●かんべえの不規則発言



2005年5月





<5月1日>(日)

○お昼にモスバーガーに出かける。初めて「匠味」のハンバーガーなるものを食してみる。激ウマである。なおかつ満腹してしまう。今まで食べてたハンバーガーとは何だったのだろうと思う。1日限定30食ということなので、通しナンバーと製造責任社名を書いたカードがついてくる。まあ、さすがに1個610円だものな。

○ちなみに今日行った南柏店では、1個1000円の「匠味十段」も売っている。そっちはちょっと手が出ませんでした。モスの株主になると、年間2万円分の株主優待券をくれるらしい。十段を食べているのは、株主だけだったりして。ところで1500円の株を千株買うとして、2万円の優待券は利回りから考えてお得なのかどうか。これはちょっと悩ましい。

○モスバーガーというのは、もともとが商品開発にはカネをかけるが、店舗は不便な場所にあることが多い。創業者が「美味いものさえ出せば、客はかならず来てくれる」という信念の持ち主だったのだそうだ。ちなみにこれは、HPやブログを作るときにも使える発想だと思います。面白い記事を書けば、かならずアクセスは増える。どこそこに登録する、みたいな工夫はあんまり重要ではありません。

○この会社、昔々は「モスモス」という変なPR誌を出していた。それが楽しみで、定期的に通っていた時期もあったほどだ。あれが終わったときは残念だったな。おそらく経営という面からいえば、マックには到底かなわないし、株主にとってはそんなにいい会社ではないと思うけど、顧客としては実に愛すべき会社だと思います。なんというか、「マックとモスの両方がある」ということが、日本経済の奥深いところであると思います。(実は一昨日はマックに行ったんだよな)。

○今度、誰か心安いアメリカ人がやってきたら、「5ドルのハンバーガー、食ったことがあるか?ビックリするなよ」といってモスに連れて行くことにしよう。あ、そういえば、ワシントンの某ホテルでは、コウベビーフのハンバーガーを20ドルで出していたような。それにしても、よその国の料理をここまで磨き上げてしまうとは、なんと恐るべきソフトパワーであろうか。


<5月2日>(月)

○連休中に小泉さんがインド・パキスタンを訪問しています。先のライス米国務長官のアジア歴訪もそうでしたが、「インドを使って中国を牽制する」という思惑があるのでしょう。「中国とインド」というのは、これからしばらく流行りのネタになりそうです。・・・などと考えていて、ふと、私のPCの中に、昔聞いた講演のメモがあることを思い出しました。


1996年 4月 8日
インドの可能性−中国との比較で−

日 時:1996年 4月 5日(金)
場 所:APAフォーラム
講 師:埼玉大学教授 佐藤誠三郎氏

●インドの時代か?

アジアは手前から見て、極東、東アジア、南アジア、西南アジア(中近東)と分かれている。このうち、経済成長で脚光を浴びているのはもっぱら東アジアで、南アジアはすっかり取り残された感がある。しかし戦後すぐの時代は南アジアの方が東アジアより進んでいたし、大学の環境などはインドの方が日本より優れていたほどだ。その後、日本人も南アジアに関心を失ったままで今日に至っている。

東アジアの中国と、南アジアのインドはいろいろな面で好対称をなしている。ここしばらくは中国優位の時代が続いたけれども、これからはインドの出番ではないかというのが、私の仮説である。もちろんインドの悪い点はたくさんある。それでも議論を刺激的にする意味も込めて、あえて強引に両国の共通点と相違点についてお話したい。

●共通点

両国は巨大な途上国だ。国土面積は中国が世界第 3位、インドは 7位。ただし面積が広大な国は、ロシアやカナダのように氷土が多かったり、中国や豪州のように砂漠が多かったりする。生存可能な土地だけを比べれば、インドはかなり広い。人口は中国が 1位(12億)でインドは 2位( 9億5000万)。どちらも相当な誤差があるらしく、実数はもっと多いはず。ちなみに第 3位のアメリカは 2億6000万に過ぎない。

両国は前近代には偉大な文明の中心だった。インドの方が歴史は古く、モヘンジョ=ダロの遺跡の一番古い部分は7000年前のものだという。両国とも近代は屈辱の歴史であり、その裏返しとして高い誇りと強烈なナショナリズムを持つ。インドは1947年に独立し、中国は1949年に新国家を形成した。インドはフェビアン主義、中国はマルクス=レーニン主義と、どちらも計画経済を選択し、自給自足の傾向が強かった。しかし中国は1978年以降、インドは1985年以降に市場経済と対外開放政策に転換し、発展の軌道に乗り始めた。

●比較・対照点

政治的制度の面では、インドの方がはるかに進んでいる。インドは連邦性民主主義が定着しており、将来も変わらないだろう。中国では、共産党が権威を失っているにもかかわらず、それに代わる統治の主体もシステムも存在しない。地方分権化が事実上進んでいるにもかかわらず、中央・地方関係が制度化できていない。司法については、インドではイギリス型の制度が確立しており、政権からの独立性も高い。中国は現在でも「人治」の世界であり、司法は政治に従属している。中国では中央銀行が機能しておらず、マクロコントロールができないことも問題である。

言語・宗教・身分などの点では、インドの方がはるかに多様性が高い。それでもカシミールを除けば分離・独立運動は見られない。これに対し、より社会的には同質性の高い中国では、台湾・チベット・新疆ウイグルのように、事実上独立していたり、独立運動の炎が燃えているところが少なくない。

電力・道路・港湾といったハードのインフラは、中国の方が進んでいる。しかし教育・金融制度・法整備などのソフトのインフラは、インドの方が進んでいる。特に近代文明の摂取と英語の普及に関しては、インドは非西欧諸国の中でも優等生といえる。

●中国の不安

産業化の実績では、これまで中国の方がインドを大幅に上回ってきた。しかし長期的にはどうなるか、まだわからない。中国のこれまでの利点は次の 3点だった。

1.非民主的であったため、素早い決定が可能だった。「先富論」(まず沿岸部を豊かにして、それから内陸を豊かにする)で地域的格差を拡大しても無視していられた。
2.東アジアの高度成長地帯に隣接し、華僑による大量の投資が役立った。
3.1960年代以降、共産圏との経済関係が希薄化していたので、ソ連圏の崩壊によるマイナス効果がほとんどなかった。

これらの利点は、限界に来ているか、あるいはなくなりつつある。「先富論」は、経済がテイクオフしてしまうと有効ではなくなる。民主化するか、平等社会を維持するか、どちらかでないと経済発展は維持できない。少なくとも情報化時代には、非民主国であることは大きなハンディになろう。またカリスマ的リーダーの不在により、「人治」主義が機能しない恐れもあるし、昨今の中国脅威論で、中国への投資がとまる恐れもある。

●インドの利点

これに対し、インドの利点は次の 3点。

1.政治・法律制度が整備されており、予測可能性が高い。インドは悪名高き官僚主義の国であるが、少なくとも透明性はある。
2.高度な技術者、経営者が大量に存在し、英語が普及している。市場経済にも長い経験がある。中国の華僑に相当する印僑が世界に散在し、世界各国の企業の重要なポジションを占めていることも強み。特にコンピュータのソフト開発などには最適。外国語の習得能力も高いので、日本語のソフトが作られるようになるかもしれない。
3.「現状維持国家」というイメージが定着した。中国の脅威論の高まりに比べ、インド脅威論はパキスタン以外では聞かれなくなった。

これらの利点はなくならない。ゆえに21世紀には、中国の時代からインドの時代へと向かうのではないかと考える次第である。


○10年前の「予言」です。聞いたときは「な〜に言ってんだろ」と思ってましたが、今読み返すと「なるほど」と感じる点があります。さすがは佐藤先生ですね。


<5月3〜4日>(火〜水)

○花粉の季節は終わったはずなのに、くしゃみと鼻水が止まらない。と、思ったらどうも風邪だった。まあ、どうせこの連休は仕事三昧なので、熱さえでなければいいようなものですが、いつまでたってもティッシュ・ペーパーが手放せないのは困ったものである。

○FOMCの利上げ、5月4日の中国各都市の表情、英国総選挙、バンダイとナムコの経営統合、などなど盛りだくさんの世の中ですが、そんなもん気にしている余裕なし。早いとこ、この仕事を終わらせるんじゃあああ、と気ばかり焦る。ここは、思い切りの暇ネタをご紹介。

●海原雄山解剖学 http://home8.highway.ne.jp/galzo/manga/oisinbo01.htm 

○『美味しんぼ』はもう90巻ですけど、冒頭の5巻くらいはここに書いてあるとおり、本当にド迫力でした。連載開始が1983年、第1巻が出たのは1985年です。最近のスピリッツの連載では、とってもいい人になってしまっているようで残念ですが、ここで紹介しているように、初期の雄山先生は全盛期のナベツネや堤義明が謙虚に見えるほどのカリスマぶりです。ところで、当時であれば、海原雄山のように和服で出歩いている人も今よりは多かったでしょうが、今では和服でテレビに出てくるのは大沢親分と「い〜仕事してますね〜」の中島店主くらいのものである。

○最初のうちは、『男組』の雁屋哲がなんでこんなもん書くんだろ?と不思議でしたが、どうやら『男組』の印税を全部美食に費やしてしまったらしい。その結果が90巻のウンチクに化しているわけなんですが、作者が悪役に感情移入してしまう点はあいかわらずで、『男組』では神竜の口を通して自分の意見を開陳(例:「大衆は豚だ」)していましたが、『美味しんぼ』では自分がやりたいこと、言いたいことを全部海原雄山に託している感じである。まあ、悪役が真の主人公になってしまうのは連載マンガでは良くある現象で、『北斗の拳』のラオウが有名ですね。

○これを見ているうちに、『美味しんぼ』の連載開始が山本益博の登場と同時期であることに気がついた。配偶者の手をわずらわせて、実家の本棚から『東京味のグランプリ200』(1982年)と、『東京味のグランプリ1984』(1984年)を発掘。うわあ、すげえ。最初の『グランプリ200』では、山本夏彦と色川武大と山藤章二の3人が推薦文を載せている。この3人が全員健在であったというだけで、往時の気分が蘇ってくるではないか。(念のために言っておくが、色川武大とはかの阿佐田哲也氏のことである)。

○でもって、『グランプリ200』で三ツ星の評価を得ているのは、すしで「美家古寿司」「与志乃」「鶴八」「次郎」、そばは「翁」「田中屋」「砂場」、天ぷらは「てん茂」、うなぎは「田川」「尾花」、洋食は「香味屋」「煉瓦亭」、ラーメンは「丸福」。ザッツ・オールである。おおお、なんと高飛車な態度であろうか。その一方、なにせ1980年代の話であるから、「武蔵」などの今のカリスマ・ラーメン店のほとんどは存在しない。

○残念なことに、この2冊においては山本益博氏自身はわりと低姿勢で、前書きの物言いも非常に丁寧です。この後、3冊目に登場した『東京味のグランプリ1985』がとっても「勘違い度」が濃厚で、それがベストセラーになって山本氏はブレイクした模様。ここの文章を読むと、「まえがきに代えて」の「拝啓 丸谷才一様」は、噴飯モノとして秀逸、とある。あああ、読みたいよう。誰か85年版を持っている人、何が書いてあるかだけでも教えてくださいまし。

○なお、これを読んでいるうちに、『美味しんぼ』をもう一度読み返したくなった、という方はこちらをご参照。

●美味しんぼ(1巻〜40巻) http://www.asahi-net.or.jp/~AN4S-OKD/private/bun/man009.htm 


<5月5日>(木)

○5月2日に「インドと中国」の講演メモを紹介しましたが、PCの中には結構古いメモが残っている。中には思い切り無意味な内容もあるのだが、たまには10年たっても価値の衰えていないものがある。以下は「朝鮮半島」問題についてのメモ。1996年頃に、岡崎研究所の会合などで見聞きした内容をかんべえがまとめたもので、複数の人の意見をまとめている。「96年時点の読み筋」としては、なかなかに優秀ではないかと思う。


●朝鮮半島をめぐる断片的思考


−−国際政治に「ハプニング」はつきものとはいえ、北朝鮮はそうすぐに崩壊するとは思わない。「パチンコ、武器輸出、にせ札」などで年間10億ドル程度の収入がある(国民一人当たり50ドル?)。これだけあれば来年くらいまでしのげるはずだ。

−−それが過ぎて「統一コリア」ができたとする。南が 1兆ドルくらいを負担して、北を食わせるという形の統一となろう。平等な統一となって、大統領選のたびに北と南の候補が激突するようなことがあっては、地域内対立の激しいあの国は成り立つまい。

−−統一コリアは国際関係においてはどういう立場になるか。 Pro Chinaか Pro USAか。意外と「米軍出ていけ」と言い出すかもしれない。普段から最も良く韓国を研究し、ケアしているのは中国。そういう意味では、東アジアは「中・韓VS米・日」対立時代が来るかもしれない。

−−韓国に対応するときは、「ドゴールのフランス」に対するようにすればいい。「他国の言うことを聞かない」ことが彼らの国家的アイデンティティ(北の主体思想、南の独立外交)。実利よりもメンタルな効果の方を重視する。日本は相手の自尊心を立てつつ、自分は実利を追えばいい。

−−統一コリアが日本にとって脅威になるわけがない。むしろ統一すれば壊滅的なことになる。今の38度線は、いわば建築用語における「目時」(めじ)である。継ぎ目が入っているので熱や振動を遮断し、安定した環境を作る。ボスニアは「目時」のないモザイク国家だからあのような混乱状況になった。

−−統一コリアは38度線の目時をなくし、鴨緑江に新たな目時を作ることになる。38度線の国境は 240キロだが、鴨緑江は1000キロになる。これを守るためには、優に数十万の兵力を必要とするだろう。これだけ長い国境線を持つ中国と統一コリアが、仲良くなれるかどうか。朝鮮半島はドゴール主義を実現するには、地政学的に難しいことが多い。

−−ちなみに中露国境は3000キロ。鴨緑江の1000キロの防衛は、対ロ信頼醸成と軍縮を急いでいる中国にとっても大きな負担となろう。さらに中国の吉林省内には、「第 3の朝鮮」とも言うべき約 250万人の朝鮮族が住んでいる。中国としては、これらとのバランス・オブ・パワーを考えて行動せざるを得ない。

−−実は日韓は、国益という観点では対立することは少ない。隣国を植民地化した場合、恨みは強く残る。イギリスとアイルランド、フランスとチュニジアなどを見ればいい。その点、日本と韓国ではテロまではやらない。欧州の基準から言えば、日韓はそれほど険悪とはいえないのだ。ワールドカップの共同開催は、日韓はともかく、イギリスとアイルランドでは到底不可能であろう。

−−植民地経営で一番難しいのは引き上げるとき。あのイギリスでさえあちこちで失敗をやらかし、今日のインド・パキスタン紛争、中東紛争などの原因を作った。ところが日本の場合、無条件降伏したから植民地からの引き上げを全部連合軍がやってくれた。満州でこそソ連抑留という痛い目にあったが、他ではほとんど嫌な目にあわず、恨みを深めることなく本国に帰ってくることができた。


○連休中の仕事に疲れたかんべえは、ついつい古いメモを読み返して時間を奪われています。掃除をしている最中に、古新聞を読みふけってしまうという感じでしょうか。


<5月6日〜7日>(金〜土)

○町内会の月例会。いつもは出席をさぼっている防犯部長さんであるが、「今月はちゃんと出てください」と新しい町会長さんに言われたからには、シカトするわけにもいかぬ。新年度入りして新しい役員さんが集まる今日の月例会、以前から出ているのは万年防犯部長のワシだけである。さてさて、困ったものである。

○前の町会長さんが長期政権だったので、何だか皆さん、積極的である。5月の恒例の町内大掃除で、今年は久しぶりにドブさらいをやりましょう、と町会長さんが言うと、皆さん賛同。ここ3年ほど手抜きをしているので、さぞかし大仕事になりそうである。町会保有の草刈機がなくなった、という報告が出ると、「それではこの際、町会の備品の一覧表を作りましょう」という話になる。皆さん、元気だなあと思っていたら、「防犯部では、地震の際の避難先を確認してください」と言われてしまう。ほら来たっ。

○この辺までは想定の範囲内と言うものであるが、集会場のガス台が壊れているのを直しましょう、いっそのこと今のカーペットは汚れているから換えませんか、いやいやこの集会場もガタが来ているので建て直しも考えるべきではないか、などと積極的な意見が相次ぐ。建て直しの資金はどうする、というもっともな指摘が出ると、いや、半額は市からの補助金が出るはずだ、などという声があがる。むっ、知ってやがる。

○この辺のことをご存知の方は少ないでしょう。戦時中の隣組は、戦後は町内会という組織になった。その中にはわが町の集会場のように、自前の不動産を保有しているものが少なくなかった。ところが町会の不動産は、普通は町会の個人有志の名前で登記されている。登記している人が死んだりすると、相続税はどうするとか、いやあの土地はウチのものだ、などと言い出す人が出て、いろいろ面倒が生じ始めた。それもこれも、町内会という団体には法人格がないことが原因であった。

○そこで96年頃だったか、当時の自治省は「町会の法人化」を進めたのである。まだNPO法もなかった当時、町会に法人格を与える道を開いたのだ。でもって、町会保有の不動産は町会の名前で登記する。その際、法人化を進めるご褒美として、法人化した町会にはいろんな補助が出るような仕組みができたのである。わが町会も、この手続きを済ませている。当時、ワシは法人化準備委員をやらされたのだが、あれは七面倒な仕事であった。

○「そうはいっても、お金が足りないでしょう」という声が出ると、「どうせなら、集会所を持たない隣の町会と合併してしまえ」という意見が飛び出した。おおお、この4月で柏市はお隣の沼南町と合併したのだが、たとえ冗談にせよ、こういう発想が自然に出てくるところが最近の風潮といえましょうか。新体制のわが町内会、この先、いろいろ大変なことになりそうだぞ。


<5月8日>(日)

○連休中にどこへも連れて行かなかった、という非難を避けるために、次女Tを連れて上野の国立科学博物館でやっている「恐竜展2005」を見に行った。展示物は多くないが、世界最大のティラノサウルス「SUE」が見られます。ド迫力です。恐竜の化石は山ほど見ておりますが、これはさすがにスゴイ。世界で最大、もっとも完全に近く、保存状態もいいティラノなんだそうだ。オークションでは10億円の値がついたという曰くつき。落札した博物館のHPはこちらをどうぞ。

○ティラノサウルスが闊歩していたのは、白亜紀の北米大陸である。アジアではタルボサウルスというそっくりな種目の化石が発見されている。これも展示されているが、ティラノに比べると小さい。この頃はすでに大陸の分裂が始まっていて、別々に進化したらしい。大きさが違うのは、餌になる動物の種類が違ったからではないかとのこと。両者を比べると、やはりティラノは地球史上最強の肉食動物という感じである。一見の価値ありと申し上げておきましょう。

○かんべえもご多分に漏れず、子供の頃に「恐竜博士」だった一人だが、最初に覚えたアメリカの州の名前はモンタナ州であった。化石がたくさん発掘されるのは、なぜかモンタナ州なのである。


<5月9日>(月)

○上海馬券王先生から、すごいサイトの存在を教えていただきました。


時に面白いHPを見つけたので紹介します。

http://www4.ocn.ne.jp/~tmf00a/ASKJOHN.htm 

ASK JOHNというのはアメリカのアニメファンの人生相談室みたいな奴で、「この作品は手に入るの?」とか「このシーンは何を意味してるの?」とか言うなかなか日本アニメにアクセスできない現地ファンの相談に親身に受け答えしているコーナーなんですが、上記はこれの日本語訳サイトです。いやこれが半端じゃなく面白い。読んでて大爆笑。あまりに面白いので原文サイトに行ったらこれがまた面白い。

http://www.animenation.net/news/askjohn.php?id=1069 


○馬券王先生がしきりに感心しているのは、「日本のオタクシーンについて非常に詳しい」「正統派からロリコン、HENTAIまで網羅」「評論としてしっかりしている」などです。私もまったく同感なんですが、もうひとつ追加すると、これを訳している日本人の語学力も相当なものですな。

○それにしても、日米のサブカルチャー同士がこんな交流をしているということは、心温まるというのか、肌に粟を有すべきというのか、なんとも評価が難しいところであります。この辺は、やじゅんさんの得意分野かな。


<5月10日>(火)

さくらさんの勉強会へ。本当は「草の根保守」について語る予定が、日中関係などに飛び火するのはいいとして、なぜか阪神タイガースの話など、いろんな方向に飛び交ってしまう。あーよくしゃべった。

○靖国神社の参拝問題について、A級戦犯の分祀というアイデアがある。中国が靖国参拝に反対するのは、戦争責任をA級戦犯に限定した彼らの国内向けの説明が崩れるからであり、その点では本当にお困りの様子である。だから、A級戦犯さえ除けてくれればいいという。これで戦争責任の問題がクリアできるのであれば、日本側としてはかなりお手軽な解決方法といえる。

○かんべえは、そんなことしたくないなあ、と思う。太平洋戦争の責任をA級戦犯に限定すると言うのは、いかにも中国共産党的な発想だと思うのだ。彼らは文化大革命の責任をすべて四人組になすりつけた。そうやって毛沢東を守り、共産党を守った。そういうやり方を日本が真似するのはいかがなものか。悪いのは東条と誰それでした、終わり、というのは、釈然としない気持ちが残る。そしてまた、すべてナチスが悪かったです、という話にしたドイツに比べ、日本の場合はきちんと割り切れていない。

○それではどうするかといえば、お叱りを承知で書いてしまうと、「太平洋戦争は誰が悪かったか」という問題は、今まで通りうやむやにしておくのがいいと思う。責任追及を中途半端にしておくと、同じ失敗を繰り返すのではないか、という批判があるのは分かる。たとえば金融機関の不良債権問題も、ほとんど個人への責任追及は行なわれていない。済んだことは仕方がない、で終わってしまう。良くも悪くも、それがこの国の昔ながらのやり方ではないか。

○これがJR西日本の事故くらいの規模の失敗であれば、皆さん容赦なく叩くことができる。やり過ぎるくらい、集中攻撃する。でも戦争責任とか、金融不安クラスの話になると、あまりにも多くの人が荷担しているので、誰か個人の責任に特定できるとは思えない。少なくともA級戦犯だけで太平洋戦争を起こしたとは思えない。だったら、責任追及は止めときましょうよ。後味悪いし。

○だから分祀はしない。という話は、国内的にはともかく、対外的にはちょっと恥ずかしい。少なくとも欧米のメディアに理解できる話ではないでしょうな。そこで靖国参拝をどう解決するかといえば、日中間で「紳士協定」を結ぶのがいいと思う。「首相と外相と官房長官は、任期中は参拝しない」くらいの内容。ただし水面下のこととして、表沙汰にはしない。

○ひとつには、「分祀」のような形で靖国問題を解決してしまうと、次の対日要求が出てくるかもしれないからだ。そうすると、中国側は次は「遺棄化学兵器問題」みたいな、カネのかかるやつを突きつけてくるかもしれない。それも面倒だ。日本側としては、靖国参拝問題という腹の痛まないテーマを未解決で残しておく方が、長い目で見るとお得であると思う。こういう考え方は邪道でありましょうかね。


<5月11日>(水)

○朝食会、昼食会、夕食会と揃ってしまった一日。こういう日もめずらしい。

○朝食会で聞いた話は拾い物でした。8000円の投資は無駄ではなかった。オフレコなので詳しく書けませんが、結論だけ言うと、「反日デモの真相は、やっぱり予想通り」ということですね。終わってから、お馴染みのT編集委員とお茶。テーマは80年代の日米関係。

○昼食会は日本貿易会の真面目な会合。真面目な議論に終始する。

○夕食会は、商社業界の調査関係者の会合。一部はお昼の顔ぶれと共通。皆さんベテランの商社マンなれど、「この中で一度も中国に行ったことがない人」という話になったら、驚くなかれワシ以外に2人もいた。大いに心強い。この秋には中国に行くぞ、と皆さんで誓う。

○ところで、このニュースは面白い。

●デトロイト市、ファーストフード税導入?

・米各メディアが9日伝えたところによると、デトロイト市のキルパトリック市長は、ファースト・フード税の導入を提案したという。デトロイト市は約3億ドルの財政赤字を抱えるが、ファースト・フードでの食事代金に通常かかる消費税6%に「+2%」の税金を上乗せし、赤字補填を目指す。

・なおNYも「スナック税」といわれるジャンクフードや、テレビゲームに対する1%の上乗せ課税を検討している。

・ファストフード店に限った課税という点では、この法案が通過すればデトロイト市が全米初の試みとなる。

・ちなみに、デトロイト市は最も肥満人口の多い都市の1つで、Mens fitness誌によると、2005年では3位にランクインしている。

以下はfattest and fittest のベスト(ワースト)10。

●2005年のFattest&Fittest都市ランキング

The Fattest Cities:

1. Houston
2. Chicago
3. Detroit
4. Philadelphia
5. St. Louis
6. Cleveland
7. Atlanta
8. Columbus, Ohio
9. Dallas
10. Charlotte

The Fittest Cities

1. Honolulu
2. Seattle
3. San Francisco
4. Colorado Springs
5. San Diego
6. Portland, Ore.
7. Denver
8. Virginia Beach
9. Tucson
10. Sacramento

○これで、Fattestはレッドステーツで、Fittestはブルーステーツに多いと言う結果になると、いかにもそれっぽくて面白いのだけど、かならずしもそうではないようですね。

○ちなみに最近のワシントンでは、デトロイトの自動車産業はあまり大きな問題になっておらず、ノースカロライナ州の繊維産業の方が通商問題の焦点となっている。やっぱりレッドステーツの方が政治的に強いんでしょうね。


<5月12日>(木)

○こないだ、溜池山王近辺を歩いていたら、元同僚のTさんとバッタリ。汚い格好をしているが、いちおう有線ブロードワークス(注:Tさんからのご指摘により訂正。同社は今年3月に株式会社USENに社名変更しています)の取締役である。この不規則発言では、かつて「パチプロのTさん」として何回か登場したことがある。2000年7月24日分の記述がいちばん長いかな。

○そのTさんに、「こんなの始めたから、見ておいて」と言われたのがギャオ。

●パソコンテレビ 「ギャオ」 http://www.gyao.jp/ 

○完全無料のブロードバンド放送サイトですな。ここまで来ると、放送と通信はホントに境い目がなくなります。放送法の縛りもないから、何でもできてしまう。「インターネットでコンテンツを売る」という仕事も、ここまで来たかと思いました。エンタテイメントとニュースの2面に分けてあって、ニュースの面はこれからという感じですね。

○「吉崎も、経済番組とか作ってみんか?」といわれて、思わずその気になりかけたけど、向こう3週間で原稿の締め切りが5件(うち1つは8000字)、講演が3件、会合の司会が3件、雑誌の鼎談が1件あることに気がついた。あーあ、とりあえず、明日の分の溜池通信を書くとするか。


<5月13日>(金)

○阪神対楽天戦。テレビをつけたら、なんとタイガース戦士たちが昔のユニフォームを着ている。おおおお、懐かしい。右の打席に入った今岡が、いきなり真弓に見えてしまう。「こらっ、背番号7、バットはもうちょっと手前で構えんか」などとあらぬ事を口走る。とはいえ、今岡の三枚目フェイスは、どう見ても真弓とは違うのであるが。その調子でいくと、背番号39の矢野は若菜だし、背番号1の鳥谷は植松だ。そしてマウンド上の安藤は、背番号16だから岡田じゃないか。1985年当時は選手会長であったが、今では監督になってベンチに鎮座している。と、阪神ファンは急に懐旧モードになってしまう。

○甲子園球場は、1985年当時とあまり変わっていない。高校球児たちの聖地は、時代によって移り変わってはいけないのである。テレビカメラが右打者のバッターボックスを捉えるとき、背景には「月星シューズ」の看板が映ったものだ。それが今では「Moon Star」になったことくらいだろうか。そうそう、昔との違いは、女性客が増えたこと。昔はタイガースを応援しているのは野郎どもばかりだった。女性ファンの皆さん、お気持ちはうれしいが、ほかにもっと楽しいことがあるのではないですか?

○試合は9対1で阪神が圧勝。さすがに地力の差という感じだが、楽天相手に快勝するのは阪神らしからぬような気がする。「なんで楽天相手に負けるかなあ」となどと言って怒っているのが、タイガースファンというものではないのだろうか。とはいえ、入れ替え戦のお陰で中日の背中が見えてきた。明日も勝たせてくれえ。


PS:本日、匿名の読者から郵送にて『東京味のグランプリ1985』の前書き部分をご送付いただきました(5月3〜4日分参照)。心から深謝申し上げます。


<5月14〜15日>(土〜日)

○『諸君』の鼎談に呼ばれて、日曜日に文芸春秋社へ。宮崎哲弥氏が忙しすぎるので、全員揃うのが日曜日になってしまうのだ。これ、なかなかスゴイ企画ですぞ。政治家、財界人、評論家をまとめて「親米と反米」「親中と反中」にぶった切ってしまうのだ。ヒンシュクは必至。非難は覚悟。

○かんべえの強調したかったポイントとしては、財界人の主流派は「親米でありかつ親中」というグループに集中するのだが、彼らの主張を受け止める政治家や論者が、今の日本にはいないのだ。これって、不幸の源じゃないかと思う。"Pro-Business"というのは、日本の保守派の中では流行らないのかな。ということで、次号の『諸君』にご期待ください。

○日曜出勤になったので、今週も競馬はパス。上海馬券王先生の予想も掲載できませんでした。京王杯SCは昔、万馬券をとったレースであるだけに、ちょっと気がかりであったのですが、結果を確認してほっとした。アサクサデンエンだなんて買えませんわ。

○仕掛り中の仕事が終わらないので、なかなか競馬に行く機会がない。大きな仕事を片付けるときは、一気呵成にやらないといけない。かといって、焦って終わらせようとしてもいけない。8割くらいできた、というところが難しいところで、この先の辛抱が肝心。今週は辛抱じゃ。


<5月16日>(月)

○いつも月曜日ごとに、「報道2001」の世論調査をチェックしています。ここ1年くらいの小泉首相の支持率は、支持と不支持がほぼ拮抗して、あまり脈絡のない動きを続けているのですが、5月15日の調査では支持が52.4%と、久しぶりに5割を越えました。それだけではなく、ずっと2割前後で民主党とほぼ一進一退を続けてきた自民党の支持率が、30.6%とひょこっと上がりました。3割を越えたのは今年初めてのことです。

○何があったのか。過去数年の小泉首相の支持率を振り返ってみると、これまでに支持率が上昇した機会は3回ありました。すべて安全保障関係の決断があった直後です。不思議なことに、経済の動きと支持率はほとんど無関係でした。

2002年9月17日 日朝首脳会談
2003年3月18日 イラク戦争支持
2003年12月9日 自衛隊のイラク派遣

○今回も、「6月になったら、北朝鮮が核実験を行なうかもしれない」という噂に、国民が反応している可能性があります。今週のAERA(西原理恵子のインタビューが出ているから、つい買ってしまったではないか)には、核実験があった際の「死の灰拡散予想図」まで掲載されている。それにしても、AERAってびっくりするほどタカ派の記事を載せてますね。ヨミウリウィークリーの方がよっぽどニュートラルな書き方になっているような。そうでしたか、「8月には日本が国連安保理の議長国になる」って、はあ、大丈夫かね。

○現在、5月4日にサンディエゴを出向した空母ニミッツの機動部隊が、西太平洋に向かっているとのこと。横須賀のキティホークも、ちょうど整備を終えたところ。米軍としては月末までに、いざというときの準備をしているのだと思います。それにしても頭が痛いのは、6月17日にイラン大統領選挙があること。「悪の枢軸」の2つの核に同時に悩まなければならない。まあ、イランの方は「勝手知ったる」ラフサンジャニが勝ちそうですから(そもそも、確実に勝てるという保証がなかったら出てこないような人なので)、そうなればひとまず安心ということになるのでしょう。問題は北の動きです。

○「中国が北朝鮮を抑えてくれる」という期待は、そろそろあきらめた方が良さそうですね。6月には何が飛び出すのでしょう。


<5月17日>(火)

○このところ、あっと驚くような話がとても多い。

○まず対中輸出が減速している件について。3月31日にちょこっと書いてますが、われらが貿易業界としてはこないだから首をひねっています。「中国での工場が稼動し始めたので輸出が減った」説と、「国内の需要が盛り上がっていて輸出に回せない」説があって、前者であれば構造的、後者であれば一時的な現象ということになる。前者であればちょっと心配、後者であればほっといても大丈夫である。本当なら、あと1〜2ヶ月、様子を見たいところであるが、その頃にはもう答えは出ているはず。ここで判断をつけられないようでは、エコノミストなんて無用の生き物である。

○そんな中で、先週金曜日に発表されたのが第一生命経済研究所のレポート「中国の高成長持続と日本の対中輸出減速の背景 〜日本の中国向け輸出が再加速するのは05年度後半に〜」 と聞き捨てならないことを書いてある。執筆者の門倉氏は、会ったことはありませんが、以前、「アングラ経済」をテーマに本を書いている人ですね。同レポートでは、中国側に在庫が発生していて、品目によってばらつきはあるものの、調整にはおよそ半年かかることを上手に説明している。昨年のマクロ調整が、こういう形で表れてきたということなのでしょう。

○これを見てちょっと焦りました。対中輸出の伸びが半年止まるのなら、景気の先行き見通しも修正しなければならない。やれやれ、強気見通しを撤回せねばならんかのう、と思ったら、今日発表の1―3月期GDP統計はなんじゃらほい。外需はマイナスだけど、内需が強すぎて1.3%成長だと。でもって、名目も0.6%増だ。さあ、分からなくなった。答えはペンディング。

○夜は東京財団の研究会。講師に呼んだチャイナウォッチャーのT氏から、驚愕すべき内容の話を山ほど伺う。要するに日中間のコミュニケーション・ギャップがいかにヒドイかという話。日本人はなまじ漢字が読めるものだから、かえって誤解が増える。たとえば、彼らが「人民元の制度を改革します」と言っているときは、「人民元の体制を改革します」という意味になるので、要は何もしないと言ってるのと同じ。逆に中国人が「体制を改革します」と言い出したら、それは制度改革=革命の意味になってしまうのだとか。つまり「制度」と「体制」の意味が逆転しているのだ。眼からうろこが落ちるような話がテンコ盛りでありました。

○もうひとつだけご紹介しておくと、「中国人が大きな声で言うことは重要ではない」「言わないことの方が重要」であるという。まるで京都の人たちみたいであるが、中国は京都よりもはるかに歴史が長いのだから仕方がない。で、反日デモの際に、大きなスローガンになったことは、すべて無視してかかった方がいい。すなわち、「靖国神社」「常任理事国」「歴史教科書」などだ。それらはあの官製デモの主要テーマではなかった。中国政府が本当に言いたかったことは、彼らが敢えて触れなかったことなのである。・・・・・・それは「対中ODA」でありました、というのが謎解きの答え。あまりに単純すぎて言葉を失う。

○この手の謎解きを延々3時間。「日本人はいかに中国を知らないか」「知らないのに分かったような気になっているか」「そうやって墓穴を掘っている様子は、日中戦争のときとほとんど変わっていない」とのご指摘。なんとも耳が痛い。知らないくせに、分かった気になっていろんなことを書き散らかしている自分が痛い。


<5月18日>(水)

○昨日分に対し、上海馬券王先生からこんなご指摘が。

私だって将来に備え、ドル支給の給料の殆どを人民元に両替している状況です。元高 ドル安の可能性におののくか、期待に打ち震えるかは立場によりますが皆さんがこれに備えて走り回っているのが現状です。確かに「在庫調整」というのは経済活動の本道で、エコノミストがこういう視点で語りたくなるのはわかりますが、もう少し待ってれば元高になって安く買える可能性が高いのに、あえて今買う必要は無いだろというのもあるんじゃないかな。で「適正在庫」の標準線が元高期待で下方シフトしちゃったと。

○なるほど、人民元に先高観がある限り、中国で買い控えが生じるのは無理もない。それで対中輸出にブレーキがかかるという事態もありうべし。ところが中国政府は、人民元改革はやっぱりスルーで、輸出税(正確には、増値税の還付金の比率を減らす)という形で輸出を減らし、人民元の切り上げと実質的に同様の結果をもたらす考えであるようです。困るよなあ、それで中国政府の財政は潤うかもしれないけど、中国で商売している企業や人にとっては余計なコスト発生となります。

○もっとも、アメリカ議会が「中国は通貨を操作していてケシカラン!」と怒っているのは、それがアメリカにとって損だからではなく、それがアンフェアであるから怒っているわけであって、「とにかく対中赤字が減ればそれで結構」とはならない可能性がある。この辺、かつて散々、通商問題でアメリカに叩かれた日本人はよく知っている(忘れている人の方が多いかもしらないが)。人民元レートが切り上げられると、Jカーブ効果で米国の当面の対中貿易赤字はかえって増えるかもしれないのですが、そういうのはOKなんです。

○ただし、人民元がmanipulateされているというのは、アメリカ議会の単純な誤解でありまして、あれは固定相場制をとっているだけであります。そういう意味では、アメリカさんはかなり「ご無体」な要求をされてます。てなわけで、最近のチャイナバッシングは、ちょっと気の毒に思えないこともない。日本政府はどうするのでしょうか。(1)「対岸の火事」に「高みの見物」を決め込む。(2)中国のような為替予約もできない国で、いきなり変動相場制ができるわけないじゃありませんか、とアメリカにご進講して中国に恩を売る、(3)そうだよね、ウチは塩川財務大臣の昔から、切り上げが必要だと言ってたんですよねえ、と言ってアメリカのバッシングをけしかける。

ここのブログでは、昨日の指摘から「そもそも日本人がいちばん分かり合えるのはアメリカ人である」という議論を展開しておられます。これは実感ですよね。中国人の考えることは分かりませんが、アメリカ人の発想はかなり理解できる。同文同種の方が、はるかに難物です。


<5月19日>(木)

○ちょっと話題の矛先を変えてみる。イラクで日本人傭兵がいた、ということが分かって、PMCというものの存在が知れ渡るようになってきた。この不規則発言では、昨年の4月7日分でPMCについて紹介している。いろいろ書いている中で、「外国人が多いんじゃないか」という疑問を寄せたのだが、はからずも日本人がいたことが立証されたわけだ。

○かんべえと同じ年の日本人で、フランスの外人部隊からイラクへという人生行路をたどった人がいたことは、こういう事件がなかったら永遠に知る機会がなかったでしょう。これも同じ年だというオークランド憂国日記さんが、こんなコメントを寄せている。

長く勤めたフランスを去り、なぜ彼はイラクへ赴任する英国ハート社に転職したのだろうか?多分彼は現役の任務を勤められる肉体的限界が迫る前に、メジャーリーグに移籍することを選んだのだと思う。生還されることをお祈りする。

○反戦運動のためにイラクに行っちゃうような人には、正直まるで関心のもてないかんべえであるが、この斎藤氏のことは気になっている。どんな人なんだろう。中年になって、これまでの人生を振り返ってどう思っているのだろう。ご無事を祈りたい。

○ところでこの事件の思わぬ副産物として、昔からPMCの研究をしていた菅原出さんが引っ張りだこになっている。今週月曜には、角谷浩一さんのJam the Worldに出ていたというから驚いちゃった。菅原さんとは東京財団の研究会仲間で、2月のアメリカ出張も一緒だった。報告書も、彼がしゃかりきになって大長編をまとめあげてくれたところで、そのうち紹介したいと思っています。


<5月20日>(金)

○1日にゲラチェックが3本も届く。『諸君』と『論座』と『ヨミウリウィークリー』である。まったくどういう組み合わせであろうか。『諸君』の鼎談は、案の定、抱腹絶倒である。正直に言うが、この手のお座敷芸企画は大好きである。『論座』の寄稿は、編集者には受けているみたいなのだが、ちょっと加筆が必要である。ところがこの週末は、町内子供会のボーリング大会に行かねばならぬ。さてもさても難儀である。

○ワシントンの谷口智彦さんが、久々に本日発売の日経ビジネス本誌に寄稿している。題して「中国が見る日本と日米同盟」。日本は今や米国にとって特上同盟国(メガアライ)であり、その地位を着々と固めつつある。「日本がこのような地位を得たことは、北京によく見え、日本人自身に案外見えていない疑いがある」。日本の対中観のみならず、中国の対日観も歪んでいる。それがお互いの歪みを増幅する、という悪循環があるようだ。そういえば谷口さん、後任は中山さんだと聞きましたぞ。

○夜はKenboy3氏を講師に、現代の核戦略について勉強。米ソ核軍縮の時代から、北朝鮮の核開発問題に至る歴史というのは、短いあいだに大きな変化があったものである。核に関する議論は、いつも高度な抽象論になる。たとえば、「核拡散を防ぐために、バンカーバスターを使うのは許されるのか」という問題提起は面白かった。私的にはアリじゃないかと思うんだけど、反戦、軍縮系の人にはサッパリ相手にされないのだそうだ。

○最後は具体的な話になる。すなわち、「6月に北の核実験はあるのか」「米軍のサージカル・アタックの可能性は?」「いっそ核保有を認めてしまうのかも?」といった話である。もちろん、クリアカットな結論は出ない。来月はスリリングなことになりそうですな。

○ブッシュが「悪の枢軸」と呼んだ3ヶ国のうち、最初に叩いてみたイラクからは大量破壊兵器は出なかった。残った2ヶ国は、非常に高い確率で核を保有している。やっぱりこれは、叩く相手を間違えたということであろうか。


<5月21日>(土)

○町内親子会のボウリング大会。やかましい子供が9人。付き添いの親のうち、お父さんはワシ一人であとは全部お母さん。こういうことって、昔から多いんだよね。普通は慣れてるんだけど、ただ一人のお父さんがスコア悪いと、えらいかっこ悪いなあ、ということに気づく。ボウリングなんて、もちろん長いことやってない。

○久しぶりに訪れたボウリング場は、いろいろ新たな発見がある。レーンの向こうにはスクリーンがあって、そこには受付で登録した名前があらかじめ表示してある。ボールを投げると、機械が勝手にスコアをつけてくれる。スクリーンは、どのピンが残っているか教えてくれ、「ここを狙え」というアドバイスをくれたり、ときには変なキャラクターが出てきて「あと1本」とか「やったね」「惜しい」などと言ってくれる。もうほとんどパチンコみたいである。

○町内会の一行が案内されたのは、「ちびッ子レーン」でした。ここでは、ガーターの上にレールが置いてあって、ボールが溝に落ちることがない。これなら幼稚園児でも、とにかくボールをレーンに置いてきさえすれば、ちゃんと転がっていって何本かは倒れる理屈である。なにしろいちばん軽いボールは6ポンド。これなら、誰でもできる。大人も、「これなら100点は超えられそうだ」などと密かに安心したりする。

○ところがかんべえの第一投目はストライクであった。「おおー」という声があがり、子供たちのあいだで「この人、実は上手いのでは」という誤解が広がる。結局、ストライク2つ、スペアが2つ。あとはまあ、普通に。そんなわけで、誤解はすぐに解けて、合計115点。いちおうガーターはなしだったということで。

○ボウリングといいますと、アメリカには"Bowling Alone"(ひとりでボウリング)という問題作があります。名のみ高くて、かんべえも読んだことはありませんが、「アメリカ人はいかに孤独になったか」を示した本だそうです。日本では、ひとりでボウリングをする人はあんまり見かけませんが、ひとりでカラオケボックスに行く人はいますよね。あの感じだと思います。

○個人がバラバラになった社会では、政治的な無関心が広がったりする。宗教的右派が強い、なんていう最近の現象も、社会的な基盤が弱まったところへ、宗教団体が浸透しているのかもしれません。その点、ウチの町内会はしぶとく生き残っているなあ。来週はドブさらいと草むしり、防犯灯の点検である。


<5月22日>(日)

○「ひとりでボウリングをする人」は日本でも居ますよ、というご指摘あり。ひとりで遊ぶとしたら、あなたは何をしますか? かんべえは飛行機に乗るときなど、よくこれをやります。今週のThe Economist誌にこんな記事が出ていたので、ビックリしちゃいました。

Do you sudoku? The business of brain teasers


 ファンは中毒、メディアにとってはカネのなる木。日本で長い人気を持つ数独は、世界中で人気を博しつつある。英国では数独の本がベストセラーとなり、全国紙は競ってこの手の込んだパズルをを載せようとしている。先週はガーディアン紙が特集ページで紹介した。このパズルは豪州、クロアチア、米国の新聞にまで使われている。日本では数独の雑誌が月に60万部も売れている。ニューヨークタイムズ紙さえ日曜版の伝統あるクロスワード欄の隣に数独を導入することを検討している。

 ゲームの魅力はシンプルなルールと複雑な解き方にある。プレイヤーは、9X9のマス(ほとんどが空欄)に数字を入れるのだが、タテ、ヨコ、ブロックのすべてに1から9までが入る。上級版になると大きなマスを使ったり、アルファベットを加えたりする。

 数独は、文字よりも数字が好まれる現代においてはピッタリのパズルであるらしい。グローバリズムそのままに、数独は翻訳要らずで国境を越えていく。

 パズルの産業規模を計算することは困難だが、米国での収入は雑誌、新聞掲載、書籍、オンライン、電話サービスを加えると年間2億ドルにも達する。NYタイムズ紙はクロスワードとそのヒントを与える電話サービスで数百万ドルを稼いでいる。クロスワードパズルの編集者によれば、年間35ドルを払って電子メールで購読する読者が3万人もいるという。

 目下の数独の収入は控えめである。西側のメディアにパズルを供給しているウェイン・グールド(元香港の判事)は、文字通り娯楽のために自分で開発した数独のソフトを売るために、ほとんど何もしていない。が、このままヒットが続けば、ソフト販売と著作権収入は今年100万ドルになるという。昨年11月に初めて数独を出版したタイムズ紙の編集者マイケル・ハーベイは数独フィーバーの火付け人だが、同紙は新しい読者を多く獲得したと言う。

 パズル人気は古い。「語並べ」は1世紀のポンペイにもあった。クロスワードパズルが始まったのは1913年。今では全世界で何百万という読者が楽しみにしている。数読は、18世紀のスイス数学者のゲーム「ラテン・クォーター」に始まるが、クロスワードを追い抜くことができるだろうか。左脳派と右脳派の戦いにおいて、クロスワードファンは言葉のパズルの方がテーマやサイズや技のレベルを変えられるので奥が深いと言う。「数独はもっと面白くすることができるか。そこが問題なのだ」



○週刊文春などに出ている「数独」が、世界的なブームになりつつあるらしい。クロスワードと違って、語彙力と関係のない点がいいのかもしれません。「翻訳要らずで国境を越えていく」というのは、なるほどなと思います。

○ただし、The Economistが紹介しているのは、あくまでも英国と米国だけの話であるようです。この手のパズルを好むことでは、米英と日本は似てますよね。推理小説が好き、ということもこれら3国には共通しています。大陸系の国においては、冒険小説、犯罪小説には豊饒な作品群がありますが、純粋な「謎解き」モノとなるとやや弱い。「日米英は実は仲良し」説のひとつの傍証になりますでしょうか。

○ところでウチでは、配偶者はクロスワードパズルが得意で、かんべえは数字のパズルの方が好きです。数独以外では、マッチ棒クイズとかも好きですね。ルービック・キューブは当然、はまりました。田舎に帰ると、色の禿げかけたルービック・キューブが置いてあって、甥たちがいじっては崩してしまうのですが、それをパパッと直して見せると、その瞬間だけ尊敬を受けることができます。20年以上たつから、理屈はとうに忘れているのだけれど、不思議と指が覚えているのです。


<5月23日>(月)

○3つの雑誌のゲラチェックをしながら、今週の溜池通信を途中まで書き、それから来週締め切りの某匿名原稿と、東京財団「日本のちから」向け原稿を書く。もちろん内容は全部バラバラだ。そうかと思うと、連休中から仕掛かりになっている仕事が終わらない。今週末にはさすがに終わらせないとマズイ。気ばかり焦っているが、ちっとも進まない。

○ずっと前から「この仕事が終わったら、これをやらなければ」と決めていることが、だんだん溜まってきた。

●佐藤優『国家の罠』を読む。(周囲の人間はほぼ全員が読んでいるようだ)。

●スーツとブレザーを買う。冬物を仕舞って夏物を出す。(だんだん今着ているのがヨレヨレになってきている気がする)。

●久しぶりに競馬場に行く。(ダービーは間に合わないだろうな。せめて安田記念くらいには・・・・)。

●夏休みの計画を立てる。(子供に催促され始めた)。

●図書館の本を返す。(思い切り遅延している。ゴメンナサイ、柏市立図書館)。

○ちなみに今週末は町内会のドブさらい、来週末は子供と一緒に地引網に行く予定が入っている。


<5月24日>(火)

○米中通商摩擦が面白い。10年前の日米自動車協議以降、あんまり騒いだことがなかったので、とっても新鮮な感じがする。いつものことではあるのだが、アメリカのやり方は乱暴すぎ。日本のように、外圧がないと動かない国であれば、時間を切って、目一杯圧力をかければいいわけだが、中国は外圧をかけると動けなくなる国である。その辺の違いが分かっているのだろうか、てな話をしていたら、ナベツネさんが「いやあ、分かってないでしょうね」と太鼓判を押してくれた。まことに心強い。

○この手の話をしていると、たまにいるのです。「いや、アメリカはそんなに馬鹿ではないだろう」と言い出す人が。それから、キッシンジャーが動くと物事が解決すると思っている人もいる。もうそんな時代じゃありませんて。「中国は馬鹿じゃない」と言いたがる人もいる。でもね、中国がホントに賢かったら、反国家分裂法も、反日デモもやらないはずでしょう。結論として、アメリカも中国もお馬鹿さんなんだと思います。お馬鹿さん同志が展開している通商摩擦。これは面白い。

○アメリカ側の悩ましいところは、所詮は有権者向けにやっているパフォーマンスなので、最後は実を捨ててでも名を取らなければならない。でもって、「勝った、勝った」という形にしなければならない。そういう例は、昔、いっぱい見ましたよね。今回も、アメリカ政府としては、「われわれが強く言ったから、中国は人民元を切り上げた」という形にしなければならない。だから議会では変な法案が一杯提出されている。

○逆に中国側は、たとえホンネでは切り上げたいと思っていても、他国にいわれてそういう形にしたというのでは権力者の面子がつぶれるので、ダメだということになる。そこでどうするかというと、輸出に増税するとか、ボーイングやGM車を緊急輸入するとか、裏側から手を回すようなことを考える。

○ところがアメリカ側は、「中国はアンフェアだ」と言ってしまっている。「人民元は人為的に4割も低く抑えられている」(この4割という数字が、どこから来ているのかよく分からない)と言ってしまった手前、そんなことでは妥協できない。たとえ切り上げの結果、Jカーブ効果で対中赤字が増えてしまっても、そんなのはお構いなし。

○ということで、このにらみ合いは長期化すると思います。なにしろ日本人は、アメリカ相手の通商摩擦にはちょっと詳しいですからね。こういうのを岡目八目という。そうなると、北朝鮮問題がお留守になって、日本の安全が危うくなる。対岸の火事を高みの見物のつもりが、自分が被害者になってしまう。困ったもんですねえ。


<5月25日>(水)

○呉儀さん、という人は商社の中国担当者の間では一種の有名人です。もともと貿易担当であったそうで、「会ったことがある」という人があっちにもこっちにもいる。「ごぎはんはなぁ、ようあそこまで偉くなったなぁ」てな声を社内で聞いたこともある。「小泉首相との面談をドタキャンした副首相」、ということで、知名度はいきなり全国区になりましたが、この世界においては知る人ぞ知る存在でした。

○「ごぎはん」の中国国内における立場は、いってみればわが国における川口前外務大臣のようなところがある。こう言うと語弊はありますが、「中国政府では女性も副首相になれる」と言いたいがために、わざわざ高いポストにつけてある。ところが政府よりも重要な共産党内部の序列でいえば、常務委員の9人には当然入っておらず、だいたい20番目くらいであるらしい。

○最近、田代秀敏さんにいろいろ教わることが多いのだけど、中国における「党>政府」というのは徹底していて、たとえば新華社の国内向けニュースでは、胡錦濤の肩書きは「中共中央総書記、国家主席、党中央軍事委主席」であり、温家宝の肩書きは「党中央常委、国務院総理」であるという。かならず党が国家に優先する。日本のメディアでは「胡錦濤国家主席」と呼び習わしているけれども、本当は「胡錦濤総書記(国家主席兼務)」と呼んだ方がいいくらいであるらしい。

○察するに「ごぎはん」は、そういう自分のポジションをよく心得ていて、さらに上のポストを目指すつもりはないらしい。だから敵も少ない。中国の偉い人にしては、警備が手薄で身軽な立場である。だから日本のビジネスマンでも、比較的気楽に会いにいける。これが本当の重量級要人になると、セキュリティが厳しい上に、そもそも日程などがまったく明かされないから、アポイントを取るのが非常に難しいのだそうだ。

○そんな「ごぎはん」であるから、日本側としては招きやすかったのだろう。ところが中国側は、「あいつならメンツをつぶしても構わん」と、パシリみたいに使ってしまった。「急な公務」といって面談をドタキャンさせといて、「実は不快感を示すため」と後出しで説明されたら、本人としては「あたしゃホントに副首相なの?」と怒っても不思議はないではないか。

○おそらく「ごぎはん」はそんなこと気にせずに、マイペースで言われた通り、粛々と仕事をこなすタイプなのであろう。ね、ますます川口前外務大臣みたいじゃないですか。


<5月26日>(木)

○日本貿易会の貿易動向分科会、今日はワーキンググループの会合。ひょっとすると輸出入の潮目に変化が出ているかもしれないので、なかなかに判断の悩ましい時期である。4月の通関統計でも、対中輸出は低い伸びに留まった。その代わり、なぜか対米輸出が最近は順調なんだよな。理由はよくわからない。同会の見通し発表はまだ先なので、ここでは今日の時点の私的な感想をメモしておく。

○商品別の予想を積み上げてみると、輸出が意外と伸びない。ひとつには生産拠点が海外に移動しているからで、完成品の輸出が減って、部品輸出が増えるという傾向がある。日本企業は、「スマイルカーブ経営」を実践しているということだろう。注目が集まるのは「対中輸出の在庫調整」だけれども、IT関連はあまり関係なく、輸送機械や一般機械で長引きそうな感じ。5月17日の当欄で第一生命経済研究所のリポートを紹介したが、あれはいい線いっているような感じ。

○輸入は強い。ひとつには石油価格が上昇しているからで、製品輸入比率は低下する見込み。とはいえ、輸入は全体的に伸びているので、内需はやっぱり強いんじゃないかという気がする。「日本経済は輸出が生命線」という最近の認識からいくと、妙な気がするかもしれない。それでも、経常利益が1000億円を越える企業が61社もあるという世の中である(5月21日の日経新聞)。とにかく企業がカネを使えば、景気は上向くはずであるので、「強い内需」も特段、異とするには当たらないのではないか。

○その結果として、貿易黒字は減少する見込み。S−I=EX−IMという公式からいくと、貯蓄が減って投資が増えるという最近のマクロバランスは、将来的に貿易黒字が減少することを意味するので、まあそれもアリかなと思う。ちなみに所得収支が堅調に伸びるので、経常黒字はそこそこの水準になるだろう。

○こうして見ると、全体として日本経済、そんなに悪くないじゃないの、と思う。問題は、儲かっているはずの企業の行動に懸かっている。配当を増やすなどして利益を家計部門に還元し、適切な投資をしているかどうか。それから、ちゃんと税金を払って、財政赤字を少しでも減らすこと。低金利が続く間に、少しでも不均衡を解消しておく必要があるだろう。


<5月27日>(金)

○岡崎研究所、春のフォーラムへ。各界の著名人のご挨拶を拝聴する。

○今日は海軍記念日、日本海大海戦から100周年ということで、自衛隊の関係者からはその点に関するコメントが相次ぐ。番匠一佐は制服で登場。ちょうど1年前の今日、イラクでの任務を後任に引き継いだとか。

○谷内外務次官が登場。拍手喝采。全然知らなかったんだけど、要はこんな事件があって、韓国では「ときの人」になっていたのですね。オフレコ発言が外に出て、それで怒られたのでは割りが合わない。お疲れ様です。

○平沼衆議院議員が登場。中曽根大勲位のお誕生会に出た後だそうで、いきなり飛び出した言葉が「日本のコウトウについて・・・」。はて、コウトウとは何ぞや。政治家だから「公党」のことか、前経済産業大臣だから石油価格「高騰」のことか、それとも中国に対する「叩頭」外交のことか、なにしろ「口頭」なものだから分からない。

○聞いていくうちにやっと分かった。なんと日本の「皇統」についての話であった。平沼氏の熱弁に一同シーンとなっていたところへ、少し遅れてさくらさんが登場。いきなりこんな風に言われてぶっ飛んだ。「なんで王毅大使が来ているのかと思いました」・・・・いわれてみれば、確かにおデコが似ている!

○あとは金美齢さんなど、お馴染みの面々。

○最後に岡崎大使が国際情勢についてブリーフ。イラク情勢はスンニ派の懐柔策が鍵。8月の憲法制定の成否に注目。中国に関しては、やはり反国家分裂法以後は奇妙なことが多い。などなど。細かな部分は、例によってナイショ。

○ところで、多くの人が集まった中で、「天の声」のようなものを聞いてしまった。

「それにしても、今頃になって談合疑惑とはねえ。前から分かっていたことのはずなのに。まあ、鋼鉄製の橋というから、その道の政治家の中には、今頃ビクビクしているのがいるだろうねえ。自民党だけじゃなくて、今は民主党に行っている人もいるからなあ」。

○ちょっと待ってくださいよ。その人たちって、ひょっとすると皆さん、郵政民営化に反対している人たちということですか? 談合疑惑は「国策捜査」であると? うわっ、何をする、やめろ、やめてくれえええええ。


<5月28日>(土)

○昨日のパーティーでは、国際大学の信田智人先生が来ていた。最初に出会ったのは1987年頃で、ジャパンタイムズ社の出版パーティーの席上であった。当方はすっかり忘れているのだが、信田さんの記憶によれば、「信田さんは僕と同じ年なのに、本を出しちゃうんだからすごいですねえ」と話しかけてきたのが小生であったそうである。まったく厚かましいやつである。当時、会社のPR誌の編集長をやっていたので、「とにかく何か書いてくれそうな人」を血眼になって探していたので、おそらくそのせいであろう。ともあれ、同じ1960年生まれということで、長い付き合いになっている。

○話をしなかったけど、潮匡人さんも来ていた。たしか「桜チャンネル」の番組で、来週は呼ばれていたはずである。潮さんも1960年生まれで、こちらは岡崎研究所が1997年にやった「日米同盟プロジェクト」で初めて会った。潮さんには特技があって、話し言葉がそのまま文章になるのである。会議の最中に潮さんを指名して、「では、ここまでの議論をまとめてください」と頼むと、それまでの議論の要旨が話し言葉でスラスラと出てくる。その部分だけテープに取っておけば、会議要約が簡単にできると称されたものである。

○来ていなかったけれども、来ていても不思議はないし、懐かしいなあと思う1960年生まれに、佐藤優氏がいる。彼も岡崎研究所の勉強会で知り合った。いつ頃からかとても忙しくなって姿を見せなくなった。そのうち悪い噂を聞くようになった。しまいには新聞に出たり、拘留されたりするようになった。最近はカムバックして、面白い本を書いたそうである。早く今の仕事を片付けて、『国家の罠』を読まなければ。

○以前に勉強会で会ったことがある著名人で、同じ1960年生まれというと、この人がいる。活動を再開されたようで、こんなHPも作っているようだ。いろいろあったけれども、とりあえず今後の人生におけるご多幸を祈りたい。

○さて、1960年生まれが一同に会したらどうなるだろうか。こちらをご参照ください。

http://www.d4.dion.ne.jp/~warapon/data00/year/birth_1960.htm 

○かんべえの誕生日は10月8日だが、福田和也氏の1日前であることを発見。そして3日前には黒木瞳さんがいるではないか。なんとなくうれしい。2月23日生まれには、畏れ多くも皇太子殿下がいる。こうしてみると、いろんな人がおりますなあ。

○昔の同級生である馬券王先生も、もちろん1960年生まれである。明日のダービーはどうしましょ。ディープインパクトで決まりとして、それだけじゃ馬券の買いようがありませんなあ。


<5月29日>(日)

○今日は町内会の大掃除の日である。8時45分に家を飛び出したら、もう作業はほとんど始まっている。「9時集合」というのに、これだからなあ。防犯部長としてはちょっと焦って、責任範囲であるところの防犯灯の点検を生ぬるく実施。後で見たら、ウチの前のドブさらいは近所の人がやってくれていた。申し訳なし。ほとんどの家の人が参加しているので、作業は10時半頃にはあらかた終わっていた。つくづくウチの町内会はすごい。

○今週のThe Economist誌の表紙は"A song for Europe"である。「ラ・マルセイエーズ」の楽譜に、"Non, non, non"という歌詞がついている。言うまでもなく、フランス国民がEU憲法に「ノン」をつきつけそうなことを皮肉っている。何もそんなにうれしそうに書くこともあるまいに、という気もするけれども、英仏間のライバル意識というのは長年の時間をかけて熟成しているので、とっても香ばしい。

http://www.economist.com/printedition/displayCover.cfm?url=/images/20050528/20050528issuecovUS400.jpg 

○その昔、イギリスがポンドを切り下げたときのフランスの報道はすごかったらしい。ニュースキャスターが、「今日、ポンドが切り下げられました」と言って、おもむろにポンド紙幣とハサミを取り出し、「ちょうどこのくらいです」と言ってエリザベス女王の上をバッサリ切り落とした。こういうのを日中や日韓でやると紛争になるが、英仏であれば「ユーモア」もしくは「エスプリ」と呼ばれる。冗談が通じる相手というのはいいものであります。

○英仏の関係というのは、ちょっと余人に窺い知れないようなところがあります。たとえば国連の常任理事国に、なんでフランスが入っているのか。戦争に勝ったわけでもないのに。――これ、実はイギリスが入れさせたのだそうです。「米英中ソ」の4カ国にしておくと安定しないけど、「米英仏中ソ」の5ヶ国にしておけば、連合国内での西側の力が強まるし、欧州が2票を得るというメリットがある。ついでに対仏関係で恩に着せることもできる。まあ、フランス人はそんな恩はとっくに忘れてしまっているようですが。(追記:もっと大事な理由があって、フランスを強くしておけば、将来のドイツに対するけん制になるという狙いもあった)

○明日には国民投票の結果がでているでしょう。シラクがガックリした顔になってるだろうなあ、と思うと、反射的に「やーい」と言いたくなってしまうのはなぜなのだろう。フランスはどうも中国と同じで、「食わず嫌い」なのです。


<5月30日>(月)

○内外情勢調査会の講師役で町田市へ。会社から千代田線で代々木上原に出て、そこから小田急線に乗り換える。急行だと30分程度である。町田駅は大都会で、あやうく迷子になりそうになる。

○この仕事、月に1回程度のペースであちこちから呼んでもらっているが、不思議と「愛知県、神奈川県、多摩地区」で呼ばれることが多い。そういう意味では、町田もゲンのいいテリトリーに属する。今日の出来は、まあまあだったかな。来月は久々に山口県で予定が入っている。

○ところで、かんべえが毎朝、柏駅で乗っている千代田線は、終点が代々木上原行きになっているものが多い。が、たまに小田急線に乗り入れて、唐木田行きとなっている車両がある。そうなると先頭車両は、小田急線特有の「女性専用車両」である。ところが千代田線では「女性専用」はやっていないので、代々木上原までは男女混合になる。乗ったことはないけど、きっと落ち着かないだろうなあ。


<5月31日>(火)

○書き下ろし原稿をやっと入稿。どどっと疲れが。それにしても、5月は大変な月でありました。

○ほかにも一杯、書いたりしゃべったりしています。これからいっぱい出るぞー。

(1)6月1日の毎日夕刊、米中通商摩擦に関する取材記事。

(2)6月発売号の『諸君!』の鼎談、宮崎哲弥X富坂聡X吉崎達彦

(3)6月発売号の『論座』、第2期ブッシュ政権の行方

(4)6月3日、日経金融新聞「視点・論点」

(5)7月1日、東京財団「日本人のちから」〜アメリカについての私の想定

○さて、ビールでも飲もう。









編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki