●かんべえの不規則発言



2005年4月





<4月1日>(金)

ワクワク投資広場(旧:ルック(後)いどばた会議)を見ていたら、内山さんから「アジアのイチロー倒れる」の報が。あっと驚きました。アイザワ証券の佐々木一郎・リサーチセンター部長がなくなられました。くも膜下出血だったようです。番組で何度かご一緒しただけですが、中国や朝鮮半島の情勢に詳しく、いつも元気で、一緒に居るだけで楽しい人でした。

○以下はたまたま発見した「在りし日の佐々木さんとかんべえ」。どこのどなたかは存じませんが、昔の『ルック@マーケット』の内容をアップしてくれているんですね。読んでいて懐かしいです。03年4月7日ということは、イラク戦争はほぼ終局が近かった(日本時間の4月10日にバグダッド陥落)。当時は、「イラクの次は北朝鮮か」ということが言われていて、マーケット的に注目を集めていた。番組が終了してしまう2〜3ヶ月前のことですね。


832 名前:LIVEの名無しさん[sage] 投稿日:03/04/08 04:50 ID:LLtfJo9m

ルック@マーケット 4月7日

中井亜紀(キャスター)
佐々木一郎(アイザワ証券)
吉崎達彦(日商岩井総合研究所)

中井:韓国なんですけれど、ミサイル問題ありますよねえ。

佐々木:そうです。後でお話しようと思うんですけどねえ、実はミサイルが上がるとですね。それを転機にしてですね、過去20年間(株が)上がってきているんですよ。面白いんですよね。

中井:今ご説明していただけますか?

佐々木:あ、そうですか?じゃあご説明しましょうか。(フリップ提示)

●韓国大統領就任とミサイル発射

就任                    北のミサイル発射
金泳三大統領 93年2月25日就任  ノドンミサイル発射 93年5月29日
金大中大統領 98年2月25日就任  テポドン1号発射(北朝鮮側は人工衛星と発表)98年8月31日
慮武弦大統領 03年2月25日就任  長距離ミサイルを日本に向けて発射の可能性 03年X月XX日

佐々木:こちらはですね、韓国のですね、最初にミサイルを撃ちましたのはですねえ、金泳三大統領のだった時のノドンミサイル。んで、就任したのが93年の2月25日。で、撃ったのが5月29日。3ヵ月後に打ち上げているんです。2回目は金大中さんで就任して6ヵ月後、8月31日にテポドン一号、これは東京湾越えた奴ですね。北の方はですね、光明星一号、人工衛星だと言っているんです。で、日本も3月末に偵察衛星打ち上げましたよね、あれは北は強く非難しているんですね。それを切っ掛けにするんじゃないかと言われてますけど。で、慮武弦さん2月25日で、今度打ち上げるんじゃないかと。一番早い日にちとしては4月に15日といわれてる。

中井:どうしてでしょう?

佐々木:4月15日はけいあいさんの生誕記念日なんです。あ、けいあいさんというのは、金日成、お父さん。生誕記念日にバーンと打ち上げるんじゃないかと。ちょうどイラクと合ってきますよね。終わる直前に、テポドン2号で米周辺に落ちちゃうわけですから。そういうのが、まあ、あの国分かりませんけどね。ですから、新大統領が出来て、撃つ。面白い事に韓国の株式市場は底をうっているんですよ。

中井:4月15日がキーポイントなんですねえ。

佐々木:今のところ、いわれてますね。

吉崎:イラクが終わってしまうと駄目ですよね。

佐々木:駄目駄目駄目。

吉崎:一人で目立つような行動をしちゃいけませんよね。

佐々木:そうそう、やられちゃうから。

吉崎:他の国がやっている時にやる。

佐々木:仰るとおり、だから4月15日。ムスタという東部のね、北朝鮮のミサイル基地に動きがあるっていう未確認情報もあります。舞う水という塔ていう名前なんですけどね。
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○あらためて気がつくけど、山一證券OBでテレビに出ている人は多いのですね。今井澂先生、中島健吉っあん、一尾仁司さんなど、マーケット番組を通してお世話になった人ばかり。それも個性的な人が多い。佐々木さんも「ガハハ」笑いが良く似合う闊達な方でした。ご冥福を祈りたいと思います。


<4月2日>(土)

○今週末は郵政民営化法案の山場だそうで。あんまり関心がないんですが、ひとつだけ確信していることは、「これで政局になることはないだろう」であります。え?そんなの当たり前だって? 私はただ、あの綿貫前衆議院議長が反対派の中心、というのが、どうにも納得がいかないだけなんです。綿貫さんはいい人なのである。だいたい富山県人に、反乱軍の首領が務まるはずがないと思うのである。

○「ホリエモン」という呼び名は、彼の競走馬から来ているので、やっぱり「ホリエモン」でいいんじゃないかというご指摘がこの方から。なるほど競馬の馬名は、カタカナで9文字以内ということになっているので、平仮名が混じっていてはいけない。うーん、でも、「ホリえもん」の方が、愛らしい感じがしていいと思うんだけど。とりあえず、窓際銀行員さんにサンクス。金融ネタ、期待してますよ。

○ついでに、もうひとつブログのご紹介。カワセミさんです。こちらは国際情勢をテーマにしたものですが、オープンしてすぐに雪斎どのやじゅんさんが挨拶に見えている、というあたりから、性格が窺えると思います。この手のタイプの人が増えると、なんとなくうれしいのである。

○今日は町内会の防犯部で中山競馬場に。来賓席に入れてもらったのだが、6レースから買い続けて、取れた馬券はわずかに2枚だけ。うーん、それにしても勝てぬ。ホントは遊んでる場合ではないのだが。


<4月3日>(日)

○楽天イーグルスが本拠地で西武ライオンズを相手に2連勝。今日は負けましたが、なかなかの成果といえましょう。なにしろ昨年、規定打席に達したのは選手会長の磯部だけ、計算できるピッチャーは岩隈だけ、というチームである。それが松坂をも打ち崩して白星2つ。地元は大変な騒ぎでありましょう。

○不思議と仙台は、昔から縁のある街である。かんべえの高校の同級生には、東北大学に進学した者が多かった。それで80年代に何度か遊びに行った記憶がある。雪斎殿も言っておられたが、仙台はあれだけ大きい街にしては、公営ギャンブルがない。その結果として、テレビポーカーのような地下ギャンブルが流行っていた。かんべえの悪友たちは、揃ってこの危険なゲームにはまっていて、ご多分に漏れず負けていた。懐中がいよいよ寂しくなると、彼らはテレビポーカーの深夜の店番アルバイトをやって資金を得て、またまた店に挑んでは返り討ちにあっていた。まことに愚かなことである。もっとも「富山中部高校→東北大学」には、1年上にはあの田中耕一さんがいるので、お馬鹿さんばかりではなかったことを申し添えておくべきだろう。

○会社に入ってからも、何回か仙台に出張する機会があった。あるとき、労働組合の関係で、「東北支店の組合員のご意見を伺いに行く」仕事があった。東北新幹線が開通して間がなく、日帰り出張ができるというのが新鮮であった。支店の皆さんに「何かご不満はありますでしょうか?」と聞いて、仕事はあっという間に終わり。帰り際、支店の人が「せっかくだから、仙台観光でもして帰ってください」とタクシーチケットを2枚くれた。「なんという太っ腹」と感動し、とりあえず青葉山城まで行ってみた。なんと千円に達しなかった。そこで初めて気がついたのだが、仙台には公共交通機関がない(今は地下鉄があるらしいが)。その分、タクシーが安くて便利なのである。若き日のかんべえは、伊達政宗の銅像がある場所の土産物屋で、笹蒲鉾と萩の月を買って帰ったのであった。

○そんなわけで、仙台における楽天イーグルスの繁栄を祈って止まないのであるが、ちょっと気になるのはスポンサー企業が少ないことでしょうか。80年代に行った頃によく聞いたのは、「東北地方に本社を置く一部上場企業は、東北電力と七十七銀行だけ」ということ。今はどうなっているか知りませんが、たしかに東北には「企業城下町」が少ない。同じく楽天が経営するヴィッセル神戸であれば、この辺はかなり事情が違う。神戸であれば、神戸製鋼や川崎重工やワールドやUCC、その他がありますので。

○もっとも、大企業の広告費で球団を養うというビジネスモデル自体が、いささか時代遅れになりつつある感はある。楽天イーグルスが成功するかどうかは、プロ野球がこの先、繁栄を続けられるかどうかを占うものではないかと思う。

○ちなみに、「ホリエモン」の由来について読者の方からご指摘あり。競走馬からではなく、「オンザエッジ」時代からの通り名であるとのこと。ご指摘深謝です。

堀江氏が色々な会社をどんどん買収するので、「今度はあれ買って、これ買ってー」と、ドラえもんに頼むがごとく言われていたことからです。
「あんな会社いいな、買えたらいいな、……」と、ドラえもんの替え歌もヤフー掲示板では作られていました。
私の記憶の中では、堀江氏があまりにも株式分割をするので、
堀江氏の知り合い「(のび太調に)ねえ、お金が欲しいよ〜」
堀江氏「(大山のぶ代調で)仕方ないなー。株式分割〜!」
堀江氏の知り合い「わ〜い、ありがとうー、ホリえもん〜!」
といった妄想が2ちゃんねるで書き込まれていたように思います。
もう2年近く前です。
どっちにせよ、確実なソースが見つからないのが残念ですが。


<4月4日>(月)

○お昼にいつもの「和喜」に行ったら、今日はずいぶんお客が多かった。それも顔見知りばかり。桜が咲き始めると、人は帰巣本能が刺激されるのかもしれん、などとオヤジさんと話していたら、菅原一秀クンが一人で入ってきた。元同僚、元部下の現衆議院議員である。「おおー」と声を掛け合うのだが、まあ、そんなに感動するほどのことでもない。カウンターの隣同士に座って、こっちは鰯の天ぷら、向こうはシャケである。

○永田町は郵政民営化で緊張状態なのかと思ったら、そんなことはないらしい。ほとんどの議員さんは、土日に選挙区に帰っているので、月曜の昼間の国会はまだ人が少ない。夕方になってから、ボツボツ会合が始まる。東京都選出の議員さんにとっては、月曜の昼はゆっくり勉強ができる時間なのだそうだ。で、今日はそういう典型的な月曜日なのであった。そのまま一緒に「バン」でコーヒー。奢らせてしまったが、実は当方、財布の中には1000円しか入っていなかったことを、今さらながら白状しておこう。

○さて、その郵政民営化政府案は、つい先ごろになって決まったようだ。明日からは自民党内の説得が始まるのだろう。まあ、これは盛り上がらないでしょうな。いや、それでも自民党としては揉めるのかな。どっちにせよ、目の前には4月24日の統一補選がある。告示が12日。その前には一連の手続きを終えておく必要がある。どっちにせよ、今週中には終息、もとい収束するのでしょう。

○それよりも、先に控えている都議会選挙の方に波乱がありそう。前回の2001年は、小泉旋風で自民党が勝ち過ぎている。民主党側は候補者をたくさん立てて、政権交代へのはずみをつけたいところだろう。どうも永田町が本気になるとしたら、その後くらいになるんじゃなかろうか。まだまだうららかな日々が続くような気がするなあ。


<4月5日>(火)

○ずいぶん前になるが、自民党の議員さんに「特定郵便局の人は、そんなに選挙の応援をしてくれるものなんですか?」と聞いてみたことがある。そのときの答えは、いや、それほど強力な支援があるわけではないのだけれど、いつどこで演説をしていても同じ人が聞きに来ていて、後で挨拶すると「いやあ、また来てしまいました」などと言う人がいる。それが特定郵便局長さんなのだという。彼らは選挙大好きだし、その気になれば時間が作れてしまうので、「選挙ストーカー」行為が可能になるらしい。

○こんな応援を受けていたら、別に献金や票のとりまとめがなくても恩には着るし、少なくとも人間の情として邪険にはできない、という話であった。「世襲ができる公務員」なんて変な制度を続けていたから、そういう暇な人種ができてしまったのであろう。まあ、本当のところは分からないけれども、現実は意外とそんなものかもしれないなあ、と思った次第である。

○個々の自民党議員としては、その手の義理がある人たちを背中に抱えているわけなので、「郵政民営化、バンザーイ!」とは言いにくい。だったら、抵抗した振りだけは十分に見せて、後は粛々と押し切ってもらいたい。党議拘束をかけて、「小泉さんがあれだけ言うから仕方がなくて」という形にして、できればこの際、竹中大臣のクビでも取れればモウケモノというか。

○これで世論が、「民営化、いかがなものか」という形で抵抗勢力の後押ししてくれればいいが、あいにく丸っきり関心が盛り上がらない。日々のニュースでの扱いは極めて小さい。大方のサラリーマンにとっては、公務員なんて少なければ少ないほどいい。税金をもらう人が減って、払う人が増えるという話に、反対する人はあんまりいないだろう。「優先順位が間違っている」とか「何のための民営化」という議論はあるにせよ、民営化の抑止力にはつながらないのではないか。

○総理大臣が本気になって、「これだけはやる」と言い出した場合、周囲が止めることはなかなかに難しいものだ。党内基盤が脆弱だった三木政権でさえ、いろんな足跡を残している。他方、海部政権や宮沢政権のように、政治改革をやるぞやるぞと言いつつ、肝心なところで本人が腰砕けになってしまった例もある。小泉さんがどっちのタイプに近いかは、考えるまでもないと思うのだが。


<4月6日>(水)

○会社の元同期のH君がふらりと来社。念のために言っておくけど、「退職のち放浪」のH君とは別人だからね。H君、今はコーヒー豆の輸入業を営んでいる。コーヒー豆は、ただ今高騰の真っ最中。そうでなくとも商品市況関連は皆、高騰中であるが、コーヒー豆の実需はどうなっとるんじゃい、と聞くと、これが伸びているという。ブラジルでの国内消費とか、東欧での需要増が大きいとか言っていた。そのうち中国人も盛大にコーヒーを飲みだすだろう。昨年は全世界の需要が1.9%の伸びであった由。農産物で需要が2%伸びるというのは大変なことである。

○その昔、ケネディ政権の頃は、全世界的なカルテルを作って、コーヒー豆の買支えを組織的に行っていた。コーヒーを生産しているような国は、大概は発展途上国だったので、当時の共産主義国にとっては絶好の狙い目であった。だったら、少しくらいコーヒー豆を高く買ってもいいから、お金をあげてそういう国を助けてあげましょう、てなことをやっておった。その辺は昔の耳学問の残滓である。

○最近のコーヒー生産は全世界で1億袋を超えた、と聞いて驚いた。コーヒーの分量はなぜか袋で数える。1袋が約60キロなので、1億袋は600万トンになる。(ちなみにコメは1俵で20キロだそうだから、コーヒー豆の袋はかなり大きいといえる)。もちろん穀物生産に比べれば小さいが、コーヒーなんて本来が非必需品である。なければ人が死ぬというわけではない。しかるに、この600万トンが経済を支えているという国は、南米やアジア、アフリカなどには少なくないはずである。

○もっとも、コーヒーがないと困るという人は少なくないだろう。かんべえにとっては、コーヒーは限りなく必需品に近い嗜好品なので、この世からなくなれば、少なくとも「溜池通信」は廃刊になってしまうだろう。とくに花粉症の季節は、コーヒー抜きの知的生産活動はほとんど不可能というものである。

○コーヒーの生産国としては、現在は1位がブラジル、2位がベトナム、3位がコロンビアなんだそうだ。ベトナムが2位とは驚きで、その昔、ベトナムに行ったときに、「へー、この国はコーヒー豆を作っているんだ」と聞いて驚いた記憶がある。妙なところでインドネシアに張り合う国だなあ、と思ったが、インドネシアはとっくの昔に追い抜いてしまったようだ。H君によると、ベトナム生産の急増があったお陰で、今日のコーヒー市況はかろうじて維持されているのだそうだ。まあ、もともとがフランス植民地なので、ベトナムは嗜好品には変に強い国なのである。

○コーヒーのカルテルが崩れたのは、たしか1988年頃であった。今から考えると、冷戦終了の前触れであったのだろう。こんな風に、相場商品は国際政治に先駆けるものである。それでは現在の商品市況の高騰は、政治的には何を意味しているのであろうか。(こんなことが事前に予想できるようなら、ワシももちょっと賢いといえるのだが)。


<4月7日>(木)

○昨日の記述について、「コメ1俵」は60キロではないか、というご指摘と、いや30キロです、実測してますから間違いないです、というご指摘あり。たしかにスーパーで売っている10キロの袋の量から考えると、20キロということはないですね。おそらく30キロが正しいと思います。

○消費文化研究家で、大学の2年先輩である三浦展さんとお話ししました。80年代にはパルコで『アクロス』というとても面白い雑誌の編集長をしていた人です。主宰しているカルチャースタディーズというサイトは、団塊の世代論や若者文化論、都市論、そして最近は「ジャスコの近くで凶悪犯罪が起きる」まで、面白いネタが満載です。

○80年代の消費文化を語るときに、「渋谷=公園通り=パルコ」は必須アイテムではないかと思うのですが、身をもってそれを体験していた三浦さんが、現在では「地方都市=ジャスコ=社会問題」をテーマにしている。この20年の消費文化の変遷を考える際に、これほど象徴的な話はないような気がします。

○三浦さんから近著をもらったのでご紹介まで。もう読んじゃいましたが、どちらも面白いです。

●仕事をしなければ、自分は見つからない フリーター世代の生きる道 1600円+税 晶文社

――フリーター問題について語った本。「自分を探すな、仕事を探せ」というメッセージが良いと思う。

●「かまやつ女」の時代 女性格差社会の到来 1300円+税 牧野出版 

――ウチの長女Kも最近、変な格好をしていると思ったが、実は「かまやつ女」なのかもしれん。心配だ。

○今日、春休み中の長女Kが、次女Tにキョロちゃんのチョコボールを買ってやったのだ。そしたらなんと、「金のエンゼル」が出たのである。ワシも40年以上生きてきて、初めて見た「金」である。いやあ、実在したんですね。ちょっとした感動です。


<4月8日>(金)

○いい加減なことを書いたら、ご指摘2件。やっぱり1俵は60キロが正解でした。

●今日の記事にもあった点ですが、「俵」は、農業関係者では約60キロ(4斗)を指します。ちなみに、一石(加賀100万石のあの石です)は、約150キロ(10斗)です。

●一俵と来れば伝統的にこれは60kgで決まりではないかと思います.米の計量は伝統的には重さというより体積ですが,米10合が一升で,10升が一斗で,4斗で一俵ということになります.
http://kids.goo.ne.jp/cgi-bin/kgbody.cgi?BL=0&SY=2&TP=http%3A//doya.sytes.net/kome/syakan/copy.html
老父が一俵(約60kg)担ぐことができれば,甲種合格だと言っていたのを思い出して,思わず調べてしまいました.

○そもそも、なぜ1俵が20キロという勘違いをしたかというと、かんべえの昔の知り合いで「オレは2俵同時に担げる」と言っていた男がいたからである。120キロってことは、お化けだな。今のかんべえの場合、まあ60キロなら何とか。ということは、ワシは甲種合格だろうか。視力もいいし。困ったものである。

○明日は花見じゃ。とりあえず谷中墓地に出没の予定。


<4月9日>(土)

○柏高島屋の地下で食材を買い込み、次女Tを従えて、常磐線に乗って一直線。日暮里下車。目指すは谷中墓地である。幹事役を買って出て、前夜から場所を確保しているのは軍事ジャーナリストの芦川さんである。さすがは軍事ジャーナリスト、交番角地に橋頭堡を築いて万全を期している。

○好天である。適度な風が花吹雪を舞わしている。花を浮かべたワインを空ける。それでも見上げれば満開の桜はいささかも寂しくはなっていない。谷中の桜は樹齢があるので、枝振りが良いのである。さらにいえば、地下にある一杯の死体を養分にしているという事情もある。そこへ岡本呻也が佃名物の焼き豚を持って登場。『フィナンシャル・ジャパン』編集長、昨夜が校了であった由。

○日テレ『ザ・サンデー』柴田かおるリポーターがタケノコご飯を持って登場。前夜は「上野の花見」の取材で午前2時まで仕事であったとか。上野は午後8時で電気が消えるが、その後も延々とやっているのだそうだ。詳しくは明日の放送をご覧あれ。柴田さんと話をしていたら、柴田さんの叔父さんという人が、かんべえの高校時代の英語の先生であったことを発見。世間は狭いです。

○本日は天の時、地の利、人の和と三拍子揃った理想的な花見でありました。子連れかんべえは、ちょっと早めに退散。楽しゅうございました。さて、仕事もせねば。


<4月10日>(日)

○ローマ法王ヨハネパウロ2世逝去について、やっぱりできているジョーク集。以下、かんべえが適当に訳してご紹介。

●法王の埋葬にはほとんど1週間もかかってしまった。もっと早くできたかもしれませんが、何しろ最近は議会の許しがないと死ぬこともままなりませんから。

●米国の代表団はブッシュ大統領とその妻ローラ、その父、そしてクリントン前大統領とコンドリーザ・ライスであった。ブッシュいわく。「父と妻を連れて行ったのは、家族で哀悼の意を表すため。そしてコンディを連れて行ったのは、クリントンの反応を見たかったから」

●世界中の指導者がローマに集まった。われらがブッシュ大統領もバチカンに飛び、報道陣の取材を受けて、いかに自分がヨハネ・パウロ2世を尊敬していたかを語った。そして余計なことまで言ったのである。「実のところ、私は御父上のことも大ファンだったのです。そう、ヨハネ・パウロ1世についても」。

●ブッシュ大統領が法王の追悼式のためにローマに飛んだ。まことに気まずく、心苦しい瞬間であった。ブッシュが枢機卿たち(カージナルズ)に出くわして、「アストロズに勝っておめでとう」と声をかけたときは。

●法王がクリントンに会った。多くの者をひざまずかせたことについて、クリントンを上回る世界で唯一の人物が法王であろう。

○最後のもののように、品のないものもちゃんと含まれている。まことに健全なことである。


<4月11日>(月)

○日本貿易会の貿易動向調査会へ。恐れていたことに、とうとう輪番で委員長職が回ってきてしまった。それも今年の1月1日から、通関統計の商品区分が変わったので、ワーキンググループの分担も変えなければならない。あーめんどくさい。弱った、よわった。

○それでも商社系エコノミストが集まって、世界経済の動向を語るのは面白い。今回は米国経済への悲観論が少なくなったことが印象に残った。現在の世界経済は、明らかに米国のみに牽引されている。双子の赤字があるといっても、資金をドル以外のどこに振り向けるのか。日本や欧州が自律的な回復軌道に乗らないのであれば、ドルの脆弱性は表面化しないだろう。

○国際商品市況については、これほど高くなるとは少々意外感あり。それでも金利が上昇して、年後半にFF金利が4%台に乗り、長期金利も6〜7%になるならば、商品市況にカネを注ぎ込もうなどという酔狂はいなくなるはずなので、「金利も商品市況も高くなる」ということはないだろう。かんべえ流にいうならば、ビルトイン・スタビライザーの機能は、じょじょに商品市況から金利に移っていくと見る。

○今年は金利が上昇するとして、リスクとしてその影響が及ぶのは途上国市場か、それとも先進国の住宅市場か。途上国は90年代の学習効果が残っているし、住宅市況についてはいろんな説がある。日本経済については、足踏み状態であるけれども、IT関連の在庫調整が進めば回復基調という常識的な線で意見は収斂した。

○夜になって、新橋の烏森口でルック@マーケットの残党の集会。内山キャスターとはお久しぶりでした。そこへ伊藤洋一師匠も乱入。「Ycasterはブログにしないんですか?」「そんな面倒なことができるかい」てな会話を交わす。同感であります。Ycasterや溜池通信のような普通のウェブサイトは、喩えて言うならば2000年ごろのニフティみたいなもので、そろそろ没落が近いと思う。その辺、伊藤師匠がどう見ているかが気になっていたのだが、似たような思考経路をたどっていたことを確認。

○チャイナ・ウォッチャーのT氏から、昨今の中国情勢について伺う。昨今の反日デモは「100%官製」であろうとのこと。大卒の就職率が低下しているので、何らかのガス抜きが必要であるらしい。そういえば、現地にお住いの上海馬券王先生から悲鳴のような声が届いていた。


ひ弱な共産党はいけません。特に民衆をきちんと制御も出来ないようなへたれな共産党は共産党ではない!

(中略)そもそも、今回のデモは真面目で原理主義的で血気盛んな20代の学生の扇動に地方からの食い詰めた出稼ぎ労働者が付和雷同的に参画して結果統制の取れない事態に進展したと言う構造で語るのが今のところ妥当なのだ。文化大革命からこの方中国の騒乱と言うのはいつもこういう構造なわけ。天安門事件だって 胡耀邦の追悼行事を邪魔されて怒った学生のデモが発端だし、日本じゃ70年安保以降いなくなってしまったけど、中国じゃ未だに若者は血気盛んなのだ。

いや、大昔からこうだな。中国の歴史書を読むと、檄を飛ばした武将の下にあっという間に人が群がって100万を超える大軍勢に膨れ上がり、で、負けが込み始めるとあっという間にちりじりになって気が付けばその武将に従っていたのはわずか20騎ばかりでした、みたいな記述がやたらあるけど、アジテーターに付和雷同的に同調する群集の構図と言うのは紛れもなく日本にはないこの国の特質だと思うぞ。

まぁ、このように今回の事件は矛先が日本になっているだけで構造的には天安門事件の時と等価な面があるから、この国の政府としてはびびっているのであります。そして、矛先が自分に向くくらいなら日本を犠牲にしてもかまわないとも思っているのだ、きっと。経済成長のためには日本の技術は不可欠なんだけど背に腹は変えられん。


○魯迅が『阿Q正伝』で描いたような世界が、まだまだ残っているのでしょう。ま、こんなことに腹を立てても仕方がないと思います。

○さる場所で聞いた話によれば、中国の某外交官は「小泉首相が退陣する可能性が1%でもあるのなら、その可能性に賭けざるを得ない」とのたもうたそうな。おそらく親中派を称する日本人が、「小泉はもう限界だ」などと吹き込んで、彼らをミスリードしているのでしょう。そういう人たちこそ、いちばん腹立たしいとワシは思うのだ。

○二次会になると、なつかしやマーケット・ウォークの岸本さんと再会。狭いお店は、80年代や70年代の歌が鳴り響く。うーん、カラオケなんて何年ぶりだろう。最後は「深紫伝説」やら「女王様伝説」まで飛び出した。こんな歌、知ってる人がほかにいるとは驚いた。ということで、延々5時間半も飲み続け。最近ではめずらしい経験でした。


<4月12日>(火)

○ナベツネさんが帰ってきた。かんべえの周囲で、ナベツネさんといえば主筆兼社主のあの人ではなく、CSISの研究員として長いキャリアをもち、ワシントンの「主」的な存在であるナベさんのことを指す。そのナベさんが、15年ぶりに日本で仕事をすることになった。勤め先はここ。かんべえと同じ業界である。

○東京暮らしに慣れなくて・・・・とこぼすナベさん。地下鉄が複雑過ぎる。道に迷う。って、そりゃあ無理ないよね。久々の日本の印象は、「女性がきれい」とのこと。たしかにアメリカでは、あーっと驚くような体型の女性が少なくないし、とくにワシントンの場合、思わず振り向いてしまうような美女とすれ違う、なんてことは滅多にないものね。

○思わぬ被害は花粉症の症状悪化。アメリカ時代からの症状とのことで、おそらく杉以外の植物でアレルギーがあるのでしょう。「日本の林野庁は、アメリカだったら確実に訴訟ものですね」「ええ、でも日本の場合、最高裁まで行けばかならず逆転しますから」。あんまり笑えない話であったりして。てなことで、ナベさん、これからもよろしく。

○家に帰ってテレビをつけたら、おやおや阪神が強い強い。というか、巨人があまりに弱い。これでは下記のデータもむべなるかなである。巨人の開幕戦で、視聴率が15%に届かないというのは、かなり問題ですな。ちなみに、楽天の地元開幕戦は24.2%だったそうであります。

●プロ野球開幕・巨人戦番組平均視聴率(関東地区) http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/06kaimaku.htm 

○タイガースが強いのは慶賀すべきことなれど、岡田監督は勝ち試合でも不景気な顔しとるなあ。


<4月13日>(水)

○ホントかどうか、怪しい話ではありますが、最近聞いた中でいちばん面白かった話。「中国発の反日サイバー攻撃はどうやって行われているか」。

○ものすごく単純な手口なのです。まず、日本の外務省のホームページを開きます。そこからF5キーを叩く。すると画面はリロードされます。これを大勢で、思い切りしつこく繰り返す。大勢の人が、一斉にF5ダッシュをかけると、当然のことながら外務省のサイトはトラフィックが込み合いますから、サーバーがダウンする。あるいはつながりにくくなる。この手口であれば、とりあえず人数さえいれば、どこに対してでもサイバー攻撃はかけられることになる。ローテクだけど、確実な方法。だって本質は人海戦術なんだもん。

○お馬鹿なようにも思えるが、大勢がPCに向かってF5キーを叩いているというのは、ちょっと鬼気迫るシーンでもある。いっそのこと2ちゃんで呼びかけて、反中派の2ちゃんねらーが中国外交部のホームページにF5攻撃をかけるというのはどうでしょう。でもまあ、そういうことを日本人はやらないでしょうね。そこまで本気になって、よその国を嫌悪するだけの理由がないから。

○反日デモに対して、大方の日本人は腹を立てるというよりは、「しょうがないねえ」というモードであるようだ。おそらく中国や韓国のことを、日本人は本気でライバルだと考えていないからだろう。こういうと甘いといわれるかもしれないが、ワシも日本経済が中国に逆転されるとは思ったことがない。であれば「金持ち喧嘩せず」でいいわけだ。

○先方は、日本がライバルだと思っている。そして、「いつかは追いつける」と思っている間は、ライバルに対してそんなに腹は立たない。が、ある瞬間に、「ひょっとすると、永遠に追いつけないのではないか」と気づいたら、急に腹が立ってくる。何か卑怯なことをされているに違いない、と被害者妄想が生まれてくる。今度の反日デモの背景には、そんな心理状況があるような気がする。

○戦争中の日本は、アセアンでもかなり悪いことをしているはずだが、今は反日感情はそれほどひどくない。フィリピンなどは、戦後すぐの時期は相当に険悪だったと聞くが、60年もたつとだいたい風化してしまう。アセアンは日本をライバルだと思っていないからであろう。歴史認識というのは、現在の鏡なのだと思う。

○「欧州でドイツが受け入れられているのに、アジアで日本が受け入れられないのは、反省の仕方が悪いからだ」という指摘がある。それをいったら、そもそも英独仏伊あたりはそんなに国力が違わない。経済で負けても文化で勝つ、みたいな構造があるので、ライバル関係が緊迫化しない。また、実力差が拮抗していると、勝者が「勝ちすぎ」に気を使うような配慮が働く。結果として、後味が悪くなるようなしこりが残らない。その辺を無視して、「ドイツに比べて日本は」という議論は成り立たないと思う。

○アジアの場合、国の発展度合いに差が大きいにもかかわらず、日本人自体が「勝ち組」であることに対して無自覚なきらいがある。そういうところが尊大に見えてしまったりするのだろう。この辺、「町人国家」を自覚していた頃の日本人の方が、配慮が細かかったかもしれない。


<4月14日>(木)

○上海馬券王先生が、現地の状況についていろいろ伝えてくれています。

今回のこの騒動は「100%官製」というのとはちょっと違うと思います。「半官半民」ではないですかね。

北京の騒ぎの時、デモの通過経路にいた人に聞いたんですが、デモの指導者にも2種類あって、内容を示威行為に留めようとする穏健派の学生風と、日本料理店への投石や日本車への破壊行為を煽る学生風と、2種類の若者が欲求不満な出稼ぎ労働者たちを指揮していて、これが最後は路線を巡って仲間割れ状態だったとか。前者は多分政府の意を受けている反日団体の人間で、後者は多分中国版2ちゃんねらーと言うかネットで意見をやり取りするうちに思考をどんどん偏狭化かつ尖鋭化させていった類の熱血学生であると考えるのが自然です。

今回企画立案したのは政府であることは間違いありませんが、最終的に仕切っていたのはどちらだったのか。広州で反日団体(=中国政府)がデモを当分見合わせるとの声明を出しました。きっと事態が彼らの思惑から離れて暴走したのを見て冷却期間を置かざるを得なくなったのであると推察されます。

ほんとにぃ、仕切るなら最後まできちんと仕切れよ。あほな「はねっかえり」に仕切らせてんじゃねえよ。民衆の意見を代弁し、民衆に100%の追従を求めるのが共産党だろうが。99年の大使館「誤爆」事件の時みたいに相手に100%非があるならともかく、今回のはそもそも半分以上は言いがかりなんだから。


○そこで騒ぎが上海に及ぶかどうかが気になります。上海は外国人が多いので、派手なデモが起きて全世界に報道されちゃうと、おそらく中国政府は困るのでしょう。それでも、こんな「檄文」がネット上で飛び交っているらしい。

「全員集合!来る4月16日土曜日、午前9時より上海人民広場にて抗日デモ開催!小日に中国民衆の怒りを思い知らせよう!」(上海馬券王訳)

○で、それからしばらくして、発表された上海公安当局の声明の内容が下記の通り。

「近日、身元不明の発信元より反日デモを鼓舞する携帯ショートメールが発信されている。上海市公安局治安総隊は本日重ねて表明する。法に基づきデモ開催には認可が必要である。愛国の熱情を表明するには理智と合法の精神が伴わねばならない。遵法の精神を自覚し、秩序を守り、安定して団結した政治局面を倍増させよう。切実に請う、秩序の維持を」(これも上海馬券王による恣意訳)

○なかなかに痛し痒しといった感じですね。馬券王先生、これを評していわく「非常に持って回った言い方なんだけど最終的に何が言いたいのかがよくわかりません。不安に駆られる公安当局の心情が現れた名文と言えないこともないですね」

○願わくば、16日の上海が静かな一日となり、馬券王先生の週末が心安らかなものになりますように。だって17日は皐月賞なんですもの。

(その後に入った注目すべき続報)

公安さんからお手紙着いた♪

馬券王さんたら読まずに捨てた。

昨日紹介した公安局の声明がなんと、本日から携帯ショートメールと言う形で一般の人々に配信され始めました。現地従業員いわく。「いやぁ、公安から携帯メールをもらったのは初めてです。これって前例ありませんよ。」

デモを煽る立場の人間も、押さえる立場の人間もそろって広宣手段に携帯メールを使用しているのがなかなかに興味深い。有線電話からひとっとびに無線電話の世界に突入した中国ならではの現象と言えましょう。

しかし、これで上海公安当局が現地の秩序維持にかける並々ならぬ意思を表明したわけであります。天安門の時も911直後のAPECの時もSARS騒ぎの時も現地の秩序を維持しとおした実績のある上海公安局。きっと16日はその威信にかけた体制で現地警備に付くものと思われます。うーん、これでひとまず安心。なのかな?


<4月15日>(金)

○中国の反日運動や日本製品不買運動によって、果たして経済的な打撃は出るのだろうか。いろんな人の話を聞いてみると、大きな影響はなさそうな感じである。もちろん、楽観するには早すぎるけど、今の日中の経済関係を考えてみると、おそらくそうなるんだろうと思う。

(1)日中貿易の中心は鉄鋼や化学製品などの素材関連である。こういう分野は企業経営者同士の判断になるので、不買運動は及ばないだろう。また、鉄鋼を例に取れば、中国は厚板は作れるけれども、自動車用鋼板とか電磁鋼板といった高度な薄板は作れないので、日本から輸入するしかない。こういう分野に関して言えば、反日運動はほとんど影響がないだろう。

(2)問題はエレクトロニクス製品など、一般消費者向けの商品である。ソニーなど日本企業の「お客様相談係」に嫌がらせ電話が殺到していることは、すでに報道されている通り。各社のフリーダイヤルを紹介して、「さあダイヤル!さあダイヤル!みんなが一回電話するたびに日本人に1元の損失を与えられるよーん!」てな扇動文書が出回っているそうだ。では、実際に日本製品が売れなくなっているかというと、そうでもないらしい。現地からは、「結局騒いでいるのは学生と地方の低所得層だけで、一定の所得のある方々の対応はまったく違うのではないか」との声あり。

(3)さらにいえば、今やかなりの数の日本製品には中国製の部品が使われているのだし、日本の部品がなければ生産できない中国製品も多いはず。こんな時代の不買運動に、どんな意味があるのだろうか。経済のグローバリゼーションという現象は、「五四運動」の頃にはなかっただろうなあ。

○両国の経済関係を考えれば、日中がそんなに対立する理由がないのである。問題は国民感情とか政治的な思惑なのであって、そういう意味では「政冷経熱」になるのは当然である。いつも書いてる話ですが、「感情」が「勘定」よりも先に立ってはいけません。でも、最近の中国は「反国家分裂法」の件といい、感情的になることが多い。らしくない行動が最近多いのはなぜでしょう。

○その点、日本の対応はちゃんと「勘定」が先に立っている。たいした資源のない竹島はスルーして、尖閣諸島の資源探査には着手している。優先順位のたて方が正しいではないか。ちゃんと誉めておこう。


<4月16日>(土)

○今週のThe Economist誌には、"A collision in East Asia"という記事がでています。中国の官製(?)反日運動に対し、欧米のメディアは総じて日本に同情的ですが、同誌は「日本抜きの安保理拡大はあり得ない」と言ってくれています。早速ご紹介。


「日中衝突」

 北京の目抜き通りで行われた1万人デモは、民主化を求めるものであれば直ちに当局に制止されていただろう。日本の歴史的犯罪への謝罪と、安保理常任理事国入りへの非難のためであったからこそ当局はデモを許可した。日本の店は略奪され、大使館には卵や石が投げられた。成都で1週間前に始まった抗議活動は、深せんや広州など南部にも広がっている。

 今日の国連改革と安保理の構成変更への提案を、単なる外交官たちの表面的なゲームではないのだと、これらのデモは知らしめている。常任理事国の米英中仏ロは、自分たちの地位を守るとともにこの名誉が失われることを恐れている。望まぬ新規加盟国に反対したいという感情を高揚させたい国もある。特に日中の場合は、感情は生々しいものがある。

 アジアの両巨頭は、国交を打ち立てた1972年がもっとも関係が良好だったといっても過言ではあるまい。経済関係がどんどん緊密化しているにもかかわらず、だ。近年では日中は互いに最大の貿易相手国である。日本企業1万6000社が中国本土でビジネスをしている。日本の技術と中国の安い労働力が結びつくのは自然なことだ。文化や消費面でも両国は接近している。中国人の若い世代は日本の歌手を愛し、中高年は日本製自動車や化粧品を愛好する。

 ところが政治になると話は変わる。強大な両国が天然資源をめぐり、小さな島の主権を争う。中国はいつまでも過去を引きずり、日本が第2次大戦中の蛮行を正当に謝罪していないと言う。中国国家主席の訪日は1998年以降、日本首相の訪中は2001年以降途絶えている。

 関係がさらに悪化する可能性もある。数十年前の方が戦争の傷跡は深かったが、今よりは相互理解があった。中国は地政学上の巨人だが経済は弱体であり、日本は経済大国でありながら世界的な地位を得ることを憲法で制限していた。この分業は次第に崩壊しつつある。

 中国は経済大国への道をひた走る。米国への最大の貿易黒字国は、今や日本ではなくて中国だ。他方、日本はもはや世界の二級市民の地位に満足しない。人口の多い豊かな民主主義国であり、ODA大国、国連への第2位の資金拠出国、また憲法の制限があるとはいえ、PKOにも積極的な日本は、拡大される安保理での常任理事国にふさわしいと任じている。

 その通りだ。国連の古典的システムは、5カ国に常任席と拒否権を与え、後はいかなる国であっても2年限りの任期しか与えない。もし常任理事国を増やすのであれば、アナン事務総長が言ったように、日本(とインドとブラジル)が人口や経済力から見て自然な候補となる。欧州から3カ国目になるとはいえ、ドイツにも強力な理由がある。アフリカからは南アかナイジェリアか、あるいはエジプトか。しかしほかの国を入れて日本を外すというのは、日本に対する言語道断な侮辱であるのみならず、改革全体を無意味なものにしてしまう。

 その場合、改革全体を放棄してしまうのか。イタリアやパキスタンのように、その方が好都合な国もあろう。米国は拡大賛成と口ではいうものの、現状維持も歓迎するだろう。中国の日本排除論は、そのための絶好の言い訳となる。なんと情けないことではないか。国連のシステムは完璧ではないものの、第2次大戦後の世界ではなく、今日の世界を反映したものに改善することはできる。拡大安保理には日本人が入る。東アジアの未来を何でも思い通りにできないことを、中国人は理解するようになるだろう。


○上海馬券王先生は、昨晩は「日本総領事館近くの有名日本料理店」で接待し、ベロベロに酔ってご帰還とのことでしたが、今日はどうでしたでしょうか。皐月賞はビックプラネットですって?来ないと思うけどなあ。


<4月17日>(日)

○馬券王先生が住む上海にも反日デモが生じてしまいました。「まさか上海で」と悠然と構えていたところ、「なぜか上海」になってしまった。当欄の4月14日付けてご紹介したように、公安当局からの秩序を維持せよとの「ご指導」があり、ご丁寧にも携帯メールで情宣活動が行われたにもかかわらず、です。

○反日活動が最初に北京で始まったときは、おそらく「100%官製デモ」であったのでしょう。旗やのぼりなどが、ちゃんと印刷された立派なものであったことからもそれは推察できます。しかし途中からは熱血学生たちの参加で抗議は暴走。結果的には「半官半民」デモになってしまった。そして16日の上海では、官がやるなと言っていたのにデモが発生してしまった。テレビの報道を見る限り、旗やのぼりは「お手製」になってました。共産党のグリップが効かなくなってきた、あるいは今後は効かなくなってしまう恐れは十分にありますね。

「日々是チナヲチ」さんは、このことを「幕があがった」と表現している。そして、「軽い反日運動」を目指した胡錦濤指導部に対し、おそらくは江沢民一派がデモを煽ることで揺さぶりをかけている、という背景があることを指摘されています。ありそうな話ではありますが、統制が取れなくなった反日運動は、ひとつ間違えれば容易に反政府運動につながっていく。五四運動はその典型ですものね。「あの上海で」という事実は重い。馬券王先生の表現を借りると「ディープインパクト」なのであります。

○中国共産党の苦しい事情は、本誌の3月18日号でも解説しておりましたが、正直、こんな形になってしまうとは思いませんでした。一寸先は闇ですね。

○今日は町内会の総会に顔を出して、皐月賞をパスして富山に向かいます。明日の内外情勢調査会の講演で、この辺の話をどう説明するか、結構悩ましい。


<4月18日>(月)

○大学卒業以来、富山に帰省するときといえば正月か夏休みなので、春の富山市はもう何十年ぶりかである。松川沿いの桜並木は散りかけでありましたが、とにかく間に合いました。いいもんでした。

○春風駘蕩の街は、市長選挙と市議会選挙の真っ最中でありました。町村合併をしてしまったので、富山市はビックリするほど拡大してしまった。こんな風に自治体が拡大すると、吸収された小さな町村の首長さん助役さん出納長さん、あるいは村議会長さんといった人たちは失職する。田舎のことなので、いろいろあるでしょう。市議会議員でいうと、旧富山市内はほとんど調整が終わっているのだけれど、統合されるほかの町では、結構な激戦になっているとのこと。

○自民党の政治家の間では、「町村合併で自民党は選挙に弱くなる」という見方がある。町や村で公職についている人たちは、選挙のたびに手伝ってくれる人たちだったのだ。それがなくなってしまう。おそらく拡大した広域自治体は、「無党派層の風任せ」選挙区になる。こういう危機感が、自民党内の郵政民営化への反対に力を持たせているのかもしれない。この上、特定郵便局長さんたちの応援も失うのはかなわん、ということで。

○さて、日中外相会談は、よくもまぁ、あれだけ失礼なことがいえますわなあ、あきれてモノもいえませんなあ、という先方さんの対応ですが、こういうのを「想定の範囲内」というのでしょう。見え隠れするのは、「とにかく早く幕を引きたい」という先方さんの願いです。このままデモが拡大していくと、反日運動は容易に反政府運動になる。「3回目の天安門事件」も視野に入ってくる。1976年の天安門は壁新聞、1989年は電話とFAX、そして今回はネットとケータイメールだ。火がつくと早い。

○日本政府としては、切りのいいところで交渉の場を水面下に移すことを考えるべきだと思う。でないと、取るものも取れないし、事態を悪くするばかりになる。1989年の天安門事件のとき、ブッシュ・パパ政権は表向き対中批判をしながら、スコウクロフトとイーグルバーガーを北京に派遣している。機密保全のために外交電報を避けて、リリー大使をわざわざ呼び戻し、口頭で訪中計画を伝えるという念の入れようだった。(アメリカ外交/村田晃嗣より) 中国人を相手にするときは、この手の工夫が必要なのだ。疲れるけど。

○こういう事態になると、「そもそも、あんな国と商売するのが悪い」と言いたくなる人が多くなるのは分かるけど、それってあんまり現実的な議論ではない。すでにわが国の輸出の13.1%、輸入の20.7%が中国との取引なのだ(2004年通関統計)。日本製品の中には中国製の部品が使われていて、中国製品は日本製の機械で作られていたりする。今さら日本は中国から逃げられないし、中国もまた日本なしではいられないはずなのだ。

○ライブドア対フジテレビ、とうとう収束方向へ。視聴者の関心が冷えるとともに、「手打ち」の機運が高まったところが、いかにも今回の劇場型仕手戦の結末に相応しい。以下は本誌4月1日号で書いたことなれど、まあ、こんなところでしょう。もっとも、マネーゲームで終わりにするのであれば、ニッポン放送株を5割まで買い進む必要はなかったのですが。

 それでは、視聴者は何を望んでいるかといえば、当面はこの面白い騒動をエンジョイすることであって、ただし、それもやがて飽きるときが来るのであろう。一方で、視聴者はホリえもんが言う「ネットとメディアの融合」などという理屈はどうでもよくて、フジテレビが本当にライブドアの子会社になるとは信じていない。とにかくメディアは面白いコンテンツを提供してくれれば良く、その点でフジテレビはかなりの「信用」がある。だから、ある程度は経営が安定していてくれた方がいい。

 結論として、ホリえもんが「末路哀れ」にはならない程度のところで撤退し、フジテレビの経営陣や社員は一安心するものの、あちこちに借りを作り、株主対策などのコスト増を受け入れる。儲けたのはファンドやコンサルタントだけ、というのが一連の騒動の落ち着き先になるのではないだろうか。


<4月19日>(火)

○中国の反日デモについて、いろんな情報が飛び交っている。駐在員には緊張感がある。今のところは週末ごとのデモなので、おそらくは政府のコントロールの範囲内。これが平日にもデモが起きるようになったら要注意。5月1日からは中国も連休入りするし、しかも5月4日(五四運動)という危険日が入るので、その辺が当面の山場か。

○例年、中国は8月15日をピークに反日感情を盛り上げる。そのため、7月頃になるとテレビでは「反日ドラマ」を流して、愛国心を高揚させるのが季節の風物詩となっている。ところが今年の場合、反日機運が4月に盛り上がってしまった。このまま暑い季節まで引っ張るとなると、本当にあらぬ方向に暴走してしまうのではないか、という指摘も。

○加えて気になるのは現地雇員の心理状況。不人気な日本企業で働ていることで、気まずいものがあるかもしれない。日本企業としては、彼らをしっかり味方につけていかなければならない。

○反日活動の経済への影響については、4月15日付で書いた通り、そんなに大きくはない見込み。それでもはっきり影響が出そうなのは対中投資。新規案件には躊躇するだろう。少なくとも中国企業のM&Aなんかは、さすがに稟議が通るまい。中国向けの旅行客も減少。これらは、中国経済へのマイナス要因となるでしょう。

○日本企業にとっての究極のリスクは、最近、中国各地で増えている公害事件の罪をなすりつけられること。それでもって賠償請求、とかなったら、これはかないませんぞ。台湾企業で、その手の風評被害が立っているところがあるらしい。ご用心。

○今日は午後に貿易動向分科会。こりゃあ大変だ、という感じ。夕方に米国研究会。大遅刻。夜は東京財団の安全保障研究会。ここは大きな前進あり。ちょっとホッとした。それにしても忙しい。


<4月20日>(水)

○時間がない、などと言いつつ、今日は面白い講演を2つ聞いた。ま、こういうことで時間がなくなるのであれば、後で苦労することになっても仕方がないかと納得できるものである。

○ひとつは養老孟司先生。かんべえはこの人に御恩がある。『バカの壁』があまりにも売れたので、新潮新書創刊時の同期の桜である拙著『アメリカの論理』も一緒になって売れた。あの当時、本の売れ行きを聞かれるたびに、「バカの壁の100分の1」と答えていたのだが、なにせ相手がバカの壁であるから、100分の1でも結構な部数になったのだ。「ついで」で買ってくださった読者は少なくなかったものと思う。コバンザメとしては、親ザメに深く感謝しなければならない。

○養老先生の講演は、まぁいつもの話であって、「情報(言葉)は変わらないけれども、人間(脳)は変わる。そこを勘違いして、変わらない『自分』などというものがあると信じているバカが多いから困る」というメッセージであった。こういう基本的な話は、形を変えて何べん聞いてもいいものだと思う。だって世の中には、「自分探し」のために貴重な時間や資源を浪費している人がたくさんいるんだもの。

○将棋の升田幸三だったかが、「五段になるまでは棋風を語るな」と言っていたと思う。まだ弱いうちから「自分は攻めの棋風で」などと、利いた風な口をたたくんじゃねえ、ということであろう。若いうちに「自分はこうだから」と規定してしまうと、それ以上に伸びなくなってしまうのだ。羽生四冠などは、あれだけ強いのにどんな棋風であるのかが今だに分からない。おそらく凡人が気づかないところで、何度も棋風を変化させているのであろう。手塚治虫でもユーミンでも村上春樹でもそうだが、長い期間にわたって活躍する人は何度も過去の自分を否定して進化を遂げているものだ。

○もちろん、過去の自分を否定した瞬間に、昔のファンは去っていったりするのであるが、そんな小さなクラスターを惜しんではいけないのである。思えばはるか昔、好きだった「中三トリオ」の山口百恵が、宇崎竜童の歌を歌うようになってから国民的歌手になり、急速にどうでもいい存在になってしまったことがあった。あの頃に初めて、この法則に気がついたのであった。そんなわけなので、かんべえが「溜池通信断筆」とか、「アメリカ・ウォッチャー廃業」を宣言したとしても、読者は驚いてはならない。その程度は、「想定の範囲内」というものである。

○もうひとつは日本政策投資銀行の藻谷浩介氏による「人口減少社会」に関するプレゼンテーションである。まさに「目からうろこが落ちる」話であった。藻谷氏はむちゃくちゃに忙しそうではあったが、「目からうろこ」の話が聞いてみたい人は、ぜひ当たってみられることをお勧めしておこう。斎藤健・埼玉県副知事ご推奨は伊達ではなかった。

○フルに語ると3時間かかる話を45分でやってもらったのだが、乱暴に短縮すると、最近の日本経済に関するさまざまな問題、すなわち「消費不況」「地方経済の衰退」「デフレ」「地価下落」などが、人口ピラミッドでほとんど説明できるという話である。この辺、かんべえの以前からの持論と重なるので、非常に楽しく拝聴した。昔書いたものの中では、これなんかが懐かしい。

○もっとも、こういう説は経済学者の手にかかるとボロクソなんだそうで、「人口ピラミッドで景気が変わるなど、経済学的にあり得ない」と言われたこともあるという。まあ、そんな批判は聞き流せばよいであろう。企業のマーケティング担当者で、マクロ経済学に造詣が深い人はあんまりいないけれども、人口動態に無関心な人は皆無である。少なくとも企業経営にとって、どちらが有用であるかは論じるまでもない。

○明々白々な議論を煎じ詰めていくと、「出生率を上げても、移民を増やしても、問題は解決しない」という結論になる。「高齢化の真の犠牲者は地方よりも都会」という点も、ガツンと来る話だと思う。都内の高層マンションはそのうち老人ホームになるし、オフィスビルは明らかに作りすぎである。「一刻も早く、なるべく多くの人に気づいて欲しい」という藻谷氏の言葉に触発されたので、こうやって宣伝しておきます。


<4月21日>(木)

○約束の午後2時少し前に、東海道本線の辻堂駅に降り立ったところ、改札にはKenboy3さんが自分で待っていてくれました。今日はホヤホヤの新任講師であるKenboy3さんの、ゼミの外部講師を引き受けたのである。そこからSFCのキャンパスまではクルマで15分程度。それにしても愛車はユーノス・ロードスターですか。しかも今時めずらしいマニュアル仕様。なんちゅうか、ホリえもん世代は妙に優雅なんだよな。

○初めて見る慶應湘南藤沢キャンパスは、いかにも西海岸風の恵まれた環境であった。シリコンバレーってこんな感じなんだろうなあ(行ったことないけど)、と見ていて何度もアゴが落ちそうなワシ。芝生の上に寝転んでいる若い男女を見て、なぜかKenboy3さんが「ちょっと勘違いしてそうで、困りますねえ」って、アンタ、ここで何年も勉強してたんじゃなかったのかい。でも、たしかにカッコよすぎて、浮世離れした世界のようでもある。偏見かもしれないが、女子学生のほうが総じて賢そうに見えるのはなぜだろう。

○ゼミのテーマは「東アジア」である。30人くらいの学生を前に、中国の反日デモやら、日本の貿易額の変化やらについてお話ししつつ、「学生の皆さん、ビジネスの視点を持ってくださいね」てなことを申し上げる。国家間の関係を「感情、安全保障、経済」の3要素に分類する、という話が受けてました。これ、もうちょっと展開してみよう。

○時節柄、中国に関する質問が多く出るのだが、畏れ多くも小島朋之総合政策学部長が同席されているので、なかなかにやりにくい。途中で気がついて、こちらから小島先生に以前からの疑問点を質問したりして、なんだか得した感じでありました。役得ですね。

○ところで授業が終わりかけた頃に、音を立てずにそーっと教室に入ってきた学生がいた。その学生が、手を上げて質問をする。なんじゃこいつ、と思ってよく見たら、学生ではなくて、もう一人の外部講師である山本一太参議院議員であった。見かけが若いんだもん、騙されちゃったよお。質問のポイントは、ちょっと中国の政治に対する評価が甘いんじゃあないですか、であった。ぎくっ。

○本当は山本先生の講座を聞いて、こちらからも質問をしたかったのですが、あいにく今週号の溜池通信をまだほとんど書いていないので、泣く泣く失礼する。それにしても、教える立場になると、教わることが多いというのは本当でありました。若い学生の中に入るというのもいい気分です。うむ、また行きたいなあ。Kenboy3さん、また呼んでね。


<4月22日>(金)

○今日は地方銀行関係の集まりに呼ばれる。会場は「内神田の地方銀行会館」、というので、目立つ建物であろうゆえ、すぐに見つかると思って出かけたら、これがなかなかに見つからない。ひょっとすると、意外と小さなビルなのだろうか、などと考えると、そんな気もしてくる。時間ギリギリに発見したのだが、やはり大きな建物であった。

○昨今の日中関係などについてお話しする。今週はもう3回目なので、メモなしで話せてしまうのが自分でも怖い。ところで、「上海デモはディープインパクト」という駄洒落は、理解できる人が少ないのですね。競馬は人気がないのかなあ。

○昼食時に、新潟県の関係者が言っていたこのセリフにビックリしました。

「山古志村の本当の被害はね、雪が溶けてみないとわかりませんよ」

○・・・・って、雪はまだ溶けてないんですか。すご過ぎる。


<4月23〜24日>(土〜日)

○今日は衆院の補欠選挙の日。選挙区2つでどうなるでしょう。自民2勝なら民主党が大荒れ、民主2勝なら小泉政権が大荒れ、1勝1敗なら大勢に影響なしですが、その場合、ヤマタクさんはどうなるんだ、というのが当面の関心事。

●仙台・投票率 http://www.city.sendai.jp/senkan/senkan/data/syugi_2005/sokuho01s.html 

●福岡第2区・投票率 http://www.pref.fukuoka.lg.jp/wbase.nsf/b2221151c6a1fb1f49256b0e00421644/d5a6fb504550640149256fd2001f40f9?OpenDocument 

○今夜は夜更かしになっちゃうのかな?

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○ちょっと追加です。いや、選挙結果を待つのも芸がないと思いまして。ジャカルタで行われたアジア・アフリカ会議に関する評価で、ここはちょっと見過ごされているのではないかという点を少々。

○まず、胡錦濤との首脳会談が成立したことは、ちょっとしたものだと思うのです。小泉さんは会談を持つことについて、それほど大きなリスクはない。どんな分からず屋の対応をされても、「中国はしょうがないねえ」で済む。ところが先方さんは、とんでもないリスクを負うわけだ。会談が終わった後で、小泉さんが記者団に向かって「やはり今年は靖国神社に参拝する」と言った瞬間、胡錦濤は国家主席としてのメンツをつぶされて、帰国できなくなってしまうだろう。そして小泉さんという人は、誰もコントロールできない人なのだ。だから、胡錦濤が小泉さんとの会談を受けたこと自体が、かなりの勇気だと思うのです。

○先方は硬化した国民世論を背中にしている。ひとつ間違えば後ろから撃たれる。言ってみれば、初めて金正日に会いに行ったときの小泉さんみたいなもので、握手して笑顔を見せることさえ憚られるような雰囲気であったはず。そうだとすると、会談の結果は中国側から見て安心できるものであっただろう。少なくとも、小泉さんの不規則発言はなかった。「大成功」という評価になるはずである。この記事を見ても、なんか「ホッとした」感じが漂っているではないか。

○もうひとつ、AA会議における小泉演説について。「歴史問題で謝罪した」ことが評判になっているが、これって反日デモがなくても、最初から予定通りの草稿だったんじゃないかという気がする。というか、かんべえが外務官僚であったとして、「バンドン会議の首相演説を書け」と命じられたら、「まず冒頭は村山談話で行くか」と考える。まあ、会議があることはずっと前から分かっていたことであり、反日デモより前に準備されていたと思うし、後からわざわざ原稿に手を入れるかな、と思うのである。

○思うに日中共同声明や日中友好共同条約など、この手の文書というものは練りに練って、後で問題がないように外務官僚が精魂を傾けているものである。村山首相が好きか嫌いかと聞かれれば、もちろん大嫌いなかんべえであるが、村山談話がそんなに間違ったことを言っているとは思わない。これは日本版のワイツゼッカー演説であって、92年の天皇訪中の際の「お言葉」と合わせて、日本政府の態度を示す最前線なのだから、こういうときは堂々と使えばいいのである。

○もっともワイツゼッカー演説というのは、しみじみ読んでみると、直接の謝罪表現は1個もないというしたたかな内容であったりする。まあ、その辺の話は、今週号のFrom the Editorの欄を読んでくれい。

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○ありゃりゃ、炎上している某スレを読んでいたら、選挙の方はもうこんなことに。開票率ゼロでもヤマタクさんが当確ではないか。これでは大勢に影響なしですな。小泉さんがまたしてもピンチを切り抜けつつあるような。


<4月25日>(月)

○今回の反日デモの件で、非常に重大であるにもかかわらず、中国指導部を含めて、おそらくほとんどの人が見過ごしていることがあると思う。それはこの4月にアメリカで株が下がって、消費者マインドも一気に冷え込んで、米国経済に重大な転機が訪れている可能性がある、ということだ。当欄の3月24日分でも指摘していたことだが、現実の経済データは強いのに、なぜか景況感だけが悪くなっている。こういうときは、普通はマインドの方が間違っているものなのだが、ひょっとすると逆かもしれない。今月上旬から、経済データも段々悪いものが増え始めている。

○なかでもビッグニュースはGMの経営悪化である。アメリカを代表する企業であるだけに、日本でいえば「新日鐵がつぶれそう」みたいな状態であるから、その象徴的な意味は大きい。では、なぜGMの経営が傾いたかといえば、魅力的なクルマが生産できなくなったということと、退職者の年金や医療などの負担、いわゆるレガシーコストの重圧をあげることができる。まあ、その辺はかねて知られていたことであったが、なぜこれまでGMの経営が踏みとどまってきたかといえば、金融子会社がべらぼうに儲けていたからだ。その利益を流用し、販売リベートを奮発してクルマを売っていた。だから、今まではごまかしが効いた。

○それがなぜ駄目になったかといえば、金利が上昇局面になったからだ。従来から、アメリカ経済弱気派のエコノミストの間では、「金利上昇→不動産バブル崩壊→消費不振→不況」という説が強かった。ところが不動産バブルはそのままで、金利高が金融子会社の経営を悪化させたようだ。そのお陰で、とうとうGMの経営が持たなくなった。こういう道筋は正直なところ予想外であったが、ともかく金利の上昇が米国経済の構造調整を促しつつあることが分かってきた。

○問題はここで議会がどう出るかである。経常赤字も記録的な水準になっている折りから、米国議会はスケープゴートを求めている。叩くとすれば、今や最大の赤字相手国となった中国か、それとも世界最強の自動車産業を擁する日本か、ということになる。そこへ起きたのが中国による日本叩きである。これでおそらく流れは決まった。アメリカ議会は「チャイナ・バッシング」に突き進むだろう。面白いことに、自動車産業を擁するデトロイトよりも、繊維産業を擁するノースカロライナ州の方が、最近は政治的に活発なのである。おそらく来月にかけて、対中制裁を唱えるとんどもない法案が相次ぐことになるだろう。

○重要なことは、今回の中国の対日強硬姿勢が、「為替レート改革を受け入れない中国」と重ねて評されていることだ。中国側としては、歴史問題の仇を人民元で討たれるのは心外であろうが、西側メディアの眼には「中国はやはり世界のルールを受け入れようとしていない」ことの一例として映っているようなのである。以下はその典型例として、4月23日付のThe Economist誌のコラム"The China Question"の最後の部分をご紹介。

「日本は中国とは違って、民主的で平和な社会であり、論争や汚い言い争いも安全に処することができる。日本は近隣国に対して危害を与えない。むしろ違う国のほうが、1920〜30年代の日本に似ているのではないか。その国は急速に発展し、エネルギーや他の資源をむさぼり、国粋的な政治が街角を覆っている。すなわち中国のことだ」

「だからといって、中国が日本の20世紀の歴史の亡霊を繰り返すというわけではない。しかし“平和的台頭”を標榜する中国は、地域の、そして全世界の困りものであることは間違いがない。中国が過去にWTOのような国際的システムに、みずからを投じようとしたことは歓迎すべき方法であった。新政権は、同じ道を歩む必要がある。たとえば通貨制度を状況変化に合わせるようなものとし、日本との緊張を増幅するのではなく、緩和するようでなければならない。日本問題はやがて消え行くが、中国問題はただ大きくなってゆくばかりなのである」

○先週と今週を比べると、西側メディアの反応は明らかに日本寄りになってきた。中国としては、日本の常任理事国入りを防ぐために、あらゆる手段を総動員したつもりだろうけれども、おそらくは裏目に出たのではないだろうか。これからしばらく、中国に対する国際的な風当たりは厳しくなりますぞ。ここで日本がどう出るか。G7で一緒に旗を振って「中国ケシカラン」と叫ぶのか、それとも「中国の固定相場制にはそれなりの理由がありまして」と弁護に回るのか。面白い役割が回ってくるかもしれません。

○中国の気持ちも分からないではないのである。United Nations(連合国)の常任理事国に、敗戦国が入ってくるというのでは、戦勝国たる中国の立場がなくなる。それも「戦勝60周年」のめでたい年に、なぜか戦勝国よりもリッチな敗戦国がのさばってくるというのは、心情的に許しがたいのであろう。こっちはそんなこと、気にしてないんですけどね。そういえば、戦後50年の改革のときは、小泉さんは細川元首相や村山元首相とともに、日本の常任理事国入りに反対していたのではなかったかしらん? まあ、どうでもいいけど。

○今日は日本ニュージーランド経済人会議の幹事会と懇親会があった。外務省のブリーフィングによると、豪州とニュージーランドは安保理拡大問題に対し、「日本の常任理事国入りには賛成だが、ドイツは反対」であるとのこと。両方とも親日的なので、日本の応援をしてくれるのは分かるのだが、なぜドイツが駄目かというと「欧州から3カ国というのは多すぎる」からだという。これは日本政府としては痛し痒しである。なぜならば「日独印伯で一緒に入りましょ」という作戦を描いているから。

○まあ、こんな風に各論反対が多いので、最後は安保理拡大自体がオジャンになる確率が、まあ半分以上はあると言っていいのでしょう。アメリカのホンネも「日本が入るのは構わない(どうせ俺の意見に賛同してくれるから)。でも、ブラジルみたいな反米国を入れたくはねえなあ」であるだろう。それにしても、敗戦国がUnited Nations(連合国)の常任理事国になるときは、やっぱり相当「ゴメンナサイ」を繰り返さなければならないのでしょうな。


<4月26日>(火)

経済同友会の総会へ。考えてみたら、かんべえが同友会に在籍していたのは1993年2月から1995年5月までなので、「卒業」してからちょうど10年になる。その後の調査畑も連続10年になったわけだ。年をとるわけだ。というか、昔は若かったのう。

○10年前に一緒に働いた同友会の職員や、出向者と顔を合わせる。皆さん、あんまり変わっていないものですね。いちばん驚いたのは、かんべえが「代表幹事秘書」を引き継いだSさんが、U電機の社長になっていたこと。文句なし、同友会出向者仲間の出世頭である。

○かんべえにとっては、この10年前の経験がいろいろ役立っている。最大の収穫は、「トップの世界」というものが少しだけ分かったことだ。少なくとも「トップの秘書の世界」のことは、ちょっとばかり詳しくなった。

○秘書という仕事は、最初のうちは非常にしんどいのだが、ある程度慣れてくると急に楽になる瞬間がある。要するに「慣れる」のである。そうなると、周囲がこっちを頼るようになってくる。これはなかなかにいい気分なものなのだ。2年ちょっとで辞めたから良かったけど、秘書という仕事はあんまり長くやるものではないなと思ったものである。

○トップというのも、おそらく似たようなところがあるのだと思う。最近の小泉さんは、首相というポジションに慣れていて、楽に職務に取り組んでいるように見える。実際、JR西日本の事故があったりしたので、そうでなくても薄い郵政問題への関心が完全に飛んでしまった。これで何とか乗り切ってしまうのだと思う。小泉さんの強運伝説は続いている。本当は、こういうときこそ気をつけなければならないと思うのだが。


<4月27日>(水)

○長年の習性というのは怖いもので、今夜のような巨人VSヤクルト戦を見ていても、巨人が負けていると「よーし」と思ってしまう。が、ここはひとつ、弱い巨人に勝ってもらい、プロ野球を盛り上げてもらった方がいいのではないだろうか。なにせ巨人が弱いと、世の中の巨人ファンが「この世に野球など存在しない」振りをしたり、「もうMLBしか見ないもんね」などと虚勢を張ったり、見苦しい振る舞いに及ぶ。ヤクルトはともかくとして、中日が相手であれば、今後は巨人を応援することにしてやってもいいか、などと思う。

○それにしても今の巨人は応援のしがいのないチームである。清水をスタメンで使ってやれよ。ローズを3番にして高橋を6番に下げて、そいでもって阿部のアホ面はどう見てもキャッチャーには向かんと思うぞ。あとベンチの中の清原の暗い顔はなんとかならんのか。500号を打てば瞬間的に明るくなるかもしれんが、彼がいることで失っているものの方が大きいのではないか。などと毒づいていたら、9回裏、巨人の攻撃中に放送終了である。おーい、日テレも逆転を信じて、最後まで放映しろよ。って、彼らも商売だからなあ。

○こんな風に巨人が低調だと、プロ野球最大の人気球団は阪神、ということになってしまう。少なくとも球場の動員数では、おそらく1位ということになるのだろう。本当にそんなことが起きていいのだろうか。長年、野球を見ることでマゾヒズムを感じてきた阪神ファンとしては、それはなかなかに受け入れがたい事態であるような気がする。全国のアンチ巨人の皆さんはどんな心境でおられるのでしょうか。

○かといって、巨人ファンの引きこもりを直すには、とにかく巨人に勝ってもらうしかない。しかるに今の戦力状況では難しそうだ。なにしろ今日で巨人は6連敗。こうなると嫌でも気になるのは、連休中に予定されている楽天との交流試合である。負けた方は、12球団で最弱ということになる。見るよね、これ。かんべえは当然、楽天を応援する。なにしろ楽天主義者ですから。やっぱり「巨人が負けろ」と念じていると、自然な形で野球に集中できるような気がする。あんまり健全な楽しみ方では、ないと思うのですが。


<4月28日>(木)

○昨日の挑発的な物言いによって、巨人ファンを「釣って」しまいました。古い読者のIさんから。

おかしいとおもいませんか。阪神は阪神、ヤクルトはヤクルト、広島は広島。
どうして読売だけが巨人なんでしょう。それは巨人が他の球団とは別格の名誉球団であり栄誉称号であるからです。そもそもプロ野球というものが読売新聞の拡販の手段として編み出された宣伝媒体にすぎなかったという出自にも関係があるでしょう(高校野球は朝日の宣伝媒体であり実業団野球は毎日の宣伝媒体でした)。

でも、それも今は昔です。

もはやプロ野球は巨人、読売新聞の宣伝媒体ではなくなりました。
そうなったらそうなったで巨人は巨人と名乗るのをやめてもらいたい。正々堂々と読売と名乗ってもらいたい。読売がいやなら、せめて巨人と名乗るのは自粛いただいて「こぶ平」とか「昇太」とか二つ目なら二つ目らしい球団名を名乗ってもらいたい。
そして三年連続セリーグ1位、三年連続日本一位を獲得した暁に、晴れて堂々と「○○代目巨人軍襲名披露」としてオネリをして欲しい。

頼むから、これ以上「栄光の巨人軍」の名を汚すな。

○なるほど、そういうものかと知りました。「栄光の読売軍」「常勝・読売」「読売軍の選手は紳士たれ」・・・・おお、なんという違和感でしょうか。わが阪神が倒すべき相手は、読売ではなくて巨人軍であってほしいものだと思います。

○もうひとり、「日中関係の改善のためにも中日の優勝を」などと言ってきたのは、いつもの上海馬券王先生です。「不安定な社会情勢の下で生きる私の唯一の心の支えである中日の快進撃に対して何てことを言うのだ!」とのこと。まあ、お気持ちは分かりますが、「オレ流」が2年連続で優勝してしまうと、それはやっぱりマズイのではないかと。それより面白いのは、馬券王先生がキャッチした中国共産党の訓示内容です。

内容はと言うとですね、「デモには参加しちゃいかん。反日活動はすでに半ば非合法なものとなっておるから、あんなものに参加すると将来ろくなことにならないぞ。」なんだって。

まぁ、最近報道されている中国政府の姿勢転換を追認する内容で特に面白くもないんだけど、一つ面白いと思ったのは、「最近『愛国』を標榜するはねっかえりが、地下にもぐって色々不審な動きを示している。先日も垂れ幕業者に反日スローガンを織り込んだ大量の垂れ幕印刷が注文された事実が確認されているし、今後どのような突発事態が発生するかもわからない。党員各位は職場の僚友が政府が支持しないあらゆる行動に参加することを阻止すること」なんだって。

うーん、尖鋭化した中国の2ちゃんねらーには、政府の統制も及ばないらしい。今後はデモならぬテロの標的として日本が位置づけられることになるやも知れませんぞ。

○ここはひとつ、こんな風に言ってやりたいところです。「中共、必死だな(w」


<4月29〜30日>(金〜土)

○仕事三昧の連休を過ごしております。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

○そんな中での暇ネタです。4月7日にご報告しました通り、次女Tが「金のエンゼル」を当てました。そんなわけで、昨日、キョロちゃん「おもちゃのカンヅメ」が届きました。森永チョコボールファンの皆さま、「おもちゃのカンヅメ」がこの世に実在することが確認できました。本来なら、写真などつけてご紹介すべきところながら、まあ、「な〜んだ」ってなもんであります。ここでは「キョロ缶の中身」をご紹介するに止めたいと思います。

(1)くっつきキョロちゃんメッセンジャー

(2)キョロちゃんクリップ

(3)キョロちゃんパズルオブジェ

(4)どこでもチョコボールケース

(5)ペタッとキョロちゃんシール

(6)キョロちゃん木のストラップ

○実はキョロ缶には2種類あります。当家に届いたのは「ピーナツ」型です。クエッ!

○ああ、今日中に目処をつけて、せめて明日は天皇賞に行きたいものである。かんべえの狙い目は、現在のところはFシルクフェイマス。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki