●かんべえの不規則発言



2006年6月






<6月1日>(木)

<産経>

■ポールソン次期米財務長官 対中圧力の先兵 ビジネス経験、人脈に期待

 次期米財務長官に米証券大手ゴールドマン・サックス会長のポールソン氏が指名されたことについて、ブッシュ政権関係者は30日、「対中政策が主要な任務になるだろう」と指摘した。巨額の対中貿易赤字を抱えて、人民元の切り上げを求める議会からの圧力が強まっていることから、ポールソン氏には、対中圧力の先兵としての役割が期待されている。

 「(ポールソン氏は)われわれの貿易相手がルールに従って行動し、国際的な知的財産権を尊重し、柔軟な市場原理に従った為替変動の維持が重要であることを認識するよう手助けできるだろう」。ブッシュ大統領はこの日の会見で、スノー財務長官の後任としてポールソン氏を指名した理由として、対中経済摩擦を意識していることを明言した。

 一方、議会の対中強硬策を主導する民主党のシューマー上院議員は「ポールソン氏と話をした。指名では、全面的に支持する」と語った。

 大統領、上院議員の発言は、ポールソン氏が、ゴールドマン・サックスの中国でのビジネスを通じて、中国経済を知り尽くし、幅広い人脈を持っていることに対する期待があるからだ。

 ポールソン氏は1999年に最高経営責任者(CEO)に就任してから、米企業と中国企業との合併・買収(M&A)仲介などのコンサルタント・ビジネスだけでなく、中国の4大銀行の一つ、中国工商銀行に7%出資し銀行業務にも乗り出した。しかも、清華大学の経営大学院顧問を務めるなどビジネス以外でも幅広く活動している。

 スノー財務長官は、米議会から、「中国に対する人民元の切り上げ要求について、弱腰だ」との批判が目立っていただけに、今年11月の中間選挙を控えて保護主義的に動きやすい議会からの「受け」も計算に入れた人選だった。

 米共和党は、ポールソン氏に対して、民主党のクリントン政権時に財務長官として経済政策全般について主導したルービン、サマーズ両氏と同等の役割を期待する。だが、米ウォール街(金融街)は30日、「経済を理解し市場との対話ができる人物の登場」と期待する声が挙がる一方、米株価は原油高騰や企業収益に対する懸念から下落し、ポールソン氏に対する慎重な見方が交錯する展開となった。


〇アメリカの新財務長官の注目点は、@ルービン元長官のかつての同僚であること、Aニクソン政権時代にホワイトハウスや国防総省で働いた経験があること、B90年代後半に中国を70回以上も訪問していること、の3点だと思います。

@はドルに不安がある現状では素直に「買い」でしょう。民主党の受けも悪くないはずなので、議会承認は楽でありましょう。この辺は「常識」です。

Aがちょっと面白い。確認してはいないけれども、おそらく「ウルカヌス人脈」との接点があるのでしょう。現ブッシュ政権の中枢ラインを形成しているのは、チェイニー〜ラムズフェルドという元ペンタゴンの顔ぶれである。ペンタゴン人脈との接点がないと、ゼーリック国務副長官のように、恒常的に人事に不満をかこつことになります。念願の財務長官への転身もダメになって、ゼーリックの辞任はいよいよ近そうですね。

Bは上記の産経記事にもある通りで、「新財務長官の仕事は対中政策である」ということのようです。スノウ長官の首が飛んだのも、中国から譲歩を得られなかった、という不満が大きかったのでしょう。対中外交に苦労しているのは、日本だけではないということです。

〇その日本外交ですが、少しずつ対中関係改善の兆しがでてきました。今週は薄煕来商務相が来日していて、親中派の二階経産相と関係を深めている。薄商務相は1950年生まれで、太子党と呼ばれるボンボン集団の中でも「切れ者」として通っている。大連市長を務めた際には、街の美化などで大いに名を上げ、また法輪功バッシングの激しさでも恐れられた人物である。今回、経産省に対しては、中国側から「十分な警備を」という要請があったという。

〇逆にいえば、それくらいヤバイ人間を日本に送り込んできたということは、中国側としても対日関係打開に必死なのでしょう。今週、29〜30日にホテルオークラで行なわれた「省エネ・環境フォーラム」に賭けるところも大きかったのだと思います。このフォーラム、今後は常設となって来年は北京で行なわれるとか。二階大臣、なかなかやりますね。とりあえず、薄煕来(ボー・シーライ)という名前を覚えておこうと思います。

(参考)

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kaigai/news/20060528ddm008020029000c.html 

●二階経産相:「日中で貿易ビジョン」、共同策定に合意−−薄商務相と会談

 二階俊博経済産業相は27日、来日中の中国の薄煕来商務相と京都迎賓館で会談し、日中間の貿易と経済協力に関する中長期ビジョンを共同で策定することで合意した。日中の外交関係が冷え込んでいる中で、経済面から両国関係の維持・改善を図る狙いがあるとみられる。

 6〜7月ごろに、北京で両国の局長級会議を開き、日中間の経済関係発展のための課題や協力のあり方について協議を始める。

 また会談では、東シナ海のガス田開発問題について、協議を加速することを改めて確認した。日中関係全般については、薄商務相が「日中関係はアジアや世界の発展のためにも重要」と述べたのに対し、二階経産相も「日中双方の努力で、両国関係には新しい芽が育ちつつある」と応じ、関係改善への努力を続けることで一致した。【小林理】

毎日新聞 2006年5月28日 東京朝刊

http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200605180011a.nwc 

●「エネ安保」視野に協力探る 29、30日 東京で初の日中会合

FujiSankei Business i. 2006/5/18

 日中間で中国のエネルギー消費抑制や環境協力などを議論する「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が二十九、三十の両日、東京のホテルオークラで開催される。今年二月に訪中した二階俊博経済産業相が薄煕来商務相との会談で合意していたもので、世界第二位のエネルギー消費国への省エネ・環境技術協力を通じてアジア全体のエネルギー安全保障につなげる狙いもある。


<6月2日>(金)

〇日経ネットのマネー&マーケットに、かんべえのインタビュー記事が掲載されました。皆さんでいっちょ、アクセスを増やしてくださいまし。

●【政局を読む】安福世代対決、中川・与謝野枢軸の「みこし作り」で市場の波乱要因少ない

http://markets.nikkei.co.jp/special/sp003.cfm?id=x3961000_01&date=20060601 

〇これに『選択』6月号の「増税睨む景気策浮上」という記事を併せて読むと、ポスト小泉レースの新局面が見えてくるように思います。経済政策の立案過程から、竹中さんと谷垣さんが厄介払いされ、与謝野=中川=二階という枢軸が出来つつあるというわけ。「ネオ対クラシック」の対立軸が崩れてきましたね。面白い局面だと思います。

〇下記はオマケです。本日流行の顔文字??


タイ━━━━||Φ|(|゜|∀|゜|)|Φ||━━━━ホ!!

ヽ(`皿´#)=Co---o(´Д⊂゜)゜・。連行!


<6月3〜4日>(土〜日)

〇いくつか本のご紹介を。

●2015年アジアの未来 日本貿易会「2015年アジア」特別研究会 東洋経済新報社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492443274/qid%3D1149404275/249-4500100-2711567 

〇昨年1年間、「アジアのサステナブルな発展と商社」研究会という名前で、丸紅の柴田明夫さんを座長に行なったプロジェクトの成果物です。全体的に悲観的な未来を描いているところが真新しいのかも。資源価格の高騰という問題は、商社の中にいるとよく分かるのですが、これは相当に息の長い、そして悩みの深い問題だと思います。

〇かんべえは序章「混沌アジア2015年」という、シミュレーション小説もどきを書いております。まあ、この部分だけ立ち読みなんて手もありかなと思いますが、ご注目いただけるとありがたく存じます。


●テレビと権力 田原総一朗 講談社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062133180/qid=1149404784/sr=1-1/ref=sr_1_8_1/249-4500100-2711567 

〇ハルバースタムと見間違うような大袈裟なタイトルがついていますが、中身は田原総一朗氏の半生記です。岩波映画でこき使われた時代や、東京12チャンネルで無茶をやっていた話など、昔のメディアの世界の話が面白い。あの田原氏が、ATG映画『あらかじめ失われた恋人たちよ』の監督だったなんて、知ってましたか? 桃井かおりのデビュー作ですぜ。

〇田原氏が権力といかに戦ってきたか、とか、テレビの報道はいかにあるべきか、みたいな話を期待してはいけません。これは「不器用な昭和ヒトケタ」世代が、高度成長期のメディアの世界をいかに生き残ってきたかという物語だと思います。かんべえは昭和ヒトケタ世代の子供ですので、妙に反応してしまう話題が多くて楽しめました。


〇さて、今日は町内のドブさらいの日。ちゃんとやりましたがな。でもって、夜は『諸君』の座談会へ出動。宮崎哲弥氏は忙し過ぎるので、いつも日曜になってしまうのだ。


<6月5日>(月)

〇新しく出来た自民党の「シンクタンク2005・日本」の開所式をやるというから、オープンハウスのようなものだろう、と気軽に考えて虎ノ門のオフィスに立ち寄ってみた。日本におけるシンクタンク論の草分け、鈴木崇弘さんが事務局長を務めているのだし、かんべえも準備委員をやった経緯があるので、それなりの義理は存在するのである。

〇行ってみたら唖然。狭いオフィスに報道陣が押しかけている。シャレにならない自民党のお歴々が並んでいて、次々に挨拶しているではないか。あらららら。どうしよ、今日のワシはクールビズ仕様なのに、と思ったが、幸いなことに武部幹事長も中川政調会長もクールビズであった。狭いところに大勢人が集まっているので温度が急上昇。これでは確かにネクタイはしていられない。

〇少し前に誕生した民主党シンクタンクも、この近所にオフィスを構えているらしい。かんべえは以前から、東京財団の研究プロジェクトでは「虎ノ門を日本のマサチューセッツアベニューに」と吹聴している。この一体には日本国際問題研究所、世界平和研、岡崎研究所など、独立系シンクタンクが軒を並べているからだ。願わくば、この一体が政策情報の発信基地となりますように。

〇これまで、自民党シンクタンク創立に向けて汗をかいていたのは世耕さんである。ちょっとだけ雑談。世耕日記は、いつも朝に更新しているとのこと。「だって夜に更新すると、ついついネットを見出して寝られなくなるんですもの」・・・・あああ、それってまったくワシのことではないかと。溜池通信も朝に更新すべきでしょうか。

〇さて、「シンクタンク発足」よりも重要な今日のニュースは、「村上ファンドの謝罪会見」であります。テレビでは見てないんですが、新聞報道を読んで感じたことは、「これって江川卓の“中国針”会見じゃないのか」でした。

〇江川の中国針の話は、今では忘却の彼方かもしれません。かつて一時代を築いた巨人の江川投手が、1987年に「ここに打ったらもうボールを投げられなくなるという禁断の中国針を打ったから」という理由で引退を宣言したという事件です。信じられないことに、当時はそれを真面目に受け止めた人が大勢いたのです。もちろん、江川は口からのでまかせを言ってた訳ですが、そんな彼が今では日曜朝に徳光オヤジと掛け合い漫才をしているのですから、巨人ファンというのは底抜けにお人好しなのでありましょう。 (詳しくはウィキペディアの「江川卓」をご参照)

〇村上氏の記者会見にも、同様なウソが隠れていると思います。ライブドアがどこまで本気でニッポン放送株を買い取るのか、意図せずに「聞いちゃった」と村上氏は言う。でも、ホントはあなたが先にニッポン放送株を買って、「一緒に買おうよ」とホリえもんを誘ったんじゃないんですか? でもって、ライブドアが買って、株価が上がったところで自分は売り抜ける。しょうがないから、ホリえもんは「ネットとメディアの融合」などという駄法螺を吹いて、フジテレビと攻防を繰り広げた。実は最初から、ライブドアを嵌めるつもりだったんじゃぁないんですかい?

〇仮に真実がそうだったとして、検察がこれをガチンコで立件することはかなりの困難を伴うでしょう。だいたいインサイダー取引は、立証することが難しい。宮内被告などの証言があるので、事件の全容はほぼ明らかになっているでしょうけれども、裁判を争うとなると時間もかかるし不確定要素がある。これでホリえもんと村上氏の両方が無罪になったりしたら、目も当てられない。

〇そこで村上氏は、ついつい情報を聞いてしまったことにして、インサイダー取引を自分で認める。そうすれば有罪ですが、罪一等を軽くしてもらえる。自分のファンドも守れるというものです。よく出来た司法取引じゃありませんか。4000億円の資金を動かしきれなくなっていた村上氏としても、悪くないExit Policyであるかもしれません。なにしろ阪神のTOBが成立するので、キャッシュには困らない。博打は手仕舞うときがいちばん難しいのですから。

〇阿佐田哲也が描くところの手ホンビキの情景が浮かびます。馬鹿勝ちしてしまった男が、どうやって場を洗う(ずらかる)か知恵を絞っている。その場には怖いお兄さんたちが並んでいて、「勝ち逃げは許さねえ」と睨んでいる。下手をすると命も危ない。そこで、わざとバレるイカサマをやってみせて、「申し訳ない、勝ち分はすべて差し出します」と詫びを入れる。怖い御兄さんたちは、じゃあしょうがねえ、許してやっか、ということになる。なあに、前に便所に行ったときに、勝ち分の一部は靴下の中などにギッて(隠して)ある。とにかく無事にお家に帰れればラッキーてな状況なのである。

〇ま、以上はかんべえの「邪推」でありますが、とにかく見事なダメージコントロールを見せてもらったような気がします。

〇そうそう、今宵はルック@マーケットの残党が集まる新橋烏森口の「はづき」に久しぶりに寄りました。ひょっとすると店がなくなってるんじゃないかと思ったけど、ビックリするほど栄えてましたね。結構なことであります。鮎川良さんがいて、ご著書を頂戴しました。ありがとうござんした。


<6月6日>(火)

〇昨日があのネタで大騒ぎだったら、今日はもう新しい替え歌が出来てます。選曲が渋いねえ。

♪ムラカミファンド♪ http://palodysong.exblog.jp/2415057/ (「・・・みたいな」さん

配当をください 現金の分だけ
今度は思い切り 買ってみたいのよ
あきらめたんじゃないわ あたしが応じただけよ
合併相手なら 誰かを探してよ
ゆらり蠢いて そうよあたしはファンドマネージャー
戦い疲れても もう総会へも行けない
ねェ・・・ ギラギラと輝くファンドには
いくつの株が溶けてるの
配当をください 現金の分だけ
あいつなんか あいつなんか あいつなんか
買い占めてやるわ

(原曲「メモリーグラス」 作詞・作曲・唄:堀江淳)


〇こっちの選曲もかんべえの好みです。

ファンド! http://fukudagawa-shimpo.seesaa.net/article/18891747.html (福田川新報さん)

あたし灘高卒やからね 眼の付け所が違うんやと書いた
ファンマネの手紙の文字は とがりながらふるえている
10歳にして相場を張り 村上世彰の眼が年をとる
経営権を握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる

私 本当は目撃したんです 昨日ヒルズの 階段で
ころがり落ちたホリエモンと つきとばした村上のうす笑い
私 驚いてしまって 助けもせず告発もしなかった
ただ恐くて売り逃げました 私の敵は 私です

ファンド! 稼いでる君の唄を
稼いでない奴等が笑うだろう
ファンド! 冷たい塀の中で
ふるえながら耐えてゆけ

(原曲「ファイト!」 作詞・作曲・唄 中島みゆき)

〇旺盛なる創作意欲に心から敬意を表します。


<6月7日>(水)

日本貿易会で、「貿易動向調査会」の会合があり、2006年度見通しの改訂版を協議。昨年12月に作った見通しは、昨年の座長であった不肖かんべえとしては、「ちょっと強気かなあ」と思ったものであったが、今回の改訂版では輸出入ともにさらに数字が大きくなっている。もちろん、半年前から見て為替は円高になり、石油価格も上昇しているので、前提条件からして変わっており、数値が修正されるのは当然である。が、率直に言って、「やっぱり日本の製造業は強い」と感じさせる内容である。

〇モノの出入りだけではありません。所得収支の伸びも強く、貿易と投資がクルマの両輪となって黒字を稼いでいる。「未成熟な債権国」だという声が出たけれども、「このまま成熟したくない(するべきではない)」という声もあり、それももっともだと思いましたな。さらにいえば、サービス収支は2〜3年後には黒字化するかもしれない。国際収支を通して見えてくる日本経済は強力無比です。

〇見通しの発表は、6月9日(金)の午後3時。その時間以降に、このページにアクセスしていただければ全文を読むことが出来ます。どうぞご注目を。

〇さて、最近のアメリカについて、いろいろ聞いたり話したりする機会が続いているので、以下はちょっとしたメモ書き。

●「9/11」の記憶もだんだん風化してきた。空港では時給6ドル50セントのSecurity Officerの仕事が、明らかにお座なりになってきている。ところが、国民に対する盗聴行為を止めさせることができない。そういう意味ではトラウマはまだ解けていない。今年9月で5周年を迎えるが、なんと悩ましいことか。

●移民問題の深刻さ。不法移民1300万人をめぐって国内大荒れだが、日本ではほとんど報道されることがない。実はこの問題に対し、ブッシュ大統領が言っていることが「まとも」なので、ますます報道しにくいという図式がある。せめてブッシュが滅茶苦茶を言っていれば、「またこんなことを言って」という文脈で取り上げられるのだが。

●アメリカでは「幼児虐待者」の烙印を押され、誰も相手にしなくなっているマイケル・ジャクソンが、日本に来ると大人気でテレビにも出ることができる。おそらく当の本人が、いちばん不思議がっているのではないか。・・・こんな風に考えていくと、意外と日米のギャップは大きい。イチローと松井だけ見て、安心してちゃいけませんぜ。

●日米に共通する文化として、あまり気づかれていないけれども、「中小・零細企業がたくさんあること」がある。東南アジアあたりに行くと、「中小企業の育成」が永遠のテーマであり、経営者が足りないのが悩みの種だったりする。その点、近所のクリーニング屋のおばちゃんから学生ベンチャーまで、この国には「シャチョーさん」があふれんばかり。アメリカ人が"Independent"であることに価値を見出すように、日本人にも意外と「一国一城」志向があるのではないか。


<6月8日>(木)

〇大鹿靖明さんの『ヒルズ黙示録』を読んいてでふと思ったこと。

〇六本木ヒルズって梁山泊だったんだ。108人の豪傑(ベンチャー経営者)がたむろしていて、それぞれに冒険談がある。村上vsホリえもんの関係など、複雑な感情がからみあっていて、まことに小説より奇なり。

〇中盤までは痛快な物語だけれど、最後は物悲しくなってしまうのも『水滸伝』と同じ。豪傑たちも、最後は権力の前に倒れていく。最後に笑うのはゴールドマンやリーマンなんでしょうね。

〇面白うて やがて哀しき ヒルズかな。


<6月9日>(金)

〇自分で確認したわけではないんだけれど、アメリカのブログ界でとんでもない噂が飛び交っているらしい。こんな内容。

「ブッシュ夫妻が離婚の危機。ローラ夫人はすでにホワイトハウスを離れ、すぐ近くのメイフラワーホテルに宿泊している。あれだけ良好だった夫婦仲がこじれた理由は、『ジョージとコンディの急接近』のため」

〇最後の一文で脱力しちゃうんですが、「メイフラワーホテル」ってところが妙にリアルだったりする。これがホントだったら、政権支持率が1割になろうが、ニューヨーク株式市場が大暴落になろうが、もう全然不思議はありませんな。

〇噂にしても、こんなのが流れるということは、ブッシュ政権はほとんど末期症状ということになる。末期的とはいえ、政権は2009年1月20日の正午まで任期があるわけで、まだ2年半以上もある。なんという徒労感でありましょうか。ザルカウイなんて、もうどうでもいいっすよ。

追記:この怪情報のネタもとは"Wayne Madsen Report" http://www.waynemadsenreport.com/


<6月10日>(土)

〇ワールドカップが始まりました。四年前が懐かしいですね。開催国ドイツが初戦で勝ったので、これはもう現地は盛り上がっているでしょう。

〇今週号のThe Economist誌はW杯がらみの記事が3本も出ていて、この雑誌にしてはめずらしいハシャギぶり(でも、いつも通り屁理屈をこねている)ですが、ベルリンからの記事によれば、「ドイツがサッカーで優勝するときは、ドイツでいいことがある」のだそうだ。

1954年:西ドイツの経済的な奇跡が始まる(日本でいえば「もはや戦後ではない」の頃)
1974年:現代ドイツの始まり(西ドイツは72年五輪ミュンヘン大会、74年W杯をともに主催した)
1990年:東西ドイツが統合(前年にはベルリンの壁が崩壊)

〇先日、初めて知ったのですが、イタリアという国は第2次世界大戦の最後に自力でムッソリーニを追い払ったので、自分たちは戦勝国だということにしているらしい。だから歴史問題はスルーなんですと。なんてズルイ。結局、日本とドイツだけが「戦後の償い」で苦しんでいるわけであります。今回、W杯の決勝戦が行なわれるのは、1936年のベルリン五輪が行なわれたスタジアムなのだという。ここに至るまでは、なんという長い道のりであったことでしょう。日本の歴史問題の処理がうまく行ってないことは棚に挙げることして、ちょっとばかりドイツを贔屓したくなるのは無理もないことではありませんか。

〇"The Economist"の記事"Let the games begin"(さあ、ゲームを始めよう)では、こんなことを書いている。

「1936年のベルリン五輪はナチスが威張ってて後味が悪かったよね。だいたい五輪はいつも国際的なパワー衝突の場だった。冷戦時代は米ソがメダルの数を争っていたし、2008年の北京五輪もいろいろありそうだ。でも、その点、W杯は政治色がなくっていいよねえ」

「サッカーの世界では、超大国はブラジルだけだ。現実世界では落ち目のフランス、イタリアが頑張ってるし、新興勢力はアジアよりもアフリカだ。アメリカは弱くないけど、誰も勝てるとは思っておらず、中国は予選落ち。政治が力を入れたって勝てるもんじゃなし」

「世界最大のスポーツの祭典は何か、と聞かれたら、われわれは五輪ではなくW杯に票を投じるね」

〇上、まことに同感であります。


<6月11〜12日>(日〜月)

〇いかにして午後10時までに自宅に帰り着くか。これが本日の課題でありました。今宵、都内某所で行なわれた研究会の席上では、

「今日はなるべく早めに切り上げましょうね」

「午後8時半を過ぎたら、新しい質問はナシにしましょう」

〇などという不埒な発言が相次ぐ。発表者までもが、

「今日はそれどころじゃないでしょう」

〇などと八百長のようなことを言う。そうかと思えば、こんなことを言ってる人がいる。

「今日みたいな日に残業を命じたら、さぞかし部下に嫌われるでしょうなあ」

〇こんな風景が、日本中至るところであったのではないかと思います。W杯の第1戦に向けて、ワクワクとフレッシュな気持ちでテレビの前に向かった人たちが多かったのではないでしょうか。

〇あいにくなことに、対豪州戦はまことに残念な結果に終わりました。これは2戦目以降もちょっと辛そうです。ジーコ・ジャパンはあんまり強くないなあ。まあ、試合結果に対する評価としては、かんべえのようなファンはあまり多くを語る必要はありません。個人的には、この人の批評を信用しておりますので、お勧めしておきましょう。


<6月13日>(火)

〇何だか放心状態のままで24時間が過ぎてしまったような。昨夜の敗戦の衝撃はあまりに深く、自棄酒を飲む気力もなくベッドに入り、夢の中でも暗澹たる気持ちでありました。翌朝になっても頭の中の霧はさめず、本日のかんべえさんは、ジーコ・ジャパンのラスト10分間のように集中力を欠いた一日でありました。

〇ということで、今宵もあまり書くべきことがありません。確か昨夜も思い浮かんだのはこんなフレーズ。「朝は夜よりも賢いと誰かが言った。その明日のために、今日も寝た」。おそらく、昔読んだ松本零士の『男おいどん』のラストに出てくる言葉だったと思う。問題はですな、朝は確かに夜よりも賢いのですが、ほんのちょっとしか違わないのであります。でも寝よ・・・・。


<6月14日>(水)

〇先月のいつだったか忘れちゃったのだけど、飲んだ帰りに新橋の駅前でふと「ドリームジャンボ宝くじ」を衝動買いした。最近はグリーンジャンボ、サマージャンボ、年末ジャンボなど、ほとんど年がら年中「3億円」をやっているので、いい加減ありがたみも薄れていると思うのだが、ふと酔眼で派手な広告を見ているうちに、売り場に歩み寄ってしまった。そして、「ありがとうございました!」という威勢のいい声と引き換えに、「全国自治宝くじ第506回」を連番で10枚買い求めたのである。

〇かんべえの経済状況は、「3億円は当然持っていないけど、3000円を酔狂に投じるくらいの余裕はある」という程度である。仮に3億円があったとしても特段の使い道は思い当たらず、もとより物欲は乏しい人間である。他方、3000円の酔狂などはしょっちゅうであって、現に今年は競馬がじぇんじぇん当たらず、累損がかなり貯まっている。(馬券王先生、何とかしてください!) まあ、所詮は洒落であるので、「3000円を連番で投じた際の期待値は300円である」という程度の認識はあるものの、「どうせだったら3億円もらってやってもいい」くらいの傲慢な心根もあるのである。

〇てなことを考えつつ、新橋駅に向かっていたところを後ろから誰かに呼び止められた。振り返ると先ほどの売り場の女性が、「お客様!」と呼びかけてくるではないか。そして彼女は、「お呼び止めしたのですが、聞こえなかったようなので。お金を余計にいただいておりましたので、お返しします」と言って、ピンピンの1000円札を差し出した。期待値300円のところ、早くも1000円ゲットである。というか、へー、いまどきこういう話ってありかよ、と意外な展開に驚いていると、彼女は大きな声でこう言って頭を下げた。

「でっかいのが当たりますように!」

〇彼女の後姿を見送りながら、ああ、この人は本当に夢を売る仕事をしているのだ、とそのとき気がついた。ワシは別段、夢を買ったわけではなく、ただ酔狂を買っただけであったのに。そして初めて、ああ、これで本当に大きいのが当たれば、「ちょっといい話」になるのにな、などと考えた。

〇ドリームジャンボは昨日が抽選日で、今日、インターネットで当たりを確認したところ、やっぱり期待値300円通りの結果であった。まあ、それはよろしい。本当にでっかいのが当たってしまったら、困っていたかもしれぬ。村上ファンドで1000万円がX倍になったけれども、それで人生棒に振ったら元も子もないではないか。というか、普通、総裁になって時点で清算しろよ、と思うのだが、その話はここではさておく。

〇生きていく上で、おカネは絶対的に必要である。でも、たくさんあり過ぎると、「でっかいのが当たりますように」とか、「出でよ万馬券!」と祈ることができなくなるかもしれぬ。夢や酔狂を失っては、生きている甲斐がないではありませぬか。ねえ、ご同輩。


<6月15日>(木)

〇昨年、当欄の6月28日にご紹介した「ピューリサーチ社の国際好感度調査」の2006年版が出ました。こちらをご覧ください。

http://pewglobal.org/reports/display.php?PageID=825 

  USA Germany France Japan China
USA

77

66

52

66

52

Britain

56

74

59

68

65

France

39

89

68

83

60

Germany

37

65

72

70

57

Spain

23

72

66

65

45

Russia

43

77

74

73

63

Egypt

30

62

60

63

63

Indonesia

30

56

52

78

62

Pakistan

27

31

25

43

69

Jordan

15

44

46

46

49

Turkey

12

43

18

46

33

Nigeria

62

59

59

64

59

Japan

63

78

72

77

28

India

56

47

46

60

47

China

47

54

59

21

94


〇去年とほとんど同じ結果です。各国への好感度から、自国民の分を差し引いた平均値を算出すると、アメリカ38.6点、ドイツ60.9点、フランス54.3点、日本60.4点、中国53.7点という結果になりました。昨年と同様にいい成績だといっていいでしょう。

〇日本は西側諸国で全般的に高い好感度を得ており、こっちがあまり好きではないロシアでも7割をキープしている。特にインドネシアとインドは非常にはっきりした親日国であるようです。ただし中東では、日本よりも中国の好感度が高い国がある。そして中国人の日本嫌いは昨年同様に徹底しています。

〇今年は日本の調査が行なわれています。日本は調査対象の中では、「もっともアメリカに対する好感度が高い」というのは興味深い現象ですね。いちばん好きなのはドイツ。これはW杯でも、そこはかとないドイツびいきを感じます。もっともイギリスファンも多いんですよね。旧同盟国に対する感情が、心のどこかに残っているのでしょうか。

〇気になるのは中国に対する好感度がきわめて低いこと。こうしてマトリクス全体を見ると、「日本と中国は仲が悪いなあ」ということがハッキリします。だから分析記事でこんなことを書かれていたりする。

Meanwhile, Japan and China, two neighboring Asian rivals with long histories of conflict, hold very negative opinions of one another. Slightly more than a quarter of Japanese (28%) have a positive opinion of China, and even fewer Chinese (21%) have a favorable view of Japan. On the other hand, traditional European rivals Germany and France rate one another quite positively; in fact, both rate the other country more favorably than their own.

〇いや、日中は別に長い紛争の歴史を持っているわけじゃないんです。ドイツとフランスの方がよっぽどひどいです。個人的には、中国が民主化して、経済水準でももう少し向上しないと、ホントの意味での日中友好は難しいと思うのですけどね。


<6月16日>(金)

〇通常国会も事実上、今日でおしまい。「会期延長ナシ」は思い切った荒業でして、教育基本法改正案、共謀罪こと組織犯罪処罰法改正案、国民投票法案、防衛庁の「省」昇格などは、すべてをぶった切ってしまいました。小泉さんとしては、「見切り千両」なんでしょうね。思い入れの深い「行革法案」と「医療改革法案」は仕上がってますし、小沢さんの顔はあんまり見たくないし、ここへ来て村上ファンド関連の問題が吹き出したのでちょうどいい、ということなのでしょう。

〇去年は暑い季節の選挙だったこともあり、この夏をゆっくり過ごすことに関して、ホンネのところでは永田町方面でも不満はないでしょう。その分、センセイ型の外遊が増える公算が高く、すでにフランス大使館あたりは戦々恐々であるとの噂を聞きました。もっとも、この夏は「ポスト小泉」をめぐる政争の季節でもある。福田さんは、何だか出ないような感じになってきましたね。総理になる気のない人は、総理になるべきではないと思いますので、出ないなら出ないで意思表示をはっきりさせられた方が良いと思います。

〇政争が始まると、霞ヶ関方面は暇になる。今だと忙しいのは、7月初旬に決まる「骨太の方針」に関係している人たちくらいでしょう。官僚にとっては、そろそろ気になる人事の季節。クールビズも定着してきたし、夏を迎える準備は着々と進んでいることでしょう。

〇気候的には梅雨真っ盛りという感じですが、もう夏が始まっている人たちもいる、というお話でした。


<6月17日>(土)

〇町内親子会のボウリング大会へ。去年も5月21日に行ってましたけど、例によってガーターの上にレールが置いてあって、ボールが溝に落ちることがないという「ちびっこレーン」です。10番ピンが残ったときは、対角線上からバーを狙って投げて、薄くはね返してピンに当てればほぼ間違いがない、などというケシカラン技も使えたりする。まあ、小さい子などは、バーに当てて跳ね返ってきたボールをさらに反対側のバーに当て、なおかつ8本くらいのピンを倒すという「妙技」を見せてくれたりもする。まあ、そういうゲームです。

〇ところがこのボウリング場、去年に比べてひとつ進化してました。機械が勝手に「ファウル」を告知してくれるのである。ボールを投げるときに足が線を越えてしまうと、赤ランプがついて自動的に「F」が宣告され、倒したピンがちゃんと元に戻されてしまう。ボウリングにそういうルールがあることは知っているけども、真面目にカウントすることは滅多にしませんよね。だからゲームに慣れている人ほど、ショックが大きい。

〇豪快な投げ方をする某お父さんは、1ゲームにストライク4つとスペア2つを取るくらいの腕前なのですが、同じゲームでファウルを4つも取られてしまって137点に終わってました。それさえなければ、高い点数が取れていたのに。ちなみに、かんべえの今年の点数は124点と98点。去年は115点でしたから、あんまり変わりませんなあ。


<6月18日>(日)

〇ワールドカップはいい試合が多いですね。これで今夜の対クロアチア戦を見てしまうと、今の気持ちを忘れてしまいそうなので、夜まで待たずに書いておきます。

〇これまでW杯を見ていると、アルゼンチンの鮮やか過ぎるパス回しとか、イングランドにおけるベッカムの円熟味とか、オランダの全社一丸サッカーとか、これはもう逆立ちしたって敵わないようなチームばかり。強いて言えば、イランがちょっと弱いかな。というか、わがジーコ・ジャパンを基準に置いてしまうと、悲しいほどの差を実感してしまう。

〇ところが、そういう強いチームが楽に勝っているかというと、けっしてそうではない。ドイツがポーランドを仕留めた試合なんぞは、苦労に苦労を重ねてゴールを決めている。そして、ゴールが決まったときの雄叫びのすごさよ。世界の最高峰の人たちが、最高の舞台で勝負しているから、W杯に凡戦は少ないし、そんなものあっちゃいけないのである。

〇そして敗れ去っていく者たちも、けっして弱くはない。セルビア・モンテネグロもコート・ジボアールも強いチームである。正直なところ、日本が戦ったら負けそうな相手である。W杯に出てくるために、みんなたくさんのドラマを乗り越えてきている。それでも負けるときは負ける。だって勝負なんだから。もっといえば、ここに出てこれなかったけれども強いチームだってあったのだし。

〇わがジーコ・ジャパンは、こんな舞台で3回も試合をすることができる。しかもその中には、今夜のクロアチア戦だけではなくて、ブラジルとの試合も含まれている。そろそろ「何が何でも勝ちたい」ではなくて、「ここは一局、教えていただこう」という謙虚な気持ちになってもよいのではないか。初戦を落とした手負いの状態で、フォーメーションを変えて臨むという状況も真新しい体験である。そしてこうした経験のひとつひとつが、日本サッカーの歴史に刻み込まれていくはずだ。

〇初戦の豪州戦は、思い出すだけでも手痛い敗戦であって、「ドイツ大会の豪州戦、ラスト10分の悲劇」は語り継がれるだろう。あの試合、仮に1−0のままで勝っていたとしたら、単なる凡戦ということになる。が、ラスト10分の3点によって、ファンはサッカーの怖さを身に沁みて知ることができたともいえる。あれを知ったお陰で、サッカーの見方が変わったという人だっているだろう。でも、それはこの世界における新参者が、遅かれ早かれ通過しなければならないポイントのようなものだったのではないか。レベルの高い試合を見ているうちに、そんな心境になりました。

〇てなわけで、数時間後に試合を控えた選手の気持ちは知る由もありませんが、ファンとしてはあと2回もチャンスがあることに感謝して、素直に試合を楽しみたいと思います。願わくば、今夜の試合が、選手たちが成長できるようなものとなりますように。そしてできれば、自分たちの強さを発見できるような展開となりますように。


<6月19日>(月)

〇一夜明けて、本日は日米台三極対話の東京ラウンド「クローズド・セッション」である。昨年10月に台北で集まった顔ぶれが、今日は市谷に集結。正直なところ、このテーマではあんまり明るい話はないのだけれど、3カ国の政治、安全保障、経済など、どれについて語っても面白い。

〇今日の話をしていて、「2008年はつくづく大変な年になるなあ」ということを実感しましたな。(注:その後、ちょっとずつ青字で追加しています)


●2007年

7月:参議員選挙(→ポスト小泉政権はこの難所を凌げるか?)

秋:中国共産党大会(胡錦濤が2期目に→じょじょにレイムダック化?)

11月:第2回東アジアサミット(北京)→第3回東アジアサミット(フィリピン)

12月:韓国大統領選挙(→ポスト盧武鉉)

●2008年

3月:台湾総統選挙(→国民党の馬英九政権?)

4月:ロシア大統領選挙(→ポスト・プーチン)

7月:G8サミット(日本が主催国。総理は誰?)

8月:北京五輪

11月:アメリカ大統領選挙(→ポスト・ブッシュ。大激戦になるのでは?)

●2009年

9月:衆議院の任期終了(それ以前に解散・総選挙)

9月:自民党総裁選(ポスト小泉の再選なるか?)



〇かんべえとしては、とりあえず今日の自分のプレゼンが受けたので安心したところ。明日はオープンセッションがあります。


<6月20日>(火)

〇日米台三極対話の2日目。今日は日本財団ビルにてオープンセッションである。かんべえは、経済セッションのパネリストを務める。最初の報告はさらっと日本語で済ませて、あとは沈黙しているつもりだったが、「安全保障と経済はどっちが大事か」などというお馬鹿な議論(でも、意外と面白い)が始まってしまい、あーでもないこーでもないとついつい口を挟んで参戦する。ちなみに、今日の内容は後日、産経新聞で報じられるとのことです。

〇夜は東京財団の恒例の若手安保研究会があり、結局、昼も夜も同じ部屋でお弁当を食べていたりする。何だか激しく消耗。でも、二日間頑張ったから、ちょっと満足した気分。

〇ところで、こんな求職票が出ているそうですよ。


327 名前:2006年まで名無しさん[] 投稿日:06/06/19 22:20 ID:6mI3LIDk
*************【 急 募!! 】*************
仕事内容 : FW(主にボールを枠内に入れるお仕事、軽作業です)
期   間 : 6月20日〜6月23日 
勤 務 地 : ドイツ
給   与 : 応 談 (結果に応じてボーナスあり)
採用条件 : 日本国籍を持っていて国内外プロ1部リーグ在籍者、
        または1部リーグに在籍経験のある人。
        シュートチャンスでパスを出さない方、チャパツでない、
        派手なスパイクをはかない方。 ガムをかまない方。
        年齢19〜33歳まで。
        ※一応サッカーなので、急にボールがくることもあります。

申込み先 :  財団法人日本サッカー協会 (担当:中田(英))



〇やっぱり富山県出身者にフォワードは向いてないって。ジーコよ、もう柳沢を使うなああああ。


<6月21日>(水)

〇自民党総裁選挙において、今後発生しそうなサプライズを考えてみました。以下の可能性はいずれも高くはないですが、あっても不思議ではないようなものばかりだと思います。


●福田康夫元官房長官が不出馬宣言をする。そして、「え?私がいつ出馬すると言いましたか?ないでしょ?ふふっ」と記者をいびる。

――周囲の空気が凍りつくことだけは間違いありません。


●小泉首相がサンクトペテルスブルグのG8から帰国途中、政府専用機の中で突如、首相辞任を宣言し、そのまま靖国神社に参拝する。

――いちおう飯島秘書官の読み筋の中にはあるのではないかと。


●大宏池会が結成されて、麻生、谷垣、河野太郎の3者の間で「プレ総裁選」が実施される。

――いっそホントにやってみた方がいいかもしれません。


●総裁選が本番を迎えるも、誰からも応援を頼まれない竹中総務大臣がいじけてしまう。

――あわわわ、こんなこと書いていいのか俺。


●日米首脳会談終了後、ブッシュ大統領が記者に向かって、「コイズミの意中の後継者はエーブ(Abe)だそうだ」とバラしてしまう。

――「エイソー」(Aso)でもいいんですけどね。


●すべての候補者が出揃ったところで、小泉さんが1票を投じるのは、同じ神奈川県で考え方も近い河野太郎である。

――ともに3代目で、タイプも似ているような。


●安倍政権が誕生するも、山本一太議員には論功行賞がなく、その代わりに応援歌がヒットして紅白歌合戦出場が決まる。

――歌は結構、上手いという話ですし。


〇10本考えるのは、ちょっと辛かったな。誰か手伝ってちょ。


<6月22日>(木)

東京財団の若手安保研究会、本日は提言の発表会でありました。以前にも2004年度の研究成果である「日本の総合的安全保障のあり方に関する研究」をご紹介しましたが、今回は2005年度の「戦略的広報外交のすすめ」がメインです。今月の中央公論に寄稿した拙稿は、この提言をさくっと予告するような内容になっています。

〇まったく偶然の一致なるも、今日の発表会場は日本財団ビルの2階の大会議室で、一昨日、日米台三極対話のオープンセッションをやった場所である。パネリストの中に、岡崎研究所の阿久津さんが入っているところまで同じ。違っていたのは座る場所くらい。まあ、今日は日本語でいいわけだし、司会兼任ということで完全なる出たとこ勝負モードでした。

〇会場には大勢お集まりいただきました。戦略的広報外交(Public Diplomacy)は、旬の話題でもあるので関心は高かったのでしょう。中国のプロパガンダ対策、という挑発的なテーマ設定もありましたし。主催者側としては、内心もっと、お叱りを受けるようなところもあるかと思ったのですが、想像以上に反響は好意的であったという印象でした。

〇東京財団の若手安保研では、いつも「虎ノ門を日本のマサチューセッツアベニューにしよう」などと言っております。虎ノ門界隈には、不思議とシンクタンクが集まっています。ここから安全保障問題に関するフレッシュな議論を常に発信するようにして、海外の戦略家が「日本の次の一手」を探るために、この場所を訪れるようになったらいいな、などと考えています。


<6月23日>(金)

〇将棋の世界には、『敗局は師なり』(中平邦彦/講談社/1987年)という名著があります。棋史に残る名勝負を敗者の側から描いたもので、すぐれて濃密な人間ドラマとなっています。今朝の対ブラジル戦を見て、この本を書棚から取り出しました。

〇かんべえが思い出したのは、この本の中の「見てしまった悲劇――内藤国雄」のエピソードです。王位戦の防衛に臨む内藤は、挑戦者、中原誠三冠王に7番勝負の出だし2戦を失った後、それでも「負ける気がしない」という思いで3戦目に挑みます。混戦模様となった終盤、内藤が放った勝負手に対し、中原はゆっくり7分間考える。このとき、「敵はどう思っているのか?」と、内藤はふと中原の顔を覗き見たのです。


中原は、正座をややくずした姿で座り、ひざの上の扇子のひもを指で軽くもて遊びながら、穏やかな眼で盤を見つめていた。

充ち足りて無心の姿であった。猫が戯れているような、幼児が大好きな玩具を前にしたような、楽しげな姿であった。

――これには勝てん。

と内藤は思った。この切迫した局面を前にして、どうして彼は楽しんでおれるのか。



〇長い将棋生活の中ではじめて、内藤は恐怖心を感じます。感受性の豊かな内藤には、中原の無邪気の底にある凄さが見えてしまったのでしょう。「見なければよかった」――闘争心は急速に醒めていき、ずるずると勝負を失います。その夜、内藤は「もうあかん。次も負ける」と言って、著者をガッカリさせるのです。

〇敗戦から受けたショックと迷いの末に、内藤がつかんだ結論は「楽しむ心が大事なんや」でした。8年後、同じ王位戦で中原に挑戦した内藤は、1勝2敗で迎えた第4局、後手で中原得意の相矢倉を受けて立ち、速攻で矢倉の第一人者を倒します。そして続く第5戦、第6戦を連覇し、タイトルを奪取するのです。

〇『敗局は師なり』には、「敗戦はただマイナスばかりではない」「挫折なき人に超一流はいない」という思いが込められています。勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。日本サッカーが後日、大をなすためにも、ドイツにおける3試合の経験を十分に活かす必要があるといえるでしょう。


<6月24〜25日>(土〜日)

〇本日はサンデープロジェクトのコメンテーター、2度目の出番でありました。番組の裏話などを少々。

〇確率は低かったのだけど、もしも先週、対ブラジル戦で奇跡が起きていた場合、本日の番組は「奇跡を起こしたジーコ・ジャパン、明日の対イタリア戦を徹底予想。『決勝までいけますよ!』(松木安太郎)」てな内容になっていたことでしょう。この辺のメディアの節操なさは、すでにあちこちで指摘されていることではありますが、番組作りの現場を見ていると「しょうがないのかなあ」という気がする。カメラの前で「さあ、日本は何勝何敗?」と聞かれた場合、ついつい強気な予想を答えてしまうのが人間のサガというもの。ワシだって、きっとそうなる。

〇サッカーネタが吹っ飛んだお陰で、本日は政治ネタ満載となりました。「五党論客が小泉改革の功罪を徹底討論」「ポスト小泉研究、正念場だ!谷垣財務大臣」「官僚との戦いと竹中流の転機」の3本立て。コメンテーター陣は何度も田原さんから発言を振られるけど、こればっかりは「急にボールが来たから」とは言っていられない。こういうのもめずらしい。

〇五党論客編では、CM中のこのやり取りが面白かったな。

高木陽介(公明党広報局長) 「公党の党首なんだから、もう少しゆっくり話したらどうですか?」

福島みずほ(社民党党首) 「そんなこと言ってたら、しゃべれなくなっちゃう!」

〇だって福島さん、「ハイ、ハイッ!」って手を挙げちゃうんだもの。ちなみにスタッフの方からは、「福島さんは全部出なきゃいけないから可哀想」という声があがっておりました。なるほど、社民党はほかに人がいませんからね。

〇ポスト小泉候補の谷垣さんは、とってもいい方だということがよく分かりました。あれでは意地悪な質問はできませんね。でも、実は来月出る『諸君』の座談会で、「麻垣康三+小沢」を採点するという座談会の企画があって、谷垣さんにはとっても辛い点がついているということはナイショであります。(でも、悪いのはワシだけではない)

〇竹中総務相は、ちょっと「ヨイショ」企画っぽいところもありましたが、いい味が出ていたと思います。最後、時間切れギリギリになって、ぐっちーさんが書いていた地方財政のネタを質問してみました。地方債市場は暗黒大陸みたいなものだから、借り手の自治体もさることながら、貸し手の銀行も危ないんじゃないかという話。元金融担当相がどう反応するか、興味深いところでしたが、あいにく時間切れでした。竹中さんが知らないようではこれは本物のリスクということになりますが、本当のところはどうなんでしょうね?


<6月26日>(月)

〇以下は本日、小耳に挟んだ話。

〇WTO加盟の際の条件により、中国は2007年には金融部門を外資に開放しなければならない。そこで外資が入ってくるわけだが、彼らは真っ先に人を採用する。それも、目が飛び出るほど高い給料で。その場合、政府系機関に勤める人たちが最初に狙われるだろう。ところが、中国で政府系機関に勤めている人たちは、とってもお給料が安い。それこそ「部長クラスで月5万円」みたいなケースが少なくない。中央銀行である中国人民銀行あたりはさすがに高目だそうだが、とにかく国際水準から見たら格安であることは間違いないだろう。

〇そこで中国では、間もなくお給料改革に乗り出すらしい。「外資に人材を獲られないような給与水準」を目指すというわけだ。官僚国家であるシンガポールなんぞも、役人の給料が高いことで知られている。だからまあ、このこと自体は間違ってはいないだろう。普通、給与体系を全取り替えするとなると、組織は蜂の巣をつついたような騒動になるはずである。が、そこは朝令暮改が平気な国であるし、減らすのならともかく、「お手盛り」で「大盤振る舞い」するのが眼目なのである。ああ、めでたい、もったいない、あやかりたい。

〇ところが、ここで考えられるのは、「賃金インフレ」の可能性である。だって官が賃上げすれば、民もきっと追従するだろう。ということで、この秋ぐらいから、中国では一斉に給料が上がるとする。供給量が変わらないままに「所得倍増」が起きたらどうなるか。とりあえず物価は上がるでしょうね。あるいは、中国製品の国際競争力が低下するのじゃないだろうか。

〇こんな風に、ドラスチックな動きが絶えないことが、中国経済の面白い、あるいは怖いところではないかと思います。ホントのところどうなのか、詳しい方はお知らせくださいませ。


<6月27日>(火)

経済産業省が取りまとめ作業中の「新経済成長戦略」概要を見ていると、この部分が非常に面白いと思います。

「新経済成長戦略」の各政策の努力目標が達成された場合、2004年度から2015年までの間、
――1人当たり実質GNI(国民総所得)は平均年率2.5%程度の成長を見込む。
(2015年度の国民1人当たりのGNIが、現在と比べて約3割増加)
――平均年率2.2%程度の実質GDP成長率を見込む。

〇政府・与党としては、「歳出・歳入一体改革」では、歳出を減らすという暗い話ばかりになるので、成長を加速して歳入を増やすという明るい話も必要であろう。ということで、攻めの経済政策として、「新経済成長戦略大綱」を策定することとなり、そのとりまとめを経済産業省が担当することになった。ですから、何が何でも高目の経済成長を目指さなければならない。ところが、「平均年率2.2%程度の実質GDP成長率」というのは、実際問題としてギリギリの目標ということになるでしょう。少子・高齢化の中で高度成長を目指すのは、いろいろ制約条件がありますから。

〇そこで経済産業省は、2.2%のさらに上を目指す手段として、「実質GNI(国民総所得)」に着目した。要するにGNP(国民総生産)のことですな。GDPであれば2.2%が関の山だけど、GNPであれば2.5%くらいを目指せる。さらにいえば、「一人当たりのGNI」を政策目標にすれば、少子化のお陰もあって、かなり明るい未来像を描くことができる。

〇この問題意識は、先週、発表されたばかりの平成18年度通商白書でも共有されている。通商白書の概要を見ると、こんな風に書いてある。

国の「可処分所得」はGDP成長と所得収支拡大でもたらされる。

国の「可処分所得」(=GNI)の増加=GDP成長+所得収支の拡大

〇つまり、少子高齢化を考えると、今後のGDPはあんまり伸びが期待できないので、盛大な伸びを示している所得収支に着目して、「国の可処分所得」(GNIもしくはGNP)を伸ばすことを考えよう、というわけである。所得黒字が貿易黒字を上回っているという話は、溜池通信の先週号でも指摘したところ。通商白書によれば、日本の2005年所得収支は対名目GDP比で2.26%にも達している。ぶっちゃけ言えば「国内はたかが知れてるので、対外投資で儲けましょう」ということになる。

〇そりゃそうですよね。日本国内の潜在成長力が2%だとしたら、アジアには5〜6%の国がナンボでもある。だったら国内の貯蓄をアジアに投資して、投資収益を稼ぐ方が楽じゃありませんか。もちろん、そのためには直接投資に対する安全保障上の配慮をするとか、ちゃんとキャッシュフローが発生するような形にするとか、いろいろ気をつける必要はありますが。

〇ここでひとつ問題が発生する。GNPを成長目標にするのは大いに結構。とはいえ、それは日本企業が海外で稼ぐということですから、税収が伸びるとは限らないわけです。つまり経済産業省としてはGNPでもいいけど、財務省の論理としてはGDPが伸びないと困るのです。もっとも日本企業としては、税の論理なんざ知ったことじゃない。このすれ違いが面白いと思うのです。まとめると、こういうことになります。

●経済産業省―日本企業の論理―GNPを目標に―海外直接投資で儲けましょう

●財務省―日本政府の論理―GDPを目標に―国内が伸びないと困ります

〇この2つの経済戦略の差異は、現時点では気づいている人は少ないかもしれませんね。

〇てなことを、7月6日に予定されているセミナーで話してみようかな、などと考えています。今宵はその下打ち合わせ会でありました。時節柄、日銀総裁の進退をめぐる話が飛び交いました。「ゆかりたん」は、明日の「朝ズバ」にご出演予定とのこと。果たしてどんな発言が飛び出しますやら。

〇ちなみに、明日は意外な場所から更新する予定。ご期待ください。


<6月28日>(水)

〇沖縄県那覇市に来ております。こちらはすでに梅雨明け。空は青く、雲は入道雲です。うふふふふ。でも暑いです。歩いていると、どんどん汗をかきます。熱中症も多いらしくて、水分を取らないとヤバイらしいです。

〇かんべえ、沖縄に来るのはまったく初めてである。いやしくも日米関係を守備範囲にしている者が、この年になって「沖縄は初めて」というのは、われながら詐欺師みたいではないかと思う。その一方で、中国だって去年行ったのが初めてだったし、『アメリカの論理』という本も全然アメリカに行かずに書いているし、そういうことがめずらしくないのが自分でも困ったものである。

〇そんな出不精な人間に、地方都市を訪問するチャンスを与えてくれる内外情勢調査会の仕事は、まことにもってありがたい。それでもまだ一度も行っていない県は、47都道府県中、和歌山県、鳥取県、島根県、徳島県、愛媛県、高知県、長崎県、熊本県とまだ8つもある。何だか西日本ばっかりだな。ちなみに来月は大分県に行く予定。今後、ほかからもお呼びがかかりますように。

〇ということで、沖縄県那覇市である。まずは那覇空港に到着して見ると、これが堂々たる大空港である。国際線もあるし(中国と台湾の中継点でもある)、軍民共用でもあるし、とにかくたいした規模である。全国の地方都市をよく見ている眼には、那覇市はスプロール現象(いわゆるシャッター通り)が起きていない点が妙に新鮮に映る。もともと第三次産業の多い観光都市であって、中央の資本の影響もかならずしも及んでおらず、加えてもともとが米軍施政によるクルマ社会であったために、モータリゼーションによる街並みの変化という現象とも無縁であった。

〇沖縄はクルマ社会と聞いていたが、那覇市には2003年に出来たモノレール「ゆいレール」が通っている。ホテルにチェックインしてから、このモノレールに乗って、とりあえず首里城を見に行くことにする。

〇首里城はまんま中国みたいでした。去年の秋に北京で見た紫禁城の延長線上のような感じ。琉球王国は、非常に明確に冊封体制に入っていたのですね。これでは中国人が、「沖縄はわれらが領土」と言い出しても全然不思議はない。田代先生によれば、そもそも中国人には「国境」という意識が希薄であるそうなので、まあ無理もないですかね。2000円札に印刷されている「守礼の門」は、実物を見て拍子抜けするような感じ。この脱力感は「札幌の時計塔」といい勝負ですね。

〇それから国際通りを歩く。全長1マイルあるという。が、これはすぐに飽きる。観光客相手の土産店が多いもので。沖縄料理などに加え、ステーキの看板が多いのが不思議ですね。歩いていると、圧倒的に女性が多くて、どう見ても男女比が崩れていると思う。これは男性が内地に行っていて少ないからというよりは、単に女性観光客が多いせいではないかと思う。そういえば那覇市には、予備校や英会話教室など、教育産業に関する店舗が多い。今時めずらしい珠算の教室まで見かけました。これは全国では飛びぬけて出生率が高いためかもしれない。

〇せっかくなので、那覇港に海を見に行く。コンビニで1本146円なりのオリオンビールを買い、堤防に乗っかってビールを飲みながら落日をめでる。東シナ海はじょじょにオレンジ色に染まっていく。ちびちび飲むオリオンビールは、バドワイザーのような味がする。まだまだ宵の口で、沖縄の夜はこれからが長い。

〇と、まるで遊んでいるみたいですが、来週分のSPA!「ニュースコンビニ」の入稿もあるので、仕事もないわけではないのである。でもって、明日はいったい何を話せばいいのであろうか。などと悩みつつ、沖縄県那覇市の夜は更けていく。


<6月29日>(木)

〇沖縄の新聞界は「琉球新報」と「沖縄タイムズ」という県紙が二分しており、本土の大手紙が付け入る余地がない。その理由として大きいのが「死亡広告」欄である。沖縄の読者にとっては、死亡広告こそがもっとも重要な情報であり、それが取れない新聞には存在価値がない。だから読売新聞も産経新聞も売れず、結果として非常にリベラルな立場の報道がなされている・・・・・。10年位前に、こんな説明を聞いた覚えがある。ということで今朝、興味津々で琉球新報を手にとってみたのであります。

〇ビックリ仰天、「謹んでお悔やみ申し上げます」というページが丸々1ページを占めている。葬儀場や墓石や花屋さんなど、付随する広告が反対ページまではみ出して掲載されている。普通の地方紙の「慶弔欄」を思い浮かべていたのは完全な勘違いでした。下は、ここに掲載されている死亡広告のごく一例である。

夫 金城XX儀(屋号=XXXX)病気療養中の処6月28日午前X時X分XX歳をもって永眠致しました 生前の御厚誼を深謝し謹んでお知らせいたします

告別式は先の通り執り行います
一、日時XXXXXX
一、場所XXXXXX(那覇市XXX X丁目X番X号 電話XXX−XXXX)

平成18年6月29日
自宅=那覇市XXXXXXXXX

喪主妻 金城XXXX
長男   金城XX
嫁    金城XX
次男  金城XXX
長女  具志堅XX
婿    具志堅XX
次女  知念XX
婿    知念XX
三女  XXウィリアムズ(在アメリカ)
婿    XXウィリアムズ(在アメリカ)
孫    金城XXX
孫    金城XX
孫    具志堅XX
孫    知念XXX
孫    知念XX
義兄  XXXXX
義妹  XXXXX
甥姪代表 XXXXX
親戚代表 XXXXX

弊社取締役XXXX殿ご尊父
金城XX様6月28日御逝去されましたので謹んで関係各位にお知らせいたします。
平成18年6月29日 株式会社XXXXXXX社員一同

〇地元の方におそるおそる尋ねてみた。「あのー、これって個人情報保護の観点から考えて、最近は名前を載せたくないという人もいるんじゃないでしょうか?」 ――すると、予想していたとおりの答えが返ってきた。「ああ、そういえばそうですね。でも、考えたこともありませんでした」

〇なにしろ上の情報、ちょっと読み込めば「ふーん、長男は結婚しているけど、次男は独身なのか」とか、「三女は結婚してアメリカにいるわけね」みたいなことがモロバレである。もちろん、孫の数までわかってしまうし、自宅の住所はおろか、勤務先まで書いてある。それこそ一族郎党のプライバシーが筒抜けである。

〇一方で、この死亡広告は、全県下に向かって一族郎党の現況を知らせる絶好の機会ともなる理屈である。沖縄のお葬式がどんなものであるのか、知識のない身としては想像するほかはないのでありますが、おそらく地域社会における非常に重要な役割を占めているのでありましょう。ということで、「沖縄ってすごい・・・・」と妙に感心してしまったのでありました。

〇かくして仕事は終わり、かんべえは自宅に帰り着いております。いや、面白かった。もう少し居たかったですね、沖縄に。


<6月30日>(金)

〇ああ、もう今年の上半期が終わるのですな。なんて早い。

〇沖縄からの帰りの飛行機で読み始めた『ハゲタカの饗宴』(ピーター・タスカ/講談社インターナショナル)が無茶面白い。実は某誌から書評を頼まれ、締め切りが迫って仕方なしに読み始めたのだけど、とにかく純粋にミステリーとしてよく出来ている。それはもう『マークスの山』や『OUT』、あるいは『新宿鮫』シリーズクラスである。文体と会話、ナレーションの妙、筋立て、キャラクターの個性(ヒーロー、ヒロイン、それに脇役も)、そして外資にあらされる日本の金融界という舞台も。

〇問題は、編集部は「ピーター・タスカの本」ということで評して欲しいのだろうということ。ああ、面倒くさい。そんなこと、どうでもいいと思うのだけど。この本はとにかくフィクションとしてよく出来ている。それで十分ではないか。かんべえとしては、楽しんで読んでしまったために、これから書評を書くのが苦痛になっているのである。








編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki