●かんべえの不規則発言



2018年3月






<3月1日>(木)

○その昔、少年ジャンプが毎週600万部も売れていた20年くらい前のことである。

○なんでそんな話になったのか、まったく覚えてはいないのだが、当時の弊社でチップ課の課長をやっていたK君(今は本部長になっているので、君付けにしては申し訳ないのだが、まあ長年のよしみで許してもらおう)がこんなことを言っていた・・・ということを、先ほど突然に思い出した。

「中国やインドの人たちが、僕らと同じように紙を使うようになる世の中って、たぶん来ないですよ。だって地球上に森林はそんなにありませんから」

○チップ原料を求めてベトナムで植林事業をしたり、豪州やらモザンビークやら地球上のいろんな場所に行っていた人が言ってたことなので、なるほどこれは説得力があった。製紙原料は木材に求めるほかはない。そしてもちろん森林資源は地球上では有限である。

○中国やインドで週刊マンガ誌がバカ売れするようになったら、それこそ地球上は全部はげ山になっていただろう。ところがよくしたもので、今では電子書籍というものが定着しつつある。最近、電車の中でスマホでマンガ読んでる人、増えましたよねえ。逆に少年マンガ誌を読んでる人なんて、それこそ絶滅危惧種になってしまいました。

○週刊誌だってネットで読むようになりましたよねえ。今じゃ週刊誌の記者たちは、いかにヤフーニュースなどに転載してもらうかを考えている。「何十万部売れました!」ではなくて、「何億ページビュー稼ぎました!」がお手柄になる。ほんの10年くらいの変化であります。

○国際会議などでも、「資料はデータで送りますから、タブレット端末で見てください、必要な人だけプリントアウトしてください」てな時代になりつつある。これは正しい方向なんだと思う。古紙再利用の技術も進化しているので、世界の森林は何とか守られそうである。というか、今じゃ日本の山林なんてバイオマス燃料にするくらい、林産資源が余っちゃってますけど。

○資源ビジネスというのは不思議なものです。「19××年には枯渇する」と言われていたものが、不思議とまだ持続していたりする。人間は愚かな存在ではありますが、意外と何とかなっている。あるいは市場メカニズムとは、たいしたものだということもできる。その点、確実に判断を誤るのは「賢い人たち」ですわな。意識高い系の人たちの判断は、なんであんなに間違えるんでしょう。地球温暖化の問題なども、きっとそうなんじゃないかなあ。


<3月2日>(金)

○トランプ大統領が鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課して、輸入制限をするぞと言い出した。安全保障上の理由によるもので、通商拡大法232条を適用する。1982年以来の措置である。「おいおいおい」と言いたくなるところであり、主だった閣僚は軒並み反対しているし、その日のうちにNY株価は下落。今頃、ゲーリー・コーンが「こんなことでは株価が下がります!」と殿のご乱心を諌めていることだろう。

○いよいよ米中通商戦争が勃発するのだろうか。何しろ今は全人代の直前だというのに、習近平の腹心たる劉鶴が訪米中である。中国に喧嘩が売りたいのだとしたら、なかなかにタイミングを心得ている。が、この問題は下手をしたら、WTOがぶっ潰れるかもしれない話である。日本としても出方が難しい。日本製品に追加関税がかけられるかもしれないし、そうでなかった場合も米中通商摩擦でどちらの側に立つのが良いのか、まことに悩ましい。

○大統領はご乱心なのか。何を考えているのか。ひとつ考えられるのは、「PA−18」である。すなわち、3月13日に予定されているペンシルベニア州18選挙区の補欠選挙を意識しているんじゃないか。これはピッツバーグ市の郊外にある選挙区で、この選挙を勝つために鉄鋼業のテコ入れをぶち上げているのかもしれない。「ピッツバーグってことは鉄鋼だろ?」と考えているんだとしたら、いかにもトランプさんらしい短絡的な思考である。

○これはまったく馬鹿げたアイデアである。去年の秋、PA−18の現職共和党議員が、愛人に中絶を求めたというスキャンダルがあって、現在は空席になっている。普通は保守的な地盤であって、黙っていても共和党議員が勝つような選挙区である。が、事情も事情であるし、民主党陣営は「トランプを倒すにはまず補欠選挙から」「アラバマ上院選の勝利に続け!」と意気が上がっている。投票日までは10日ほどだが、選挙情勢はToss up、どっちが勝っても不思議はない。

○大統領としては、ここで負けたくないという気持ちは分かる。だが、435もある下院議席のひとつのために、通商政策を歪めるなんてのは筋ワルもいいところである。さらに面白いことに、ペンシルベニア州の選挙区割りは今年、改定される。今までは、「2羽のうさぎが遊んでいる」みたいな変な形の選挙区が一杯あって、共和党が13議席、民主党が5議席という大差がついていた。いわゆるゲリマンダーというやつである。

○さすがにこれは問題である、と州の最高裁が判決を下し、独立委員会の下で大幅な選挙区割りの改訂が行われた。選挙区の形は、比較的まともな形に変わる。今回の補欠選挙では、PA−18は今まで通りの選挙区で行われるが、今年11月の中間選挙では選挙区の形は全然違うことになってしまう。仮に3月の補欠選挙で共和党候補者が勝ったとしても、11月にはまた選挙のやり直しになってしまうのだ。いや、ホント、こんなことに精力を割くなんて馬鹿らしいことこの上ない。費用対効果が悪すぎる。

○もっとも、こんな風に「尻尾が犬を振る」ところがいかにもトランプ式ともいえる。この構造、中国側は理解しているのかなあ。仮に理解しているとしたら、「やっぱり民主主義という制度はダメだ!」という結論に自信を持ちそうで、それもちょっと困るのである。


<3月3日>(土)

○金曜日の夕方はBSフジ「プライムニュースの夕べ」(ホテルオークラ別館)へ。

○なんとこの4月から、フジテレビでは地上波、BS、ネットなどの報道番組すべてに「プライムニュース」という冠をつけるのだそうだ。その上で、9年間もキャスターを務めた反町理さんは地上波の夕方の時間帯に異動。その代役にワシントン支局長だった松山俊行さんを起用するのだとか。思い切ったことをやりますなあ。ご繁栄をお祈りいたします。

○金曜日の夜は「将棋界のいちばん長い日」。

異変が起きました。11人で名人挑戦権を争っていたA級順位戦は、最終戦で上位2人が負け、3人が勝ち、抜け番の羽生竜王を含めて、なんと6勝4敗で6人が並びました。稲葉陽八段、羽生善治竜王、広瀬章人八段、佐藤康光九段、久保利明王将、豊島将之八段の6名です。これから下位から順にパラマス方式で5試合のプレーオフを戦います。

○佐藤天彦名人への挑戦権をかけて、11人で総当たりリーグ戦を1年やっているわけですが、その結果が6人のプレーオフだなんて。藤井6段の登場以来、将棋界はほとんど確変状態が続いておりますが、これもまた途方もない見所ができました。個人的には佐藤康光九段兼将棋連盟会長を応援いたします。

○土曜日のお昼は『グレイテスト・ショーマン』を見に行く。

○ミュージカル作品だと知らずに見に行きました。流山おおたかのもりの東宝シネマズがほとんど満席。ヒュー・ジャックマン、いいですなあ。見ていると、『レ・ミゼラブル』と重なるところも若干ありますが、気にしない。これぞハリウッド、これぞエンタテイメント。理屈や偏見は置いていくぞ。『ラ・ラ・ランド』よりもこっちがいいな。

○土曜日の夜は町内会防犯部の打ち上げ。

○この数年の間に、わが町内には数件の空き巣が発生している。防犯活動とは虚しいものである。が、やらないよりはやった方がマシだと思うし、「うるさいから止めろ」という人も居ないので、きっと来年も続けると思います。本日のお支払いは8人が参加して2万9220円。柏市一小通り商店街は大変に優秀であります。


<3月4日>(日)

○この季節におきまりの確定申告の計算。頭痛いっす。

○支払調書というものは、フォームを統一してくれないものですかね。全部同じにしてくれれば、納税者はもちろんのこと、税務署の作業も楽になると思うのですが。これが世の中にはいろんな種類のものがあるのですよ。特に新聞社とかテレビ局は社によってさまざまです。それから慶応大学のはなんでサイズが大きいの?あれを台紙に貼り付けるの、大変なんですけど・・・・。

○考えてみれば、給与所得以外に支払調書が何十枚もあるなんて人はそんなに居ないだろうから、「そうだそうだ!」と同意してくれる人は少ないのかもしれませぬ。でもね、世の中はやっぱり垂直統合よりも水平分業ですよ。その方が生産性が上がりますから。これって日本社会にありがちな不合理ではないかなあ。


<3月5日>(月)

○本日はJ-POWERさんのご厚意で、磯子火力発電所の見学に。クリーン・コール・テクノロジーで有名な発電所であり、昨今は海外要人の視察も絶えないとのこと。なにしろ横浜市磯子区なので、都心からも近くて便利なのである。なるほど、実際に行ってみるとあっという間でしたな。

○東京湾は京浜および京葉工業地帯があるために、発電所の数は驚くほど多い。しかし石炭火力は磯子だけである。これだけ大都市の近くに――というよりも370万都市である横浜市内部に――石炭火力があるというのは、世界でも珍しいことかもしれない。実際に磯子の脱硫、脱硝技術はすごくて、SOxやNOxはほとんどガス発電並みの数値である。ただしCO2についていえば、燃焼効率がいい分だけ排出量は少ないとはいえ、やっぱり出るものは出る。そりゃ当たり前か。

○ここが悩ましいところで、今の国際世論は「脱炭素化」が主流になっていて、「石炭=悪」なのである。そんなこと言ったって、インドやベトナムやインドネシアみたいに、「石炭は出るけど電力がない」という国の人たちに向かって、「お前たちは石炭使うな」とは言えないだろう。だったら「CO2を減らす技術」を伝道するのは大事なことで、それを日本がやらせてもらいます、と言いたいところなのだが、この理屈が通じない。「日本は化石賞」などと言われてしまう。相手は「意識高い系の人たち」だから。

○脱炭素化という目的は間違っていないにしても、「今すぐ石炭止めろ」という直線的なアプローチではなく、「新しい技術を使って経済発展も進めつつ、トータルでCO2を減らしましょう」という迂回的アプローチをとるのが大人の態度というものであろう。それに石炭利用の技術開発は、どのみち誰かがやらねばならない。例えばCO2を地中に埋めるCCSという技術がある。こういうのを地道にやるのは、日本企業が向いていると思う。

○ちなみに石炭の燃焼効率という点では、近年、中国が急速に改善している。これは古い発電所をどんどん畳んで、新設の発電所を増やしているからでもあるが、その過程では日本の環境技術が大いにパクられたらしい。商売としては失敗しているけど、地球環境のためには良いことをしたともいえる。もちろん日本列島の環境にとってもね。

○磯子に石炭火力ができたのは1967年のこと。もう半世紀も前のことである。既に残り少なくなっていた国内炭の使い道を確保するために、国策として通産省が電源開発に作らせた、というからすごい。若い人は知らんだろうが、1950年代の日本経済は「傾斜生産」という言葉があるくらい、エネルギーは石炭に依存しておったのだ。

○その後、すぐ隣の地に東京電力が横浜南火力発電所を建設する。これは1970年に、木川田一隆社長の大英断によって誕生した日本初のLNG火力である。当時のことだから、官業対民業の意地の張り合いもたぶんあったものと拝察する。今見ると、さほど広からぬ埠頭を東電、J-POEWR、東ガスの3社が分け合って立地していて、なるほどそんな歴史があったのかと感心する。こういう話、ワシ的にはツボです。

○磯子の石炭火力2基は、2002年に1号機が、2009年に2号機がリプレースされて今日の体制が整った。技術というものはどんどん進歩するもので、やはり2号機の方が少し性能が進んでいるらしい。企業としては、少しずつでも投資を続けていくことが大事なのであろう。産業の世界にこれが最終形、なんてことはありえない。今の発電所だって、いつの日かさらにリプレースされることを考える日が来るだろう。もっともそのとき、どんなエネルギーが求められているかはサッパリ分からない。

○エネルギーの歴史は、過去の常識が覆されることの連続であった。だったら、「石炭」というカードをなるべく大事にとっておくことが、今日を生きる者の知恵ではないかと思う。――いや、それにしても今日は雨と強風を突いての工場見学、印象に残る一日となりました。


<3月6日>(火)

○トランプさんがおっぱじめた「通商戦争」に対し、いろんな人から問い合わせを受けるのですが、こんな風に応えています。

「トランプさんのことですから、何をするかわかりませんけど、鉄鋼とアルミ追加関税の具体策は今週中には出ないと思いますよ。いつもの『プロレス』じゃないですかねえ」

○もちろん本当にブチ切れるかもしれなくて、その場合はかな〜り深刻なことになるだろう。ただし3月1日の爆弾発言は、現在進行中のNAFTA再交渉でカナダとメキシコに脅しをかけると同時に、週明け3月13日に行われるペンシルベニア州18区の下院補欠選挙をにらんでいると考える方が、トランプ流だと思うのです。彼自身はSeriouslyに受け止めるべきですが、発言をLiteraryに受け止めちゃいかんのです。

○これに対し、EU側の報復措置が実にお洒落なのである。この記事によれば、"The list of targeted U.S. goods -- including motorcycles, jeans and bourbon whiskey -- sends a political message to Washington about the potential domestic economic costs of making good on the president’s threat." とある。すなわち、こういうことです。

@モーターサイクルはハーレーダビッドソンを意味していて、これはポール・ライアン下院議長のおひざ元であるウィスコンシン州にある。

Aジーンズはリーバイスのことを指していて、これはナンシー・ペローシ下院院内総務の選挙区、カリフォルニア州にある。

Bバーボンウィスキーはジムビームのことであって、ミッチ・マコーネル上院院内総務のケンタッキー州である。(今はサントリーの子会社だけどね!)

○つまり上下両院の共和党、民主党の要人に刃を向けている。こりゃあ必死になって止めますわな。

○もうちょっと深読みすると、「リーバイスを履いて、ハーレーをぶっ飛ばし、ジムビームで一杯ひっかけるようなアメリカ人」=トランプ支持者、ということになる。ヨーロッパ人が嫌う典型的なタイプでありますな。まことに気が利いた嫌味と言えましょう。

○ただし欧州仕込みのエスプリもときによりけりです。通商問題が起きた時は、本来はちゃんとWTOでパネルを作って争わねばなりません。今回のトランプ大統領のように、あまりにも粗雑な手口である場合は、こんな風にお洒落な切り返しがカッコ良く見えますが、こんなことをやっていると報復関税の応酬となってしまい、WTOが空洞化してしまいます。それってかなりヤバい事態なんじゃないかと。「こんなの、まともに相手していられるか!」というお気持ちはまことによくわかるのですが。


<3月7日>(水)

○同世代の友人が言っていたこと。「プレゼンの時などに麻雀用語を使うと、最近の若い人や女性には通じていないことがある。あれは気をつけないといけないぞ」。

○言われてみれば確かに思い当たる。マイクを握ったときに、「そこで泣きが入ってあと半荘ということになったのですが・・・」とか、「ノミ手なのにリーチ一発ツモで、裏ドラが乗ったような形でして・・・」などとやらかしているうちに、その場に居るオヤジ連中はガハハと笑っているけれども、若い衆がキョトンとしているという図は「あるある」。ああいうのは、まことに感じの悪いものであります。

○以下のような用語は、ごく普通に使ってしまいがちだけれども、時と場合によっては通じていないかもしれませぬ。ある一定年齢層よりも上の方々はご用心くださいまし。


「これは明らかに与党のチョンボであります」

「あの人、今日は最初からテンパってましたよね」

「この委員会、面子(メンツ)が偏ってますな」

安全牌(アンパイ)と思ったから、合コン呼んでやったのに」

「このままでは円高が青天井になってしまいます」

「もうリーチかけたんだから、今さらジタバタするんじゃない」

「今の財務省にとっては端牌(ハジパイ)のような問題です」

黒棒1本差で破産を免れた」

「北朝鮮はもうベタ降りモードなんじゃないですか」

「再生可能エネルギーに決め打ちしてしまうのは危険です」

「あの監督はときどき、見え透いた口三味線をやりますからなあ」

「現状のチーム数は多牌(ターハイ)しておりまして、少し減らさねばなりません」

「川上から川下まで、一気通貫型のサービスが可能になります」

「今日は全面安で、証券会社の電光掲示板が緑一色(リューイーソー)です」

「ここで追加緩和だなんて、地獄待ちみたいな金融政策ですな」(注:黒田さんはきっと麻雀が強いと思う)

「新党の立ち上げは裸単騎型に限る」(注:昔、渡辺喜美先生が本当にそう言っていた)


○考えてみたら、「オーラス」とか「ハコテン」とか「対面」(トイメン)なんて言葉は、もう麻雀が語源だなんてわからなくなってますわなあ。今は普通に使われている「ワンチャンス」という言葉も、元は麻雀用語なんですよね。ただし「ハイテイの大逆転」とか、「いつまで続くイーシャンテン」とか、「シーサンバラバラみたいな組織」なんて言葉は、オタク度が高いので使わない方が無難でありましょう。

○それにしても、これだけ麻雀用語が豊穣にあるということは、オヤジ世代以上がいかにこのゲームに無駄な時間を費やしてきたかという証拠でありますな。こればっかりは、やらない人には分かってもらえないかもしれません。


<3月8日>(木)

○ゲイリー・コーンNEC担当補佐官が辞めるというニュースは、正直かな〜りショックです。まあ、よく今まで我慢した、減税が決まって花道になった、できれば金融規制緩和までやってほしかった、などなど、いろんな見方ができるけど。ここであらためて、トランプ政権の人脈について整理しておきましょう。


●MMT=大人の男たち

マクマスター補佐官、マティス国防長官、ティラーソン国務長官

(今回の「貿易戦争」でも、止める側に回って善戦。文字通りホワイトハウスの防火壁。マティス長官によれば、国防用に使われる鉄鋼製品は全体の3%なんですって)

●軍人トリオ

ケリー首席補佐官、マクマスター補佐官、マティス国防長官

(ケリーとマティスはともに4つ星将軍で、マクマスターは3つ星。前者は対北朝鮮穏健派で、後者は強硬派。マクマスター辞任説が一部にあるけれども、あれはしかるべきポストに異動させて出世させてあげよう、という米軍の親心もあるものと拝察いたします)

●一蓮托生トリオ

マティス国防長官、ティラーソン国務長官、ムニューシン財務長官

(「いいか、どんなに辛くても独りで辞めるんじゃないぞ。辞める時は3人一緒だぞ」と誓い合った仲間同士。これって迫力ありますよね。日本で言えば、財務大臣と外務大臣と防衛大臣が首相に逆らう、って話であります)

●ゴールドマンサックス人脈

コーンNEC担当補佐官、ムニューシン財務長官、ディナ・パウエル安保担当次席補佐官、スティーブ・バノン首席戦略官

(バノンが去り、パウエルも辞め、コーンも辞任へ。残るはムニューシンだけ。どんどん空洞化が進んでおります)

●貿易強硬派

ロス商務長官、ライトハイザーUSTR、ナヴァロ通称製造業政策局長

(国際派、穏健派が油断していた間隙をぬって大統領を取り込む。確かにこのところ、クシュナーが窮地になったり、いろいろあったからなあ)


○この感じだとチーム・トランプは安定しませんねえ。もっともこれは、トランプさんの会社もそんな感じだったようですが。基本的に和気藹藹よりは、常に喧騒が絶えないような職場を好む上司のようです。いやあ、こんな職場で働くの、あたしゃ嫌だなあ。


<3月10日>(土)

○溜池通信は全人代と通商戦争に絞りましたけど、今週はほかにもこんなニュースがありました。


●米朝首脳会談

当てにならない人が、さらに当てにならない人に会うと言っただけで大騒ぎ。でも、それって伝言ゲームであって、5W1Hがまるで見えていない話であります。今の時点で語れることなど、あるわきゃないですがな。「日本が置いてきぼりになる」とか、冗談も大概になさいませ。こういうときは、「ふーん、そうなんだー」とぼんやりしているのが吉と考えますぞ。


●森友学園

どうでもいい話をしつこく追いかけているうちに、とうとう死人まで出てしまいました。財務省は気の毒だなと思うけど、こんなことを追いかけている野党やメディアは、とても尊敬する気にはなれませんな。こんなことで政権が倒れるとでも本気で考えているんでしょうか。


●3・11東日本大震災から7年

歳を重ねるたびに語りにくくなりつつあります。そういえば来週は青森に行くのであった。去年は東北に5回行ったので、今年もそれを目標にいたしましょう。


●パラリンピック開幕

もとより関心が低いのはわかるけれども、NHKが開会式の中継よりも麻生財務大臣の記者会見を優先するのは、うむ、報道機関としてはそっちの方が正しいのであろうな。


●日銀金融政策決定会合

岩田副総裁と中曾副総裁にとっては最後の会合であったはず。なぜかまったく報道されませんな。筆者ごときが言うのも変だが、お疲れさまでしたと申し上げたい。


●米雇用統計

NFPが31.3万人増、失業率が4.1%、平均時給は前年同月比2.6%増。絵に描いたような好材料。者ども、買いじゃ買いじゃ〜。


○ちなみに今宵の”Biz Street”では、「シェアハウス投資トラブル」なんて話題もあるそうです。スマートデイズの「かぼちゃの馬車」ねえ。アパマン経営とか、地銀の経営状況とか、人生100年時代とか、いろんな問題点が浮かび上がってくるようです。勉強させていただきましょう。

(→後記:TPP11署名式を忘れていた。ワタクシともあろうものが!)


<3月11日>(日)

○最近、宮家邦彦さんがよく講演会などで、こういうことを言うんですよ。

「地政学リスクなんていう言葉を使うエコノミストを、信用するものじゃありません。あれは自分がよくわからないことを誤魔化しているだけですから」

○ちなみにその場に私が居たりすると、「ここに居る吉崎さんは数少ない例外ですが・・・」と一応フォローしてくれる。しかるにおっしゃることはよくわかる。トランプ現象とかBrexitとかは、あれは単なる政治リスクであって、わざわざ「地」をつける必要はない。「地」という字を頭につけるともっともらしく聞こえる。それは「地政」ならぬ「知性」、いや「痴性」のなせる業ではないか。いいですね。「痴政学リスク」

○2002年9月に議会証言において、アラン・グリーンスパンFRB議長が初めて"Geopolitical Risks"という言葉を使って周囲をけむに巻いたのも、まさしくその文脈でありましたから、その指摘はまったく正しい。マーケットはその言葉を聞いて納得した。「地政学リスク」という言葉は、その発端からしてかなり怪しげであった。

○ただまあ、ここ数年の国際政治を、ごく普通の「ポリティカルリスク」と片づけるわけにもいかんと思うわけです。あのアメリカが国内の一選挙区の補欠選挙のために、「鉄鋼とアルミに追加関税」なんてお馬鹿なことをやるなんて、いったい誰が予想しえたでしょうか。ドイツが総選挙から政権発足までに半年を要するとか、英国はBrexitの断崖絶壁にまっしぐらに向かっているとか、これらの現象は、掛け値なしに「新しい」と思うのです。

○昨日、Biz-Streetのゲストであった杉田弘毅さん(共同通信論説委員長)とご一緒する機会がありました。杉田さんは『ポスト・グローバル時代の地政学』(新潮選書)を出されたばかりで、当方もこの本を読んだばかりで、いろいろ話したいことがあったので、短い時間でしたがまことにラッキーでありました。

○この本の指摘をワシ的に勝手にまとめてしまうと、右のようなことになる。地政学という学問は、本来はエリート(政治家や軍人)によるものであった。文字通り地図を見ながら、冴えた頭で戦争に勝つ方法を考える術であった。それが今では大衆に乗っ取られている。「怒り」が国を動かし、国史情勢を不穏なものにしている。

○「そりゃちょっと違う」と言われると困るので、本書の中で「お、これは鋭い」と感じた部分を抜き書きしておこう(第3章 怒りの地政学 P90-91)。


●21世紀の世界はマッキンダーの時代よりさらに複雑だ。地理や人間の「知性」だけでなく、より裾野の広い国民の考え、感情、価値観がその国家の方向を決め、国際政治を揺り動かしている。民主化の進展でますます発言権を持った人々の「思い」は、宿命論の地政学やその制約を乗り越えようとする人間の知性などお構いなしに、激情で国を動かしてしまうのである。指導者は大衆の感情を意識せざるを得ない。国家の運営や世界の行方を決めるものにはマッキンダーが唱えた「地理」対「知性」という二項対立の枠組みだけではなく、もっとドロドロとした生身の人間の「感情」という第三の要素が当然入ってくる。

<中略>

●英国のEU離脱もトランプ大統領当選も、「エリート支配層」対「忘れられた人々」という文脈で語られ、その文脈では知性を持つはずのエリートは敗北した。「忘れられた人々」、つまり大衆、労働者、中低所得層、伝統的価値観の擁護者など、さまざまな表現で指摘される非エリート、非支配層が、勝利を収めている。

●その勝利は理性的な熟考の末の判断というより、「怒り」「不安」を背景にした感情的な直感が行動につながった結果と言える。「怒り」と「不安」を基盤に政権に就いた指導者は、対外政策を理性的な判断よりも、国民の感情に突き動かされて行いがちになる。早い話が、関税をなくすことで効率的なグローバル経済システムをつくり、同時に経済の相互依存体制が武力衝突を不可能にするという恩恵よりも、外国に職を奪われるという被害感情にばかり支配される人々を意識して、保護主義的な政策に走るトランプはその例である。


○ね、今読むと突き刺さる部分があるでしょ?


●しかもグローバル化した経済で深まる格差や移民の流入は、人々の心に「他者」に対するより大きな「怒り」を生み、そして「寛容」を前提とした開かれた国際秩序など認めなくなっている。それが、結局は乗り越えたはずの地政学的な戦略、つまり知性を後景に追いやり、何事につけても感情的に「自分」と「敵」を分け、常に「敵」の弱点を突いて負かそうとする思考が蘇るメカニズムではないだろうか。


○外交を動かすときの国民感情というものは、本来はクルマの後部座席にいるものである。ドライバーである政府や外交官は、内心は「うるせえなあ」と思いながらも、「まあまあ、わが国はなんとかやってますって」となだめすかして運転をするものであった。それがとうとう、後部座席が運転席に指示を出すようになってしまった。あるいは運転手がビビッてしまって、後部座席の言いなりになってしまっている。

○ここで難しいのが、国民の「怒り」を定義することである。怒りというのは本来、持続させにくい感情である。それがなぜ、これほどまでに制御しがたい存在になってしまったのか。この問題になると、得てして「格差の拡大」みたいな話が出てくるのだけれども、ホントにそれでいいの?と思う。なにしろ他人の怒りに共感することは難しいことなので。

○いずれにせよ「暴走する民意」というのは、まさしく今日的な現象であって、これは「地政学リスク」と呼んでいいのではないか。いや、それは「痴政学リスクだ」というツッコミはあるかもしれないけど。


<3月12日>(月)

○これはちょっと面白いかも・・・と思って出掛けた会合が、期待したほどではなかった。ところが、会場にはオバゼキ先生が居て、いやあとってもお久しぶりである。これはラッキーとばかりに、そのままご一緒にランチへ。

○仮想通貨の話から始まって、経済の話、競馬の話、将棋界の話、もちろん時節柄、森友学園の話なんぞも出るわけなんですが、いやもうなんてオタク度の高いこと。とっても楽しゅうございました。

○最後に、「馬券王先生によろしく」とのことでした。タイで元気にやっておられることと存じます。そういえばあと2週間で高松宮記念ですな。

○明日朝は「モーサテ」に登場です。最近お得意の「PA-18」の話などをする予定です。


<3月13日>(火)

○今朝は午前3時半に起きて「モーサテ」へ。お得意のネタは「通商戦争を狙うトランプ戦略」。ただし本日のトップニュースは「森友学園」「文書書き換え問題」でありまして、「今日のオマケ」ではもっぱらその話をしております。こうしてみると、佐々木あっこさんに問われるままに、われながら苦しい発言をしておるような気がします。

○それが終わったら今度は文化放送へ行って、「くにまるジャパン極」。さらに夕方にもNHK第一ラジオ「先読みニュース」の電話取材を受けたりして、まことに慌ただしくて長い一日でありました。明日は青森行きです。


<3月14日>(水)

○昨晩、ティラーソン国務長官解任の報道あり。なぜこのタイミングかというと、PA-18がやっぱり負けそうだから。今朝になってこのニュースを見ると、案の定、大差のようですね。

→後記:序盤の開票が大差だったので、上のように書いてしまったが、最終的にはすごい接戦であった。僅差で民主党価値のようですが、これは数え直しになりそうですな)

○PA-18の民主党候補はタマが良かった。共和党候補はいまいちだった。それからこれが重要なところだが、「保護主義はかならずしも受けない」。むしろ一部の民主党議員が鉄鋼アルミ追加関税に賛成していたりするから面白い。日本やEUなどは、「ほらね、オタクの有権者も、追加関税は評価してないみたいですよ」とやんわりと指摘すべきだろう。行動経済学でいう「ナッジ」である。

○トランプ大統領としては、すかさず国民の関心をほかに振り向けなければならない。そのためにクビにされてしまうレックス・ティラーソン氏には同情するしかないが、後任はポンペオCIA長官というのも含めて、「いずれ来る」と見られていたところ。

○ということで、トランプ劇場は「貿易戦争」という出し物を急きょ引っ込めて、これからは「米朝対話」という新シリーズに突入するのではないか。その先はどうするかってことは、「驚異の視聴率男」はたぶん考えてはいない。怖い話ですけれども。

○ところで韓国から北朝鮮に「特使」として赴いて、金正恩委員長に会ってきたのは徐薫国家情報院長。つまりは韓国のインテリジェンス機関のトップです。マイク・ポンペオから言えば「対面」、もとい「カウンターパート」ですな。日本で言えば北村滋内閣情報官。こういう人たちの間では、お互いに「お前のことは全部知ってるぜ」となっているものです。

○「南北朝鮮で結託して天下のアメリカ様を嵌めようだなんて、ふてえことを考えるんじゃねえぜ」という声が聞こえたような気がしました。ええ、もちろん空耳でしょう。そうに違いありませんとも。

○ただいま新幹線にて新青森駅に移動中。超高速で移動しているし、トンネルも多いものだから、なかなかWifiがつながりませんなあ。ちょっと辛抱が必要です。

(10:11AM)


○青森市では今日から18日まで、カーリングの日本混合ダブルス選手権が開催中である。そうなのだ。青森市にはカーリング専用の「みちぎんドリームスタジアム(青森市スポーツ会館)」があるのだ。つまり平昌五輪銅メダルのLS北見が来ていて、これをトリノ五輪の日本代表であるチーム青森が迎え撃つという構図。これはちょっと見てみたくはないか?

○ちなみに観覧料は予選リーグが1500円、準決勝2試合、決勝戦と3位決定戦の2試合がそれぞれ2000円だそうである。安い。安いぞっ。いま青森市に行けば、ほんの数千円でLS北見メンバーが見られて、生の「そだね!」が聞けるのである。うーむ、見たいけど、我慢。東京で仕事もあるし。てなことで、再び新幹線車中にて、つながりにくいWi-Fiと格闘中。

(16:11PM)


<3月15日>(木)

○本日はソニーフィナンシャルHDにて、尾河眞樹さんと対談の収録。そのうちこのページに掲載されるはずです。尾河さんとは一昨日の「モーサテ」でもご一緒でした。そこで時節柄の話題を一通り。トランプ劇場に中国全人代に文書改ざん問題に北朝鮮等々。

○夜は某所で勉強会の講師。日米関係全般について話したのだが、ディスカッションになるとやっぱり時節柄の話題が多くなる。まあ、そういうもんでしょうなあ。とにかく目先の話が一番面白い。

○懇親会の席で出たキャッシュレス社会の話がまたまた面白い。ワシはギャンブラーなので現金主義者なのだが、これは確実に世の中から遅れている証拠。でも、結婚式と葬式に現金を持参する習慣がある国で、キャッシュレス社会は難しいと思うがな。これもまた当今の時節柄の話題ということになります。


<3月16日>(金)

○ティラーソン国務長官に続いて、今度はマクマスター国家安全保障担当補佐官が解任の見通し。トランプ政権、初代のマイケル・フリンが1か月でクビになっているので、これで早くもNSCアドバイザーは3人目となってしまう。次は誰なんでしょう。ジョン・ボルトン元国連大使なんていう下馬評もあるから、そうなったらネオコンの大復活ですな。あいつらしぶといからなあ。

○とはいうものの、マクマスター補佐官はまだ年も若いので、米軍内のしかるべきポストを与えて、Four Star General(大将)にしてあげようという温情が働くかもしれない。ちなみにホワイトハウスに入る前は、陸軍中将でありました。対北朝鮮問題で意見が合わなかったとはいえ、マティス国防長官もその辺は阿吽の呼吸を心得ていそうだ。だって、ともにイラクで苦労した仲間じゃないですか。ジョン・ケリー首席補佐官も一緒にね。

○その場合、間もなく空きそうなポストに在韓米軍司令官があるとのこと。うーん、それっていいのかなあ。米朝首脳会談が物別れに終わった後で、マクマスター在韓米軍司令官の下で軍事オプションが実行に移される、なんて可能性があったりして。オバマ政権下でもそうだったけど、トランプ政権下でも軍人は辛いよ。昔のテレビ東京の低予算時代劇の決まり文句を思い出す。すなわち、「死して屍拾うものなし」。


<3月18日>(日)

○金曜日に東洋経済新報社の「経済倶楽部」で、とっても久々に歳川隆雄さんの講演を聞いてきた。なにしろ時期が時期だけに講演は白熱。声も大きくてド迫力でした。

○国内政治に関する部分がオーバーランして(時節柄、当然だ)、外交部分の時間が少なくなった。特に北朝鮮に関する部分が語り足りない感じであったが、それがここに書いてある。ありがたし。勉強になります。

○要するにトランプさんは、何の仕掛けもなしにいきなり米朝首脳会談を引き受けたわけではない、ということである。ポンペオ次期国務長官がCIAルートを使って、ちゃんと下準備をしていたのだという。なるほど。

○ティラーソンは立派な人物であったが、大統領とは意見が合わず、国務省の現場の評判もいま一つであった。後任のポンペオは油断のならない人物であるようだが、大統領の信認は厚く、下院議員の経験もある。当面は重きをなしそうです。


<3月19日>(月)

○とある雑誌の今月号に寄稿をした。名前を「月刊BAN」という。「そんなの聞いたことがない」と言う人が多いであろう。ところがこの雑誌、「30万人のための情報発信マガジン」という副題がついている。今どき紙媒体で、丸とじ88ページもあって、30万部も出ている雑誌はきわめて少ないはずである。さて、どんな雑誌であろうか。

○不肖かんべえが寄稿したのは「多事雑感」という、月刊誌にありがちな巻頭コラムである。どうでもいいようなことを書いたし、原稿料もそんなに高くはないわけであるが、それでも紙媒体で30万人の読者はちょっと重いのである。ネットの読者なんていい加減なものでありまして、この不規則発言を覗きにくるようなレベルの高い人はさておいて、普通のニュースサイトだと100万ページビューでもちゃんと読んで理解している人は数%しかいないはずである。

○で、このBANという雑誌の4月号は、「特集 AIをどう活用するか?」とか、「コピー大国中国が狙う日本の最先端技術」とか、「トランプ政権の力の政策で塗り替わる中東情勢」といった記事が載っている。それだけ聞くと、何の変哲もない雑誌ですよね。ところがちょっと普通でないところもある。例えばAI特集の中には、「顔認識カメラの導入で効率を図る米国警察」なんて記事が載っている。おおっ、なんだこれは!

○勘のいい読者はもうお分かりでしょう。この雑誌、全国の警察官向けの社内報なのである。いや、署内報というべきだろうか。全国30万人とはそういうことでありまして、「BAN」というのは「交番」から取った表題でありましょう。

○連載記事の中には「全国警察ポスター自慢」というコーナーがあって、今月号は京都府警察の出番である。ビジュアルをお見せしたいのはやまやまなれど、ここはキャッチコピーのみをお楽しみいただきたい。


●"Be A HERO" 君の正義は守りたい人に必ず届く (京都府警察官募集ポスター)

●「のんだらのらない パパはえらい!」 (飲酒運転根絶ポスター)

●「『助けて。』 その一言で動けます」 (痴漢被害相談広報ポスター)

●「キミとずっと一緒にいたいから。」 (自転車盗難防止ポスター)


○どうです、このクリエイティブ。特に痴漢被害の件は「なるほど、そうだったのか!」「警察の人はそんな風に考えていたのか!」と納得させられるものがあります。

○ほかにも、題名だけで感心してしまうような企画が満載である。


●江戸の事犯帖

●今月の川路大警視の名言

●若手警察官のためのマナー講座34

●小さな法律違反に注意!

●もういくつ寝ると東京五輪


○ワシは社会人生活のふりだしが社内報の編集担当者であったから、上のような企画のひとつひとつがツボに入ってしまう。が、中でも白眉はこれである。川藤のおっさん、最近、見かけないと思ったらこんな仕事をしてたんか!


●川藤幸三氏に聞く「君の人生相談」


○ここには「部下の指導について悩んでいます」という、49歳男性からのいかにも今風の悩みが寄せられている。大事な警備の仕事で緩んでいた部下をきつく叱ったら、それ以来、怖れられてしまって困っているという相談である。浪速の春団治こと、川藤幸三がどんな回答をするかといえば、もちろん大方の予想の通りであって、こんな風に言っている。


後輩が怖がってピリピリしているなんて、ええことやんか

「こいつはほんまもんになるな」という後輩が出てきたら、その時に厳しく指導しなかったら、そいつは一人前にならんのや。

「あの先輩、くそったれ、早いこと、あの先輩よりも上に行ったるわ」という思いをさせるほうが後輩のためになるんや。


○いや、素晴らしい。野球の選手や民間企業の若手社員の場合は、先輩からの鍛え方が足りなくて本人が大成しなかったとしても、それは会社が損をするだけなので所詮はたいしたことではない。ところが警察官は将来、人の命を救うかもしれず、凶悪犯を捕らえてくれるかもしれず、交通事故を防いでくれるかもしれず、あるいは街を明るくしてくれるかもしれない。川藤さんのような怖い先輩にどやしつけられるのは、本人のためでもあるし、やがては国家のためではありませんか。

○ということで、全国30万人の警察官の皆さまをちょっと応援したくなったのでありました。


<3月20日>(火)

○今頃告知しても全然間に合わないのかもしれないけれども、いちおうやっておこう。木曜日は静岡市でこんなシンポジウムに出ます。

■公開シンポジウム「これからの東アジアを占う―日中韓は連携を強化できるのか」

■日時 2018年3月22日(木曜日)13時00分〜17時00分(開場 12時30分)

■会場 静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 11階 会議ホール「風」 (静岡市駿河区東静岡二丁目3番1号)

■参加料 無料 (どなたでもお申込みいただけます)

■定員 300名

○ここでの小生の講演テーマは「地政学時代の日中韓連携」です。


○さらに金曜日は大手町でこんなシンポジウムに出ます。

■日時 2018年3月23日(金曜日) 13時〜17時30分(受付開始:12時30分)

■会場 経団連会館 2階 国際会議場 住所:東京都千代田区大手町1-3-2 電話:03-6741-0222(直通)

■主催 株式会社富士通総研

■使用言語 日本語

■参加費 無料

■定員 300名(定員に達した場合、受付をお断りする場合があります)

○ここでの小生の講演テーマは「トランプ政権の対アジア戦略と日本の選択」です。

○レンチャンで引き受けてしまったのですが、なんとなく「まあ、同じ話をすればいいんだろう」と思っていた。先週になって、「なにこれ、全然違うじゃん!」ということに気がつき、慌てて準備をする羽目になった。なんでそんな勘違いをしたかというと、両方とも柯 隆(か・りゅう)さんから誘われたからである。よくよく見たら、柯 隆さんもちゃんとテーマを使い分けているじゃないか。世の中にそんな楽な話はないのであります。

○実をいうと、明日はまたその先に行われる別のシンポジウムの準備をしなければいけない。何でも安請け合いするから、こういうことになる。まあ、自業自得なんですけどね。


<3月22日>(木)

○本日は静岡県立大学のシンポジウムで静岡市に行っておりました。会場のグランシップには約250人の来場をいただきました。会場のファシリティにも感心しましたが、客層もたいへん良くて、レベルの高い質問をたくさん頂戴しました。今朝になって、「溜池通信で見ました」というお問い合わせもあったそうで、ご関心いただいたことに感謝申し上げます。

○ところが本日、いちばん感動したのは、静岡県立大学の某先生から挨拶を受けたこと。なんと2001年3月、当時の日商岩井が赤坂溜池からお台場に引っ越した際に、調査部の図書室が抱えていた膨大な「社史」を、誰かに引き取ってもらえないかと考えたことがあった。そこで如水会のルートで打診したところ、「捨ててしまうくらいなら全部いただきます」と言ってくれた後輩たちが居た。わざわざ小型トラックで会社の前に乗り付けて、段ボール箱29箱分を持って行ってくれたのである。

○その時の経営学の大学院生は、今では博士号も取って静岡で先生になっていた。何しろ今から17年前のことであって、当欄の2001年3月8日にはその記述も残っている。そのときの社史は、いろんな大学に貰われていって、ちゃんと活用されたそうである。ああ、よかった、捨ててしまわなくて。

○当方のような古い世代にとっては、本を捨てるのはとっても罪悪感を伴う辛いことであります。あの段ボール箱29箱を、捨てずに済んだだけでもうれしかったのに、それがちゃんと利用されていたとは。まして17年後に、そのご報告をいただけるとは。シンクタンク業界に長く身を置いていると、こんな種類のうれしさもある、ということを感じた日でした。


<3月23日>(金)

○トランプ大統領は本当にタガが外れはじめたんじゃないか・・・・と思わせるちょっと前(2時間前)に発表されたこのニュース

Sources close to President Trump say he feels John Bolton, hurriedly named last night to replace H.R. McMaster as national security adviser, will finally deliver the foreign policy the president wants -- particularly on Iran and North Korea.

Why it matters: We can’t overstate how dramatic a change it is for Trump to replace H.R. McMaster with Bolton, who was U.S. ambassador to the U.N. under President George W. Bush.


○鬼に金棒、トランプにネオコン。ジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官はおっかないですぞ。今週末はどんなニュースがもたらされるでしょう。


<3月25日>(日)

○本日は地政学リスク研究会の特別会合で小田原へ。先週も静岡に行くときに「ひかり」に乗ったばかりですが、今日は「こだま」に乗車。「のぞみ」に乗った時と、車窓から見える景色が違うように思えるのが不思議であります。

○さまざまな分野の専門家が某所に集まって、本日はひたすら鰻を食うという趣向。ああ、なんと罰当たりな。このような至福の時間があれば、貿易戦争が起きようが、米朝が勝手に合意してしまおうが、もうなんでもいいですぅ〜。

○しかしこの後、4月から5月にかけて、世界はどんなことになっていくのだろう。米中も米朝も日米も心配だ。とりあえず今週は、トランプさんが軟化の姿勢を見せて株価反転と見た。いえ、別に根拠があるわけじゃないんですけれどもね。


<3月26日>(月)

○昨日の会合は、いろんな専門家で多士済々の顔ぶれであったのですが、「長年使ってきたガラケーを、今度こそスマホに切り替えようか」と悩んでいた某教授(安全保障論担当)がいらしたのであります。これに対し、いろんなアドバイスが飛び交ったのであります。

●某中国専門家 「それはもうスマホに切り替えるしかない」

●不肖かんべえ 「ガラケーは通信手段としては非常に有力です。情報端末はiPad miniを併用すればよろしい。スマホと違って老眼にも優しいです」

●某中東専門家 「私は通信用のガラケーと情報端末としてのスマホの両方持ち歩いています。最近のiPhoneはすぐに充電が切れちゃうので、1日使っていると夜に長い電話がかかってきたときに不安があるんです。だったら2つ持っている方が安心でしょう。でもね、最近のアメリカではガラケーのことをDamn Phoneって呼ぶんですよ。Smartの反対語だから」

●某政治宗教学教授 「私なんかスマホとガラケーとiPadを3つ持ち歩いています」

●某インド経済研究者 「私はそもそもケータイを持っておりません」

○流石は悠久の大国、と最後の方がもっとも尊敬を集めたことは言うまでもありません。それにしても、皆さんがこんな感じなものだから、幹事としてはメールによる同時配信では返事が来たり、来なかったりで大変往生しました。最近、Lineやメッセンジャーの普及により、メール読まない人が増えているんだよなあ。

○ともあれ、ワシはスマホを買わんぞ!という決意を新たにするものでありました。


<3月27日>(火)

○佐川氏の証人喚問とか米中貿易戦争とか、北朝鮮の謎の列車の北京訪問とか、いろんなことが重なっている大変なときに何をやってるんだ!俺は?


ドバイワールドカップデー4競争 3月31日(土)


●6R ドバイゴールデンシャヒーン (G1)メイダン競馬場 1200m ダート 

●7R ドバイターフ (G1)メイダン競馬場 1800m 芝

●8R ドバイシーマクラシック (G1)メイダン競馬場 2410m 芝

●9R ドバイワールドカップ (G1)メイダン競馬場 2000m ダート


○気持ちは週末に飛んでおります。


<3月28日>(水)

○ということで、成田空港第2ターミナルの66番ゲートにて、エミレーツ航空の出発を待っている状態である。これから人生初の中東体験に出かけます。と言ってもドバイに競馬を見に行くという、純粋に私的な娯楽旅行です。空港ではイモトのWi-Fiを受け取り、UAEの通貨デュルハムを少額だけ換えました。いや、何かまだ信じられない。こんなことが許されていいのだろうか。会社休んで遊びに行くんですぜ。

○ドバイワールドカップに行ってみたい、とは数年前から考えておりました。ところが3月の最終土曜日に自分が暇でなければならない、という時点でかなりハードルは高いのです。今年はたまたま3月31日が土曜日で、月末の社内重要行事がたまたま3月28日の午後4時−5時になった、ということから「点と線」がつながりました。午後5時半に会社を出ると、9時20分成田発のエミレーツに乗れてしまうのであります。

○海外出張だというのに、宿題もなければお土産も持っていかない。いや、すばらしい。機中では映画を見てもいいのである。まあ、その前に「地球の歩き方 ドバイ編」を読むべきなのでしょうが。ゲラチェックやら来週のネタ拾いやら、義理はもちろんあるし、定例の飲み会やらランチやらも欠席にしてしまった。皆さまどうかお許しを。

○それでは行ってまいります。人生初中東で見聞が広がりますように。


<3月29日>(木)

○ドバイ国際空港に到着したのが午前3時台。さすがに人気が少ない第3ターミナルをてくてく歩いて、「まあ、空港なんてものはどこも同じだわなあ」と思っていたら、驚くべし、バゲージクレームが14本もあった。しかも第3ターミナルは全部エミレーツだから、掲示板を見ても自分のレーンがどこかすぐにはわからない。その場に居た人に、「成田からなら8番だね」と言われてようやく分かったという次第。

○8番レーンには佐々木大魔神氏がお見えでございました。なんと馬主さまと一緒の飛行機であったのか。持ち馬のヴィブロスは昨年のドバイターフの覇者。しかし、先月の中山記念でボロ負けしているので、今回は果たしてどうか。ドバイでは過去に連覇がないとのことで、ひょっとするとこれから歴史をつくるかもしれませぬ。

○空港でHISのツァーご一行に合流して、そこからメイダン競馬場へ。ここで朝ご飯が食べられるというのが売りである。まだ日が昇る前、空気はひんやりとしていて気持ちがいい。ターフを見ると、ときどきお馬さんたちが走っている。そこに集まってきているのが全世界の競馬関係者、およびファンたちである。雰囲気は3年前に行った英国のロイヤルアスコットに似ているが、ここは競馬場が新しいだけあってとにかく豪華。贅を凝らしたつくりである。ここでは藤沢調教師を目撃しましたぞ。そういえばレイデオロも参戦する。

○そこから市内観光へ。ジュメイラビーチは美しい浜が広がっている。アラビア海の向こう側はイランであって、時節柄いろいろ物騒であるはずだがそんな感じはまったくなし。ゴールドスークは、まあ市場は世界中どこでも同じだなという気もするが、この土地がかつて水上交易で栄え、特に金の取引が盛んであった名残りだという。当時は消費税の差額を抜くなんて商売はなかったはずである。

○バージュハリファの世界最高峰ビルディングは文字通り雲を突く。なにしろスカイツリーよりも高いです。そのすぐ近くにあるドバイモールには、1200軒のショップが並んでいるのだとか。しかしまあ、ショッピングモールというのは、上海もシンガポールもモスクワも、皆基本は一緒ですなあ。

○夜は会社のドバイ駐在員の皆々様と合流。商社の原点はやはり海外にあり。特に中東って、やっぱり重要な拠点なのではないかと考えた次第である。


<3月30日>(金)

○その昔、連合赤軍による日航機ハイジャック事件というのがあって、飛行機がドバイに緊急着陸したことがあった。その当時、まだ地図に「ドバイ」という地名はなかった。1973年というから、ワシが中学1年だった時のことである。よど号事件やダッカ事件などの間に挟まって、ドバイ事件は多くの人の記憶から消えている事件ではないかと思う。

○その次にドバイが強烈に印象付けられたのは、まことに遺憾ながらいしいひさいち氏のマンガの中である。今では朝日新聞でまことにつまらない四コマを描いている凡才だけれども、昔のいしいひさいち氏は掛け値なしの天才だった。その中で作家の落合信彦氏をDisった名作があって、落合氏が「CIAがどうしたこうした」と語っているうちに、最後は「そこで彼らはドバイの公民館を完成させたのだ」というオチになる。たぶんアサヒのスーパードライのCMがヒットした後なので、1987年頃の作品ではなかったかと思う。正確にここで内容を再現できないのはまことに残念である。

○要するに昔のドバイはとっても無名な存在であった。1960年代に石油が出るようになり、その後は中東の貿易と商業の中継点として存在を知られるようになっていった。本当に有名になってきたのは今世紀に入ってからじゃないかと思う。2009年には「ドバイショック」なる現象もあって、今や世界経済のキーポイントの一つと言っていいだろう。

○例えば今の時期、ドバイ空港から日本行きの便が取れなくなっているとのこと。理由が「花見」なんだそうだ。つまり日本の桜は今では世界中にファンが居て、「いつ咲くだろう」と心待ちにしている。今週になって「咲いたぞ!」というニュースが伝わると、欧州などからドバイ経由で日本行きの便が急に満杯になっている。それくらい3大陸の中央に位置するドバイは、ハブ機能を担っているわけである。

○そのドバイが力を入れているのが観光業である。これはもう呆れるほどの大風呂敷を広げていて、もう感心するしかありません。なにしろ人口の8割は外国人というお国柄。最初から富裕層しか狙ってはおりません。今日は地下鉄の1日券22デュルハム也を買って、いろんな場所を訪ねて、行き先々で何度も感動し、同時に驚きあきれてまいりました。ドバイってすごいぞ〜。

○とはいうものの、ここはイスラム圏。お酒はどこでも飲めるわけじゃなし、豚肉だってお店が仕入れるには苦労があるそうです。ギャンブルはもちろんダメ。明日行われるドバイワールドカップデーは、Win5みたいな馬券は発行されますが、これはもうほとんど宝くじ状態で、レースごとに馬券が買えるわけじゃありません。日本から来ている競馬ファンは、6レース以降の4レースのみを、かろうじてJRA経由で馬券を買えるという仕組みになっております。

○つまり限られた自由の中で、いかに外国人観光客を楽しませるかということを考えて、砂漠の中のリゾートを演出している。その点、日本ほど自由な国はないわけでありまして、観光資源も豊富にあるわけです。惜しむらくは、ドカンと観光に投資しようという人が出てこない。あるいはIR法案でも、政府がギチギチに規制して思い切りつまらないものを作りそうである。このままいくと、ハイエンドな客を全く掴めない「観光立国」になってしまいそう。大丈夫かなあ。


<3月31日>(土)

○ドバイで過ごしているうちに発見した法則は、「早起きは3文以上の損」。時差が5時間あるものだから、ついついはやく目を醒まして動き出したくなるのですが、あんまりいいことはないのです。

○日中がとっても暑い中東では、午前中ら動き出すのは愚の骨頂と言えましょう。金曜日なんて、安息日で午前10時まで地下鉄が動いていないので、駅前で外国人観光客の行列ができておりました。だから昼間ではなるべく家の中でゴロゴロして過ごして、日が陰り始めてからが本番開始なのです。

○名にしおうドバイワールドカップも、開始時刻は3時45分からです。日本だったらメインレースの時間ですわな。メイダン競馬場は3年前に行った英国のロイヤルアスコットの時と似ている。要は善男善女が礼装で出かけてくる。特に女性の帽子はまことに多士済々で豪華絢爛。競馬はギャンブルではなくて、紳士淑女の社交場なのです。まあ、どちらも王家が主催しているという点が権威を与えてくれているわけですが。競馬そっちのけで、出来上がっちゃう紳士がいるのも英国と同じであります。

○ただしイスラム圏で博打はご法度というお国柄、馬券は売っていません。その代わりに来客が与えられるのは、Pick6という日本のWin5みたいなマークシートです。これは6レース中1着馬を全部当てると、5万デュルハム(150万円くらい)の賞金が出るいう宝くじみたいなゲーム。参加料はタダなので、これではギャンブルとは言い難い。もちろん、かすりもしないわけですが。

○日本からの参加者がHISのツァーでゲットしたのは、The Gallary Level 1というチケットでありました。これはかなり豪華な席でして、コースの目の前まで下りて行って馬や騎手を間近に見ることもできれば、エアコンの効いた室内でビュッフェ形式の食事にビールなどの飲料もついています。シャンパンやワインはさすがに有料。でも、人前で堂々と飲んでいいのは、イスラム圏では稀有のことだと思います。愛馬会法人キャロットクラブから、ネオリアリズムの応援にきていたご一行様もいらっしゃいましたね。

○レースが始まりますと、やはり日が高いうちは小手調べ。1Rから5Rまではまことにゆったりしたペース。時間厳守ではないし、他会場のレースもない。これに比べると、日本の三場開催なんてのはほとんど神業ですな。6Rからが連続してG1レースとなります。そしてここから先がネット経由、JRAで馬券が買えるレースとなります。この時点で午後6時40分となっております。間もなく夜空には満月も浮かび上がる。さあ、これからが中東タイム、アラビアンナイトの世界のはじまりはじまり。

○6Rは下馬評通り、アメリカ勢が上位3着を独占。問題はここからで、7Rのドバイターフ、8Rのドバイシーマクラシックは近年日本勢の活躍が目覚ましい。現地に居ても、会場のアナウンサーなどがしきりと「最近は日本勢が有力ですが・・・」と言った話を振っている。今年は何しろ日本から14頭がドバイに来ている。それだけに期待もかかるところだが、一方でJRA販売のオッズは日本馬が実力以上に買われてしまう。英国のブックメーカー、パディパワー当たりのオッズと比べると明らかに違っている。結果的に、外国馬を買うのがお得になるのである。

○そこでどうやって買うか。気持ちは日本馬であっても、馬券は外国馬から買うのが合理的でしょう。結果はすでにご承知の通り、今年は日本馬の成績がいま一つでした。それどころか、7R、8R、そして9Rのドバイワールドカップまで、3レース全部もっていっちゃったのが地元ドバイ王家が経営するゴドルフィンという競走馬管理会社の所属馬でした。日本人客の間からは、「これは八百長じゃねえのか?」「いや、忖度かもしれない」などいう声が飛び交っておりました。

○ちなみに7Rは2着にヴィブロス(こちらで目撃した佐々木主浩氏が馬主)、そして8Rはレイデオロが4着(こちらで目撃した藤沢和雄氏が調教師)と、それなりのポジションは得ているのです。それでも、去年までの実績を考えると惜しい気分が残ります。そして会場はいよいよフィナーレ。三菱電機特製のオーロラビジョンにド派手な映像が流れ、移動式会場ではダンサーたちが踊りまくり、夜空には何百発もの花火が打ちあがる。いやはや、これぞ夢の世界。これからの観光産業というのは、こういう国際競争を勝ち抜かねばならないわけで、そりゃあ大変ですよねえ。

○馬券の方は負けに終わりました。とはいえ、ヤケ酒で飲むビールのなんとうまいこと。考えてみたら、このビールはイスラム圏では貴重なものであり、しかもタダなのである。ということで、余韻に浸りながらドバイの夜を堪能したのでありました・・・・。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki