●かんべえの不規則発言



2018年2月






<2月1日>(木)

♪雨は夜更け過ぎに〜雪へと変わるだろう〜

○という歌の通り、今宵、都心を離れた時には雨だったけれども、柏駅に着いたときには雪になっていた。明日は積もりますかねえ。常磐線は動いてくれるか。千葉都民としては、来るなら来い、の心境であります。

♪きっと君は来ない〜ひとりきりのクリスマス・イブ〜

○と、山下達郎の歌は続くのであるが、今宵のFOMCが最後の出番となったイエレン議長のイメージがどうしても重なります。記者会見はなかったけれども、用意周到なジャレットさんはインフレ警戒のトークアップを最後に残し、後任のパウエル議長にフリーハンドを与えようとしている。先達はあらまほしきものかな。

♪心深く〜秘めた想い 叶えられそうもない〜

○「3月も6月も利上げしますからね〜」というメッセージが置き土産となった。彼女が仕事を引き継いだ際には、前任のバーナンキ議長がテーパリングやら何やら準備を残して行ってくれた。お蔭でこの4年間は何とか過ごすことができた。それを後任者に引き継がなきゃいけない。パウエルさん、今月中にやって来る最初のハンフリーホーキンス証言も無事にやり過ごしてね〜。

♪かならず今夜なら〜言えそうな気がした〜Silent night, Holy night

○言いたかったのは出口への想いか、それとも変転極まりないワシントン政治への恨み言か。しかるにそれは言わぬが花というもの。

♪まだ消え残る 君への想い 夜へと降り続く

○議長としては、きっと眠れない夜があったはず。明日の雇用統計はどんな数字が出るのか。副議長には誰が指名されるのか。議会承認はちゃんとできるのか。FRB理事を早いとこ決めてくれ〜!

♪街角にはクリスマス・トゥリー 銀色のきらめき Silent night, Holy night

○肝心の米国経済は、この1年ですっかりアニマルスピリッツを取り戻した。これこそ理外の理といっていいでしょう。長期金利も上昇する。にもかかわらずドルは下落する。わけがわからないのだけれども、それでも金融政策は前に進まなければならない。フォワードルッキングでなければなりません。

○パウエル議長の就任式は週明け2月5日だそうです。新しい時代が間もなく始まります。重い荷物を降ろした今夜は、イエレンさんにとって文字通りの聖なる夜でありましょう。お疲れさまでしたと心から申し上げたいところです。


<2月2日>(金)

○エンゲル係数が話題になっているのだとか。拙著『気づいたら先頭に立っていた日本経済』の第1章では、下記のようなことを書いている。2016年に書いたものだが、ご参考になれば幸いなり。


 最近、「日本のエンゲル係数が上がっている」ことが指摘されている。エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める飲食費の割合を指す。一般に数値が高いほど生活水準は低いとされ、先進国では低く、発展途上国では高くなる。日本の場合、戦後の混乱期などは実に60%前後もあったのだが、高度経済成長とともに低下して近年は20%台前半で安定してきた。実際のところ、食費は収入の4分の1前後、という家庭が多いんじゃないかと思う。

 それが2005年の22.9%を底に、2015年には25%と少し高まっている。これをもって、「いよいよ日本は貧しくなってきた」「2014年の消費増税が庶民の生活を圧迫している」といった指摘も可能であろう。

 ただし、これまた聖書の言葉と同じであって、いろんな解釈ができるところである。以下のようなトレンドを考えると、わが国のエンゲル係数は微増傾向が続くのではないかと思われてくる。

*今の日本では高齢者世帯が増えている。高齢者は子育てや住宅ローンが済んでいることが多いので、食費以外の出費項目が少ない。

単身世帯も増えている。独り暮らしはどうしても外食が多いし、自炊するにしても一人分だけ作るのでは食費が割高になってしまう。

共働き世帯も増えている。これまた外食や中食(デパ地下でのお惣菜購入など)が多くなるのでどうしても食費が割高になる。

 実際問題として日本の所得格差は拡大しているから、食費を切り詰めている貧困世帯も増えているはずである。その一方で、「日本は高所得者世帯でもエンゲル係数が高い」ことが知られている。つまり、豪華で優雅な食生活をエンジョイしている人たちも立派に存在している、ということだ。


○経済指標というものは、いろんな読み方ができるものであります。エンゲル係数の上昇もさまざまな解釈が可能なのであって、誰かを貶めるがための党派色の強い議論は感心しませんな。


<2月3日>(土)

○とっても久しぶりにニュージーランドからのニュース。昨年秋にニュージーランドで誕生したジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相ですが、1月19日にインスタグラムで妊娠を報告しました。やるなあ。


And we thought 2017 was a big year! Clarke and I are really excited that in June our team will expand from two to three, and that we’ll be joining the many parents out there who wear two hats. I’ll be Prime Minister AND a mum, and Clarke will be “first man of fishing” and stay at home dad. I think it’s fair to say that this will be a wee one that a village will raise, but we couldn’t be more excited. I know there will be lots of questions, and we’ll answer all of them (I can assure you we have a plan all ready to go!) But for now, bring on 2018.


○ニュージーランドは世界で初めて婦人参政権を導入した国ですが、現在は3人目の女性首相です。ちなみに1人目は党内クーデターで現職首相を追いやったジェニー・シップレー首相、2人目は女性候補対決を制したヘレン・クラーク首相。NZとご縁が深い不肖かんべえは、ご両人とも間近で見たことがありもす。

○3人目のジャシンダ・アーダーンさん率いる労働党は、総選挙では第2党でしたが、第3党のニュージーランドファースト党との連立に成功し、首相の座を射止めました。この選挙がいかにややこしい結果であったかは、当欄の9月25日にご紹介済み。37歳は、同国の首相としては最年少であります。

○このジャシンダさん、昨年夏に労働党党首になった際に、テレビ番組中で「子どもは産むつもりか?」と聞かれて(かねがね彼女は子どもが欲しいと言っていた)、「そんな質問、すべきじゃない」とはねのけている。カッコいいよね。ここまで吹っ切れていると、こういう問題でケチをつける側が小さく見えてしまいます。

○で、9月23日の総選挙の後、10月に連立工作が成功し、首相になった直後に妊娠が分かったのだそうです。おいおいおい・・・という気もしますが、これはめでたいことです。子どもというのは「産む、産まない」ではなくて、「授かる」ものです。こういうものは、コントロールできるものではないのであります。

○アーダーン家には「専業主夫」(ときどき魚釣り)がいるようです。キウイ・ハズバンドってやつですな。それでも、たぶん彼女は6月には産休を取るでしょうし、育休だってとるかもしれません。日本だったら文句を言う人がいっぱい出るでしょうな。それでもニュージーランドの場合はオッケーなんでしょう。幸い近くに物騒な国はありませんし、安全保障上の脅威があるわけでもありませんので。

○ともあれ、議会に子供を連れて行っていいかどうかで揉めるどこかの国とはちょっと桁が違います。「ニュージーランドから日本を見る」のはいつも勉強になるのです。


<2月4日>(日)

○週明けの株式市場は、かな〜り荒れそうな予感。

@米長期金利の上昇は、来るべきものが来たの感あり。金曜日の雇用統計はNFPが予想を上回る20万人増。賃金も大幅上昇。これでは物価上昇も視野に入ってくる。スーパーゴルディロックス相場も終わりが近そう。

A先週来の仮想通貨バブルの崩壊も不気味。コインチェック社のずさんな管理体制は、さすがにちょっと驚き。顧客資産を流用して出川氏のCMを流していたのかねえ。来週もいろんな新情報が飛び交いそう。

B1月中の東証時価総額700兆円台はちょっと早過ぎた。名目GDPが550兆円なんだから、そんなに急いではいけなかったのだ。年明け早々の調整は、むしろそうあるべきなのかもしれない。

Cなにより気になるのは2月5日に予定されているパウエル新FRB議長の就任式。2月にはハンフリー・ホーキンス証言もこれあり、市場は「お手並み拝見」モードである。イエレン前議長の呪いがあったりして。

D他方、一般教書演説を受けて、トランプ政権の支持率はラスムッセンで49%まで急上昇。ロシア疑惑のFBI捜査に問題アリとの報道もあったりして、トランプ大統領はますます絶好調。って、それはどうでもよい。

○本日は出張でタイから帰国中の上海馬券王先生とご一緒に中山競馬場の指定席へ。昼から奮戦。メインの東京新聞杯はリスグラシュー。かんべえ推奨のサトノアレスは惜しくも2着。でも、三連複取れたからご機嫌で帰還。夜はいつもの定跡通り「くらちゃん」で焼き肉。結構な週末でございました。


<2月5日>(月)

○本日は東京商工会議所の江東支部で経済講演会。

○江東区というのは、東京23区の中でもぬきんでて面白いところだと思う。豊洲市場、ビッグサイト、船の科学館、日本科学未来館、大江戸温泉、富岡八幡宮、亀戸天神、東京都現代美術館、夢の島、新木場、若洲リンクス、門前仲町、これ全部、ぜ〜んぶ江東区なのである。鉄道で言えば、総武線と京葉線と、都営新宿線と都営大江戸線と、東西線と有楽町線と半蔵門線と、東武鉄道亀戸線と、ゆりかもめとりんかい線が走っています。

○あ、ちなみに本日の会場は、江東区役所に近い東陽町でした。東陽町の駅の出入口は、わざわざ階段を作って小高くしてありました。つまりここは東京ゼロメートル地帯でもあるんで、地下鉄に水が流れ込むことを警戒しているのでしょう。タモリさんが見たら大喜びするであろう高低差であります。

○何と言っても興味深いのは歴史が古い深川である。深川は江戸の下町で漁師町であったが、かつてここには芭蕉が住み、晩年の伊能忠敬が住んでいた。両人共に全国を行脚して、前者は奥の細道などの文芸作品を残し、後者は伊能図こと大日本沿海與地全図を残している、ちなみに江東区は「深川江戸資料館」と「芭蕉記念館」を有しているらしい。うむ、今度行ってみなければ。

○深川には富岡八幡宮と成田山深川不動尊が並んで立っている。江戸時代にはどういう棲み分けをしていたんだろうね。おそらくは町人が前者に通い、侍は後者に通ったんじゃないかと思うが、伊能忠敬は測量の旅に出かける際には、かならず弟子たちとともに富岡八幡宮に参ったそうである。だから銅像が立っている。富岡八幡宮は最近、変なことで有名になってしまったことが惜しまれます。

○亀戸には「七福神めぐり」という観光スポットもあるらしい。常光寺の寿老人、東覚寺の弁財天、香取神社の恵比寿神と大黒神、普門院の毘沙門天、天祖神社の福禄寿、龍眼寺の布袋尊というラインナップである。これらが全部、JR亀戸駅の近くに並んでいて、全部回って1時間半で済むというからたいへんお手軽なコースと言えそうだ。何だか歴史推理小説のネタにでもなりそうな存在だが、誰か書いていないんだろうか。

○ほかにもいろんな観光スポットがあるけれども、一番人気は清澄庭園であるという。岩崎家三代が築いた明石の庭である。うーん、こうしてみると、知らないところ、行ってないところが一杯あるなあ。今度、沿線ぶらり旅をやってみる必要がありそうです。


<2月6日>(火)

○本日の日経平均は▲1071円と四ケタ下落。こうなると今宵のNY市場が気になります。その結果次第で明日がどうなるか。えっ、続落で560ドルの下げですって? まことにハラハラドキドキの夜であります。

○昨日のNY市場は「ワイルド・マンデー」となって、▲1175ドル安でした。東京はそれにお付き合いした形。ただし2月5日の下げは絶対額は大きくても、比率としては▲4.6%とそれほどでもない。歴代の株式下げ記録についてはこの記事をご参照。その点、2008年秋には1日で7%台の下げが9/29、10/9、10/15、12/1と4回もあったわけでして、つくづくリーマンショック後の株安はひどかったわけであります。

○少し気が早いかもしれませんが、今回の下落にはどんな「戒名」をつけるべきでしょうか。「雇用統計ショック」なのか、それとも「減税シンドローム」なのか、あるいは「トランプ崩れ」と呼んでいいものか。過去のパニック売りにはいつもこうした「戒名」がつけられて、その後に相場心理が落ち着くという経験則があります。ちょっとブラックですが、「パウエル議長歓迎相場」なんてのもありかもね。

○もうひとつ、先週来のビットコイン相場の下落は、文字通り今週の下げの先導役でありましたね。コインチェック社は陳勝・呉広の乱でありましたか。「王侯将相いずくんぞ種あらんや!」(仮想通貨取引所に現物は置いてなかったぞ=嘘)という叫びが聞こえたような。

○世界中が大混乱の今日、ペンス副大統領が日本に到着。安倍首相と会談するそうですが、麻生副総理との「日米経済対話」は行われないんでしょうか。できれば「為替の安定を注視している」程度のコメントで結構なんで、発してもらえませんかねえ。他方で安倍官邸の習性としては、「北朝鮮でドンパチするかもしれないタイミングで、為替ごときで恩に着せられてたまるか」的な感覚があるやもしれません。

○などと深夜になってあれこれ悩むのは、ワシは明日朝のモーサテに登板予定なんですよ。うーん、この嵐の中で何を語ればいいんでしょう。もっとも明日のトップニュースは「眞子さま結婚延期」となる模様。それもちょっとコメントしづらい話ではございますけれども。


<2月8日>(木)

○インフルエンザが流行しているそうだが、自分が最後にいつインフルにかかったのか覚えていない。だから予防注射もしない。ほとんど無防備だが、それでもなんとかなっている。

○風邪もあんまりひかない方である。「かかったかな?」と思ったら市販の葛根湯を呑む。これでいつも何とかやり過ごしている。あんまり寝込んだことはない。毎週、土曜の夜にやっている「火の用心」が身体にいいのかもしれない。

○ところが今週はモーサテに出て、2か所で講演会をやって、3日連続で飲み歩いたら、さすがに今日は喉が痛い。これはいかん。少しおとなしくしていなければ。最近はとにかく外が寒いしねえ。

○ホントは家に帰ったらうがいをするといいんだよねえ。でもいつも忘れてて、風邪ひいたかな、と思ってからうがいをはじめる。心がけが悪いのだ。明日は少し楽になりますように。


<2月9日>(金)

○オリンピック、始まりました。個人的には、「終わった後が怖いよね〜」という気分が抜けません。でもねえ、これがほんのちょっとのことで空気が変わっちゃうんだよなあ。スポーツというものは、ときには安全保障上の懸念をかき消してしまうような魔力があるわけでして。金正恩だってトランプさんだってちゃんと見てますよ。あの人たち、今どきめずらしいテレビ好きだし。

○とりあえず開会式が始まった瞬間に、「安倍首相はやっぱり行っておいてよかった」と想いました。たぶん首相訪韓を非難していた人も忘れているんじゃないでしょうか。慰安婦問題などというものは、第三国が「日本と韓国のどっちが大人げないか」を判断するゲームであります。だから欠席裁判はマズイ。これを日韓のゲームだと思ったら負けです。だって相手はストーカーなんだから。

○しかも、この後、日本人選手が何でもいいからメダルを取った瞬間に、「それいけ、やれいけ、もっといけ」ということになってしまうんでしょうねえ。いや、そういうのワタクシ、嫌いじゃないんです。「ふっ、くだらない」などとスカして見ないで済ませるのはもったいないです。

○だいたい開会式に出てくる選手たちの若いこと。もちろんレジェンド葛西のようなおっさんもおりますが、彼らの眼に世界はどんなふうに映っているのか。全世界から見られているにもかかわらず、スマホでパシャパシャやりながら行進している各国の選手団は、ちょっと異次元のように感じられてしまいます。

○彼らの価値観が少しでも感じられれば、オリンピックを見ることには意義がある。だからちゃんと見ましょう。と言いつつ、明日も出張があるんですけれども。


<2月11日>(日)

○電話機が故障した。古いので仕方がないと諦め、家電量販店へ出かける。最近、よく行ってるなあ。

○そしたら固定電話の売り場が見つからない。時間をかけて探したら、2階の隅っこの方に売り場が存在した。客はほとんどいない。店の側も「さあ、これを売るぞ!」という感じではない様子である。

○おそらく今の世の中、電話機が壊れたら、「これを機会に固定電話、止めるか」となる家が多いんじゃないだろうか。会社のOB会などで名簿を作ると、70歳を過ぎた頃になると急速に携帯だけの家が多くなるらしい。

「だって固定電話にかかってくるのは、碌な用事じゃないんだもの」

○と言われると、そりゃそうですわな。ちなみにウチはよく世論調査の電話がかかってくる。「振り込め詐欺」の電話は受けたことがない。女性の名前で電話帳に載せていると、すごい頻度でかかってくるものらしい。

○それはさておいて、悩ましいのはFAXをつけるかどうか、である。長らく家ではFAXつきの電話機を使ってきた。かつてはよくFAXを使ったのだよ。10年前にTV朝日『サンデープロジェクト』に出ていた頃は、何十枚というFAXが土曜の夜に届いたものである。さすがに今はもう、そういうことはなくなった。BS-TBSの『Biz Street』の台本も実は長いのだが、これは金曜夜ないしは土曜早朝にPDFファイルで送られてくる。こちらもわざわざプリントアウトしたりはしない。

○悩んだ挙句、FAXつきでない、ただの電話機を買った。だってもう、長いこと使ってないんだもの。これはこれでスッキリした。皆さま、仕事の書類はなるべくワードかPDFでくださいませ。

(後記→たまたまこの週末に読んだ『空母いぶき』の7巻では、中国軍に奪われた尖閣諸島に対し、自衛隊が攻撃の事前通告をFAXで送る、というシーンが登場する。「通告は電話による口頭ではなく、あえてFAXで送信することとなった。確かに通告したという確証が残るように・・・」とある。やっぱりFAXは、勢いで捨てちゃいかんのかもしれませんな)。


<2月12日>(月)

BS11の仕事でお茶の水のスタジオへ。1時間くらい前に到着して、丸善で時間つぶし。『自民党秘史』(岡崎守恭/講談社現代新書)をお買い上げ。こういう本、好きです。若いころから、岩見隆夫や早坂茂三の本をよく読んだものである。昔の政治家はキャラが立っていて、日常を語ること自体が面白かった。今はそんなに面白くはない。小泉純一郎さんはカリスマだったけれども、安倍さんはそうではない。面白いエピソード集が残るような人ではないと思う。

○喫茶店に入って本書を読んでいたら、ふと目の前に座っていた若者がせっせとノートを取りながら勉強しているのが目に入った。今どきめずらしい光景だなあ、と思ってしばらくたってから気が付いた。ああそうか、ここは駿台予備校の街。今を去ること40年近く前、ワシもこの街に通っておったのではなかったか。その頃はこんな風に、せっせと勉強していたような気がする。10代の頃をちょこっとだけ思い出しました。

○とはいうものの、この間に世の中はずいぶん変わったものである。今の若者が勉強している内容は、昔とはかなり違うだろう。彼らの未来はもっと違っているはず。仮に自分があと40年生きるとしたら、その未来を傍観することはできるかもしれない。だったら、「人生逃げ切り」なんてことは考えるべきではあるまい。最近、同世代人がその手のことを言うのが多くて、少し気にかかっている。

○初心忘るべからず。お茶の水は自分にとって初心の場所なのだと思う。街の景色はずいぶん変わったけれども、ちょっと若返った気持ちになりました。


<2月13日>(火)

今宵の為替は107円台に突入。うーん、拙いですね。12月の日銀短観によれば、2017年度の想定為替レートは110円18銭。来年度予算を策定する上では、企業マインドを冷やすことになりそうです。

○これは来月の春闘にもマイナスに働くでしょう。総理大臣がみずから音頭を取って「賃上げ3%」を大合唱し、企業に同調圧力をかけていたところで、行動しない絶好の言い訳を与えてしまいました。うーん。

○アメリカが「適温経済」から脱して、出口に向かうこと自体は歓迎すべき事態です。とはいうものの、日本経済はまだちょっと「ぬるま湯での回復」が足りていない。明日のGDP速報値も気になるところ。これから先も景気指標は注意深く読まなければなりません。


<2月14日>(水)

○ちょっと気になっていることがある。来月の上旬に予定されている中国の全人代の日程がまったく聞こえてこないことである。中国では偉い人の日程がギリギリまで決まらないのはよくあることだが、そうはいっても昨年秋に党大会があったばかりである。後の全人代は、粛々と、いや万雷の拍手をもって人事を固めるのが吉例ではなかったのか。そうならないのは、中国内政が意外と落ち着いていないからではないのだろうか。

○平昌五輪の開会式には、習近平総書記はやってこなかった。代わりに来たのは、よく知らない党の要人である。安倍首相やペンス副大統領が来ているのだから、習近平が来ていて不思議はない。というか、ムンジェイン大統領がどれだけ必死に訪韓を要請したかは想像に難くない。

○中国側としては、五輪終了後のアメリカの出方を知るためにも、しかるべき人物が開会式に出た方が良かったはずである。1月30日の一般教書演説におけるトランプ大統領の異例ともいえる北朝鮮批判は、当然彼らも知っているだろう。ところがそのチャンスを見送った。それどころじゃない、という国内事情があったように見える。

○昨年の時点では、年明け早々にも李克強首相の訪日があるはずであった。それで日中韓首脳会議ができるというのが読み筋であったのだ。ところがその話が全然進まない。ひょっとすると、全人代で「国務院総理」を再任するかどうかが決まっていないのではないだろうか。そうだとすると、政府人事が全然決まらないという異常な事態が浮かび上がってくる。

○いや、ホントのところはさっぱりわかりません。でも中国内部は、意外と政治が停滞しているのかもしれない。おいおいしっかりしてくださいよ。できればアンタから、朝鮮半島にガツンと一発言ってほしいんですけれども。


<2月16日>(金)

○日銀の正副総裁人事が国会に提示されたり、為替レートが1ドル105円台をつけたり、今日から確定申告がスタートですよとか、日本電産の新社長は旧日商岩井の91年入社なんだそうですが、あたしゃまったく記憶にないですがなとか、いろんなニュースが飛び交った本日ではありますが、すべてを吹き消してしまったのが羽生結弦選手のショートプログラム。自己ベストに近い111.68ですって。すごい、すごすぎる。

○明日のフリースタイルは、演技時間も長くて今日よりは大変だと思いますが、悔いのないプレイを祈りたいと思います。スポーツの世界における人間の偉業は、それ以外の世界を小さく見せてしまう。今に始まったことではないのでありますが。

○明日はもう一つ、重要なゲームがあります。国民栄誉賞を受賞したばかりの羽生善治永世七冠王が、公式戦で初めて藤井五段の挑戦を受けることになります。きっと歴史に残る勝負ということになりますね。同時代の人間の偉業を見届けることができるのは、まことに意義深いものがあると思います。


<2月17日>(土)

○午前は羽生。朝日杯将棋オープンを将棋連盟アプリでチェック。

○藤井五段の差し回しは、序盤からさりげなくポイントを稼いでいつの間にかリードを拡大している。本日も気づいたら羽生さんが悪くなっていた感あり。

○中盤以降は難解。どこかで羽生マジックが出るのかな、と思いつつ見ていたら不発。藤井五段は秒読みもしっかりしているのですね。見事な勝ちでした。

○その後、決勝戦では広瀬八段を下して優勝。「五段昇段後、全棋士参加棋戦に優勝すること」という昇段規定を満たして藤井六段に。中学生の六段は初めて。

○午後も羽生。NHKで平昌五輪男子フィギュア。

○理屈にはならないんだけれども、「羽生さんが負けるのなら、羽生君もあんまり期待しちゃあいけないな」などと考える。

○というか、昨日のショートプログラムで最高点、というニュースを聞いた時点で身体が震えた。それだけで十分にスゴイ。この上、五輪を連覇などとは強欲というものではないのか。

○と、そんな見方は凡人の発想であったようだ。羽生の金メダルに宇野の銀メダルまでついてきた。強欲もいいところで、これより上と言ったら1972年の札幌「日の丸飛行隊」しかない。

○「金」にあこがれる人は多いが、本気で追い求めている人は少ない。本当にゲットしてしまう人は、さらに希少だ。頂点を争っている人は、それだけでまばゆく、神々しく見える。

○ところで明日はフェブラリーステークス(G1)。案の定、「ゴールドドリーム」が一番人気になっている。そんな単純なことでいいのか!と怒りたくなるところだが、他に買うべき馬も思いつかないレース。ここはひとつ、上海馬券王先生のご判断に期待しましょうか。


<2月18日>(日)

○本日はいろんな経緯があって北九州市の小倉競馬場へ。午前のスターフライヤーで飛んでやってきました。この航空会社、私は好きです。

○北九州空港というのは、瀬戸内海に面しているのですね。あたしゃてっきり玄界灘に面しているのだと思ってました。こういう勘違いは現地に来ないと分からない。

○本日の北九州市はマラソンが行われておりまして、そうか、だから土曜日はホテルが取れなかったのか。しょうがないから、月曜日に休みを取って日曜に泊まることにしました。

○現地では当社OBのやまもとさんと合流。とっても久しぶりながら、あいかわらずお元気でありました。

○その後は当地にて痛飲。夜は小倉のアパホテルへ。昨日は2万円を超えていたというのに、今宵は5000円。とっても分かりやすいです。

○今宵は小平奈緒選手がスピードスケート500mで金メダルであったようで、何はともあれおめでとうございます。やはり昨日の羽生選手が日本選手全体にモメンタムをくれたような気がします。


<2月19日>(月)

○北九州市、あるある話のご紹介。

(1)九州特有の「甘い醤油」と本州の普通の醤油との違いは、山口県内に境目があるらしい。下関は完全に「甘い醤油」で、北九州市の文化圏内である。

――北九州市は、玄界灘と瀬戸内海の両方の海の幸が楽しめます。お得です。

(2)北九州市の中でも、八幡区は黒田藩であり、小倉区は小笠原藩である。

――豊前と筑前の間にひとつの市がまたがっているのですね。55年前の五市対等合併はつくづく壮挙というべきであります。

(3)合併の時にはいちばん貧乏だった小倉市が、地の利もあって今は一番恵まれている。

――小倉駅を持ってるのが強いですよねえ。小倉城もあるし、自衛隊駐屯地もあります。安全保障上の要地なのですな。かつては原爆の投下目標にされたことも・・・。

(4)内緒だけれども、北九州に行くときは福岡空港の方が便利だったりする。

――福岡空港の方が本数も多いし、地下鉄で移動して博多駅で乗りかえれば、わずか16分で小倉駅なんです。え?新幹線代がもったいないって?実は小倉駅から北九州空港まではバスで40分、700円なんですが、1時間に2本程度しかないんです。待ちきれなくてタクシーを使うと、30分で着くけど5000円ちょいかかってしまいます。ちなみに北九州空港は海上空港なんで、深夜も飛べるというのがウリです。

(5)北九州市では福岡市への対抗意識が強いけれども、福岡市側は北九州市のことが眼中にない。

――政令指定都市になったのも、北九州市の方が早かったんですよね。でも、相手は何しろ「ウチは東京、大阪と並ぶ日本の三大都市」だと思っているくらいですから。

(6)当地のごぼ天うどんはお勧めです。ところがコシの強い讃岐うどんが全国を席巻している中で、福岡式のやわらかい麺には逆風のようです。

――博多出身のタモリさんは、「麺にコシは要らない!」と言い張っているそうです。

(7)北九州市には競馬(小倉競馬)だけでなく、競輪場(小倉競輪)と競艇場(若松競艇)もあります。ついでにオートレースも近くの飯塚市にあります。

――若松競艇はなんと市営です。競輪は客が減っているけれども、競艇はわりといいらしいですよ。

(8)「住みたい田舎ベストランキング」の10万人以上の都市部門で北九州市が第1位に輝きました。一部には治安問題を指摘して、「修羅の国なのにとんでもない!」という声もあるようですが。

――高齢者には良い街じゃないかと思います。それから、よそ者に暖かいのは福岡県全体の美風じゃないかと思います。


○今日は緒方さんと会いました。コーヒーだけで政策や政局を語っているうちに2時間。あっという間でした。滅多に会わないのに、会うといつもこんな感じ。今宵の「正論大賞授賞式」がなければ、もうちょっと長居をしたかったですね。


<2月20日>(火)

○不思議なもので、オリンピックが始まってからは市場は安定に向かっているように見える。いや、結構なことであります。しかし今週末で五輪は終わる。その後の1週間は、いろんなことがありそうだ。

○2月28日にはFRBがハンフリー・ホーキンス報告書を提出し、パウエル新議長の議会証言が行われる。「お手並み拝見」とばかりに注目度は高い。変な発言が飛び出すと即座に市場に影響が出るだろう。

○ドイツのSPDが今日から3月2日まで、政権入りを問いかける党員投票を行う。3月4日頃には答えが出るだろう。答えがノーだと大連立も否定され、再選挙に向かうのではないか。総選挙から半年も政治空白なんだものねえ。

○3月4日はイタリア総選挙。これまた鬼が出るか蛇が出るか。五つ星運動、民主党、中道右派連合(フォルツァ・イタリアと北部同盟)の三極は、いずれも過半数を取れない見通し。どういう組み合わせになるんですかねえ。

○中国の全人代は3月5日から。これまた見所はたくさんありそう。

○中東もきな臭くなっている。まあ、あの人たちは如何にも冬季五輪は見ていなさそうだし。

○逆に言うと、今週はまだ五輪に熱中していても許されるらしい。それはそれで結構なことである。さて、来週はどうなりますか。


<2月21日>(水)

○経済同友会時代の出向者仲間の会。往時から既に20年以上が経過している。その昔は、「今年も1人の物故者もなく・・・」という挨拶が恒例のギャグになっていたのだが、いよいよ古希の仲間まで誕生し、そろそろ洒落にならなくなってきた。決まり文句を、「今年も1人の物故者も認知症もなく・・・」に変えたらどうかという声もちらほら。

○会場は神田神保町の中華料理。いまどき食べ放題、飲み放題で3000円台というお財布に優しい価格。味も悪くない。さすがは元・中国人留学生たちの街である。お店の場所は、予約がとりにくくなると困るので、魯迅ゆかりの内山書店の近くとだけ書いておこう。

○定刻である午後6時半にはほとんどの仲間が集まった。昔はもっと皆さん忙しかったんだよねえ。完全リタイアの人もちょっとずつ増えるので、そのうちもっと早い時間から集まるようになるのかもね。最近のOB会は午後5時スタートなんてのがめずらしくはないらしい。

○こんな具合に、仲間が少しずつ年を取っていくのは楽しい光景である。年1回ペースで、果たしてあと何年続くのか。平均寿命は延びているからねえ。とりあえず20年くらいはいけますかね。

○ところで会合前に、久しぶりに神田の古本屋街を歩いてみたら、こんなご時勢にもかかわらず、思ったほど寂れてはいないのですね。考えてみれば、日本でここが唯一の古書の集積地。何でもかんでもネットとデジタルになる時代といえども、まだまだ世の中のお役に立ってます。ちょっと清々しい光景に見えました。

○古いものが新しい時代に生き残っていくためには、自分の中の若さを刺激していかなければならない。どうやったらそれが可能になるのだろうか。やっぱり少しは冒険しなきゃあねえ。「人生逃げ切り」なんてことを考えてちゃいけません。


<2月23日>(金)

ニューズレターの溜池通信を隔週で書いて、東洋経済オンラインの締め切りが3週間おきにやってくる。両方とも金曜日が締め切りである。6週間に1度は両者が重なる理屈で、そういう日はずっと前から憂鬱である。え?今日はプレミアム・フライデーですって? 知るか、そんなこと。

○今日は両方とも無事に片付いてホッとしています。あー、しんどかった。来週はどちらもないから、清々しております。


<2月24日>(土)

○「おくすり手帳」に新たな1ページが加わりました。


●平成30年2月24日 35日分

●平成29年4月1日 35日分

●平成29年2月28日 30日分

●平成28年3月26日 60日分

●平成28年2月13日 30日分

●平成27年3月25日 30日分

●平成27年2月14日 30日分


○中身は全部花粉症の薬。毎年この時期にやってるんですねー。今年は寒かったせいか、症状の出方が少し遅いです。でも今週はもう始まりました。明日はきっと中山競馬場で、鼻をぐずぐずさせて辛い思いをしているはずです。

○考えてみれば、これ以外の薬はまったく飲んでないわけでして、ありがたいことかもしれません。インフルエンザもここ10年くらい、かかったことないです。ご飯は残さず食べ、注がれた酒は全部飲む。ホントは血圧高いし、コレステロール値も高いんですが、見かけ上、健康な身体に感謝。

○通い慣れた耳鼻科に行くのですが、もちろん混んでいます。1時間半待って、治療は1分で終わります。窓口で「どれくらいかかるんですか?」とくってかかっている患者が居るが、心がけが悪いといえよう。当方としては、どうぞ大いに待たせていただきたい、という心構えである。

○今日は『保守主義の精神 上』(ラッセル・カーク著、会田弘継訳/中公選書)を持参。残念なことに、会田さんの解説は載っていなかった。あ、そうか、下巻で載せるのか、と気づいて、あらためてご労苦に深く脱帽する。いえ、別にカークに関する会田さんの解説を読みたければ、『追跡・アメリカの思想家たち』を読み返せばいいだけなんですけどね。

○薬局の待ち時間が短かったので、待ち時間は合計2時間弱であった。もっと長くても良かったんだけどなあ。


<2月25日>(日)

○先日、金融政策に関する議論をしていて、面白かったのがこういう指摘です。

「FRBがドットチャートを導入したのは失敗だった。透明性を高めた結果、かえって市場とのコミュニケーションに支障をきたしている」

○ドットチャートが導入されたのは2012年のこと。「FOMCメンバーのうち、×人が年内の利上げは×回と言っている」というアレです。あそこで示されているのは、「現時点では、FOMCメンバーはこんな風に考えている」ことであって、コミットメントでもなんでもない。新しいデータが公表され、状況が変化したら変わるのが当たり前なんです。ところが実際問題、ドットチャートが公表されるたびに市場は、「利上げが増えた!(減った!)」などと大騒ぎしてしまう。いや、「モーサテ」の報道なんてそんなのばっかりです。

○FRBとしては、「ドットチャートは政策を対外的に伝える手法ではない」と言っている。そんな親心を知ってか知らずしてか、Fedウォッチャーたちは、「このドットがXX議長ではないか」などと推測したりしている。年に4回、ドットチャートが公表されるたびにこの騒ぎ。FRBとしては、「ちゃんと声明文を読んでください!」と言いたいところかもしれぬ。

○一般的に言って、「透明性を高める」ことは良いこととされている。真面目な話、FRBも「ドットチャートは弊害の方が多いから止めます」とは言い出せないだろう。ただし、こういうことって意外とよくあるよね。その昔、グリーンスパン議長が訳の分からない言葉で周囲を煙に巻いていた頃の方が良かった、てなことになったりして。

○「透明性かならずしも善ならず」ということは、ほかにもいろいろありますよね。政治家と有権者とか、企業と投資家とか、あるいは夫婦関係とか、「軽く片目をつぶっておく」方が関係が良好でいい、ってことは少なくないように思います。もっともネット空間には、「透明性厨」みたいな人たちが多いような気がしますが。


<2月26日>(月)

○このたび白桃書房という出版社から、『チャイナ・エコノミー』という本が出版されました。著者はアメリカ人のチャイナ・ウォッチャーで、アーサー・R・クローバーといいます。なぜか解説文を、不肖かんべえが寄稿しております。正直、大変に優れた本ではないかと思います。

目次

第1章 中国の政治と経済
第2章 農業と土地と地方経済
第3章 工業と輸出経済の興隆
第4章 都市化とインフラ
第5章 企業制度
第6章 財政システムと中央・地方政府の関係
第7章 金融システム
第8章 エネルギーと環境
第9章 人口構成と労働市場
第10章 興隆する消費者経済
第11章 格差と腐敗
第12章 成長モデルを変える
第13章 中国と世界
日本語版へのあとがき
補遺 中国の経済統計は信用できるのか
解説 双日総合研究所チーフエコノミスト 吉崎達彦


○中国経済に関して英語で書かれた情報を集約すると、ここに書かれているようなポジティブな姿が浮かび上がります。いろいろ問題を抱えてはいるけれども、今までだってギリギリの線で危ないところをくぐり抜けてきたんだし、これからも何とかやっていくでしょう、という筋書きになる。

○ところが中国経済に関して日本語で書かれた情報を集約すると、非常にネガティブなものになってしまう。ときどき居るんですよね。講演会などで「中国経済についてどう思いますか?」と尋ねてきて、当方がどんな返事をしても下を向いて首を振る人が。たぶん「中国経済は明日にも破綻します」と言わないと、納得してくれないのだろうと思う。でも、そこまでひどくはないからねえ。一部のネット環境なんて、日本よりも進んでいるくらいだし。

○真実の中国経済は、ネガとポジの中間にあるのだと思います。つまり我々が見ている中国は、かなり悲観バイアスがかかったものである。アメリカ人が英語で見た場合の中国――そこには反日デモも、レアアース問題も、毒ギョーザ事件もない――とはかなり違う。彼らは呑気に見ていることができる。だから楽観的になる。国際的に見た場合は、そっちの方が主流である。

○国際標準の中国経済論は、われわれが想定している内容とかなり違っているのです。てなことで、日本語で読める当「チャイナ・エコノミー」はスグレモノだと思います。


<2月27日>(火)

○毎週火曜日朝に登場している文化放送「くにまるジャパン極」なんですが、あそこで語る「深読みジャパン」のコーナー、ネタはギリギリまで決めません。当日朝の「モーサテ」を見て、家で日経朝刊を読んでから決める、というのが数年来の「お作法」になっております。

○で、今朝の場合は「パウエルFRB議長の議会証言」を取り上げようと考えました。今朝の「ワードバンク」の内容がすごく気に入ったからであります。そこで出勤途中の常磐線の中で組み立てを考え、8時10分に文化放送前の「デニーズ」に入って簡単なメモ書きを作ります。この辺はまったくのルーティーンでありまして、最近は「デニーズ」が混むのでちょっと困っております。今朝は喫煙席の方が混んでおりましたね。面白い現象だと思います(ワシはどっちでもいいから、早く座れる方がありがたい)。

○ところがですな、今朝も8時半にスタジオに入ったら、ちょうど前の番組が「空家問題」を取り上げていて、「くにまる」スタッフも今朝は「ホテルの作り過ぎ」という問題を取り上げたいと言っている。うーむ、これではFRBの出番はない。急きょ予定変更。空地・空家問題については、たまたまネタを仕込んでいたところなので。

○今通常国会では、予算関連法案として「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」が架けられている。これは「都市のスポンジ化対策」、いわゆる空地・空き家問題に対応するものだが、今現在の日本における空き家総数は820万戸(2013年)。この10年で1.5倍に増加している。賃貸物件がその半分を占めているのだが、問題は木造一戸建ての318万戸。更地にすると固定資産税が6倍になるので、そのまま放置されることが多い。たとえ危険な状態になっても、権利関係があるので容易には取り壊せない。こんな状態であるにもかかわらず、年間95万戸程度の新築住宅が供給されているという現状は、どこかおかしいように思えてならない。

○現在の法制度を前提とすると、行政や自治体が命令したところで私権を制限することは難しい。日本国憲法や民放は、私有財産の権利を非常に強く守っておるのです。だから地域全体が取り組んで、土地の需要と供給をマッチングさせるしかない。人口減少社会においては、都市計画の在り方を根底から考え直さなければならないのです。

○そこで考えられるのが行動経済学でいう「ナッジ」。強制ではなく、情報提供などを通じて「この空いてる土地、誰か何とかしませんか〜」と地域全体で取り組むわけです。地域全体で働きかける、という点がミソです。いわば周囲が、『そだね〜そだね〜』と合唱するような形で、チームで取り組むということが「空地・空家問題」のカギということになります。

○ラジオの仕事って、こんな風にその場のノリでどんどん中身を変えていけるところが面白くて好きです。

○次は3月1日(木)の早朝、TBSラジオの生島ヒロシさんの番組に登場します。午前5時から6時半まで、と聞くと少々萎えますけど、これはもう明日夜は赤坂に泊まるしかありません。なんとTBSでは、今週はこんなゲストを呼ぶのですか。うーむ。ま、明後日の朝になってから考えることにしよう。










編集者敬白



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by Tatsuhiko Yoshizaki