも勝ったのは1985年以来になりますからね。阪神ファンのご同輩、久々に盛り上がりますなあ。ここまで控えめで応援して来ましたけれども、ちょっと盛り上がっています。ワォ〜!


<10月19日>(日)

○ふと気が付くと、アメリカの中間選挙まで2週間ちょっとになっております。こんなタイミングで株価は下がるし、エボラ熱は止められないし、「イスラム国」は奴隷制宣言までしちゃうし、オバマ大統領ますますピンチなわけなんですが、世間的には関心低いですねえ。

○日本国内も政治に対する関心が低下しているような気がします。小渕優子大臣は辞任やむなしみたいですけど、それでどうなるという感じもしない。「内輪もめ」も程度低いしなあ。なにしろ「解散に追い込む」とは口が裂けても言えない野党が国会で追及しているわけですから。

○とはいうものの、ワシがそんなことを言ってるわけにもいかぬ。月末にはこういう仕事をやる予定です。ちと宣伝まで。


●【WEB】M2Jプレミアムナイツ(吉崎達彦氏) 米中間選挙後の情勢と相場展望


日時:2014年10月31日 (金) 18:30 〜 20:00

会場:ご自宅のパソコン

参加条件:どなたでもご参加いただけます

講師:株式会社双日総合研究所副所長:吉崎 達彦 氏

参加費:無料

定員:500名様

(お申込者多数の場合は、その時点で受付終了となる場合も
ございますので予めご了承ください。)

http://www.m2j.co.jp/seminar/seminardetail.php?semi_seq=2297  

(↑こちらからどうぞ)


○明日の朝だって早起きして「モーサテ」ですからねっ。「米中間選挙後の国際情勢」について語る予定です。


<10月21日>(火)

○とっても久しぶりに飯久保さんとランチ。いつ以来かと思ったら、なんと前回は2006年5月17日だった。何と8年も前のことである。こうやって不規則発言に書いておくと、ちゃんと後でわかるから便利である。

○ご一緒にA50の仕事をしていたのは1990年代後半のことだったから、ずいぶん長い時間がたってしまった。当時のワシはまだ30代であった。それが今では50代である。飯久保さんもお年を召されたはずなのであるが、お変わりなく元気である。やっぱり昭和ひとけた世代はたくましい。

○いろんな話をした後で、宿題をもらってしまった。「金融派生商品を普通の人が分かるように定義すること」・・・・うーむ、難問だ。こういう議論をすること自体が「飯久保ワールド」であって、今日は久々にその手の刺激を受けたのでありました。


<10月22日>(水)

○アメリカの選挙を探るときに、「ママはどうしているか?」がしばしば重視されます。もともとは1990年代に、クリントン陣営の選挙参謀が「サッカー・ママ」というクラスターに狙いを定めたことが始まりでした。「子どもをサッカーに送り迎えするような教育熱心でゆとりのある中間層の母親」たちのことです。彼女たちは、それまでは選挙運動の標的になることがありませんでした。だから政治のことはよく知らないし、典型的な浮動票だったのです。

○1996年の選挙では、このサッカーママたちの投票行動がクリントン再選を決定づけました。当時はちょうど米国経済が回復に向けて動いている時期でした。そしてクリントンは若くてカッコよく、相手候補のボブ・ドールはお爺ちゃんでした。その後、クリントンは不倫事件を起こしたりしますけど、支持率は最後まで高いままでした。

○それが2000年代になりますと、このお母さんたちは保守化します。「9/11」テロ事件を契機に、何よりも子どもの安全を気にかけるようになった。今度は彼女たちは、「セキュリティ・ママ」と呼ばれるようになるわけですが、そうなると景気や教育といった内政問題よりも、対テロ戦争などの安全保障政策が重要になってきます。このセキュリティ・ママの支援を追い風に、2004年にはブッシュ大統領が再選されるのです。

○では、2010年代のアメリカ選挙はどうなっているのか。ここで注目すべきは「ウォルマート・ママ」であります。「18歳以下の子どもと同居していて、月に1回はウォルマートで買い物するようなお母さん」、というのが定義です。彼女たちの動向については、こんな調査が行われています。たぶんウォルマート自身が、顧客の囲い込みのために「ママたち」を意識しているんでしょうね。

○ここから浮かび上がってくるママたちの近況は切実なものがあります。以下は10月20日に、ノースカロライナ州とルイジアナ州で行われた聞き取り調査結果から。


●嫌なニュースが増えたと思う。なるべく子どもには見せたくない。

●中東のISISも嫌だったけど、エボラはもっと嫌だ。

●オバマ大統領には騙された、失望した、あきらめた。

●でも連邦議会はもっとひどい。あの人たちサイテー。

●(でも、政治のことはあんまりよく知らないようでもある)。


○ウォルマートママたちは、2008年にはオバマ候補に投票し、2010年の中間選挙では共和党に流れ、それから2012年にはまたオバマに戻ってきたと言われている。確かに2度の大統領選挙の出口調査では、オバマは女性に人気があることが確認されている。その彼女たちは、2014年中間選挙ではどのように動くのか。

クックポリティカルレポートの分析にいわく、"From Ebola to ISIS to Fergason, this summer has been both unpredictable and predictably unstable." つまり、「ファーガソン(の暴動事件)、ISIS、エボラ」という3点セットにより、この夏から再び「経済より安全保障」がママたちの関心事として浮上してきたようです。となると、いくら民主党が景気や雇用の問題を訴えても効果は薄いということになる。例えば「最低賃金を挙げよう」なんていう政策は、違うボタンを押していることになる。

○そして安全保障問題については、ハッキリ言ってオバマ大統領は出来が悪い。何か思いがけない事件が起きると、いつも最初は驚いて見せて、それからいろいろ文句や言い訳を言いながら、渋々と少しだけ行動する。批判を受けると、まるで他人事のように事態を分析してみせる。あなたは大学教授じゃなくて、大統領なんですけど・・・。

○投票日まではあと2週間なんですが、それにしても関心が低いよねえ。でも、この「ママの三段活用」の話、久しぶりに面白いと思いませんか?


<10月24日>(金)

○この映像はビックリしましたな。アメリカ中間選挙のケンタッキー州上院議員選挙で、共和党院内総務のミッチ・マコーネルに挑戦している民主党候補者のアリソン・クリムスという女性が居ます。下記はそのキャンペーンメッセージです。


●Alison for Kentucky TV Ad "Skeet Shooting"

http://www.youtube.com/watch?v=z7Pa16JPUlY 


「あたしって、バラク・オバマとは違うのよん」と明確に言い切ってしまうのだから驚きです。なおかつライフル銃を撃ちまくって、銃規制には反対だし、石炭は大いに使うべきだし、環境規制も知ったことじゃないというんですから。オバマ大統領はさぞかし渋い顔をするでしょうが、でも、ここは南部なんだもん。

○他方、共和党のミッチ・マコーネル上院議員は「オバマと同類のワシントン族。ケンタッキー州のためには働いてくれない」というイメージが出来上がっているようで、お二人の戦いはこんな風に僅差になってます。ホントに接近しているじゃないですか。

○普通に考えればマコーネルが再選されるんでしょうが、ケンタッキー州のようなところで民主党の候補者がここまで善戦するのですから、「反現職機運はここまで来ているか」と感じさせられることが大でありますね。アメリカは広くて理解しがたい、という好例でありました。


<10月25日>(土)

「競馬場は社交の場」と言ったのはオバゼキ先生である。博打の場ではないのである。競馬は紳士のたしなみ。ゆえに今日は特別にネクタイをして府中競馬場へ。晴天で競馬日和である。

○府中までは遠い。そして府中は広い。さらに贅を尽くしてある。ワシの主戦場である中山よりもかなり立派である。ついでにテレビ東京さんのスタジオを覗いちゃったりして、まことに贅沢な経験である。

○が、一番の贅沢は、深くて長い付き合いの仲間が一堂に会して、ワイワイやることなのである。山崎元さんを除くと、あんまり紳士じゃない一同なのであるが、これぞ大人の社交。ギャンブルはチョイ沈みで終わったが、まあ、そんなこときにしちゃいかんのである。

○そしていつも通り、最後は上海馬券王先生とともに「くらちゃん」で焼肉。これまた堪えられません。店が新装なって盛りが上品になったような気がしましたが、お値段は進化していませんでした。よしよし。

○さらに今宵はタイガースが日本シリーズの初戦を制しました。結構でありますねえ。メッセンジャーが投げて、ゴメスとマートンが打って、呉昇桓が締める。つくづく阪神は、外人の力を発揮させる職場なのですな。明日もきっと行けると確信しております。


<10月26日>(日)

○今日はフレッシュひたちに乗って常磐線石岡駅へ。そこからシャトルバスで50分揺られて百里基地へ。今日は防衛省・自衛隊60周辺記念航空観閲式なのである。

●式次第(11:25)

1.観閲官臨場 (安倍首相が江渡防衛相などとともに登場)

2.儀仗隊栄誉礼

3.開式

4.栄誉礼

5.国家独唱 (ご存じ海上自衛隊の歌姫、三宅由佳莉三等海曹が登場)

6.慰霊飛行 (F15四機による飛行が隊員の物故者を慰霊)

7.観閲飛行 (自衛隊所属のヘリコプター、対潜哨戒機、救難機、輸送機、戦闘機などが順々に飛行する。陸上自衛隊AH−IS/64D、OH−1/6D、UH-1J/60JA、海上自衛隊SH-60J/K、P-3C、US-1A/2  航空自衛隊UH-60J、CH-47J、U-125A、C-130H、C-1、E-2C、E-767、KC-767、B-747-400、F-15J/DJ、F-4EJ改、F-2A/B)・・・政府専用機も入っている、という点がちょっと面白い。

8.巡閲 (安倍首相、オープンカーで移動し、空自移動部隊、陸自大隊、海自大隊、空自第一大隊、空自第2大隊、空自第三大隊、空自音楽隊を順に観閲する)

9.観閲官訓示 (安倍首相による挨拶)

10.栄誉礼

11.展示視閲 (みなさん、これがお目当て)

12.閉式

13.儀仗隊栄誉礼

14.観閲官退場(13:00)

○特に展示視閲のトリを務めるのは、皆さん待ってましたのブルーインパルス。50年前の東京五輪で空に5つの輪を描いた頃から、これぞ日本のお家芸。6機の鮮やかな編隊飛行を見ているうちに、一発の銃弾も撃たない自衛隊がなぜかくも高い練度を保つことができるのか、不思議に思えるくらいでありました。

○今日の天気は晴れたり曇ったり。当たり前のことかもしれませんが、観閲官の前に整列した自衛隊の隊員諸氏は上の議事次第の最中、微動だにいたしません。ついでに言えば、シャトルバスの運行などのロジ面も立派なものでした。ひょっとしたら今日、土浦ナンバーのバスは全部この辺に集まっていたのかも? ちなみに百里基地は軍民共用の茨城空港でもありますので、上の議事の間にスカイマーク航空機が2機離陸していきました。


<10月27日>(月)

○岡崎久彦大使が亡くなられました。享年84歳。昭和ひとけた世代で、私の父とひとつ違い。これまでにたくさんのご恩を受けてきました。突然の知らせに呆然とするものがあります。とは言っても、今日のところは何もすることがないので、夜空の三日月を見上げながらお別れを申し上げたつもりになりました。

○確か最初にお話ししたのは、岡崎研究所が博報堂内にできた1994年頃であったかと思います。会社の内定者研修で『戦略とは何か』を読みました、てなことを申し上げた記憶がある。それから延々20年なので、思い出を数え上げるときりがない。


博報堂の丸の内オフィスで始まった岡崎研究所のサロン。
小川彰事務局長から届く大量のファックス、後に電子メール。
神田司町の「あけぼの」での宴会と安全保障談義。
あっちこっちの会議室を借りて運営していた「アジアの国の小さな研究会」。
岡崎研究所が神田錦町の古風なビルへ移転。
日米同盟プロジェクトの始まり。
キッシンジャー『外交』の翻訳出版。
小川彰さんの早過ぎる死。
日米台三極対話の思い出。
NPO法人岡崎研究所の立ち上げ。
「外交官とその時代」シリーズの出版。
拙著に頂いたありがたいお葉書とご配慮。
日中安保対話の始まり。
岡崎研究所の情報提供サービスが軌道に乗る。
虎ノ門新愉園での中華料理とビール。
神田ランチョンでのハヤシライスとビール。
虎ノ門焼き鳥屋でのビールとワイン。
靖国神社遊就館をめぐるゴタゴタ。
テレビ朝日「サンデープロジェクト」でご一緒したときのこと。
いろんなパーティーでお会いした時の立ち話。
岡崎研究所の理事会での議事進行。
岡崎研究所「春のフォーラム」における恒例の国際情勢分析。
忘年会では、実はカラオケも結構お好きでした・・・。


○ご趣味の気功だけはお付き合いしませんでしたけど、たくさん勉強させてもらいましたし、たくさんご馳走になりました。いろんな会合で、私は最年少メンバーでした。ときどき潮匡人さん=同じ1960年生まれ=も一緒でしたけど。考えてみたら、自分がお金を払ったことは一度もない。膨大な量のタダメシ、タダ酒でありました。

○岡崎研究所のモットーは「鷹は群れず」であります。が、正直に申し上げますと、私は岡崎大使がいらっしゃる席に群れるのが大好きでした。だって楽しかったんだもの。でも、楽しいことにはいつか終わりがあります。もう呼んではもらえませんけど、これまでどうもありがとうございました。


<10月28日>(火)

○「くにまるジャパン」に出る。航空観閲式について語る。余裕があって興が乗れば、石破茂氏のモノマネやろうかと思ってたんだけど、話はそこまで届かず。

○中央公論のゲラチェックを送る。テーマは世界同時株安。「時論2014」というコラムで、その時々の経済ネタを書く仕事なんだが、ひょっとすると2015年まで続くかもしれない。

○上杉隆さんの「ニュースオプエド」に出演。米中間選挙が元ネタだったんだけど、亡くなられた岡崎久彦さんの思い出話も。「懐の広い、いい人でしたね」ということで一致。

○夜は経済の勉強会。今宵のテーマはインド経済。話を聞きながら、「それじゃダメじゃん」と10回くらい心の中で呟いてしまった。春風亭昇太じゃないんだから・・・。

○空き時間には『日本史の謎は「地形」で解ける』(竹村公太郎/PHP文庫)を読んでいる。死ぬほど面白い。というか、ワシ好みの本。

○こんな風に、普通の一日が過ぎていく。ありがたいことである。明日もそうでありますように。


<10月29日>(水)

○アメリカの中間選挙まであと1週間で、今週はQE3終了になるであろうFOMCがあって、アメリカウォッチングは政治でも経済でも大事な時期を迎えています。とりあえず明日はNHKジャーナルに登場の予定。

○こんな風にバタバタしていると、日本シリーズがちゃんと見られない。ああ、案の定、今宵も負けてしまった。阪神が強かったのは、今月のほんの一瞬だけだったのであろうか。


<10月30日>(木)

○今年の阪神は10月のある時期だけが本当に強かった。その強さを、東京ドームでの巨人戦4タテで使い果たしてしまい、日本シリーズ初戦までは持ち越したものの、第2戦以降はシーズン中のダメ虎に戻り、相手のソフトバンクもそれほど強いとは思えなかったのですが、本日、あえなく投了となりました。なんまんだぶ。なんまんだぶ。

○強いて褒めるところを探せば、外人選手に力を発揮させることに関して、これほどの球団はないでしょう。大阪のファンはいい意味で実力主義ですからね。ところがチームの中心となるキャラクターが居ないから、敗色濃厚となってベンチの雰囲気が悪くなったときに、カツを入れて奮い立たせてくれる選手がいない。新井は最後の頃はほとんど出られなかったし、鳥谷は元々そういうタイプじゃないし、西岡は怪我でシーズンを棒に振ったし、福留も最後になってやっと調子が出てきた。監督もあんまり明るいタイプではないので、これではいかんですな。来年も苦労しそうです。

○今日のホークス優勝の瞬間、ワシはNHKの控室でNHKジャーナルが始まるのを待っておった。と言っても、野球中継が終わらないのだから、番組が始まるはずがない。阪神が逆転してくれるのがいいのか、それとも早く仕事を終えて帰らせてもらう方がいいのか、いかにもゴーモンと言った感じでありましたな。まあ、昨晩サヨナラホームランを浴びた時点で、結論は見えていましたが。

○本日は岡崎大使の告別式に出たこともあり、こんな風に悄然として一日を終えるのがふさわしいような気もする。なにしろ「鷹は群れず」が岡崎研究所のモットーである。今宵はホークスの優勝に拍手を送るとしよう。


<10月31日>(金)

○夕方5時ごろに溜池通信を書き上げて、どれ6時半からのセミナーの準備をしなきゃいけないなと思い、ふと株価をチェックしてみて驚いた。

「なんだよ、これ。日経平均が1万6400円って、いつの株価がでてるんだよ」

○てっきりPCがトラぶったかと思いましたがな。少したってから、やっと正体が分かった。日銀の黒田総裁、追加緩和をやったんだ・・・・。もちろん株価は暴騰、為替は円安に。「オクトーバーサプライズ」という言葉通り、今月はエボラ熱やら世界同時株安やら、阪神タイガースの巨人戦4タテ、そのうえ岡崎大使の訃報まで、驚くような話がいっぱいあったけれども、まさか最後の日にこんなサプライズが残っていたとは!

○いやービックリしましたな。こうなったら、米国の中間選挙なんてもうどうだったいいじゃん!(もともと、米国経済に対する影響は軽微であると主張しているんだが)。というか、FX取引をやっている今宵のお客様方から見れば、QE3終了翌日の日銀追加緩和の方が、はるかに超ド級のインパクトではないか。

○会場があるミッドタウンまで、地下鉄で移動して乃木坂の駅で降りたところ、今宵はハロウインの仮装をした若い男女が六本木の街にあふれておった。うーん、大丈夫か、こんなことしてて。ワシはちょっと不安になってしまったぞ。黒田マジック、果たしていつまで効果を保てるのか・・・・。

○なんか今週は疲れてしまったぞ。ああ、気分が休まらない。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki