●かんべえの不規則発言



2013年1月






<1月1日>(火)

○新年、元日、国立競技場。第92回サッカー天皇杯は、わが柏レイソルの勝利に終わりました。パチパチパチ。

○とはいうものの、過去の天皇杯のパターンから言えば、今回はJ1降格が決まったガンバ大阪が勝つべき戦いでありました。いやはや、めでたいめでたい。

○正月のこの戦い、郷里富山で見ておりましたが、ここ富山にはJ2のカターレ富山があります。富山のファンからすれば、「これでガンバの遠藤が富山で見られる」という楽しみがあります。遠藤さん、構わらないから、カターレ相手に必殺のセットプレーを見せておくんなさいまし。きっと大喜びされることは間違いありませんので。

○余計な話ではありますが、「カターレ」というのは、富山弁で「勝ちなさいよ」という丁寧な命令形を差します。これが比較級になると「カタレヤ」(勝ちなさい)、最上級になると「カタレンカ」(勝たんとダメよ)という風に変化します。ファンが「カターレ」と言っているうちが花というもので、あんまり勝てないと「なんで勝たんがけ」(どうして勝てないの!)という批判を浴びてしまいます。こういうファンの思いを背にして、サッカーは戦われるわけでありまして。

○今年は6月上旬には、ザッケローニ・ジャパンのW杯予選があまります。ヨルダンかオーストラリアかイラクに勝てばブラジルに行ける。そして下旬にはコンフェデレーションズカップ。いやあ、今からワクワクしますねえ。ということで、本年もよろしくお願い申し上げます。


<1月2日>(水)

○アメリカの「財政の崖」問題が、1日遅れで解決したようです。やれやれ、であります。


●米下院が法案可決――「財政の崖」回避へ(WSJ日本版)

 米下院は1日、「財政の崖」の回避に向けた超党派法案を可決した。上院では既に可決されている。法案は大統領の署名を経て成立する。増税は富裕層に限定され、歳出削減も先送りされて、「財政の崖」は回避されることになった。しかし多くの問題は未解決のままで、与野党が今後の財政協議で引き続き対立することは避けられない。

 法案は賛成257票、反対167票の賛成多数で可決した。民主党議員172人に加え、共和党からも85人が賛成に回った。反対票を投じた議員のうち151人が共和党議員だった。また、エリック・カンター院内総務は反対、ジョン・ベイナー下院議長は賛成と、共和党指導部内でも票が割れた。増税に反対していた前共和党副大統領候補のポール・ライアン議員は法案に賛成した。


○今回の措置は、「グランドバーゲン」とはほど遠い緊急避難措置でありまして、さすがに崖からまともに落ちるわけにはいかなかった。1日遅れたことに関しては、少し意地の悪い見方をさせてもらうと、議員さんたちは1月1日からの増税は我慢できたけど、1月2日からの歳出の強制削減はどうしても我慢できなかった、ということかもしれませんね。

○議会の紛糾はまだまだ続くでしょう。差し当たっては、これでベイナー下院議長が再選されるのかどうか。そして2月から3月に到来する債務上限をどう乗り切るかという問題がある。これは下院共和党に「復活戦」のチャンスを提供します。債務上限引き上げと引き換えに、今回は先送りされた歳出の削減を迫るという交渉です。下手をすれば2011年8月の再来(米国債の格下げ)もあり得るでしょうな。アメリカ版「決められない政治」はまことに深刻であります。

○オバマ大統領としては、これで選挙戦の公約であった「トップ2%からの増税」を実現したということになります。でも、たいしたことないんですよね。世帯年収45万ドルの税率が、35%から39.6%になるというだけでありますから。キャピタルゲインと配当に対する税率も、15%から20%になります。が、この程度なら「財政のスロープ」くらいでありますから、ちゃんと上を向いて登って行ってもらいたい。政治はさておいて、今年のアメリカ経済はそんなに悪くないと思っておりますので。


<1月3日>(木)

○箱根駅伝をテレビで見ていたら、大和ハウスのCM「ベトナムにも」が流れてました。いつも通り役所広司さんがいじめられるんですが、古田新太が演じるCM監督&その母・夏木マリのコンビは、まことに意外性があっていいですなあ。

○で、ここで紹介されている海外事業というのが、昨年9月にベトナム出張した際に見てきたロンドウック工業団地なのである。270ヘクタールの敷地で建設中でありまして、来年夏に販売開始とのこと。こんなビジネス向けの事業のCMが作られるというのも、なんというか時代を感じますなあ。

○というよりこれは、大和ハウスCMシリーズの新作として素直に楽しむのがいちばんでありましょう。つい、ユーチューブでこんなもの(役所広司CM集)を見つけて、笑い転げてしまいました。(これ、最初は「大和ハウチュ」で始まって、最後は唐沢寿明や黒木メイサも出てきますぞ!)


<1月4日>(金)

○これも年末年始の読書から。『想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか?』(ジョン・ケイ/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

○名著というものは、部分的にはひとつの旋律が何度も繰り返され、全体としても同じトーンで貫かれているものなのだそうだ。それでいくと、本書は掛け値なしの名著であろう。題名"Obliquity"は「回り道」とでも訳した方がよかったような気がするが、本書の至るところで繰り返されているメッセージは、「直線的な行き方よりも、回り道の方が優れている」である。

○幸いなことに、われわれはその手の実例を豊富に知っている。なぜリーマンブラザーズが失敗して、ゴールドマンサックスは生き残っているのか。前者は利益を追うことを最優先し、後者はチームワークを称揚する企業文化を持っていた(p76)、というのはごく一例に過ぎない。利益追求を最重要視すると、それが実現されてしまったときに、あるいはそれが不可能になってしまったときに、目標が失われてしまう。だから企業は、非常に崇高な理念(ときには普通の人が理解しにくいようなもの)を掲げている方がいい。利益はその結果としてついてくる。

○こんな主旋律に乗って、ビジネスや人生に関するさまざまな「ちょっといい話」が紹介される。これが楽しい。思わずいくつか紹介したくなる。

●アメリカ内務省の国立公園管理局は、当初「山火事の撲滅」を目標とした。しかし火災をいちいち消火していると、かえって発生件数が増えてしまう。そこで目標を変えた。「山火事をコントロールすること」にしたのだ。具体的に言うと、「放火による火災は消火するが、自然発火によるものは放置する」。

●生物学者のダーウィンは、「結婚は大いなる時間のロスだ」と考えていた。そして結婚がもたらすメリットとデメリットを克明にノートに記し、「一生を家族のために働き蜂として過ごすなんてとんでもない」と書いた。しかし最後には、「結婚だ、やっぱり結婚だ。証明終わり」と書いた。その翌年に結婚し、夫妻は10人の子供に恵まれた。

●米海軍のストックデールは北ベトナムで捕虜になり、拷問に耐え抜いて7年後に生還した。生き残れたのは、「拷問に対する備え」「現実的な思考」「今日死ぬかもしれないという覚悟」の3つだが、彼はこう理解していた。「クリスマスには解放される、と期待する楽天家には死が待つだけ」。溺れる者が藁をつかんではいけないのは、藁だと分かった瞬間に諦めて沈んでしまうからであった。

●著名なビジネススクールで意思決定を教えている教授のところへ、転職の誘いがあった。さっそく、友人に相談した。友人曰く「それこそ君の専門だろう」。すると当人曰く、「いや、これは真面目な意思決定の問題なんだ」

○訳者の青木高夫さんは本田技研の社員。今回もまた、楽しい本を世に送ってくれました。多謝。


<1月5日>(土)

○そろそろユーラシアグループの「2013年版TOP10リスク」が発表されたかなーと思ってHPを見たところ、今年は1月7日(月)発表ですって。その代わりに、こんなものが出てました。

●The world's most powerful people according to Eurasia Group


1. Nobody :Gゼロ時代においては無理ないよね。国際的な責任なんて負いたくない、とばかりにみんなが内向きです。

2. Vladimir Putin :昔ほど人気はないし、国のシステムもガタが来てるけど、これ以上の権力者は地球上にはいません。

3. Ben Bernanke :アメリカ経済はなおも苦闘中。何とかしてほしいけど、これ以上に影響力を持つ人はおりません。

4. Angela Merkel :彼女の言葉だけが欧州をつなぎとめている。なおかつ国内人気を保っているのは偉大な業績なり。

5. Barack Obama :ワシントン内部のことに忙殺されつつも、ユーロ圏を睨み、中東から離れず、アジアとの関係を強化する。

6. Mario Draghi:欧州に血液を流すという中央銀行の仕事を担う。歴史的な危機ではあるが、その仕事は終わらない。

7. Xi Jinping(習近平) :向こう10年の中国を担う。経済および政治改革がないと中国は回っていかず、引いては世界も困る。

8 (tie). Ayatollah Khamenei(ハメネイ):アフマディネジャドは6月でお払い箱だが、その後もイランの最高権力者として注目。

8 (tie). Christine Lagarde(ラガルド):世界の消防隊長。IMFの専務理事として世界を睨むが、特にお足元の欧州にご用心。

10. King Abdullah Bin Abd al-Aziz :サウジ国王は世界の市場を動かすユニークな存在。健康問題はあるが果たして次世代は?



○イアン・ブレマーらしい上手な人選でありますな。なんだかんだ言って、彼はまだ「鮮度」を保っておるような気がします。ワシなら受け狙いで10位くらいに金正恩を入れるかな。


<1月6日>(日)

○中山神社に初詣に行く。なんで昨日の金杯のうちに行かないのか、というと、知らずにクルマの定期点検の予定を入れちゃっていたからなのだが、それはさておいて今日はシンザン記念。2013年の運試しをしなければなりません。

○今日の京都競馬場ではまことにめずらしい現象がありました。5レースがエーシンハクリュー、6レースがエーシンレンジャー、7レースがエーシングリズリー、8レースはエーシングングンが1位だったのです。株主の栄進堂さんは、「こいつは春から縁起がいいわい」てな感じだったのではないでしょうか。当然だと思いますけれども、「同一馬主馬の4連勝は史上初」なのだそうです。

○さらに10レース、万葉ステークスではエーシンジーラインが2位に食い込む。そして11レースのシンザン記念は、おおかたの予定通りエーシントップが持って行ったのでありました。栄進堂さんはますますの大笑いでありましょう。ちなみに不肖かんべえは、「エーシン勢ラッシュ」が続く中でも、断固としてヘミングウェイから買ってしまいました。狙いは良かったんですが2位でありました。今日はトータルするとボロ負けに終わったのでありました。

○話は変わって日経新聞について。「私の履歴書」に渡辺淳一先生が登場。証券界では広く知られていることですが、「日経新聞に渡辺小説が連載されると、株価が上がる」の法則があります。1985年の『化身』、1996年の『失楽園』、そして2005年の『愛の流刑地』という前例があります(詳しくは拙著『1985年』を参照ください)。「私の履歴書」はもちろん小説ではありませんが、掲載されているのは同じ最終文化面ですから、ご利益は期待してもいいんじゃないでしょうか。とりあえず、今月いっぱいは株高が続きそうですし。

○ただし本気で株高をもたらすためには、渡辺文学に欠かせない「濃厚な描写」が必要であると考えられます。今月の「私の履歴書」は、ひょっとするとキョーレツな私小説になるんじゃないでしょうか。だって1月6日時点で「性の目覚め」とか言ってるんですもの。日経読者全員が、いや市場関係者全員が注視しておりますぞ。


<1月7日>(月)

○自動車工業団体の新春賀詞交歓会に出席。円安進行のせいか、会場のホテルオークラが大盛況である。

○壇上に立った豊田章男会長、挨拶ではここ数年の苦難(リーマンショック、3/11、タイ洪水、反日デモ)に触れ、次いで安倍政権を軽くヨイショし、秋の東京モーターショーを宣伝し、最後に「自動車取得税と自動車重量税の撤廃を是非よろしく」と。ああ、そうか、例年は年末に終わっている税制改正が、今年は越年しているから今月中が勝負なのね。皆さん、予算が遅れていることばかり気にしているけれども、実はそっちの方が業界的なインパクトは大きい。しかも消費税を上げることが決まったあとだものね。

○自工会を早々に切り上げて、次は帝国ホテルの時事通信社新年互礼会へ。こちらも新聞協会長の朝日新聞社長が壇上で挨拶していて、「最後に一言、新聞に対する軽減税率を是非よろしく」と。その場で一人だけ拍手をしている人がいると思ったら、なんとそれがナベツネ御大であった。これ、嘘のような本当の話。うーん、この調子では復活した自民党税調は大忙しですな。今月いっぱい「もう一人の野田さん」(野田毅税調会長)が脚光を浴びそうです。

○てゆうか、こんな風に各業界が税制改正で血道を上げているということは、この秋に景気弾力条項を使って消費税増税を止めるなんてことは、ほとんどあり得ないことに思えてきますな。ミクロのリアリズムがマクロのリアリズムを押し流す、てなことになるのではないかと。

○ということで、本日は新年会をハシゴしてしまいました。しかるに本日の新年会ハシゴ王は安倍首相であります。各方面の情報を総合すると、本日の行動はこんな感じだった模様。

●経済三団体共催新年祝賀会(帝国ホテル)

●連合新年交歓会(??)

●石油連盟新年賀詞交歓会(経団連会館)

●自動車工業会新年賀詞交歓会(ホテルオークラ)

●時事通信社新年互礼会(帝国ホテル)

○正確なものは、明日の朝刊の「総理の一日」をご確認ください。


<後記> 

安倍首相のこの日の正確な行動は以下の通りでした。

@13時13分〜13時28分:石油連盟新年賀詞交歓会(経団連会館)

A13時38分〜14時37分:経済3団体主催新年祝賀パーティー(帝国ホテル「孔雀の間」)

B16時9分〜16時15分:連合の新年交歓会(東日暮里のホテルラングウッド)

C16時42分〜16時50分:自動車工業会新年賀詞交歓会(ホテルオークラ)

D17時38分〜18時16分:時事通信社新年互礼会(帝国ホテル「富士の間」)



<1月8日>(火)

○さて、本日の新年会は、不肖かんべえのホームグラウンドである日本貿易会の新春懇親会(ホテルニューオータニ「鶴の間」)でありました。例年よりも広い部屋を使っていたので、まことに豪勢な感じでありました。来客も多かったようです。ただし気のせいか、食事のなくなるのが早かったような・・・・。

○新年の話題として「今年の景気は?」というのは定番ですが、特によく聞かれるのは「今の株価はいつまでもつ?」であります。為替はともかく、日経平均の予想はしたくない当方としては、いつもこんな言い方をしてごまかしています。これ、便利ですよ。

「今みたいに皆が心配しているときは、株価は崩れませんよ。まあ、春先くらいまでは大丈夫。でもゴールデンウィークくらいになったら、きっと週刊誌が『この銘柄でボーナスを増やそう』などという特集を始めますよ。そうなったら注意した方がいいでしょうなあ」

○さて、今年の予想と言うことでは、とうとうユーラシアグループの「2013年TOP 10 Risks」が発表されました。こんなラインナップです。


The Risks

(1) Emerging Markets: not less risky

(2) China vs information

(3) Arab summer

(4) Washington Politics

(5) JIBs - Japan, Israel and Britain

(6) Europe

(7) East Asian geopolitics

(8) Iran

(9) India

(10)South Africa


○注目すべきは第5位のJIBsですな。これってJapan, Israel, Britain(日本、イスラエル、英国)の略なんです。これら3か国は、今年はとっても不幸なのである。中国が台頭し(日本はダメ)、中東は混乱し(イスラエルはダメ)、そして欧州は泥沼である(英国がダメ)。これら3か国は、すべてアメリカと特殊な関係があるのだけれど、それが今では通じなくなっているのである。そして中国はますます荒れ狂って日本が困り、アラブは春どころか「夏」を迎えてイスラエルは悩み、欧州圏の結束が強化されて英国は途方に暮れるのである。

○いっそのこと「JIBsサミット」というのをやって、安倍首相、ネタニヤフ首相、キャメロン首相の3人で、同病相哀れむというのはどうでしょう。あ、そういえば3人とも保守政党の党首でありますな。


<1月9日>(水)

○今週4つ目の新年会に乱入。今日のは「財団法人 霞山会」。東亜同文会の流れをくみ、長らく日中関係を見守ってきた団体であります。もちろん会場は霞山会館。新しくなってからもう6年もたつと聞いてちょっと驚きました。日中関係が悩ましきこと多い中で、いろんな方々とあいさつを交わしつつ、ふとこんなことを妄想しました。

○これは岡崎久彦氏が書いていた話ですが、「東條英機は悪い奴だということになってはいるが、まさか彼がスイスの銀行に隠し口座をもっているとは誰も思わない」。――まことに仰るとおりでありまして、全世界的な水準で考えれば、日本のトップ層というのは相対的に身綺麗であると思います。そして東條という人は、まさしく潔癖で生真面目で几帳面を絵に描いたような人であったわけでして。

○ところが某所でこの話を紹介したところ、さる外交評論家がこんな感想を漏らしてくれました。「東條英機は、むしろ秘密口座を作っていた方が良かったんじゃないかなあ。それならあんな無謀な戦争はできないもの」。――これまた仰るとおりでありまして、腐敗している人は自分の命やお金を大事にしますから、無茶はしなくなるわけであります。さらに言えば、東條がそういう腐敗した軍人であったならば、陸軍だってあそこまではついていかなかったでしょうし。

○そういう意味でいえば、今の中国のトップ層は軒並み腐敗してしまっているわけですから、これはもう絶対に戦争ができない国になっているはずであります。極端な話、アメリカが「言うことを聞かないと、お前たち政府高官とその家族が持っているアメリカのパスポートを全部公開して無効にし、ついでにアメリカ国内の資産を凍結してやるぞ!」と脅しをかけたら、中国は一気に降参してしまうかもしれない。米中には、そういう生臭い関係がちゃんとありますので。

○この辺、日中関係は妙にピュアな世界になっていて、先方の常識が当方の非常識になる者同士であります。たぶん中国人には、「実は東條は潔癖な人だった」ということが、まったく信じられないんじゃないでしょうか。


<1月10日>(木)

○本日、某紙の学芸部の人と話をしていて、「最近、財界で読書家っていうと、どんな人がいますかねえ?」と聞かれて、しばし絶句してしまいました。昔は弊社ごときの中にも、先輩方の中にはかなりの愛書家がいたものなんですが、そういう人はめっきり見かけなくなりました。世の中の余裕がなくなったのか、社会全体で活字離れが進んでいるのか、ちょっとさびしい現象ではないかと思います。

○少し古い時代の「読書家の財界人」というと、東電会長で経団連の会長でもあった平岩外四さんの名がすぐに挙がったものです。なにしろこの人は、古典や名著の類は当然として、大沢在昌の『新宿鮫』シリーズの推薦文を書いてしまうくらい芸域が広かった。国家公安委員まで務めた人が、どんな思いで警察小説を読んでいたのか、ちょっと想像を絶するところがあります。

○その平岩さんについて、こんなエピソードを聞きました。勝俣氏が社長になった際に、「社長業というのは大変だから、こういう本を読んだらいいよ」と言って勧めたのが、佐伯泰英の時代小説であったんだそうです。

○考えてみたら、社長業というのは眠れない夜もあるはずなんで、そういうときに司馬遼太郎や池波正太郎を読んでもあんまりいいことはなさそうだ。その点、佐伯泰英であれば、確実にストレス解消にはなるはずなんで、相談役による社長へのアドバイスとしては、なるほど実践的なものだったんじゃないかと思います。

○実を言うと不肖かんべえ、その話を聞いてから慌てて「居眠り磐音」シリーズを1冊だけ読んでみて、見事に時間がたつのを忘れてしまい、なるほどこりゃすげえや、と感心した次第。と同時に、平岩氏の読書はどこまで広かったのか、と思うことしきりでありました。


<1月11日>(金)

○本日発表の「12月景気ウォッチャー調査」を見て、心底驚いてしまいました。現状判断DIは、11月の40.0から45.8まで改善。先行き判断DIに至っては、41.9からなんと51.0へ上昇。1か月で10p近く上昇だなんて、3/11直後にあったかもしれないけれども、それは3月データで20pくらい下げた後の話。このデータを信頼すると、景気は2012年10月に底打ちしたことになる。

○例によって特徴的なコメントを拾っておこう。


●新政権が誕生し、公共投資を中心とした大型補正予算が組まれる見込みが強いため、建設業が基幹産業である道内経済にはプラスとなる(北海道=金融業)

●最初のエコカー補助金から3年がたち、1回目の車検の時期を迎えることになるため、今後に期待できる(北海道=自動車備品販売店)

●気温の低下とともに、防寒衣料、鍋商材の動きが活発化し、数量ベースでクリスマスケーキは昨対109%、おせちセットの予約は同105%と堅調に伸びており、特におせちセットは高単価品の伸びが顕著であり、消費マインドは回復基調である(北関東=スーパー)

●総選挙も終わって政権が変わり、国民の期待に応えてくれるような安堵感が漂っている。タクシー利用客も思ったより多く、特に14日と21日の金曜日はバブル当時を思わせる忙しさであった。よい師走景気である(南関東=タクシー運転手)

●鍋物野菜を中心に、牛肉などの販売量も、初秋に比べるとやや増加傾向にある。総選挙の結果、政権交代することになり、客の話題にも明るさが見える(東海=スーパー)

●最近、円安や株高で明るい兆しがあり、引き合いが増える傾向にある(近畿=電気機械器具製造業)

●総選挙で広告の動きが少し活性化している(近畿=広告代理店)

●11月末から12月にかけての忘年会シーズンで、売上が昨年より大幅に増加した。これは円安や株高などのように、期待感の表れではないかと考えている(四国=観光型旅館)

●急激な気温の冷え込みで冬物衣料品が順調に推移している。12月も先月に引き続き好調な売り上げが続いている(九州=商店街)

●利用客はそれほど増加していないが、客単価がかなり上がり、売上的にもかなり増加している(沖縄=ゴルフ場)


○昨年10月の調査では現状判断DIは39.0まで下がり、そのときは「消費税の駆け込み需要」以外にはほとんどプラス材料が見当たらなかった。それからわずか2か月で、これだけたくさん好材料が出てくるとはほとんど信じがたい状態です。「政権交代」と「円安・株高」の効果は抜群のようです。また、「選挙」や「厳冬」も少なからぬプラス材料となっている。それにしても、「エコカー補助金から3年目」だなんて、完全に忘れてましたがな。まさしく景気は生き物であります。


<1月13日>(日)

○某日、とある老教授とお話をしていたら、「日本人の暮らしはおかしくなっている。化学物質が増えて健康が侵されている。その証拠にがん患者の数が増えている」といたく真剣におっしゃるのです。ご本人ががんの治療中ということなので、とても反論できる雰囲気ではなかったのですが、本当であればこんな風に反論したいところでした。

「それって他の死因が減って、がん以外の死亡原因が少なくなったからじゃないのかなあ」

○つまりがん患者数が増えているのは、世の中が平和で豊かになって、日本人の寿命が延びたことの反映ではないかと思うのです。これってデータの読み方の初歩じゃないかと思うのですが、当の老教授(実は経済学者!)は、日本人は昔のような自然な暮らしを取り戻すべきだ、と強く思っておられるようでした。

○かく言う小生は、幸いなことに過去半世紀間、医者いらずの健康体なんですが、家系的にはがんで死んでいる人が多いし、最期は多分がんであろうと思っております。ということで、社会人の常として「がん保険」なるものに入っておるのであります。ご存じ、アヒルさんのCMの会社ですよ。もちろん気持ち的には「おまじない」なんで、自分ががんになったときのシミュレーションなどはしてません。だから保証内容がどんなものかは忘れちゃってるし、「グレードアップできますよ」というお誘いは全部却下しております。

○で、小生と同じようなレベルにある人は、これお勧めです。『がん保険のカラクリ』(岩瀬大輔/文春新書)。いろいろ学ぶ点が多いです。以下は、読みながら「ええっ?」「ほほー」「あ、なあんだ」などと感じたことのメモ。


●がん保険は北東アジア以外ではあまり売れてない。

●がん治療費用はそれほどかからない。アンケートをすると、がん治療体験者は「50万円〜100万円」と正しく答えるが、未経験者は「300万円以上」だと思っている。

●がん保険が成立するのは、医師ごとの治療のばらつきが低くて、費用や結果についての予測可能性が高いから。

●がんになったときに大事なことは、患者が自由に使えるお金があること。だったら契約内容は「××給付金」など細かく分けずに、シンプルな方がいい。

●アフラックは戦後、最も成功したベンチャー企業の一つ。

●がん保険とは、「がん」という特殊な状況に対する「配慮の体系」

●医療保険(第三分野)は、生命保険(第一分野)と損害保険(第二分野)の中間に位置するから、生保も損保も扱うことができる。

●第三分野の保険料は年間約5兆円。払い出された入院・手術給付金は約1兆円。その差額は???

●公的保険は厚生労働省、民間保険は金融庁の管轄。旧大蔵省の財金分離で、医療保険は公的制度と民間保険が分断された。

●高齢者の場合、保険の心配をするよりも手元の現預金を大事にした方がいい。


○本書を買わずに済ませたい、と思う横着な人は、たまたま今週発売の「週刊東洋経済」で著者インタビューが載っているのでそちらをご参照。

○個人的にいちばん衝撃的だったのは、アフラックの創業者であるジョン・エイモスが、1972年に上院で行ったという参考人質疑の内容です。がん保険がどういうものであるか、ここに語りつくされていると思います。しみじみ天才だな、この人は。


私たちが販売しているのは金銭的に医療費を補完するものにすぎません。

しかし私が飛行機に乗る際に保険を買うのは、経済的損失から身を守るためではありません。

もし買わないと飛行機が落ちてしまうような気がするから買うのです。

これが、がん保険が解約されずにいる理由のひとつだと思います。

彼らはがん保険を買い、契約を続けてきた。

ここで解約してしまうとがんに罹ってしまうのではないか、そんな風に考えていると思うのです。


○「やられたー」と思うけれども、いまさら解約もできやしない。しょうがないよな、アヒルさんに完敗である。


<1月14日>(月)

○昼前から雪になったので、今日の首都圏はマヒ状態。高校サッカーの決勝戦は中止、中山競馬場の京成杯も延期、成人式の方々もさぞかし大変なことに・・・。

○ありがたいことに今日はどこへも出かける用事がなかったので、家でゴロゴロという一日。以前から買い置きしてあったニュージーランドの「ホークスベイ、メルロー・カベルネソービニオン2009」(なぜか近所のスーパーで半額で売っていた)を開けて飲み始める。ああ、極楽。

○これで明日の朝になったら、綺麗に雪が溶けていたらいいんですけどねえ。明日朝は「くにまるジャパン」に出なきゃいけないんだけど、常磐線はちゃんと動いててくれるだろうか。それさえ考えなければ、まことに結構な雪見酒である。


<1月15日>(火)

○以下はおおざっぱに丸めた数字なんですが、今の世界経済の相場観をつかむうえで有益だと思うので、備忘録としてメモ。


●全世界に70億人。GDPは70兆ドル。つまり一人当たり1万ドル。

――世界の大半は飢えている、と言われた時代もあったけれども、よくまあここまで豊かになったもの。特に21世紀になってから新興国が伸びました。

●アメリカは3億人でGDPは15兆ドル。日本は1.2億人でGDPは5.8兆ドル。つまりどちらも一人当たり約5万ドル。

――どちらも世界平均の約5倍。「さらなる豊かさを」と考えると、ちょっとバチ当たりかもしれません。ということで、いずれも低成長時代に突入中。

●英・独・仏・伊・西で3億人。GDPは12兆ドル。一人当たり4万ドル。

――ユーロ圏全体となると、中東欧が入るのでもうちょっと下がります。こちらも低成長時代に突入済み。

●ロシアは1.4億人でGDP1.8兆ドル、ブラジルは2億人でGDP2.5兆ドル。一人当たりで1万ドルよりもちょい上です。

――この辺が今の世界の平均値より少し上で、「おいしいクラス」といえるでしょうか。

●中国は13〜14億人でGDPは7.3兆ドル。一人当たりでざっくり5000ドル。

――世界第2位ですが、一人当たりでは日米の10分の1です。しかもここから先が「中所得国の罠」の胸突き八丁。

●インドは12億人でGDPは1.7兆ドル。一人当たり約1500ドル弱。

――スーパーリッチ層もいますけど、貧困層もちゃんとある。その分、伸び代もまだまだありそうですが。


<1月16日>(水)

○10兆円超の補正予算が本日閣議決定されました。いちゃもんをつけようと思えば、いくらでもつけられると思います。例えば以下のように。


●3月31日までに10兆円超をどうやって執行するのか。法案成立までにはまだ1か月くらいかかるというのに。

●民主党政権下で制約されてきた公共事業を、これからすぐに増やそうとしても簡単にはいかないのではないか。入札などの手続きはどうするのか。

●執行しやすい案件、高速道路の補修などの緊急案件を多く積み上げているとしたら、公共事業としての乗数効果は低くなるのではないか。

●被災地では人手不足や資材のひっ迫も起きているし、他の地域でもその影響が及びつつある。投資する金額に比して効率は低いのではないか。

●15か月予算ということで2013年度の景気は十分に手当てがされるだろうが、2014年度には対前年比で「日本版・財政の崖」ができてしまう。2014年3月末に駆け込み需要が発生した後で、4月以降は急速な落ち込みが生じるのではないか。

●いつものことだが、補正予算に対するチェックは働きにくい。財政規律が緩むきっかけになるかもしれない。どうやったら補正予算の事後検証・評価ができるのか。

●ほんとうに物価が上昇して金利も上昇したら、国債の利払いも急増して財政再建どころではなくなるのではないか。

●本格保守政権であるはずの安倍内閣で、金融緩和と財政出動というリベラルな政策が行われるという奇妙さ。アベノミクスがクルーグマンに褒められるなんて、気持ち悪くないですか?


○種明かしをすると、上記は本日財務省で行われた補正予算説明会で出てきた議論のポイントです。あ、最後の一つは不肖かんべえのつぶやきで、これだけは番外編ね。でも、誰も言及しないのが不思議な気がするんだけど。余計な突込みですが、これがアメリカであれば、ティーパーティーのような保守主義者が求めるのは「日銀法の改正」ではなくて、「日銀の廃止」となるはずであります。

○閑話休題して、いろんな問題があることは認めつつも、今回の補正予算は「これしかないだろうなあ」と思うのです。それは参院選対策であるとか、消費税増税への筋道をつけなければならないとか、日本経済のゲームチェンジャーが必要だとか、そういう政治的リアリズムを優先していくと、必然的にこんなふうになってくるという話です。いつの時代でも、補正予算はよく言えば現実主義、悪く言えばご都合主義で作られる。経済の立て直しという仕事に、イデオロギーはむしろ邪魔者でしょう。

○前の政権の頃を思えば、霞が関もさぞ努力のし甲斐があるのかなと感じました。いや、経済界も同感なんですけどね。


<1月17日>(木)

○今日はファッション業界の朝食セミナーで講師を務める。それから午後に外食産業の経営者と意見交換。いずれもデフレ経済下の消費に苦しんでいる業種なんですが、消費税に関する受け止め方はやや違うようです。

○ファッション業界では、「うちの業界は単価が安いから、消費税増税の影響はわりと軽微」なんだそうです。考えてみれば、繊維業界はサプライチェーンが精緻にできているから、ちゃんと次に転嫁できるのですな。それよりも2回に分けて増税されるのがかなわん、パッケージの刷りなおしやシステムの改変は、どうせなら1回で済ませてくれ〜!というご意見はまことにごもっとも。

○外食産業は、コメも肉も原価が上がってかなわん、増税もかなわん、でも競争が厳しいから値上げもできん、というきびしい業界である。消費税上げるのは仕方ないけど、上げたらその分だけ消費は萎むよ。わかってんのかなあ。流通産業が雇用の多くを占めている現状では、物価と給料の両方をちゃんと上げていかなきゃ、アベノミクスもうまくいかないよ。でも、いまだに製造業中心で政策が決まっているんじゃないかなあ、てなお話を拝聴する。まことに納得。

○などといろんな業界に顔を出している日々なんですが、基本的にビジネス関係の方が多いので、「今年の新年会は久しぶりに皆が上機嫌」「忘年会よりも新年会が明るいよね」という方がほとんどです。円安・株高がやっぱり効いております。

○その一方で、暗い新年会というのもあるんでしょうな。「民主党」とか「日本銀行」とか「朝日新聞」とか・・・・。


<1月18日>(金)

○内外情勢調査会の講師で三重県津市へ。今日の関西地方は天候が荒れて三重県も初雪。東海道新幹線は、米原から先が遅延という状態でした。

○名古屋で乗り換えて、近鉄に乗り換えて、駅で降りたら「つ」というアナウンスがありました。日本で一番短い地名です。ちなみにアルファベットだと「z」になって、世界でも一番短い地名としてギネスブックに載っているんだそうです。

○津は見た目地味なところです。地元の時事通信支局長さんによると、交通事故はあっても凶悪犯罪は少なくて、全国ニュースになるようなことが少ない街なのだそうです。慌ただしい日帰りでしたから、深いところまではわかりませんでしたが。しょーがないねえ、明日も別の仕事を入れちゃってるんだもの。次回はちゃんと泊まりたいものです。

○考えてみたら、ワシはまだ伊勢神宮に参拝したことがない。出雲大社には行ったことがあるんだけど。そういえば子どもの頃に延暦寺は行ったけど、高野山には登ったことがない。諏訪神社は行ったけど、善光寺には行ったことがない。うーん、まだまだ行かねばならない場所があるなあ。

○今年は式年遷宮がありますので、お伊勢参りはきっと増えるでしょう。あ、そうそう。バラしてしまうけど、田原総一朗さんは「赤福」が好物です。ちょっと可愛いでしょ。


<1月20日>(日)

○アルジェリア情勢が気になる終末です。思えば昨年の「アラブの春」の際に、リビアのカダフィ政権打倒のために西側は反政府勢力に武器供与を行いました。新政権樹立の後、それらの武器はアルジェリアからマリに流れたという噂を当時、聞きました。今回のイスラム原理主義勢力のテロに、それらの武器が使われているのではないでしょうか。つくづく介入というものは、たとえそれが「バックシートから」によるものであっても、難しいものだと思います。

○そんなわけで、われらが安倍首相は東南アジア外遊を途中で切り上げて帰国しました。その結果、インドネシアで行う予定であった演説が宙に浮いてしまいました。これがまことに惜しまれるような名演説なのです。全文は下記をご参照。


●開かれた、海の恵み ―日本外交の新たな5原則―

平成25年1月18日
内閣総理大臣 安倍晋三

(注)このスピーチは、18日にジャカルタで行う予定であったが、安倍総理がアルジェリアでの邦人拘束事案について直接指揮をとるため、予定を早めて帰国することとなったことにより、行われなかったもの。

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/20130118speech.html 


○後半、インドネシアの看護師が震災後に被災地に入り、残してくれたという挨拶はまさに涙モノです。さらにアジアの海よ平安なれ、という最後の訴えは、海のアジアを代表する国家たるインドネシア国民の魂を揺さぶったことでしょう。こんな演説がお蔵入りとは、ああ、もったいない。もったいない。

○というのはさておいて、ここで打ち出された5原則は、安倍外交にとってまことに重要であると思うのです。以下、メモしておきましょう。


第一に、2つの海が結び合うこの地において、思想、表現、言論の自由――人類が獲得した普遍的価値は、十全に幸(さき)わわねばなりません。

第二に、わたくしたちにとって最も大切なコモンズである海は、力によってでなく、法と、ルールの支配するところでなくてはなりません。

わたくしは、いま、これらを進めるうえで、アジアと太平洋に重心を移しつつある米国を、大いに歓迎したいと思います。

第三に、日本外交は、自由でオープンな、互いに結び合った経済を求めなければなりません。交易と投資、ひとや、ものの流れにおいて、わたくしたちの経済はよりよくつながり合うことによって、ネットワークの力を獲得していく必要があります。

メコンにおける南部経済回廊の建設など、アジアにおける連結性を高めんとして日本が続けてきた努力と貢献は、いまや、そのみのりを得る時期を迎えています。

まことに海のアジアとは、古来文物の交わる場所でありました。みなさんがたインドネシアがそのよい例でありますように、宗教や文化のあいだに、対立ではなく共存をもたらしたのが、海洋アジアの、すずやかにも開かれた性質であります。それは、多くの日本人を魅了しつづけるのです。だからこそわが国には、例えば人類の至宝、アンコール・ワットの修復に、孜々(しし)としておもむく専門家たちがいるのです。

それゆえ第四に、わたくしは、日本とみなさんのあいだに、文化のつながりがいっそうの充実をみるよう努めてまいります。

そして第五が、未来をになう世代の交流を促すことです。



○ここで標榜されている原則は、第1期安倍政権が試みた価値外交の復活編と呼んで構わないでしょう。すなわち、第1期の「自由と繁栄の弧」は陸のアジア編でした。今回は海のアジア編によるメッセージです。価値外交の再チャレンジ、果たしてどんな反響を呼ぶことでしょう。


<1月21日>(月)

○「アベノミクス」がいろんなところで話題になっております。以前にも「オブチノミクス」という言葉がありましたが、安倍さんにせよ小渕さんにせよ、どこかに当人を揶揄するようなニュアンスがあったから、こんな言葉ができたのだと思います。「ミヤザワノミクス」とか「タケナカノミクス」みたいな言葉はできませんよね。それじゃシャレにならないから。

○究極のケースが、「レーガノミクス」であります。「俳優あがりが馬鹿なこと言ってるぜ」と皆が思ったから、ああいう言葉が誕生したのでしょう。そしてレーガノミクスは大化けして、アメリカ経済を変えてしまうような社会実験に発展した。今ではこの言葉を抜きにして、1980年代を説明せよと言ってもほとんど不可能である。さて、「アベノミクス」がそこまで深化と拡大を遂げられるかどうか。これはやってみないとわかりませんな。

○先日、「安倍さんは保守派なのに、なんで経済政策はリベラルなんだろう」(あるいは、外交ではタカ派なのに、なんで金融政策はハト派なんだろう)という話を書きました。これに対しては、「実は安倍さんは保守主義者ではなくて国家主義者なのだ」「岸信介のDNAから言っても、その方が妥当ではないか」という解釈も可能です。ただし一方で、安倍さんは規制緩和や行革にも熱心なようですから、その意味では「小さな政府」を求める普通の保守主義者のようにも見える。悩ましいところです。

後記→生活保護のお金は切り下げるそうですから、やっぱりリベラルじゃなくて保守なんですな)

○そこでふと気づいたんですが、これは戦前の政友会=自民党、民政党=民主党の対立が復活していると考えればいいんですな。戦前の二大政党は、政友会が天皇中心で民政党が民権派、政友会が地主や大企業寄りで、民政党が普通選挙支持、政友会は腐敗気味で民政党は清潔、というイメージがありました。この区別だと、政友会が保守で民政党がリベラルに見えますよね。(このあたり、不確かな知識なんで間違ってたら教えてくださいまし)

○ところが民政党は浜口雄幸首相の時に金解禁に踏み切り、デフレ政策をやってしまった。後でリフレ政策を発動して事態を収拾したのは政友会の高橋是清でした。左寄りの民政党が緊縮政策に傾きがちであって、右寄りの政友会の方が拡大気味の経済政策を得意としていた。そういう伝統が日本政治のDNAにあって、今回もそれが発露されていると考えると少し納得がいきます。

○民政党は理屈っぽいところがあって、金解禁なんぞは典型的な理屈倒れの政策でした。逆に政友会は「何でもアリ」で、柔軟なところがあった。良く言えばプロビジネス、悪く言えば財界寄りであったから、結果を出すためには何でもしたんですな。今の自民党と民主党は、この戦前の二大政党のエートスが受け継がれているような気がします。

○さて、最後にアベノミクスをネタにした漫才のご紹介。


「景気よくするために、お好み焼きぎょうさん食うてきたで」

「なんでお好み焼き食うたら景気が良くなるんや」

「僕が行ったのは阿倍野の店やで。阿倍野でミックス注文したからアベノミックスや」

「それでアベノミックスの効果はどないやねん」

「粉ものだけに、吹けば飛ぶようやったわ」


○うーん、これってとっくの昔に大阪人が言っているような気がするなぁ。


<1月22日>(火)

○昨日書いたアベノミックス漫才に、読者の方からご提案をいただきました。うん、こっちの方がいいですね。


「景気よくするために、お好み焼きぎょうさん食うてきたで」

「なんでお好み焼き食うたら景気が良くなるんや」

「僕が行ったのは阿倍野の店やで。阿倍野でミックス注文したからアベノミックスや」

「それでアベノミックスの効果はどないやねん」

「お好み焼きだけに、コテ先で終わってしもうたわ」


○そのうち本当に阿倍野のお好み焼き屋で「ミックス焼き」が人気になりそうです。いっそのこと、安倍さんに食べに行ってもらいましょうか。

○昨晩はこんな馬鹿な話を書くつもりはなくて、本当は午前1時からオバマの第2期就任演説を聞いて感想を書くつもりだったのです。ところがですな、NHKのBSでさえInaugurationの中継をしてくれないのです。その代わりにNFLやらドラマの再放送をやっておる。いやあ、情けない。NHKが、ではなくてオバマの人気のなさが、です。しばし深夜にCNNのサイトを試したものの、あほらしくなって寝てしまいました。

○今朝になって、ホワイトハウスのHPで演説をチェックしました。面白いことに、映像をクリックするといきなりユーチューブに飛んでしまうんですね。で、聞いてみましたけど、うーむ、普通のリベラルな大統領になってしまったかな、という感じです。拍手も少ないしねえ。4年前の興奮を思い出すと、やはり残念な気がいたします。

○もちろん中身を見ると、オバマらしいいろんな仕掛けがある。Journeyという単語を多用して、「アメリカの旅は終わらない」"Our journey is not complete until・・・”というのは、1回目の就任演説と呼応しているのでありましょう。4年前の演説がどんなだったか、思い出してみたい人は4年前の拙稿をご参照。アメリカの歴史を縦軸に使った趣向が今回も生かされているというわけです。

○ほかにも彼らしいいろんなこだわりがあって、聖書を2冊用意して1冊はリンカーン、もう1冊はキング牧師であるという。そして1月21日はキング牧師の記念日であり、次はリンカーンの記念日である2月12日に一般教書演説を行う予定になっている。リンカーンには、「シカゴ出身、アメリカ分裂を避けた大統領、共和党だけども自分は尊敬する」などの寓意が込められていて、キング牧師には「人種の融和」という理想がある。

○財政問題をめぐる対立では、このところオバマと民主党が攻勢に出ている。共和党はやや旗色が悪く、党内のまとまりも悪い。間もなく債務上限も来るし、いろいろ交渉の材料はあるので、2月から3月にかけての交渉は見ものです。

○それよりも心配なのは、オバマ外交がリベラル先祖返りをするんじゃないかということ。社会保障費を守るために軍事費を削り、財政を使わないように対外関与を減らし、あるいは中国に対する姿勢も宥和的になっちゃうかもしれない。日本としてはそれでは困るので、どっかでネジを巻かないといけない。日米首脳会談は2月の第3週になるとのことですが、この辺のやりとりはまことにビミョーなものになりそうです。


<1月23日>(水)

○今宵は「アメリカ再生へ オバマ大統領試練の2期目」というテーマで、BS11の「INsideOUT」に出演しました。なんだか1年ぶりくらいでありまして、スタジオの様子も以前と変わっている。キャスターは山口一臣さんで、コメンテーターは金子秀俊さん。そしてゲストは小西克哉さんと不肖かんべえでありました。あ、そういえば昨日はこの番組、ぐっちーさんが出ていたようで。気がつきませんで、これは失礼しました。

○思えば4年前の最初の大統領就任式でも、小西さん(当時はキャスター)と一緒に語ったのでありました。小西さんは「アメリカ人の耳」の持ち主なので、就任演説の微妙な言い回しや、オバマが「噛んで」いるところがちゃんと聞き取れる。当方はそんなことまで分からないから、一緒に話していて非常に勉強になります。そういえば4年前の番組では、あのときのオバマ演説の下敷きになっていた「バレーフォージの宿営」の故事を教わったんですよね。

○そして2009年演説と同じように、オバマは今回も「アメリカの旅」を演説のモチーフに使いました。だから"Journey"という言葉が何回も出てきます。2009年演説でオバマは、「アメリカの旅には苦しいときもあったけど、我々にはそれを続ける責任がある」というロジックで国民を鼓舞したのでした。そして2013年演説では、「この旅は未来にも続くものであって、それは男女平等や同性愛者の権利や移民受け入れを成し遂げるまで終わらない」というメッセージを発しています。過去から未来へと視点を変えつつ、保守派の心理をチクチクと刺激しているわけです。

○さらに演説の中には、"Together, we determined that ---", "Togerther, we discovered that ----", "Together, we resolved that---"という印象的なリフレインがでてきます。「共に○○しようではないか」と国民に向けて訴えかけているわけですが、その中身というのは@インフラ建設、A市場の規制、B弱者保護、なんですな。つまりはリベラルな理念なのです。「共に○○しようではないか」とはいうものの、○○の部分が左に向いているわけですから、右の人たちはそっぽを向くに決まっている。言葉は美しいけれども、秘かにケンカを売っているようなものです。

○2009年のオバマは、彼自身がまだ「出来上がって」いなかったこともあって、目指している方向は必ずしも明らかではなかった。だからこそ、中道を目指す政治家という印象があり、「彼ならばアメリカの再統合ができるんじゃないか」と期待した人が多かった。ところが4年間大統領をやってみたら、彼はごく普通の、そして演説だけは相変わらず上手な、リベラル派の大統領になってしまった。つまらんなあ、というのが正直な感想です。


<1月24日>(木)

○今週は「火曜と木曜は雪が降るかも」と言われていたのに、なんだか暖かい一日でした。思わずお昼に飯野ビルから東京商工会議所に出掛けるのに、歩いて日比谷公園を横断しちゃいました。

○気象予報士のずんこさんに聞いた話ですが、気象庁は先週の首都圏の雪で予想を外してしまい、各方面に多大な迷惑をかけてしまいました。(特に成人式の皆さんはお気の毒でしたねえ)。それで、「これから当分、見逃し三振よりは空振り三振!」というバイアスがかかっているのだそうです。つまり天気予報はしばらく大袈裟になるらしいですよ。エコノミスト稼業にも似たようなところがありますけど、大きく外しちゃうと後がつらいんですよねえ。

○そういえば昨日発表された月例経済報告は、8か月ぶりの上方修正でした。どうやら2012年の景気後退は、10月から11月ぐらいに底を打っていた模様です。予想外に早かった。いろんな意味で、アベノミクスはついているんですねえ。


<1月25日>(金)

○アルジェリア人質事件の犠牲者が無言の帰国です。本件について、メディアの盲点になりそうなことを少しだけ触れたいと思います。

○不肖かんべえは、20代の頃に商社の社内報編集担当者でした。あいにく記憶がかなり薄れているんですが、1980年代にインドで国内便の飛行機が墜落して、乗っていた当社(旧日商岩井)社員が死亡したことがありました。確か日本人駐在員が2人、現地のナショナルスタッフが1人、合計3人だったと思います(逆だったかもしれません)。

○そうなると新聞の扱いは、「乗客の邦人2人死亡」となるわけです。当然、2人の社員は社葬扱いになります。しかるに別の言い方をすれば、「日本企業の社員3人死亡」ということになります。少なくとも社内報としては、「当社社員が3人が死亡」と書くことになります。仕事中に亡くなったナショナルスタッフを、会社がどんな風に遇するかは、インドの同僚たちは当然関心をもって見守っているわけですし、他の国のナショナルスタッフだって気にするかもしれません。

○日揮さんのナショナルスタッフにどんな被害が出ているか、窺うすべはありませんけれども、会社としてはおそらく細心の注意を払っておられることと思います。そして日本の政府関係者やメディアなどは、そういうことには得てして無頓着になりがちであろうことも容易に想像がつきます。

○だいたい外務省の担当部課からして、名前が「邦人保護課」だったりするわけですから、外国人のことなど知ったことかということになるのかもしれません。でも、現地にいる駐在員は、そんなわけにはいかないことを知っている。この辺の落差、ちょっともどかしい気がしております。


<1月26日>(土)

○昨日に引き続き、おじさん世代商社マンの昔話をご紹介します。

○もう20年くらい前のことです。海外赴任する社員に対するリスクマネジメント研修というものがありまして、講義の冒頭で講師がこんなことを言い出しました。

「この中で誰か、ハイジャックに遭ったことがある人、居たら手を挙げてください」

○そんなもん普通は居るわけないのであって、察するに講師さんの毎度の「つかみ」質問なわけですが、その日はちゃんと手が1本上がったのであります。たちまち巻き起こる「おーっ」という歓声、そして拍手。なぜか「さすが!」なんて声も飛んでました。手を挙げたベテラン社員の方は、たちまちその場の英雄になってしまったのでした。

○聞けばその昔、フィリピンの駐在員をやっていた時に、国内便がミンダナオゲリラだか何だかに乗っ取られて、たいへん怖い思いをしたんだけど、一応無事に終わったんで、日本政府も会社も全然ケアしてくれなかった、とのこと。

「ちょうど日本では『よど号』乗っ取り事件があった頃ですよ。あっちは注目されて、乗客には手厚い保障があったというのに、こっちは何もいいことがなかったですなあ」

○この先輩社員、ぼやいてはいるんですが、その後の人生ではこの話を何度もセールストークに使ってきたと見えて、ちょっと得意げに語っておられたのを覚えております。こういうケースって、探せばほかにも見つかると思うんですよね。

○「俺は昔、こんな怖い目に遭ったことがある」というのは、商社マン定番の自慢話であることが多いです。「湾岸危機の時にイラクに居たために、サダム・フセインの『ゲスト』にされてしまった」とか、「9/11のときに世界貿易センタービルのすぐ隣に居て、後ろでビルが崩れてくる中を一生懸命走った」とか、「アフリカでクーデターに遭って、ジープに日の丸の旗をつけて逃げた。検問に合うと、『ジャパン、じゃぱーん』(われわれは害意のない日本人ですよ〜!)と叫んだ」とか、映画に出てくるような話がゴロゴロしています。ひとつ間違えば悲惨な体験になるところを、なぜかカラッと明るい自慢話になってしまうところが、おじさん世代の商社マン気質なんじゃないかと思います。

○さて、リスクマネジメント研修では、ひとつ重要なことを教わりました。

「あなたは飛行機の通路に立っています。目の前のハイジャック犯が銃を構えました。伏せなければなりません。さて、前に倒れるか、後ろに倒れるか」

○こんなもん、とっさの判断ですから、たとえ正解を知っていても、その通り動けるかどうかは分からない。でも、いちおう思考実験をしておくことは、けっして無駄ではないと思います。

○正解は後ろに倒れること。つまり犯人が持つ銃に近い側に頭を向けるのではなく、足を向ける方が少しだけリスクが低い、というのが理由です。ゆえに結論はこういうことになります。

「リスクマネジメントは、高度な常識です」

○最近の危険地帯の事情はよく知りませんけれども、会社は「プラント(工場)やコンパウンド(住居)はしっかりガードしているから安全です。ただし通勤のときは注意してください」と教えていたんじゃないかと思います。厳重に防備しているプラントに、武装したテロリストが殴り込んでくるなんて事態は、「常識はずれ」の事態ですから。昨年9月のベンガジ米大使館襲撃事件から、北アフリカの「常識」が変わっちゃったんじゃないかと思います。常識は常に修正が必要。そうでないと「高度」とは言えませんから。


<1月29日>(火)

○風邪で苦しんでおります。確か先月末もそうだったような。仕事の切れ目が来ると、途端にひいてしまうのである。なおかつ、町内会の火の用心があるからと言って飲み会、親戚の集まりがあるからと言って飲み会、接待があるからと言って飲み会、である。いかんわねえ。今朝の「くにまるジャパン」に出た際には、実はあんまり頭が動いていなかったというのは、リスナーにはちゃんとバレているのだろうか。うむむむ。

○「風邪というものは、薬を飲んで1週間、薬を飲まんで七日間」の法則からいって、まだ二日間くらい症状が続くのでありましょう(ちなみにこの間に葛根湯は2回だけ飲んだ)。うーん、こんな状況でも、今日はちゃんと締め切りの1日前に入稿したぞ。出来もそれほど悪くはなかったと思う。しかしあの原稿、いったい誰が読むのだろう。

○大崎善生『赦す人』(新潮社)を購入。団鬼六の破天荒な人生を描いている。確かにこれは、体調のいい時に読むべき本ではないような気がする。人生にはそういう時間も必要なのだと考えることにしよう。


<1月30日>(水)

○財務省で今度は予算の説明会。分厚い資料を見ながら早口の説明が続く。1時間の予定なるも、40分くらいオーバー。いつものことながら、国家予算は金額が大きいだけあって、実に多様で多彩な論点を包含している。しかもそのほとんどは、説明されて初めて気がつくようなものばかり。きっとその場にいる誰も気づいてないような問題も隠れているんだろうなあ。

○とりあえず誰でもすぐわかる「突っ込みどころ」を一つだけご紹介。

○平成25年度の実質成長率を2.5%と見込んでいるのは、「政府見通しにしては野心的」という評価もありそうだが、昨年の10月くらいに景気が底を打っているという今の感じでは、わりと堅い数字ではないかと思う。ただし、名目成長率が2.7%(デフレーターが+0.2%)というのは、少々鉛筆なめとるな(あるいは経済をなめとるな)という気が・・・・。

○終わってから同業者としばし雑談。「ところで日銀総裁人事は・・・」てな話になるのだが、ふと矛先がこちらに向かって、「ところで溜池通信ではどんな風に取り上げるんですか?」と聞かれる。むむっ。私に期待されているのは、またしてもこれをネタにしたギャグを提供することであったのか。そういえば、これは10年前のネタであった。いやあ、これを書いたころは弊社は経営危機でねえ・・・。(今はそうじゃないのか、という突っ込みはご容赦くださいね)

○先ほど読了した『赦す人』の中に、こんなシーンが出てくる。団鬼六がめずらしく弱気になって「いつまでもSMのようなことをやっていても何の意味も感じられなくなることがある」とぼやいていたら、その当時、よく鬼プロに遊びに来ていた渥美清がこう言って諭したという。「僕だって寅さんを好きでやっているわけではない。ただやってほしいという人がいるからやっているんだ」と。

○フーテンの寅さんの偉大なるマンネリズムには遠く及びませんが、当溜池通信にもきっと、「やってほしいという人がいる」のではないかと考えてしまった次第であります。いや、正直なところ、プレッシャーを感じているんですけど。


<1月31日>(木)

○本日公表された2つの景気指標について。

<その1>アメリカの2012年第4四半期GDP:▲0.1%

○普通に考えれば期待外れ、という評価なんでしょうけれども、内訳(寄与度)をみるとこんな風になっている。

個人消費 +1.52%
設備投資 +0.83%
住宅投資 +0.36%
在庫投資 ▲1.27%
純輸出   ▲0.25%
政府支出 ▲1.33%

○これは「財政の崖問題」を前に、政府支出や在庫投資が急にしぼんだことを受けた一時的な現象でありましょう。個人投資と設備投資のプラスが続いているということは、アメリカ経済は悪くないんだと思います。特に個人消費は重要ですが、実はこんな法則があるんですよね。

●2000年から2007年まで ≒平均+2%(リーマン以前)
●2008年T〜2009年U  ≒平均▲1%(リーマン渦中)
●2009年V〜現在     ≒平均+1.5%(リーマン以後)

○非常にきれいに出ているので、今回の「個人消費+1.52%」というのは、アメリカ経済がリーマンショック後の巡航速度に乗っていることを示していると思います。

<その2>日本の12月鉱工業生産速報値:88.9(季節調整値):前月比+2.6%

○先月時点の12月予測値が+6.7%という高いものであったため、数字を見た瞬間はちょっと脱力感がありました。ただし1月予想が+2.6%、2月予測が+2.3%ということは、むしろ3か月連続で着実に上がっているわけですから、こっちの方が形はいいですね。やはり景気は昨年秋で底を打っていて、2013年は最初からプラス成長ということで良いのではないか。

○結論として、日本もアメリカも悪いように見えて悪くない。やはり2013年は先進国経済再評価の年になるんじゃないかと考える次第であります。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki