<2月1〜2日>(土〜日)
○1月末に重たい仕事を終えたら、見事に風邪を引いてしまった。土日は自宅でゆっくり休養するつもりでいたが、土曜の夜の「火の用心」はあるし、日曜は上海馬券王が「馬券買ってきて」などというから、結局出かけることに。う〜寒かった。
○以下は業務連絡です。馬券王先生、中山10レースはちゃんと当たったけど、後は軒並み総討死にですな。それから小倉の12レースなんて売ってませんぞ。11レースの間違いだと思ったけど、それにしても14頭立てで、18番なんてありゃせんがな。買わずにおきました。ま、どっちにしろ来なかったから、関係ないですけどね。ちなみに当方は全滅でした。
○ということで、今週末は夕刊フジの書評も書いてないし、明日のJ−WAVEの予習もしてないぞ。不規則発言も手抜きモードである。お許しを。
<2月3日>(月)
○スペース・シャトル「コロンビア号」の墜落、いろんな見方があるようです。今日のJ−WAVE「Jam
the World」でかんべえの前に登場した神保哲生さんは、「ブッシュ共和党政権によるNASAに対する過酷な行革が原因」という見方を示していたそうです。なるほど、コロンビア号といえば1980年代前半から活躍しているから、金属疲労も相当な状態になっていただろう。こういっちゃ何だが、ブッシュ政権はミサイル防衛計画には熱心だが、宇宙開発に熱心とはついぞ聞いたことがない。
○そういえばアポロ計画が進んだのは、ケネディからジョンソンにかけての民主党時代。ニクソン時代になったら、急に熱意が冷めた。あの当時、『カプリコン・ワン』という傑作な映画があった。経費削減のために、アポロの宇宙旅行が「ヤラセ」になってしまう。宇宙飛行士たちは「演技」を強いられるのだが、主人公はそれを拒否してしまう。こりゃいかんということで、政府から追手が差し向けられる。哀れ宇宙飛行士は砂漠の中を逃げ惑うというお話しだった。この映画、のちに妻殺しの容疑で裁判になって、超有名人になったO.J.シンプソンが出ておった。70年代は遠くになりにけり。
○犠牲になった宇宙飛行士はまことに気の毒である。しかし、人間が新しいフロンティアに挑むとき、かならず犠牲は出るものだ。ひとりのコロンブスが誕生する前に、いったい何人が失敗したかは歴史も書き残していない。あらためて人が宇宙に行くことの重さを教えてくれる事件ともいえる。1986年と同様に、宇宙開発は停滞を余儀なくされよう。それでもまた、後に続く者が出てくるはずだ。その中には日本人も含まれているだろう。
○かんべえはロサンゼルスのリトル・トーキョーを訪れたときに、「オニズカ・ストリート」を見て感動した。紀伊国屋書店などがある通りに、1986年にチャレンジャー号で散った初の日系アメリカ人宇宙飛行士を称えたモニュメントが残っている。オニズカ大佐も無事に帰ってくれば、「宇宙に行ったことがあるOne
of them」になっていたかもしれない。だが、尊い犠牲になったことで、その名を冠した通りができた。こういう人のことをあの国は忘れない。だからこそチャレンジャーが続く。そうでなかったら、宇宙開発なんてできっこないじゃないか。
<2月4日>(火)
○本日、さる知り合いが「こんな笑い話があってさあ」と転送してくれたメールを見て唖然。なんと「みずほ銀行券」のオハナシではないか。「すいません、これ書いたのワタシなんですけど・・・」。まだ読んでない読者は、急いで昨年12月17〜18日の不規則発言をご参照。あ、そうそう、この創作の後半部分は、ホントはこの人のアイデアです。と、いちおう楽屋裏を明かしておこう。
○それから1月30日〜31日の「天国と地獄」のネタも、こんな掲示板で発展していることを発見。
http://dnakama.nothing.sh/bbs/fsbbs.cgi?mode=show&showno=2346
○これなんか、いい味出しているじゃありませんか。
天国とは何か
インターフェースはWindowsXP
動作の軽さはMS-DOS
堅牢性はWindowsNT4.0
互換性はWindows98
地獄とは何か
インターフェースはMS-DOS
動作の軽さはWindowsXP
堅牢性はWindows98
互換性はWindowsNT4.0
○インターネットのお陰で、この手のネタが拡散する速度は確実に早くなりましたな。
<2月5日>(水)
○今朝は岡崎研究所から、とっても刺激的な情報が到来。
「米国の対イラク軍事作戦の動向を知りたいなら、○○○のXXXXXの論説を読むのが一番よい。」
○念のために言っておくと、○○○は誰でも知っている公開情報源、XXXXXもちょっと意外性はあるが、アメリカウォッチャーであれば知らない人はいないはずである。大海のような情報源の中から、「ほれ、ここを読みなさい」と教えてくれているわけで、将棋盤を前にしているときに、大山十五世名人の霊が出てきて、耳元で「ここは飛車だなぁ」と囁いてくれるようなもの。ありがたや。
○それにしても、この論説記事にはビックリしましたな。戦争が始まったとき、米軍がイラクで最初に押さえるのは、@キルクーク油田、A生物化学兵器、そしてB・・・・と、後はナイショにしておこう。会員限定情報ゆえ、サービスはここまで。○○○のXXXXXが誰か、かんべえに聞いても駄目よ。ただ、年会費3万円は安いと言っておこう。以上、NPO法人岡崎研究所の会員募集の宣伝でした。
申し込みフォームはこちら:http://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/doc/npoapplication.doc
○以下は、岡崎研究所ほど役には立たないが、かんべえの不規則発言がお送りする注目情報です。ギャロップ社の2月4日発表調査、題して「パウエルの国連登場に世論は注目」。こんなデータが紹介されています。
●イラク攻撃に対する世論の支持は、1/31-2/2時点で、賛成58%、反対38%。一般教書前の52%対43%から少し改善した。
●「ブッシュ大統領は戦争の理由を説明したか」、との問いに対してはイエス53%、ノー44%。
●「2月5日に行われる国連でのパウエルのプレゼンテーションは重要か」、との問いに対しては、「とても重要」60%、「まあ重要」27%、「それほどでも」7%、「全く重要でない」5%。
●「イラク政策に対して、ブッシュを信用するか?」との問いに対し、「とても」39%、「まあまあ」28%、「別に」17%、「全然」16%
●「イラク政策に対して、パウエルを信用するか?」との問いに対し、「とても」56%、「まあまあ」32%、「別に」8%、「全然」3%
●「ブッシュとパウエルでは、どっちを信用するか?」との問いに対し、「ブッシュ」24%、「パウエル」63%、「両方」9%、「どっちも不信用」3%
○まあね、気持ちは分かる。石原慎太郎首相、後藤田正晴外相の内閣で、石原さんが中国を批判しても誰もなんとも思わないが、後藤田さんが批判したらさすがにみんな聞くだろう。ハト派と呼ばれるパウエルは、文字どおりアメリカの世論動向の鍵を握ったといえる。
○名優パウエルはイラクの有罪を見事立証できるか。気になります。
<2月6日>(木)
○チャタムハウス・ルール、てのがあるんですね。今日、初めて知りました。チャタムハウス、というのは英国の有名な戦略研究所の名前です。ここで行われるOpne
to Publicな会議の際に、このルールが適用されるのだそうです。すなわち、この会議の席上で出た話を、「○○さんが、XXXXと言っていた」という形でReferすることはご遠慮ください。その代わり、「XXXXという意見もあるんだってね」みたいな形で紹介する分には構わない。「オフレコ」の一形式という感じですね。
○今宵、都内某所にて北朝鮮問題に関するフォーラムが行われました。著名人も多く集まって、かなりきわどい話も飛び交っていましたが、それが「チャタムハウス・ルール」でした。ということは、名前さえ引用しなければ、ここで何を書いてもいい、ってことになります。それはそれで誘惑に駆られるのですが、今宵は忙しいのでまたの機会に。
○二日続けて、うなぎの匂いだけ嗅がせているようで恐縮ですが、今週号をまだ全然書いていないのであしからず。さあ、これから書こう。
<2月7日>(金)
○気がつくと、お台場に中国人観光客があふれている。そうなのだ。今は春節。お正月休みを利用して、日本に来る人たちが大勢いるのである。おそらくディズニーランドや秋葉原もにぎわっているだろう。
○そんな中で、朋あり遠方より来たる。かの上海馬券王先生である。一献酌み交わしている間にも、携帯電話に「明日はXXのウィンズに集合!」などという連絡が入る。お盛んですなあ。明日は重賞レースがないんですけど、ま、それもよしといったところでしょうか。それよりも先生、日曜日の共同通信杯と小倉大賞典がとっても難しいレースなので気になります。バッチリ当ててくださいね。よろしくお願いします。
<2月8〜9日>(土〜日)
○今週末はお持ち帰りの宿題がない。来週、差し迫ったイベントもない。あーなんか、のんびりしてしまうなあ。土曜日は懸案になっていた耳鼻科(花粉症対策)と床屋に行ってきました。暖かくなってきたらテキメンで、突然くしゃみが連続したりします。土曜の夜は火の用心。あと3回やれば予定数終了。
○日曜日の午前は、「報道2001」や「サンプロ」も、「将棋の時間」も見ず。共同通信杯その他はあまりにも難解なので、中山競馬場をパス。家で見てたらこれが大正解。JRAの今年のCMは「サプライズ!」だが、あれじゃ驚くまでもなく全滅ですって。めずらしく「日高義樹のワシントンレポート」を見る。ロバート・ノバックって、今でもスリーピース着てるんだなあ。それ言っちゃ日高さんも同じだけど、とっくの昔に盛りを過ぎた人という雰囲気が否めない。
○それにしてもイラク問題、先週でもう先が見えてしまったような気がする。今月中に安保理決議を取って、来月開戦。とくにサプライズはないと思う。そうそう、中東に投入する5隻目の空母として、キティ・ホークを動員するというのにはちょっと驚いたかな。2001年秋のアフガン戦線以来、ずっと働き詰めだったから、そろそろ横須賀で整備期間かと思ったが、そんな空母まで使うとはアメリカも台所事情はあんまり豊かではないですな。
○キティ・ホークがいなくなると、北朝鮮に対する備えがちょっと心配になる。日本のイージス艦も出してしまっているし。これからイラク情勢が煮詰まってくると、いかにもテポドンやノドンが飛びそうじゃありませんか。めったな場所には落ちないと思いますが、無視できるほどワタシらはタフなわけじゃなし。それが狙いと分かっていても、驚いてしまうんだろうな。
<2月10日>(月)
○昨日の続きですが、日本近海からキティ・ホークがいなくなる穴を埋めてくれるのがUSSカール・ビンソンだそうです。原子力空母が対北朝鮮の押えになってくれます。他方、湾岸にはエイブラハム・リンカーン、コンステレーション、ハリー・トルーマンに加え、セオドア・ルーズベルトとジョージ・ワシントンも向かっているとのこと。キティ・ホークを足すと何と6隻。さらに持ってけドロボー、ニミッツもおまけしちゃおうか、てな話もあったりして、さあ、イラクの周辺に集まる歴代アメリカ大統領はあわせて何人でしょう?
○某局から電話取材で、「この先、どうなるでしょう?」というお問い合わせをいただきました。正直なところ、かんべえは欧州のことがよく分からない。フランスやドイツの腹の内は読めません。イラクがまた小出しに譲歩をしてきたからといって、飛びつくことに何の意味があるというのか。パウエル国務長官が「国連決議1441をもう1回読め」と怒ったらしいが、当然である。あの決議に賛成したフランスやドイツが、今更どの面下げて武力行使に反対だといえるのか。そんなに馬鹿ではないと思うけど、かんべえが知らないだけで、やっぱり馬鹿なのかもしれん。
○この点、すでに旗幟鮮明にしている日本の態度の方が賢明だと思う。川口外相が、「国連で武力行使容認の新たな決議ができれば、日本も国際社会の一員として当然支持する」と言ったそうだ。ずるい言い方だが、うまい。もし日本が安保理メンバー国だったら、どういう態度表明をするかで、もうちょっと悩んだはずだ。
○冒頭のクイズの答えは4人。初代、16代、26代、33代が入っております。
<2月11日>(火)
○スペースシャトル、コロンビア号の事故について、あのポール・クルーグマン教授が意外なことを言っています。ニューヨークタイムズ紙の2月4日に掲載された"A
Failed Mission"。全文は以下をご参照。
http://www.pkarchive.org/column/020403.html
○とっても残念なことだけど、有人宇宙飛行という計画はこれ以上続けても意味がないんじゃないか、という勇気ある提言です。なんとなれば、人間は宇宙には向いていないからだ。
In space, you see, people are a nuisance.
They're heavy; they need to breathe; trickiest of all, as we have
so tragically learned, they need to get back to Earth.
○人間は安全に、地球に戻ってこなければならない。だから有人宇宙飛行はとても高くつく。投資対効果を考えたら、無人に切り替えた方がいいんじゃないか、という発想は、良くも悪くもエコノミスト的です。そして無人にしたところで、大概の用事は片付く。だったら人間を宇宙に送り込むことにこだわる必要はない。
The sad truth is that for many years NASA
has struggled to invent reasons to put people into space - sort
of the way the Bush administration struggles to invent reasons to
. . . but let's not get into that today. It's an open secret that
the only real purpose of the International Space Station is to
give us a reason to keep flying space shuttles.
○宇宙ステーションを建設する理由というのは、たしかにあまり定かではない。無重力状態でなければできない実験をすることができる、といったことくらいだ。だったら止めましょうや、という提言の是非は、ここではさておくとしましょう。
○クルーグマンのコラムを読んで考え込んでしまいました。「宇宙飛行士になりたい」という人は世界中にいる。今度のような事故で、命を失うことも厭わないという人も、たぶん少なくはないだろう。それでも失敗による人命の損失を、アメリカ社会は許容できなくなっている。人の命がそれだけ重くなったからである。おそらく1960年代のアポロ計画の頃は、生きている人は皆が戦争体験者で、こんなことは問題ではなかったのだろう。
○戦争だってそうだ。対イラク戦争も、戦死者が4桁になったら厭戦意識が高まって続行不可能になるだろう、といった世論調査もある。その分、ステルス戦闘機や無人偵察機のような兵器が開発されている。戦争は「安全に勝てる」ものでなければならなくなった。ベトナム戦争で死のうが、湾岸戦争で死のうが、人間の命の重さに変わりはないはずなのだが、人命のコストは明らかに上昇した。
○人命重視は悪いことではない。世の中の進歩の結果でもある。その一方で、費用対効果をやかましく言うようになると、冒険はできなくなる。「宇宙飛行士になりたい」と願っている人がいても、「あんたが死ぬと皆が困るからやめましょう」ということになってしまう。似たようなことは、われわれの身近にもあるではないか。冒険しようという勇気がある人は有限だが、それを止めることで点数を稼ごうという人は無限にいる。
○命が惜しい人は、宇宙飛行士になれない。貧乏になりたくない人は、起業家になれない。でも、エコノミストにはなれる。かんべえも一応は企業エコノミストということになっているが、世の中が計算高い人ばっかりになってしまうのは、やっぱり嫌だ。
<2月12日>(水)
○昨日の不規則発言に、山根君がこんなコメントをくれました。
アメリカが「フロンティア」の開拓にどれだけ人命を犠牲にできるか。
犠牲に耐えられなくなったときが、アメリカ帝国の本当の衰退の始まりなのでしょう。
○本当にそうだよね。フロンティア精神を失ったらアメリカは終わりです。その一方で、あの国の終わりはまだ始まっていない、と思います。かんべえの手元には、『うちゅうひこうしになりたいな』(バイロン・バートン作・ふじたちえ訳・佑学社)という絵本があります。「うちゅうひこうしになりたい」で始まって、「うちゅうにいってみたいんだ」で終わる単純な話ですが、最後のページをめくるときは、いつもなんだか涙眼になってしまう不思議な絵本です。スペースシャトルに、どれだけ多くの人が夢を寄せているか(中年の日本人も含めて!)。世界中の人々のそんな気持ちを集めている限り、アメリカの衰退は始まらないと思うのです。
○塩野七生、『ローマ人の物語11、終わりの始まり』を読んでいます。マルクス・アウレリウスの時代に、明らかにローマの良さは失われていく。経済力や軍事力といった形あるものではなく、人々の精神のような見えない部分が最初に劣化する。衰退の物語は、われらが時代を省みて、胸を突くものがあります。
○と、急にここで話は落ちるんですが、竹中金融相が「ETFを買えばかならず儲かる」と言ったんだそうで。塩爺は自分で個人国債を買ったとか言ってるし、あんたら、株や国債はカイワレ大根かよ。聞いてて悲しいぞ。これはもう、衰退とか劣化とかいう以前の問題ではないかと。
<2月13日>(木)
○仕事柄、あちこちで講演をする機会は多いのですが、本日は内外情勢調査会の川越支部の講師を務めました。知らない土地で、知らない人を相手にお話しをするというのは、なんだか他流試合という感じで緊張感があっていいものです。
○本日の演題は「当面の国際情勢と日米関係」で、北朝鮮核開発疑惑とイラク情勢について1時間半お話ししました。昨年まではこの手の講師を務めるときは、念入りに資料を作っていたのですが、今日はむしろ配布はレジュメ1枚だけにしてみました。結果的にはこれが正解で、ホテルのような会場で、講師が演台に立ち、丸テーブルの聴衆に向かって話すときは、分厚い資料などは使いにくい。パワーポイントの資料は、やっぱりオフィス内のプレゼンテーションに限るなあ、と思いました。
○その一方で感じたのは、社内のプレゼンなどの場合、話す時間の単位は20分から1時間程度であることが多いので、普段はかなり早口になります。ところが、そのペースで1時間半も話すと、後半はかなりバテる。聞いている方も疲れると思うので、この手の講演のときはもっとペースを落として、内容を詰め込み過ぎないようにした方が良さそうです。次の機会にはもうちょっと工夫してみましょう。
○川越は初めて行きました。太田道灌が作った城を中心に発展した古い城下町で、最近は観光地としても人気があるようだ。城下町というと、加賀百万石のような外様大名を連想しがちだが、川越は徳川家の譜代大名が何代も入れ替わった城下町である。川越藩主からは、大老2人、老中6人を輩出したというから、いわゆる「おいしいポスト」だったのだろう。柳沢吉保や松平伊豆守といったビッグネームも含まれている。もっとも、幕閣の重要人物ともなると、ほとんどが江戸詰めであったから、領地に帰る機会は非常に少なかっただろうが。
○住んでる人たちにとっては、「うちの殿様は偉い」ので、誇りとともに保守的な気風が育っているという。街でふと見かけた張り紙に、徳川家康の家訓が書いてあった。「人の一生は重き荷物を抱えて遠き道を行くがごとし・・・・」という有名なフレーズだが、なんだかとっても町並みに似合っているように感じた。ところでこの有名な文句は、最後は「及ばざるは過ぎたるに勝れり」で終わっているのですね。人間、「ひとこと多い」よりは「ひとこと足りない」方がマシ。この「不規則発言」も心いたしましょう。
○川越には行列ができる有名なラーメン屋(つけ麺)があり、配偶者は当然、遠征済みであった。かんべえは出不精ゆえ、こういう機会でもないと、なかなか初めての土地を訪れるチャンスがない。せいぜい他流試合を積んで、いろんな土地を訪れてみたいものです。
<2月14日>(金)
○いよいよ日本時間の深夜から安保理会合が行われ、ブリクス&エルバラダイの対イラク査察追加報告が行われます。この先がどう展開するか、いろんな人から聞かれてはいるんですが、かんべえの私見は下記の通りです。
http://www.multexinvestor.co.jp/editorial/EditorialContent.asp?edid=120030210
○このページ、連載で後2回は続きます。どうぞご注目ください。
○そうそう、GDP速報値は予想外の0.5%プラス成長でした。そら見たことか、ですな。(先週号のFrom
the Editorをご参照)。実は2日前に、永田町筋から「10−12月期はマイナス0.6%」という話を聞いて、「おや、そんなに悪いか」と思っていたところでした。ワシの勘の方がよく当たるわい。
<2月15日>(土)
○新しくジョークの本棚を作りました。最近、いろんな方から「みずほ銀行券の話はどこにあるのですか?」という問い合わせが増えたので、分かりやすくしておこうと思い、「ジョージ&コンディ」などと並べてまとめておきました。
○さてさて、このHPがすごいんです。題して「君はアニメンタリー 決断 を知っているか?」。
http://www.h2.dion.ne.jp/~sws6225/index.html
○たしかにかんべえが小学生の頃、こんなアニメ番組があった。毎回、太平洋戦争を舞台にした戦局が登場し、決断を迫られる司令官の苦悩を描くドラマをオムニバス形式で放映していた。そんなに熱心に見た覚えはないんだけど、「♪勝って驕るな、負けて泣くな、男、涙は見せぬもの〜」という主題歌には記憶がある。大袈裟なナレーション、やけに深刻な台詞回し、ああこれぞ戦記モノの世界。
○このHPによると、当時、あまりにも軍国主義的だということで、番組には日教組などから抗議が相次いだらしい。最終回「天皇の決断」は、当時の対中関係の配慮もあって、急きょ差し替えて「川上哲治の決断」になったという。たしかに「川上哲治の決断」の回はすごく違和感があって、当時すでにアンチ巨人であったかんべえは「ふん!くだらねえ」と思ったことを覚えている。あれはそういうわけだったのですね。
○HPの管理人氏はもっと若い方で、リアルタイムで「決断」を見たわけではない。むしろ戦記モノ好きが昂じて、太平洋戦史の世界に分け入ったようだ。自己紹介のページを見ると、軍歌から「信長の野望」や「機動戦士ガンダム」まで幅広い。あらら、ドラクエやFFまで。ずいぶんお話しが合いそうで。いやいや、お陰ですっかり忘れていた世界を思い出しました。
<2月16日>(日)
○ジョークの本棚を作ったから、ではないんだけど、おおばともみつ『世界のビジネスジョーク集』(中公新書ラクレ)を読みました。著者は言うまでもなく、金融マフィアとして全世界をまたにかけてきた大場元財務官。EU、アメリカ、ロシア、中南米など、いろんな国のジョークが取り上げられていて、時代も旧ソ連から日米摩擦、現代までといろんな時期にわたっている。この世界に対する造けいの深さが窺えます。
○ところがこうやってまとめて読んでみると、爆笑に次ぐ爆笑、という感じではない。むしろ「あ、これ知ってる」「あ、こんなパターンもあったのか」などと、変に分析的になってしまう。実はジョークの世界は、昔からあるパターンを手を代え品を変えて使っていることが分かる。逆に言えば、ジョークを創作する側にとっては、とっても便利な定本になるのかも。
○たとえばインフレの激しい国においては、「タクシーに乗るな、バスに乗れ」という定番ジョークができる。(タクシーに乗ってる間に料金が値上がりするから)。これを現在のデフレの日本経済に移し替えると、「株を買うな、債券を買え」になる。あ、全然シャレになってない。こりゃまた失礼いたしました。
<2月17日>(月)
○有名な相場の格言にいわく、「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」。
○アメリカ経済を考えた場合、現状はまさしく「近くの戦争」である。もちろんイラクは遠い彼方だが、アルカイダのテロの恐れがあるからと、対テロ警戒度は5段階評価で3から4に上げられた。政府が国民に向かって、3日分の食料と水を買い込んでおけとか、毒ガス攻撃に備えて目張り用テープを用意しておけなんて通達を出す日には、どう考えても個人消費は伸びそうにない。株はもちろん、売りである。
○「こうなったら戦争は早く始まって早く終わって欲しい」というのが、市場関係者の正直なところだろう。その一方で「安保理は当面、査察を継続」という結論が出ると、「戦争は遠のいた」となって株が買われたりする。支離滅裂である。これというのも、金融市場がまともな心理状況ではないからだと思う。なにしろ10年連続で株価が上げ続けた後に、3年連続で下げ続けているのだから。マーケットは、「この上、戦争もあるのかよ。勘弁してよ」と悲鳴を上げている。
○この点、安全保障サークルと経済サークルのギャップは大きい。安保関係者は勝利に向けて自信満々で、イラク復興後の計画などに余念がない。経済関係者は、自分たちの気持ちがブッシュ政権に届かないことにため息混じりである。両方のサークルに首を突っ込んでいる筆者のようなものには、このズレが非常に面白い。とはいえ、望ましくない事態であることは間違いない。
○アメリカ経済は「9・11」同時多発テロ事件という試練を乗り越えた。あのときも「近くの戦争」だったが、びっくりするくらいクルマや住宅が売れて、株価も反発した。アメリカが伝統的に得意とする火事場の馬鹿力であった。しかし今度の対イラク戦争では、似たようなことは起きないと思う。アメリカ人の戦意は2001年秋ほどには強くない。対イラク戦争は、たとえ短期間に終わったとしても、アメリカ経済への効果はマイナスであろう。
○それでは日本経済はどうか。これは「遠くの戦争」といっていいだろう。およそ日本ほど、石油価格の上昇が響かない経済はめずらしい。この5年間、原油価格は1バレル10ドルから35ドルまで乱高下したが、日本のGDP成長率が受けた影響は軽微である。ガソリンはいつ行っても1リッター90円台のままである。こういう国も珍しい。では安心かといえば、そうでもないと思う。
○2002年の日本経済を支えたのは、@旺盛な輸出の伸びとA意外にしぶとい個人消費だった。輸出はそろそろ頭打ちだろうし、今年は個人消費も大きな期待をかけにくい。そこで力が入るのがB企業の設備投資である。昔の製造業は、銀行からの借り入れで設備投資を行った。今はむしろ借り入れを返済しつつ、キャッシュフローの範囲内で投資をまかなおうとする。ここ2〜3年は設備投資は控えられてきた。今年、企業収益が回復することで、設備投資はある程度は伸びるのではないか。
○ところが、戦争があるのかないのか分からないような状態が続くと、「先行き不透明」ということになって投資は先送りされてしまう。「あと半年は査察を継続して」みたいな話になると、今度は日本の経営者や投資家が「勘弁してよ」ということになる。やっぱり早く始めて、早く終わって欲しいのだ。正直なところ。
<2月18日>(火)
○嘘のようなホントの話、その1。今週末はG1レース、「フェブラリーステークス」がある。ゴールドアリュール、イーグルカフェ、アドマイヤドンといったダートの星が、最優秀ダート馬の座を競う。でもって、この3頭が3月29日に行われる「ドバイワールドカップ」に招待されている。ドバイのワールドカップといえば世界最高賞金は伊達じゃないが、日本のトゥザビクトリーが2位につけたこともあって、日本馬の評価が上がったとファンは素直に喜んでいた。が、ほかにも理由があったらしい。それは、「アメリカ馬が参加しないかもしれないから」。・・・・ところで、そもそも3月29日に湾岸でレースが開催できるのか?
○嘘のようなホントの話、その2。Mさんが教えてくれた。「今度衆議院選挙で、民主党の元秘書が富山県で立候補するらしい。昨日その人は『僕の高校の先輩は田中耕一さんで、後輩が木村剛』と言っていた。どこかで聞いたことのあるセリフ・・・・」。
この自己紹介は私の専売特許というわけじゃなくて、同級生連中は皆使っているものと見える。ちなみに以下のようになってます。
<県立富山中部高校の卒業生>
1978年卒 田中耕一氏
1979年卒 吉崎達彦
1980年卒 民主党の元秘書氏
1981年卒 木村剛氏
でもこのネタは東京でやるから受けるんで、富山で言ってもあんまりアピールしないと思うぞ〜。
○嘘のようなホントの話、その3。かんべえの先輩が会社を辞めて、「現在は素浪人生活を続けておりますが、現代の日本を憂える一人として・・・」と、なんだか思わせぶりな年賀状をくれた。そしたら大分県知事に立候補しちゃうなんて。相手は広瀬元通産次官ですから、いわゆる「独自の戦い」というやつですが、今から20年前に私を採用してくれた吉良州司さ〜ん、思う存分、頑張ってくださいね〜。
○嘘のようなホントの話、その4。題して"DPRK
is DARK." まあ、とくと↓を御覧じろ。
http://www.globalsecurity.org/military/world/dprk/dprk-dark.htm
○いや〜びっくりしたな。もう。ホントに暗いんだから。
<2月19日>(水)
○柏駅のキオスクで、何かに誘われるように「SPA!」を買いました。わりとよく買う雑誌なんだけど、最近はご無沙汰していた。それが今週は、ふと「あ、買わなきゃ」と思ったのである。
○そしたら40pに、伊藤道臣さんが出ているではないか。「実力ある個人投資家とともに日本の投資環境を向上させる」という、壮大なプロジェクトを追っている人です。具体的には、こちら(↓)のサイトの運営者でもある。
●当たり屋は誰だ?http://www.cnet-sc.ne.jp/gyouhoo/
○伊藤さんが設立した勉強会に参加するようになってから、かれこれ15年になる。でも伊藤さん一家(奥様と子供5人!)が揃った姿を見たのは、今日の「SPA!」の誌面が初めてでしたね。「当たり屋は誰だ?」も会員は増えているようで何よりです。
○さっそく「伊藤さん、見たよ」のメールを送ったら、折り返し「SPA!を買ったの?若いねえ」と言われてしまいました。はっはっは、こういう嗅覚は鋭いのだ。溜池通信なども、毎週、この手でしのいでいるようなものですから。
<2月20日>(木)
○なんともワタシ好みのものを見つけてしまったな。あはは。
我々は一人の英雄を失った。しかしこれは敗北を意味するのか?
否!始まりなのだ!絶対の独立性を維持する日本銀行にに比べ我がケインズ派の権力はないにもかかわらず、今日まで戦い抜いてこられたのはなぜか!諸君!
我がケインズ派の目的が日本経済の救済だからだ!これは諸君らが一番知っている。
我々はマクロ経済学の主流の座を追われ異端者にさせられた!
そして一握りのエリートが膨れ上がった日本の経済政策を支配して50余年!
小宮隆太郎が日銀金融理論批判を開始してから四半世紀、その主張は何度踏みにじられたか!
ケインズ派の掲げる日本経済復活のための戦いを国民が見捨てるわけはない!
私達の最高の代表者!諸君らが愛してくれたジェームス・トービンは死んだ!!何故だ!?
金融政策の目標を安定したプラスのインフレ率に維持することは歴史の必然である。
ならば、我らは襟を正しこの戦局を打開しなければならぬ。
我々は過酷な世界大恐慌を教訓とししながらも共に苦悩し、練磨して今日のケインズ経済学を築き上げてきた。
かつて我々は全てケインジアンだと言ったミルトン・フリードマンは、インフレはいつでもどこでもマネタリーな現象と喝破した。
しかしながら日銀イデオローグのエコノミストどもは自分たちが金融政策の支配権を有すると増長し我々に抗戦をする。
諸君らの父も、子も、そのデフレ放置の政策と長期不況の前に破滅していったのだ!
この悲しみも、怒りも、忘れてはならない!
それを・・・ジェームス・トービンの戦いは・・・死の床で日銀批判を行うことによって我々に示してくれた!
我々は今、この怒りを結集し、デフレマンセー派にたたきつけて初めて真の勝利を得ることができる!
この勝利こそ、失業者すべてへの最大の慰めとなる!
ケインズ派よ!悲しみを怒りに変えて立てよ、ケインズ派よ!
我ら新たなケインズ経済学の再興を志す者こそ、真実を語る義務を課せられていることを忘れないで欲しいのだ!
長期不況の落とし子たる我らこそ日本経済を救い得るのである!ジーク・ケインズ!!
○ジェームズ・トービンの名前が出たところで、すかさず「坊やだからさ」という合いの手が入れば、あなたも同好の士。さらに「親衛隊のものだな、匂いで分かる」「アムロもよく見ておくんだな」「これが敵・・・・」などのセリフがフラッシュバックすれば、もう重症の患者ですな。何のことだか分からない人は、以下のURLでも見て研究されたし。
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Rook/5190/enzetsu.html
http://www.kisweb.ne.jp/personal/jonabox/text/kyoubun/giren.htm
http://superkanart.hp.infoseek.co.jp/scrollsp1.html
http://hp8.popkmart.ne.jp/magic/girenn14.htm
http://www2.gol.com/users/thori/moshi/giren.html
○以下は真面目な話で、当面のイラク問題に関する読み筋です。これが第2回。
●「第2次湾岸戦争」米国の本当のねらいとは何か?http://www.multexinvestor.co.jp/editorial/EditorialContent.asp?edid=220030220
<2月21日>(金)
○少し前の話になりますが、PNACの共同設立者、ロバート・ケーガンに、NHKの『クローズアップ現代』がインタビューをしていました。彼は現在、ブリュッセルに住んでいるのですね。それというのも、奥さんがEUだったかNATOだったかに勤めていて、その関係で「帯同赴任」しているらしい。米国ネオコン派で「反欧州論」の論客が、欧州の中心地でゴロゴロしているというのも妙なものですね。
○その話を聞いて「はは〜ん」と思ったことがあります。彼の論文の中に、「米国が料理をして、欧州が皿を洗うという不均衡な関係」という表現が使われているのは、おそらく家事の分担について夫婦で言い争ったことがあるからでしょうな。かんべえも共働き歴が長いから、その辺のことはとってもよく分かるぞ。
○米国と欧州の喧嘩というのも、夫婦喧嘩のようなところがあって、お互いに遠慮がないから傍目には危険に見えるけど、落ち着くときは意外と早いのかもしれません。「米英対独仏」の対立は現在は深刻だけど、「協議離婚」なんてことにはならないような気がします。そのためにも、やっぱり家事の分担は大事ですよ。週末は洗濯もしなくっちゃね。
<2月22〜23日>(土〜日)
○宿題をいっぱい抱えた週末ではあるが、そうも言っていられない。上海馬券王が帰国出張中で、今日は今年初めてのG1、フェブラリーステークスとあっては、これは見過ごせないではありませんか。ダート最強馬はゴールドアリュール、アドマイヤドン、それともイーグルカフェか。それ以外にもクセモノが大勢いて、非常に面白いレース。というわけで、今日の中山競馬場は第7レースから参戦す。本日、天候は崩れず、されど馬場状態悪し。
○第9レース、ヒアシンスステークス。わずか7頭立てで、一番人気はこのところ急成長のDスシトレイン。当然の電車道かと思いきや、何と最後方。馬券王先生ご推奨のBビッグウルフがぶっちぎりの勝利。2週連続使って、体重も思い切り減っているのに、この健闘ぶりはいかなこと。覚えておきましょう。
○隣りで出入りの激しい競馬をする馬券王を尻目に、かんべえは連戦連敗。ついにノーホーラのままでメインのフェブラリーステークスを迎える。「今日はデムーロと横山典だな」という馬券王先生のひとことに背中を押され、Fイーグルカフェを軸にGビワシンセイキなどに流してみる。いい線行ってたんだけど、先頭に来たのはDゴールドアリュールで、F−Gは2位と3位でした。まあ、せめてFの複勝は押えておいてよかったな、と馬券を見たらなんとマークシートミスだった。痛い、痛い、イタイ。
○気を取り直して、久々の日本を満喫している馬券王先生が驚いたことは以下の通りだそうだ。
@黒髪の女性がほとんど見当たらない。(たしかに絶滅の危機に瀕しております)
AG1レースなのに中山が混雑していない。(最近はこんなもんなんです。人気落ち目だし、インターネットや電話で投票する人も増えている)
Bコンビニの品揃えが良い。(中国と比較したらそうかもしれません)
C「サザエさん」が東芝の単独スポンサーでなくなった。(それって、もう2年くらい前のことかも)
D何を見てもボブ・サップと「なんでやろ〜」が出てくる。(ほんま、そうですなあ)
○京都12レースでやっと片目を開けた。うーん、つらいっす。3月はもうちょっと勝ちたいですな。とりあえず本日はおけら街道を満喫。お、帰ってみたら60万アクセスに乗っていた。皆様深謝。
<2月24日>(月)
○日銀総裁に福井俊彦さんが決まったようで、良かったなと思っています。なにせ、『ルック@マーケット』などでも「福井待望論」をぶっておりましたから。あはは。
○というより、小泉さんが「次の日銀総裁はデフレファイターに」と言い出したときから、臭いなと思ったんです。そもそも自分が知らないことには口を出さないのが小泉流。金融政策なんて、当然の事ながら丸投げのはずなのに、「デフレファイター」なんて言い出した。これは結論が最初から決まっていて、意外性を演出するために言っているのであろう、とかんべえは踏んだわけです。つまり人事には芸が細かい小泉流の発言なのだと。
○仮にインフレ目標派の総裁を選んだとします。日銀の現場は、「あ〜あ」となってしまう。トップが笛を吹いても、現場は踊らないので、結果として向こう5年間は何も変わらない。そこを日銀のプリンスである福井さんを指名し、首相が「デフレ対策をよろしく頼むね」と言えば、日銀は上から下まで一枚岩となってデフレに取り組まねばならなくなる。そりゃ、後者の方がいいですよね。
○上の読みはある程度当たっていたと思うのだけど、それにしては発表が遅くなりました。先週あたりは、「もう福井さんで決まり」てな声が聞かれながら、発表が翌週に持ち越しになった。さすがに不安になりましたね。「ひょっとして、本当に決めていないんじゃ・・・・」。どういう事情があったかは知りませんが、ともあれ一安心です。
○今回の決定に当たっては、経済界が一丸になって福井さんを推していた。これは凄いことだと思う。財界活動というものは、ある意味、学生のクラブ活動みたいなところがある。会社のトップクラスの人たちが、一堂に会して議論したり、ご飯を食べたり、国際会議に行ったり、ゴルフしたりする。会社同士の付き合いでは分からないような人間性まで、互いに丸見えになってしまうのだ。だから、財界人の仲間内の「格付け」は滅多に狂わない。福井さんは、今の経済界では明らかに「トリプルA」の人格者でしょう。
○インフレ目標がどうのこうのという以前に、日銀総裁には人格者を充てるべきなんです。なにしろ日本銀行券は、日銀総裁が日本国民に対して借りているものですから。信用が一番大事。そういう意味では、二瀬兼清造君なんかは最も駄目な総裁ですな。そうかと思えば、「ETFを買えばかならず儲かる」とのたまった金融担当大臣がおりましたなあ。
○ところで、マルテックス・インベスターのインタビューは今度が最終回。ご笑覧ください。
http://www.multexinvestor.co.jp/editorial/EditorialContent.asp?edid=120030224
<2月25日>(火)
○午前11時50分頃にケータイが鳴った。『ルック@マーケット』プロデューサーのJさんからである。
「もしもし、今日、北朝鮮のミサイルが飛んだんですけど」
「ほう、ノドンですか」
「いや、地対艦ミサイルとかいう、もっと小さいやつらしいんです」
「でも、やっぱり来ましたか」
「というわけで、今日の4時からはいかがでしょう」
「今日は駄目ですよ。いま宇都宮ですから」
○1月10日に北朝鮮がNPTを脱退した日にも、お昼にJさんから電話をもらって、出演したのである。が、本日は内外情勢調査会の講師で、昼からの宇都宮と夕方からの小山でダブルヘッダーだったのだ。12時に頼むと4時には来てくれるコメンテーター、というのはたしかに便利ではあるが、ワシもそうそう暇ではないのである。と偉そうに言っておこう。
○1月10日の「ルック@マーケット」でも言ったし、本誌の2月14日号でも書いた通りですが、今回の核開発問題で北朝鮮は1993年と同じコースをたどっている。以下は2月14日号から。
今後の北朝鮮の行動を読むために、93年の核開発危機の経緯を振り返ってみよう。あのときはNPTの脱退表明だけで、今回は本当に脱退してしまっており、緊張の度合いははるかに深刻だが、北朝鮮の行動パターンは似ている。それというのも、このプロセスのさなか、93年4月7日に金正日が国防委員会委員長に就任している。金日成の死去は94年7月なので、この当時の駆け引きはほとんど金正日が仕切っていた公算が高い。つまり金正日は、みずからの「初陣」として強烈な印象が残っている93年の成功体験を、繰り返そうとしている可能性がある。
○1993年の北朝鮮核開発危機
2月 9日:IAEAが核廃棄物関連施設への特別査察要求を決定。北朝鮮は受け入れ拒否を表明。
3月12日:北朝鮮がNPT脱退を表明。
5月11日:国連安保理が北朝鮮に、NPT脱退の再考を求める勧告案を可決(中国は棄権)。
5月29日:北朝鮮がノドン1号を日本海で試射実験。
6月 2日:米朝がニューヨークで第1回の高官会談。
6月11日:米朝が共同宣言でNPT脱退の棚上げを発表。
7月19日:北朝鮮とIAEAの交渉再開で合意。
(中略)
さて、金正日が93年と同じことを繰り返すと仮定しよう。今週12日にIAEAが問題を国連安保理に付託したので、国際社会側の次の一手は安保理の勧告となる。その次の北朝鮮側の手はミサイル実験だ。93年当時は「ノドン」が日本海に落ちたわけだが、現在ならば「テポドン」が太平洋に落ちることになる。
○実際には射程の短いミサイルとなったが、これは牽制球だからでしょう。安保理が経済制裁などを打ち出すようなら、次はテポドンかもしれないよ、というシグナル。また、盧武鉉大統領就任式への「名刺代わり」という意味合いも含まれているのでしょう。ちょっと脅しておいて、その次にふっと安心させるような挙に出てくる。そうやって新大統領のハートをつかむ狙いがあるかもしれません。
○金大中も、最初のうちは良かったんです。日米韓バーチャル同盟路線をやっているうちは、北朝鮮も恐いから太陽政策に乗ってくる。ところが、2000年に南北首脳会談をやって、金正日に「朝鮮半島問題は同胞の手で解決を」と言われてヘナヘナとなってしまった。それじゃ北は「美味しいところだけ、いただきま〜す」となる。これでは北に送った5億ドルは無駄ガネもいいところ。この辺の駆け引きは、金正日の方が上手だったというでしょう。かの阿佐田哲也大先生いわく、金のあるものとないものが博打をしたら、金のない方が勝つ。貧乏人の金さんが、なまじっかの金さんを手玉に取ったということだと思います。
○では盧武鉉はどうか。これはもう未知数というしかありません。あえて期待を込めていうならば、苦労人は現実主義者です。盧武鉉が真の苦労人で現実主義者であれば、「日米との連携」を口にするでしょう。そうすれば北も強い態度には出られない。ここがチェックポイントでしょうね。
<2月26日>(水)
○大きな商品を購入すると、「今後の参考のために」と、アンケート用紙がついてくることがありますね。消費者の情報を集めて、今後のマーケティングに利用したいというわけ。アンケートを記入するのは、だいたいが面倒くさいことが多いのだけど、なかにはこんなユニークで楽しいアンケートもあるんです。
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servant
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rebellions
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○ほら、とっても楽しいアンケートだったでしょ?
特に第8問の解答欄などは吹き出しましたね。集計結果もぜひ見てみたいけど、それはやっぱりClassified”極秘”でしょうな。――あ、そこのアナタ、さっそくペーストして誰かに送ろうとしているでしょ。いいんですよ、溜池通信はうるさいことを言いません。でも最後の注意書きだけはよく読んでね。
<2月27日>(木)
○ブルームバーグ社主催で、イラク問題に関するシンポジウムをやりましょう、という話になり、打ち合わせに3人のパネリストが集まりました。あれこれ話をしていたら、なんと全員がHPを持っていることが判明。面白いですねえ。というわけで、さっそくお二人のURLをご紹介。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/8836/
ねこやん
http://www1.odn.ne.jp/~caa82250/
フューチャーズ・ワールド
○かんべえを併せた3人で、「イラク情勢は、マクロ経済、商品市況、金利や為替などにどんな影響を与えるか」という話になります。期せずして意見が一致したのは、「来週1週間で流れが変わってきそうですね」ということでした。3月14日という開催日は、相当にタイムリーかもしれません。
<2月28日>(金)
○このところ連日、イラク問題続きです。M&M(マネーアンドマネー)編集長の吉田さんと、この問題で対談をやりました。昨日やった分がもう記事になっているので、さっそくリンクしておきましょう。ここです。
http://www.traditionfx.co.jp/futokoro/taidan/20030227taidan.html
○このページを提供しているのは、「外貨投資をもっと身近に〜
株式会社
オリエント・トラディションFX」でして、全文を読むには会員になる必要があるそうです。一応、宣伝まで。
http://www.traditionfx.co.jp
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by Tatsuhiko Yoshizaki