●かんべえの不規則発言



2003年1月




<1月1日>(水)

○読者の皆様、あけましておめでとうございます。今年はわずか100枚ばかりの年賀状を、大晦日の夕刻に出しただけのかんべえです。例年より数が少ないのは諸般の事情でございます。手抜きの段、お許しを。

○さてさて、2003年の始まりです。「干支で考える2003年」でも書きました通り、今年は「終わりが終わる年」であるという予想です。さて、以下のうち、今年中に終わるものはどれでしょう。

@小泉政権
Aサダム・フセイン政権
B金正日体制
C米国経済の一人勝ち体制
D読売新聞におけるナベツネ独裁体制
E2ちゃんねる
F溜池通信

○本年はこれをもって2003年大予測に代えさせていただきます。かんべえはとりあえずA−B−Dの三連複で行きましょう。Fはたぶん大丈夫だと思うんですがね。「お前はもう既に死んでいる」――ひでぶっ!

追加

○朝起きてみたら、もう2人の方から「2003年に終わるもの」の回答が来ていたので驚きました。で、この二人の回答がきわめて近い。Cはあり得ない、となっている。んまあ、そりゃそうでしょうな。そこで思いつきました。Cを「強いドル政策」に変えましょう。これは難しいぞ。ちなみにアメリカの新財務長官が口では何といおうが、年内に1ドル100円割れみたいな事態があれば、「強いドル政策の終焉」と見なします。さあ、どうだ。AやBが終わらないようだと、Cが終わってしまう。難しいね。あるいは、Cが終わるようだと、いよいよ@も危なくなってしまう。

@小泉政権
Aサダム・フセイン政権
B金正日体制
Cアメリカの強いドル政策
D読売新聞におけるナベツネ独裁体制
E2ちゃんねる
F溜池通信

○締め切りは1月6日月曜日一杯までといたしましょう。さあ、どうだ。


<1月2日>(木)

○今朝の富山は朝から雪でした。見る見るうちに積もるつもる。こりゃ飛行機、飛ぶのかなと思いましたが、30分遅れただけでなんとか羽田につきました。日本海側と太平洋側では、なるほど天候が違う。ただし寒さの感じ方はそれほど違わない。関東の天候も明日は荒れるそうですが、今夜は冷えます。

○自宅に着いてみると、年賀状が出していない人からいっぱい来ている。うーむ、困ったわい。ところで正月のテレビは見るモノがありません。しょうがないから、日経CNBCなんぞを見ています。同様の方は多いんじゃないでしょうか。


<1月3日>(金)

○雪の降る中を、16号線沿いのコジマ電気に行ってきました。いえね、いつも使っているPCをそろそろ換えようかと思って。最近、バッテリーの調子が悪くなったのか、スイッチが入らなかったりする。それと重いので持ち運びがつらい。いちおう台湾やニュージーランドや富山には連れて行くので、もちょっと軽い方がいい。今のA4版Think Padは買ってからもう2年半たつ。(ちなみに前回、買ったときの顛末は2000年7月23日分の不規則発言に出ております)。

○しかしですな、Win95からいきなりXP機に移るとなると、これは結構面倒なんです。当方の希望としては、軽いB5版のノートで、マイクロソフトのオフィスが載ってて、エクスプローラとアウトルックがあって、FTPソフトと、いつもこれを書くときに使っているFrontPage Expressがあればそれで結構なんです。ところが、売っている最新鋭XP機はまずオフィスが入ってない。別売りだと5万なにがしかする。それでもって、ビデオの編集だの何だのという、無用なソフトがいっぱいついている。あたしゃPCで音楽聞いたりしないし、HPも文字情報だけで映像を乗っけるつもりはないから、ほとんどの機能が無用なのである。

○それにしても、あれだけたくさんの機種が売り出されているのに、どれもこれも似たり寄ったりの性能というのは不思議です。ソニーのVAIOなんて、あれだけの機能を使いこなす人がいったいどれだけいるのか、多いに疑問。他方、もっと古い機種を買いたいと思ってもそんなものは置いてない。PCという商品は、本当に供給サイドの都合だけで開発されているのだなあと思います。

○世間にはY2Kが終わるまでPCの買い替えを控えていた人が多いから、3年目に当たる今年はPCが売れるんじゃないかという予測があった。しかし3年前の性能で満足しているユーザーとしては、どうしても欲しいと思えるものがない。PC商戦は苦戦するのではないかという気がします。

○ところで、昨日読んだ『非連続の時代』(出井伸之/新潮社)に面白いことが書いてあった。ビル・ゲイツは、PCとテレビは融合し、PCゲームが主流になると予言した。しかしテレビがPCに飲み込まれることにはならなかった(少なくとも現時点ではそうだ)。出井氏いわく、これは「30度の法則」によるのではないかと。人はテレビを見るとき、30度後ろに寄りかかる。PCに向かうときは、30度の前傾姿勢になる。リラックスできるテレビというメディアは、そうそうPCには負けないよということらしい。

○勝ち目がないと悟ったマイクロソフトは、すかさずテレビ画面でゲームをプレイするXboxを売り出した。でも売れてないよね。ふふふ、いい気味じゃ。


<1月4日>(土)

○2003年の注目点の一つとして、見過ごされがちなことですが、「秋には事実上、米国大統領選挙がスタートする」という点がありますな。2000年選挙は99年3月にはスタートしておりましたが、2004年選挙も少なくとも投票日の1年前には走り出すことになるでしょう。これが結構楽しみなのです。

○なんとなれば、2004年選挙は現職ブッシュに対して民主党がチャレンジする形になる。つまり民主党内の予備選挙が見物なのです。共和党の予備選挙は、戦う前から誰が勝つか決まっていることが多いので、あんまり面白いことがない。その点、民主党は誰が勝つか分からない。知事を1期務めただけの人物(ジミー・カーター)なんぞが勝ったりすることもある。「意外な人物が人気を得て、あれよあれよという間に大統領候補になって・・・」というお馴染みの物語は、ほとんどが民主党で起きている。2004年のチャレンジャー選びも面白そうだ。

<出馬表明済み>
●ジョン・エドワーズ上院議員(49)=ノースカロライナ州選出
●ハワード・ディーン・バーモント州知事(54)
●ジョン・ケリー上院議員(59)=マサチューセッツ州選出

<たぶん出馬表明>
●トム・ダッシュル上院院内総務=サウスダコダ州選出
●ジョセフ・リーバーマン上院議員=コネチカット州選出
●ディック・ゲッパート前下院院内総務=ミズーリ州選出

<不出馬表明>
●アル・ゴア前副大統領(54)=テネシー州で上院下院議員の経験あり

○ゴア副大統領は12月に不出馬を表明した。これは賢明な判断だったと思う。2002年の中間選挙は、いろんな意味で従来の「党派的対立」をさらに深める方向で作用した。これで2004年が「ブッシュ対ゴアふたたび」になれば、左右の溝はまだまだ続くことになる。ここはむしろフレッシュな人物をブッシュにぶつけた方が、国民の関心も高まるし、民主党にとってもプラスであろう。そして2004年の挑戦が失敗に終われば、あらためてゴアは2008年の有力候補として浮上するはずである。1960年に僅差でケネディに破れたニクソンは、1968年に復活した故事があるからだ。

○上の6人の候補者のうち、実に4人までが上院議員である。しかし上院議員が大統領に選ばれたケースは、実に1960年のケネディまで溯らないと見当たらない。ケネディ以後の大統領を振り返ってみると、以下のように分類できる。

●副大統領からの事故による昇格:ジョンソン(ケネディの暗殺に伴う)、フォード(ニクソンの辞任に伴う)
●副大統領からの当選:ニクソン(1968)、ブッシュ・シニア(1988)
●州知事からの当選:カーター(1976)、レーガン(1980)、クリントン(1992)、ブッシュ・ジュニア(2000)

○つまり州知事強し、なのである。しかも4人の元州知事大統領のうち、2人は2期8年を務め上げている。これは立派な成績といえる。逆に上院議員が大統領選挙に挑戦すると、モンデール(1984)やドール(1996)のように見事に討ち取られることが多い。今回、出馬宣言しているディーン州知事というのがどんな人か、今のところよくわかんないんですが、ちょっと気になります。ヴァーモント州といえば、あのジェフォーズ上院議員の州だし。

○などなど、選挙オタクの血が騒ぐアメリカ大統領選挙です。


<1月5日>(日)

○あらためて本年の大予測を再提示しておきましょう。2003年に終わってしまうものは次のうちどれか。締め切りは1月6日(月)中。例によって何も賞品はないですが、ふるってご参加をお願いしまっそ。

@小泉政権
Aサダム・フセイン政権
B金正日体制
Cアメリカの強いドル政策
D読売新聞におけるナベツネ独裁体制
E2ちゃんねる
F溜池通信

○今のところ多い回答は「A−D」ですな。Bも終わって欲しいけど、そこまでは急に進まないだろうという読みなのでしょう。@については、「とにかく早く終わってほしい」という方が証券界には多いようです。かんべえ自身としては、「年内に自民党政権が終わることがあっても、小泉政権は終わらないだろう」と思っておりますが。

○それから、Cは意見が分かれるところで、どういう状態なら終わったといえるのかは議論百出となるでしょうが、「とりあえず年内に1ドル100円割れの局面はあるかもしれない」という声は意外なほど多い。以上の4問が真面目な問題で、あとの3問はおまけです。経験的にいうと、この手の予測問題はおまけの部分で結果に差がつくことが多い。

○複数回答なので、答え方にもばらつきがあります。一番少ないのは「Aだけ」という自称保守派さん。多い人では「A−B−C−D−E」という自称楽観派さんもいます。ドキッとしたのは「@−C−F」という回答があったこと。これはかなり独創的な読みをしてますね。いろんな回答を待っております。

○ところで明日、1月6日夜は今年初めてのJ−WAVE、「Jam the World」に出て「今年の日本経済」についてお話しすることになっています。午後9時半頃ですからヨロシク。ところで角ちゃん、何にも打ち合わせしてないけど、大丈夫なのかなあ。


<1月6日>(月)

○それでは今年の大予測を締め切りま〜す。大晦日の夜、紅白が終わってから年が明けるまで、約15分の思い付きで書いたものにしては、わりと面白いものになったような気がします。いただいた回答はのちほど整理いたします。

○ところで以下はキッシンジャー氏の恒例の予測です。

キッシンジャー博士 2003年10の予測
(2002年12月17日収録、2003年1月5日放映、日高義樹レポートより)

1. イラク戦争は世界経済に対して大きな打撃にはならない。
2. 石油価格は、戦争開始で上昇するが、戦後数ヶ月以内に下がり、安定する。イラクの生産体制が戻るまでは影響が続く。
3. 北朝鮮は、後半には話し合いを求め、核兵器原則を受け入れる方向になる。
4. 日本、中国、アメリカ、ロシアの4カ国が一緒に行動すれば金正日を抑え込むことはできる。
5. 2003年、朝鮮半島で戦争は起きない。
6. アメリカ経済は回復傾向で3%成長を実現する。ブッシュ大統領の支持率は高い。
7. 日本経済には、歴史的信頼を持っており、2004年になるかもしれないが、難局を抜け出すだろう。
8. ロシアのシステムは中国に比べて不安定だが、プーチン大統領は2002年と同様の状態を維持できる。
9. 中国経済の成長は続く。江沢民が党大会で指摘した問題に新指導者は取組む。大きな混乱や突然の変化は起きない。
10. 日本より米国経済の回復は早く、米国金利の上昇から、円はドルに対して 弱くなる。130〜140円を予想する。

○キッシンジャー氏は「Aは終わるけど、Bは終わらない」という意見のようですね。そして「@もCも終わらない」。それにしても上記の10の予測は非常に説得力がありますね。


<1月7日>(火)

○もひとついっちゃおう。モルガン・スタンレーの著名ストラテジスト、バイロン・ウィーン氏が毎年やっている「びっくり10大予想」2003年版。なにがびっくりかというと、「コンセンサスでは30%程度だろうが、ウィーン氏は50%以上の確率で起こると考えている」事象。ちょっとした意外性をお楽しみください。

(1)米国の株式相場は、緩やかな上昇を見込む識者の予想に反して上半期中に25%と急伸する。ドルは傷つかず、米企業の予想を上回る収益の伸びや米国の経済、政治、軍事力の強さを再認識することで下支えされる。海外勢の対米投資が加速し、個人投資家も再び米国株を買い始める。

(2)米経済は2番底やデフレ懸念をあざ笑うように、2003年の実質経済成長率は4%に達する。消費は堅調で、設備投資は回復。インフレーションを警戒し、米連邦準備理事会(FRB)は下期に政策金利を合計1%引き上げる。米国の国際収支の赤字は6000億ドル、財政赤字は2000億ドルに達し、10年物国債の利回りは5.5%に上昇。米国株は(金利上昇に伴う)割高感から下期に伸び悩むが、年を通して上昇基調を維持する。

(3)日本はついに金融システム改革の実現に真剣になる。政府が不良債権処理に立ち向かう銀行を支え、貿易障壁も助けとなって企業収益が回復し始める。日経平均株価は1万1000円へと上昇。小泉純一郎首相は中国の新たな指導者と自由貿易協定を結ぼうと決意する。アジアは米国に続いて世界経済を引っ張る新たなエンジンになる。

(4)フランスを筆頭に欧州の数カ国が欧州経済通貨同盟(EMU)に信頼感を失い、脱退をほのめかす。かつて、その経済成長が羨望(せんぼう)を集めたドイツが足を引っ張っていると彼らは考え、シュレーダー独首相は辞任に追い込まれる。欧州株は日米株の回復よりも遅れる。

(5)政府が配当二重課税の軽減に動き、ハイテク企業は豊富な現預金を四半期配当として株主に還元し始める。シスコシステムズ、デルコンピュータ、マイクロソフトが先導する。

(6)住宅バブルは破裂せず、一段と大きくなる。住宅価格は東西両岸で上昇を続け、中西部から北東部にかけての斜陽産業地域でも上昇する。グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は住宅バブルに対処できないと言って辞任。(株式市場では)住宅建設のレナーやセンテックスが力強く上昇する。

(7)周辺国に対する米国の強大な軍事的圧力や国連査察の強化を受けて、イラクのサダム・フセイン大統領はイラク国民の大量死よりも辞任を決意。リビアに庇護(ひご)を求める北朝鮮の金正日総書記は米国や国連の代表と核兵器の開発停止で合意する。中東、アジアのいずれでも大規模な軍事行動は無いまま1年を終え、投資家の信頼感は回復、株式投資リスクは低下する。ただ、原油供給は引き続きひっ迫し原油価格は30ドルを超えたまま推移、ハリバートンなど石油サービス株が上昇する。

(8)数多くのバイオ薬が困難な時期を終えて米食品医薬品局(FDA)の認可を獲得する。2002年に運用成績の芳しくなかった銘柄群が息を吹き返し、アムジェンやギリアド・サイエンスがとりわけ上昇する。

(9)2002年はパキスタンのようなテロ問題を抱えた新興市場で損失が最小にとどまった。(2003年は)ブラジルを筆頭に忘れられかけていた南米の株式相場が上昇する。財政規律や農産品価格の上昇、米経済の回復が寄与する。

(10)民主党の構想力、活力、気勢の乏しさを訴えてヒラリー・クリントン氏が当初の予定を前倒しして2004年の大統領選に出馬するが、ブッシュ大統領が最後は勝利する。

○とくに(7)が実現して欲しいですな。リビアに逃げるというのは、ありそうな結末だと思います。こうしてみると、キッシンジャー氏と同じく、Aだけが終わるという見解です。


<1月8日>(水)

○摩訶不思議なことを体験しました。分かってみれば「な〜んだ」なんですが、これは結構、身につまされる話かもしれません。「くれぐれもご用心を」ということで、以下、ご紹介させていただきます。

○かんべえの情報源として、かねて敬愛する某氏がいます。仮にAさんとしておきます。年明け、2003年の天下の諸情勢を語り合おうと思い、「久しぶりにどう?」とメッセージを送りました。A氏は外出が多いので、携帯メールに送りました。

○すぐに返事が戻ってきた。なんとA氏からではない。「Aは転職いたしました。この携帯電話は職場のもので、現在は違う人間が使っております」とある。そこで思い出した。A氏は昨年、転職した。その際に携帯電話を職場に返却した。それで電話番号が変わったのは知っていた。ところが、携帯メールの方のアドレスを変えるのをうっかりしていたのである。自分が打ったメッセージがまったく別人に届いたわけで、これは平身低頭、「失礼いたしました。手元のアドレスは消去いたしましたので、今後はご迷惑はおかけしません」と返信を打った。

○メールを発信した直後に、卓上の電話が鳴った。取ってみると当のA氏である。「おう、飯でも食おうか。俺の方はいつでもいいよ」。こっちはキツネにつままれたような感じである。だって当方のメッセージは、A氏に届いているはずがないのだから。

○種明かしをすれば「な〜んだ」である。A氏は、前の職場に携帯電話を返却する際に、当然のことながらすべてのデータを消去しておいた。それでもしばらくの間は、知り合いがメールを送ってくるかもしれないと思い、メールが来たら別のアドレスに転送するようにセットしておいた。ところがその携帯電話を返却された職場は、中味をリセットすることなく、そのまま他の社員に渡してしまった。するとどうなったかというと、新しいユーザーのもとに届いたメールが、すべて前の持ち主に転送されてしまうわけ。

○新しいユーザーは、そのことにまったく気づいてはいない。本人が発信するメールは流れないものの、その人のもとに届くメールはどんどんA氏に転送されてしまう。古いユーザーのA氏としても、最初のうちは何が何だか分からない。なんでこんなメールが流れてくるんだろう?と不思議に思っていた。それが今回のことで、やっと謎が解けた。

○それでもA氏としては、今更本人に告げるのもカッコ悪いし、そこまでする義理もない。なんかのはずみで、新しいユーザーが何かの理由でリセットするか、携帯メールのアドレスを変更するとかしない限り、メールは転送され続けるというわけ。いや〜恐いですね、おそろしいですね。こういう時代、情報ツールの使い方を誤ると、とんでもないことになるかもしれませぬ。


<1月9日>(木)

○昨年暮れ(12月26日)にGDP統計が改定されて、平成13年度(2001年度)の数値が確定した。再推計に当たっては前年にさかのぼるので、平成12年度も改定されている。あらためて確認してみると、愕然とするくらい数値が変わっている。

 
1999年度 1.9% 1.0%
2000年度 1.7% 3.2%
2001年度 −1.8% −1.4%


○うーん、なんだかまったく景色が変わってしまったように見えるぞい。2000年度が3%台だったというのは信じられますか?2000年度といえば、「森内閣誕生」「衆院選挙」「そごう破綻」「加藤政局」「Y2K騒動」などがあった年。たしかにゼロ金利政策を解除したりしてたけど、そんなに景気よかったかなあ。ネットバブルは崩壊したし、株価は下げたし、景気失速という印象があるのだが。ちなみにここを見ると、かんべえはこの年の後半に景気悲観論に転じている。

○困ったことに、こういうことはめずらしくない。たとえば1997年度はマイナス成長になったということで橋本内閣は退陣に追い込まれたが、今からみるとプラス成長になっている。経済統計は速報値、改定値、確定値と何度も姿を変え、そのたびに経済の景色は変わって見えてしまう。もっとも確定値なんて話題にはならないので、上の数字も今日になって気がついた次第。

○最近聞いた話だが、「鉱工業生産の統計にはデジカメの数値が入っていない」らしい。まあ、ちょっと前までは物価調査の項目に「足袋」やら「ワードプロセッサ」だのが入っていたくらいなので、驚くには当たらないのかもしれないが、こういうのを直すたびに数値は変わっていくのでしょうな。


<1月10日>(金)

○明日から三連休。こうも多いと、いい加減ありがたみもなくなりますが、することのない人はこんな時間潰しはいかがでしょう。題して「サイタマージャン」。ルールはポンジャンとほぼ同じ。

http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Pastel/1988/saitamajan.html

○手役一覧はこちら。これがまた笑える。

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Part/8414/saitama/saitama_yaku.htm

○地名の頭に東西南北がつくとか、浦和、大宮、与野を集めると役になるとか、埼玉の地名の特色をうまく読み込んである。他県では成立しないでしょうね、この発想は。


<1月11日>(土)

○先日来、スイッチを入れてもPCが立ち上がらないことが何度かありましたが、どうやらその原因はバッテリーの劣化にあったようで、バッテリーを抜けばちゃんと立ち上がる。2年半も使えば交換もやむなしということで、サービスセンターに電話して新しいバッテリーを取り寄せることにした。かんべえのPCはThink Padの390Xという1999年生産の機械なので、ちゃんと在庫があるかどうか心配してたのだが、驚くべし、金曜日に入金して注文したら、土曜日の昼には現物が届いてしまった。IBM偉い!

○先日も書いた通り、B5サイズの軽いPCも欲しいのですが、余計な機能はいっぱいついているのに、仕事に使うようなものが入っていない。ワシは仕事道具が欲しいだけで、テレビの番組予約やデジタル映像の編集なんぞには興味がないんじゃ〜。このHPだって、頑固に文字情報だけで送り続けるぞ〜。文句のある奴はほかへ行ってくれ〜。というわけで、どうもこのまま時代遅れのWin95マシンを使い続けることになりそうです。

○ついでながら、HPのメールをkan@tameike.netに変えてみました。いつも通り、ご感想をお待ちしております。


<1月12日>(日)

○北朝鮮のNPT脱退について、いろんなニュースが流れている中で、これが興味深く感じました。

北朝鮮のNPT脱退宣言「米だけ相手」、露に衝撃 http://www.yomiuri.co.jp/05/20030110id31.htm

 【モスクワ=瀬口利一】北朝鮮のNPT脱退宣言について、ロシア外務省は10日、「深い憂慮」を表明し、「国際社会や隣国の一致した意見に耳を傾ける」よう北朝鮮に求めた。だがモスクワの露朝関係筋は同日、脱退宣言がモスクワでの日露首脳会談に重なったことを重視し、「交渉相手として望むのは米国だけで、日本やロシアの働き掛けは受け入れない、という明確なメッセージだ」と語り、宣言が露政府に衝撃だったことを明らかにした。

同筋は、日露首脳会談が事前に北朝鮮問題を主要議題としていた点や、北朝鮮の宣言が米朝2国間の「検証」に言及している点に着目し、「米国以外には用はない」との意思表明、と分析する。

○これってあんまりな仕打ちである。そもそも北朝鮮が1985年にNPTに加盟したのは、ソ連に促されたからなのである。もっといえば、今ある原子力発電所を建ててくれたのは誰なのか。力の切れ目が縁の切れ目。

 プーチン政権は従来、「北朝鮮に影響力を持つ国」の立場をちらつかせ、今回の日露首脳会談でも日本から期待を寄せられていた。それだけに面目失墜は間違いなく、今後は、「ロシアによる調停は利用価値がある」と北朝鮮に納得させる必要に迫られている。

 また別の露外交関係筋は、「北朝鮮が新たな挑発行動に出たからといって、米国の強硬姿勢にならい、北朝鮮への圧力を強め孤立させるわけにはいかない」と語り、露政府が、北朝鮮核問題について、IAEAによる国連安保理付託を出来るだけ引き延ばしたい意向である、と語った。

 しかし、露政府は北朝鮮と友好関係にあるといっても、特別な政治・経済的なテコはない。米国の政策を横目に見ながら、北朝鮮の挑発行動を何とかなだめ、調停役としての余地を探る以外に打つ手がないのも実情だ。 (1月11日02:01)

○しみじみロシアは情けない立場である。プーチンは北朝鮮を足がかりに、極東ロシアの開発に日本を巻き込みたいと考えている。北方領土の返還抜きにジャパンマネーを招くとなると、これは簡単じゃない。朝鮮半島の鉄道を南北につないでロシアと結ぶ、なんていう構想も、いかほどの経済効果があるかは心もとない限りなのだが、期するところ大であるらしい。それを考えると、「もうお前なんぞ知らん」とは言えないようだ。

○北朝鮮にテコを持っているのは、むしろ中国の方である。こちらは年間15万トンの食糧援助を行っており、「これを止めるぞ」という脅しができる。しかしそうなったら、怒涛のような難民が流入してくるだろう。そうなると、中国としても経済制裁には消極的にならざるを得ない。この辺の間合いを見切っているとしたら、金正日はたいしたものである。

○結局、北朝鮮にテコを持つのはアメリカだけである。「交渉してやる」と言えば、とりあえずこの危機は先送りできる。しかしアメリカとしては、talkするのはいいけど、negoする気はない。ブッシュ政権はクリントン政権とは違う。こっちの方は読み違えている公算が大ですな。


<1月13日>(月)

○今回の北朝鮮の行動は、93年のパターンの繰り返しに見える。あのときはこんな感じだった。

2月 9日 IAEAが核廃棄物関連施設への特別査察要求を決定。北朝鮮は受け入れ拒否を表明。
3月12日 北朝鮮がNPT脱退を表明。
5月11日 国連安保理が北朝鮮に、NPT脱退の再考を求める勧告案を可決(中国は棄権)。
5月29日 北朝鮮がノドン1号を日本海で試射実験。
6月 2日 米朝がニューヨークで第1回の高官会談。
6月11日 米朝が共同宣言でNPT脱退の棚上げを発表。
7月19日 北朝鮮とIAEAの交渉再開で合意。

○さて、93年と同じことが繰り返されるとすれば、国際社会側の次の一手は国連安保理の勧告となる。その次の北朝鮮側の手はミサイル実験。そうなると、いよいよアメリカが出ていって高官協議となる。これでめでたく北朝鮮はおとなしくなる。この「三手の読み」を平和的解決と呼ぶか、それとも宥和政策と見るか。当時のクリントン政権は、時間を稼げば金正日体制はいずれ瓦解すると見ていた。そのために94年にはKEDOという枠組みを作ったりもした。まさか21世紀になっても、金正日体制が続いているとは思わなかったのだろう。

○実はこのプロセスのさなか、93年4月7日に金正日が国防委員会委員長に就任している。金日成が死ぬのは94年7月なので、この当時の駆け引きはほとんど金正日が仕切っていた公算が高い。つまり彼にとっては、93年の体験が強烈な印象となって残っているのではないか。追いつめられたときに、過去の成功体験を繰り返したくなるのは世の常ですから。

○上の三手の読みが正しいとすれば、そのうちテポドンが飛ぶかもしれないということだ。めったなことでは当たらないと思うが、当たり所が悪いとエライことになる。日本政府としては、「そんときは個別的自衛権の範囲内だからね」とひとこと発言しておいたらどうだろう。別に脅すわけじゃなくて、当たり前のことだと思いますが。


<1月14日>(火)

○ワシントンの大学院、SAISの学生たちが来社。日米関係をテーマにした年次報告書の取材が目的。この報告書、ジャパンタイムズ社から出版されているが、日本語と英語の両方で書かれており、非常にクオリティが高く、一級品の資料である。3人の学生は、当社に来る前は平沼経済産業大臣にインタビューしていた由。その次がかんべえとは、ものすごい落差といえよう。質問項目はWTO、FTA、不良債権、デフレ対策、産業再生機構などなど。

○今年の報告書のテーマは、"Sail With Dragging Anchor"(微妙に違っている可能性あり)だそうだ。つまり碇を引っ張ったままで船が航海をしている、というイメージ。2003年の日本の現状をよく表していると思う。ここでいう碇というのは不良債権か、抵抗勢力か、はたまた北朝鮮か。船長はたぶん小泉さん。追い風はあまり期待できそうにない。うーん、それにしても、うまいこと言うなあ。


<1月15日>(水)

○今年いただいた年賀状のうち、野党の関係者からいただいた分は、そろって「今年は勝負の年」とばかりに血気に満ちていた。解散・総選挙は年内にかならずある、と信じていたのだと思う。ところがあら不思議。年が明けたら、「やっぱり任期満了」てな声が増えてきた。お馴染みの角谷浩一氏によれば、「昨年末の解散風は、民主党からの脱走者を増やすために、意図的に吹かされたもの」ということ。あんまり成果はなかったけれど、保守新党ができたからもういいや、ということではないかと。

○少なくとも、来週から始まる通常国会では、冒頭解散は100%ない。なんとなれば天皇陛下が近日中に手術される。国事行為は皇太子殿下が執り行うはずだ。こんな状況下で、紫の袱紗が出てきて「憲法7条により・・・」ということは、ないでしょうなあ。

○イラク戦争もしばらくは先送りのようだ。欧州、とくに英国の反対に配慮して、という解説がもっぱらだが、あのブッシュ政権がそんなに心優しいはずがない。真の原因はペンタゴン内の確執によると思う。本日の産経新聞でCSISのルトワークが書いているように、ラムズフェルド国防長官が指示した少数勢力による電撃作戦を、現場、すなわち制服組が「冗談じゃない」と押し返したのが思惑違いだった。

○先週号で書いた将棋の話にたとえるならば、トップは「飛車と角だけの攻めで十分に勝てるじゃないか」といい、現場は「飛車角銀桂を好位置に揃えて、金矢倉を組んでから開戦させて欲しい。何かあったら、死ぬのはあたしらだ」と開き直った。おそらく25万人体制くらいまで積み上げて、十分に優位を確認してから動くつもりだろう。ブッシュ政権のタカ派人脈としては、またしても一敗地にまみれた形となる。

○もうひとつ、三井住友FGの増資をゴールドマンサックスが引き受けるというニュースが、今日になって飛び込んできた。おそらく他のメガバンクも、この手で一息つくのでしょう。外資の側としては、「竹中は銀行をつぶさない」とすでに読み切った。そのリスクさえなければ、高い金利を取れるいい投資になる。これでは3月危機もなさそうですな。

○ということで、おそらく春までは、解散もない、戦争もない、金融危機も来ない。そう考えると、ほっとするよりも頭を抱えたくなるのは、私の性格が悪いからでしょうか。


<1月16日>(木)

○そんなわけで、私が「日経の一面、左上のコラムは信用するな」を信条にしているかんべえであります。

○たまたま、本日分のコラムで私のコメントが引用されておりますが、これは上記の信条を曲げたわけではありませぬ。現在の連載である「日本病を断つ」も、過剰な悲観論を振りまいて世を惑わす企画じゃないかと疑問を感じている次第。日本の国際競争力は立派なものだと確信しているのであります。ま、詳しくは2002年8月2日号「日本の国際競争力を考える」を読んでくれたまへ。

○でもまあ、こういう偏屈な人間のコメントを使ってくれるのだから、日経新聞は度量が広い新聞である、と誉めておきましょう。あはは。

○それにしても、日本経済にはたくさん「使っていない筋肉」があると思います。それを指摘して、「だから日本は駄目なんだ」という議論が盛んですが、見方を変えれば「宝の持ち腐れ」をしているわけで、まだまだ伸びる余地があるということでもある。日本経済をよくするということは、「使ってない筋肉を動かしてみる」ことに尽きると思います。


<1月17日>(金)

○会社の営業部門が客先を集めて行う新年会で講師役を務める。冒頭で「田中耕一さんの1年後輩で、木村剛の2年先輩である吉崎です」というと、たいへんに「つかみ」が良い。それもそのはず、木材業界なので北陸の会社が多いのだ。富山湾も、昔は北洋材を積んだソ連の船が多かったものだ。

○終わってからの懇親会で、福井と富山の会社の人と話をしていたら、高校の同級生の実家が新湊市で北洋材の輸入をしていたことを急に思い出す。20数年ぶりで「K」というその名を思い出したら、なんと当社の顧客であった。その昔、高校の運動会で使う材木を買いつけるために、Kの実家まで行って貯木場を見たことがある。あいにく今は廃業したとのこと。

○どんな業界でも、この手の新年会はつきものであるようだ。2003年の年明けが明るいという業界はそんなに多くないだろう。今日、聞いた話では、牛乳関連の業界が明るいという。皆さんご存知の某社が撤退したお陰で、需給関係が一気に良くなったらしい。まあ、これも生存競争。勝ち残って笑えるようでありたいものです。

○どこの世界でも、お客がいるから会社の存在意義がある。それを忘れて「初めに会社ありき」と思っていると、お客はいつのまにか去って行く。当たり前の話ですが、お客がいることはありがたいことです。


<1月18〜19日>(土〜日)

○日本経済における「使っていない筋肉」にはどんなものがあるだろうか。数えてみると結構ありますな。

●政治家のトップセールス:出力0%

シュレーダー首相がリニアモーターカーを売り込むために上海を訪問する一方で、小泉首相は靖国神社参拝で中国を刺激する。これでは中国が新幹線を買いたくても買えませんわね。かんべえは首相の靖国神社参拝が悪いとは思いませんが、行くときはちゃんと仁義を切ってくれよと思う。昨年の春の例大祭での参拝がなぜ中国で問題になったのか。直前に海南島で小泉さんに会った朱鎔基が、「こいつは話せるやつだ」と思って国内に触れ回った直後に、何の挨拶もなく行ってしまったから面目丸つぶれになった。直前に電話一本しとけば、ずいぶん雰囲気は違ったような気がするぞ。

●外国人の力:出力30%

いまだに「ハゲタカ論」が大手を振って闊歩していたり、はなはだしきは「ロックフェラーorロスチャイルドの陰謀」を口にする人がいる。もっと素直になったらどうだろう。メガバンクが外資に出資を仰いでいる。外資は不良債権処理ビジネスで大儲けするのだろう。だったら邦銀が、自分で処理して大儲けすればいいようなものだが、そこができないのだから仕方がない。日産自動車も、塙さんができないことをゴーンさんに託した。それでいいじゃないの。アルゼンチンみたいになると、外国人にも見離されますぞ。

●高齢者のマネー:出力15%

日本の金融資産1400兆円の3分の2くらいは60歳以上が持っているそうだが、金の使い道に困っているような人が多い。彼らに気持ちよくお金を使ってもらわないと、景気は良くならない。ひとつのソリューションとして、贈与税の非課税枠を広げる動きがある。孫や子のためにドーンと家を建ててやれ、という作戦。いつまでも「高齢者は守ってあげるべき対象」と考えていると、政策の幅が広がらない。

●女性の才能:出力20%

ちゃんと使っている業界は非常に少ない。あるいは非常にもったいない使い方をしている。

●団塊ジュニア世代:出力30%

スポーツなどの世界では実力を発揮している(ゴジラ、羽生善治など)のに、企業社会の中では使い走りばかりで、しかも下が入らないから同じ仕事をさせられている。昔はもっと若手に研修の機会を与えていたんだけどね。かんべえの世代などは、バブル時代を通過しているから、少しはいい目を見させてもらったけど、そういうのがないのが気の毒。

○これらの資源を活性化することを考えるべきじゃないだろうか。インフレ・ターゲティングよりもそっちの方が先だと思うぞ。


<1月20日>(月)

○今宵の勉強会、「対イラク武力行使をどう考えるか」というテーマでした。実際の武力行使は先に伸びるだろうけれども、いずれ日本が「アメリカに協力するのか、しないのか」という踏み絵を迫られることはある程度見えている。問題は日米の政策当事者同士はそういう議論をしているけれども、国民に対してはきちんと説明していないこと。イージス艦だって、冷房を理由になし崩し的に出している。こんなんで、いざというときにどうすんの?という話になる。

○いよいよというときに、どうやって対米協力の必要性を訴えるのか。以下のような説得方法(脅し?)がありますよ、これで大概の人は「落ちる」でしょう、てなことを申し上げました。

●説得その1:「本当に日本が危なくなったとき、北朝鮮を撃退してくれるのはアメリカだけだよ」(イラクで協力しないと、あとで知らん振りされるかもしれないよ)

●説得その2:「アメリカでトヨタが売れなくなったら、どうするつもり?」(ソニーもホンダもキヤノンも米国市場から締め出されちゃうかも。あなたは日本経済地獄絵図が見たい?)

○そしたら、「そんなこと言うなんてヒドイ」と怒り出した人がいた。ビックリしたけど、ひとつ賢くなった気がしました。この手の理屈が通じる人というのは、おそらくビジネスマンや自営業の人に限られていて、学生や大学教授や野党の政治家や元全共闘世代の人たちには、全然通じないのでしょう。かんべえがいかに偏った世界に生きているかということを、あらためて思い知らされたようで感心しました。

○それでも、思うのです。日本人というのは計算高くて利に聡い国民であり、土壇場になれば上のような理屈で納得しちゃうんじゃないかと。つまり「感情より勘定」が日本人の姿ではないかと。北朝鮮問題に関する最近の韓国の対応は、明らかに「勘定よりも感情」を優先しており、これはこれでアッパレなところもあると思うのだけど、やっぱり外交政策としては間違っていると思うのです。「勘定より感情」の人は、ビジネスでもギャンブルでも普通は負け組ですから。

○たまたま今日、紀尾井町を歩いていて、ニューオータニの隣りに大久保利通の記念碑があることに初めて気がつきました。明治の基礎を築いた巨人が倒れた場所に、「贈右大臣大久保利通公」とだけ書かれたシンプルで大きな石碑が立っている。上野の西郷さんの銅像が愛敬たっぷりなのと好対照で、これはこれで大久保らしいなと感じました。読者には見え見えでしょうけれど、かんべえは大久保の方が西郷の百倍ほど好きです。

○日本人の多数派は、大久保より西郷が好き。それは結構。でも本当を言うと、「心は西郷だけど、体とお財布は大久保」というのが真の日本人だと思います。


<1月21日>(火)

○何人かの方にメールや電話を頂きましたが、2002年分の溜池通信のファイルが取り出せなくなっておりました。週末に整理したら、リンクが間違っておりました。訂正したのでもう大丈夫だと思います。何かありましたら、またご連絡ください。ありがとうございました。

○本日の昼、日本国際フォーラムの会合で「東アジア経済共同体構想」を討議。さてもさても論点が尽きなくて、こりゃやっぱり絵空事かねえ、と感じる。かんべえが、「中国とアセアンのFTAはもう準備が進んでます。2010年を待たずして完成しますよ」てなことを申し上げると、ちょっとだけ場がシーンとなった。昨年、日本とシンガポールがFTAを結んだけれど、そこに至るまでに金魚の業者団体から反対があった由。韓国とのFTAにもあと2年かけるといってるし、これはもう全然スピード感が違いますね。


<1月22日>(水)

○今週のThe Economist誌が書評欄で"The sphinx in the White House"(ホワイトハウスの謎の人物)という記事を載せている。ここで取り上げられている本は、この1月にランダムハウス社から刊行された"The Right Man : The Surprise Presidency of George Bush"である。題名で容易に見当がついてしまうが、ホワイトハウスにおけるブッシュを描いた「ヨイショ本」である。

○筆者はデイビッド・フラム、と聞いても、まあ普通の人は何のことだか分からないと思う。
The Economist誌の記事には、"Mr.Frum, a Canadian neo-conservative, worked for 13 months as one of his speechwriters"とある。つまりブッシュのスピーチライターだった人だ。名前からするとユダヤ系。実は彼、ただのライターではない。あの「悪の枢軸」(axis of Evil)という言葉の生みの親なのだ。

○今から1年前、ブッシュの年頭教書演説はこの名文句で全世界を驚愕させる。フラムの内心の得意はいかばかりだったか。しかし奥さんが「宅の主人があの文句を発案しまして」てなメールを複数の友人に送り、それが転送されてスレート・マガジンに掲載されてしまい、大統領の怒りを買った。哀れフラムはクビになり、ジャーナリストに戻った。そして1年後、ブッシュ大統領の日常を描いた「内幕もの」、ただしその実態は限りなく「ヨイショ本」を世に送ったわけである。

○別のソースによれば、この本では「悪の枢軸」という言葉の誕生の経緯を以下のように説明している。

(1)本番の1ヶ月前、フラムは主席スピーチライターから、「2日以内にイラクを追い込む理由付けを一行で書け」と命令される。

(2)フランクリン・ルーズベルトの故事(「日本→ナチスドイツ」という理由付け)をヒントにして、「テロリスト→イラク」という構図を思いつく。アメリカを憎む「9・11」のテロリストは、イラクと結んで攻撃してくるぞ、というわけ。ここから"Axis of Hatered"(憎悪の枢軸)というコピーをひねくり出す。

(3)推敲の過程でコンドリーザ・ライスが"Axis"にイランを追加する。

(4)主席ライターが"Hatered"を"Evil"に変更。

(5)本番直前に"Axis"に北朝鮮を追加。これでちょうど3カ国になった。

○やっぱりね、という感じですな。昨年11月1日号「対北朝鮮外交を考える」で、かんべえはこんな風に書いた。

そもそも北朝鮮は、米国民に対するテロ行為を働いたことがない。それがなぜ、「悪の枢軸」の仲間入りを果たしたのだろうか。少し邪推してみると、今年の年頭教書におけるブッシュ大統領の心中には、まずイラクを叩かねばならぬの気持ちがあった。その際には長年の宿敵であるイランも俎上に挙げねばならず、さりとてこの2カ国だけを非難したのでは、全イスラム圏を敵に回して「文明の衝突」になってしまう恐れがある。そこでアジア代表のテロ支援国家を入れて、3カ国にしてバランスを取ったのではないだろうか。

○ホントにこの邪推通りでやんの。これでは「どうだ、すごいだろう」などと自慢するのも憚られてしまう。

○The Economist誌の評価によれば、本書の最初の3分の1は値打ちがある。これまで、ほとんど外に漏れてこなかったホワイトハウスの内情が描かれているからだ。しかし「悪の枢軸」に関する部分から先は、長いばかりで、観察よりも意見が多くなる。しかもネオコン風に偏っている。いわく、「『パレスチナ』という言葉の後にはかならず『テロリズム』がつき、『イスラエル』の後に『入植』がつくことはない。民主党や欧州人や、コリン・パウエルは分析されることもなく、ただ非難される」

○この本を読みたいと思い、アマゾンで検索をかけてみた。"The Right Man"などというタイトルの本は、「ハーレクインロマンス」みたいなのが多くて往生こいたが、後ろの方でようやく見つけ出すことに成功。1冊だけ在庫があったので、さっそくオーダーしちゃいました。便利な世の中です。

○ブッシュの今年の年頭教書演説は1月28日(火)。もうじきですね。


<1月23日>(木)

○昨日注文したThe Right Man、なんと今日の午後には届いてしまった。アマゾンは偉い。その後、チェックしてみたら「在庫なし」になっていたので、ちょっと得した気分。むふふ。あらためてこの本の紹介を下記します。なぜAEIのホームページにあるかというと、フラムは現在、AEIの客員研究員になっているのだ。

http://aei.org/books/rightman/rightman.htm

○書名のThe Right Personは言うまでもなく、「9・11という国家的悲劇に直面したアメリカにとって、まさにピッタリの指導者」を意味している。表紙は拡声器を手にしたブッシュ。マンハッタンの瓦礫の山を前に、"I can hear you."と語ったあの姿である。そんなのもう忘れちゃったという人は、「不規則発言」の2001年9月17〜18日分を読んでくれたまえ。さほどブッシュが好きなわけではないワシも、あのときは感動した。

○もっというと、The Right Personには「右寄りの人」の意味もありそうだ。Rightという言葉に「正しい」と「右」の意味をかけるのは保守派の常套手段で、極右で有名なパット・ブキャナンには、"Right from the Beginning"(初めから右)という自伝がある。

○夜はこの本を手にして、BSジャパンの「ほね・ホネ・本音」の収録に。立教大学教授の山口義行さんと城戸真亜子さんが司会を務める討論番組である。今回のテーマは「ブッシュの野望と日米経済」。1時間番組をゲスト2人(もうお一人は江間彰夫さん・みずほ総合研究所理事)だけで乗り切るので、いつもより話す時間が長い。冒頭でこの本を紹介させてもらう。「悪の枢軸は、最初からイラク攻撃のために作られた名コピーですよ」と申し上げる。

○放映は1月25日(土)午前9時から10時までと、再放送が1月26日(日)正午から。BSデジタルが見られる人はどーぞ。


<1月24日>(金)

○またまた傑作を発掘してしまいました。これは力作ですぞ。中東版のバトルロワイヤルですな。

http://www.idleworm.com/nws/2002/11/iraq2.shtml

○作った人の言い草がすばらしい。本当にこういうことになっちゃうかもね。ああ恐ろしい。

This is a projection of the most likely outcome of a new war in the Gulf. I used sophisticated temporal algorithms and historical semiotic analysis to achieve an accuracy rating of 99.999%. It's the mother of all Flash games.

○今はなき深作欣二監督に、このゲームの映画化をお願いしたい。それにしても登場人物の顔がよく似ててコワイ。


<1月25日>(土)

○小泉首相が党首討論で「(公約破りは)たいしたことない」と言ったことが物議をかもしているそうで。マスコミも「まずは菅代表が勝ち」と評してはいるが、関心のポイントは「小泉さん、ちょっと疲れてるんじゃないの、大丈夫?」にあって、これをもって野党に政権を任せようと考える人は絶無だろう。そんなことを得点だと言って騒いでいる野党もたいしたことありませんな。ま、見所がない通常国会において、いささかの話題を提供したといったところか。

○あたしゃ国会討論を見るほど暇じゃないが、最近忙しいはずの山根君がこんなことを言っている。

師匠、民主党をなんとかしてくださいませ。
仙谷氏の質問を聞いていて、涙が出そうになりました。
市場メカニズムを機能させろという一方で、政治の圧力でメガバンクに中小企業に無理やり貸せというのはめちゃくちゃです。
仙谷氏自身が挙げている中小企業の利益率を聞いたら、貸し渋りも当然だなと思います。善悪とは別の問題です。
やはり国会中継は精神衛生によくないですなあ。

○今時この手のないものねだりをしているのは政治家だけで、国民の政治に対する期待値はずっと低い。たとえば政府にデフレを止める力がないことは、大方の国民は百も承知であろう。もっとも小泉首相は、日銀総裁にデフレファイターを任命するよりも、ご自身がデフレファイターになるぞと宣言した方が、もちょっと建設的だったと思うが。


<1月26日>(日)

○何だか政治が面白くないなあ、と思ったら理由に気がついた。「スター」がいないのだ。去年の今ごろと比べると、田中真紀子、鈴木宗男、辻元清美、加藤紘一が政界を去ってしまった。別に戻ってきて欲しいとも思わないが、話題を作る人たちが減ってしまったことは否めない。テレビなどでは「課題山積の通常国会」などと言っておるが、盛り上がりに欠けることはなはだしい。1年前の今ごろは、マキコvsムネオの衝突で国会が空転していた。ほとんど隔世の感があるが、ところであの2人は何が原因で対立していたんだっけ?

○悪役フェイスの面々もおしなべて元気がない。あの野中広務に一時期の迫力がない。(元気になったら、耳元で「北朝鮮」と囁いてあげよう)。一時期鳴りを潜めていた亀井静香は、本来の騒がしさを取り戻しつつあるが、空騒ぎばかりが目についてほとんど痛々しい。そういえば文芸春秋で叩かれていた松岡利勝はどこへ行ったんだろう。とまあ、ヒール(悪役)がかくも弱々しいのでは、リングの上は寂しくて仕方がない。小泉人気も盛り上がりに欠けるわけだ。その一方、野党は昨年1年でガタガタになってしまった。鳩山さんの後がまた菅さんではねえ。

○それでは新しいタレントが誕生しているかといえば、せいぜい安倍晋三官房副長官くらいですな。『噂の真相』に悪口を書かれるくらいですから、次代のスター政治家の資格は十分。石破茂防衛庁長官も、オタクっぽい視線がかんべえは好きだ。しかしその後が続かない。政治に関心を高めてくれるような、スター政治家を期待したいですね。あ、そういや渡辺よしみ先生がおられましたか。

○永田町を去った元スターたちを偲ぶわけじゃありませんが、先日、ご同業の読者からこんな素敵なご指摘をいただきました。

かんべいさん>
1月18日分
●政治家のトップセールス:出力0%

政治家をセールスに使うと高くつきますぞ。(匿名希望)

○御意。


<1月27日>(月)

○1月23日のThe New York Timesで、保守派コラムニストのウィリアム・サファイアがちょっとした暴露をしている。フランスは、昨年11月に国連安保理決議1441を通した時点で、「アメリカが武力行使を延期し、国際世論が満足するまで査察をしてくれれば、(開戦の許可を与える)第2の安保理決議は要求しませんよ」と裏取り引きしていた。ところが、ドイツが欧州大統領の地位を「独仏で交互に独占しよう」と持ち掛けてシラクを釣り、今では独仏が共同戦線を張ってアメリカに対抗しているとのこと。

WASHINGTON Germany's chancellor, Gerhard Schroder, is on a roll: three battles, three victories; electoral, diplomatic and judicial.

The first was re-election last year, snatched from the jaws of defeat by his last-minute embrace of anti-American pacifism. That energized the Green Party and empowered Germany's new isolationism.

In its wake came the second Schroder triumph, his recent spinaround of Jacques Chirac of France.

Chirac had made a deal with the U.S. last fall: we agreed to postpone the invasion of Iraq until after U.N. inspectors had been jerked around long enough to satisfy the world street's opinion, and in return France would not demand a second U.N. resolution before allied forces overthrew Saddam.

As D-Day approached, France sent its aircraft carrier Charles de Gaulle to the coming war zone. Chirac made plain that, though a minor and reluctant participant in the attack, France was not to be frozen out of postwar oil arrangements.

Then Schroder, reliant on his militantly antiwar Greens, made Chirac an offer he could not refuse: to permanently assert Franco-German dominance over the 23 other nations of Continental Europe.

In a stunning power play in Brussels, Germany and France moved to change the practice of having a rotating presidency of the European Council, which now gives smaller nations influence, to a system with a long-term president. This Franco-German czar of the European Union would dominate a toothless president of the European Commission, chosen by the European Parliament.

Little guys of Europe hollered bloody murder this week, but will find it hard to resist the Franco-German steamroller. France then had to repay Schroder by double-crossing the U.S. at the U.N. That explains France's startling threat to veto a new U.N. resolution O.K.'ing the invasion of Iraq; a second resolution that France had promised Colin Powell would not be needed.

○まあ、皆さん大人だから、何でもありってことなんでしょうね。フランスは最初アメリカになびいて、今度はドイツに傾いているようですが、石油利権もあるので、もういっぺん寝返るかもしれない。対米支援をして欲しかったら、「もう一声」必要ということらしい。シラクはしみじみ、煮ても焼いても食えない政治家です。

○逆に問題なのはドイツです。最近、ワシントンではシュレーダー独首相の評判が最悪と聞いたけど、これは無理もない。アメリカとすれば、「お前はいつからそんなに偉くなったんだ」と言いたいところでしょう。シュレーダーは反米感情を利用して選挙に勝ち、緑の党におもねって米独間の同盟を危うくしている。言外に「ナチスの原罪を忘れたか」という感情もあるのかもしれない。

○「ドイツはちゃんと反対しているのに、日本はなぜ曖昧にしているんだ」といったことを言う人がいる。しかし日本の場合、イギリスのように愚直に尽くすこともできず、フランスのように巧みに駆け引きすることもできないのだから、たとえ阿呆に見えてもおとなしくしている方が無難であろう。少なくともそれで日米同盟は守れる。ドイツの孤立主義はしみじみ高くつくと思うよ。


<1月28日>(火)

○忘れもしない。1年前の1月30日、かんべえは『ルック@マーケット』に出ていた。その前日の29日がブッシュ大統領の一般教書演説の日で、日本時間では30日の午前中にスピーチが流れた。そこで例の「悪の枢軸」発言が飛び出したのである。かんべえは演説の該当部分をフリップにしてもらい、番組中で紹介する機会を窺っていた。そしたらナント、そんな時間はなかったのである。なんとなれば、その日は「田中真紀子外相解任」という大ニュースでもちきりだったからだ。

○そりゃま「マキコVSムネオ」はどちらも千両役者で、たしかに面白い見世物だった。「三方一両損」で、野上次官の首まで飛ぶという異常事態もおおいに驚いた。でも、いったい何の理由でマキコとムネオは「ハブとマングース」になったんだろう。この手の記憶力には定評があるかんべえも、最近はよる年波か、サッパリ思い出せないのである。

○たまたま角谷浩一氏から電話があったので聞いてみた。さすがは敏腕政治ジャーナリスト、一発で教えてくれた。「アフガン復興会議に、大西クンのNGOを呼ぶか呼ばないかだよ」。・・・・・おおお、そうだった、そうだった。それが原因で「スカートのすそを踏んだ」「涙は女の武器」などの騒動に発展したのだった。・・・・・くっ、くだらねえ。

○それが理由で、「悪の枢軸」発言は埋もれたニュースになってしまったわけだ。さて、それから1年。アメリカでは本日28日夜に2003年版の一般教書演説(States of the Union)が行われる。ブッシュが何と言うか、皆さん、ちゃんと注目しましょうね。イラク戦争が、アメリカ経済が、それから対北朝鮮政策がここにかかっております。日本時間では明日の午前11時頃になる。かんべえはブルームバーグテレビに出て、それを解説することになっております。


<1月29日>(水)

○今日の一般教書演説を読んで、ようやく謎が解けた気がしています。国連のイラクに対する査察は、大量破壊兵器を隠しているかどうかではなく、ちゃんと真面目に武装解除する意欲があるかどうかを見ていたのだと。安保理決議1441を読み返してみると、生物、化学兵器などが発見されなくても、イラク政府が査察団に対する「完全な協力」を怠れば「重大な違反」だとしている。また、「イラクに対して最後の機会を与える」とも書いてある。イラクが従順に査察に応じればよし、そうでなければ覚悟しろよということだ。

○あんまりいい喩えではないが、家庭裁判所が札付きの不良少年に対して最後の保護観察期間を与えた。ところが本人は、真面目に更正するつもりがなさそうだ。たとえ不法に隠している麻薬が見つからなくても、制裁を加えることに異存はないだろう、という理屈です。

○ブッシュは演説の後半部分で、"He has given no evidence that he has destroyed them."という言葉を5回繰り返している。これは「証拠が見つからない」ことを嘆いているのではなく、「フセインはわれわれを騙している(更正の見込みがない)」ことへの怒りを示している。ゆえに"He has shown instead his utter contempt for the United Nations"(国連に対して完全なる侮辱を与えた)というわけ。これは安保理決議1441条への侮辱でもある。

○おそらくアメリカはこのロジックで、対イラク攻撃の安保理決議を取るのでしょう。単独攻撃は考えていないようだ。なんとなれば、最後の部分に多国籍軍を意味するお馴染みの表現が使われている。: If Saddam Hussein does not fully disarm, for the safety of our people and for the peace of the world, we will lead a coalition to disarm him. (Applause.)。アフガン戦線のときにも、この表現があった記憶がある。

○たぶん安保理決議1441を通した時点で、パウエル国務長官はここまで考えていたのでしょう。つまり「物証」がなくても、イラク対して武力行使することは可能。査察委員会のブリクス代表も、27日の報告で「イラクは最後の武装解除の機会を利用することに失敗した」と言っている。フランスやロシアはここに気づいていたか、どうか。

○用意周到なのは、これに先立つ1月23日、コンドリーザ・ライス補佐官が"Why We Know Iraq is Lying" というコラムを寄稿していること。ここで述べられているロジックは、「自主的な武装解除に成功した例として、南アフリカ、ウクライナ、カザフスタンがある。これらの国では指導者が率先して協力した。それに比べてイラクの態度は到底信用できない」。証拠じゃないよ、態度だ分かる、と言っている。

○なおかつ、こんな可能性もある。この不良少年が更正不能であることを宣告した上で、後から物証を出すというシナリオである。一般教書演説の最後の部分で、「米国は2月5日に国連安保理を招集し、世界に対するイラクの造反の事実を検討することを要請する。パウエル国務長官がイラクの不法な武器開発計画に対する情報および諜報を提示する」とある。「実は動かぬ証拠もあるんだよ」と後出しで物証を示せば、国際社会という陪審員の間でも、イラクの有罪はテッパンになるだろう。

○ということは、これから始まるのは「パウエルの戦争」だということだ。昨年11月8日に国連決議を通した時点で、ブッシュ政権内の主導権争いはパウエルが勝利した。タカ派は沈黙した。なおかつ、対イラク戦の方法論でも、現場のフランクス司令官らの意見が通った。これまで一貫して対イラク戦をリードしてきたタカ派人脈、ラムズフェルド、ウォルフォビッツなどは後方に退いた。

○パウエルは国連決議を通し、周辺諸国の支持を取り付けつつ、25万人体制を築いて軍事的にも遺漏のない準備を進めている。まるでライオンが全力で小さなウサギを仕留めようとしているかのような印象を受ける。なおかつ、ブッシュ大統領を立てて、アメリカの威信を傷つけていない。事の善悪はさておいて、見事な仕事ぶりではないだろうか。


<1月30日>(木)

○突然ですけど、これが結構受けるんですよね。

天国とは何か

経営はインテル社
デザインはアップル社
マーケティングはマイクロソフト社
サポートはIBM社
価格設定はゲートウェイ社

地獄とは何か

経営はアップル社
デザインはマイクロソフト社
マーケティングはIBM社
サポートはゲートウェイ社
価格設定はインテル社


○かんべえの周囲は、しばしこの話題で盛り上がりました。デル派やNEC/富士通派も多いでしょうから、もっと拡大できそうですね。


<1月31日>(金)

○昨日の天国と地獄。何人かの方に「これが本歌でしょ」というご指摘を頂戴しました。

天国とは  
米国企業の給与で暮らし
中国人のコックを雇い
英国風の邸宅に住み
日本人の妻を娶り
イタリア人の妾を囲う


地獄とは  
中国企業の給与で暮らし
英国人のコックを雇い
日本風の邸宅で暮らし
イタリア人の妻を娶り
米国人の妾を囲う

○いわゆるエスニック・ジョークの古典。これくらいなら安心ですね。アメリカ人や中国人の前で話して、一緒に大笑いできる。ユダヤ人、ロシア人、アイルランド人、ポーランド人などが登場するジョークになると、こりゃもう味が悪くて"Politically Uncorrect"なのがいっぱいあって、周囲にそういう人がいないことを確かめてから、なんちゅうことになる。

○その点、パソコンは最近は誰もが持っていて、結構、会社による個性の違いがあるし、どんなに悪口を言っても気兼ねする必要がない。日本メーカー編も作れないかしら。





編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki