<10月1日>(月)
○サプライズに満ちた9月が終わると、これまた無難には済みそうもない10月が待っている。そうえいば中国共産党大会は11月8日なんだそうだ。こりゃ米、中、日が揃って11月は政治決戦ですかねえ。
○朝一番は日銀短観。これはまあ想定の範囲内。前期比ちょいマイナスで、設備投資は強い。ただし先日の鉱工業生産を見る限り、景気は足踏み局面というよりは下り坂と見るべきなんじゃないかと思う。何より外需が良くなる理由がありませんからね。
○午後イチでソフトバンクがイー・アクセスを完全子会社化の報道あり。千本さん、とうとうやっちゃったのね。今使っているLTEのポケットWifiも、所詮は持参金のつもりだったのね。なんてズルい人。でも日本には、こういう経営者も居なきゃいけないと思います。
○夕方になって内閣改造。論功行賞が悪いことだとは思いませんけど、野田さんの人事下手、外交音痴は本当に変わりませんなあ。いくら恩義があるからと言って、城島財務相にいきなりG7のホストをやらせるとか、長浜環境相をカタールのCOPに送り込むとか、ご本人にとっては拷問かもしれないよ。たまには党内以外もちゃんと見ましょうね。
○何より文部科学省の皆さんに心からご同情を申し上げます。まあ、きっと2か月くらいの辛抱ですよ。とりあえず、今週後半にも行われる野田vs.安倍の党首会談が見ものですね。これで臨時国会の開催時期が見えてくるでしょう。幹事長会談では無意味、というところに妙味があります。
<10月2日>(火)
○今宵はかれこれ20年くらい続いている勉強会の仲間が集合。かつては30歳前後で血気盛んであった連中が、今では50歳前後となり、こんな話題にうつつを抜かしている。
●定年とその後の身の振り方
●老眼が辛い
●孫ができた
●年金はいつから
●ところで民主党は何とかならんのか
○この手の集まりとしては、平均的な傾向ではないかと思う。あっという間に時間が過ぎて、再会を約して解散。会費は個室飲み放題にて5000円也。また楽しからずや。
<10月3日>(水)
○かつて自民党総裁選挙は、公職選挙法の埒外と言うことで、文字通りやりたい放題であったそうです。今から40年前の角福戦争などは、巨額の現ナマが乱れ飛ぶ無法地帯であったというのが語り草です。
○そんな中では、節操もなくいろんな陣営から「ごっつあんです」とやらかした議員も少なくなかった。「ニッカ」(2か所からもらう)、「サントリー」(3か所からもらう)、「オールドパー」(全部の派閥からもらう)などという隠語があったとのこと。
○さすがに今ではそういうことはなくなったそうで、各議員が自分の応援する候補者のために、党員宛てに郵送する「お願いの手紙」も自腹の持ち出しになったとのこと。健全になったというのか、いずこも同じというのか、いかにも年月を感じさせる話であります。
○ちなみに現状は「シングルモルト」と称するのだそうです。以上、元ネタはこの人でありました。
<10月5日>(金)
○オバマ対ロムニーの第1回テレビ討論会については、今日の溜池通信でも書いたところですが、若干の補足をここで書いておきます。
○ロムニーは相当に練習してきましたね。基本的に彼は不器用なタイプだと思いますが、必要があれば努力を積み重ねて自分を変えられる人間なのだと思います。元ガリ勉タイプであるだけに、そういうことができる人なんですな。この辺は端倪すべからざるところであろうかと思います。
○同じようなことがオバマにも当てはまると思います。2回目の討論会では、おそらく2008年当時のオバマが復活してるんじゃないでしょうか。大統領のオバマから候補者のオバマへ。2期目の切符を得るためには、そういう変身が必要です。オバマはそのことがわかっているだろうし、自分を変えることができると思っていると推測します。
○それとは別にして、内政に関する第1回討論会を見ていて、今の米国経済に関する重要なヒントを得たような気がします。
(1)明るい話をする際に、真っ先に出てくるのがシェールガスの話。「エネルギーを自給できるようになる」というのは、アメリカにとって途方もないドリームなんでしょうね。
(2)ロムニーも「中間層が第一」と言っていた。今のアメリカ経済を語る際に、最重要課題はこのミドルクラスでありましょう。そしてそのことは、日本や欧州でも同じです。
(3)年金や医療の話が出てくると、急に議論が深刻さを帯びてきた。アメリカは人口増が続いている国で、少子化は確かに起きていないけど、高齢化はちゃんと進んでいるのですね。
○テレビ討論会は、次がタウンミーティングで、その次が外交問題です。まだまだ新しいネタが出てくることを希望しています。
<10月7日>(日)
○眠いのにも耐え、フジテレビのうざいCMにも耐えて、『MR.サンデー』を見ていたのに・・・・。オルフェーヴルがトップに立った時点で歓喜の声をあげてしまったのに・・・・。伏兵の牝馬ソレミアに差されてしまった・・・・。とほほほほ・・・・。
○このショックに比べれば、今日の毎日王冠(なんでカレンチャンは来ないのに、カレンブラックヒルは来てしまうんだ!)の敗戦など可愛いものである。たとえ金銭的な実害が伴わなくてもね。それにしても、今日のエイシンフラッシュはどこを走っておったのか。ああ、思い出すと腹が立ってきた。
○とはいえ今日のオルフェーヴルは、日本の三冠馬はこの程度には強い、ということを世界に知らしめてくれた。その点は、同じく凱旋門賞で2位になった1999年のエルコンドルパサーや、2010年のナカヤマフェスタとは少々違うかもしれん。日本の競馬界のレベルはかなり高いです。
○レース後の池江調教師のインタビューが良かったな。世界の壁に挑もうとする日本人の片思いの情熱のようなものを感じさせてくれました。凱旋門賞が本当にそんなすごいレースなのかどうか、疑問がないわけではないのだけれど、挑戦する気持ちの方が大事なのである。
○そういえば今週はノーベル賞の発表もありますな。日本勢の健闘を祈りたいと思います。(→後記:山中伸弥教授が早速やってくれましたね。おめでとうございます。オルフェーヴルとは何の関係もないのでありますが。この調子だと、ひょっとして村上春樹も?)
<10月8日>(月)
○この3連休は、競馬の合間に中国関連の研究書を読んでおります。
○まずはリンダ・ヤーコブソンの「中国の新しい対外政策」(岩波現代文庫)。元はSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)による中国研究プロジェクトの邦訳である。2010年秋にこの報告書が出たときには、「いまや対中研究は、日本よりも欧米の方が進んでいるのではないか!」という悲鳴が湧きあがったといういわくつきのもの。中国の政策決定者に対する、丹念なインタビューの成果である。
○尖閣諸島の国有化に対する先方のキツイ反発を見たりすると、われわれはついついスッキリした説明を求めたくなります。でも、本書によれば中国はもはや独裁国家ではなく、政策決定に関与するアクターが非常に多くなっていて、しかも相互に対立し、権限が重複しているのだという。陰謀論の誘惑を退けて、あるがままを見るように努めるべきでしょう。
○次に遠藤誉氏の新著『チャイナ・ジャッジ』(朝日新聞出版)。前作の『チャイナ・ナイン』からさらに踏み込んで、重慶事件に関する非常に深い考察を加えている。ほとんど推理小説のような面白さだ。薄煕来とその父、薄一波のやってきたことは、なんと恐ろしいことであったか。本の帯には「実録!! スパイと権力のサスペンス」とあるが、「これぞまさしく中国史」と表現する方が的確ではないかと思った。まさしく資治通鑑に出てくるような権謀術数の世界は、今も健在なのだというのが実感である。
○もうひとつは、最近ご無沙汰している川村純彦さんによる『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力』(小学館101新書)。チャイナウォッチャーの間で評判になっているので慌てて買いました。尖閣諸島をめぐる軍事的リアリズムを描いたタイムリーな好著。ところで川村提督、ご一緒に日中安保対話をやっていた頃に比べて、それほど大きく状況が変わっているわけではないということでよろしいですかね?
○最後にたくさんのお誕生日メッセージに深謝申し上げます。
<10月9日>(火)
○凱旋門賞直後の池江調教師のコメントもよかったし、昨日の山中伸弥教授の記者会見もすばらしかった。だが、今宵のアニキ金本の引退挨拶も、非常に感動的であった。どうしてこういうことは重なるのだろう。この道一筋に生きている人たちが、ここぞというときに残す発言は、本当に胸に沁みいるようなところがありますなあ。(ノーベル賞とスポーツ選手を一緒にしてはいかんという気もするが、受け止める側のワシの気分としては等価なのである。諒とされたし)
○そしてファンに別れを告げる金本は、本当にいい笑顔でありました。NHKの解説、鈴木啓志が「もう勝負師の顔じゃなくなってますね」と評していたが、「この道一筋」から解放された瞬間の人間は、そんな風になるものなのかもしれません。ここ一番というときに、金本に打順が回ってくれば何とかしてくれる。そんな場面が何度も何度もありました。
○さて、直近の3年間はともかくとして、金本が主軸を打っている間の阪神タイガースは、「チーム最強の選手がもっとも練習熱心」だったわけで、監督からすればこんなに管理が楽なチームはなかったはずである。お陰で2回優勝したし、お客もよく集まってくれたわけだが、来年は大変だぞ。チームの精神的支柱はもちろんのこと、四番もエースも正捕手も見当たらない。今年のストーブリーグは、タイガースが主役かもしれませんなあ。
○当方も阪神ファンとしてはベテラン、いや、晩年の域に差し掛かっておりまして、今さら一喜一憂する気力にも欠けております。うーん、これはあと2〜3年は低迷かなあ。まあ、阪神はそんなにしょっちゅう勝つチームじゃないと思うので、気長に次のビッグウェイブを待つことにいたしましょう。今日のところは、ありがとうアニキ、アンタには本当に世話になった。古い阪神ファン(彼が言っていたほど温かくはないと思う)の一人として礼を言いたいと思います。
○と、ここでふと思い起こすのは、先日乗ったタクシーの運転手さんが「安藤勝巳」というお名前であったことである。思わずこんな会話になってしまった。
「運転手さん、すごい名前だね」
「ああ、お客さんも競馬ファンですか。よく言われるんですよねえ」
「アンカツは最近ちょっと調子が悪いんだけどね」
「もう年なんでしょう」
「そう言うなよ。俺と同じ年なんだからさ」
「でも一時期のアンカツはすごかったんですよね」
「それはもう。何度もお世話になったもんだよ」
○最終レース、その日の浮き分を全部アンカツ騎乗の馬の複勝に賭けるとか、そういうことを何度かやったものだが、まず裏切られることはなかった。とまあ、こんなに信頼度が高かった騎手も、最近は全然来ないし、最近ではワシも「今日も1日に騎乗が1レースか。こりゃ来るわけねえな」などと判断するようになっている。彼もまた、どこかで区切りをつける日が来るのであろう。そのときの引退の辞は、ぜひその場で聞き届けたいものである。
<10月10日>(水)
○本日は中部電力の浜岡原発を見学に行ってきました。
○先日も経団連会長が行ったばかりだそうですが、説明を聞いていて何度も意表を突かれました。津波対策で巨大な防波壁を工事中であることは聞いておりましたが、そういうハード面と同時に、システム面の防災対策が取られているのですね。それも、「ここが破られた場合はこうします」「それでもダメならこの手があります」という、3/11以前にはタブー視されていたようなコンティンジェンシープランが検討されている。なんだかトヨタの工場で説明を聞いているような錯覚を覚えました。
○それというのも、東海地震がいつ来るか分からないという状況がある上に、昨年、「世界で一番危険な発電所」であるとして、菅首相から停止を「お願い」されてしまったというトラウマがある。そこで関係者一同が、「だったらとことん、安全を目指してやろうじゃないか」という熱意に燃えたのではないかと思う。なにしろ社員教育用に、「失敗に学ぶ回廊」という施設を研修所に作るなど、日本企業としては珍しい努力をしているのである。
○実際問題として考えると、再稼働への道はかなり険しいだろう。現時点の原子力行政は、「まずは原子力規制庁が信頼を獲得すること」が最優先で、それができた後に電力会社の信認回復、ということになるのではないかと思う。しかも過去の経緯から行くと、「再稼働があるにしても浜岡は最終ランナー」になりそうである。ところが、「浜岡の努力がいちばん進んでいる」という逆説的な状況が生じている。危機を抱えた組織ほど自己改革が進むという力学は、この世界ではときどきある現象であると思いますけれども。
○ということで、夜遅くに帰ってきたら、いろんな方々から「NHKの再来年の大河は軍師官兵衛ですよ!」とのお知らせが。うーん、官兵衛さんは戦国武将であって、軍師と呼ばれるとご本人は不本意なんじゃないかと思いますなあ。とはいえ、10年以上前からネット上で「かんべえ」を名乗っている当方としてはちょいと気になるところです。
<10月11日>(木)
○今年のアメリカ大統領選挙、前回に比べて面白くないという評判がもっぱらで、当サイトも4年前に比べると盛り上がっていない。9月下旬には、共和党全体にもあきらめムードが流れていたらしく、それこそ集中力が途切れかねない状態であったらしい。幸いなことに、第1回のテレビ討論会でロムニーがいいところを見せてくれたので、少しばかり勝負が引き締まった。お陰でワシのところにも、投票日前後のテレビやら座談会やらの依頼がぼつぼつやってくるようになった。4年に1度の季節労働者としては、まことにありがたいことです。
○それというのも、毎回書いていることですが、今年は与野党の対立軸が非常にはっきりしている。例の「雇用重視か財政規律か」という話でありますが、こんなに重要な選択が一方的に決まってもらっては困るのであります。そこはやはり、厳しいディベートがあった上で、ギリギリのところで決断してもらいたい。おそらくはその後に総選挙が行われるであろうわが国にとっても、これは他人事ではない決定となるはずです。
○さて、日本時間の明日午前には副大統領候補の討論会が行われます。今度はポール・ライアンの「初陣」が気になりますね。ベテランだけど失言の多いバイデン、若いけど政策に明るいライアンという対比になりますが、これはこれで楽しめそうですね。ここでライアンがポイントを稼ぐと、次の大統領同士のタウンミーティングの際にオバマにプレッシャーがかかる。ここまで来ると、とにかく少しでも盛り上げていただきたい。
○ちなみに金曜夜の「ニュースの深層」では、テレビ討論会の歴史に焦点を当てた番組を放映いたしますぞ。見てやっておくんなまし。
<10月12日>(金)
○都内で開催中のIMF世銀総会について、何か書こうと思っていたのですが、このコラムを上回ることは書けないということを発見。無条件降伏であります。
○東京を訪問中の1万人の会議関係者の方々、およびそのご家族の皆様、どうぞこの週末はごゆっくり観光をお楽しみください。時節柄、中国人観光客はあらかじめ少なめになっております。
<10月14日>(日)
○えー、ちょこっとだけ上海に行ってきます。実はかなり前から決まっていた出張なんですが、こういうときだけに取りやめになるかというと、こういうときだけに普通にやるべきであろうということになり、いろいろ見聞してまいる所存です。
○秋華賞が見られないのはちょっと残念でありますが。それでは行ってまいります。(6:25am)
◇ ◇ ◇
○飛行機はガラガラかもと思ったら、ANA便はほぼ満席に近かった。虹橋空港の入国審査も、待たされることもなく簡単に通過。せめて税関で意地悪でもされないかと思ったら、こちらもほとんど見ていない。街に出てみれば、ちゃんと日本車も走っているし、1か月前の反日デモの形跡はほとんど見られない。うーん、拍子抜けするなあ。
○とはいっても、騒動のあった日本領事館前には青いテープが張られていて、目立たないような形で警官も立っている。ほんの少し前までは、道路の入り口にコンテナを2個並べて、入りにくくしてあったとのこと。じょじょに警戒が緩んできている様子である。
○新天地という繁華街に行ってみると、思い思いに休日の午後を過ごす人たちが居て、いかにも天気のいい平和な光景である。スタバで行列している女性たちを眺めると、この街のファッションは数年前に比べても着実に進化を遂げているなあ、などと感じる。テラスの席には、日本人どうしで賑やかにビールを飲んでいるグループもおりましたな。
○晩飯は、現地で働く会社の元同期のN君とM君と一緒に。季節としてはハシリの上海蟹を頂戴する。美味である。日本人経営の店なのだが、いくら日曜の夜であるにせよ、時節柄、お客の入りはよろしくないのである。「こういう時期だから、ちゃんと日本人経営の店にお金を落とそう」というのは、けっしてケチな料簡などではないと思うのである。
○ホテルの部屋で、Facebookを開こうとしたらつながらなかった。ここはやっぱり中国である。ただしお金を払えばちゃんとFacebookにつなげるという裏技も存在するらしい。そういうところも、やっぱり中国といえましょう。(23:04pm)
<10月15日>(月)
○久々に中国で白酒(バイチュウ)を飲んだら、ホテルに帰ってそのままつぶれてしまった。これは本来、中国のお客さんとの戦闘用のお酒であるが、なぜか日本人同士で飲んでしまったのである。そして今宵もまた上海蟹なのであった。
○この季節になると、蟹を目当ての日本からの出張者が急増するということになっているのであるが、今年はさてどうなることか。上海蟹もまた、日中関係悪化の犠牲者になるのであろうか。当地では「今年は不作」との声もあるのだが。
<10月16日>(火)
○あっけなく二泊三日で帰ってきました。
○で、あらためて尖閣問題をどう考えるのか、日中関係はこれからどうすればいいのかとなると、知恵が浮かびませんなあ。とりあえず時間はかかりそうです。向こうの共産党大会が無事に終わって、おそらくはこっちの政権も代わって、できれば来年3月の全人代も何事もなく済んで、さて、それからゆっくり考えましょうかね、という感じでしょうか。
○先方さんは、急いで対日関係を修復する必然性を感じていない様子があって、それは誤解だと思うんですけど、その誤解は半年かそこらは続くんじゃないでしょうか。中国向けの商売については、差し当たってはクルマでありますね。日本車が壊された、という事実の前には、購買意欲は冷え込むでしょう。現地の自動車販売と自動車部品の輸出は打撃を受けそうな感じです。その分は欧州車が売れるんでしょうけど、中国としては「ヨーロッパを助ける分には構わない」(その分、対欧輸出が増えるから)という計算が成り立つので、そのまま放置しちゃうかもしれません。
○それ以外の商品については、今のところそれほど影響は出ていないようです。家電関係などは、あまり他人に見られるものじゃないので、売れ行きはさほど変わらないという観測があります。他方、企業間ビジネスにおいては、「今回だけは日本企業からは買えません」的な話があるそうですから、こっちも長引きそうです。なにしろ日本以上の空気社会ですから。これって漢字を使う国の特色でしょうかね。それから、今回の事件の最大の被害者は「日本人駐在員がよく出入りする水商売関係の店」じゃないか、などという噂もチラホラと。
○中国から帰ってくるときは、なぜかいつも機上から富士山がきれいに見えるんですよね。夕日に染まった富士がとても美しかったです。帰ってくると、ちゃんとFacebookもつながるし、グーグルも香港に飛ばされたりすることはないし、この国はまことに結構なことであります。
<10月17日>(水)
○ガーン。今日のNHKのBS放送は、テレビ討論の第2回を中継してくれないのです。大リーグの方が大事であるらしい。ううむ、それもそうか。
○しょうがないから、ここをチェックする。今回の討論会について、CNNは46%対39%でオバマの勝ち、CBSは37%対30%でやはりオバマの勝ち、としているそうです。以下の部分が面白いですね。
There were plenty of zingers this time.
When Obama mentioned Romney's investment in Chinese companies,
Romney asked if Obama had looked at his pension and Obama shot
back: "I don't look at my pension. It's not as big as yours
so it doesn't take so long." When the subject of energy came
up, Romney said: "This has not been Mr. Oil, or Mr. Gas, or
Mr. Coal." Obama shot back: "When you were governor of
Massachusetts, you stood in front of a coal plant and pointed at
it and said: `This plant kills.'" At the very end of the
debate, when Romney had no chance to reply, Obama brought up the
"47% remark," saying "Think about who
he was talking about: "the elderly receiving Social
Security, veterans, students and soldiers." Obama
said that unlike Romney, he wants to be President of all
Americans
○特に最後の部分は、オバマさんも意外と人が悪い。残り時間が無くなって、相手が反撃できなくなってから「国民の47%は所得税を払っていない」失言を蒸し返し、「それって年金暮らしの老人や復員兵や学生や兵士たちのことじゃん」とやったようです。
○ただしエレクトラル・カレッジの予測数字をチェックすると、10月17日分の数字は、「オバマ277対ロムニー239、未定22」である。ずいぶん雰囲気が変わりましたな。ロムニーが勝つためには、「バージニア、フロリダ、オハイオ」の3大激戦州をゲットする必要がありますが、現時点でフロリダが薄い赤になり、バージニアはタイ(白)になり、オハイオは薄い青となっている。アリゾナやニューハンプシャーも薄い赤に転じております。かな〜り挽回しましたね。残り3週間、やっぱり最後は僅差の戦いでしょうか。
○ちなみに、いつも見ているここによれば、今宵はオバマ株が1.9ポイント上げている。ということは、大統領がらしさを取り戻したということでありましょう。だったら戦いは振出しに戻る。普通に戦っていれば、現職が有利になるんです。緒戦はロムニーが不意打ちに成功しましたが、第2戦ではそうはいかなかったということだと思います。
<10月18日>(木)
○明日は党首会談だそうですね。仄聞するところによれば、官邸は既に安倍さんの携帯番号を知ってるはずなので、腹の探り合いは終わっているはず。でも、政治家同士なんだから会わないことには話が始まらない。会うはセレモニー、ということですな。
○で、解散総選挙の時期はどんどん後ろにずれていきそうです。自公両党は「12月9日が期限」と言ってますけど、これは「12月2日が仏滅で、12月9日が大安吉日だから」でありましょう。とはいっても、臨時国会で特例公債法案を真面目に手掛けるとなると、あんまり時間は残されていない。これはやっぱりセカンドベストで、年明け通常国会に予算案を上程してから解散、ということになるのかもしれません。
○その点で、この人の読み筋は参考になりますね。
Q:民主党代表選と自民総裁選が終わり半月たった。国会が開けない。党首会談もできない。国民は違和感。打開策は
A:ぼつぼつ潮時だと思っている。谷垣さんが退陣したのは解散に追い込めなかったのが最大の原因。だから安倍は間違いなく会談をしたら解散の時期をせまる。ところが野田サイドはそれだけは言わないという態度だから時間がかかっている。事実、解散の時期だけはおかしなもので総理だけが知っている。側近にも相談しない。解散時期については嘘をいってもいい。中曽根の寝たふり解散もあった。残された任期は一年足らずだからその間の裁量権、決定権は総理だけにある。そのことを聞くのもいささか問題。聞いても言わない。ところが安倍はそれを引き出さないと前任者の轍もある。特例公債を通さないと、自衛官、警察官などの給料も滞る。国民生活には深刻な影響が出る。選挙法が違法状態にあって1票の格差で違憲判決まで出ている。これは処理しないといけないが合意できていない。民主、自民で合意できても公明が比例部分の削減に反発する。こんなばかなことを放置して良いのか。区割りにも最低三ヶ月いる。選挙制度の区割審査委員会に持ち込むことを考えると緊急に処理して3カ月を残して年明けに解散に踏み切るのは憲政の常道であり、国民も求めている良識だ。近く総理にも会うから真剣に提言しようと思う。両党は最後のお互いのしのぎあいにはいっている。
Q:3カ月というのは周知期間。
A:裏でいわれているのは仮に今のまま選挙しても全部が無効にならない。次のことさえ決めておいて、今回だけ現行選挙区で施行しても違憲は逃れられる。決定できないことは立法府の権限自身を放棄するような話だ。
Q:近いうち解散に目がいっているが、参院選のほうは
A:参院は一方の格差は5倍以上。これは1人区。全国29ある。ところが東京やらは5人だしてもまだ人口が多い。参院制度を抜本的に改革しないとねじれが必ず起きる。衆参が同等の権利をあるうちはいつの場合でも参院のほうが問責も出せる、参院のほうがえらくなる。1人区は小さい県。保守地盤で自民に有利なところ。自民はなくしたくない。しかしこれを残したままでは一票の格差は放置され国民にベネフィットを与えない。政治改革のときに小選挙区に変えるのにどれだけの時間と労力がかかったか。それと同じ労力がかかるかもしれないが、ねじれの解消は制度から変えないと。
衆院で負けると、次は参院で勝つという国民の不思議な振り子の論理もある。
○「民主の中でもかなりの悪質なものは出た。残っているのはかなり良質な部分」という評価も面白いと思う。でも、まだ「バカ」と「ズル」が残っておりますがな。あの二人が選挙で落ちたら、民主党を応援してもいいんじゃないかなあ。
<10月20日>(土)
○党首会談は物別れ。かくして何事も決まらない。そして今のままでは、補正予算も、特例公債法案も、ゼロ増五減も、予算編成も、エネルギー政策も、対中関係も前に進まない。決められない政治そのままでありますな。
○特に特例公債は、「日本版財政の崖」問題みたいなもの。下手をすると1年分の赤字国債を、ほんの2〜3か月で消化しなければいけなくなる。それで入札が不調に終わったらどうするんだろう。まことにもってチキンレースそのもの。
○とにかく解散してリセットボタンを押すべきだと思う。リセットボタンを押せるただ一人の人は、本心では「年内でもしゃーねーなー」と思っているだろう。ただしそれを口にした瞬間に、仲間の大量虐殺になってしまうので、少なくとも直前までは言えない。リセットをさせたい側の人間は、それが信用できない。騙されたら、身内からボロカスに言われるだろうし。
○かくしてにらみ合いが続く。こういうのを「衆院のジレンマ」っていうんですかね。
<10月22日>(月)
○今治商工会議所の講演会で愛媛県今治市へ。ここは造船とタオル産業が有名で、「四国で唯一製造出荷額1兆円超」の堂々たる工業都市である。円高に苦しみつつも、その経営努力は端倪すべからざるものがある。ということで、つい先月、商社の調査担当者の親睦会「水曜会」が夏のアウティングで訪ねたばかりの場所である。が、ワシは残念ながら参加できなかったのである。今日になって、少しだけその仇を討った感あり。
○ここ今治市は、昨日のB1グランプリでご当地名物「焼き豚卵飯」が3位に入ったという慶事もあったのだが、ワシ的にはこれが一番のツボであった。そう、ご当地ゆるキャラの「バリィさん」である。地元名物の焼き鳥にちなむ鳥キャラで、あたまの橋は来島海峡大橋、おなかの腹巻はタオル、手に持つ船は造船所、全身で今治市を表現しているのです。ということで、バリィさんグッズを山ほど買ってきてしまいました。
○ついでにもう少し宣伝です。ただいま「ゆるきゃらグランプリ2012年」の開催中です。なんとバリィさんが堂々の第1位。県代表ではなく、市の代表としては未曽有の大躍進といえましょう。皆様もぜひ、応援よろしくお願いします!
<10月23日>(火)
○3回目の、すなわち最後のテレビ討論会が終わりました。1回目はロムニーが勝利、2回目はオバマが勝利、3回目は僅差だがやや大統領有利か、といった分かれであるようです。これで両者の直接対決の機会はもうありません。11月6日の投票日まではもう2週間となりました。競馬でいえば、第4コーナーを回って、いよいよゴールが見えてきたという地点です。
○いつも参照するintradeでは6対4でオバマがリード、Electoral Voteではオバマ281対ロムニー244、不明13となっています。このままなら大統領が逃げ切りがちですな。でも、最後はやっぱり僅差になるんじゃないか、という気がしてきました。
○というのは、「概して保守層の方が、ギリギリになってから態度を決める」という経験則があるからです。日本の2009年衆院選挙では、「もうダメだろう」と言われていた森喜朗さんや塩崎さんが、開票してみたら首の皮一枚で生き残っていましたよね。世論調査というのはいつも過去のデータですから、投票日の直前になって決める人の考えは反映できないんです。2009年選挙では、民主党に入れると決めた人は、かなり早い時点からそう決めていた。ところが自民党に入れた人は、悩んだ末に決断をした。そういう部分は世論調査では読みにくいのです。
○今回のオバマ対ロムニーにおいても、おそらくオバマ支持者の方が早くから投票行動を決めている。期日前投票を済ませてしまう人も少なくない。対するロムニーは、共和党予備選が長引いたように、もともと党内の基盤が強くない。だから、「俺はモルモン教徒なんか嫌なんだけど、まあ、しょうがねえかっ!」などと言って、これから動いてくれるかもしれない「のり代」を残している。
○そんなわけで、まだ態度を決めかねている白人の無党派層の取り合い、というのが最後の勝敗を左右するのではないかと思います。
○ひとつだけ注目点を挙げると、11月2日の雇用統計ですね。それもNFPじゃなくて、失業率の方。7%台の数字がもう1回続くと、オバマが言っていることに説得力が出てくる。逆に8%に戻るようだと、ロムニーの目が出てくるでしょう。
○「2012年は盛り上がりに欠ける」などと散々言われてきましたが、最後はやっぱり手に汗を握ることになりそうです。ええ、4年に1度の季節労働者としては、そうでないと困るんですよ。え?日本シリーズ?それってどこでやっているんですか?
<10月24日>(水)
○昨日の続きです。
○思うにロムニーさんは、共和党予備選が長引いたこともあって、自分自身に対するポジティブなイメージを打ち出すことができないでいました。その間隙を埋めたのは、オバマ陣営の巧みなネガティブ・キャンペーンで、「庶民の気持ちがわからない大富豪」というイメージが定着してしまった。このため、ロムニーは全国規模の支持率調査では、ほとんどオバマを上回ることができずにここまで来てしまいました。
○ところが3回のテレビ討論会を通してみると、「これがロムニーなの? そんなに悪くないじゃん。こういう大統領もアリかも」という印象が残った。思わぬ拾いものかも、という感じですね。3回目の討論会などは、ロムニーはあえてオバマ批判を避け、中道に歩み寄って意見の違いが少ないとことを示していたと思います。「どうせ皆さん、外交なんて興味ないでしょ? まあ、私だってオバマ程度にはやりますから」という線で済ませるつもりだったんじゃないでしょうか。むしろ、畳み掛けるように攻撃を仕掛けるオバマが、「大統領なのに大人げない」という印象を与えることを狙っていたのかもしれません。
○9月中旬には共和党は完全にあきらめモードでした。だからintrade.comでは、オバマの勝率がいっとき80%近くまで行った。それが今日見ると、昨日からさらに5P減って55%まで急落している。つまりは共和党支持者が「勝てるかもしれない」と思い始めた。眠れる獅子が目覚めてきた、ということだと思います。ということで、残り2週間はますます面白い。
<10月25日>(木)
○石原新党が立ち上がるそうで。いやあ、驚いちゃいましたなあ。
○石原さん一人というわけじゃなくて、おそらく「たちあがれ日本」が合流するでしょうから、最初から国会議員5人はいるわけですから、話は早そうな気がします。あそこは秘書さんたちがしっかりしてますし、寝業師もおりますしね。たぶん民主党内にも、既に手は回っているんじゃないでしょうか。
○期待を込めて申し上げますが、こうなったからには臨時国会の情勢は一変すると思います。だって不信任案成立の確率が一気に高まったもの。民主党の保守派で、次の選挙が危ない人たちにとっては、石原新党への合流は天から降りてきた蜘蛛の糸みたいなものでしょう。松原仁さんなどは、よりによって選挙区の相手が石原宏高さん・・・・なんてケースもありますけどね。
○かくなる上は、自民党は一刻も早く三党党首会談を開いて、臨時国会に向けての協議を進めるべきでしょう。特例公債法案など、やり残しの宿題を片づけて、一気に解散へ。今ならまだ12月2日(仏滅)、9日(大安)、16日(友引)に間に合うかもしれません。ベテランの政治記者さんたちから、「もはや年内は間に合わない」という説明を聞くたびに、「そんなの嫌だ〜、早く現政権をリセットしろ〜」と思ってきたのですが、これでちょっと展望が開けた気がします。
○一方で、「2020年に東京五輪なんて来てほしくない」と思っていた人たちにとっても、これは朗報かもしれませんな。そういう点では、いささか無責任な行動といえましょう。
<10月26日>(金)
○思えば2008年の米大統領選挙では、「ヒラリー・クリントンのファッション」とか、「オバマがこんなことを言った」とか、「サラ・ペイリンって、こんなに面白い」などと、夕方のテレビがよく取り上げてくれたものです。その点、2012年選挙はサッパリで、このまま盛り上がりのないままに終わってしまうのかと残念に思っておりました。ところが残り10日となってみると、オバマ対ロムニーは意外なほどに接戦で、さすがに世間の関心を集めつつある。いやあ、良かったよかった。
○以下、不肖かんべえが出演予定の番組のご紹介です。これらは全部、米大統領選を取り上げてくれるんです。4年に1度の季節労働者としてはまことにありがたい。
●10月28日(日)午前9時〜10時 NHK「日曜討論」
●11月2日(金)午後8時〜9時 朝日ニュースター「ニュースの深層」
●11月2日(金)午後10時〜10時50分 NHK BS1「ワールドWAVEトゥナイト」
●11月3日(土)午後12時5分〜12時30分 テレビ東京「マネーの羅針盤」
●11月7日(水)午前5時45分〜6時40分 テレビ東京「モーニングサテライト」
○「日曜討論」に出るのはこれが初めてですが、「サンプロ」の残党としては奇妙な感じです。ちなみに10月28日当日は補欠選挙がありますので、NHKとしてはこの日は国内政治を取り上げにくいらしく、「石原新党」ではなく「米大統領選」がテーマとなります。司会の島田敏男さん、先日飲んだばかりですが、どうぞよろしく。またワールドWAVEトゥナイトでは、飯田香織さんとご一緒できるそうで、これまた楽しみです。
○ということで、よろしかったら見てやってください。
<10月28日>(日)
○NHK「日曜討論」の裏話を少々。
●渋谷のNHK放送センターではなく、紀尾井町にある千代田放送会館ホールから放送している。→永田町に近い方が便利ということのようです。
●「内容案」のメモは、わずかにA4一枚である。→詳細な台本があると思われがちですが、意外と簡単です。そういえば「朝生」の台本もA4一枚なんだよな。
●「発言は1人1回1分以内」ルールがあり、50秒を超えるとランプがつく。→ごく稀に、堂々と無視する出演者もいらっしゃるそうですけど。
●テレビとラジオで同時に放送している。→だからフリップの類は使えません。経済の話をするときにはちょっとツライです。
●ラジオの視聴者のために、発言の前には司会者がかならず「では、○○さん」と呼ぶことにしている。→議論が白熱してくると、吹っ飛んでしまいます。
●司会の島田さんは、全員の発言回数をちゃんと数えている。→今日は「渡辺さんが1回だけ少なかった」とのことです。
○などなど、「さすがはNHK」と思わせるルールがたくさんありました。しかし、個人的に一番驚いたのはこれです。
●NHKの送迎車は、ちゃんとNHKラジオがつけてある。→運転手さんに「J-WAVEをつけてください」と言ったら、果たしてどんな反応がかえってきたんでしょう。怖くて聞けませんでした。
<10月29日>(月)
○選挙戦の最終盤に来て、なぜロムニー人気が上昇しているのか。久保文明先生によれば、「金融危機の責任を全面的に問われた2008年でさえ、共和党は46%を獲得した。今回最低でも48%は獲得するであろう」(『オバマ・アメリカ・世界』(NTT出版)。だとしたら、最終的に接戦になるのは当たり前ということになる。かくして投票日を来週火曜に控え、いろんな予測が飛び交うことになる。
○ありがちな市場予測では、「オバマが勝つと株安、債券高(金利低下)、ドル安」となり、「ロムニーが勝つと株高、債券安(金利上昇)、ドル高」となるらしい。つまりトリプル安、もしくはトリプル高となる。考慮すべきポイントは以下のようなところか。
@議会はあいかわらず共和党優位になりそうなので、共和党大統領の方がスムーズにいく
Aオバマは金融規制(ボルカールール)に積極的
B共和党政権だとティーパーティーの影響が強くなるので財政は引き締め気味に
Cロムニーはバーナンキ議長の再任に否定的
Dロムニーが勝つと医療保険改革が巻き戻しに
○「財政の崖」についてはどうか。オバマ大統領が再選された場合、レイムダック議会に対して妥協を呼びかけるだろう。ただし議会選挙では、上院はかろうじて民主党が多数を守るかもしれないが、下院は相変わらず共和党が優位を維持するだろうから、そのまま衝突コースとなる恐れがある。年内の合意を得るためには、オバマの大胆な妥協が必要かもしれない。
○ロムニーが勝った場合は、大統領就任は年明け1月20日となるので、しばらくは政権移行期間となる。この場合、議会は問題の先送りを決めることになるだろう。共和党のペースで物事が動き始めることになる。ただし政権の本格稼働は年明け3月頃となるだろう。
○吉田恒さんによれば、米大統領選挙が行われる年は、選挙後に為替が大きく動いてその年の高値、もしくは安値を付けることが多い。すなわちドル高、ドル安の両方があり得るが、足元の動きから見て2012年の場合は1ドル85円くらいを目指すことになるのではないか、とのこと。
○しばらくは、この手の議論がにぎやかになるだろう。まあ、無理もありませんな。
<10月30日>(火)
○今週金曜日の雇用統計は、いつもにも増して重要な意味を持つことは、いまさら言うまでもありません。とりあえず以下は今年に入ってからの推移です。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
NFP(万人) | +27.5 | +25.9 | +14.3 | +6.8 | +8.7 | +4.5 | +18.1 | +14.2 | +11.4 | ?? |
失業率(%) | 8.3 | 8.3 | 8.3 | 8.1 | 8.2 | 8.2 | 8.3 | 8.1 | 7.8 |
○これで10月の失業率が「7.6」となれば、いかにも経済が立ち直ってきたなあ、という感じになる。逆に「8.2」くらいに戻れば、9月のあの数字は単なるまぐれかよ、と言われるだろう。ちなみに市場コンセンサスは「7.9」というビミョーな数字である。うむ、当たらんだろうな。
○NFP(Nonfarm Payroll=非農業部門雇用者増減数)の方も結構重要で、市場コンセンサスは「+11.8万人」である。この数字が9月の「+11.4万人」を上回るかどうかが運命の分かれ道である。下回ると、失業率が改善しても嘘くさく見えてしまうだろう。
○かくして11月2日の発表は、オバマ対ロムニーの両候補にとっては、まさに「決戦の金曜日」である。ところが、ここへハリケーンがやってきて、アメリカ東部は偉い騒ぎになっている。ニューヨークはLowerの方が水に漬かったそうだし、停電は数百万世帯に及び、ワシントンDCの連邦政府は閉鎖に追い込まれている。この分だと、「雇用統計は金曜日に出ないかもしれない」という気がしてくる。
○例えばこんなケースを考えてみよう。
(1)米労働省は、雇用統計の発表を週明け月曜日の11月5日(=投票日の前日)に延期するが、10月の失業率は「7.5%」であった。
(2)米労働省は、雇用統計の発表を週明け水曜日の11月7日(=投票日の翌日)に延期するが、10月の失業率は「8.3%」だった。
○これはもう大荒れ必至。(1)であれば、「政府は鉛筆を嘗めたに違いない」という批判が飛び出すだろうし、(2)であれば、これでオバマが再選になったときは「選挙をやり直せええええ」という声が上がるだろう。
○雇用統計の数字というのは、あとで大きく修正されることが多いので、終わってしまえばどうってことないんだけども、今回の10月データは投票日の直前だけに重いです。しかも台風のおまけつき。これがオクトーバーサプライズになったらどうしましょ。
<10月31日>(水)
○ハリケーン・サンディの被害は誠に甚大でありますな。死者はミニマムで50人、停電は500万世帯、浸水した地下鉄の復旧には数週間かかるかもしれない。
○今日、たまたまNYに出張中のストラテジストKさんから電話があったんですが、まことに難儀をされている模様でした。
「泊まっていたホテルが停電」
「復旧に二日かかるといわれた」
「仕方がないから、苦労して別のホテルを手当て」
「一方でアポイントはほとんどキャンセル」・・・・。
○まことにもってご苦労さまであります。日本だったら、「災害時にホテルは一番安全な場所」と言われておるのですが。
○現在のNYについては、このページの写真をごろうじろ。あの「3/11」でも停電しなかった国の住人にとっては、信じられないような被害です。余計なことですが、たとえばNY連銀の地下金庫は大丈夫なんでしょうか。ちゃんと自家発電装置、持ってるよね。いやはや、世界の金融心臓部はどうなっているのでしょう?
編集者敬白
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by Tatsuhiko Yoshizaki