●かんべえの不規則発言



2012年2月






<2月1日>(水)

○やや旧聞に属する話なのだが、年初のNYT紙オピニオン欄にこんな記事が出ている。日本は失敗した国だ、というのは丸っきりのウソであって、実はとっても上手にやっているんじゃないか、というのである("The Myth of Japan's Failure" By EAMONN FINGLETON Published: January 6, 2012 )。

○その証拠に、といって挙げている事実は以下のようなラインナップである。

●Japan’s average life expectancy at birth grew by 4.2 years - to 83 years from 78.8 years - between 1989 and 2009. This means the Japanese now typically live 4.8 years longer than Americans. The progress, moreover, was achieved in spite of, rather than because of, diet. The Japanese people are eating more Western food than ever. The key driver has been better health care.

●Japan has made remarkable strides in Internet infrastructure. Although as late as the mid-1990s it was ridiculed as lagging, it has now turned the tables. In a recent survey by Akamai Technologies, of the 50 cities in the world with the fastest Internet service, 38 were in Japan, compared to only 3 in the United States.

●Measured from the end of 1989, the yen has risen 87 percent against the U.S. dollar and 94 percent against the British pound. It has even risen against that traditional icon of monetary rectitude, the Swiss franc.

●The unemployment rate is 4.2 percent, about half of that in the United States.

●According to skyscraperpage.com, a Web site that tracks major buildings around the world, 81 high-rise buildings taller than 500 feet have been constructed in Tokyo since the “lost decades” began. That compares with 64 in New York, 48 in Chicago, and 7 in Los Angeles.

●Japan’s current account surplus - the widest measure of its trade - totaled $196 billion in 2010, up more than threefold since 1989. By comparison, America’s current account deficit ballooned to $471 billion from $99 billion in that time. Although in the 1990s the conventional wisdom was that as a result of China’s rise Japan would be a major loser and the United States a major winner, it has not turned out that way. Japan has increased its exports to China more than 14-fold since 1989 and Chinese-Japanese bilateral trade remains in broad balance.

○ほかにも、「JFK空港やダレス空港に比べると、日本のインフラの方が新しい」とか、「日本ではペットがとてつもなく甘やかされている」など、いちいちごもっともな指摘があるので飽きません。一服の清涼剤と思ってご一読ください。

○で、ちょっと不思議だなと思ったのが、「東京ではバブル崩壊後に、高さ500フィート(150メートル)以上の建物が81棟も建っている」という指摘である。はて、そんなにあったかな、と思ったのだが、たまたま今日、品川駅近くに所用があった際に納得しましたな。あの一帯はまさしく新築ビルのラッシュで、雨後のタケノコのような様相を呈している。なるほど、こりゃすごい。

○ということで、日本って結構すごいんですぜ、というお話でした。


<2月2日>(木)

○北岡伸一先生の『外交的思考』(千倉書房)を入手。今日が初版第一刷りの発行日なんですね。夕方にゲットして、もう読了してしまった。

○気に入った部分を、ちょっとだけ書き写しておこう(P61)。

日本では、100%を主張して決裂すると褒められ、80%の案で妥協すると批判されることが多い。しかし、決裂の結果、60%も取れなくなることが少なくない。国益上は、拙劣なやりかたというほかない。

○いいですねえ。こういう感覚。「完全は次善の敵」という言葉も覚えておきたいです。まあ、私なんぞは、締め切りが来るたびに、この言葉を唱えているようなものですけど。

○明日は石川県能登半島の志賀町へ。豪雪ですけど、大丈夫でしょうか。


<2月3日>(金)

○今朝のANA便が無事に能登空港に降りてくれたので、大丈夫でありました。昨日がとりあえずの豪雪のピークであったらしく、今日の能登半島は降ったりやんだりでした。しみじみ雪が降る中の日本海は美しいですね。特に夕日がよく映えます。

○本日は志賀町商工会の地域振興研修会の講師を務めました。これで今年は広島県福山市、岩手県奥州市、岐阜県岐阜市に続く4か所目となります。東京都内で言えば、中央区商工会議所、ファッションビジネス業界、木材業界、互助会業界、某証券会社、某プラスチック会社などで、2012年の内外情勢および経済見通しなどを語っております。場所ごとに反応が違うので、飽きないものがありますね。

○ところ変われば品代わる。神は細部に宿る。ということで、ミクロの話を積み上げる作業が面白いと思います。現場で聞く話というのは、マスコミやネットで得られる情報とは一味違います。今年もなるべくいろんな場所に出歩いて、ファクトと向き合っていきたいものだと思います。


<2月5日>(日)

○いろいろ出ております。

●2月5日(日)日経朝刊

経常収支、JPモルガン・菅野氏と双日総研・吉崎氏に聞く

http://www.nikkei.com/news/topic/article/g=96958A9C93819694E2E3E2E2E58DE2E3E2E0E0E2E3E0868BE4E2E2E2;q=9694E0E4E2E3E0E2E3E0E4E3E5E3;p=9694E0E4E2E3E0E2E3E0E4E3E4E4;n=9694E0EAE2EBE0E2E3E3E6E5E1E2;o=9694E0EAE2EBE0E2E3E3E6E5E1E3  


●2月3日(金)産経「正論」

日本企業が変化を嫌うというのは、ありがちな偏見にすぎない

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120203/biz12020303110001-n1.htm 


○加えて今日は、これに北日本新聞の「時論」コラムもあったりして、どうりで忙しかったはずだと妙に納得。



<2月6日>(月)

「この雪が降らねば富山はいいとこ」と雪かきしつつ口々に言ふ  (『ヌビアの少年』浅野光子/コスモス叢書)


○先週末、能登の帰りに実家に立ち寄って、ほんの短時間、雪かきをしたところ、本日はテキメンに背中が痛いのであります。あたたたたた。

○今年の雪は「10年に1度」級じゃないかと思います。屋根の上を見ると軽く1メートルくらい積もっているし、軒の下には見事なまでのつららが何本も伸びている。子供の頃には魅力的に見えた氷のフォルムも、今は見上げると邪悪な凶器にしか見えぬ。真面目な話、危ないのであります。溶けると証拠も消えちゃいますぞ。

○ちょっとの間、晴れ間が出来たからこれで安心と思うと、いつの間にか再び降り出してしまうのがこの季節の雪というもの。終わりがないのです。雪下ろしの事故が頻発しているとのこと、豪雪地帯の皆さま、くれぐれもご用心ください。

○この膨大な量の積雪が、春になれば人智を超えたところで勝手に溶けてくれて、川に流れて海に注ぎ込みます。水力発電も富山湾の寒ブリも、つまるところは雪の恵みということなので、あんまり文句を言うとバチが当たるわけであります。なるほど人は自然の中で生かされている、と感じる筋肉痛の今日。


<2月8日>(水)

○どんなに酔って帰っても、ちゃんと更新するのが当サイトの矜持なのでありますが、昨晩は料理と酒が上等過ぎたからか、あるいは寒さによる体調不良のせいか、帰ってすぐに力尽きて寝てしまいました。ということで、本日、唐突に決意。「週に1回くらいは休肝日を作ろう」。今宵はジャスミン茶で我慢しております。

○「家で飲むビールがおいしい幸せなお父さん」を自認する不肖かんべえ、かくして家でビールが飲めない日が出来てしまい、今宵は不幸となりました。ふん、いいんだ。明日はふぐを食って、ひれ酒も呑んでやる。

○本日発表の国際収支、2011暦年の経常収支は10兆円を下回りました。ということで、日曜日の日経に掲載された菅野雅明さんとの討論では、先方の主張が裏付けられる展開となりました。負け惜しみをひとつ言っておくと、これも年度になるとまた少し雰囲気が変わるかもしれません。というのは、1-3月期は年度末ということで、輸出も所得収支も伸びる傾向がありますので。

○と言ったところで、世の中的には「貿易収支は赤字になる」「経常収支も悪化する」という悲観論は当面強まるでしょう。とはいえ、モノづくりの現場はそんなに単純じゃないと思うのですよね。

○これは先日、某化学品会社で聞いた話ですが、中国の自動車メーカーが日本製部品をせっせと買うようになっているとのこと。なんとなれば、「中国製自動車は性能がイマイチ」と消費者にバレてしまい、今までの快進撃がピタリと止まってしまったから。かくして今や、中国企業の方が高く自動車部品を買ってくれる。他方、円高に苦しむ日本企業は買い叩こうとする。「あんなことじゃ、いずれ品質で逆転されませんかねえ」と、技術担当の方が言っておられました。

○自社製品を高く買ってくれるお客の方を大事にしたくなるのは、そりゃあ人情というものでありましょう。日本企業全体が「貧すりゃ鈍す」になったらそれこそ困ります。そのためには、悲観主義が最大の敵、と思うのであります。


<2月9日>(木)

○フェースブック上場に関するこぼれ話。

○創業者のザッカーバーグという名前は、ドイツ語では「砂糖の山」という意味なのですな。いかにもシロアリがたかりそうではありませんか。「時価総額1000億ドル」などという呼び声もありますが、ご用心、ご用心。

○しかも同社のナンバーツーで、やり手の女性COOの名前がサンドバーグだというから、さらによく出来ているじゃありませんか。砂糖のつもりでたかってみたら、実は「砂の山」であったと。くわばら、くわばら。

○サンドバーグ氏に関するこの記事を見ると、フェースブック社は「企業規模を大きくしない」と言っている。巨額の資金を調達しても、社員は増やさないというのです。上場で得たお金は、社員とベンチャーキャピタルが山分けしてしまうのでしょう。結果として米国経済の雇用は増えず、格差が広がるだけ。あわわわわ。

○まさに「砂糖の山」であり、「砂上の楼閣」ではありませぬか。名は体をあらわすと申しますが、とほほほほ。


<2月10日>(金)

○貿易収支や経常収支のことを、これだけ多くの人に聞かれるのは初めてですね。「貿易動向調査」の仕事に長年携わってきて、こんなに脚光を浴びたのは空前絶後です。それもそのはず、「今までずっと黒字だったものが赤字に変わる」わけだから、すごく分かりやすいインパクトがあるのですね。恐怖があるから、ニュースが注目される。ちょっと不健全なところがありますな。

○思うに一連の議論は、「2015年には経常赤字になるかもしれないから、早く消費税を上げなきゃいけない」とか、「代替燃料費で貿易赤字が増えるから、早く原発を再稼動しなきゃいけない」といった脅迫の材料に使われている面があるような気がします。あたしゃ消費税は上げなきゃいけないと思うし、原発再稼動も賛成だけど、どちらも「見切り発車」はいけません。ちゃんと手続きを踏んでやらないと、後でかならずひっくり返されると思いますぞ。

○データというものは虚心坦懐に読むべきものであって、あらかじめ何らかの結論を引き出そうという「邪心」を持って接するべきではありません。ところが、世の中にはよこしまな数字の方が、まともな数字よりもはるかに多いのですな。「だから○○は××すべきである」と言いたいための補強材料として、作られるデータのなんとアホらしいことよ。

○ともあれ、日本貿易会の「貿易動向調査会」にとっては、今期は史上空前の注目度であったようです。こんな年に委員長が回ってきたのは、運がいいのやら悪いのやら。任期は3月末までなので、早いとこ次に渡してしまって気楽になりたいところです。ちなみに、お次は三井物産さんです。


<2月12日>(日)

○業務連絡。今週、15日から17日まで私用でお休みするので、残務処理モードに入っております。消費税増税の閣議決定とか、米共和党予備選の滑った転んだとか、緊迫するイラン情勢など、いろいろあるかもしれませんが、知ったこっちゃないからね。水曜以降は、ワシに仕事のメールを送っても無駄ですよん。

○あ、その前に明日はQEがあったか。あんまりよくない数字が出そうだけど、その辺も想定の範囲内ということで。仕事のご相談は来週以降にお願いしますよ。


<2月14日>(火)

○今朝の「くにまるジャパン」でもお話しましたが、今週号の「週刊東洋経済」誌はすごいですぞ。題して「東京電力、偽りの延命」

○本日は東電の4〜12月期決算の発表日でした。この日までに公的支援がなければ、東電は債務超過に陥っていたかもしれない。そして枝野経済産業大臣からは、公的支援の見返りとして、経営権の譲渡を含むキツイお達しがあったというのが、昨日来の新聞報道です。ただし、東洋経済の解説記事を見ると、お金を出すのは経済産業省じゃなく財務省なので、そうは簡単にはいかないよ、という話なんですね。人呼んで「勝ー勝ライン」。資金投入を嫌う財務省の勝次官と、国有化を怖れる勝俣東電会長の間で、共闘が行なわれるという説明がされています。

○なんとなれば、原発の問題に対する政府の関与を広げてしまうと、財政当局としては「日本国債の格下げにつながりかねない」という懸念が出てくる。なにしろ火力発電の原料費や廃炉費用もさることながら、除染費用は青天井でありますから。これでは、「原発部門の国有化」といった抜本的な対策は打てないことになる。選挙も近いから、とりあえず悪いことは全部東電に押し付けて、政府・与党は知らん振りをする。そして東電の側としては、料金の値上げと原発再稼動があれば、何とか生き延びられるんじゃないかと考えている・・・・という話です。

○それじゃあ四分五裂もいいところなんで、官邸は一体何をしてるんだ、というと、これがまったく動いていない。官邸の関心は消費税一本に絞り込まれていて、電力のことなど完全に念頭にないみたいです。そもそも野田さんは、勝次官のマインドコントロール下にあるとの観測もあるくらいでして。

○いやはや、まったく明日がないのは民主党政権だけじゃありませんで、日本政府自体が「明日なきシナリオ」の中を生きている、という感じです。それにしても、「お金がカツカツだから勝―勝ライン」というのはまことに情けない話であります。

○もう一点、本日は「マイナンバー法案」が閣議決定されました。いわゆる「共通番号制」のことでありまして、税と年金管理に横串を刺して、社会保障のサービス利用を一元処理しようという発想です。実現すれば、ものすごい効率化になりますよね。他方ではプライバシー問題などもありますので、けっして容易ではないと思いますけれども。

○少なくともこの制度は、自営業者の支持が強い自民党政権では、けっして出来ないような話でありますから、これは是非通して欲しいと思います。もっとも「ナンバー制があれば、所得や資産の捕捉はバッチリで、クロヨンやトーゴーサンは完全に過去のものになる」と誤解している人が少なからず居るようです。現在の案で行くと、そこまで徹底した話にはなっていませんし、そもそもそんな恐ろしい社会主義国みたいなことはおそらく不可能でありましょう。

○実を言うと、全国の水商売関係などの間では、既に「マイナンバー制が入ったらどうしましょ」的な懸念が急拡大しているらしい。そりゃそうでしょう。税の捕捉をバッチリやりましょうというのは、サラリーマンは皆さん賛成するわけですが、アングラ経済から見れば「とんでもねえ。俺たちから税金取るのか?」という話になります。いやあ、コワいですねえ。

○それ以前に、ナンバー制が2015年1月に導入されるためには、残された時間は3年しかないということになります。それって間に合うの?というのが小生などの素朴な疑問です。普通に考えて、「住基ネットと年金手帳と住民票の番号をクロスさせる」といった恐るべきIT公共事業には、大変な手間と時間がかかるんじゃないかと思います。3メガバンクのATMの統合さえ、あんなに時間がかかっているわけじゃありませんか。

○ぶっちゃけた話、野田政権としてはマイナンバー制はあくまでも消費税増税のためのエクスキューズなんだと思います。「低所得者向けには給付付き税額控除をやりますから」「だから税率が10%になっても、帳簿方式のままで、軽減税率は入れなくてもいいですよね」てなことを考えているのでしょう。ところが実際に2015年になったら、「やっぱり間に合いませんでした、御免!」てなことになるんじゃないのかなあ。だから自営業者の皆さん、この件は今のところそんなに心配しなくていいと思いますよ(まあ、そうは言っても、そろそろ税金の申告の季節が始まるので、準備はお早目に)


<2月15日>(水)

○朝一番で松山空港に降り立った。と言っても台北市じゃないですよ。愛媛県松山市であります。

○松山市は公共交通機関の安い街ですね。空港からJR四国の松山駅までのバスが300円。市電は全部1回150円。これではタクシーを使う機会がありません。なおかつ、県庁と市役所と司法関係と、その他の公的な機関が全部松山城の周辺に集まっている。最初から見事なコンパクトシティができているのですね。松山城はかなりの高さがあるので、「坂の上の雲」というのは、この城を仰ぎ見ることであったかということが、この地に立つとよくわかります。

○「坂の上の雲ミュージアム」は、この公的セクターの一角にある。空いた土地に無理やり作ったような三角形の建物で、船の舳先をモチーフにしたと思しきフォルムである。やっぱり安藤忠雄でありましたか。で、この建物の評判は、あまりよろしくない。要は展示するに足る中身が少ない、という話なんですけど、「明治は遠くなりにけり」(@中村草田男=地元)なので、そりゃあ無理な相談というものでしょう。それでもNHKドラマの威力は今しばらくは続くでしょうから、入口に立ってふと思う。

「坂の上」は移りにけりないたずらに

○でもまあ、自分としては楽しめました。何がいいと言って、産経新聞に掲載された全部の回のコピーが展示されていて、その挿絵がすばらしい。新聞連載時のことは全然知らないので、これは感動モノでした。というか、自分が重度の司馬遼オタクであるというだけのことなんですけれども。今ならバルチック艦隊の企画展もやってます。お得です。

○資料の充実度という点からは、道後温泉にある子規記念館の方が上でありましたね。どうでもいいことですが、この街はそこらじゅうに俳句が飾ってある。ただし子規といえども、駄作はいっぱいあるわけであって、名句ばかりを詠んでいたわけではないようです。要は地元の風物を読み込んだ駄句が、観光用に使われているということなのですが。それでも、子規の遺徳は健在であって、後世の人々はなにかにつけて五七五で季節を読み込む習慣があるようです。小中学生の作品と言えども、なかなかのものがありましたですぞ。

○道後温泉を散策していたら、ごく普通の墓地があって、そこに秋山好古のお墓があるというから、ついつい探してみた。ところがこれがまことに無秩序な墓地なのである。秋山家両親の墓(とても小さい)は発見できたのだけど、好古のが見当たらない。腹立たしいことに「陸軍歩兵隊長」とか「陸軍軍曹」と派手に刻んである墓はあるのに、「陸軍大将」の墓が見当たらないのである。幸い親切な地元の方が教えてくれたのだけれど、案の定、縦長の細い石に「秋山好古之墓」とだけ記したシンプルなものでした。

○さて、道後温泉は有馬、白浜と並ぶ日本最古の温泉。これがあるから、松山の市電は繁盛するんでしょうね。本館にて一風呂浴びてまいりました。奮発して3階に上がって、坊ちゃんの部屋の向かい側5号室でのんびりさせてもらいました。それにつけても『坊ちゃん』効果は平成の御世になっても健在であります。これが熱海だと、『金色夜叉』がほぼ絶版品切れ忘れられちゃった状態であって、町全体がとってもさびれております。温泉にはこの手の「競争戦略としてのストーリー」が必要なのでしょうが、地元としては明治の文豪に多謝あるのみでしょう。

○もっとも漱石は『坊ちゃん』の中で、松山のことを良く書いたわけではない。「温泉だけは立派である」とここだけは褒めたけど、あとは人物描写も含めてボロカスであった。仮にも自分が住んだ土地のことを、あんな風に悪く書けるというのは、これは一種の才能というもので、小心者の私なんぞは思いもよりません。まあ、世の中には西原理恵子のように、悪く描くことで地元に感謝されちゃう人もいるわけでありますが。

○たしか『坊ちゃん』の中に、下宿のあるじが骨董品に凝っていて、「これは端渓です、端渓です」と言い寄ってくるところがあった。なるほどこの町には、古道具屋さんがいくつもある。昔からそういう趣味が可能な、豊かな風土だったのでありましょう。今頃は豪雪に耐えているはずのわが郷里を思うと、なんだかちょっと複雑であったりする。

○というわけで、完全プライベートな旅行を楽しんでおります。仕事のメールを送っても読まないよん。


<2月16日>(木)

○今日は讃岐編。出だしは「こんぴらさん」から。

○現地に来て初めて知りましたが、駅は「琴平」(ことひら)、神社は「金刀比羅宮」(ことひらぐう≒通称こんぴらさん)である。♪「こんぴら船々 追風に帆かけて シュラシュシュシュ〜」♪という唄にある通り、 海の守護神として知られている。江戸時代には伊勢神宮に次いで、庶民のあこがれであったとのこと。明治維新の廃仏毀釈の際にピンチを迎えるが、知恵者が表れて「これは神社でございます」ということにして、大物主神と崇徳天皇を祀るようになったのだそうだ。なおかつ、戦後になってから宗教法人の認可を得るなど、まことに融通無碍にして、いかにも日本的ではありませぬか。

○来たからには登ってみせましょう。本宮までの785段。思ったより簡単に登れたけれど、さすがに奥社(1368段)はご遠慮申し上げました。もちろん、明日になったら膝に来ているかもしれませぬ。おみくじは「吉」。「何事も正直に力の限り勉むれば諸事次第に順調となる色に溺れ酒に狂う事勿れ」だそうである。ははあ。

○次は丸亀市に移動して、駅のすぐ近くのMIMOCAこと猪熊弦一郎美術館へ。単にご当地出身の画家か、と思っておりましたが、現代美術のアーチストとしては世界標準の方ですな。ちょっと感心いたしました。

○さらに高松駅まで移動して、そこからフェリーに乗って直島へ。天気が良くなってよかった。1時間弱で到着。

○ここは島全体がアートで埋め尽くされている。いかにバブル期であったとはいえ、ベネッセさんも奇特なものを作ったものである。なかでも圧巻は地中美術館である。良質な推理小説の落ちを見せつけられた感あり。感動するより先に、完全にあっけにとられてしまった自分が悔しくなってしまう。しかもこのトリックを張り巡らしたのは、あの安藤忠雄ではないか。憎っくきアンチューめ。してやったりと思っていることだろう。とはいえ、あまりにも見事なトリックなので、余計なことを書いてネタバレを招いてはならぬ。

○それにしても、これだけ多くの芸術家と建築家がいろんなことを試してしまった後に、これから先のアーチストは何を試せばいいのであろうか。いわばアガサ・クリスティーとエラリー・クイーンが、あらゆるトリックを使ってしまった後で、なおかつ新ネタを考案しなければならない今日の推理作家のようなものではないか。しかもバブル期のベネッセのような太っ腹な大旦那は今はなくなっている。

○直島の玄関口である宮浦港をはじめ、島のあちこちに見えるモニュメントで目立つのは、草間彌生作品である。その昔、不肖かんべえが企業広報誌の編集者をやっていた時代に、Sさんという美術評論家に、何度か仕事をお願いしたことがある。Sさんいわく、「ヒロ・ヤマガタなんて、あんなのはダメだ。じきにすたれる。ニューヨークの草間彌生は本物だ。覚えておくといいよ」。その通りであった。Sさん、今はどこでどうしているでしょうか。

○こんな風に、アートに浸って日が暮れてみると、実は自然の美の方がはるかに心に迫るものがある。瀬戸内海の夕暮れから夜はなるほど見事である。実はこれが狙いであったのか。またしても意外な真犯人に、ギョッとさせられたのであった。


<2月17日>(金)

○アートを追い求める旅は、直島からさらに豊島へ。船で渡って、レンタカーを借りて、ようやくたどり着いたのが豊島美術館。これまたあっと驚く仕掛けがござりまする。それから「心臓音のアーカイブ」、「イルヴェント」を回りました。「島キッチン」は、あいにく土日限定でお休みでした。

○周囲を見ると、船着場を降りる人はほとんどが観光客で、次の船が来るまでの間にいろんな手段で島内を訪問することになる。こんな風に見知らぬ土地を訪れて、地図を頼りに迷いながら歩くという非日常的な行為自体が、アートということなんでしょうな。(どうでもいいことなんですが、美術館めぐりをする人たちと、美術館で館員などをしている人たちというものは、無意味に美男美女が多いんじゃないかなあ。少なくとも若い世代は)。

○こんな風に島から島へと回る観光客が居るお陰で、過疎化の進む島に仕事ができたりするわけです。しかし実際に歩き回ってみると、アートを仕掛けている人たちともともとの島民の間にはずいぶんと違いがあるわけで、「観光でまちおこし」というのはそんなに簡単な話ではありませんなあ。他方、アートによる観光開発がなかったら、私なんぞが直島や豊島を訪れる機会はほぼ絶無なわけでして、それがなければこの瀬戸内海の風景に接することもできなかったことになります。

○旅行中に読んでいたのが、『日本の歴史をよみなおす』(網野善彦/ちくま学芸文庫)と『女の民俗誌』(宮本常一/岩波現代文庫)でした。どちらも旧来の日本人観を覆してくれる良著で、最近はこの2人の本をよく読んでおります。特に宮本常一氏は全国津々浦々を歩いた民俗学者で、膨大なフィールドワークを残した人です。私なんぞは、全国のほんの少しを回ったに過ぎませんけど、「ああ、ここで書いてあるようなことが真実なんだろうなあ」と感じることが多いです。


<2月18日>(土)

昨日の読売新聞の「編集手帳」がすばらしい。

日本将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖(68)が特別公式対局でコンピューターソフトに敗れたのはひと月ほど前である。私は勝てるだろうか? 対局の直前、夫人に尋ねている◆近著『われ敗れたり』(中央公論新社)によれば、夫人の答えは「勝てません」。全盛期に比べて、決定的に欠けているものがあるという。「あなたはいま、若い愛人がいないはずです。それでは勝負に勝てません」◆

○これはヨネさん、投了、いや即詰でありますな。藤沢秀行大先生ほどではありませんが、過去にはヨネさんの放蕩もいろいろあったようですので、ご夫人からすれば「会心の一撃」だったのではないでしょうか。

○コンピュータとの勝負には負けたが、自分の最大の理解者が家の中にいる、というのはめでたい話ではありませぬか。勝負師はいつかかならず辞める日が来ますが、家族は死ぬまで止められませんからな。

○配偶者というのはしみじみコワいものでございます。夫婦旅行を終えたばかりの筆者も、それを感じております。


<2月19日>(日)

○明日から仕事に戻るわけなんですが、ついつい考えてしまうことは、「この次はいつになったら休めるだろうか」。旅行と映画は後を引くものでありまして、「四国に行ったら、他も行きたくなる」のは自明なことであります。いやはら、「休んでさっぱりリフレッシュ、仕事への意欲モリモリ」、というわけにはいかんですなあ。

○それでも少し休んでみると、今までと少し違った視点で世界が見えているような気もします。考えてみると、もう10年以上も似たような環境で似たような仕事をしているので、ほっときゃどんどんマンネリになっていくはずなので。

○とりあえず申告のために、税金の計算を始めた日曜日であった。


<2月20日>(月)

○なんと円安が進んで株高になっている。日経平均で9500円近辺まで来ているではないか。となれば1万円台復帰も近いように思えてくる。まことにもって現金なものだが、それ自体は悪い話ではないだろう。PERやPBRを見たら、どう考えたって8000円台は安過ぎるので。

○それではなんで円安が進むかと言えば、本日発表の貿易収支の赤字もさることながら、先週の日銀の発表によるところが大きいのだろう。特に買い入れ基金による国債購入額を10兆円増やしたことで、短期金利の利回りが急低下している。ひとつ間違えば、「とうとう日本は中央銀行が財政のファイナンスを始めた」ということになり、長期金利が上昇してしまうかもしれない。

○先週2月14日に日銀が発表した際には、いろんな評価が交錯したものだが、とりあえず今のところはオーライということになる。で、今日になってしばらくぶりに出社していろんな資料を読んでいて、ハッと思い出したことがある。先月の月例経済報告のことである。

○リンク先の2p目をご覧いただきたい。12月月例と1月月例の「政策態度」を比較してみると、さして長くもない文章を比較すると、1月には新たに下記の文言が加わっている。


欧州政府債務危機等による先行きリスクを踏まえ、景気の下振れの回避に万全を期す。また、デフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防ぐ

政府は、日本銀行と一体となって、速やかに安定的な物価上昇を実現することを目指して取り組む。デフレ脱却に向け、


○かくして、12月には1つもなかった「デフレ」という言葉が、1月には3つも入ることになった。特に「デフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防ぐ」という言い回しに、異様なものを感じた。「政府と日銀の意思疎通は、いったいどうなってるんだろう」と思ったものである。今にして思えば、それがシグナルであったか。

○思い出したら急に悔しくなってしまった。いつものことながら、直感は過たない。誤るのは判断である。


<2月21日>(火)

○ふと思い出したが、少し前にさる自民党関係者がこんなことを言っていた。

「今の民主党は、政権末期の自民党以下です。なぜならあの頃のわれわれは、『下手をすれば、次の選挙で民主党に負ける』という緊張感があった。今はそれがない」

○それって野党である貴方がたが不甲斐ないからではないのですか、とツッコミを入れたような記憶がある。当然だよね。でも、上はまったくその通りなんじゃないかと思います。「下野する」ことの恐怖が与党を鍛える。が、野党ボケした与党と与党ボケした野党のコンビでは、そういう緊張感が生じない。

○今や野田内閣の支持率は2割台に突入し、毎度おなじみの危険水域に入ってきた。毎年同じことを繰り返していますから、この先がどうなるかは誰でも見当がつきますよね。ところが自民党への期待もさほど盛り上がらない。調査結果によっては、「支持政党なし」が5割を超えていたりする。

○そんな中で、急に風が吹いてきたのが第三極こと大阪維新の会である。「船中八策」なんて今どき何言ってんの、と個人的には思いますけど、しばらくはこの人気が続くんでしょうな。今までにも何度も繰り返されてきたことですが、「知ってる馬鹿野郎よりも、知らない馬鹿野郎の方が魅力的に見える」の法則です。

○ところがこうなると、民主党と自民党の両方に緊張感が生じる。「下手をすれば、次の選挙はエライことになる」と思いますからね。結果として解散風はパタリと止むんじゃないでしょうか。なにしろ選挙後は、「大連立以外に選択肢がない」みたいなことになりかねない。その場合は「民自再生法」なんて呼ばれたりして。


<2月22日>(水)

○クイズです。「千代田区永田町1−1−1」にある建物は何でしょう。

○国会議事堂? 官邸? 議員会館? 国会図書館? ぜーんぶ違います。答えはこれ。ちょっと意外でしょ? 今日のお昼に所用があって出かけましたが、こんな言葉に出会ったので、メモしておきました。

●尾崎行雄「人生の本舞台は常に将来に在り」

○96歳まで生きた憲政の神様・咢堂翁は、けっして過去を振り返ることなく明日を見据えておりました。確かに政治家たるもの、常に「今日は、明日は、何をなすべきか」を考えるべきであって、自分の功績を指折り数えるようになってはおしまいでありましょう。

○夜は産経新聞「正論大賞」の贈呈式へ。初めて行きましたが、まことに盛大な会合でありましたな。第27回正論大賞は渡辺利夫教授、第12回正論新風賞は井上寿一教授が受賞されました。どちらも、よい受賞挨拶をされました。

●渡辺教授「文章を書くことは男子一生の仕事である」

●井上教授「歴史観には大きく2つの流れがある。ひとつは戦後を肯定して戦前を否定するもの。もうひとつは戦前を肯定して戦後を否定するもの。私は少数派かもしれないが、戦前も戦後も肯定したい」

○まったく同意であります。

○立派な言葉を聞いた後でわが身を振り返ってみると、まことに忸怩たるものがある。このところ急に下腹が出てきた。なおかつ、椅子に浅く腰掛けるようになっている。気がつけば背中も曲がっているような気がする。要は年齢を重ねるとともに、姿勢が悪くなっているのである。立派な行いを心がける前に、せめて背筋をしゃんとして歩きたいものであります。


<2月24日>(金)

○以下の問いのうち、正しいものはどれか。ただし、いつも正解があるとは限らない(各20点)。

○ミシガン州予備選(2/28)は「決戦の火曜日」。@出身地なんだから、さすがにロムニーが勝つ、Aサントラム恐るべし、B同点でスーパーチューズデー(3/6)へ。

○アメリカ外交が、アジアに回帰する真の意図は次のうちどれか。@対中包囲網、A大西洋から太平洋へ、B中東からの転進。

○韓国外交が生き残る道は次のうちどれか。@米韓同盟&米韓FTA、Aアジアのバランサー、B中国の保護国。

○アップル社の手元資金976億ドルの正しい使い道はどれか。@自社株買いで株主に還元、Aフェイスブックを買収、Bソニーを買収。

○チャールズ・マレイの新著"Coming Apart:The State of White America 1960-2010"が意図するところはどれか。@アメリカ社会階層化への警鐘、A新上流階級への「ノブレス・オブリージ」の勧奨、Bアメリカ版『下流社会』の衝撃。

○ところで文化放送の鈴木ずんこさん、本日無事に女児をご出産とのこと。いいね!


<2月26日>(日)

○先日、パーティーで話した相手のことが後から気になって、よくよく調べてみたらFacebookの「友達」の1人であった。はて、あの人は初対面だったのか、それともワシが忘れているだけなのか。今さら聞けないので、困ったものである。

○交友関係におけるリアルとバーチャルと区別が、だんだん曖昧になってきているような気がする。お互いに相手の活動をネット上で知りながら、リアルで会ったときの対応が難しい。「えーっと××にいらっしゃるんでしたっけ」「いえ、2年前から△△に移りました」などという会話を交わしつつ、おずおずと名刺を交換することになる。そういえばこの人は初対面だったっけ、などと首をかしげていると、どうやら相手も似たようなことを考えている気配がある。いやあ、照れくさい。

○Facebookのことを「ソーシャル・ネットワーク」というのはよく言ったもので、あそこで交わされる発言は軒並みに"social"(=愛想のいい)になってしまう。もっというと、"Diplomatic"(=如才のない)な発言も少なくないので、Facebook上のコミュニケーションは、「うん、そうそう」「僕もそう思う」「分かるな〜」みたいなものが多くなる。パーティーの立ち話と同じで、あまり深い会話はできません。そして話が合いそうにない人は、最初から存在を無視することになる。まあ、リアルな世界においても、その辺の事情は同じなのでありますが。

○でも、何かクリエイティブな作業をしようと思ったら、"social"や "diplomatic"でない会話がどうしても必要である。そういう話が出来る相手や、気兼ねなくディスカッションできる場を作ることは、とても大事な作業なのだと思う。そしてマジな議論や情報交換というのは、やはりリアルな場でないと面白くない。少なくともワシの場合は、ネット上のやり取りには物足りないものを感じてしまう。だって文字情報って、とっても情報量が少ないんだもの。

○やっぱりネタを集め、アイデアを得るためには、リアルな出会いが必要なのです。そっちの方が面白いし。来週もそういう機会が一杯あることに感謝しよう。


<2月28日>(火)

○維新の会の主張などを見ると、「首相公選制」の待望論が強いようです。個人的にはあんまり賛成じゃないのだけれど、「憲法を変えずに、事実上の首相公選制を実現する方法」というのがあるんじゃないかと思います。

○アイデアとしては簡単で、与野党が紳士協定を結び、「向こう10年程度、解散・総選挙はかならず衆参ダブル選挙で行なうことを決める」。これだけです。こうすれば、「任期3年の首相公選制」に限りなく近くなるではありませんか。

○おそらくは衆参で同じような結果が出るので、与党の力が強くなる。仮に参院で過半数に届かなくても、野党が「問責決議」や「予算関連法案に反対」で与党を締め上げることは難しくなる。この方式で選ばれた首相は、「向こう3年間は代えない」ことにする。こうすれば、任期途中で首相がコロコロ代わることも避けられるのではないか。

○ついでに言えば、現行解釈では憲法7条に基づく解散が一般的となっているが、これを終戦直後のように69条解散に限る、ということに戻してしまえばいい。こうすれば恣意的な解散がやりにくくなり、選挙は与野党の協力の下に3年ごとに行なわれることになる。

○この状態で10年たてば、その間に2回くらいは政権交代もあるだろうから、秩序だった二大政党制が出来るようになるだろう。その上で、与野党が共同で憲法改正を発議すればいい。つまりは過渡的な紳士協定にしておく必要がある。あくまでも憲法改正までのつなぎという位置づけです。

○さらには、ダブル選挙をデフォルトにすれば、選挙に関連する費用も削減することが出来る。どうでしょ、これ。


<2月29日>(水)

○迷走の続く米共和党予備選挙。アリゾナ州とミシガン州の結果が出ました。かろうじてロムニーが逃げ切ったけど、これは難儀でありますなあ。

State Romney Santorum Gingrich Paul
Michigan 41% 38% 7% 12%
Arizona 47% 27% 16% 8%


○自分が生まれ育った故郷、親父さんが知事をやっていたミシガン州で、わずか3%差の勝利。負けてたら「アイツはやっぱアカン」と言われて、ロムニー降ろしが始まってもおかしくない状態でした。なおかつ、モルモン教徒が多くて有利なアリゾナ州でも過半数が取れない。お金も目一杯使っているのに。それでも全国規模の世論調査で、わずかにサントラムの後塵を拝している。いかんですなあ。

○Inevitable(指名は当然)で、Electable(当選可能性がある)候補、というのがロムニーの売りであったはず。それがこんなに苦戦するということは、党内で思い切り嫌われているということ。The Economist誌いわく、「サントラムの取りえはロムニーじゃないこと」ですって。実も蓋もございません。

○これで次の山場は3月6日のスーパーチューズデー。特に注目は、毎度お騒がせのオハイオ州ですな。ここはサントラムがリード。それからジョージア州は、おっとそうだった、ここはギングリッチの地元。おじさん、まだ頑張ってます。

○スーパーチューズデーには10州の票が開きますので、候補者はさすがに全部は回れません。ということで、組織力と資金力に勝るロムニーが有利です。さらにバージニア州は、サントラムとギングリッチが登録できなかったので、ロムニー対ポールの戦いとなります。ここで大差にならなかったら、いよいよ重症だということになりますぞ。

○今後の共和党カレンダーを見ていると、「下手すりゃこれは6月26日のユタ州(モルモン教の中心地)まで行くんじゃねえか」という気がしてくる。うーん、もっと早くに決まって欲しいものです。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki