●かんべえの不規則発言



2001年 3月



<3月1日>(木)

○会社で使っているユードラが今朝、とうとうぶっ壊れました。会社のヘルプデスクの人から、「あんた、こりゃ、無茶な使い方してるよ」とあきれられました。受信ファイルに1700本だかのメールが入っていて、これでは何があっても不思議ではない由。いつも整理しようとはしてたんですけども、つい面倒で・・・・・。その内容を全部、Outlook Expressに移し変えて、即日移行しました。ユードラは1996年ごろから使っていましたが、最近では使う人がほとんどいなくなっているそうです。というわけで今日でお別れ。こんにちは、Outlook Express。

○こういうHPをやっていると、「毎日たくさん書くことがありますね」と感心されることがあります。実は筆者はHP以外にも、メーリングリストや掲示板、個人的なメールを結構こまめに書いておりまして、それ以外にも社内向けの仕事でも書いているわけで(どういう順序だ)、あと、匿名で書いている書評もあったりする。要するにいい加減に書いていることが多いんですよ〜と声を大にして言っておこう。

○今週号の本誌も今夜、せっせと書くつもりです。題して「経済政策大論争」。日本経済に対するエコノミストの議論を、思いきり分かりやすい形で整理してしまおうという大それた試みです。エコノミストというのは弁護士に似ていて、どんなに悪口を言っても良心の呵責を感じなくてよい人種。遠慮のない辛口の話にするつもりです。それでは明日。


<3月2日>(金)

○今日の与野党のプレイは、双方が非常に悩ましい形になって、まるで「ゲームの理論」のような展開でした。こういう政局もめずらしいパターンだと思います。それを面白いと感じてしまう筆者は、やはりどこか変なのかなぁ。

○2001年度予算は午後9時くらいに通りましたが、これは予定の行動。さて、そこで野党がどう出るかですが、「これは暴挙」と言った手前、勢いで不信任案を出すとする。すると今回は山崎&加藤派がおとなしい行動に出るはずなので、不信任案は粛々と否決される。すると与党は、森首相を降ろすに降ろせなくなってしまう。野党も、一国会で一度しか使えない「不信任案」という決め弾を、成算なしに撃ってしまうことになる。つまり双方が不幸になってしまう。まるで「囚人のジレンマ」のような話です。

○今日の昼、筆者のもとに入った情報によれば、与党内ではユーセイヤメチマエが出馬を渋っていて、やはり7月の参院選で泥をかぶってくれそうなのはコーメイフレンドしかない、という感じらしい。ただしシツゲンダイオーが自分で「降りる」と言い出さない限り、後継レースもできないわけなので、悩ましいことに変わりはない。イズモノカゲムシャが引導を渡すのかもしれないが、党内の多元方程式を解くのは非常に難しそう。

○そこで野党の側は変化球を投げてきた。それは月曜朝8時半に不信任案を提出するという手口。土日の間に世論が動き出すことを期待してのこと。森政権に対する新しい(さらに悪い)支持率のデータも出るかもしれない。週明けに「森政権を引き摺り下ろせ」という世論が盛りあがった場合、山崎&加藤派には迷いが生じるし、公明党、保守党も出方が難しくなる。

○これをいみじくも「サンプロ政局だな」と形容した人がいる。日曜午前10時からのテレビ朝日「サンデープロジェクト」で、再び波乱が生じるのではないか、ということ。加藤政局のときは、サンプロを足場に自民党が盛り返した。しかし今度は逆に足をすくわれるかもしれない。そうとなれば田原総一朗氏の腕の見せ所ですな。いずれにせよ今度の政局の動向を、日曜午前のテレビ番組が握っているという点が面白い。

○ある新聞記者が言っていた。「これが来週じゃなくて良かったよ。3月12日(月)は休刊日なんだ」。オイオイ、そんなこと言ってるから、新聞情報は信用されなくなるんじゃないか。それにネットのニュースは休まずにやってるんでしょう? メディアのあり方も問われる今度の政局です。


<3月3日>(土)

○昨日は年に1度の「将棋界のいちばん長い日」でした。将棋には「順位戦」という囲碁にはないキツ〜イ制度があり、プロ棋士全員が1年を通じるリーグ戦に参加して、「格付け」を受けることになっています。A級といえば将棋界最高峰の10人が所属し、ここでのリーグ戦の勝者が名人への挑戦権を得るわけですが、同時に毎年2人が陥落し、B級1組から2人が昇格します。10人中2人が落ちるんだからこれはキツイ。どんなトッププロでも、最初は「まず残留」を目標にするといわれています。

○リーグ戦最終局が昨日でした。戦績はここにあります。谷川浩司九段が佐藤康光九段を破り、見事7勝2敗で挑戦権を獲得しました。しかしファンの注目はむしろ「誰が落ちるか」。残酷な話ですが、A級からB級1組に転落すると年収も3割くらい減になる。今年の場合、俵に足がかかっていたのは4人。先崎学八段、島朗八段、田中寅彦九段、加藤一二三九段。 (日本将棋連盟のHPによる情報公開は進んでますね。ブックマークに入れました)。

○この残酷な1日の面白さは、最近では将棋ファン以外にも知られわたってきた。なにしろ対局が終わるごとに、誰かの首が飛ぶ。しかもほかの対局がどういう結果になったかは、当の対局者には教えられない。将棋を知らなくても、対局者の表情を見ているだけで十分に楽しめてしまう。おかげで「将棋界のいちばん長い日」は、対局日の夜10時からNHKのBS2が放送するようになっている。

○まず加藤九段が森下八段を破って残留を決める。加藤九段は御年61歳。史上最年少の18歳でA級八段になり、「神武以来の天才」と称えられた男が、61歳になってA級とはお見事。生涯のライバルだった中原や米長はもうA級にはいない。この間、加藤九段はなんと4回も陥落し、そのたびに復活してきた。第40期名人になったことよりも、そっちの方がずっと偉いかもしれない。

○次に羽生五冠王が勝って、田中九段の陥落が決定。思えばこの2人、「やってて良かった公文式」のCMに出ていた顔合わせである。昔は「ハブキラー」を誇った田中九段だが、この日は内容の悪い負け方。表情に出やすい人だけに、ものすごく悔しそうな顔。でも2勝7敗では致し方なし。「鬼の棲家」と呼ばれるB級1組へ逆戻り。

○午前0時を過ぎた頃、島八段対先崎八段の対局で、勝てば残留、負けた方が陥落、ということになった。島八段は新人類棋士たちの兄貴分的存在。「おしゃれに凝る棋士」の登場は、この世界においては革命的な事件だった。伝説の「島研」には、無名時代の羽生善治五冠王、森内俊之八段、佐藤康光九段(前名人)が揃っていた。彼らは揃って島八段の歩いた後を追い、島を追いぬいて棋界のトップに立った。乱世の先駆けになったという意味では、明治維新の吉田松陰みたいな存在。それがとうとう絶壁に立っている。

○一方、羽生たちが華やかにスターへの階段を駆け上がるのを横目に、同世代で同程度の才能と目されながら、長らく停滞していたのが先崎学だった。長期停滞の理由ははっきりしていて、いまどきめずらしい遊び人タイプ。なき芹沢は「名人の器」と呼び、師匠の米長に「先崎をオレに預けろ」と迫ったが、当の先崎は「強い頃の芹沢さんならねぇ」とうそぶいたそうだ。寄り道が長かったが、昨年やっとA級に昇った。本来ならば、もっと早くここに来るべき男である。それが1年で落ちたのでは情けない。

○戦いを制したのは先崎。前の日の午前10時から始まった5つの対局が、翌日の午前1時近くになって終わる。来年になったら、またこれが繰り返される。すごいね。これとアカデミー賞は毎年3月の楽しみです。


<3月4日>(日)

○先週、日経の記者に向かって「東証株価がバブル後の最安値だなんて、よくあんなこと恥ずかしげもなく書くよね」と嫌みを言ったら、「あはは、だから遠慮がちに書いてるじゃないですか」。何度も書いていることですが、バブル後の株価の最安値は98年秋です。あの頃は有力都銀の株価が100円とか200円になっていた。それを思い出せば、今の株価がそんなに安いはずがない。バブル後の最安値はあくまで日経平均のことで、TOPIXでみればまだ20%くらい今の方が高い。

○失業率が4.9%になったことも注目されている。これは戦後最悪の数字だが、前に4.9%に達したときは有効求人倍率が0.5を割っていた。つまり仕事を求める人2人に対し、新しい勤め口は1つ以下だった。今はこの数値は0.6くらいある。つまり失業する人も増えているけど、新しい仕事も少しは増えている。今の日本経済で必要なことは、これまでの雇用を守ることではなくて、新しい雇用を生み出して労働力の移動を促すことだ。そういう意味では、「失業率が上昇して、同時に有効求人倍率も上がる」ことは、そんなに悪い兆しではない。

○だから楽観していいよ、とは言わないけども、おかしなデータの読み方をして大騒ぎするのはご勘弁願いたい。それにしても、これだけ多くの人が誤解をしているということは、日本経済が過小評価されているということである。間違ったパーセプションはいずれは修正される。そういう意味では、将来への楽しみは残っている。

○期待のサンプロに森さんは登場せず。こういうことを期待していた人もいたのにね。この調子では、週明けの不信任案は粛々と否決されるのでしょうね。ただしそれと森降ろしは別物だという。このへんの理屈がよく分からない。3月13日の自民党大会に向けて、まだまだ荒れそうだですね。


<3月5日>(月)

○政局も株価も気になるんですが、身の回りのことも大切。なんと赤坂溜池に通うのも残り2週間。3月19日にはお台場新本社に出社することになります。今日はせっせと書類を捨てました。中には10年前のワシントン時代の資料もあったりして。懐かしいけど、そんなもん残していてはためにならない。今日はダンボール箱で5箱くらい。引越し先に持っていく荷物は少なければ少ないほどいい。

○昔、秘書時代のかんべえさんの数少なく特技のひとつに、「書類をなくさない」ことがあった。ついていた「エライ人」が書類をなくす名人だったのである。「おい、あれないか?」と聞かれてすぐに差し出す、というのが当時の重要な務めだった。そういうわけで、書類を分類してきっちり保存をする習慣があった。少なくとも5年前までは。でも、ここ3年ほどですっかり駄目になりましたね。今ではどの書類がどこにあるのか、さっぱり分かりません。性格が雑になったのか、緊張感がなくなったのか、仕事の仕方が変わったのか。

○95年に調査の仕事をするようになってから、テーマごとにA4の紙袋に放りこんで、表にキーワードを書いておくようになった。のちに野口悠紀雄さんが大流行させた「超整理法」と同じ手口をやっていたのである。この紙袋がたくさん溜まっているので、片端から捨てている。なあに、惜しいほどのもんじゃない。少なくとも過去2年間に書いた主要なアイデアはここに残っている。世界中のどこにいても、簡単に取り出せる便利な本棚。全部でわずか4.76メガの情報ですけどね。

○というわけで、雑事に振りまわされる今月のかんべえさんです。同時に、「赤坂のお昼の食い納め」をやらなければならないと気がついた。そこで今日は蘭苑飯店のレバ旨煮丼とギョーザ。若い頃は麻雀荘から出前でこれをよく取った。「これだけボリュームのあるものを、昔はよく食ってたなあ」と思いつつ、箸を取ったらすぐに食べきってしまった。自分でもちょっと唖然。せっかく酒量が減ってもこれではやせません。

○赤坂で過ごすお昼は残り9日。和洋中からエスニックまで、何でも揃った街なんですけどね。天茂のかき揚げ丼は先週行ったけど、鮨兆の「おまぜ」、オリガミのパーコーメン、シェプリのランチ、はやしの親子丼、一龍の定食とキムチ、それにじゃんがらラーメンと考え出すと切りがない。グルメの日々も残り2週間。ご近所の方はお昼のお誘いを待ってます。お電話ください。


<3月6日>(火)

○改革ができない、といわれて久しい日本であるが、どっこい霞ヶ関には若くて、有能で、憂国の心情に燃える官僚がいた。彼は英知を結集し、精魂を傾けて、ついに日本を改革するトータルプランを書き上げた。しかるにそれを実行しようとすれば、霞ヶ関だけでも障害になる政府高官が25人もいた。25人の守旧派が頑張っている限り、彼のプランは絵に描いた餅である。思い悩んだ若き官僚は、右翼の大立て者のところを訪れて相談した。

「君の気持ちはよく分かった。ここはひとつ、私に任せておきたまえ」
さすがは大立て者である。若き官僚の思いを理解し、協力を請け合ってくれた。
しかしよくよく考えてみれば、こんな時代に25人の政府高官を暗殺するなどできるものではない。思い悩んだ右翼の大立て者は、財界の大立て者に相談をした。

「それはすばらしい。ぜひ力になりましょう」
話を聞いた財界の大立て者は、ふたつ返事で答えた。
「しかし25人の守旧派を、どうやって黙らせるつもりかね」
「簡単なことです。彼らには辞めてもらいます。その代わり、私が1人に10億円ずつ払います。そうすれば彼らも文句はないでしょう。私としても、総額250億円で日本の改革ができるのなら、安い買い物です」

すばらしいニュースはすぐに若き官僚の下に届けられた。
しかし、それを聞いた彼は今にも泣き出しそうな声で言った。
「その後、反対勢力が100人も増えたんです」

○このジョーク、ちょっといいと思いません?たぶん英語にしても十分、受けるんじゃないでしょうか。海外でごれをご覧になっている方はぜひお試しください。

○ところでかんべえさんが、このところ毎日確認するのがこのグラフです。これを見ながら、「今度の相場は1200が下限だろう」と読んでいたわけ。いよいよ昨日当たりが底でこれから反転か、という気がしてるんですけど、どうでしょう。当たったら誉めてくださいね。


<3月7日>(水)

○今日のお昼はじゃんがらラーメンへ。赤坂山王下の行列は、今では周囲の風景に自然に溶け込んでいる。天気がいいので、行列で待っていても気持ちがいい。本日の選択はじゃんがらラーメンの角肉卵入り。麺を替え玉するのはパスしたけれど、めんたいご飯をぶちこむ。あっという間に食べ終えてしまう。昔はよく胃にもたれたのだが、今日はなんともなし。この調子だから、せっかく酒を止めてもまた体重が戻りつつある。

○ふと気がつくと、これは今はなき山一證券赤坂支店のM君が得意としていた食べ方である。ちょうど外堀通りを挟み、じゃんがらの反対側にあった。M君はチャートの研究をしていて、「今の為替はどうなの?」などと聞くと、よく会社あてに面妖な線がたくさん入ったファックスを送ってくれた。株をやる人は、「チャーチストは全部詐欺師である」という人と、「Chart knows everything.」という人と、見事に二通りに分かれる。筆者は理屈は知らないのだけど、なんとなく後者なのである。M君、97年末に最後に会ったときは、「今度は証券以外に転職します」と言っていたけど、今はどうしているんでしょう。

○夜は和風イタリアンの「和伊の介」で大学の同級生4人で。赤坂のイタリアンは、鉄人・坂井の「ドンタリアン」など、ある時期は急増したものの、ほとんどが淘汰されてしまった。今ではグラナータなどの老舗しか残っていない。和伊の介は比較的新しく、低価格路線と和風アレンジが成功し、お昼は行列ができる人気店である。今夜もひとり頭5500円。ワイン3本開けているので上出来といえようか。

○同級生は製造業、金融、製薬、商社の組み合わせ。なにしろ全員が不惑に達しているので、非常に品格の高い会話に終始する。こんな感じである。

・政治→くだらん。
・仕事→転職は大変だった。
・大学の先生の悪口→ナカタニはともかく、ヨネクラはありゃなんだ。
・資金運用→中途半端に投資信託なんぞ買うな。
・子供の教育→完全にお手上げだ。
・女性関係→いっぱいお金を使っている人もいるらしい(元気だなあ)。

○見事に中年オヤジの会話ですな。以前、この不規則発言で「40になると自分の人生、ほかには才能がないと分かるから、迷う余裕がなくなる。だから不惑というんだ」という話を書いたら、覚えてくれている人が結構多い。やっぱり身に染みるんだね。実はこの話、尊敬する塩野七生さんから聞いた受け売りである。そういえば筆者も、聞いた瞬間に唸りました。

○赤坂で過ごすのは残り7日。明日はどこへ行く?


<3月8日>(木)

○本日のお昼は、プライベートバンカーのKさんと一緒にタイ料理のラポー(Rapport)。野菜カレーにトムヤムクンをつけてちょうど1000円。10人もいれば満杯になるような小さな店で、職人気質おばちゃんが一人で切り盛りしている。味が本格的で、夜のコースなどは格安。80年代からのつきあいですが、昔はそれほど有名じゃなかったので、よく貸し切りパーティーをやった。ここ数年は、夜の予約はずうっと先まで埋まってしまうようになったので、とんとご無沙汰。願わくばこれ以上流行らず、大事にしておきたい店。

○さて、当社の引越しについて。今の溜池の本社ビルを引き払うのは3月16日(金)。当日の昼に社内LANが切られ、夕方には電話とファックスが切れます。午後6時には社員全員が退出しなければなりません。その後は日通さんがすべての荷物を搬出してくれます。3月18日(日)は当社子会社の社員が出社して、全社のノートパソコンをつなぐという気の遠くなるような作業。そして3月19日(月)に社員はお台場新本社ビルに出社するという算段。

○社員はそれまでにせっせと荷物を詰めなければならない。要らないものから順に梱包し、決められたラベルを貼っていく。今日は絵画や置物などの調度品の類を日通さんが運んでいった。それから自動販売機の類がほとんど撤去された。だってあと実働6日ですからね。とにかくどんどん片付けていかないと、本当にこのビルを空にできるのか不安になってくる。

○かんべえさんの職場には小さな図書室がついている。ここが有していた資料に、膨大な他社の「社史」の類があった。渋沢の倉庫に預けてあった分を足すとなんとダンボールで29箱。「これ、もう捨てようや」ということになり、でも研究資料として欲しがる人もいるかもしれんと思い、大学のOB会のメーリングリストで声をかけてみた。すると経営学の大学院生たちがこれに応じてくれた。「捨てられるものなら全部頂戴します」。というわけで、本日の午後、学生3人がワゴン車で社史を引き取りに来てくれた。ありがたし。

○ところでこの学生たちが、あにはからんや昨日の当欄で悪口を書いた米倉誠一郎教授の門下生たちであった。前言撤回。米倉先生は教育熱心で立派な先生です!

○でも米倉先生、ハーバードビジネスレビューの向こうを張った経営雑誌なんか出しちゃって、大丈夫ですか。あの『プレジデント』誌は小学館に身売りされちゃったから、自社の経営に失敗するような経営雑誌なんて信頼度はゼロ。『一橋ビジネスレビュー』誌も売れなかったらつらいですぞ。もちろん、ウチの図書室では購読してますけどね。(←でも読んでない。あはは)。

○ところでプレジデントといえばこの人。彼のHP「日本のカイシャ、いかがなものか」では、明日から「四酔人ネット座談会」の連載が始まります。土日以外の毎日連載で、登場する4人はこの人この人この人、それにかんべえ。不規則発言では1月10日にチラッと書いた、大塚での鍋を囲む飲み会の記録です。自分でサイトを持っている4人が、ネットによる情報発信をテーマに談論風発。というのはウソで、酔いの回りと共に身内の罵り合いに終始したという座談会。かんべえさんはとっても口が悪いです。乞うご期待。


<3月9日>(金)

○本日のお昼は
キャピトル東急オリガミ。有名なところなんで、いまさら説明することもありませんが、ちょっとリッチな気分を味わえる場所です。以前、ここに昼飯を食べに来て、ちょうど宿泊していたマイケル・ジャクソンを見かけたことがある。昔はヒルトンで、ビートルズなんかが泊まった話は有名です。官邸と国会に近いので、政治家の会合にも良く使われる。お昼時にオリガミを見渡すと、たいてい一人くらいはバッジをつけた人が見つかります。

○午後は某銀行にお勤めで本誌愛読者のYさんが、米国と欧州のエコノミストをつれて意見交換に来社。それぞれ米国経済、欧州経済についてのプレゼンテーションを拝聴する。当方としては、黙って座っていたところにご馳走が届いたようなもので、Yさんには深く感謝。日本の現状について意見を求められ、非常に答えにくかったけれど、ここ1〜2週間が非常に重要な分かれ目ですよ、てなことをお話しする。

○今日の説明では、米国経済も欧州経済も比較的強気の見通しだった。どちらかといえば後者に説得力を感じたな。新通貨ユーロの導入は偉業だと思います。20世紀の最後にあんな成功をさせたのだから、21世紀の欧州は期待できるんじゃないでしょうか。逆に米国は「U字型回復説」が増えているけれど、筆者はカタカナの「レ」みたいな形になると思っている。つまり90年代前半の日本経済のように、力の弱いゆるやかな回復過程になるのではないかと。

○夜は岡崎研究所のパーティーへ。久しぶりだったせいもあってか、いつもにも増して盛会で、まことに多士済済。金美齢さんがいらっしゃったので、「ただ今『日本よ、台湾よ』を読んでおります」とご挨拶する。驚いたことに、藤井厳喜(昇)さんに5年ぶりくらいでお目にかかる。そうそう、安倍官房副長官が来ていたけど、総理が辞める辞めないといってる時期なのに大丈夫だったのかしら。

○最近のワシントンでは、共和党系の知日派がごっそり政権に入ってしまった。だから今ワシントンに行くと、民主党系の人にしか会えない、という話を聞いた。そうでしょうなあ。アーミテージ・レポートの関係者だけでも、16人中5人がリクルートされたからね。ただし政権入りした人たちは議会承認が済んでなかったりするので、「えひめ丸」問題の火消し役には動けない。今回の事件では米国側の対応の悪さが目に余るけれど、ひとつには政権移行期であることが尾を引いていると思う。

○ブッシュ・金大中会談のことがあちこちで話題になっていた。対北朝鮮政策をめぐって米韓の意見が割れている様子だが、「あれは歌舞伎プレイ」(ジム・アワーさん)という声もあれば、「深刻な亀裂」(武貞秀士さん)という見方もある。どちらとも解釈できるけど、ほっておくと周囲が疑心暗鬼になってしまう。こういうときは日本から、「日米韓三カ国外相会談」を呼びかけたらどうだろう。今ならいいタイミングになると思うのだが。でも外務省は機密費問題に対する組織防衛が忙しくて、それどころじゃないだろうな。残念ながら。

○てな感じで人に会うたびに、お台場の住所が入った新しい名刺を配っています。溜池に通うのは来週1週間を残すのみ。


<3月10日>(土)

○本日は仕事の最中に拾った暇ネタをご紹介します。

○森永のアロエヨーグルトが売れてるのをご存知でしょうか。白に緑のパッケージで、スーパーのヨーグルト売り場ではかなり幅を利かせています。ヨーグルトは典型的な成熟市場ですけど、久々のヒットになりそうです。これの原料のアロエは、かんべえが勤めている会社が全量をタイのチェンマイあたりから輸入しています。ご想像通り、タイ産のアロエなんぞ原価は限りなく安いわけでして、商社としてはかなりオイシイ商売です。もっとも、調子に乗ってアロエの栽培拡大に乗り出したりすると、昔のナタデココのような経験もありますので、なかなか難しいところもあります。

○タイにおいては農産物が重要な輸出品目で、とくに国際競争力がのあるのはトロピカルフルーツです。ただし売り先を日本の「たらみ」にするのと、米国の「ドール(Dole)」にするのではエライ違いです。両社の果物入りゼリーを比べると一目瞭然。「たらみ」のゼリーでは、数種類のフルーツがほとんど原形のままで入っています。大ぶりの容器のふたはピンと張っていて、中はぎっしり詰まっている感じです。一方、ドールのゼリーは、小ぶりの容器にパインなどが切り刻んで無造作に入っていて、ふたの部分はへこんでいます。

○結果として両者の末端小売価格は、「たらみ」は1個150円程度、ドールは5個で2ドル50セントとなります。でも2つを並べてみたら、値段は3倍しても「たらみ」の方が魅力的に見えます。日本市場は顧客の要求水準が高いので、商品は高品質・高価格になりやすい。出荷元としては、「たらみ」向けに納入するフルーツは、高く売ることはできるものの、1個1個形を崩さずにきれいにむいて加工しなければなりません。「アジアの商品を日本向けに売りたい」という声はよくあるけれども、ハードルは結構高い。

○こういうモノの動きが見える現場は、興味の尽きないものがあります。貿易データだけ見て「日本は閉鎖的だ」などというのは政治家やエコノミストの領域で、商売人は「売れないのは自分が悪い」と考えなきゃいけない。タイ産のアロエをヨーグルトの原料に使うというのも、誰かが思いついて、努力の末に成功させたことなのでしょう。それにしても食べ物にかける日本人のこだわりは相当なものがあります。


<3月11日>(日)

○今朝のどこかの時点でアクセス数が5万件を越えたようです。ご愛読に感謝。最近になって急に読者が増えた感じで、1日平均200件、月曜はとくに多くて500件くらいでしょうか。おかげで結構な緊張感を味わっています。

○もっとも、「サラリーマンが個人でやっている政治経済の解説サイト」ということでは、偉大な先人である師匠がいて、先方は「1日1500件」ですから足元にも及びません。ただ数が多いだけじゃなく、先週の日記にあった速水日銀総裁の講演に対する分析など、あれを読んで初めて日銀の真意がわかったという人が少なくないと思う。

○ところで、「日本のカイシャ、いかがなものか」で始まった「爆笑!四酔人サイト問答」は、師匠やかんべえのように自分でサイトを運営(それもほぼ毎日)している4人が集まり、一杯やりながらネットに関する論議をするという趣向です。この4人は、「既存のメディアには限界がある」と思っている点では見事に一致しているのですが、「ネットによる情報発信のあり方」についてはちょっとずつ見解が分かれています。

@まず、師匠は「既存のメディアのピンぼけぶりは目に余る。彼らの自己改革を促すために、ネットの側から批評してやろう」というアイデアを持っている。

Aかんべえはそれに反対はしないんだけど、「読者は賢明だから、日経やNHKの限界をよく知っている。そういう抜け穴を埋めるのがサイトによる個人の情報発信なので、既存のメディアがどうなろうがほっとけばいいじゃない」と思っている。

Bそうは言ってられないのが大手出版社に身を置く田中さんで、メディア内部に危機感がないのを嘆きつつ、自分のサイトでアンケートを実施したりして、いわば体制内改革派の立場を取っている。

C最後にこの企画の胴元である岡本さんは、出版社を辞めちゃったほどなので、いちばん過激な意見の持ち主。「メディアはネットも含めた再構成が必要なのだけど、それはとてもできそうにないし、それ以上に今の日本全体が駄目になっている」という見方。彼のHPは、いわば日本全体の覚醒を求める場所、という位置付けのようだ。

○こうしてみると、皆さんそれぞれに違う見解や動機付けをもって、日々サイトの運営を行っている。でも読者が増えたり、反応があったりするとうれしい、というところは全員同じようだし、ついでにサイトを運営する仲間ができるというのも、これはまた楽しいことなんです。そのうちまた都内のどこかで四酔人ができ上がることでしょう。


<3月12日>(月)

○本日のお昼は議員会館の地下食堂で国会弁当。エビフライ、から揚げ、野菜の煮物などを盛りあわせ、大盛りご飯が加わって850円。今までは近かったからちょくちょく来たけど、今後はちょっと難しくなります。ふと見れば、土井たか子さんが大盛りのスパゲッティを食べてましたね。知り合いの議員秘書の方々に転居のご挨拶。なんとなく疲労感が漂っているように思えるのは、ま、当然か。参議院では「今夜は遅くなりそうですね」との声を聞く。明日は問責決議案をいきまっせ、ということなんだろうけど、野党も少々ダレ気味。

○夜はきわめつけの政治オタクが集う勉強会。午後7時から10人集まって延々と話し続け、2次会は「吉崎を赤坂から追い出す会」に場を変え、結局11時半まで。これだけ議論して見通しがつかない今の政局は、やっぱりきわめつけの視界不良といわざるを得ません。

○「総裁選の前倒し」という形の「事実上の退陣宣言」というのは、すっきりしないことおびただしく、これでは今日の株価が下げるのもむべなるかな。あとは明日の自民党大会がどうなるかですが、少なくとも「ポスト森は総裁選で決まる」ことがはっきりして、野中後継の可能性が低下した、という指摘がありました。案外と小泉総裁で一本化して、YKK全面復活内閣になるのかも。もしそうだとすると、これは森さんの粘り勝ちということになる。経世会支配もそろそろ限界でしょうか。

○新首相誕生には締め切りがあるらしい。4月29日の叙勲の際に首相の名前がないと困るから、4月25日頃には新首相が誕生していないとまずいのだそうだ。以下に今後の主要政治日程をまとめておきましょう。さて、どうなる。

3月13日(火) 自民党大会
3月19日(月) 日米首脳会談
3月25日(日) 日露首脳会談

4月上旬    予算関連法案成立
4月中〜下旬 自民党総裁選→新政権発足

6月24日(日) 東京都議会選挙
6月29日(金) 通常国会閉幕
7月20〜22日 ジェノバサミット
7月29日(日) 参議院選挙


<3月13日>(火)

○本日のお昼は炭焼き料理「はやし」名物、日本一の親子丼。お昼はこれだけで勝負している。親子丼は@たまねぎを使うもの、A長ねぎを使うもの、B卵と鶏肉だけのもの、の3種類があり、後へ行くほど高級な感じがするものだけど、はやしの親子丼はAのパターンである。普通の親子丼の上に、さらに卵がもうひとつ乗っている。全部で3つは使っているね。コレステロール値の高いかんべえさんだが、今日はしばしの食べ納めなので大盛りを注文する。1000円。

○午前中は名刺の整理。1980年代の頃の名刺などは、ほとんど意味はなくなっているのだけど懐かしいから捨てられない。でも、そんなこといってられないのでエイヤア、で目をつぶって捨てる。結局23センチ分を捨てた。それでもまだ名刺箱4つが満杯状態である。結局、リストラできたのは2割弱に過ぎない。主要な連絡手段が電話と手紙からe-mailになっているので、名刺の保存は以前ほど重要ではなくなっている。それでも古い名刺やそれに書きこんだメモなどは、往時を振りかえる格好の資料なのでなるべく残しておきたい。

○午後は昨日に引き続き、新しい連絡先の入った名刺を配って回る。商工会議所、経済同友会、経団連。アポなしで次々と知人を訪問し、ちょっとずつ雑談しながら、「来週からお台場なんですよ〜」と触れ回る。同じ話を何度もしなければならないのがつらいけど、やっぱり人に会うのはいいですね。こういう案内をe-mailで済ませてしまうのはもったいない。相手側の近況もわかるし、新鮮な話がゴロゴロ転がっている。

○会って話すことは絶対的に必要なことだと思います。e-mailでしょっちゅう連絡を取り合っている相手でも、互いに意外な誤解をしていることがあるものです。相手の職場を見る、というのも発見があっていい。やはり人間関係はデジタルよりアナログ。お台場に移っても出不精にならないよう、気をつけましょう。


<3月14日>(水)

○今日のお昼は会社のすぐ裏にある「和喜」。たぶん、赤坂にいた間にいちばんたくさん通った店。いつものイワシの天ぷらに、カレイをおまけしてもらって1000円。昼時のオヤジはいつもどおり調子がよく、「寂しくなるね」と声かけてくれるけど、社内でファンの多い店なので内心は不安なはず。「昼間にこっちで用事作って、出て来るよ」と言っておく。ついでに和菓子の「塩野」に足を運び、どら焼きを買って帰って職場の女性へのホワイトデーにする。「塩野もこれが最後ですかね」と言われる。

○今週は本誌をお休みしますけど、もし書くのであればなんといっても、昨日2000の大台を割ったナスダックを取り上げるべきでしょうね。1年前の最高値5048から、いわゆる「半値八掛け」の水準を割ってしまったので、この調整は相当にドラスチックなものになりそうです。普通、大きな株価の下げは一直線には進まないもので、ナスダックは何度も反騰しながら落ちていくだろうというイメージを持っておりましたが、予想の修正が必要なようです。

○ちなみに今週のThe Economist誌がこんな記事をカバーストーリーにしている。題して「株式リスクに目を覚ませ」。冒頭の文句はこう。「読者諸兄に乞う。ナスダック最高値から1周年になる3月10日に1分間の黙祷を捧げられんことを。かつてはニューエコノミーのかがり火であったこの指数は、過去1年で55%も下落した。・・・・・ようこそベア市場へ。それも数十年ぶりの超大物熊の登場だ」。こないだの「森辞めろ論」といい、最近のThe Economist誌はタイミングが冴えてます。

○この記事の面白い点は、「90年代はインターネット時代の始まりというだけでなく、世界が株式を発見した10年だった」と定義していること。株式を保有することは、富を拡散し、経済の自由を促進し、行動的な株主を育成する。こうした株式文化は、アメリカを中心に全世界に広がった。日本もこの間に株主重視経営が急速に広まった。ところが株価が下落することで、世界中で勃興しつつあった株式文化はどうなるのだろうか、と問いかけている。同誌の答えは条件付きのイエスだが、もちろんそんなことは分からない。

○ところでナスダックの下落は、相場全体が下がったというよりも、ごく特定の「IT銘柄」が破壊的な打撃を受けているからと考えた方が分かりやすい。マイクロソフトやデルも1年前に比べれば約半値になっているが、もっとすごいのはこういう企業である。まずアマゾンドットコム。1年前に比べて約7分の1です。次にヤフー。軽く10分の1ですね。次にこれはすごいぞ、プライスラインドットコム。う〜ん、50分の1くらいですね。要するにアメリカでも光通信やソフトバンクのような銘柄が続出したので、ナスダック全体が足を引き摺られている。

○98年頃に、日本でも「ビジネスモデル特許」が大騒ぎされていた。筆者もいちおう調べたけれども、プライスラインドットコムの「ネットを使って行う逆オークション」が何で特許になるのか、さっぱり理解できなかった。やっぱり素人が異常だと思うことは、普通の世界では通らないものなのかもしれません。3年たったら過剰な期待は打ち砕かれ、かつて100ドルを越えた株価は2ドル台となりました。ナスダックの下落はイコール、ネットバブルの崩壊と考えれば、ダウ30種平均があんまり下げていない理由が分かりやすい。

○「なーんだ、問題なのはごく一握りの会社なのか」といわれれば、おそらくその通り。「じゃ、米国の株式市場全体は心配いらないね?」といわれれば、それはちょっと違うかもしれませんぞ。日本だって去年の今ごろ、光通信やソフトバンクが暴落したら、投資信託が軒並みやられて、結局は株式相場全体に影響が及んでしまった。プライスラインドットコムみたいな銘柄を買ってしまった投資家は、その後の行動はかならず慎重になる。バランスシートも悪化するので、その償却も必要になる。どう考えたって、株価がこれだけ下げて、経済が無傷ではすまないんです。

○さて、問題は日本株です。日本株市場のプレイヤーは、今や半分が外国人投資家です。ナスダックに連れ安する形でTOPIXも1200割れしたので、先週の筆者が書いていたような「3月5日ターニングポイント説」はもう成立しません。底値は近いと思うのですが、相場が好転するためには一種の「心理学」が必要だと思います。経済学者のアドバイスはもういいから、国民の心理がちゃんと読めて、一芝居打てるような政治家が出てきて欲しいものです。


<3月15日>(木)

○本日のお昼はTBS会館地下の「グラナータ」。赤坂ではしぶとく生き残っている老舗のイタリアン。お昼の2色パスタセットが1200円。元上司のNさんは、「イタリア人のウェイターと仲良くなって情報を取る」ほどのイタリアン通だったが、「どの店がいいか」と聞くと決まって、「いろいろあるけど、グラナータは捨てたもんじゃない」と答えたものだ。デザートがいまひとつかもしれないが、値段や客あしらいの的確さなどを加えれば水準は高い、ということのようだ。Nさんは現在、長年の念願がかなってミラノにいるが、「狂牛病のおかげで牛が食えない、なんとかしてくれ」などと言っていた。お気の毒である。

○さて、一昨日の自民党大会に関する噂話をいくつか聞き込みました。これを聞く限り、自民党に明日はありませんな。

●着席順であった当日、壇上近くに用意された議員用の席に、「日本の明日を創る会」メンバーが一列に陣取っていた。そこに遅れてやって来た加藤紘一氏が、「おっ、ここは不穏分子が集まってるな、どれ、僕もその後ろに座るかな」と言いながら着席した。後ろに座った加藤氏に対し、若手議員の一人が振り向きざまに「加藤さん、ここにいると流れ弾に当たるかもしれませんよ」と冷やかすと、加藤氏は無言のまま、すごすごと一旦着席した席を立ち、場所を移動した・・・・(情けない!)

●党大会で緊急経済対策会議の発足を宣言した森総理が、官邸に戻ると対策会議のメンバーが総理の帰りを待っていた。そのメンバーに向かって森総理、開口一番、「お前らは党大会をサボってこんなところに隠れてたのか」  ・・・・(おいおい)

○先週号の本誌でも書いたことですが、自民党は世代交代をするか、さもなくば政権交代に追い込まれるかのどっちかである。ところがなんという緊張感の無さか。河野太郎氏の「ごまめの歯ぎしり、3月13日号」には、以下のようなくだりがある。

●緊急経済対策を与党でまとめたものの税制に関する部分について、党税調の最高顧問である山中貞則代議士がクビを横に振った。総理が宮沢、柳沢、麻生の三大臣からなる対策本部を作り、与党三党が政調会長レベルで合意しているのに、党税調の最高顧問一人がこれを止めてしまうといういまのシステムは明らかにおかしい。第一、税制調査会は、政務調査会の中の一調査会にすぎないではないか。山中最高顧問は、総務会のメンバーでもあり、総務会は全員一致が原則だから、税調と総務会を握ってしまっていることにもなる。誰がいったい政策の責任者なのか。

○山中貞則さんといえば、税制のプロとしてつとに有名。でも上司をすっとばして党の機関決定を覆すのは明らかに行き過ぎ。これでは自民党は、組織としての体をなしていないではないか。以下は昨日の産経新聞の報道から。

●緊急経済対策は、証券市場活性化のための個人投資家に対する優遇税制創設が柱だが、山中氏は十二日夜、「あちこちでギャーギャー言っても聞こえない。党税調は十一月まで開かない」とはねつけた。・・・・・背景には、「税制のプロ集団」を自任してきた自民党税調と、税制についても三党協議が必要と主張する公明、保守両党とのあつれきが根底にある。自民党の亀井静香政調会長も「税調は政調会長の下部組織のはずだ」と他の与党に同調するものの、山中氏は江藤・亀井派の長老だけに対応に苦慮しそうだ

○あの亀井さんにも苦手がある、というところが笑えるといえなくもない。しかし、それで証券市場活性化ができません、ではシャレにならないではないか。

○わざわざ自民党大会に出席したT氏は、「1万人の観衆が沸いたのは、保守党の扇千影党首が壇上に立ったときだけだった」と教えてくれた。自民党若手もだらしがないし、やっぱり今の日本じゃ男は駄目なのか。こうなればポスト森は「モトヅカジェンヌ」でもいいけど、その場合は「参議院議員の総理大臣」(前例なし)に加えて、「芸名の総理大臣」が誕生してしまう。諸君、いいのか、そんなんで。


<3月16日>(金)

○今日のお昼は「ラ・カンバーニュ」へ。前菜に鴨のテリーヌ、メインにビーフシチュー。大盛りのデザートとコーヒーがついて2000円なり。おなか一杯。3月7日から「赤坂のお昼シリーズ」を続けてきましたけど、それも今日まで。これでまた太ったような気がする。行きそびれたお店も多かった。焼肉系や中華に行かなかったね。ちなみに、赤坂最後のお昼には楼外楼飯店を選んだ人が多かったらしく、「激混み状態」だったそうだ。ありそうな話である。

○早めに準備をしてきたので、引越し作業は比較的簡単に完了した。自分の分は午前中に終わり、職場全体も午後3時にはめどがつき、あとは軽く乾杯して4時半に仕事納めにした。午後5時半には電話とファックスが切れ、午後6時からは搬出作業が始まる。あとは日本通運さんにお任せ。月曜朝にお台場の新本社ビルに出社すると、無数のダンボール箱を開ける仕事が待っていることになる。

○考えてみれば1984年の春に今の会社に入ってからもう17年。海外に赴任していた時期と出向していた時期の3年を除くと、丸14年もこのビルに通っていたことになる。部署は変わっても、いつもビルの北側に面した場所に机があったので、窓の外にはいつも国会議事堂と議員会館と首相官邸が見えた。いつもこの景色を見ていたことが、『溜池通信』誕生とは無縁でないと思う。新しいオフィスでは、筆者の職場は海に面した側の16階。今度は別の種類の絶景を見ることになりそう。

○お台場というところは、某テレビ局の方によれば、「道も混むし、いい飲み屋はないし、ガキは多いし、病院はないし、ロクなもんではありませんが、オフィスの窓から船が航行するのも見えますし、住めば都ですよ」とのこと。なんという的確な表現。お隣さんとして、これからよろしくね。


<3月17日>(土)

○今週読んだ2冊の本についてご紹介。まずは『日本よ、台湾よ』(扶桑社、1400円)。台北生まれの金美齢さんと、周英明さん(東京理科大教授)の人生の記録。お二人は昭和30年代半ばに日本に留学し、台湾民主化運動で知り合って結婚する。普通の日本人にとってこの上なく平和なその後の40年は、台湾の国民党に対する「反逆者」となった二人にとっては、明日をも知れない日の連続だった。本書は祖国と向き合って生きた厳しい人生の軌跡であり、ギリギリの人生を生きた男女の青春譜であり、夫婦愛の物語でもある。

○本書の著者の二人は、いずれも故郷・台湾を離れて日本での生活を選択する。外国人にとってお世辞にも開かれた国とはいいがたいこの国だが、二人は日本について初めて自由を得る。そのまま故郷を振り返らぬ人生も選び得たはずなのに、結局は民主化運動に身を投じる。そのきっかけになったのは、台湾人留学生の手による『台湾青年』という同人誌であった。一冊の雑誌が人生を左右することもある。金美齢さんと、周英明さんはこの雑誌を通じてお互いを知り、結婚する。

○台湾に関する情報は少ない。なぜ彼らが中国本土を嫌い、日本びいきなのか。なぜ台湾には残留孤児が出なかったのか。民主化と陳水扁政権の誕生がいかに重要なことなのか。本書は台湾と台湾人のことを知る絶好の本だと思う。日本はかつて植民化した台湾を、誤解したり、裏切ったり、無視したりしてきた。今でもマスコミは、台湾を「国」と呼ばないように注意深く言葉を選んでいる。しかしどう見たって親しみがわくのは、「大陸中国」よりも「島国中国」の方だろう。できれば誰か本書を映画化してくれませんか。

○続きましては『政治とは何か 竹下登回顧録』(講談社1800円)。政策研究大学院大学の御厨貴教授が中心になって行っている「オーラル・ヒストリー」シリーズの一環。後藤田正晴氏の『情と理』をご記憶の方は多いと思うが、引退した政治家にインタビューを行い、貴重な証言を残しておこうとするもの。「平成の語り部」を自認する竹下氏が、みずからの半生を軽妙に語っている。

○とはいいつつ、たいしたことは書かれていない。プラザ合意の内幕にしても、ガックリするほど中身がない。ベーカー財務長官と竹下蔵相は本当にあの程度の認識であの大英断を行ったのか、と思う。竹下さんが気にしているのは、「XXさんは大臣になってすぐ辞めさせられた。これは損失補填しなければと思い、その後のXX内閣でXX大臣にしてあげた」みたいなことばかり。「竹下神話」はかなりの部分が誤解によって膨れ上がったものだったといわざるを得ない。

○もっとも竹下さんのことだから、とぼけていたことも多かったはずだ。田中角栄のことに対しては言葉少なになる。竹下派7奉行への言及も少ない。天皇崩御やリクルート事件についても同様。オフレコで語ったことも多かったはず。「何を語らなかったか」もある意味では貴重な証言といえる。とにかく楽しく読ませてもらいました。

○上2冊のうちどちらかは、『財界』の書評でも取り上げることになると思います。つい最近、「書評の本棚」をリンクしてくれた方がいらっしゃいます。題して「学びに役立つリンク集」。http://www.roy.hi-ho.ne.jp/shomoku/LINKGRP.htm 書評というのは結構ニーズがあるもんですね。お暇な方はお立ち寄りください。

○新しく「お台場リンク集」を作ってみました。明後日から通う新しいオフィスはどんなところか。通勤ルートは、柏―(常磐線)―新松戸―(武蔵野線)―新木場―(湾岸副都心線)―東京テレポート、という複雑な経路をたどります。昨日、新しい定期券を買ったら、3ヶ月でなんと7万7410円もしました。さてさてどうなることやら。


<3月18日>(日)

○今週も日曜午前の政治モノ番組を見ませんでした。代わりに見たのはNHK将棋トーナメントの決勝戦。先週もそうだったんだけど、羽生五冠が出ているのでファンとしては見逃せない。とくに今日の終盤戦は見応えがあり、筆者の棋力では理解不能な局面が続いて興奮しました。途中では明らかに久保六段が押していたのに、気がつけば逆転。しびれましたね。やっぱり羽生五冠は強い。NHK杯はこれで6回目の優勝で、「決勝戦に出て負けなし」というところが彼らしい。でも見ると髪の毛が立っているんだな、これが。

○羽生五冠のような超人的な強さを堪能できるのは、勝負ごとの世界に接する楽しみの最たるものでしょう。それ以外の世界では、人間は偉大でも立派でもないことが多い。「だから私は新聞をスポーツ欄から読む」と言ったのはルーズベルトだったと思うけど、とくに最近の政治の世界の堕落ぶりはひどすぎます。日曜の朝から、自分勝手な詭弁を聞かされるのもいい加減飽きた。いくら政治オタクでも、最近はサンデープロジェクトも見る気にはなりません。

○今の政治に対する嘆き節は、単なる愚痴話や「ないものねだり」論も多いので、あんまり感心することは少ないのですが、今月号の『フォーサイト』の巻頭レポート「あえて書く自民党への弔鐘」(田勢康弘)は力作だと思いました。昨日の当欄で取り上げた竹下登回顧録について、「日本の政治を30年見続けている筆者にとっても、この本は衝撃的だった」という。なぜなら「竹下が語る政治とはすべからく人間関係なのである。外交も内政もすべて気配り、目配り、見かえりの人間関係なのである」。う〜ん。

○「中曽根康弘までの総理は他の国の指導者と比較してもさほど遜色はなかった」と、田勢氏はいう。だったらなぜこれだけ人材の質が低下したのか。政治の危機ではなく、政治指導者が枯渇していることが危機なのである。「出るのは溜息ばかりだが、いつまでもこのような情けない国家であるはずがない、というところにわずかな希望をつなぐしかない」というのが田勢氏の結論。寒いね。

○午後の阪神大賞典では、ナリタトップロードが復活ののろしを上げるレコード勝ち。やはりスポーツの世界はいいですね。ポスト森なんて、野中でも野田聖子でも好きにしてよ、という気になってしまう。問題はNHK杯将棋トーナメントが終わってしまったので、来週の日曜午前は見るものがなくなってしまったこと。天気が良ければどっかに出かけちゃうよ。おっとその前に千葉県知事選挙の投票に行かなければ・・・・。


<3月19日>(月)

○初めてのお台場への出勤。柏―(常磐線)―新松戸―(武蔵野線)―新木場―(湾岸副都心線)―東京テレポート、というルートを選ぶと、この間に中山競馬場(船橋法典)と東京ディズニーランド(舞浜)を通過することを発見。この2つに定期券で通えるということは、楽しいような怖いような・・・・。どちらも高くつく娯楽だからねえ。通勤途中で葛西、お台場と2つの観覧車を目にするのもユニーク。とにかく、そこらじゅうが観光地なのである。

○新木場駅で臨海副都心線に乗りこんだら、車内で「いやもう、エライことになりましたなァ」という声が聞こえた。振り向くと案の定、弊社の社員であった。新しい環境に飛び込むというのは緊張するものである。ふと「変われるって、ドキドキ」というカローラのコピーを思い出す。お台場についてみると、なるほど西も東も分からない。でも、たしかにフジテレビの派手なビルの隣に、同じ高さで立っているのが弊社である。さて、どこが入り口なんだろう。

○当たり前のことだが、初日の新本社ビルは引越し作業が終わっていないので、そこら中がダンボール箱の山である。落ち着いて新しいビルを楽しむという雰囲気ではない。食堂などのファシリティもまだオープンしていない。それにしても、16階にある筆者のオフィスはすぐ外がレインボーブリッジで、東京湾全体を見渡せる好位置。とくに夕日が沈み始めると湾全体が黄金色に染まる。絶景である。反対側のオフィスでは観覧車が見えたりするのだが、景観の勝負はこっちの勝ちのようだ。

○さて、オフィス全体のダンボール箱をせっせと開ける。仕事用の資料などたいしたことはないのだが、図書室の本をすべて1日で出そうとしたから大仕事になってしまった。経済白書や通商白書など、昭和40年代の頃から保存してあるのである。やれ官報だのIFSだの切りがない。新聞や雑誌も生半可な量ではない。それでも大勢で頑張って、夕刻になってようやくすべてが片付く。大消耗。

○日米首脳会談やら金融政策決定会合やら、世の中はいろんな動きがあるのだけれど、今日の筆者は肉体労働で終わってしまいました。明日はもうちょっとマシなことが書けるといいのですが。


<3月20日>(火)

○クリントンがホワイトハウスを去るに当たって、自分の任期中の成果を部下にまとめさせた。すると対日政策に関する部分では、外交スタッフからこんな声が上がったという。「対日政策における大統領の成功とは、大統領が会った7人の日本首相をすべて言えることです。失敗は、大統領がその全員に会わなければならなかったということです」。・・・・念のために言っておきますが、これ、作り話じゃありませんからね。

○クリントンの手法を否定したいはずのブッシュ大統領も、この流儀は守らなければならないようである。もう「死に体」の森首相にちゃんと会ってくれるのですから。ある米側関係者は「これ以上、断る理由がなくなってしまった」と言っていた。当初、日本政府は2月の土日に訪米することを働きかけていたが、米国側は「ブッシュ大統領は週末に業務をいれない」ことを理由に抵抗していた。英国ブレア首相だけは例外で、週末にキャンプデービッドの別荘に招かれて会談した。これは米英の特殊な関係もさることながら、米国大統領と「遊び半分」の関係を持てるブレアさんの力量がお見事というべきであろう。

○余談ながら、主要閣僚が欠席すると野党が「国会軽視だ」と言って騒ぐので、日本の首相は国会開催中の平日に外交日程を入れられないのである。だから財務大臣がG7に出席するために、とんでもない過酷な日程を組んだりする。潜水艦事故の際にハワイに飛んでいくのも外相ではなくて、副大臣や政務官である。こういうのも55年体制時代の残滓だと思うのだけど、いつまでも昔の慣習が続いている。

○ところが予算はもう上がったし、今日は祝日なので森さんも大手を振って訪米できる。米側としても、主要な同盟国の首脳とはほとんど会ってしまっており、この機会を先送りしたりすると「日本重視」の看板がうそ臭くなってしまう。しかもこれ以上イジワルすると、「米国は森降ろしに荷担するのか」と思われてしまう。幸い森首相は「総裁選の前倒しを」と言っただけで、辞任するとは言ってない。だったらいいか、ということで日米首脳会談。よかったね、森さん。

○ブッシュさんと森さんには妙な共通点があって、どちらもアドリブのきくタイプなのに、マスコミ受けがよろしくない。前任者がそろってマスコミに大サービスする人だったのとは対照的で、記者とは距離を置こうとする。かくして米国のメディアの中にも、「クリントン時代はよかった」という声が多いらしい。なにしろいくらでも質問を受けてくれたし、ネタを豊富に提供してくれる大統領だったから。

○さて、おりからの世界同時株安を背景に、日米首脳会談はいいタイミングではあった。とはいえ、先ほどNew York Timesの記事を覗いてみたら、"Bush and Japanese Leader Talk, but Officials Disagree on What Was Said"とのことで、会談が終わった後に「日本側は輸出攻勢による景気回復を目指しているのではないか」(米)、「そんなことは言ってない」(日)と同席者の意見がかみ合わなくなっているらしい。昨日の日銀による実質的なゼロ金利回帰により、先方は円安ドル高の進行を恐れている。日本製品の対米輸出増加がきっかけで、ブッシュの父が苦労した記憶も米側のメディアには強く残っているようだ。

○昨年の溜池通信12月22日号でも紹介したが、昨年末、リンゼー経済担当補佐官(当時はブッシュのアドバイザー)は、「日本が財政再建をすれば、その分対米輸出が伸びるかもしれないが、資本輸出も伸びるであろうからそれは問題ない」という意味のことを講演で述べた。これを受けて、「ブッシュ政権はある程度までの円安を認めるのではないか」という見方が日本側で増えた。これはちょっと甘いと思う。リンゼーさんはエコノミストなので、ワシントンを遊泳するのはあまりお得意ではないようだ。こんな理屈は、たとえばゼーリックUSTR代表あたりの練達の士にかかれば、たちどころに撃沈されてしまうだろう。

○ワシントンで影響力を持とうと思ったら、@大統領の信用、A議会の信用、Bマスコミの信用、の3つが同時に必要だ。3つを完璧に備えていたのがルービン財務長官で、そういう人は滅多に出るもんじゃない。リンゼーさんは今のところ@だけである。なおかつ、AやBを獲得しようという周到な姿勢が見られない。ゆえに彼の影響力は限定的にとどまると思う。ちなみに同じ補佐官でも、安保担当のライスさんは明らかに周囲が一目置いているので、彼女の権力は強まると見る。

○実はさることがきっかけで、筆者はリンゼーさんを急に疑問視するようになったのである。というのは、引越し作業中に古い新聞のコピーを見つけたのだ。それは97年に出た日経新聞の経済教室。リンゼー元FRB理事が「日本もレーガン流減税を」と書いていた。この人ってひょっとして、どんな症状の患者に対しても処方箋は「減税」だとするヤブ医者なんじゃないかいな。まあ、思考にブレがないエコノミストなのかもしれませんけどね。


<3月21日>(水)

○耳鼻科(花粉症)と歯科(10年ぶりの虫歯)に通うはめとなり、急きょ会社をお休み。どちらもすごい時間待たされる。花粉症は薬をもらってOK。虫歯の方は「腰を入れて治さないといけません」と宣言されて呆然。もともと医者要らずの体質だったのに、40年も生きるといろいろガタが来ているということのようです。

○待合時間にひたすら『海の友情』(阿川尚之/中公新書、820円)を読む。冒頭から、読んでいる耳元で、中島みゆきの「地上の星」(だったっけ?とにかく『プロジェクトX』の主題歌)が鳴り響いている感じである。戦後のあの時代の、健気でまっすぐな日本人が大勢登場する。第五章、「アーレイ・バークと海上自衛隊誕生」のくだりで、ついに落涙。買えとはいいませんから、127P以後の部分をちょっとだけ立ち読みしてみてください。きっと買いたくなると思います。

○あれだけの大海戦を戦った日米の海軍は、その後不思議なほどに強力な連携関係を持つ。戦後、日米同盟のもっとも根幹部分を担ってきたのがこの海の絆である。「ネイヴィーは不思議なものです。そこにはもっとも洗練された国際的に通じる文化がある。おまえネイヴィーか、ああそうか、となる。互いに分かりあえる。・・・・ネイヴィー同士、ときには同胞よりも話がしやすい」(P47)。海と戦う男たちは、たとえ敵味方に分かれていても、同じ仲間という意識が生まれるらしい。

○海軍、というときに筆者が思い浮かべるのはこんなエピソードである。帝国ホテルの村上シェフの昔話。海軍のお偉方を招いたパーティーで、軍艦をかたどった巨大なパイ包み焼きを出した。それを見た将軍が、「軍艦を食べ物にするのか!」といたく憤慨された。その場にいた知恵者が進言した。「閣下、あれは敵艦でございます」。すると将軍は、「うむ、そうか。では、皆のもの、食べてしまえ!」。昔の海軍さんは、イキな人が多かったんだよ、というオハナシ。

○てな具合に、帝国海軍はさまざまな伝説と武勇伝に囲まれている。しかし戦後の海上自衛隊には、戦闘経験もなければ英雄もいない。ひたすら訓練に励み、誰にも知られることなく引退していった指揮官ばかりである。この間、周囲がいかに彼らを無視してきたかはご承知の通りである。その彼らがいかに誇り高い人々であったか、本書は垣間見せてくれる。

○以前、阿川尚之さんの『アメリカが嫌いですか』を読んでたいそう感動したことがある。なんという偶然か、読み終えた翌日に阿川さんから電話がかかってきた。当時の上司のT(現・ワシントン在住)へかかってきた電話を、たまたま私が取ったのである。

「もしもし、阿川ですけどTさんいます?」
「Tはいますけど、ちょっとその前にひとこと言わせてください。昨日、阿川さんの本を読んだんです」

以下、えんえんとどこが良かったかをまくしたてると、ややあって、

「吉崎さん、すいませんねえ、お買い上げいただいて」
「いやー、実はそれが、柏市立図書館で借りて読んじゃいまして」
「あはは、そうでしたか。あの本はもう文庫になってますので、良かったらぜひ1部・・・」

○阿川さん、その節はたいへん失礼しました。新作はちゃんと宣伝しましたからね。


<3月22日>(木)

○日米ともにマーケットの動きが激しい今日この頃。今週はいろいろサプライズがあったのだから当然といえば当然なのですが、あらためて「マーケットとはなんぞや」と考えてしまいます。

○市場で価格が決まるのは、いろんな立場の人が多様な情報を持ち寄って、それぞれに違う判断をするからでありましょう。同じ値段であっても、ある人は買いたいと思い、ある人は売りたいと思う。意見が違うから取引が成立します。みんなが同じような条件で、同じ情報をもとに似たような判断をし、結果として同じような行動をした場合、値段は決まらないか、あるいは極端に上下することになるでしょう。

○変な話ですけど、仮にJRA主催のレースに一頭だけブタが走るとしましょう。するとこの馬券ならぬブタ券は、かならず買おうという人が現れるはずです。買いたい人は、「おい、これが勝豚投票券だぜ」と人に見せびらかすことが目的かもしれません。しかし競馬場に行く人は全員が金儲けを狙っているわけではなく、単に馬が見たいという人から、自分のひいきを応援したい人まで、いろんな動機を持っているものです。だからこそ、毎回あらゆる可能性の組み合わせが買われ、レースが成立するわけです。

○株式市場も同じこと。株を買うための判断材料はいくらでもあります。四季報、PER、チャート、アナリストの格付け、仕手情報、あるいは占い師の意見だって正当な理由になるでしょう。とにかく市場に参加しているのは合理的な人ばかりではありません。それどころか、不合理な行動をする人も必要なのです。つまり多様性こそ命、でなければならない。

○ところがグローバル化だの情報化だのが進むと、世界中の市場参加者が似たような情報をもとに、似たような判断を下してしまうようになる。加えて最近はグリーンスパンなり、アビー・コーエンなりがカリスマ的な存在になってしまい、彼らのひとことで投資家がなだれのような動きを見せてしまうことがある。これでは市場の多様性が死んでしまう。多様性のない市場は、値付けがうまくできなくなってしまう。

○最近のマーケットのボラティリティの高さは、実は合理的な投資家が増えすぎたからではないのだろうか。そうだとすると、現在、金科玉条のようになっている「常識」を疑って、マーケットに多様性を取り戻すことが必要になる。それは簡単なことではないだろう。そう考えると、昨今のような不安定な株価の動きは、まだまだ続くような気がします。


<3月23日>(金)

○お台場に通って最初の1週間。まず、感動したこと。@窓の外からレインボーブリッジを見下ろし、東京湾全体を見通せること。A13階社員食堂がちゃんとしていること、ちなみに23階のラウンジはまだ見てもいない。Bアクアシティ、ジョイポリス、ヴィーナスフォートなど、アミューズメント施設に取り囲まれていること。C出勤途中に「中山競馬場」「葛西臨海公園」「東京ディズニーランド」「ビッグサイト」などを通ること。

○ショックだったこと。@経団連ビルまで行こうと思ったら、京葉線を使うと1時間もかかってしまったこと。A新しい電話システムが複雑でなかなか覚えられないこと。B社員カードがないとオフィスに入れないこと。C社員食堂の支払い方法がモンデックスカードなんだけど、今日は結局ロードできなかったこと。Dエレベーターが以外と遅いこと、E外を歩くと風が強い!

○まあ、こんなことを言っていられる間はのんきなものです。そのうち慣れるでしょう。


<3月24〜25日>(土〜日)

○久々に更新を休んだら、ある方から「どうしたんですか?」とのご指摘。いえいえ、単に面倒になって寝てしまっただけで。しかも「21日が2回ありますよ」。おお、じぇんじぇん気づいていなかった。お恥ずかしい限りでございます。ということでさかのぼって訂正。

○いつも行くスーパーで、子供向けおもちゃ売り場の景色がかなり変わっていることを発見。進学進級のシーズンだから、売れ筋商品を前面に押し出してきた様子。ポケモン勢が後ろの方に引っ込んで、代わりに目立ちまくっているのがとっとこハム太郎。かわいいねえ。こんなにたくさん種類があるとは知らなかったぞ。それにしてもピカチュウ(ネズミ)の後釜がハムスターというのは、いささか安直な気もするが。

○とっとこハム太郎はキャラクター単体で売っているわけではなく、いろんな商品がありますぞ。そのへんは「ハム太郎とっとこむ」を参照されたし。小学館(本)、テレビ東京(アニメ)、任天堂(ゲーム)というのは、ポケモンと同じゴールデンメンバーだ。ただしキャラクターグッズを担当したのはトミーではなくてエポック社であった。エポック社といえば筆者の世代には「野球盤」のイメージが強い。あの「消える魔球」はどうしたんでしょうね。最近のエポック社にはシルバニアファミリーという長寿商品がある。細かな商品をたくさん作って独自の世界を構成するというのが勝ちパターンで、とっとこハム太郎の商品開発もそれに似ていてる。これから大いに儲けそうだけど、あいにく非上場らしい。

トミーという会社もポケモンで大儲けして、少し前までは株価もかなり上げたが、最近はファービー人形が当たらなかったりしてやや低調である。ただしトミカとプラレールという超長寿商品を持っている。なにしろミニカーと鉄道といえば、子供にとっては永遠の定番商品。開発コストもあんまりかからない。今後はディズニー商品も一手に引き受けるそうなので、楽しみも残っている。いつの間にかロゴを赤から青に変えていましたね。

○おもちゃ業界といえばバンダイを忘れるわけにはいきません。株価はこんな感じ。ウルトラマンや仮面ライダー、ガンダムシリーズなどはこの会社。ここは「カッコイイもの系」が得意なようですね。最近は「デジモン」に賭けているようですが、これはトミーによるポケモンに対抗するためにできたのか、と納得。男の子に強いバンダイ、女の子に強いトミーという図式があるのかな。

○ほかにもタカラやツクダオリジナルなど、この世界も奥が深い。東京ビッグサイトでは東京おもちゃショーをやっているらしい。会社の近所でもあるし、行ってみようかな。


<3月26日>(月)

○千葉県知事選挙で堂本あき子さんが当選。きわどい差でした。堂本さんは大谷信盛君の結婚披露宴でお目にかかったことがあります。当日、大勢来ていた政治家の中では感じのいい方でした。ということで、「知らない人より知ってる人に」と、筆者も堂本さんに一票。正直に言いますが、当選するとは思っていませんでした。ご本人もそうだったんじゃないでしょうか。

○堂本さんのポスターというのがちょっと変わってました。候補者の名前と顔だけなんです。「千葉を変える」とか「女性の力を」みたいなスローガンがない。「無所属」という表記さえしていない。小さな字で掲示責任者の連絡先が書いてあるだけ。もしもそれがなかったら、別の選挙で使ったポスターのあまりを転用したのかと勘違いするほどでした。つまりそれくらい色のない選挙をやっていた。ともあれ、これで東京、長野に続く無党派知事、そして大阪、熊本に続く女性知事が誕生です。

○今度の選挙は結果を見れば激戦でしたが、筆者の身の回りは静かなものでした。民主党が支援した若井康彦候補のポスターがちょっと目立った程度。それも「千葉のミッドフィールダー」ですって。柏市民ならば、レイソルがあるから「ミッドフィールダー=サッカー=攻撃の指令塔」というイメージがつかめるけど、ほかの市町村では通じなかったのじゃないでしょうか。千葉って広いんだもの。自民党の岩瀬良三候補は、地元ではそこそこ知られた人なんだが、県の職員出身の典型的なタイプで、いかに千葉が保守王国といえど、昨今の地合いでは不利な条件だった。公明党の支援もあまりなかったようだし。

○既成政党はまたしても敗退しました。しかし実際に千葉県議会を相手にしたら、堂本知事もいろいろ大変でしょうね。無党派というのはかならずしもいいことではない、と筆者は思っている。政策を作るとか、政治家を発掘して育てるというのは、政党の大事な仕事なのである。政党が駄目、と決め付けてしまうと、有名人以外は選挙に出られないことになる。問題は既成政党が硬直化してしまって、政党としてまっとうな仕事ができなくなっていること。自民党も民主党もしっかりしろ、と言いたい。

○一方で、最近の世の中はなべて男性が駄目だから女性に任せてみようか、という気もわからんではない。堂本さんの政策を見たら、羽田の国際化に対してわりと柔軟な発言をしているのに気がついた。「国際線の玄関は成田」というのは千葉県としては譲りたくない一線だが、それじゃあ横浜や三多摩地区の人たちは遠くてかなわない。だいたい首都圏3000万の人口に、国際空港がひとつでは足りないのである。ここは扇国土交通大臣と堂本千葉県知事の二人三脚で、これまでの構造を変えてもらいたい。


<3月27日>(火)

○政治ジャーナリストのK氏、といえば当欄に何度も登場しているお馴染みさんですが、彼が言うんです。今こそ『日本沈没』を見るべきだって。言うまでもなく、小松左京原作、1973年製作の日本映画のことである。当時のかんべえは中学生でしたけど、なにせSF少年だったからあの映画は細かいことまでよく覚えている。K氏は最近、CS放送で見たんだそうだ。広島での地震が相次いでいる昨今、こういう映画をやるのは実に不謹慎である、某地上派放送局では「えひめ丸事故」のあおりで、『タイタニック』の放映を自粛しているのだ、とも言っていた。まぁ、そのくらいいいじゃないの、CSなんだから。

○さてK氏が感心したのは、『日本沈没』で丹波哲郎が演じる山本首相の指導力であった。丹波さんといえば、最近では霊界の人というイメージが定着してしまったが、実は『砂の器』など名演技を披露している作品は少なくないのである。『日本沈没』では、「爬虫類の血は冷たかったが、人間の血は暖かい」と大見得を切るところが印象に残っている。ちなみに、このセリフは原作にはない。

○さて、『日本沈没』である。関東大震災が発生すると、人々が皇居に押し寄せる。そこで山本首相は宮内庁長官に電話をかけ、「宮城の門を開けてくれ」と指示を出す。そこで急きょ、皇居坂下門が開かれ、大量の避難民が難を逃れる。見事な危機管理ではないか、というのである。この映画の中で、関東大震災は死者・行方不明者360万人を出す。しかし山本首相は、日本沈没という緊急事態に対し、非常に的確な判断を下していく。もちろん最終的な悲劇は避けられないが、政治家として最善を尽くしている。

○日本の国は危機管理が弱い、ということが常識になってしまった今日の目から見ると、このへんの対応が妙にうま過ぎるように思える。なにしろ日本が沈没するのである。最近の政治家に向かって、「そのときアンタならどうする?」と聞いてみたらどうだろう。「俺の選挙区はどうなる?」などと言うのがオチじゃないだろうか。小泉さんなんぞは「それでも郵政民営化だ」と言うかもしれん。(←ウソです)。しかし1973年当時は、山本首相のような設定が不自然ではなかったのである。

○1973年当時の総理大臣は田中角栄だった。あの人であれば、仮に『日本沈没』のような事態が生じた場合も、丹波哲郎並みの指導力を発揮しただろう。というより、当時の総理大臣はそれくらいの迫力があったのである。その後の何代かの総理も大丈夫だと思う。実際に中曽根首相は、後藤田官房長官を起用した理由として「東海地震の可能性」を挙げている。ところがその後がいけない。1995年に阪神大震災が起きてみたら、ときの村山首相はテレビで見て「大変じゃのう」と言うばかりで、自衛隊の投入も思いつかなかった。気がつけば山本首相のような宰相は夢のまた夢になっていた。

○重大な危機管理の問題が起きると、かならず「システムが悪い」という話になる。実はそうじゃなくて、単に人材の問題なんじゃないだろうか。ここ20年ほどの間に、政治の第一線から腹の据わった人物が消えてしまった、とK氏は嘆く。なぜ人材が払底したのか。ひとことで言えば、育ててこなかったから。本気で人を育てるためには、若手を抜擢することと、本気で権力闘争をすることであろう。いつも同じ結論になりますが、「世代交代もしくは政権交代」ということになります。

○今日はかんべえの職場に、民主党山形県第2区総支部長の近藤洋介氏が来訪。昨年の総選挙では惜しくも届かなかったが、捲土重来を期して活動中である。近藤氏によれば、朝、米沢を出たときは雪だったそうだ。それが午後にお台場のオフィスから東京湾を見渡せば、金色の陽光が降り注いでいる。「日本は広いですね」と言っていた。東京では桜もところどころ開花しています。しみじみ思います。日本を沈没させちゃいけませんよ。


<3月28日>(水)

○最近読んだ本から。『ジョージブッシュと日米新時代』(藤井厳喜/早稲田出版)。ブッシュ政権についての分析本。藤井さんは極端な共和党びいきであるために、ほとんどトンデモ本に近い部分もある。でも資料としては役に立つ。昔からそうなのだが、この人の本は全体としては無理筋なのだけれど、ところどころ補助線として面白い指摘がある。お役所が出すような毒にも薬にもならない本に比べれば、はるかに価値があるといえよう。なにしろ「心に残る幕の内弁当はない」のである。

○藤井さんがまだ本名の藤井昇を名乗っていた時代に、「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート」を購読していたことがある。藤井さんが小岩でやっていた会合にも何度か顔を出した。思えば結構古いお付き合いなのである。当時のかんべえは藤井先生を持ち上げつつ、内心では「右の藤井昇、左の高野孟、その中間にフェアウェイ(真実)がある」などと思っていた。こういう性格の悪さは今も変わらない。しばらく見かけないと思っていたら、お元気でご活躍の様子。なによりです。

『二十一世紀をどう生きるか』(野田宣雄/PHP新書)。前京都大学教授で、ユニークな歴史論を展開していた著者は、実は滋賀県の浄土真宗寺院の住職さんでもあった。21世紀の世界秩序は、国民国家の枠組が崩壊して「新しい中世」とでもいうべき混沌の時代になるという。ここまではよくある話で、田中明彦さんも同じ意見。だが、そうなると啓蒙主義や進歩主義が通用しない時代になるので、親鸞の思想が蘇るだろう、というところがとってもユニーク。

○国際関係論と仏教、という組み合わせがイイ。かんべえさんの先祖は富山の真宗のお寺さんなので、年をとったら親鸞の教えなんぞも学んでみたいと思っている。それにしてもこういう切り口があったとは。これもまた幕の内弁当の手法ではない。

『日本人のひるめし』(酒井伸雄/中公新書)。日本人が一日三食になったのは江戸時代あたりかららしく、それ以前はお昼は食べなかった。その後もひるめしは、朝や夜に比べると陰が薄い。「学校給食は軍事的要請によって誕生した」「東の豚、西の牛肉、という傾向が定まったのは日露戦争から」「江戸の外食が繁栄したのは独身男性が多かったから」「カレー人気は、もっとも手軽な西洋料理だったから」など、ひるめしに関する興味深い文化論がたくさん盛り込まれている。

○著者の酒井氏は、明治製菓で商品開発に携わってきた「食」の研究家。「一緒にご飯を食べるということは、人と人とのつきあいを確認すること」だという。たとえば子供がお昼に母親が作った弁当を食べれていれば、それは家族のつながりを確認することであり、学校給食を食べるようになると、学校の連帯感を強くすることになるのだそうだ。サラリーマンとしても、お昼を誰とどこで食べるかは重要な問題である。現在、お台場でのお昼のあり方を鋭意研究中。


<3月29日>(木)

○昨日ご紹介した『二十一世紀をどう生きるか』という本は、マックス・ウェーバーと親鸞の思想を比較しながら展開します。この辺の論理構成はかなり強引ですが、宗教の話というのはおおよそが強引で不合理なものですから、とやかくいうほどのことはありません。

○実はそれは本題ではなくて、読んでいるうちに突然、古い記憶が蘇ったのです。学生時代に会社訪問をしていたときにこんなことがあった。喫茶店に呼び出された商社ないしはマスコミ希望の学生(筆者)に向かい、入社2年目の人事部社員S氏がこんな質問をしたのである。

人事「大学ではどんな勉強をしてるの?」
学生「はぁ、社会学なんぞを」
人事「ゼミではどんな本を」
学生「ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』なんかを読みましたが」
人事「ああ、プロ倫ね。あれ読んで君はどう思ったの」
学生「あの話は、浄土真宗が富山県民の県民性に与えた影響とまったく同じですね」

○ここでS氏は馬鹿ウケ状態になり、そのまま両者は意気投合状態に突入した。ちなみにS氏は山形県出身であった。ともあれ、これが筆者と今働いている会社のファースト・コンタクトであった。1983年の夏ごろの話である。「ウェーバーと親鸞」を強引にこじつけるというのは、その昔筆者にも身に覚えがあった。

○もちろん筆者は信心など薬にしたくともない上に、勤労意欲にも乏しい人間であるので、これを聞いたらウェーバーも親鸞も怒ってさじを投げるであろう。(会社もか?) とはいえ、そういやあそんなことがあったなあ、と電車の中でしみじみ回顧してしまった今日の帰り道。


<3月30日>(金)

○いよいよ年度末でござんす。桜もあちこち咲いておりますな。週末は天気が良ければ花見日よりですね。皆さん良い週末を。(たくさん書いて疲れ気味なので、これにして失礼)。


<3月31日>(土)

○とんだ天気です。桜に雪。めずらしい景色を見ることになりました。25年ぶりだそうです。これで名月が出れば「雪月花」ですな。明日は晴れるそうですから、今度こそお花見を。ただし地面はぬれているでしょうね。

○明日は久々にテイエムオペラオーが走るそうです。産経大阪杯(G2)。8連勝の快進撃がどこまで続くのか。当然、ここは他の馬を応援したくなるので、花見がてら中山まで出かけてみようかしら。

○昨日の分の不規則発言を読もうとした某氏が、iモードで3月17日分からスクロールしていったら、なんと25分もかかってしまったそうです。それだけの電話代をかけて、たどりついた挙句が上のような次第では、まことにもって同情に耐えません。今後はなるべくバックナンバーに送り込むようにいたしましょう。ゴメンね、先ちゃん。





編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki